説明

ピアツーピアのファイル共有システムによる不正なファイル共有を防止するシステム

【課題】この発明は、通信ネットワークにおけるピアツーピアのファイル共有システムによる不正なファイルの交換を防ぐ方法に関するものである。
【解決手段】通信ネットワークでの不正なファイルの交換を防ぐために、交換を阻止したいファイル一つにつき偽物のファイルを数十から数百種類の規模で作り、ファイル共有システムで公開する。なお、偽物のファイルは、外部から参照できない部分は適当でよいが、サイズ、種類等の外部から参照可能な部分を本物に似せて作る必要がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信ネットワークにおけるピアツーピアのファイル共有システムのファイルの違法交換を阻止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インターネット上に展開しているWinny、WinMX、Bit Torrentに代表されるピアツーピアのファイル共有システム(以後、ファイルシェアリングシェアリングシステム)は、多くの悪質なユーザーによって違法なファイル交換に使われている。これらの違法なファイル交換を止めることは、不正使用するユーザーの多さと共有ソフトウェアの進歩により非常に困難な状況となっている。
そのため現在の違法ファイル交換への対策技術は、見せしめ的に一部のユーザーを捕まえるだけだった。この対策技術は、違法ファイル交換をするユーザーは何十万人あるいは何百万人という規模であるのに対して捕まえるのは十人足らずなので、違法ファイル交換を止める抑止力となっていなかった。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、ファイルシェアリングシステムにより有料で配信されるべき映画や音楽、コンピュータソフト(以後、コンテンツ)などが、違法に無料でインターネット上のファイルシェアリングシステムで交換されている。これらのコンテンツが無料で交換、配信されることによりコンテンツの著作権等を持つ権利者たちは、音楽ソフトや映像ソフトの売り上げが落ちるなどのことにより大きな損害を受けている。
そして、これらの不正使用に対して現在までに行われた対策は、数十万から数百万のユーザーの中からの十人程度のユーザーを見せしめ的に捕まえるだけだった。そのため、大多数の違反者たちは野放し状態にあった。また、ファイルシェアリングに用いるソフトの巧妙化の影響で違反者を捕まえるのも大変な苦労を要するだけでなく、捕まえた後も裁判などの手続きが必要なため、今の対策技術では対策を行う側にも、人的、金銭的に多くの犠牲を強いるものだった。
そこで本発明では、ファイルシェアリングシステムのファイルの違法交換を行うユーザーを数百万人規模でのファイル交換を直接的に妨害することによって、この問題におけるコンテンツの権利者の被害を格段に小さくするだけでなく、コンテンツの権利者のこの問題の対策にかかる人的、金銭的コストの削減を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上で説明した課題を解決するための手段として、ファイルシェアリングシステムでの交換を阻止したいコンテンツのファイル(以後、トゥルーファイル)に対して、トゥルーファイルの偽物ファイル(以後、ダミーファイル)を数十から数百の規模で作成してファイルシェアリングシステムに公開する。なお、ダミーファイルは、外部から参照できない部分は適当でよいが、サイズ、種類等の外部から参照可能な部分をトゥルーファイルに似せて作る必要がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
第一にファイルシェアリングシステムでトゥルーファイル一つに対して数十から数百種類の規模でダミーファイルを作る。多くの種類のダミーファイルを作ることで、確率的にトゥルーファイルの増殖機会を奪うことが出来る。
第二にファイルシェアリングシステムに先ほど作成した偽物のファイルをアップロードして、ダミーファイルが増殖するのを待つ。ダミーファイルが増殖を開始して爆発的に増殖することでトゥルーファイルの増殖スピードを奪うことが出来る。
【0006】
例として、市販されている音楽CDからMP3形式のダミーファイルを作成してWinMXというファイルシェアリングシステムで公開までの手順を説明する。
まず、CDからMP3ファイルを数個の異なったエンコーダで数種類のビット形式で書き出してMP3の数十種類のトゥルーファイルを作る。そして、トゥルーファイルの中身をファイル名、拡張子、また、ファイルの先頭部分のヘッダに入っている長さや作曲者などの外部から参照かのうな情報をだけを残して中身を同じサイズで、でたらめに書き換えてダミーファイルを作成する。
作成したダミーファイルをWinMXの共有フォルダに入れて後は、ファイルをダウンロードするユーザーが現れてダミーファイルが増殖するのを待つ。この際、このダミーファイルをダウンロードするユーザーは、ダミーファイルをトゥルーファイルと区別することが出来ないので、多くの場合、確率的に数の多いダミーファイルを選んでダウンロードしてしまう。この際ダミーファイルは、リクエストが多ければ多いほど爆発的な早さで増殖をする。仮に100万人が3分30秒(一般的な楽曲の長さ)のMP3ファイルを欲しがっていたと仮定した場合、現在のインターネット環境であれば10分足らずでダミーファイルは100万個に増殖することが出来る。
結果、トゥルーファイルは増殖機会とその増殖スピードをダミーファイルに奪われてしまうので増殖することが出来なくなってしまう。
【発明の効果】
【0007】
この発明により目的のファイルのピアツーピアのファイル共有システム内での増殖スピードと増殖機会を同時に奪うことが出来る。その理由は以下の通りである。
ファイルの増殖機会を奪える理由を説明する。
偽物のファイルは、中身が適当でも、サイズ、種類等の外部から参照できる情報が本物そっくりに作られていれば、ファイル共有システムのユーザー達はダウンロードするまでそのファイルが本物かどうか区別すること出来ない。そのため、仮に、本物のファイル1個に対して偽物のファイルが99個あった場合、本物のファイルの増殖できる確立を理論上1パーセントにすることが出来る。
ファイルの増殖のスピードを抑えられる理由を説明する。
ファイルシステムは理論上ファイルを要求しているユーザーの数(飽和数)に達するまでX=2(t/T)−1(X:複製の個数、t:経過した時間、T:複製1つを伝送する時間)という早さで複製を作ることが出来る。しかし、このスピードは飽和数に近づくと著しく低下する。そこで、本物のファイルが増殖する前に偽物のファイルを増殖させて飽和数に近づけてしまえば本物のファイルの増殖するスピードを奪うことが出来る。
【0008】
従来のファイルシェアリングシステムにおける違法なファイル交換を止める対策技術において、最も大きな問題であったのがファイルシェアリングシステムの持つ天文学的な複製作成能力だった。現在のインターンネット環境においてファイルシェアリングシステムは、理論上3.3MB(一般的な楽曲のMP3形式のファイル)を10分で約5億個まで複製することが出来る。そのため一度増殖を始めたらもうとめることが出来なかった。しかし、本発明により今までの対策技術で困難であったファイルシェアリングシステムの爆発的な違法ファイルの増殖能力を奪うことが出来るようになった。
その理由は、ダミーファイルが同じシステム上でトゥルーファイルと同じ条件で増殖できるため、ダミーファイルが爆発的に増殖することでトゥルーファイルの増殖能力を奪うことが出来るからである。
この防御方法は、自然界で同じく爆発的な増殖能力を持つヴィルスを押さえ込むために人間や動物が使うフローラという防御方法と同じ仕組みで違法なファイル交換を防いでいる。フローラとは、有害なヴィルスの増殖を押さえ込むために同じ増殖能力を持った無害なヴィルスが増殖することで、有害なヴィルスの増殖に必要な栄養を奪うことで有害なヴィルスの増殖を押さえ込む防御方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピアツーピアのファイル共有システムにおいて交換を阻止したいファイルの偽物のファイルを代わりに交換させて増殖させることにより、交換を阻止したいファイルの交換を阻止する方法

【公開番号】特開2006−92498(P2006−92498A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307405(P2004−307405)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(504393677)
【Fターム(参考)】