説明

ピストン式圧縮機

【課題】吐出室から吸入室への冷媒漏れを抑制しつつ、収容筒部とシリンダボアの変形を無くして該変形に起因した不具合の発生を無くすことができるピストン式圧縮機を提供すること。
【解決手段】ピストン式圧縮機において、シリンダブロック11に形成された収容筒部42内に回転軸に支持されたロータリバルブ41が収容されている。収容筒部42の外周に区画壁15が外嵌されているとともに、収容筒部42の外周面42aと区画壁15の内周面15aとの間には吐出室29から吸入室28への冷媒漏れを抑制するシール部材44が設けられている。また、リテーナガスケットGのリヤハウジング13側の端面と区画壁15のリテーナガスケットG側の端面Nbとの間には隙間Kが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリバルブが回転軸と同期回転することで圧縮室と吸入室とを順次連通させるピストン式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のピストン式圧縮機としては、例えば、特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1に記載のピストン式圧縮機の全体ハウジングは、シリンダブロックの前端面にフロントハウジングが接合され、シリンダブロックの後端面に吐出弁及びリテーナを介してリヤハウジングが接合されて構成されている。前記シリンダブロックと、フロントハウジングと、リヤハウジングとは複数本の通しボルトによって締め付けられて接合されている。図5に示すように、前記リヤハウジング80の内側には区画壁81が形成され、リヤハウジング80内は前記区画壁81の内側の吸入室82と、区画壁81の外側の吐出室83に区画されている。
【0003】
また、前記シリンダブロック84には、前記吐出室83に対向するように複数のシリンダボア84aが配設されている。前記各シリンダボア84aにおける前記吐出室83側には底部84bが一体形成され、該底部84bによって各シリンダボア84aは個室状に区画されている。そして、各シリンダボア84a内にはピストン85が往復動可能に収容され、該ピストン85と前記底部84bによってシリンダボア84a内に圧縮室86が区画されている。なお、ピストン85の周面とシリンダボア84aの内周面との間には所定のクリアランスが設けられ、該クリアランスを有することでピストン85はシリンダボア84a内を往復動可能となっている。このようにシリンダボア84aに底部84bが一体形成されることで、例えば、シリンダボア84aの吐出室83側をバルブプレートで閉鎖して該バルブプレートとピストン85によって圧縮室86を区画する場合のように、シリンダブロック84とバルブプレートとの間から冷媒が漏れることが無くなる。その結果として、各シリンダボア84a同士間の冷媒漏れが抑制されるようになっている。
【0004】
また、シリンダボア84aの底部84bには、圧縮室86と前記吐出室83とを連通する吐出ポート87が形成されている。そして、シリンダブロック84とリヤハウジング80との間には、前記吐出ポート87を開閉する吐出弁88と、前記吐出弁88の開度を規制するリテーナ90が介在されている。さらに、前記シリンダブロック84の中央部には収容筒部91(特許文献1では軸孔)が形成され、該収容筒部91内にはロータリバルブ92(特許文献1では回転弁)が収容されている。このロータリバルブ92は、回転軸(図示せず)と同期回転することで前記収容筒部91内を回転し、前記吸入室82と前記圧縮室86とを連通する通路93を順次開閉するようになっている。また、ロータリバルブ92は、その外周面92aと前記収容筒部91の内周面91aとの間に所定のクリアランスを有しており、該クリアランスを有することですべり軸受面を構成して前記回転軸を支持している。
【特許文献1】特開平8−121330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記構成のピストン式圧縮機において、前記区画壁81を介した吐出室83から吸入室82への冷媒漏れ、及びリヤハウジング80の外周部を介した吐出室83から外部への冷媒漏れを抑制するために、前記通しボルトを強く締め付け、シリンダブロック84とリヤハウジング80とを互いに強く引き寄せている。すなわち、リヤハウジング80の外周部の端面80a、及び前記区画壁81の端面81aはそれぞれリテーナ90に強く圧接している。
【0006】
ところが、冷媒漏れを抑制するために、前記通しボルトの締付力を高め、前記圧接力を強めれば強めるほど、図5の2点鎖線に示すように、収容筒部91及びシリンダボア84aが変形してしまう虞があった。前記変形が生じると、例えば、収容筒部91の内周面91aとロータリバルブ92の外周面92aとの間のクリアランスや、ピストン85の周面とシリンダボア84aの内周面との間のクリアランスに狂いが生じてしまう。その結果、該クリアランスを介して冷媒が漏れたり、ロータリバルブ92と収容筒部91とのすべり軸受面としての機能に障害を来すといった不具合が発生する虞があった。
【0007】
本発明は、吐出室から吸入室への冷媒漏れを抑制しつつ、収容筒部とシリンダボアの変形を無くして該変形に起因した不具合の発生を無くすことができるピストン式圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明のピストン式圧縮機は、シリンダブロックの端面にガスケットを介してハウジングが接合され、前記ハウジング内の区画壁の内側には吸入室が区画されているとともに、区画壁の外側には吐出室が区画され、前記シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列される複数のシリンダボア内にはピストンが収容され、該ピストンとシリンダボアに一体形成された底部とよりシリンダボア内に圧縮室が区画されており、前記シリンダブロックに形成された収容筒部内にはロータリバルブが収容され、該ロータリバルブが回転軸と同期回転することで前記圧縮室と前記吸入室とを順次連通させるピストン式圧縮機において、前記収容筒部の外周に前記区画壁が外嵌されているとともに、前記収容筒部の外周面と前記区画壁の内周面との間には吐出室から吸入室への冷媒漏れを抑制するシール部材が設けられ、前記ガスケットのハウジング側の端面と前記区画壁のガスケット側の端面との間には隙間が設けられている。
【0009】
この構成によれば、シリンダボアに底部を一体形成したため、例えば、シリンダボアをバルブプレートにより閉塞する場合とは異なり、各シリンダボア同士間の冷媒漏れが抑制される。さらに、シール部材によって、収容筒部の外周面と区画壁の内周面との間を介した吐出室から吸入室への冷媒漏れが抑制されている。このため、吐出室から吸入室への冷媒漏れを抑制するために、区画壁のガスケット側の端面と、シリンダブロックの端面とでガスケットを挟持し、区画壁のガスケット側の端面をガスケットに圧接させる必要が無くなる。そして、ピストン式圧縮機においては、区画壁のガスケット側の端面をガスケットのハウジング側の端面から離間させ、隙間を設けた。このため、区画壁のガスケット側の端面がガスケットを介してシリンダブロックにおける収容筒部の外周囲を押圧することを無くすことができる。その結果として、前記押圧に伴う収容筒部及びシリンダボアの変形が無くなり、該変形によって収容筒部の内周面とロータリバルブの外周面との間のクリアランス、さらには、ピストンの周面とシリンダボアの内周面との間のクリアランスに狂いが生じてしまう不具合が発生することを無くすことができる。
【0010】
また、前記底部には前記吐出室に連通する吐出ポートが形成されるとともに、該吐出ポートは吐出弁によって開閉され、前記吐出弁は前記シリンダブロックの端面と前記ガスケットとの間に介在される吐出弁形成体に一体形成され、前記吐出弁形成体は、前記収容筒部の外周に設けられる基部と、該基部から各吐出ポートに向けて延設される腕部と、該腕部の先端に設けられて前記吐出ポートの弁座に離着座する弁部とから構成されているとともに、前記吐出弁は前記腕部と前記弁部から構成され、前記シリンダブロックの端面にて少なくとも前記腕部に対向する位置は、前記弁座よりも凹むように逃がし部が形成されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、逃がし部を形成することによって、少なくとも腕部と該腕部に対向するシリンダブロックの端面との間には空隙が形成される。ピストン式圧縮機内を流通する冷媒には潤滑油が含まれており、該潤滑油は吐出弁形成体とシリンダブロックの端面との間にも入り込み、潤滑油の表面張力によって吐出弁形成体とシリンダブロックの端面とは貼り付きやすい状態となっている。しかし、前記空隙が形成されていることで、前記表面張力によって腕部全体がシリンダブロックの端面に貼り付くことが無くなり、空隙が形成されていない場合よりも貼り付きにくくなる。さらに、空隙には、吐出室から吐出された高圧の冷媒が入り込み、該冷媒によって腕部をリヤハウジング側へ押圧する。したがって、空隙による前記腕部における貼り付きの抑制に加え、冷媒による腕部の押圧によって、吐出弁形成体による吐出抵抗を軽減し、弁部を開状態としやすくすることができる。
【0012】
また、前記ガスケットは、前記収容筒部の外周面に装着された規制部材によって収容筒部の軸方向に沿った移動が規制され、前記区画壁のガスケット側の端面は前記規制部材から離間していてもよい。
【0013】
この構成によれば、規制部材により収容筒部の軸方向に沿ったガスケットの移動を規制することができる。したがって、ガスケットが吐出圧を受圧したとき、ガスケットが移動し、区画壁の端面に衝突することで異音が発生することを防止することができる。
【0014】
また、前記ロータリバルブの外周面と前記収容筒部の内周面とは、すべり軸受面を構成していてもよい。
この構成によれば、区画壁のガスケット側の端面が、ガスケットを介してシリンダブロックにおける収容筒部の外周囲を押圧することが無くなり、前記押圧に伴う収容筒部及びシリンダボアの変形が無くなる。このため、ロータリバルブの外周面と、収容筒部の内周面との間のクリアランスが大きく変化することが無くなり、すべり軸受面としての機能が阻害されることもなくなる。その結果として、ロータリバルブの回転に伴う冷媒の吸入、ひいては回転軸の回転に悪影響を及ぼすことが無くなる。したがって、ガスケットのハウジング側の端面と、区画壁のガスケット側の端面との間に隙間を設ける構成は、ロータリバルブを用いるピストン式圧縮機に特に有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吐出室から吸入室への冷媒漏れを抑制しつつ、収容筒部とシリンダボアの変形を無くして該変形に起因した不具合の発生を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化したピストン式圧縮機(以下、単に圧縮機と記載する)の一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。なお、以下の説明において圧縮機の「上」「下」「前」「後」は、図1に示す矢印Y1の方向を上下方向とし、矢印Y2の方向を前後方向とする。
【0017】
図1に示すように、圧縮機10の全体ハウジングは、シリンダブロック11と、該シリンダブロック11の前端面Fに接合されたフロントハウジング12と、シリンダブロック11の後端面Rに、リテーナガスケットGを介して接合されたハウジングとしてのリヤハウジング13とから構成されている。そして、シリンダブロック11、フロントハウジング12、リヤハウジング13、リテーナガスケットGは、複数の通しボルトBにより相互に締め付けられて結合されている(図1では1本の通しボルトBのみ図示)。
【0018】
全体ハウジングにおいて、前記フロントハウジング12とシリンダブロック11によって回転軸19が回転可能に支持されている。すなわち、回転軸19の前側(一端側)はフロントハウジング12の中央に回転可能に支持され、回転軸19の後側(他端側)はシリンダブロック11の中央に回転可能に支持されている。また、回転軸19の前端は、外部駆動源(例えば、エンジン)Eに動力伝達機構PTを介して連結されている。そして、回転軸19は、前記外部駆動源Eから動力の供給を受けて回転するようになっている。
【0019】
また、前記全体ハウジング内にて、前記フロントハウジング12とシリンダブロック11に囲まれた領域にはクランク室17が区画され、該クランク室17内には前記回転軸19の一部が配設されている。前記クランク室17内において、前記回転軸19にはラグプレート16が一体回転可能に固定されているとともに、前記ラグプレート16とフロントハウジング12との間にはスラストベアリング18及びラジアルベアリング22が介在されている。また、回転軸19とフロントハウジング12との間にはリップシール型の軸封装置23が介在され、該軸封装置23によって回転軸19に沿ったクランク室17から圧縮機10外への冷媒(ガス)の漏れが抑制されている。
【0020】
また、前記クランク室17内において、前記回転軸19には斜板24が支持され、この斜板24は前記回転軸19に対してスライド移動可能、かつ回転軸19の中心軸L1に対する傾角を変更可能に支持されている。さらに、ラグプレート16と斜板24との間にはヒンジ機構25が介在されている。そして、前記斜板24は前記ヒンジ機構25を介したラグプレート16との間でのヒンジ連結、及び回転軸19の支持により、ラグプレート16及び回転軸19と同期回転可能であるとともに、回転軸19の軸方向(中心軸L1方向)へのスライド移動を伴いながら回転軸19に対し傾動可能となっている。斜板24の外周部には、前後一対のシュー30を介して片頭ピストン31(以下、ピストン31と記載する)が係留されている。
【0021】
前記リヤハウジング13の内側には有底筒状をなすとともに、シリンダブロック11側へ開口する区画壁15が形成されている。そして、シリンダブロック11の後端面Rと、前記区画壁15の外側の領域との間には吐出室29が環状に区画されている。また、リヤハウジング13内において、前記区画壁15の内側には吸入室28が区画されている。さらに、リヤハウジング13には前記吸入室28に連通し、リヤハウジング13の外部へ開口する吸入口28aが形成されているとともに、前記吐出室29に連通し、リヤハウジング13の外部へ開口する吐出口29aが形成されている。
【0022】
前記吐出室29に連通する吐出口29aと、前記吸入室28に連通する吸入口28aとは、外部冷媒回路40で接続されている。すなわち、吐出室29へ吐出された高圧の冷媒は、吐出口29aを介して外部冷媒回路40へと導出され、外部冷媒回路40を構成する凝縮器40aで冷却される。さらに、冷媒は膨張弁40bで減圧された後、蒸発器40cへと送られて蒸発され、蒸発器40c(外部冷媒回路40)からの戻り冷媒は吸入口28aを介して吸入室28へ吸入されるようになっており、本実施形態の圧縮機10は、外部冷媒回路40とで冷媒循環回路を構成している。
【0023】
前記シリンダブロック11における回転軸19の周囲には、複数のシリンダボア11a(本実施形態では5つ)が配列されている。各シリンダボア11a内には前記ピストン31が往復動可能に収容されている。なお、各ピストン31の周面と、シリンダボア11aの内周面との間には、ピストン31の往復動を可能とする最小限のクリアランスが形成されている。そして、回転軸19の回転にともなう斜板24の回転がシュー30を介してピストン31の往復動に変換され、ピストン31がシリンダボア11a内を往復動する。
【0024】
各シリンダボア11aの後側(リヤハウジング13側)には底部11bが一体形成され、該底部11bによってシリンダボア11aの後側の開口は閉鎖されている。前記底部11bには、該底部11bを貫通して吐出ポート11cが形成されているとともに、該吐出ポート11cは前記吐出室29に連通している。また、シリンダブロック11の後端面Rであって、前記吐出ポート11cの周囲となる位置には弁座Raが形成されている(図2及び図3参照)。
【0025】
各シリンダボア11aは、前記底部11bによってシリンダブロック11内に個別に区画されている。そして、シリンダボア11aの前側(クランク室17側)の開口は、前記ピストン31によって閉塞されており、このシリンダボア11a内には前記底部11bとピストン31によって区画される圧縮室26が形成されている。この圧縮室26は前記吐出ポート11cに連通しているとともに、前記ピストン31の往復動に応じて容積変化する。
【0026】
前記シリンダブロック11の中心部であって、複数のシリンダボア11aの配列より内側には収容筒部42が回転軸19の中心軸L1方向に延びるように形成され、収容筒部42の中心軸L2は回転軸19の中心軸L1と同一軸線上に位置している。この収容筒部42の後側(リヤハウジング13側)の外周には、リヤハウジング13の前記区画壁15が外嵌されている。図2に示すように、収容筒部42の後側の外周面42aには収容溝43が形成され、該収容溝43にはOリングよりなるシール部材44が嵌着されている。そして、前記シール部材44が区画壁15の内周面15aに密接しており、収容筒部42の外周面42aと区画壁15の内周面15aとの間に介在されたシール部材44によって、高圧領域たる吐出室29から低圧領域の吸入室28への冷媒漏れが抑制されている。また、収容筒部42には、通路としての吸入ポート42bが複数形成され、各吸入ポート42bは前記圧縮室26に1対1で連通している。
【0027】
前記収容筒部42の外周には、金属板製の吐出弁形成体14が設けられ、該吐出弁形成体14は位置決めピン(図示せず)によって収容筒部42の周方向へ回転しないように位置決めされている。図3に示すように、前記吐出弁形成体14は、円環状をなす基部14aと、該基部14aから延設された複数本(実施形態では5本)の腕部14bと、該腕部14bの先端に形成された弁部14cとから構成されている。前記基部14aが収容筒部42の外周に設けられ、各腕部14bはそれぞれ吐出ポート11cに向かって延び、弁部14cは吐出ポート11cと対向する位置に配設されているとともに、前記腕部14bと弁部14cによって吐出弁Dが構成されている。
【0028】
そして、圧縮室26から高圧の冷媒が吐出されると、吐出弁Dにおける弁部14cは吐出圧を受圧し、吐出圧が所定の圧力に達すると弁部14cは弁座Raから離間して吐出ポート11cを開状態とするようになっている。また、圧縮室26へ冷媒が吸入されると、吐出弁Dにおける弁部14cは弁座Raに着座して吐出ポート11cを閉状態とするようになっている。
【0029】
また、図1及び図2に示すように、シリンダブロック11の後端面Rと、リヤハウジング13との間には、ガスケットとしてのリテーナガスケットGが介在されている。このリテーナガスケットGは、金属板の両面にゴム材を被膜したものよりなり、ガスケットにリテーナGrが一体形成されて構成されている。そして、シリンダブロック11の外周部11dと、リヤハウジング13の外周部13aとがリテーナガスケットGを挟持し、互いにリテーナガスケットGに圧接することで圧縮機10外への冷媒漏れが抑制されている。また、前記リテーナGrが前記吐出弁Dの開度を規制するようになっている。
【0030】
図1に示すように、前記収容筒部42内には、回転軸19の外周に外嵌された円筒状をなすロータリバルブ41が収容されている。このロータリバルブ41には、回転軸19の周面に設けられたキー47によって回転軸19の回転が伝達され、ロータリバルブ41は回転軸19と同期回転可能に支持されている。また、回転軸19の後側(吸入室28側)は、ロータリバルブ41の外周面41cと収容筒部42の内周面42cとの直接摺動によって、シリンダブロック11に回転可能に支持されている。なお、ロータリバルブ41の外周面41cと、収容筒部42の内周面42cとの間には、ロータリバルブ41の回転を可能とする最小限のクリアランス(図示せず)が形成されている。
【0031】
そして、ロータリバルブ41は、その外周面41cと収容筒部42の内周面42cとで回転軸19の後側を支持してラジアル荷重を受承するすべり軸受面を構成している。前記ロータリバルブ41の外周面41cの全体には、収容筒部42の内周面42cとの間の接触摺動性を良好とするためのコーティングが施されている。このコーティングは、例えば、フッ素樹脂からなっている。
【0032】
また、ロータリバルブ41における後側(吸入室28側)には冷媒供給通路46が形成され、この冷媒供給通路46の入口46aは前記吸入室28側に向かって開口し、冷媒供給通路46の出口46bはロータリバルブ41の外周面41cに開口形成されている。そして、冷媒供給通路46は、吸入室28と、吸入ポート42b及び圧縮室26とを連通させ、吸入室28から圧縮室26へ冷媒を供給可能とする。
【0033】
そして、ロータリバルブ41が回転することで、冷媒供給通路46の出口46bは各吸入ポート42bに順次連通し、該吸入ポート42bを開閉するようになっている。すなわち、吸入ポート42b及び冷媒供給通路46を介して、吸入室28を圧縮室26に順次連通させるようになっている。前記ロータリバルブ41は、ピストン31が吸入行程に移行した場合に、冷媒供給通路46の出口46bを、シリンダブロック11の吸入ポート42bに連通させる。すると、吸入室28の冷媒は、ロータリバルブ41の冷媒供給通路46、及び吸入ポート42bを同順に経由して圧縮室26に吸入される。
【0034】
一方、前記ピストン31の吸入行程の終了時、ロータリバルブ41の回転により冷媒供給通路46の出口46bが吸入ポート42bに対して周方向に完全にずれ、吸入室28から圧縮室26内への冷媒の吸入が停止される。続けて、ピストン31が圧縮・吐出行程に移行されると、ロータリバルブ41の外周面41cによって冷媒供給通路46と圧縮室26の間が閉塞状態に保持され、冷媒の圧縮及び圧縮済み冷媒の吐出室29への吐出が妨げられることはない。
【0035】
前記回転軸19内には放圧通路35が形成されている。放圧通路35の入口35aはクランク室17に開口しており、放圧通路35の出口35bは、回転軸19の吸入室28側の端部から吸入室28に開口している。すなわち、クランク室17は放圧通路35を介して吸入室28に連通している。また、前記全体ハウジング内には、制御通路(図示せず)が設けられ、該制御通路は吐出室29とクランク室17とを接続し、該制御通路の途中には、電磁弁よりなる周知の制御弁38が配設されている。
【0036】
そして、前記制御弁38が開状態にあると、吐出室29へ吐出された冷媒は、制御通路(制御弁38)を通ってクランク室17へ流入する。クランク室17内の冷媒は、前記放圧通路35を通って冷媒供給通路46から吸入室28へ流入する。また、吸入室28内の冷媒は冷媒供給通路46を介した前記吸入ポート42bから圧縮室26へ吸入されて吐出室29へ吐出される。すなわち、吐出室29、制御通路、制御弁38、クランク室17、放圧通路35、吸入室28、冷媒供給通路46、吸入ポート42b及び圧縮室26という循環経路が圧縮機10内に形成され、吐出室29、クランク室17及び吸入室28の間では圧力差が生じている。また、前記循環経路を冷媒が循環することで、冷媒に含まれる潤滑油が圧縮機10内を循環するようになっている。そして、前記潤滑油によって圧縮機10内の摺動部分に潤滑が付与されるようになっている。
【0037】
また、前記制御弁38の開度を調節することで、制御通路を介したクランク室17への高圧な冷媒の導入量と、放圧通路35を介したクランク室17からの冷媒の導出量とのバランスが制御され、クランク室17内の圧力が決定される。クランク室17内の圧力の変更に応じて、クランク室17内の圧力と圧縮室26内の圧力とのピストン31を介した差が変更され、斜板24の傾角が変更される結果、ピストン31のストロークが変更されて圧縮機10の吐出容量が変更される。
【0038】
例えば、前記クランク室17内の圧力が低下されると斜板24の傾角が増大し、ピストン31のストロークが増大して圧縮機10の吐出容量が増大される。逆に、クランク室17内の圧力が上昇されると斜板24の傾角が減少し、ピストン31のストロークが減少して圧縮機10の吐出容量が減少される。
【0039】
次に、シリンダブロック11とリヤハウジング13との接合態様について説明する。
図3に示すように、シリンダブロック11の後端面Rにおいて、収容筒部42の外周囲と、前記弁座Raの外周囲となる位置には、それぞれ円環状をなす逃がし部Rcが形成されている。その結果として、シリンダブロック11の後端面Rにおいて、回転軸19の周方向に各弁座Raを繋ぐ同心円状をなす部位は、前記一対の逃がし部Rcによって囲まれている。さらに、シリンダブロック11の後端面Rにて、外周側の逃がし部Rcの外側に前記リテーナガスケットGに圧接する外周部11dの端面Rbが形成されている。
【0040】
なお、上記構成のシリンダブロック11は、シリンダブロック11の成形(ダイカスト成形)後に、後端面Rに逃がし加工を施して一対の逃がし部Rcを形成し、さらに、後端面Rに弁座Ra及び外周部11dの端面Rbを加工して形成されている。前記弁座Ra及び端面Rbは、その加工によって平滑度(面精度)が極めて高められている一方で、逃がし部Rcは、粗加工によってわずかに平滑度が高められている。
【0041】
そして、シリンダブロック11の後端面Rにおいて、弁座Ra及び外周部11dの端面Rbの平滑度が高められることで前記弁座Ra及び外周部11dの端面Rbに対する前記弁部14c及びリテーナガスケットGの密接度が高められている。すなわち、弁座Raに弁部14cが着座したときは弁座Raと弁部14cが密接し、吐出ポート11cからの冷媒漏れが効果的に抑制される。一方、シリンダブロック11における外周部11dの端面RbとリテーナガスケットGも密接し、該密接箇所からの冷媒漏れが効果的に抑制される。また、後端面Rに逃がし部Rcが形成されることで、基部14a及び腕部14bとシリンダブロック11との間には空隙たる逃がし部Rcが介在している。
【0042】
図2に示すように、リヤハウジング13において、その外周部13aのシリンダブロック11側の端面Naと、前記区画壁15のシリンダブロック11側の端面Nbとは同一平面上に位置していない。すなわち、リヤハウジング13は、区画壁15の端面Nbが、外周部13aの端面Naよりもリヤハウジング13側へ後退するように形成されている。
【0043】
このため、圧縮機10の全体ハウジングにおいて、外周部13aの端面Naが前記リテーナガスケットGに圧接した状態では、区画壁15の端面NbはリテーナガスケットGに圧接しない。すなわち、区画壁15の端面Nbは、リテーナガスケットGのリヤハウジング13側の端面から離間するように形成され、区画壁15の端面Nbと、リテーナガスケットGとの間に隙間Kが形成されるようになっている。
【0044】
回転軸19の中心軸L1方向に沿った隙間Kの大きさは、400μmを超えない値となっている。この隙間Kが400μmを超えると、吐出室29からの冷媒の吐出の際に、吐出圧を受圧した吐出弁形成体14及びリテーナガスケットGがリヤハウジング13側へ大きく移動することとなる。この移動量の増大は、弁部14cの弁座Raへの着座を妨げ、圧縮行程における冷媒漏れをもたらすため、圧縮効率を低減させることに繋がり好ましくない。
【0045】
そして、圧縮機10の全体ハウジングを構成するため、通しボルトBによって各部材を締け付けて結合したとき、図2に示すように、外周部13aの端面Naは、外周部11dの端面RbとでリテーナガスケットGを挟持し、外周部11dの端面Rbと外周部13aの端面NaはそれぞれリテーナガスケットGに圧接する。このため、リテーナガスケットGによって、通しボルトBの周面に沿ってクランク室17から漏れてきた冷媒が圧縮機10の外部へ漏れることが抑制される。一方、区画壁15の端面Nbは、リテーナガスケットGに圧接することはなく、吐出弁形成体14及びリテーナガスケットGが区画壁15とシリンダブロック11とによって挟持されることはない。このため、区画壁15の端面Nbによって、シリンダブロック11の後端面Rにおける収容筒部42の外周囲が強く押圧されることが防止されている。
【0046】
また、前記隙間Kが形成され、さらに、シリンダブロック11の後端面Rにて、基部14a及び腕部14bに対向する位置に空隙たる逃がし部Rcが形成されている。そして、弁部14cが吐出行程時に吐出圧を受圧したとき、前記隙間K分だけ吐出弁形成体14及びリテーナガスケットGがリヤハウジング13側へ移動するようになっている。このとき、吐出弁形成体14と後端面Rの間に逃がし部Rcが介在することで、冷媒に含まれる潤滑油によってシリンダブロック11の後端面Rと基部14a及び腕部14bとが貼り付くことが抑制されており、吐出弁形成体14が速やかに移動する。そして、吐出弁形成体14が移動することで、吐出の際に弁部14cによって発生する吐出抵抗が低減される。
【0047】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)シリンダボア11aに底部11bを一体形成してシリンダボア11a間の冷媒漏れを抑制し、吐出室29から吸入室28への冷媒漏れは収容筒部42の外周面42aと区画壁15の内周面15aとの間に設けられたシール部材44によって抑制されている。このため、吐出室29から吸入室28への冷媒漏れを抑制するため、区画壁15の端面NbをリテーナガスケットG及び吐出弁形成体14を介してシリンダブロック11の後端面Rに圧接させる必要が無くなる。そして、本実施形態では、区画壁15の端面NbとリテーナガスケットGとの間に隙間Kを設けた。したがって、全体ハウジングが構成されても区画壁15の端面Nbが、吐出弁形成体14及びリテーナガスケットGを介してシリンダブロック11の後端面Rを押圧することが防止され、該押圧によって収容筒部42及びシリンダボア11aが変形することが無くなる。このため、前記変形によって、収容筒部42の内周面42cとロータリバルブ41の外周面41cとの間のクリアランスや、ピストン31の周面とシリンダボア11aの内周面との間のクリアランスに狂いが生じてしまう不具合は発生しない。その結果として、該クリアランスの狂いに起因したすべり軸受面としての機能障害や冷媒漏れも抑制することができる。さらには、収容筒部42及びシリンダボア11aの変形を予め考慮して前記クリアランスを設定する必要が無くなり、前記クリアランスとなるように通しボルトBの締付力を調整する必要も無くなる。その結果として、通しボルトBの締付力の大小に依存してクリアランスがばらつくことを無くし、該締付力に依存してピストン式圧縮機10の性能にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0048】
(2)特に、圧縮機10は、ロータリバルブ41の外周面41cと収容筒部42の内周面42cとですべり軸受面を構成して回転軸19を支持している。収容筒部42及びシリンダボア11aの変形は、前記すべり軸受面としての機能を阻害し、ロータリバルブ41の回転に伴う冷媒の吸入、ひいては回転軸19の回転に悪影響を及ぼすこととなる。したがって、本実施形態のように隙間Kを形成することで前記変形を無くし、さらに、すべり軸受面としての機能が阻害されることが無くなるため、隙間Kを形成することはロータリバルブ41を用いる圧縮機10に特に有効である。
【0049】
(3)リテーナガスケットGのリヤハウジング13側の端面と、区画壁15のリテーナガスケットG側の端面Nbとの間に隙間Kが形成されているため、吐出弁形成体14は、弁部14cが吐出圧を受圧したときリテーナガスケットGとともにシリンダブロック11側からリヤハウジング13側へ移動する。したがって、例えば、吐出弁形成体14がシリンダブロック11とリヤハウジング13との間に挟持されている場合に比して、吐出の際に吐出弁形成体14によって発生する吐出抵抗が低減されるため、圧縮室26から吐出室29へ冷媒が吐出されやすくなり、圧縮機10の体積効率を向上させることができる。
【0050】
(4)シリンダブロック11の後端面Rの加工は、弁座Ra及び外周部11dの端面Rbの平滑度(面精度)が高くなるように加工される一方で、逃がし部Rcは粗加工のみで完了している。すなわち、シリンダブロック11の後端面Rは、弁部14cが着座する弁座Ra、及びリテーナガスケットGに圧接する外周部11dの端面Rbといった冷媒漏れを抑制すべき箇所のみが平滑度が高められている。したがって、シリンダブロック11の後端面R全てを平滑度を高める加工を行う場合に比して、その加工費を抑え、圧縮機10の製造コストを抑えることができる。
【0051】
(5)シリンダブロック11の後端面Rにおいて、吐出弁形成体14の基部14a及び腕部14bに対向する位置には逃がし部Rcが形成されている。このため、腕部14bとシリンダブロック11の後端面Rとの間に潤滑油が入りこんでも、腕部14bをシリンダブロック11の後端面Rに貼り付きにくくすることができる。その結果として、腕部14bの貼り付きによって弁部14cが開きにくくなることを抑制することができる。
【0052】
また、基部14a及び腕部14bに対向する位置に形成された逃がし部Rcには、吐出された高圧の冷媒が入り込み、該冷媒によって吐出弁形成体14をリヤハウジング13側へ押圧する。そして、リテーナガスケットGと区画壁15との間には隙間Kが形成されているため、隙間Kの大きさだけ吐出弁形成体14はリテーナガスケットGとともにリヤハウジング13側へ速やかに移動することとなる。したがって、腕部14bの貼り付きを抑制し、さらに、吐出弁形成体14をリヤハウジング13側へ移動可能とすることで、吐出圧が所定の圧力に達したら弁部14cにより吐出ポート11cを速やかに開状態とすることができ、圧縮室26内で冷媒が所定の圧力以上まで圧縮されてしまう過圧縮を防止することができる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図4に示すように、収容筒部42の外周面42aに規制部材としてのサークリップCを装着し、該サークリップCによって収容筒部42の中心軸L2方向に沿ったリテーナガスケットG及び吐出弁形成体14の移動を規制する構成としてもよい。このとき、区画壁15の端面Nbは、サークリップCから離間しており、区画壁15の端面NbとリテーナガスケットGとの間には隙間Kが形成されている。すなわち、区画壁15の端面Nbによってシリンダブロック11が押圧されていない構成となっている。前記サークリップCは、収容筒部42への装着箇所がテーパ状に形成されており、収容筒部42への装着状態ではリテーナガスケットG及び吐出弁形成体14をシリンダブロック11側へ抑え付けている。なお、サークリップCがリテーナガスケットG及び吐出弁形成体14をシリンダブロック11側へ押さえ付ける力は極わずかであり、収容筒部42及びシリンダボア11aを変形させることはない。なお、サークリップCは、収容筒部42への装着箇所がテーパ状に形成されていないものでもよい。
【0054】
○ 逃がし部Rcは、吐出弁形成体14の基部14a及び腕部14bに対向する位置のみに形成されていてもよく、弁座Raより外周側は逃がし部Rcを加工しなくてもよい。又は、逃がし部Rcは、吐出弁形成体14の腕部14bに対向する位置のみに形成されていてもよい。
【0055】
○ 全体ハウジングが、前後一対のシリンダブロック11と、前側のシリンダブロック11にフロントハウジング12が接合され、後側のシリンダブロック11にリヤハウジング13が接合されて構成され、さらに、両頭ピストンを備え、回転軸19の両端にロータリバルブ41が設けられた両頭ピストン式圧縮機に本発明を適用してもよい。この場合、前後両シリンダブロック11に収容筒部42が形成され、該収容筒部42の外周面にシール部材44が装着されている。そして、前後両シリンダブロック11の収容筒部42と、各ハウジング12,13の区画壁15との間はシール部材44によって冷媒漏れが抑制されている。
【0056】
さらに、前側のシリンダブロック11とフロントハウジング12との間、及び後側のシリンダブロック11とリヤハウジング13との間にはリテーナガスケットG及び吐出弁形成体14が介在されている。また、フロントハウジング12の区画壁15とリテーナガスケットGとの間、及びリヤハウジング13の区画壁15とリテーナガスケットGとの間にはそれぞれ隙間Kが形成されている。
【0057】
○ 区画壁15の内周面15aに収容溝43を形成するとともに、該収容溝43にシール部材44を嵌着し、該シール部材44によって収容筒部42の外周面42aと区画壁15の内周面15aとの間からの冷媒漏れを抑制する構成としてもよい。
【0058】
○ シリンダブロック11の後端面Rにおいて、逃がし部Rcは粗加工せず、逃がし部Rcの形成後、そのままの状態(黒皮化)としてもよい。
○ ガスケットとリテーナGrが一体化されたリテーナガスケットGを用いず、ガスケットとリテーナとを別々に設けてもよい。この場合、ガスケットのリヤハウジング13側にリテーナが設けられ、区画壁15のガスケット側の端面Nbとリテーナとの間に隙間Kが形成される。そして、ガスケットによってシリンダブロック11の外周部11dと、リヤハウジング13の外周部13aとの間の気密を確保し、リテーナによって吐出弁Dの開度を規制してもよい。
【0059】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(1)前記シリンダブロックの端面において、前記弁座となる位置、及び前記ガスケットに圧接する外周部の端面は平滑化によって面精度が高められている請求項2に記載のピストン式圧縮機。
【0060】
(2)前記ガスケットには、前記吐出弁に開度を規制するリテーナが一体形成されている請求項2に記載のピストン式圧縮機。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態のピストン式圧縮機を示す縦断面図。
【図2】シリンダブロックとリヤハウジングの接合箇所を示す部分拡大断面図。
【図3】シリンダブロックの端面を示す正面図。
【図4】シリンダブロックとリヤハウジングの接合箇所の別例を示す部分拡大断面図。
【図5】背景技術におけるシリンダブロックとリヤハウジングの接合箇所を示す部分拡大断面図。
【符号の説明】
【0062】
C…規制部材としてのサークリップ、D…吐出弁、G…ガスケットとしてのリテーナガスケット、K…隙間、Nb…区画壁のガスケット側の端面、R…シリンダブロックの端面としての後端面、Ra…弁座、Rc…逃がし部、10…ピストン式圧縮機、11…シリンダブロック、11a…シリンダボア、11b…底部、11c…吐出ポート、13…ハウジングとしてのリヤハウジング、14…吐出弁形成体、14a…基部、14b…腕部、14c…弁部、15…区画壁、15a…内周面、19…回転軸、26…圧縮室、28…吸入室、29…吐出室、31…片頭ピストン、41…ロータリバルブ、41c…外周面、42…収容筒部、42a…外周面、42c…内周面、44…シール部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダブロックの端面にガスケットを介してハウジングが接合され、前記ハウジング内の区画壁の内側には吸入室が区画されているとともに、区画壁の外側には吐出室が区画され、前記シリンダブロックにおける回転軸の周囲に配列される複数のシリンダボア内にはピストンが収容され、該ピストンとシリンダボアに一体形成された底部とよりシリンダボア内に圧縮室が区画されており、前記シリンダブロックに形成された収容筒部内にはロータリバルブが収容され、該ロータリバルブが回転軸と同期回転することで前記圧縮室と前記吸入室とを順次連通させるピストン式圧縮機において、
前記収容筒部の外周に前記区画壁が外嵌されているとともに、前記収容筒部の外周面と前記区画壁の内周面との間には吐出室から吸入室への冷媒漏れを抑制するシール部材が設けられ、前記ガスケットのハウジング側の端面と前記区画壁のガスケット側の端面との間には隙間が設けられていることを特徴とするピストン式圧縮機。
【請求項2】
前記底部には前記吐出室に連通する吐出ポートが形成されるとともに、該吐出ポートは吐出弁によって開閉され、前記吐出弁は前記シリンダブロックの端面と前記ガスケットとの間に介在される吐出弁形成体に一体形成され、前記吐出弁形成体は、前記収容筒部の外周に設けられる基部と、該基部から各吐出ポートに向けて延設される腕部と、該腕部の先端に設けられて前記吐出ポートの弁座に離着座する弁部とから構成されているとともに、前記吐出弁は前記腕部と前記弁部から構成され、前記シリンダブロックの端面にて少なくとも前記腕部に対向する位置は、前記弁座よりも凹むように逃がし部が形成されている請求項1に記載のピストン式圧縮機。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記収容筒部の外周面に装着された規制部材によって収容筒部の軸方向に沿った移動が規制され、前記区画壁のガスケット側の端面は前記規制部材から離間している請求項1又は請求項2に記載のピストン式圧縮機。
【請求項4】
前記ロータリバルブの外周面と前記収容筒部の内周面とは、すべり軸受面を構成している請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のピストン式圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−113423(P2007−113423A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303424(P2005−303424)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】