説明

ビーズリーダ

ビーズベースのアッセイシステムの検出領域でビーズに接着している分析物の正規化量を決定する方法であって、a)分析物の複合体に第1光を蛍光もしくは化学発光させるか、または染料を放出させるステップと、b)検出領域でビーズから発光される第1光の積分強度、または検出領域でビーズから放出される染料の濃度、または両方を測定するステップと、c)分析物がビーズに接着しているか否か、あるいはどれだけ多く接着しているかに関係なく、検出領域で光をビーズと相互作用させるステップと、d)分析物に依存しないビーズとの相互作用の結果生じる第2光を測定するステップと、e)第1光の積分強度、または染料の濃度、または両方から、かつ測定された第2光から、分析物の正規化量を決定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2009年11月30日に出願された米国仮特許出願No.61/264873からの35 USC 119(e)下の優先権の利益を主張する。上述の文献の内容は参考としてここに完全に述べられているかのように組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、その一部の実施形態では、ビーズを用いて流体中の分析物を定量するためのシステムおよび方法に関し、さらに詳しくは、分析物をビーズに接着させて、蛍光によって測定する、生化学的、生物学的または生物医学的アッセイに関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0003】
Rothらの米国特許出願公開第2007/0281311号明細書は、蛍光染料またはタグに結合された微小球またはビーズからの発光を測定するためのシステムを記載しており、蛍光染料またはタグは生物反応を示すかあるいはそれに略比例する。ビーズは磁性であり、CCDによってビーズが一度に多数のビーズずつ撮像される間、撮像容積内の磁石によって固定化される。該システムは、Chandlerらの米国特許第5981180号明細書に記載されていると言われる、蛍光粒子が連続的に一度に1つずつ検出される、フローサイトメータを用いる先行技術のシステムと比較される。
【0004】
Rothの米国特許出願公開第2007/0064990号明細書は、均一濃度の蛍光物質を有する粒子の第1画像、および未知の濃度の蛍光物質を有する粒子の第2画像を解析する方法を含む、蛍光粒子の画像を解析するための画像処理方法を記載している。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一部の実施形態の態様は、磁場および振動を用いて検出領域にビーズを集中させ、かつ/またはビーズに接着している分析物の濃度の測定とは別個に、検出領域におけるビーズの数を光学的に測定する、分析物のビーズベースのアッセイに関する。
【0006】
本発明の例示的実施形態では、ビーズベースのアッセイシステムの検出領域でビーズに接着している分析物の正規化量を決定する方法であって、
a)分析物の複合体に第1光を蛍光もしくは化学発光させるか、または染料を放出させるステップと、
b)検出領域でビーズから発光される第1光の積分強度、または検出領域でビーズから放出される染料の濃度、または両方を測定するステップと、
c)分析物がビーズに接着しているか否か、あるいはどれだけ多く接着しているかに関係なく、検出領域で光をビーズと相互作用させるステップと、
d)分析物に依存しないビーズとの相互作用の結果生じる第2光を測定するステップと、
e)第1光の積分強度、または染料の濃度、または両方から、かつ測定された第2光から、分析物の正規化量を決定するステップと、
を含む方法を提供する。
【0007】
任意選択的に、分析物の正規化量を決定するステップは、
a)第1光の積分強度、または染料の濃度、または両方から、検出領域でビーズに接着している分析物の量を決定すること、
b)測定された第2光から、検出領域のビーズの量を推定すること、および
c)推定されたビーズの量を用いて分析物の量を正規化すること、
を含む。
【0008】
任意選択的に、第2光を測定するステップは検出領域の画像を取得することを含み、ビーズの量を推定することは、画像処理ソフトウェアを用いて画像内のビーズを計数することを含む。
【0009】
任意選択的に、第2光を測定するステップは検出領域から第2光の積分強度を測定することを含み、分析物の正規化量を決定するステップは第2光の積分強度を用いることを含む。
【0010】
任意選択的に、ビーズの量を推定することは、検出領域からの第2光の積分強度だけを用いて推定すること、または検出領域からの第2光の積分強度だけおよび1つ以上の較正パラメータを用いることを含む。
【0011】
任意選択的に、ビーズの量を推定することは、検出領域からの第2光の積分強度に比例する量を推定することを含む。
【0012】
任意選択的に、相互作用はビーズからの光の反射を含む。
【0013】
追加的に、または代替的に、相互作用はビーズを介する光の屈折を含む。
【0014】
追加的に、または代替的に、相互作用は、光によるビーズからの励起蛍光発光を含む。
【0015】
任意選択的に、複合体は、第2光とは異なる波長範囲の第1光を発光させる。
【0016】
追加的に、または代替的に、複合体は、時間と共に変動するスペクトルの励起光をビーズに照射することによって、第2光とは異なる時間依存性で第1光を蛍光発光させられる。
【0017】
任意選択的に、相互作用は、ビーズによる光の遮断または吸収、および光によるビーズ間の領域からの反射またはビーズ間の領域の通過を含む。
【0018】
任意選択的に、第1光、第2光、または両方の積分強度を測定することは、フィルタを通過した後の光を測定することを含む。
【0019】
任意選択的に、複合体は第1光を発光させられ、第1光および第2光を測定するときにビーズは同一場所に位置する。
【0020】
任意選択的に、ビーズは磁性であり、方法はまた、磁場を用いてビーズを検出領域に引き寄せながらセルを振動させることによって、検出領域にビーズを集中させるステップをも含む。
【0021】
さらに、本発明の例示的実施形態では、ビーズに接着している分析物を定量するためのシステムであって、
a)ビーズとビーズに接着している分析物とが保持される検出領域と、
b)ビーズに接着している分析物の量に応じて、ビーズからの蛍光もしくは化学発光の積分強度またはビーズからの染料の放出のうちの1つ以上を測定する第1検出器と、
c)分析物がビーズに接着しているか否か、あるいはどれだけ多く接着しているかに関係なく、検出領域でビーズと相互作用する光を発生する光源、
d)相互作用の結果としてビーズから受光する光を測定する、第1検出器と同一かまたは異なる第2検出器と、
e)第1および第2検出器の測定値を使用して、ビーズに接着している分析物の正規化量を決定するコントローラと、
を備えたシステムを提供する。
【0022】
任意選択的に、システムはまた、第1検出器が第1光を測定しているときに、第1光を第1検出器に優先的に進入させるように位置する第1フィルタをも備える。
【0023】
追加的に、または代替的に、システムはまた、第2検出器が第2光を測定しているときに、第2光を第2検出器に優先的に進入させるように位置する第2フィルタをも備える。
【0024】
さらに、本発明の例示的実施形態では、分析物を定量するために使用される磁気ビーズをセルの検出領域に集中させる方法であって、磁場を用いてビーズを検出領域に引き寄せながらセルを振動させるステップを含む方法を提供する。
【0025】
任意選択的に、セルを振動させるステップは、30Hzから200Hzの間の卓越周波数で振動させることを含む。
【0026】
任意選択的に、卓越周波数は60Hzから100Hzの間である。
【0027】
追加的に、または代替的に、セルを振動させるステップは、少なくとも0.5mmのピーク間振幅(peak to peak amplitude)で振動させることを含む。
【0028】
任意選択的に、ピーク間振幅は少なくとも1mmである。
【0029】
任意選択的に、セルを振動させるステップは、ビーズが検出領域の縁部に位置する場合に、水平成分、垂直成分、または両方について、ビーズの少なくとも大部分に対し、ビーズの質量とビーズの最大加速度との積が、ビーズに掛かる磁力の0.3倍から10倍になるように、振動させることを含む。
【0030】
さらに、本発明の例示的実施形態では、ビーズに接着している分析物を定量するためのシステムであって、
a)ビーズ用の載置面を持つ検出セルと、
b)ビーズが載置面上に位置するときに、ビーズを載置面の検出領域に向かって引き寄せるように位置する磁石と、
c)磁石がビーズを検出領域に向かって引き寄せるときに、検出領域におけるビーズの集中を容易にするように検出セルを振動させる振動器と、
d)ビーズに接着している分析物の量に応じて、検出領域におけるビーズからの蛍光もしくは化学発光の積分強度、または検出領域でビーズから放出される染料の濃度のうちの1つ以上を測定する第1検出器と、
e)第1検出器の測定値を使用して、ビーズに接着している分析物の量を決定するコントローラと、
を備えたシステムを提供する。
【0031】
任意選択的に、システムはまた、
a)分析物がビーズに接着しているか否か、あるいはどれだけ多く接着しているかに関係なく、検出領域でビーズと相互作用する光を発生する光源と、
b)相互作用の結果としてビーズから受光する第2光を測定する、第1検出器と同一かまたは異なる第2検出器と、
をも備え、コントローラが第1および第2検出器の測定値を使用して、ビーズに接着している分析物の正規化量を決定する。
【0032】
任意選択的に、振動器は、検出領域外の載置面の少なくとも一部分に対し磁石がビーズを引き寄せるときに、ビーズの少なくとも一部分に対し、ビーズの質量と検出セルの最大加速度との積が、ビーズと載置面との間の静止摩擦力より大きくなるように、検出セルを振動させることができる。
【0033】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0034】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0035】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサ、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレイおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0037】
【図1】図1は、本発明の例示的実施形態に係る、分析物を定量するためのシステムの略平面図である。
【0038】
【図2】図2は、図1のシステムを用いて実行される、分析物を定量する方法のフローチャートである。
【0039】
【図3A】図3Aは、本発明の例示的実施形態に係る、図1のシステムと同様のシステムにおける検出セルならびに関連する照明および検出光学系の略側面図である。
【0040】
【図3B】図3Bは、本発明の別の例示的実施形態に係る、図1のシステムと同様のシステムにおける検出セルならびに関連する照明および検出光学系の略側面図である。
【0041】
【図3C】図3Cは、本発明のさらに別の例示的実施形態に係る、図1のシステムと同様のシステムにおける検出セルならびに関連する照明および検出光学系の略側面図である。
【0042】
【図3D】図3Dは、本発明のさらに異なる例示的実施形態に係る、図1のシステムと同様のシステムにおける検出セルならびに関連する照明および検出光学系の略側面図である。
【0043】
【図4A】図4Aは、本発明の例示的実施形態に係る、検出セルおよび関連照明光学系の略側面図である。
【0044】
【図4B】図4Bは、本発明の異なる例示的実施形態に係る、検出セルおよび関連照明光学系の略側面図である。
【0045】
【図5A】図5Aは、本発明の例示的実施形態に係る、振動器および磁石を持つ検出セルの略平面図である。
【0046】
【図5B】図5Bは、図5Aの検出セルの略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、その一部の実施形態では、ビーズを用いて流体中の分析物を定量するためのシステムおよび方法に関し、さらに詳しくは、分析物をビーズに接着させて、蛍光または化学発光を使用するアッセイによって、または酵素結合アッセイによって測定する、生化学的または生物学的アッセイに関するが、それに限定されない。そのようなアッセイは生物医学的研究のみならず、臨床用にも使用することができる。
【0048】
アッセイは、特定のリガンドに結合する分析物の既知の傾向に基づいて、流体試料中の既知の分析物、例えば血液試料中の生物学的マーカの有無または濃度を示すことができる。追加的に、または代替的に、アッセイは、例えば抗体の標的を見つけるために、特定のリガンドに結合する任意の分析物の有無または濃度を、たとえ今まで知られていなかった分析物でも、示すことができる。
【0049】
本発明の一部の実施形態では、アッセイの結果は、疾病または他の異常な医学的状態の診断を直接提供するものではない。本発明のこれらの実施形態の一部では、アッセイの結果は、診断を下す際に証拠として、例えば診断を下す際に使用される複数の要因の1つとして使用することができる。他の場合、例えばアッセイが純粋に生物学的研究に使用される場合、アッセイの結果は、たとえ間接的にでも診断を下すためには使用されない。本発明の他の実施形態では、アッセイは診断的アッセイであり、例えば疾病のマーカの有無または濃度を見出して、診断結果を直接提供する。
【0050】
本発明の一部の実施形態の態様は、分析物が接着するビーズを用いて、流体中の分析物のアッセイを実行するためのシステムおよび方法に関し、該システムおよび方法では、分析物の複合体からの蛍光または化学発光を励起させ、かつ検出領域における全てのビーズからの発光の積分強度を測定することによって、ビーズに接着している分析物の量を測定し、かつ分析物の量を正規化するために存在するビーズの数について別個の光学的測定を行なう。
【0051】
代替的に、または追加的に、ビーズに接着している分析物の量は、例えば適切な酵素を用いて分析物の複合体に触媒作用を及ぼして染料または化学発光物質をビーズの周囲の液体中に放出させ、かつ液中の染料または化学発光物質の濃度を光学的に測定することによって、測定される。例えばPierce社によって販売されたSuperSignal Chemiluminescent Substrateは、分析物がビーズに付着したリガンドに結合する場合に、HRP酵素を用いて化学発光物質の励起を触媒する。しかし、蛍光発光を用いてビーズに付着している分析物の量を測定すると、蛍光発光のタイミングをより正確に制御することができるという、化学発光または酵素結合アッセイ法に勝る潜在的利点がある。本書における記載は一般的に、蛍光発光を用いてビーズに接着している分析物の量を測定することに言及するが、分析物の量を測定するためにそのような化学発光または酵素結合アッセイ法も使用することができること、および明記する場合を除き、記載の他の態様も一般的にこれらのケースに当てはまることを理解されたい。
【0052】
本書で使用する場合、「分析物の複合体からの蛍光発光」または「分析物複合体からの蛍光発光」、および「分析物複合体を励起して蛍光発光させる」のような表現は、分析物の分子自体からの蛍光発光、およびより通常のケースの分析物の分子に直接または間接的に付着された蛍光タグ分子からの蛍光発光の両方を含む。
【0053】
そのようなシステムは、一度に1つのビーズだけを検出器に通過させる必要のある複雑な流体工学を必要としないので、ビーズを一度に1つしか測定しない先行技術のシステムに勝る潜在的利点を有する。それはまた、分析物複合体からの蛍光発光がアレイ検出器を用いて撮像され、かつ画像処理ソフトウェアを用いてビーズが計数される、先行技術のシステムに勝る潜在的利点をも有する。そのようなアレイ検出器は、個々のビーズの低発光パワーを測定するために、非常に高価な冷却アレイ検出器でなければならないからである。代わりに、検出領域の全ビーズにおける分析物複合体からの積分蛍光発光を、任意選択的に比較的低感度かつ安価にできる単一の検出器によって、測定することができる。代替的に、単一の検出器は比較的高価かつ高感度の検出器であり、それは多くのビーズからの積分発光を測定し、かつ信号対雑音比は重要ではないので、アレイ検出器より正確な発光パワーの測定を行なうことができるという潜在的利点を有する。
【0054】
分析物の量を正規化するために使用される、存在するビーズの数の別個の光学的測定もまた、検出領域の全ビーズによって反射、屈折、発光、シルエット化された積分光または検出領域の全ビーズとの他の相互作用を測定する、単一の安価な検出器によって行なうことができる。本書で使用する場合、「ビーズとの相互作用」とは、分析物に関連しない蛍光タグのような、ビーズに直接または間接的に付着した分子との相互作用を含む。代替的に、存在するビーズの数は、ビーズを計数するためにアレイ検出器および画像ソフトウェアを使用することによって測定することができるが、ビーズの数を測定するために使用される光は、ビーズに接着している分析物によって発光する蛍光より明るくすることができるので、アレイ検出器は特に高感度かつ高価なものである必要はない。
【0055】
本発明の一部の実施形態の態様は、分析物を接着させた磁気ビーズを用いて流体中の分析物のアッセイを実行するためのシステムおよび方法であって、振動および磁場の組合せを用いてビーズを検出領域に集中させて成る、システムおよび方法に関する。振動がビーズと表面との間の静止摩擦力を克服し、磁力に応答してビーズを移動させる一方、磁場の勾配はビーズの位置する表面上でビーズを検出領域に引き寄せる。
【0056】
ビーズを検出領域に集中させることは、特にビーズが単一の層にかなりの高密度に集中する場合、検出領域におけるビーズの数はあまり大きく変動しないという潜在的利点を有するので、ビーズが集中しない場合より正確にビーズの数を推定することができる。これは、検出領域の大部分にわたって、六角形のパッキングで、ビーズが最大可能な単層密度近くまで1層に充填される場合、特に当てはまる。たとえビーズがその最大可能な密度近くまで充填されない場合でも、検出領域にランダムに分布するビーズの数の百分率変化は、存在するビーズの数が多ければ多いほど、例えばビーズの数の平方根に比例して低下する。検出領域におけるビーズの数が多いほど、一般的に分析物複合体からの蛍光発光を励起しかつその強度を測定することによって行なわれる、ビーズに接着している分析物の量を測定する場合の信号対雑音比も改善される。ビーズ1個当たりの発光パワーは一般的にかなり低いので、ビーズを検出領域に高密度に充填させることが有利である。これは、例えば単一の検出器によって検出領域全体の積分蛍光発光を測定する場合、特に当てはまる。
【0057】
任意選択的に、ひとたびビーズが検出領域に集中すると、検出領域全体の分析物複合体からの積分蛍光発光が測定され、かつ上述の通り、蛍光発光によって測定された分析物の量を正規化するために、ビーズの個数について別個の光学的測定が行なわれる。
【0058】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0059】
システム全体の構成および方法
ここで図面を参照すると、図1は、流体の試料中の分析物を定量するための、例えば血液または血清の試料中の生体分子を定量するためのシステム100を示す。システム100を使用する方法については、図2のフローチャート200を参照しながら説明する。システム100は、多数の試料を自動的にまたは半自動的に定量するように設計されるが、記載する方法は、一度に1つの試料ずつ手動で使用することもできる。
【0060】
202で、解析される試料をウェルプレート106の異なるウェルに添加する。204で、流体工学サブシステム102は、リザーバ104内の流体中に懸濁しているビーズを取り出し、試料が入っているウェルプレート106のウェル内にビーズを移送する。代替的に、ビーズは試料の前にウェル内に入れられる。流体工学サブシステムは任意選択的に真空および流体工学または微細流体工学部品、例えばポンプ、弁および管を使用して、ビーズの懸濁液および他の流体を異なるリザーバとウェルプレートとの間で移動させる。任意選択的に、分配アーム108がビーズを複数のウェルに、例えばウェルプレートの1列の全てのウェルに同時に移送し、次いで任意選択的に、分配アームが移動し、かつ/またはウェルプレートが移動し、試料が定量される全てのウェルにビーズが配置されるまで、この動作が別のウェル群、例えば次の列に対し繰り返される。同じ手順を使用して、リザーバ110内の緩衝溶液およびリザーバ112内の水のような他の流体を、下述するように、ウェルにかつウェルから移送することができる。
【0061】
206で、分析物の分子がビーズの表面のリガンドに接着するように、ビーズは試料と共にインキュベートされる。例えばリガンドは、ビーズの表面を被覆して、分析物の分子を認識しかつ捕捉する抗体を含むことができる。任意選択的に、ウェルプレートは、ウェルプレートベース114に結合された1つ以上の振動器によって振動され、それはビーズおよび試料をより効率的に混合し、かつ分析物がビーズに接着するために必要な時間を短縮させる。ビーズおよび試料の混合はまた、流体工学サブシステムによって混合物を繰返しウェルから取り出しかつそれをウェルに戻すことによっても促進することができる。混合を促進するこれらの手段はまた、ビーズが別の物質と共にインキュベートされる下述のステップのいずれにも使用することができる。
【0062】
208で、試料および他の流体は任意選択的に、流体工学サブシステム102によってウェルから取り出され、かつ任意選択的にビーズは、210で、例えばリザーバ112からの水またはリザーバ110からの緩衝流体により洗浄される。任意選択的に、ベース114は洗浄を促進するために洗浄中にウェルプレートを振動させ、これもまた任意選択的に、下述の通り、ビーズが洗浄される他の場合のいずれにおいても行なわれる。任意選択的に、ビーズは磁性であり、ベース114に取り付けられた磁石は、試料および他の流体が取り出されるとき、およびビーズの洗浄後に水または緩衝流体が取り出されるときに、ビーズをウェル内に維持する。例えば、磁石は、流体または水がウェルの底から抜き取られる間、ビーズを各ウェルの側壁に引き寄せるように配設することができ、あるいは磁石は、流体または水が頂部から吸い出される間、ビーズを各ウェルの底に引き寄せることができる。代替的に、または追加的に、流体を通過させることができるがビーズを通過させることのできないフィルタが、吸引または重力によってウェルから取り出される流体が通過する管路に配置される。このフィルタは例えばウェルの底に配置され、流体または水がウェルから取り出されるときに、ビーズはウェルに残るが、流体または水が取り出されないときには、管路は例えば弁によって閉鎖される。これらの手順もまた任意選択的に、ビーズが洗浄される他の場合のいずれにおいても行なわれる。取り出された流体または水は任意選択的に、流体工学サブシステム102によって排液処分場所116に移送される。
【0063】
212で、ビーズに接着している分析物がもしあれば、任意選択的に蛍光タグが付けられる。このステップは、分析物自体がすでに蛍光性を持つ場合、省くことができる。任意選択的に、蛍光タグの代わりに化学発光タグが使用され、多くの文脈では、本書で蛍光発光に言及する場合、代わりに化学発光を使用してもよいことを理解されたい。追加的に、または代替的に、分析物は、下で説明する通り、酵素結合アッセイで使用される染料分子をタグ付けすることができる。
【0064】
任意選択的に、分析物の蛍光タグ付けは次のステップを含む。最初に、リザーバ118に貯蔵されている検出抗体は、流体工学サブシステム102によってビーズの入ったウェルに、任意選択的にリザーバ110からの緩衝液と共に添加される。ビーズの表面に被覆された捕捉抗体と同様とすることのできる検出抗体は、ビーズに接着している分析物に付着する。ビーズおよび検出抗体は一緒にインキュベートされる。次いで、検出抗体を含有する流体が任意選択的に取り出され、ビーズは任意選択的に洗浄される。
【0065】
検出抗体は、蛍光タグの分子に付着するように改変されるので、ビーズを被覆する捕捉抗体とは異なってもよい。例えば検出抗体はビオチン化することができる。検出抗体が分析物の分子に付着され、かつビーズが任意選択的に洗浄された後、リザーバ120からの蛍光タグ物質が流体工学サブシステム102によってウェルに添加される。適切な蛍光タグ物質は例えば、ビオチン化抗体に結合するストレプトアビジンPEである。他の蛍光タグ物質、および抗体を改変する他の方法も可能である。蛍光タグ物質はビーズと共にインキュベートされ、流体は取り出され、ビーズは任意選択的に214で洗浄される。
【0066】
216で、ビーズは任意選択的に、流体中に懸濁したまま、流体工学サブシステム102によってウェルプレート106から検出ステーション122に移送される。本発明の一部の実施形態では、ビーズは小液滴の流体中に懸濁され、次いでそれらは、ビーズを移送するために、従来の流体工学システムを用いる代わりに、例えば静電気により操作される。追加的に、または代替的に、液滴を操作するこの技術は、検出ステーション122内、またはウェルプレート106内の検出領域にビーズを配置するためにビーズを移動させるために使用することができる。
【0067】
検出ステーション122で、分析物は、蛍光タグからの蛍光発光によって、または任意選択的に、分析物が蛍光性を持つ場合には分析物自体からの蛍光発光によって検出される。上述の通り、これらのケースを両方とも本書では分析物複合体からの蛍光発光という。任意選択的に、検出ステーション122は複数の検出セルを有し、ウェルプレート106の異なるウェルからのビーズは、ビーズを検出セルに配置するための分配アーム124を用いて、検出ステーション122の異なるセルに移送される。例えばウェルプレート106の1列のウェルからのビーズは、検出ステーション122の対応するセルに移送される。任意選択的に、複数のウェルから複数の対応するセルへの移送は同時に行なわれる。代替的に、移送は順次行なわれ、例えば検出ステーション122は、ビーズを異なるセルに移送する準備中に、分配アーム124に対して相対的に移動する。
【0068】
検出ステーション122は、各検出セル内の分析物複合体からの蛍光発光を検出する光学系および検出器サブシステム126を含む。任意選択的に、検出ステーションが2つ以上のセルを有する場合に、セルからセルに移動する関連光学系を持つ単一の検出器セットが存在する。代替的に、関連光学系を持つ2つ以上の検出器セット、または各検出セルに1つの検出器セットが存在し、異なる検出セルにおける測定を同時に行なうことができる。複数の検出器セットを同時に使用すると、検出器および光学系のコストおよびそれらの制御の複雑度が増大するが、大量の試料の測定の速度を高めることができる。
【0069】
任意選択的に、検出器ステーション122は関連振動器および/または磁石をも有し、それらの機能については下述する。
【0070】
本発明の一部の実施形態では、ビーズは別個の検出ステーションに移送されず、ウェルプレート106が検出ステーションとしても機能し、かつ各ウェルが検出器セルとして機能する。これらの実施形態では、ウェルからの蛍光発光を検出する関連光学系を持つ1つ以上の検出器セットが存在する。例えば、1列のウェルの数と同数の検出器セットを持つアームが存在し、該アームは1列のウェルから次の列のウェルに移動し、該アームは1列の全てのウェルで蛍光発光を同時に検出するために使用することができる。代替的に、ウェルからウェルに移動する単一の検出器セットだけが存在するか、あるいは2つ以上のウェルから同時に、または全てのウェルから同時に蛍光発光を検出することのできる様々な数の検出器セットが存在することができる。
【0071】
ウェルプレート106が検出ステーションとして使用される場合には、任意選択的に、ベース114に関連付けられた振動器および磁石も、下述の通り、検出プロセスで使用される。この場合、上述したインキュベーションおよび洗浄手順中に流体が交換されるときには、磁石はビーズをウェルの側部に引き寄せるために使用される一方、下述の通り検出手順中には、磁石はウェルの中心の検出領域にビーズを引き寄せるために使用されるので、磁石は任意選択的にインキュベーション手順と検出手順との間に、ウェルに対して相対的に移動する。
【0072】
218で、ビーズは任意選択的に、ビーズが入った各検出セルの検出領域に集中される。220で、光学系および検出器サブシステムは、各検出セルの検出領域のビーズに接着している分析物複合体からの蛍光発光を測定して、分析物の量を決定する。任意選択的に、光学系および検出器サブシステムはまた、分析物の量をビーズの数に対して正規化するために、各検出領域のビーズの量の別個の光学的測定をも行なう。分析物のこの正規化量は、222で検査されている試料中の分析物の濃度を、各検出セルに対して決定するために使用される。ビーズを集中させかつ分析物の量およびビーズの数を測定する方法は、以下でさらに詳細に記載する。アッセイがビーズに接着している分析物の量を検出するために使用される場合、分析物複合体に触媒作用を及ぼして、タグ付けされた染料分子を検出セル内のビーズの周りの流体中に放出させる触媒、例えば酵素が検出セル内に導入される。次いで検出セル内の染料の濃度が、1つ以上の光学検出器によって、例えば異なる波長の光を流体に通し、かつ異なる波長でどれだけの光が吸収されるかを比較することによって、測定される。本発明の一部の実施形態では、染料分子の代わりに、またはそれに加えて、化学発光分子が使用され、流体中のその濃度が発光光を測定することによって測定される。そのような酵素免疫測定(ELISA)法の概論は、2010年11月25日にwww.wikipedia.org/wiki/ELISAからダウンロードされたELISAに関するWikipediaの記事に掲載されている。
【0073】
コントローラ128、例えばパーソナルコンピュータは任意選択的に、検出器によって得られた生データから試料中の分析物の濃度を計算するために使用される。この計算は、異なる検出器、例えばビーズの数を測定する検出器および分析物の量を測定する検出器の異なる感度および/または積分時間を考慮することができる。任意選択的に、コントローラ128によって行なわれる計算はその都度、最初に試料中の分析物の様々な既知の濃度を用いて試験を実行し、かつ検出器からの信号を観察することによって較正される。例えば、試験は任意選択的に、3ないし4桁の範囲を網羅する5ないし8つの異なる濃度の分析物に対して実行され、かつ所与の濃度での試験は、誤差を低減するために、任意選択的に1回以上繰り返されて平均される。試験結果は任意選択的に、試料中の分析物の濃度を、ビーズで測定されビーズの数に対して正規化された分析物の量に関連付ける較正曲線を得るために、モデルに、例えば5つのパラメータを持つモデルに当てはめられる。
【0074】
コントローラ128、または1つ以上の異なるコントローラはまた任意選択的に、流体工学サブシステム102の機能、分配アーム108および124の動き、ウェルプレート106および検出器ステーション122に関連付けられた振動器の動作、磁石が可動である場合その動き、ユーザインタフェース、ならびに下述する光学系および検出器サブシステムの機能の1つ以上を制御するためにも使用される。ユーザインタフェースは任意選択的に、システムが無人のままでいる間に自動的にタスクを実行することができるように、ユーザが複合体プロトコルを作成することを可能にする。それはまた、任意選択的にユーザに動作モードを推奨し、任意選択的に結果を解析する解析モジュールを含み、任意選択的にプレートにおける試料の配置をユーザにグラフィックで示し、かつ任意選択的に、測定が完了したときと同様に測定が依然として行なわれている間にも、測定の結果を実時間で表示する。
【0075】
光学系および検出器の構成
図3Aないし3Dは、分析物複合体からの蛍光発光を測定するため、および検出セルの検出領域内のビーズの総数を測定するために使用される光学系および検出器サブシステムの異なる構成を示す。これらの図目は一定の縮尺で描かれたものではなく、かつ図面に示す角度は正確ではなく、例えば光ビームを90度に反射させるミラーは、光ビームの方向に対して45度に向けられているように見えないことがあるが、実際の装置ではそれらは45度に向けられる。
【0076】
図3Aは、波長λ、またはλを含む波長範囲の光ビームを生成する光源302を持つ光学系および検出器の構成300を示す。便宜上、光ビームまたは別の光ビームはときどき、波長λまたは異なる波長を持つ光のある性質のため、特定の挙動を示すと記載されるが、このような場合に、光がある範囲の波長を有するときは、これらの性質はその範囲の他の波長、またはビームのパワーの大部分を含む波長の範囲にも当てはまることを理解されたい。波長λは、分析物複合体からの蛍光発光を励起させる波長から選択される。任意選択的に、光源302は例えば半値全幅が100nm未満、または50nm未満、または20nm未満の比較的狭い範囲の波長を生成するので、下述するように、光源302からの迷光は、他の波長、例えばビーズからの蛍光発光を検出するように意図された検出器から容易に除去することができる。
【0077】
光源302からの光ビームは任意選択的にレンズによって集束され、ビームスプリッタ304、例えば半透鏡に到達する。偏光ビームスプリッタも使用することができるが、偏光は一般的に、光とビーズとの相互作用に役割を果たさない。光ビームの一部分は任意選択的に、ビームスプリッタ304によって反射して、光源302の強度を監視する検出器306に進む。検出器306からの信号は、光源の強度の変動に対して、下述する他の検出器からの出力信号を補正するために使用することができる。追加的に、または代替的に、検出器306からの信号は、フィードバックによって光源302の強度を制御し、それを一定に維持するために使用することができる。代替的に、検出器306は存在せず、光源302の強度は任意選択的に、例えば光源302に内蔵する他の手段によって監視および/または制御される。
【0078】
光ビームの残りはビームスプリッタ304を通過し、検出セル312の底面に位置するように図示されたダイクロイックミラー308に到達し、それは波長λの光をビーズ310の方向に反射させる。任意選択的に、光はレンズによってビーズ上に集束され、検出セル312の透明なカバーを通過する。
【0079】
波長λの光は、波長λの分析物複合体からの蛍光発光を励起させる。波長λについて上で説明した通り、本書で使用する語句「波長λ」は「波長λを含む波長範囲」の省略表現とみなすことができ、この波長の光の性質に関する記述は、その範囲の全ての波長、または少なくとも蛍光発光のパワーの大部分を含む波長範囲に適用されることを意図している。これらの見解は、下で用いる語句「波長λ」に対しても適用される。
【0080】
波長λの発光光のみならず、ビーズから反射した波長λの光も、もしあればレンズを介してダイクロイックミラー308に戻る。ダイクロイックミラー308は、ビーズから反射した波長λの光を反射するが、ビーズから蛍光発光した波長λの光を通過させる。波長λの通過光は検出器316によって測定される。任意選択的に、分析物複合体からの蛍光発光に由来するはずのない他の波長の迷光を除去するフィルタ318が、検出器316の前に存在する。任意選択的に、ビーズが任意選択的に集中する検出セル312の検出領域、例えば検出セル312の底面の領域に由来しない光を遮断するストップ320も存在する。ストップ、フィルタ、およびレンズは、発光光ビームの経路に沿って図示する順番に位置する必要はない。検出領域からの光を検出する、記載の他の検出器はまた、たとえ図面に図示されていない場合でも、検出器が受光する光を検出領域に由来する光に限定するストップをも有することができ、これらのストップは、光路に沿ってレンズ、フィルタ、または他の光学素子の前、後、または間に位置することができる。光路上でダイクロイックミラーの前に位置する単一のストップは、光ビームがダイクロイックミラーによって分割された後、その光路上を進む光を受光する2つ以上の異なる検出器からの光を制限するために使用することができる。検出器はいずれも、検出器が受光する所望の波長範囲の、かつ所望の位置からの光を増大し、かつ/または検出器が受光する他の波長の、かつ他の場所からの光を低減させるために、レンズ、フィルタ、偏光子、拡散器、および他の光学素子を任意の順番に、たとえそれらが明示的に記載されていない場合でも、使用することもできる。
【0081】
検出器316は、比較的低い強度の発光蛍光を用いてビーズの有用な画像を生成するのではなく、むしろ検出領域のビーズからの、分析物複合体からの発光蛍光の積分強度に応答する。任意選択的に、検出器316は単一の検出器であり、それに到達する光の全強度に対応する単一の出力信号を生成し、それは検出領域におけるビーズ上の分析物複合体から発光する光の積分強度に依存する。代替的に、検出器316は検出素子のアレイを含むことができる。各素子の出力はハードウェアまたはソフトウェアを用いて合計され、検出領域のビーズ上の分析物複合体から発光される光の積分強度に依存する出力信号を生成する。この場合、アレイの個々の素子は、分析物複合体からの発光蛍光を用いてビーズの有用な画像を生成するのに充分に高感度である必要はない。
【0082】
分析物の量を測定するために、蛍光発光の代わりに、またはそれに加えて、化学発光を使用する場合には、発光光は、蛍光発光の場合のようにビーズの光学的励起によって励起されるのではなく、ビーズに接着している分析物複合体の化学発光を誘発するために、化学物質が検出セルに添加されることを理解されたい。分析物の量を測定するために酵素結合アッセイ法を使用する場合には、ビーズに接着している分析物複合体を誘発して、ビーズの周りの流体中に染料分子を放出させるために、適切な酵素が検出セルに添加され、かつ流体中の染料分子の濃度を決定するために、染料分子によって吸収された1つ以上の波長の光のわずかな部分を測定するのに、検出器316のような検出器が使用される。任意選択的に、この場合、光源302は染料分子の濃度を測定するための光源として使用され、かつこれらの1つ以上の波長の光を検出セルに伝達し、かつ流体を通し、次いで検出器まで伝達するために、フィルタ、ミラー、または上述したようないずれかの他の光学素子が任意選択的に使用される。
【0083】
電解液の濃度を決定するために、蛍光発光、化学発光、酵素、または他の方法など、使用される方法に関係なく、任意選択的にビーズからの反射光を使用してビーズの数を推定する。分析物複合体による蛍光発光の場合、ダイクロイックミラー308から反射した波長λのビーズからの反射光は、ビームスプリッタ304に戻り、そこからその一部が、任意選択的にレンズおよびストップを介して、検出器314に反射される。検出器314によって受光された光の測定値は、検出セルの検出領域におけるビーズの数を推定するために使用される。任意選択的に、検出器314は、検出領域でビーズから反射した積分光に応じて出力信号を生成する。ビーズによって反射する光の量はビーズに接着している分析物の量に依存せず、ビーズの数のみに依存するので、この信号は検出領域におけるビーズの数を推定するために使用することができる。代替的に、または追加的に、検出器314は、検出領域におけるビーズの画像を生成するアレイ検出器である。ビーズからの反射光は比較的明るいので、検出器314は、比較的安価なCCDまたはCMOSアレイ、例えば消費者市場向けに販売されているデジタルカメラ内のアレイを含むことができる。検出器314によって生成される画像は次いで、画像処理ソフトウェアによって解析され、検出領域におけるビーズの数のカウントを生成する。このように画像処理を用いることは、充分に明瞭な画像を形成するのに充分な光がビーズから反射し、かつ検出器314に入射する限り、測定されるビーズの数が光源302の強度の変化または検出器314に入射する迷光に比較的鈍感になるという潜在的な利点を有する。検出領域のビーズから反射する積分光に依存して、単一の信号からビーズの数を推定することは、単一の検出素子より多くの検出素子を使用する必要がなく、かつ画像処理ソフトウェアを実行する必要がないという潜在的な利点を有する。
【0084】
図3Bは、代替的光学系および検出器の構成322を示す。ビームスプリッタ304の代わりに、ダイクロイックミラー324が存在する。光源302からの波長λの光の大部分または全部がダイクロイックミラー324を通過するが、任意選択的に、光の一部は、光源302の強度を監視するために使用される検出器306に反射する。代替的に、検出器306は存在せず、その場合、波長λの光はダイクロイックミラー324によって反射する必要がほとんどまたは全くなく、光源302の強度は他の手段によって、例えば光源302内部の手段によって監視または調整することができる。ダイクロイックミラー326は図3Aのダイクロイックミラー308に取って代わり、ダイクロイックミラー308と同様に、ダイクロイックミラー326が波長λの光を検出器セル312内に反射させ、そこで光はビーズ328を照射する。ビーズ328は、それらに接着している分析物複合体から波長λの蛍光を発光することに加えて、それらに接着している分析物とは関係なく、それらを照射する波長λの光に応答して、波長λの蛍光をも発光する。波長λの光は、例えば化学反応または生化学反応によって、分析物が付着しているビーズだけでなく、全てのビーズに被覆されあるいは全てのビーズに埋め込まれた蛍光染料から放射される。
【0085】
波長λおよびλの発光光ならびに波長λの反射光はダイクロイックミラー326に到達し、該ミラーは波長λの光を通過させて検出器316に送り、かつ波長λおよびλの光をダイクロイックミラー324の方向に反射させる。波長λの光はダイクロイックミラー324から反射し、検出器329に到達する。λの波長の発光光の強度は、分析物の量ではなく、ビーズの数に依存するので、検出器329からの信号は、検出セル312の検出領域におけるビーズの数を推定するために使用される。検出器316からの信号は、図3Aの構成300と同様に、ビーズに接着している分析物の量を決定するために使用される。ダイクロイックミラー326からダイクロイックミラー324に到達する波長λの光は大部分または完全に、ダイクロイックミラー324を通過する。波長λの光も検出領域におけるビーズの数に比例する強度を有するので、ダイクロイックミラー324から反射して検出器329に到達する波長λの光は害にならない。しかし、希望する場合、波長λの光は検出器329の前に位置するフィルタ(図示せず)によって除去することができる。
【0086】
図3Cは、図3Aおよび3Bに示した構成の代替例の光学系および検出器の構成330を示す。図3Bの構成322と同様に、構成330の検出器セル312は、ビーズに接着している分析物複合体から波長λの蛍光を発光することに加えて、どれだけの量の分析物がビーズに接着しているかに関係なく波長λの蛍光を発光する、ビーズ328を有する。しかし構成330は、図3Aの構成300における対応するビームスプリッタおよびダイクロイックミラーと同様に挙動するビームスプリッタ304およびダイクロイックミラー308を有する。加えて、波長λの光は、波長λの光と同様に、ダイクロイックミラー308を通過する。次いで第2ダイクロイックミラー332は波長λの光を波長λの光から分離し、一方、例えば波長λを反射してそれを検出器329に送り、他方、例えば波長λを透過してそれを検出器316に送る。図3Bの構成322と同様に、検出器316からの信号は、検出領域に存在する分析物の量を推定するために使用され、検出器329からの信号は、検出領域に存在するビーズの数を推定するために使用される。
【0087】
構成322および330の変形例では、ビーズを照射してほとんど重複しない異なる範囲の波長を生成する2つの光源が存在する。波長範囲の一方は、ビーズに接着している分析物複合体からの波長λの発光を励起し、他方の波長範囲は、どれだけの量の分析物がビーズに接着しているかに関係なく、ビーズ上またはビーズ内の蛍光物質からの波長λの発光を励起する。蛍光発光が消えるときが存在するように間に充分な時間を置いて異なる期間中に2つの光源を作動させると、構成322および330のように、異なる波長を異なる検出器に向かわせるダイクロイックミラーを使用して、波長λの光を波長λの光から分離する必要がなくなる。代わりに、波長λの光および波長λの光は両方とも単一の検出器、例えば検出器316によって検出することができ、かつこれらの光は、2つの光源のタイミングに関連して、これらの光のタイミングによって区別することができる。代替的に、波長λの光および波長λの光に対してダイクロイックミラーおよび異なる検出器が使用され、かつ各検出器に到達する誤った蛍光波長の迷光を除外するために、異なるタイミングが使用される。光源のオンとオフのタイミングパターンもまた、光源からの光と相関しない他の迷光からの蛍光発光を区別するために使用することができる。これは、単一の光源しか存在しない構成300、322、および330のような構成でも、光源を既知のパターンで変調することによって行なうことができる。
【0088】
図3Dは、ダイクロイックミラーを全く使用しない、光学系および検出器の別の構成334を示す。光源302は検出セル312内のビーズ310を直接照射し、光の強度を監視するために光源302からの光の一部を任意選択的に、他の構成の場合と同様に、検出器306によって監視する。検出器314はビーズを直接観察して、そこから反射する光の強度を測定し、かつ/またはビーズの画像を形成してビーズを計数する。任意選択的に、検出器314は、ビーズに接着している分析物複合体から発光される波長λの光を遮断するために、検出器の前にフィルタ(図示せず)を有するが、ビーズから反射する波長λの光は、分析物複合体から発光される波長λの光よりずっと明るい傾向があるので、これは必ずしも必要というわけでなく、また検出器314がビーズの画像を形成し、かつビーズが画像処理ソフトウェアを用いて計数される場合には、光の強度がどうであろうと問題ではない。検出器316はその前にフィルタ318を有し、それは、波長λの反射光に比較してビーズから発光される波長λの光の比較的低い強度にもかかわらず、検出器316によって生成される信号が波長λの光に支配されるように、波長λの光をほとんど通さないがずっと多くの波長λの光を通す、例えば干渉フィルタとすることができる。この場合、光源302に狭い範囲の波長を使用することが特に有利になるので、検出器316に到達する波長λの光の量をあまり低減させることなく、波長λの光を検出器316から効果的に除去するために、狭帯域ノッチフィルタを使用することができる。図3Aの構成300と同様に、検出器316からの信号は、検出領域に存在する分析物の量を推定するために使用され、かつ検出器314からの信号は、検出領域に存在するビーズの数を推定するために使用される。
【0089】
構成334の変形例では、単一の検出器、例えば検出器316だけが存在し、それは、検出器316の前で光路に出入りするようにフィルタ318を動かすことによって、波長λの光および波長λの光の両方を測定するために使用される。フィルタ318が検出器316の前に位置する場合、波長λの光は大部分が検出器316への進入を阻止され、検出器316は主として、分析物から発光される波長λの蛍光発光の強度に依存する出力信号を生成する。フィルタ318が検出器316の前で光路の外に移動すると、検出器316は主に、強度が一般的に波長λより高い波長λの光を受光し、検出器316は主として、ビーズから反射した波長λの光の強度に依存する出力信号を生成する。任意選択的に、フィルタ318が検出器316の前で光路の外に移動したときに、特に波長λの光を遮断し、かつ波長λの光を進入させる別のフィルタが検出器316の前で光路内に移動して、そのときに検出器316によって受光される波長λの光の量をさらに低減させる。
【0090】
フィルタ318および任意選択的に別のフィルタを検出器316の前で光路に出入りするように移動させることは、機械的に、例えば回転するフィルタホイールを使用することによって行なわれる。代替的にフィルタ交換は、電子的に、例えばカー効果を用いて作動もしくは停止される干渉フィルタを用いることによって、または液晶の偏光を利用することによって、または同様の電子的効果によって行なわれる。
【0091】
機械的または電子的なフィルタ切替えは、構成322および330について上述したように波長λの光および波長λの光に別々の検出器を使用する代わりに、単一の検出器を波長λの光に感応することから波長λの光に感応するように、かつ再び元に戻すように切り替えるためにも使用することができる。
【0092】
図3A〜3Dに示した構成の他の変形例では、異なる分析物に対して異なる波長の蛍光を発光しかつ/または異なる波長の光によって励起される異なる蛍光タグを使用することによって、2つ以上の分析物を同時に定量する多重アッセイを実行することができる。異なる発光波長は、ダイクロイックミラーによって分離し、かつ異なる検出器に送出することができる。追加的に、または代替的に、異なる蛍光タグによって発光された光は同一検出器によって検出し、それらの光が異なる期間に作動される異なる励起光によって励起されるので、かつ/または発光光が異なる波長を有し、異なるフィルタが検出器の前で光路に出入りするように切り替えられるので、区別することができる。
【0093】
任意選択的に、多重アッセイでは、異なる分析物からの信号を正規化するために使用されるビーズの数が、各分析物に対して同一となるように、2つ以上の分析物のためのリガンドを同一ビーズに付着させることができる。代替的に、多重アッセイは、異なる分析物に結合されるリガンドを有する異なる種類のビーズの混合物を使用して実行される。この場合、各種類のビーズの数は任意選択的に、各分析物からの信号を正規化するために、独立して測定される。これは例えば、各種類のビーズに対して異なる蛍光発光波長および/または異なる励起波長を使用して、分析物の濃度とは関係なく、ビーズ上またはビーズ内の蛍光物質を励起させることによって行なわれる。代替的に、一部または全部の種類のビーズの数は独立して測定されず、異なる種類のビーズを均一に混合し、異なる種類のビーズの比率は一定であると想定して、異なる種類のビーズの複合された数または1種類のビーズの数を測定することによって、各種類のビーズの個数を推定することができるようにする。しかし、各種類のビーズの数を独立して測定することは、使用されるビーズの有限数から生じる各種類のビーズの数の統計誤差を回避するという潜在的な利点を有し、同数のビーズを用いてより正確な結果を、またはより少数のビーズを用いて同等に正確な結果をもたらすことができる。ビーズのコストはアッセイのコストの重要な部分であるので、使用されるビーズの数の低減は重要になり得る。
【0094】
本発明の一部の実施形態では、ビーズが例えばウェルプレート106または検出セル122で水または別の液体で被覆されたときに、ビーズからの光が検出される。この場合、ビーズは任意選択的に、片面を液体に浸漬され、および検出器に向けた他の面が乾燥している透明な平板を介して観察される。この構成は、検出器から見て湾曲したメニスカスまたは液体の表面の波によるビーズの外見の歪みを回避するという利点を有する。
【0095】
図3A〜3Dは、ビーズの数が、ビーズから反射した光、またはビーズによって蛍光発光される光から推定される構成を示す。ビーズの数を推定するために、ビーズから屈折した光、またはビーズによってシルエット化された光を使用することも可能である。図4Aは、光源402が検出セルの表面406に載置されたビーズ404に照射する構成400を示す。この構成では、表面406は透明であり、光源402は表面のビーズとは反対側、すなわち表面の下に位置する。しかし、光源402は例えば図3Dに示すように斜めの角度で、上からビーズに照射することもでき、その場合、表面406は透明である必要はない。ビーズ404は透明であり、それらは小さいレンズのように働き、ビーズを通過する光を屈折させる。ビーズ404から屈折した一部の光線408は、検出器410に到達する。しかし光源402および検出器410は、ビーズによって屈折しない光源402からの光、例えばビーズを逸れた光線412が検出器410に到達せず、例えば検出器410の前のストップ414によって遮断されるように、配設される。検出器および光源がビーズのほぼ両側にあるので、光源、ビーズ、および検出器の構成はまた、ビーズから反射した光がほとんど検出器410に到達しないようにすることもできる。しかし、本発明の一部の実施形態では、ビーズから反射する光のかなりの量が検出器410にも到達する。検出器410からの信号は、ビーズの数を推定するために使用される一方、図3A〜3Dの検出器316と同様の別の検出器は、ビーズに接着している分析物の量を推定するために使用される。任意選択的にビーズは着色され、ある波長だけを透過させる。次いで検出器410の前のフィルタはこれらの波長を優先的に通過させる一方、ビーズを通過せずに光源から来た多くの迷光を拒絶する。検出器410は検出領域のビーズからの積分光に依存する信号を生成し、かつ/または画像処理ソフトウェアを用いてビーズを計数するために使用される画像を生成する。
【0096】
図4Bは、ビーズが位置する透明な表面406の反対側から光源402がビーズ404に照射する構成416を示す。光源402は、光線418のようなビーズ404を逸れた光線の場合、その光が検出器410に到達するように向けられる。しかし、ビーズ404に当たった光線は、光線420で示すように、ビーズの曲面からの反射によって、またはビーズが透明である場合にビーズの曲面を介する屈折によって、またはビーズが半透明または乳白色である場合に内部散乱によって、またはビーズが暗色である場合に吸収によって、散乱する。これらの全ての場合に、ビーズは光の一部が検出器410に到達することを阻止し、検出器410に到達した光を測定する検出器410からの信号は、どれだけのビーズが検出領域に存在するかを推定するために使用することができる。検出器410が撮像検出器である場合、ビーズは光を背景にして暗く見え、画像処理ソフトウェアによって計数することができる。
【0097】
構成416の変形例では、光源402は表面406のビーズと同じ側、すなわち表面に位置し、表面は明るい色であり、あるいは光を検出器410に向かって直接反射するミラーである一方、ビーズは暗色である。次いで、ビーズは検出器410から見て再び光を背景に暗く見え、検出領域から検出器に到達する光の積分強度を表わす検出器410からの信号、または検出領域の画像は、検出領域のビーズの数を推定するために使用することができる。
【0098】
任意選択的に、コントローラ128または1つ以上の他のコントローラは、画像処理ソフトウェアの実行、異なる光源または異なる検出器の使用の切替え、光源の変調、および異なるフィルタ間の切替えを含むが、それらに限らず、上述した光学系および検出器サブシステムの機能のいずれかを実行する。
【0099】
磁石および振動によるビーズの集中化
図5Aおよび5Bは、磁気ビーズを測定する前に磁石および振動を使用して磁気ビーズを検出領域に集中させる検出ステーション500のそれぞれ平面図および側面図を示す。明確にするために、これらの図面は単一の検出セル502だけを示すが、任意選択的に検出ステーションは図1の検出ステーション122と同様に検出セルのアレイを含む。この場合、アレイ全体が任意選択的に、全ての検出セルを一緒に振動する1組の振動器を有し、各検出セルは任意選択的に、ビーズをその検出セルの検出領域に向かって引き寄せるそれ自体の磁石を有する。
【0100】
図5Aは、任意選択的に円形であり、検出セル502の中心にある検出領域504を示す。振動器506は任意選択的に検出セルの両側に位置し、振動コントローラ508の制御下でセルを振動させる。振動は、磁気ビーズ510とビーズが載置されている検出セルの底面との間の静止摩擦力を克服するのに充分な大きさの瞬時加速度を生み出す。磁石516は、検出セルの下に位置するので図5Aの平面図では見えないが、図5Bの側面図では見え、ビーズを検出領域に引き寄せる不均一な磁場を生じる。これは、例えば、磁石が検出領域の中心に心合わせされた円形磁石であり、磁場の勾配が、検出セルの底面全体でまたは少なくとも検出領域以外のどこでも、径方向内向きに傾く成分を有するように、高さが直径よりあまり短かくなりすぎない場合には、特に当てはまる。そのような磁石の磁場の勾配は一般的に、直径がわずか数ミリメートルの希土類磁石によって生じる大きい磁場の勾配に対し、磁気ビーズを一般的に重力よりかなり大きい力で検出セルの底に対して垂直方向に引っ張る垂直成分をも有する。この垂直力は、検出セルの大部分で、静止摩擦力の適度に大きい係数に対し静止摩擦力を径方向の磁力より大きくするか、またはそれに匹敵させ、振動が存在しなければ、ビーズは全く動かない。
【0101】
検出セルへの流体入口512および流体出口514が概略的に示される。
【0102】
任意選択的に、磁石516は、検出セルに対して接近またはさらに離間するように、例えば図5Bにおける位置518に、垂直方向に移動することができる。磁石516と代替的磁石位置518との間の垂直距離はどちらも図5Bに一定の縮尺で描かれておらず、実際には磁石はその直径に対して一般的に高さが高く、その直径に対して垂直方向に図5Bに示されるより大きい距離を移動する。磁石が検出セルの底面に接近しすぎると、ビーズを表面から取り除くことが難しくなるので、磁石をさらに離間させる選択肢を持つことにより、測定が行なわれた後、セルを新しい組のビーズに使用することができるように、検出セルを空にすることが容易になる。また、例えば検出領域におけるビーズの濃度を最適化するために、磁石の垂直位置の調整を行なうことによって、ビーズに対する磁力の強さを調整可能にすることも有利である。
【0103】
任意選択的に、検出セル502は、撓みばねまたは拘束具522によって検出ステーションのベース520に結合される。ばねまたは拘束具は任意選択的に、振動からの慣性力に比べて相対的に小さい力を検出セルに及ぼし、あるいは検出セルがその公称位置にあるときには力を加えないが、検出セルが摺動してその公称位置から離れすぎることを防止する。代替的に、ばねは振動の慣性力に比べてかなりの力を及ぼし、検出セルは振動の周波数と同等の共振周波数を有する。任意選択的に、検出セルおよびばねの共振システムは比較的高いQを有し、振動周波数は共振に近いので、振動の振幅はこの高いQにより著しく増大し、その結果潜在的に、所与の振動器に対してビーズのより効率的な集中化が達成される。
【0104】
任意選択的に図3A〜3Dまたは図4A〜4Bに記載されているように構成された検出光学系524は、関連検出器および他の電子機器と共に、任意選択的に、検出領域の上の検出セルの頂部にある透明な窓526を通して検出領域を観察する。
【0105】
発明者らによって行なわれた試験で、以下の例示的パラメータ値を使用して、検出領域におけるビーズの良好な濃度が生じることが明らかになった。
【0106】
検出ステーションは、長さ9cm、幅1.5cmのアルミニウム片から作られ、セルの中心間隔が9mmの8つの検出セルのアレイを有する。各セルの中心にある検出領域は直径5mmの円である。各セルの中心の下には磁石が配置され、各磁石はNdBFeから作られた高さ3mm、直径4mmの円筒形である。磁石の頂面から1mmで磁石の軸に沿った検出領域の中心の磁場は2300ガウスである。これらの磁石はTMM Israelによって販売されている。
【0107】
振動器はMACH3 Gilette電気かみそりから取った2つのモータであり、それらを振動させる回転子に軸外し質量を有する。2つのモータは、セルのアレイの長さの両端に取り付けられる。モータの速度はモータに送られる電圧によって制御され、ビーズの濃度を最適化する速度を見出すために様々な速度を試した。より高次の高調波と共に1.5mmのピーク間水平振動振幅で主として83Hzの振動を発生する83Hzの回転速度は、約30秒間続行させた場合に、ビーズの良好な濃度を生じることが分かった。検出セル、モータ、および磁石の組立体全体を平滑なベース上に配置し、ベースから突出するピンによって、組立体の水平運動を各方向に約1mmに制限したが、組立体はそれ以外では抑制されなかった。
【0108】
これらの試験に使用した磁気ビーズは、Bio−Radによって販売されているアッセイキット、例えばキット170−A4011M、Bio−Plex Pro Human Angiogenesis 9−Plex Panel Complete Kitに含まれるのと同じビーズであった。
【0109】
検出セルのパラメータおよびビーズを集中させるための振動および磁力の使用のパラメータに対し、ある範囲の値が可能である。例えば、検出領域は任意選択的に直径が約0.5mm、1mm、2mm、5mm、もしくは10mmであり、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間の長さである。磁石の直径もまた任意選択的に約0.5mm、1mm、2mm、5mm、もしくは10mmであり、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間の長さである。磁石の高さに対する磁石の直径の比は任意選択的に、約0.1、0.2、0.3、0.5、1、1.5、2、または3であり、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間の数字である。磁石は円形断面を有するかあるいは均一断面の円筒形である必要はないが、軸線が検出領域の中心と整列する円形磁石を使用すると、方位角的に均一な半径方向の磁力をビーズに対して生成するという潜在的な利点がある。磁石の最近点から検出領域の中心までの距離は任意選択的に約0.2、0.5、1、1.5、2または3mmであり、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間的距離である。磁石は任意選択的に、例えばNdFeBまたはSmCoのような希土類磁石であり、強力な磁場を生成し、かつ容易に消磁されないという潜在的利点を有する。
【0110】
検出セルのピーク間振動振幅は任意選択的に、約0.3、0.5、1、2、もしくは3mmであり、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間的距離である。振動周波数は任意選択的に、約10、20、30、50、100、200、もしくは300Hzであり、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間的周波数である。任意選択的に2つ以上の異なる振動周波数が同時に、または連続的に使用され、それは、任意の単一の振動周波数よりビーズの濃度をより良く最適化するという潜在的利点を有する。振動は任意選択的に約1秒、3秒、10秒、30秒、100秒、5分、10分、あるいはより長いか、より短いか、または中間的時間、検出セルに加えられる。ビーズの少なくとも一部と検出領域の表面との間の静止摩擦係数は任意選択的に約0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間的数字である。振動によるビーズのピーク慣性力(質量×加速度)とビーズを検出領域の中心で検出領域に押圧する磁力の垂直成分との比は任意選択的に約0.05、0.1、0.2、0.3、0.5、1、1.5、2、3、5、10、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間的数字である。ビーズは任意選択的に直径が約2、5、10、20、または50マイクロメートル、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間的距離であり、かつそれらの磁気コアの直径は、ビーズの直径の約10%、20%、30%、50%、70%、または85%、あるいはより大きいか、より小さいか、または中間的数字である。ビーズは球形または他の形状とすることができ、全部が同一形状または同一サイズである必要はなく、あるいは、たとえおおよそでも同一摩擦係数または同一磁気コアサイズおよび形状を有する必要はない。しかしほぼ均等なサイズの球形ビーズを使用すると、磁力に対するビーズの応答、および検出表面との摩擦力、およびビーズの流動挙動がビーズの向きに依存せず、かつビーズが非球形または異なる形状およびサイズであった場合より予測可能性が高くなるという潜在的な利点が得られる。同じことはビーズの磁気コアにも当てはまる。
【0111】
検出セルの振動は垂直、水平、または両方の組合せとすることができる。一般的に、振動は任意の方向に直線状、任意の面内で主軸が任意の方向の円状もしくは楕円状、または例えば異なる周波数で異なる方向および異なる平面上の運動の組合せとすることができる。本書で使用する場合、垂直とはビーズが載置されている表面に対し垂直な方向を指すが、ビーズを表面に引き寄せる磁力はしばしば重力より大きいので、ビーズが載置されている表面は、重力に対して水平である必要はない。垂直および水平振動は、ビーズが異なるメカニズムによって静止摩擦を克服することを可能にする。垂直振動は、振動サイクルの少なくとも一部分で、ビーズを表面に引き寄せる磁力に対抗する方向に作用する慣性力を発生させる。これはビーズと表面との間に作用する静止摩擦を低減し、充分に大きい場合、ビーズを表面から完全に上昇させることさえあり、いずれの場合も、ビーズが静止摩擦を克服し、かつ水平磁力の影響下で水平方向に移動することを可能にする。水平振動は振動サイクルの一部分で水平磁力を増大させる慣性力を発生させ、ビーズが静止摩擦を克服して水平磁力の方向に移動することを可能にする。振動サイクルの逆相では、慣性力は水平磁力に対抗し、静止摩擦を克服することのできないより弱い正味水平力、または慣性力および水平磁力が同一方向であるときより小さい距離だけビーズを慣性力の方向に移動させる少なくともより弱い正味水平力のいずれかを発生させる。いずれの場合も、ビーズは水平磁力の方向に正味ドリフトを受ける。
【0112】
任意選択的に、水平または垂直成分または両方について、少なくともビーズの大部分に対し、少なくとも検出領域の縁部では、慣性力が磁力より何倍も大きすぎることはない。例えば、慣性力の大きさは磁力の3倍以下、または5倍以下、または10倍以下である。これは、ビーズを、主として振動サイクル全体でわずかな正味運動により前後に押動させるというより、むしろ検出領域に効率的に集中するように引き付けることができるという潜在的利点を有する。また、振動器が必要以上に強力である必要はないという潜在的利点をも有する。他方、任意選択的に慣性力は磁力の少なくとも0.3倍、少なくとも0.5倍、または少なくとも磁力と同等であり、それは慣性力が静止摩擦を克服するのに充分大きいという潜在的利点を有する。
【0113】
静止摩擦を克服するのに充分な振動周波数および振幅の概算は、水平か垂直かにかかわらず、ビーズの慣性力が磁力に匹敵するときの周波数および振幅を計算することによって得ることができる。磁力は、ビーズが鉄または同様の高透磁性の磁性材料から作られた球形コアを有する場合、鉄コアの体積×磁場エネルギ密度の空間的勾配Β/μによって概算することができる。ここでΒは磁場強度であり、μは真空の透磁性である。慣性力はピーク間変位の2分の1×振動周波数ω(ラジアン/秒)の2乗×ビーズの質量によって得ることができる。ビーズの質量の大部分を磁気コアの質量が占める場合、慣性力が磁力に匹敵するための条件は、磁場強度、磁石の半径に匹敵する磁場勾配の縮尺長、振動周波数および振幅、ならびに磁気コアの密度のみに依存する。長さおよび高さがどちらも数ミリメートルの希土類磁石、および例えば約1ミリメートルのピーク間振動振幅の場合、慣性力を磁力に匹敵させるために必要な周波数は数十Hzと予想される。これは、磁石の影響下でビーズを検出領域の中心に集中させるのに最も効果的であることが、発明者らによって明らかになった振動周波数に匹敵する。したがって、静止摩擦を克服する振動周波数および振幅を推定するこの方法は、少なくともビーズが空中にあるときには、ビーズの空気抵抗力が慣性力および磁力に比べて相対的に弱いので、かなり正確であるように思われる。
【0114】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0115】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0116】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、特許請求される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0117】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0118】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0119】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0120】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0121】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0122】
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0123】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0124】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0125】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0126】
2から8000ピコグラム/ミリリットルの範囲の試料流体中のIL8の7種類の濃度で、一連のIL8アッセイを行なった。ビーズを検出領域に集中させるために振動は使用しなかった。各濃度で3回の試験を実行した。各試験に対し、検出領域のビーズを冷却CCD検出器、すなわちPCOによって販売されたSensicam qeにより撮像した。検出領域全体で分析物複合体からの積分蛍光発光を測定し、ビーズのデジタル画像で画像処理ソフトウェアを使用して、検出領域におけるビーズの数を計数した。各試験で平均して約300個のビーズが検出領域に存在した。IL8の各濃度で3回の試験に対し、生の積分発光の平均および標準偏差のみならず、ビーズの数に対して正規化された積分発光の平均および標準偏差をも計算した。結果を表1に示す。

【0127】
IL8濃度のほとんどの値で、3回の試験の標準偏差は、積分蛍光発光がビーズの数に対して正規化された場合に実質的に低くなる。これは、平均して約300であったビーズの数が、約100の標準偏差で試験毎にかなり変動したためである。IL8の最も低い濃度の場合だけ、標準偏差は生および正規化積分蛍光発光に対して同程度であった。これは、IL8の最も低い濃度では、蛍光発光の測定振幅が検出器の雑音レベルに近かったので、正規化された蛍光発光でも百分率標準偏差が高かったためであった。唯一の例外は、ビーズの数が3回の試験でほとんど変動せず、かつIL8の他の濃度の場合より平均が低かった、31.5pg/mlのときであった。ビーズの数の変動または平均がIL8の濃度に依存すると考えるべき理由がないので、これはおそらく単なる偶然である。
【0128】
検出領域におけるビーズの数のランダムな変動が試験毎に大きいので、ビーズの数が決定され、かつ積分蛍光発光がビーズの数によって正規化されると、アッセイの精度はかなり改善される。この点を例証するために行なったこの一連の試験では、積分蛍光発光は高感度冷却CCDアレイを用いて測定されるが、検出領域全体の積分蛍光発光を測定する代わりに、単一のより感度の低い室温検出器を使用し、かつ異なる検出器を使用してビーズの数を計数または測定した場合でも、同じ結果になるであろう。
【0129】
IL8濃度を決定するために正規化された蛍光発光を使用する精度の高さは、IL8濃度の関数として生の蛍光発光および正規化された蛍光発光の平均値を比較することによっても分かる。正規化平均値はIL8濃度のより平滑な関数であり、低濃度ではほぼ線形であり、高濃度では平滑に飽和する。
【0130】
別の一連の実験では、IL8濃度の各値に対し、次の方法の各々を使用して、正規化された蛍光発光の標準偏差を決定した。
1)ビーズを撮像し、かつ各ビーズに対しIL8による蛍光発光を直接測定する。ビーズは磁石および振動を用いて集中させなかった。
2)全てのビーズからのIL8による積分蛍光発光を測定し、かつIL8による蛍光発光とは異なる波長のビーズの積分固有蛍光発光を測定することによって、ビーズの数を決定する。ビーズの固有蛍光発光はIL8濃度に依存しない。ビーズは磁石および振動を用いて集中させなかった。
3)磁石および振動を用いてビーズを集中させたこと以外は、方法2と同じ。
4)比較のため、ビーズが一度に1個ずつ検出器を通過し、そこで各ビーズの蛍光発光を測定する、市販のBio−Plexシステムを用いてビーズ1個当たりの蛍光発光を測定した。この方法は、IL8のビーズベースの蛍光発光アッセイから期待することのできる最良の性能の兆候をもたらすが、最初の3つの方法よりずっと高価であり、かつ遅い。
【0131】
これらの4つの方法の各々に対し、3つの実験を実行し、各実験内で、ビーズの位置を変更することなく、蛍光発光を3回測定した。各実験内の異なる測定の標準偏差を求め、かつ実験を代表する各実験内で行なわれた3つの実験の平均値を使用して、3つの実験の標準偏差をも求めた。各実験内の異なる測定の標準偏差は、確率論的機械誤差が結果に与える影響の程度の尺度である。3つの実験の標準偏差は、結果が異なる条件、例えば温度の相違、製造された方法の変動によるビーズのサイズおよび形状の相違、アッセイのプロトコルが実行された方法の相違、有限な貯蔵寿命または製造の相違による様々な化学的試薬の強度の相違、および検出セルにおけるビーズの数および分布の相違によって影響される程度の尺度である。
【0132】
表2、3、4、および5は、それぞれ方法1〜4について、各実験内の異なる測定および3つの実験に対するIL8の各濃度の標準偏差の百分率を示す。




【0133】
表2〜4に示す通り、方法1〜3はいずれも、表5に示すBio−Plexシステムほど低い標準偏差は生じなかったが、方法1〜3の各々の標準偏差はかなり小さく、全てのビーズからの積分蛍光発光の検出を用いる方法で、かなり良い結果が出せることを示している。これらの方法は、それらがかなり良い結果を出すならば、個々のビーズを一度に1個ずつ検出器に通すのでより複雑でありかつより長い時間がかかるBio−Plexシステムより好適とすることができる。
【0134】
ビーズの固有蛍光発光を使用してビーズの数を推定する方法2(表3)は、画像を用いてビーズを計数する方法1(表2)に匹敵する標準偏差をもたらし、ビーズの数を決定する両方の方法が潜在的に有用であることを実証している。
【0135】
磁石および振動を用いてビーズを集中させる方法3(表4)は、方法2(表3)よりわずかに低い標準偏差をもたらし、ビーズを集中させるために磁石および振動を使用することが有用であることを示している。
【0136】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0137】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズベースのアッセイシステムの検出領域でビーズに接着している分析物の正規化量を決定する方法であって、
a)分析物の複合体に第1光を蛍光もしくは化学発光させるか、または染料を放出させるステップと、
b)検出領域でビーズから発光される第1光の積分強度、または検出領域でビーズから放出される染料の濃度、または両方を測定するステップと、
c)分析物がビーズに接着しているか否か、あるいはどれだけ多く接着しているかに関係なく、検出領域で光をビーズと相互作用させるステップと、
d)分析物に依存しないビーズとの相互作用の結果生じる第2光を測定するステップと、
e)第1光の積分強度、または染料の濃度、または両方から、かつ測定された第2光から、分析物の正規化量を決定するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
分析物の正規化量を決定するステップは、
a)第1光の積分強度、または染料の濃度、または両方から、検出領域でビーズに接着している分析物の量を決定すること、
b)測定された第2光から、検出領域のビーズの量を推定すること、および
c)推定されたビーズの量を用いて分析物の量を正規化すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2光を測定するステップは検出領域の画像を取得することを含み、ビーズの量を推定することは、画像処理ソフトウェアを用いて画像内のビーズを計数することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2光を測定するステップは検出領域から第2光の積分強度を測定することを含み、分析物の正規化量を決定するステップは第2光の積分強度を用いることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ビーズの量を推定することは、検出領域からの第2光の積分強度だけを用いて推定すること、または検出領域からの第2光の積分強度だけおよび1つ以上の較正パラメータを用いることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ビーズの量を推定することは、検出領域からの第2光の積分強度に比例する量を推定することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
相互作用はビーズからの光の反射を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
相互作用はビーズを介する光の屈折を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
相互作用は、光によるビーズからの励起蛍光発光を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
複合体は、第2光とは異なる波長範囲の第1光を発光させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複合体は、時間と共に変動するスペクトルの励起光をビーズに照射することによって、第2光とは異なる時間依存性で第1光を蛍光発光させられる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
相互作用は、ビーズによる光の遮断または吸収、および光によるビーズ間の領域からの反射またはビーズ間の領域の通過を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
第1光、第2光、または両方の積分強度を測定することは、フィルタを通過した後の光を測定することを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
複合体は第1光を発光させられ、第1光および第2光を測定するときにビーズは同一場所に位置する、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ビーズに接着している分析物を定量するためのシステムであって、
a)ビーズとビーズに接着している分析物とが保持される検出領域と、
b)ビーズに接着している分析物の量に応じて、ビーズからの蛍光もしくは化学発光の積分強度またはビーズからの染料の触媒作用による放出のうちの1つ以上を測定する第1検出器と、
c)分析物がビーズに接着しているか否か、あるいはどれだけ多く接着しているかに関係なく、検出領域でビーズと相互作用する光を発生する光源、
d)相互作用の結果としてビーズから受光する光を測定する、第1検出器と同一かまたは異なる第2検出器と、
e)第1および第2検出器の測定値を使用して、ビーズに接着している分析物の正規化量を決定するコントローラと、
を備えたシステム。
【請求項16】
第1検出器が第1光を測定しているときに、第1光を第1検出器に優先的に進入させるように位置する第1フィルタをさらに備える、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
第2検出器が第2光を測定しているときに、第2光を第2検出器に優先的に進入させるように位置する第2フィルタをさらに備える、請求項15または16に記載のシステム。
【請求項18】
分析物を定量するために使用される磁気ビーズをセルの検出領域に集中させる方法であって、磁場を用いてビーズを検出領域に引き寄せながらセルを振動させるステップを含む方法。
【請求項19】
ビーズは磁性であり、方法は、請求項18に記載の方法によって、検出領域にビーズを集中させるステップをさらに含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
セルを振動させるステップは、30Hzから200Hzの間の卓越周波数で振動させることを含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
卓越周波数は60Hzから100Hzの間である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
セルを振動させるステップは、少なくとも0.5mmのピーク間振幅で振動させることを含む、請求項18〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
ピーク間振幅は少なくとも1mmである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
セルを振動させるステップは、ビーズが検出領域の縁部に位置する場合に、水平成分、垂直成分、または両方について、ビーズの少なくとも大部分に対し、ビーズの質量とビーズの最大加速度との積が、ビーズに掛かる磁力の0.3倍から10倍になるように、振動させることを含む、請求項18〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
ビーズに接着している分析物を定量するためのシステムであって、
a)ビーズ用の載置面を持つ検出セルと、
b)ビーズが載置面上に位置するときに、ビーズを載置面の検出領域に向かって引き寄せるように位置する磁石と、
c)磁石がビーズを検出領域に向かって引き寄せるときに、検出領域におけるビーズの集中を容易にするように検出セルを振動させる振動器と、
d)ビーズに接着している分析物の量に応じて、検出領域におけるビーズからの蛍光もしくは化学発光の積分強度、または検出領域でビーズから放出される染料の濃度のうちの1つ以上を測定する第1検出器と、
e)第1検出器の測定値を使用して、ビーズに接着している分析物の量を決定するコントローラと、
を備えたシステム。
【請求項26】
システムはさらに、
a)分析物がビーズに接着しているか否か、あるいはどれだけ多く接着しているかに関係なく、検出領域でビーズと相互作用する光を発生する光源と、
b)相互作用の結果としてビーズから受光する第2光を測定する、第1検出器と同一かまたは異なる第2検出器と、
を備え、コントローラが第1および第2検出器の測定値を使用して、ビーズに接着している分析物の正規化量を決定する、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
振動器は、検出領域外の載置面の少なくとも一部分に対し磁石がビーズを引き寄せるときに、ビーズの少なくとも一部分に対し、ビーズの質量と検出セルの最大加速度との積が、ビーズと載置面との間の静止摩擦力より大きくなるように、検出セルを振動させることができる、請求項25または26に記載のシステム。

【図2】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図1】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate


【公表番号】特表2013−512450(P2013−512450A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541621(P2012−541621)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000993
【国際公開番号】WO2011/064778
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)
【Fターム(参考)】