ピストンの前後運動により液体をサンプリングするピペット
本発明は、ピストン(12)のその摺動方向(36,38)のうらの一方に沿う運動により、下側チャンバ(20)の容積の増大と上側チャンバ(22)の容積の減少が同時に、またその逆の状態が同時に生じるように設計された抜き取りピペット(100)に関し、ピペットが、下側チャンバ(20)とこの下側チャンバから隔離されたノズルから出ているチャネル(28)との第1の流体連通(A)の確立と上側チャンバ(22)とこの同じチャネル(28)との第2の流体連通(B)の確立を同時に実施できるようにする流体連通手段(40)を更に有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、サンプル採取やレシピエント(受容体)への液体の較正された状態の添加を目的とするサンプル採取ピペット(実験室ピペット又は液体移送ピペットとも呼ばれている)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
取っ手を形成する上側ピペット本体と下端部のところに1つ又は2つ以上の先端部保持ノズルを備えた下側ピペット本体とを一体化した形式の従来設計を有するサンプル採取ピペットが先行技術から知られており、先端部保持ノズルの公知の機能は、コンソマブレ(消耗品)とも呼ばれているサンプル採取先端部を保持することにある。
【0003】
下側ピペット本体は、手動又は電動式機器により作動される摺動ピストンを収容し、それにより、ピストンは、液体サンプル採取段階中に上昇し、液体移送段階中に下降し、上向き運動は、一般に、先の下向き運動中に圧縮されたばねの解除の作用下で行われる。
【0004】
この点に関し、この種の設計は、ピペットが手動式であるにせよ電動式であるにせよいずれにせよ、単一チャネル形ピペット、即ち、単一の先端部保持ノズルを備えたピペットと多チャネル形ピペット、即ち、複数の先端部保持ノズルを備えたピペットの両方に見受けられることは注目されるべきである。
【0005】
ピストンに設定される上方行程は、サンプル採取される液体の容積又は量を決定し、この量は、ユーザにより例えばサムホイール又は調整ねじ若しくはディジタルキーパッドによってあらかじめ設定される。
【0006】
従来型ピペットでは、ピストンは、厳密に円筒形のものであり、ピペットの下側本体に形成されていて、所謂吸引チャンバを画定する相補形状のキャビティ内で摺動する。このチャンバは、一部が、ピストンの下端部によって画定され、このことは、このピストンが運動状態にあるとき、その容積が変化することを意味する。したがって、ピストンの所与の行程に続く吸引チャンバ内の空気容積又は量の増大に対応したサンプル採取液体の体積又は量は、ピストンの断面積に所与の行程の長さを乗算して得られる積に実質的に等しい。
【0007】
それ故、ピペットのサンプル採取能力又は容量は、現時点においては、そのピストンの断面積及びその最大行程の長さの両方によって決定される。したがって、ピペット能力、即ち、サンプル採取することができる液体の量の最大値又はサンプル採取することができる液体量の最大値と最小値の比(典型的には、10〜20のオーダーである)を増大させるためには、上述の2つのパラメータのうちの少なくとも一方の値を増大させる必要がある。
【0008】
この点において、最大行程長さから成る第1のパラメータに関し、この長さの増大により、ピペットに関する全体的なエルゴノミクスの問題が直ちに生じることが注目されるべきである。
【0009】
加うるに、ピストン直径から成る第2のパラメータに関し、その増大により、サンプル採取量の精度及び再現性が損なわれることは不可避であろう。
【0010】
したがって、従来型ピペットの設計では、大きなサンプル採取容量、エルゴノミクス、サンプル採取量の精度及び再現性から成る本質的な基準を同時に満足させることができない。
【0011】
この問題に取り組むために、特に米国特許第3640434号明細書又は仏国特許第0600134号明細書から知られている所謂「多容積形」ピペットが提案された。この種の多容積形ピペットは、先端部ホルダから始まって漸増する直径/容積の一連のチャンバを備え、かかる直径/容積の各々は、対応の直径のピストン断面と協働する。これらチャンバを互いに連通させるか又はこれらチャンバを互いに連通させないで互いに隔離するかにより、ピペットをサンプル採取されるべき液体量の値に適合させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3640434号明細書
【特許文献2】仏国特許第0600134号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それにもかかわらず、この原理では、上述の問題を完全に満足のゆく仕方で解決することができないということは注目されるべきである。というのは、ピペットの容量を増大させる必要性が高くなればなるほど、ピストンの摺動運動の方向に重ね合わされなければならない吸引チャンバの数がそれだけ一層増大するからである。この場合、チャンバの数のこの増大により、ピペットの全長が増大することになり、これは、そのエルゴノミクスにとって明らかに不利となる。
【0014】
また、サンプル採取されるべき液体の量が増大すれば増大するほど、大きな直径のチャンバ及びピストンの使用により、精度及び再現性に関する満足度がそれだけ一層低くなる。
【0015】
本発明の目的は、先行技術の実施形態の上述の欠点を少なくとも部分的に解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のため、本発明の要旨は、第1に、摺動ピストンを収容すると共にノズル貫通チャネル付きの先端部保持ノズルを備えた下側ピペット本体を有するサンプル採取ピペットであって、下側ピペット本体及びピストンが、互いに隔離された下側チャンバ及び上側チャンバを画定しているようなピペットにある。本発明によれば、ピペットは、摺動方向の一方におけるピストンの運動により、下側チャンバの容積の増大と上側チャンバの容積の減少が同時に生じ、他方の摺動方向におけるピストンの運動の際には、下側チャンバの容積の減少と上側チャンバの容積の増大が同時に生じるよう設計されている。加うるに、ピペットは、下側チャンバと下側チャンバから隔離されたノズルチャネルとの間の第1の流体連通と、上側チャンバと当該チャネルとの間の流体連通を交互に可能にする流体連通実施手段を有する。
【0017】
したがって、一般に、本発明により、有利には、上述の2つのチャンバのうちの一方、好ましくは下側チャンバの容積の増大をもたらすピストンの上方行程を生じさせ、上述の2つのチャンバのうちの他方の容積の増大をもたらすピストンの下方行程を生じさせることの両方によって液体をサンプル採取することができる。より具体的にいえば、このオプションにより、サンプル採取されるべき液体の量に関して必要とされるほど多くの回数にわたりピストンの上方及び下方行程を同時に生じさせることにより1回の同じ液体サンプル採取操作を実施する可能性が提供される。明らかなこととして、同一の先端部において所与の量の液体をサンプル採取するようになったこのサンプル採取段階中及びピストン行程方向の各反転前に、流体連通実施手段を第1又は第2の流体連通のいずれかに切り換えて所望の吸引効果を得るようにする手立てが講じられている。以下に詳細に説明するように、ピストン行程の方向の各反転前における流体連通実施手段の作動は、オペレータによって手動で又はあらかじめプログラムされたピペット指令モジュールによって自動的にどちらでも良い状態で実施できるが、この後者の手法は、特に好ましいことが注目される。
【0018】
明らかなこととして、本発明により、ピストンの前後運動中に、連続液体サンプル採取が可能であるが、同じことは、別のレシピエントへのサンプル採取液体の次の計量分配/移送操作に当てはまる。サンプル採取操作がいったん完了すると、別のレシピエントへの液体の計量分配は、別の一連の上方及び下方ピストン行程によって達成され、ピストンの上方行程により、上述の2つのチャンバのうちの一方、好ましくは上側チャンバの容積が減少し、ピストンの下方行程により、2つのチャンバのうちの他方の容積が減少する。この場合も又、液体を先端部から別のレシピエントに移送するようになった計量分配段階中及びピストン行程の方向の各反転前において、流体連通実施手段を第1又は第2の流体連通のいずれかに切り換えて先端部保持ノズルのチャネルの方向に出る空気の所望の作用効果を得て、その加圧を保証するようにする手立てが講じられている。
【0019】
この場合も又、ピストンの前後運動の回数は、移送されるべき液体の量で決まるが、本発明のピペットは、完全に従来通り制御でき、即ち、この従来操作モードが少量の液体に関する操作のためだけに保持されている場合であっても、液体をサンプル採取するための簡単な単一のピストン行程及び液体を別のレシピエントに向かって計量分配するための簡単な単一の戻りピストン行程によって制御できるということがいえる。
【0020】
したがって、本発明は、大容積(多量)サンプル採取にとって極めて満足のゆくものであることが分かった。というのは、ピペットの能力又は容量は、ピストンの最大行程によっては制限されず、その直径によっても制限されず、ピペットの任意他の要素によっても制限されないからである。というのは、1回の液体サンプル採取操作のためだけのピストンの前後操作の回数は、理論的に制限されないからである。より具体的に説明すると、ピストンにより部分的に画定される2つのチャンバしか必要としない本発明のピペットと関連したこの大きな容量は、ピペットの全体的エルゴノミクスにとってなんら不利ではない。というのは、ピストンの最大行程は、ピペットの最大サンプル採取容量とは無関係に、妥当な値に自由に設定できるからである。
【0021】
上述したのと同じ理由で、ピストン直径は、大容積サンプル採取を達成するために大きめにする必要はなく、それにより、サンプル採取される容積の精度及び良好な再現性を得ることができる。
【0022】
したがって、特に先端部保持ノズルのチャネルをピペット本体のどの吸引チャンバからも隔離するという特徴を備えた本発明は、これにより、大きなサンプル採取容量、エルゴノミクス、サンプル採取される容積の精度及び再現性から成る本質的な基準をどれも妥協させることなく同時に満足させることができるので、完全に満足のゆくものである。
【0023】
一例を挙げると、本発明のピペットでは、ピストンの所与の方向における最大行程により、0.1μlの精度で100μlをサンプル採取することができる場合、863.2μlの液体容積のサンプル採取が達成され、この場合、ピストンの4回の前後運動を行い、次に63.2μlに相当する少なくとも部分的な行程が行われる。明らかなこととして、利点のうちの1つは、863.2μlのこのサンプル採取が従来型先行技術のピペットの精度とほぼ同じ精度で達成されるということにある。というのは、このサンプル採取は、863.2μlのこの全容積を単一のピストン行程中にサンプル採取しなければならない従来型先行技術のピペットの精度に対し、主として微調整される100μlのサンプルを引き込む最大ピストン行程を有するからである。
【0024】
好ましくは、ピペットは、流体連通実施手段を自動的に作動させる指令モジュールを備えており、サンプル採取されるべき液体の量に応じて必要な場合、流体連通実施手段は、第1及び第2の流体連通のうちの一方をセットアップしている形態にある状態で、摺動方向のうちの一方におけるピストンの一行程により動作される液体サンプル採取段階が、流体連通実施手段を第1及び第2の流体連通のうちの他方をセットアップしている形態に自動的に切り換えた状態で、他方の摺動方向におけるピストンの一行程により続行されるようになっている。この場合、上述したように、ピストン行程は、必要なほど多くの回数にわたり互いに次々に続き、各行程相互間における流体連通実施手段の適当な自動的作動は、ピペット制御モジュールによって保証される。同様な原理は、サンプル採取液体の小出し段階についても提供されることは明らかである。
【0025】
この点に関し、制御モジュールは、サンプル採取されるべき液体の量と関連して、液体量をサンプル採取するのに必要なピストンの連続上方及び下方行程の回数及び長さを決定するよう設計され、この制御モジュールは、上述の液体サンプル採取時点において、制御モジュールが、液体サンプル採取中、ピストン運動方向の各反転前に、第1及び第2の流体連通のうちの一方から他方への切り換えを可能にするために、流体連通実施手段も又自動的に作動させることにより、ピストンを定められた仕方で自動的に作動させるよう設計されている。
【0026】
したがって、制御モジュール及び特にこのモジュールを搭載したソフトウェア型のプログラムは、サンプル採取されるべき容積に対する行程の回数及びこれらの長さを定めることができ、例えば、この容積の値は、ユーザによりモジュールにあらかじめ入力されている。計算されたデータは、オプションとして、ユーザに知らせるようモジュール上に表示されるのが良い。一例を挙げると、行程長さを決定するためには、プログラムは、好ましくは、場合によっては考えられる最大行程のほんの何分の一かに相当する場合のある最後の行程を除き、ピペットの設計によって与えられる最大行程を選択して正確な所望の容積を得ることができるようにすることが注目される。しかしながら、変形例として、1回のサンプル採取操作をもたらすピストンの前後の運動中、ピストンの全行程を最大設計長さよりも短い長さにわたって行うようにする手立てを講じることが可能であり、これは、本発明の範囲から逸脱しない。
【0027】
また、好ましくは、2つの摺動方向の各々におけるピストンの全行程が等量の液体サンプル採取をもたらすようにするような手立てが講じられる。ただし、かかる手立てがこれとは別の仕方で講じられていても、本発明の範囲から逸脱しない。
【0028】
したがって、ピペット操作セットアップ指令に続き、プログラムは、ピストンを動かす命令を流体連通実施手段と電動式機器の両方に送り出すことができる。
【0029】
この場合も又、このモジュール指令プログラムによるピペットのこの管理は、次の別のレシピエントへの液体の計量分配操作について同様な仕方で行われることは注目されるべきである。
【0030】
上述したように、変形例として、流体連通実施手段がたとえ上述の自動的実施が好ましい代替手段であるとしても、ピストンの運動を生じさせるのと同様に手動で作動されるようにする手立てを講じることが可能である。
【0031】
好ましくは、流体連通実施手段は、少なくとも1つの三方電磁弁又は任意のこれと均等な手段から成る。
【0032】
この点に関し、流体連通実施手段は又、好ましくは且つ変形例として、上側チャンバとピペットの外部との間の第3の流体連通及び下側チャンバとピペットの外部との間の第4の流体連通を可能にすることができるということは注目されるべきである。
【0033】
ピペットの外部との吸引チャンバのこれら第3及び第4の別の連通により、容積が液体サンプル採取中に減少するチャンバが、ピペット内に過剰圧力を生じさせないようにピペットの外部に向かってその空気を逃がすことができると共に容積が液体の計量分配中に増大するチャンバがピペット内に負の圧力を生じさせないようそれ自体ピペットの外部からの空気で一杯になることができる。
【0034】
上述の場合、4通りの流体連通の動作/動作停止を管理するため、流体連通実施手段は、同期して作動され、オプションとして互いに連通する2つの三方電磁弁から成るのが良い。
【0035】
それにもかかわらず、他の変形例としての解決策を想到でき、かかる解決策としては、外部に対する各チャンバの開閉がそれぞれ、交互の第1の流体連通と第2の流体連通を保証する三方電磁弁形式の手段とは独立しているが、これら後者の手段と同期される2つの簡単な「オン/オフ」電磁弁によって保証されるような解決策が挙げられる。より一般的にいえば、各三方電磁弁に代えて、二方弁とも呼ばれている2つの「オン/オフ」電磁弁を用いることができる。
【0036】
ピペットは、本発明の範囲から逸脱することなく、単一チャネル形ピペットであっても良く、多チャネル形ピペットであっても良いことは注目されるべきである。この後者の場合、各々が対応のピストンを収容した先端部保持ノズルの全てが、特にこれらが各々流体連通実施手段と関連しているので、本発明に従って設計されるようにする手段を講じることができる。この場合、各先端部保持ノズルと関連したこれら流体連通実施手段は、ピストンを全て支持している機器が行程の終わりに達すると、同時に作動される。
【0037】
また、上述のピストンは、好ましくは、下側ピストン部分の断面積よりも大きな断面積の上側部分を有し、回転体として形作られた上側チャンバは、下側ピペット本体と上側ピストン部分との間に画定され、下側チャンバは、下側ピストン部分の下端部の下に画定される。この構成によれば、2つのピストン部分の直径及び下側ピペット本体の内径を適当に決めることにより、ピストン変位が所与の場合、下側チャンバの容積変化と上側チャンバの容積変化との同一の絶対値を得ることが容易に可能である。
【0038】
それにもかかわらず、ピストンの実施形態について他の構成が可能である。
【0039】
本発明の別の要旨は、上述のサンプル採取ピペットに指令する方法であって、この方法は、先端部保持ノズルによって支持されたサンプル採取先端部で行う液体サンプル採取ステップを有し、液体サンプル採取ステップは、流体連通実施手段が第1又は第2の流体連通のうちでいずれにせよ先端部での液体のサンプル採取を保証する流体連通をセットアップしている形態にある状態で、摺動方向のうちの一方におけるピストンの一行程の後、サンプル採取ステップは、サンプル採取されるべき液体の量に応じて必要な場合、流体連通実施手段が第1及び第2の流体連通のうちの他方をセットアップしている形態に自動的に切り換えた状態で、他方の摺動方向におけるピストンの一行程により続行されて先端部における液体のサンプル採取を実施させることを特徴とする指令方法にある。
【0040】
また、この方法は、先端部によりサンプル採取された液体の別のレシピエントへの次の計量分配/移送ステップを有し、このステップは、上述の流体連通実施手段が上述の別のレシピエントへの液体の計量分配を保証するよう第1又は第2の流体連通をセットアップしている形態にある状態で摺動方向のうちの一方におけるピストン行程に続き、この計量分配/移送ステップが、必要ならば、上述の流体連通実施手段が別のレシピエントへの液体の計量分配を保証するために第1又は第2の流体連通の他方をセットアップしている形態に切り換えられた状態で、他方の摺動方向におけるピストン行程により計量分配されるべき液体の量と関連して続行されるように実施される。
【0041】
この場合も又、第1又は第2の流体連通のうちの一方から他方への切り換えが、たとえ手動による手段がオプションとして考慮されている場合であっても、好ましくは自動的に行われることが思い起こされる。
【0042】
本発明の他の利点及び他の特徴は、以下に与えられる非限定的な詳細な説明から明らかになろう。
【0043】
以下の説明は、添付の図面に関している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの概略断面正面図である。
【図2a】図1に示されているサンプル採取ピペットの機能を説明する略図である。
【図2b】図1に示されているサンプル採取ピペットの機能を説明する略図である。
【図2c】図1に示されているサンプル採取ピペットの機能を説明する略図である。
【図2d】図1に示されているサンプル採取ピペットの機能を説明する略図である。
【図3】本発明の他の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの概略断面正面図である。
【図4】本発明の他の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの概略断面正面図である。
【図5】本発明の他の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの概略断面正面図である。
【図6a】本発明の別の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの詳細断面正面図である。
【図6b】本発明の別の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの詳細断面正面図である。
【図7a】図6a及び図6bに示されているサンプル採取ピペットを備えた流体連通実施手段の部分分解組立て詳細図である。
【図7b】図6a及び図6bに示されているサンプル採取ピペットを備えた流体連通実施手段の部分分解組立て詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
先ず図1を参照すると、単一チャネル形で電動式の本発明の好ましい一実施形態としてのサンプル採取ピペット100が見える。以下に与えられる説明全体において、「頂部」、「上側」、「底部」、「下側」という用語は、ピペットがピペット操作のためにオペレータの手で保持されているときのピペットの主長手方向軸線5に関して考えられている。
【0046】
ピペット100は、その頂部に、取っ手(図示せず)を形成する本体を有すると共に下側ピペット本体を一体化した底部3を有し、底部3の下端部には、従来型の円錐を平べったくした形状の先端部保持ノズル6が配置されている。当業者には知られているように、底部3は、好ましくは、取っ手を形成する上側本体に螺着されている。
【0047】
また、ピペットは、指令モジュール10を備えており、この指令モジュールをその本体のうちの一方、特に上側取っ手形成本体内に完全に組み込むことができ、或いは、この指令モジュールを例えば制御室内においてこれら同一のピペット本体から距離を置いて位置する装置で構成することができ、これはどちらでも良い。
【0048】
下側ピペット本体4は、これが摺動ピストン12を適当なキャビティ内に収容することができるよう中空である。
【0049】
図1で理解できるように、このキャビティ内に収容されたピストン12は、大径の下側円筒形部分12bに続く上側円筒形部分12aを有し、これら部分12a,12bの各々は、それぞれ、相補形状の下側本体4a,4bの一部によって案内される。加うるに、これら2つの中空部分4a,4bの各々は、それぞれ、固定シールを有し、これら固定シールは、これに対して摺動するピストン12の輪郭を辿っている。
【0050】
この構成では、下側吸引チャンバ20が、上から下に向かって、下側シール14、ピストンの下端部24、部分4bの内壁及びピペット本体4内に形成された下向き障害物26によって画定されている。注目されるべきこととして、この障害物26は、本質的に、チャンバ20を先端部保持ノズル6内に少なくとも部分的に軸線5に沿って形成されたノズル貫通チャネル28から隔離するために設けられており、サンプル採取先端部30を先端部保持ノズル6に取り付けると、ノズル貫通チャネル28がサンプル採取先端部30と永続的に連通することができるようになっている。より詳細に説明すると、チャネル28は、サンプル採取先端部30内に下方に通じ、このチャネルは、そのより上方部分に、枝分かれ箇所を有し、この枝分かれ箇所は、下側本体に対して半径方向/側方にその他端部内に開口することができるようになっており、それにより、チャネル28は、後述する流体連通実施手段と連通することができる。
【0051】
上側吸引チャンバ22は、上から下に向かって、上側シール16、上側ピストン部分12a、部分4bの内壁、下側ピストン部分12bの上端部32及びシール14によって画定されている。注目されるべきこととして、このシール14は、2つの吸引チャンバ20,22を互いに隔離する役割を果たしており、又、上側チャンバ22は、更に、ノズル貫通チャネル28から隔離されていることが注目される。
【0052】
ピストン部分12a,12bがそれぞれ部分4aの内壁及び部分4bの内壁の輪郭を辿っているこの構成では、チャンバ20は、同一の軸線及び大径部分4bの内壁と同一の直径を有する円板の形態をした軸線5に対する一定の断面を有することが全体として理解できる。また、チャンバ22は、部分4bの内壁の外径に等しい外径及び小径部分12aの外径に等しい内径を備えた同一軸線の環状リングの形状をした軸線5に対する一定断面を有することが全体として理解できる。
【0053】
ピストン12は、好ましくは、指令モジュール10に接続され、本体4に対するこのピストンの摺動方向35の2つの方向36,38のいずれかの一方における運動を指令する電動式機器(図示せず)によって作動され、この方向35は、軸線5に平行である。一例を挙げると、本明細書の残りの部分において、上方摺動方向36をピストンの「上方行程」と呼び、他方、下方摺動方向38をピストンの「下方行程」と呼ぶ。
【0054】
したがって、上述の好ましい実施形態によれば、ピストンの上方行程により、下側チャンバ20の容積の増大と上側チャンバ22の容積の減少が同時に生じ、これとは逆に、ピストンの下方行程により、上側チャンバ22の容積の増大と下側チャンバ20の容積の減少が同時に生じる。チャンバ20,22の設計を逆にすると、上述の作用効果を逆にすることができ、これは、本発明の範囲から逸脱しない。
【0055】
ピペット100は、図1に全体が40で示された流体連通実施手段を更に有し、これら手段は、好ましくは、公知形式の2つの三方電磁弁から成り、これらについては以下にこれ以上説明しない。しかしながら、一例を挙げると、かかる弁は、3つの入口1,2,3を備えたリニアピストン電磁弁であるのが良く、かかる弁は、直線ピストンの運動により、入口1,2相互間の連通及び入口2,3相互間の連通を交互に可能にすることができ、この直線ピストン電磁弁は、例えば、リー・カンパニー(LEE COMPANY)により番号LHDA 053 1115Hで市販されている弁である。
【0056】
以下に詳細に説明するように、これら手段40の特徴として、適当に向けられると、これら手段により、液体をピストンの上方行程中とその下方行程中の両方においてサンプル採取することができ、その結果、液体をピストン12の前後運動中、連続して先端部30内に引き込むことができるようになる。したがって、サンプル採取できる最大容積に対する唯一の制限は、サンプル採取先端部の容量であり、先行技術の実施形態の場合のようなピペットの設計ではない。加うるに、注目されるべきこととして、別のレシピエントへの液体の次の計量分配は、同様に行われ、即ち、ピストン12の前後運動により行われ、かかる前後運動は、必要ならば、数回の往復行程を有することができる。
【0057】
この好ましい実施形態では、第1の三方電磁弁42は、ノズル貫通チャネル28との2つのチャンバ20,22の交互連通に専用であり、第2の三方電磁弁44は、ピペットの外部との2つのチャンバ20,22の交互連通に専用であり、これら2つの弁42,44は、これらが電気的に接続されている指令モジュール10によって同期されると共に自動的に作動される。
【0058】
したがって、第1の電磁弁42は、3つの入口1,2,3を有し、これらのうち入口1は、ノズル4内に半径方向/側方に開口したノズル貫通チャネル28の上端部と連通し、入口2は、部分4bを経て下側チャンバ20と連通し、入口3は、これ又部分4bを経て上側チャンバ22と連通している。上述の連通は、例えば通常の連結導管又はピペット本体内に直接形成されたチャネルによって永続的に確立される。他方、入口は、電磁弁42がこの目的のために作動された場合に互いに連通するに過ぎず、それにもかかわらず、上述の実施形態において入口1,2相互間の連通及び入口1,3相互間の連通のみを摺動弁ピストンにより交互にセットアップできることが理解される。入口2,3相互間の連通は、実施されず、好ましくは、例えば上述の直線ピストン形の電磁弁の設計によって不可能になっている。
【0059】
同様に、第2の電磁弁44は、3つの入口1,2,3を有し、これらのうち入口1は、部分4bを経て上側チャンバ22と連通し、入口2は、これ又、部分4bを経て下側チャンバ20と連通し、入口3は、ピペットの外部の周囲空気と連通している。
【0060】
この場合も又、上述の連通は、例えば単純な連結導管によって永続的に確立される。他方、入口は、電磁弁44がこの目的のために作動された場合に互いに連通するに過ぎず、上述の実施形態において入口1,3相互間の連通及び入口2,3相互間の連通のみを摺動弁ピストンにより交互にセットアップできることが理解される。入口1,2相互間の連通は、実施されず、好ましくは、電磁弁の設計によって不可能になっている。
【0061】
したがって、図1を参照すると理解できるように、第1の電磁弁42は、入口1,2が互いに連通状態にあるとき、下側チャンバ20と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする符号Aで示された第1の流体連通を保証するが、この後者のチャネルとチャンバ22との連通を阻止する。また、入口1,3が互いに連通状態にあるとき、これら入口は、上側チャンバ22と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする符号Bで示された第2の流体連通を保証するが、この場合、このチャネルとチャンバ20との連通を阻止する。
【0062】
同様に、第2の電磁弁44は、入口1,3が互いに連通状態にあるとき、上側チャンバ22とピペットの外部との間の空気の自由循環を可能にする符号Cで示された第3の流体連通を保証するが、このピペット外部とチャンバ20との連通を阻止する。また、入口2,3が互いに連通状態にあるとき、これら入口は、下側チャンバ20とピペット外部との間の空気の自由循環を可能にする符号Dで示された第4の流体連通を保証するが、この場合、このピペット外部とチャンバ22との連通を阻止する。
【0063】
次に図1及び図2a〜図2dを参照して、上述のピペット100の機能について説明する。
【0064】
先ず、ピペットユーザは、モジュール10に設けられている入力手段46を用いてサンプル採取されるべき容積又は量の値を入力し、これら手段46は、サムホイール、例えば調整ねじ又はディジタルキーパッドの形態をしている。入力した値を好ましくは、ディジタルモニタ48上に表示し、このモジュールを搭載したソフトウェア形式のプログラム50に送る。
【0065】
プログラム50は、サンプル採取されるべき容積に対するピストン行程の回数及びこれらの長さを決定する。例えば、所望の値が400μlであり、各最大上方及び下方行程により、100μlの量をサンプル採取できる場合、プログラムは、各々が100μlのサンプル採取を保証する最大行程長さの状態でピストン12の2回の往復行程を行わなければならないということを判定する。思い起こされることとして、2つのチャンバが互いに異なる断面を有する場合、両方の行程方向において液体の同一のサンプル採取又は同一の計量分配を得るには、2回の行程のうちの一方を他方よりも高い値に設定する。
【0066】
上述のデータは、いったん決定されると、オプションとして、ユーザによる視覚化のためにモニタ48上に表示するのが良く、ユーザは、次に、サンプル採取されるべき液体のレシピエント内に先端部30を浸漬させた後、この目的のために設けられているモジュール10に付いているボタンを押すことによりピペット操作のトリガを指令することができる。
【0067】
プログラム50が命令を出してピストンを上向きの方向36に動かす前に、プログラムは、命令を電磁弁42,44に送って電磁弁が連通A,Cをもしまだ確立されていない場合にセットアップする形態に切り換えるようにする。次に、ピストンを上方運動36の状態にする命令がピストン装置に与えられる。この運動中、チャンバ20の容積は、増大することが分かり、それによりチャネル28からチャンバ20に向かう方向における連通Aで吸引がセットアップされる。というのは、連通Cは、このチャンバを外気から隔離するからである。この吸引は、遠位端部がこの同一の液体中に浸漬されているサンプル採取先端部30内における液体の上昇として表われる。
【0068】
それと同時に、連通Cにより、空気は、容積が減少している上側チャンバ22から逃げ出ることができ、この空気は、ピペットの外部に逃げ、それにより、このチャンバ22内の過剰圧力の開始が阻止される。
【0069】
したがって、ピストンの先の下方段階中に圧縮されていたばねを単に解除することにより得ることができる図2aに示されているピストンの最初の上方行程の終わりに、先端部内に引き込まれる液体の量は、100μlである。ピペット100は、ピストンの下方運動により、サンプル採取操作を自動的に続行するようそれ自体準備するが、この前に、プログラム50は、命令を電磁弁42,44に送ってこれら電磁弁が、連通B,Dをセットアップする形態に同時に切り換わるようにする。
【0070】
次に、ピストンを下向きの方向38に動かすための命令をピストン装置に送る。図2bに示されているこの運動中、チャンバ22の容積は、増大することが示され、それによりチャネル28からチャンバ22に向かう方向における連通B内の吸引がセットアップされる。というのは、連通Dは、このチャンバを外気から隔離するからである。この吸引は、遠位端部がこの同一の液体中に依然として浸漬されている先端部30内における液体の新たな上昇として表われる。
【0071】
それと同時に、連通Dにより、空気は、容積が減少している下側チャンバ20から逃げ出ることができ、この空気は、ピペットの外部に逃げ、それにより、このチャンバ20内の過剰圧力の開始が阻止される。
【0072】
したがって、ピストン12の上方行程と下方行程は互いに、必要に応じて多くの回数にわたり、即ちこの場合には4回交互に続いて400μlの所望の容積に達する。また、モニタ48により既に実施された行程回数及び/又は実施されるべき残りの行程回数がユーザに知らされるようにする手立てを講じることが可能である。
【0073】
次に、ピストンの第2の、即ち最後の前後運動が完了すると、サンプル採取先端部30内に入っている400μlの所望の量を上述したのとほぼ同じ仕方で別のレシピエントに計量分配/移送するのが良い。
【0074】
この場合も又、モニタ48は、所望の容積の完全計量分配を保証するように、実施される行程回数を自動的に表示するのが良く、次に、この計量分配操作に関して既に実施された行程回数及び/又は実施すべき残りの行程回数を表示するのが良い。
【0075】
先端部30を既に吸引された液体を集めるようになったレシピエント内にいったん挿入すると、ユーザは、例えば液体の計量分配を開始させるためにこの目的のために設けられているモジュール10に付いているボタンを押すことによって命令を与えるのが良い。
【0076】
計量分配の開始時点においては、ピストンは、電磁弁42,44が連通B,Dを設定した状態で最も下の位置に位置している。次に、プログラム50は、命令を送ってピストン12を上向きの方向36に動かす。
【0077】
図2cに概略的に示されているこの運動中、上側チャンバ22の容積は、減少することが分かり、それにより、チャンバ22からチャネル28に通じる連通Bにおける圧力が設定される。というのは、連通Dは、このチャンバ22を外気から隔離しているからである。この圧力は、適当なレシピエントの体内への先端部30の遠位端部を通る液体の噴出として表われる。
【0078】
それと同時に、連通Dにより、外気は、容積が増大している下側チャンバ20に入ることができ、それにより、このチャンバ20内における負圧の発生が阻止される。
【0079】
したがって、ピストンの最初の上方行程の終わりに、先端部から抜き出された液体の量は、100μlである。ピペット100は、ピストンの下方運動により、計量分配操作を自動的に続行するようそれ自体準備するが、この前に、プログラム50は、命令を電磁弁42,44に送ってこれら電磁弁が、連通A,Cをセットアップする形態に切り換わるようにする。次に、ピストンを下向きの方向38に動かすための命令をピストン装置に送る。図2dに示されているこの運動中、下側チャンバ20の容積は、減少することが示され、それによりチャンバ20からノズルチャネル28に向かう方向における連通A内の圧力がセットアップされる。というのは、連通Cは、このチャンバ20を外気から隔離しているからである。この圧力は、適当なレシピエント内への先端部30の遠位端部を通る新たな噴出として表われる。
【0080】
それと同時に、連通Cにより、外気は、容積が増大している上側チャンバ22に入ることができ、それにより、このチャンバ22内の負圧の開始が阻止される。
【0081】
したがって、ピストン12の上方行程と下方行程は互いに、必要に応じて多くの回数にわたり、即ちこの場合には4回交互に続いて400μlの所望の容積に達する。
【0082】
図3に示された実施形態は、今説明した実施形態と実質的に同じであり、同一の参照符号で示された部分は、同一又は類似の部分を示しており、これは、説明すると共に図示する実施形態の全てに当てはまる。したがって、この好ましい実施形態では、第1の電磁弁42及び第2の電磁弁44の連結方式だけが上述の実施形態に対して改造されていることが分かる。
【0083】
第1の電磁弁42は、3つの入口1,2,3を有し、これらのうち入口1は、本体4内に半径方向/側方に開口したノズルチャネル28の上端部と連通し、入口2は、部分4bを経て下側チャンバ20と連通し、入口3は、ピペットの外部と連通している。上述の連通は、例えば単純な連結導管によって永続的に確立される。他方、入口は、電磁弁42がこの目的のために作動された場合に互いに連通するに過ぎず、それにもかかわらず、上述の実施形態において入口1,2相互間の連通及び入口2,3相互間の連通のみを摺動弁ピストンにより交互にセットアップできることが理解される。入口1,3相互間の連通は、実施されず、好ましくは、電磁弁の設計によって不可能になっている。
【0084】
第2の電磁弁44は、3つの入口1,2,3を有し、これらのうち入口2は、本体4内に半径方向/側方に開口したノズルチャネル28の上端部と連通し、入口1は、部分4bを経てチャンバ22と連通し、入口3は、ピペットの外部と連通している。上述の連通は、例えば単純な連結導管によって永続的に確立される。他方、入口は、電磁弁42がこの目的のために作動された場合に互いに連通するに過ぎず、それにもかかわらず、上述の実施形態において入口1,2相互間の連通及び入口1,3相互間の連通のみを摺動弁ピストンにより交互にセットアップできることが理解される。入口2,3相互間の連通は、実施されず、好ましくは、電磁弁の設計によって不可能になっている。
【0085】
したがって、図3を参照すると理解できるように、第1の電磁弁42は、入口1,2が互いに連通状態にあるとき、下側チャンバ20と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする符号Aで示された第1の流体連通を保証するが、このチャンバ20とピペット外部との連通を阻止する。他方、入口2,3が互いに連通状態にあるとき、これら入口は、下側チャンバ20とピペット外部との間の空気の自由循環を可能にする第4の流体連通Dを保証するが、この場合、チャネル28とチャンバ20との連通を阻止する。したがって、この電磁弁42は、特に下側チャンバ20内における空気の管理に専用であり、上側チャンバ22とは連通していないことが理解できる。
【0086】
同様に、図3で理解できるように、第2の電磁弁44は、入口1,2が互いに連通状態にあるとき、チャンバ22と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする第2の流体連通Bを保証するが、このチャンバ22と外部との連通を阻止する。他方、入口1,3が互いに連通状態にあるとき、このことは、上側チャンバ22とピペット外部との間の空気の自由循環を可能にする第3の流体連通Cを保証するが、この場合、チャネル28とチャンバ22との連通を阻止する。したがって、この電磁弁44は、特に上側チャンバ22内における空気の管理に専用であり、下側チャンバ20とは連通していないことも又理解できる。
【0087】
この好ましい実施形態では、液体の漏れの恐れは、2つの電磁弁の同期がたとえ完全でなくても、ゼロになる。連通A,Cの確立による液体サンプル採取を招くピストン12の上方行程に続き、電磁弁44が連通形態Bへの切り換えの僅か前に実施される連通形態Dへの電磁弁42の切り換えによっては、液体で満たされたチャネル28及び先端部30内で生じている負圧が中断されることはない。というのは、これら後者の部品内の容積は、密封状態になっており、従って、外部と連通していないからである。同じことは、電磁弁44の切り換えが電磁弁42の切り換えの僅か前に行われる逆の場合にも当てはまる。というのは、ノズルチャネル28及び先端部30内の空気の容積を、先ず流体連通Bによって外部から隔離状態になっているチャンバ22に連通させるからである。この場合も又、チャネル28及び先端部30内に生じている負圧の中断が生じないことにより、既にサンプル採取されて先端部30内に入っている液体の漏れが阻止される。
【0088】
この有利な作用効果は、ピストンが最も上の位置にある状態で行程方向を逆にした場合とピストンが最も下の位置にある状態で行程方向を逆にした場合の両方に当てはまる。したがって、このようにして製作されたピペットは、非常に高い精度を提供することができる。というのは、ピストン行程の各反転前に指令モジュール10によって命令された電磁弁の切り換え順序とは関係なく、液体の漏れの恐れがないからである。
【0089】
図3に示されているこの実施形態では、モジュール10は、特に流体連通A,C及び流体連通B,Dの自動的な交互の確立に関してピペットの機能が上述したようなものであるようにあらかじめプログラムされている。
【0090】
図4に示されている他の実施形態では、図1及び図2a〜図2dに示されている好ましい実施形態に対してピストンの設計及びその関連の吸引チャンバの設計だけが改造されている。したがって、電磁弁42,44の作動は、上述の弁の作動と同一なので、かかる作動についてはこれ以上説明しない。
【0091】
図4で理解できるように、下側ピペット本体4は、これが2つの部分で構成された摺動ピストン12を適当なキャビティ内に収容することができるよう依然として中空である。
【0092】
このキャビティ内に収容されたピストン12は、小径の下側円筒形部分12bに続く上側円筒形部分12aを有する。部分12bは、相補形状の下側本体4bの一部によって案内され、部分12aは、大径の上側本体4aの一部分内に同心状に且つ距離を置いて収容される。加うるに、これら2つの中空部分4a,4bの各々は、それぞれ、固定シールを有し、これら固定シールは、これに対して摺動するピストン12の輪郭を辿っている。この同じピストン12は、その部分12aの外部に固定されたシール17を有し、このシールは、大径部分4aの内壁の輪郭を辿る一方で、ピストンの前後の運動中、上側シール16の下に収容されたままである。
【0093】
この構成では、下側吸引チャンバ20が、上から下に向かって、下側シール14、ピストンの下端部24、部分4bの内壁及びピペット本体4内に形成された下向き障害物26によって画定されている。加うるに、上側吸引チャンバ22は、上から下に向かって、上側シール16、部分4aの内壁、ピストン部分12a及び可動シール17によって画定されている。注目されるべきこととして、シール17,14相互間に位置する可変容積空間は、液体サンプル採取及び計量分配には直接的には用いられず、このことは、この空間がチャンバ20,22とは異なり、吸引チャンバとは見なされないことを意味している。
【0094】
この構成では、チャンバ20は、小径部分4bの内壁と同一の軸線及び同一の直径を有する円板の形態をした軸線5に対する一定の断面を有することが全体として理解できる。また、チャンバ22は、大径部分4aの内壁の外径に等しい外径及び部分12aの外径に等しい内径を備えた同一軸線の環状リングの形状をした軸線5に対する一定断面を有することが全体として理解できる。
【0095】
この構成では、2つのピストン部分12a,12bの直径及び下側ピペット本体の部分4aの内径を適当に定めることにより、2つのチャンバ20,22について同一の値の断面積を得ることは容易に可能である。したがって、ピストンの変位が所与の場合、下側チャンバ20内の容積の変化と上側チャンバ22の容積の変化との間において同一の絶対値が得られる。
【0096】
図5に示されている他の実施形態では、この場合も又、図1、図2a〜図2d及び図4に示されている先の好ましい実施形態に対してピストン及びその関連の吸引チャンバの設計のみが改造されている。したがって、電磁弁の作動についてはこれ以上説明しない。というのは、電磁弁の作動は、上述の電磁弁の作動と同一又はほぼ同一だからである。
【0097】
図5で理解できるように、下側ピペット本体4は、これが単一部分で構成された摺動ピストン12を適当なキャビティ内に収容することができるよう依然として中空である。
【0098】
このキャビティ内に収容されたピストン12は、相補形状の上側本体部分4aによって案内される上側円筒形部分を有し、ピストンは、これに続いていて、大径の下側本体4bの一部分内に同心状に且つ距離を置いて収容された同一直径の下側円筒形部分を有する。また、下側中空部分4bは、上側シール16及び下側シール14を固定的に収容しており、これらシールは両方共、これらに対して摺動し、大径区分4bに対して半径方向内方に距離を置いたところに位置するピストン12の輪郭を辿る。
【0099】
また、この同じピストン12の外部にはシール17が固定されており、このシールは、大径部分4bの内壁の輪郭を辿る一方で、ピストンの前後の運動中、上側シール16の下に収容されたままである。同様に、ピストン12の外部には別のシール19が固定されており、このシールも又、大径部分4bの内壁の輪郭を辿る一方で、ピストンの前後の運動中、上側シール16の下に且つ下側シール14の上に収容されたままである。
【0100】
この形態では、下側吸引チャンバ20は、上から下まで、可動シール19、部分4bの内壁、単一の区分のピストン12及び固定シール14によって画定されている。同様に、上側吸引チャンバ22は、下から上まで、可動シール17、部分4bの内壁、単一区分のピストン12及び固定シール16によって画定されている。
【0101】
この構成では、チャンバ20,22は、大径部分4bの内壁の外径に等しい外径及びピストンの直径と同一の内径を備えた同一軸線の環状リングの形状をした軸線5に対して同一の一定断面を有することが全体として理解できる。したがって、ピストンが、その製作を容易にする単純な形状のものであるこの実施形態では、ピストンの変位が所与の場合、下側チャンバ20内の容積の変化と上側チャンバ22の容積の変化との間においても同一の絶対値が得られる。
【0102】
理想的には、チャンバ20,22の互いに等しい死空間を得て、それにより、2つの方向の各々におけるピストンの運動中にピペット操作の対称性を向上させるためにピストンの上方行程の終わりにおけるシール16,17相互間の距離は、下方ピストン行程の終わりにおけるシール14,19相互間の距離に等しく、ピペット操作容積は、ピストンにより押し退けられる容積だけでなく死容積にも依存することが思い起こされる。
【0103】
図6a〜図7bは、本発明の別の好ましい実施形態の詳細図であり、この実施形態では、ピストン及びその関連の吸引チャンバの設計は、図4に示されている先の実施形態の設計と同一又はほぼ同一である。それにもかかわらず、かかる設計は、本発明の範囲から逸脱することなく、上述の他の実施形態のうちの任意のものの設計と同一であっても良く又はこれとほぼ同一であっても良い。
【0104】
図6aは、ピペット100をそのピストン12が最も下の位置にある状態で示し、図6bは、ピペット100をそのピストン12が最も上の位置にある状態で示している。特定の観点は、この場合、以下に詳細に説明する流体連通実施手段40の設計にある。
【0105】
直線ピストン52を収容すると共に3つの入口1,2,3を備えた形式の2つの三方電磁弁42,44が設けられている。連通溝を備えた直線ピストン52の運動により、各電磁弁は、入口1,2相互間の流体連通及び入口2,3相互間の流体連通を交互に設定することができ、入口1,3相互間の連通は、電磁弁の構成によって不可能になっている。上述したように、これら電磁弁42,44は、リー・カンパニーにより番号LHDA 053 1115Hで市販されている形式のものであるのが良い。
【0106】
第1の電磁弁42は、取り付け板54により下側ピペット本体の部分4aに固定されており、取り付け板54は、この取り付け板に固定された電磁弁の3つの入口1,2,3とそれぞれ永続的な連通状態にある3つのオリフィス1′,2′,3′を備えている。オリフィス1′は、下側チャンバ20と連通すると共に導管58を備えたコネクタ56と連通している。オリフィス2′は、ノズルチャネルと連通し、オリフィス3′は、導管62を備えたコネクタ60とのみ連通している。一例を挙げると、導管58,62に代えて、別途本体内に直接設けられたチャネルを用いても良い。
【0107】
同様に、電磁弁44は、取り付け板64により下側ピペット本体の部分4bに固定されており、取り付け板64は、この取り付け板に固定された電磁弁の3つの入口1,2,3とそれぞれ永続的な連通状態にある3つのオリフィス1′,2′,3′を備えている。オリフィス1′は、上側チャンバ22と連通すると共に導管62の他端部に連結されたコネクタ66と連通している。オリフィス2′は、ピペットの外部とのみ連通し、オリフィス3′は、導管58の他端部に連結されたコネクタ68とのみ連通している。
【0108】
したがって、図7aで理解できるように、第1の電磁弁42は、入口1,2が互いに連通状態にあるとき、下側チャンバ20と先端部30に通じているノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする第1の流体連通Aを可能にする。チャンバ20から出た空気は、オリフィス1′、電磁弁42の入口1、ピストン溝、電磁弁42の入口2、取り付け板54のオリフィス2′、そしてノズルチャネル28を次々に通って循環する。この場合も又、この図7aでは、電磁弁44の入口1,2が互いに連通状態にあるとき、この電磁弁は、上側チャンバ22とピペットの外部との間の空気の自由循環を可能にする第3の流体連通Cを可能にする。チャンバ22から出た空気は、取り付け板64のオリフィス1′、電磁弁44の入口1、ピストン溝、電磁弁44の入口2、取り付け板64のオリフィス2′、そしてピペット外部を次々に通って効果的に循環する。
【0109】
加うるに、図7bに関し、電磁弁42,44の各々の入口2,3が互いに連通状態にあるとき、これら電磁弁は、互いに協働して、上側チャンバ22と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする第2の流体連通Bと、下側チャンバ20とピペットの外部との間の空気の自由循環を可能にする第4の流体連通Dの両方を可能にする。
【0110】
チャンバ22から出た空気は、取り付け板64のオリフィス1′、コネクタ66、導管62、コネクタ60、取り付け板54のオリフィス3′、ピストン溝、電磁弁42の入口2、取り付け板54のオリフィス2′、そしてノズルチャネル28を次々に通って循環する。加うるに、チャンバ20から出た空気は、取り付け板54のオリフィス1′、コネクタ56、導管58、コネクタ68、取り付け板64のオリフィス3′、電磁弁44の入口3、ピストン溝、電磁弁44の入口2、取り付け板64のオリフィス2′、そしてピペット外部を次々に通って循環する。
【0111】
図6a〜図7bに示されているこの実施形態では、モジュール10は、明らかなこととして、特に流体連通A,C及び流体連通B,Dの自動的な交互確立に関し、ピペットの機能が上述したものであるようにあらかじめプログラムされている。
【0112】
明らかなこととして、当業者であれば、非限定的な例によって説明したに過ぎない本発明の種々の改造を想到できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、サンプル採取やレシピエント(受容体)への液体の較正された状態の添加を目的とするサンプル採取ピペット(実験室ピペット又は液体移送ピペットとも呼ばれている)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
取っ手を形成する上側ピペット本体と下端部のところに1つ又は2つ以上の先端部保持ノズルを備えた下側ピペット本体とを一体化した形式の従来設計を有するサンプル採取ピペットが先行技術から知られており、先端部保持ノズルの公知の機能は、コンソマブレ(消耗品)とも呼ばれているサンプル採取先端部を保持することにある。
【0003】
下側ピペット本体は、手動又は電動式機器により作動される摺動ピストンを収容し、それにより、ピストンは、液体サンプル採取段階中に上昇し、液体移送段階中に下降し、上向き運動は、一般に、先の下向き運動中に圧縮されたばねの解除の作用下で行われる。
【0004】
この点に関し、この種の設計は、ピペットが手動式であるにせよ電動式であるにせよいずれにせよ、単一チャネル形ピペット、即ち、単一の先端部保持ノズルを備えたピペットと多チャネル形ピペット、即ち、複数の先端部保持ノズルを備えたピペットの両方に見受けられることは注目されるべきである。
【0005】
ピストンに設定される上方行程は、サンプル採取される液体の容積又は量を決定し、この量は、ユーザにより例えばサムホイール又は調整ねじ若しくはディジタルキーパッドによってあらかじめ設定される。
【0006】
従来型ピペットでは、ピストンは、厳密に円筒形のものであり、ピペットの下側本体に形成されていて、所謂吸引チャンバを画定する相補形状のキャビティ内で摺動する。このチャンバは、一部が、ピストンの下端部によって画定され、このことは、このピストンが運動状態にあるとき、その容積が変化することを意味する。したがって、ピストンの所与の行程に続く吸引チャンバ内の空気容積又は量の増大に対応したサンプル採取液体の体積又は量は、ピストンの断面積に所与の行程の長さを乗算して得られる積に実質的に等しい。
【0007】
それ故、ピペットのサンプル採取能力又は容量は、現時点においては、そのピストンの断面積及びその最大行程の長さの両方によって決定される。したがって、ピペット能力、即ち、サンプル採取することができる液体の量の最大値又はサンプル採取することができる液体量の最大値と最小値の比(典型的には、10〜20のオーダーである)を増大させるためには、上述の2つのパラメータのうちの少なくとも一方の値を増大させる必要がある。
【0008】
この点において、最大行程長さから成る第1のパラメータに関し、この長さの増大により、ピペットに関する全体的なエルゴノミクスの問題が直ちに生じることが注目されるべきである。
【0009】
加うるに、ピストン直径から成る第2のパラメータに関し、その増大により、サンプル採取量の精度及び再現性が損なわれることは不可避であろう。
【0010】
したがって、従来型ピペットの設計では、大きなサンプル採取容量、エルゴノミクス、サンプル採取量の精度及び再現性から成る本質的な基準を同時に満足させることができない。
【0011】
この問題に取り組むために、特に米国特許第3640434号明細書又は仏国特許第0600134号明細書から知られている所謂「多容積形」ピペットが提案された。この種の多容積形ピペットは、先端部ホルダから始まって漸増する直径/容積の一連のチャンバを備え、かかる直径/容積の各々は、対応の直径のピストン断面と協働する。これらチャンバを互いに連通させるか又はこれらチャンバを互いに連通させないで互いに隔離するかにより、ピペットをサンプル採取されるべき液体量の値に適合させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第3640434号明細書
【特許文献2】仏国特許第0600134号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それにもかかわらず、この原理では、上述の問題を完全に満足のゆく仕方で解決することができないということは注目されるべきである。というのは、ピペットの容量を増大させる必要性が高くなればなるほど、ピストンの摺動運動の方向に重ね合わされなければならない吸引チャンバの数がそれだけ一層増大するからである。この場合、チャンバの数のこの増大により、ピペットの全長が増大することになり、これは、そのエルゴノミクスにとって明らかに不利となる。
【0014】
また、サンプル採取されるべき液体の量が増大すれば増大するほど、大きな直径のチャンバ及びピストンの使用により、精度及び再現性に関する満足度がそれだけ一層低くなる。
【0015】
本発明の目的は、先行技術の実施形態の上述の欠点を少なくとも部分的に解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的のため、本発明の要旨は、第1に、摺動ピストンを収容すると共にノズル貫通チャネル付きの先端部保持ノズルを備えた下側ピペット本体を有するサンプル採取ピペットであって、下側ピペット本体及びピストンが、互いに隔離された下側チャンバ及び上側チャンバを画定しているようなピペットにある。本発明によれば、ピペットは、摺動方向の一方におけるピストンの運動により、下側チャンバの容積の増大と上側チャンバの容積の減少が同時に生じ、他方の摺動方向におけるピストンの運動の際には、下側チャンバの容積の減少と上側チャンバの容積の増大が同時に生じるよう設計されている。加うるに、ピペットは、下側チャンバと下側チャンバから隔離されたノズルチャネルとの間の第1の流体連通と、上側チャンバと当該チャネルとの間の流体連通を交互に可能にする流体連通実施手段を有する。
【0017】
したがって、一般に、本発明により、有利には、上述の2つのチャンバのうちの一方、好ましくは下側チャンバの容積の増大をもたらすピストンの上方行程を生じさせ、上述の2つのチャンバのうちの他方の容積の増大をもたらすピストンの下方行程を生じさせることの両方によって液体をサンプル採取することができる。より具体的にいえば、このオプションにより、サンプル採取されるべき液体の量に関して必要とされるほど多くの回数にわたりピストンの上方及び下方行程を同時に生じさせることにより1回の同じ液体サンプル採取操作を実施する可能性が提供される。明らかなこととして、同一の先端部において所与の量の液体をサンプル採取するようになったこのサンプル採取段階中及びピストン行程方向の各反転前に、流体連通実施手段を第1又は第2の流体連通のいずれかに切り換えて所望の吸引効果を得るようにする手立てが講じられている。以下に詳細に説明するように、ピストン行程の方向の各反転前における流体連通実施手段の作動は、オペレータによって手動で又はあらかじめプログラムされたピペット指令モジュールによって自動的にどちらでも良い状態で実施できるが、この後者の手法は、特に好ましいことが注目される。
【0018】
明らかなこととして、本発明により、ピストンの前後運動中に、連続液体サンプル採取が可能であるが、同じことは、別のレシピエントへのサンプル採取液体の次の計量分配/移送操作に当てはまる。サンプル採取操作がいったん完了すると、別のレシピエントへの液体の計量分配は、別の一連の上方及び下方ピストン行程によって達成され、ピストンの上方行程により、上述の2つのチャンバのうちの一方、好ましくは上側チャンバの容積が減少し、ピストンの下方行程により、2つのチャンバのうちの他方の容積が減少する。この場合も又、液体を先端部から別のレシピエントに移送するようになった計量分配段階中及びピストン行程の方向の各反転前において、流体連通実施手段を第1又は第2の流体連通のいずれかに切り換えて先端部保持ノズルのチャネルの方向に出る空気の所望の作用効果を得て、その加圧を保証するようにする手立てが講じられている。
【0019】
この場合も又、ピストンの前後運動の回数は、移送されるべき液体の量で決まるが、本発明のピペットは、完全に従来通り制御でき、即ち、この従来操作モードが少量の液体に関する操作のためだけに保持されている場合であっても、液体をサンプル採取するための簡単な単一のピストン行程及び液体を別のレシピエントに向かって計量分配するための簡単な単一の戻りピストン行程によって制御できるということがいえる。
【0020】
したがって、本発明は、大容積(多量)サンプル採取にとって極めて満足のゆくものであることが分かった。というのは、ピペットの能力又は容量は、ピストンの最大行程によっては制限されず、その直径によっても制限されず、ピペットの任意他の要素によっても制限されないからである。というのは、1回の液体サンプル採取操作のためだけのピストンの前後操作の回数は、理論的に制限されないからである。より具体的に説明すると、ピストンにより部分的に画定される2つのチャンバしか必要としない本発明のピペットと関連したこの大きな容量は、ピペットの全体的エルゴノミクスにとってなんら不利ではない。というのは、ピストンの最大行程は、ピペットの最大サンプル採取容量とは無関係に、妥当な値に自由に設定できるからである。
【0021】
上述したのと同じ理由で、ピストン直径は、大容積サンプル採取を達成するために大きめにする必要はなく、それにより、サンプル採取される容積の精度及び良好な再現性を得ることができる。
【0022】
したがって、特に先端部保持ノズルのチャネルをピペット本体のどの吸引チャンバからも隔離するという特徴を備えた本発明は、これにより、大きなサンプル採取容量、エルゴノミクス、サンプル採取される容積の精度及び再現性から成る本質的な基準をどれも妥協させることなく同時に満足させることができるので、完全に満足のゆくものである。
【0023】
一例を挙げると、本発明のピペットでは、ピストンの所与の方向における最大行程により、0.1μlの精度で100μlをサンプル採取することができる場合、863.2μlの液体容積のサンプル採取が達成され、この場合、ピストンの4回の前後運動を行い、次に63.2μlに相当する少なくとも部分的な行程が行われる。明らかなこととして、利点のうちの1つは、863.2μlのこのサンプル採取が従来型先行技術のピペットの精度とほぼ同じ精度で達成されるということにある。というのは、このサンプル採取は、863.2μlのこの全容積を単一のピストン行程中にサンプル採取しなければならない従来型先行技術のピペットの精度に対し、主として微調整される100μlのサンプルを引き込む最大ピストン行程を有するからである。
【0024】
好ましくは、ピペットは、流体連通実施手段を自動的に作動させる指令モジュールを備えており、サンプル採取されるべき液体の量に応じて必要な場合、流体連通実施手段は、第1及び第2の流体連通のうちの一方をセットアップしている形態にある状態で、摺動方向のうちの一方におけるピストンの一行程により動作される液体サンプル採取段階が、流体連通実施手段を第1及び第2の流体連通のうちの他方をセットアップしている形態に自動的に切り換えた状態で、他方の摺動方向におけるピストンの一行程により続行されるようになっている。この場合、上述したように、ピストン行程は、必要なほど多くの回数にわたり互いに次々に続き、各行程相互間における流体連通実施手段の適当な自動的作動は、ピペット制御モジュールによって保証される。同様な原理は、サンプル採取液体の小出し段階についても提供されることは明らかである。
【0025】
この点に関し、制御モジュールは、サンプル採取されるべき液体の量と関連して、液体量をサンプル採取するのに必要なピストンの連続上方及び下方行程の回数及び長さを決定するよう設計され、この制御モジュールは、上述の液体サンプル採取時点において、制御モジュールが、液体サンプル採取中、ピストン運動方向の各反転前に、第1及び第2の流体連通のうちの一方から他方への切り換えを可能にするために、流体連通実施手段も又自動的に作動させることにより、ピストンを定められた仕方で自動的に作動させるよう設計されている。
【0026】
したがって、制御モジュール及び特にこのモジュールを搭載したソフトウェア型のプログラムは、サンプル採取されるべき容積に対する行程の回数及びこれらの長さを定めることができ、例えば、この容積の値は、ユーザによりモジュールにあらかじめ入力されている。計算されたデータは、オプションとして、ユーザに知らせるようモジュール上に表示されるのが良い。一例を挙げると、行程長さを決定するためには、プログラムは、好ましくは、場合によっては考えられる最大行程のほんの何分の一かに相当する場合のある最後の行程を除き、ピペットの設計によって与えられる最大行程を選択して正確な所望の容積を得ることができるようにすることが注目される。しかしながら、変形例として、1回のサンプル採取操作をもたらすピストンの前後の運動中、ピストンの全行程を最大設計長さよりも短い長さにわたって行うようにする手立てを講じることが可能であり、これは、本発明の範囲から逸脱しない。
【0027】
また、好ましくは、2つの摺動方向の各々におけるピストンの全行程が等量の液体サンプル採取をもたらすようにするような手立てが講じられる。ただし、かかる手立てがこれとは別の仕方で講じられていても、本発明の範囲から逸脱しない。
【0028】
したがって、ピペット操作セットアップ指令に続き、プログラムは、ピストンを動かす命令を流体連通実施手段と電動式機器の両方に送り出すことができる。
【0029】
この場合も又、このモジュール指令プログラムによるピペットのこの管理は、次の別のレシピエントへの液体の計量分配操作について同様な仕方で行われることは注目されるべきである。
【0030】
上述したように、変形例として、流体連通実施手段がたとえ上述の自動的実施が好ましい代替手段であるとしても、ピストンの運動を生じさせるのと同様に手動で作動されるようにする手立てを講じることが可能である。
【0031】
好ましくは、流体連通実施手段は、少なくとも1つの三方電磁弁又は任意のこれと均等な手段から成る。
【0032】
この点に関し、流体連通実施手段は又、好ましくは且つ変形例として、上側チャンバとピペットの外部との間の第3の流体連通及び下側チャンバとピペットの外部との間の第4の流体連通を可能にすることができるということは注目されるべきである。
【0033】
ピペットの外部との吸引チャンバのこれら第3及び第4の別の連通により、容積が液体サンプル採取中に減少するチャンバが、ピペット内に過剰圧力を生じさせないようにピペットの外部に向かってその空気を逃がすことができると共に容積が液体の計量分配中に増大するチャンバがピペット内に負の圧力を生じさせないようそれ自体ピペットの外部からの空気で一杯になることができる。
【0034】
上述の場合、4通りの流体連通の動作/動作停止を管理するため、流体連通実施手段は、同期して作動され、オプションとして互いに連通する2つの三方電磁弁から成るのが良い。
【0035】
それにもかかわらず、他の変形例としての解決策を想到でき、かかる解決策としては、外部に対する各チャンバの開閉がそれぞれ、交互の第1の流体連通と第2の流体連通を保証する三方電磁弁形式の手段とは独立しているが、これら後者の手段と同期される2つの簡単な「オン/オフ」電磁弁によって保証されるような解決策が挙げられる。より一般的にいえば、各三方電磁弁に代えて、二方弁とも呼ばれている2つの「オン/オフ」電磁弁を用いることができる。
【0036】
ピペットは、本発明の範囲から逸脱することなく、単一チャネル形ピペットであっても良く、多チャネル形ピペットであっても良いことは注目されるべきである。この後者の場合、各々が対応のピストンを収容した先端部保持ノズルの全てが、特にこれらが各々流体連通実施手段と関連しているので、本発明に従って設計されるようにする手段を講じることができる。この場合、各先端部保持ノズルと関連したこれら流体連通実施手段は、ピストンを全て支持している機器が行程の終わりに達すると、同時に作動される。
【0037】
また、上述のピストンは、好ましくは、下側ピストン部分の断面積よりも大きな断面積の上側部分を有し、回転体として形作られた上側チャンバは、下側ピペット本体と上側ピストン部分との間に画定され、下側チャンバは、下側ピストン部分の下端部の下に画定される。この構成によれば、2つのピストン部分の直径及び下側ピペット本体の内径を適当に決めることにより、ピストン変位が所与の場合、下側チャンバの容積変化と上側チャンバの容積変化との同一の絶対値を得ることが容易に可能である。
【0038】
それにもかかわらず、ピストンの実施形態について他の構成が可能である。
【0039】
本発明の別の要旨は、上述のサンプル採取ピペットに指令する方法であって、この方法は、先端部保持ノズルによって支持されたサンプル採取先端部で行う液体サンプル採取ステップを有し、液体サンプル採取ステップは、流体連通実施手段が第1又は第2の流体連通のうちでいずれにせよ先端部での液体のサンプル採取を保証する流体連通をセットアップしている形態にある状態で、摺動方向のうちの一方におけるピストンの一行程の後、サンプル採取ステップは、サンプル採取されるべき液体の量に応じて必要な場合、流体連通実施手段が第1及び第2の流体連通のうちの他方をセットアップしている形態に自動的に切り換えた状態で、他方の摺動方向におけるピストンの一行程により続行されて先端部における液体のサンプル採取を実施させることを特徴とする指令方法にある。
【0040】
また、この方法は、先端部によりサンプル採取された液体の別のレシピエントへの次の計量分配/移送ステップを有し、このステップは、上述の流体連通実施手段が上述の別のレシピエントへの液体の計量分配を保証するよう第1又は第2の流体連通をセットアップしている形態にある状態で摺動方向のうちの一方におけるピストン行程に続き、この計量分配/移送ステップが、必要ならば、上述の流体連通実施手段が別のレシピエントへの液体の計量分配を保証するために第1又は第2の流体連通の他方をセットアップしている形態に切り換えられた状態で、他方の摺動方向におけるピストン行程により計量分配されるべき液体の量と関連して続行されるように実施される。
【0041】
この場合も又、第1又は第2の流体連通のうちの一方から他方への切り換えが、たとえ手動による手段がオプションとして考慮されている場合であっても、好ましくは自動的に行われることが思い起こされる。
【0042】
本発明の他の利点及び他の特徴は、以下に与えられる非限定的な詳細な説明から明らかになろう。
【0043】
以下の説明は、添付の図面に関している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの概略断面正面図である。
【図2a】図1に示されているサンプル採取ピペットの機能を説明する略図である。
【図2b】図1に示されているサンプル採取ピペットの機能を説明する略図である。
【図2c】図1に示されているサンプル採取ピペットの機能を説明する略図である。
【図2d】図1に示されているサンプル採取ピペットの機能を説明する略図である。
【図3】本発明の他の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの概略断面正面図である。
【図4】本発明の他の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの概略断面正面図である。
【図5】本発明の他の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの概略断面正面図である。
【図6a】本発明の別の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの詳細断面正面図である。
【図6b】本発明の別の好ましい実施形態としてのサンプル採取ピペットの詳細断面正面図である。
【図7a】図6a及び図6bに示されているサンプル採取ピペットを備えた流体連通実施手段の部分分解組立て詳細図である。
【図7b】図6a及び図6bに示されているサンプル採取ピペットを備えた流体連通実施手段の部分分解組立て詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
先ず図1を参照すると、単一チャネル形で電動式の本発明の好ましい一実施形態としてのサンプル採取ピペット100が見える。以下に与えられる説明全体において、「頂部」、「上側」、「底部」、「下側」という用語は、ピペットがピペット操作のためにオペレータの手で保持されているときのピペットの主長手方向軸線5に関して考えられている。
【0046】
ピペット100は、その頂部に、取っ手(図示せず)を形成する本体を有すると共に下側ピペット本体を一体化した底部3を有し、底部3の下端部には、従来型の円錐を平べったくした形状の先端部保持ノズル6が配置されている。当業者には知られているように、底部3は、好ましくは、取っ手を形成する上側本体に螺着されている。
【0047】
また、ピペットは、指令モジュール10を備えており、この指令モジュールをその本体のうちの一方、特に上側取っ手形成本体内に完全に組み込むことができ、或いは、この指令モジュールを例えば制御室内においてこれら同一のピペット本体から距離を置いて位置する装置で構成することができ、これはどちらでも良い。
【0048】
下側ピペット本体4は、これが摺動ピストン12を適当なキャビティ内に収容することができるよう中空である。
【0049】
図1で理解できるように、このキャビティ内に収容されたピストン12は、大径の下側円筒形部分12bに続く上側円筒形部分12aを有し、これら部分12a,12bの各々は、それぞれ、相補形状の下側本体4a,4bの一部によって案内される。加うるに、これら2つの中空部分4a,4bの各々は、それぞれ、固定シールを有し、これら固定シールは、これに対して摺動するピストン12の輪郭を辿っている。
【0050】
この構成では、下側吸引チャンバ20が、上から下に向かって、下側シール14、ピストンの下端部24、部分4bの内壁及びピペット本体4内に形成された下向き障害物26によって画定されている。注目されるべきこととして、この障害物26は、本質的に、チャンバ20を先端部保持ノズル6内に少なくとも部分的に軸線5に沿って形成されたノズル貫通チャネル28から隔離するために設けられており、サンプル採取先端部30を先端部保持ノズル6に取り付けると、ノズル貫通チャネル28がサンプル採取先端部30と永続的に連通することができるようになっている。より詳細に説明すると、チャネル28は、サンプル採取先端部30内に下方に通じ、このチャネルは、そのより上方部分に、枝分かれ箇所を有し、この枝分かれ箇所は、下側本体に対して半径方向/側方にその他端部内に開口することができるようになっており、それにより、チャネル28は、後述する流体連通実施手段と連通することができる。
【0051】
上側吸引チャンバ22は、上から下に向かって、上側シール16、上側ピストン部分12a、部分4bの内壁、下側ピストン部分12bの上端部32及びシール14によって画定されている。注目されるべきこととして、このシール14は、2つの吸引チャンバ20,22を互いに隔離する役割を果たしており、又、上側チャンバ22は、更に、ノズル貫通チャネル28から隔離されていることが注目される。
【0052】
ピストン部分12a,12bがそれぞれ部分4aの内壁及び部分4bの内壁の輪郭を辿っているこの構成では、チャンバ20は、同一の軸線及び大径部分4bの内壁と同一の直径を有する円板の形態をした軸線5に対する一定の断面を有することが全体として理解できる。また、チャンバ22は、部分4bの内壁の外径に等しい外径及び小径部分12aの外径に等しい内径を備えた同一軸線の環状リングの形状をした軸線5に対する一定断面を有することが全体として理解できる。
【0053】
ピストン12は、好ましくは、指令モジュール10に接続され、本体4に対するこのピストンの摺動方向35の2つの方向36,38のいずれかの一方における運動を指令する電動式機器(図示せず)によって作動され、この方向35は、軸線5に平行である。一例を挙げると、本明細書の残りの部分において、上方摺動方向36をピストンの「上方行程」と呼び、他方、下方摺動方向38をピストンの「下方行程」と呼ぶ。
【0054】
したがって、上述の好ましい実施形態によれば、ピストンの上方行程により、下側チャンバ20の容積の増大と上側チャンバ22の容積の減少が同時に生じ、これとは逆に、ピストンの下方行程により、上側チャンバ22の容積の増大と下側チャンバ20の容積の減少が同時に生じる。チャンバ20,22の設計を逆にすると、上述の作用効果を逆にすることができ、これは、本発明の範囲から逸脱しない。
【0055】
ピペット100は、図1に全体が40で示された流体連通実施手段を更に有し、これら手段は、好ましくは、公知形式の2つの三方電磁弁から成り、これらについては以下にこれ以上説明しない。しかしながら、一例を挙げると、かかる弁は、3つの入口1,2,3を備えたリニアピストン電磁弁であるのが良く、かかる弁は、直線ピストンの運動により、入口1,2相互間の連通及び入口2,3相互間の連通を交互に可能にすることができ、この直線ピストン電磁弁は、例えば、リー・カンパニー(LEE COMPANY)により番号LHDA 053 1115Hで市販されている弁である。
【0056】
以下に詳細に説明するように、これら手段40の特徴として、適当に向けられると、これら手段により、液体をピストンの上方行程中とその下方行程中の両方においてサンプル採取することができ、その結果、液体をピストン12の前後運動中、連続して先端部30内に引き込むことができるようになる。したがって、サンプル採取できる最大容積に対する唯一の制限は、サンプル採取先端部の容量であり、先行技術の実施形態の場合のようなピペットの設計ではない。加うるに、注目されるべきこととして、別のレシピエントへの液体の次の計量分配は、同様に行われ、即ち、ピストン12の前後運動により行われ、かかる前後運動は、必要ならば、数回の往復行程を有することができる。
【0057】
この好ましい実施形態では、第1の三方電磁弁42は、ノズル貫通チャネル28との2つのチャンバ20,22の交互連通に専用であり、第2の三方電磁弁44は、ピペットの外部との2つのチャンバ20,22の交互連通に専用であり、これら2つの弁42,44は、これらが電気的に接続されている指令モジュール10によって同期されると共に自動的に作動される。
【0058】
したがって、第1の電磁弁42は、3つの入口1,2,3を有し、これらのうち入口1は、ノズル4内に半径方向/側方に開口したノズル貫通チャネル28の上端部と連通し、入口2は、部分4bを経て下側チャンバ20と連通し、入口3は、これ又部分4bを経て上側チャンバ22と連通している。上述の連通は、例えば通常の連結導管又はピペット本体内に直接形成されたチャネルによって永続的に確立される。他方、入口は、電磁弁42がこの目的のために作動された場合に互いに連通するに過ぎず、それにもかかわらず、上述の実施形態において入口1,2相互間の連通及び入口1,3相互間の連通のみを摺動弁ピストンにより交互にセットアップできることが理解される。入口2,3相互間の連通は、実施されず、好ましくは、例えば上述の直線ピストン形の電磁弁の設計によって不可能になっている。
【0059】
同様に、第2の電磁弁44は、3つの入口1,2,3を有し、これらのうち入口1は、部分4bを経て上側チャンバ22と連通し、入口2は、これ又、部分4bを経て下側チャンバ20と連通し、入口3は、ピペットの外部の周囲空気と連通している。
【0060】
この場合も又、上述の連通は、例えば単純な連結導管によって永続的に確立される。他方、入口は、電磁弁44がこの目的のために作動された場合に互いに連通するに過ぎず、上述の実施形態において入口1,3相互間の連通及び入口2,3相互間の連通のみを摺動弁ピストンにより交互にセットアップできることが理解される。入口1,2相互間の連通は、実施されず、好ましくは、電磁弁の設計によって不可能になっている。
【0061】
したがって、図1を参照すると理解できるように、第1の電磁弁42は、入口1,2が互いに連通状態にあるとき、下側チャンバ20と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする符号Aで示された第1の流体連通を保証するが、この後者のチャネルとチャンバ22との連通を阻止する。また、入口1,3が互いに連通状態にあるとき、これら入口は、上側チャンバ22と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする符号Bで示された第2の流体連通を保証するが、この場合、このチャネルとチャンバ20との連通を阻止する。
【0062】
同様に、第2の電磁弁44は、入口1,3が互いに連通状態にあるとき、上側チャンバ22とピペットの外部との間の空気の自由循環を可能にする符号Cで示された第3の流体連通を保証するが、このピペット外部とチャンバ20との連通を阻止する。また、入口2,3が互いに連通状態にあるとき、これら入口は、下側チャンバ20とピペット外部との間の空気の自由循環を可能にする符号Dで示された第4の流体連通を保証するが、この場合、このピペット外部とチャンバ22との連通を阻止する。
【0063】
次に図1及び図2a〜図2dを参照して、上述のピペット100の機能について説明する。
【0064】
先ず、ピペットユーザは、モジュール10に設けられている入力手段46を用いてサンプル採取されるべき容積又は量の値を入力し、これら手段46は、サムホイール、例えば調整ねじ又はディジタルキーパッドの形態をしている。入力した値を好ましくは、ディジタルモニタ48上に表示し、このモジュールを搭載したソフトウェア形式のプログラム50に送る。
【0065】
プログラム50は、サンプル採取されるべき容積に対するピストン行程の回数及びこれらの長さを決定する。例えば、所望の値が400μlであり、各最大上方及び下方行程により、100μlの量をサンプル採取できる場合、プログラムは、各々が100μlのサンプル採取を保証する最大行程長さの状態でピストン12の2回の往復行程を行わなければならないということを判定する。思い起こされることとして、2つのチャンバが互いに異なる断面を有する場合、両方の行程方向において液体の同一のサンプル採取又は同一の計量分配を得るには、2回の行程のうちの一方を他方よりも高い値に設定する。
【0066】
上述のデータは、いったん決定されると、オプションとして、ユーザによる視覚化のためにモニタ48上に表示するのが良く、ユーザは、次に、サンプル採取されるべき液体のレシピエント内に先端部30を浸漬させた後、この目的のために設けられているモジュール10に付いているボタンを押すことによりピペット操作のトリガを指令することができる。
【0067】
プログラム50が命令を出してピストンを上向きの方向36に動かす前に、プログラムは、命令を電磁弁42,44に送って電磁弁が連通A,Cをもしまだ確立されていない場合にセットアップする形態に切り換えるようにする。次に、ピストンを上方運動36の状態にする命令がピストン装置に与えられる。この運動中、チャンバ20の容積は、増大することが分かり、それによりチャネル28からチャンバ20に向かう方向における連通Aで吸引がセットアップされる。というのは、連通Cは、このチャンバを外気から隔離するからである。この吸引は、遠位端部がこの同一の液体中に浸漬されているサンプル採取先端部30内における液体の上昇として表われる。
【0068】
それと同時に、連通Cにより、空気は、容積が減少している上側チャンバ22から逃げ出ることができ、この空気は、ピペットの外部に逃げ、それにより、このチャンバ22内の過剰圧力の開始が阻止される。
【0069】
したがって、ピストンの先の下方段階中に圧縮されていたばねを単に解除することにより得ることができる図2aに示されているピストンの最初の上方行程の終わりに、先端部内に引き込まれる液体の量は、100μlである。ピペット100は、ピストンの下方運動により、サンプル採取操作を自動的に続行するようそれ自体準備するが、この前に、プログラム50は、命令を電磁弁42,44に送ってこれら電磁弁が、連通B,Dをセットアップする形態に同時に切り換わるようにする。
【0070】
次に、ピストンを下向きの方向38に動かすための命令をピストン装置に送る。図2bに示されているこの運動中、チャンバ22の容積は、増大することが示され、それによりチャネル28からチャンバ22に向かう方向における連通B内の吸引がセットアップされる。というのは、連通Dは、このチャンバを外気から隔離するからである。この吸引は、遠位端部がこの同一の液体中に依然として浸漬されている先端部30内における液体の新たな上昇として表われる。
【0071】
それと同時に、連通Dにより、空気は、容積が減少している下側チャンバ20から逃げ出ることができ、この空気は、ピペットの外部に逃げ、それにより、このチャンバ20内の過剰圧力の開始が阻止される。
【0072】
したがって、ピストン12の上方行程と下方行程は互いに、必要に応じて多くの回数にわたり、即ちこの場合には4回交互に続いて400μlの所望の容積に達する。また、モニタ48により既に実施された行程回数及び/又は実施されるべき残りの行程回数がユーザに知らされるようにする手立てを講じることが可能である。
【0073】
次に、ピストンの第2の、即ち最後の前後運動が完了すると、サンプル採取先端部30内に入っている400μlの所望の量を上述したのとほぼ同じ仕方で別のレシピエントに計量分配/移送するのが良い。
【0074】
この場合も又、モニタ48は、所望の容積の完全計量分配を保証するように、実施される行程回数を自動的に表示するのが良く、次に、この計量分配操作に関して既に実施された行程回数及び/又は実施すべき残りの行程回数を表示するのが良い。
【0075】
先端部30を既に吸引された液体を集めるようになったレシピエント内にいったん挿入すると、ユーザは、例えば液体の計量分配を開始させるためにこの目的のために設けられているモジュール10に付いているボタンを押すことによって命令を与えるのが良い。
【0076】
計量分配の開始時点においては、ピストンは、電磁弁42,44が連通B,Dを設定した状態で最も下の位置に位置している。次に、プログラム50は、命令を送ってピストン12を上向きの方向36に動かす。
【0077】
図2cに概略的に示されているこの運動中、上側チャンバ22の容積は、減少することが分かり、それにより、チャンバ22からチャネル28に通じる連通Bにおける圧力が設定される。というのは、連通Dは、このチャンバ22を外気から隔離しているからである。この圧力は、適当なレシピエントの体内への先端部30の遠位端部を通る液体の噴出として表われる。
【0078】
それと同時に、連通Dにより、外気は、容積が増大している下側チャンバ20に入ることができ、それにより、このチャンバ20内における負圧の発生が阻止される。
【0079】
したがって、ピストンの最初の上方行程の終わりに、先端部から抜き出された液体の量は、100μlである。ピペット100は、ピストンの下方運動により、計量分配操作を自動的に続行するようそれ自体準備するが、この前に、プログラム50は、命令を電磁弁42,44に送ってこれら電磁弁が、連通A,Cをセットアップする形態に切り換わるようにする。次に、ピストンを下向きの方向38に動かすための命令をピストン装置に送る。図2dに示されているこの運動中、下側チャンバ20の容積は、減少することが示され、それによりチャンバ20からノズルチャネル28に向かう方向における連通A内の圧力がセットアップされる。というのは、連通Cは、このチャンバ20を外気から隔離しているからである。この圧力は、適当なレシピエント内への先端部30の遠位端部を通る新たな噴出として表われる。
【0080】
それと同時に、連通Cにより、外気は、容積が増大している上側チャンバ22に入ることができ、それにより、このチャンバ22内の負圧の開始が阻止される。
【0081】
したがって、ピストン12の上方行程と下方行程は互いに、必要に応じて多くの回数にわたり、即ちこの場合には4回交互に続いて400μlの所望の容積に達する。
【0082】
図3に示された実施形態は、今説明した実施形態と実質的に同じであり、同一の参照符号で示された部分は、同一又は類似の部分を示しており、これは、説明すると共に図示する実施形態の全てに当てはまる。したがって、この好ましい実施形態では、第1の電磁弁42及び第2の電磁弁44の連結方式だけが上述の実施形態に対して改造されていることが分かる。
【0083】
第1の電磁弁42は、3つの入口1,2,3を有し、これらのうち入口1は、本体4内に半径方向/側方に開口したノズルチャネル28の上端部と連通し、入口2は、部分4bを経て下側チャンバ20と連通し、入口3は、ピペットの外部と連通している。上述の連通は、例えば単純な連結導管によって永続的に確立される。他方、入口は、電磁弁42がこの目的のために作動された場合に互いに連通するに過ぎず、それにもかかわらず、上述の実施形態において入口1,2相互間の連通及び入口2,3相互間の連通のみを摺動弁ピストンにより交互にセットアップできることが理解される。入口1,3相互間の連通は、実施されず、好ましくは、電磁弁の設計によって不可能になっている。
【0084】
第2の電磁弁44は、3つの入口1,2,3を有し、これらのうち入口2は、本体4内に半径方向/側方に開口したノズルチャネル28の上端部と連通し、入口1は、部分4bを経てチャンバ22と連通し、入口3は、ピペットの外部と連通している。上述の連通は、例えば単純な連結導管によって永続的に確立される。他方、入口は、電磁弁42がこの目的のために作動された場合に互いに連通するに過ぎず、それにもかかわらず、上述の実施形態において入口1,2相互間の連通及び入口1,3相互間の連通のみを摺動弁ピストンにより交互にセットアップできることが理解される。入口2,3相互間の連通は、実施されず、好ましくは、電磁弁の設計によって不可能になっている。
【0085】
したがって、図3を参照すると理解できるように、第1の電磁弁42は、入口1,2が互いに連通状態にあるとき、下側チャンバ20と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする符号Aで示された第1の流体連通を保証するが、このチャンバ20とピペット外部との連通を阻止する。他方、入口2,3が互いに連通状態にあるとき、これら入口は、下側チャンバ20とピペット外部との間の空気の自由循環を可能にする第4の流体連通Dを保証するが、この場合、チャネル28とチャンバ20との連通を阻止する。したがって、この電磁弁42は、特に下側チャンバ20内における空気の管理に専用であり、上側チャンバ22とは連通していないことが理解できる。
【0086】
同様に、図3で理解できるように、第2の電磁弁44は、入口1,2が互いに連通状態にあるとき、チャンバ22と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする第2の流体連通Bを保証するが、このチャンバ22と外部との連通を阻止する。他方、入口1,3が互いに連通状態にあるとき、このことは、上側チャンバ22とピペット外部との間の空気の自由循環を可能にする第3の流体連通Cを保証するが、この場合、チャネル28とチャンバ22との連通を阻止する。したがって、この電磁弁44は、特に上側チャンバ22内における空気の管理に専用であり、下側チャンバ20とは連通していないことも又理解できる。
【0087】
この好ましい実施形態では、液体の漏れの恐れは、2つの電磁弁の同期がたとえ完全でなくても、ゼロになる。連通A,Cの確立による液体サンプル採取を招くピストン12の上方行程に続き、電磁弁44が連通形態Bへの切り換えの僅か前に実施される連通形態Dへの電磁弁42の切り換えによっては、液体で満たされたチャネル28及び先端部30内で生じている負圧が中断されることはない。というのは、これら後者の部品内の容積は、密封状態になっており、従って、外部と連通していないからである。同じことは、電磁弁44の切り換えが電磁弁42の切り換えの僅か前に行われる逆の場合にも当てはまる。というのは、ノズルチャネル28及び先端部30内の空気の容積を、先ず流体連通Bによって外部から隔離状態になっているチャンバ22に連通させるからである。この場合も又、チャネル28及び先端部30内に生じている負圧の中断が生じないことにより、既にサンプル採取されて先端部30内に入っている液体の漏れが阻止される。
【0088】
この有利な作用効果は、ピストンが最も上の位置にある状態で行程方向を逆にした場合とピストンが最も下の位置にある状態で行程方向を逆にした場合の両方に当てはまる。したがって、このようにして製作されたピペットは、非常に高い精度を提供することができる。というのは、ピストン行程の各反転前に指令モジュール10によって命令された電磁弁の切り換え順序とは関係なく、液体の漏れの恐れがないからである。
【0089】
図3に示されているこの実施形態では、モジュール10は、特に流体連通A,C及び流体連通B,Dの自動的な交互の確立に関してピペットの機能が上述したようなものであるようにあらかじめプログラムされている。
【0090】
図4に示されている他の実施形態では、図1及び図2a〜図2dに示されている好ましい実施形態に対してピストンの設計及びその関連の吸引チャンバの設計だけが改造されている。したがって、電磁弁42,44の作動は、上述の弁の作動と同一なので、かかる作動についてはこれ以上説明しない。
【0091】
図4で理解できるように、下側ピペット本体4は、これが2つの部分で構成された摺動ピストン12を適当なキャビティ内に収容することができるよう依然として中空である。
【0092】
このキャビティ内に収容されたピストン12は、小径の下側円筒形部分12bに続く上側円筒形部分12aを有する。部分12bは、相補形状の下側本体4bの一部によって案内され、部分12aは、大径の上側本体4aの一部分内に同心状に且つ距離を置いて収容される。加うるに、これら2つの中空部分4a,4bの各々は、それぞれ、固定シールを有し、これら固定シールは、これに対して摺動するピストン12の輪郭を辿っている。この同じピストン12は、その部分12aの外部に固定されたシール17を有し、このシールは、大径部分4aの内壁の輪郭を辿る一方で、ピストンの前後の運動中、上側シール16の下に収容されたままである。
【0093】
この構成では、下側吸引チャンバ20が、上から下に向かって、下側シール14、ピストンの下端部24、部分4bの内壁及びピペット本体4内に形成された下向き障害物26によって画定されている。加うるに、上側吸引チャンバ22は、上から下に向かって、上側シール16、部分4aの内壁、ピストン部分12a及び可動シール17によって画定されている。注目されるべきこととして、シール17,14相互間に位置する可変容積空間は、液体サンプル採取及び計量分配には直接的には用いられず、このことは、この空間がチャンバ20,22とは異なり、吸引チャンバとは見なされないことを意味している。
【0094】
この構成では、チャンバ20は、小径部分4bの内壁と同一の軸線及び同一の直径を有する円板の形態をした軸線5に対する一定の断面を有することが全体として理解できる。また、チャンバ22は、大径部分4aの内壁の外径に等しい外径及び部分12aの外径に等しい内径を備えた同一軸線の環状リングの形状をした軸線5に対する一定断面を有することが全体として理解できる。
【0095】
この構成では、2つのピストン部分12a,12bの直径及び下側ピペット本体の部分4aの内径を適当に定めることにより、2つのチャンバ20,22について同一の値の断面積を得ることは容易に可能である。したがって、ピストンの変位が所与の場合、下側チャンバ20内の容積の変化と上側チャンバ22の容積の変化との間において同一の絶対値が得られる。
【0096】
図5に示されている他の実施形態では、この場合も又、図1、図2a〜図2d及び図4に示されている先の好ましい実施形態に対してピストン及びその関連の吸引チャンバの設計のみが改造されている。したがって、電磁弁の作動についてはこれ以上説明しない。というのは、電磁弁の作動は、上述の電磁弁の作動と同一又はほぼ同一だからである。
【0097】
図5で理解できるように、下側ピペット本体4は、これが単一部分で構成された摺動ピストン12を適当なキャビティ内に収容することができるよう依然として中空である。
【0098】
このキャビティ内に収容されたピストン12は、相補形状の上側本体部分4aによって案内される上側円筒形部分を有し、ピストンは、これに続いていて、大径の下側本体4bの一部分内に同心状に且つ距離を置いて収容された同一直径の下側円筒形部分を有する。また、下側中空部分4bは、上側シール16及び下側シール14を固定的に収容しており、これらシールは両方共、これらに対して摺動し、大径区分4bに対して半径方向内方に距離を置いたところに位置するピストン12の輪郭を辿る。
【0099】
また、この同じピストン12の外部にはシール17が固定されており、このシールは、大径部分4bの内壁の輪郭を辿る一方で、ピストンの前後の運動中、上側シール16の下に収容されたままである。同様に、ピストン12の外部には別のシール19が固定されており、このシールも又、大径部分4bの内壁の輪郭を辿る一方で、ピストンの前後の運動中、上側シール16の下に且つ下側シール14の上に収容されたままである。
【0100】
この形態では、下側吸引チャンバ20は、上から下まで、可動シール19、部分4bの内壁、単一の区分のピストン12及び固定シール14によって画定されている。同様に、上側吸引チャンバ22は、下から上まで、可動シール17、部分4bの内壁、単一区分のピストン12及び固定シール16によって画定されている。
【0101】
この構成では、チャンバ20,22は、大径部分4bの内壁の外径に等しい外径及びピストンの直径と同一の内径を備えた同一軸線の環状リングの形状をした軸線5に対して同一の一定断面を有することが全体として理解できる。したがって、ピストンが、その製作を容易にする単純な形状のものであるこの実施形態では、ピストンの変位が所与の場合、下側チャンバ20内の容積の変化と上側チャンバ22の容積の変化との間においても同一の絶対値が得られる。
【0102】
理想的には、チャンバ20,22の互いに等しい死空間を得て、それにより、2つの方向の各々におけるピストンの運動中にピペット操作の対称性を向上させるためにピストンの上方行程の終わりにおけるシール16,17相互間の距離は、下方ピストン行程の終わりにおけるシール14,19相互間の距離に等しく、ピペット操作容積は、ピストンにより押し退けられる容積だけでなく死容積にも依存することが思い起こされる。
【0103】
図6a〜図7bは、本発明の別の好ましい実施形態の詳細図であり、この実施形態では、ピストン及びその関連の吸引チャンバの設計は、図4に示されている先の実施形態の設計と同一又はほぼ同一である。それにもかかわらず、かかる設計は、本発明の範囲から逸脱することなく、上述の他の実施形態のうちの任意のものの設計と同一であっても良く又はこれとほぼ同一であっても良い。
【0104】
図6aは、ピペット100をそのピストン12が最も下の位置にある状態で示し、図6bは、ピペット100をそのピストン12が最も上の位置にある状態で示している。特定の観点は、この場合、以下に詳細に説明する流体連通実施手段40の設計にある。
【0105】
直線ピストン52を収容すると共に3つの入口1,2,3を備えた形式の2つの三方電磁弁42,44が設けられている。連通溝を備えた直線ピストン52の運動により、各電磁弁は、入口1,2相互間の流体連通及び入口2,3相互間の流体連通を交互に設定することができ、入口1,3相互間の連通は、電磁弁の構成によって不可能になっている。上述したように、これら電磁弁42,44は、リー・カンパニーにより番号LHDA 053 1115Hで市販されている形式のものであるのが良い。
【0106】
第1の電磁弁42は、取り付け板54により下側ピペット本体の部分4aに固定されており、取り付け板54は、この取り付け板に固定された電磁弁の3つの入口1,2,3とそれぞれ永続的な連通状態にある3つのオリフィス1′,2′,3′を備えている。オリフィス1′は、下側チャンバ20と連通すると共に導管58を備えたコネクタ56と連通している。オリフィス2′は、ノズルチャネルと連通し、オリフィス3′は、導管62を備えたコネクタ60とのみ連通している。一例を挙げると、導管58,62に代えて、別途本体内に直接設けられたチャネルを用いても良い。
【0107】
同様に、電磁弁44は、取り付け板64により下側ピペット本体の部分4bに固定されており、取り付け板64は、この取り付け板に固定された電磁弁の3つの入口1,2,3とそれぞれ永続的な連通状態にある3つのオリフィス1′,2′,3′を備えている。オリフィス1′は、上側チャンバ22と連通すると共に導管62の他端部に連結されたコネクタ66と連通している。オリフィス2′は、ピペットの外部とのみ連通し、オリフィス3′は、導管58の他端部に連結されたコネクタ68とのみ連通している。
【0108】
したがって、図7aで理解できるように、第1の電磁弁42は、入口1,2が互いに連通状態にあるとき、下側チャンバ20と先端部30に通じているノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする第1の流体連通Aを可能にする。チャンバ20から出た空気は、オリフィス1′、電磁弁42の入口1、ピストン溝、電磁弁42の入口2、取り付け板54のオリフィス2′、そしてノズルチャネル28を次々に通って循環する。この場合も又、この図7aでは、電磁弁44の入口1,2が互いに連通状態にあるとき、この電磁弁は、上側チャンバ22とピペットの外部との間の空気の自由循環を可能にする第3の流体連通Cを可能にする。チャンバ22から出た空気は、取り付け板64のオリフィス1′、電磁弁44の入口1、ピストン溝、電磁弁44の入口2、取り付け板64のオリフィス2′、そしてピペット外部を次々に通って効果的に循環する。
【0109】
加うるに、図7bに関し、電磁弁42,44の各々の入口2,3が互いに連通状態にあるとき、これら電磁弁は、互いに協働して、上側チャンバ22と先端部30に通じるノズルチャネル28との間の空気の自由循環を可能にする第2の流体連通Bと、下側チャンバ20とピペットの外部との間の空気の自由循環を可能にする第4の流体連通Dの両方を可能にする。
【0110】
チャンバ22から出た空気は、取り付け板64のオリフィス1′、コネクタ66、導管62、コネクタ60、取り付け板54のオリフィス3′、ピストン溝、電磁弁42の入口2、取り付け板54のオリフィス2′、そしてノズルチャネル28を次々に通って循環する。加うるに、チャンバ20から出た空気は、取り付け板54のオリフィス1′、コネクタ56、導管58、コネクタ68、取り付け板64のオリフィス3′、電磁弁44の入口3、ピストン溝、電磁弁44の入口2、取り付け板64のオリフィス2′、そしてピペット外部を次々に通って循環する。
【0111】
図6a〜図7bに示されているこの実施形態では、モジュール10は、明らかなこととして、特に流体連通A,C及び流体連通B,Dの自動的な交互確立に関し、ピペットの機能が上述したものであるようにあらかじめプログラムされている。
【0112】
明らかなこととして、当業者であれば、非限定的な例によって説明したに過ぎない本発明の種々の改造を想到できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動ピストン(12)を収容すると共にノズル貫通チャネル(28)付きの先端部保持ノズル(6)を備えた下側ピペット本体(4)を有するサンプル採取ピペット(100)であって、前記下側ピペット本体(4)及び前記ピストンが、互いに隔離された下側チャンバ(20)及び上側チャンバ(22)を画定している、ピペット(100)において、
前記ピペットは、摺動方向(36,38)の一方における前記ピストン(12)の運動により、前記下側チャンバ(20)の容積の増大と前記上側チャンバ(22)の容積の減少が同時に生じ、他方の摺動方向における前記ピストン(12)の運動の際には、前記下側チャンバ(20)の容積の減少と前記上側チャンバ(22)の容積の増大が同時に生じるよう設計され、
前記ピペットは、前記下側チャンバ(20)と当該下側チャンバ(20)から隔離された前記ノズル貫通チャネル(28)との間の第1の流体連通(A)、及び、前記上側チャンバ(22)と当該チャネル(28)との間の第2の流体連通(B)を交互に可能にする流体連通実施手段(40)を更に有する、ピペット(100)。
【請求項2】
前記ピペットは、前記流体連通実施手段(40)を自動的に作動させる指令モジュール(10)を備えており、サンプル採取されるべき液体の量に応じて必要な場合、前記流体連通実施手段(40)は、前記第1及び前記第2の流体連通(A,B)のうちの一方をセットアップしている形態にある状態で、前記摺動方向(36,38)のうちの一方における前記ピストン(12)の一行程により動作される液体サンプル採取段階が、前記流体連通実施手段(40)を前記第1及び前記第2の流体連通(A,B)のうちの他方をセットアップしている形態に自動的に切り換えた状態で、他方の摺動方向における前記ピストン(12)の一行程により続行されるようになっている、請求項1記載のピペット(100)。
【請求項3】
前記指令モジュール(10)は、サンプル採取されるべき液体の量と関連して、前記液体量をサンプル採取するのに必要な前記ピストン(12)の連続上方及び下方行程の回数及び長さを決定するよう設計され、前記指令モジュール(10)は、前記液体サンプル採取中、前記ピストンの前記摺動方向(36,38)の各反転前に、前記第1及び前記第2の流体連通(A,B)のうちの一方から他方への切り換えを可能にするために、前記流体連通実施手段(40)も又自動的に作動させることにより、前記ピストン(12)を定められた仕方で自動的に作動させるよう設計されている、請求項2記載のピペット(100)。
【請求項4】
前記流体連通実施手段(40)は、手動で作動されるよう設計されている、請求項1記載のピペット(100)。
【請求項5】
前記流体連通実施手段(40)は、少なくとも1つの三方電磁弁(42,44)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のピペット(100)。
【請求項6】
前記流体連通実施手段(40)は又、前記上側チャンバ(22)と前記ピペットの外部との間に構成される第3の流体連通(C)、及び、前記下側チャンバ(20)と前記ピペットの外部との間の第4の流体連通(D)を交互に可能にする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のピペット(100)。
【請求項7】
前記ピペットは、単一チャネル形又は多チャネル形ピペットである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のピペット(100)。
【請求項8】
前記ピストン(12)は、下側ピストン部分(12b)の断面積よりも大きな断面積の上側部分(12a)を有し、前記上側チャンバ(22)は、前記下側ピペット本体(4)と前記上側ピストン部分(4a)との間に画定され、前記下側チャンバ(20)は、前記下側ピストン部分(12b)の下端部(24)の下に画定されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のピペット(100)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のサンプル採取ピペットに指令する方法であって、前記方法は、先端部保持ノズルによって支持されたサンプル採取先端部で行う液体サンプル採取ステップを有し、前記液体サンプル採取ステップは、前記流体連通実施手段が前記第1又は前記第2の流体連通のうちで前記先端部での液体のサンプル採取を保証する前記流体連通をセットアップしている形態にある状態で、前記摺動方向のうちの一方における前記ピストンの一行程の後、前記サンプル採取ステップは、サンプル採取されるべき液体の量に応じて必要な場合、前記流体連通実施手段が前記第1及び前記第2の流体連通のうちの他方をセットアップしている形態に自動的に切り換えた状態で、他方の摺動方向における前記ピストンの一行程により続行されて前記先端部における液体のサンプル採取を実施させる、指令方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の流体連通のうちの一方から他方への切り換えは、自動的に行われる、請求項9記載の指令方法。
【請求項1】
摺動ピストン(12)を収容すると共にノズル貫通チャネル(28)付きの先端部保持ノズル(6)を備えた下側ピペット本体(4)を有するサンプル採取ピペット(100)であって、前記下側ピペット本体(4)及び前記ピストンが、互いに隔離された下側チャンバ(20)及び上側チャンバ(22)を画定している、ピペット(100)において、
前記ピペットは、摺動方向(36,38)の一方における前記ピストン(12)の運動により、前記下側チャンバ(20)の容積の増大と前記上側チャンバ(22)の容積の減少が同時に生じ、他方の摺動方向における前記ピストン(12)の運動の際には、前記下側チャンバ(20)の容積の減少と前記上側チャンバ(22)の容積の増大が同時に生じるよう設計され、
前記ピペットは、前記下側チャンバ(20)と当該下側チャンバ(20)から隔離された前記ノズル貫通チャネル(28)との間の第1の流体連通(A)、及び、前記上側チャンバ(22)と当該チャネル(28)との間の第2の流体連通(B)を交互に可能にする流体連通実施手段(40)を更に有する、ピペット(100)。
【請求項2】
前記ピペットは、前記流体連通実施手段(40)を自動的に作動させる指令モジュール(10)を備えており、サンプル採取されるべき液体の量に応じて必要な場合、前記流体連通実施手段(40)は、前記第1及び前記第2の流体連通(A,B)のうちの一方をセットアップしている形態にある状態で、前記摺動方向(36,38)のうちの一方における前記ピストン(12)の一行程により動作される液体サンプル採取段階が、前記流体連通実施手段(40)を前記第1及び前記第2の流体連通(A,B)のうちの他方をセットアップしている形態に自動的に切り換えた状態で、他方の摺動方向における前記ピストン(12)の一行程により続行されるようになっている、請求項1記載のピペット(100)。
【請求項3】
前記指令モジュール(10)は、サンプル採取されるべき液体の量と関連して、前記液体量をサンプル採取するのに必要な前記ピストン(12)の連続上方及び下方行程の回数及び長さを決定するよう設計され、前記指令モジュール(10)は、前記液体サンプル採取中、前記ピストンの前記摺動方向(36,38)の各反転前に、前記第1及び前記第2の流体連通(A,B)のうちの一方から他方への切り換えを可能にするために、前記流体連通実施手段(40)も又自動的に作動させることにより、前記ピストン(12)を定められた仕方で自動的に作動させるよう設計されている、請求項2記載のピペット(100)。
【請求項4】
前記流体連通実施手段(40)は、手動で作動されるよう設計されている、請求項1記載のピペット(100)。
【請求項5】
前記流体連通実施手段(40)は、少なくとも1つの三方電磁弁(42,44)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のピペット(100)。
【請求項6】
前記流体連通実施手段(40)は又、前記上側チャンバ(22)と前記ピペットの外部との間に構成される第3の流体連通(C)、及び、前記下側チャンバ(20)と前記ピペットの外部との間の第4の流体連通(D)を交互に可能にする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のピペット(100)。
【請求項7】
前記ピペットは、単一チャネル形又は多チャネル形ピペットである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のピペット(100)。
【請求項8】
前記ピストン(12)は、下側ピストン部分(12b)の断面積よりも大きな断面積の上側部分(12a)を有し、前記上側チャンバ(22)は、前記下側ピペット本体(4)と前記上側ピストン部分(4a)との間に画定され、前記下側チャンバ(20)は、前記下側ピストン部分(12b)の下端部(24)の下に画定されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のピペット(100)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のサンプル採取ピペットに指令する方法であって、前記方法は、先端部保持ノズルによって支持されたサンプル採取先端部で行う液体サンプル採取ステップを有し、前記液体サンプル採取ステップは、前記流体連通実施手段が前記第1又は前記第2の流体連通のうちで前記先端部での液体のサンプル採取を保証する前記流体連通をセットアップしている形態にある状態で、前記摺動方向のうちの一方における前記ピストンの一行程の後、前記サンプル採取ステップは、サンプル採取されるべき液体の量に応じて必要な場合、前記流体連通実施手段が前記第1及び前記第2の流体連通のうちの他方をセットアップしている形態に自動的に切り換えた状態で、他方の摺動方向における前記ピストンの一行程により続行されて前記先端部における液体のサンプル採取を実施させる、指令方法。
【請求項10】
前記第1及び第2の流体連通のうちの一方から他方への切り換えは、自動的に行われる、請求項9記載の指令方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【公表番号】特表2010−531440(P2010−531440A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512718(P2010−512718)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058090
【国際公開番号】WO2009/000860
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(503285760)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058090
【国際公開番号】WO2009/000860
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(503285760)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]