説明

ビーム経路表示装置

【課題】実際にスピーカアレイを設置しなくとも音声ビームの経路を確認することができるビーム経路表示装置を提供する。
【解決手段】PCのディスプレイに、室内形状(部屋のサイズ)、スピーカアレイの設置位置(壁からの距離、および視聴位置との相対距離)を入力画面を表示する。ユーザは、上記各種値を入力する。PCは、入力された各種数値に基づいて、音声ビームの壁面反射の角度を計算し、スピーカアレイが出力する音声ビーム経路を計算し、計算した結果をディスプレイに表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカアレイが出力する音声ビームを可視化してビーム経路を表示するビーム経路表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声をビーム化して出力するスピーカアレイが知られている。このスピーカアレイを用いて、壁面で音声ビームを反射させ、マルチチャンネルサラウンド音声の各チャンネルを聴取者(ユーザ)の後方等から到達させることが行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
各チャンネルの音声ビームが壁面に反射してユーザに到達するためには、スピーカアレイの設置位置と聴取位置に応じて、音声ビームの出力角度を調整しなければならない。そこで、聴取位置にマイクを設置して音声ビームをスイープさせ、収音した音声のレベルから音声ビームが到達する角度を求め、出力角度を自動設定するものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−363695号公報
【特許文献2】特開2006−13711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音声ビームを壁面で反射させる場合、聴取空間によっては最適な音声ビームを到達させることができない場合がある。例えば、室内が広すぎてスピーカアレイ設置位置と聴取位置が遠い、室内が狭くてスピーカアレイ設置位置と聴取位置が近い等で、各チャンネルの音声ビームが理想的な角度でユーザに到達しない場合がある。この場合、ユーザは十分なサラウンド感を得ることができない可能性がある。
【0005】
しかし、ユーザは、実際にスピーカアレイを室内に設置してマルチチャンネルサラウンド音声を再生するまで、音声ビームがどのように到達するのかを知ることができず、どの程度のサラウンド感を得られるかが不明であった。
【0006】
そこで、この発明は、実際にスピーカアレイを設置しなくとも音声ビームの経路を確認することができるビーム経路表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のビーム経路表示装置は、入力手段と、計算手段と、設定手段と、表示手段と、を備えている。入力手段は、スピーカアレイの設置位置、および室内形状を入力する。計算手段は、入力手段から入力されたスピーカアレイの設置位置、および室内形状から、音声ビームの壁面反射の角度を計算し、スピーカアレイが出力する音声ビームの経路を計算する。表示手段は、計算手段が計算した音声ビームの経路を表示する。
【0008】
このように、本発明のビーム経路表示装置は、スピーカアレイの設置位置、および室内形状の入力に対し、スピーカアレイの音声ビームの経路(例えば矢印など)を表示することで、実際にスピーカアレイを設置しなくとも音声ビームの経路を確認することができる。そのため、ユーザは、十分なサラウンド感を得られるかどうかを購入前に知ることができる。なお、スピーカアレイの設置位置とは、スピーカアレイと聴取位置との相対距離、およびスピーカアレイと壁面との距離を含むものである。また、室内形状とは、例えば部屋の幅、奥行き、等である。
【0009】
また、上記発明において、聴取位置における音声ビームの許容到達角度を設定する設定手段を備えていてもよい。この場合、表示手段は、設定手段が設定した許容到達角度をさらに表示するように構成する。
【0010】
これにより、許容到達角度内(十分なサラウンド感が得られる範囲)で音声ビームが到達しているかどうかを確認することができる。そのため、ユーザは、十分なサラウンド感を得られるかどうかを容易に判断することができる。
【0011】
また、上記発明において、計算手段は、許容到達角度内で音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算し、表示手段は、計算手段が計算したスピーカアレイの設置位置を表示することも可能である。
【0012】
この場合、十分なサラウンド感が得られるようなスピーカアレイの設置位置を表示する。よって、ユーザは、実際にスピーカアレイを購入した後に、設置する位置を容易に判断することができる。また、購入前であれば、その位置にスピーカアレイを置くことができるかどうかを確認することもできる。
【0013】
また、上記発明において、設定手段は、複数の音声ビームについて許容到達角度を設定し、計算手段は、各音声ビームについて許容到達角度内で音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算するように構成することも可能である。
【0014】
この場合、各音声ビームについて許容到達角度が異なっていても、全ての音声ビームが許容到達角度内に収まるような設置位置を計算する。例えば、フロントチャンネルは、スピーカアレイと聴取位置との相対距離が3〜5mの範囲内であり、リアチャンネルは2〜4mの範囲内であれば、3〜4mを設置位置として計算する。
【0015】
また、入力手段は、壁面の反射率をさらに入力し、計算手段は、壁面の反射率から音声ビームの減衰度を計算し、表示手段は、音声ビームの減衰度を表示することも可能である。
【0016】
この場合、壁面の反射率を計算に考慮し、その部分での音声ビームの反射後の減衰度を表示する。例えば、通常の壁面では60%程度の反射率が得られるとして音声ビームの減衰度を60%(60%に減衰)と表示する。カーテン等の反射率が低いもの(例えば30%程度)が設置されている場合、その部分での反射後の音声ビームが減衰度30%である旨を表示する。なお、ビーム経路を矢印で示す場合、その矢印の太さで減衰度を示してもよい。
【0017】
また、入力手段は、室内形状として空間形状を入力し、計算手段は、壁面に加えて天井面でも音声ビームが反射して聴取位置に到達するようにビーム経路を計算することも可能である。
【0018】
この場合、室内に障害物が設置され、壁面の反射では十分なサラウンド感が得られない場合であっても、天井面の反射を用いた立体的な経路を表示する。このため、ユーザは、室内に障害物がある場合であっても、実際にスピーカアレイを設置せずに、サラウンド感を得られるかどうかを確認することができる。
【0019】
また、計算手段が聴取位置に到達する音声ビームの経路を計算できなかった場合に、その旨を報知する報知手段を備えていてもよい。
【0020】
例えば、室内にビームが反射しない箇所(開いた扉など)があり、聴取位置まで音声ビームを到達させることができないと計算されることが考えられる。この場合、音声ビームの経路を計算できなければ、その旨をユーザに報知する。報知の手法は、画面表示や、「壁がないので反射できません」等と音声案内することが考えられる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、スピーカアレイの設置位置、室内形状の入力に対し、スピーカアレイの音声ビームの経路を表示することで、実際にスピーカアレイを設置しなくとも音声ビームの経路を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るビーム経路表示装置について説明する。図1は、本実施形態のビーム経路表示装置を実現するための構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、ビーム経路表示装置は、パーソナルコンピュータ(以下、PCと言う。)等の情報処理装置とLCD等のディスプレイにより実現される。図1に示すPC1は、スピーカアレイが出力する音声ビームの経路を計算(シミュレーション)し、その結果をディスプレイ2で表示する。
【0024】
PC1は、CPU11、ユーザI/F12、RAM13、HDD14、および映像出力I/F15を備えた一般的なPCである。CPU11には、ユーザI/F12、RAM13、HDD14、および映像出力I/F15が接続されている。
【0025】
CPU11は、スピーカアレイが出力する音声ビーム経路のシミュレーションを行う機能を有する。すなわち、CPU11は、HDD14に記憶されているシミュレーション用のソフトウェアを読み出し、これをRAM13上に展開することで音声ビーム経路のシミュレーションを行う。例えば、スピーカアレイの購入を考えているユーザが専用ソフトウェアをPC1のOSにインストールして(またはWEBブラウザ上で実行して)、シミュレーションを行う。
【0026】
ユーザは、キーボードやマウス等からなるユーザI/F12を用いてPC1を操作し、シミュレーションに必要な各種数値を入力する。例えば、室内形状(部屋のサイズ)、スピーカアレイの壁からの距離、視聴位置(スピーカアレイとの相対距離)を入力する。CPU11は、映像出力I/F15を介してディスプレイ2に上記各種数値を入力するための画面を表示する(図2(A)を参照)。
【0027】
CPU11は、ユーザI/F12から入力された各種数値に基づいて、音声ビームの壁面反射の角度を計算し、スピーカアレイが出力する音声ビーム経路を計算する。CPU11は、計算した音声ビーム経路をディスプレイ2に表示する。
【0028】
図2(A)は、ディスプレイ2に表示される画面(各種数値を入力するための画面)を示した図である。ユーザは、同図(A)の画面を見ながら、部屋の幅、奥行き、スピーカアレイの壁からの距離、視聴位置を入力する。これらの数値を入力すると、CPU11は、これらの値に基づいて、音声ビーム経路を計算し、同図(B)に示す画面を計算結果として表示する。
【0029】
同図(B)に示すように、センタ(C)チャンネルは、スピーカアレイ正面から視聴位置までの最短経路を音声ビーム経路として矢印で表示する。フロント右(FR)チャンネルおよびフロント左(FL)チャンネルは、室内の壁面に1回反射して視聴位置に到達する最短経路を音声ビーム経路として矢印で表示する。リア右(SR)チャンネルおよびリア左(SL)チャンネルは、室内の横壁面(紙面左右に示す壁面)と後壁面(紙面下側の壁面)で2回反射して視聴位置に到達する最短経路を音声ビーム経路として矢印で表示する。
【0030】
このように、PC1は、スピーカアレイの設置位置(壁からの距離および視聴位置との相対距離)と室内形状を入力すると、ディスプレイ2にスピーカアレイの音声ビーム経路(例えば矢印など)を表示する。そのため、ユーザは、実際にスピーカアレイを購入、設置しなくとも音声ビーム経路を視覚的に確認することができる。ユーザは、音声ビーム経路を視覚的に確認することで、各チャンネルの音声がどのようにして聞えるか(サラウンド感を得られるか)を視覚的に知ることができる。また、スピーカアレイの設置位置の入力を変更すれば音声ビーム経路も変更されるため、スピーカアレイを購入した後であっても、適切な設置位置を容易に確認することができる。
【0031】
次に、図3(A)は、許容到達角度を表示する場合の音声ビーム経路の計算結果を示した図である。許容到達角度は、例えばITU(International Telecommunication Union)で勧告されているスピーカ配置に基づくものであり、サラウンド感が得られる範囲の目安となるものである。本実施形態では、扇形状のハッチングにより許容到達角度を示している。
【0032】
ユーザは、この許容到達角度内で音声ビームが到達していれば、十分なサラウンド感が得られると判断することができる。よって、図2(B)に示した例よりもさらに容易にサラウンド感が得られるかどうかを判断することができる。この例によれば、図3(B)に示すように、室内形状の幅が狭すぎ、リアチャンネルの音声ビームが許容到達角度で到達しない場合も、ユーザに案内することもできる。
【0033】
なお、同図(B)に示すように、画面上に「適切なビーム角度が得られません。」と表示してもよい。また、画面表示ではなく、PC1にスピーカを接続し、音声により案内することも可能である。また、スピーカアレイを設置した後であれば、スピーカアレイのOSD上に表示したり、スピーカアレイから放音して音声案内したりすることも可能である。
【0034】
次に、図4(A)および同図(B)は、許容到達角度内で音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算する場合の計算結果を示した図である。図4(A)および同図(B)では、図3(A)に示した例に対して、ユーザがスピーカアレイの壁からの距離を大きく、スピーカアレイと視聴位置との相対距離を小さく入力した場合の計算結果を示す。
【0035】
この場合、相対距離が小さ過ぎるため、FRチャンネルおよびFLチャンネルの音声ビームが許容到達角度内で到達しない。そこで、CPU11は、許容到達角度内でFRチャンネルおよびFLチャンネルの音声ビームが到達するように、相対距離を大きくした場合の計算を行う。
【0036】
図6に設置位置の計算手法の一例を示す。図6(A)は、FLチャンネルの音声ビームのビーム経路と到達角度を示した図であり、同図(B)は、到達角度と相対距離との関係を示したグラフである。
【0037】
同図(A)および同図(B)に示す例では、音声ビームの出力角度(=到達角度)をθ、相対距離をL、部屋の幅をxとする。同図(A)に示すように、相対距離Lは、音声ビームの到達角度θと部屋の幅xによって決まる。すなわち、アレイスピーカが部屋の左右中心位置に設置されているとすると、L=x・tanθの関係式によりθが表される。ここで、部屋の幅xを固定値とすると、Lは、θの関数(tanθ)で表され、同図(B)のようなグラフを示すこととなる。同図(B)に示すグラフの横軸は到達角度θ、縦軸は相対距離Lを表す。なお、到達角度θは、同図(A)の紙面左方向(または右方向)を0度、紙面上方向(または下方向)を90度とし、許容到達角度は45度〜75度としている。
【0038】
同図(B)のグラフによれば、θ=45度〜75度に対する相対距離L1〜L2が求められる。また、最適な到達角度(許容到達角度の中心値)であるθ=60度に対する相対距離L0が求められる。
【0039】
CPU11は、このL1〜L2に収まるように、ユーザに相対距離を大きくするように促す案内を行う。または、最適な到達角度になるように相対距離L0とするように促す案内を行う。
【0040】
例えば、図4(A)のように、スピーカアレイの壁からの距離を小さくするように案内する。すなわち、「1m後に設置してください」等の案内表示を行う。また、同図(B)のように、視聴位置を変更するように案内することも可能である。この場合、「1m後で視聴してください」等の案内表示を行う。なお、画面表示ではなく、音声案内にしてもよい。
【0041】
次に、図5(A)および同図(B)は、許容到達角度内でリアチャンネルの音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算する場合の計算結果を示した図である。同図(A)および同図(B)では、図3(A)に示した例に対して、ユーザが部屋の奥行きを大きくし、相対距離を大きく入力した場合の計算結果を示す。
【0042】
この場合、相対距離が大き過ぎるため、SRチャンネルおよびSLチャンネルの音声ビームが許容到達角度内で到達しない。そこで、CPU11は、許容到達角度内でSRチャンネルおよびSLチャンネルの音声ビームが到達するように、相対距離を小さくした場合の計算を行う。図7に設置位置の計算手法の一例を示す。
【0043】
図7(A)は、リアチャンネルの音声ビームのビーム経路と到達角度を示した図であり、同図(B)は、到達角度と相対距離との関係を示したグラフである。
【0044】
同図(A)および同図(B)に示す例では、音声ビームの出力角度(=到達角度)をφ、相対距離をL、部屋の幅をx、スピーカアレイと壁との距離(スピーカアレイ前面側の壁との距離)をbとする。同図(A)に示すように、相対距離Lは、音声ビームの到達角度φ、部屋の幅x、およびスピーカアレイと壁との距離bによって決まる。すなわち、アレイスピーカが部屋の左右中心位置に設置されているとすると、L=2b−x・tanφ(ただしL<b,tanφ<2b/a)の関係式によりφが表される。ここで、部屋の幅x、スピーカと壁との距離bを固定値とすると、Lは、φの関数(−tanφ)で表され、同図(B)のようなグラフを示すこととなる。同図(B)に示すグラフの横軸は到達角度φ、縦軸は相対距離Lを表す。なお、到達角度は、紙面左方向(または右方向)を0度、紙面上方向(または下方向)を90度とし、許容到達角度は30度〜60度としている。
【0045】
同図(B)のグラフによれば、θ=30度〜60度に対する相対距離L4〜L5が求められる。また、最適な到達角度(許容到達角度の中心値)であるθ=45度に対する相対距離L3が求められる。
【0046】
CPU11は、このL4〜L5に収まるように、ユーザに相対距離を大きくするような案内を行う。または、最適な到達角度になるように相対距離L3とするような案内を行う。
【0047】
例えば、図5(A)のように、スピーカアレイの壁からの距離を大きくするように案内する。すなわち、「1m前に設置してください」等の案内表示を行う。また、同図(B)のように、視聴位置を変更するように案内することも可能である。この場合、「1m前で視聴してください」等の案内表示を行う。
【0048】
なお、図4および図5において、画面表示ではなく、音声により案内することも可能である。また、スピーカアレイを設置した後であれば、スピーカアレイのOSD上に表示したり、スピーカアレイから放音して音声案内したりすることも可能である。
【0049】
このように、十分なサラウンド感が得られるスピーカアレイの設置位置を表示するため、ユーザは、実際にスピーカアレイを購入した後に、設置する位置を容易に判断することができる。また、その位置にスピーカアレイを置くことができるかどうかを購入前に確認することもできる。
【0050】
次に、図8は、同時に複数の音声ビームについて許容到達角度内で音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算する場合の計算手法を示す図である。
【0051】
図6および図7で示したように、フロントチャンネルとリアチャンネルでは許容到達角度が異なり、表示すべき設置位置が異なっている場合がある。図8に示す例は、この場合においても、全てのビームが許容到達角度内に収まるように設置位置を計算する手法である。
【0052】
同図(A)に示すグラフは、図6(B)および図7(B)に示したグラフを重ね合わせたものである。図8(A)のグラフが示すように、CPU11は、フロントチャンネルの相対距離L1〜L2と、リアチャンネルの相対距離L4〜L5とが重複する部分(L1〜L5)を計算する。例えばL1=3m、L2=5m、L4=2m、L5=4mとすると、3〜4mを相対距離として計算する。よって、全ての音声ビームが許容到達角度内に収まるような設置位置を案内することができる。
【0053】
また、図8(B)は、最適な到達角度を計算する場合の計算手法を示す図である。同図(B)のグラフも、図6(B)および図7(B)に示したグラフを重ね合わせたものである。
【0054】
図8(B)のグラフが示すように、CPU11は、フロントチャンネルの最適な相対距離L0と、リアチャンネルの最適な相対距離L3の中間値L6を最適な相対角度として計算する。この中間値L6を最適な設置位置として案内する。なお、L0=L3となる場合には、相対距離がL0となる設置位置を案内すればよい。
【0055】
なお、フロントチャンネルを重視する場合には、L0に近い値を最適な設置位置とし、リアチャンネルを重視する場合にはL3に近い値を最適な設置位置とすることも可能である。
【0056】
次に、図9は、音声ビームの減衰度を表示する場合の音声ビーム経路の計算結果を示した図である。この例では、カーテン等の反射率が低いものや、室内にビームが反射しない箇所(開いた扉等)を入力する場合の音声ビーム経路を計算する。ユーザは、ユーザI/F12を用いて、カーテンや扉などを入力する。例えば、画面上に表示されている各種カーテンアイコンや扉アイコン等をドラッグ&ドロップすることにより入力を行う。
【0057】
この例では、CPU11は、壁面の反射率を考慮する。例えば通常の壁面では反射率80%、カーテンが設置された壁面では反射率30%とする。CPU11は、各壁面の反射率から各音声ビームの減衰度を計算し、これを数値として表示する。また、減衰度に応じて音声ビームの線の太さを変更する。
【0058】
例えば、同図に示すように、FRチャンネルの音声ビームは、通常の壁面で1回反射して視聴位置に到達するため、反射後の音声ビームに「80%に減衰」と表示し、線の太さを細くする。また、FLチャンネルの音声ビームは、カーテンが設置された壁面で1回反射して視聴位置に到達するため、「30%に減衰」と表示し、線の太さを細くする。SLチャンネルの音声ビームは、通常の壁面で2回反射して視聴位置に到達するため、「64%に減衰」と表示し、線の太さを細くする。SRチャンネルは、室内後方に設置された開放扉により、視聴位置まで反射経路を確保することができないため、「反射できません」等と表示する。
【0059】
このように、室内に音声ビームが反射しない箇所(開放扉等)があり、視聴位置まで音声ビームを到達させることができないと計算される場合、「反射できません」等と案内することで、ユーザは、実際にスピーカアレイを購入、設置しなくとも音声ビーム経路を視覚的に確認し、反射経路を確保できるかどうかを確認することができる。
【0060】
なお、上記のようにカーテン等の反射率の低い物が設置され、あまりにも減衰度が大きい場合(例えば20%以下等)も、「反射できません」等と表示してもよい。
【0061】
次に、図10(A)は、室内に障害物が設置され、壁面の反射では十分なサラウンド感が得られない場合において、天井面の反射を用いる場合のビーム経路の計算結果を示した図である。なお、同図(A)においては、説明を容易にするために、FRチャンネルおよびFLチャンネルの音声ビームのみ示している。
【0062】
この例では、ユーザは、ユーザI/F12を用いて、室内の空間形状(幅、奥行き、高さ)を入力する。CPU11は、入力された空間形状から、室内の立体図を表示する。
【0063】
また、この例では、ユーザは、ユーザI/F12を用いて、室内に設置された障害物の形状と位置を入力する。入力方法は、例えば、画面上に表示されている障害物アイコンを立体図内にドラッグ&ドロップすることにより行う。
【0064】
CPU11は、上述と同様に、各音声ビームの経路を計算するが、障害物が存在し、壁面を反射して音声ビームを到達させることができないと計算された場合、天井面で音声ビームを反射して視聴位置に到達させることができるビーム経路を計算する。このため、ユーザは、室内に障害物がある場合であっても、実際にスピーカアレイを設置せずに、サラウンド感を得られるかどうかを確認することができる。
【0065】
なお、この例では、スピーカアレイは床面に設置されているものとみなして音声ビーム経路を計算しているが、スピーカアレイの床面からの設置高さをさらに入力し、ビーム経路の計算を行ってもよい。
【0066】
なお、図10(B)に示すように、どの程度のサラウンド効果が得られるかを計算結果として表示してもよい。例えば、許容到達角度で音声ビームが到達する場合には判定結果「B」、「サラウンド効果が得られます」と表示する。最適な到達角度(許容到達角度の中心値)で到達することができる場合には、判定結果「A」、「十分なサラウンド効果が得られます」と表示する。許容到達角度から外れて音声ビームが到達する場合には、判定結果「C」、「ソースによってはサラウンド効果が得られません」と表示する。また、視聴位置まで音声ビームを到達させることができないと計算される場合や、あまりにも減衰度が大きい場合には、判定結果「D]、「サラウンド効果が得られません」と表示する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】ビーム経路表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】各種数値を入力するための画面、および音声ビーム経路の計算結果を示した図である。
【図3】許容到達角度を表示する場合の音声ビーム経路の計算結果を示した図である。
【図4】許容到達角度内で音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算する場合の計算結果を示した図である。
【図5】許容到達角度内でリアチャンネルの音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算する場合の計算結果を示した図である。
【図6】スピーカアレイの設置位置の計算手法の一例を示す図である。
【図7】スピーカアレイの設置位置の計算手法の一例を示す図である。
【図8】複数の音声ビームについて許容到達角度内で音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算する場合の計算手法を示す図である。
【図9】カーテン等の反射率が低いものや、室内にビームが反射しない箇所(開いた扉等)を入力する場合の音声ビーム経路の計算結果を示した図である。
【図10】天井面の反射を用いた立体的な経路を表示する場合のビーム経路の計算結果を示した図である。
【符号の説明】
【0068】
1−PC
2−ディスプレイ
3−スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカアレイが出力する音声ビームの経路を表示するビーム経路表示装置であって、
スピーカアレイの設置位置、および室内形状を入力する入力手段と、
前記入力手段から入力されたスピーカアレイの設置位置、および室内形状から、前記音声ビームの壁面反射の角度を計算し、前記スピーカアレイが出力する音声ビームの経路を計算する計算手段と、
前記計算手段が計算した音声ビームの経路を表示する表示手段と、
を備えたビーム経路表示装置。
【請求項2】
聴取位置における音声ビームの許容到達角度を設定する設定手段を備え、
前記表示手段は、前記設定手段が設定した許容到達角度をさらに表示する請求項1に記載のビーム経路表示装置。
【請求項3】
前記計算手段は、前記許容到達角度内で音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算し、
前記表示手段は、前記計算手段が計算したスピーカアレイの設置位置を表示する請求項2に記載のビーム経路表示装置。
【請求項4】
前記設定手段は、複数の音声ビームについて許容到達角度を設定し、
前記計算手段は、各音声ビームについて許容到達角度内で音声ビームが到達するように、スピーカアレイの設置位置を計算する請求項3に記載のビーム経路表示装置。
【請求項5】
前記入力手段は、壁面の反射率をさらに入力し、
前記計算手段は、前記壁面の反射率から音声ビームの減衰度を計算し、
前記表示手段は、前記音声ビームの減衰度を表示する請求項1乃至請求項4に記載のビーム経路表示装置。
【請求項6】
前記入力手段は、前記室内形状として空間形状を入力し、
前記計算手段は、壁面に加えて天井面でも音声ビームが反射して聴取位置に到達するようにビーム経路を計算する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のビーム経路表示装置。
【請求項7】
前記計算手段が聴取位置に到達する音声ビームの経路を計算できなかった場合に、その旨を報知する報知手段を備えた請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のビーム経路表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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