説明

ピザ焼き器

【課題】調理待ち時間が非常に短いピザ焼き器を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
(a) ピザ焼き用空間(2)を有し、開口部(3)に開閉扉(4)が設けられているケーシング(5)と、
(b) ピザ焼き用空間(2)内に収納され、開口部(3)よりスライドにて引き出し入れ可能に配設され、高熱伝導性金属薄板上にセラミックスコーティングがなされたピザ焼き用加熱棚(6)と、
(c) ピザ焼き用加熱棚(6)の上下に配設された1乃至複数本の棒状カーボンヒータ(7)(8)と、
(d) 少なくともピザ焼き用加熱棚(6)上方の棒状カーボンヒータ(7)の上に配設され、棒状カーボンヒータの長手方向に沿って凹湾曲し、反射放射熱をピザ焼き用加熱棚側中央部分に集光する反射板(9)とで構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱ロスがなく極めて短時間でピザ、特にチルド状態のピザを表面に焦げ目の付く状態で焼き上げることができ、ファーストフード形式のピザ店舗での利用に最適なピザ焼き器に関する。
【背景技術】
【0002】
ピザは古来にレンガが積み上げられ、使用中常に火が焚かれているようなピザ窯で製造されてきたが、手軽さ簡便さを求めて最近では家庭や本格志向ではない簡単なピザ製品を提供する店舗では電子レンジやオーブンなどが多用されている。電子レンジではすでに製造されたピザを暖め直すだけであるから家庭で用いられているものの、かなり前に焼きあげられ、冷たくなったピザの水分を加熱するだけであるから現実的には味そのもの、本物志向する最近の傾向、生地から焼く場合には表面に焦げ目がつかないことやチーズが分離して脂が流れ出す点から家庭ではともかく、実際のピザ販売店では採用されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、ファーストフード店のような店舗で使用されている従来のオーブン形式のピザ窯ではニクロム線ヒータを利用したシーズヒータのようなものを使用していたため、水分に対して熱量の吸収が遅くピザの調理に時間が掛り客を待たせることになる。待ち時間が勝負のファーストフード店のような店舗ではさらなる短時間の調理、最近では少なくとも客に届くまでの時間が2分以内で客に与えられるようにすることが要求されており、これに対応できるようなピザ窯が要求されていた。
【0004】
このような要求に応えるものとして、おいしいピザパイを短時間で解凍し、これを焼き上げるピザ焼き器(特開平10−52372号記載)が提案された。このものは、誘導加熱で熱板を加熱し、その上部に設けた上部ケースに輻射発熱体を設け、冷凍ピザパイを熱板上で短時間に解凍し、上部よりの輻射加熱でチーズ等のトッピングを溶かし焼き上げるようにしたものである。しかしながら、このものは誘導加熱で熱板(鉄板)を加熱する形式のため、ある程度の厚みを必要とする。従って、加熱に多少の時間が掛かり、急速調理という要求には応えられていなかったし、その分、熱ロスを生じていた。
【特許文献1】特開平10−52372号 本発明は、熱ロスがなく極めて短時間でピザ、特にチルド状態のピザを表面に焦げ目の付く状態で焼き上げることができるようなピザ焼き器を開発することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
『請求項1』のピザ焼き器(1)は、
(a) ピザ焼き用空間(2)を有し、開口部(3)に開閉扉(4)が設けられているケーシング(5)と、
(b) ピザ焼き用空間(2)内に収納され、開口部(3)よりスライドにて引き出し入れ可能に配設され、高熱伝導性金属薄板(6a)上にセラミックスコーティング層(6b)が形成されたピザ焼き用加熱棚(6)と、
(c) ピザ焼き用加熱棚(6)の上下に配設された1乃至複数本の棒状カーボンヒータ(7)(8)と、
(d) 少なくともピザ焼き用加熱棚(6)上方の棒状カーボンヒータ(7)の上に配設され、ピザ焼き用加熱棚(6)に向かって凹湾曲し、反射放射熱をピザ焼き用加熱棚側中央部分に集光する反射板(9)とで構成されたことを特徴とする。
【0006】
『請求項2』は「カーボンヒータ(8)」に関し、「請求項1に記載のカーボンヒータ(7)(8)は石英ガラス管内に炭素繊維帯条(10b)が収納されている」ことを特徴とする。
【0007】
『請求項3』は請求項1、2に記載のピザ焼き器(1)の改良に関し、「ピザ焼き用加熱棚(6)上にピザ焼き用加熱棚(6)のピザ(P)の外周部分、即ち、トッピングが乗られていないパイ部分を被覆するリングカバー(11)が更に設けられている」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のピザ焼き器(1)によれば、加熱源として内部に「カーボンヒータ(7)(8)」を使用している点、特に、炭素繊維帯条(10b)が石英ガラス管(10a)内部に配設された「カーボンヒータ(7)(8)」を使用しているところに特徴がある。「カーボンヒータ(7)(8)」、特に「繊維帯条(10b)」のカーボンヒータ(7)(8)に通電すると細い繊維帯条(10b)を構成する極く細い「炭素繊維」が瞬時に通電電力に応じた加熱温度に達し、被加熱物であるピザ(P)の温度やピザ焼き用加熱棚(6)の温度を所定温度迄急速に高める。即ち、上部カーボンヒータ(7)から出力された熱の多くは従来の装置と比較しての被加熱物であるピザ(P)の加熱に消費され、しかも発生する熱線は水分に対して良く吸収される赤外線および遠赤外線であり、被加熱物であるピザ(P)を直接照射あるいは反射板(9)にて反射されて間接的に照射し熱ロスが少ない。特に、反射板(9)にて中央部分に集光するようにしているので、焦げ易いピザ周縁部分に対して熱の通りにくい中央のトッピング部分に反射光が集光されるので、トッピング部分の火の通りと、周縁部分の焦げ目の付き具合が同程度の時間で終了し、2〜1.5分程度の最短の調理時間を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に示す実施例に従って本発明を詳細に説明する。ピザ焼き器(1)の ケーシング(5)は矩形箱状のもので、その前面が開口しており、内部がピザ焼き用空間(2)となっており、壁内は2重壁構造で、天井内と床下内に断熱層(50)(51)が全面に形成されている。そして、ケーシング(5)の両側面、背面、天井断熱層(50)及び床断熱層(51)の下側は放熱用空洞(K)となっていて空気が通流するようになっている。図の実施例では背面は空洞(K)であるが、必要に応じて断熱層としてもよい。そして、ケーシング(5)のいずれかの面(本実施例では一方の側面下部)に吸い込みファン(13)が設置されており、2重構造の外側板(52)に形成されたパンチング孔(53)から図示しないフィルタを介して外気を吸い込み、ケーシング(5)の2重壁構造の空洞(K)内に空気を通流させるようになっている。
【0010】
また、ケーシング(5)の2重壁構造の空洞(K)の隣の空洞(K)内(本実施例ではファン(13)の近傍)に電源ユニット(14)が設置されており、ファン(13)からの冷風で冷却されるようになっている。この電源ユニット(14)はセラミックスヒータ(7)(8)の通電時間や加熱・冷却速度勾配などの通電方法を制御するものである。電源ユニット(14)の制御プレート(15)はケーシング(5)の前面の向かって右側に設けられており、電源スイッチ(16)、予熱スイッチ(17)、テンキーボード(18)及び数字表示器(20)など制御に必要な入力手段が纏めて設けられている。
【0011】
ケーシング(5)の両側面には本ピザ焼き器(1)を持ち運べるように指掛け部材(54)が取り付けられている。なお、ケーシング(5)の内壁は金属の塗装(何色でもよい)でもよいが、必要に応じてケーシング内面をセラミックコーティング或は琺瑯仕上げとしてもよい。
【0012】
ケーシング(5)の開口部(3)の下部開口縁(3a)には支持軸(41)を介して開閉扉(4)が起倒可能に開閉できるようになっている。開閉扉(4)には断熱ガラスが嵌め込まれたに断熱窓(4a)が設けられて内部が確認できるようになっており、且つ断熱窓(4a)の周囲は空洞の2重壁構造になっており、扉表面への熱の伝達がないように配慮されている。なお、必要があれば、断熱窓(4a)の周囲の空洞も断熱層としてもよい。また開閉扉(4)の表面上部には取手(4b)が取り付けられている。また、開閉扉(4)の左右両端の上部にはアーム(42)が突設されている。なお、空洞(K)には必要に応じて断熱材を充填するようにしてもよい。
【0013】
ピザ焼き用加熱棚(6)は平板部材で伝熱性に優れた金属、たとえば銅やアルミニウムなどの薄板(6a)が本体部分として使用され、その左右両端中央部分に耳部(6c)が屈曲されて上方に突出しており、更に被加熱物であるピザ(P)との接触載置面であるその上面をセラミックコーティング層(6b)とした2層構造となっている。勿論、ピザ焼き用加熱棚(6)は黒色塗装された前記金属だけで構成してもよいが、ピザ(P)への火の通りを良くするためには前述のようなセラミックコーティング2層構造が好ましく、本実施例ではこの構造を採用している。なお、この場合にセラミックコーティング層(6b)を必要に応じて黒色とするのが好ましい。
【0014】
前記ピザ焼き用加熱棚(6)は開閉扉(4)と連動する場合(本実施例では連動型である。)、図3、4に示すようにケーシング(6)の2重壁構造の左右内側壁(55)(55)の中段やや下に左右一対のガイドバー(56)(56)が奥から開口部(3)に向かって配設されており、このガイドバー(56)(56)上をピザ焼き用加熱棚(6)の左右端部が乗った状態でスライドするようになっている。そしてピザ焼き用加熱棚(6)の耳部(6c)と開閉扉(4)のアーム(42)とが連結バー(43)で接続されている。この実施例ではが連結バー(43)を介して開閉扉(4)の起倒にあわせてピザ焼き用加熱棚(6)がケーシング(5)の前面の開口部(3)から進退して出没するようになっているが、別段これに限られず独立して動くようにしてもよい。
【0015】
カーボンヒータ(7)(8)は炭素棒の両端に口金の装着したようなもの(図示せず)、あるいは内部が真空又は不活性ガスが充填された棒状の石英ガラス管(10a)内に炭素繊維帯条(10b)を収納し、石英ガラス管(10a)の両端が封止され、封止部に口金(10c)が装着されたものなどが用いられる。本実施例では後者が用いられている。使用されるカーボンヒータ(7)(8)はピザ焼き用加熱棚(6)の上下に配設して使用される。使用本数は1乃至複数本で、本実施例では上下とも3本である。配置方法は別段制限はないが、本実施例では前面の開口部(3)から奥に向かって前記開口部(3)に平行にて3列に配設されている。カーボンヒータ(7)(8)は図示したような直線棒状のものに限られず、棒状のものを渦巻状に形成して面ヒータとして用いられるようにしたものなども当然に含まれる。この場合、ピザ焼き用加熱棚(6)の上方或いは上下両方に、その中央にて1個の渦巻型棒状カーボンヒータ(7)(8)を設置するようにしてもよいが、小型のものを複数個(例えば3個を直角三角形又は2等辺三角形の頂点に一致するように)並設してもよく、このようにすれば、複数個(この場合は3個)のピザを同時に焼くことが出来る。
【0016】
反射板(9)は少なくともピザ焼き用加熱棚(6)の上方のカーボンヒータ(7)の上に配設されている。下面である反射面が鏡面仕上げされた薄い金属板で、上側のカーボンヒータ(7)(この場合は直線状棒状である。)の長手方向に沿ってその円弧状に曲成され(換言すれば、円筒を中心軸に切断した凹面反射面)、その前後両端がケーシング(5)の2重壁構造の前面内壁(5e)、背面内壁(5f)に接合されている。なお、反射板(9)はこのようなものに限られず、例えば、球の一部を切除したような球状(これを半球状という。)のものでも良い。カーボンヒータ(7)(8)を渦巻状にした場合には、前述のような半球状のものとしてその直下に渦巻状カーボンヒータ(7)(8)を設置するようにしてもよい。また、この場合は、固定式であるが、取替え式にして、例えばピザを複数枚一度に焼くような場合、各ピザに集光するように半球状部分が適宜設けられているようなものなど、対象によって集光位置が変わって焼き方が変わるように開閉扉(3)を開いたときに取替え可能にするようにしても良い。
【0017】
床側は、上方のカーボンヒータ(7)に合わせて3本のカーボンヒータ(8)(勿論、本数は1乃至複数で任意である。)が設置されており、ピザ焼き用加熱棚(6)を直接加熱するようになっている。本実施例では上面開口型箱状で内面が鏡面仕上げされた反射箱(12)が床側のカーボンヒータ(8)を受けるように配置されており、その上面開口の大きさはピザ焼き用加熱棚(6)とほぼ同じ大きさに造られている。従って、床側のカーボンヒータ(8)から出た熱線は全てピザ焼き用加熱棚(6)を加熱するようになっている。床側のカーボンヒータ(8)も上と同様渦巻状にしてもよい。
【0018】
本発明にかかるピザ焼き器(1)は直径30センチメートル程度のピザ(P)1枚を収納して焼き上げできるような大きさであるが、勿論、これに限られず複数枚のピザ(P)を収納焼き上げできるようなものであってもよい。
【0019】
しかして、客から注文を受けるとチルド状態(勿論、これに限られないが、生の生地或は既に調理されたもので冷たくなってしまった状態)のピザ(P)の生地の上に所定の具をトッピングし、次いでピザ焼き器(1)の開閉扉(4)を開き、これと連動している(あるいは非連動の)ピザ焼き用加熱棚(6)を開口部(3)から引き出し、加熱調理前のピザ(P)を載せ、しかる後開閉扉(4)を閉じて該ピザ(P)が載せられているピザ焼き用加熱棚(6)をケーシング(5)内に収納し、スイッチを入れてカーボンヒータ(7)(8)に通電する。
【0020】
通電されたカーボンヒータ(7)(8)は、細い繊維帯条(10b)を使用するものである場合(本実施例ではこの例である。)、構成する極く細い「炭素繊維」が瞬時に通電電力に応じた加熱温度に達し、水分に良く吸収される赤外線および遠赤外線を含む熱線が出射され、被加熱物であるピザ(P)に向けて或いは反射板(9)や反射箱(12)で反射されて被加熱物であるピザ(P)やピザ焼き用加熱棚(6)の温度を所定温度迄集中的急速に高める。特に、天井側のカーボンヒータ(7)の反射光はピザ(P)の中央部分に主として集光するように設計されているので、熱ロスが少なく、2分〜1.5分以内で内部が柔らかく且つ表面に焦げ目が付いてパリパリし、トッピングされたチーズが分離することなく程よく流れた状態を呈してピザ(P)が焼き上がる。
【0021】
また、本実施例のようにピザ焼き用加熱棚(6)が金属薄板(6a)で形成された本体部分上にセラミックスコーティング層(6b)がなされたものである場合には、セラミックスコーティング層(6b)からも赤外線及び遠赤外線を含む熱線が放射され、裏面からの加熱も効率的に行われる。
【0022】
本発明の第2実施例はピザ焼き用加熱棚(6)上にピザ焼き用加熱棚のピザの外周部分を被覆するリングカバー(11)が更に設けられている場合である。このリングカバー(11)は開閉扉(3)の開放時に脱着或は取替え可能であり、加熱前のピザ(P)に被せてセットされる。本実施例では1つのピザ用で、天井部分に大透孔(11a)が穿設されたキャップ状のもので、大透孔(11a)がトッピング範囲に合うような大きさに形成されている。これにより、ピザ(P)の周辺部のパイの表面が焼け過ぎて焦げ目がつき過ぎる事を防止できる。大透孔(11a)は投入されるピザ(P)の数に合わせて形成して物を使用しても良い。リングカバー(11)自体、パンチングメタルのような多孔質板を例えばプレス成形して形成しても良いし、1枚の物の成形品でも良い。焦げ目具合によって適宜なものを選ぶことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の正面図
【図2】本発明の側面図
【図3】図1のa−a’断面図
【図4】図1の開扉時のa−a’断面図
【図5】図2のb−b’断面図
【符号の説明】
【0024】
(1) ピザ焼き器
(2) ピザ焼き用空間
(3) 開口部
(4) 開閉扉
(5) ケーシング
(6) ピザ焼き用加熱棚
(7)(8) カーボンヒータ
(9) 反射板
(10) 炭素繊維帯条
(19) 石英ガラス管
(21) ピザ周縁部分
(22) トッピング部分
(P) ピザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピザ焼き用空間を有し、開口部に開閉扉が設けられているケーシングと、
ピザ焼き用空間内に収納され、開口部よりスライドにて引き出し入れ可能に配設され、高熱伝導性金属薄板上にセラミックスコーティングがなされたピザ焼き用加熱棚と、
ピザ焼き用加熱棚の上下に配設された1乃至複数本の棒状カーボンヒータと、
少なくともピザ焼き用加熱棚上方の棒状カーボンヒータの上に配設され、ピザ焼き用加熱棚に向かって凹湾曲し、反射放射熱をピザ焼き用加熱棚側中央部分に集光する反射板とで構成されたことを特徴とするピザ焼き器。
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンヒータは石英ガラス管内にカーボン繊維帯条が収納されていることを特徴とするピザ焼き器。
【請求項3】
ピザ焼き用加熱棚上にピザ焼き用加熱棚のピザの外周部分を被覆するリングカバーが更に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のピザ焼き器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−84955(P2010−84955A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251296(P2008−251296)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(500551769)ソーラム株式会社 (13)
【Fターム(参考)】