説明

ビーム位置モニタ

【課題】ストリップ電極からの電流信号を用いてビームの中心位置を計測するときのS/N比が改善されたビーム位置モニタを提供する。
【解決手段】ビーム位置モニタは、電荷粒子またはX線のビームが通過するときに電離するガスイオンまたは電子が上記ビームの通過方向に垂直な面の一軸方向に並列して配列される複数の短冊状のストリップ電極に流れる電流の大きさと上記ストリップ電極の位置情報とから上記ビームの上記一軸方向の中心位置を計測するビーム位置モニタにおいて、上記複数のストリップ電極には、上記一軸方向の両端部に配置され、上記一軸方向の中央部に配置されている上記ストリップ電極より幅の広いストリップ電極が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷電粒子またはX線のビームの位置およびプロファイルを計測するためのビーム位置モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のストリップ型ビーム位置モニタは、容器内に複数の電極基板を組み合わせて構成され、電極基板のうち一枚を両面をスリット加工した第1の電極とし、この第1の電極を電極基板のうち二枚からなる第2の電極で挟み、第1の電極と第2の電極を所定距離をもって保持する構成とし、第2の電極に電圧が印加されることで、第1の電極からスリットごとの電離電流を取り出す位置検出部を備え、位置検出部を互いに直交する方向に一対設け、ビームの位置を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−006051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このビーム位置モニタでは、ビームの中心部に対応するストリップ電極から電流信号の大きさが大きく、端部に対応する電流信号の大きさが小さくなるために、ビーム形状を正確に把握しようとした場合、ストリップ電極の信号を読み取るためのA/Dコンバータのダイナミックレンジを大きく取る必要がある。しかし、ビームの中心部に対応する電流信号が飽和しないように入力の許容範囲を設定すると、端部に対応する電流信号の大きさが小さく誤差が大きくなるので、重心計算の誤差が大きくなってしまうという問題がある。
【0005】
この発明の目的は、ストリップ電極からの電流信号を用いてビームの中心位置を計測するときのS/N比が改善されたビーム位置モニタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わるビーム位置モニタは、電荷粒子またはX線のビームが通過するとき電離するガスイオンまたは電子が上記ビームの通過方向に垂直な面の一軸方向に並列して配列される複数の短冊状のストリップ電極に流れる電流の大きさと上記ストリップ電極の位置情報とから上記ビームの上記一軸方向の中心位置を計測するビーム位置モニタにおいて、上記複数のストリップ電極には、上記一軸方向の両端部に配置され、上記一軸方向の中央部に配置されている上記ストリップ電極より幅の広いストリップ電極が含まれる。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係わるビーム位置モニタの効果は、荷電粒子またはX線のビームが通過することにより電離するガスイオンまたは電子をビームが通過した位置に対応した位置に配置された短冊状の複数のストリップ電極に集電されて電流が流れ、ストリップ電極の位置情報とストリップ電極に流れる電流の大きさとからビームの中心位置を算出するが、ストリップ電極の幅が中央部領域で狭く、両方の端部領域で広くなっているので、ガスイオンまたは電子の分布の少ない両方の端部領域のストリップ電極から幅の広くなった分だけ大きな電流が流れ、S/N比が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる平行平板型のビーム位置モニタの概略断面図である。
この発明の実施の形態1に係わる平行平板型のビーム位置モニタ1は、1枚の高圧電極2と、この高圧電極2を挟む2枚の信号電極3a、3bと、を有している。
また、このビーム位置モニタ1は、高圧電極2および信号電極3a、3bの外周縁部を支持する絶縁支持部材5と、この絶縁支持部材5を所定の間隔で離間し、信号電極3a、3bを高圧電極2から所定の間隔だけ離間させるスペーサ6と、絶縁支持部材5とスペーサ6とを積み重ねて固定するフレーム7と、を有している。
フレーム7の荷電粒子ビームまたはX線(以下、ビームと略称する。)が通過する中央部には、ビームが物質に衝突して散乱される現象を低減するために、薄いフィルムが貼られた窓8が設けられている。高圧電極2と信号電極3a、3bとの間には、空気が封入されている。なお、空気の替わりにビーム位置モニタ用に調整されたガスを封入してもよい。
【0009】
図2は、実施の形態1に係わる高圧電極2および信号電極3a、3bの配置の様子を示す図である。なお、以下の説明において、ビームの通過する方向をZ軸、このZ軸に直交する面の直交する2軸をX軸、Y軸と称する。
高圧電極2と信号電極3a、3bは、Z軸に直交する。
また、高圧電極2は、金属箔、またはポリイミド等の絶縁フィルムの表面に数μm〜数10μmの厚さの金属層を形成したものであり、1kV〜10kV程度の電位に維持される。
信号電極3a、3bは、高圧電極2に対向し、所定の間隔だけ離間する位置に配置される。
一方の信号電極3aは、図2に示すように、絶縁フィルムの片方の面上に短冊状の複数のストリップ電極10a、10bが形成されたものであり、高圧電極2とストリップ電極10a、10bが対面するように配置される。また、ストリップ電極10a、10bは、ほぼゼロ電位に維持される。
なお、実施の形態1に係わるビーム位置モニタ1は、1枚の高圧電極2を2枚の信号電極3a、3bで挟んで構成されているがこれに限るものではない。例えば、中央に1枚の信号電極3を配置し、その両側を2枚の高圧電極2で挟み込む構造としても良い。この場合は、信号電極3の両面にストリップ電極10a、10bを形成する。
【0010】
図3は、信号電極3aのストリップ電極10a、10bが形成されている面の平面図である。
信号電極3aは、図3に示すように、絶縁フィルム12の表面にY軸方向の長辺およびX軸方向の短辺を有する短冊状のストリップ電極10a、10bが形成されている。X軸方向の端部領域Bに形成されたストリップ電極10bの短辺の長さ(以下、ストリップ電極の幅と称す。)は、X軸方向の中央部領域Aに形成されたストリップ電極10aの幅の2倍である。但し、このストリップ電極10a、10bの幅とは、ストリップ電極10a、10b間の絶縁スペースを含めた値である。
【0011】
各ストリップ電極10a、10bは、互いに絶縁されており、信号線13を経由して、コネクタ14に接続される。ストリップ電極10a、10bは、ほぼゼロ電位に維持されているので、高圧電極2と信号電極3aの間には、高圧電極2および信号電極3aに垂直なZ軸方向に電界が発生される。
図1において左手方向からビームが入射すると、ビームが通過した位置において、空気が電離され、プラス電荷を持つガスイオンとマイナス電荷を持つ電子が生成される。このガスイオンおよび電子は、高圧電極2に印加された電圧の極性に応じて、高圧電極2と信号電極3aに向かって移動する。例えば、高圧電極2にプラスの電圧を印加した場合には、電子が高圧電極2に向かって移動し、ガスイオンが信号電極3aに向かって移動する。そして、ガスイオンが信号電極3aに到達すると、対応した位置にあるストリップ電極10a、10bに電流が流れる。この時、高圧電極2と信号電極3a間の電界はこれらの電極に対してほぼ垂直で、ビーム軸(Z軸)に対して平行であるので、各ストリップ電極10a、10bに流れる電流の大きさの分布は、ビームの広がりのX軸方向の分布を反映している。すなわち、図3のようにストリップ電極10a、10bを形成した場合、ストリップ電極10a、10bからの電流信号の大きさから、ビームの広がりのX軸方向の分布を知ることができる。
【0012】
他方の信号電極3bは、一方の信号電極3aに形成されたストリップ電極10a、10bを90度回転させて形成されており、ビームの広がりのY軸方向の分布を知ることができ、この2つの信号電極3a、3bの信号から、ビームの進行方向に垂直な方向に対する2次元の分布を知ることができる。
【0013】
図4は、実施の形態1に係わるストリップ電極10a、10bに接続される信号処理系の様子を示す図である。
各ストリップ電極10a、10bには、プリアンプ16が接続され、電流信号を電圧信号に変換して増幅する。そして、プリアンプ16にA/Dコンバータ17が接続され、電圧信号がデジタル電圧信号に変換されて、演算回路18に送られる。演算回路18では、予め入力された各ストリップ電極10a、10bの位置情報と、A/Dコンバータ17から入力されたストリップ電極10a、10bでの電流信号の大きさとからビームの中心位置を算出する。
【0014】
ビームの中心位置の算出方式としては、例えば、電流信号の大きさとストリップ電極10a、10bの位置情報とを用いて重心計算を行う方法や、ビームの広がりの分布がガウス分布に従うと仮定して関数近似を行う方式がある。そして、高速に演算処理を行うときには、重心計算を行う方法が用いられる。特に、医療用加速器に用いるときには、常にビームがビーム位置モニタの中心位置を通過していることを確認しておく必要がある。例えば、ビーム位置モニタを粒子線のスポットスキャニングによるがん治療装置に用いる場合、数10μsecから数100μsecの間で、ビームの中心位置の異常を感知する必要があるため、高速な処理が必要となる。また、ビーム位置変動を検知して、ビーム輸送系上流にある位置補正電磁石に対して、出力補正信号を出す高速補正回路を構成するためにも高速な処理が必要である。
【0015】
図5は、従来の信号電極でのすべての幅が等しいストリップ電極からの電流信号の大きさをシミュレーションした結果である。横軸は、X軸上における信号電極の中心から各ストリップ電極までの距離である。ストリップ電極の位置は、ストリップ電極の幅の中央で代表している。また、電流信号の大きさのシミュレーションにおいては、信号電極の中心にビームの中心が位置するようにビームを入射している。
ストリップ電極からの電流信号の大きさが最も大きくなるのは、ビームの中心、すなわち信号電極の中心の最も近い位置にストリップ電極が位置するときである。この時、プリアンプ16、A/Dコンバータ17に入力が許容される電流信号の範囲は、最も大きい電流信号に対して、余裕を持って設定する必要があるが、一方で、ビームの中心から離れた位置のストリップ電極に対しては、入力信号の範囲に対して、相対的に電流信号の大きさが小さくなるため、電流信号に対する感度が低下する。
【0016】
図6は、実施の形態1に係わる信号電極3aの中心にビームの中心が位置するようにビームが入射されたときの電流信号の大きさのシミュレーション結果である。
中央部領域Aの10本のストリップ電極10aでは、幅が1mmであるので、図5と同様な電流信号の大きさであるが、その外側の端部領域Bのストリップ電極10bでは、幅がストリップ電極10aの2倍の2mmであるので、電流信号の大きさも図5の対応する位置のストリップ電極からの電流信号の大きさの2倍になる。
【0017】
また、2種類のストリップ電極10a、10bの幅が変わる境界位置は、中央部領域Aに最も近い端部領域Bのストリップ電極10bの電流信号の大きさが、ビーム中心位置に位置するストリップ電極10aの電流信号の大きさにほぼ一致する位置とした。すなわち、境界位置は、ビームの広がり分布の半値幅の近傍となる。
そして、A/Dコンバータ17に入力が許容される電流信号の大きさの範囲は、すべてのストリップ電極の幅が等しい場合と同じで良く、かつ、端部領域Bのストリップ電極10bでは、電流信号の大きさが2倍となるために、信号感度が高くなる。
【0018】
図7は、実施の形態1に係わる信号電極3aの中心に対してビームの中心がストリップ電極10aの幅1mmの半分0.5mmだけX軸方向に移動したときの電流信号の大きさに関するシミュレーション結果である。
この場合、端部領域Bのストリップ電極10bの中の中央部領域Aに近いストリップ電極10bからの電流信号の大きさの変化が大きく、ビーム位置変動に対して信号感度が高い。
【0019】
次に、ストリップ電極10a、10bから得られた電流信号の大きさから、ビーム中心位置の算出を重心計算によって行う。n個のストリップ電極10a、10bの電流信号の大きさを用いた重心計算によりビームの中心位置を求める場合、i番目のストリップ電極10a、10bの位置(ストリップ電極の並び方向の位置)をxi、そのストリップ電極10a、10bから得られた電流信号の大きさをSiとすると、ビーム中心位置xcは、式(1)により求められる。但し、iは1〜nの整数、Aは較正係数である。
【0020】
【数1】

【0021】
図8は、実施の形態1に係わる信号電極3aの中心からビームの中心が機械的に移動したときに求められた重心計算位置である。なお、すべてのストリップ電極の幅が等しい信号電極において、ストリップ電極の本数が10本、14本、24本として重心計算を行った結果を比較例1乃至3として合わせて図8に示す。
実施の形態1に係わる信号電極3aに関しては、幅1mmの10本のストリップ電極10aと幅2mmの両側2本づつ計4本のストリップ電極10bからの電流信号を用いて重心計算を行った。また、比較例1として幅1mmの10本のストリップ電極、比較例2として幅1mmの14本のストリップ電極、比較例3として幅1mmの24本のストリップ電極からの電流信号の大きさを用いて重心計算を行っている。なお、補正係数Aをすべて1として重心計算を行っている。
【0022】
図8から分かるように、比較例3では、重心計算位置は機械的に移動したほぼ正しいビーム中心位置を示しているが、他では、それぞれの比率で、機械的に移動したビーム中心位置と重心計算位置との間にずれが生じている。このずれは、較正係数Aを適切に選択する事によって、補正することができる。補正係数Aは、ストリップ電極数が少ない比較例1の場合が最も大きいが、同じ14本のストリップ電極数でも、実施の形態1の場合の方が、比較例2の場合よりも、小さい補正係数、即ち、1に近い補正係数でよいことが分かる。補正係数が1に近い場合の方が、補正係数の誤差による重心計算誤差を低減することができ、より正確な位置計測ができる。
【0023】
次に、重心計算で求められたビームの中心位置xcの重心計算誤差について考える。ビームの中心位置xcの重心計算誤差は、主に、プリアンプ16や伝送系におけるノイズが寄因する。このノイズは、各ストリップ電極10a、10bに対して、ストリップ電極10a、10bの大きさに関係なく一定である。各ストリップ電極10a、10bで得られる電流信号の大きさSiに対して、ノイズの大きさをεとすると、ビームの中心位置xcの重心計算誤差Δxcは、式(2)により求められる。
【0024】
【数2】

【0025】
そして、ストリップ電極の配置に係わる重心位置の測定の誤差は、式(3)により評価することができる。
【0026】
【数3】

【0027】
図9は、ストリップ電極の配置の違いによる重心計算誤差とノイズの比の変化を示す図である。
ビームサイズσが3mmから9mmの範囲で変化した場合について、この式(3)に基づいて重心計算誤差を評価した。
図9から分かるように、比較例3の場合、ビームサイズσが小さくなるほど重心計算誤差が大きくなっており、ビームサイズσが3mmから9mmに亘って全般的に重心位置計算誤差が大きい。これは、ストリップ電極からの信号が小さいビーム端部のデータをより多く計算に使用しているためである。
比較例1では、ビームサイズσが大きくなるにつれて重心計算誤差が増大する。また、比較例2では、比較例1と比較例3に比べて、重心計算誤差が全般的に小さい。
一方、実施の形態1では、比較例2に比べても重心計算誤差が小さく、全般的にも安定して重心計算誤差が小さい。この理由は、端部領域Bのストリップ電極の幅が広くなって電流信号が大きくなったためである。
そして、ビームサイズσが3mm〜9mmの範囲であれば、実施の形態1のようなストリップ電極構成にすることにより、高いS/N比を得ることができる。
【0028】
ストリップ電極10a、10bの幅が変わる境界位置を5mmと設定した場合に、ビームサイズσが3mm〜9mmの範囲でS/N比の高い計測ができることが分かったので、逆に、ビームサイズσがYmmのときにストリップ電極10a、10bの幅が変わる境界位置を求めることができる。すなわち、式(4)を満足するWを求めて、信号電極3aの中心から±Wmmをストリップ電極10a、10bの幅を変化する境界位置とする。そして、ストリップ電極10a、10bの幅を信号電極3aの中心から±Wmmの境界位置の内側と外側とで変化させる。端部領域Bのストリップ電極10bの幅を中央部領域Aのストリップ電極10aの幅の2倍にすることにより、S/N比の高いビーム位置モニタ1を提供することができる。
【0029】
【数4】

【0030】
また、端部領域Bのストリップ電極10bの本数は4本あれば十分であるが、ビーム調整の際の利便性を考えて、ビームが移動可能な範囲をカバーするように設定すれば良い。
なお、中央部領域Aのストリップ電極10aの幅は、式(2)に基づいて、ビームサイズσ、必要な位置感度Δxc、電気系統におけるノイズの大きさεから概略の値を求めることができる。
【0031】
また、実施の形態1に係わる信号電極3aは、平板型であるとして説明してきたが、ワイヤー型としても同様な効果が得られる。ワイヤー型のビーム位置モニタは、ストリップ電極を直径10μm〜数100μmの金属ワイヤーで構成するものであり、ストリップ電極の中心位置に金属ワイヤーを配置することで、ほぼ平板型と同じ構成にすることができる。すなわち、ストリップ電極の幅は、金属ワイヤーの間隔に置き換えることができる。このときは、絶縁フィルム12が不要となり、ビームが通過する物質量を低減させることができる。
【0032】
このようなビーム位置モニタ1は、荷電粒子またはX線のビームが通過することにより電離するガスイオンまたは電子をビームが通過した位置に対応した位置に配置された短冊状の複数のストリップ電極10a、10bに集電されて電流が流れ、ストリップ電極10a、10bの位置情報とストリップ電極10a、10bに流れる電流の大きさとからビームの中心位置を算出するが、ストリップ電極10a、10bの幅が中央部領域で狭く、両方の端部領域で広くなっているので、ガスイオンまたは電子の分布の少ない両方の端部領域ではストリップ電極10bの幅が広いから幅の広くなった分だけ大きな電流が流れ、S/N比が改善される。また、重心計算においてビーム位置推定精度が向上する。
【0033】
また、信号電極の中心からビームの広がり分布の半値幅または分散だけ離れた位置を境界として、境界の外側の境界に最も近いストリップ電極の幅が信号電極の中心に最も近いストリップ電極の2倍であるので、プリアンプのゲインを信号電極の中心に最も近いストリップ電極からの電流信号の大きさに合わせることにより境界の外側の境界に最も近いストリップ電極からの電流信号を飽和することなくビームの中心位置の算出に用いることができる。
【0034】
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2に係わる信号電極3Bと電流信号処理系との接続の様子を示す図である。
この発明の実施の形態2に係わるビーム位置モニタは、実施の形態1に係わるビーム位置モニタ1と信号電極3Bおよび電流信号処理系が異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態2に係わる信号電極3Bは、すべてのストリップ電極10の幅が等しい。そして、信号電極3Bの中央部領域Aに形成されたストリップ電極10は別々のプリアンプ16に接続されている。一方、端部領域Bに形成されたストリップ電極10は、隣り合うストリップ電極10と対をなすようにまとめられ、対のストリップ電極10は同じプリアンプ16に接続される。
なお、接続の切り替えを図示しないディップ・スイッチなどで行えるようにすれば、利用形態や、ビームの状況に応じて実効的なストリップ電極の幅を変更する境界位置を変更することができる。
【0035】
このようなビーム位置モニタは、信号電極3Bの複数のストリップ電極10の幅がすべて等しい場合でも端部領域のストリップ電極10が対にしてまとめられて同一のプリアンプ16に接続されているので、ガスイオンまたは電子の分布の少ない両方の端部領域では2本のストリップ電極10からの電流信号が合わさり、S/N比が改善される。
【0036】
実施の形態3.
図11は、この発明の実施の形態3に係わるストリップ電極10a〜10fが形成された信号電極3Cの平面図である。図12は、実施の形態3に係わる信号電極3Cの中心にビームの中心が位置するようにビームが入射されたときの電流信号の大きさのシミュレーション結果である。
この発明の実施の形態3に係わるビーム位置モニタは、実施の形態1に係わるビーム位置モニタ1と信号電極3Cが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わる信号電極3Cは、図11に示すように、実施の形態1に係わる信号電極3aと中央部領域Aのストリップ電極10c〜10fが異なっており、それ以外同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0037】
実施の形態3に係わる信号電極3Cの中央部領域Aのストリップ電極10a、10c〜10fのうち、ストリップ電極10aは、実施の形態1に係わる信号電極3aのストリップ電極10aと同様の幅であるが、ストリップ電極10c〜10fは実施の形態1に係わるストリップ電極10aと異なっている。
ストリップ電極10fの幅は、隣接するストリップ電極1bからの電流信号の大きさよりもストリップ電極10fからの電流信号の大きさが大きくなるように、決められる。同様に、ストリップ電極10eの幅は、隣接するストリップ電極10fからの電流信号の大きさよりもストリップ電極10eからの電流信号の大きさが大きくなるように、決められる。さらに、ストリップ電極10dの幅は、隣接するストリップ電極10eからの電流信号の大きさよりもストリップ電極10dからの電流信号の大きさが大きくなるように、決められる。さらに、ストリップ電極10cの幅は、ストリップ電極10cからの電流信号の大きさが、隣接するストリップ電極10dからの電流信号の大きさよりも大きく、ストリップ電極10aからの電流信号の大きさよりも小さくなるように、決められる。
このようにして決められたストリップ電極10a〜10fが形成された信号電極3Cの中心にビームの中心が位置するようにしてビームを入射すると、図12に示すように、ストリップ電極10a〜10fからの電流信号の大きさが、ビーム中心から外側に向かって、単調に減少する。
【0038】
図13は、実施の形態3に係わる信号電極3Cの中心からビームの中心が機械的に移動したときに求められた重心位置計算結果である。なお、実施の形態3において重心位置計算では中央部領域の10本のストリップ電極10a、10c〜10fと端部領域の2本のストリップ電極10bが用いられた。
実施の形態3の信号電極3Cを用いた重心位置計算では、実施の形態1の信号電極3aを用いたときに比べて、ビーム位置に対する重心計算値の感度は下がっているが、すべてのストリップ電極の幅を等しくした比較例1に比較すると、感度は上がっている。
また、図6と図11を比較すると分かるように、中央部領域のストリップ電極を含む12本のストリップ電極からの電流信号の大きさの平均値は、実施の形態3の方が実施の形態1より10%程度大きくなっており、重心位置計算のS/N比は改善される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる平行平板型のビーム位置モニタの概略断面図である。
【図2】実施の形態1に係わる高圧電極および信号電極の配置の様子を示す図である。
【図3】信号電極のストリップ電極が形成されている面の平面図である。
【図4】実施の形態1に係わるストリップ電極に接続される信号処理系の様子を示す図である。
【図5】従来の信号電極のすべての幅が等しいストリップ電極からの電流信号の大きさをシミュレーションした結果である。
【図6】実施の形態1に係わる信号電極の中心にビームの中心が位置するようにビームが入射されたときの電流信号の大きさのシミュレーション結果である。
【図7】実施の形態1に係わる信号電極の中心に対してビームの中心がストリップ電極の幅1mmの半分0.5mmだけX軸方向に移動したときの電流信号の大きさに関するシミュレーション結果である。
【図8】実施の形態1に係わる信号電極の中心からビームの中心が機械的に移動したときに求められた重心計算結果である。
【図9】ストリップ電極の配置の違いによる重心位置の測定の誤差の変化を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係わる信号電極と電流信号処理系との接続の様子を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係わるストリップ電極が形成された信号電極の平面図である。
【図12】実施の形態3に係わる信号電極の中心にビームの中心が位置するようにビームが入射されたときの電流信号の大きさのシミュレーション結果である。
【図13】実施の形態3に係わる信号電極の中心からビームの中心が機械的に移動したときに求められた重心位置計算結果である。
【符号の説明】
【0040】
1 ビーム位置モニタ、2 高圧電極、3 信号電極、5 絶縁支持部材、6 スペーサ、7 フレーム、8 窓、10 ストリップ電極、12 絶縁フィルム、13 信号線、14 コネクタ、16 プリアンプ、17 A/Dコンバータ、18 演算回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷粒子またはX線のビームが通過するとき電離するガスイオンまたは電子が上記ビームの通過方向に垂直な面の一軸方向に並列して配列される複数の短冊状のストリップ電極に流れる電流の大きさと上記ストリップ電極の位置情報とから上記ビームの上記一軸方向の中心位置を計測するビーム位置モニタにおいて、
上記複数のストリップ電極には、上記一軸方向の両端部に配置され、上記一軸方向の中央部に配置されている上記ストリップ電極より幅の広いストリップ電極が含まれることを特徴とするビーム位置モニタ。
【請求項2】
上記一軸方向の中心から上記ビームの広がり分布の半値幅または分散だけ離れる境界よりも外側に配置される上記ストリップ電極の幅が、上記境界より内側に配置される上記ストリップ電極の幅の2倍であることを特徴とする請求項1に記載するビーム位置モニタ。
【請求項3】
上記一軸方向の中心から上記ビームの広がり分布の半値幅または分散だけ離れる境界よりも外側に配置される上記ストリップ電極の幅が、上記中心に最も近い位置に配置される上記ストリップ電極の幅の2倍であり、
上記境界より内側に配置される上記ストリップ電極の幅が、上記中心に近いほど流れる電流の大きさが大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載するビーム位置モニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−155649(P2007−155649A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354591(P2005−354591)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】