説明

ピッキング用通箱装置

【課題】ピッキング用通箱の各部屋から部品を取り上げるために、狭い上面から手を入れて取り出すという作業性を改善する。
【解決手段】ピッキング用通箱と、ピッキング用通箱を内部に収納可能な通箱受けユニット2からなり、ピッキング用通箱は、複数の部屋の側周囲を形成する側板と、各部屋の側板の上部に水平方向に突出する上部ストッパー14及び下部に水平方向に突出する下部ストッパー15と、各部屋毎に各部屋の側板内面と上下摺動可能な可動底板10とを設け、通箱受けユニット2は、底面板20と、上面が開放されピッキング用通箱全体が上方から落とし込んで収納可能な周囲形状である外側壁21とを有するとともに、底面板20にピッキング用通箱の各部屋毎に対応する位置かつ数でそれぞれの高さがピッキング用通箱の側板の高さ程度の底板押上体を固定して設けたピッキング用通箱装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車製造工場などの組立工程等において使用され、工場の内外から搬入、運搬されてくる部品を、組立ラインまで運び、決められた箇所に設置し、通箱内の部品が作業者やロボットにピッキングされ使用され、部品が空になった場合に逆搬送され再び部品の運搬を行うピッキング用通箱を使用した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の製造工場の組立工程において使用されるピッキング用通箱は、上面が開放された箱状体の内部を内側板によって区分けされた複数の部屋を有し、各部屋毎に1つずつ複数の部品等を入れて運搬され、工場内の組立ライン等の一定の場所に設置される。その場所において作業者やロボットによりピッキング用通箱の中の部屋から必要である部品が順次ピッキングされ組立ライン等に使用されていく。
【0003】
従来のピッキング用通箱3の詳細は、図4及び図5に示されるように、上面が開放され下面が底板30によって閉鎖され外側板31によって外側面が閉鎖される箱状体からなり、その内部を複数の内側板32によって区分けして複数の部屋33を形成していた。そして各部屋33毎に1つずつの部品等を入れて運搬され、必要な位置に設置し、部品が作業者やロボットにピッキングされていた。部品が無くなると又外部や工場内の部品を補給する場所に運送され、必要な部品を入れ、この作業を順次繰り返していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のピッキング用通箱は、大きさは異なるが大きいものでも横1m×縦1.5m×高さ1m程度の上面のみが開放され直方体状が外形の箱状体である。その箱状体の内部を固定された内側板で複数の部屋に区分けし形成したものであるため、区分けされた複数の部屋は、上面の取り出し開口平面積が狭い割に深さがあった。
【0005】
そのため、部屋の底面に置かれる部品を取り上げるためには、狭い上面から手を入れて作業者やロボットが取り出していたため、作業性が悪く、ピッキングロボットでも取り出しにくい課題があった。
【0006】
更に、部品によっては形状や大きさも異なり。特にピッキングロボットがそれらの部品に対応した動きができずピッキング不能となるような場合もあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、上面が開放され下面が可動底板によって閉鎖され側面が外側板によって囲われて閉鎖されている箱状体からなり、箱状体は内側板によって区分けされている複数の部屋を有し、各部屋毎に1つずつ複数の部品等を入れて運搬し、ある場所において部屋の中の部品が作業者やロボットによってピッキングされるピッキング用通箱と、このピッキング用通箱を内部に収納可能な通箱受けユニットからなり、
ピッキング用通箱は、複数の部屋の側周囲を形成する側板と、各部屋の側板の上部に水平方向に突出する上部ストッパー及び下部に水平方向に突出する下部ストッパーと、各部屋毎に各部屋の側板内面と上下摺動可能な可動底板とを設け、
通箱受けユニットは、底面板と、上面が開放されピッキング用通箱全体が上方から落とし込んで収納可能な周囲形状である外側壁とを有するとともに、底面板にピッキング用通箱の各部屋毎に対応する位置かつ数でそれぞれの高さがピッキング用通箱の側板の高さ程度の底板押上体を固定して設けたことを特徴とするピッキング用通箱装置を提案する。
【0008】
更に、予めピッキング用通箱を設置する場所に通箱受けユニットを設置しておき、運搬されてきた複数の部品を各部屋に入れたピッキング用通箱を通箱受けユニットへ上方から落とし込むことにより、各部屋の可動底板が底板押上板に押し上げられ、ピッキング用通箱の全体を通箱受けユニットへ落とし込んだ状態で可動底板が外側板の上端近傍まで上昇する0007欄に記載のピッキング用通箱装置を提案する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ピッキング用通箱を設置する予定の場所に、予め通箱受けユニットを置いておき、運搬されてきたピッキング用通箱を通箱受けユニットへ上方から落とし込むことにより、各部屋の可動底板のみが底板押上板に押し上げられ、それ以外のピッキング用通箱の全体は、通箱受けユニットへ落ち込むため、各部屋の可動底板の上に乗っている部品は、それぞれ外側板の上端近傍まで上昇する。
【0010】
したがって、各部屋の底面に置かれている全ての部品が外側板、内側板の高さより上方に出るため、従来のピッキング用通箱と比較して部品をピッキングする作業が非常に容易になり、作業性が向上した。
【0011】
特に、部品の形状や大きさにかかわらずピッキングロボットによるピッキングが失敗することがなくなり作業効率が向上した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明の実施形態であるピッキング用通箱装置に使用するピッキング用通箱の平面を示す図1、図1のAA線断面を示す側面断面図である図2、ピッキング用通箱を通箱受けユニットへ落とし込んだ状態を示す側面断面図である図3に基づいて説明する。
【0013】
この発明の実施形態であるピッキング用通箱装置は、ピッキング用通箱1と、このピッキング用通箱を内部に収容可能な通箱受けユニット2とからなる。
【0014】
ピッキング用通箱1は、上面が開放され下面が可動底板10によって閉鎖され側面が外側板11によって囲われて閉鎖されている箱状体からなる。箱状体は、内側板12によって区分けされており、内側板12及び外側板13及び可動底板10によって直方体形状の空間として形成される部屋13を複数有する。この実施形態では縦方向の内側板12aを幅方向の中央に1枚設け、横方向の内側板12bを長さ方向にほぼ等間隔に2枚設けており、部屋13の数は、6室である。
【0015】
ピッキング用通箱1は、各部屋13の側壁板である外側板11及び内側板12の上部に水平方向に突出する上部ストッパー14を設け、下部に同じく水平方向に突出する下部ストッパー15とを設けている。この実施形態では、上部ストッパー14、下部ストッパー15は、部屋13を形成する全ての側板11、12に設けているが対面する2つの側板のみに設けてもよい。また下部ストッパー15は、各側板11、12の下端面に固定されており、可動底板10及び可動底板10に乗る部品Pの重量を支持するため上部ストッパー14より突出面積は広く大きい。
【0016】
各部屋13は、底面となる可動底板10を各々設けており、各可動底板10は各部屋13を形成する外側板及び内側板の内面に底板側端面が摺動して上下に移動する。各可動底板10は、平面状の床面に箱状体が上面を開放した状態で置かれている状態では、底板周辺を下部ストッパー15上に乗せて部屋13の底面を形成している。
【0017】
通箱受けユニット2は、底面板20と、上面が開放されピッキング用通箱全体を上方から落とし込んで収納可能である周囲形状の外側壁21と、底面板20に立てて設ける底板押上体22を有している。通箱受けユニット2の底面板20に設けられる底板押上体22は、ピッキング用通箱1の各部屋13毎に対応する位置の同数設けられており、その高さはピッキング用通箱1の外側板11及び内側板12の高さ前後である。実施例の可動底板10は、その上面は平面状であるが、部品Pを固定するため、部品Pの形状に合わせた上面形状とすることも可能である。
【0018】
この実施形態では、底板押上体22は底面板20の上面に立設される棒状体22aと、棒状体22aの上端面に底面板20と平行な板状体から成る押上板22bを設けている。底板押上体22の高さは、ピッキング用通箱1の外側板11及び内側板12の高さと同じである。底板押上体22の押上板22の形状、面積は、ピッキング用通箱1の可動底板10の形状と同じであり面積はやや小さい。
【0019】
この発明の実施形態であるピッキング用通箱装置の作動について説明する。通箱受けユニット2は、予めピッキング用通箱1を設置する予定の場所、例えば組立ラインの側等に設置しておく。
【0020】
空箱のピッキング用通箱1は、部品Pを各部屋13に入れる場所、例えば外部の納入業者の工場や、工場の他の保管場所によって部品Pを各部屋13に入れられ、決められた通箱受けユニット2の置いてある位置までトラック、台車など様々な方法で運搬される。
【0021】
運搬されてきた複数の部品Pを各部屋13に入れたピッキング用通箱1は、予め決められた位置にあり形状、大きさが対応する通箱受けユニット2へ上方からゆっくり落とし込む。この動作により通箱受けユニット2の外側壁21から下方になると、各部屋13の可動底板10は下面が底板押上体22の押上板22の上面と当接し下方からその高さで支持されるが、他のピッキング用通箱1の全体は、そのまま通箱受けユニット2へ落ち込んでいく。したがって各可動底板10は、箱状体の中で相対的に上方へ押し上げられる形となり、外側板11及び内側板12の内面と各可動底板10の外周端面が摺動することによって水平を保ちつつ上昇し、各部屋13の外側板11の上端近傍まで上昇し、可動底板10は上面周囲が上部ストッパー14の下面に当接して上昇は止まる。したがって可動底板10が各部屋13から上方、下方に外れることはない。
【0022】
この状態ではピッキング用通箱1の略上端に各可動底板10が水平状態で位置するので、各可動底板10の上に乗っている部品Pはピッキング用通箱1から上方に出た状態となる。そのため、作業者やピッキングロボットが部品Pをピッキングする作業が非常に容易になる。
【0023】
必要な部品Pを使用した後、空箱になったピッキング用通箱1は、通箱受けユニット2から持ち上げて取り去るが、その場合、可動底板10は自重により各部屋13内を相対的に落下して下部ストッパー15の上面によって支持される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、自動車製造工場において部品の運搬、備え置きに使用されるピッキング用通箱装置として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の実施形態であるピッキング用通箱装置に使用するピッキング用通箱の平面図
【図2】図1のAA線断面を示す側面断面図
【図3】同じくピッキング用通箱を通箱受けユニットへ落とし込んだ状態を示す側面断面図
【図4】従来のピッキング用通箱の平面図
【図5】従来のピッキング用通箱の側面断面図
【符号の説明】
【0026】
1 ピッキング用通箱
10 可動底板
11 外側板
12 内側板
13 部屋
14 上部ストッパー
15 下部ストッパー
2 通箱受けユニット
20 底面板
21 外側壁
22 底板押上体
22a 棒状体
22b 押上板
P 部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開放され下面が可動底板によって閉鎖され側面が外側板によって囲われて閉鎖されている箱状体からなり、箱状体は内側板によって区分けされている複数の部屋を有し、各部屋毎に1つずつ複数の部品等を入れて運搬し、ある場所において部屋の中の部品が作業者やロボットによってピッキングされるピッキング用通箱と、このピッキング用通箱を内部に収納可能な通箱受けユニットからなり、
ピッキング用通箱は、複数の部屋の側周囲を形成する側板と、各部屋の側板の上部に水平方向に突出する上部ストッパー及び下部に水平方向に突出する下部ストッパーと、各部屋毎に各部屋の側板内面と上下摺動可能な可動底板とを設け、
通箱受けユニットは、底面板と、上面が開放されピッキング用通箱全体が上方から落とし込んで収納可能な周囲形状である外側壁とを有するとともに、底面板にピッキング用通箱の各部屋毎に対応する位置かつ数でそれぞれの高さがピッキング用通箱の側板の高さ程度の底板押上体を固定して設けたことを特徴とするピッキング用通箱装置。
【請求項2】
予めピッキング用通箱を設置する場所に通箱受けユニットを設置しておき、運搬されてきた複数の部品を各部屋に入れたピッキング用通箱を通箱受けユニットへ上方から落とし込むことにより、各部屋の可動底板が底板押上板に押し上げられ、ピッキング用通箱の全体を通箱受けユニットへ落とし込んだ状態で可動底板が外側板の上端近傍まで上昇する請求項1に記載のピッキング用通箱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−95294(P2010−95294A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268524(P2008−268524)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000108188)セントラル自動車株式会社 (66)
【Fターム(参考)】