説明

ビン検査装置

【課題】異物検査時にビンが適正に回転しているか否かを確実に検出できるビン検査装置を提供する。
【解決手段】ビン検査装置1は、ビン2の底面に吸着し、ビンの中心軸20を中心にビンを回転させる吸着回転手段と、中心軸20と平行な軸39を中心に回転可能に且つビンの円筒外周面に接触するように配置されており、ビンの回転と共に回転する回転子38を備えている。回転子は軸39を中心として螺旋状に伸びる段部43を備えている。検査装置はさらに、軸に直交又はほぼ直交する方向から段部を撮影する撮影機45を備えている。回転検出部52は、撮影機で撮影された画像に表れる段部を特定し、段部が画像上を所定時間内に移動する量を検出し、移動量が予め決められた値以上か否かを判断し、その判断結果に基づいて、ビンが適正に回転しているか否か判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料などの液体を収容するビンの検査装置、特に、ビンを回転しながら外観や混入異物を検査する際に該ビンが適正に回転しているか否かを検査する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビンの外観検査や異物検査では、ビンを回転させながら固定カメラでビンの画像を取り込んでその画像を解析する方法が採られている。この方法によれば、ビンが適正に回転されていることが必要である。そのため、ビンの底面を吸引式吸着部で吸着し、その状態でビンと吸着部を共に回転させながら、カメラで撮影された吸着部の画像の変異を検出して、ビンが適正に回転しているか否か確認している。
【0003】
しかし、ビンに付着した塵(例えば、小さな紙屑、付着部)が吸着部の吸引ラインに入り、その吸引ラインを閉塞してしまうことがあった。この場合、吸着部がビンに適正に吸着せず、ビンが回転しない状態で検査が誤って行われる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、検査時にビンが適正に回転しているか否かを確実に検出できる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明は、ビンの底面に吸着し、上記ビンの中心軸を中心に上記ビンを回転させる吸着回転手段と、上記中心軸と平行な軸を中心に回転可能に且つ上記ビンの円筒外周面に接触するように配置されており、上記ビンの回転と共に回転する回転子を備えたビン検査装置において、上記回転子は上記軸を中心として螺旋状に伸びる段部を備えており、上記検査装置はさらに、上記軸に直交又はほぼ直交する方向から上記段部を撮影する撮影機を備えていることを特徴とする。
【0006】
本発明の他の形態のビン検査装置は、上記撮影機で撮影された画像に表れる上記段部を特定し、上記段部が上記画像上を所定時間内に移動する量を検出し、上記検出された移動量が予め決められた値以上か否かを判断する回転検出部ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように構成されたビン検査装置によれば、異物検査時にビンが適正に回転しているか否かを確実に検出できる。したがって、異物検査結果の信頼性が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0009】
1.概略構成:
図1は、本発明に係るビン検査装置(以下、「検査装置」という。)を上方から見た図である。図示する検査装置1は、液体(例えば、ビール、ジュース)を収容するガラス製ビンに異物が付着しているか否か等を外観検査する装置で、概略、検査装置1にビン2を供給する供給部3と、検査装置1に供給されたビンをΩ状の搬送経路に沿って一列に搬送する搬送部4と、搬送部4によって搬送されているビン2の外観を撮影する撮影部5と、ビン2の外観検査時にビン2を該ビンの鉛直中心軸を中心に回転させる回転部6(図2参照)と、撮影部5で撮影されたビンの外観画像を解析してビンに付着した異物等を確認する画像解析部7と、画像解析部7の解析結果を利用してビンを「良品」と「不良品」に分別する分別部8を有する。以下、各部の構成と動作を説明する。
【0010】
1‐1.供給部3:
供給部3は、多数のビン2を一列に整列した状態で搬送するチェーンコンベヤ9と、チェーンコンベヤ9で搬送される多数のビン2の間隔を目的の値に保持しながらチェーンコンベヤ9と共に搬送するスクリューコンベヤ10を備えており、図の左側に配置されたビン供給源(図示せず)から供給される多数のビン2を一定の間隔で搬送部4に供給する。
【0011】
1‐2.搬送部4:
搬送部4は、固定された基台11と、この基台11に支持された3つの回転搬送手段を有する。具体的に、回転搬送手段は、入口スターホイール13、ロータリテーブル14、出口スターホイール15を有する。入口スターホイール13は、ビンの胴部と係合可能な凹部(図示せず)を外周縁に等間隔に形成した円形又は環状の部材を有し、供給部3から一定の間隔をあけて供給されるビン2を各凹部に保持して反時計回り方向に搬送しつつ、ロータリテーブル14との対向領域(供給領域16)で該ロータリテーブル14に受け渡す。ロータリテーブル14は、時計回り方向に回転可能な円形又は環状の部材を有し、供給領域16で受け取ったビン2を時計回り方向に搬送する。ロータリテーブル14に付属する装置は後に説明する。出口スターホイール15は、入口スターホイール13と同様に、ビンの胴部と係合可能な凹部(図示せず)を外周縁に等間隔に形成した円形又は環状の部材を有し、ロータリテーブル14との対向領域(回収領域17)で該ロータリテーブル14から供給されるビン2を各凹部に保持して反時計回り方向に搬送する。
【0012】
1‐3.回転部:
図2、3に示すように、ロータリテーブル14は、外周縁の近傍に、周方向に等間隔に配置された多数の吸着装置(吸着回転手段)18を有する。吸着装置18は、ロータリテーブル14に固定された筒状のアウターケーシング19を有する。アウターケーシング19は、中心軸20を上下方向に向け、ロータリテーブル14を上下方向に貫通して、ロータリテーブル14に固定されている。アウターケーシング19の内側には、インナーケーシング21が挿通されており、軸受22,23を介して中心軸20を中心に回転可能に支持されている。アウターケーシング19の上端から突出したインナーケーシング21の上部は、ビン2の外周底部を支持する環状支持部24と、環状支持部24の内側にあってビン2の底面に吸着する椀型の吸着パッド25を有する。インナーケーシング21の中心には、中心軸20に沿って吸引路26が形成されている。吸引路26の上端は吸着パッド25に囲まれた吸引空間27に接続されており、吸引路26の下端は吸引管28を介して真空吸引源29に接続されている。アウターケーシング19の下端から突出したインナーケーシング21の下部には、中心軸20を中心とする歯車30が設けてあり、この歯車30がロータリテーブル14に回転自在に支持された別の歯車31とかみ合っている。歯車31は円筒状のベルト係合部32を同軸的に且つ一体的に備えている。ベルト係合部32と係合する無端ベルト33は、ロータリテーブル14の回転方向に関して供給領域16の下流側と回収領域17の上流側に配置された2つのローラ34,35と、ロータリテーブル14の径方向外側でそれらの間に配置された一つ又は複数のローラ(図示せず)に支持されており、ベルト33の外周摩擦面がベルト係合部32と接触させてある。そして、ローラ34,35のいずれか一方がモータ36に駆動連結されている。
【0013】
したがって、駆動時、搬送部4では、供給領域16でロータリテーブル14に供給されたビン2は、各吸着装置18の環状支持部24に支持され、吸着パッド25に底面が吸着保持される。この状態で、ビン2の中心軸は吸着装置18の中心軸20に一致している。また、供給領域16から回収領域17の中間領域を移動する各吸着装置18では、モータ36から環状ベルト33、ベルト係合部32、歯車31,30を介して、インナーケーシング21及びその環状支持部24と吸着パッド25に回転が伝えられ、ビン2が中心軸20を中心に所定の方向(図1の時計回り方向)に回転しながら、ロータリテーブル14の回転と共に、回収領域17に向かって搬送される。
【0014】
ロータリテーブル14は、吸着装置18ごとに、吸着装置18に吸着保持されたビン2の胴部に接触して該ビン2を支持する複数の回転子(例えば、ガイドローラ)を支持している。実施例では、図4に示すように、回転子であるガイドローラ38は、ロータリテーブル14に支持された垂直軸39に回転可能に支持されており、上段円筒接触部40と、下段円筒接触部41と、これらの円筒接触部40,41の間に位置する中段円筒非接触部42を有する。中段円筒非接触部42は、中心軸20を中心として螺旋状に伸びる螺旋段部43が形成されている。螺旋段部43は周方向に360°の範囲に存在しており、両端部(上端部と下端部)が中心軸20と平行に伸びる垂直段部44を介してつながっている。したがって、段部43,44を境に、中段円筒非接触部42の上部外径が下部外径よりも大きくなっている。
【0015】
1‐3.撮影部5:
図1に戻り、撮影部5は、インナーケーシング21と共に回転しているビン2を所定時間ごとに断続的に撮影するカメラ45を有する。図示しないが、カメラ45の撮影領域46を挟んでカメラ45の反対側には、照明装置(図示せず)を設けることが好ましい。カメラ45の光軸は、吸着装置18の中心軸20及びガイドローラ38の軸39に直交又はほぼ直交していることが好ましい。
【0016】
カメラ45の撮影領域46は、供給領域16と回収領域17のほぼ中間に位置する。撮影領域46の幅(回転方向の距離)は、撮影領域46を通過する間に、中心軸20を中心として各ビン2が少なくとも一回転するように決められる。また、カメラ45の撮影タイミングは、撮影領域46で一回転する各ビン2を7回に撮影するように決められる。より具体的に説明すると、カメラ45が撮影するビン胴部は円筒形状をしている。また、ビールなどの飲料に使用されるビンは通常着色されている。したがって、図5に示すように、異物の有無を画像から正確に認識できる領域は、ビン胴部を撮影した画像47の一部分(異物検査領域48)に限られる。本実施例では、図6に示すように、異物検査領域47の範囲をビン中心角55°に設定し、カメラ45はビン2が約52°回転するごとに(すなわち、所定時間ごとに)画像を取得するようにしてある。
【0017】
図7に示すように、カメラ45で撮影される各画像47には、ビン2とこれを左右から支持している2つのガイドローラ38の画像が含まれる。図において縦長四角枠で囲まれた領域(回転検査領域49)には、ガイドローラ38の段部43の画像が含まれている。上述のように、ガイドローラ38はロータリテーブル14に設けた垂直軸39に回転自在に支持されており、吸着装置18に支持されているビン2の胴部と接触するように配置されている。したがって、ガイドローラ38は撮影領域46を回転しながら通過するビン2の回転と共に回転し、その回転に伴って撮影画像に表れる螺旋段部43の位置(高さ)が変化する。もちろん、ガイドローラ38の上段及び下段円筒接触部41の外径はビン胴部の外径に比べて相当小さいため、ビン2が一回転する間にガイドローラ38は複数回転し、螺旋段部43の位置は所謂ノコギリ波状に変化する。
【0018】
1.4:画像解析部:
図1に戻り、画像解析部7は、カメラ45で撮影した各画像の異物検査領域48の画像を解析し、ビンに異物が付着しているか否かを判断する異物検出部51を有する。異物検出部51が実施する異物検査方法は省略する。
【0019】
画像解析部7はまた、カメラ45の画像から、撮影領域46を搬送されているビン2が回転しているか否かを画像解析して判断する回転検出部52を有する。回転検出部52は、カメラ45で撮影された各画像47の回転検査領域49に現れた螺旋段部43の左右いずれかの端部を特定し、その高さdy(i)(以下、この位置の螺旋段部の高さを「段部の高さ」という。)を求める。次に、回転検出部52は、画像に現れた段部43の高さdy(i)とその直後に撮影された画像に表れた段部43の高さdy(i+1)の差(di=dy(i+1)−dy(i))を求める。次に、第1画面と第2画面の段部高さ差d1、第2画面と第3画面の段部高さ差d2、・・・、第6画面と第7画面の段部高さ差d6を加算し、ビン2が一回転する間に段部43が移動した距離(移動量)Σdiを求める。
【0020】
なお、ガイドローラ38はビン2に比べて小径であるから、ビン2が一回転する間にガイドローラ38は複数回転し、その間に螺旋段部の高さはノコギリ波状に変化する。したがって、ある画面の段部高さdy(i+1)からその直前の画像の段部高さdy(i)を引いた値が負になることがある。この場合、差diはh+(dy(i+1)−dy(i))〔h:螺旋段部両端部の高さ差(図4参照)〕で与えられる。
【0021】
次に、回転検出部52は、上述にようにして求めた所定時間内の段部移動量Σdiを予め決められた基準値と比較し、ビン2が適正に回転しているか否かを判断する。基準値は、事前の試験によって決定し、回転検出部52、特に記憶部に記憶されている。
【0022】
1.5:分別部:
図1に戻り、分別部8は、異物検出部51の検査結果をもとに、異物が付着していないビン(良品)と、異物が付着しているビン(不良品)に分別する。分別装置の詳細は省略する。また、分別部8は、分別された良品と不良品を別々に搬送するコンベヤ55,56を備えている。
【0023】
2.動作:
以上の構成を備えた検査装置1を説明する。検査対象のビン2は、図示しないビン供給源から供給され、チェーンコンベヤ9とスクリューコンベヤ10によって、図1の左側から右側に一定の間隔をあけて搬送され、入口スターホイール13に供給される。入口スターホイール13に供給されたビン2は、該入口スターホイール13の外周凹部に保持され、図1の反時計回り方向に搬送され、供給領域16でロータリテーブル14に渡される。
【0024】
供給領域16でロータリテーブル14に供給されたビン2は、吸着装置18の中心軸20に対して同軸的に吸着保持されて図1の時計回り方向に搬送される。この搬送中、供給領域16と回収領域17の中間領域及び該中間領域に含まれる撮影領域46を移動するビン2は、モータ36から環状ベルト33、ベルト係合部32、歯車31,30からインナーケーシング21及びその環状支持部24と吸着パッド25に伝達される回転に伴って所定の方向に回転し、撮影領域46を通過するビン2がカメラ45で断続的に撮影される。撮影された画像は画像解析部7の異物検査部51で解析され、良品と不良品が確認される。
【0025】
撮影領域46を通過したビン2は、回収領域17で出口スターホイール15に受け渡される。出口スターホイール15に供給されたビン2は、分別部8で良品と不良品に分けられ、コンベヤ55,56でそれぞれの工程に搬送される。
【0026】
画像解析部7の回転検出部52は、撮影画像47の回転検査領域49に現れた螺旋段部43の高さを求め、その値をもとに撮影領域46を通過しているビン2が適正に回転しているか否か判断する。そして、ビン2が回転していない、またはビン2の回転量が不足していると判断すると、回転検査部52は警告部(図示せず)に信号を出力し、オペレーション装置(図示せず)に対応する信号を出力する。
【0027】
このように、本発明に係るビン検査装置によれば、検査対象であるビンが適正に回転しているか否か確認できることから、異物検査が適正に行われたか否かを容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るビン検査装置の平面図。
【図2】図1に示すビン検査装置の吸着装置の側面図。
【図3】図1に示すビン検査装置の吸着装置の縦断面図。
【図4】図1に示すビン検査装置のガイドローラの正面図。
【図5】画像中の異物検査領域を示す図。
【図6】撮影装置のタイミングを示す図。
【図7】画像中の回転検査領域を示す図。
【符号の説明】
【0029】
1:検査装置、2:ビン、3:供給部、4:搬送部、5:撮影部、6:回転部、7:画像解析部、8:分別部、9:チェーンコンベヤ、10:スクリューコンベヤ、11:基台、13:入口スターホイール、14:ロータリテーブル、15:出口スターホイール、16:供給領域、17:回収領域、18:吸着装置、19:アウターケーシング、20:中心軸、21:インナーケーシング、22,23:軸受、24:環状支持部、25:吸着パッド、26:吸引路、27:吸引空間、28:吸引管、29:真空吸引源、30:歯車、31:歯車、32:ベルト係合部、33:ベルト、34,35:ローラ、36:モータ、38:ガイドローラ、39:垂直軸、40:上段円筒接触部、41:下段円筒接触部、42:中段円筒非接触部、43:螺旋段部、44:垂直段部、45:カメラ、46:撮影領域、47:画像、48:異物検査領域、49:回転検査領域、51:異物検出部、52:回転検出部、55,56:コンベヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビンの底面に吸着し、上記ビンの中心軸を中心に上記ビンを回転させる吸着回転手段と、上記中心軸と平行な軸を中心に回転可能に且つ上記ビンの円筒外周面に接触するように配置されており、上記ビンの回転と共に回転する回転子を備えたビン検査装置であって、
上記回転子は上記軸を中心として螺旋状に伸びる段部を備えており、
上記検査装置はさらに、上記軸に直交又はほぼ直交する方向から上記段部を撮影する撮影機を備えていることを特徴とするビン検査装置。
【請求項2】
上記撮影機で撮影された画像に表れる上記段部を特定し、
上記段部が上記画像上を所定時間内に移動する量を検出し、
上記検出された移動量が予め決められた値以上か否かを判断する回転検出部ことを特徴とする請求項1のビン検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−156550(P2010−156550A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333441(P2008−333441)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】