説明

ピストンポンプによる試料採取をモニタするための装置

本発明は,シリンジなどのピストンポンプ(3,8)を使用して実施する採取と収集をモニタするための装置に関し,吸引及び/又は排出開口部(6)に近接した圧力センサ(11)を含むことを特徴とする。前記装置は,特に血液試料を分析するための自動分析装置への使用に特に適している。このようなセンサは,分析される液体が適切に吸引され,特に,空気を吸引せず,しかも,吸引又は排出側のどちらも遮断されないことを確実にする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は,ピストンポンプ,特にシリンジタイプのポンプにより実施される自動化された試料採取の分野に関する。本発明は特に,自動分析システムによる,試料,特に血液試料の採取に関する。
【0002】
特に自動血液分析システムでは,分析のために,管の中に試料を採取する。この自動システムは,管に挿入して試料を採取するために設けた針と,ポンプとを備える。ポンプは通常,適切な導管システムを通って針と連通する作業室を備える。採取した試料を吸収するのか,又は,管の中に戻す意図なのかによって,作業室の容積は変わる。通常,採取した試料は針,或いは,針の近く導管システムの一部の中に入ったままである。流体,通常,液体ピストンは,試料とは別に,作業室及び導管システムに収容されている。シリンジ等の作業室の容積の変化は,通常,作業室内に摺動可能に取り付けたプランジャの移動により確実となる。作業室の容積は,ピストンの位置に依存する。
【0003】
特に試料に含まれた要素をアッセイし,採取された試料の,吸収された容積,及び,排出された容積を確認しようとする場合には,このことは特に重要である。同じことが,同様のポンプ手段により吸収又は排出され得る試薬にも適用される。容積の検証は,通常,プランジャの位置センサ,及び/又は,このプランジャを駆動するステッピングモータのステップにより確実となる。しかし,いくつかの状況が,採取エラーを招く。
【0004】
第1の例では,気泡が管の中の血液の表面に形成される,或いは,血液に針を挿入することができなくなり得る。そのため,採取中に,対象となる血液の代わりに空気が入り,プランジャが一定距離動く。
【0005】
第2の例では,針又は導管システムの中に凝塊が形成され,試料の採取ができなくなり得る。しかし,特に流体ピストンに空気が入っている場合,この空気が膨張し,プランジャが一定距離動く。
【0006】
これらの双方の例では,プランジャの移動を検証するだけで,採取は正確に実施されることが提案されるが,それは事実とは異なる。更に,プランジャの移動の途中では採取が正確に行われ,例えば,管の中の血液の高さが針の高さよりも低くなった場合には採取が中断され,それにより,採取される血液の中に,針をそれ以上挿入することができなくなる。
【0007】
同じことが,液体の吸引又は排出にも適用される。
【0008】
本発明の目的は,このような装置により,吸引又は排出が意図される液体が,実際に吸引又は排出されることを確実にするポンプ装置を提案することである。
【0009】
本発明によると,液体がポンピング,特に吸引及び/又は排出されることを確実にするポンプ装置が,該ポンプ装置のポンプ回路に配置される圧力タップを備えることを特徴とする。好適には,このポンプ回路は作業室を備え,ポンピング中に前記作業室の容積が変化し,前記作業室内には,圧力タップが配置される。この圧力タップは,前記作業室の壁の全体又は一部を形成してもよい。
【0010】
したがって,吸引中,測定された瞬間圧力が,第1の予測可能なしきい値よりも高い場合,少なくとも一部の空気が吸引されると考えられる。反対に,圧力が,第2の通常の予測可能なしきい値よりも低い場合,吸引を妨げる栓があると考えられ得る。
【0011】
また,排出中,測定された瞬間圧力が,第3の予測可能なしきい値よりも高い場合,少なくとも一部の空気が排出され得ると考えられる。反対に,圧力が,第4の通常の予測可能なしきい値よりも低い場合,排出を妨げる栓があると考えられ得る。
【0012】
有利には,本装置は,吸引及び/又は排出オリフィスを備えてもよく,圧力タップ,例えばセンサが,前記オリフィスの近くに配置される。したがって,本装置は,ポンプ回路を介した吸引又は排出により生じるポンピングの不具合を,より感知しやすい。
【0013】
特定の実施形態によると,このポンプシステムは,シリンジタイプのポンプを備えてもよく,すなわち,作業室が円筒状で,前記作業室内に,摺動可能かつ密封可能に取り付けけられたプランジャを備え,それにより,作業室の容積が,前記作業室内のプランジャの位置によって変化し,圧力タップ又は圧力センサが,プランジャに対向する作業室の一端に配置される。このような装置に適用されるセンサが,作業室の端壁を形成する膜を備えてもよい。
【0014】
本装置は,圧力センサで測定される瞬間圧力と通常の圧力の状態とを比較するためのモニタ手段を備えることが有利であり得る。
【0015】
本発明は更に,本発明の装置を備える自動分析システム,特に自動血液分析システムに関する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態を,添付図面を参照して,非限定的な実施例として,以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】自動血液分析システムのためのポンプユニットの断面図。
【図2】図1のポンプユニットを備えた圧力センサの本体の一部,並びに,前記本体付近の,前記ポンプユニットの左半分の図。
【図3】吸引された容積に対する予測可能な圧力を示すグラフ。
【0018】
図1は,自動血液分析システム内に取り付けられるポンプユニット1の断面を示す。ユニット1は,実質的に平行六面体の形状を有する。ポンプユニット1は,該ユニット1を自動システムに取り付けるため,又は,他の隣接するユニットと共に組み立てるために設けた孔2を備える。自動システムのポンプ回路の部分3,4,6が,ユニット1内に形成される。この回路部分は,作業室3と,該作業室3の第1の端部付近で,オリフィス6を通って作業室3内に開口する導管4とを備える。導管4は吸引と排出の両方に使用される。
【0019】
作業室3は,図1の部分断面図の軸X3に対して軸対称の円筒形を実質的に有する。作業室3は,第1の端部に対向する第2の端部を通り,ユニット1の第1の面7を通って,かつ,前記第1の面7に対して垂直に開口する。ユニット1はプランジャ8を更に備え,該プランジャ8は作業室3と係合し,該作業室3に摺動可能に取り付けられる。プランジャ8は,面7の開口部を通って作業室3を貫通する。プランジャ8は,作業室3と密封可能に取り付けられる。このプランジャ8は,図示しないステッピングモータにより,並進的に駆動される。
【0020】
作業室3の第1の端部は,該作業室3の壁12を形成する圧力センサ11により閉じられる。端壁12は,X軸に対して垂直に,作業室3の横方向の寸法全体に延在する。センサ11は,図2に拡大して詳細に図示された本体15を備える。
【0021】
導管6は,作業室3から,図1の観察者と対向するポンプユニット1の隠れた面に向かって放射状に延在する。オリフィス6は,端壁12と実質的に接する。したがって,導管のすぐ近くでは,圧力センサは,例えば,空気が吸引された場合,又は,栓がポンプ回路に形成された場合などの,導管4上方のフローの変化による僅かな圧力の変化に敏感である。導管6上方では,ポンプ回路は,分析される血液が入った適切な管の中の血液試料を採取するために設けた針(図示せず)で終端する。
【0022】
ユニット1は,取り付けキャビティ13を更に備え,該取り付けキャビティ13は,ユニット1の第2の面14を通って開口し,第1の面7に対向する。キャビティ13は,センサ11がユニット1の第2の面14を介して取り付けられることを可能にするために設けられる。
【0023】
取り付けキャビティ13及び作業室3は共に,センサ11のハウジング26を形成する。該ハウジングは,作業室3の軸X3に対して軸対称である。作業室3からキャビティ13に進行するか否かにより,ハウジングは,連続的に大きくなる3つの円筒状の領域31〜33を備え,各領域は,隣接する領域と,リング状のショルダー34,35により分離される。一定の直径D3を有する第1の円筒状の領域33は,作業室3へ延在する。第2の領域32の直径D32及び第3の領域33の直径D33は,D33>D32>D31となる。リング状のショルダー34,35は軸X3に対して垂直である。
【0024】
図2を参照して本体15を説明する。
【0025】
本体15は,軸X11に対して実質的に軸対称の形状を有し,センサ11がユニット1に取り付けられる際に,作業室3の軸X3と一致するように設けられる。
【0026】
本体15の外面は,硬質の正面12,リング状のショルダー18を共に形成する二つの円筒状外面16,17,及び,リング状の後面19により画定される。
【0027】
本体15は,リング状のショルダー23を共に形成する2つの円筒状内面21,22により画定される内部空間20を備える。
【0028】
これらのショルダー,正面,及び,後面は,それぞれ,軸X11に対して垂直な平面内にある。
【0029】
本体15は,内部空間20に開口する測定チャネル37を更に備え,空間20の圧力を測定するための機器(図示せず)と連通させることが意図される。
【0030】
正面12は,作業室3の端壁12を形成するために設けられる。正面12は基本的に,作業室3と,センサ11の本体15の内部空間20との間の圧力の差に依存する変形可能な膜24により形成される。このような膜24の使用は,特に有利である。実際は,小さな寸法と僅かな変位を考慮すると,膜24は,作業室3の容積を変えることなく,よって,採取及び/又は分配される容積にいかなる影響を及ぼすことなく,作業室3内の圧力の測定を可能にする。これは,可撓性の管の直径の変化を検出し,容量の変化が,実際に採取及び/又は分配される容積において本質的かつ重要な役割を果たす他の解決策とは逆である。
【0031】
外面16,17のうち,第1の外面16は,第2の外面17の直径D17よりも小さな直径D16を有する。直径D16は作業室3の直径D3と実質的に等しく,それにより,第1の外面16は,調整によって,ハウジング26の第1の領域31と嵌合される。第2の外面17の直径D17は,ハウジング26の第2の領域32の直径D32よりも大きく,同じハウジング26の第3の領域33の直径D33よりも小さい。したがって,センサ11がユニット1に取り付けられている場合,すなわち,本体が図1及び図2に示す位置にある場合,本体のショルダー18はハウジング26の第2のショルダー35に支持され,それにより作業室3の壁12の位置を画定する。ハウジング26の第2の領域32では,リング状の空間が,第1のショルダー34と,Oリングが設けられる本体15の外側ショルダー18との間に画定され,このリング状の空間がこれらのショルダーの間で圧縮されることにより,作業室3の封止を確実にする。
【0032】
センサ11の他の要素は,記載も図示もされていない。
【0033】
図3は,吸引中の所定の瞬間の作業室3の容積Vに対する,センサ11により測定された圧力Pを示すグラフである。容積Vは,作業室3内のプランジャ8の所定の瞬間の位置に対応する。このグラフは単なる例であり,特に,作業室の寸法,作業室内のピストンの速度,及び,採取される流体の粘度により異なる。
【0034】
ハッチングをした領域Nは,中央の理論曲線Mの周りの上方の曲線C1及び下方の曲線C2により限定される。この領域Nは,血液試料が吸引された際の,通常の動作状態を示す。この領域Nは実験的に決定され,自動システムに統合された記憶手段により記録されることが有利であり得る。
【0035】
吸引中,所定容積Vに関して,瞬間圧力Pが曲線C2より下,又は,曲線C1より上である場合,試料の採取量がゼロと考えられ,採取を再び実施しなければならない。栓がポンプ回路の内部に形成される場合,ポンプ回路の予備クリーニングが必要であり得る。空気を入れずに採取針を十分に挿入できるように,採取される試料を入れた管の位置を変える必要がある。
【0036】
一例として,このような装置は特に以下の寸法を有してもよい:
D3≒D16=6mm
D17=8mm
【0037】
もちろん,本発明は,上述した実施例に限定されるものではない。
【0038】
したがって,ポンプはシリンジタイプ以外のタイプのものでもよく,例えば,図示のように,円筒状の作業室内を摺動するピストン備えてもよい。
【0039】
本発明の装置は,ユニットの形状ではなく,個別の要素を備えてもよい。更に,本発明の装置は,特に下記の機能の全て又は一部を実施するために,例えば,プロセッサ及び記憶手段などの制御手段を備えることが有利である:
− ポンピング中の通常の圧力状態又は異常な圧力状態を示すデータベースを記憶することにより蓄積する機能;
− 前記データベースを記録し,保存する機能;
− 前記データベースからのデータを用いてポンプ圧力を瞬時に比較する機能;
− 異常な瞬間圧力値の場合に警告を発する機能。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンピング中に容積が変化する作業室(3)を備え,前記作業室(3)内に配置された圧力タップ(11)を備えることを特徴とする,液体のポンピング,特に吸引及び/又は排出を確実にできる自動分析システムのためのポンプ装置(1)。
【請求項2】
前記圧力タップが,前記作業室(3)の壁(12)の全体又は一部を形成する圧力センサ(11)を含むことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
吸引及び/又は排出オリフィス(6)を備え,前記圧力タップ(11)が前記オリフィス(6)の近くに配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記作業室(3)が円筒状で,前記作業室(3)内に摺動可能かつ密封可能に取り付けられたプランジャ(8)を備え,それにより,前記作業室(3)の容積が,前記作業室(3)内の前記プランジャ(8)の位置によって変化し,前記圧力タップ(11)が,前記プランジャ(8)に対向する,前記作業室(3)の一端に配置されることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記センサ(11)が,前記作業室(3)の端壁(12)である前記壁(12)を形成する膜(24)を備えることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記センサ(11)で測定される瞬間圧力と通常の圧力の状態とを比較するためのモニタ手段を備えることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項記載の装置を備えることを特徴とする,特に血液の分析のための自動分析システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511034(P2013−511034A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538386(P2012−538386)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【国際出願番号】PCT/FR2010/052395
【国際公開番号】WO2011/058268
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(508209495)プルサール テクノロジーズ (3)
【Fターム(参考)】