説明

ビーズエマルジョン核酸増幅

【課題】ビーズのような固体支持体上で、少ないコピー数の核酸鋳型を、配列決定に適した量まで増幅する方法を提供する。
【解決手段】油中水型エマルジョンを形成して、核酸鋳型、ビーズおよび増幅反応溶液が乳化された複数の水性マイクロリアクターを作製する段階;前記マイクロリアクター中で核酸を増幅してコピーを形成する段階;増幅されたコピーを前記マイクロリアクター中の前記ビーズに結合させる段階、を含む核酸の増幅方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ビーズのような固体支持体上で、少ないコピー数の核酸鋳型を、配列決定に適した量まで増幅する方法に関する。また本発明では、ゼロビーズ除去にも関し- 増幅した核酸を含む固体支持体を濃縮する方法も、開示される。
【0002】
関連出願
本願は、2003年1月29日付のUSSN 60/443,471、2003年4月23日付のUSSN 60/465,071、2003年6月6日付のUSSN 60/476,313、2003年6月6日付のUSSN 60/476,504、2003年6月6日付のUSSN 60/476,592、2003年6月6日付のUSSN 60/476,602、2003年8月25日付のUSSN 60/497,985に基づく優先権を伴う出願である。本段落中の全ての特許および特許出願は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0003】
本願には、以下の同時係属中の米国特許出願も参照として本明細書に組み入れられる:2004年1月29日付の「一本鎖DNAライブラリーの調製方法」、2004年1月29日付の「連続流を用いたビーズエマルジョン核酸増幅」、2004年1月29日付の「両端配列決定」、および2004年1月29日付の「核酸の増幅および配列決定方法」。
【背景技術】
【0004】
背景
現在の配列決定法の効率が悪いことを考慮すると、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーのような、多数の核酸配列を増幅できるということは、非常に重要である。現在の配列決定技術では、1回の配列決定反応あたり何百万もの核酸のコピーが必要である。さらに、ヒトゲノムの配列決定には、何千万もの異なる配列決定反応が必要である。開始材料が制限される場合、ゲノム配列決定の前に、最初のDNAの増幅が必要である。例えば、配列決定するゲノムがわずかな量の病原体または出生前の患者に由来する場合に、開始材料は制限されうる。現在のインビトロゲノム増幅技術では、面倒なクローニングおよび培養プロトコールが必要であり、そのためにゲノム配列決定の有用性が制限されてきた。PCRのような他の技術は迅速で信頼性が高いものの、代表的な様式ではゲノムを増幅できない。
【0005】
ランダムプライマーを用いたPCRは、1回の反応において多数の核酸を増幅するように簡単に操作できるが、増幅されたライブラリーが開始ライブラリーと対応しないので、この方法は好ましくない。すなわち、ランダムPCR環境では、一部のDNA配列が、他の配列を犠牲にして選択的に増幅されるため、増幅された産物は、開始材料を表すものではない。PCRのこの問題点は、ライブラリーの各メンバーが別々の反応で増幅されれば、克服できる可能性がある。しかし、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーには、100,000以上の断片が含まれる可能性があるので、増幅過程に何千もの別々の反応チューブが必要であれば、この手法は実用的ではない。これらのライブラリーの各断片を、別々の反応で個々に増幅することは、実用的ではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は単一の反応チューブ中で、迅速かつ経済的に多数の核酸(例えば、DNAライブラリー、トランスクリプトーム、またはゲノムの各配列)を増幅する方法を提供する。本発明の方法の1つの使用法は、1つの反応容器中で、多数(最高数十万)のサンプルを同時にクローン増幅(例えば、PCRによる)することである。本発明はさらに、エマルジョンのマイクロカプセル(例えば、マイクロリアクター)中に多数のDNAサンプルを個々に封入し、多数の封入された核酸サンプルの増幅を同時に行ない、その後の反応のためにマイクロカプセルから増幅された多数のDNAを放出する方法を提供する。
【0007】
1つの態様では、鋳型の核酸種の単一コピーを、例えばその核酸鋳型に結合する捕捉オリゴヌクレオチドまたは化学基を含む捕捉ビーズにハイブリダイズさせる。ビーズは完全増幅溶液(増幅溶液の例については、実施例2を参照されたい)に懸濁し、乳化させて、マイクロリアクター(通常は、直径が100〜200ミクロン)を生成する。その後、増幅(例えば、PCR)を用いて、マイクロリアクター中の最初の鋳型種のコピー数をクローン的に増加させるが、これらのコピーはマイクロリアクター中の捕捉ビーズに結合する。
【0008】
別の態様では、捕捉ビーズは核酸鋳型を含む増幅反応液(例えば、実施例2の増幅溶液)に添加し、この反応液を乳化させてマイクロリアクターを生成する。増幅(PCR)を用いてマイクロリアクター中の最初の鋳型種のコピー数をクローン的に増加させるが、これらのコピーはマイクロリアクター中の捕捉ビーズに結合する。
【0009】
本発明の1つの利点は、マイクロリアクターを用いることにより、増幅された産物もしくは試薬の間の相互汚染、または1つの特定の鋳型または鋳型セットが優勢になる(例えば、PCRバイアス)ことなく、多くの異なる鋳型を同時にクローン的に、かつ別々に増幅することができるということである。例えば、増幅反応は、反応液1マイクロリットルあたり少なくとも3,000のマイクロリアクターを用いて同時に実行できる。好ましくは、各マイクロリアクターは、1つまたはそれより少ない種の増幅された鋳型を含む。
【0010】
本発明の様々な態様では、マイクロリアクターは平均約10μm〜約250μmの直径を有する。好ましい態様では、マイクロリアクターは平均約60μm〜約200μmの直径を有する。より好ましい態様では、マイクロリアクターは、平均40μm〜80μmのような、平均約60μmの直径を有する。1つの態様では、マイクロリアクターは平均約60μmの直径を有する。別の好ましい態様では、マイクロリアクターは平均約113 plの体積を有する。最も好ましい態様では、水と油が1:2のエマルジョン1マイクロリットル中に、約3000のマイクロリアクターが含まれる。
【0011】
本発明は、複数の核酸鋳型を保持するビーズを生成する方法も提供するが、ここで各ビーズには、最高1,000,000およびそれ以上のコピー数の単一の核酸配列が含まれる。1つの好ましい態様では、各ビーズは2000万以上の単一核酸のコピーを含む可能性がある。
【0012】
本発明はさらに本発明の方法によって生成されたライブラリーを提供する。ライブラリーは、増幅の開始材料として、例えば、ゲノムDNAライブラリー、cDNAライブラリー、またはプラスミドライブラリーを用いて作製される場合がある。ライブラリーは例えば、生物由来または合成由来のような、任意の核酸集団に由来し得る。
【0013】
本発明は成功したDNA増幅の産物を含むビーズの濃縮方法も提供する(すなわち、DNAの結合していないビーズを除去することによる)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】DNA捕捉ビーズの構造の模式図を示す。
【図2A】図2Aは、ビーズエマルジョン増幅過程の1つの態様の模式図を示す。
【図2B】図2Bは、ビーズエマルジョン増幅過程の1つの態様の模式図を示す。
【図3】DNAの結合していないビーズを除去する濃縮過程の模式図を示す。
【図4】垂直シリンジポンプの下の攪拌プレート上でチューブを保持するために使用するジグを示す。ジグはビーズエマルジョン増幅反応液を3セット保持するように改変されている。シリンジにはPCR反応液およびビーズが充填されている。
【図5】垂直シリンジポンプ中のシリンジの最適な設置およびシリンジの出口の下のエマルジョンチューブの方向を示す。
【図6】シリンジのプランジャーに対するシリンジポンププッシャーブロックの最適な設置、および攪拌プレート上のジグの最適な方向を示す。この配置を用いると、シリンジ内容物は攪拌されているエマルジョン油中へ噴出される。
【図7】本発明の方法に従って個々のマイクロリアクター中に懸濁されたビーズ(矢印を参照されたい)を示す。
【図8】両端配列決定と合わせて使用されるビーズエマルジョン増幅の初期の段階を示す模式図。NHS活性化ビーズ(図8A)には捕捉プライマー(図8B)が結合し、DNA捕捉ビーズおよび鋳型を含むマイクロリアクター中に封入される(図8C)。
【図9】両端配列決定と合わせて使用されるビーズエマルジョン増幅の増幅および捕捉段階を示す模式図。鋳型は液相PCRによって増幅され、増幅産物はDNA捕捉ビーズに結合する。
【図10】両端配列決定と合わせて使用されるビーズエマルジョン増幅の後期の段階を示す模式図。エマルジョンが破壊され(図10A〜10B)、増幅産物の第2の鎖が除去され、増幅産物に結合したビーズの数を最大化するために濃縮が用いられ(図10C)、配列決定プライマーがアニーリングされ(図10D)、第1の鎖の配列が決定され(図10E)、その後第2の鎖の配列が決定される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
ビーズエマルジョン増幅の簡単な概要
本発明の1つの態様の簡単な概要が以下に述べられている。この態様の各段階のより詳細な記述は、その後に述べられている。本態様では、PCRが、選択された増幅技術である。
【0016】
本発明の1つの態様では、ビーズエマルジョン増幅は、増幅する鋳型(例えば、DNA鋳型)を好ましくは、概ね球状のビーズ形の、固体支持体に結合させることによって行なう。ビーズは鋳型DNAの領域およびこの鋳型の増幅コピーに相補的な、多数の単一プライマー種(すなわち、図2のプライマーB)に連結されている。または、ビーズは鋳型DNAおよびこの鋳型の増幅コピー上に含まれる化学基(例えば、ストレプトアビジン)に結合できる化学基(例えば、ビオチン)に連結されている。ビーズは水性反応液中に懸濁され、その後、油中水エマルジョン中に封入される。本発明の別の局面では、鋳型DNAは乳化前にビーズに結合されるか、鋳型DNAは増幅反応液における溶液中に含まれる。好ましい態様では、増幅段階は、マルチウェル(例えば、ピコタイター)プレートへ核酸鋳型を分散させる前に行なわれる。
【0017】
特定の態様では、エマルジョンは熱安定性の油層によって取り囲まれた、例えば、平均の直径が約60μm〜200μmの、不連続の微小液滴水相を含む。各微小液滴には、好ましくは、増幅反応溶液(すなわち、核酸増幅に必要な試薬)が含まれる。増幅反応溶液の例は、PCR反応液(ポリメラーゼ、塩、dNTP;1つの態様の例は実施例2を参照されたい)およびPCRプライマー対(プライマーAおよびプライマーB)である。図2Aを参照されたい。場合によっては、鋳型DNAは反応液に含まれている。微小液滴群のサブセットには、DNAビーズおよび鋳型が含まれている。この微小液滴サブセットは、増幅の基礎となる。残りのマイクロカプセルは鋳型DNAを含まず、増幅には関与しない。1つの態様では、増幅技術はPCRであり、PCRプライマーは、非対称PCRを実行するために、8:1または16:1の比(すなわち、1つのプライマー8または16に対して、第2のプライマー1)で存在する。別の態様では、PCRプライマーの比は、通常のPCRと実質的に同等である。
【0018】
PCRのような増幅反応は、任意の適当な方法を用いて実行できる。以下の概要では、PCRの1つの機構が例証のために記述されている。しかし、本発明はこの機構にのみ限定されるわけではない。実施例では、DNA分子の1つの領域(B'領域)が、ビーズに固定されたオリゴヌクレオチド(プライマーB)にアニーリングされる。サーモサイクリング(図2B)の間に、一本鎖鋳型とビーズ上に固定されたBプライマーの間の結合が切断され、周囲のマイクロカプセルに封入された液体へ鋳型が放出される。増幅溶液、すなわちこの場合のPCR溶液は、さらに溶液相プライマーAおよびプライマーBを含む(例えば、8:1または16:1の比)。固定されたプライマーよりも、溶液相プライマーの結合速度の方が早いため、溶液相Bプライマーは鋳型の相補的なB'領域に容易に結合する。
【0019】
初期段階のPCRでは、AおよびB鎖の両方が同様に増幅される(図2C)。中間段階のPCR(すなわちサイクル10と30の間)では、Bプライマーが枯渇し、指数関数的な増幅が停止する。その後、反応は非対称増幅となり、アンプリコン集団は主にA鎖となる(図2D)。30〜40サイクル後の後期のPCR(図2E)では、非対称増幅により溶液中のA鎖の濃度が上昇する。過剰なA鎖はビーズに固定されたBプライマーにアニーリングし始める。すると熱安定ポリメラーゼは、鋳型としてA鎖を用いて、アンプリコンの、固定された、ビーズに結合したB鎖を合成する。
【0020】
PCRの最終段階では(図2F)、サーモサイクリングが続くために、ビーズに固定されたプライマーにさらにアニーリングが起きる。溶液相の増幅はこの段階ではわずかであるが、固定されたB鎖の濃度が上昇する。その後、エマルジョンが破壊され、固定された産物は、相補的なA鎖を除去する変性(熱、pH等による)によって一本鎖となる。Aプライマーは固定された鎖のA'領域にアニーリングされ、固定された鎖には配列決定酵素および任意の必要な補助蛋白質を添加する。その後、認められたピロリン酸技術を用いてビーズの配列決定が行われる(例えば、参照として全体が本明細書に組み入れられる、USP 6,274,320、6,258,568、および6,210,891に記述されている)。
【0021】
鋳型の設計
1つの好ましい態様では、ビーズエマルジョン増幅によって増幅される核酸鋳型は、例えば、ゲノムDNAライブラリーまたはcDNAライブラリーのような、DNA集団である。DNA集団の各メンバーが、第1の末端で1つの共通の核酸配列を有し、かつ第2の末端で1つの共通の核酸配列を有することが好ましい。これは、例えば、DNA集団の各メンバーの片方の末端に第1のアダプターDNA配列を連結し、第2の末端に第2のアダプターDNA配列を連結することによって、実施できる。多くのDNAおよびcDNAライブラリーは、クローニングベクターの性質により(例えば、Bluescript、Stratagene、ラホヤ、カリフォルニア州)、各メンバーDNAが第1の末端に1つの共通配列、第2の末端に第2の共通配列を有するというこの記述に当てはまる。核酸鋳型は、インビトロ増幅(PCRおよび非対称PCRという好ましい増幅技術を含む)に適した任意のサイズで良い。1つの好ましい態様では、鋳型は、例えば約250 bpのような、約150bp〜750 bpのサイズである。
【0022】
捕捉ビーズへの核酸鋳型の結合
本発明の1つの局面では、増幅される一本鎖核酸鋳型が、捕捉ビーズに結合される。鋳型は、乳化の前、または乳化の後に、ビーズに捕捉される。1つの好ましい局面では、核酸鋳型の増幅コピーは、捕捉ビーズに結合される。非限定的実施例では、これらの結合は、ビーズの表面に結合する化学基またはオリゴヌクレオチドによって媒介される場合がある。核酸(例えば、核酸鋳型、増幅コピー、またはオリゴヌクレオチド)は、当技術分野で周知の任意の方法で、固体支持体(例えば、捕捉ビーズ)に結合できる。
【0023】
本発明では、標準的なカップリング剤を用いて、核酸のビーズに対する共有化学結合を達成できる。例えば、可溶性カルボジイミドを用いてDNA配列の5'リン酸を、ホスホアミデート結合により、アミンコートした捕捉ビーズに連結できる。または、同様な化学的性質を用いてビーズに特定のオリゴヌクレオチドをカップリングさせ、その後DNAリガーゼを用いて、DNA鋳型をビーズ上のオリゴヌクレオチドに連結することもできる。オリゴヌクレオチドをビーズに結合する他の連結化学反応には、N-ヒドロキシスクシンアミド(NHS)およびその誘導体を使用するものが含まれる。
【0024】
典型的な方法では、リンカーの片方の末端には、固体支持体と共有結合を形成する反応基(アミド基など)が含まれており、一方で、リンカーの逆の末端には固定されるオリゴヌクレオチドと結合できる第2の反応基が含まれている。好ましい態様では、オリゴヌクレオチドは共有結合によりDNA捕捉ビーズに結合する。しかし、キレート化または抗原抗体複合体のような、非共有結合も、オリゴヌクレオチドのビーズへの結合には使用できる。
【0025】
非限定的な例として、制限酵素部位の重複末端またはクローニングベクターの粘着末端のような、DNA断片の末端で独特の配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドが使用できるが、平滑末端のリンカーも使用できる。これらの方法は、US 5,674,743に詳細に記述されている。ビーズは、本発明の方法の段階を通して、固定されたオリゴヌクレオチドに結合し続けるのが好ましい。
【0026】
本発明の1つの態様では、各捕捉ビーズは、核酸鋳型の一部およびこの鋳型の増幅コピーを認識する(すなわち、それに相補的な)オリゴヌクレオチドを多数有するように設計されている。本明細書に記述する方法では、鋳型種のクローン増幅が望まれるので、任意の1つの捕捉ビーズには1つの固有の核酸種が結合しているのが好ましい。
【0027】
本明細書で使用されるビーズは、都合の良い任意のサイズで、任意の数の既知の材料から作製できる。そのような材料の例には、無機物、天然ポリマー、および合成ポリマーが含まれる。これらの材料の特定の例には、セルロース、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ガラス、シリカゲル、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ビニルおよびアクリルアミドのコポリマー、ジビニルベンゼンなどで架橋されたポリスチレン(例えば、Merrifield, Biochemistry 1964, 3, 1385-1390に記述されている)、ポリアクリルアミド、ラテックスゲル、ポリスチレン、デキストラン、ゴム、シリコン、プラスチック、ニトロセルロース、天然スポンジ、シリカゲル、多孔性ガラス(control pore glass)、金属、架橋デキストラン(例えば、セファデックス(商標))、アガロースゲル(セファロース(商標))、および当技術分野で周知の他の固体支持体が含まれる。好ましい態様では、捕捉ビーズは、直径約2μm〜100μm、または直径10μm〜80μm、最も好ましくは直径20〜40μmである。1つの好ましい態様では、捕捉ビーズはセファロースビーズである。
【0028】
乳化
本発明で使用するために、核酸鋳型の結合したまたはしていない捕捉ビーズは、熱安定性の油中水エマルジョンに懸濁される。複数のマイクロリアクターは、1つの鋳型および1つのビーズのみを含むと考えられる。鋳型を含まないまたはビーズを含まない液滴が多くあり得る。同様に、鋳型を複数コピー含む液滴もあり得る。エマルジョンは、当技術分野で周知の任意の適当な方法で形成できる。エマルジョンを作製する1つの方法が以下に記述されるが、エマルジョンを作製する任意の方法が使用できる。これらの方法は、当技術分野で周知であり、アジュバント法、カウンタフロー法(counter-flow method)、クロスカレント法(cross-current method)、回転ドラム法、およびメンブレン法を含む。さらに、マイクロカプセルのサイズは、流速および成分のスピードを変えることにより、調節できる。例えば、滴加では、液滴のサイズおよび総送達時間を変更することができる。好ましくは、エマルジョンには1マイクロリットルあたり約3,000の密度でビーズが封入されている。
【0029】
生物学的反応に適した様々なエマルジョンは、各々が参照として本明細書に組み入れられるGriffiths and Tawfik, EMBO, 22, pp. 24-35 (2003); Ghadessy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98, pp. 4552-4557 (2001); USP 6,489,103、およびWO 02/22869に記述されている。Griffiths et al.(USP 6,489,103およびWO 99/02671)は、所望の活性を有する遺伝子産物をコードする1つまたは複数の遺伝要素のインビトロソーティングのための方法を記述している。この方法では、遺伝子を区画化し、遺伝子を発現し、発現産物に基づいて、区画化した遺伝子をソーティングする。本発明とは反対に、Griffithのマイクロカプセルソーティング法では、核酸産物が固定されておらず、固定できないため、これは複数のマイクロカプセルの平行した解析には適していない。Griffithsの核酸は固定されていないため、解乳化の間に混合されるはずである。
【0030】
エマルジョンは、好ましくはビーズを増幅溶液に添加することによって作製する。本明細書で使用される「増幅溶液」は、鋳型DNAの増幅を行なうために必要な、充分な試薬の混合物を意味する。増幅溶液の1つの例であるPCR増幅溶液は、以下の実施例に提供されている。実行する増幅のタイプ、および鋳型DNAがビーズに結合しているか溶液中で提供されるかによって、増幅溶液には、様々な改変ができることが認識される。1つの態様では、ビーズおよび増幅溶液の混合物は、生体適合性の油(例えば、軽油、Sigma)の回転する混合物に滴加され、乳化が起きる。別の態様では、ビーズおよび増幅溶液が、生体適合性の油のクロスフローに滴加される。使用する油には、1つまたは複数の生体適合性の乳化安定剤を添加できる。これらの乳化安定剤には、Atlox 4912、Span 80、および他の認可され市販されている適当な安定剤が含まれる。好ましい局面では、エマルジョンは熱安定性で、例えば、少なくとも94℃、少なくとも95℃、または少なくとも96℃までのサーモサイクリングが可能である。好ましくは、形成される液滴のサイズは、約5ミクロンから約500ミクロン、より好ましくは約10ミクロンから約350ミクロン、さらに好ましくは約50ミクロンから250ミクロン、および最も好ましくは約100ミクロンから約200ミクロンの範囲である。都合の良いことに、クロスフロー液体混合では、液滴形成の制御が可能で、液滴サイズが均一になる。エマルジョン中には、ビーズを含まない、より小さな液滴が存在する可能性がある。
【0031】
マイクロリアクターは、必要な増幅の度合いに応じた充分な増幅試薬を取り囲むために充分な大きさを有する必要がある。しかし、マイクロリアクターは、各々がDNAライブラリーのメンバーを含むマイクロリアクター集団が、通常の実験器具(例えば、PCRサーモサイクリング装置、試験管、インキュベーター等)によって増幅できるほど充分に小さい必要がある。特に、マイクロリアクターを使用することにより、配列の混合、または1つまたは複数の鋳型が優勢になることなく(例えば、PCR選択バイアス;Wagner et al., 1994, Suzuki and Giovannoni, 1996; Chandler et al., 1997, Polz and Cavanaugh, 1998を参照されたい)、複雑な鋳型混合物(例えば、ゲノムDNAサンプルまたは全細胞RNA)の増幅が可能である。
【0032】
上述の制限を考慮すると、マイクロリアクターの最適なサイズは、平均で、直径が100〜200ミクロンであり得る。このサイズのマイクロリアクターを用いると、体積が10 ml未満のマイクロリアクターの懸濁液中で、約600,000メンバーを含むDNAライブラリーの増幅ができる。例えば、増幅方法としてPCRが選択された場合、10 mlのマイクロリアクターは、96チューブの容量を有する、通常のサーモサイクラーの96チューブに適合する。好ましい態様では、600,000個のマイクロリアクターの懸濁液は、1 ml未満の体積を有する。1 ml未満の懸濁液は、通常のPCRサーモサイクラーのチューブ10本中で増幅できる。最も好ましい態様では、600,000個のマイクロリアクターの懸濁液は、0.5 ml未満の体積を有する。
【0033】
本発明の別の態様は、鋳型およびビーズを用いるが、鋳型がビーズに結合していない、核酸増幅を実行する方法に関する。1つの局面では、ビーズは、増幅後に増幅された核酸に結合できるリンカー分子を含む。例えば、リンカーは、活性化できるリンカーであってもよい。そのようなリンカーは周知であり、ストレプトアビジン/ビオチンおよび抗体/抗原のような、温度感受性または塩感受性の結合対を含む。鋳型核酸は、ビーズと共に封入され、増幅され得る。増幅後に、増幅された核酸は、例えば温度または塩濃度の調整を行なうことによって、ビーズに結合され得る。
【0034】
増幅
封入後、ビーズに結合したまたはしていない鋳型核酸は、転写ベースの増幅系を含む任意の適当な増幅方法によって、増幅できる

。ジオリゴヌクレオチド増幅、等温増幅(isothermal amplification)(Walker, G. T. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A) 89:392-396 (1992))、核酸配列ベースの増幅(Nucleic Acid Sequence Based Amplification)(NASBA; 例えばDeiman B et al., 2002, Mol Biotechnol. 20(2):163-79を参照されたい)、全ゲノム増幅(例えば、Hawkins TL et al., 2002, Curr Opin Biotechnol. 13(1):65-7を参照されたい)、鎖置換増幅(SDA)(例えば、Andras SC, 2001, Mol Biotechnol. 19(1):29-44を参照されたい)、ローリングサークル増幅(USP 5,714,320に概説)、および他の周知の技術のような他の方法も、本発明に従って使用できる。
【0035】
好ましい態様では、DNA増幅はPCRによって行われる。本発明に係るPCRは、PCRに必要な全ての試薬を含むPCR溶液と共に標的核酸を封入することによって実施できる。その後、PCRは、当技術分野で周知の任意の適当なサーモサイクリング手法にエマルジョンを曝露することによって実施できる。好ましい態様では、30から50サイクル、好ましくは約40サイクルの増幅が行われる。増幅手順の後に、増幅サイクルに引き続いて1つまたは複数のハイブリダイゼーションおよび伸長サイクルがあることが望ましいが、必ずしも必要ではない。好ましい態様では、10から30サイクル、好ましくは約25サイクルのハイブリダイゼーションおよび伸長が行われる(例えば、実施例に記述の通り)。通常は、各ビーズ上に典型的には少なくとも10,000から50,000,000コピーが固定されるまで、鋳型DNAは増幅される。核酸検出の用途では、鋳型のコピー数は、より少なくてよい。核酸配列決定の用途では、少なくとも200万から5000万、好ましくは約1000万から3000万コピーの鋳型DNAが各ビーズ上に固定される。当業者は、ビーズ(およびその上の捕捉部位)のサイズが、いくつの捕捉プライマーを結合できるか(および各ビーズ上にいくつの増幅鋳型が捕捉できるか)を決定することを認識するだろう。
【0036】
PCRプライマーの設計
PCR増幅のような増幅のための核酸プライマーの選択は、当業者の能力の範囲内である。プライマー設計の選択は、科学論文、例えば、Rubin, E. and A.A. Levy, Nucleic Acids Res, 1996. 24(18):p. 3538-45; およびBuck, G.A., et al., Biotechniques, 1999. 27(3): p. 528-36に記載されている。好ましい態様では、プライマーは2連のPCR/配列決定プライマーの効率的な合成のために、20塩基(5つのテトラマー)に限定され得る。各プライマーは、5'末端に2塩基GCクランプ、3'末端に単一のGCクランプを含む可能性があり、全てのプライマーは類似したTm(+/- 2℃)を有する。好ましい態様では、任意の設計されたプライマー内において、プライマー内のヘアピン構造(内部ヘアピンステム(internal hairpin stems)ΔG>-1.9 kcal/mol)がないことが強く推奨される。別の好ましい態様では、プライマーの2量化も制御され;最大で3塩基のダイマーが許容される。しかし、これは3'末端の最後の6つの塩基でのみ許容され、3'ダイマーの最大許容ΔGは、-2.0 kcal/molである。好ましくは、3'末端がグループ内の他の分子と類似し過ぎているプライマーには、ペナルティが適用される。これにより、1つのプライマーと、別のプライマーの逆相補分子の間のクロスハイブリダイゼーションが避けられる。
【0037】
複雑なサンプル集団中のミスマッチに対するPCRの寛容が報告されてはいるが(Rubin, E. and A.A. Levy. Nucleic Acids Res, 1996. 24(18): p, 3538-45)、プライマーが上述の基準に従って設計されれば、関心対象のゲノム中に存在する相補的領域の可能性は、大して問題にならない。20塩基のプライマーに対する完全に一致する可能性は極度に低い(420)ものの(表1を参照されたい)、関心対象のゲノムのサイズが上昇すると、より短い、非連続的一致が見つかる可能性は、有意に増加する。その結果、アデノウイルスゲノムに関して、20塩基のうち少なくとも10塩基の配列に対する完全な一致が見つかる可能性は、99.35%である。NCBIデータベース(配列情報はアデノウイルスゲノムよりも、約100倍多い)において、16塩基の配列の完全な一致が見つかる可能性は、97%である。ヒトゲノム(約30億塩基)について、17から20塩基の配列の完全な一致が見つかる可能性は、99%である。
【0038】
(表1)プライマーに対して完全に配列が一致する可能性は、一致する長さが低下し、関心対象のゲノムのサイズが上昇すると、増加する

【0039】
しかし、ゲノムの様々な領域に対するプライマーのクロスハイブリダイゼーションは、核酸鋳型を作製するために使用した無作為DNA消化のために、予想よりも問題にはならない。クロスハイブリダイゼーション領域(CHR)は、ほとんど害がない。第1に、CHRが溶液中のPCRプライマーと鋳型の間の完全一致と競合して勝る(out-compete)ことができる可能性は低い。また、3'末端にミスマッチを含むすべてのプライマーは、競合の点でかなり不利になる。CHRが意図したPCRプライマーと競合して勝る場合でも、配列決定プライマーのための下流の部位を持たない切断型のPCR産物を生成することになる。切断型産物が捕捉ビーズに触れて固定された場合、2つの状況のうちの1つが、起きるだろう。CHRが溶液相プライマーに競合して勝った場合、固定された産物は、配列決定プライマー結合部位を持たず、空のピコタイタープレート(PTP)ウェルが生じる。CHRがビーズに結合したプライマーと競合して勝る場合は、配列決定プライマーはまだ存在し、効果は短いインサートだけであろう。どちらの結果も、配列決定の質を大きく低下させるものではない。サンプル調製過程で大量のゲノム材料が使用されることを考慮すると(現在25μg、35 Kbアデノウイルスゲノムを5.29 x 1016コピー含む)、オーバーサンプリングを使用して、完全なCHRを持たない断片を提供し、問題の領域の標準的PCR増幅を可能にすることができる。
【0040】
エマルジョンの破壊およびビーズの回収
核酸鋳型の増幅および増幅されたコピーのビーズへの結合の後、エマルジョンは「破壊」(当技術分野では「解乳化」とも呼ぶ)される。エマルジョンの破壊には多くの方法があり(例えば、USP 5,989,892およびその引用文献を参照されたい)、当業者は、適当な方法を選択できるだろう。本発明では、エマルジョンを破壊する1つの好ましい方法は、さらなる油を用いて、エマルジョンを2つの相に分離することである。その後、油相を除去し、適当な有機溶媒(例えば、ヘキサン)を添加する。混合後、油/有機溶媒相を除去する。この段階は、数回繰り返すことができる。最後に、ビーズの上の水層を除去する。その後、有機溶媒およびアニーリング緩衝液(例えば、1つの適当なアニーリング緩衝液は、実施例に記述されている)を用いてビーズを洗浄し、その後、再度アニーリング緩衝液中で洗浄する。適当な有機溶媒には、メタノール、エタノール等のアルコールが含まれる。
【0041】
増幅産物に結合したビーズは、その後、例えば周知の技術にしたがった配列決定反応で使用するために、水溶液に再懸濁できる。

【0042】
ピロリン酸ベースの配列決定反応(例えば、参照として全体が本明細書に組み入れられるUSP 6,274,320、6,258,568および6,210,891に記述されている)でビーズが使用される場合は、PCR産物の第2の鎖を除去し、ビーズに結合した一本鎖鋳型に配列決定プライマーをアニーリングする必要がある。第2の鎖は、NaOHの添加、低イオン(例えば、塩)強度の適用、酵素消化、または第2の鎖の置換、または熱処理のような、任意の数の周知の方法を用いて、融解できる。この鎖の除去段階の後、ビーズを沈殿させ、上清を廃棄する。ビーズはアニーリング緩衝液に再懸濁し、配列決定プライマーまたは他の非増幅プライマーを添加する。プライマーは、一本鎖の増幅産物にアニーリングする。これは、適当なアニーリング緩衝液および温度条件、例えば、当技術分野の標準的な方法、を用いて実施できる。
【0043】
ビーズの精製
この段階で、ビーズ上の増幅核酸は、ビーズ上で直接または異なる反応容器中で、配列決定できる。本発明の1つの態様では、ビーズを反応容器に移し、核酸を配列決定反応(例えば、ピロリン酸またはサンガーの配列決定)にかけることによって、核酸はビーズ上で直接配列決定される。または、ビーズを単離し、各ビーズから核酸を除去して配列決定することもできる。いずれの場合も、配列決定段階は、各々のビーズ上で行なう。しかし、この方法は商業的に実行可能で技術的にも可能であるものの、ビーズの多くは「陰性の」ビーズ(すなわち、増幅核酸の結合していないビーズ)であるため、あまり有効ではない可能性がある。そのような場合には、以下に概説する任意の過程を用いて、マルチウェル(例えば、ピコタイター)プレートに配分する前に、陰性のビーズを除去できる。
【0044】
目的が、2つまたはそれ以上の異なる核酸鋳型種と結合したビーズの数を最低限に抑えることであれば、高い割合のビーズが陰性である可能性がある。最適のピロリン酸配列決定のためには、各ビーズは、単一の核酸種の複数コピーを含む必要がある。これは、増幅の前に、単一の核酸断片と結合しているビーズの総数を最大化することによって実施できる。例えば、以下の数学モデルを使用できる。
【0045】
M個のビーズと共にN個のDNAが無作為に分散している一般的な場合では、任意の数のDNAと結合している相対的なビーズ集団は、N/M比に依存する。N個のDNAと結合しているビーズの割合R(N)は、以下のポアソン分布を用いて計算できる:
R(N) = exp - (N/M) x (N/M)N/N!(xはかけ算の符号)
【0046】
以下の表2は、様々なN/M(平均のDNA断片対ビーズの比)およびN(ビーズに結合している断片の数)について計算された値を示す。
【0047】
(表2)

【0048】
表2では、1行目は様々なN/M比を示す。R(0)は、DNAを持たないビーズの割合、R(1)は1つのDNA(増幅前)と結合したビーズの割合、およびR(N>1)は1を超える数のDNA(増幅前)と結合したDNAの割合を示す。
【0049】
表2は単一のDNA断片と結合したビーズの最大の割合は0.37であり、これは断片とビーズの比が1対1のときに起こることを示す。この混合物では、ビーズの約63%はDNAと結合していないか、複数のDNA種と結合しているため、配列決定には使用できない。しかし、断片とビーズの比の制御には、複雑な計算が必要であり、変動により、使用可能なビーズの割合がかなり小さな割合となるビーズバッチ(bead batches)が生じる可能性がある。
【0050】
アンプリコンを含むビーズ(少なくとも1つの断片との結合に由来)が、アンプリコンを含まないビーズ(断片と結合していないビーズに由来)から分離できれば、このような非効率性は、大きく改善できる。アンプリコンとは、インビトロ核酸増幅技術によって生成された任意の核酸分子と定義される。効率を改善するために、結合は、低い断片/ビーズ比(N/M<1)を使用することにより実施できる。これにより、複数のDNAと結合したビーズの数を低下できる。DNAを含まないビーズの大部分または全てを除去するために分離段階を使用し、増幅された1つまたは複数のDNAと結合したビーズの濃縮された集団を得られる。この濃縮された集団は、例えば、ピロリン酸配列決定のような、任意の配列決定方法を用いて解析できる。1つのアンプリコンをもつビーズ(N=1)の割合が濃縮されているので、任意の配列決定法が、より効率良く使用できる。
【0051】
例えば、断片とビーズの比の平均が0.1であれば、ビーズの90%はアンプリコンを持たず、9%のビーズは1つのアンプリコン、0.5%のビーズは複数のアンプリコンを有することになる。以下に記載された濃縮により、アンプリコンを持たないビーズの90%を除去するため、配列決定に使用できるビーズ(N=1)の割合が:
1 - (0.005/0.09) = 94%
であるようなビーズの集団が残る。
【0052】
ビーズ混合物に対する断片の希釈とともに、アンプリコンを含むビーズの分離を行なうことにより、最適の非濃縮法に対して、2.5倍の濃縮ができる。例えば、94%/37%(上記表2、N/M = 1を参照されたい)= 2.5。以下に記述される濃縮手順のさらなる利点は、配列決定に使用できるビーズの最終的な割合は、比較的N/Mの変動に感受性がないという点である。したがって、最適のN/M比を得るための複雑な計算は、不要であるか、精度が低いレベルで行なって構わない。したがって、本発明の方法は、あまり訓練されていない人または自動化のために容易に適合できる。これらの方法のさらなる利点は、アンプリコンを持たないビーズはリサイクルまたは再使用できるということである。リサイクルは必要ではないものの、費用または試薬の総量を低下させ、本発明の方法を、例えば、ポータブルサンプリング、遠隔ロボットサンプリングなどのような目的に、より適合しやすくする。さらに、開示された本方法の利点を合わせると(例えば、あまり訓練されていない人への適合、自動化、試薬のリサイクル)、本方法の費用が低減する。濃縮手順は、以下にさらに詳しく記述されている。
【0053】
濃縮過程は、上述のビーズエマルジョン法において増幅されたビーズを処理するために使用できる。増幅は、各々の増幅された核酸分子が同一の配列を3'末端に有するように、設計されている。ヌクレオチド配列は20量体でよいが、25塩基、30塩基、35塩基、40塩基、またはそれ以上のような、15塩基以上の任意の配列で良い。より長いオリゴヌクレオチド末端は機能的ではあるが、必ずしも必要ではない。この3'配列は、当業者によって増幅された核酸の末端に導入され得る。例えば、DNA鋳型の増幅にPCRが使用される場合は、配列はPCRプライマー対の1つのメンバーの一部として、含まれることができる。
【0054】
濃縮過程の模式図は、図3に示されている。この過程では、アンプリコンに結合したビーズを4つの空のビーズと混合し、断片の希釈された増幅ビーズ混合物を作製する。段階1では、アンプリコンの3'末端に相補的なビオチン化プライマーをアンプリコンにアニーリングさせる。段階2では、DNAポリメラーゼおよび4つの天然デオキシヌクレオチド3リン酸(dNTP)をビーズ混合物に添加し、ビオチン化プライマーが伸長される。この伸長は、ビオチン化プライマーとビーズに結合したDNAとの間の結合を強化するためである。ビオチン化プライマーとDNAの結合が強い場合には(例えば、高イオン環境)、この段階を省略できる。段階3では、磁場に引きつけられるストレプトアビジンでコートされたビーズ(本明細書では「磁性ストレプトアビジンビーズ」と呼ぶ)をビーズ混合物に導入する。磁性ビーズは、例えば、Dynal (M290)から、市販されている。ストレプトアビジン捕捉部分は、アンプリコンにハイブリダイズしたビオチン基に結合し、それによりアンプリコン結合ビーズは磁性ストレプトアビジンビーズに結合する。
【0055】
段階5では、混合物の付近に磁場(磁石に代表される)をかけ、それにより磁性ストレプトアビジンビーズ/アンプリコン結合ビーズ複合体が、チューブ中で磁場に対して最も近い側に沿って位置するようになる。アンプリコン結合ビーズの結合していない磁性ビーズも、同じ側に位置すると予測される。アンプリコンを持たないビーズは、溶液中に残る。ビーズ混合物を洗浄し、磁石の結合していないビーズ(例えば、空のビーズ)を除去し、廃棄する。段階6では、「融解」によって、アンプリコン鎖から伸長されたビオチン化プライマー鎖を分離する。この段階は、例えば、熱またはpHの変化によって実施できる。熱は低塩条件(例えば、0.1 x SSCのような低イオン環境)において60℃でよい。pHの変化は、NaOHの添加によって実施できる。次に、混合物を洗浄し、アンプリコン結合ビーズを含む上清を除去するが、磁性ビーズは磁場によって保持される。得られた濃縮ビーズは、DNA配列決定に使用できる。DNA捕捉ビーズ上のプライマーは、上記の段階2のプライマーと同一で構わない。この場合、アンプリコン-プライマー相補鎖(伸長ありまたはなし)のアニーリングが、標的-捕捉親和性の元となる。
【0056】
ビオチンストレプトアビジン対は、様々な捕捉-標的対によって置換できる。例えば、捕捉-標的対は、可逆性(例えば、切断可能)または不可逆性の連結を利用できる。可逆的連結の非限定的な例には、チオール-チオール、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン、ならびにVECTREX(登録商標)アビジンDLA (Vector Laboratories、バーリンゲーム、カリフォルニア州)、CaptAvidin(商標)、NeutrAvidin(商標),およびD-デスチオビオチン(Molecular Probes, Inc.、ユージーン、オレゴン州)を用いた連結が含まれる。
【0057】
上述のように、濃縮過程の段階2は任意である。段階2を省略する場合は、アンプリコン結合ビーズから磁性ビーズを分離する必要がない場合がある。磁性ビーズが結合したアンプリコン結合ビーズは、直接配列決定に使用できる。例えば、配列決定がマイクロタイターまたはピコタイタープレートで行われ、アンプリコン結合ビーズ-磁性ビーズ複合体がプレートのウェル中に適合すれば、分離は必要ない可能性がある。
【0058】
磁性捕捉ビーズの使用は便利ではあるが、捕捉部分は他の結合表面を含む可能性がある。例えば、ストレプトアビジンは、チューブの内表面のような表面に化学的に結合することができる。この場合、増幅されたビーズ混合物は、チューブを通して流し出してもよい。アンプリコン結合ビーズは「融解」するまで保持される傾向があるが、空のビーズは流れ出る。この手法は、ビーズ調製過程の自動化のためには、特に有用である可能性がある。
【0059】
上述の態様は特に有用であるが、ビーズを分離するための他の方法も予見できる。例えば、捕捉ビーズを蛍光部分で標識し、標的-捕捉ビーズ複合体を蛍光性にすることができる。標的捕捉ビーズ複合体は、フローサイトメトリーまたは蛍光セルソーターによって、分離できる。大きな捕捉ビーズを用いることで、ろ過または他の粒子サイズ分離技術によって、分離ができる。捕捉および標的ビーズの両方が、いくつかの他のビーズと複合体を形成することができるので、架橋された捕捉-標的ビーズの塊を凝集させることが可能である。凝集した塊のサイズは大きいために、凝集していない空のビーズを単純に流し去ることによって、分離が可能になる。これらの方法は、例えば、Bauer, J.; J. Chromatography B, 722 (1999) 55-69およびBrody et al., Applied Physics Lett. 74 (1999) 144-146により詳細に記述されている。
【0060】
1つの態様では、本発明は以下の段階を含む、1つまたは複数の核酸を増幅する方法を含む:a) 油中水エマルジョンを形成し、少なくとも1つのマイクロリアクターが単一の核酸鋳型、核酸に結合する能力のある単一のビーズ、および核酸増幅を実行するために必要な試薬を含む増幅反応溶液を含む、複数の水性マイクロリアクターを作製する段階;b) マイクロリアクター中の核酸を増幅し、核酸の増幅されたコピーを作製する段階;およびc) 増幅されたコピーをマイクロリアクター中のビーズに結合する段階。
【0061】
本方法で使用する増幅反応溶液は、ポリメラーゼ連鎖反応条件と適合する緩衝液中に懸濁された、ヌクレオチド3リン酸、熱安定ポリメラーゼ、および核酸プライマーを含む、ポリメラーゼ連鎖反応溶液で良い。ポリメラーゼ連鎖反応は、非対称ポリメラーゼ連鎖反応、または対称ポリメラーゼ連鎖反応で良い。例えば、増幅は、転写に基づく増幅、cDNA末端の迅速な増幅、連続フロー増幅、またはローリングサークル増幅によって実施できる。
【0062】
本方法で使用するために、マイクロリアクターの大部分は、単一の核酸を含み得る。本方法は、少なくとも10,000の核酸、または少なくとも50,000の核酸を用いて実施できる。本方法に使用される各ビーズは、10,000より多くの核酸鋳型増幅コピーを捕捉するために使用できる。様々な態様では、エマルジョンにはさらに乳化安定剤が含まれている。乳化安定剤は、Atlox 4912、Span 80、またはそれらの組み合わせもしくは混合物で良い。エマルジョンは熱安定性(例えば、95℃まで)であってよく、核酸鋳型、ビーズ、および増幅反応溶液を油中へ滴加することにより、形成できる。マイクロリアクターは平均の直径が50〜250μmのサイズを有し得る。
【0063】
別の態様では、本発明は多数の核酸分子を含むライブラリーを含むが、ここで各核酸分子は、異なるビーズに別々に固定されており、各ビーズは各核酸分子のクローン増幅コピーを1,000,000以上含み、ライブラリーは単一の容器中に含まれている。例えば、核酸分子はゲノムDNA、cDNA、エピソームDNA、BAC DNA、またはYAC DNAである可能性がある。ゲノムDNAは、動物、植物、ウイルス、細菌、または真菌のゲノムDNAである可能性がある。好ましくはゲノムDNAはヒトゲノムDNAまたはヒトcDNAである。特定の局面では、例えばセファロースビーズのようなビーズは、2ミクロンから100ミクロンの直径を有する。
【0064】
本発明は、以下の段階を含む、核酸の増幅方法も含む:a) 増幅する核酸鋳型を提供する段階;b) 核酸鋳型に結合することができる、約10から約80 mの直径を有する概ね球状のビーズを含む、固体支持体材料を提供する段階;c) 油中水エマルジョンにおいて核酸増幅反応を実行するために必要な試薬を含む増幅反応溶液中で、核酸鋳型とビーズを混合する段階;d) 核酸鋳型を増幅して、核酸鋳型の増幅コピーを形成する段階;およびe) 増幅コピーをビーズに結合する段階。
【0065】
任意で、核酸の増幅コピーに結合したビーズを、核酸が結合していないビーズから分離するための、濃縮段階を含んでも良い。この濃縮段階は、電気泳動、細胞ソーティング、アフィニティ精製(例えば、核酸に結合する磁性ビーズを用いる)によって行われる場合がある。好ましくは、少なくとも100,000コピーの各標的核酸分子が各ビーズに結合しているか、少なくとも1,000,000コピーの各標的核酸分子が各ビーズに結合しているか、または少なくとも1から20,000,000コピーの各標的核酸分子が各ビーズに結合している。様々な局面では、ビーズはセファロースビーズであり、増幅されたコピーは、抗原/抗体、リガンド/受容体、ポリヒスチジン/ニッケル、またはアビジン/ビオチンのような結合対によって、ビーズに結合する。本方法はさらに、f) 鋳型を有するビーズと磁性ビーズを分離する段階;およびg) 磁性ビーズを磁場を用いて除去する段階も含む可能性がある。この分離は、45℃より高い温度でインキュベートするか、塩基性のpHを有する溶液中で鋳型を有するビーズと磁性ビーズをインキュベートすることによって、実施できる。
【0066】
本発明はさらに、a) 核酸捕捉ビーズ;b) エマルジョン油;c) 1つまたは複数の乳化安定剤;およびd) キットの使用説明書を含む、核酸鋳型の増幅を行なうためのキットも含む。
【0067】
さらに、本発明は以下の段階を含む、核酸のクローン集団を生成するための方法を含む:a) 50〜800 bpの長さの複数の核酸鋳型および核酸鋳型に結合する能力のあるビーズを提供する段階;b) 核酸鋳型を増幅するために必要な試薬を含む生物学的反応溶液中で、核酸鋳型とビーズを混合する段階;およびc) 核酸鋳型、ビーズ、および生物学的反応溶液を含む複数のマイクロリアクターを作製するためにエマルジョンを形成する段階であって、少なくとも1つのマイクロリアクターが、生物学的反応溶液中に封入された単一の核酸および単一のビーズを含み、マイクロリアクターが同一の容器に含まれる段階。
【0068】
本方法に従って、核酸を転写および翻訳し、少なくとも10,000コピーの発現産物を生成することができる。発現産物は、抗原/抗体、リガンド/受容体、6Xhis/ニッケル-ニトリロ3酢酸、およびFLAGタグ/FLAG抗体結合対からなる群より選択される結合対によって、ビーズに結合できる。特定の局面では、本方法は、抗体、抗体断片、および操作された抗体のような、蛋白質のクローン集団を生成する。エマルジョンは、多数の熱安定性マイクロリアクターを含む可能性があるが、ここでマイクロリアクターは直径が50〜200μmで、生物学的反応溶液を含む。生物学的反応溶液は、ポリメラーゼ連鎖反応増幅反応、または転写と翻訳のカップリング反応を実施するための試薬を含む可能性がある。好ましくは、複数のマイクロリアクターが核酸鋳型、例えば、1つまたはそれより少ない核酸鋳型、および核酸鋳型に結合する1つまたはそれより少ないビーズを含む。
【実施例】
【0069】
ビーズエマルジョンPCR
鋳型DNAの捕捉、DNA増幅、および増幅された鋳型に結合したビーズの回収を含む以下の手順は、単一のチューブ中で実行できる。エマルジョンの形であるため、単一のチューブ中でビーズが100〜200μmのマイクロリアクターに物理的に分離し、様々な鋳型がクローン増幅できる。増幅産物の固定は、DNA捕捉ビーズに結合したオリゴヌクレオチドに沿って鋳型を伸長することで行なわれる。典型的には、固定された鋳型のコピー数は、ビーズ1つあたり1000万から3000万コピーの範囲である。単一種の核酸鋳型が複数コピー結合したDNA捕捉ビーズは、PTP上に分配できる。
【0070】
PTP表面に作製された300,000個の75ピコリットルのウェルは、大量に平行して効率良く費用効果高く、短いDNA鋳型の配列決定を行なうための固有のアレイを提供する。しかし、これには各反応ウェルにクローン鋳型がかなり大量に(何百万コピー)必要である。本発明の方法を用いると、標準的なチューブまたはマイクロタイタープレートにおいて、PCR反応を行なうことにより、一本鎖ゲノム鋳型をクローン増幅することができる。鋳型種の単一コピーは、捕捉ビーズと混合し、完全PCR増幅溶液に再懸濁し、乳化してマイクロリアクター(直径100〜200μm)とし、その後PCR増幅を行なうと、元の鋳型種は107倍に増幅される可能性がある。この手順は、以前の方法よりもはるかに単純で費用効果が高い。
【0071】
実施例1:捕捉ビーズに対する核酸鋳型の結合
本実施例は、1つの唯一の核酸鋳型が選択的に結合したビーズ集団の調製を記述する。クローン増幅の成功は、各ビーズに制御された数の鋳型種(0.5から1)を送達することに依存する。過剰な鋳型種が送達されると、混合した鋳型集団のPCR増幅が行われ、意味のある配列データが得られなくなり、鋳型種の数が足りないと、配列決定するための鋳型を含むウェルの数が減少してしまう。これにより、配列決定段階によって提供されるゲノムのカバー範囲が低下する。その結果、定量を繰り返して正確に鋳型濃度を決定し、以下に概説する結合プロトコールに従うことが好ましい。
【0072】
鋳型の品質管理
エマルジョンPCR反応の成功は、鋳型種の質に関連している。増幅段階をいくら詳細に注意深く行なっても、鋳型の質が悪ければ、増幅の成功と意味のある配列データの生成が損なわれてしまう。時間と費用の無駄を避けるためには、本過程のエマルジョンPCR段階を開始する前に、鋳型材料の質を確認することが重要である。好ましくは、ライブラリーはエマルジョンPCRに使用する前に、2つの品質管理段階に合格する必要がある。その濃度および産物の分布を決定する必要がある。理想的には、ライブラリーはアダプターダイマー(例えば、〜90塩基)がほとんどまたは全く見られない異質な断片集団である。また、PCRプライマーを用いた増幅では、例えば、300から500 bpの範囲の産物のスミアが得られる。増幅産物がないということは、アダプターが鋳型に適切に連結されていないことを反映する可能性があり、サイズを問わず単一のバンドが存在することは鋳型が汚染されていたことを反映する可能性がある。
【0073】
PCR溶液の調製
この段階で主に考慮するのは、散在するアンプリコンでPCR反応混合物を汚染しないようにすることである。残存アンプリコンによるPCR反応液の汚染は、配列決定段階の失敗に至る重要な問題の1つである。汚染の可能性を低下させるために、適切な実験室テクニックを用い、反応液の調製はクリーンルームのUV処理した層流フード内で実施する。
【0074】
PCR反応混合物
200μlのPCR反応混合物(600,000ビーズの増幅に充分な量)には、0.2 mlのPCRチューブ内で、以下の試薬を混合する。
【0075】
(表3)

【0076】
チューブは充分にボルテックス攪拌し、鋳型にビーズをアニーリングさせるまで氷上で保管した。
【0077】
DNA捕捉ビーズ
1. 600,000個のDNA捕捉ビーズをストックチューブから1.5 ml遠心チューブへ移した。使用される量は、調製された試薬のビーズ濃度に依存する。
2. ベンチトップミニ遠心機でビーズを沈殿させ、上清を除去した。
3. 段階4〜11は、PCRクリーンルーム内で行った。
4. ビーズを1 mLの1Xアニーリング緩衝液で洗浄した。
5. マイクロ遠心機で捕捉ビーズを沈殿させた。チューブを180°回転させ、再度遠心した。
6. ビーズを含むチューブから上清を約10μl残して除去した。ビーズは乱さなかった。
7. 1 mLの1Xアニーリング緩衝液を添加し、混合液を1分間インキュベートした。その後、ビーズを段階5と同様にして沈殿させた。
8. チューブから内容物を約100μL残して除去した。
9. 残りのビーズと溶液をPCRチューブに移し替えた。
10. 150μLの1Xアニーリング緩衝液を用いて、数回ピペットで出し入れして、1.5 mLチューブを洗浄した。この液を、ビーズを含むPCRチューブに添加した。
11. 段階5と同様にしてビーズを沈殿させ、ビーズ沈殿を乱さないように注意しながら、上清を10μL残して除去した。
12. 定量した一本鎖鋳型DNA(sstDNA)の一部を除去した。最終濃度は200,000-sst DNA分子/μlだった。
13. 希釈したsstDNA 3μlをビーズを含むPCRチューブに添加した。これは、sstDNA 600,000コピーに相当する。
14. チューブを穏やかにボルテックス攪拌し、内容物を混合した。
15. MJサーモサイクラーのEPCRフォルダー中に保存されたプログラム80Annealを用いて、PCRサーモサイクラー中で、sstDNAを捕捉ビーズにアニーリングさせた。以下のプロトコールが用いられた。
・65℃で5分;
・0.1℃/秒で60℃に低下;
・60℃で1分間保持;
・0.1℃/秒で50℃に低下;
・50℃で1分間保持;
・0.1℃/秒で40℃に低下;
・40℃で1分間保持;
・0.1℃/秒で20℃に低下;および
・次の段階の用意ができるまで10℃で保持
【0078】
大部分の場合は、鋳型結合の直後に、ビーズは増幅に使用された。ビーズが直ちに使用されない場合は、必要になるまで4℃で鋳型溶液中で保存した。保存後、ビーズは以下のように処理された。
【0079】
16. 段階6と同様に、ビーズをサーモサイクラーから取り出し、遠心し、そしてビーズを乱さないようにしてアニーリング緩衝液を除去した。
17. 乳化まで、ビーズは氷バケツ中に保存した(実施例2)。
18. 捕捉ビーズには、1つのビーズあたり平均sstDNAが0.5から1コピー結合しており、乳化の準備ができた。
【0080】
実施例2:乳化
本実施例は、1マイクロリットルあたり約3,000のPCRマイクロリアクターを含む熱安定性の油中水エマルジョンを作製する方法を記述する。以下にエマルジョンの調製のためのプロトコールの概要を示す。
【0081】
1. 200μlのPCR溶液を、600,000個のビーズに添加した(いずれの成分も実施例1から得られた)。
2. 溶液をピペットで数回出し入れして、ビーズを再懸濁した。
3. PCR-ビーズ混合液を室温で2分間インキュベートし、ビーズをPCR溶液で平衡化した。
4. 400μlのエマルジョン油をUV照射した2 mlマイクロ遠心チューブに添加した。
5. エマルジョン油のチューブに、「アンプリコンなし」の1/4"磁気攪拌バーを添加した。
【0082】
アンプリコンなしの攪拌バーは、以下のようにして調製した。1/4"攪拌バーを保持するために、大きな攪拌バーを使用した。その後、攪拌バーは:
・DNA-Off(液滴またはスプレー)で洗浄し;
・picopure水ですすぎ;
・キムワイプの端で乾燥させ;そして
・UVを5分間照射した。
【0083】
6. Dynal MPC-Sチューブホルダーの磁気インサートを取り出した。エマルジョン油のチューブをホルダーに設置した。チューブは600 rpmにセットした攪拌プレートの中央に設置された。
7. チューブを充分にボルテックス攪拌し、ビーズを再懸濁した。これにより、凝集したビーズを最低限に抑えた。
8. P-200ピペットを用いて、次の液滴を添加する前に、各液滴が磁気攪拌バーのレベルに沈み、乳化するようにしながら、PCR-ビーズ混合物を2秒ごとに1滴の割合で1滴ずつ回転する油に添加した。溶液はマヨネーズと類似した粘性を有する、均一な乳白色の液体になった。
9. 全てのPCR-ビーズ混合物を添加したら、遠心チューブを数回はじき、表面にある油と乳状のエマルジョンを混合した。
10. さらに5分間攪拌を継続した。
11. 段階9および10を繰り返した。
12. より大きな攪拌バーを用いて、チューブから攪拌バーを引っ張り出すことにより、エマルジョンから攪拌バーを取り出した。
13. エマルジョン10μLを取り出し、顕微鏡スライド上に置いた。エマルジョンをカバースリップで覆い、50Xの倍率(接眼レンズ10X、対物レンズ5X)で観察した。「良い」エマルジョンは、油中にあるPCR溶液の分離した液滴(マイクロリアクター)中に単一のビーズが主に含まれているものである。
14. 以下のようにして、乳化安定剤を含む適当なエマルジョン油混合物が作製された。エマルジョン液の成分は、表4に示されている。
【0084】
(表4)

【0085】
エマルジョン油液は、水槽中でAtlox 4912を60℃にあらかじめ温めて作製した。その後、4.5グラムのSpan 80を94.5グラムの鉱油に添加して、混合液を調製した。その後、温めてあったAtlox 4912を1 g混合液に添加した。溶液を密閉容器に入れ、震盪および反転させて混合した。Atloxが硬化または凝固する徴候があれば、混合液を60℃に温め、さらに震盪して修正した。
【0086】
実施例3:増幅
本実施例は、ビーズ-エマルジョン混合物における鋳型DNAの増幅を記述する。本発明のプロトコールに従うと、過程のDNA増幅段階は、3時間から4時間かかる。増幅の完了後、ビーズの単離過程を始める前に、エマルジョンは最高12時間、サーモサイクラー中に放置してもよい。PCRサーモサイクリングは、50から100μlの乳化反応液を個々のPCR反応チャンバー(すなわちPCRチューブ)に入れて実施された。PCRは以下のようにして行なわれた。
【0087】
1. 1つのピペットチップを用いて、50から100μLのエマルジョンを、約10の別々のPCRチューブまたは96ウェルプレートに移した。この段階では、油中水エマルジョンは、非常に粘性が高い。
2. プレートを密封またはPCRチューブのフタを閉じ、96ウェルプレートアダプターを用いてまたは用いずに、容器をMJサーモサイクラー中に入れた。
3. PCRサーモサイクラーは、以下のプログラムで運転した:
・1サイクル(94℃で4分間)- ホットスタート;
・40サイクル(94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で90秒間);
・25サイクル(94℃で30秒間、58℃で6分間);および
・14℃で保存
4. PCR反応完了後、エマルジョンの破壊およびビーズ回収に進むために、増幅産物を取り出した。
【0088】
実施例4:エマルジョンの破壊およびビーズ回収
本実施例は、どのようにしてエマルジョンを破壊し、増幅鋳型を結合したビーズを回収するかを説明する。好ましくは、PCR後のエマルジョンは、完全な状態のままである。エマルジョンの下の方の層は、目視検査では乳白色の懸濁液のままである。溶液が透明な場合には、エマルジョンは水層と油層に部分的に分離した可能性があり、ビーズの多くが鋳型の混合物を有する可能性が高い。エマルジョンが1本または2本のチューブで破壊されている場合は、これらのサンプルは他のサンプルと混合しない。全てのチューブでエマルジョンが破壊されている場合は、本手順を継続しない。
【0089】
1. 元の600μlサンプルから得られた全てのPCR反応液は、単一のピペットチップを用いて、単一の1.5 mlマイクロ遠心チューブで混合した。上述のように、エマルジョンは非常に粘性が高い。場合によっては、各チューブでピペッティングを数回繰り返した。できるだけ多くの材料を、1.5 mlチューブに移した。
2. 残ったエマルジョンは、各サンプルに50μlのSigma鉱油を添加して、各PCRチューブから回収された。単一のピペットチップを用いて、各チューブで数回出し入れして、残った材料を再懸濁した。
3. この材料を、乳化材料の大部分を入れた1.5 mlチューブに添加した。
4. サンプルを30秒間ボルテックスで攪拌した。
5. Eppendorfのテーブルトップマイクロ遠心機中で、13.2K rpmでサンプルを20分間遠心した。
6. エマルジョンは、大きな白色の界面を有する2つの層に分離した。上部の透明な油層をできるだけ多く除去した。混濁した材料は、チューブに残された。しばしば、白色の層が油層と水層を分離していた。ビーズはしばしばチューブの底に沈殿しているのが観察された。
7. ビーズの上の水層を取り出し、分析用(ゲル分析、Agilent2100、およびTaqman)に保存した。水層の上に白色の材料の界面が残る場合は、下の水層20μlが取り出された。これは、ピペットチップで界面材料を貫通し、その下から溶液を取り出すことによって行なった。
8. PTP製造および表面化学研究室のドラフト(PTP Fabrication and Surface Chemistry Room Fume Hood)内において、残りのエマルジョンに、1 mlのヘキサンが添加された。
9. サンプルを1分間攪拌し、1分間最高速度で遠心した。
10. PTP製造および表面化学研究室のドラフト内において、上部の油/ヘキサン層を除去し、有機廃液入れに入れた。
11. 1 mlの80%エタノール中の1Xアニーリング緩衝液を残りの水層、界面、およびビーズに添加した。
12. サンプルを1分間または白い物質が溶解するまでボルテックスで攪拌した。
13. サンプルを高速で1分間遠心した。チューブを180度回転させ、また1分間遠心した。ビーズの沈殿を乱さないようにして、上清を除去した。
14. 0.1% Tween20を含む1Xアニーリング緩衝液1 mlでビーズを洗浄し、この段階を繰り返した。
【0090】
実施例5:一本鎖の除去およびプライマーのアニーリング
ピロリン酸ベースの配列決定反応にビーズが使用される場合には、PCR産物の2本目の鎖を除去し、ビーズに結合した一本鎖鋳型に配列決定プライマーをアニールさせる必要がある。本実施例は、そのためのプロトコールを記述する。
【0091】
1. ビーズを1 mlの水で洗浄し、1分間の遠心を2回行なった。2回の遠心の間には、チューブを180度回転させた。遠心後、水層を除去した。
2. ビーズを1 mlの1 mM EDTAで洗浄した。チューブを段階1のようにして遠心し、水層を除去した。
3. 1 mlの0.125 M NaOHを添加し、サンプルを8分間インキュベートした。
4. サンプルを軽くボルテックスで攪拌し、マイクロ遠心機中にいれた。
5. 6分後、ビーズを段階1と同様に沈殿させ、できるだけ多くの溶液を除去した。
6. 8分間のNaOHインキュベーションの完了後、1 mlの1Xアニーリング緩衝液を添加した。
7. サンプルを軽くボルテックス攪拌し、ビーズを段階1と同様に沈殿させた。できるだけ多くの上清を除去し、さらに1 mlの1Xアニーリング緩衝液を添加した。
8. サンプルを軽くボルテックスで攪拌し、ビーズは段階1と同様に沈殿させ、800μlの1Xアニーリング緩衝液を除去した。
9. ビーズを0.2 ml PCRチューブに移した。
10. ビーズを移し、ビーズを乱さずにできるだけ多くのアニーリング緩衝液を除去した。
11. 100μlの1Xアニーリング緩衝液を添加した。
12. 4μlの100μM配列決定プライマーを添加した。アニーリングの直前に、サンプルをボルテックスで攪拌した。
13. アニーリングは「80Anneal」プログラムを用いて、MJサーモサイクラー中で行った。
14. 200μlの1Xアニーリング緩衝液でビーズを3回洗浄し、100μlの1Xアニーリング緩衝液中に再懸濁した。
15. Hausser 血球計算板でビーズを計数した。通常、300,000から500,000個のビーズが回収された(3,000〜5,000ビーズ/μL)。
16. ビーズは4℃で保存し、1週間は配列決定に使用できた。
【0092】
実施例6:任意の濃縮段階
以下の手順を用いてアンプリコンを含むビーズの濃縮を行なっても良い。濃縮は必要ではないが、この後のDNA配列決定のような分子生物学技術を、より効率良くするために使用できる。
【0093】
実施例5で得られたアンプリコンを含むセファロースビーズに、10μM(合計500 pmol)のビオチン配列決定プライマー50μlを添加した。ビーズをサーモサイクラーに入れた。実施例のサーモサイクラーアニーリングプログラムによって、ビーズ上のDNAにプライマーをアニーリングさせた。
【0094】
アニーリング後、セファロースビーズを0.1% Tween 20を含むアニーリング緩衝液で3回洗浄した。ビオチン配列決定プライマーにアニーリングしたssDNA断片を含むビーズは、遠心によって濃縮し、BST結合緩衝液200μlに再懸濁した。再懸濁したビーズに10μlの50,000ユニット/mlのBstポリメラーゼを添加し、ビーズを入れた容器を回転装置上に5分間置いた。2μlの10 mM dNTP混合液(すなわち、10 mM dATP、dGTP、dCTPおよびdTTPを各々2.5μlずつ)を添加し、混合液をさらに室温で10分間インキュベートした。0.1% Tween 20を含むアニーリング緩衝液でビーズを3回洗浄し、元の体積のアニーリング緩衝液に再懸濁した。
【0095】
50μlのDynal Streptavidinビーズ(Dynal Biotech Inc.、レークサクセス、ニューヨーク州;10 mg/mlのM270またはMyOne(商標)ビーズ)を0.1% Tween 20を含むアニーリング緩衝液で3回洗浄し、元の体積の0.1% Tween 20を含むアニーリング緩衝液に再懸濁した。その後、Dynalビーズ混合液を再懸濁したセファロースビーズに添加した。混合液をボルテックス攪拌し、室温で回転装置上に10分間置いた。
【0096】
ビーズは2300 g(Eppendorf Centrifuge 5415Dでは500 rpm)で遠心することによって、試験管の底に集められた。ビーズは元の体積の0.1% Tween 20を含むアニーリング緩衝液に再懸濁した。試験管中の混合液は、磁気分離装置(Dynal)に入れられた。ビーズを0.1% Tween 20を含むアニーリング緩衝液で3回洗浄し、元の体積の同じ緩衝液に再懸濁した。アンプリコンを持たないビーズは、以前に述べたように、洗浄段階で除去された。適当なDNA断片を含むセファロースビーズのみが、保持された。
【0097】
磁気ビーズは、500μlの0.125 M NaOHを添加することにより、セファロースビーズから分離した。混合液をボルテックス攪拌し、磁気ビーズは磁気分離によって除去した。溶液中に残ったセファロースビーズは別のチューブに移し、pHが7.6で安定化するまで、400μlの50 mM Tris酢酸で洗浄した。
【0098】
実施例7:ビーズエマルジョンPCRを用いた核酸配列決定
以下の実験は、ビーズエマルジョンPCRの有効性を検定するために行われた。このプロトコールでは、平均直径25〜35μm(製造元の供給による)の600,000個のセファロースビーズを、ビーズ1つあたり3000万から5000万コピーの比率で、捕捉プライマーに共有結合した。捕捉プライマーが共有結合したビーズを、120万コピーの一本鎖アデノウイルスライブラリーと混合した。ライブラリー構築物は、ビーズ上の捕捉プライマーに相補的な配列を含んでいた。
【0099】
アデノウイルスライブラリーを、実施例1に記述される手順を用いて、ビーズにアニーリングした。その後、ビーズを完全PCR溶液に再懸濁した。PCR溶液およびビーズは、実施例2に記述されたのと同一の手順を用いて、2倍の体積の回転するエマルジョン油中に乳化させた。 乳化(封入)されたビーズは、実施例3に概説されるようにして、PCRにより増幅した。エマルジョンは、実施例4に概説されるようにして、破壊した。実施例5の手順を用いて、DNAビーズを一本鎖にし、配列決定プライマーをアニーリングした。
【0100】
次に、454 Life Sciences(ニューヘブン、コネチカット州)のピロリン酸シーケンサーを用いて、ピロリン酸配列決定によって、70,000個のビーズの配列決定を同時に行った(2003年6月6日に本願に伴い出願したUSSN 60/476,592「核酸の増幅および配列決定方法」という名称の、Lohmanらの同時係属中の出願を参照されたい)。70,000個のビーズの複数のバッチを配列決定し、そのデータを以下の表5に示した。
【0101】
(表5)

【0102】
表5は、アデノウイルス配列と、ピロリン酸シーケンサーから得られた配列とを比較したBLAST解析の結果を示す。最初の列はBLASTプログラムで使用された誤差の許容量を示す。最後の列は既知の配列との直接比較により決定された、真の誤差を示す。
【0103】
両端配列決定のためのビーズエマルジョンPCR
実施例8:鋳型品質管理
既述のように、エマルジョンPCR反応の成功は、一本鎖鋳型種の質に関連することが分かった。したがって、エマルジョンPCRプロトコールを開始する前に、2つの異なる品質管理手段によって鋳型材料の質を評価した。まず、一本鎖鋳型の一部を2100 BioAnalyzer (Agilient)で分析した。サンプルに約200から500塩基のサイズの異質な断片集団が含まれていることを確認するために、RNA Pico Chipを使用した。第2に、Bio-Tek FL600プレート蛍光光度計でRiboGreen蛍光アッセイを用いて、ライブラリーを定量した。DNA濃度が5 ng/μlに満たないサンプルは、濃度が低過ぎて使用できないと考えられた。
【0104】
実施例9:DNA捕捉ビーズの合成
1 mL N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)-活性化セファロースHPアフィニティカラム(Amersham Biosciences、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に詰められたビーズをカラムから取り出した。30μmおよび25μmのポアフィルターメッシュセクション(Sefar America、デピュー、ニューヨーク州、米国)を連続して通過させることによって、30〜25μmサイズのビーズが選択された。第1のフィルターを通過したが、第2のフィルターに保持されたビーズを採集して、製品文献(Amersham Pharmaciaプロトコール#71700600AP)に記述されるようにして活性化した。増幅する鋳型

のセンスおよびアンチセンス鎖の5'末端に対応する2つの異なるアミン標識HEG(ヘキサエチレングリコール)長捕捉プライマーを得た。プライマーは、両端配列決定、すなわち、増幅産物の第1および第2の鎖の配列決定ができるように、増幅産物の両方の鎖を捕捉するように設計されている。捕捉プライマーは、20 mMリン酸緩衝液pH 8.0に溶解し、最終濃度を1 mMとした。各プライマー3μlをふるい分けた30〜25μmビーズに結合させた。その後、ビーズはビーズ保存緩衝液(50 mM Tris、0.02% Tweenおよび0.02%アジ化ナトリウム、pH 8)中で保存した。ビーズは血球計算板(Hausser Scientific、ホーシャム、ペンシルベニア州、米国)を用いて計数し、必要になるまで4℃で保存した。
【0105】
実施例10:PCR反応混合物の調製および調合
他の全ての一本鎖分子の増幅技術と同様に、反応液に外来アンプリコンまたは他の実験からの残存アンプリコンが混入していると、配列決定に干渉する恐れがある。汚染の可能性を低下させるために、PCR反応混合物はPCRクリーンルームにあるUV処理の層流フード中で調製された。600,000ビーズのエマルジョンPCR反応1つあたり、1.5 mlチューブ中で以下の試薬が混合された:225μlの反応混合液(1XPlatinum HiFi緩衝液(Invitrogen))、1 mM dNTP、2.5 mM MgSO4 (Invitrogen)、0.1% BSA、0.01% Tween、0.003 U/μl熱安定性PPi-ase (NEB)、

および0.2 U/μl Platinum Hi-Fi Taqポリメラーゼ(Invitrogen)。25μlの反応液を取り出し、陰性対照として使用するために、200μlのPCRチューブ中に保存した。反応液および陰性対照の両方を、必要となるまで氷上で保存した。
【0106】
実施例11:DNA捕捉ビーズへの鋳型種の結合
配列決定のためのクローンDNA増幅の成功は、各ビーズに制御された数の鋳型種を送達することに関連している。以下に記述する実験では、典型的な標的鋳型濃度は、捕捉ビーズ1つあたり0.5鋳型コピーであると決定された。この濃度では、ポワソン分布によるとビーズの61%には鋳型が結合しておらず、30%には鋳型が1種結合し、9%には2つまたはそれ以上の鋳型種が結合している。過剰の鋳型種が送達されると、単一のビーズ上で混合した集団(2つまたはそれ以上の種)が結合し、そして増幅されることになり、意味のある配列データが得られなくなる。しかし、送達される種の数が少な過ぎると、鋳型を含むウェルの数が減り(ビーズ1つあたり1種)、配列決定のカバー範囲が減少する。したがって、一本鎖ライブラリー鋳型の濃度が重要であると考えられた。
【0107】
鋳型核酸分子を、以下の方法によって、UV処理層流フード中で、DNA捕捉ビーズ上の相補的プライマーにアニーリングした。ビーズ保存緩衝液(上記実施例9を参照されたい)中に懸濁された600,000個のDNA捕捉ビーズを、200μlのPCRチューブに移した。チューブはベンチトップミニ遠心機で10秒間遠心し、180度回転させ、さらに10秒間遠心して均一な沈殿物を形成させた。上清を除去し、ビーズを200μlのアニーリング緩衝液(20 mM Tris、pH 7.5および5 mM酢酸マグネシウム)で洗浄した。チューブを5秒間ボルテックスで攪拌してビーズを再懸濁し、上述のようにビーズを沈殿させた。ビーズの上の約10μlのみを残してビーズの上清を除去し、さらに200μlのアニーリング緩衝液を添加した。さらにビーズを5秒間ボルテックスで攪拌し、1分間静置し、上述のように沈殿させた。10μlのみを残して上清を廃棄した。
【0108】
次に、300,000分子/μlの鋳型ライブラリー1.5μlをビーズに添加した。チューブを5秒間ボルテックスで攪拌して内容物を混合し、MJサーモサイクラー中で行なう制御された変性/アニーリングプログラムにより、ビーズに鋳型をアニーリングさせた。プログラムに従い、80℃で5分間インキュベートし、70℃まで0.1℃/秒で低下させ、70℃で1分間インキュベーション、60℃まで0.1℃/秒で低下させ、60℃で1分間保持し、50℃まで0.1℃/秒で低下させ、50℃で1分間保持し、20℃まで0.1℃/秒で低下させ、20℃で保持した。アニーリング過程の完了後、ビーズをサーモサイクラーから取り出し、上述のように遠心し、アニーリング緩衝液を注意深くデカンテーションした。捕捉ビーズには、各ビーズあたり平均0.5コピーの一本鎖鋳型DNAが結合しており、これは使用するまで氷上で保存した。
【0109】
実施例12:乳化
乳化過程では、1μlあたり10,000の別々のPCRマイクロリアクターを含む熱安定性の油中水型エマルジョンが作製される。これは、単一分子、標的ライブラリーの個々の分子のクローン増幅のための基質となる。単一反応のための反応液およびDNA捕捉ビーズは、以下のようにして乳化された。UV処理した層流フードにおいて、200μlのPCR溶液(実施例10より)を600,000個のDNA捕捉ビーズ(実施例11より)を含むチューブに添加した。ビーズはピペッティングを繰り返して再懸濁した。その後、PCRビーズ混合液を室温で少なくとも2分間インキュベートし、ビーズとPCR溶液を平衡化した。同時に、450μlのエマルジョン油(軽油(Sigma)中、4.5% (w:w)Span 80、1% (w:w) Atlox 4912(Uniqema、デラウェア州))を、無菌の1/4インチ磁気攪拌バー(Fischer)を含む、フラットトップの2 mlの遠心チューブ(Dot Scientific)に分注した。その後、このチューブを特注のプラスチックチューブ保持ジグに入れ、これを450 RPMに設定したFisher Isotempデジタル攪拌ホットプレート(Fisher Scientific)の中央に入れた。
【0110】
PCRビーズ溶液を15秒間ボルテックス攪拌して、ビーズを再懸濁した。その後、プラスチックの安全シリンジニードル(HenrySchein)を付けた1 mlのディスポーザブルのプラスチックシリンジ(Benton-Dickenson)中に溶液を吸引した。ポンプを水平ではなく垂直に向けるアルミニウムベースを用いて改造したシリンジポンプ(Cole-Parmer)にシリンジを置いた(例えば、図4〜6)。エマルジョン油を入れたチューブを攪拌プレート上に置き、この中心がプラスチックシリンジニードルの下になり、磁気攪拌バーが適切に回転するようにした。シリンジポンプは5.5 ml/hrで0.6 mlを注入するように設定した。PCRビーズ溶液は、一滴ずつ、油中エマルジョンに添加された。回転する油中に落ちる時に、液滴がチューブの側面に接触しないように注意した。
【0111】
エマルジョンが形成されたら、乳化過程および乳化後の分注段階のいずれにおいても、エマルジョンの攪拌を抑えるように注意した。ボルテックス攪拌、速いピペッティング、または過剰な混合はエマルジョンを破壊し、個々のマイクロリアクターを破壊することが分かった。エマルジョンを形成する際には、2つの溶液が、マヨネーズのような粘性を持った乳白色の均一な混合液になった。シリンジの内容物を回転する油に添加した。その後、エマルジョンチューブを保持ジグから取り外し、エマルジョンの上端の残存油層が消えるまで、人さし指で軽くはじいた。チューブを保持ジグに戻し、さらに1分間、磁気攪拌バーで攪拌した。攪拌バーは、チューブの外側に沿って、磁気回収ツールを動かすことによってエマルジョンから取り出し、攪拌バーを廃棄した。
【0112】
P100ピペッターを用いて、チューブの中央から20μlのエマルジョンを取り出し、顕微鏡スライド上に載せた。剪断力を抑えるために、大きめのピペットチップが用いられた。50Xの倍率でエマルジョンを観察し、エマルジョンが、油中において直径30〜150ミクロンのPCR溶液のマイクロリアクター中にある、単一ビーズから主に構成されていることを確認した(図7)。目視検査後、エマルジョンを直ちに増幅した。
【0113】
実施例13:増幅
エマルジョンは、7〜8個の別々のPCRチューブに分注した。各チューブには、約75μlのエマルジョンが入れられた。チューブを密封し、上述の25μlの陰性対照と共に、MJサーモサイクラー中に入れた。以下のサイクルタイムを使用した:94℃で4分のインキュベーションを1サイクル(ホットスタート)、94℃で30秒間および68℃で150秒間のインキュベーションを30サイクル(増幅)、ならびに94℃で30秒間および68℃で360秒間のインキュベーションを40サイクル(ハイブリダイゼーションおよび伸長)。PCRプログラムの完了後に、チューブを取り出し、直ちにエマルジョンを破壊するか、反応液を破壊過程の開始まで最高16時間10℃で保存した。
【0114】
実施例14:エマルジョンの破壊およびビーズの回収
増幅後、エマルジョンの破壊(油層と水層の分離)を検査した。破壊されていないエマルジョンは合わせて1.5 mlのマイクロ遠心チューブに入れ、時折見られる破壊されたエマルジョンは、廃棄した。エマルジョンサンプルの粘性が非常に高いので、各PCRチューブには、かなりの量が残った。チューブに残ったエマルジョンは、各PCRチューブに鉱油を75μl添加し、混合液をピペッティングして回収した。この混合液は乳化材料の大部分を含む1.5 mlのチューブに添加した。その後、1.5 mlチューブを30秒間ボルテックス攪拌した。その後チューブは、ベンチトップマイクロ遠心機中で、13.2K rpm(最高速度)で20分間遠心した。
【0115】
遠心後、エマルジョンは大きな白色の界面を有する2つの層に分離した。上部の透明な油層は廃棄し、濁った界面の材料はチューブに残した。化学ドラフト(chemical fume hood)内で、下層および界面層に1 mlのヘキサンを添加した。混合液を1分間ボルテックス攪拌し、ベンチトップマイクロ遠心機の最高速度で1分間遠心した。上部の油/ヘキサン層は除去し、廃棄した。その後、残りの水層、界面、およびビーズに1 mlの80%エタノール/1Xアニーリング緩衝液を添加した。この混合液を1分間または界面の白色材料が溶解するまでボルテックス攪拌した。その後、サンプルはベンチトップマイクロ遠心機の最高速度で1分間遠心した。チューブを180度回転させ、さらに1分間遠心した。ビーズの沈殿を乱さないようにして、上清を注意深く除去した。
【0116】
白色のビーズ沈殿物は1 mlの0.1% Tween20を含むアニーリング緩衝液で2回洗浄した。洗浄液は廃棄し、各洗浄ごとに、上述のようにしてビーズを沈殿させた。沈殿物は1 ml Picopure水で洗浄した。ビーズは、上記で使用した遠心-回転-遠心の方法で沈殿させた。水層を注意深く除去した。その後、沈殿と上清の除去の前に中間の設定で2秒間、ビーズを軽くボルテックスで攪拌したこと以外は、上記と同様にしてビーズを1 mlの1 mM EDTAで洗浄した。
【0117】
捕捉ビーズ上に固定された増幅DNAに、一本鎖DNAを得るための処理をした。2番目の鎖は、塩基性融解溶液中でインキュベートすることによって除去された。その後1 mlの融解溶液(0.125 M NaOH、0.2 M NaCl)をビーズに添加した。沈殿物は、中間の設定で2秒間ボルテックス攪拌することによって再懸濁し、チューブはThermolyne LabQuakeチューブローラーに3分間設置した。その後、ビーズを上述のようにして沈殿させ、上清を注意深く除去して廃棄した。残った融解溶液は、1 mlのアニーリング緩衝液を添加することにより中和した。その後、ビーズを中間の速度で2秒間ボルテックス攪拌した。前記のようにビーズを沈殿させ、上清を除去した。遠心後に800μlのアニーリング緩衝液しか除去しなかったこと以外は同様に、アニーリング緩衝液による洗浄を繰り返した。ビーズと残ったアニーリング緩衝液は、0.2 ml PCRチューブに移された。ビーズは直ちに使用するか、最高48時間まで4℃で保存した後、濃縮過程に進んだ。
【0118】
実施例15:ビーズの濃縮
ビーズの塊には、増幅され、固定されたDNA鎖を有するビーズ、および空または無効のビーズが含まれていた。上述のように、ビーズの61%は、増幅過程で鋳型DNAを持っていないと計算された。濃縮は、鋳型DNAを有するビーズを選択的に単離し、配列決定効率を最大化するために使用された。濃縮過程は以下に詳細に述べられている。
【0119】
実施例14から得られた一本鎖ビーズを遠心-回転-遠心法で沈殿させ、ビーズを乱さないようにしてできるだけ多くの上清を除去した。ビーズに15μlのアニーリング緩衝液を添加し、その後、100μMのビオチン化40塩基濃縮プライマー

を2μl添加した。プライマーは、ビーズに固定された鋳型の3'末端の、結合した増幅および配列部位(各々20塩基の長さ)に相補的だった。溶液は中間の設定で2秒間ボルテックス攪拌することにより混合し、濃縮プライマーはMJサーモサイクラー中で制御された変性/アニーリングプログラムを用いて、固定されたDNA鎖にアニーリングした。プログラムでは、以下のサイクルタイムと温度が使用された:65℃で30秒間インキュベーション、58℃まで0.1/秒で低下、58℃で90秒間インキュベーション、および10℃で保持。
【0120】
プライマーがアニーリングしている間に、Dynal MyOne(商標)ストレプトアビジンビーズを穏やかに攪拌して再懸濁した。次に、20μlのMyOne(商標)ビーズを、1 mlの増強溶液(2M NaCl、10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA、pH 7.5)を含む1.5 mlのマイクロ遠心チューブに添加した。MyOne(商標)ビーズ混合物は、5秒間ボルテックスで攪拌し、チューブをDynal MPC-S磁石中に設置した。常磁性ビーズはマイクロ遠心チューブの側面に沈殿した。MyOne(商標)ビーズを乱さないようにして、上清を注意深く除去し、廃棄した。チューブを磁石から取り出し、増強溶液を100μl添加した。チューブを3秒間ボルテックス攪拌してビーズを再懸濁し、必要になるまで氷上で保存した。
【0121】
アニーリングプログラムが完了したら、DNA捕捉ビーズと濃縮プライマーを含むPCRチューブに、100μlのアニーリング緩衝液を添加した。チューブを5秒間ボルテックス攪拌し、内容物を新しい1.5 mlのマイクロ遠心チューブに移した。濃縮プライマーの捕捉ビーズへのアニーリングに使用されたPCRチューブは、200μlのアニーリング緩衝液で1回洗浄し、洗浄液を1.5 mlチューブに添加した。ビーズは1 mlのアニーリング緩衝液で3回洗浄し、2秒間ボルテックス攪拌し、前記と同様に沈殿させた。上清を注意深く除去した。3回目の洗浄後、ビーズは1 mlの氷冷した増強溶液で2回洗浄した。前記と同様にビーズをボルテックスで攪拌し、沈殿させ、上清を除去した。ビーズを150μlの氷冷した増強溶液に再懸濁し、ビーズ溶液を洗浄したMyOne(商標)ビーズに添加した。
【0122】
ビーズ混合液を3秒間ボルテックス攪拌し、LabQuakeチューブローラー上で、室温で3分間インキュベートした。ストレプトアビジンでコーティングしたMyOne(商標)ビーズを、DNA捕捉ビーズ上に固定された鋳型にアニーリングしたビオチン化濃縮プライマーに結合させた。その後、ビーズを2,000 RPMで3分間遠心し、その後、ビーズが再懸濁するまで、2秒間のパルスでボルテックス攪拌した。再懸濁したビーズを氷上に5分間静置した。その後、500μlの冷却した増強溶液をビーズに添加し、チューブをDynal MPC-S磁石中に設置した。ビーズを60秒間静置し、磁石で沈殿させた。その後、過剰なMyOne(商標)および無効なDNA捕捉ビーズを含む上清を注意深く除去し、廃棄した。
【0123】
MPC-S磁石からチューブを取り出し、ビーズに1 mlの冷却した増強溶液を添加した。ビーズは穏やかに指ではじいて再懸濁した。強く混合するとMyOne(商標)とDNA捕捉ビーズの間の結合が破壊される恐れがあるので、この時点ではビーズをボルテックスで攪拌しないことが重要である。ビーズを磁石に戻し、上清を除去した。この洗浄をさらに3回繰り返し、すべての無効な捕捉ビーズを確実に除去した。アニーリングした濃縮プライマーとMyOne(商標)ビーズを取り出すために、DNA捕捉ビーズを400μlの融解溶液中に再懸濁し、5秒間ボルテックス攪拌し、磁石を用いて沈殿させた。濃縮されたビーズを含む上清は、別の1.5 mlマイクロ遠心チューブに移した。濃縮されたビーズの回収を最大化するために、さらに400μlの融解溶液をMyOne(商標)ビーズを含むチューブに添加した。前記同様にビーズをボルテックスで攪拌し、沈殿させた。2回目の洗浄で得られた上清を取り出し、最初の濃縮されたビーズの塊と一緒にした。使用済みのMyOne(商標)ビーズのチューブは廃棄した。
【0124】
濃縮DNA捕捉ビーズのマイクロ遠心チューブは、Dynal MPC-S磁石に設置して、残りのDynal MyOne(商標)ビーズを沈殿させた。上清の濃縮ビーズは、第2の1.5 mlのマイクロ遠心チューブに移し、遠心した。上清を除去し、1 mlのアニーリング緩衝液でビーズを3回洗浄して、残った融解溶液を中和した。3回目の洗浄後、上清800μlを除去し、残ったビーズと溶液を0.2 ml PCRチューブに移した。濃縮ビーズは2,000 RPMで3分間遠心し、上清をデカンテーションした。次に、20μlのアニーリング緩衝液および2つの異なる100μMの配列決定プライマー

を3μl添加した。チューブを5秒間ボルテックス攪拌し、MJサーモサイクラーに設置し、以下の4段階アニーリングプログラムを行なった:65℃で5分間インキュベーション、50℃まで0.1℃/秒で低下、50℃で1分間インキュベーション、40℃まで0.1℃/秒で低下、40℃で1分間保持、15℃まで0.1℃/秒で低下、15℃で保持。
【0125】
アニーリングプログラムの完了後、サーモサイクラーからビーズを取り出し、10秒間遠心して沈殿させた。チューブを180度回転させ、さらに10秒間遠心した。上清をデカンテーションして廃棄し、200μlのアニーリング緩衝液をチューブに添加した。ビーズは5秒間のボルテックス攪拌により再懸濁し、前記同様に沈殿させた。上清を除去し、ビーズを100μlのアニーリング緩衝液に再懸濁した。この時点で、ビーズはMultisizer 3 Coulter Counter (Beckman Coulter)を用いて定量した。ビーズを4℃で保存し、少なくとも1週間は安定だった。
【0126】
本明細書の全体を通して、技術水準および内容を記述するために、様々な特許、公開特許出願、および学術論文が引用された。そのような開示全体は、参照として本明細書に組み入れられる。
【0127】
本明細書では特定の態様が詳細に開示されたが、これは説明のための例示としてのみ行われたのであり、添付の請求の範囲を制限する意図はない。特に、請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明に様々な置換、変更、および修正ができると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 油中水型エマルジョンを形成して、複数の水性マイクロリアクターを作製する段階であって、マイクロリアクターの少なくとも1つが単一の核酸鋳型、核酸に結合できる単一のビーズ、および核酸増幅を行なうために必要な試薬を含む増幅反応溶液を含む段階;
(b) マイクロリアクター中で核酸を増幅して、核酸の増幅されたコピーを形成する段階;および
(c) 増幅されたコピーをマイクロリアクター中のビーズに結合させる段階
を含む、1つまたは複数の核酸の増幅方法。
【請求項2】
マイクロリアクターの大部分が単一の核酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
増幅反応溶液が、ポリメラーゼ連鎖反応の条件に適合する緩衝液中に懸濁されたヌクレオチド3リン酸、熱安定性ポリメラーゼ、および核酸プライマーを含むポリメラーゼ連鎖反応溶液である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
ポリメラーゼ連鎖反応が、非対称ポリメラーゼ連鎖反応である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ポリメラーゼ連鎖反応が、対称ポリメラーゼ連鎖反応である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
エマルジョンがさらに乳化安定剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
乳化安定剤が、Atlox 4912、Span 80、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
エマルジョンが熱安定性である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
エマルジョンが95℃まで熱安定性である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
増幅が、転写ベースの増幅、cDNA末端の迅速な増幅、連続フロー式増幅(continuous flow amplification)、またはローリングサークル増幅(rolling circle amplification)からなる群より選択される方法によって実行される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
エマルジョンが、核酸鋳型、ビーズ、および増幅反応溶液を油へ滴加することによって形成される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
少なくとも10,000の核酸を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項13】
少なくとも50,000の核酸を用いて行われる、請求項1記載の方法。
【請求項14】
マイクロリアクターの平均サイズが直径50μm〜250μmである、請求項1記載の方法。
【請求項15】
段階(c)の後に、各ビーズが核酸鋳型の10,000より多くの増幅コピーを捕捉している、請求項1記載の方法。
【請求項16】
複数の核酸分子を含む単一の容器に入れられたライブラリーであって、各核酸分子が異なるビーズに別々に固定され、各ビーズが各核酸分子の1,000,000を超えるクローン増幅コピーを含む、ライブラリー。
【請求項17】
核酸分子が、ゲノムDNA、cDNA、エピソームDNA、BAC DNA、およびYAC DNAからなる群より選択される、請求項16記載のライブラリー。
【請求項18】
ゲノムDNAが、動物、植物、ウイルス、細菌、および真菌のゲノムDNAからなる群より選択される、請求項16記載のライブラリー。
【請求項19】
ゲノムDNAがヒトゲノムDNAまたはヒトcDNAである、請求項18記載のライブラリー。
【請求項20】
ビーズの直径が2ミクロンから100ミクロンである、請求項16記載のライブラリー。
【請求項21】
ビーズがセファロースビーズである、請求項16記載のライブラリー。
【請求項22】
(a) 増幅される核酸鋳型を提供する段階;
(b) 核酸鋳型に結合できる、直径が約10μm〜約80μmの概ね球状のビーズを含む、固体支持体材料を提供する段階;
(c) 油中水型エマルジョンにおいて核酸増幅反応を実行するために必要な試薬を含む増幅反応溶液において、核酸鋳型とビーズを混合する段階;
(d) 核酸鋳型を増幅して核酸鋳型の増幅コピーを形成する段階;および
(e) ビーズに増幅したコピーを結合させる段階
を含む、核酸の増幅方法。
【請求項23】
(a) 核酸捕捉ビーズ;
(b) エマルジョン油;
(c) 1つまたは複数の乳化安定剤;
(d) 請求項1または請求項22記載の方法を実行するための説明書、
を含む、核酸鋳型の核酸増幅を実行するためのキット。
【請求項24】
核酸が結合していないビーズから、核酸の増幅コピーに結合するビーズを濃縮する段階をさらに含み、濃縮段階がアフィニティ精製、電気泳動、および細胞ソーティングからなる群より選択される、請求項1または請求項22記載の方法。
【請求項25】
濃縮段階が、核酸に結合する磁性ビーズを用いたアフィニティ精製によって実行される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
各ビーズに、少なくとも100,000コピーの各標的核酸分子が結合している、請求項1または22記載の方法。
【請求項27】
各ビーズに、少なくとも1,000,000コピーの各標的核酸分子が結合している、請求項1または22記載の方法。
【請求項28】
各ビーズに、少なくとも1〜20,000,000コピーの間の各標的核酸分子が結合している、請求項1または22記載の方法。
【請求項29】
ビーズがセファロースビーズである、請求項1または22記載の方法。
【請求項30】
増幅コピーが、抗原/抗体、リガンド/受容体、およびポリヒスチジン/ニッケルからなる群より選択される結合対によってビーズに結合する、請求項1または22記載の方法。
【請求項31】
結合対がアビジン/ビオチンである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
鋳型を有するビーズと磁性ビーズを分離する段階;および
磁場を用いて磁性ビーズを除去する段階、
をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項33】
分離が、45℃を超える温度でのインキュベーションまたは鋳型を有するビーズと磁性ビーズを塩基性pHの溶液中でインキュベートすることにより達成される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
(a) 長さが50〜800 bpの複数の核酸鋳型および核酸鋳型に結合できるビーズを提供する段階;
(b) 核酸鋳型の増幅に必要な試薬を含む生物学的反応溶液中で、核酸鋳型とビーズを混合する段階;
(c) エマルジョンを形成して、核酸鋳型、ビーズ、および生物学的反応溶液を含む複数のマイクロリアクターを作製する段階であって、少なくとも1つのマイクロリアクターが生物学的反応溶液中に封入された単一の核酸鋳型および単一のビーズを含み、マイクロリアクターが同一の容器中に入れられている、段階
を含む、核酸のクローン集団の生成方法。
【請求項35】
核酸の転写および翻訳を行い、少なくとも10,000コピーの発現産物を産出するための段階をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
抗原/抗体、リガンド/受容体、6Xhis/ニッケル-ニトリロ3酢酸、およびFLAG タグ/FLAG抗体結合対からなる群より選択される結合対によって、発現産物がビーズに結合している、請求項35記載の方法。
【請求項37】
蛋白質のクローン集団を生成する、請求項35記載の方法。
【請求項38】
蛋白質が抗体、抗体断片、および操作された抗体からなる群より選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
直径が50μm〜200μmであって生物学的反応溶液を含む多数の熱安定性マイクロリアクターを含むエマルジョン。
【請求項40】
生物学的反応溶液が、ポリメラーゼ連鎖反応増幅を実行するための試薬を含む、請求項39記載のエマルジョン。
【請求項41】
生物学的反応溶液が、転写と翻訳のカップリング反応を実行するための試薬を含む、請求項39記載のエマルジョン。
【請求項42】
複数のマイクロリアクターが核酸鋳型を含む、請求項40または41記載のエマルジョン。
【請求項43】
複数のマイクロリアクターが、1つまたはそれより少ない核酸鋳型を含む、請求項42記載のエマルジョン。
【請求項44】
複数のマイクロリアクターが、核酸鋳型に結合する1つまたはそれより少ないビーズを含む、請求項43記載のエマルジョン。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−90635(P2013−90635A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−282220(P2012−282220)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2012−258136(P2012−258136)の分割
【原出願日】平成16年1月28日(2004.1.28)
【出願人】(505286730)454 ライフ サイエンシズ コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】