説明

ビーズに基づく親和性キャプチャおよび質量分析による抗体薬剤コンジュゲートの分析

抗体コンジュゲートである式I:Ab−(L−D)pの抗体−薬剤コンジュゲート(このときAbが抗体であり、Dが薬剤部分であり、Lが共有結合的にAbに付着し、共有結合的にDに付着したリンカーであり、そして、pが1、2、3、4、5、6、7又は8である)及びその断片及び代謝産物を投与した後に、免疫親和性ビーズ分離、クロマトグラフィおよび質量分析によって、生物学的試料を検出し、特徴付けし、定量化するための方法が、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の説明)
米国特許法規則1.53(b)に基づき出願した非仮出願は、米国特許法119(e)に基づき、2008年5月13日に出願の仮出願第61/052727号の優先権を主張し、出典明記によりその内容全体を援用するものである。
【0002】
(発明の分野)
本発明は概して、抗体−薬剤コンジュゲートやその断片および代謝産物を含む抗体コンジュゲート化合物を、質量分析によって、捕獲し、検出し、分析し、スクリーニングし、特徴付けし、定量化するための方法に関する。また、本発明は、薬物動態学研究および毒物動態学研究のために質量分析用試料を調製するための方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)は、非特異的な毒性を低減し、従来の小分子および抗体癌化学療法と比較して有効性を増やすように設計された標的抗癌治療法である。抗体−薬剤コンジュゲートは、非常に強力なコンジュゲートした小分子治療法を癌細胞に特異的に供給するために、モノクローナル抗体の強力なターゲティング能力を利用する。これらの抗体−薬剤コンジュゲートの薬物動態および毒性といった性質を評価するために、血漿、尿および他の生物学的な試料からそれらを特徴付けし、定量化することが可能であることは、有用である。さらに、同じ試料および同じクロマトグラフィの注入物による方法における遊離薬剤(抗体にコンジュゲートされていない薬剤)を定量化する能力も、有用である。
様々な質量分析技術、例えば電子衝撃(EI)、化学イオン化(CI)、脱着化学イオン化(DCI)、高速原子衝撃(FAB)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)、及び逆重畳積分のためのイオン選別の単イオンモニタリング(SIM)(Souppart et al (2002) Jour. of Chrom. B 774:195-203;Wong et al (2001) Jour. of Chrom. 765:55-62;Yao et al (1998) Jour. of Chrom. B 718:77-85;Abdel-Hamid et al (2001) Jour. of Chrom. B 753:401-408;Marques et al (2001) Jour. of Chrom. 762:87-95)を含むタンデム質量分析(MS/MS)(Yao et al (2001) Jour. of Chrom. B 752:9-16;Royer et al (1995) Rapid Comm. in Mass Spec. 9:495-502)は、薬物動態学研究における小分子療法の同定および定量化のために使用されている。これらの方法および測定器は、十分な感度を得るために生体液から様々な分析物を分離することが必要である。このような精製は大きな労力を要する上に遅く、細胞培養培地、ヒトの血漿、尿および胆汁といった試料における対象の分析物の濃度が低いために大量の試料体液を必要とする。
【0004】
質量分析による検出/特徴付け/定量化と分離/単離/精製の初期段階工程との直接の組合せは、複合体生体試料の代謝研究に有用である。一般的に、LC/MSは抗体の特徴付けのために使われ(Martin et al (1997) Cancer Chemother. Pharmacol. 40:189-201;国際公開03/046571;国際公開03/046572)、ELISAは生物学的基質の定量化のために使われる(Murray et al (2001) J. Imm. Methods 255:41-56;Kirchner et al (2004) Clin. Pharmacokinetics 43(2): 83-95)。ELISAアッセイは一般的に、高処理のスクリーニングに感受性が高く、適している。
質量分析(MS)によるタンパク質分析の最近の進歩は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI、米国公開特許2003/0027216)および表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI、米国特許第6020208号)といった初期段階の気相イオン化と導入技術、並びに、計測器感度、分解能、質量精度、バイオインフォマティックスおよびソフトウェアデータ逆重畳積分アルゴリズム("Electrospray Ionization Mass Spectrometry: Fundamentals, Instrumentation, and Applications", Cole, R.B., Ed. (1997) Wiley, New York; "Modern Protein Chemistry: Practical Aspects", Howard, G.C. and Brown, W.E., Eds. (2002) CRC Press, Boca Raton, FL, p. 71-102;)の改良に因るものである。タンパク質の一次(配列)、二次及び三次構造はプローブ化され、MSにより解明されうる。エレクトロスプレーイオン化(ESI)は、液体試料の大気圧イオン化(API)を提供する。エレクトロスプレー法は、蒸発の下で、溶液中に含まれる種を表すイオンを作り出す高度に荷電したドロップレットを作り出す。質量分析機のイオン-試料採集用開口部は、質量分析のためのこれらの気相イオンの見本を取るために用いられる。質量分析検出器によって測定される分析物の応答は、体液の分析物の濃度に依存し、体液流速には依存していない。
免疫親和性メンブラン(IAM)キャプチャおよび質量分析による抗体−薬剤コンジュゲートを検出及びスクリーニングするための方法は開示されている(米国公開特許2005/0232929)。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、抗体コンジュゲート化合物及び組成物、抗体、及びそれらの断片ないし代謝産物を、免疫親和性ビーズキャプチャ、分離、クロマトグラフィおよび質量分析によって検出、スクリーニング、及び定量化するための方法を含む。質量分析の例示的な方法には、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、及び全スキャン質量分析(MS)が含まれる。
免疫親和性ビーズキャプチャは、(i) 強いストレプトアビジン−ビオチン相互作用、(ii) 対象タンパク質の分析のために十分な物質を捕獲する高い結合能、(iii) 低い非特異的結合、(iv) 質量分析適合溶剤による試料成分溶出、(v) 良好な試料回復、及び(vi) 自動化への従順さ、を利用するストレプトアビジンコート常磁性ビーズによって実施してよい。
【0006】
以下の式Iを有し、
Ab−(L−D)p I
このとき、
Abが抗体であり、
Dがメイタンシノイド又はモノメチルアウリスタチン薬剤部分であり、
Lが、共有結合的にAbに接着し、共有結合的にDに接着したリンカーであり、そして、 pが1、2、3、4、5、6、7又は8である、本発明の抗体コンジュゲート化合物。
【0007】
本発明の一態様には、以下の工程を含む抗体−薬剤コンジュゲート化合物の検出方法が含まれる:
(i) 式Iを有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物を提供すること;
(ii) 抗体−薬剤コンジュゲート化合物と、場合によってpが0である式Iの抗体又はその抗体断片ないし代謝産物を、哺乳動物、組織、細胞培養物、血漿又は血清から選択される生物学的な供給源と接触させること;
(iii) 生物学的な供給源から生体試料を採取すること;
(iv) 処方し、固定し、遠心し、単離し、消化し、血液細胞凝集を誘導ないし予防し、加水分解し、又は精製することによって分析試料を生成するために生物学的試料を処理し、処理済みの分析試料を生成すること;
(v) 処理済みの分析試料に特異的な抗原を含む親和性成熟ビーズにて処理した分析試料を捕獲すること;
(vi) 処理した分析試料を溶出すること;
(vii) 分離培地に溶出した分析試料を置き、1より多くの試料成分を分離すること、このとき分離した試料成分は式Iを有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物又はその抗体断片ないし代謝物を含み、pは0、1、2、3、4、5、6、7又は8である;そして、 (viii) 一又は複数の分離した試料成分の質量電荷比を質量分析によって確認すること。
【0008】
本発明の他の態様には、以下の工程を含む、哺乳動物において、抗体−薬剤コンジュゲート化合物の混合物をスクリーニングして、化合物又はその断片ないし代謝物のクリアランスを決定する方法を含む:
(i) 式Iを有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物の混合物を提供すること、このとき該混合物は場合によって、pが0である抗体又はその断片ないし代謝物を含み;
(ii) 哺乳動物に混合物を投与すること;
(iii) 混合物が投与された哺乳動物から血液試料又は排出物を採取すること;
(iv) 処方し、固定し、遠心し、単離し、消化し、血液細胞凝集を誘導ないし予防し、加水分解し、又は精製することによって分析試料を生成するために血液試料又は排出物を処理し、処理済みの分析試料を生成すること;
(v) 処理済みの分析試料に特異的な抗原を含む免疫親和性ビーズにて処理済みの分析試料を捕獲すること;
(vi) 処理済みの分析試料を溶出すること;
(vii) 分離培地に血液試料、排出物又は分析試料を置き、1より多くの試料成分を分離すること、このとき分離した試料成分は式Iを有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物又はその抗体断片ないし代謝物を含み、pは0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;そして、
(viii) 一又は複数の分離した試料成分の質量電荷比を質量分析によって確認すること。
【0009】
本発明は、添付の図面、図および実施例と併せて、以下の例示的な実施態様の詳細な解説を参照することによって理解されるであろう。下記の考察は記載、図示そして例示であって、添付の特許請求の範囲のいずれかによって定義される範囲を限定するものとみなされるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1a】磁石と接触してストレプトアビジンコート常磁性ビーズに結合されるビオチン化ECDタンパク質のECD(細胞外ドメイン)に結合する、抗体(MAb)および抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)の例を示す。
【図1b】ビーズに共有結合的に連結されるECDタンパク質のECD(細胞外ドメイン)に結合する、抗体(MAb)および抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)の例を示す。
【図2】磁石と接触してストレプトアビジンコート常磁性ビーズに結合されるビオチン化抗薬剤モノクローナル抗体(ビオチン−抗薬剤MAb)に結合する、抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)の例を示す。
【図3】システイン改変抗体−薬剤コンジュゲートの例を示す。上から下の順に、軽鎖に位置する2つのMMAE薬剤部分−Thio Hu 抗HER2 4D5 LC V205C−MC−vc−PAB−MMAE;重鎖に位置する2つのMMAE薬剤部分−Thio Hu 抗HER2 4D5 HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE;重鎖のFc領域に位置する2つのMMAE薬剤部分−Thio Hu 抗HER2 4D5 Fc S400C−MC−vc−PAB−MMAE;及びコンジュゲートのためのシステイン改変抗体:Thio Hu 抗HER2 4D5 Fc S400C。
【図4】0、8、24、48および96時間の時点で採取したインビトロ血漿安定試料の、免疫親和性ECD改変ビーズキャプチャ及び質量分析特徴付け後の、血漿における軽鎖(Thio Hu 抗HER2 4D5 LC V205C−MC−vc−PAB−MMAE)(上)および重鎖(Thio Hu 抗HER2 4D5 HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE)(下)ADC変異体についての、薬剤/抗体比(DAR)分布の変化を示す。試料成分を、0(ネイキッド抗体)、1(1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)および2(2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)のDARとした。
【図5】図4(下)にプロットしたように、0、8、24、48および96時間の時点で採取したThio Hu 抗HER2 4D5 HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE(37℃でインキュベートしたラット血漿中の100μg/ml)試料の安定性の逆重畳積分した質量分析データを示す。試料成分を、+0(ネイキッド抗体)、+1D(1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)および+2D(2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)のDARとした。およそ151000amuの小さいピークは、不完全に脱グリコシル化された試料成分である。
【図6】0、6、24、48および96時間の時点で採取したThio Hu 抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE(37℃でインキュベートしたラット血漿中の100μg/ml)の安定性の逆重畳積分した質量分析データを示す。試料成分を、+0(ネイキッド抗体)、+1D(1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)および+2D(2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)のDARとした。
【図7】Thio Hu 抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAEのラット血漿安定性試験における経時的な薬剤/抗体(DAR)分布変化を示す。
【図8】96時間の時点で採取し、rhuMUC16 ECDによって捕獲した、ラット、カニクイザルおよびヒトの血漿とバッファ(0.5%BSAを含む20mM ヒスチジン/酢酸塩、240mM トレハロース、0.02%ポリソルベート20、pH5.5)における、Thio Hu 抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE(37℃でインキュベートした100μg/ml)試料の安定性の逆重畳積分した質量分析データを示す。
【図9】38mg/kgのThio Hu 抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAEを投与したカニクイザルにおけるインビボ動態学の逆重畳積分した質量分析データを示す。平均薬剤負荷は1.6のMMAE/3A5であった。投与したADCのおよそ30%はDAR+1であった。血漿試料は、5分、6時間、24時間、72時間、6日、8日、15日および22日の時点に採取し、免疫親和性ECD改変ビーズ法によって捕獲した。試料成分を、+0(ネイキッド抗体)、+1D(1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)および+2D(2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)のDARとした。およそ149000amu及び150000amuの小さいピークは、不完全に脱グリコシル化された試料成分である。
【図10a】レセプターのECDが抗体又は抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)への結合のために固体担体上に固定されている総ELISAアッセイフォーマットを示す。ADCは、化学発光検出のためにF(ab')ヤギ抗ヒトFc−HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)に結合する。
【図10b】抗薬剤MAbが抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)への結合のために固体担体上に固定されているコンジュゲートELISAアッセイフォーマットを示す。ADCは、溶液中のレセプターのビオチン化ECDに結合する。次いで、複合体は、化学発光検出のためにストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合しうる。
【図11】ラット血漿試料中の薬剤部分にコンジュゲートした残りの抗体の割合をプロットすることによる、ELISA法、及び免疫親和性ECD改変ビーズキャプチャ/質量分析(MS)法による試料成分の検出の比較を96時間内の時間につれて示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的実施態様の詳細な説明
ここで、本発明のある実施態様を詳細に参照するが、その例を添付の構造及び式で例証する。本発明を列挙する実施態様と併せて説明するが、それらは本発明をその実施態様に限定することを意図するものではないことは理解されよう。それどころか、本発明は特許請求の範囲によって定まる本発明の範囲に含まれうるあらゆる代替例、変形例、及び均等物を包含することが意図される。当業者であれば、本発明の実施において使用されうるここに記載のものと同様な又は均等な多くの方法及び材料が分かるであろう。本発明は記載された方法及び材料に決して限定されるものではない。
特に定義のない限り、本明細書中で用いた技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者が共通して理解するものと同じ意味を有し、以下と一致している:Singleton et al, (1994) "Dictionary of Microbiology and Molecular Biology", 2nd Ed., J. Wiley & Sons, New York, NY;及びJaneway, et al (2001) "Immunobiology", 5th Ed., Garland Publishing, New York。本明細書中で商標名が用いられる場合、出願人は、商品名生成物の商品名生成物製剤、後発品および活性な製薬成分(一又は複数)をそれぞれ含むことを意図する。
【0012】
定義
特段の記載がない限り、本明細書中で用いる以下の用語及び表現は以下の意味を有することが意図される。
【0013】
「抗体」は最も広い意味で用いられ、特に、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)および抗体断片を包含する。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ、または他の種由来のものであってよい。抗体は、特異的な抗原を認識して結合することができる免疫系によって生成されるタンパク質である。(Janeway, et al (2001) "Immunobiology", 5th Ed., Garland Publishing, New York)。標的抗原は一般に、エピトープとも呼ばれ、複数の抗体上のCDRによって認識される多数の結合部位を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各々の抗体は異なる構造を有する。よって、1つの抗原は1より多い対応する抗体を有しうる。また、抗体は、完全長免疫グロブリン分子又は完全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち限定するものではないが、癌細胞又は自己免疫性疾患と関連した自己免疫抗体を産生する細胞を含む標的などの対象の標的の抗原ないしその一部を免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。本明細書において開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子のいずれかのタイプ(例えばIgG、IgE、IgM、IgDおよびIgA)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)又はサブクラスのものであってよい。免疫グロブリンは任意の種から得られてよい。一態様では、しかしながら、免疫グロブリンは、ヒト、マウス又はウサギ起源のものである。
【0014】
「抗体断片」には、完全長抗体の一部、一般に抗原結合又はその可変領域が含まれる。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')およびFv断片;ダイアボディ;線状抗体;Fab発現ライブラリーによって生産される断片、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、ECD(細胞外ドメイン)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原又は微生物抗原、単鎖抗体分子に免疫特異的に結合する上記の何れかのエピトープ結合断片;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
本明細書における「インタクトな抗体」は、抗原結合性可変領域VLおよびVHドメイン、並びに完全な軽鎖および重鎖定常ドメイン(CL)および重鎖定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含むものである。定常ドメインは、天然の配列定常ドメイン(例えばヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であってもよい。インタクトな抗体は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物活性を意味する一又は複数の「エフェクター機能」を有してよい。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合;補体依存性細胞障害作用;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞媒介性細胞障害作用(ADCC);食作用;細胞表面レセプターの下方制御(例えばB細胞レセプター;BCR)などが含まれる。
【0015】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、集団に含まれる個々の抗体が、少量で存在しうる自然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対している。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と比べて、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって汚染されずに合成される点で有利である。「モノクローナル」との修飾詞は、抗体の実質的に均一な集団から得られている抗体の性質を表すものであって、抗体を何か特定の方法で生成しなければならないことを意味するものではない。例えば、本発明において有用なモノクローナル抗体は、最初にKohler et al (1975) Nature 256:495により記載されたハイブリドーマ法によって作ることができ、あるいは組換えDNA法(米国特許第4816567号を参照)によって作られてもよい(例えば、米国特許第4816567号参照)。また「モノクローナル抗体」は、例えばClackson et al (1991) Nature, 352:624-628;Marks et al (1991) J. Mol. Biol., 222:581-597に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0016】
本明細書中のモノクローナル抗体には特に、特定の種由来または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列に同一または類似する重鎖および/または軽鎖の一部を含み、残りの鎖は、所望の生物学的活性を表す限り、他の種由来または他の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体並びに該抗体の抗体断片の対応する配列に同一または類似する「キメラ」抗体が含まれる(米国特許第4816567号;およびMorrison et al (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855)。ここで対象とするキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、サルなど)及びヒト定常領域配列由来の可変ドメイン抗原結合配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる。
【0017】
「生物学的試料(生体試料)」は、(i) 血液、胆汁、尿又は糞便;(ii) 組織抽出物;及び(iii) 細胞培養物、細胞溶解物又は細胞抽出物を意味する。
「生体起源」は、(i) 哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル又はヒト;(ii) 哺乳類の組織;及び(iii) 培養細胞を意味する。
「標識」は、抗体に共有結合的に接着し得、(i) 検出可能なシグナルを生じる;(ii) 第二標識と相互作用して、第一又は第二標識、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)によって生じる検出可能なシグナルを修飾する;(iii) 抗原又はリガンドとの相互作用を安定させるかまたは結合の親和性を増やす;(iv) 電荷、疎水性、形状又は他の物理学的パラメータによって、移動度、例えば電気泳動移動度又は細胞透過性に作用する、又は(v) キャプチャ分子を生じさせ、リガンド親和性、抗体/抗原結合又はイオン複合体調節するために機能する、任意の部分を意味する。
【0018】
抗体
式Iの抗体ユニット(Ab−)は、所定の標的細胞集団と関連するレセプター、抗原又は他の受容性部分と結合するか又は反応的に結合するか又は複合体化する抗体(Ab)の任意のユニットをその範囲内に包含する。抗体は、治療上又は生物学上修飾される細胞集団の部分と結合する、複合体化する又は相互作用する任意のタンパク質ないしタンパク質様分子でありうる。一態様では、抗体ユニットは、抗体ユニットが反応する特定の標的細胞集団へ薬剤ユニットを運搬するように働く。このような抗体には、限定するものではないが、完全長抗体及び抗体断片といった大きな分子量タンパク質が含まれる。
式Iの抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)にAbを含み、癌の治療に有用となりうる抗体には、腫瘍関連抗原(TAA)に対する抗体を含むが、これに限定されるものではない。このような腫瘍関連抗原は当分野で公知であり、当分野で周知である方法および情報を使用して抗体を生成するために調製されてよい。癌の診断及び治療のために有効な細胞標的を発見するために、研究者は、一又は複数の正常非癌性細胞と比較して、一又は複数の特定の種類の癌細胞の表面上に特異的に発現される膜貫通あるいは腫瘍関連のポリペプチドを同定することを目的としている。多くの場合、このような腫瘍関連ポリペプチドは、非癌性細胞の表面上と比較して癌細胞の表面上に多く発現される。このような腫瘍関連細胞表面抗原ポリペプチドの同定により、抗体ベースの治療法による破壊のために癌細胞を特異的に標的化する能力が生じる。
【0019】
TAAの例には以下に列挙するTAA(1)−(35)が含まれるが、これらに限定されるものではない。便宜上、これらの抗原に関する情報(その全ては当分野で公知である)を以下に列挙し、名前、別名、Genbank受託番号および基本的な参照(一又は複数)を含む。抗体の標的となる腫瘍関連抗原には、引例文献において同定された配列と比較して少なくともおよそ70%、80%、85%、90%又は95%の配列同一性を有するか又は、引用文献に見られる配列を有するTAAと実質的に同じ生物学的特性又は特徴を表すすべてのアミノ酸配列変異体及びアイソフォームが含まれる。例えば、変異配列を有するTAAは一般に、列挙した対応する配列を有するTAAに特異的に結合する抗体に結合することが可能である。本明細書において特別に引用される文献中の配列と開示内容は、出典明記によって特別に本明細書中に援用される。
【0020】
腫瘍関連抗原(1)−(36):
(1) BMPR1B (骨形態形成タンパク質レセプタータイプIB、Genbank受託番号NM_001203) ten Dijke,P., et al Science 264 (5155): 101-104 (1994), Oncogene 14 (11): 1377-1382 (1997));国際公開2004063362(請求項2);国際公開2003042661(請求項12);米国公開特許2003134790A1(38〜39頁);国際公開2002102235(請求項13;296頁);国際公開2003055443(91〜92頁);国際公開200299122(実施例2;528〜530頁);国際公開2003029421(請求項6);国際公開2003024392(請求項2;図112);国際公開200298358(請求項1;183頁);国際公開200254940(100〜101頁);国際公開200259377(349〜350頁);国際公開200230268(請求項27;376頁);国際公開200148204(実施例;図4)。NP_001194骨形態形成タンパク質レセプタータイプIB/pid=NP_001194.1-相互参照:MIM:603248;NP_001194.1;NM_001203_1
【0021】
(2) E16 (LAT1、SLC7A5、Genbank受託番号NM_003486) Biochem. Biophys. Res. Commun. 255 (2), 283-288 (1999)、Nature 395 (6699): 288-291 (1998)、Gaugitsch, H.W., et al (1992) J. Biol. Chem. 267 (16): 11267-11273);国際公開2004048938(実施例2);国際公開2004032842(実施例IV);国際公開2003042661(請求項12);国際公開2003016475(請求項1);国際公開200278524(実施例2);国際公開200299074(請求項19;127〜129頁);国際公開200286443(請求項27;222頁、393頁);国際公開2003003906(請求項10;293頁);国際公開200264798(請求項33;93〜95頁);国際公開200014228(請求項5;133〜136頁);米国公開特許2003224454(図3);国際公開2003025138(請求項12;150頁);NP_003477溶質輸送体ファミリ7(カチオンアミノ酸輸送体、y+system)、メンバー5/pid=NP_003477.3 − ヒト。相互参照:MIM:600182;NP_003477.3;NM_015923;NM_003486_1
【0022】
(3) STEAP1 (前立腺の6回膜貫通上皮性抗原、Genbank 受託番号NM_012449) Cancer Res. 61 (15), 5857-5860 (2001)、Hubert, R.S., et al (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96 (25): 14523-14528);国際公開2004065577(請求項6);国際公開2004027049(図1L);EP1394274(実施例11);国際公開2004016225(請求項2);国際公開2003042661(請求項12);米国公開特許2003157089(実施例5);米国公開特許2003185830(実施例5);米国公開特許2003064397(図2);国際公開200289747(実施例5;618〜619頁);国際公開2003022995(実施例9;図13A、実施例53;173頁、実施例2;図2A);NP_036581 前立腺の6回膜貫通上皮性抗原。相互参照:MIM:604415;NP_036581.1;NM_012449_1
【0023】
(4) 0772P (CA125、MUC16、Genbank受託番号AF361486) J. Biol. Chem. 276 (29): 27371-27375 (2001));国際公開2004045553(請求項14);国際公開200292836(請求項6;図12);国際公開200283866(請求項15;116〜121頁);米国公開特許2003124140(実施例16);米国公開特許2003091580(請求項6);国際公開200206317(請求項6;400〜408頁);相互参照:GI:34501467;AAK74120.3;AF361486_1
【0024】
(5) MPF (MPF、MSLN、SMR、拒核球増強因子、メソテリン、Genbank受託番号NM_005823) Yamaguchi, N., et al Biol. Chem. 269 (2), 805-808 (1994)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96 (20): 11531-11536 (1999)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93 (1): 136-140 (1996)、J. Biol. Chem. 270 (37): 21984-21990 (1995));国際公開2003101283(請求項14);(国際公開2002102235(請求項13;287〜288頁);国際公開2002101075(請求項4;308〜309頁);国際公開200271928(320〜321頁);国際公開9410312(52〜57頁);相互参照:MIM:601051;NP_005814.2;NM_005823_1
【0025】
(6) Napi3b (NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質輸送体ファミリ34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、タイプIIナトリウム依存性リン酸輸送体3b、Genbank受託番号NM_006424) J. Biol. Chem. 277 (22): 19665-19672 (2002)、Genomics 62 (2): 281-284 (1999)、Feild, J.A., et al (1999) Biochem. Biophys. Res. Commun. 258 (3): 578-582);国際公開2004022778(請求項2);EP1394274(実施例11);国際公開2002102235(請求項13;326頁);欧州特許第875569号(請求項1;17〜19頁);国際公開200157188(請求項20;329頁);国際公開2004032842(実施例IV);国際公開200175177(請求項24;139〜140頁);相互参照:MIM:604217;NP_006415.1;NM_006424_1
【0026】
(7) Sema 5b (FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7トロンボスポンジンリピート(タイプ1及びタイプ1様)、膜貫通ドメイン(TM)及び短い細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B、Genbank受託番号AB040878) Nagase T., et al (2000) DNA Res. 7 (2): 143-150);国際公開2004000997(請求項1);国際公開2003003984(請求項1);国際公開200206339(請求項1;50頁);国際公開200188133(請求項1;41〜43頁、48〜58頁);国際公開2003054152(請求項20);国際公開2003101400(請求項11);受託:Q9P283;EMBL;AB040878;BAA95969.1。Genew;HGNC:10737;
【0027】
(8) PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA 2700050C12遺伝子、Genbank受託番号AY358628);米国公開特許2003129192(請求項2);米国公開特許2004044180(請求項12);米国公開特許2004044179(請求項11);米国公開特許2003096961(請求項11);米国公開特許2003232056(実施例5);国際公開2003105758(請求項12);米国公開特許2003206918(実施例5);EP1347046(請求項1);国際公開2003025148(請求項20);相互参照:GI:37182378;AAQ88991.1;AY358628_1
【0028】
(9) ETBR (エンドセリンタイプBレセプター、Genbank 受託番号AY275463);Nakamuta M., et al Biochem. Biophys. Res. Commun. 177, 34-39, 1991;Ogawa Y., et al Biochem. Biophys. Res. Commun. 178, 248-255, 1991;Arai H., et al Jpn. Circ. J. 56, 1303-1307, 1992;Arai H., et al J. Biol. Chem. 268, 3463-3470, 1993;Sakamoto A., Yanagisawa M., et al Biochem. Biophys. Res. Commun. 178, 656-663, 1991;Elshourbagy N.A., et al J. Biol. Chem. 268, 3873-3879, 1993;Haendler B., et al J. Cardiovasc. Pharmacol. 20, s1-S4, 1992;Tsutsumi M., et al Gene 228, 43-49, 1999;Strausberg R.L., et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99, 16899-16903, 2002;Bourgeois C., et al J. Clin. Endocrinol. Metab. 82, 3116-3123, 1997;Okamoto Y., et al Biol. Chem. 272, 21589-21596, 1997;Verheij J.B., et al Am. J. Med. Genet. 108, 223-225, 2002;Hofstra R.M.W., et al Eur. J. Hum. Genet. 5, 180-185, 1997;Puffenberger E.G., et al Cell 79, 1257-1266, 1994;Attie T., et al, Hum. Mol. Genet. 4, 2407-2409, 1995;Auricchio A., et al Hum. Mol. Genet. 5:351-354, 1996;Amiel J., et al Hum. Mol. Genet. 5, 355-357, 1996;Hofstra R.M.W., et al Nat. Genet. 12, 445-447, 1996;Svensson P.J., et al Hum. Genet. 103, 145-148, 1998;Fuchs S., et al Mol. Med. 7, 115-124, 2001;Pingault V., et al (2002) Hum. Genet. 111, 198-206;国際公開2004045516(請求項1);国際公開2004048938(実施例2);国際公開2004040000(請求項151);国際公開2003087768(請求項1);国際公開2003016475(請求項1);国際公開2003016475(請求項1);国際公開200261087(図1);国際公開2003016494(図6);国際公開2003025138(請求項12;144頁);国際公開200198351(請求項1;124〜125頁);欧州特許第522868号(請求項8;図2);国際公開200177172(請求項1;297〜299頁);米国公開特許2003109676;米国特許第6518404(図3);米国特許第5773223(請求項1a;段落31〜34);国際公開2004001004;
【0029】
(10) MSG783 (RNF124、推定タンパク質FLJ20315、Genbank受託番号NM_017763);国際公開2003104275(請求項1);国際公開2004046342(実施例2);国際公開2003042661(請求項12);国際公開2003083074(請求項14;61頁);国際公開2003018621(請求項1);国際公開2003024392(請求項2;図93);国際公開200166689(実施例6);相互参照:LocusID:54894;NP_060233.2;NM_017763_1
【0030】
(11) STEAP2 (HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺癌関連遺伝子1、前立腺癌関連タンパク質1、前立腺の6回膜貫通上皮性抗原2、6回膜貫通前立腺タンパク質、Genbank受託番号AF455138) Lab. Invest. 82 (11): 1573-1582 (2002));国際公開2003087306;米国公開特許2003064397(請求項1;図1);国際公開200272596(請求項13;54〜55頁);国際公開200172962(請求項1;図4B);国際公開2003104270(請求項11);国際公開2003104270(請求項16);米国公開特許2004005598(請求項22);国際公開2003042661(請求項12);米国公開特許2003060612(請求項12;図10);国際公開200226822(請求項23;図2);国際公開200216429(請求項12;図10);相互参照:GI:22655488;AAN04080.1;AF455138_1
【0031】
(12) TrpM4 (BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容器電位カチオンチャネル、サブファミリM、メンバー4、Genbank受託番号NM_017636) Xu, X.Z., et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98 (19): 10692-10697 (2001)、Cell 109 (3): 397-407 (2002)、J. Biol. Chem. 278 (33): 30813-30820 (2003));米国公開特許2003143557(請求項4);国際公開200040614(請求項14;100〜103頁);国際公開200210382(請求項1;図9A);国際公開2003042661(請求項12);国際公開200230268(請求項27;391頁);米国公開特許2003219806(請求項4);国際公開200162794(請求項14;図1A−D);相互参照:MIM:606936;NP_060106.2;NM_017636_1
【0032】
(13) CRIPTO (CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、テトラカルチノーマ由来の増殖因子、Genbank受託番号NP_003203又はNM_003212) Ciccodicola, A., et al EMBO J. 8 (7): 1987-1991 (1989)、Am. J. Hum. Genet. 49 (3): 555-565 (1991));米国公開特許2003224411(請求項1);国際公開2003083041(実施例1);国際公開2003034984(請求項12);国際公開200288170(請求項2;52〜53頁);国際公開2003024392(請求項2;図58);国際公開200216413(請求項1;94〜95頁、105頁);国際公開200222808(請求項2;図1);米国特許第5854399(実施例2;段落17−18);米国特許第5792616(図2);相互参照:MIM:187395;NP_003203.1;NM_003212_1
【0033】
(14) CD21 (CR2 (補体レセプター2)又はC3DR (C3d/エプスタインバーウイルスレセプター)又はHs.73792 Genbank 受託番号M26004) Fujisaku et al (1989) J. Biol. Chem. 264 (4): 2118-2125);Weis J.J., et al J. Exp. Med. 167, 1047-1066, 1988;Moore M., et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84, 9194-9198, 1987;Barel M., et al Mol. Immunol. 35, 1025-1031, 1998;Weis J.J., et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 5639-5643, 1986;Sinha S.K., et al (1993) J. Immunol. 150, 5311-5320;国際公開2004045520(実施例4);米国公開特許2004005538(実施例1);国際公開2003062401(請求項9);国際公開2004045520(実施例4);国際公開9102536(図9.1−9.9);国際公開2004020595(請求項1);受託:P20023;Q13866;Q14212;EMBL;M26004;AAA35786.1。
【0034】
(15) CD79b (CD79B、CD79、IGb (免疫グロブリン関連β)、B29、Genbank受託番号NM_000626又は11038674) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2003) 100 (7): 4126-4131、Blood (2002) 100 (9): 3068-3076、Muller et al (1992) Eur. J. Immunol. 22 (6): 1621-1625);国際公開2004016225(請求項2、図140);国際公開2003087768、米国公開特許2004101874(請求項1、102頁);国際公開2003062401(請求項9);国際公開200278524(実施例2);米国公開特許2002150573(請求項5、15頁);米国特許第5644033号;国際公開2003048202(請求項1、306および309頁);国際公開 99/558658、米国特許第6534482号(請求項13、図17A/B);国際公開200055351(請求項11、1145〜1146頁);相互参照:MIM:147245;NP_000617.1;NM_000626_1
【0035】
(16) FcRH2 (IFGP4、IRTA4、SPAP1A (SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C、Genbank受託番号NM_030764) Genome Res. 13 (10): 2265-2270 (2003)、Immunogenetics 54 (2): 87-95 (2002)、Blood 99 (8): 2662-2669 (2002)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98 (17): 9772-9777 (2001)、Xu, M.J., et al (2001) Biochem. Biophys. Res. Commun. 280 (3): 768-775;国際公開2004016225(請求項2);国際公開2003077836;国際公開200138490(請求項5;図18D−1〜18D−2);国際公開2003097803(請求項12);国際公開2003089624(請求項25);相互参照:MIM:606509;NP_110391.2;NM_030764_1
【0036】
(17) HER2 (ErbB2、Genbank受託番号M11730) Coussens L., et al Science (1985) 230(4730): 1132-1139);Yamamoto T., et al Nature 319, 230-234, 1986;Semba K., et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82, 6497-6501, 1985;Swiercz J.M., et al J. Cell Biol. 165, 869-880, 2004;Kuhns J.J., et al J. Biol. Chem. 274, 36422-36427, 1999;Cho H.-S., et al Nature 421, 756-760, 2003;Ehsani A., et al (1993) Genomics 15, 426-429;国際公開2004048938(実施例2);国際公開2004027049(図1I);国際公開2004009622;国際公開2003081210;国際公開2003089904(請求項9);国際公開2003016475(請求項1);米国公開特許2003118592;国際公開2003008537(請求項1);国際公開2003055439(請求項29;図1A−B);国際公開2003025228(請求項37;図5C);国際公開200222636(実施例13;95〜107頁);国際公開200212341(請求項68;図7);国際公開200213847(71〜74頁);国際公開200214503(114〜117頁);国際公開200153463(請求項2;41〜46頁);国際公開200141787(15頁);国際公開200044899(請求項52;図7);国際公開200020579(請求項3;図2);米国特許第5869445号(請求項3;段落31−38);国際公開9630514(請求項2;56〜61頁);欧州特許第1439393号(請求項7);国際公開2004043361(請求項7);国際公開2004022709;国際公開200100244(実施例3;図4);受託:P04626;EMBL;M11767;AAA35808.1。EMBL;M11761;AAA35808.1。抗HER2抗体は以下を含む:ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ、huMAb4D5-8)完全長ヒト化抗HER2(MW145167)、トラスツズマブF(ab’)2=抗HER2酵素処理由来(MW100000)、4D5=完全長マウス抗HER2、ハイブリドーマ由来、rhu4D5=過渡的に発現される完全長ヒト化抗体、rhuFab4D5=組換えヒト化Fab(MW47738)、4D5Fc8=完全長マウス抗HER2、変異FcRn結合ドメインを有する、huMAb4D5-1、huMAb4D5-2、huMAb4D5-3、huMAb4D5-4、huMAb4D5-5、huMAb4D5-6、huMAb4D5-7及び(トラスツズマブ)。
【0037】
(18) NCA (CEACAM6、Genbank受託番号M18728);Barnett T., et al Genomics 3, 59-66, 1988;Tawaragi Y., et al Biochem. Biophys. Res. Commun. 150, 89-96, 1988;Strausberg R.L., et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99:16899-16903, 2002;国際公開2004063709;欧州特許第1439393号(請求項7);国際公開2004044178(実施例4);国際公開2004031238;国際公開2003042661(請求項12);国際公開200278524(実施例2);国際公開200286443(請求項27;427頁);国際公開200260317(請求項2);継承:P40199;Q14920;EMBL;M29541;AAA59915.1。EMBL;M18728;
【0038】
(19) MDP (DPEP1、Genbank受託番号BC017023) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99 (26): 16899-16903 (2002));国際公開2003016475(請求項1);国際公開200264798(請求項33;85〜87頁);日本特許第05003790号(図6−8);国際公開9946284(図9);相互参照:MIM:179780;AAH17023.1;BC017023_1
【0039】
(20) IL20R (IL20Ra、ZCYTOR7、Genbank受託番号AF184971);Clark H.F., et al Genome Res. 13, 2265-2270, 2003;Mungall A.J., et al Nature 425, 805-811, 2003;Blumberg H., et al Cell 104, 9-19, 2001;Dumoutier L., et al J. Immunol. 167, 3545-3549, 2001;Parrish-Novak J., et al J. Biol. Chem. 277, 47517-47523, 2002;Pletnev S., et al (2003) Biochemistry 42:12617-12624;Sheikh F., et al (2004) J. Immunol. 172, 2006-2010;欧州特許1394274(実施例11);米国公開特許2004005320(実施例5);国際公開2003029262(74〜75頁);国際公開2003002717(請求項2;63頁);国際公開200222153(45〜47頁);米国公開特許2002042366(20〜21頁);国際公開200146261(57〜59頁);国際公開200146232(63〜65頁);国際公開9837193(請求項1;55〜59頁);受託:Q9UHF4;Q6UWA9;Q96SH8;EMBL;AF184971;AAF01320.1。
【0040】
(21) Brevican (BCAN、BEHAB、Genbank受託番号AF229053) Gary S.C., et al Gene 256, 139-147, 2000;Clark H.F., et al Genome Res. 13, 2265-2270, 2003;Strausberg R.L., et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 99, 16899-16903, 2002;米国公開特許2003186372(請求項11);米国公開特許2003186373(請求項11);米国公開特許2003119131(請求項1;図52);米国公開特許2003119122(請求項1;図52);米国公開特許2003119126(請求項1);米国公開特許2003119121(請求項1;図52);米国公開特許2003119129(請求項1);米国公開特許2003119130(請求項1);米国公開特許2003119128(請求項1;図52);米国公開特許2003119125(請求項1);国際公開2003016475(請求項1);国際公開200202634(請求項1);
【0041】
(22) EphB2R (DRT、ERK、Hek5、EPHT3、Tyro5、Genbank 受託番号NM_004442) Chan, J. and Watt, V.M., Oncogene 6 (6), 1057-1061 (1991) Oncogene 10 (5): 897-905 (1995)、Annu. Rev. Neurosci. 21:309-345 (1998)、Int. Rev. Cytol. 196:177-244 (2000));国際公開2003042661(請求項12);国際公開200053216(請求項1;41頁);国際公開2004065576(請求項1);国際公開2004020583(請求項9);国際公開2003004529(128〜132頁);国際公開200053216(請求項1;42頁);相互参照:MIM:600997;NP_004433.2;NM_004442_1
【0042】
(23) ASLG659 (B7h、Genbank受託番号AX092328) 米国公開特許20040101899 (請求項2);国際公開2003104399(請求項11);国際公開2004000221(図3);米国公開特許2003165504(請求項1);米国公開特許2003124140(実施例2);米国公開特許2003065143(図60);国際公開2002102235(請求項13;299頁);米国公開特許2003091580(実施例2);国際公開200210187(請求項6;図10);国際公開200194641(請求項12;図7b);国際公開200202624(請求項13;図1A−1B);米国公開特許2002034749(請求項54;45〜46頁);国際公開200206317(実施例2;320〜321頁、請求項34;321〜322頁);国際公開200271928(468〜469頁);国際公開200202587(実施例1;図1);国際公開200140269(実施例3;190〜192頁);国際公開200036107(実施例2;205〜207頁);国際公開2004053079(請求項12);国際公開2003004989(請求項1);国際公開200271928(233〜234頁、452〜453頁);国際公開0116318;
【0043】
(24) PSCA (前立腺幹細胞抗原前駆体、Genbank受託番号AJ297436) Reiter R.E., et al Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95, 1735-1740, 1998;Gu Z., et al Oncogene 19, 1288-1296, 2000;Biochem. Biophys. Res. Commun. (2000) 275(3): 783-788;国際公開2004022709;欧州特許第1394274号(実施例11);米国公開特許2004018553(請求項17);国際公開2003008537(請求項1);国際公開200281646(請求項1;164頁);国際公開2003003906(請求項10;288頁);国際公開200140309(実施例1;図17);米国公開特許2001055751(実施例1;図1b);国際公開200032752(請求項18;図1);国際公開9851805(請求項17;97頁);国際公開9851824(請求項10;94頁);国際公開9840403(請求項2;図1B);受託:O43653;EMBL;AF043498;AAC39607.1。
【0044】
(25) GEDA (Genbank受託番号AY260763);AAP14954脂肪腫HMGIC融合−パートナー様タンパク質/pid=AAP14954.1−ヒト種:ホモサピエンス(ヒト) 国際公開2003054152(請求項20);国際公開2003000842(請求項1);国際公開2003023013(実施例3、請求項20);米国公開特許2003194704(請求項45);相互参照:GI:30102449;AAP14954.1;AY260763_1
【0045】
(26) BAFF-R (B細胞活性化因子レセプター、BLySレセプター3、BR3、Genbank受託番号NP_443177.1);NP_443177 BAFFレセプター/pid=NP_443177.1−ホモサピエンス;Thompson, J.S., et al Science 293 (5537), 2108-2111 (2001);国際公開2004058309;国際公開2004011611;国際公開2003045422(実施例;32〜33頁);国際公開2003014294(請求項35;図6B);国際公開2003035846(請求項70;615〜616頁);国際公開200294852(段落136−137);国際公開200238766(請求項3;133頁);国際公開200224909(実施例3;図3);相互参照:MIM:606269;NP_443177.1;NM_052945_1
【0046】
(27) CD22 (B細胞レセプターCD22-Bアイソフォーム、Genbank受託番号NP-001762.1);Stamenkovic, I. and Seed, B., Nature 345 (6270), 74-77 (1990);米国公開特許2003157113;米国公開特許2003118592;国際公開2003062401(請求項9);国際公開2003072036(請求項1;図1);国際公開200278524(実施例2);相互参照:MIM:107266;NP_001762.1;NM_001771_1
【0047】
(28) CD79a (CD79A、CD79、免疫グロブリン関連α、Igβと共有結合的に相互作用し(CD79B)、IgM分子と表面上で複合体を形成し、B細胞分化に関与するシグナルを伝達するB細胞特異的タンパク質 PROTEIN SEQUENCE Full mpggpgv...dvqlekp (1..226; 226aa)、pI: 4.84、MW: 25028 TM: 2 [P] 遺伝子染色体: 19q13.2、Genbank受託番号NP_001774.10) 国際公開2003088808、米国公開特許20030228319;国際公開2003062401(請求項9);米国公開特許2002150573(請求項4、13〜14頁);国際公開9958658(請求項13、図16);国際公開9207574(図1);米国特許第5644033号;Ha et al (1992) J. Immunol. 148(5): 1526-1531;Mueller et al (1992) Eur. J. Biochem. 22:1621-1625;Hashimoto et al (1994) Immunogenetics 40(4): 287-295;Preud'homme et al (1992) Clin. Exp. Immunol. 90(1): 141-146;Yu et al (1992) J. Immunol. 148(2) 633-637;Sakaguchi et al (1988) EMBO J. 7(11): 3457-3464;
【0048】
(29) CXCR5 (バーキットリンパ腫レセプター1、CXCL13ケモカインによって活性化され、リンパ球移動及び体液性免疫において機能し、HIV−2感染並びに、おそらくAIDS、リンパ腫、メラノーマ及び白血病の発達において働くGタンパク質結合レセプター) PROTEIN SEQUENCE Full mnypltl...atslttf (1..372; 372aa)、pI: 8.54 MW: 41959 TM: 7 [P] 遺伝子染色体: 11q23.3、Genbank受託番号NP_001707.1) 国際公開2004040000;国際公開2004015426;米国公開特許2003105292(実施例2);米国特許第6555339(実施例2);国際公開200261087(図1);国際公開200157188(請求項20、269頁);国際公開200172830(12〜13頁);国際公開200022129(実施例1、152〜153頁、実施例2、254〜256頁);国際公開9928468(請求項1、38頁);米国特許第5440021号(実施例2、段落49−52);国際公開9428931(56〜58頁);国際公開9217497(請求項7、図5);Dobner et al (1992) Eur. J. Immunol. 22:2795-2799;Barella et al (1995) Biochem. J. 309:773-779;
【0049】
(30) HLA-DOB(ペプチドを結合し、CD4+Tリンパ球に対してそれらを提示するMHCクラスII分子(Ia抗原)のβサブユニット) PROTEIN SEQUENCE Full mgsgwvp...vllpqsc (1..273; 273aa, pI: 6.56 MW: 30820 TM: 1 [P] 遺伝子染色体: 6p21.3、Genbank受託番号NP_002111.1) Tonnelle et al (1985) EMBO J. 4(11): 2839-2847;Jonsson et al (1989) Immunogenetics 29(6): 411-413;Beck et al (1992) J. Mol. Biol. 228:433-441;Strausberg et al (2002) Proc. Natl. Acad. Sci USA 99:16899-16903;Servenius et al (1987) J. Biol. Chem. 262:8759-8766;Beck et al (1996) J. Mol. Biol. 255:1-13;Naruse et al (2002) Tissue Antigens 59:512-519;国際公開9958658(請求項13、図15);米国特許第6153408号(段落35−38);米国特許第5976551号(段落168−170);米国特許第6011146号(段落145−146);Kasahara et al (1989) Immunogenetics 30(1): 66-68;Larhammar et al (1985) J. Biol. Chem. 260(26): 14111-14119;
【0050】
(31) P2X5 (細胞外ATPによってゲートされるイオンチャネルであるプリンレセプターP2Xリガンドゲートイオンチャネル5はシナプス伝達及び神経発生に関与し得、欠損すると特発性の排尿筋不安定性の病態生理をもたらしうる) PROTEIN SEQUENCE Full mgqagck...lephrst (1..422; 422aa)、pI: 7.63、MW: 47206 TM: 1 [P] 遺伝子染色体: 17p13.3、Genbank受託番号NP_002552.2) Le et al (1997) FEBS Lett. 418(1-2): 195-199;国際公開2004047749;国際公開2003072035(請求項10);Touchman et al (2000) Genome Res. 10: 165-173;国際公開200222660(請求項20);国際公開2003093444(請求項1);国際公開2003087768(請求項1);国際公開2003029277(82頁);
【0051】
(32) CD72 (B細胞分化抗原CD72、Lyb-2) PROTEIN SEQUENCE Full maeaity...tafrfpd (1..359; 359aa)、pI: 8.66、MW: 40225 TM: 1 [P] 遺伝子染色体: 9p13.3、Genbank 受託番号NP_001773.1) WO2004042346 (claim 65);国際公開2003026493(51〜52頁、57〜58頁);国際公開200075655(105〜106頁);Von Hoegen et al (1990) J. Immunol. 144(12): 4870-4877;Strausberg et al (2002) Proc. Natl. Acad. Sci USA 99:16899-16903;
【0052】
(33) LY64 (ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリのタイプI膜タンパク質であるリンパ球抗原64 (RP105)はB細胞活性化及びアポトーシスを調節し、機能が欠損すると全身性エリテマトーデス患者における疾患活性の増加に関連する) PROTEIN SEQUENCE Full mafdvsc...rwkyqhi (1..661; 661aa)、pI: 6.20、MW: 74147 TM: 1 [P] 遺伝子染色体: 5q12、Genbank受託番号NP_005573.1) 米国公開特許2002193567;国際公開9707198(請求項11、39〜42頁);Miura et al (1996) Genomics 38(3): 299-304;Miura et al (1998) Blood 92:2815-2822;国際公開2003083047;国際公開9744452(請求項8、57〜61頁);国際公開200012130(24〜26頁);
【0053】
(34) FCRH1 (C2タイプIg様及びITAMドメインを含む免疫グロブリンFcドメインの推定レセプターであるFcレセプター様タンパク質1はBリンパ球分化において働きを有しうる) PROTEIN SEQUENCE Full mlprlll...vdyedam (1..429; 429aa)、pI: 5.28、MW: 46925 TM: 1 [P] 遺伝子染色体: 1q21-1q22、Genbank受託番号NP_443170.1) 国際公開2003077836;国際公開200138490(請求項6、図18E−1−18−E−2);Davis et al (2001) Proc. Natl. Acad. Sci USA 98(17): 9772-9777;国際公開2003089624(請求項8);欧州特許第1347046号(請求項1);国際公開2003089624(請求項7);
【0054】
(35) IRTA2 (B細胞発生及びリンパ球発生において役割を有しうる推定免疫レセプターである免疫グロブリンスーパーファミリレセプター転座関連2;いくつかのB細胞悪性腫瘍において転座による遺伝子の制御不能が生じる) PROTEIN SEQUENCE Full mllwvil...assaphr (1..977; 977aa)、pI: 6.88 MW: 106468 TM: 1 [P] 遺伝子染色体: 1q21、Genbank 受託番号NP_112571.1) 国際公開2003024392 (請求項2、図97);Nakayama et al (2000) Biochem. Biophys. Res. Commun. 277(1): 124-127;国際公開2003077836;国際公開200138490(請求項3、図18B−1−18B−2)
【0055】
(36) TENB2(TMEFF2、tomoregulin、TPEF、HPP1、TR、推定膜貫通プロテオグリカン、増殖因子のEGF/ヘレグリンファミリおよびフォリスタチンに関連する);374aa、NCBI受託:AAD55776、AAF91397、AAG49451、NCBI RefSeq:NP_057276;NCBI Gene:23671;OMIM:605734;SwissProt Q9UIK5;Genbank受託番号AF179274;AY358907、CAF85723、CQ782436。国際公開2004074320;日本公開特許2004113151;国際公開2003042661;国際公開2003009814;欧州特許第1295944号(69〜70頁);国際公開200230268(329頁);国際公開200190304;米国公開特許2004249130;米国公開特許2004022727;国際公開2004063355;米国公開特許2004197325;米国公開特許2003232350;米国公開特許2004005563;米国公開特許2003124579;Horie et al (2000) Genomics 67:146-152;Uchida et al (1999) Biochem. Biophys. Res. Commun. 266:593-602;Liang et al (2000) Cancer Res. 60: 4907-12;Glynne-Jones et al (2001) Int J Cancer. Oct 15;94(2): 178-84。
【0056】
本発明の抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)の抗体は、ErbB遺伝子によってコード化されるレセプターに特異的に結合しうる。抗体は、EGFR、HER2、HER3およびHER4から選択されるErbBレセプターに特異的に結合してよい。ADCは、HER2レセプターの細胞外ドメインに特異的に結合しても、HER2レセプターを過剰発現する腫瘍細胞の増殖を阻害してもよい。ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)は、ヒト上皮細胞増殖因子レセプター2タンパク質、HER2(ErbB2)の細胞外ドメイン(ECD)に選択的に結合する(米国特許第5821337号;米国特許第6054297号;米国特許第6407213号;米国特許第6639055号;Coussens et al (1985) Science 230:1132-9;Slamon, et al (1989) Science 244:707-12)。トラスツズマブは、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域(CDR)を有するヒトフレームワーク領域を含むIgG1κ抗体である。トラスツズマブはHER2抗原に結合し、それによってHER2を過剰に発現するヒト腫瘍細胞の増殖を阻害する(Hudziak RM, et al (1989) Mol Cell Biol 9:1165-72;Lewis GD, et al (1993) Cancer Immunol Immunother; 37:255-63;Baselga J, et al (1998) Cancer Res. 58: 2825-2831)。
【0057】
抗体は、様々な技術を用いて測定することができる発色性基質の化学的な変化を触媒する酵素によって標識されるか、コンジュゲートされてよい。例えば、酵素は、分光光度的に測定することができる基質に色彩変化を触媒してよい。あるいは、酵素は基質の発光又は化学発光を変化しうる。発光の変化を定量化するための技術は公知である。化学発光基質は、ジオキセタン基のO−O結合の切断といった化学反応によって電子的に励起されるようになり、その後(例えば化学発光測定器を使用して)測定することができ、又は蛍光アクセプターにエネルギーを供与する光を発しうる。酵素的標識の例は、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;米国特許第4737456号)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン類、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えば西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ等々を含む。抗体に酵素をコンジュゲートさせるための技術は、O'Sullivan et al., Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay, Methods in Enzym. (J. Langone及びH. Van Vunakis編), Academic press, New York, 73: 147-166 (1981)に記載されている。
【0058】
酵素−基質の組合せの例には、例えば以下のものが含まれる:(i) 基質として水素ペルオキシダーゼを有する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、ここで水素ペルオキシダーゼが染料前駆体(例えば、オルソフェニレン(orthophenylene)ジアミン(OPD)又は3,3',5,5'テトラメチルのベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する;(ii) 色素生産性基質としてリン酸パラグラフ-ニトロフェニルを有するアルカリホスファターゼ(AP);及び(iii) 色素生産性基質(例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)又は蛍光発生基質4-メチルウンベリフェリル(methylumbelliferyl)-β-D-ガラクトシダーゼを有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。多数の他の酵素−基質の組合せは当業者にとって利用可能である(米国特許第4275149号;同第4318980号)。
標識は、抗体と直接又は非共有的にコンジュゲートされてよい。例えば、抗体は、ビオチンとコンジュゲートさせることができ、前述した分類のうちの何れかはストレプトアビジンなどのアビジンとコンジュゲートさせることができ、その逆もまた可能である。ビオチンは選択的にアビジンと結合し、したがって、標識はこの間接的な方法でポリペプチド変異体にコンジュゲートさせることができる。
【0059】
薬剤部分
式Iの抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)の薬剤部分(D)は、細胞障害効果又は細胞分裂停止効果を有する任意の化合物、部分又は基を含む。薬剤部分は、マイクロチューブリンインヒビター、有糸分裂インヒビター、トポイソメラーゼインヒビター又はDNA干渉物質として機能しうる化学療法剤と、癌療法のために用いられる特別なものとを含む。式Iの抗体−薬剤コンジュゲートの薬剤部分は、他の作用機構を有してもよく、いずれかのメカニズムに限定されるものではない。
式Iの抗体薬剤コンジュゲート(ADC)の薬剤部分(D)は以下の構造を有するメイタンシノイドを含む:

このとき、波線は抗体薬剤コンジュゲート(ADC)のリンカー(L)へのDの硫黄原子の共有結合を示す。RはそれぞれH又はC−Cアルキルであってよい。硫黄原子にアミド基を付着しているアルキレン鎖はメチル、エチル又はプロピルであってよく、すなわち、mは1、2又は3である。
【0060】
メイタンシン化合物は、マイクロチューブリンタンパク質であるチューブリンの重合阻害により有糸分裂中の微小管の形成を阻害することによって細胞増殖を阻害する(Remillard et al (1975) Science 189:1002-1005;米国特許第5208020号)。メイタンシンは、東アフリカの低木Maytenus serrataから単離され、メトトレキセート、ダウノルビシンおよびビンクリスチンのような従来の癌化学療法剤の100〜1000倍もの細胞障害性があることが示された(米国特許第3896111号)。その後、いくつかの微生物もメイタンシノール及びメイタンシノールのC−3エステルといったメイタンシノイドを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。また、メイタンシノールおよびメイタンシノールの類似体の合成C−3エステルも報告された(Kupchan et al., (1978) J. Med. Chem. 21:31-37;Higashide et al. (1977) Nature 270:721-722;Kawai et al., 32 Chem. Pharm. (1984) Bull. 3441-3451)。C−3エステルが調製されているメイタンシノールの類似体は、芳香族環(例えばデクロロ)上に、又は、C−9、C−14(例えばヒドロキシル化したメチル基)、C−15、C−18、C−20及びC-4,5に修飾を有するメイタンシノールを含む。天然に生じる及び合成のC−3エステルは2つのグループに分類されうる:(a) 単一のカルボン酸を有するC−3エステル(米国特許第4248870号;米国特許第4265814号;米国特許第4308268号;米国特許第4308269号;米国特許第4309428号;米国特許第4317821号;米国特許第4322348号;及び米国特許第4331598号)と、(b) N-メチル-L-アラニンの誘導体を有するC-3エステル(米国特許第4137230号及び米国特許第4260608号;及びKawai et al., (1984) Chem. Pharm. Bull. 32:3441-3451)。グループ(b)のエステルは、グループ(a)のエステルより非常に細胞障害作用があることが明らかとされた。
【0061】
他の薬剤部分と同様に、メイタンシノイド薬剤部分のすべての立体異性体、Dのキラル炭素でのR及びS配位の組合せは、本発明の化合物のために考慮される。一実施態様では、メイタンシノイド薬剤部分(D)は以下の立体化学を有する:

メイタンシノイド薬剤部分の例示的な実施態様は、以下を含む:DM1、(CR)=CHCH;DM3、(CR)=CHCHCH(CH);及びDM4、(CR)=CHCHC(CH)、以下の構造を有する:



【0062】
また、抗体薬剤イムノコンジュゲート(ADC)の薬剤部分(D)は、ドラスタチン及びそのペプチジル類似体及び誘導体、アウリスタチン(auristatin)を含む(米国特許第5635483号;同第5780588号)。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke et al (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌性活性(Pettit et al (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。アウリスタチンペプチドである、アウリスタチンE(AE)とドラスタチンの合成類似体であるモノメチルアウリスタチン(MMAE)(国際公開02/088172)は、(i) キメラモノクローナル抗体cBR96(カルチノーマ上のルイスYに特異的)、(ii) 血液系悪性腫瘍上のCD30に特異的であるcAC10(Klussman, et al (2004), Bioconjugate Chemistry 15(4): 765-773;Doronina et al (2003) Nature Biotechnology 21(7): 778-784;Francisco et al (2003) Blood 102(4): 1458-1465;米国公開特許2004/0018194)、(iii) CD20発現癌及び免疫不全の治療のためのリツキサンなどの抗CD20抗体、(iv) 結腸直腸癌の治療のための抗EphB2R抗体2H9(Mao et al (2004) Cancer Research 64(3): 781-788)、(v) Eセレクチン抗体(Bhaskar et al (2003) Cancer Res. 63: 6387-6394)、(vi) トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、米国公開特許2005/0238649)、及び(vi) 抗CD30抗体(国際公開03/043583)へ、薬剤成分としてコンジュゲートされていた。アウリスタチンEの変異体は、米国特許第5767237号及び米国特許第6124431号において開示され、モノクローナル抗体にコンジュゲートされるモノメチルアウリスタチンEが含まれる(2004年3月28日に発表されたSenter et al, Proceedings of the American Association for Cancer Research, Volume 45, Abstract Number 623)。アウリスタチン類似体MMAEおよびMMAFは、様々な抗体にコンジュゲートされている(米国公開特許2005/0238649)。
【0063】
式Iの抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)のモノメチルアウリスタチン薬剤部分(D)は、アウリスタチン薬剤部分であるMMAE(米国特許第7090843号)およびMMAF(米国公開特許2005/0238649)を含む。MMAE又はMMAF薬剤部分のN末端は、抗体の設計されたシステインに、リンカーを介して共有結合的に付着される。


他の例示的なアウリスタチン薬剤部分には、ペンタペプチドアウリスタチン薬剤成分のC末端にフェニルアラニンカルボキシ修飾を有するモノメチルバリン化合物(国際公開2007/008848)及びペンタペプチドアウリスタチン薬剤成分のC末端にフェニルアラニン側鎖修飾を有するモノメチルバリン化合物(国際公開2007/008603)が含まれる。
【0064】
リンカー
リンカーは、式Iの抗体−薬剤コンジュゲートに従って抗体(Ab)を薬剤成分(D)に共有結合的に接着させる原子の鎖又は共有結合を含む、二官能性ないしは多機能性の化学部分である。抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)は、薬剤及び抗体への結合について反応性機能を有するリンカー(L)を用いて都合良く調製されうる。リンカーは、チオール又はアミノといった抗体上に存在する求核基と反応する求電子基を有してもよい。抗体のシステインチオールは、リンカー上の求電子基と反応することができ、リンカーとの共有結合を形成する。有用な求電子基には、マレイミドおよびハロアセトアミド基を含むが、これらに限定されるものではない。また、リンカーは、アルキルジイルといった二価のラジカル、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキルオキシ(例としてポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシ)とアルキラミノ(例えばポリエチレンアミノ、JeffamineTM)の繰り返しユニットである−(CR)O(CR)−などの部分、及び、スクシナート、スクシンアミド、ジグリコレート、マロネート及びカプロアミドを含む二酸エステル及びアミドが含まれる。抗体上の有用な求核基には、スルフヒドリル、ヒドロキシルおよびアミノ基が含まれるがこれらに限定されるものではない。
他の実施態様では、リンカー試薬又は薬剤-リンカー試薬は、抗体上に存在する求電子基と反応することができる反応性の求核官能基を有し、共有結合を形成する。抗体上の有用な求電子基には、アルデヒドおよびケトンカルボニル基が含まれるが、これらに限定されるものではない。リンカー上の有用な求核基には、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジドが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
リンカーは一又は一又は複数のリンカー成分から成ってもよい。例示的なリンカー成分には、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン−シトルリン(「val−cit」又は「vc」)、アラニン−フェニルアラニン(「ala−phe」又は「af」)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、N-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)、一又は複数の繰り返しユニットとしてのエチレンオキシ−CHCHO−(「EO」又は「PEO」)が含まれる。更なるリンカー成分は当分野において周知であり、そのいくつかを本明細書中に記載する。
他の実施態様では、抗体は、一又は複数のスルフヒドリル基を導入するために化学的に改変されうる一又は複数のリジン残基を有する。抗体ユニットは、スルフヒドリル基の硫黄原子を介してリンカーユニットに結合する。リジンを改変するために用いられうる試薬には、限定するものではないが、N-スクシンイミジル S-アセチルチオアセテート(SATA)及び2-イミノチオラン ヒドロクロライド(トラウト試薬)が含まれる。
【0066】
他の実施態様では、抗体は、一又は複数のスルフヒドリル基を持つように化学的に改変されうる一又は複数の糖質基を持っていてもよい。抗体ユニットは、リンカー、例としてストレッチャーユニットに、スルフヒドリル基の硫黄原子を介して結合する。さらに他の実施態様では、抗体は、酸化されて、アルデヒド(-CHO)基を提供しうる一又は複数の糖質基を持っていてもよい(例としてLaguzza, et al, J. Med. Chem. 1989, 32(3), 548-55を参照)。対応するアルデヒドはストレッチャー上の反応部位と結合しうる。抗体上のカルボニル基と反応しうるストレッチャー上の反応部位には、限定するものではないが、ヒドラジンおよびヒドロキシルアミンが含まれる。薬剤ユニットの接着又は会合のためにタンパク質を改変するための他のプロトコールは、Coligan et al., Current Protocols in Protein Science, vol. 2, John Wiley & Sons (2002)に記載されており、該文献は出典明記によって本明細書中に援用される。
他の実施態様では、リンカーは、溶解性又は反応性を調節した基と置換してもよい。例えば、ADCを調製するために用いる合成手段に応じて、スルホン酸(−SO)又はアンモニウムなどの荷電性の置換基は、試薬の水溶性を増し、抗体又は薬剤成分とリンカー試薬とのカップリング反応を容易にしうるか、又はDとAb−L(抗体−リンカー)とのカップリング反応、又はAbとD−L(薬剤−リンカー試薬)とのカップリング反応を容易にしうる。
【0067】
本発明の化合物は、限定するものではないが、以下のクロスリンカー試薬:BMPEO、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾアート)、例えばPierce Biotechnology, Inc.から市販されているビスマレイミド試薬:DTME、BMB、BMDB、BMH、BMOE、BM(PEO)、及びBM(PEO)にて調製されるADCを特別に意図する。ビスマレイミド試薬により、連続した様式又は同時の様式で、チオール含有薬剤成分、標識又はリンカー中間生成物に抗体のシステイン残基のチオール基が付着することができる。抗体、薬剤部分、標識又はリンカー中間生成物のチオール基と反応することができるマレイミド以外の他の官能基には、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネート及びイソチオシアネートが含まれる。また、有用なリンカー試薬は、Molecular Biosciences Inc.(Boulder, CO)などの他の商業的供給源により得ることができるし、Toki et al (2002) J. Org. Chem. 67:1866-1872;Firestone et alの米国特許第6214345号;国際公開02/088172;米国特許公開2003130189;米国公開特許2003096743;国際公開03/026577;国際公開03/043583;及び国際公開04/032828に記載の手段に従って合成してもよい。


【0068】
Klussman, et al (2004), Bioconjugate Chemistry 15(4): 765-773の766頁のコンジュゲーション法に従って、システイン改変抗体の反応性チオール基(米国公開特許2007/0092940)は、リンカー試薬又は薬剤−リンカー中間体と、マレイミド又はα-ハロカルボニルといった求電子官能基と、反応する。
【0069】
抗体薬剤コンジュゲート
式IのADCの実施態様には、米国公開特許2005/0238649にて開示されるように、モノメチルアウリスタチン薬剤部分(D)であるMMAEおよびMMAFと、マレイミドカプロイル(MC)、バリン-シトルリン(vc)およびパラ-アミノベンジルカルバモイル(PAB)サブユニットを含むリンカーとが含まれる。例示的なADCは以下を含む:




【0070】
上記の例示的なモノメチルアウリスタチンADCは、反応性のシステインチオール基を有する抗体、例えばシステイン改変抗体(米国公開特許2007/0092940)と、薬剤リンカー試薬MC−val−cit−PAB−MMAF、MC−val−cit−PAB−MMAE、MC−MMAFおよびMC−MMAEそれぞれから調製されてよい(Doronina et al (2003) Nature Biotechnology 21(7): 778-784;Francisco et al (2003) Blood 102:1458-1465;米国公開特許2005/0238649)。
システイン改変抗体および対応するADCの特定の実施態様を図3に示し、上から下へ順に、軽鎖に位置する2つのMMAE薬剤部分−Thio Hu 抗HER2 4D5 LC V205C−MC−vc−PAB−MMAE;重鎖に位置する2つのMMAE薬剤部分−Thio Hu 抗HER2 4D5 HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE;重鎖のFc領域に位置する2つのMMAE薬剤部分−Thio Hu 抗HER2 4D5 Fc S400C−MC−vc−PAB−MMAE;Thio Hu 抗HER2 4D5 Fc S400C;及び、コンジュゲートのためのシステイン改変抗体:Thio Hu 抗HER2 4D5 Fc S400C。システイン改変抗体は、米国公開特許2007/0092940に従って設計され、選択される。
【0071】
式IのADCの実施態様は、米国公開特許2005/0276812に開示されるように、メイタンシノイド薬剤部分(D) DM1、DM3およびDM4と、SPP、SPDBおよびSMCCといったリンカー試薬から形成されるリンカーとを含む。例示的な抗体−薬剤コンジュゲートは、以下の


を含む。
【0072】
DM1がBMPEOリンカーを介して抗体のチオール基に結合している例示的な抗体薬剤コンジュゲートは、以下の構造を有する:

ここで、nは0、1又は2であり、pは1、2、3又は4である。
【0073】
薬剤ローディング(薬剤負荷、Drug Loading)
薬剤ローディング値は、式Iの分子において、抗体当たりの薬剤部分の数であるpによって表される。式IのADCの組成物には、1からおよそ8の薬剤とコンジュゲートされた抗体の混合物が含まれる。抗体と薬剤−リンカー試薬とのコンジュゲート又は抗体−リンカーと薬剤試薬とのコンジュゲートから生じる抗体−薬剤コンジュゲートの混合物は、コンジュゲート条件に応じて、およそ1からおよそ8の平均薬剤ローディング値を有するものとして特徴付けられる。抗体を薬剤部分にコンジュゲートすることによるADCの調製により、一又は複数の抗体に結合した薬剤を持つ生成分子の分布が生じ得、この抗体は薬剤部分に結合されておらず、p=0である。コンジュゲート反応からのADCの調製において抗体当たりの薬剤の平均数は、本発明の方法、すなわち親和性質量分析及びELISAアッセイによって特徴付けられうる。ELISAによって、あるADC調製でのpの平均値が決定されうる(Hamblett et al (2004) Clinical Cancer Res. 10: 7063-7070;Sanderson et al (2005) Clinical Cancer Res. 11: 843-852)。しかしながら、p(薬剤)値の分布は、ELISAの抗体−抗原結合および検出限界によって識別可能でない。また、抗体−薬剤コンジュゲートの検出のためのELISAアッセイは、薬剤部分が重鎖又は軽鎖断片又は特定のアミノ酸残基といった抗体に付着しているところを決定しない。この重要な分布パラメータは、ADC組成物の個々の分子の分離およびそれらの特徴づけと定量化を有する本発明の方法によって決定されてよい。試料の成分の分離は、方法の分離培地工程時、そして、質量分析工程の間に起こる。本発明の方法の分離培地工程の高い選択性により、複合した異質な生物学的試料から、それぞれのADC成分の分離と精製が達成される。本発明の方法の質量分析工程の解像度と精度が高いので、分離されるADC成分の検出と定量化が達成される。
【0074】
本発明の方法は、ADCの抗体当たりの結合した薬剤(ローディング)の量と、重鎖及び軽鎖といった断片上の薬剤部分の分布を決定し、さらに、抗体のサブ断片座又は特定のアミノ酸残基で共有的に付着した薬剤部分を位置づけることができる。
あるADCでは、pは抗体上の付着部位の数によって限定されうる。例えば、付着がシステインチオールである場合、上記の例示的な実施態様のように、抗体はたった1つ又は複数のシステインチオール基を有してもよいし、付着しうるリンカーによってたった1つ又は複数の十分に活性なチオール基を有してもよい。リジンといった反応性の低いアミノ酸残基は、コンジュゲートさせる抗体に多くあるが、反応せず、薬剤部分又は薬剤−リンカー試薬との反応に利用されない。薬剤ローディングが高い、例えばp>5であると、特定の抗体−薬剤コンジュゲートの凝集、難溶性、毒性又は細胞透過性の喪失が起こりうる。
【0075】
典型的に、理論的な最大よりも少ない薬剤部分がコンジュゲート反応の間に抗体にコンジュゲートされる。抗体は、例えば、薬剤−リンカー中間体又はリンカー試薬と反応しない多くのリジン残基を含みうる。最も反応性の高いリジン基のみがアミン−反応性リンカー試薬と反応しうる。また、最も反応性の高いシステインチオール基のみがチオール−反応性リンカー試薬と反応しうる。一般に、抗体は薬剤部分に結合しうる多くの遊離した反応性のシステインチオール基を含まない。抗体のほとんどのシステインチオール残基はジスルフィド架橋として存在し、部分的ないしは完全に還元な条件下で、ジチオトレイトール(DTT)又はトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロライド(TCEP)などの還元剤により還元される。さらに、抗体は、変性又は部分的な変性条件下に曝されるとリジンやシステインなどの反応性の求核基を現しうる。ADCのローディング(薬剤/抗体比率)は、例えば、(i) 抗体に対して薬剤−リンカー中間体又はリンカー試薬のモル過剰量を限定する、(ii) コンジュゲートの反応時間又は温度を限定する、及び(iii) システインチオール修飾のための還元条件を部分的又は完全に限定することによるなどの、様々なパラメータによって制御されうる。
抗体の一又は複数の求核基が薬剤−リンカー中間体又はリンカー試薬の後に薬剤部分試薬と反応する場合、その結果生じる生成物は、抗体に付着した薬剤部分の分布、例えば1、2、3などとのADC化合物の混合物である。ポリマー逆相(PLRP)及び疎水性相互作用(HIC)といった液相クロマトグラフィ法は、薬剤ローディング値によって混合物中の化合物を分離しうる。単一の薬剤ローディング値(p)を有するADCの調製物は単離されうる("Effect of drug loading on the pharmacology, pharmacokinetics, and toxicity of an anti-CD30 antibody-drug conjugate", Hamblett, K.J., et al, Abstract No. 624, American Association for Cancer Research;2004 Annual Meeting, March 27-31, 2004, Proceedings of the AACR, Volume 45, March 2004;"Controlling the Location of Drug Attachment in Antibody-Drug Conjugates", Alley, S.C., et al, Abstract No. 627, American Association for Cancer Research;2004 Annual Meeting, March 27-31, 2004, Proceedings of the AACR, Volume 45, March 2004)。しかしながら、薬剤部分は抗体上の異なる部位でリンカーにより付着されうるので、これら単一ローディング値のADCは依然として不均質な混合物であるかもしれない。
【0076】
抗体薬剤コンジュゲートの投与
本発明の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)は、治療される状態に適切な任意の手段によって生物学上の供給源と接触させるか又は投与してよい。典型的に、ADCは、非経口的、すなわち注入、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外に哺乳動物に投与される。式IのADCと接触、すなわち投与されうる生物源は、(i) 哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル又はヒト;(ii) 哺乳類の組織;及び(iii) 培養細胞を含む。生物学的試料は、1回、または、時限であるか、間欠的であるか、ランダムな間隔で、生物源から採取される。生物学的試料は、(i) 血液、胆汁、尿又は糞便;(ii) 組織抽出物;及び(iii) 細胞培養物、細胞溶解物又は細胞抽出物を含む。
本発明の親和性キャプチャLC−MS法は、抗体−薬剤コンジュゲート化合物の毒性のメカニズムを決定するために、組織分析法で使用されてよい。
【0077】
薬学的製剤
本発明の治療上の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)の薬学的製剤は、典型的に、薬学的に許容可能な非経口用ベヒクルと共に単位用量注入用形態で、非経口的投与、すなわちボーラス、静脈内、腫瘍内注入のために調製される。所望の純度を持つ抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)は、場合によって、薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤又は安定化剤と、凍結乾燥又は水溶液の形態に混合される(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。
許容される希釈剤、担体、賦形剤及び安定化剤は、用いられる用量と濃度で生物源レシピエントに非毒性であり、ホスフェート、シトレート及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンズエトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリシン等のアミノ酸;グアールゴムおよびデキストリンを含む、単糖、二糖および他の炭水化物;グルコース、マンノース、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトールといった糖質;EDTA等のキレート化剤;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。例えば、凍結乾燥した抗ErbB2抗体製剤は国際公開97/04801に記載されており、出典明記によって本明細書中に特別に援用される。
【0078】
また活性成分は、例えばコアセルベーション技術あるいは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、コロイド状ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルション、ナノ-粒子及びナノカプセル)に、あるいはマクロエマルションに捕捉させてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示されている。
徐放性調製物を調製してもよい。徐放性調製物の好ましい例は、ADCを含む疎水性固体ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリクスは成形物、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えばLUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフィア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシブチル酸が含まれる。
【0079】
抗体薬剤コンジュゲートの代謝産物
代謝産物が先行技術に対して新規性及び非自明性を有する限りにおいて、本明細書中に記載のADC化合物のインビボ代謝産物も、本発明の権利内である。このような生成物は、投与された化合物の、例えば酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化、酵素切断などから生じうる。したがって、本発明は、代謝産物が生じるために十分な時間、本発明の化合物を哺乳動物と接触させることを含む方法によって生成される新規の自明でない化合物を包含する。
典型的には、代謝産物は、ラット、マウス、モルモット、サルなどの動物又はヒトに検出可能な用量(例えば、およそ0.5mg/kg以上)で抗体−薬剤コンジュゲート混合物を投与し、代謝が生じるために十分な時間(典型的にはおよそ30秒から30時間)をおいて、尿、血液又は他の生体試料から代謝された生成物を単離することによって同定される。代謝産物の構造は本発明の質量分析法によって決定される。
【0080】
薬物動態
半減期、クリアランス、曲線下面積(AUC)、及び分布容積を含む哺乳動物における薬物動態(PK)定量のための治療剤の循環量のモニタリングは、安全性/毒性限界及び適切な投薬計画を樹立するために必要である(Welling, P. (1997) Pharmacokinetics Processes, Mathematics, and Applications, 2版, American Chemical Society, Washington, DC)。生物学的利用能は、投与された化合物が投与投薬形態から全身循環に達する度合いであり、通常は投与された用量のパーセントとして表される。ある化合物の半減期は、該化合物のピーク血漿中濃度の50%が排出又は生体内分解(代謝)によって除去されるのに必要な時間である。該治療指数は、所望される治療活性と所望されない毒性副作用間の選択性を表す。本発明の方法による薬物動態測定値は、抗体及び抗体・薬剤コンジュゲート(ADC)の吸収、分布、代謝、及び排出(ADME)を明らかにするものである。
インビボ投与されると、抗体・薬剤コンジュゲートは、加水分解、薬剤部分切断、抗体変性、グルクロン酸抱合、酸化、又は他の代謝分解事象を被る場合がある。これらの事象を精確に特徴付け、その産物を測定するために、ビーズベースのアフィニティ捕獲及び質量分析法が開発される。
【0081】
生物学的試料の処理(プロセシング)
式Iの抗体・薬剤コンジュゲート(ADC)化合物と場合によっては式Iの抗体(ここで、pは0である)、又は抗体断片又はその代謝産物を、哺乳動物、組織、細胞培養物、血漿又は血清から選択される生物学的供給源に投与し、又はこれと接触させる。血清及び血漿試料からの分析は、その高いプロテオミクスバックグラウンド、つまり多くのタンパク質及び他の分析物のために問題があることは知られている。分、時間、日にわたる所定の時間の後に、式Iを有する抗体・薬剤コンジュゲート化合物、又はその断片もしくは代謝産物を含有する生物学的試料を集める。該生物学的試料は、シリンジ又はカニューレで液を抜き出すことを含む任意の手段によって集めることができる。該生物学的試料は、血液又は血液生成物、例えば血清、血漿等、脳脊髄液又は他の体液、例えば唾液、尿、リンパ液、胆汁、糞便、汗、又は呼気でありうる。
処方、固定、遠心分離、単離、消化、血球凝固の誘導又は防止、加水分解、又は精製を含む一般的な手順によって生物学的試料を処理して分析試料を形成する。
生物学的試料の処理は、試料成分の分離を妨げ、又はデータ収集又は解析を不明瞭にしうる不純物を除去し、試料不均一性を低減させるものである。あるいは、又は加えて、プロセシングは、試料の取り扱いを単純化し、分解から保存し、試料容積を最小化し、又は質量分析解析において興味ある試料成分(分析物)を選択する。あるいは、又は加えて、プロセシングは、生物学的試料を、薬物代謝又は薬物動態効果の測定において興味深い代謝産物、断片、又は誘導体に転換する。
【0082】
捕獲処理がなされた分析試料
式Iの抗体・薬剤コンジュゲート(ADC)化合物と場合によっては式Iの抗体(ここで、pは0である)、又は抗体断片又はその代謝産物を、ビーズがADCの抗体又は薬剤に特異的な固定化抗原を有する免疫親和性ビーズに捕捉せしめる。投与された抗体・薬剤コンジュゲートの抗体に特異的な抗原をビオチン化し、強いビオチン-ストレプトアビジン相互作用(K=10−15M)によってストレプトアビジン被覆常磁性ビーズに結合させる。図1aはECD捕獲と称される一実施態様を例証している。抗体(MAb)及び抗体・薬剤コンジュゲート(ADC)は、磁石に接触したストレプトアビジンに結合しているビオチン化EDCタンパク質のECD(細胞外ドメイン)に結合する。図1bは、抗体(MAb)及び抗体・薬剤コンジュゲート(ADC)が、ビーズに共有的に結合しているECDタンパク質のECD(細胞外ドメイン)に結合するECD捕獲の他の実施態様を例証する。ビーズはカラム形式に又はウェル中に緩く設けられうる。図2は、抗体・薬剤コンジュゲート(ADC)が、磁石に接触したストレプトアビジン被覆常磁性ビーズに結合しているビオチン化抗薬剤モノクローナル抗体(ビオチン-抗薬剤MAb)に結合する抗薬剤部分抗体捕獲の他の実施態様を例証する。
免疫親和性ビーズは、多孔性ポリマーモノリスを含み得、捕集リザーバと流体が流れるように連通しているフロースルーチャネルに設けられうる。ビーズは、生物学的供給源からの試料が一端又はオリフィスに導入され、試料が他端又はオリフィスから溶出されるカラム又は漏斗のようなフロースルー容器に収容されてもよい。免疫親和性ビーズは、それぞれが別個の捕集リザーバに連通させられた複数のフロースルー容器に分布せしめられてもよい。容器及びリザーバは、12×8の行列の96マイクロタイターウェル形式、又は自動化及び結果の再現性のために24×16の行列の384マイクロタイターウェル形式に構成されうる。
【0083】
抗体・薬剤コンジュゲート組成物を投与された哺乳動物(生物学的供給源)からの血漿又は血清試料を、手作業のピペット操作により又は自動化されたロボット分配によってビーズに塗布する。ビーズは、ウェル又は他の容器に設けられ、又は試料が一端又はオリフィスに導入され、洗浄溶出物又は溶出試料が他端又はオリフィスから溶出されるカラム又は他のフロースルー容器に収容されてもよい。ビーズ結合抗原に特異的な試料成分が結合せしめられる。ビーズを洗浄して非特異的タンパク質及び他の非特異的試料成分をすすぐ。結合した抗体はビーズ上で例えばPNGaseFで脱グリコシル化されうる。結合した試料成分は試料プレート中に溶出され得、分離されたものは容器又はウェルに収容される。溶出した試料はついで手作業のピペット操作により又はロボット移送によって対処され、逆相クロマトグラフィーによって分離され得、分離された試料成分が質量分析計によって分析される。
ストレプトアビジン被覆常磁性ビーズを使用する理論的根拠は、(i)強いストレプトアビジン−ビオチン相互作用(K=10−15M)、(ii)固定化ストレプトアビジン/ビオチン化分析物が立証された方法であること、(iii)高い結合能(インタクトなタンパク質に対して十分な材料)、(iv)低い非特異的結合、(v)質量分析に適合した溶媒を用いた試料の溶出、(vi)ビーズからの良好な試料回収、及び(vii)使用の容易性及び自動化への受け入れ性である。
例示的な実施態様では、生物学的試料はトリプシン消化で消化されうる。トリプシン消化では、試料はDDTで還元され、ヨード酢酸ナトリウムでS−カルボキシメチル化され、ついでトリプシンで消化されうる。消化された試料は、(i)逆相HPLC、例えばNucleosil C18カラム;(ii)サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えばTSK3000SWxLカラム;又は(iii)TSKボロン酸カラムを使用するボロン酸アフィニティクロマトグラフィーによって分析されうる。
【0084】
試料成分の分離
分析試料を形成するために、生物学的試料を分離溶液に適用して、一を越える試料成分の分離をなさしめることができる。分離方法は、アフィニティ、クロマトグラフィー、及び電気泳動法を含む。アフィニティ法は、アフィニティクロマトグラフィー、吸着、及び固定化アフィニティマトリックスを含む。クロマトグラフィー法は、HPLC、疎水性相互作用(HIC)、アニオン交換、カチオン交換、逆相、順相、イオン対逆相、薄層、キャピラリーフロー、及びサイズ排除を含む。電気泳動法は、単一次元、スラブゲル、キャピラリー、ポリアクリルアミド、変性、天然、自由溶液、紙、2次元、等電点電気泳動、及び勾配電位を含む。他の分離方法は、透析、遠心分離、遠心沈降、浮選、沈降、免疫沈降、及びゲル濾過を含む。
分離方法は、限定しないが、溶出時間、疎水性、親水性、泳動時間、割合、速度、クロマトグラフィー保持時間、溶解度、分子容積又はサイズ、正味荷電、荷電状態、イオン電荷、等電点、解離定数(pKa)、抗体親和性、電気泳動移動度、イオン化ポテンシャル、双極子モーメント、水素結合能、及び気相中におけるイオン移動度を含む一又は複数の物理化学的性質による生物学的試料の成分の分離を行うことができる。
質量分析計入口装置中へのキャピラリーフロー注入による低い流量により、質量検出の感度を高め、例えばインタクトなタンパク質及び抗体・薬剤コンジュゲートのような低濃度分析物及び高分子量種を検出し特徴付けることができる。
【0085】
分離された試料成分の質量分析
質量分光分析のための抗体・薬剤コンジュゲート試料の調製は、一般に、知られている技術に従って実施されうる。“Modern Protein Chemistry: Practical Aspects”, Howard, G.C.及びBrown, W.E.編(2002) CRC Press, Boca Raton, Flを参照のこと。
本発明の方法は生物学的試料から由来する抗体混合物の分析に適しており、成分を連続的に又はバッチ形式で溶出せしめ、又は質量分析計によって直接検出せしめるアフィニティ又はクロマトグラフィーを含む一又は複数のプロセスにより、混合物の異なった化学成分が、最初に単離され、分離され、又は部分的に分離される。断片化、脱アミド、グリケーション、酸化、部分的配列情報、例えばN末端及びC末端、二量体及び凝集状態を含む抗体の様々な構造的特徴及び性質を、質量分光分析から解明することができる。生物学的試料中の一又は複数の化学成分は、投与される抗体・薬剤コンジュゲートが既知の配列、構造、及び分子量のものであるので、その精確な質量の測定によって高度に特異的な形で特徴付けることができる。
【0086】
高質量精度、高感度、及び高解像度を可能にする様々な質量分析システムが当該分野で知られており、本発明の方法において用いることができる。かかる質量分析計の質量分析器(マスアナライザー)は、限定しないが、四重極型(Q)、飛行時間型(TOF)、イオントラップ、磁場型又はFT−ICR又はその組合せを含む。質量分析計のイオン源は、主として試料分子イオン、又は疑似分子イオン、及び所定の特徴付け可能なフラグメントイオンを生じなければならない。かかるイオン源の例は、大気圧イオン化源、例えばエレクトロスプレーイオン化(ESI)及び大気圧化学イオン化(APCI)及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を含む。ESIとMALDIは、質量分光分析に対してタンパク質をイオン化するための二種の最も一般的に用いられている方法である。ESIとAPCIは、LC/MSによる小分子の分析のために最も一般的に使用されるイオン源技術である(Lee, M. “LC/MS Applications in Drug Development” (2002) J. Wiley & Sons, New York)。
【0087】
表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)は高スループットの質量分析を可能にする表面ベースのイオン化技術の一例である(米国特許第6020208号)。典型的には、SELDIはタンパク質と他の生体分子の複雑な混合物を分析するために使用される。SELDIは、溶液中の例えばタンパク質のような分析物と相互作用する「プロテインチップ」のような化学的に反応性の表面を用いる。かかる表面は分析物と選択的に相互作用し、それらをその上に固定化する。よって、本発明の分析物はチップ上で部分的に精製され、ついで質量分析計で迅速に分析されうる。基体表面上の異なった部位に複数の反応性部分を設けることにより、スループットが増大されうる。
機能的システムでは、質量分析計は関心ある化学種の質量を、その正確な又は計算された質量の20ppm以内まで、典型的にはその正確な又は計算された質量の5ppm以下まで精確に測定する。市販の質量分析計は、質量スペクトルシグナル強度又はピーク面積が定量的に代表することを担保するために混合物中の複数の成分について十分なスペクトルを獲得することを可能にする頻度で同時に全質量スペクトルをサンプリングし記録することができる。これはまた全ての質量に対して観察される溶出時間が質量分析器によって変更又は歪められないことを担保し、定量的測定値が大量の一過性シグナルを測定する必要性によって損なわれないことを担保するのに役立つであろう。
【0088】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI)
高感度が、増加した分析物イオン化効率のために低流量で達成される(Gale等(1993) Rapid Commun. Mass Spectrom. 7:1017)。よって、分レンジ当たりナノリットルの流量で試料含有液のエレクトロスプレー注入を実施することによって、適切な検量後に精確な定量がもたらされ、質量分析と併用される場合、液中に含まれる分析物に対して高感度がもたらされる。高選択性及び感度をもたらし、MSに対する前工程としての精確な定量分析をもたらす小型化され統合されたマイクロカラム及びアフィニティクロマトグラフィー吸着剤を有するマイクロカラムアレイを含むシステム及び装置が報告されている(米国特許第6811689号;米国特許第6020208号;米国特許第6579719号)。
抗体のような比較的高分子量の化合物の質量は、殆どの質量分析計によって容易に決定される質量電荷比(m/z)(2000までから3000までの典型的なm/z範囲)で検出されうる。エレクトロスプレーイオン化質量分析ESI−MSは、荷電、極性又は塩基性化合物に、また多重に荷電した化合物を優れた検出限界で分析するために特に適している。ESIはよって大きな生体分子、例えば150000又はそれ以上の分子量(MW)の抗体及び抗体・薬剤コンジュゲートの検出及び特徴付けを可能にする。高分子量イオンを用いると、一連の多重に荷電した分子イオンが典型的には観察される。陽イオンの分子量は、測定されたm/z比に電荷数(n)を掛け、カチオン質量(C+)にイオン上の電荷数(n)を掛けたものを引くことによって決定される。
【0089】
ESI法は、インターフェースレンズ電位を制御することによってフラグメンテーションの有無を制御することを可能にする。エレクトロスプレーイオン化(ESI)は、液体分離方法(前工程)並びに質量分光検出法(後工程)と適合性がある(“Electrospray Ionization Mass Spectrometry: Fundamentals, Instrumentation, and Applications”, Cole, R.B.編(1997) Wiley, New York)。
ESI−MSデータは、多数のスキャンを併せて平均化し、データを平滑化して良好なピーク強度及び形状をもたらすことによって獲得されうる。低分子量化合物では、観察される最も多いピークはしばしば陽イオンモードでは[M+H]+イオン、陰イオンモードでは[M−H]−である。二重及び三重に荷電したイオン並びに二量体がまた観察されうる。二重に荷電した陽イオンは質量(MW+2C+)÷2に観察され、ここで、MWは分子量であり、C+はイオン化陽イオン、例えばH+、Na、又はNH4である。非常に低分子量の化合物を除いて、検出されるイオンは多重に荷電される。ESIのソフトな(低イオン化電位)条件のため、典型的には分子イオンだけが観察される。ESIスペクトルは、イオンが有する様々な電荷数のために質量が異なる幾つかの分子イオンピークを有しうる。
【0090】
試料、例えばADC又は他の生体分子の希釈溶液は、ESI−MS分析のための皮下注射針を通してゆっくりとポンプ移送されうる。試料はフロー注入又はLC/MSを介して導入されうる。典型的には、流量は、毎分1マイクロリットル(μl)未満から毎分約1ミリリットル(ml)の範囲である。ESIは、さもないと蒸発又はイオン化が困難な大きな生体分子に特に適している。針は高電圧に保たれ、針端部の強電場が噴霧された溶液を荷電し、荷電した液滴を生じせしめる。荷電した液滴は水を蒸発させ、小オリフィスを通じて真空チャンバー中に移動する分子イオンを最終的に生じる。溶媒蒸発の過程中に、非共有的に結合した複合体が溶液から気相に移動される。(Hu等(1994))。インタクトな気相複合体を維持するためには穏やかな脱溶媒和条件が一般的に必要とされる。イオンが完全に脱溶媒和されることを担保するためにオリフィスを加熱してもよい。あるMSシステムは向流の加熱ガスを用いる。荷電した液滴は、皮下注射針から放出され、真空チャンバーに入る前に溶媒を蒸発させるにつれて収縮する。熱及びガス流を使用して脱溶媒和を助けてもよい。ESI測定に対して必要とされる試料の量は、小さなキャピラリーエレクトロスプレーエミッター、チップの使用により液の流れを減少させることによって低減させることができ、ナノエレクトロスプレーとして知られている方法である。ナノエレクトロスプレー法は1μlの試料に対して約10−30分の間、一定のシグナルを生成しうる。低い流量はイオン効率を増加させ、イオン抑制を低減させることが示されている。ナノエレクトロスプレー法はMS/MSタンパク質研究に頻繁に使用される(Korner等(1996) J. Am. Soc. Mass Spectrom. 7:150-156;Mann, M.及びWilm, M. (1996) Anal. Chem. 68:1-8)。
【0091】
タンパク質のESIは、分子量が増加するにつれて増加する傾向にある電荷数を有する多重に荷電したイオンを生成する。与えられたイオン種上の電荷数は、例えば(i)一電荷が異なる二つの荷電状態を比較し、連立方程式を解き;(ii)同じ電荷を有するが異なった付加質量を有する種を探し;(iii)分離された同位体クラスターに対して質量電荷比を調べるような方法によって決定することができる。ESI及びESI-MSの方法及びこれらの方法を実施するために必要とされるパラメータは当該分野でよく知られている。エレクトロスプレーイオン化法の穏やかさは、インタクトな抗体コンジュゲートを質量分析法によって直接検出することを可能にする。
【0092】
一実施態様では、タンパク質、抗体、抗体断片又は抗体コンジュゲート(大きな分子)のQ1質量スペクトルが、方法の一部として実施される。大きな分子の適切な質のQ1質量スペクトルを得ることができる。タンパク質外被が移動する可能性があるので、クロマトグラフィーに使用される全ての溶媒が新鮮にされ、スペクトルエンベロープを観察された範囲に位置付けるために溶出溶媒に酸が加えられる。≧100000質量単位のタンパク質には、ギ酸のような酸を、溶出溶媒、例えば溶媒A(水)と溶媒B(アセトニトリル)の双方に約0.1%(容量)で使用することができる。より強い酸、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)は、≦100000質量単位のタンパク質に対してA及びB双方の溶媒に対して、0.05%(容量)TFAで使用することができる。ギ酸の量が減少すると、インタクトなグリコシル化抗体、トラスツズマブがより多くの電荷を拾い上げ、エンベロープを更に左に、そして観察された範囲のm/z(1800−3000m/z)にシフトさせる。クラスター分離(DP)電位が約30−120Vから約70−190Vまで増加すると、抗体上の電荷が更に尚増加する。よって、印加される電圧、溶媒組成、及びイオン対形成剤は考慮し調節すべき因子である。クラスター分離電位(DP)を増加(勾配付け)させて最良の電荷イオン範囲を選択するのに十分な分解能を獲得することができる。線形性を、広範囲のm/zにわたって得ることができる。抗体の脱グリコシル化はインタクトな抗体又は重鎖、断片又はADCの定量を支援する。グリコシル化はイオン化効率を低下させるのに影響し、よって感度を減少させる。抗体又は抗体断片コンジュゲートを定量する場合、抗体の脱グリコシル化が質量スペクトルの不均一性を低減させ、感度を増大させ、よって分析を単純化しうる。
【0093】
逆重畳積分表を使用して、定量される各種に対して正確な質量電荷比(m/z)を決定する。逆重畳積分ソフトウェアアプリケーション、例えばAnalystTMQS(Applied Biosystems, Foster City, CA)は市販されており、及び/又は質量分析器と共に提供される。逆重畳積分ソフトウェアは一般に使用者に逆重畳積分質量の表並びにこれらの質量の計算に使用されるm/zイオンの副表を提供する。
【実施例】
【0094】
実施例1 血漿および血清中の抗MUC16抗体−薬剤コンジュゲート化合物の分析
以下の構造を有する抗体MUC16抗体−薬剤コンジュゲートである3A5−MC−vc−PAB−MMAE、「抗MUC16 ADC」:

(ここで、p(DAR)は1、2、3又は4であり、Valはバリンであり、Citはシトルリンであり、Abは3A5のシステイン改変したA118C重鎖変異体である抗MUC16モノクローナル抗体である)を、血漿および血清試料において分析した。3A5抗体変異体は、正常ヒト組織と比較してヒト卵巣上皮癌(EOC)において過剰に発現される細胞表面膜貫通タンパク質であるMUC16の細胞外ドメイン(ECD)上のエピトープを認識し、MUC16への結合により内部移行し、リソソームに輸送され、これによってアウリスタチン薬剤部分MMAEのMUC16陽性腫瘍細胞への標的輸送が達成される(国際公開2007/001851;2007年5月8日に出願の米国特許出願60/916657「CYSTEINE ENGINEERED ANTI-MUC16 ANTIBODIES AND ANTIBODY DRUG CONJUGATES」)。A118C(EU番号付け)変異体は、米国公開特許2007/0092940に従って、薬剤−リンカー試薬によりその最適化されたチオール反応性について選択した。
【0095】
抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)は、以下の免疫親和性ビーズキャプチャ及び質量分析法によって特付けし、血漿又は血清における異なる薬剤−抗体比率(DAR)を有するADC試料成分の相対量を測定した。この方法により試験した濃度範囲(50μlの試料容量中1.25〜50μg/ml)において期待するADC試料成分が成功裏に同定されたことから、親和性キャプチャMS特徴付けの間に選択的な損失はなかったことが示される。異なる種の血漿又は血清において有意なマトリックス効果は観察されなかった。ラット、カニクイザルおよびヒトの血漿からの結果は、5%BSAを含むPBSバッファ中の添加した抗MUC16 ADC混合物から得た結果と同等であった。また、ラットおよびカニクイザルのマトリックスにおける血漿および血清の試料から同様な結果が得られた。短期のマトリックス凍結/解凍の安定性は、ラット血漿(最高3サイクル)およびカニクイザル血清(最高6サイクル)での抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)混合物について確認した。2℃〜8℃に維持したオートサンプラー中におよそ13時間維持した被処理試料は安定であった。
【0096】
免疫親和性ビーズ/MS法のアッセイ実行は、異なる薬剤ローディング値、p=0(ネイキッド抗体)、1(抗体につき1の薬剤)および2(抗体につき2の薬剤)値を有する抗MUC16 ADC混合物の相対量を測定することを特徴とする。ネイキッド抗体(p=0)とADC(p=1および2)の標準物質を組み合わせて、既知組成物の混合物を得た。標準物質混合物は、血漿(ラット、カニクイザルおよびヒト)および血清(例えばラットおよびカニクイザル)に添加し、ストレプトアビジンコート常磁性ビーズに固定したビオチン化rhu MUC16 ECDによる親和性キャプチャによって回収した。キャプチャした抗MUC16 ADC成分を洗浄し、脱グリコシル化し、ビーズから溶出させ、四極子飛行時間型質量分析検出と組み合わせた毛細管流LCによって分析した。抗MUC16 ADC成分からのシグナルを含む全イオンクロマトグラム(TIC)の代表的な時間ウインドウを選択し、抽出した質量スペクトルを得た。質量スペクトルの逆重畳積分後に、p=0、1又は2を有する抗MUC16 ADC成分のピーク面積を用いて、血漿又は血清中の異なる薬剤ローディング(p)をもつ抗MUC16 ADCの相対量を算出した。
ビオチン化したヒトMUC16 ECDをストレプトアビジンコートビーズ上へ固定し、それを用いて室温で試験血漿又は血清の試料と共にインキュベートすることによって抗MUC16 ADCをキャプチャした。例えば、ビーズは、およそ10−100ミクロン直径のセファロース(登録商標)ビーズであってもよい。ビーズが常磁性である場合、試料成分の結合の後に、常磁性ビーズが磁石によって適当な状態に保たれ、ビーズに結合した試料成分の分離、単離および洗浄が可能となる。ビーズが常磁性でない場合、ビーズは移動相流量のための出入口を有するカラムで構成されてもよい。試料成分は、例えば高い酸及び有機濃度を有する溶出培地又はバッファにて被処理分析試料として溶出してよく、この溶出した試料は、分離培地に曝すために回収して試料成分を分離させた後に質量分析を行ってもよい。典型的な非特異的洗浄バッファは水溶性であり、およそpH7.4で酢酸ナトリウム及び塩化ナトリウムを含んでいてよい。典型的な抗体試料溶出バッファは水溶性であり、2〜4のpHで、イソプロパノール、アセトニトリル又は他の有機溶媒のような低分子性アルコールと蟻酸のような酸を含有してよい。溶出の後、固定したECDビーズは、回収しても、再利用しても、処分してもよい。
【0097】
あるいは、セファロース(登録商標)ビーズはNHS(N-ヒドロキシスクシンイミド)エステルといったアミノ反応性官能基を持ち、ECDタンパク質と反応(結合)しうる。リジン側鎖といったECDタンパク質の反応性アミノ基はNHS基を置き換え、ECDとビーズとの間に安定なアミド結合を形成する。代表的なカップリングバッファは水溶性であり、中性又は中性に近いpH、例えばpH7〜9で、リン酸塩、重炭酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムから選択される塩類を含んでもよい。過剰なカップリングしなかった反応性の官能基は、水溶性培地中のエタノールアミンといった低分子量の反応性アミンでおおわれてもよく、中性又は中性に近いpH、例えばpH7〜9で、重炭酸ナトリウムおよび塩化ナトリウムから選択される塩類を含んでもよい。
ビーズは、洗浄溶出溶液の出入口を有するカラム形式に構成されてよい。NHS−活性化セファロース(登録商標)ビーズの市販される実施態様にはNHS HiTrap HP1.0ml親和性カラム(Amersham)がある。
【0098】
親和性キャプチャの後に、結合した抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)を単離し、脱グリコシル化した。後者の工程を用いて、試料の不均一性を低減し、質量スペクトルを単純化した。数回洗浄して非特異的に結合した血漿タンパク質を除去した後、抗MUC16 ADC試料成分を、30%アセトニトリルと1%蟻酸を含む水によって溶出し、逆相キャピラリーLCシステムに注入した。試料成分(分析物)は、ターボイオンスプレーによってイオン化し、陽性TOF-MSモードで作動する四極子飛行時間型Q-Star XL質量分析機によって検出した。全イオンクロマトグラム(TIC)の代表的な時間ウインドウを選択し、質量スペクトルを得た。質量スペクトルを逆重畳積分し、対象の各抗MUC16 ADC試料成分についてピーク面積を得た。抗MUC16 ADC試料成分p=0、1および2の相対比を算出した。
【0099】
以下のアッセイパラメータを評価した:
イオン化効率: 特定のp=0、1および2(それぞれDAR-0、DAR-1およびDAR-2)を有する抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)標準物質を、異なる比率で混合した(例えば33:33:33および30:60:10)。次いで、脱グリコシル化のために混合物を37℃で終夜インキュベートした。脱グリコシル化混合物をおよそ30μg/mLに希釈し、10μlの一定量を分析のためにLC/MS上に直接注入した。
HBS−EP中30:60:10の比率の、p=0、1および2(DAR-0、DAR-1及びDAR-2)を有する抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)試料成分の全イオンクロマトグラムを得て、ADCシグナルを含む代表的な時間ウインドウを選択した。時間ウインドウはLC条件の変動のために変化しうる。ADC試料成分について特徴的な電荷エンベロープを表す対応する質量スペクトルを抽出した。質量スペクトルの逆重畳積分により、対応する逆重畳積分した質量スペクトルを有するピーク面積表を生成した。抗MUC16 ADC試料成分の分子質量に基づいて、3つのメインピークは、それぞれおよそ144834Da、146033Daおよび147223DaのDAR−0、DAR−1およびDAR−2と同定した。内部較正なしで、機器の集団の精度はおよそ±50Daであった。他のマイナーピークは、主に標準物質のマトリックスバックグラウンド、添加物および/または不均一性によるものであった。それらは結果としてADC試料成分の相対量の算出に大きな影響を与えなかったので、その後の比率算出に用いなかった。3つの個々のピーク面積は総ピーク面積として合計し、各々の抗MUC16 ADC試料成分の相対的なパーセント比率を算出した。2つの添加混合物のそれぞれについて表1Aと1B(下記)にデータをまとめた。各添加組成物について3回試験した。明らかなように、平均精度は70%〜130%の範囲内であった。したがって、DAR−0、DAR−1およびDAR−2を有する抗MUC16 ADC試料成分は、陽性ターボイオンスプレーモードにおけるイオン化効率に有意差がなかったことが結論づけられた。
表1 DAR 0、DAR 1およびDAR 2の既知組成物について、LC/MSによって直接測定したHBS EPバッファ中の抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)試料成分の相対的な比率

【0100】
選択性: rhuMUC16 ECDによるDMUC4064A構成成分の親和性キャプチャの間に選択的な損失がなかったことを確認するために、異なるDARを有する既知のDMUC4064A標準物質を様々な濃度でラット血漿に添加し、親和性MSによって分析した。表2に、それぞれ10:30:60、30:60:10および33:33:33のDAR−0、DAR−1およびDAR−2について測定比率と理論上の添加比率を示す。
表2 親和性MSによって測定したラット血漿における抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)試料成分についての測定比率と添加比率

平均精度が、異なる組成物でDAR−0、DAR−1およびDAR−2の3つの抗MUC16 ADC試料成分について70%〜130%の範囲内であったことから、ECD改変親和性ビーズは血漿からの選択的な損失がなくADCを回収することができ、許容範囲内の精度を示したことが示された。
【0101】
異なる種全体のマトリックス効果: 特定のp=0、1および2を有する抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)標準物質を、ラット、カニクイザルおよびヒトの血漿又は5%BSAを有するPBSバッファにおいて30:60:10の比率で添加した。30μg/mlの総ADC濃度を用いた。各々の血漿種について3回、ECD改変親和性ビーズによって回収し、コントロールとして用いた5%BSAを有するPBSバッファからの結果と比較した。ECD親和性キャプチャおよび抗MUC16 ADC試料成分によって試験したブランクのラット、カニクイザルおよびヒトの血漿は、TIC(総イオンクロマトグラフィ)によって分析した。典型的なADC時間ウィンドウに有意な分析物ピークは観察されなかった。また、抽出したTOF MSシグナルは逆重畳積分することができないほどに低かったことから、ヒトMUC16 ECDによる親和性キャプチャは相対的にクリーンであり、血漿マトリックスの非特異的なタンパク質の影響をほとんど受けない。
ラット、カニクイザルおよびヒトの血漿に添加した抗MUC16 ADC試料成分の代表的なTICクロマトグラムを、PBSバッファコントロールと比較した。ECD免疫親和性ビーズによってキャプチャされるこれら4つのマトリックスにおける抗MUC16 ADC試料成分のクロマトグラフィのパターンは非常に類似していた。代表的なクロマトグラフィの持続時間ウインドウから、3つの種の血漿マトリックスおよびPBS(バッファ)コントロール間で、同種のDAR分布パターンが観察された。試料成分は、DAR 0(+0、ネイキッド抗体)、DAR−1(+1 D、1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)およびDAR−2(+2D、2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)とした。DAR−0、DAR−1およびDAR−2構成成分の相対量の詳細な比較を表3に示す。全体の相対的標準偏差(RSD)は、試験した4つすべてのマトリックスについて30%以下で十分であった。したがって、親和性MS法は、異なる種全体にわたって最小限のマトリックス効果を示した。全体の精度は70〜130%の範囲内であった。
表3 異なる種およびPBSバッファ全体における、様々な血漿中に添加された抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)の正確さと精度

【0102】
血漿と血清の間のマトリックス効果: 特定のp=0、1および2を有する抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)標準物質を、ラットとカニクイザルの血漿及び血清に30:60:10の比率で添加した。各ケースにおいて、血漿と血清全体にわたって類似の逆重畳積分された質量スペクトルが観察された。血漿及び血清のマトリックスにおけるDAR 0、DAR 1及びDAR 2を有する既知の組成物のDMUC4064A混合物について得られた値を表4に示す。ラットマトリックスにおける全体のRSDが30%の許容範囲内であることから、ラットの血漿と血清の間でECDによる親和性キャプチャの間にバイアスがなかったことが示された。同様に、カニクイザルマトリックスにおける全体のRSDは30%未満であったことから、カニクイザルの血漿と血清の間にバイアスがないことが示された。
表4 ラットおよびカニクイザルの血漿及び血清における、抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)試料成分の正確な測定

【0103】
血漿と血清の間の潜在的なマトリックス効果をさらに評価するために、抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)を投与したカニクイザルのインビボ試料のサブセットを採取し、免疫親和性ビーズキャプチャと質量分析法を使用して分析した。単一の動物から投与後5分から22日の間に採取した血漿と対応する血清試料を分析し、結果を比較した(表5)。結果から、カニクイザルの血漿又は対応する血清試料間において、回収した抗MUC16 ADC試料成分の相対的なDAR分布に有意差がなかったことが示される。図9は、38mg/kgのThio Hu 抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAEを投与したカニクイザルの血漿におけるインビボ安定性の逆重畳積分質量分析データの例を示す。平均薬剤ローディングは1.6のMMAE/3A5であった。投与したADCのおよそ30%は、DAR2の脱コンジュゲーションから生成されるものよりDAR+1の異なる形態であった。血漿試料は、5分、6時間、24時間、72時間、6日、8日、15日および22日の時点に採取し、免疫親和性ECDビーズ法によってキャプチャした。試料成分は、+0(ネイキッド抗体)、+1D(1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)および+2D(2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)のDARとした。およそ149000及び150000amuの小さいピークは、不完全に脱グリコシル化された試料成分である。
表5 毒物試験から採取したカニクイザルの血清及び血漿における、抗MUC16 ADC(3A5−MC−vc−PAB−MMAE)試料成分の相対的なDAR分布

【0104】
図6は、ECD免疫親和性ビーズキャプチャの0、6、24、48および96時間後の時点に採取したThio Hu抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE(37℃でインキュベートしたラット血漿中100μg/ml)の安定性の逆重畳積分質量分析データを示す。試料成分は、+0(ネイキッド抗体)、+1D(1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)および+2D(2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)の薬剤/抗体比率(DAR)とした。図7は、ラット血漿中の試料成分DAR +0、+1および+2の経時的なDAR分布変化を示す。
ECD免疫親和性ビーズキャプチャ効率を、ラット血漿中でインキュベートした後に、Thio Hu 抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAEの抗薬剤Mab免疫親和性ビーズキャプチャと比較された。4つの異なる抗アウリスタチンモノクローナル抗体クローンをビオチン化し、ストレプトアビジンコート常磁性ビーズに固定した(図2)。これらの抗薬剤クローンは、1薬剤をロードしたADC(DAR+1)の非効率的なキャプチャを示した。
【0105】
実施例2 ECD免疫親和性ビーズキャプチャプロトコール
抗MUC16 抗体−薬剤コンジュゲートである3A5−MC−vc−PAB−MMAEを投与したカニクイザルの血清および血漿試料を、以下の工程によって処理した。
1. 試料、コントロール及びブランクのプレート位置を決定する(96深底ウェルプレート(2mlの正方形上部):Analytical Sales and Service Inc. カタログ番号59623-23、又は96ウェルプレート(500μlの円形上部): VWRカタログ番号47743-828)。一般的に、2つのブランクと1つのシステムコントロールを実行の初めに試験し、その後2つのブランクと2つのシステムコントロールを実行の最後に試験する。必要に応じて実行の全体にわたって更なるブランクを試験してよい。試料、コントロール又はブランクに用いるウェルに、後述する添加を行った。
2. 試料、コントロール又はブランクに用いる96深底ウェル正方形上部プレートの各ウェルに400μlのHBS−EPバッファ(Biacoreカタログ番号BR-1001-88)をピペットで移す。
3. ストレプトアビジンコートのダイナビーズM-280 (Dynabeads、M280ストレプトアビジン、10mg/mL、カタログ番号110029、Lot番号G74050、BioVeris)を緩やかに撹拌することによって再懸濁する。使用中のHBS−EPバッファプレートの各ウェルに100μlの懸濁したビーズ混合物をピペットで移す。およそ20秒間、室温で、KingFisher96の磁気粒子プロセッサ(Thermo Electron Corp.)によって混合する。
4. 400μLのHBS−EPバッファを含む新たな96深底ウェル正方形上部プレートへビーズを移し、およそ20秒間、室温で、KingFisherにより混合する。
5. 新たな96深底ウェル正方形上部プレートのブランク、試料又はコントロールの各ウェルに、400μlのHBS−EPバッファをピペットで移す。
6. HBS−EPバッファプレートのブランク、試料又はコントロールの各ウェルに、25μlのビオチン化抗MUC16-ECD(図1a)をピペットで移す。
7. HBS−EPバッファとビオチン化した抗MUC16-ECDを含む96深底ウェルプレートにビーズを移し、およそ20秒間穏やかに混ぜる。プレートをアルミニウムシールで被う。
8. プレートを攪拌機(スピード7に設定)に載せ、およそ120分間、室温でインキュベートする。
9. 400μlのHBS−EPバッファを含む96深底ウェル正方形上部プレートにビーズを移し、KingFisherを用いて2回洗浄する。
【0106】
10. 陰性の血漿又は血清のプールを用いたアッセイの範囲に、血漿又は血清試料を希釈する。
11. 96深底ウェル正方形上部プレートへ400μlのHBS−EPバッファをピペットで移し、次いで、各々希釈した50μlの血漿又は血清の試料、コントロール又は又はブランクを適切なウェルに添加する。
12. 希釈した血漿又は血清の試料にKingFisherを用いてビーズを移す。およそ20秒間穏やかに混ぜる。プレートをアルミニウムシールテープで被う。
13. プレートを攪拌機(速度7)に載せ、およそ120分間、室温でインキュベートする。
14. 500μlのHBS−EPバッファを含む96深底ウェル正方形上部プレートにビーズを移し、KingFisherを用いて2回洗浄する。
15. HBS−EPバッファ、80mMリン酸塩及びグリコN-グリカナーゼ(Prozyme glyko N-glycanase, Cat. No. GKE-5006D)をそれぞれ300パーツ:32パーツ:4パーツの比率で混合することによってHBS−EP−グリカナーゼバッファを調製する。
16. 336μlのHBS−EP−グリカナーゼバッファを96深底ウェル正方形上部プレートの各ウェルへピペットで移す。
17. KingFisherを用いてHBS−EP−グリカナーゼバッファにビーズを移す。およそ20秒間穏やかに混合する。プレートをアルミニウムシールテープで被う。
18. 37℃及び300rpmの撹拌速度に維持するように設定したインキュベーターにプレートを置き、終夜インキュベートする。
19. 500μlのHBS−EPバッファを含む96深底ウェル正方形上部プレートにビーズを移し、KingFisherを用いて2回洗浄する。
【0107】
20. 500μlの水を含む96深底ウェル正方形上部プレートにビーズを移し、KingFisherを用いて2回洗浄する。
21. 水中10%アセトニトリルを500μl含む96深底ウェル正方形上部プレートにビーズを移し、KingFisherを用いて1回洗浄する。
22. 溶出溶媒として、1%の蟻酸を含む30%アセトニトリル水、50μlを、96深底ウェル正方形上部プレートにピペットで移す。
23. KingFisherを用いて溶出溶媒プレートにビーズを移す。プレートをアルミニウムシールテープで被う。
24. 速度7に設定した攪拌機にプレートを置き、およそ15分間振とうする。
25. KingFisherを用いて溶出プレートからビーズを取り除く。
26. マルチチャネルピペットを用いて、96ウェル注入プレート(VWR、500μl円形上部)に溶出プレートからの上清を移し、プレートをシリコン封入マットで被う。
27. 2〜8℃に維持するように設定した遠心機にて、3000rpmの設定でおよそ5分間遠心分離する。そうして、LC−MS上への注入用試料プレートとする。
【0108】
実施例3 血漿および血清における抗HER2抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)化合物の分析
以下の構造:

を有する、システイン改変抗HER2変異体V205CおよびA118Cのトラスツズマブ−MC−vc−PAB−MMAE(ここで、pが1、2、3又は4であり、Valはバリンであり、Citはシトルリンであり、Abはトラスツズマブのシステイン改変の、A118C重鎖変異体およびV205C軽鎖変異体、抗HER2モノクローナル抗体である)を血漿試料において分析した。
【0109】
図4は、0、8、24、48および96時間の時点で採取したインビボ血漿試料の、免疫親和性ECD改変ビーズキャプチャ(図1a)及び質量分析特徴付け後の、血漿における軽鎖(Thio Hu 抗HER2 4D5 LC V205C−MC−vc−PAB−MMAE、1.64 MMAE/4D5 Ab)(上)および重鎖(Thio Hu 抗HER2 4D5 HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE、1.9 MMAE/4D5 Ab)(下)ADC変異体についての、薬剤/抗体比(DAR)分布の変化を示す。試料成分は、0(ネイキッド抗体)、1(1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)および2(2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)のDARとした。DAR分布パターンは、これらADCについて、軽鎖変異体(LC V205C)が重鎖変異体(HC A118C)より安定性が高いことを示す。
重鎖変異体(Thio Hu 抗HER2 4D5 HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE、1.9MMAE/4D5 Ab)を、100μg/mlでラット血漿中でインキュベートした。特定の時点で試料を採取し、免疫親和性ECDビーズキャプチャにて処理した。図5は、0、8、24、48および96時間の時点で採取した試料の逆重畳積分質量分析データを示す。試料成分を、+0(ネイキッド抗体)、+1D(1のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)および+2D(2のMC−vc−PAB−MMAE薬剤リンカーユニット)のDARとした。およそ151000amuの小さいピークは、不完全に脱グリコシル化された試料成分である。
【0110】
実施例4 ELISAと免疫親和性ビーズキャプチャ法の比較
図10aは、ECDタンパク質が抗体又は抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)への結合のために固体担体上に固定されている総ELISAアッセイフォーマットを示す。ADCは、化学発光検出のためにF(ab')ヤギ抗ヒトFc−HRPに結合する。
図10bは、抗薬剤MAbが抗体−薬剤コンジュゲート(ADC)への結合のために固体担体上に固定されているコンジュゲートELISAアッセイフォーマットを示す。ADCは、溶液中のビオチン化ECDタンパク質に結合する。次いで、複合体は、化学発光検出のためにストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合しうる。
図11は、Thio Hu 抗MUC16 (3A5) HC A118C-MC-vc-PAB-MMAEと共にインキュベートし、96時間まで経時的に分析したラット血漿試料中の、薬剤部分にコンジュゲートした残りの抗体をプロットすることによる、ELISA法、及び免疫親和性ビーズキャプチャ/質量分析(MS)法による試料成分の検出の比較を示す。
【0111】
表6は、ECD免疫親和性ビーズによってキャプチャし、質量分析によって分析した、0、6、24、48、96の同じ時点の試料からの、Thio Hu 抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE試料成分の相対量を蓄積する。親和性質量分析およびELISAからの結果は、抗アウリスタチン抗体がコンジュゲートThio Hu 抗MUC16(3A5) HC A118C−MC−vc−PAB−MMAE試料成分をすべて効率よくキャプチャしたわけではないことを示した。したがって、親和性MSは、コンジュゲートELISAアッセイを発達させるための最も適切な抗薬剤抗体を選別する補助として用いることができる。
表6 ECD免疫親和性ビーズキャプチャ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 以下の式Iを有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物を提供すること:
Ab−(L−D)p I
このとき、
Abが抗体であり、
Dはメイタンシノイド又はモノメチルアウリスタチン薬剤部分であり、
Lは、共有結合でAbに付着し、共有結合でDに付着したリンカーであり、そして、
pは、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;
(ii) 抗体−薬剤コンジュゲート化合物と、場合によってpが0である式Ipの抗体又はその抗体断片ないし代謝産物を、哺乳動物、組織、細胞培養物、血漿又は血清から選択される生物学的な供給源と接触させること;
(iii) 生物学的な供給源から生体試料を採取すること;
(iv)処方し、固定し、遠心し、単離し、消化し、血液細胞凝集を誘導ないし予防し、加水分解し、又は精製することによって分析試料を生成するために生物学的試料を処理し、処理済みの分析試料を生成すること;
(v) 処理済みの分析試料に特異的な抗原を含む親和性成熟ビーズにて処理した分析試料を捕獲すること;
(vi) 処理した分析試料を溶出すること;
(vii)分離培地に溶出した分析試料を置き、1より多くの試料成分を分離すること、このとき分離した試料成分は式Iを有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物又はその抗体断片ないし代謝物を含み、pは0、1、2、3、4、5、6、7又は8である;そして、
(viii)一又は複数の分離した試料成分の質量電荷比を質量分析によって確認すること
を含む、抗体−薬剤コンジュゲート化合物の検出方法。
【請求項2】
さらに、(iii)から(viii)の工程を1回又は複数回繰り返すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生物学的試料が血液であり、この血液が処理されて血漿又は血清を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
分析試料が変性している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
分析試料がホルムアミド、ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルから選択される変性試薬によって変性される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
分析試料が還元剤で処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
還元剤がDTT又はTCEPである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗原が標的レセプタータンパク質の細胞外ドメイン(ECD)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ECDがビオチン化されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ビオチン化されたECDがストレプトアビジンコート常磁性免疫親和性ビーズに結合する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
抗原が抗薬剤抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
免疫親和性ビーズが磁気ビーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
免疫親和性ビーズが多孔質ポリマーモノリスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
免疫親和性ビーズが、回収貯蔵部を有する流体連結内の流入チャネルに設置される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
免疫親和性ビーズが流入管に設置され、このとき、生物源からの試料が一端又は開口部に導入され、試料が他端又は開口部から溶出される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
免疫親和性ビーズが、それぞれ別々の回収貯蔵部に連結した複数の流入管に分配されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
管および貯蔵部が12×8の段と列の96マイクロタイターウェル様式、又は24×16の段と列の384マイクロタイターウェル様式に設置されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、分析試料を脱グリコシル化試薬で処理する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
脱グリコシル化試薬がPNGaseFである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
分離培地がクロマトグラフィ支持体である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
クロマトグラフィ支持体が逆相吸着剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
逆相がポリスチレン、又はポリスチレンのグラフトないしコポリマーである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
クロマトグラフィ支持体からの溶出物が質量分析によって間欠的に分析され、1より多くの質量電荷比の被分離清浄成分を得る、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
試料成分が重鎖又は軽鎖の抗体断片を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
重鎖又は軽鎖の抗体断片がさらに一又は複数の薬剤部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
式I有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物又はその抗体断片ないし代謝産物が、生物源の腫瘍関連抗原又は細胞表面レセプターに結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
抗体−薬剤コンジュゲート化合物の抗体が、以下の(1)から(36)から選択される一又は複数の腫瘍関連抗原又は細胞表面レセプターに結合する、請求項26に記載の方法:
(1) BMPR1B(骨形成タンパク質レセプター−タイプIB);
(2) E16(LAT1、SLC7A5);
(3) STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原);
(4) 0772P(CA125、MUC16);
(5) MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン);
(6) Napi3b(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質担体ファミリ34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、タイプIIナトリウム依存性リン酸輸送体3b);
(7) Sema5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、semaドメイン、7回トロンボスポンジンリピート(タイプ1およびタイプ1様)、膜貫通ドメイン(TM)および短い細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B);
(8) PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA 2700050C12遺伝子);
(9) EtBr(エンドセリンB型レセプター);
(10) MSG783(RNF124、仮定タンパク質FLJ20315);
(11) STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺癌関連遺伝子1、前立腺癌関連タンパク質1、前立腺2の6回膜貫通上皮抗原、6回膜貫通前立腺タンパク質);
(12) TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性レセプター電位陽イオンチャネル、サブファミリM、メンバー4);
(13) CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、テラトカルシノーマ由来の増殖因子);
(14) CD21(CR2(補体レセプター2)又はC3DR(C3d/エプスタイン・バーウイルスレセプター)又はHs.73792 Genbank受託番号M26004);
(15) CD79b(CD79B、CD79、IGb(免疫グロブリン関連β)、B29);
(16) FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(ホスファターゼアンカータンパク質1aを含むSH2ドメイン)、SPAP1B、SPAP1C);
(17) HER2;
(18) NCA;
(19) MDP;
(20) IL20R;
(21) ブレビカン;
(22) Ephb2R;
(23) ASLG659;
(24) PSCA;
(25) GEDA;
(26) BAFF-R(B細胞活性化因子レセプター、BLySレセプター3、BR3);
(27) CD22(B細胞レセプターCD22-Bアイソフォーム);
(28) CD79a(CD79A、CD79、免疫グロブリン関連α);
(29) CXCR5(バーキットリンパ腫レセプター1);
(30) HLA-DOB(MHCクラスII分子(Ia抗原)のβサブユニット;
(31) P2X5(プリンレセプターP2Xリガンドゲートイオンチャネル5);
(32) CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2);
(33) LY64(Lyt抗原64(RP105));
(34) FCRH1(Fcレセプター様タンパク質1);
(35) IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリレセプター転座関連2);及び、
(36) TENB2(推定膜貫通プロテオグリカン、増殖因子のEGF/ヘレグリンファミリおよびフォリスタチンに関連)。
【請求項28】
抗体−薬剤コンジュゲート化合物が0.1〜10mg/kg体重の用量で哺乳動物に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
LがAbのアミノ、カルボキシル又はチオールに共有結合的に付着している、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
Lが、N-スクシンイミジル-4(2-ピリジルチオ)プロパノエート(SPDP)、N-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)及びN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)から選択されるリンカー試薬から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
Lが、マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、およびマレイミドカプロイル−バリン−シトルリン−パラ−アミノベンジルオキシカルボニル(MC−vc−PAB)から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
Dが以下の構造:

を有するメイタンシノイドであり、このとき波線が抗体薬剤コンジュゲートのリンカー(L)へのDの硫黄原子の共有結合を示し、そして、RがHおよびC1−C6アルキルからそれぞれ選択されるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
Dが以下の構造を有するDM1である、請求項32に記載の方法。

【請求項34】
Dがモノメチルアウリスタチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
Dが以下の構造を有するMMAEである、請求項34に記載の方法。

【請求項36】
Dが以下の構造を有するMMAFである、請求項34に記載の方法。

【請求項37】
(i) 以下の式Iを有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物の混合物を提供すること、
Ab−(L−D)p I
このとき、
Abが抗体であり、
Dがメイタンシノイド又はモノメチルアウリスタチン薬剤部分であり、
Lが、Abに共有結合的に付着し、Dに共有結合的に付着したリンカーであり、
pが1、2、3、4、5、6、7又は8であり、そして、場合によって該混合物が、pが0である抗体又はその断片ないし代謝産物を含んでおり;
(ii) 哺乳動物に該混合物を投与すること;
(iii) 該混合物が投与された哺乳動物から血液試料又は排出物を採取すること;
(iv) 処方し、固定し、遠心し、単離し、消化し、血液細胞凝集を誘導ないし予防し、加水分解し、又は精製することによって分析試料を生成するために血液試料又は排出物を処理し、処理済みの分析試料を生成すること;
(v) 処理済みの分析試料に特異的な抗原を含む免疫親和性ビーズにて処理済みの分析試料を捕獲すること;
(vi) 処理済みの分析試料を溶出すること;
(vii) 分離培地に血液試料、排出物又は分析試料を置き、1より多くの試料成分を分離すること、このとき分離した試料成分は式Iを有する抗体−薬剤コンジュゲート化合物又はその抗体断片ないし代謝物を含み、pは0、1、2、3、4、5、6、7又は8であり;そして、
(viii) 一又は複数の分離した試料成分の質量電荷比を質量分析によって確認すること
を含む、哺乳動物において、抗体−薬剤コンジュゲート化合物の混合物をスクリーニングして、化合物又はその断片ないし代謝物のクリアランスを決定する方法。
【請求項38】
さらに、(iii)から(viii)の工程を1回又は複数回繰り返すことを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
さらに、質量分析を実行する前に、分離した試料成分を変性剤と接触させることを含む、請求項37に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−524001(P2011−524001A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509610(P2011−509610)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/043560
【国際公開番号】WO2009/140242
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509012625)ジェネンテック, インコーポレイテッド (357)
【Fターム(参考)】