説明

ビーズ通し器

【課題】搬送路内に供給されたビーズを挿通用糸が装着された誘導針に確実に挿通させることができ、効率的にビーズを挿通用糸に挿通することが可能なビーズ通し器を提供する。
【解決手段】ビーズ供給部20、搬送路30、ビーズ押出部40、誘導針50を保持する保持部70を有し、保持部70は誘導針50を吸着保持する複数のマグネット群とこれらを保持する保持体72と備え、通常時に誘導針50を吸着保持する第1のマグネット群74と、誘導針50との離間距離を調節する離間距離調節機構76を具備し、通常は第1のマグネット群74に誘導針50を吸着保持させ、ビーズ押出部40と誘導針50の間にビーズBが貯留された際は、離間距離調節機構76により誘導針50との離間距離を短縮させて、第1のマグネット群74に代えて誘導針50を吸着保持し、ビーズBを誘導針50の他端部側に先送りする第2のマグネット群78と、により構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーズ通し器に関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツ状に形成されたビーズを用いて装飾物等を作る場合には、個別のビーズを挿通用糸に挿通させる必要がある。挿通用糸にビーズを挿通させる際には、挿通用糸を接続した針にビーズの貫通孔を一つ一つ挿通させることにより行っていたが、このような作業はきわめて効率が悪かった。従来においては、このようなビーズを効率的に挿通用糸に挿通させるための通し器として、例えば特許文献1に開示されているようなものが提供されている。特許文献1記載のビーズ通し器は、終端部分にビーズ連結用の針が待機しているビーズ搬送路にビーズを供給し、搬送路の搬送断面の中央を回転軸として搬送路を回転させることによりビーズの姿勢を修正している。このようにして姿勢が修正されたビーズの挿通孔は、搬送路の終端部に待機している針の位置に位置合わせされた状態となり、効率的にビーズの挿通孔を針に挿通させることができるとされている。
【特許文献1】特許出願公告昭31−2738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、実際にビーズが供給された搬送路を回転させたとしても、搬送路の内側面の摩擦が適切でないと、ビーズが回転しなかったり、ビーズが常に回転し続けるため、搬送路の終端部位置で待機している針の位置にビーズの挿通孔の位置を位置合わせることができないことが多いという課題があった。また、搬送路内のビーズを針の位置まで押し出すための手段が設けられていないため、搬送路内に次々とビーズを供給しなければ搬送路内のビーズを搬送路から排出させることができないといった課題もあった。さらには、針の挿通させたビーズを先送りする際においては、針を一旦取り外してからビーズを先送りさせた後、再び針の支持部にセットしなければならないが、針のセット位置が位置決めされていないため、針の待機位置に不具合が生じ、針にビーズを挿通させることができないといった課題もある。
【0004】
そこで本願発明は、ビーズ供給部に次々とビーズを継ぎ足さなくても、搬送路内に供給されたビーズを挿通用糸が装着された誘導針に確実に挿通させることができ、効率的にビーズを挿通用糸に挿通することが可能なビーズ通し器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ビーズを供給するビーズ供給部と、前記ビーズ供給部に連通し、前記ビーズをビーズ挿通用糸の一端部が装着された誘導針に向けて搬送する搬送路と、前記搬送路に供給された前記ビーズを1つずつ押し出て前記誘導針に挿通させるビーズ押出部と、前記誘導針を保持する保持部と、を有するビーズ通し器であって、前記保持部は、前記誘導針を吸着保持する複数のマグネット群と該複数のマグネット群の一部を保持する保持体とを有し、前記複数のマグネット群は、前記保持体との離間距離が一定となるように維持され、通常時には前記誘導針を吸着保持する第1のマグネット群と、前記誘導針との離間距離を調節する離間距離調節機構を具備し、通常時においては前記第1のマグネット群に前記誘導針を吸着保持させ、前記ビーズ押出部と前記誘導針の端部との間に前記ビーズが貯留された際には、前記離間距離調節機構により前記誘導針との離間距離を短縮させることにより、前記第1のマグネット群に代えて前記誘導針を吸着保持することで、前記第1のマグネット群と前記誘導針の前記搬送路側端部との間に貯留されたビーズを前記誘導針の他端部側に先送り可能とする第2のマグネット群と、により構成されていることを特徴とするビーズ通し器である。
【0006】
また、前記離間距離調節機構は、前記保持体に挿通され、先端部に前記第2のマグネット群が保持された保持ロッドと、前記保持ロッドの他端側に形成されたストッパと、前記ストッパと前記保持体との間に配設され、前記ストッパ位置を前記誘導針および前記保持体から離反する方向に付勢する付勢部材と、により構成されていることを特徴とする。これにより、簡単な操作で誘導針に挿通させたビーズを先送りすることができる。
【0007】
また、前記誘導針は、前記ビーズ押出部により前記ビーズが前記搬送路内で押し出される方向に対して軸線が傾斜する配置となるように前記保持体により保持されていて、前記搬送路の前記誘導針側端部には、前記ビーズの中心孔の軸線と前記誘導針の軸線とが平行となるように前記ビーズの姿勢を傾斜させるための姿勢変更部が設けられていることを特徴とする。これにより、誘導針に挿通されたビーズが所定位置まで自然に先送りされることになり、指でビーズをつまんで先送りさせる手間が省けるため好都合である。
【0008】
また、前記ビーズ供給部から前記搬送路に最初のビーズが供給される際に、前記搬送路への前記最初のビーズの進入を防止するため、前記ビーズ供給部と前記搬送路との合流部分に前記ビーズ押出部の先端位置を待機させることが可能なビーズ押出部先端位置決め手段を有していることを特徴とする。これにより、ビーズ供給部から最初に供給されたビーズが搬送路に不適切な状態で供給されることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるビーズ通し器によれば、ビーズ供給部に次々とビーズを継ぎ足さなくても挿通用糸が装着された誘導針にビーズを的確に搬送することができる。また、誘導針に挿通されたビーズを先送りする際に、誘導針のセット位置をその都度位置合わせするための調整を行わなくても所定の位置に位置決めされた状態で保持することができるため、効率的なビーズの連結作業を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施形態に基づいて本願発明を詳細に説明する。図1は本実施形態にかかるビーズ通し器の斜視図である。図2は図1中のA−A線における断面図(ビーズ供給部の断面図)である。図3は、図1中の矢印Bの方向から臨んだ拡大図(ビーズ供給部と搬送路の合流部分の拡大図)である。図4は、図1中のC部分の拡大図である。図5は、図1中のD部分の拡大図(搬送路の終端側における拡大図)である。図6は、図1中のE部分の拡大図(保持部の拡大正面図)である。
本実施形態にかかるビーズ通し器10は、図1に示すように、ビーズ供給部20に収容されたビーズBを搬送路30に供給した後、ビーズ押出部40により搬送路30に沿って押し出したビーズBを誘導針50を介して挿通用糸60に挿通させるためのものであり、簡単にしかも連続的に挿通用糸60にビーズBを挿通させることが可能な構成を有している。
【0011】
ビーズ押出部40は、平面視形状が凹状に形成された先端部44を有し、搬送路30に沿って搬送路30内を往復動するロッド42により構成されている。ビーズ押出部40は、先端部44の位置が流入路24と搬送路30との合流部分を起点位置とし、誘導針50の待機位置を終点とした範囲で搬送路30の延長方向に沿って往復動する。ビーズ押出部40の凹状の先端部44は、搬送路30の終点位置において待機している誘導針50との干渉を防ぐためのものである。
【0012】
図2に示すように、ビーズ供給部20はビーズ投入部22がホッパー状に形成されている。ビーズ投入部22に供給されたビーズBは、単体のビーズBが流通可能な大きさの流通断面に形成され、ビーズ投入部22の底部に連通して設けられた流入路24を介して搬送路30に接続している。流入路24に供給されたビーズBは、ビーズ投入部22から搬送部30までの間、重力の作用によりビーズBの挿通孔BHを回転軸として回転しながら供給されるよう、搬送路30との接続部分(終端部分)における流入路24の高さ位置はビーズ投入部22との接続部分(始端部分)における流入路24の高さ位置に対して低い位置に配設されている。
本実施形態におけるビーズ流入路24は搬送路30の延長方向に対して平面視で直交する状態で連結されているので、流入路24からのビーズBはビーズBに形成された挿通孔BHが搬送路30の延長軸線に沿った状態で搬送路30に供給されることになる。
【0013】
また、図3に示すように、ビーズ供給部20から搬送路30に最初のビーズBを供給する際において流入部24から搬送路30に不意にビーズBが進入しないようにするため、ビーズ押出部40におけるロッド42の先端部44の位置を、搬送路30と流入路24との交差部分に位置するように保持している。
このようにビーズ押出部40におけるロッド42の先端部44の当初位置を調整するビーズ押出部先端位置決め手段として、本実施形態においては後述するガイド板36にストッパ46を所定位置で保持するための保持片34を設けている。保持片34は、図4に示すようにガイド板36に形成した凹溝(図示せず)にスライド可能に嵌入する凸部34Aを有し、スライド板36の表面上をロッド42の径方向に移動自在に配設されている。このようにガイド板36に取り付けられた保持板34により、ストッパ46がガイド板36に密着する状態と離反する状態とを任意に切り替えすることができる。
【0014】
ガイド板36は、支持台12の搬送路30の始端側とロッド42の他端側に設けられた係止部45との間に2枚立設されている。ロッド42には、図4に示すように、ガイド板36の外表面からビーズBの搬送側と反対側にロッド42の他端部側を離反させるための弾発材38が配設されている。弾発材38は、ロッド42の他端側のガイド板36の外表面と係止部45との間で弾発力を発生する。ロッド42には弾発材38によるロッド42の離反距離を規制するためのストッパ46が設けられている。
本実施形態における弾発材38の長さ寸法は、ストッパ46が搬送路30側に位置するガイド板36の搬送路30側の面(内側面)に当接した状態において、ガイド板36の外側面から係止部45までの離間距離と同じ寸法となるように形成されている。
【0015】
また、ロッド42の表面にはロッド42の径方向に突出する突出部48が形成されている。2枚のガイド板36のそれぞれには、ロッド42と突出部48とが挿通する挿通孔39が形成されているので、ビーズ押出部40のロッド42は、突出部48と挿通孔39とによりガイドされた状態で搬送路30内を往復動する。
【0016】
搬送路30に供給されたビーズBはビーズBの挿通孔BHが搬送方向に向かった状態となる。このような状態で搬送路30に供給されたビーズBは、搬送路30の延長方向において2枚のガイド板36、36によりガイドされた状態で往復動するビーズ押出部40により押し出される。ビーズBは搬送路30内をスライドしながら押し出されることになるので、搬送路30は必ずしも傾斜している必要はない。本実施形態における搬送路30は水平状態に配設されている。
【0017】
また、図5に示すように、搬送路30の終端側(ビーズ押出部40によりビーズBが押し出される側の端部)には、ビーズBの姿勢を変更する姿勢変更部が設けられている。本実施形態における姿勢変更部は、搬送路30の終端側に設けた傾斜部32により構成されている。このような傾斜部32を設けることにより、搬送路30に沿ってほぼ直立した状態で押し出されてきたビーズBの上側部分を搬送方向の前方側に傾斜させることができる。すなわち、搬送路30の搬送方向の軸線に対して下方側に傾斜した状態で保持されている誘導針50の軸線と、搬送路30内で姿勢が変更されたビーズBの挿通孔BHの中心軸とを平行に(同軸に)することができる。
【0018】
図1に示すように、ビーズBを挿通するための誘導針50は、挿通用糸60が装着(接続)された状態で搬送路30の終端側位置で搬送路30の搬送方向の軸線に対して下方側に傾斜した状態で保持されている。本実施形態における誘導針50は、複数個の磁石Mにより吸着保持する保持部70により保持されている。誘導針50がほぼ水平状態に配設された搬送路30に対してビーズBの送り方向において下方側に傾斜されているので、誘導針50に挿通されたビーズBは重力の作用により誘導針50において、誘導針50を吸着する磁石の位置まで先送りされるため好都合である。
【0019】
保持部70は図6に示すように、コの字状をなし誘導針50からの離間距離が一定となるように形成された保持体72の先端部に取り付けられ、通常時において誘導針50の複数個所を吸着保持する第1のマグネット群74と、誘導針50からの離間距離を変更することが可能な離間距離調節機構76の先端部に取り付けられていて、必要に応じて、誘導針50との離間距離を短縮させることにより、第1のマグネット群74に代えて誘導針50の複数個所を吸着保持する第2のマグネット群78と、により構成されている。
本実施形態においては、第1のマグネット群74および第2のマグネット群78はそれぞれ一箇所につき2つの磁石Mにより構成されている。また、本実施形態においては、2枚の板状に形成された磁石M,Mをへの字状に配列させたことにより、誘導針50を磁石M,Mどうしが当節している部分(への字の屈曲部分)に吸着することができる。このようにして誘導針50を吸着保持することで誘導針50の待機位置を、搬送路30からのビーズBの挿通孔BHに挿通させやすい状態にした所定の位置を維持することができる。
【0020】
ここで第2のマグネット群78が取り付けられた離間距離調節機構76は、第1のマグネット群74が取り付けられた保持体72を挿通し、第1のマグネット群74の位置よりも保持体72に近い位置と、第1のマグネット群74の位置よりも保持体72から遠い(離反する)位置までの範囲で往復可能に設けられた保持ロッド76Aと、保持ロッド76Aに設けられたストッパ76Bと保持体72との間に配設され、第2のマグネット群78の位置が第1のマグネット群74の位置よりも保持体72側に位置するようにストッパ76Bを付勢する付勢部材76Cと、押圧部76Dと、を有している。
【0021】
このような構成を有する離間距離調節機構76を採用することで、通常時は第1のマグネット群74が誘導針50を吸着保持し、使用者の判断(誘導針50へ挿通させたビーズBの個数)により、必要に応じて第2のマグネット群78を第1のマグネット群74に代えて誘導針50を吸着保持することができる。より詳細に説明すると、誘導針50の先端部(搬送路30側の端部)から第1のマグネット群74の吸着部分までの間に貯留されたビーズBを先送りすることができ、誘導針50を第1のマグネット群74と第2のマグネット群78とで交互に保持することで、誘導針50に挿通されたビーズBを誘導針50の他端側に順次先送りし、誘導針50に接続された挿通用糸60にビーズBを挿通させることができる。
【0022】
本実施形態におけるビーズ通し器10は以上のような構成を有している。次に本実施形態におけるビーズ通し器10を用いて挿通用糸にビーズBを挿通させる方法について説明する。
まず、保持片34をガイド板36の上側部分からストッパ46を保持することが可能な位置まで下降させ、保持片34によりビーズ押出部40のストッパ46をガイド板36から離反させた状態で保持する。これによりロッド42の先端部44の位置が搬送路30とビーズ供給部20の流入路24との合流点にセットされる。このように先端部44により合流入部24との合流点を閉塞することで、ビーズ供給部20に供給されたビーズBが、不意に搬送路30に供給されることを防止することができる。
【0023】
ホッパー状に形成されたビーズ供給部22にビーズBを供給すると、ビーズBはビーズ供給部22の底部に連通し、ビーズBが挿通孔BHの向きをそろえた状態で1つずつ流通可能な流入路24内に流入する。本実施形態においては、流入路24の延伸方向に対して挿通孔BHの軸線が直交した状態となっている。流入路24は下り傾斜路に形成されているので、流入路24にビーズBが流入すると、重力の作用により流入路24内を転下する。流入路24の下流側端部は搬送路30に合流しているが、先に説明したとおり、ビーズ押出部40の先端部42が合流部分を塞いでいるため、ビーズBは搬送路30と流入部24との合流部直前位置で待機することになる。
【0024】
このような状態にセットした後、使用者が保持片34をストッパ46を保持している位置から退避させる(上方にスライドさせる)ことにより、弾発材38により弾発されているストッパ46はガイド板36に当接する。この状態になると、先端部44による流入部24と搬送路30との合流点の閉塞が解除され、流入部24から搬送路30にビーズBが供給されることになる。搬送路30に供給されたビーズBは挿通孔BHの軸線と搬送路30の流通路断面の中心点とが略重複する状態であり、搬送路30内でビーズBは略直立した状態となる。搬送路30内のビーズBは、ビーズ押出部40により搬送路30内をスライドしながら搬送されることになる。
【0025】
搬送路30の終端側(誘導針50が待機している側の端部側)には、搬送路30の底面の高さ位置が搬送方向に進むに伴って徐々に低位となる傾斜部(姿勢変更部)32が形成されている。ビーズBはビーズ押出部40によりビーズBの中心位置が押圧された状態で搬送路30内を搬送されてきた後、姿勢変更部である傾斜部32に進入し、ビーズBの上側部分がビーズBの搬送方向前方に倒れこんだ姿勢になる。
搬送路30の終端部には挿通用糸60が取り付けられた誘導針50が搬送路30の延長方向の中心軸に対して下方側に傾斜する状態で待機している。傾斜部32によりビーズBの上側がビーズBの搬送側に向かって倒れこんだ状態となるように姿勢を変化させ、挿通孔BHの中心軸が誘導針50の軸線にほぼ一致することになる。すなわちビーズBの挿通孔BHが誘導針50に円滑に挿通され、挿通用糸60に挿通されることとなる。ビーズ押出部40の先端部44は平面視形状が凹状に形成されているので、ビーズBを誘導針50に押し付ける際に、先端部44が誘導針50と干渉することがなく、誘導針50の待機姿勢を崩してしまうおそれはない。
【0026】
以上のようにして、搬送路30に供給されたビーズBはきわめて円滑に誘導針50に挿通されることになる。ビーズ押出部40を搬送路30内で往復動させることで、連続的に誘導針50にビーズBを挿通させることができる。
誘導針50に挿通させたビーズBを挿通用糸60に順次送り出す際の動作について、図7を参照しながら詳細に説明する。誘導針50は第1のマグネット群74により複数個所で吸着保持されているので、誘導針50に挿通させたビーズBは、図7に示すように誘導針50の先端部位置と第1のマグネット群74の一方の磁石74Aとの間で貯留されることになるが、第1のマグネット群74と第2のマグネット群78を保持する保持部70が具備する離間距離調節機構76を用いて、第1のマグネット群74に代えて第2のマグネット群78により誘導針50を吸着保持させれば、図8に示すように、第1のマグネット群74の一方の磁石74Aでせき止められていたビーズBの一部を第2のマグネット群78一方の磁石78Aの吸着位置まで先送りすることができる。
【0027】
この後、離間距離調節機構76により第2のマグネット群78を元の待機位置に戻し、再び第1のマグネット群74で誘導針50を吸着保持すると、図9に示すように、第2のマグネット群78の一方の磁石78Aでせき止められたビーズBを第1のマグネット群74の他方の磁石74Bの位置まで先送りすることができる。この後再び離間距離調節機構76を操作して、第2のマグネット群78により誘導針50を吸着保持すると、第1のマグネット群74の他方の磁石74Bでせき止められていたビーズBを、図10に示すように、誘導針50に挿通させると共に、第1のマグネット群74の一方の磁石74Aにせき止められていたビーズBを第2のマグネット群78の一方の磁石78Aの位置まで先送りすることができる。図7〜図10までの操作を繰り返し行うことにより、誘導針50に挿通したビーズBを誘導用糸60に向けて順次送り出すことができる。また、第1のマグネット群74および第2のマグネット群78の各磁石がへの字型をなしているため、誘導針50の吸着保持状態を一定に維持することができ、誘導針50へのビーズBの挿通が常に円滑に行うことができるため好都合である。
【0028】
以上に本願発明にかかるビーズ通し器10について実施形態に基づいて詳細に説明をしてきたが、本願発明におけるビーズ通し器10は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更ない範囲において各種の改変がなされたとしても、本願発明の技術的範囲に属することはもちろんである。例えば、本実施形態においては、搬送路30にビーズBを供給する流入路24を搬送路30に対して全体が平面視で直交する状態で接続されているが、流入部分24の平面視形状は、搬送路30との合流部分だけが直交して接続されていればよく、他の部分は、搬送路30に沿った形状に形成されていても良い。この形態を採用することで、ビーズ通し器10全体における平面領域を小さくすることができるため好都合である。
【0029】
また、本実施形態においては、使用者がビーズ押出部40を搬送路30内に沿って直接往復動させる操作を行うことにより搬送路30内のビーズBを送り出す形態を採用しているが、図11に示すように、ビーズ押出部40の他端側部分にギア体80をロッド42の軸線に対して水平方向に直交する軸82により回転可能に取り付け、ギア体80に噛合する回転体84を回転操作することにより、ビーズ押出部40を搬送路30内で往復動させる形態とすることもできる。回転体84は円筒状の管を管の回転軸に対してスラッシュカットし、スラッシュカットした面にギア体80と噛合する凹凸部86が周設されている。回転体84には取手88が取り付けられているので、使用者は取手88を把持してギア体80を凹凸部86に噛合させた状態で回転体84を回転軸周りに回転させれば、回転体84に噛合しているギア体80は回転体84のスラッシュカット面に形成された凹凸部86に沿って移動することで、搬送路30の延長方向に押し出されることになり、回転体84の回転運動がビーズ押出部40の往復動運動に動作変換される。
回転体84の長手側の先端部位置と取手88との離間距離L1は、ロッド42の先端部44が搬送路30の終端側の傾斜部32の位置でビーズBを押し出して誘導針50に挿通させることができる寸法に形成されている。一方回転体84の短手側の先端部位置と取手88との離間距離L2は、ロッド42の先端部44が流入部24と搬送路30との合流部分となるように形成されている。
【0030】
ロッド42には上記実施形態と同様にして弾発材38が装着されているので、ギア体80が移動することによりロッド42が搬送路30の終端側まで移動すると、ギア体80およびロッド42を搬送路30の始端側に戻そうとする弾発力が作用するため、回転体84を回転させればギア体80およびロッド42を元の位置に戻すことができる。
以上のように回転体84を回転させることによってビーズ押出部40の搬送路30内における往復動動作を操作する方式によれば、一定速度でビーズ押出部40の往復動動作を制御することができるため好都合である。
【0031】
また、本実施形態においては、搬送路30に供給されたビーズBを押し出して誘導針50に挿通させるビーズ押出部40としているが、搬送路30に供給されたビーズBを誘導針50の待機位置まで引き出す方式のビーズ引き出し部に置き換えることもできる。このようなビーズ引き出し部の構造は、押し出しと引き出しとの相違はあるものの、基本構成は同様の構成を採用することができる。
【0032】
また、本実施形態においては直線状の誘導針50を搬送路30の軸線に対して下方側に傾けた状態で保持しているため、搬送路30の終端部分に姿勢変更部32を配設することが好ましい形態として実施形態において説明しているが、図12に示すように先端部をわん曲させた形状の誘導針50を採用すれば、誘導針50の先端部が搬送路30の軸線に一致させた状態で待機させることができるので、搬送路30の終端部への姿勢変更部32の配設を省略することができるため好都合である。
さらには、誘導針50を保持する保持部70は誘導針50に対して図6〜図10に示すように上側にセットする形態に限定されるものではなく、誘導針50を適切の吸着保持することができれば、下側や横側にセットしても良い。
【0033】
また、本実施形態においては、ビーズ押出部40の先端部44を流入路24と搬送路30との合流部分に待機させることで、流入路24から不意に供給されたビーズBが搬送路30内で倒れこまないようにしているが、搬送路30の合流部分でビーズBが搬送される側部分に図13に示すような薄いゴム板90を配設し、ビーズ押出部40の往復動作に伴ってゴム板90の流入部24側の一辺が回動の中心となるように搬送路30にカンチレバー形式で取り付けておけば、ビーズ押出部40のロッド42の先端部位置は必ずしも合流部分で待機させておく必要がないため好都合である。この構成を採用することにより、ストッパ46の位置を調整すれば、ロッド42の先端部44の待機位置を規定することができるので保持片34の配設を省略することができる。
【0034】
以上の実施形態においては、流入路24から搬送路30に供給されたビーズBは誘導針50に挿通されるまでの間、搬送路30内において直立状態で搬送され、搬送路30内でビーズBが倒れこまない前提となっているが、ビーズBが搬送路30内で倒れこんでしまうことも考えられる。このようにビーズBが搬送路30内で倒れこんだとしても、傾斜部に形成された姿勢変更部32を段差部分に形成された姿勢変更部にすることでビーズBを誘導針50に挿通させるために適切な姿勢に変更させた状態にすることができるので好都合である。この場合、搬送路30の内底面の高さ位置と段差部分の内底面の高さ位置との落差寸法をビーズBの高さ寸法の1/3程度からビーズBの高さ寸法未満とし、段差部分の内底面にはゴム板などを敷設することで、段差部分の内底面とビーズBとの摩擦を大きくすることができ、さらに好適にビーズBの姿勢を変更させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態にかかるビーズ通し器の斜視図である。
【図2】図1中のA−A線における断面図(ビーズ供給部の断面図)である。
【図3】図1中の矢印Bの方向から臨んだ拡大図(ビーズ供給部と搬送路の合流部分の拡大図)である。
【図4】図1中のC部分の拡大図である。
【図5】図1中のD部分の拡大図(搬送路の終端側における拡大図)である。
【図6】図1中のE部分の拡大図(保持部の拡大図)である。
【図7】誘導針に挿通したビーズを先送りさせる際における保持部の動作を示す正面図である。
【図8】誘導針に挿通したビーズを先送りさせる際における保持部の動作を示す正面図である。
【図9】誘導針に挿通したビーズを先送りさせる際における保持部の動作を示す正面図である。
【図10】誘導針に挿通したビーズを先送りさせる際における保持部の動作を示す正面図である。
【図11】ロッドの往復動機構の他の実施形態の一例を示す正面図である。
【図12】誘導針の他の実施形態を示す正面図である。
【図13】他の実施形態の一例を示す合流部の拡大図である。
【符号の説明】
【0036】
10 ビーズ通し器
12 支持台
20 ビーズ供給部
22 ビーズ投入部
24 流入路
30 搬送路
32 姿勢変更部
34 突出入片
36 ガイド板
38 弾発材
40 ビーズ押出部
42 ロッド
44 先端部
45 係止部
46 ストッパ
48 突出部
50 誘導針
60 挿通用糸
70 保持部
72 保持体
74 第1のマグネット群
74A,74B、78A,78B 磁石
76 離間距離調節機構
76A 保持ロッド
76B ストッパ
76C 付勢部材
78 第2のマグネット群
80 ギア体
82 回転軸
84 回転体
86 凹凸部
88 取手
90 ゴム板
B ビーズ
BH 挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズを供給するビーズ供給部と、
前記ビーズ供給部に連通し、前記ビーズをビーズ挿通用糸の一端部が装着された誘導針に向けて搬送する搬送路と、
前記搬送路に供給された前記ビーズを1つずつ押し出て前記誘導針に挿通させるビーズ押出部と、
前記誘導針を保持する保持部と、を有するビーズ通し器であって、
前記保持部は、前記誘導針を吸着保持する複数のマグネット群と該複数のマグネット群の一部を保持する保持体とを有し、
前記複数のマグネット群は、
前記誘導針との離間距離が一定となるように維持され、通常時には前記誘導針を吸着保持する第1のマグネット群と、
前記誘導針との離間距離を調節する離間距離調節機構を具備し、通常時においては前記第1のマグネット群に前記誘導針を吸着保持させ、前記ビーズ押出部と前記誘導針の端部との間に前記ビーズが貯留された際には、前記離間距離調節機構により前記誘導針との離間距離を短縮させることにより、前記第1のマグネット群に代えて前記誘導針を吸着保持することで、前記第1のマグネット群と前記誘導針の前記搬送路側端部との間に貯留されたビーズを前記誘導針の他端部側に先送り可能とする第2のマグネット群と、により構成されていることを特徴とするビーズ通し器。
【請求項2】
前記離間距離調節機構は、
前記保持体に挿通され、先端部に前記第2のマグネット群が保持された保持ロッドと、
前記保持ロッドの他端側に形成されたストッパと、
前記ストッパと前記保持体との間に配設され、前記ストッパ位置を前記誘導針および前記保持体から離反する方向に付勢する付勢部材と、により構成されていることを特徴とする請求項1記載のビーズ通し器。
【請求項3】
前記誘導針は、前記ビーズ押出部により前記ビーズが前記搬送路内で押し出される方向に対して軸線が傾斜する配置となるように前記保持体により保持されていて、
前記搬送路の前記誘導針側端部には、前記ビーズの中心孔の軸線と前記誘導針の軸線とが平行となるように前記ビーズの姿勢を傾斜させるための姿勢変更部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のビーズ通し器。
【請求項4】
前記ビーズ供給部から前記搬送路に最初のビーズが供給される際に、前記搬送路への前記最初のビーズの進入を防止するため、前記ビーズ供給部と前記搬送路との合流部分に前記ビーズ押出部の先端位置を待機させることが可能なビーズ押出部先端位置決め手段を有していることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のビーズ通し器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−249775(P2009−249775A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100190(P2008−100190)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【特許番号】特許第4145349号(P4145349)
【特許公報発行日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(308006667)
【Fターム(参考)】