説明

ピアノのキャプスタン用キャップ部材及びこれを用いたキャプスタン

【課題】 キャプスタンスクリュー(キャプスタンボタン)の機能及び取り扱い性を良好にするための部材を提供すること。
【解決手段】 鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンに取り付けられるキャップ状の部材であって、当該キャップ部材は、キャプスタンの上端側に存在する曲面に被さる受容部と、緩やかな曲面に形成されている上面とを備えており、当該キャップ部材上面の曲率は、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面の曲率と異なっていることを特徴とする、ピアノのキャプスタン用キャップ部材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピアノのアクション機構に使用可能な部品に関し、特にキャプスタン用キャップ部材及びこれを用いたキャプスタン、ウィペンヒールクロスに添設される(添うように設けられる)小片部材、シャンクローラーに設置される補填部材、並びにキャプスタンの調整方法及びピアノの補修・調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ピアノのアクション機構は、長年の使用において調整や修理を要する事が知られている。即ち、ピアノのアクション機構は、押鍵時の動作によ基づいてハンマーを回動させるものであることから、押鍵時の動力を伝達する過程において部材同士の接触や衝突が生じ、それによって当該接触乃至衝突する領域が窪んでしまうことがある。
このような場合、従来のピアノの調整又は修理方法では消耗した部品を交換することにより対処しているのが実情である。
例えば、ピアノのアクション機構の修理に際して、押鍵時にキャプスタンと接触するウィペンヒールクロスの交換が必要になることもある。即ち、周知のように、ピアノのキャプスタンは、各鍵盤の後部上面に設けられ、載置したアクションを押鍵時に突き上げて駆動することにより、ハンマーを回動させて、打弦を行わせるものである。
【0003】
かかるキャプスタンの構造を明らかにするために、先ず、従前のピアノの構造を最初に示すと、例えばグランドピアノの場合は、図14に示すように、演奏者の操作によって揺動する鍵盤105と、鍵盤105が押されるとバランスピン107の下方を支点として上昇するキャプスタンスクリュー12と、ウィペンフレンジ113を介してウィペンレール114に回動可能に支持され、キャプスタンスクリュー12の上昇によって上向きに回動するウィペン115と、ウィペン115に回動可能に連結され、レギュレチングボタン116に当接するまでウィペン115と共に上昇するジャック117と、ジャック117に当接し、ジャック117に突き上げられると分離するシャンクローラー118と、シャンクフレンジ119を介してシャンクレール120に回動可能に支持され、シャンクローラー118が突き上げられると上向きに回動するハンマーシャンク121と、ハンマーシャンク121の先端に装着され、ハンマーシャンク121の回動により上方に移動して弦125を叩くハンマー123とから構成されている。
【0004】
そしてこのキャプスタン12は、上記図14に示すように鍵盤とアクションの間の距離が比較的小さい場合(グランドピアノなど)には、その下方に下垂するねじ部を鍵盤105の上面後方の所定位置にねじ込むことによって鍵盤105に取り付けられており、一方、鍵盤とアクションの間の距離が比較的大きい場合(アップライトピアノなど)には、図15に示すように、各鍵盤105の後部上面から上方に突出するポストワイヤー152を設け、このポストワイヤー152の上端部にキャプスタンボタン12をねじ込む事により取りつけられている。なお図15中、図14と同じ機能を有する部材については、同一符号を付して、その構造に関する説明を省略する。
【0005】
このキャプスタンスクリューは、通常、真鍮製であり、またキャプスタンボタンは、通常、合成樹脂または木製であり、そのままではウィペン115との滑りが悪く、またウィペンとの当接部分であるヘッドが傷付いてしまう事などからノイズが発生しまうことになる。そこで従来では、ウィペン115のうち、これらキャプスタンスクリューやキャプスタンボタン(以下、キャプスタンと称する)12のヘッドと接触する部分には、当該キャプスタンヘッドとの滑りを良くし、ノイズの発生を抑えるためにフェルトやクロス等の布帛からなるウィペンヒールクロス150が設けられている。
【0006】
また特許文献1(特開平08−328547号公報)では、このキャプスタンの表面にフッ素樹脂を含むニッケルメッキを施すことが提案されている。これにより形成されたキャプスタンは、表面全体がコーティング層で覆われ、ウィペンとの滑りに優れ、長期にわたりヘッドの上面に傷が発生するおそれのないものとなっている。
【0007】
更に、上記キャプスタンを交換する場合は、先ずはキャプスタンの上に設けられるアクションを取り外し、そしてキャプスタンを一本一本手回しにより取り外し、また新しいキャプスタンを手回しによって取り付けなければならず、その作業量、作業時間ともに膨大なものとなっている。
【0008】
キャプスタンの高さ調整作業等、その上下動作における操作性を向上させた先行技術として、特許文献2(特開平08−292759号公報)がある。併しながら、この文献に記載された技術は、単にキャプスタン回しを差し込んで回転させる為の操作孔の数を、従来の4個から8個に増やしたに過ぎす、キャプスタンを交換する場合には、依然として一本一本手回しにより取り外し、取り付けを行わなければならないものとなっている。
【特許文献1】特開平08−328547号公報
【特許文献2】特開平08−292759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のキャプスタンは、押鍵時の動作をアクションに伝えるものであり、その構造は押鍵時の感覚に直接影響を与える重要なものである。併しながら、従前においては、単にキャプスタンの滑り性の向上について検討されているだけで、その機能及び取り扱い性を良好にするための手段に就いては何ら検討されていないのが実情である。
【0010】
よって本発明は、キャプスタンスクリュー(キャプスタンボタン)の機能の重要性を再認識した上で、更にその機能及び取り扱い性を良好にするための部材を提供することを課題とする。
【0011】
また、キャプスタンはそのヘッドの上面(ウィペンヒールクロスに当接する部分)が緩やかな曲面に形成されており、ウィペンの内のキャプスタンヘッドと接触する部分には滑りを良くし、ノイズの発生を抑えるための布帛からなるウィペンヒールクロスが設けられている。このような構成において、ウィペンヒールクロスは長年の使用により、キャプスタンヘッドとの当接で窪んでしまうことがあり、その結果、引っ掛かりが生じて、押鍵時の感触を変化させてしまう可能性がある。
【0012】
よって本発明は、このような長年の使用による押鍵時の感触の変化を簡易な方法で阻止するための部材を提供することを課題とする。
【0013】
更に本発明は、簡易な手法により、ピアノのキャプスタンの曲率、大きさ、滑り具合及び向きの少なくともいずれかを変更することのできる、ピアノのキャプスタンの調整方法を提供することを課題とする。
【0014】
また、本発明は上記キャプスタンとの接触によるウィペンヒールクロスの窪みの発生を削減すると共に、更にこのような窪みが生じた場合であっても、簡易に補修乃至復元することのできる部材を提供することを課題とする。
更に本発明は、上記キャプスタン近傍のみならず、ピアノにおけるアクション機構の劣化乃至磨耗を簡易な方法で修理することのできる部材および方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明では、ピアノのキャプスタン上面の曲率、大きさ、曲面の向きの少なくとも何れか1つ以上を異ならせるためのキャプスタン用キャップ状の部材を提供する。
【0016】
即ち、鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンに取り付けられるキャップ状の部材であって、当該キャップ部材は、キャプスタンの上端側に存在する曲面に被さる受容部と、(望ましくは緩やかな)曲面に形成されている上面とを備えており、次の(1)〜(6)の少なくとも何れかの特徴を備えたキャプスタン用キャップ部材である。
(1)前記キャップ部材上面の曲率は、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面の曲率と異なっている。
(2)前記キャップ部材の受容部は、キャップ部材が装着されるキャプスタン上面と同じ曲率で窪んだ底面部を有し、当該キャップ部材は、上面の曲率と、底面部との曲率が相違している。
(3)前記キャップ部材の上面の直径は、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面の直径と異なっている。
(4)前記キャップ部材における上面(曲面)の向きは、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面(曲面)の向きと異なっている。
(5)前記キャップ部材は、キャプスタンの上端側に存在する曲面に被さる受容部と、緩やかな曲面に形成されている上面と、上面の周縁に沿って周回する周壁部とを備えており、当該周壁部は、その周回方向に沿って高さが異なっている。
(6)前記キャップ部材の上面の布帛(ウィペンヒールクロス等を含む)に対する摩擦抵抗値は、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面の同じ布帛に対する摩擦抵抗値と異なっている。
上記キャップ部材は、キャプスタン上面に設置して使用されるものであることから、キャップ部材の受容部における曲率を、キャプスタン上面の曲率と一致させることが望ましいが、これに限らず、キャプスタン上面にキャップ部材を設置することができるのであれば、キャップ部材の受容部の曲率は、キャプスタン上面の曲率に一致していなくとも良い。
【0017】
そしてキャップ状の部材の上面は、少なくとも曲面に形成されている領域を備えており、例えば当該上面の一部又は全部を球面に形成する他、平面を湾曲させた面(狭義の曲面)として形成することができる。
【0018】
また本発明では、前記課題を解決するためのキャプスタンとして、上記(1)〜(6)の少なくとも何れかの特徴を備えるキャップ状部材を用いて形成されたキャプスタンを提供する。
【0019】
即ち、鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンであって、鍵盤の奥側に取り付けられるキャプスタン本体と、このキャプスタン本体の上端側に存在する曲面に被さるキャップ形状のキャップ部材とからなり、当該キャップ部材として、上記(1)〜(6)の少なくとも何れかの特徴を備えるキャップ部材を用いたピアノのキャプスタンである。
【0020】
更に本発明では、前記課題を解決するために、キャップ部材を用いるキャプスタンの調整方法を提供する。
【0021】
即ち、鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンにおける上面の曲率、大きさ、滑り具合及び向きの少なくとも何れかを変更する、ピアノのキャプスタンの調整方法であって、当該キャプスタンに対してキャップ状に形成されたキャップ部材を設置する工程を含むことを特徴とするピアノのキャプスタンの調整方法である。
【0022】
上記本発明にかかるキャプスタン用キャップ部材における上面(曲面)は、これが装着されるキャプスタンの上端部(曲面)と、曲率、大きさ、滑り具合及び向きの少なくとも何れかが相違することから、従来例のように、これらの変更に際してキャプスタン全体を取り外さなくとも、単にキャップ部材を装着するだけで、所望のキャプスタンを植え替えたのと同じ効果が得られる。
【0023】
かかるキャップ部材の装着に際しては、キャプスタンの上面に対して、接着剤などを用いて装着する他、当該キャプスタンの上面を受容する受容部の形状を、それが装着されるキャプスタンの上面に嵌合する大きさ及び形状に形成することによっても行うことができる。
【0024】
そしてこのキャップ部材は、望ましくは全体の高さを極力抑えて形成されることが望ましい。具体的には、上面と受容部の底面との間の肉厚を極力薄く形成することが望ましい。またこのキャップ部材における受容部が、キャプスタンの上端側周壁をも受容する程度の深さを有する場合、当該受容部を構成する周壁部分の肉厚も可能な限り薄く形成することが望ましい。このように形成することにより、当該キャップ部材の質量は抑えられ、よってこれをキャプスタンに装着した場合において僅かな重量変化しか齎されない事から、押鍵時の感覚に変化を生じさせることの無いキャップ部材となる。
【0025】
また前記課題を解決するために、本発明では、長年の使用によってウィペンヒールクロスに既に窪みが生じてしまった場合に、これを簡易に補修することのできる部材を提供するものである。
【0026】
即ち、ウィッペンの底面に設けられるウィペンヒールクロスに添う様に設けられる小片部材であり、当該小片部材は、押鍵時の動作によってウィペンヒールクロスに生じた窪みの深さとほぼ同じ厚さを有し、且つ当該窪みと略同じ平面形状に形成される小片部材である。
【0027】
かかる小片部材は、ウィッペンの底面に設けられるウィペンヒールクロスに生じた窪みを埋めるように配置することもできるが、望ましくは当該ウィペンヒールクロスとウィペンヒールアンダークロスとの間に挿入して設置される。このようにウィペンヒールクロスの裏側に挿入して使用する場合には、当該小片部材の移動を阻止するため、小片部材におけるウィペンヒールアンダークロスに対向する面には、少なくとも1つ以上の突起を形成することが望ましい。この突起は、設置時においてウィペンヒールアンダークロスに食い込んで、当該小片部材の移動を阻止することができる。
【0028】
上記小片部材をウィペンヒールクロスとウィペンヒールアンダークロスとの間に挿入することにより、ウィペンヒールクロスの窪みは持ち上げられ、当該使用に伴う劣化を解消することができる。
【0029】
かかる小片部材の設置は、長年の使用によってウィペンヒールクロスに窪みが生じてしまった時であり、その際に同時に前記キャプスタン用キャップ部材を設置して、その後における劣化を極力回避することができる。
【0030】
また、本発明では前記課題を解決するため、押鍵時の動作をハンマーシャンクに伝えるシャンクローラーに設置される補填部材であり、当該補填部材は、当該シャンクローラーにおけるレペティションレバーとの接触領域に設けられ、且つ押鍵時の動作によって変形したシャンクローラーの薄肉部を補填する大きさ及び形状に形成される補填部材を提供する。
【0031】
上記補填部材は、長年の使用においてレペティションレバーとの接触により生じたシャンクローラーにおける窪みを埋めるものであり、予め所定の形状に形成されたものを設置する他、当該窪みに充填した後硬化させるもの(例えば、パテ材料など)であっても良い。
【0032】
上記本発明にかかる小片部材や補填部材を使用することにより、長年の使用により変形乃至磨耗した部材の交換の必要を無くして補修することができ、よってピアノ(特にアクション機構)の補修作業を容易に行うことが可能になる。
【0033】
上記本発明にかかるキャップ部材、小片部材及び補填部材の何れも、金属、樹脂、セラミックなど各種の樹脂を用いて形成することができ、また金属とセラミックスや、金属と樹脂、或いは樹脂とセラミックスのように、任意の材質を組み合わせて使用することもできる。特に、キャップ部材における摩擦抵抗値を変化させる場合には、摩擦抵抗値との関係において、適宜材質を選択することができる。また、上記小片部材及び補填部材は、何れか一方の端面がレンズ状に湾曲して突起するものとして形成する他、特にこのような湾曲面を有しない板状に形成することもできる。
【0034】
以下、具体的な実施の形態に基づき、本発明にかかるキャップ部材及びキャプスタンの構造や作用効果、ならびにピアノの調整方法やその為に使用する部材を具体的に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0036】
〔実施の形態1〕
図1は本実施の形態にかかるキャップ部材50を示す断面斜視図、図2は図1に示したキャップ部材50をキャプスタン12に装着する状態を示す縦方向断面図、図3及び図4は本実施の形態にかかるキャップ部材50の作用効果を示す略図である。
【0037】
先ず、本実施の形態にかかるキャップ部材50が装着されるキャプスタン12について説明すると、このキャプスタン12は、前記図14に示したように鍵盤105の後方に位置し、押鍵時におけるバランスピン107を支点とした鍵盤105の搖動により上昇し、ウィペン115を上向きに回動させるものである。
【0038】
かかるキャプスタン12は、図1及び図2に示すようにネジ足4とヘッド6から構成されており、ネジ足4は、鍵盤105(図14参照)の奥側に螺合するためのネジ山が切られている。ヘッド6は、ネジ足4の径よりもやや大きな径を有し、ウィペン115(図14参照)のウィペンヒールクロス150(フェルトやクロス等の布帛からなる)に当接する上面6aは緩やかな曲面を有する球面に形成されている。このヘッド6には、ネジ足4に対して直交する方向に2つの通孔8a,8bが設けられ、これらは互いに直交している。この通孔8a,8bは、棒状の締付工具をこの通孔8a,8bの一方に差込んで回転させ、キャプスタン12のネジ足4を鍵盤105(図14参照)の奥側に螺合させるために用いるものである。
【0039】
そしてかかるキャプスタン12に装着される本実施の形態のキャップ部材50は、キャプスタン12のヘッド6における上面(球面)6aを覆って、これを受容する窪み形状に形成された受容部51と、側壁を形成している外周壁52と、外周壁52の上端から緩やかな球面形状に形成されている上面56とで形成されており、その内の受容部51は、キャプスタン12のヘッド上面6a(球面)と同じ曲率で窪んでいる底面53と、キャプスタン12のヘッド6における側面の上端部を包囲する内周壁54とで構成されている。そしてこのキャップ部材50は、上面56における曲率と、受容部51の底面53における曲率とが相違するものとして形成されている。
【0040】
以上のように構成されたキャップ部材50は、上記キャプスタン12の上面6aを覆うように装着される。その際、受容部51の底面53は、キャプスタンヘッド6の上面6aに整合して密着し、また内周壁54はキャプスタンヘッド6の側面の上端部に整合して密着していることから、キャプスタン12のヘッド6の上端は、キャップ部材50の受容部51内に相補的に嵌入し、よって両者は隙間無く密着することができる。
【0041】
次に上記のようにキャップ部材50を装着することによる効果を、図3及び4に基づいて説明する。なお、各図において鎖線で示されたものは、押鍵時の状態を示している。
【0042】
先ず図3に示すように、本実施の形態にかかるキャップ部材50を装着する前のキャプスタン12において上面(球面)6aの曲率が小さい場合には、ウィペン115に設けられたウィペンヒールクロス150との接点(作用点X)が、支点Yであるバランスピン107の下方(図14参照)に近づき、両者間の距離L1は短くなる(図3(A))。その結果、押鍵時のタッチの感覚は軽くなるものの、その分、接点には大きな力が作用し、ウィペンヒールクロス150が変形しやすくなる。ウィペンヒールクロス150が変形してしまった場合には、図3(B)に示すように、変形によって生じた窪みがキャプスタン12の滑らかな移動の障害となり、引っ掛かりを生じさせることから、これが押鍵時における感覚の違い、接点における雑音の発生を生じさせることに繋がる。
【0043】
一方、上面6a(球面)の曲率が大きい場合には、ウィペン115に設けられたウィペンヒールクロス150との接触面積が大きくなり摩擦抵抗が増大する他、接点の内、実際に作用点Xとなる位置は、支点Yであるバランスピン107(図14参照)から遠ざかり、両者間の距離L2は長くなる(図4)。その結果、押鍵時のタッチの感覚は重くなり、押鍵時における感覚を適正に保つことが困難になる。
【0044】
そこで本実施の形態にかかるキャップ部材50を使用し、ウィペンヒールクロス150等との関係において、作用点Xと支点Yとの距離や接触面積が適切になる曲率のキャップ部材50を選択し、且つこれをキャプスタン12に装着すれば、前記のようなウィペンヒールクロス150の変形、接点における雑音の発生、及び接触面積に起因する押鍵時の感覚の不適を阻止することができる。
【0045】
更に本発明にかかるキャップ部材50は、キャプスタン12自体の変更を伴うものではなく、単にキャプスタン12におけるヘッド6の上面6aに接着や嵌着等によって装着するだけであることから、簡易且つ迅速にキャプスタン12のヘッド6の曲率を変更することができる。なお、このキャップ部材50を装着した結果、当該キャップ部材50の厚さ分だけ、ウィペンヒールクロス150との接点が高くなるが、これはキャプスタン12の高さ調整を行う際の通常の方法(ねじ込みなど)により、自在に調整することが可能ある事から、何ら問題を生じさせるものではない。また、このキャップ部材50の装着により、キャプスタン12における重量が増加したとしても、これは鍵盤105に設置される錘を調整することにより解決することができるので、何らの問題にもならない。
【0046】
よって本実施の形態にかかるキャップ部材50を使用することにより、簡易且つ迅速な方法により、キャプスタン12における上面6aの曲率を調整し、押鍵時における感覚を最適なものとすることができる。
【0047】
〔実施の形態2〕
図5は本実施の形態にかかるキャップ部材50をキャプスタン12に装着する状態を示す縦方向断面図、図6は本実施の形態にかかるキャップ部材50の作用効果を示す略図である。
【0048】
特に本実施の形態にかかるキャップ部材50は、キャプスタンヘッド6の上面6aの球面の大きさを大きくするために使用されるキャップ部材50に関するものとなっている。
【0049】
即ち、この実施の形態に示すキャップ部材50は、それが装着されるキャプスタンヘッド6の上面6a(球面)の曲率と同じ曲率でありながら、その鉛直投影面積(即ち直径)を大きくしたキャップ部材50として形成されている。
【0050】
このように形成したキャップ部材50は、例えば図6に示すように、キャプスタン12のヘッド6の大きさが、その移動範囲との関係で小さくなっている場合には、それが最も上昇した時点において、ウィペンヒールクロス150との接点Xがこの球面領域から外れてしまう場合に好適に使用することができる。
【0051】
具体的には、本実施の形態にかかるキャップ部材50を装着することにより球面の面積が増大することから、仮にキャプスタン12の上下動幅が大きい場合であっても、ウィペンヒールクロス150との接点Xを確実にこの球面内に維持することができ、その結果滑らかな接触を実現し、押鍵時の感触を良好に維持することができる。
【0052】
その他、このキャップ部材50の装着に基づく重量増加や高さの上昇などの調整方法は、前記実施の形態1に示したとおりである。
【0053】
〔実施の形態3〕
図7は本実施の形態にかかるキャップ部材50をキャプスタン12に装着する状態を示す縦方向断面図、図8は本実施の形態にかかるキャップ部材50の作用効果を示す略図である。
【0054】
特に本実施の形態にかかるキャップ部材50は、キャプスタン12におけるヘッド6の上面6a(球面)の向きを最適な方向に調整するために使用されるキャップ部材50に関するものとなっている。
【0055】
即ち、本実施の形態にかかるキャップ部材50は、図7に示すように、キャプスタン12の上面6a(球面)に被さる受容部51と、緩やかな球面に形成されている上面56と、上面56の周縁に沿って周回する周壁部52とを備えており、その周壁部52の高さを周回方向に異ならせることによって、ウィペンヒールクロス150に接する上面(球面)56の向きを傾斜させている。
【0056】
このように形成されたキャップ部材50を使用することにより、ウィペンヒールクロス150との接触領域を最大限に広く確保して、無駄な球面領域を減らしながらも、その高さ位置の調整に際しても、接点(作用点X)の支点Yからの距離を変化させないキャプスタン12が実現する。
【0057】
即ち、キャプスタン12の上下移動は完全な垂直方向への移動ではなく、円弧方向に移動する回転移動であることから、上昇移動に際しての接点Xの移動は、常にキャプスタン12ヘッド6上面の頂点から離れる方向に移動することになる(図8)。このため通常の球面形状が上方向を向いていたとしても、その頂点よりも支点Yに近い領域は実際には使用されないことになる。
【0058】
そこで、この実施の形態に示すキャップ部材50を用いることにより、現実にウィペンヒールクロス150との接触に寄与する領域を増大させ、常に接点を球面領域に存在させることにより、押鍵時の感触の変化の度合いを最適にすることができる。即ち、押鍵時には、その押し具合に応じて適度にスムーズに押鍵時の感触が変化するのが望ましく、当該接点を常に球面領域に存在させることにより、これを実現することが可能になる。
【0059】
また、このように形成したキャップ部材50を装着した場合には、キャプスタン12の高さを調整した場合においても、当該キャプスタン12を傾斜させて打ち込んだ場合のように接点Xが移動することは無いため、当該キャプスタン12の高さ調整も容易に行うことができる。
【0060】
なお、本実施の形態にかかるキャップ部材50は、これを装着した後、キャプスタン12自体の高さ調整を行う最、任意に取り外すことができる状態でキャプスタン12のヘッド6に設けられる必要がある。よって、本実施の形態におけるキャップ部材50ではその取り付けに使用される接着剤は、キャップ部材50を着脱できる程度の接着力を有するものが適宜選択されるべきである。
【0061】
〔実施の形態4〕
本実施の形態にかかるキャップ部材50は、キャップ部材50の上面56のウィペンヒールクロス150に対する摩擦抵抗値が、当該キャップ部材50が装着されるキャプスタン上面6aの同じウィペンヒールクロス150に対する摩擦抵抗値と異なっているキャップ部材50であり、ウィペンヒールクロス150との摩擦抵抗値を最適なものとすることにより、押鍵時の感触を最適なものとするものである。
【0062】
即ち、従前の技術において、キャプスタン12ヘッド6の滑りを良くする為に、その表面にメッキを施すことが提案されていることは前記背景技術に記載したとおりであるが、このようなキャプスタン12を使用するためには、キャプスタン12を一本一本手作業により交換する必要がある。しかし、かかるキャプスタン12の交換作業は、前述のように非常に労力と時間を費やすものとなっていることから、事後的にキャプスタン12を交換することは実質的に困難である。
【0063】
そこで本実施の形態では、ウィペンヒールクロス150との関係において、その摩擦抵抗値を最適なものとする為に、キャプスタン12のヘッド6に装着され、このキャプスタン12のヘッド6とは異なる摩擦抵抗値を有するキャップ部材50を提供するものである。
【0064】
ここで、最適な摩擦抵抗値は、当該キャップ部材50が接するウィペンヒールクロス150との関係において適宜選択されるべきものであり、摩擦抵抗値を減ずるように調整するのみならず、ウィペンヒールクロス150の「てかり」を抑えるために、意図的に摩擦抵抗値を大きくすることもある。かかる摩擦抵抗値は、公知の手法によって摩擦係数を測定することにより算定することができる。
【0065】
そして、摩擦抵抗値を調整するための方法としては、キャップ部材50自体を、キャプスタン12ヘッド6とは異なる材質(例えば、プラスチックなどの樹脂や真鍮などの金属)で形成するほか、キャップ部材50にのみメッキを施したり、或いはキャップ部材50における上面(球面)56に、細かな傷や突起を形成するなどの公知の粗面加工処理を施すことができる。
【0066】
以上の様に形成されたキャップ部材50を用いることにより、簡易且つ迅速に、キャプスタン12のヘッド6の滑り具合を調整することができる。
【0067】
なお、上記のキャップ部材50及びこれを装着したキャプスタン12、並びにキャップ部材50を用いたキャプスタン12の調整方法は、アップライトピアノ、及びグランドピアノのいずれにおいても実施することができ、またこれらは上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更するこが可能である。
【0068】
〔実施の形態5〕
図9は望ましい小片部材70の実施の形態を示しており、これらは図10に示すように、長年の使用によってウィペンヒールクロス150に生じた窪みを補修する為に使用される。図9中、(A)及び(B)は夫々異なる態様の小片部材を示しており、また図10中の(A)はウィペンヒールクロス150に窪みが生じたい状態を、(B)はこの窪みを補正した状態を示している。
【0069】
即ち、本実施の形態にかかる小片部材70は、例えば図9(A)の断面斜視図に示すように円盤状であって、一方の端面(図9(A)中の下方の面)が曲面に形成し、他方の端面が突起部を有する平面に形成するか、或いは図9(B)の断面斜視図に示すように、円形の平板部材として形成することができる。このような小片部材70は、ウィペンヒールクロス150に生じる窪みの大きさ、即ちキャプスタンヘッド12との接触面積に応じて適宜調整されるべきであり、望ましくは生じた窪みよりも僅かに小さい径で、窪みの最深部を当初の位置まで持ち上げるよう大きさに形成される。例えば、本実施の形態における図9(A)に示す小片部材70は、直径約2〜10mm、望ましくは4〜6mmで、最も厚く形成されている中心部の肉厚は約0.2〜2mm、望ましくは0.5〜1mmで、最も薄く形成されている周縁部の肉厚は1mm以下、望ましくは0.2〜0.7mmに形成することができる。また、図9(B)に示す小片部材70は、直径約0.5〜10mm、望ましくは1〜5mmで、肉厚0.1〜2mm、望ましくは0.3〜0.8mmに形成することができる。また、小片部材70をこのような大きさに形成する場合、製造容易性を考慮すれば特に合成樹脂を用いて形成することが望ましい。また合成樹脂を用いて製造することにより、当該小片部材70の軽量化を図ることができ、押鍵時の感触の変化を極力少なくすることができる。
【0070】
また、平坦な側の面に形成される突起71は、その先端が尖っていることが望ましい。後述のようにこの小片部材70がウィペンヒールクロス150とウィペンヒールアンダークロス151との間に配置される場合には、ウィペンヒールアンダークロス151に食い込んで確実に固定されるようにする為である。また、この突起は本実施の形態では中心に1つ形成した態様を示しているが、その他にも2つ以上を等間隔に配置して形成することも当然可能である。
【0071】
更に、この小片部材70は本実施の形態の図9(A)及び(B)に示すような円盤形状のみならず、平面形状が、略楕円形状、正方形、矩形、その他の多角形に形成することもでき、更に窪みの形状に合わせて不規則な形状に形成することも当然可能である。ただし、設置時の容易性や一般的な窪みの形状を考慮すれば本実施の形態に示すような円盤形状に形成するのが望ましい。また、本実施の形態に示す小片部材70は、周方向に一定の高さを有する周壁面を有して形成されている。これは樹脂を用いて製造する時の製造容易性のみならず、ウィペンヒールクロス150とウィペンヒールアンダークロス151との間に配置する際の利便性を考慮したものである。即ち、このような鉛直に立設する壁面72を形成することにより、ウィペンヒールクロス150とウィペンヒールアンダークロス151との間に差し入れる際の操作部分として利用することができ、この壁面72を押しながら差し入れることにより、意図した位置に設置することができる。また、以上の様に形成されている小片部材70は、窪みが生じている箇所に容易に設置できる上、更にその取り外しも容易に行うことができる。
【0072】
以上のように形成された小片部材70は、図10に示すように、キャプスタンによる押し上げ動作によって生じた窪みを補正する為に設置される。かかる小片部材70は、本実施の形態において、ウィペンヒールクロス150とウィペンヒールアンダークロス151との間に差し入れて配置されている。差し入れられた小片部材70は、その平坦面側に形成された突起部がウィペンヒールアンダークロス151に圧入することから、その後の使用において、即ちキャプスタンによる押し上げ動作が繰り返して行われても、意図しない場所に移動してしまうことのない小片部材70となっている。よって、このような突起が形成された小片部材70は、特にウィペンヒールクロス150とウィペンヒールアンダークロス151との間に配置して使用するのに適した小片部材70となっている。特に、かかる位置に配置した場合、キャプスタンは、この小片部材70を設置する前と同じくウィペンヒールクロス150に接触することから、両者の摩擦抵抗の変化をなくすことができる。
【0073】
更に、上記のようにウィペンヒールクロス150の裏側に小片部材70を配置する際には、当該ウィペンヒールクロス150は発生した窪みの領域において十分に圧縮されていることから、小片部材70により補正した後においては更に窪みが発生する恐れはなく、長年の使用にも十分耐え得るものとなる。
【0074】
そしてかかる小片部材70は、ウィペンヒールクロス150の補修の為に設置されるものであるが、その際、同時にキャプスタンに対して、前記実施の形態1〜4に示したようなキャップ部材を設置することにより、ウィペンヒールクロス150とキャプスタンとの接触抵抗を任意に調整することができ、その結果、より望ましい押鍵感を得ることができるように調整することができる。
【0075】
よって、この実施の形態に示す小片部材70は、単独で使用することも当然可能ではあるが、更に前記キャプスタン用のキャップ部材と共に使用することにより一層望ましい効果を得ることができる。
【0076】
〔実施の形態6〕
図11〜13は、シャンクローラー118に生じた窪みを埋めるように形成された補填部材90を説明するための図面である。
【0077】
先ず、かかるシャンクローラー118の機能を図11及び14に基づいて説明すると、図14に示すように、押鍵によってバランスピン107の下方を支点としてキャプスタンスクリュー12が上昇し、これによりウィペンフレンジ113を介してウィペンレール114に回動可能に支持されるウィペン115を上向きに回動させる。このウィペン115の回動に伴って、当該ウィペン115に回動可能に連結されるジャック117が上昇し、シャンクローラー118を突き上げる(図11)。そして図11に示すように、シャンクローラー118と一体化されているハンマーシャンク121が上向きに回動し、その先端に装着されるハンマー123で弦125を叩く。
【0078】
そして押鍵時には、上記のような動作が繰り返し行われ、当該シャンクローラー118は、押鍵ごとにレペティションレバー131と接触することから、その結果、当該シャンクローラー118が圧縮乃至変形し、当該接触部分に肉薄になった部分(即ち薄肉部)が生じることになる。
【0079】
そこで本実施の形態では、このような変形乃至磨耗したシャンクローラー118を初期の状態に復元するべく、補填部材90を設置するものである。
【0080】
即ち、従来提供されているシャンクローラー118は、円柱状に形成されたハンマーローラークロス118aと、その外周面を覆うように設けられたハンマーローラースキン118bとで構成されていることから、本実施の形態では、図12に示すように、長年の使用により圧縮乃至磨耗等により薄くなった場合(図12(B))には、その薄くなっている部分における、ハンマーローラークロス118aとハンマーローラースキン118bとの間に補填部材90を設置し(図12(C))、初期の状態(図12(A))に補正するものである。
【0081】
このような補填部材90は、例えば図13(B)及び(C)に示すように、中央部を肉厚にした瓦状に形成したり、図13(D)に示すように板状に形成することができる。特に中央部を肉厚にした瓦状に形成した補填部材90は、ハンマーローラークロス118aとハンマーローラースキン118bとの間に設置される所、少なくともハンマーローラースキン118bに接する下面が湾曲形状であり、その反対側の上面には、ハンマーローラークロス118aに食い込む、1つ又は2つ以上の突起91を形成することができる。上面に形成する突起91は、図13に示すように1つであってよく、また2つ又は3つ以上を所定の間隔(例えば等間隔)に配置することもできる。特にこの補填部材90は、図13に示すように、上面よりも下面の曲率を大きくした三日月形の端面を有する柱形状に形成することが望ましく、またその上面には1つ又は2つ以上の突起91を形成することが望ましい。また、板状に形成した補填部材90は、少なくともシャンクローラー118の幅と略同じ長さを有する部材として形成することができ、その幅は適宜調整することができる。特にかかる補填部材90の幅が狭い場合、当該補填部材90は殆ど棒状の性状を成すことになる。このような棒状の補填部材90は、圧縮乃至磨耗等により薄くなった部分の形状にあわせて、複数を組み合わせて使用することもできる。
【0082】
そして、かかる補填部材90は、図13(B)に示すように、上面と下面とが直接交差するように形成する他、図13(C)に示すように、曲面の中心軸に沿う向きの側面92を形成することもできる。また図13(D)に示すように板状に形成して、側面92を備えるように形成することもできる。特に側面92を形成した場合、補填部材90を設置する際、当該側辺を押しながら補填部材90の設置位置を調整できることから望ましい態様となる。
【0083】
また、当該補填部材90は、ジュラコン(登録商標)などのような、適宜機械的強度の高い樹脂材料を用いて形成する他、その他の樹脂材料や金属材料などを用いて形成することができる。特に合成樹脂を用いて形成する場合には、重量増加を極力なくすことができ、また製造上の観点からも望ましいものとなる。
【0084】
以上のように構成された補填部材90を使用すれば、長年の使用によりシャンクローラー118におけるレペティションレバー131との接触面が薄くなった場合であっても、当該シャンクローラー118の交換を要せずして、当該補填部材90を設置するだけで簡易に補修することができる。よって、保守作業を簡易に行うことができるのみならず、補修作業に要する費用を大幅に削減することも出来る。
【0085】
更に、上記補填部材90は、ハンマーローラークロス118aとハンマーローラースキン118bとの間に挿入されるものとして形成されており、レペティションレバー131との接触は、従前の通りハンマーローラースキン118bによって行われることから、押鍵時の感触も初期の通りに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施の形態1にかかるキャップ部材を示す断面斜視図である。
【図2】図1に示したキャップ部材をキャプスタンに装着する状態を示す縦方向断面図である。
【図3】実施の形態1にかかるキャップ部材の作用効果を示す略図である。
【図4】実施の形態1にかかるキャップ部材の作用効果を示す略図である。
【図5】実施の形態2にかかるキャップ部材をキャプスタンに装着する状態を示す縦方向断面図である。
【図6】実施の形態2にかかるキャップ部材の作用効果を示す略図である。
【図7】実施の形態3にかかるキャップ部材をキャプスタンに装着する状態を示す縦方向断面図である。
【図8】実施の形態3にかかるキャップ部材の作用効果を示す略図である。
【図9】実施の形態5にかかる小片部材を示す断面図である。
【図10】図9に示した小片部材で窪みを補修する状態を示す略図である。
【図11】実施の形態6にかかる補填部材の機能を示す略図である。
【図12】図13に示す補填部材で窪みを補修する状態を示す略図である。
【図13】実施の形態6にかかる補填部材を示す略図である。
【図14】グランドピアノのアクション機構の説明図である。
【図15】アップライトピアノのアクション機構の説明図である。
【符号の説明】
【0087】
4 ネジ足
6 キャプスタンのヘッド
6a ヘッドの上面
12 キャプスタン
50 キャップ部材
51 受容部
52 外周壁
52 周壁部
53 底面
54 内周壁
56 上面
70 小片部材
90 補填部材
105 鍵盤
107 バランスピン
115 ウィペン
118 シャンクローラー
150 ウィペンヒールクロス
X 作用点(接点)
Y 支点



【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンに取り付けられるキャップ状の部材であって、
当該キャップ部材は、キャプスタンの上端側に存在する曲面に被さる受容部と、曲面に形成されている上面とを備えており、
当該キャップ部材における上面の曲率は、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面の曲率と異なっていることを特徴とする、ピアノのキャプスタン用キャップ部材。
【請求項2】
前記受容部は、前記キャップ部材が装着されるキャプスタン上面と同じ曲率で窪んだ底面部を有し、当該キャップ部材は、上面の曲率と、底面部との曲率が相違している請求項1に記載のピアノのキャプスタン用キャップ部材。
【請求項3】
鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンに取り付けられるキャップ状の部材であって、
当該キャップ部材は、キャプスタンの上端側に存在する曲面に被さる受容部と、曲面に形成されている上面とを備えており、
当該キャップ部材の上面の直径は、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面の直径と異なっていることを特徴とする、ピアノのキャプスタン用キャップ部材。
【請求項4】
鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンに取り付けられるキャップ状の部材であって、
当該キャップ部材は、キャプスタンの上端側に存在する曲面に被さる受容部と、曲面に形成されている上面とを備えており、
当該キャップ部材上面の曲面の向きは、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面の曲面の向きと異なっていることを特徴とする、ピアノのキャプスタン用キャップ部材。
【請求項5】
鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンに取り付けられるキャップ状の部材であって、
当該キャップ部材は、キャプスタンの上端側に存在する曲面に被さる受容部と、曲面に形成されている上面と、上面の周縁に沿って周回する周壁部とを備えており、
当該周壁部は、その周回方向に沿って高さが異なっていることを特徴とする、ピアノのキャプスタン用キャップ部材。
【請求項6】
鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンに取り付けられるキャップ状の部材であって、
当該キャップ部材は、キャプスタンの上端側に存在する曲面に被さる受容部と、曲面に形成されている上面とを備えており、
当該キャップ部材の上面の布帛に対する摩擦抵抗値は、当該キャップ部材が装着されるキャプスタン上面の同じ布帛に対する摩擦抵抗値と異なっていることを特徴とする、ピアノのキャプスタン用キャップ部材。
【請求項7】
鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンであって、
鍵盤の奥側に取り付けられるキャプスタン本体と、
このキャプスタン本体の上端側に存在する曲面に被さるキャップ形状のキャップ部材とからなり、
当該キャップ部材が、請求項1から6のいずれか一項に記載のキャップ部材であることを特徴とするピアノのキャプスタン。
【請求項8】
ウィッペンの底面に設けられるウィペンヒールクロスに添設される小片部材であり、
当該小片部材は、押鍵時の動作によってウィペンヒールクロスに生じた窪みの深さとほぼ同じ厚さを有し、且つ当該窪みと略同じか或いは該窪みよりも小さい平面形状に形成される小片部材。
【請求項9】
前記小片部材はウィッペンの底面に設けられるウィペンヒールクロスとウィペンヒールアンダークロスとの間に挿入され、
当該小片部材におけるウィペンヒールアンダークロスに対向する面は、少なくとも1つ以上の突起が形成されている請求項8に記載の小片部材。
【請求項10】
押鍵時の動作をハンマーシャンクに伝えるシャンクローラーに設置される補填部材であり、
当該補填部材は、当該シャンクローラーにおけるレペティションレバーとの接触領域に設けられ、且つ押鍵時の動作によって変形したシャンクローラーの薄肉部を補填する大きさ及び形状に形成される補填部材。
【請求項11】
前記補填部材は、シャンクローラーを構成しているハンマーローラークロスとハンマーローラースキンとの間に挿入され、
当該補填部材におけるハンマーローラークロスに対向する面には、少なくとも1つ以上の突起が形成されている請求項10に記載の補填部材。
【請求項12】
押鍵動作によってハンマーを回動させるピアノのアクション機構であって、
請求項1〜6の何れか一項に記載のキャプスタン用キャップ部材、請求項8又は9に記載の小片部材、若しくは請求項10又は11に記載の補填部材が使用されているピアノのアクション機構。
【請求項13】
鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンにおける上面の曲率、大きさ、滑り具合及び向きの少なくともいずれかを変更する、ピアノのキャプスタンの調整方法であって、
当該キャプスタンの上面に対して、キャップ状に形成されたキャップ部材を設置する工程を含むことを特徴とするピアノのキャプスタンの調整方法。
【請求項14】
ピアノのアクション機構の修理又は調整を伴うピアノの補修・調整方法であり、
当該調整方法は、少なくとも以下の(1)〜(3)の何れかの工程を伴うピアノの補修・調整方法。
(1)鍵盤の押鍵に伴ってアクションを駆動するためのピアノのキャプスタンに対して、請求項1〜6の何れか一項に記載のキャプスタン用キャップ部材を設置する工程。
(2)ウィッペンの底面に設けられるウィペンヒールクロスに対して、請求項8又は9に記載の小片部材を添設する工程。
(3)押鍵時の動作をハンマーシャンクに伝えるシャンクローラーに対して、請求項10又は11に記載の補填部材を添設する工程。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−17931(P2007−17931A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335654(P2005−335654)
【出願日】平成17年11月21日(2005.11.21)
【特許番号】特許第3864316号(P3864316)
【特許公報発行日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(505214490)