説明

ピアノを整音する方法

【課題】熟練者でなくても、超音波発生器を使ってピアノの整音作業を実施する事により、短時間で均一な音作りが出来るピアノを整音する方法を提供する。
【解決手段】超音波発生器の超音波ホーン先端部1を、ピアノハンマーフェルト面2に接触させて超音波をフェルトに当て、フェルト繊維同士の結束を緩め、繊維間の隙間を作る事によりハンマーフェルトの緊張を緩和させて行うピアノを整音する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピアノを整音する方法に関するものである
【背景技術】
【0002】
ピアノは鍵盤を弾くことにより内部機構を通じてピアノハンマーにて弦を叩いて発音する楽器である。このピアノハンマーは羊毛を圧縮した物すなわちフェルトにて作られており、使用されることによって弦に当たる部分が圧縮され、他の部分より硬くなってくる。ゆえに音色も硬くなり、音楽的な許容範囲を超えたときに針を以てフェルトに刺し、繊維の緊張を緩和し音色を回復させる方法を取っていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
針を刺すことでハンマーフェルトの繊維同士の結束を緩め、繊維間の隙間を作り均一に繊維の緊張を緩和させる事は、かなりの熟練を要する作業である。針を刺す位置、深さ、回数、ひいては針の太さや先端の形状までもが選択肢に入り、熟練者であっても作業に時間が掛かり、針の刺し方によっては音楽的に発音不可の状態に陥る危険性もある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明ピアノを整音する方法は、上記課題を解決するためになされた物であり、この針の代わりに超音波を利用してピアノの整音をする方法である。
【0005】
本発明ピアノを整音する方法は、超音波の動力的応用(音波は縦波であり圧力の変動である。超音波もしかり。すなわち波長の節ごとに圧を発生する動力的要素を持つものである。)を利用して、超音波発生器の超音波ホーン先端部を、ピアノハンマーフェルト面に接触させて超音波をフェルトに当て、フェルト繊維同士の結束を緩め、繊維間の隙間を作る事によりハンマーフェルトの繊維の緊張を緩和させて行う事を特徴とする。
【0006】
超音波の特性には、まず第1に気体・液体・固体に関わらず媒質内部への良好な透過性があると言うこと、第2に光や電波に比べて遅い伝搬速度であると言うこと、第3に周波数が高くなればなるほど減衰性は増すが指向性や分解能は逆に良くなると言うことがある。超音波の動力的応用を使った整音作業を容易にしているのは上記3つの特性を持つからであり、ピアノハンマーフェルトの繊維の緊張を緩和させて行うピアノを整音する方法に適する物である。
【0007】
本発明で用いる超音波発生器は市販の小型の物であり(低消費電力)、圧電体を用いた超音波振動子と前部に超音波ホーンを接合した一般的な物でよい。
【発明の効果】
【0008】
熟練者でなくても、超音波発生器を使ってピアノを整音する方法を実施することにより、短時間で均一なピアノの整音作業が出来る事が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の実施の一例を、図面を用いて説明する。本実施例のピアノ本体は、通常1本のピアノハンマーに対して叩くピアノ弦の数を、低音部1本又は2本、中音部と高音部は3本の弦を保有する一般的な楽器を使用した。
【実施例1】
【0009】
本実施例では、超音波発生装置として超音波発生周波数を27MHZ消費電力8Wの物を用いた。高音部のピアノハンマーフェルトのピアノ線に当たるところ3本弦中、音色の硬い1本に超音波発生器の超音波ホーンをピアノハンマーフェルトの接弦部位(A)に接触させてピアノハンマーの中心に向かって約2秒発射した。その結果、発射された部位はフェルトの緊密度が緩和され他の2本の弦と硬さが同じ様になり、ピアノハンマーでこの3本弦を叩いた場合音楽的な目的とする音色のバランスを取る事が出来た。
【実施例2】
【0010】
本実施例では、超音波発生装置として超音波発生周波数を2MHZ消費電力7.7Wの物を用いた。本実施例では、実施例1よりピアノハンマーフェルトが全体に硬い場合、これを柔らかくして音楽的な音の伸びや明るさを出すのを目的として行った。超音波発生器の超音波ホーンを、ピアノハンマーフェルトの中心に向かって直角に部位(B)に接触させ、ピアノハンマーフェルト接弦部位(A)を通ってピアノハンマーフェルト部位(B′)までを約1秒間に1cmの速さで移動しながら超音波を発射した(図1)。図に於いて3はハンマーウッド、4はハンマーシャンクを示し、はピアノハンマーを示す。同様にピアノハンマーフェルト側面部位(D)並びに(D′)からピアノハンマーフェルト接弦部位(A)に向かって約1秒間に1cmの速さで移動しながら超音波を発射した。その結果、当初の目的を達成する事が出来た。
【実施例3】
【0011】
本実施例では、超音波発生装置として超音波発生周波数を50KHZ消費電力8Wの物を用いた。本実施例では、実施例2よりもさらに音楽的な音の深さや広がりを出すことを目的として行った。超音波発生器の超音波ホーンを、ピアノハンマーフェルトの中心に向かって直角に部位(B)に接触させ、ピアノハンマーフェルト接弦部位(A)を通ってピアノハンマーフェルト部位(B′)までを約1秒間に1cmの速さで移動しながら超音波を発射した(図1)。同様にピアノハンマーフェルト側面部位(D)並びに(D′)からピアノハンマーフェルト接弦部位(A)に向かって約1秒間に1cmの速さで移動しながら超音波を発射した。その結果、当初の目的を達成する事が出来た。
【産業上の利用可能性】
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を実施している状況を示す説明図。
【図2】ピアノハンマーの部位を示す説明図。
【符号の説明】
【0013】
1 超音波発生器の超音波ホーン
2 ピアノハンマーフェルト
3 ハンマーウッド
4 ハンマーシャンク
5 ピアノハンマー
A ピアノハンマーの接弦部位
B、C、B′、C′ Aと同じ面のピアノハンマーの部位
D、D′ ピアノハンマーの側面部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発生器の超音波ホーン先端部を、ピアノハンマーフェルト面に接触させて超音波をフェルトに当て、フェルト繊維同士の結束を緩め、繊維間の隙間を作る事によりハンマーフェルトの緊張を緩和させて行うピアノを整音する方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−309093(P2006−309093A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156326(P2005−156326)
【出願日】平成17年4月26日(2005.4.26)
【出願人】(505198363)