ピエゾアクチュエータの駆動装置
【課題】 充電スイッチのオン/オフを繰り返すことでピエゾアクチュエータを段階的に充電して伸長させる駆動装置において、ピエゾアクチュエータの静電容量の変化により、ピエゾアクチュエータの伸長率が変化してしまうのを防止する。
【解決手段】 駆動装置1は、駆動信号Sdが入力されると、放電スイッチSW2をオフした状態で充電スイッチSW1のオン/オフを繰り返すことによりピエゾアクチュエータP1〜P4を充電させて伸長させる。その後、駆動信号Sdが入力されなくなると、充電スイッチSW1をオフした状態で放電スイッチSW2のオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータP1〜P4を放電させて収縮させる。そして特に、充電期間においては、一定の周期で充電スイッチSW1をオンすると共に、充電スイッチSW1のオン時に充電経路30に流れる電流の積分値が、目標電荷量Qに到達すると、充電スイッチSW1をオフする。
【解決手段】 駆動装置1は、駆動信号Sdが入力されると、放電スイッチSW2をオフした状態で充電スイッチSW1のオン/オフを繰り返すことによりピエゾアクチュエータP1〜P4を充電させて伸長させる。その後、駆動信号Sdが入力されなくなると、充電スイッチSW1をオフした状態で放電スイッチSW2のオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータP1〜P4を放電させて収縮させる。そして特に、充電期間においては、一定の周期で充電スイッチSW1をオンすると共に、充電スイッチSW1のオン時に充電経路30に流れる電流の積分値が、目標電荷量Qに到達すると、充電スイッチSW1をオフする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾアクチュエータを充放電させて伸縮させる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピエゾアクチュエータを充放電させて伸縮させる駆動装置としては、インダクタとピエゾアクチュエータとの直列回路に対して、MOSFETからなる充電スイッチを介して直流電源から電源供給を行うための充電経路と、上記直列回路に並列に接続され、MOSFETからなる放電スイッチを介してピエゾアクチュエータに充電された電荷を放電させるための放電経路とを備えたものが知られている。
【0003】
そして、この駆動装置では、外部から駆動信号が入力されると、放電スイッチをオフした状態で充電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータを充電させて伸長させ、その後、駆動信号が入力されなくなると、充電スイッチをオフした状態で放電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータを放電させて収縮させる。
【0004】
つまり、充電期間においては、放電スイッチをオフした状態で充電スイッチをオンすることで、直流電源から充電経路を介してピエゾアクチュエータに充電電流を流し、その後、充電スイッチをオフすることで、インダクタに蓄積されたエネルギーによって流れる充電電流(換言すると、フライホイール電流)を、放電スイッチを構成しているMOSFETの寄生ダイオードを介してピエゾアクチュエータの負極側から正極側に流す、といった手順で、段階的にピエゾアクチュエータを充電させる。
【0005】
一方、放電期間においては、充電スイッチをオフした状態で放電スイッチをオンすることで、ピエゾアクチュエータの正極側から放電経路に放電電流を流し、その後、放電スイッチをオフすることで、インダクタに蓄積されたエネルギーによって発生するフライバック電圧により、充電電力を直流電源に回生する、といった手順で、段階的にピエゾアクチュエータを放電させる。
【0006】
そして、この種の駆動装置では、充電時に、直流電源から放出される単位時間当たりの電荷量を制御することで、所望の電荷量をピエゾアクチュエータに充電させるようにしたものがある。
【0007】
すなわち、この駆動装置は、駆動信号が入力されると、充電スイッチをオンし、その後、ピエゾアクチュエータに流れる充電電流の積分値が所定の目標値に達したときに充電スイッチをオフして、さらにその後、充電電流が上記目標値よりも小さい所定値に達したときに充電スイッチをオンするというオン/オフ動作を繰り返すことによって、ピエゾアクチュエータを充電させる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−16431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ピエゾアクチュエータの静電容量は温度によって変化するため、使用環境によっては、充電時にピエゾアクチュエータに流れ込む充電電流の電流量も変わってくる。
そして、特許文献1に記載の駆動装置では、ピエゾアクチュエータの静電容量が変化すると、充電スイッチのオン時に直流電源からピエゾアクチュエータに流れ込む電流量が変化するので、その時にインダクタに蓄積されるエネルギーも変化してしまい、充電スイッチのオフ時にインダクタがエネルギーを放出し終わるまでの時間も変化する。
【0009】
このため、特許文献1に記載の駆動装置では、充電期間中に充電スイッチをオンするタイミングが、ピエゾアクチュエータの静電容量の変化によって変わってしまい、ピエゾアクチュエータに蓄積される電荷の変化量(すなわち、単位時間当たりにピエゾアクチュエータが伸長する伸長率)が変わってしまうことがあった。
【0010】
そして、例えば、ピエゾアクチュエータが所定量だけ伸長したところで燃料噴射が開始されるようなインジェクタの燃料噴射制御用に、従来の駆動装置が用いられていた場合には、インジェクタによる燃料噴射のタイミングがずれてしまうことがあり、高精度な燃料噴射を実現することができない。
【0011】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたものであり、充電スイッチのオン/オフを繰り返すことでピエゾアクチュエータを段階的に充電して伸長させるピエゾアクチュエータの駆動装置において、ピエゾアクチュエータの静電容量の変化により、ピエゾアクチュエータの伸長率が変化してしまうのを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するためになされた請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置は、ピエゾアクチュエータに直列に接続されるインダクタと、インダクタとピエゾアクチュエータとの直列回路に対して、充電スイッチを介して直流電源から電源供給を行うための充電経路と、直列回路に並列に接続され、放電スイッチを介してピエゾアクチュエータに充電された電荷を放電させるための放電経路と、充電スイッチに対して、カソードが直流電源の正極側となるよう並列に接続された第1ダイオードと、放電スイッチに対して、カソードが直流電源の正極側となるよう並列に接続された第2ダイオードとを備える。
【0013】
そして、本発明の駆動装置では、外部から駆動指令が入力されると、充放電制御手段が、放電スイッチをオフした状態で充電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータを充電させて伸長させ、その後、外部から駆動停止指令が入力されると、充電スイッチをオフした状態で放電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータを放電させて収縮させる。
【0014】
そして特に、請求項1に記載の駆動装置では、充放電制御手段に、目標値設定手段と、電流検出手段と、推定手段と、充電スイッチ駆動手段とが設けられており、目標値設定手段は、当該装置による1回の充電期間の中でピエゾアクチュエータに充電すべき充電エネルギー、及び、直流電源の電源電圧に基づいて、充電スイッチのオン期間におけるピエゾアクチュエータの充電エネルギーの目標値を設定する。
【0015】
そして、充電スイッチ駆動手段は、駆動指令が入力されると、予め設定された所定の周期で充電スイッチをオンし、推定手段により推定される推定値が、目標値設定手段により設定された目標値に到達する度に充電スイッチをオフする。
【0016】
以上のような請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置によれば、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の周期を固定しつつ、1回の充電スイッチのオン時におけるピエゾアクチュエータの充電量も固定することができるため、充電期間におけるピエゾアクチュエータの伸長率を所望の伸長率に設定することができる。
【0017】
したがって、温度変化等によりピエゾアクチュエータの静電容量が変化しても、ピエゾアクチュエータの伸長率が変化してしまうのを防止することができる。
また、例えば、ピエゾアクチュエータが所定量だけ伸長したところで燃料噴射が開始されるようなインジェクタの燃料噴射制御用に、本発明の駆動装置を適用することで、静電容量の変化によりインジェクタによる燃料噴射のタイミングがずれてしまう、といったことを防止することができる。
【0018】
ところで、ピエゾアクチュエータの充電エネルギーは、エネルギー保存の法則により直流電源から放出される放出エネルギーから充電経路での損失エネルギーを差し引いたものと等しくなる。温度によりピエゾアクチュエータの静電容量が変化したとしても、同じエネルギーを充電するならば、その損失エネルギーもほぼ一定と考えられる。したがって、その放出エネルギーを制御すれば、ピエゾアクチュエータの充電エネルギーを制御することができる。そして、その放出エネルギーは、直流電源の電圧と電流の積を時間積分したものに等しい。
【0019】
ここで、直流電源の電圧はほぼ一定として考えられることから、直流電源からピエゾアクチュエータに流れる充電電流を時間積分した積分値は、充電エネルギーに比例することとなり、その積分値を求めれば、結果的に、ピエゾアクチュエータに充電される充電エネルギーを導出することができる。
【0020】
このため、請求項1に記載の駆動装置においては、請求項2に記載のように、推定手段は、電流検出手段により検出される充電電流の積分値を、推定値として導出し、充電スイッチ駆動手段は、推定手段により導出される積分値が、目標値に到達したときに、充電スイッチをオフするように構成するとよい。
【0021】
このようにすれば、推定手段は、単に直流電源からピエゾアクチュエータに流れる充電電流の積分値を導出するだけで充電エネルギーを推定することができるので、当該駆動装置の構成を簡素化することができる。
【0022】
ところで、ピエゾアクチュエータは、充電開始時には拘束された状態から変位するので、充電開始時には、ピエゾアクチュエータに大きな荷重(負荷)がかかる。
そして、ピエゾアクチュエータに大きな荷重がかかると、ピエゾアクチュエータの寿命や駆動装置の信頼性に影響を及ぼしたり、ピエゾアクチュエータの振動による作動音が発生したりする場合がある。
【0023】
そこで、目標値設定手段は、請求項3に記載のように、充電スイッチ駆動手段による1回の充電期間の中で、1回目に充電スイッチがオンされる際の目標値が、2回目以降に充電スイッチがオンされる際の目標値よりも低くなるように目標値を設定するように構成されているとよい。
【0024】
このようにすれば、充電開始時にピエゾアクチュエータにかかる荷重(負荷)を低減することができるので、ピエゾアクチュエータの寿命や信頼性を向上させることができると共に、作動音が発生してしまうのを抑制することができる。
【0025】
ところで、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の周期は、一定となるように設定されていてもよいが、この場合、例えば目標値設定手段により設定される目標値が一定であったとすると、充電期間において、充電スイッチがオフされてからフライホイール電流が放電経路に流れなくなるまでの時間は、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする回数が増加していくほど(即ち、ピエゾアクチュエータが充電されていくほど)短くなる。
【0026】
このため、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の周期を、充電スイッチのオン時にフライホイール電流が流れることのない一定周期に設定した場合には、ピエゾアクチュエータの充電が進むにつれて、充電スイッチのオフ時にフライホイール電流が流れなくなってから充電スイッチがオンするまでの無駄な時間が増加してしまうので、ピエゾアクチュエータを効率よく速やかに伸長させることができない。
【0027】
そこで、請求項1又は請求項2に記載の駆動装置は、請求項4に記載のように、目標値設定手段は、充電スイッチの各オン期間における目標値が同じとなるように、目標値を設定し、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の周期は、充電駆動手段による1回の充電期間の中で、充電スイッチが1回又は複数回オンする毎に短くなるように設定されているように構成されているとよい。
【0028】
このようにすれば、ピエゾアクチュエータを効率よく速やかに伸長させることができる。
次に、請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置において、目標値設定手段は、ピエゾアクチュエータに印加される単位時間当たりの電圧の変位量が、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の各周期において同じになるように目標値を設定する。
【0029】
つまり、温度が一定の場合には、ピエゾアクチュエータの伸長率(1回の充電期間によりピエゾアクチュエータが伸長していく経緯)は、電圧の変位量に比例するので、請求項5に記載の発明によれば、単位時間当たりにおける電圧の変位量を同じにすることにより、充電スイッチのオン期間毎のピエゾアクチュエータの伸長率を同じにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明が適用された実施形態のピエゾアクチュエータの駆動装置について説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の駆動装置1の構成を表す構成図である。なお、駆動装置1は、車両の内燃機関において燃料を噴射するインジェクタに搭載されたピエゾアクチュエータP1〜P4を充放電させて伸縮させることで、各気筒毎に設けられたインジェクタに燃料噴射の開始/停止をさせるものである。
【0031】
図1に示すように、駆動装置1は、4つのピエゾアクチュエータP1〜P4が並列に接続された並列回路10に対して直列に接続されるインダクタL1と、バッテリ14からのバッテリ電圧を昇圧することにより電源電圧を生成する電源回路12と、インダクタL1と並列回路10との直列回路20に対して、充電スイッチSW1を介して電源回路12から電源供給を行うための充電経路30と、直列回路20に対して並列に接続され、放電スイッチSW2を介してピエゾアクチュエータP1〜P4に充電された電荷を放電させるための放電経路40と、充電時に電源回路12からピエゾアクチュエータP1〜P4に供給される電流を検出するための電流検出用抵抗R1と、充電スイッチSW1及び放電スイッチSW2のオン/オフの制御を行うスイッチ制御部50とを備えている。
【0032】
並列回路10は、ピエゾアクチュエータP1及び気筒選択スイッチSWaからなる直列回路と、ピエゾアクチュエータP2及び気筒選択スイッチSWbからなる直列回路と、ピエゾアクチュエータP3及び気筒選択スイッチSWcからなる直列回路と、ピエゾアクチュエータP4及び気筒選択スイッチSWdからなる直列回路とが、並列に接続されることにより構成されている。
【0033】
また、並列回路10のピエゾアクチュエータP1〜P4側の端部は、インダクタL1の一端に接続され、気筒選択スイッチSWa〜SWd側の端部は、電源回路12の負極側に接続されたグランドラインに接続されている。
【0034】
各気筒選択スイッチSWa〜SWdは、nチャネルMOSFETからなり、ソースがグランドラインに接続され、ドレインがピエゾアクチュエータP1〜P4の一端に接続され、ゲートがスイッチ制御部50の出力端子に接続されている。
【0035】
また、気筒選択スイッチSWaにはダイオードDaが並列に接続され、気筒選択スイッチSWbにはダイオードDbが並列に接続され、気筒選択スイッチSWcにはダイオードDcが並列に接続され、気筒選択スイッチSWdにはダイオードDdが並列に接続されている。
【0036】
そして、各ダイオードDa〜Ddは、アノードがグランドラインに接続され、カソードがピエゾアクチュエータP1〜P4と気筒選択スイッチSWa〜SWdのドレインとの接続点に接続されている。
【0037】
なお、本実施形態においては、気筒選択スイッチSWa〜SWdにMOSFETを使用することで、そのFETの寄生ダイオードを、ダイオードDa〜Ddとして利用するようにしている。
【0038】
直列回路20は、インダクタL1側の端部が、充電スイッチSW1を介して電源回路12の正極側に接続されている。
充電スイッチSW1は、nチャネルMOSFETからなり、ソースがインダクタL1の一端に接続され、ドレインが電源回路12の正極側に接続され、ゲートがスイッチ制御部50の出力端子に接続されている。
【0039】
また、充電スイッチSW1には、ピエゾアクチュエータP1〜P4の放電時に、放電スイッチSW2がオフした際に電源回路12へ回生電流を流し込むためのダイオードD1が、並列に設けられている。
【0040】
なお、本実施形態においては、充電スイッチSW1にMOSFETを使用することで、そのFETの寄生ダイオードを、ダイオードD1として利用するようにしている。
放電スイッチSW2は、nチャネルMOSFETからなり、ソースがグランドラインに接続され、ドレインが充電スイッチSW1とインダクタL1との接続点に接続され、ゲートがスイッチ制御部50の出力端子に接続されている。
【0041】
また、放電スイッチSW2には、ピエゾアクチュエータP1〜P4の充電時に、充電スイッチSW1がオフした際にフライホイール電流を流すためのダイオードD2が、並列に設けられている。
【0042】
なお、本実施形態においては、放電スイッチSW2にMOSFETを使用することで、そのFETの寄生ダイオードを、ダイオードD2として利用するようにしている。
電源回路12は、バッテリ14と、バッテリ14からのバッテリ電圧(例えば12V)を昇圧するための昇圧回路16とからなり、バッテリ14の負極側端子は、グランドラインに接続されている。
【0043】
昇圧回路16は、一端がバッテリ14の正極側端子に接続された昇圧用インダクタL2と、アノードが昇圧用インダクタL2の他端に接続され、カソードが充電スイッチSW1のドレインに接続されたダイオードD3と、一端がダイオードD3と昇圧用インダクタL2との接続点に接続され、他端がグランドラインに接続された昇圧用スイッチSW3と、昇圧用スイッチSW3をオン/オフするための昇圧制御回路18と、一端がダイオードD3と充電スイッチSW1との接続点に接続され、他端が電流検出用抵抗R1を介してグランドラインに接続されたバッファコンデンサC1とを備えている。なお、ダイオードD3は、バッファコンデンサC1の放電を防止するためのものである。
【0044】
昇圧制御回路18は、昇圧用スイッチSW3のオン/オフを繰り返し行うことで、ダイオードD3を介してバッファコンデンサC1に数十〜数百Vの電圧を充電させる。
また、昇圧制御回路18は、バッファコンデンサC1の電圧値Vを検出するように構成されており、その電圧値Vを表す電圧値信号Svをスイッチ制御部50へ出力する。
【0045】
バッファコンデンサC1は、充電スイッチSW1及び気筒選択スイッチSWa〜SWdがオンされると、充電経路30に電流を流して、そのオンされた気筒選択スイッチSWa〜SWdに対応するピエゾアクチュエータP1〜P4を充電する。
【0046】
なお、以下の説明において、ピエゾアクチュエータP1〜P4の充電時にバッファコンデンサC1から直列回路20に流れる電流を、バッファコンデンサ電流という。また、バッファコンデンサC1は、比較的静電容量の大きなもので構成され、ピエゾアクチュエータP1〜P4への電源供給時にも略一定の電圧値を保つようになっている。
【0047】
スイッチ制御部50は、車両のエンジン制御を行うECU(図示省略)から出力される駆動信号Sdが入力されると、その駆動信号Sdにより特定される気筒選択スイッチSWa〜SWdをオンすると共に、放電スイッチSW2をオフした状態で、充電スイッチSW1のオン/オフを所定時間繰り返す。
【0048】
このとき、スイッチ制御部50は、周期的に充電スイッチSW1をオンすると共に、バッファコンデンサ電流を時間積分し、その積分値が所定値に到達したときに充電スイッチSW1をオフする。
【0049】
また、スイッチ制御部50は、駆動信号Sdが入力されなくなると、充電スイッチSW1をオフした状態で、放電スイッチSW2のオン/オフを所定時間繰り返す。
次に、スイッチ制御部50の中で充電スイッチSW1を制御する部分について、図2を用いて詳しく説明する。なお、放電スイッチSW2を制御する部分については、本発明とは直接関係ないため、詳細な説明は省略する。
【0050】
スイッチ制御部50は、バッファコンデンサ電流を検出するための電流検出回路60と、電流検出回路60により検出されたバッファコンデンサ電流を時間積分する電流積分回路70と、電流積分回路70により導出される積分結果が目標電荷量Qに到達したか否かを判定する判定回路80と、駆動信号Sdが入力されると、周期的に充電スイッチSW1をオンすると共に、判定回路80による判定結果に基づき充電スイッチSW1をオフする充電スイッチ制御部90とを備える。
【0051】
電流検出回路60は、抵抗R2,R3,R4,R5及びオペアンプOP1からなり、オペアンプOP1の非反転入力端子(+)には、電流検出用抵抗R1とバッファコンデンサC1との接続点が抵抗R2を介して接続され、オペアンプOP1の反転入力端子(−)には、電流検出用抵抗R1とグランドラインとの接続点が抵抗R3を介して接続されている。
【0052】
このため、オペアンプOP1の出力端子からは、電流検出用抵抗R1の両端間の電位差を所定の増幅率にて増幅した電圧値で表される電流検出信号Scが出力される。
なお、オペアンプOP1の非反転入力端子(+)には、バッファコンデンサ電流のオフセットを設定するためのリファレンス電圧Vref(例えば、2.5[V])が、抵抗R5を介して入力されている。
【0053】
電流積分回路70は、電流検出信号Scを時間積分する積分回路72と、積分回路72の積分結果をリセットするための積分リセットスイッチSW4とを備えている。
積分回路72は、抵抗R6、コンデンサC2、オペアンプOP2からなり、オペアンプOP2の非反転入力端子(+)には、リファレンス電圧Vrefが入力され、オペアンプOP2の反転入力端子(−)には、抵抗R6を介して電流検出信号Scが入力される。
【0054】
このため、オペアンプOP2の出力端子からは、電流検出信号Scを時間積分した信号(以下、積分信号Siという。)が出力される。
積分リセットスイッチSW4は、コンデンサC2に対して並列に接続されており、オンすることで、コンデンサC2に蓄電された電荷を放電させる。
【0055】
判定回路80は、抵抗R7,R8,R9と、コンパレータCMP1とからなり、コンパレータCMP1の反転入力端子(−)には、積分信号Siが抵抗R7を介して入力され、コンパレータCMP1の非反転入力端子(+)には、充電スイッチ制御部90から出力される目標電荷量Q(詳しくは、後述の目標電荷量設定信号So)が抵抗R8を介して入力される。
【0056】
また、判定回路80は、コンパレータCMP1の出力信号に応じて、目標電荷量Qを大小の2段階に切り替える、ヒステリシス付きのコンパレータCMP1(所謂、シュミットトリガ)として構成されている。
【0057】
つまり、コンパレータCMP1は、出力端子と非反転入力端子(+)とに接続された抵抗R9によって、出力端子からの出力信号を目標電荷量Qに加算し、非反転入力端子(+)に入力される目標電荷量Qを、その目標電荷量Qよりも大きい値と、目標電荷量Qよりも小さい値との2段階に切り替えるのである。
【0058】
そして、判定回路80は、コンパレータCMP1の出力信号(以下、判定信号Shという。)の信号レベルがハイレベルである場合に、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Qにヒステリシス分を加えた値を上回ると、判定信号Shの信号レベルがローレベルとなり、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルである場合に、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Qからヒステリシス分を減じた値を下回ると、判定信号Shの信号レベルがハイレベルとなるように構成されている。
【0059】
充電スイッチ制御部90は、CPU,RAM,ROM等を中心に構成されており、充電スイッチ制御部90には、駆動信号Sd、判定信号Sh、電圧値信号Sv等が入力される。
【0060】
また、充電スイッチ制御部90のROMには、1回の充電期間Tc、充電期間Tcの中でピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギーを表すエネルギー指令値E、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際の周期を表すスイッチング周期Ts、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする回数を表すスイッチング回数N等が記憶されている。なお、第1実施形態において、スイッチング周期Tsは一定である。
【0061】
以下、充電スイッチ制御部90のCPUが実行する処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図3は、充電スイッチ制御部90のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【0062】
車両のイグニッションスイッチがオンされることで充電スイッチ制御部90のCPUが起動すると、図3に示すように、まずS110にて、エネルギー指令値E、充電期間Tc、スイッチング周期Ts及びスイッチング回数NがROMから読み込まれると共に、バッファコンデンサC1の電圧値Vが昇圧制御回路18から取得される。
【0063】
次いで、S120では、エネルギー指令値Eが電圧値Vで割られることで、充電期間Tc内にバッファコンデンサC1から放出すべき総電荷量Qtが算出される(Qt=E/V)。
【0064】
そして、S130では、S120で算出された総電荷量Qtがスイッチング回数Nで割られることで、1回の充電スイッチSW1のオン期間において、バッファコンデンサC1から放出すべき目標電荷量Qが算出される(Q=Qt/N)。
【0065】
そして、S140では、積分リセットスイッチSW4をオンするための積分リセット信号Srが所定時間出力される。
次いで、S150では、S130で算出された目標電荷量Qを表す目標電荷量設定信号Soが、判定回路80(詳しくは、コンパレータCMP1)の非反転入力端子(+)へ出力される。
【0066】
続いて、S160では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
そして、S160にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S160の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S170へ処理が移行される。
【0067】
S170では、駆動信号Sdが入力されたか否かが判定される。
そして、S170にて、駆動信号Sdが入力されていないと判定された場合には、S170の処理が繰り返し実行され、逆に、駆動信号Sdが入力されたと判定された場合には、S180へ処理が移行される。
【0068】
S180では、充電期間Tcの計測が開始されると共に、駆動信号Sdにより特定される気筒選択スイッチSWa〜SWdのゲートに対して、その特定された気筒選択スイッチSWa〜SWdをオンするための気筒選択スイッチング信号が出力される。
【0069】
そして、続くS190では、スイッチング周期Tsの計測が開始される。
続いて、S200では、充電スイッチSW1をオンすべきタイミングであることを表すスイッチング周期信号Stが所定時間出力される。
【0070】
そして、S210では、充電スイッチSW1をオンするための充電スイッチング信号Ssが、充電スイッチSW1のゲートへ出力される。
次いで、S220では、判定信号Shの信号レベルがローレベルであるか否かが判定される。
【0071】
そして、S220にて、判定信号Shの信号レベルがローレベルではないと判定された場合には、S220の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルであると判定された場合には、S230へ処理が移行される。
【0072】
S230では、充電スイッチング信号Ssの出力が停止され、続くS240では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
そして、S250では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0073】
そして、S250にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S250の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S260へ処理が移行される。
【0074】
S260では、S190でスイッチング周期Tsの計測が開始されてからスイッチング周期Tsが経過したか否かが判定される。
そして、S260にて、スイッチング周期Tsが経過していないと判定された場合には、S260の処理が繰り返し実行され、逆に、スイッチング周期Tsが経過したと判定された場合には、S270へ処理が移行される。
【0075】
S270では、S180で充電期間Tcの計測が開始されてから充電期間Tcが経過(終了)したか否かが判定される。
そして、S270にて、充電期間Tcが終了していないと判定された場合には、S190へ処理が移行され、逆に、充電期間Tcが終了したと判定された場合には、気筒選択スイッチング信号の出力が停止され、S110へ処理が移行される。
【0076】
次に、第1実施形態の駆動装置1がピエゾアクチュエータP1〜P4を充電する際の各部の作動について、図4を用いて説明する。なお、図4は、駆動装置1において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。また、第1実施形態では、どのピエゾアクチュエータP1〜P4についても実質的に同じ作動を行うため、以下の説明では、代表してピエゾアクチュエータP1について説明する。そして、このことは、後述する実施形態についても同様である。
【0077】
図4に示すように、第1実施形態の駆動装置1では、まず時刻t1にて、駆動信号Sdがスイッチ制御部50に入力されると(S170:YES)、スイッチング周期信号St及び充電スイッチング信号Ssが出力されると共に(S200,S210)、気筒選択スイッチSWaに対して気筒選択スイッチング信号が出力される。
【0078】
すると、充電スイッチSW1がオンすることにより充電経路30が導通され、バッファコンデンサC1から充電経路30を介してピエゾアクチュエータP1にバッファコンデンサ電流が流れる。
【0079】
そして、このバッファコンデンサ電流は、インダクタL1とピエゾアクチュエータP1の容量によって決まる時定数で徐々に増加するため、積分信号Siにより表される電荷量も増加していく。
【0080】
そして、時刻t2にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Q(詳しくは、目標電荷量Qにヒステリシス分を加えた値)に達すると、判定信号Shの出力レベルがローレベルに切り替わり(S220:YES)、充電スイッチング信号Ssの出力が停止される(S230)。
【0081】
すると、充電スイッチSW1がオフすることにより充電経路30が遮断され、インダクタL1により蓄積されたエネルギーによって、寄生ダイオードD2を介してピエゾアクチュエータP1にフライホイール電流が流れる。
【0082】
そして、このフライホイール電流は、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出されることで、徐々に減少していく。
また、時刻t2では、充電スイッチ制御部90が所定時間の間積分リセット信号Srを出力するので、積分リセットスイッチSW4がオンしてコンデンサC2に蓄電された電荷が放電される(すなわち、積分信号Siがリセットされる。)。
【0083】
そして、時刻t1からスイッチング周期Tsが経過した時刻t3にて、スイッチング周期信号Stが再び出力されると、時刻t1と同様の作動が行われ、時刻t4にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Qに達すると、時刻t2と同様の作動が行われる。
【0084】
そして、スイッチング周期Ts毎の周期で充電スイッチSW1がオンすると共に、積分信号Siが目標電荷量Qに達する度に充電スイッチSW1がオフする、といった作動は、時刻t1から充電期間Tcが経過した時刻t5まで繰り返される。
【0085】
なお、図4に示す一点鎖線は、ピエゾアクチュエータP1〜P4に代えて、その静電容量よりも小さい静電容量のピエゾアクチュエータを駆動対象として駆動装置1に用いた場合を表しており、図4に示す二点鎖線は、図4の一点鎖線で示した例で用いたピエゾアクチュエータの静電容量よりも、更に小さい静電容量のピエゾアクチュエータを駆動対象として駆動装置1に用いた場合を表している。
【0086】
換言すると、図4では、静電容量が大きいピエゾアクチュエータP1〜P4を駆動装置1に用いた場合を実線で示し、静電容量が中位のピエゾアクチュエータP1〜P4を用いた場合を一点鎖線で示し、静電容量が小さいピエゾアクチュエータP1〜P4を用いた場合を二点鎖線で示している。
【0087】
また、図4では、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が中位の場合、及び小さい場合の信号Ss,Sh,Srの記載を省略しているが、これら全てを記載すると、図4のタイムチャートが見づらくなるためである。
【0088】
そして、これらのことは、後述する図6,図10,図11,図13についても同様である。
因みに、静電容量が異なるピエゾアクチュエータP1〜P4を用いたとしても、充電周期信号Stの出力開始タイミングは変わらないので、静電容量が中位の場合及び小さい場合の信号Ss,Sh,Srは、充電スイッチング信号Ssの出力停止タイミングや信号Sh,Srの変化パターンが、バッファコンデンサ電流や積分信号Siの変化パターンと同様に、静電容量が大きい場合に比べて遅れる。
【0089】
以上説明したように、第1実施形態の駆動装置1では、駆動信号Sdが入力されてから入力されなくなるまでの充電期間Tcにおいて、駆動信号Sdが入力されると、一定の周期で充電スイッチSW1をオンすると共に、積分信号Siにより表される電荷量が目標電荷量Qに達する度に充電スイッチSW1をオフする。
【0090】
このため、第1実施形態の駆動装置1によれば、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、充電期間TcにおけるピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率(すなわち、一回の充電でピエゾアクチュエータP1〜P4が伸長していく経緯)を所望の伸長率に設定することができる。
【0091】
したがって、温度変化等によりピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が変化したとしても、ピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率が変化してしまうのを防止することができる。
【0092】
またさらに、駆動装置1によれば、静電容量の変化によりインジェクタの燃料噴射のタイミングがずれてしまうことを防止することができる。
また、「課題を解決するための手段」にて説明したように、バッファコンデンサC1からピエゾアクチュエータP1〜P4に流れるバッファコンデンサ電流の積分値を求めれば、単位時間当たりにピエゾアクチュエータP1〜P4に充電される充電エネルギーを導出することができることから、第1実施形態の駆動装置1では、積分信号Siが目標電荷量Qに到達したときに、充電スイッチSW1をオフするように構成されている。
【0093】
このため、単にバッファコンデンサ電流の積分値を導出するだけで充電エネルギーを推定することができるので、当該駆動装置1の構成を簡素化することができる。
また、駆動装置1によれば、バッファコンデンサC1の電圧値V及びエネルギー指令値Eに基づいて目標電荷量Qを決めているので、バッファコンデンサC1の電圧値Vが変化した場合についても、ピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率を同一にすることができる。
【0094】
なお、第1実施形態では、電源回路12が直流電源に相当し、寄生ダイオードD1が第1ダイオードに相当し、寄生ダイオードD2が第2ダイオードに相当している。また、駆動信号Sdが入力されたときが駆動指令に相当し、駆動信号Sdの入力が停止されたときが駆動停止指令に相当している。また、スイッチ制御部50が、充放電制御手段に相当し、電流検出用抵抗R1が電流検出手段に相当し、電流積分回路70が推定手段に相当し、S170〜S270の処理が充電スイッチ駆動手段に相当している。また、S120及びS130の処理が目標値設定手段に相当している。
【0095】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の駆動装置2について、図5及び図6を用いて説明する。なお、図5は、第2実施形態の駆動装置2の構成を表す構成図であり、図6は、第2実施形態の駆動装置2において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。また、図5において、第1実施形態の駆動装置1と同様の構成要素については、同じ符号を付しているため詳細な説明は省略する。また、このことは、後述する図14についても同様である。
【0096】
第2実施形態の駆動装置2は、第1実施形態の駆動装置1と比較すると、電流検出用抵抗R1が接続されている位置と、積分リセット信号Srの出力を停止するタイミングとが異なっている。
【0097】
具体的に説明すると、第1実施形態では、バッファコンデンサC1の一端とグランドラインとの間に電流検出用抵抗R1が接続されていたが、第2実施形態では、並列回路10の気筒選択スイッチSWa〜SWd側の端部とグランドラインとの間に電流検出用抵抗R1が接続されている。
【0098】
そして、このようにした場合、電流検出用抵抗R1には、バッファコンデンサ電流だけでなく、充電期間Tcにおいて充電スイッチSW1のオフ時に流れるフライホイール電流も流れてしまうため、電流積分回路70は、バッファコンデンサ電流だけでなくフライホイール電流も積分してしまうこととなる。
【0099】
そこで、第2実施形態では、フライホイール電流を積分してしまうのを防止するために、図6に示すように、積分リセット信号Srの出力停止タイミングを、スイッチング周期信号Stが次回出力されるときにしている。
【0100】
具体的には、充電スイッチ制御部90がS200の処理を終了したときに、積分リセット信号Srの出力を停止するようにしている。
以上のような第2実施形態の駆動装置2によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の駆動装置について、図7及び図8を用いて説明する。なお、図7は、第3実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理を表すフローチャートであり、図8は、第3実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【0102】
第3実施形態の駆動装置は、第1実施形態の駆動装置と比較すると、充電期間Tcにおけるスイッチング周期Ts毎の目標電荷量Qが一定ではなく、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1が、2回目以降の目標電荷量Qよりも小さい点が主に異なっている。
【0103】
すなわち、第3実施形態では、充電スイッチ制御部90のROMに目標電荷量Q1が記憶されており、充電スイッチ制御部90は、目標電荷量Q1と総電荷量Qtとに基づき、2回目以降の目標電荷量Qを算出する。
【0104】
そして、充電スイッチ制御部90は、1回目の充電スイッチSW1のオン期間に目標電荷量Q1を利用して充電スイッチSW1のオフ制御を行い、2回目以降は、その目標電荷量Q1よりも大きい目標電荷量Qを利用して充電スイッチSW1のオフ制御を行う。
【0105】
以下、第3実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理について、図7を用いて説明する。
第3実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が図7の処理を開始すると、まずS310にて、エネルギー指令値E、充電期間Tc、スイッチング周期Ts及びスイッチング回数NがROMから読み込まれると共に、バッファコンデンサC1の電圧値Vが昇圧制御回路18から取得される。
【0106】
次いで、S320では、エネルギー指令値Eが電圧値Vで割られることで総電荷量Qtが算出される(Qt=E/V)。
そして、S330では、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1がROMから読み込まれる。
【0107】
続いて、S340では、次式(1)に示すように、総電荷量Qtから目標電荷量Q1が減じられた値(Qt−Q1)が、スイッチング回数Nから「1」を減じた値(N−1)で割られることで、2回目以降の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Qが算出される。
【0108】
【数1】
そして、S350では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
【0109】
次いで、S360では、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1を表す目標電荷量設定信号Soが出力される。
続いて、S370では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0110】
そして、S370にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S370の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S380へ処理が移行される。
【0111】
S380では、駆動信号Sdが入力されたか否かが判定される。
そして、S380にて、駆動信号Sdが入力されていないと判定された場合には、S380の処理が繰り返し実行され、逆に、駆動信号Sdが入力されたと判定された場合には、S390へ処理が移行される。
【0112】
S390では、充電期間Tcの計測が開始されると共に、気筒選択スイッチング信号が出力され、続くS400では、スイッチング周期Tsの計測が開始される。
続いて、S410では、スイッチング周期信号Stが所定時間出力され、続くS420では、充電スイッチング信号Ssが出力される。
【0113】
次いで、S430では、判定信号Shの信号レベルがローレベルであるか否かが判定される。
そして、S430にて、判定信号Shの信号レベルがローレベルではないと判定された場合には、S430の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルであると判定された場合には、S440へ処理が移行される。
【0114】
S440では、充電スイッチング信号Ssの出力が停止され、続くS450では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
そして、S460では、2回目以降の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Qを表す目標電荷量設定信号Soが出力される。
【0115】
そして、S470では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
そして、S470にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S470の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S480へ処理が移行される。
【0116】
S480では、S400でスイッチング周期Tsの計測が開始されてからスイッチング周期Tsが経過したか否かが判定される。
そして、S480にて、スイッチング周期Tsが経過していないと判定された場合には、S480の処理が繰り返し実行され、逆に、スイッチング周期Tsが経過したと判定された場合には、S490へ処理が移行される。
【0117】
S490では、S390で充電期間Tcの計測が開始されてから充電期間Tcが経過(終了)したか否かが判定される。
そして、S490にて、充電期間Tcが終了していないと判定された場合には、S400へ処理が移行され、逆に、充電期間Tcが終了したと判定された場合には、気筒選択スイッチング信号の出力が停止され、S310へ処理が移行される。
【0118】
次に、第3実施形態の駆動装置がピエゾアクチュエータP1〜P4を充電する際の各部の作動について、図8を用いて説明する。
第3実施形態の駆動装置においては、まず、判定回路80の非反転入力端子(+)に目標電荷量Q1が入力され(S360)、図8に示すように、時刻t6にて、駆動信号Sdがスイッチ制御部50に入力されると(S380:YES)、スイッチング周期信号St及び充電スイッチング信号Ssが出力されると共に(S410,S420)、気筒選択スイッチSWaに対して気筒選択スイッチング信号が出力される。
【0119】
すると、上述したように、バッファコンデンサC1から充電経路30を介してピエゾアクチュエータP1にバッファコンデンサ電流が流れる。
そして、時刻t7にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Q1に達すると、判定信号Shの出力レベルがローレベルに切り替わり(S430:YES)、充電スイッチング信号Ssの出力が停止される(S440)。
【0120】
すると、上述したように、寄生ダイオードD2を介してピエゾアクチュエータP1にフライホイール電流が流れる。
また、時刻t7では、充電スイッチ制御部90が所定時間の間積分リセット信号Srを出力すると共に、目標電荷量Q1よりも大きい目標電荷量Qが、判定回路80の非反転入力端子(+)に入力される(S460)。
【0121】
そして、時刻t8にて、スイッチング周期信号Stが再び入力されると、時刻t6と同じ作動が行われ、時刻t9にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Qに達すると、時刻t7と同様の作動が行われる。
【0122】
その後、スイッチング周期Ts毎に充電スイッチSW1がオンすると共に、積分信号Siが目標電荷量Qに達する度に充電スイッチSW1がオフする、といった作動が、時刻t10まで繰り返される。
【0123】
以上のような第3実施形態の駆動装置によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0124】
さらに、第3実施形態の駆動装置では、充電期間Tcにおけるスイッチング周期Ts毎の目標電荷量を、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1が、2回目以降の目標電荷量Qよりも小さくなるように設定しているので、スイッチング周期Ts毎の目標電荷量Qを同じ値にした場合(図8の一点鎖線)に比べて、充電開始時(1回目の充電スイッチSW1のオン期間)にピエゾアクチュエータP1〜P4に蓄積される充電エネルギーが少なくなる。
【0125】
このため、充電開始時にピエゾアクチュエータP1〜P4にかかる荷重(負荷)を低減することができるので、ピエゾアクチュエータの寿命や信頼性を向上させることができると共に、作動音が発生してしまうのを抑制することができる。
【0126】
なお、第3実施形態の駆動装置では、スイッチング周期Tsが、充電スイッチSW1がオンされる度に短くなるように設定されているが、これに限らず、周期は第1,第2実施形態と同様に一定となるように設定されていてもよい。
【0127】
また、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1は、2回目以降の目標電荷量Qよりも小さい値であれば何でもよい。
また、第3実施形態では、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1がROMに記憶されているものとして説明したが、これに限らず、目標電荷量Q1は使用者等により設定変更可能にされていてもよい。
【0128】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の駆動装置について、図9及び図10を用いて説明する。なお、図9は、第4実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理を表すフローチャートであり、図10は、第4実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【0129】
第4実施形態の駆動装置は、第1実施形態の駆動装置1と比較すると、スイッチング周期Tsが、一定ではなく、充電スイッチSW1が1回オンする毎に短くなるように設定されている点が異なっている。
【0130】
具体的に説明すると、第4実施形態のスイッチング周期Ts(n)は、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が変化したとしても、スイッチング周期信号Stの出力時(充電スイッチSW1のオン時)には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないようにするために、予め実験等により測定された値に基づき設定されている。
【0131】
なお、第4実施形態では、静電容量が大きいピエゾアクチュエータP1〜P4が当該駆動装置に用いられていた場合において、充電時にフライホイール電流が放電経路40に流れなくなる周期を実験等により測定し、その測定結果に基づいてスイッチング周期Ts(n)を設定している。
【0132】
以下、第4実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理について、図9を用いて説明する。
第4実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が図9の処理を開始すると、まずS510にて、エネルギー指令値E、充電期間Tc、スイッチング周期Ts(n)及びスイッチング回数NがROMから読み込まれると共に、バッファコンデンサC1の電圧値Vが昇圧制御回路18から取得される。
【0133】
次いで、S520では、エネルギー指令値Eが電圧値Vで割られることで総電荷量Qtが算出される(Qt=E/V)。
そして、S530では、S120で算出された総電荷量Qtがスイッチング回数Nで割られることで、目標電荷量Qが算出される(Q=Qt/N)。
【0134】
続いて、S540では、nに「1」が代入される。
そして、S550では、積分リセット信号Srが所定時間出力され、続くS560では、目標電荷量Qを表す目標電荷量設定信号Soが出力される。
【0135】
続いて、S570では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
そして、S570にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S570の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S580へ処理が移行される。
【0136】
S580では、駆動信号Sdが入力されたか否かが判定される。
そして、S580にて、駆動信号Sdが入力されていないと判定された場合には、S580の処理が繰り返し実行され、逆に、駆動信号Sdが入力されたと判定された場合には、S590へ処理が移行される。
【0137】
S590では、充電期間Tcの計測が開始されると共に、気筒選択スイッチング信号が出力される。
そして、S600では、スイッチング周期Ts(n)の計測が開始される。
【0138】
続いて、S610では、スイッチング周期信号Stが所定時間出力され、続くS620では、充電スイッチング信号Ssが出力される。
次いで、S630では、判定信号Shの信号レベルがローレベルであるか否かが判定される。
【0139】
そして、S630にて、判定信号Shの信号レベルがローレベルではないと判定された場合には、S630の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルであると判定された場合には、S640へ処理が移行される。
【0140】
S640では、充電スイッチング信号Ssの出力が停止され、続くS650では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
そして、S660では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0141】
そして、S660にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S660の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S670へ処理が移行される。
【0142】
S670では、S600でスイッチング周期Ts(n)の計測が開始されてからスイッチング周期Ts(n)が経過したか否かが判定される。
そして、S670にて、スイッチング周期Ts(n)が経過していないと判定された場合には、S670の処理が繰り返し実行され、逆に、スイッチング周期Ts(n)が経過したと判定された場合には、S680へ処理が移行される。
【0143】
S680では、nに「1」が加えられる。
そして、S690では、S590で充電期間Tcの計測が開始されてから充電期間Tcが経過(終了)したか否かが判定される。
【0144】
そして、S590にて、充電期間Tcが終了していないと判定された場合には、S600へ処理が移行され、逆に、充電期間Tcが終了したと判定された場合には、気筒選択スイッチング信号の出力が停止され、S510へ処理が移行される。
【0145】
以上のような第4実施形態の駆動装置によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
ので、第1実施形態に比べて、静電容量の変化によりピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率が変わってしまうのを効率よく抑制することができる。
【0146】
ところで、第1実施形態では、充電時に、フライホイール電流が流れなくなる前に充電スイッチSW1をオンしていたため、インダクタL1に蓄えられたエネルギーが全て放出されずに次回に引き継がれてしまう。
【0147】
このため、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が変化した場合には、その引き継がれるエネルギーが変わってしまうので、充電スイッチSW1のオフ期間毎の充電量が変わってきてしまい、各静電容量毎の伸長率に若干のずれが生じてしまう。
【0148】
これに対して、第4実施形態の駆動装置では、図10のタイムチャートに示すように、静電容量が変化したとしても、スイッチング周期信号Stの出力時には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないように、スイッチング周期Ts(n)が設定されている。
【0149】
このため、充電スイッチSW1が次回オンする際には、インダクタL1に蓄えられたエネルギーが全て放出されているので、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量の変化により充電スイッチSW1のオフ期間毎の充電量が変わってしまうのを抑制することができる。
【0150】
したがって、第4実施形態によれば、第1実施形態に比べて、静電容量の変化によりピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率が変わってしまうのを効率よく抑制することができる。
【0151】
また、第4実施形態によれば、スイッチング周期信号Stの出力時には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないように、スイッチング周期Ts(n)が設定されているので、充電スイッチSW1のオン時に放電スイッチSW2の寄生ダイオードD2に対して逆方向の電流(所謂、貫通電流)が流れてしまう、ということを防止することができる。よって、ノイズが発生してしまうことや損失がでてしまうことを抑制することができる。
【0152】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の駆動装置について、図11を用いて説明する。なお、図11は、第5実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【0153】
第5実施形態の駆動装置は、第4実施形態の駆動装置と比較すると、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が小さい場合に、充電時にフライホイール電流が放電経路40に流れなくなる周期を実験等により測定し、その測定結果に基づいてスイッチング周期Ts(n)を設定している。
【0154】
つまり、第4実施形態では、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が大きい場合を基準としてスイッチング周期Ts(n)を設定するようにしていたが、第5実施形態では、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が小さい場合を基準としてスイッチング周期Ts(n)を設定するようにしている。
【0155】
このため、第5実施形態の駆動装置によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0156】
また、第5実施形態では、図11に示すように、少なくともピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が小さい場合には、充電スイッチSW1のオン時にフライホイール電流が流れてしまわないようにしているので、第1実施形態に比べて、静電容量の変化によりピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率が変わってしまうのを効率よく抑制することができる。
【0157】
またさらに、第5実施形態によれば、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が小さいときを基準としてスイッチング周期Tsを設定しているので、第4実施形態に比べて、スイッチング周期Tsを短く設定することができる。
【0158】
したがって、第4実施形態に比べてスイッチング回数Nを増やすことができるので、第4実施形態よりも滑らかに伸長するようにピエゾアクチュエータP1〜P4を充電させることができる。
【0159】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態の駆動装置について、図12を用いて説明する。なお、図12は、第6実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理を表すフローチャートである。
【0160】
第6実施形態の駆動装置は、第1実施形態の駆動装置1と比較すると、目標電荷量Qを一定とせずに、ピエゾアクチュエータP1〜P4に印加される単位時間当たりの電圧の変位量Gが、各スイッチング周期Ts(n)において同じになるように、目標電荷量Qnを設定する点が異なっている。
【0161】
具体的に説明すると、第6実施形態の駆動装置では、電圧の変位量Gが、各スイッチング周期Ts(n)において同じになるように、次式(2)を用いることで目標電荷量Qnを算出するようにされている。
【0162】
【数2】
以下に、上式(2)を用いて目標電荷量Qnを算出することができる理由について説明する。
【0163】
まず、充電期間Tc内にバッファコンデンサC1から放出すべき総電荷量Qtは、次式(3)に示すように、エネルギー指令値Eを電圧値Vで割った値となる。
【0164】
【数3】
一方、電圧の変位量Gは、充電終了時にピエゾアクチュエータP1〜P4に印加されている電圧値を「Va」とすると、次式(4)に示すように、電圧値Vaを充電期間Tcで割った値となる。
【0165】
【数4】
ここで、充電期間Tcにおいて、充電スイッチSW1が1回目にオフされたときにピエゾアクチュエータP1〜P4に印加されている電圧値を「V1」とすると、充電スイッチSW1が1回目にオフされたときの電圧の変位量G1は、次式(5)に示すように、電圧値V1を、スイッチング周期Ts(1)(すなわち、充電スイッチSW1が1回目にオンされる際の周期Ts(1))で割った値となる。
【0166】
【数5】
一方、充電期間Tcの中でピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギー(すなわち、エネルギー指令値E)は、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量を「C」とすると、「E={C×(Va)2}/2」と表すことができるので、この式を変形することにより、電圧値Vaは次式(6)と表すことができる。
【0167】
【数6】
また、充電期間Tcの中でピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギー(すなわち、エネルギー指令値E)は、上式(3)を変形することにより「E=QtV」と表すこともできるので、この式の右辺を、上式(6)の「E」に代入することで次式(7)を導出することができる。
【0168】
【数7】
したがって、上式(4)の「Va」に上式(7)の右辺を代入すれば、次式(8)を導出することができる。
【0169】
【数8】
同様に、充電スイッチSW1の1回目のオフまでに、ピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギーE1は、「E1={C×(V1)2}/2」と表すことができるので、電圧値V1は、この式を変形することにより次式(9)と表すことができる。
【0170】
【数9】
したがって、電圧の変位量G1は、上式(5)の「V1」に上式(9)の右辺を代入することで、次式(10)と表すことができる。
【0171】
【数10】
ところで、第6実施形態では、電圧の変位量Gを各スイッチング周期Ts(n)において同じになるようにするようにしていることため、電圧の変位量Gと電圧の変位量G1とを等しくすればよい(G=G1)。
【0172】
このため、「G=G1」に、上式(8)の右辺と上式(10)の右辺とを代入して目標電荷量Q1を導出すれば、目標電荷量Q1は次式(11)と表すことができる。
【0173】
【数11】
また、以上のことから、同様にして充電スイッチSW1を2回目にオンする際の目標電荷量Q2を導出することができる。
【0174】
具体的に説明すると、まず電圧の変位量G2は、「G2=V2/(Ts(1)+Ts(2))」と表すことができる。
次に、充電スイッチSW1が2回目にオフされたときまでに、ピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギーE2は、「E2={C(V2)2}/2=(Q1+Q2)V」と表すことができるので、充電スイッチSW1が2回目にオフされたときにピエゾアクチュエータP1〜P4に印加されている電圧値V2は、次式(12)と表すことができる。
【0175】
【数12】
このため、電圧の変位量G2は、「G2=V2/(Ts(1)+Ts(2))」の「V2」に、上式(12)の右辺を代入することで、次式(13)と表すことができる。
【0176】
【数13】
そして、電圧の変位量G2も、電圧の変位量Gと等しくすればよいことから、目標電荷量Q2は、上式(8)と上式(13)とに基づいて、次式(14)と表すことができる。
【0177】
【数14】
また、同様にして、充電スイッチSW1を3回目にオンする際の目標電荷量Q3は、次式(15)と表すことができる。
【0178】
【数15】
したがって、上式(11)と上式(14)と上式(15)とから、充電スイッチSW1をn回目にオンする際の目標電荷量Qnは、上式(2)と表すことができる。
【0179】
以下、第6実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理について、図12を用いて説明する。
第6実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が図12の処理を開始すると、まずS710にて、エネルギー指令値E、充電期間Tc、スイッチング周期Ts(n)及びスイッチング回数NがROMから読み込まれると共に、バッファコンデンサC1の電圧値Vが昇圧制御回路18から取得される。
【0180】
次いで、S720では、エネルギー指令値Eが電圧値Vで割られることで総電荷量Qtが算出される(Qt=E/V)。
そして、S730では、nに「1」が代入され、S740では、上式(2)に基づいて、目標電荷量Qn(すなわち、最初の目標電荷量Q1)が算出される。
【0181】
次に、S750では、積分リセット信号Srが所定時間出力され、続くS760では、目標電荷量Q1を表す目標電荷量設定信号Soが出力される。
続いて、S770では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0182】
そして、S770にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S770の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S780へ処理が移行される。
【0183】
S780では、駆動信号Sdが入力されたか否かが判定される。
そして、S780にて、駆動信号Sdが入力されていないと判定された場合には、S780の処理が繰り返し実行され、逆に、駆動信号Sdが入力されたと判定された場合には、S790へ処理が移行される。
【0184】
S790では、充電期間Tcの計測が開始されると共に、気筒選択スイッチング信号が出力される。
そして、続くS800では、スイッチング周期Ts(n)の計測が開始され、続くS810では、スイッチング周期信号Stが所定時間出力される。
【0185】
そして、S820では、充電スイッチング信号Ssが出力され、続くS830では、判定信号Shの信号レベルがローレベルであるか否かが判定される。
そして、S830にて、判定信号Shの信号レベルがローレベルではないと判定された場合には、S830の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルであると判定された場合には、S840へ処理が移行される。
【0186】
S840では、充電スイッチング信号Ssの出力が停止され、続くS850では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
そして、860では、nの値がスイッチング回数N以上であるか否かが判定される。
【0187】
そして、S860にて、nの値がスイッチング回数N以上であると判定された場合には、S710へ処理が移行され、逆に、nの値がスイッチング回数N以上ではないと判定された場合には、S870へ処理が移行される。
【0188】
S870では、nに「1」が加えられ、続くS880では、目標電荷量Qnが上式(2)に基づいて算出される。
そして、S890では、S880で算出された目標電荷量Qnを表す目標電荷量設定信号Soが出力され、続くS900では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0189】
そして、S900にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S900の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S910へ処理が移行される。
【0190】
S910では、S800で計測が開始されたスイッチング周期Ts(n−1)が経過したか否かが判定される。
そして、S910にて、スイッチング周期Ts(n−1)が経過していないと判定された場合には、S910の処理が繰り返し実行され、逆に、スイッチング周期Ts(n−1)が経過したと判定された場合には、S920へ処理が移行される。
【0191】
S920では、S790で計測が開始された充電期間Tcが経過(終了)したか否かが判定される。
そして、S920にて、充電期間Tcが終了していないと判定された場合には、S800へ処理が移行され、逆に、充電期間Tcが終了したと判定された場合には、気筒選択スイッチング信号の出力が停止され、S710へ処理が移行される。
【0192】
次に、第6実施形態の駆動装置がピエゾアクチュエータP1〜P4を充電する際の各部の作動について、図13を用いて説明する。
第6実施形態の駆動装置においては、まず、判定回路80の非反転入力端子(+)に目標電荷量Q1が入力され(S760)、図13に示すように、時刻t11にて、駆動信号Sdがスイッチ制御部50に入力されると(S780:YES)、スイッチング周期信号St及び充電スイッチング信号Ssが出力されると共に(S810,S820)、気筒選択スイッチSWaに対して気筒選択スイッチング信号が出力される。
【0193】
すると、上述したように、バッファコンデンサC1から充電経路30を介してピエゾアクチュエータP1にバッファコンデンサ電流が流れる。
そして、時刻t12にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Q1に達すると、判定信号Shの出力レベルがローレベルに切り替わり(S830:YES)、充電スイッチング信号Ssの出力が停止される(S840)。
【0194】
すると、上述したように、寄生ダイオードD2を介してピエゾアクチュエータP1にフライホイール電流が流れる。
また、時刻t12では、充電スイッチ制御部90が所定時間の間積分リセット信号Srを出力すると共に、目標電荷量Q2が算出されて判定回路80の非反転入力端子(+)に入力される(S880,S890)。
【0195】
そして、時刻t13にて、スイッチング周期信号Stが再び入力されると、時刻t11と同じ作動が行われ、時刻t14にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Q2に達すると、時刻t12と同様の作動が行われる。
【0196】
その後、スイッチング周期Ts(n)毎に充電スイッチSW1がオンすると共に、積分信号Siが目標電荷量Qnに達する度に充電スイッチSW1がオフする、といった作動が、時刻t15まで繰り返される。
【0197】
以上のような第6実施形態の駆動装置によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0198】
また、第6実施形態によれば、充電スイッチSW1のオン期間毎の電圧の変位量Gnを同じにしているので、充電スイッチSW1のオン期間毎のピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率を同じにすることができる。
【0199】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0200】
上記実施形態では、昇圧制御回路18が昇圧スイッチSW3をオン/オフするものとして説明したが、これに限らず、スイッチ制御部90が、昇圧用スイッチSW3をオン/オフするようにしてもよい。
【0201】
また、第4実施形態及び第5実施形態では、スイッチング周期信号Stの出力時には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないように、スイッチング周期Ts(n)が設定されていたが、例えば駆動装置を図14に示すように構成することで、上述したようなスイッチング周期Ts(n)を設定することができる。
【0202】
以下、変形例の駆動装置について図14を用いて説明する。
図14に示すように、変形例の駆動装置は、図2の駆動装置1に対して、充電時にピエゾアクチュエータP1〜P4に流れる充電電流を検出するための電流検出用抵抗R10と、充電電流を検出するための電流検出回路100と、電流検出回路100により検出された充電電流が流れなくなったか否かを判定する判定回路110と、を備えている。
【0203】
電流検出用抵抗R10は、並列回路10の気筒選択スイッチSWa〜SWd側の端部とグランドラインとの間に接続されている。
電流検出回路100は、抵抗R11,R12,R13,R14及びオペアンプOP3からなり、オペアンプOP3の非反転入力端子(+)には、電流検出用抵抗R10と並列回路10との接続点が抵抗R11を介して接続され、オペアンプOP3の反転入力端子(−)には、電流検出用抵抗R10とグランドラインとの接続点が抵抗R12を介して接続されている。
【0204】
このため、オペアンプOP3の出力端子からは、電流検出用抵抗R10の両端間の電位差を所定の増幅率にて増幅した電圧値で表される電流検出信号Sc2が出力される。
なお、オペアンプOP3の非反転入力端子(+)には、リファレンス電圧Vrefが、抵抗R14を介して入力されている。
【0205】
判定回路110は、抵抗R15,R16,R17と、コンパレータCMP2とからなり、コンパレータCMP2の反転入力端子(−)には、電流検出信号Sc2が抵抗R15を介して入力され、コンパレータCMP2の非反転入力端子(+)には、充電スイッチ制御部90から出力される電流ゼロ閾値信号Szが抵抗R16を介して入力される。なお、電流ゼロ閾値信号Szとは、判定回路110が、充電電流(詳しくは、フライホイール電流)がピエゾアクチュエータP1〜P4に流れなくなったか否かを判定するための閾値として用いるために、非反転入力端子(+)に入力される信号である。
【0206】
また、判定回路110は、コンパレータCMP2の出力信号に応じて、電流ゼロ閾値信号Szにより表される閾値を大小の2段階に切り替える、ヒステリシス付きのコンパレータCMP2(所謂、シュミットトリガ)として構成されている。
【0207】
以上説明したように、変形例の駆動装置では、充電時に判定回路110からの出力信号の信号レベルがローレベルからハイレベルに切り替わったときに、充電電流(詳しくは、フライホイール電流)がピエゾアクチュエータP1〜P4に流れなくなったこととなる。
【0208】
したがって、変形例の駆動装置によれば、フライホイール電流が流れなくなるときを知ることができるので、スイッチング周期信号Stの出力時には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないように、スイッチング周期Ts(n)を設定することができる。
【0209】
なお、上記変形例におけるスイッチング周期Ts(n)の設定は、駆動装置を搭載した車両の出荷時に行うようにしてもよいし、定期的に行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】第1実施形態のピエゾアクチュエータの駆動装置の構成を表す構成図である。
【図2】スイッチ制御部の中で充電スイッチを制御する部分を説明する説明図である。
【図3】第1実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図5】第2実施形態の駆動装置を表す構成図である。
【図6】第2実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図7】第3実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【図8】第3実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図9】第4実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【図10】第4実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図11】第5実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図12】第6実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【図13】第6実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図14】第4及び第5実施形態の変形例の駆動装置を表す構成図である。
【符号の説明】
【0211】
1,2…駆動装置、10…並列回路、12…電源回路、14…バッテリ、16…昇圧回路、18…昇圧制御回路、20…直列回路、30…充電経路、40…放電経路、50…スイッチ制御部、60…電流検出回路、70…電流積分回路、80…判定回路、90…充電スイッチ制御部、C1…バッファコンデンサ、D1,D2…寄生ダイオード、L1…インダクタ、P1〜P4…ピエゾアクチュエータ、R1,R10…電流検出用抵抗、SW1…充電スイッチ、SW2…放電スイッチ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾアクチュエータを充放電させて伸縮させる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ピエゾアクチュエータを充放電させて伸縮させる駆動装置としては、インダクタとピエゾアクチュエータとの直列回路に対して、MOSFETからなる充電スイッチを介して直流電源から電源供給を行うための充電経路と、上記直列回路に並列に接続され、MOSFETからなる放電スイッチを介してピエゾアクチュエータに充電された電荷を放電させるための放電経路とを備えたものが知られている。
【0003】
そして、この駆動装置では、外部から駆動信号が入力されると、放電スイッチをオフした状態で充電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータを充電させて伸長させ、その後、駆動信号が入力されなくなると、充電スイッチをオフした状態で放電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータを放電させて収縮させる。
【0004】
つまり、充電期間においては、放電スイッチをオフした状態で充電スイッチをオンすることで、直流電源から充電経路を介してピエゾアクチュエータに充電電流を流し、その後、充電スイッチをオフすることで、インダクタに蓄積されたエネルギーによって流れる充電電流(換言すると、フライホイール電流)を、放電スイッチを構成しているMOSFETの寄生ダイオードを介してピエゾアクチュエータの負極側から正極側に流す、といった手順で、段階的にピエゾアクチュエータを充電させる。
【0005】
一方、放電期間においては、充電スイッチをオフした状態で放電スイッチをオンすることで、ピエゾアクチュエータの正極側から放電経路に放電電流を流し、その後、放電スイッチをオフすることで、インダクタに蓄積されたエネルギーによって発生するフライバック電圧により、充電電力を直流電源に回生する、といった手順で、段階的にピエゾアクチュエータを放電させる。
【0006】
そして、この種の駆動装置では、充電時に、直流電源から放出される単位時間当たりの電荷量を制御することで、所望の電荷量をピエゾアクチュエータに充電させるようにしたものがある。
【0007】
すなわち、この駆動装置は、駆動信号が入力されると、充電スイッチをオンし、その後、ピエゾアクチュエータに流れる充電電流の積分値が所定の目標値に達したときに充電スイッチをオフして、さらにその後、充電電流が上記目標値よりも小さい所定値に達したときに充電スイッチをオンするというオン/オフ動作を繰り返すことによって、ピエゾアクチュエータを充電させる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−16431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ピエゾアクチュエータの静電容量は温度によって変化するため、使用環境によっては、充電時にピエゾアクチュエータに流れ込む充電電流の電流量も変わってくる。
そして、特許文献1に記載の駆動装置では、ピエゾアクチュエータの静電容量が変化すると、充電スイッチのオン時に直流電源からピエゾアクチュエータに流れ込む電流量が変化するので、その時にインダクタに蓄積されるエネルギーも変化してしまい、充電スイッチのオフ時にインダクタがエネルギーを放出し終わるまでの時間も変化する。
【0009】
このため、特許文献1に記載の駆動装置では、充電期間中に充電スイッチをオンするタイミングが、ピエゾアクチュエータの静電容量の変化によって変わってしまい、ピエゾアクチュエータに蓄積される電荷の変化量(すなわち、単位時間当たりにピエゾアクチュエータが伸長する伸長率)が変わってしまうことがあった。
【0010】
そして、例えば、ピエゾアクチュエータが所定量だけ伸長したところで燃料噴射が開始されるようなインジェクタの燃料噴射制御用に、従来の駆動装置が用いられていた場合には、インジェクタによる燃料噴射のタイミングがずれてしまうことがあり、高精度な燃料噴射を実現することができない。
【0011】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたものであり、充電スイッチのオン/オフを繰り返すことでピエゾアクチュエータを段階的に充電して伸長させるピエゾアクチュエータの駆動装置において、ピエゾアクチュエータの静電容量の変化により、ピエゾアクチュエータの伸長率が変化してしまうのを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題を解決するためになされた請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置は、ピエゾアクチュエータに直列に接続されるインダクタと、インダクタとピエゾアクチュエータとの直列回路に対して、充電スイッチを介して直流電源から電源供給を行うための充電経路と、直列回路に並列に接続され、放電スイッチを介してピエゾアクチュエータに充電された電荷を放電させるための放電経路と、充電スイッチに対して、カソードが直流電源の正極側となるよう並列に接続された第1ダイオードと、放電スイッチに対して、カソードが直流電源の正極側となるよう並列に接続された第2ダイオードとを備える。
【0013】
そして、本発明の駆動装置では、外部から駆動指令が入力されると、充放電制御手段が、放電スイッチをオフした状態で充電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータを充電させて伸長させ、その後、外部から駆動停止指令が入力されると、充電スイッチをオフした状態で放電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、ピエゾアクチュエータを放電させて収縮させる。
【0014】
そして特に、請求項1に記載の駆動装置では、充放電制御手段に、目標値設定手段と、電流検出手段と、推定手段と、充電スイッチ駆動手段とが設けられており、目標値設定手段は、当該装置による1回の充電期間の中でピエゾアクチュエータに充電すべき充電エネルギー、及び、直流電源の電源電圧に基づいて、充電スイッチのオン期間におけるピエゾアクチュエータの充電エネルギーの目標値を設定する。
【0015】
そして、充電スイッチ駆動手段は、駆動指令が入力されると、予め設定された所定の周期で充電スイッチをオンし、推定手段により推定される推定値が、目標値設定手段により設定された目標値に到達する度に充電スイッチをオフする。
【0016】
以上のような請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置によれば、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の周期を固定しつつ、1回の充電スイッチのオン時におけるピエゾアクチュエータの充電量も固定することができるため、充電期間におけるピエゾアクチュエータの伸長率を所望の伸長率に設定することができる。
【0017】
したがって、温度変化等によりピエゾアクチュエータの静電容量が変化しても、ピエゾアクチュエータの伸長率が変化してしまうのを防止することができる。
また、例えば、ピエゾアクチュエータが所定量だけ伸長したところで燃料噴射が開始されるようなインジェクタの燃料噴射制御用に、本発明の駆動装置を適用することで、静電容量の変化によりインジェクタによる燃料噴射のタイミングがずれてしまう、といったことを防止することができる。
【0018】
ところで、ピエゾアクチュエータの充電エネルギーは、エネルギー保存の法則により直流電源から放出される放出エネルギーから充電経路での損失エネルギーを差し引いたものと等しくなる。温度によりピエゾアクチュエータの静電容量が変化したとしても、同じエネルギーを充電するならば、その損失エネルギーもほぼ一定と考えられる。したがって、その放出エネルギーを制御すれば、ピエゾアクチュエータの充電エネルギーを制御することができる。そして、その放出エネルギーは、直流電源の電圧と電流の積を時間積分したものに等しい。
【0019】
ここで、直流電源の電圧はほぼ一定として考えられることから、直流電源からピエゾアクチュエータに流れる充電電流を時間積分した積分値は、充電エネルギーに比例することとなり、その積分値を求めれば、結果的に、ピエゾアクチュエータに充電される充電エネルギーを導出することができる。
【0020】
このため、請求項1に記載の駆動装置においては、請求項2に記載のように、推定手段は、電流検出手段により検出される充電電流の積分値を、推定値として導出し、充電スイッチ駆動手段は、推定手段により導出される積分値が、目標値に到達したときに、充電スイッチをオフするように構成するとよい。
【0021】
このようにすれば、推定手段は、単に直流電源からピエゾアクチュエータに流れる充電電流の積分値を導出するだけで充電エネルギーを推定することができるので、当該駆動装置の構成を簡素化することができる。
【0022】
ところで、ピエゾアクチュエータは、充電開始時には拘束された状態から変位するので、充電開始時には、ピエゾアクチュエータに大きな荷重(負荷)がかかる。
そして、ピエゾアクチュエータに大きな荷重がかかると、ピエゾアクチュエータの寿命や駆動装置の信頼性に影響を及ぼしたり、ピエゾアクチュエータの振動による作動音が発生したりする場合がある。
【0023】
そこで、目標値設定手段は、請求項3に記載のように、充電スイッチ駆動手段による1回の充電期間の中で、1回目に充電スイッチがオンされる際の目標値が、2回目以降に充電スイッチがオンされる際の目標値よりも低くなるように目標値を設定するように構成されているとよい。
【0024】
このようにすれば、充電開始時にピエゾアクチュエータにかかる荷重(負荷)を低減することができるので、ピエゾアクチュエータの寿命や信頼性を向上させることができると共に、作動音が発生してしまうのを抑制することができる。
【0025】
ところで、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の周期は、一定となるように設定されていてもよいが、この場合、例えば目標値設定手段により設定される目標値が一定であったとすると、充電期間において、充電スイッチがオフされてからフライホイール電流が放電経路に流れなくなるまでの時間は、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする回数が増加していくほど(即ち、ピエゾアクチュエータが充電されていくほど)短くなる。
【0026】
このため、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の周期を、充電スイッチのオン時にフライホイール電流が流れることのない一定周期に設定した場合には、ピエゾアクチュエータの充電が進むにつれて、充電スイッチのオフ時にフライホイール電流が流れなくなってから充電スイッチがオンするまでの無駄な時間が増加してしまうので、ピエゾアクチュエータを効率よく速やかに伸長させることができない。
【0027】
そこで、請求項1又は請求項2に記載の駆動装置は、請求項4に記載のように、目標値設定手段は、充電スイッチの各オン期間における目標値が同じとなるように、目標値を設定し、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の周期は、充電駆動手段による1回の充電期間の中で、充電スイッチが1回又は複数回オンする毎に短くなるように設定されているように構成されているとよい。
【0028】
このようにすれば、ピエゾアクチュエータを効率よく速やかに伸長させることができる。
次に、請求項5に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置において、目標値設定手段は、ピエゾアクチュエータに印加される単位時間当たりの電圧の変位量が、充電スイッチ駆動手段が充電スイッチをオンする際の各周期において同じになるように目標値を設定する。
【0029】
つまり、温度が一定の場合には、ピエゾアクチュエータの伸長率(1回の充電期間によりピエゾアクチュエータが伸長していく経緯)は、電圧の変位量に比例するので、請求項5に記載の発明によれば、単位時間当たりにおける電圧の変位量を同じにすることにより、充電スイッチのオン期間毎のピエゾアクチュエータの伸長率を同じにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明が適用された実施形態のピエゾアクチュエータの駆動装置について説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の駆動装置1の構成を表す構成図である。なお、駆動装置1は、車両の内燃機関において燃料を噴射するインジェクタに搭載されたピエゾアクチュエータP1〜P4を充放電させて伸縮させることで、各気筒毎に設けられたインジェクタに燃料噴射の開始/停止をさせるものである。
【0031】
図1に示すように、駆動装置1は、4つのピエゾアクチュエータP1〜P4が並列に接続された並列回路10に対して直列に接続されるインダクタL1と、バッテリ14からのバッテリ電圧を昇圧することにより電源電圧を生成する電源回路12と、インダクタL1と並列回路10との直列回路20に対して、充電スイッチSW1を介して電源回路12から電源供給を行うための充電経路30と、直列回路20に対して並列に接続され、放電スイッチSW2を介してピエゾアクチュエータP1〜P4に充電された電荷を放電させるための放電経路40と、充電時に電源回路12からピエゾアクチュエータP1〜P4に供給される電流を検出するための電流検出用抵抗R1と、充電スイッチSW1及び放電スイッチSW2のオン/オフの制御を行うスイッチ制御部50とを備えている。
【0032】
並列回路10は、ピエゾアクチュエータP1及び気筒選択スイッチSWaからなる直列回路と、ピエゾアクチュエータP2及び気筒選択スイッチSWbからなる直列回路と、ピエゾアクチュエータP3及び気筒選択スイッチSWcからなる直列回路と、ピエゾアクチュエータP4及び気筒選択スイッチSWdからなる直列回路とが、並列に接続されることにより構成されている。
【0033】
また、並列回路10のピエゾアクチュエータP1〜P4側の端部は、インダクタL1の一端に接続され、気筒選択スイッチSWa〜SWd側の端部は、電源回路12の負極側に接続されたグランドラインに接続されている。
【0034】
各気筒選択スイッチSWa〜SWdは、nチャネルMOSFETからなり、ソースがグランドラインに接続され、ドレインがピエゾアクチュエータP1〜P4の一端に接続され、ゲートがスイッチ制御部50の出力端子に接続されている。
【0035】
また、気筒選択スイッチSWaにはダイオードDaが並列に接続され、気筒選択スイッチSWbにはダイオードDbが並列に接続され、気筒選択スイッチSWcにはダイオードDcが並列に接続され、気筒選択スイッチSWdにはダイオードDdが並列に接続されている。
【0036】
そして、各ダイオードDa〜Ddは、アノードがグランドラインに接続され、カソードがピエゾアクチュエータP1〜P4と気筒選択スイッチSWa〜SWdのドレインとの接続点に接続されている。
【0037】
なお、本実施形態においては、気筒選択スイッチSWa〜SWdにMOSFETを使用することで、そのFETの寄生ダイオードを、ダイオードDa〜Ddとして利用するようにしている。
【0038】
直列回路20は、インダクタL1側の端部が、充電スイッチSW1を介して電源回路12の正極側に接続されている。
充電スイッチSW1は、nチャネルMOSFETからなり、ソースがインダクタL1の一端に接続され、ドレインが電源回路12の正極側に接続され、ゲートがスイッチ制御部50の出力端子に接続されている。
【0039】
また、充電スイッチSW1には、ピエゾアクチュエータP1〜P4の放電時に、放電スイッチSW2がオフした際に電源回路12へ回生電流を流し込むためのダイオードD1が、並列に設けられている。
【0040】
なお、本実施形態においては、充電スイッチSW1にMOSFETを使用することで、そのFETの寄生ダイオードを、ダイオードD1として利用するようにしている。
放電スイッチSW2は、nチャネルMOSFETからなり、ソースがグランドラインに接続され、ドレインが充電スイッチSW1とインダクタL1との接続点に接続され、ゲートがスイッチ制御部50の出力端子に接続されている。
【0041】
また、放電スイッチSW2には、ピエゾアクチュエータP1〜P4の充電時に、充電スイッチSW1がオフした際にフライホイール電流を流すためのダイオードD2が、並列に設けられている。
【0042】
なお、本実施形態においては、放電スイッチSW2にMOSFETを使用することで、そのFETの寄生ダイオードを、ダイオードD2として利用するようにしている。
電源回路12は、バッテリ14と、バッテリ14からのバッテリ電圧(例えば12V)を昇圧するための昇圧回路16とからなり、バッテリ14の負極側端子は、グランドラインに接続されている。
【0043】
昇圧回路16は、一端がバッテリ14の正極側端子に接続された昇圧用インダクタL2と、アノードが昇圧用インダクタL2の他端に接続され、カソードが充電スイッチSW1のドレインに接続されたダイオードD3と、一端がダイオードD3と昇圧用インダクタL2との接続点に接続され、他端がグランドラインに接続された昇圧用スイッチSW3と、昇圧用スイッチSW3をオン/オフするための昇圧制御回路18と、一端がダイオードD3と充電スイッチSW1との接続点に接続され、他端が電流検出用抵抗R1を介してグランドラインに接続されたバッファコンデンサC1とを備えている。なお、ダイオードD3は、バッファコンデンサC1の放電を防止するためのものである。
【0044】
昇圧制御回路18は、昇圧用スイッチSW3のオン/オフを繰り返し行うことで、ダイオードD3を介してバッファコンデンサC1に数十〜数百Vの電圧を充電させる。
また、昇圧制御回路18は、バッファコンデンサC1の電圧値Vを検出するように構成されており、その電圧値Vを表す電圧値信号Svをスイッチ制御部50へ出力する。
【0045】
バッファコンデンサC1は、充電スイッチSW1及び気筒選択スイッチSWa〜SWdがオンされると、充電経路30に電流を流して、そのオンされた気筒選択スイッチSWa〜SWdに対応するピエゾアクチュエータP1〜P4を充電する。
【0046】
なお、以下の説明において、ピエゾアクチュエータP1〜P4の充電時にバッファコンデンサC1から直列回路20に流れる電流を、バッファコンデンサ電流という。また、バッファコンデンサC1は、比較的静電容量の大きなもので構成され、ピエゾアクチュエータP1〜P4への電源供給時にも略一定の電圧値を保つようになっている。
【0047】
スイッチ制御部50は、車両のエンジン制御を行うECU(図示省略)から出力される駆動信号Sdが入力されると、その駆動信号Sdにより特定される気筒選択スイッチSWa〜SWdをオンすると共に、放電スイッチSW2をオフした状態で、充電スイッチSW1のオン/オフを所定時間繰り返す。
【0048】
このとき、スイッチ制御部50は、周期的に充電スイッチSW1をオンすると共に、バッファコンデンサ電流を時間積分し、その積分値が所定値に到達したときに充電スイッチSW1をオフする。
【0049】
また、スイッチ制御部50は、駆動信号Sdが入力されなくなると、充電スイッチSW1をオフした状態で、放電スイッチSW2のオン/オフを所定時間繰り返す。
次に、スイッチ制御部50の中で充電スイッチSW1を制御する部分について、図2を用いて詳しく説明する。なお、放電スイッチSW2を制御する部分については、本発明とは直接関係ないため、詳細な説明は省略する。
【0050】
スイッチ制御部50は、バッファコンデンサ電流を検出するための電流検出回路60と、電流検出回路60により検出されたバッファコンデンサ電流を時間積分する電流積分回路70と、電流積分回路70により導出される積分結果が目標電荷量Qに到達したか否かを判定する判定回路80と、駆動信号Sdが入力されると、周期的に充電スイッチSW1をオンすると共に、判定回路80による判定結果に基づき充電スイッチSW1をオフする充電スイッチ制御部90とを備える。
【0051】
電流検出回路60は、抵抗R2,R3,R4,R5及びオペアンプOP1からなり、オペアンプOP1の非反転入力端子(+)には、電流検出用抵抗R1とバッファコンデンサC1との接続点が抵抗R2を介して接続され、オペアンプOP1の反転入力端子(−)には、電流検出用抵抗R1とグランドラインとの接続点が抵抗R3を介して接続されている。
【0052】
このため、オペアンプOP1の出力端子からは、電流検出用抵抗R1の両端間の電位差を所定の増幅率にて増幅した電圧値で表される電流検出信号Scが出力される。
なお、オペアンプOP1の非反転入力端子(+)には、バッファコンデンサ電流のオフセットを設定するためのリファレンス電圧Vref(例えば、2.5[V])が、抵抗R5を介して入力されている。
【0053】
電流積分回路70は、電流検出信号Scを時間積分する積分回路72と、積分回路72の積分結果をリセットするための積分リセットスイッチSW4とを備えている。
積分回路72は、抵抗R6、コンデンサC2、オペアンプOP2からなり、オペアンプOP2の非反転入力端子(+)には、リファレンス電圧Vrefが入力され、オペアンプOP2の反転入力端子(−)には、抵抗R6を介して電流検出信号Scが入力される。
【0054】
このため、オペアンプOP2の出力端子からは、電流検出信号Scを時間積分した信号(以下、積分信号Siという。)が出力される。
積分リセットスイッチSW4は、コンデンサC2に対して並列に接続されており、オンすることで、コンデンサC2に蓄電された電荷を放電させる。
【0055】
判定回路80は、抵抗R7,R8,R9と、コンパレータCMP1とからなり、コンパレータCMP1の反転入力端子(−)には、積分信号Siが抵抗R7を介して入力され、コンパレータCMP1の非反転入力端子(+)には、充電スイッチ制御部90から出力される目標電荷量Q(詳しくは、後述の目標電荷量設定信号So)が抵抗R8を介して入力される。
【0056】
また、判定回路80は、コンパレータCMP1の出力信号に応じて、目標電荷量Qを大小の2段階に切り替える、ヒステリシス付きのコンパレータCMP1(所謂、シュミットトリガ)として構成されている。
【0057】
つまり、コンパレータCMP1は、出力端子と非反転入力端子(+)とに接続された抵抗R9によって、出力端子からの出力信号を目標電荷量Qに加算し、非反転入力端子(+)に入力される目標電荷量Qを、その目標電荷量Qよりも大きい値と、目標電荷量Qよりも小さい値との2段階に切り替えるのである。
【0058】
そして、判定回路80は、コンパレータCMP1の出力信号(以下、判定信号Shという。)の信号レベルがハイレベルである場合に、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Qにヒステリシス分を加えた値を上回ると、判定信号Shの信号レベルがローレベルとなり、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルである場合に、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Qからヒステリシス分を減じた値を下回ると、判定信号Shの信号レベルがハイレベルとなるように構成されている。
【0059】
充電スイッチ制御部90は、CPU,RAM,ROM等を中心に構成されており、充電スイッチ制御部90には、駆動信号Sd、判定信号Sh、電圧値信号Sv等が入力される。
【0060】
また、充電スイッチ制御部90のROMには、1回の充電期間Tc、充電期間Tcの中でピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギーを表すエネルギー指令値E、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際の周期を表すスイッチング周期Ts、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする回数を表すスイッチング回数N等が記憶されている。なお、第1実施形態において、スイッチング周期Tsは一定である。
【0061】
以下、充電スイッチ制御部90のCPUが実行する処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。なお、図3は、充電スイッチ制御部90のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【0062】
車両のイグニッションスイッチがオンされることで充電スイッチ制御部90のCPUが起動すると、図3に示すように、まずS110にて、エネルギー指令値E、充電期間Tc、スイッチング周期Ts及びスイッチング回数NがROMから読み込まれると共に、バッファコンデンサC1の電圧値Vが昇圧制御回路18から取得される。
【0063】
次いで、S120では、エネルギー指令値Eが電圧値Vで割られることで、充電期間Tc内にバッファコンデンサC1から放出すべき総電荷量Qtが算出される(Qt=E/V)。
【0064】
そして、S130では、S120で算出された総電荷量Qtがスイッチング回数Nで割られることで、1回の充電スイッチSW1のオン期間において、バッファコンデンサC1から放出すべき目標電荷量Qが算出される(Q=Qt/N)。
【0065】
そして、S140では、積分リセットスイッチSW4をオンするための積分リセット信号Srが所定時間出力される。
次いで、S150では、S130で算出された目標電荷量Qを表す目標電荷量設定信号Soが、判定回路80(詳しくは、コンパレータCMP1)の非反転入力端子(+)へ出力される。
【0066】
続いて、S160では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
そして、S160にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S160の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S170へ処理が移行される。
【0067】
S170では、駆動信号Sdが入力されたか否かが判定される。
そして、S170にて、駆動信号Sdが入力されていないと判定された場合には、S170の処理が繰り返し実行され、逆に、駆動信号Sdが入力されたと判定された場合には、S180へ処理が移行される。
【0068】
S180では、充電期間Tcの計測が開始されると共に、駆動信号Sdにより特定される気筒選択スイッチSWa〜SWdのゲートに対して、その特定された気筒選択スイッチSWa〜SWdをオンするための気筒選択スイッチング信号が出力される。
【0069】
そして、続くS190では、スイッチング周期Tsの計測が開始される。
続いて、S200では、充電スイッチSW1をオンすべきタイミングであることを表すスイッチング周期信号Stが所定時間出力される。
【0070】
そして、S210では、充電スイッチSW1をオンするための充電スイッチング信号Ssが、充電スイッチSW1のゲートへ出力される。
次いで、S220では、判定信号Shの信号レベルがローレベルであるか否かが判定される。
【0071】
そして、S220にて、判定信号Shの信号レベルがローレベルではないと判定された場合には、S220の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルであると判定された場合には、S230へ処理が移行される。
【0072】
S230では、充電スイッチング信号Ssの出力が停止され、続くS240では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
そして、S250では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0073】
そして、S250にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S250の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S260へ処理が移行される。
【0074】
S260では、S190でスイッチング周期Tsの計測が開始されてからスイッチング周期Tsが経過したか否かが判定される。
そして、S260にて、スイッチング周期Tsが経過していないと判定された場合には、S260の処理が繰り返し実行され、逆に、スイッチング周期Tsが経過したと判定された場合には、S270へ処理が移行される。
【0075】
S270では、S180で充電期間Tcの計測が開始されてから充電期間Tcが経過(終了)したか否かが判定される。
そして、S270にて、充電期間Tcが終了していないと判定された場合には、S190へ処理が移行され、逆に、充電期間Tcが終了したと判定された場合には、気筒選択スイッチング信号の出力が停止され、S110へ処理が移行される。
【0076】
次に、第1実施形態の駆動装置1がピエゾアクチュエータP1〜P4を充電する際の各部の作動について、図4を用いて説明する。なお、図4は、駆動装置1において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。また、第1実施形態では、どのピエゾアクチュエータP1〜P4についても実質的に同じ作動を行うため、以下の説明では、代表してピエゾアクチュエータP1について説明する。そして、このことは、後述する実施形態についても同様である。
【0077】
図4に示すように、第1実施形態の駆動装置1では、まず時刻t1にて、駆動信号Sdがスイッチ制御部50に入力されると(S170:YES)、スイッチング周期信号St及び充電スイッチング信号Ssが出力されると共に(S200,S210)、気筒選択スイッチSWaに対して気筒選択スイッチング信号が出力される。
【0078】
すると、充電スイッチSW1がオンすることにより充電経路30が導通され、バッファコンデンサC1から充電経路30を介してピエゾアクチュエータP1にバッファコンデンサ電流が流れる。
【0079】
そして、このバッファコンデンサ電流は、インダクタL1とピエゾアクチュエータP1の容量によって決まる時定数で徐々に増加するため、積分信号Siにより表される電荷量も増加していく。
【0080】
そして、時刻t2にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Q(詳しくは、目標電荷量Qにヒステリシス分を加えた値)に達すると、判定信号Shの出力レベルがローレベルに切り替わり(S220:YES)、充電スイッチング信号Ssの出力が停止される(S230)。
【0081】
すると、充電スイッチSW1がオフすることにより充電経路30が遮断され、インダクタL1により蓄積されたエネルギーによって、寄生ダイオードD2を介してピエゾアクチュエータP1にフライホイール電流が流れる。
【0082】
そして、このフライホイール電流は、インダクタL1に蓄積されたエネルギーが放出されることで、徐々に減少していく。
また、時刻t2では、充電スイッチ制御部90が所定時間の間積分リセット信号Srを出力するので、積分リセットスイッチSW4がオンしてコンデンサC2に蓄電された電荷が放電される(すなわち、積分信号Siがリセットされる。)。
【0083】
そして、時刻t1からスイッチング周期Tsが経過した時刻t3にて、スイッチング周期信号Stが再び出力されると、時刻t1と同様の作動が行われ、時刻t4にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Qに達すると、時刻t2と同様の作動が行われる。
【0084】
そして、スイッチング周期Ts毎の周期で充電スイッチSW1がオンすると共に、積分信号Siが目標電荷量Qに達する度に充電スイッチSW1がオフする、といった作動は、時刻t1から充電期間Tcが経過した時刻t5まで繰り返される。
【0085】
なお、図4に示す一点鎖線は、ピエゾアクチュエータP1〜P4に代えて、その静電容量よりも小さい静電容量のピエゾアクチュエータを駆動対象として駆動装置1に用いた場合を表しており、図4に示す二点鎖線は、図4の一点鎖線で示した例で用いたピエゾアクチュエータの静電容量よりも、更に小さい静電容量のピエゾアクチュエータを駆動対象として駆動装置1に用いた場合を表している。
【0086】
換言すると、図4では、静電容量が大きいピエゾアクチュエータP1〜P4を駆動装置1に用いた場合を実線で示し、静電容量が中位のピエゾアクチュエータP1〜P4を用いた場合を一点鎖線で示し、静電容量が小さいピエゾアクチュエータP1〜P4を用いた場合を二点鎖線で示している。
【0087】
また、図4では、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が中位の場合、及び小さい場合の信号Ss,Sh,Srの記載を省略しているが、これら全てを記載すると、図4のタイムチャートが見づらくなるためである。
【0088】
そして、これらのことは、後述する図6,図10,図11,図13についても同様である。
因みに、静電容量が異なるピエゾアクチュエータP1〜P4を用いたとしても、充電周期信号Stの出力開始タイミングは変わらないので、静電容量が中位の場合及び小さい場合の信号Ss,Sh,Srは、充電スイッチング信号Ssの出力停止タイミングや信号Sh,Srの変化パターンが、バッファコンデンサ電流や積分信号Siの変化パターンと同様に、静電容量が大きい場合に比べて遅れる。
【0089】
以上説明したように、第1実施形態の駆動装置1では、駆動信号Sdが入力されてから入力されなくなるまでの充電期間Tcにおいて、駆動信号Sdが入力されると、一定の周期で充電スイッチSW1をオンすると共に、積分信号Siにより表される電荷量が目標電荷量Qに達する度に充電スイッチSW1をオフする。
【0090】
このため、第1実施形態の駆動装置1によれば、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、充電期間TcにおけるピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率(すなわち、一回の充電でピエゾアクチュエータP1〜P4が伸長していく経緯)を所望の伸長率に設定することができる。
【0091】
したがって、温度変化等によりピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が変化したとしても、ピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率が変化してしまうのを防止することができる。
【0092】
またさらに、駆動装置1によれば、静電容量の変化によりインジェクタの燃料噴射のタイミングがずれてしまうことを防止することができる。
また、「課題を解決するための手段」にて説明したように、バッファコンデンサC1からピエゾアクチュエータP1〜P4に流れるバッファコンデンサ電流の積分値を求めれば、単位時間当たりにピエゾアクチュエータP1〜P4に充電される充電エネルギーを導出することができることから、第1実施形態の駆動装置1では、積分信号Siが目標電荷量Qに到達したときに、充電スイッチSW1をオフするように構成されている。
【0093】
このため、単にバッファコンデンサ電流の積分値を導出するだけで充電エネルギーを推定することができるので、当該駆動装置1の構成を簡素化することができる。
また、駆動装置1によれば、バッファコンデンサC1の電圧値V及びエネルギー指令値Eに基づいて目標電荷量Qを決めているので、バッファコンデンサC1の電圧値Vが変化した場合についても、ピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率を同一にすることができる。
【0094】
なお、第1実施形態では、電源回路12が直流電源に相当し、寄生ダイオードD1が第1ダイオードに相当し、寄生ダイオードD2が第2ダイオードに相当している。また、駆動信号Sdが入力されたときが駆動指令に相当し、駆動信号Sdの入力が停止されたときが駆動停止指令に相当している。また、スイッチ制御部50が、充放電制御手段に相当し、電流検出用抵抗R1が電流検出手段に相当し、電流積分回路70が推定手段に相当し、S170〜S270の処理が充電スイッチ駆動手段に相当している。また、S120及びS130の処理が目標値設定手段に相当している。
【0095】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の駆動装置2について、図5及び図6を用いて説明する。なお、図5は、第2実施形態の駆動装置2の構成を表す構成図であり、図6は、第2実施形態の駆動装置2において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。また、図5において、第1実施形態の駆動装置1と同様の構成要素については、同じ符号を付しているため詳細な説明は省略する。また、このことは、後述する図14についても同様である。
【0096】
第2実施形態の駆動装置2は、第1実施形態の駆動装置1と比較すると、電流検出用抵抗R1が接続されている位置と、積分リセット信号Srの出力を停止するタイミングとが異なっている。
【0097】
具体的に説明すると、第1実施形態では、バッファコンデンサC1の一端とグランドラインとの間に電流検出用抵抗R1が接続されていたが、第2実施形態では、並列回路10の気筒選択スイッチSWa〜SWd側の端部とグランドラインとの間に電流検出用抵抗R1が接続されている。
【0098】
そして、このようにした場合、電流検出用抵抗R1には、バッファコンデンサ電流だけでなく、充電期間Tcにおいて充電スイッチSW1のオフ時に流れるフライホイール電流も流れてしまうため、電流積分回路70は、バッファコンデンサ電流だけでなくフライホイール電流も積分してしまうこととなる。
【0099】
そこで、第2実施形態では、フライホイール電流を積分してしまうのを防止するために、図6に示すように、積分リセット信号Srの出力停止タイミングを、スイッチング周期信号Stが次回出力されるときにしている。
【0100】
具体的には、充電スイッチ制御部90がS200の処理を終了したときに、積分リセット信号Srの出力を停止するようにしている。
以上のような第2実施形態の駆動装置2によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の駆動装置について、図7及び図8を用いて説明する。なお、図7は、第3実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理を表すフローチャートであり、図8は、第3実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【0102】
第3実施形態の駆動装置は、第1実施形態の駆動装置と比較すると、充電期間Tcにおけるスイッチング周期Ts毎の目標電荷量Qが一定ではなく、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1が、2回目以降の目標電荷量Qよりも小さい点が主に異なっている。
【0103】
すなわち、第3実施形態では、充電スイッチ制御部90のROMに目標電荷量Q1が記憶されており、充電スイッチ制御部90は、目標電荷量Q1と総電荷量Qtとに基づき、2回目以降の目標電荷量Qを算出する。
【0104】
そして、充電スイッチ制御部90は、1回目の充電スイッチSW1のオン期間に目標電荷量Q1を利用して充電スイッチSW1のオフ制御を行い、2回目以降は、その目標電荷量Q1よりも大きい目標電荷量Qを利用して充電スイッチSW1のオフ制御を行う。
【0105】
以下、第3実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理について、図7を用いて説明する。
第3実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が図7の処理を開始すると、まずS310にて、エネルギー指令値E、充電期間Tc、スイッチング周期Ts及びスイッチング回数NがROMから読み込まれると共に、バッファコンデンサC1の電圧値Vが昇圧制御回路18から取得される。
【0106】
次いで、S320では、エネルギー指令値Eが電圧値Vで割られることで総電荷量Qtが算出される(Qt=E/V)。
そして、S330では、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1がROMから読み込まれる。
【0107】
続いて、S340では、次式(1)に示すように、総電荷量Qtから目標電荷量Q1が減じられた値(Qt−Q1)が、スイッチング回数Nから「1」を減じた値(N−1)で割られることで、2回目以降の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Qが算出される。
【0108】
【数1】
そして、S350では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
【0109】
次いで、S360では、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1を表す目標電荷量設定信号Soが出力される。
続いて、S370では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0110】
そして、S370にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S370の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S380へ処理が移行される。
【0111】
S380では、駆動信号Sdが入力されたか否かが判定される。
そして、S380にて、駆動信号Sdが入力されていないと判定された場合には、S380の処理が繰り返し実行され、逆に、駆動信号Sdが入力されたと判定された場合には、S390へ処理が移行される。
【0112】
S390では、充電期間Tcの計測が開始されると共に、気筒選択スイッチング信号が出力され、続くS400では、スイッチング周期Tsの計測が開始される。
続いて、S410では、スイッチング周期信号Stが所定時間出力され、続くS420では、充電スイッチング信号Ssが出力される。
【0113】
次いで、S430では、判定信号Shの信号レベルがローレベルであるか否かが判定される。
そして、S430にて、判定信号Shの信号レベルがローレベルではないと判定された場合には、S430の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルであると判定された場合には、S440へ処理が移行される。
【0114】
S440では、充電スイッチング信号Ssの出力が停止され、続くS450では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
そして、S460では、2回目以降の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Qを表す目標電荷量設定信号Soが出力される。
【0115】
そして、S470では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
そして、S470にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S470の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S480へ処理が移行される。
【0116】
S480では、S400でスイッチング周期Tsの計測が開始されてからスイッチング周期Tsが経過したか否かが判定される。
そして、S480にて、スイッチング周期Tsが経過していないと判定された場合には、S480の処理が繰り返し実行され、逆に、スイッチング周期Tsが経過したと判定された場合には、S490へ処理が移行される。
【0117】
S490では、S390で充電期間Tcの計測が開始されてから充電期間Tcが経過(終了)したか否かが判定される。
そして、S490にて、充電期間Tcが終了していないと判定された場合には、S400へ処理が移行され、逆に、充電期間Tcが終了したと判定された場合には、気筒選択スイッチング信号の出力が停止され、S310へ処理が移行される。
【0118】
次に、第3実施形態の駆動装置がピエゾアクチュエータP1〜P4を充電する際の各部の作動について、図8を用いて説明する。
第3実施形態の駆動装置においては、まず、判定回路80の非反転入力端子(+)に目標電荷量Q1が入力され(S360)、図8に示すように、時刻t6にて、駆動信号Sdがスイッチ制御部50に入力されると(S380:YES)、スイッチング周期信号St及び充電スイッチング信号Ssが出力されると共に(S410,S420)、気筒選択スイッチSWaに対して気筒選択スイッチング信号が出力される。
【0119】
すると、上述したように、バッファコンデンサC1から充電経路30を介してピエゾアクチュエータP1にバッファコンデンサ電流が流れる。
そして、時刻t7にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Q1に達すると、判定信号Shの出力レベルがローレベルに切り替わり(S430:YES)、充電スイッチング信号Ssの出力が停止される(S440)。
【0120】
すると、上述したように、寄生ダイオードD2を介してピエゾアクチュエータP1にフライホイール電流が流れる。
また、時刻t7では、充電スイッチ制御部90が所定時間の間積分リセット信号Srを出力すると共に、目標電荷量Q1よりも大きい目標電荷量Qが、判定回路80の非反転入力端子(+)に入力される(S460)。
【0121】
そして、時刻t8にて、スイッチング周期信号Stが再び入力されると、時刻t6と同じ作動が行われ、時刻t9にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Qに達すると、時刻t7と同様の作動が行われる。
【0122】
その後、スイッチング周期Ts毎に充電スイッチSW1がオンすると共に、積分信号Siが目標電荷量Qに達する度に充電スイッチSW1がオフする、といった作動が、時刻t10まで繰り返される。
【0123】
以上のような第3実施形態の駆動装置によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0124】
さらに、第3実施形態の駆動装置では、充電期間Tcにおけるスイッチング周期Ts毎の目標電荷量を、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1が、2回目以降の目標電荷量Qよりも小さくなるように設定しているので、スイッチング周期Ts毎の目標電荷量Qを同じ値にした場合(図8の一点鎖線)に比べて、充電開始時(1回目の充電スイッチSW1のオン期間)にピエゾアクチュエータP1〜P4に蓄積される充電エネルギーが少なくなる。
【0125】
このため、充電開始時にピエゾアクチュエータP1〜P4にかかる荷重(負荷)を低減することができるので、ピエゾアクチュエータの寿命や信頼性を向上させることができると共に、作動音が発生してしまうのを抑制することができる。
【0126】
なお、第3実施形態の駆動装置では、スイッチング周期Tsが、充電スイッチSW1がオンされる度に短くなるように設定されているが、これに限らず、周期は第1,第2実施形態と同様に一定となるように設定されていてもよい。
【0127】
また、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1は、2回目以降の目標電荷量Qよりも小さい値であれば何でもよい。
また、第3実施形態では、1回目の充電スイッチSW1のオン期間における目標電荷量Q1がROMに記憶されているものとして説明したが、これに限らず、目標電荷量Q1は使用者等により設定変更可能にされていてもよい。
【0128】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の駆動装置について、図9及び図10を用いて説明する。なお、図9は、第4実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理を表すフローチャートであり、図10は、第4実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【0129】
第4実施形態の駆動装置は、第1実施形態の駆動装置1と比較すると、スイッチング周期Tsが、一定ではなく、充電スイッチSW1が1回オンする毎に短くなるように設定されている点が異なっている。
【0130】
具体的に説明すると、第4実施形態のスイッチング周期Ts(n)は、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が変化したとしても、スイッチング周期信号Stの出力時(充電スイッチSW1のオン時)には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないようにするために、予め実験等により測定された値に基づき設定されている。
【0131】
なお、第4実施形態では、静電容量が大きいピエゾアクチュエータP1〜P4が当該駆動装置に用いられていた場合において、充電時にフライホイール電流が放電経路40に流れなくなる周期を実験等により測定し、その測定結果に基づいてスイッチング周期Ts(n)を設定している。
【0132】
以下、第4実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理について、図9を用いて説明する。
第4実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が図9の処理を開始すると、まずS510にて、エネルギー指令値E、充電期間Tc、スイッチング周期Ts(n)及びスイッチング回数NがROMから読み込まれると共に、バッファコンデンサC1の電圧値Vが昇圧制御回路18から取得される。
【0133】
次いで、S520では、エネルギー指令値Eが電圧値Vで割られることで総電荷量Qtが算出される(Qt=E/V)。
そして、S530では、S120で算出された総電荷量Qtがスイッチング回数Nで割られることで、目標電荷量Qが算出される(Q=Qt/N)。
【0134】
続いて、S540では、nに「1」が代入される。
そして、S550では、積分リセット信号Srが所定時間出力され、続くS560では、目標電荷量Qを表す目標電荷量設定信号Soが出力される。
【0135】
続いて、S570では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
そして、S570にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S570の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S580へ処理が移行される。
【0136】
S580では、駆動信号Sdが入力されたか否かが判定される。
そして、S580にて、駆動信号Sdが入力されていないと判定された場合には、S580の処理が繰り返し実行され、逆に、駆動信号Sdが入力されたと判定された場合には、S590へ処理が移行される。
【0137】
S590では、充電期間Tcの計測が開始されると共に、気筒選択スイッチング信号が出力される。
そして、S600では、スイッチング周期Ts(n)の計測が開始される。
【0138】
続いて、S610では、スイッチング周期信号Stが所定時間出力され、続くS620では、充電スイッチング信号Ssが出力される。
次いで、S630では、判定信号Shの信号レベルがローレベルであるか否かが判定される。
【0139】
そして、S630にて、判定信号Shの信号レベルがローレベルではないと判定された場合には、S630の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルであると判定された場合には、S640へ処理が移行される。
【0140】
S640では、充電スイッチング信号Ssの出力が停止され、続くS650では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
そして、S660では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0141】
そして、S660にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S660の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S670へ処理が移行される。
【0142】
S670では、S600でスイッチング周期Ts(n)の計測が開始されてからスイッチング周期Ts(n)が経過したか否かが判定される。
そして、S670にて、スイッチング周期Ts(n)が経過していないと判定された場合には、S670の処理が繰り返し実行され、逆に、スイッチング周期Ts(n)が経過したと判定された場合には、S680へ処理が移行される。
【0143】
S680では、nに「1」が加えられる。
そして、S690では、S590で充電期間Tcの計測が開始されてから充電期間Tcが経過(終了)したか否かが判定される。
【0144】
そして、S590にて、充電期間Tcが終了していないと判定された場合には、S600へ処理が移行され、逆に、充電期間Tcが終了したと判定された場合には、気筒選択スイッチング信号の出力が停止され、S510へ処理が移行される。
【0145】
以上のような第4実施形態の駆動装置によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
ので、第1実施形態に比べて、静電容量の変化によりピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率が変わってしまうのを効率よく抑制することができる。
【0146】
ところで、第1実施形態では、充電時に、フライホイール電流が流れなくなる前に充電スイッチSW1をオンしていたため、インダクタL1に蓄えられたエネルギーが全て放出されずに次回に引き継がれてしまう。
【0147】
このため、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が変化した場合には、その引き継がれるエネルギーが変わってしまうので、充電スイッチSW1のオフ期間毎の充電量が変わってきてしまい、各静電容量毎の伸長率に若干のずれが生じてしまう。
【0148】
これに対して、第4実施形態の駆動装置では、図10のタイムチャートに示すように、静電容量が変化したとしても、スイッチング周期信号Stの出力時には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないように、スイッチング周期Ts(n)が設定されている。
【0149】
このため、充電スイッチSW1が次回オンする際には、インダクタL1に蓄えられたエネルギーが全て放出されているので、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量の変化により充電スイッチSW1のオフ期間毎の充電量が変わってしまうのを抑制することができる。
【0150】
したがって、第4実施形態によれば、第1実施形態に比べて、静電容量の変化によりピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率が変わってしまうのを効率よく抑制することができる。
【0151】
また、第4実施形態によれば、スイッチング周期信号Stの出力時には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないように、スイッチング周期Ts(n)が設定されているので、充電スイッチSW1のオン時に放電スイッチSW2の寄生ダイオードD2に対して逆方向の電流(所謂、貫通電流)が流れてしまう、ということを防止することができる。よって、ノイズが発生してしまうことや損失がでてしまうことを抑制することができる。
【0152】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の駆動装置について、図11を用いて説明する。なお、図11は、第5実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【0153】
第5実施形態の駆動装置は、第4実施形態の駆動装置と比較すると、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が小さい場合に、充電時にフライホイール電流が放電経路40に流れなくなる周期を実験等により測定し、その測定結果に基づいてスイッチング周期Ts(n)を設定している。
【0154】
つまり、第4実施形態では、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が大きい場合を基準としてスイッチング周期Ts(n)を設定するようにしていたが、第5実施形態では、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が小さい場合を基準としてスイッチング周期Ts(n)を設定するようにしている。
【0155】
このため、第5実施形態の駆動装置によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0156】
また、第5実施形態では、図11に示すように、少なくともピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が小さい場合には、充電スイッチSW1のオン時にフライホイール電流が流れてしまわないようにしているので、第1実施形態に比べて、静電容量の変化によりピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率が変わってしまうのを効率よく抑制することができる。
【0157】
またさらに、第5実施形態によれば、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量が小さいときを基準としてスイッチング周期Tsを設定しているので、第4実施形態に比べて、スイッチング周期Tsを短く設定することができる。
【0158】
したがって、第4実施形態に比べてスイッチング回数Nを増やすことができるので、第4実施形態よりも滑らかに伸長するようにピエゾアクチュエータP1〜P4を充電させることができる。
【0159】
[第6実施形態]
次に、第6実施形態の駆動装置について、図12を用いて説明する。なお、図12は、第6実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理を表すフローチャートである。
【0160】
第6実施形態の駆動装置は、第1実施形態の駆動装置1と比較すると、目標電荷量Qを一定とせずに、ピエゾアクチュエータP1〜P4に印加される単位時間当たりの電圧の変位量Gが、各スイッチング周期Ts(n)において同じになるように、目標電荷量Qnを設定する点が異なっている。
【0161】
具体的に説明すると、第6実施形態の駆動装置では、電圧の変位量Gが、各スイッチング周期Ts(n)において同じになるように、次式(2)を用いることで目標電荷量Qnを算出するようにされている。
【0162】
【数2】
以下に、上式(2)を用いて目標電荷量Qnを算出することができる理由について説明する。
【0163】
まず、充電期間Tc内にバッファコンデンサC1から放出すべき総電荷量Qtは、次式(3)に示すように、エネルギー指令値Eを電圧値Vで割った値となる。
【0164】
【数3】
一方、電圧の変位量Gは、充電終了時にピエゾアクチュエータP1〜P4に印加されている電圧値を「Va」とすると、次式(4)に示すように、電圧値Vaを充電期間Tcで割った値となる。
【0165】
【数4】
ここで、充電期間Tcにおいて、充電スイッチSW1が1回目にオフされたときにピエゾアクチュエータP1〜P4に印加されている電圧値を「V1」とすると、充電スイッチSW1が1回目にオフされたときの電圧の変位量G1は、次式(5)に示すように、電圧値V1を、スイッチング周期Ts(1)(すなわち、充電スイッチSW1が1回目にオンされる際の周期Ts(1))で割った値となる。
【0166】
【数5】
一方、充電期間Tcの中でピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギー(すなわち、エネルギー指令値E)は、ピエゾアクチュエータP1〜P4の静電容量を「C」とすると、「E={C×(Va)2}/2」と表すことができるので、この式を変形することにより、電圧値Vaは次式(6)と表すことができる。
【0167】
【数6】
また、充電期間Tcの中でピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギー(すなわち、エネルギー指令値E)は、上式(3)を変形することにより「E=QtV」と表すこともできるので、この式の右辺を、上式(6)の「E」に代入することで次式(7)を導出することができる。
【0168】
【数7】
したがって、上式(4)の「Va」に上式(7)の右辺を代入すれば、次式(8)を導出することができる。
【0169】
【数8】
同様に、充電スイッチSW1の1回目のオフまでに、ピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギーE1は、「E1={C×(V1)2}/2」と表すことができるので、電圧値V1は、この式を変形することにより次式(9)と表すことができる。
【0170】
【数9】
したがって、電圧の変位量G1は、上式(5)の「V1」に上式(9)の右辺を代入することで、次式(10)と表すことができる。
【0171】
【数10】
ところで、第6実施形態では、電圧の変位量Gを各スイッチング周期Ts(n)において同じになるようにするようにしていることため、電圧の変位量Gと電圧の変位量G1とを等しくすればよい(G=G1)。
【0172】
このため、「G=G1」に、上式(8)の右辺と上式(10)の右辺とを代入して目標電荷量Q1を導出すれば、目標電荷量Q1は次式(11)と表すことができる。
【0173】
【数11】
また、以上のことから、同様にして充電スイッチSW1を2回目にオンする際の目標電荷量Q2を導出することができる。
【0174】
具体的に説明すると、まず電圧の変位量G2は、「G2=V2/(Ts(1)+Ts(2))」と表すことができる。
次に、充電スイッチSW1が2回目にオフされたときまでに、ピエゾアクチュエータP1〜P4に充電すべき充電エネルギーE2は、「E2={C(V2)2}/2=(Q1+Q2)V」と表すことができるので、充電スイッチSW1が2回目にオフされたときにピエゾアクチュエータP1〜P4に印加されている電圧値V2は、次式(12)と表すことができる。
【0175】
【数12】
このため、電圧の変位量G2は、「G2=V2/(Ts(1)+Ts(2))」の「V2」に、上式(12)の右辺を代入することで、次式(13)と表すことができる。
【0176】
【数13】
そして、電圧の変位量G2も、電圧の変位量Gと等しくすればよいことから、目標電荷量Q2は、上式(8)と上式(13)とに基づいて、次式(14)と表すことができる。
【0177】
【数14】
また、同様にして、充電スイッチSW1を3回目にオンする際の目標電荷量Q3は、次式(15)と表すことができる。
【0178】
【数15】
したがって、上式(11)と上式(14)と上式(15)とから、充電スイッチSW1をn回目にオンする際の目標電荷量Qnは、上式(2)と表すことができる。
【0179】
以下、第6実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が実行する処理について、図12を用いて説明する。
第6実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部90が図12の処理を開始すると、まずS710にて、エネルギー指令値E、充電期間Tc、スイッチング周期Ts(n)及びスイッチング回数NがROMから読み込まれると共に、バッファコンデンサC1の電圧値Vが昇圧制御回路18から取得される。
【0180】
次いで、S720では、エネルギー指令値Eが電圧値Vで割られることで総電荷量Qtが算出される(Qt=E/V)。
そして、S730では、nに「1」が代入され、S740では、上式(2)に基づいて、目標電荷量Qn(すなわち、最初の目標電荷量Q1)が算出される。
【0181】
次に、S750では、積分リセット信号Srが所定時間出力され、続くS760では、目標電荷量Q1を表す目標電荷量設定信号Soが出力される。
続いて、S770では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0182】
そして、S770にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S770の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S780へ処理が移行される。
【0183】
S780では、駆動信号Sdが入力されたか否かが判定される。
そして、S780にて、駆動信号Sdが入力されていないと判定された場合には、S780の処理が繰り返し実行され、逆に、駆動信号Sdが入力されたと判定された場合には、S790へ処理が移行される。
【0184】
S790では、充電期間Tcの計測が開始されると共に、気筒選択スイッチング信号が出力される。
そして、続くS800では、スイッチング周期Ts(n)の計測が開始され、続くS810では、スイッチング周期信号Stが所定時間出力される。
【0185】
そして、S820では、充電スイッチング信号Ssが出力され、続くS830では、判定信号Shの信号レベルがローレベルであるか否かが判定される。
そして、S830にて、判定信号Shの信号レベルがローレベルではないと判定された場合には、S830の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがローレベルであると判定された場合には、S840へ処理が移行される。
【0186】
S840では、充電スイッチング信号Ssの出力が停止され、続くS850では、積分リセット信号Srが所定時間出力される。
そして、860では、nの値がスイッチング回数N以上であるか否かが判定される。
【0187】
そして、S860にて、nの値がスイッチング回数N以上であると判定された場合には、S710へ処理が移行され、逆に、nの値がスイッチング回数N以上ではないと判定された場合には、S870へ処理が移行される。
【0188】
S870では、nに「1」が加えられ、続くS880では、目標電荷量Qnが上式(2)に基づいて算出される。
そして、S890では、S880で算出された目標電荷量Qnを表す目標電荷量設定信号Soが出力され、続くS900では、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであるか否かが判定される。
【0189】
そして、S900にて、判定信号Shの信号レベルがハイレベルではないと判定された場合には、S900の処理が繰り返し実行され、逆に、判定信号Shの信号レベルがハイレベルであると判定された場合には、S910へ処理が移行される。
【0190】
S910では、S800で計測が開始されたスイッチング周期Ts(n−1)が経過したか否かが判定される。
そして、S910にて、スイッチング周期Ts(n−1)が経過していないと判定された場合には、S910の処理が繰り返し実行され、逆に、スイッチング周期Ts(n−1)が経過したと判定された場合には、S920へ処理が移行される。
【0191】
S920では、S790で計測が開始された充電期間Tcが経過(終了)したか否かが判定される。
そして、S920にて、充電期間Tcが終了していないと判定された場合には、S800へ処理が移行され、逆に、充電期間Tcが終了したと判定された場合には、気筒選択スイッチング信号の出力が停止され、S710へ処理が移行される。
【0192】
次に、第6実施形態の駆動装置がピエゾアクチュエータP1〜P4を充電する際の各部の作動について、図13を用いて説明する。
第6実施形態の駆動装置においては、まず、判定回路80の非反転入力端子(+)に目標電荷量Q1が入力され(S760)、図13に示すように、時刻t11にて、駆動信号Sdがスイッチ制御部50に入力されると(S780:YES)、スイッチング周期信号St及び充電スイッチング信号Ssが出力されると共に(S810,S820)、気筒選択スイッチSWaに対して気筒選択スイッチング信号が出力される。
【0193】
すると、上述したように、バッファコンデンサC1から充電経路30を介してピエゾアクチュエータP1にバッファコンデンサ電流が流れる。
そして、時刻t12にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Q1に達すると、判定信号Shの出力レベルがローレベルに切り替わり(S830:YES)、充電スイッチング信号Ssの出力が停止される(S840)。
【0194】
すると、上述したように、寄生ダイオードD2を介してピエゾアクチュエータP1にフライホイール電流が流れる。
また、時刻t12では、充電スイッチ制御部90が所定時間の間積分リセット信号Srを出力すると共に、目標電荷量Q2が算出されて判定回路80の非反転入力端子(+)に入力される(S880,S890)。
【0195】
そして、時刻t13にて、スイッチング周期信号Stが再び入力されると、時刻t11と同じ作動が行われ、時刻t14にて、積分信号Siにより表される電荷量が、目標電荷量Q2に達すると、時刻t12と同様の作動が行われる。
【0196】
その後、スイッチング周期Ts(n)毎に充電スイッチSW1がオンすると共に、積分信号Siが目標電荷量Qnに達する度に充電スイッチSW1がオフする、といった作動が、時刻t15まで繰り返される。
【0197】
以上のような第6実施形態の駆動装置によっても、温度の変化に関係なく、充電期間Tcに充電スイッチSW1をオンする際のスイッチング周期Tsを固定しつつ、1回の充電スイッチSW1のオン時における充電エネルギーも固定することができるので、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0198】
また、第6実施形態によれば、充電スイッチSW1のオン期間毎の電圧の変位量Gnを同じにしているので、充電スイッチSW1のオン期間毎のピエゾアクチュエータP1〜P4の伸長率を同じにすることができる。
【0199】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0200】
上記実施形態では、昇圧制御回路18が昇圧スイッチSW3をオン/オフするものとして説明したが、これに限らず、スイッチ制御部90が、昇圧用スイッチSW3をオン/オフするようにしてもよい。
【0201】
また、第4実施形態及び第5実施形態では、スイッチング周期信号Stの出力時には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないように、スイッチング周期Ts(n)が設定されていたが、例えば駆動装置を図14に示すように構成することで、上述したようなスイッチング周期Ts(n)を設定することができる。
【0202】
以下、変形例の駆動装置について図14を用いて説明する。
図14に示すように、変形例の駆動装置は、図2の駆動装置1に対して、充電時にピエゾアクチュエータP1〜P4に流れる充電電流を検出するための電流検出用抵抗R10と、充電電流を検出するための電流検出回路100と、電流検出回路100により検出された充電電流が流れなくなったか否かを判定する判定回路110と、を備えている。
【0203】
電流検出用抵抗R10は、並列回路10の気筒選択スイッチSWa〜SWd側の端部とグランドラインとの間に接続されている。
電流検出回路100は、抵抗R11,R12,R13,R14及びオペアンプOP3からなり、オペアンプOP3の非反転入力端子(+)には、電流検出用抵抗R10と並列回路10との接続点が抵抗R11を介して接続され、オペアンプOP3の反転入力端子(−)には、電流検出用抵抗R10とグランドラインとの接続点が抵抗R12を介して接続されている。
【0204】
このため、オペアンプOP3の出力端子からは、電流検出用抵抗R10の両端間の電位差を所定の増幅率にて増幅した電圧値で表される電流検出信号Sc2が出力される。
なお、オペアンプOP3の非反転入力端子(+)には、リファレンス電圧Vrefが、抵抗R14を介して入力されている。
【0205】
判定回路110は、抵抗R15,R16,R17と、コンパレータCMP2とからなり、コンパレータCMP2の反転入力端子(−)には、電流検出信号Sc2が抵抗R15を介して入力され、コンパレータCMP2の非反転入力端子(+)には、充電スイッチ制御部90から出力される電流ゼロ閾値信号Szが抵抗R16を介して入力される。なお、電流ゼロ閾値信号Szとは、判定回路110が、充電電流(詳しくは、フライホイール電流)がピエゾアクチュエータP1〜P4に流れなくなったか否かを判定するための閾値として用いるために、非反転入力端子(+)に入力される信号である。
【0206】
また、判定回路110は、コンパレータCMP2の出力信号に応じて、電流ゼロ閾値信号Szにより表される閾値を大小の2段階に切り替える、ヒステリシス付きのコンパレータCMP2(所謂、シュミットトリガ)として構成されている。
【0207】
以上説明したように、変形例の駆動装置では、充電時に判定回路110からの出力信号の信号レベルがローレベルからハイレベルに切り替わったときに、充電電流(詳しくは、フライホイール電流)がピエゾアクチュエータP1〜P4に流れなくなったこととなる。
【0208】
したがって、変形例の駆動装置によれば、フライホイール電流が流れなくなるときを知ることができるので、スイッチング周期信号Stの出力時には既にフライホイール電流が放電経路40に流れていないように、スイッチング周期Ts(n)を設定することができる。
【0209】
なお、上記変形例におけるスイッチング周期Ts(n)の設定は、駆動装置を搭載した車両の出荷時に行うようにしてもよいし、定期的に行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】第1実施形態のピエゾアクチュエータの駆動装置の構成を表す構成図である。
【図2】スイッチ制御部の中で充電スイッチを制御する部分を説明する説明図である。
【図3】第1実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図5】第2実施形態の駆動装置を表す構成図である。
【図6】第2実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図7】第3実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【図8】第3実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図9】第4実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【図10】第4実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図11】第5実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図12】第6実施形態の駆動装置の充電スイッチ制御部のCPUが実行する処理を表すフローチャートである。
【図13】第6実施形態の駆動装置において、充電時の各部の作動を説明するタイムチャートである。
【図14】第4及び第5実施形態の変形例の駆動装置を表す構成図である。
【符号の説明】
【0211】
1,2…駆動装置、10…並列回路、12…電源回路、14…バッテリ、16…昇圧回路、18…昇圧制御回路、20…直列回路、30…充電経路、40…放電経路、50…スイッチ制御部、60…電流検出回路、70…電流積分回路、80…判定回路、90…充電スイッチ制御部、C1…バッファコンデンサ、D1,D2…寄生ダイオード、L1…インダクタ、P1〜P4…ピエゾアクチュエータ、R1,R10…電流検出用抵抗、SW1…充電スイッチ、SW2…放電スイッチ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピエゾアクチュエータに直列に接続されるインダクタと、
該インダクタと前記ピエゾアクチュエータとの直列回路に対して、充電スイッチを介して直流電源から電源供給を行うための充電経路と、
前記直列回路に並列に接続され、放電スイッチを介して前記ピエゾアクチュエータに充電された電荷を放電させるための放電経路と、
前記充電スイッチに対して、カソードが前記直流電源の正極側となるよう並列に接続された第1ダイオードと、
前記放電スイッチに対して、カソードが前記直流電源の正極側となるよう並列に接続された第2ダイオードと、
外部から駆動指令が入力されると、前記放電スイッチをオフした状態で前記充電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、前記ピエゾアクチュエータを充電させて伸長させ、外部から駆動停止指令が入力されると、前記充電スイッチをオフした状態で前記放電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、前記ピエゾアクチュエータを放電させて収縮させる充放電制御手段と、
を備えたピエゾアクチュエータの駆動装置であって、
前記充放電制御手段は、
当該装置による1回の充電期間の中で前記ピエゾアクチュエータに充電すべき充電エネルギー、及び、前記直流電源の電源電圧に基づいて、前記充電スイッチのオン期間における前記ピエゾアクチュエータの充電エネルギーの目標値を設定する目標値設定手段と、
前記充電スイッチのオン時に前記直流電源から前記直列回路に供給される充電電流を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段により検出される充電電流を積分することにより、前記充電スイッチのオン期間における前記ピエゾアクチュエータの充電エネルギーを推定する推定手段と、
前記駆動指令が入力されると、予め設定された所定の周期で前記充電スイッチをオンすると共に、前記推定手段により推定される推定値が、前記目標値設定手段により設定された目標値に到達する度に前記充電スイッチをオフする充電スイッチ駆動手段と、
を備えたことを特徴とするピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記電流検出手段により検出される充電電流の積分値を、前記推定値として導出し、
前記充電スイッチ駆動手段は、前記推定手段により導出される積分値が、前記目標値に到達したときに、前記充電スイッチをオフすることを特徴とする請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項3】
前記目標値設定手段は、前記充電スイッチ駆動手段による1回の充電期間の中で、1回目に前記充電スイッチがオンされる際の目標値が、2回目以降に前記充電スイッチがオンされる際の目標値よりも低くなるように、前記目標値を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項4】
前記目標値設定手段は、前記充電スイッチの各オン期間における目標値が同じとなるように、前記目標値を設定し、
前記充電スイッチ駆動手段が前記充電スイッチをオンする際の周期は、前記充電駆動手段による1回の充電期間の中で、前記充電スイッチが1回又は複数回オンする毎に短くなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項5】
前記目標値設定手段は、前記ピエゾアクチュエータに印加される単位時間当たりの電圧の変位量が、前記充電スイッチ駆動手段が前記充電スイッチをオンする際の各周期において同じになるように、前記目標値を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項1】
ピエゾアクチュエータに直列に接続されるインダクタと、
該インダクタと前記ピエゾアクチュエータとの直列回路に対して、充電スイッチを介して直流電源から電源供給を行うための充電経路と、
前記直列回路に並列に接続され、放電スイッチを介して前記ピエゾアクチュエータに充電された電荷を放電させるための放電経路と、
前記充電スイッチに対して、カソードが前記直流電源の正極側となるよう並列に接続された第1ダイオードと、
前記放電スイッチに対して、カソードが前記直流電源の正極側となるよう並列に接続された第2ダイオードと、
外部から駆動指令が入力されると、前記放電スイッチをオフした状態で前記充電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、前記ピエゾアクチュエータを充電させて伸長させ、外部から駆動停止指令が入力されると、前記充電スイッチをオフした状態で前記放電スイッチのオン/オフを繰り返すことにより、前記ピエゾアクチュエータを放電させて収縮させる充放電制御手段と、
を備えたピエゾアクチュエータの駆動装置であって、
前記充放電制御手段は、
当該装置による1回の充電期間の中で前記ピエゾアクチュエータに充電すべき充電エネルギー、及び、前記直流電源の電源電圧に基づいて、前記充電スイッチのオン期間における前記ピエゾアクチュエータの充電エネルギーの目標値を設定する目標値設定手段と、
前記充電スイッチのオン時に前記直流電源から前記直列回路に供給される充電電流を検出する電流検出手段と、
該電流検出手段により検出される充電電流を積分することにより、前記充電スイッチのオン期間における前記ピエゾアクチュエータの充電エネルギーを推定する推定手段と、
前記駆動指令が入力されると、予め設定された所定の周期で前記充電スイッチをオンすると共に、前記推定手段により推定される推定値が、前記目標値設定手段により設定された目標値に到達する度に前記充電スイッチをオフする充電スイッチ駆動手段と、
を備えたことを特徴とするピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記電流検出手段により検出される充電電流の積分値を、前記推定値として導出し、
前記充電スイッチ駆動手段は、前記推定手段により導出される積分値が、前記目標値に到達したときに、前記充電スイッチをオフすることを特徴とする請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項3】
前記目標値設定手段は、前記充電スイッチ駆動手段による1回の充電期間の中で、1回目に前記充電スイッチがオンされる際の目標値が、2回目以降に前記充電スイッチがオンされる際の目標値よりも低くなるように、前記目標値を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項4】
前記目標値設定手段は、前記充電スイッチの各オン期間における目標値が同じとなるように、前記目標値を設定し、
前記充電スイッチ駆動手段が前記充電スイッチをオンする際の周期は、前記充電駆動手段による1回の充電期間の中で、前記充電スイッチが1回又は複数回オンする毎に短くなるように設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置。
【請求項5】
前記目標値設定手段は、前記ピエゾアクチュエータに印加される単位時間当たりの電圧の変位量が、前記充電スイッチ駆動手段が前記充電スイッチをオンする際の各周期において同じになるように、前記目標値を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピエゾアクチュエータの駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−5649(P2008−5649A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173883(P2006−173883)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
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