説明

ピストンプルーバ

【課題】計測ピストンに必要以上の負荷をかけることなく、計測シリンダ内をスムーズに移動させると共に、シンプルな構造として、部品点数を削減することができるピストンプルーバを提供する。
【解決手段】ピストンプルーバ1は、上流端3及び下流端4が形成された計測シリンダ2と、計測シリンダ2の下流端側と連結された油圧シリンダ12と、計測時に上流端3から流入された流体により計測シリンダ2内を上流側から下流側に向けて所定距離移動して基準体積の流体を排出する計測ピストン9と、油圧シリンダ12に移動可能に収容されたピストンロッド13とを備える。計測ピストン9とピストンロッド13とは別体で構成され、計測ピストン9を上流側の所定の計測準備位置に戻す際に、ピストンロッド13が計測ピストン9を下流側から上流側に移動させ、計測ピストン9を所定の計測準備位置にセットした後に、ピストンロッド13を油圧シリンダ12内に収容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンプルーバに関し、より詳細には、流量計の精度を検定するための基準体積が小さいピストンプルーバ型に関する。
【背景技術】
【0002】
流量計を検定するための検定装置とは、新規に製作された流量計や、使用中の流量計が、温度、圧力等の外部要因又は可動部摩耗等の内部要因などによる特性の変化に対して信頼できる精度で使用するために、定期的にまたは任意のタイミングで、特性試験を行うための装置である。この特性試験は、大別すると、固定試験装置に被試験流量計を介装して試験を行なうキャリブレータと、流量計を流体システム内に介装して任意に試験を行なうプルーバ方式の流量計試験装置により行われる。
【0003】
プルーバ方式は、流量計の特性試験をオンラインで行なうことができ、必要に応じて任意の特性試験を行なうことができるため、特に配管影響を受け易い推測形の流量計、例えばタービンメータの試験に多く使用されている。プルーバは、断面一定な管体内をピストン等の移動体が流体と同期して移動し、この移動体が所定区間を移動することにより排出する流体を基準体積とする装置である。
【0004】
プルーバ方式による流量計の特性試験は、プルーバに規定された基準体積の流体が流通するときの流量計の読み、すなわち、流量計から発信される流量パルスの数を検知することにより単位体積当りに発信される流量パルスの数(流量係数)、いわゆるKファクタを算出するものである。また、必要により複数の被測流量において流量係数に基づいて、連続した流量特性曲線が求められる。
【0005】
流量係数を高分解能で求めるためには基準体積当りに発信する流量パルスの数が所定数以上であることが必要で、例えば基準体積の大きい大型の据置き型プルーバの場合は10,000パルス以上の規定が与えられる。これに対して基準体積を小さくすると、規定数以上の流量パルスが発信できないが、ピストン等の移動体が移動することで排出される流体の基準体積と、この間に流量計から発信される発信パルス(時間)との関係から流量係数を求めることができる。従って、流量パルス数が少ない場合でも小型なプルーバ(スモールボリュームプルーバ)が適用できる。
【0006】
上記のスモールボリュームプルーバ(以下、SVPという)において、移動体にピストンを用いたピストンプルーバが知られている。このピストンプルーバは、基本的には被試験流量計と直列に接続された断面一定な計測シリンダを有し、その計測シリンダ内で移動するピストンが、一定距離移動したとき、輸液される流体の体積と流量計の読みとを比較するものである。流体の体積は、実際には、ピストンの移動量から求められる。プルービングにおいては、通常、複数回の試験結果を平均し、平均値に基づいて流量係数(Kファクタ)が算出される。このため、各々の観測流量につき計測シリンダ内でのピストンは、試験回数だけ往復移動する。
【0007】
計測シリンダ内でピストンを規定区間移動し、計測を完了してから、ピストンを再びもとの位置に戻すには、ピストンロッドを介して油圧又は空気圧を用いたアクチュエータで流体の流れに抗して駆動するが、この間に流体を流通させるための流路は、計測シリンダ自体を利用する場合と、計測シリンダに並列な別に設けられたバイパス流路を利用する場合とがある。計測シリンダを流通させる場合は、アクチュエータで戻されるピストン内に弁機能を有し、計測時には閉弁し、戻しにおいて開弁するようになっている。この方式を内弁方式と呼ぶ。また、バイパス流路を流通させる場合は、バイパス流路内にバイパス弁を設け、計測時には閉弁し、戻しで開弁するものである。この方式を外弁方式と呼ぶ。
【0008】
このようなSVPとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。このSVPは、基準体積を形成するために、計測ピストンに固定されているピストンロッドにマーカを付け、このマーカ位置をディテクタスイッチで検出するように構成されている。このため、ピストンロッドのインバー材(低熱膨張率の合金)に溝を切ったり、インバー材全体にセラミックコーティングを施すなどの加工がなされている。また、この計測ピストンを上流側の所定位置に戻す(リターン)時には、計測ピストンに固定されているピストンロッドの端面に油圧をかけ、上流側に移動させる。また、流路切替には別に設計されたスライド弁(ピストン弁)を使用するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2796207号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載のSVPは、計測ピストンが回転する方向に圧力を受けた場合などに、計測ピストンにピストンロッドが一体的に固定される構造であるため、ピストンロッドが抵抗となって、回転を妨げ、計測ピストンに負荷をかけてしまうという問題がある。そして、この計測ピストンに必要以上に負荷がかかると、計測ピストンが計測シリンダ内をスムーズに移動できず、正確な計量を行うことができなくなる。
【0011】
また、特許文献1に記載のSVPは、2重管構造となっている上に、流路切替用に設けられたスライド弁や、シールチェック検出に独立した機構を有するなど、部品点数が多く、構造的に複雑なものであったため、メンテナンスが容易ではなく、コスト的にも高いものとなっていた。
【0012】
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたもので、計測ピストンに必要以上の負荷をかけることなく、計測シリンダ内をスムーズに移動させると共に、シンプルな構造として、部品点数を削減することができるピストンプルーバを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、流体を流入させる上流端及び該流体を流出させる下流端が形成された計測シリンダと、該計測シリンダの下流端と連結された油圧シリンダと、計測時に前記上流端から流入された流体により前記計測シリンダ内を上流側から下流側に向けて所定距離移動して基準体積の流体を排出する計測ピストンと、前記油圧シリンダに移動可能に収容されたピストンロッドとを備えたピストンプルーバであって、前記計測ピストンと前記ピストンロッドとは別体で構成され、前記計測ピストンを上流側の所定の計測準備位置に戻す際に、前記ピストンロッドが前記計測ピストンを下流側から上流側に移動させ、該計測ピストンを前記所定の計測準備位置にセットした後に、前記ピストンロッドのみを上流側から下流側に移動させて前記油圧シリンダ内に収容することを特徴としたものである。
【0014】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記計測ピストンは、周方向に埋め込んだ磁性体を有し、前記計測シリンダは、前記計測ピストンに埋め込まれた磁性体を検知する2つの検知手段を、前記計測シリンダの上流側と下流側に前記所定距離離して有することを特徴としたものである。
【0015】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記計測シリンダの上流端及び下流端の両方に開閉可能な外気に連通する弁を備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、計測ピストンとピストンロッドとを別体構造としたため、計測ピストンに必要以上の負荷をかけることなく、計測シリンダ内をスムーズに移動させることができる。また、従来品に比べ、シンプルな構造であるため、部品点数を削減し、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるピストンプルーバの外観構成例を示す正面図である。
【図2】本発明によるピストンプルーバの外観構成例を示す上面図である。
【図3】本発明によるピストンプルーバを含む検定システムの構成例を模式的に示した図である。
【図4】計測ピストンの構成例を示す図である。
【図5】本発明によるピストンプルーバの初期動作例を説明するための図である。
【図6】本発明によるピストンプルーバのリターン動作例を説明するための図である。
【図7】本発明によるピストンプルーバの計量準備動作例を説明するための図である。
【図8】本発明によるピストンプルーバの計量動作例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のピストンプルーバに係る好適な実施の形態について説明する。
【0019】
図1,2は、本発明によるピストンプルーバの外観構成例を示す図である。図1は正面図、図2は上面図である。図中、1はピストンプルーバ、2は計測シリンダ、3は上流端、4は下流端、5,6は空気抜き弁、7は流体流入口,8は流体流出口、9は計測ピストン、10,11は磁気スイッチ、12は油圧シリンダ、13はピストンロッド、d1,d2はドレイン(排水弁)を示す。
【0020】
ピストンプルーバ1は、流体を流入させる上流端3及び流体を流出させる下流端4が形成された計測シリンダ2と、計測シリンダ2の下流端側と連結された油圧シリンダ12と、計測時に上流端3から流入された流体により計測シリンダ2内を上流側から下流側に向けて所定距離L移動して基準体積の流体を排出する計測ピストン9と、油圧シリンダ12に移動可能に収容されたピストンロッド13とを備える。計測ピストン9は例えばアルミで形成され、計測シリンダ2は例えばSUS(ステンレス)などで形成される。
【0021】
計測シリンダ2内には、移動体として計測ピストン9が嵌挿され、この計測ピストン9が計測時に測定流体の流体圧により移動され基準体積の流体を排出する。油圧シリンダ12内には、ピストンロッド13が嵌挿され、このピストンロッド13は下流端4を構成する流出側端面板に設けられたジャーナル軸受(図示せず)により液密に軸承された状態で摺動される。空気抜き弁5,6及びドレインd1,d2は開閉可能な外気に連通する弁であり、ピストンプルーバ1の動作状態に応じて適宜開閉される。
【0022】
本発明によるピストンプルーバ1は、計測ピストン9とピストンロッド13とが別体で構成されている。計測ピストン9を上流側の所定の計測準備位置に戻すリターン動作の際に、ピストンロッド13が計測ピストン9を下流側から上流側に移動させ、計測ピストン9を所定の計測準備位置にセットした後に、ピストンロッド13のみを上流側から下流側に移動させて油圧シリンダ12内に収容するようにしている。
【0023】
また、計測ピストン9は、周方向に埋め込んだ磁性体91を有する。計測シリンダ2は、計測ピストン9に埋め込まれた磁性体91を検知する2つの検知手段に相当する磁気スイッチ10,11を、計測シリンダ2の長手方向(上流側と下流側)に所定距離L離して有する。これら2つの磁気スイッチ10,11により、計測ピストン9が所定距離L移動したことを検知するように構成されている。すなわち、計測ピストン9が所定距離L移動したことで排出される流体体積が基準体積となる。なお、磁気スイッチ10,11間の所定距離Lは、可変できるようになっており、これにより基準体積を調整することを可能としている。
【0024】
図3は、本発明によるピストンプルーバを含む検定システムの構成例を模式的に示した図である。図中、14,15は磁気スイッチ、16は空油圧変換ユニット、17は流路切替弁、18は計測開始弁、71は第1シリンダ流入口、72は第2シリンダ流入口、81は第1シリンダ流出口、82は第2シリンダ流出口を示す。流体流入口7は第1シリンダ流入口71及び第2シリンダ流入口72に接続され、流体流出口8は第1シリンダ流出口81及び第2シリンダ流出口82に接続される。また、流体流入口7と流体流出口8とは流路切替弁17を介して接続される。
【0025】
空油圧交換ユニット16は、空気圧供給源161、四方向電磁弁などの切替弁162、空油圧変換部163,164、給圧口165,166を備えて構成される。空気圧供給源161からの空気圧は、切替弁162で供給先が切り替えられ、空油圧変換部163あるいは空油圧変換部164に供給される。空油圧変換部163は、空気圧供給源161から供給された空気圧を油圧に変換し、変換した油圧を給圧口165から油圧シリンダ12内に供給する。これにより、ピストンロッド13は計測シリンダ2の方向に移動する。
【0026】
同様に、空油圧変換部164は、空気圧供給源161から供給された空気圧を油圧に変換し、変換した油圧を給圧口166から油圧シリンダ12内に供給する。これにより、ピストンロッド13は計測シリンダ2から離れる方向に移動する。つまり、空油圧変換ユニット16は、給圧口165,166の開閉により、油圧シリンダ12内に油圧を導入し、あるいは、油圧シリンダ12内から油圧を排出して、油圧シリンダ12内のピストンロッド13を移動又は保持するための装置である。
【0027】
また、ピストンロッド13を構成するヘッド部の周方向には、図示しない磁性体が埋め込まれており、これを油圧シリンダ12の外周面に設けられた2つの磁気スイッチ14,15で検出することで、ピストンロッド13が油圧シリンダ12のどの位置にあるのかを特定することができる。
【0028】
具体的には、計測ピストン9を上流側の所定の計測準備位置に戻すリターン動作以外では、ピストンロッド13は油圧シリンダ12内に収容された状態となるが、この状態ではピストンロッド13が磁気スイッチ15の近傍にあるため、磁気スイッチ15がオン状態となる。従って、磁気スイッチ15がオン状態であれば、ピストンロッド13が油圧シリンダ12内に収容された状態と特定される。また、上記リターン動作では、ピストンロッド13が計測シリンダ2の方向に移動するため、磁気スイッチ15がオンからオフに変化する。つまり、磁気スイッチ15がオフ状態であれば、リターン動作によりピストンロッド13が油圧シリンダ12から計測シリンダ2に突出した状態と特定される。そして、このリターン動作により計測ピストン9を計測準備位置まで戻したときに、磁気スイッチ14がオフからオンに変化する。
【0029】
上記のように、ピストンロッド13が油圧シリンダ12内においてどの状態にあるのかに応じて、空油圧変換ユニット16が適切な油圧制御を行い、ピストンロッド13を移動あるいは保持するように構成されている。
【0030】
上記の通り、本発明のピストンプルーバ1は、計測ピストン9とピストンロッド13とが別体で構成されており、リターン動作の際に、ピストンロッド13が計測ピストン9を下流側から上流側に移動させ、計測ピストン9を所定の計測準備位置にセットした後に、ピストンロッド13のみを上流側から下流側に移動させて油圧シリンダ12内に収容するようにしている。移動後の計測ピストン9は上流側の所定の計測準備位置にセットされており、流路切替弁17を閉じた状態で、計測開始弁18を閉にすることで、流体流入口7から流入される流体が第1シリンダ流入口71から計測シリンダ2内に流入する。そして、この流体の圧力により計測ピストン9が下流側に移動し計量を行う。
【0031】
上記の構造を採用することで、計測中に計測ピストン9が回転等した場合であっても、計測ピストン9に必要以上の負荷がかからず、計測ピストン9が計測シリンダ2内をスムーズに移動することができるため、正確な計量を行うことができる。
【0032】
図4は、計測ピストンの構成例を示す図である。計測ピストン9は、磁石等の磁性体91と、強化テフロン(テフロン:登録商標)等で形成されたガイドリング92と、NBR(ニトリルゴム)等で形成されたOリング93と、オムニシールなどのシール材94と、ピストン装着用棄てタップ95とを備える。従来のディテクタ信号の検出方法では、計測ピストンに固定されているピストンロッドをインバー材で構成し、このインバー材に溝を切ったり、インバー全体にセラミックコーティングする必要があった。このため、コーティング表面研磨や、ディテクタスイッチの取り付けなどの加工が必要となり、製造工数がかかっていたが、本発明では、計測ピストンに磁性体を備え、これを磁気スイッチで検知するという簡単な構成としたため、製造工数を削減することが可能となる。
【0033】
また、図3において、ピストンプルーバ1は、計測シリンダ2の上流端及び下流端の両方に開閉可能な外気に連通する弁の一例として、空気抜き弁(エアーベント弁)5,6を備える。そして、空気抜き弁5,6のいずれか一方を用いて計測シリンダ2と計測ピストン9との間のシールチェックを可能とした。従来のシールチェック方法は、計測ピストンがリターン動作中毎回、自動的に計測ピストン、スライド(ピストン)弁のオムニシールからの漏れを、隙間に圧力をかけて差圧を確認する構造になっていた。この場合、差圧発生装置を別途必要とし、構造が複雑で故障等のトラブルの原因にもなっていた。
【0034】
本発明によるシールチェック方法では、計測ピストン9を計測シリンダ2の例えば最下流の所定の位置にセットし、上流から実液による圧力をかけて、空気抜き弁6を手動操作することにより、漏れの確認を行うようにしている。また、上流と下流を逆にして、計測ピストン9を計測シリンダ2の最上流の所定の位置にセットし、下流から実液による圧力をかけて、空気抜き弁5を手動操作することにより、漏れの確認を行うようにしてもよい。
【0035】
このように、本発明のシールチェック方法によれば、差圧発生装置などの部品を必要とせず、計測シリンダの空気抜き弁のみを用いて漏れの有無を確認することができるため、部品点数を削減すると共に、製造工数を減らすことができる。また、定期点検時等の部品交換では、計測ピストンのオムニシールのみでよいため、メンテナンス等が容易となる。
【0036】
図5〜図8は、本発明によるピストンプルーバの動作例を説明するための図である。図5は初期動作、図6はリターン動作、図7は計量準備動作、図8は計量動作をそれぞれ説明する図である。
【0037】
図5の初期動作において、まず、ピストンプルーバ1は、流体流入口7から通液開始するにあたり、計測ピストン9が最上流位置(計測準備位置)P1にある場合には、流路切替弁17、計測開始弁18を共に閉として、第1シリンダ流入口71から流体を流入させる。これにより、図5(A)に示すように、流体圧力により計測ピストン9が下流側へ移動する。なお、図5(A)の状態は、計測シリンダ2内に流体が満たされていないことを前提にしている。
【0038】
また、計測ピストン9は磁気スイッチ10,11間の位置P2にある場合には、流路切替弁17を閉、計測開始弁18を開として、第1シリンダ流入口71及び第2シリンダ流入口72から流体を流入させる。これにより、図5(B)に示すように、流体圧力により計測ピストン9が下流側へ移動する。図5(B)の状態も、図5(A)の場合と同様に、計測シリンダ2内に流体が満たされていないことを前提にしている。なお、計測ピストン9の位置が特定できない場合には、流路切替弁17、計測開始弁18を共に閉として、第1シリンダ流入口71から流体を流入させるようにすればよい。
【0039】
上記のようにして移動した計測ピストン9は、図5(C)に示すように、下流側のホームポジションP3にセットされ、図5(A)の場合には計測開始弁18を開とする。また、図5(B)の場合には計測開始弁18は既に開になっているためこのままである。なお、いずれの場合も流路切替弁17は閉のままとする。このホームポジションP3では、計測ピストン9が第1シリンダ流出口81と第2シリンダ流出口82との略中間位置に保持されるものとする。
【0040】
図6のリターン動作において、図6(A)に示すように、計測ピストン9がホームポジションP3にセットされた状態で、流路切替弁17を開とする。そして、給圧口165からピストンロッド13に油圧をかけ、図6(B)、(C)に示すように、ピストンロッド13を移動させ、計測ピストン9をホームポジションP3からP4、そして、上流側の所定の計測準備位置P1まで移動させ、計測ピストン9を計測準備位置P1にセットする。ここで、ピストンロッド13が移動すると、磁気スイッチ15がオンからオフに変化する。そして、磁気スイッチ14がオフからオンになると、計測ピストン9が計測準備位置P1まで移動したと判定される。この計測準備位置P1では、計測ピストン9が第1シリンダ流入口71と第2シリンダ流入口72との略中間位置に保持されるものとする。
【0041】
図7の計量準備動作において、上記により計測ピストン9を上流側の所定の計測準備位置P1にセットした後、図6の場合とは逆に、給圧口166からピストンロッド13に油圧をかけ、図7(A)、(B)に示すように、ピストンロッド13を油圧シリンダ12内の元の位置に戻す。そして、図7(B)に示すように、流路切替弁17を閉として、計量準備を終了する。この状態では計測シリンダ2に流体が充填されている。ここで、ピストンロッド13が移動すると、磁気スイッチ14がオンからオフに変化する。そして、磁気スイッチ15がオフからオンになると、ピストンロッド13が油圧シリンダ12内の元の位置に戻ったと判定される。
【0042】
図8の計量動作において、計測開始弁18を閉として、第1シリンダ流入口71から流体を流入させると、図8(A)に示すように、流体圧力により計測ピストン9が下流側へ移動する。この際、計測ピストン9が位置P5にきたときに磁気スイッチ10がオンされ、ここから計量が開始される。そして、図8(B)に示すように、計測ピストン9は位置P6を経て、移動し、図8(C)に示すように、計測ピストン9が位置P7にきたときに磁気スイッチ11がオンされる。これにより計測ピストン9が基準体積の流体を排出したものとして計量が終了する。そして、計測ピストン9は前述の図5(C)に示したホームポジションP3にセットされ、以後、図6のリターン動作、図7の計量準備動作、図8の計量動作が必要な回数だけ繰り返し実行される。
【0043】
以上のように、本発明によれば、計測ピストンとピストンロッドとを別体構造としたため、計測時に計測ピストンに必要以上の負荷をかけることがなく、計測シリンダ内をスムーズに移動させることができ、正確な計量を行うことができる。また、従来品に比べ、シンプルな構造であるため、部品点数を削減し、低コスト化を実現することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…ピストンプルーバ、2…計測シリンダ、3…上流端、4…下流端、5,6…空気抜き弁、7…流体流入口、71…第1シリンダ流入口、72…第2シリンダ流入口、8…流体流出口、81…第1シリンダ流出口、82…第2シリンダ流出口、9…計測ピストン、91…磁性体、92…ガイドリング、93…Oリング、94…オムニシール、95…ピストン装着用棄てタップ、10,11,14,15…磁気スイッチ、12…油圧シリンダ、13…ピストンロッド、16…空油圧変換ユニット、161…空気圧供給源、162…切替弁、163,164…空油圧変換部、165,166…給圧口、17…流路切替弁、18…計測開始弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流入させる上流端及び該流体を流出させる下流端が形成された計測シリンダと、該計測シリンダの下流端側と連結された油圧シリンダと、計測時に前記上流端から流入された流体により前記計測シリンダ内を上流側から下流側に向けて所定距離移動して基準体積の流体を排出する計測ピストンと、前記油圧シリンダに移動可能に収容されたピストンロッドとを備えたピストンプルーバであって、
前記計測ピストンと前記ピストンロッドとは別体で構成され、前記計測ピストンを上流側の所定の計測準備位置に戻す際に、前記ピストンロッドが前記計測ピストンを下流側から上流側に移動させ、該計測ピストンを前記所定の計測準備位置にセットした後に、前記ピストンロッドのみを上流側から下流側に移動させて前記油圧シリンダ内に収容することを特徴とするピストンプルーバ。
【請求項2】
請求項1に記載のピストンプルーバにおいて、前記計測ピストンは、周方向に埋め込んだ磁性体を有し、前記計測シリンダは、前記計測ピストンに埋め込まれた磁性体を検知する2つの検知手段を、前記計測シリンダの上流側と下流側に前記所定距離離して有することを特徴とするピストンプルーバ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のピストンプルーバにおいて、前記計測シリンダの上流端及び下流端の両方に開閉可能な外気に連通する弁を備えたことを特徴とするピストンプルーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−18113(P2012−18113A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156458(P2010−156458)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【特許番号】特許第4782236号(P4782236)
【特許公報発行日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)