説明

ピッチングマシン

【課題】打者がタイミングをとりやすく、実際のピッチャーが投げる球に近いボールを投げることができ、より実践的なバッティング練習を行うことができるピッチングマシンを提供する。
【解決手段】胴体部12が、支持台11に対して前後方向に移動可能、かつ支持台11との取付位置で回転可能である。上腕部13が、伸長方向に沿った中心軸周りに前後方向に回転可能である。前腕部14が、上腕部13との取付位置で前後方向の軸を中心として外側に開く方向に回転可能である。第1弾性部材16が、胴体部12に対して、前腕部14が上方に伸びる位置になるよう、上腕部13を弾性的に保持している。第2弾性部材17が、上腕部13に対して前腕部14を上方に伸びる位置の方向に付勢している。駆動部20が、胴体部12を前方に移動させるとともに、回転させて上腕部13の伸長方向と反対側の斜め前方に傾けるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッチングマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアーム式のピッチングマシンは、一般的に、1リンクまたは2リンクのアームを、打者と正対する2次元垂直平面内で駆動させて、投球するようになっている(例えば、特許文献1または2参照)。また、ピッチャーが投球する映像を写し、その映像の投球タイミングおよび投球時の手の位置に合わせて、アーム式のピッチングマシンから投球を行うものもある(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
なお、従来、本発明者等により、実際のピッチャーの投球動作について、詳細な研究が行われている(例えば、非特許文献1、2、3または4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−185056号公報
【特許文献2】特開2006−51348号公報
【特許文献3】特開平9−276467号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】宮西智久、藤井範久、阿江通良、功力靖雄、岡田守彦、「大学野球選手における速投および遠投動作の3次元的比較研究」、体育学研究、平成7年7月、第40巻、第2号、p.89-103、1995
【非特許文献2】宮西智久、藤井範久、阿江通良、功力靖雄、岡田守彦、「野球の投球動作におけるボール速度に対する体幹および投球腕の貢献度に関する3次元的研究」、体育学研究、平成8年5月、第41巻、第1号、p.23-37、1996
【非特許文献3】宮西智久、藤井範久、阿江通良、功力靖雄、岡田守彦、「野球の投球動作における体幹および投球腕の力学的エネルギー・フローに関する3次元解析」、体力科学、平成9年2月、第46巻、第1号、p.55-68、1997
【非特許文献4】宮西智久、「野球の投球動作のバイオメカニクス的研究−加速局面の上胴と投球腕の運動に着目して−」、平成12年11月、博士論文、筑波大学、2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載の従来のアーム式のピッチングマシンでは、1リンクまたは2リンクのアームを、打者と正対する2次元垂直平面内で駆動させているため、ボールがいつ投球されるかわかりにくく、打者がタイミングをとりにくいという課題があった。特許文献3に記載のピッチングマシンでは、映像が平面のスクリーンに映されるため、違和感があり、実践的ではないという課題があった。また、特許文献1、2および3のピッチングマシンでは、2次元垂直平面内でアームが駆動して投球するため、実際のピッチャーが投げる球と回転や球筋が異なっているという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、打者がタイミングをとりやすく、実際のピッチャーが投げる球に近いボールを投げることができ、より実践的なバッティング練習を行うことができるピッチングマシンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るピッチングマシンは、支持台と、前記支持台に対し上方に伸びるよう設けられ、前記支持台に対し垂直方向の軸を中心として回転可能に構成された胴体部と、前記胴体部の左側上部または右側上部から側方に伸びるよう設けられた上腕部と、前記上腕部の先端から上方に伸びるよう設けられた前腕部と、前記前腕部の先端にボールを投げられるよう保持可能に設けられた把持部と、前記支持台に対して前記上腕部が前方に移動するよう前記胴体部を前記垂直方向の軸を中心として回転させる駆動部とを有することを、特徴とする。本発明に係るピッチングマシンは、駆動部により胴体部を、垂直方向の軸を中心として回転させて上腕部を前方に移動させることにより、把持部に保持されたボールを投げることができる。
【0009】
本発明に係るピッチングマシンで、前記胴体部は前記支持台に対しさらに左右方向の軸を中心として回転可能に構成され、前記駆動部は前記上腕部が伸長方向と反対側の斜め前方下側に移動するよう前記胴体部を前記左右方向の軸と前記垂直方向の軸とを中心として回転させる構成を有することが好ましい。この場合、駆動部により胴体部を、左右方向の軸と前記垂直方向の軸とを中心として回転させて上腕部を伸長方向と反対側の斜め前方下側に移動させることにより、把持部に保持されたボールを投げることができる。
【0010】
特に、好適な本発明に係るピッチングマシンは、支持台と、前記支持台に対し上方に伸びるよう設けられ、前記支持台に対して前後方向に移動可能、かつ前記支持台に対し前後方向の軸と左右方向の軸と垂直方向の軸とを中心としてそれぞれ回転可能に構成された胴体部と、前記胴体部の左側上部または右側上部から側方に伸びるよう設けられ、伸長方向に沿った中心軸周りに回転可能に構成された上腕部と、前記上腕部に対し前後方向の軸を中心として前記上腕部の先端から上方に伸びる位置と外側に開いた位置との間で回転可能、かつ、伸長方向に沿った中心軸周りに回転可能に設けられた前腕部と、前記前腕部の先端にボールを投げられるよう保持可能に設けられた把持部と、前記前腕部が上方に伸びる角度に戻るよう前記上腕部を前記胴体部に対して付勢する第1弾性部材と、前記上腕部に対して前記前腕部を上方に伸びる方向に戻るよう付勢する第2弾性部材と、前記支持台に対して前記胴体部を前方に移動させるとともに前記上腕部が伸長方向と反対側の斜め前方下側に移動するよう前記胴体部を前記前後方向の軸と前記左右方向の軸と前記垂直方向の軸とを中心として回転させる駆動部とを有することを特徴とする。
【0011】
好適な本発明に係るピッチングマシンは、駆動部により胴体部を前方に移動させるとともに、胴体部を回転させて上腕部の伸長方向と反対側の斜め前方に傾けることにより、胴体部−上腕部−前腕部−把持部で、実際のピッチャーの動きに近い立体的な動作を生成して、ボールを投げることができる。右利き投手の場合の具体的な動作の一例を、以下に示す。なお、右利き投手の場合、上腕部が胴体部の右側上部に、胴体部から右側方に伸びるよう設けられている。また、左利き投手の場合、上腕部が胴体部の左側上部に、胴体部から左側方に伸びるよう設けられ、右利き投手の場合の動作と左右反転した動作を行う。
【0012】
まず、駆動部により、支持台に対して胴体部を前方に移動(後方→前方)させるとともに、移動の最終段階で、左右方向の軸を中心として胴体部を前方に回転させて傾け(後屈位→前屈)、上腕部が前方に旋回するよう垂直方向の軸を中心として胴体部を左側に回転させ(右回旋位→左回旋)、前後方向の軸とを中心として胴体部を左側に回転させて傾ける(直立位→左側屈)。この胴体部の前方並進ならびに左回旋(捻り)動作によって、第1弾性部材が弾性的に伸びて、上腕部が前方向に回転して内旋動作を行う。また、胴体部の左回旋動作によって発生した求心力モーメントによって、第2弾性部材が伸びて、前腕部が外側に開く方向に回転する(肘屈曲位→伸展)。この肩の内旋に対応する上腕部の回転と、肘の伸展に対応する前腕部の回転とのコンビネーションによって、前腕部の回外から回内への動作が生成される。この動作により、把持部に保持されたボールを投げることができる。
【0013】
このように、本発明に係るピッチングマシンは、実際のピッチャーの動きに近い動作で投球を行うことができるため、実際のピッチャーが投げる球に近いボールを投げることができる。また、打者がタイミングをとりやすく、より実践的なバッティング練習を行うことができる。
【0014】
本発明に係るピッチングマシンで、前記上腕部は、少なくとも前記前腕部が上方に伸びる位置から前方水平になる位置まで回転可能であり、前記前腕部は、前記上腕部との成す角が110度乃至180度の範囲(肘屈曲位→伸展の範囲)で回転可能、かつ、伸長方向に沿った中心軸周りに回外から回内へ180度乃至270度の範囲で回転可能であることが好ましい。この場合、実際のピッチャーの動きにより近い動作を行うことができる。
【0015】
本発明に係るピッチングマシンで、前記把持部は前記前腕部に対し左右方向の軸を中心として前後に回転可能に設けられ、前記前腕部に対して前記把持部を後方に付勢する第3弾性部材を有していてもよい。この場合、胴体部および上腕部の動作によって発生した求心力モーメントによって、第3弾性部材が伸びて、把持部が前方に回転して伸展、屈曲動作(手背屈→掌屈)を行う。このため、手首の動きを利用した動作で投球を行うことができ、実際のピッチャーが投げる球により近いボールを投げることができる。把持部は、前腕部の伸長方向から後方に40度の位置(背屈)から、前方に90度の位置(掌屈)まで回転可能であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るピッチングマシンで、前記把持部は2本の指部と、各指部を前方に屈曲可能な3つの関節とを有し、前記把持部で前記ボールを保持可能に、各指部の各関節を前方に屈曲させる方向に付勢する第4弾性部材を有していてもよい。この場合、各指部の各関節を前方に屈曲した状態で、ボールを容易に保持することができる。投球時には、胴体部および上腕部の動作によって発生した求心力モーメントによって、第4弾性部材の付勢力に反して各指部の各関節が伸展するため、ボールを開放することができ、投球を行うことができる。なお、把持部は、関節を有する代わりに、中指および人差し指に対応する2本の指部がゴムなどの弾性体から成っていてもよい。
【0017】
本発明に係るピッチングマシンで、前記駆動部は、前記把持部から放たれる前記ボールに回転をつけて直球および変化球を投球可能に、前記胴体部の前記支持台に対する移動速度、回転方向、回転角度、回転速度および回転開始のタイミングを制御可能に構成されていてもよい。この場合、直球だけでなく、カーブやスライダー、シュートなどの変化球を投げることができ、より実践的なバッティング練習を行うことができる。制御には、コンピュータを利用してもよい。また、ボールの回転や変化をより精密に制御するために、把持部の回転や、各指部の各関節の動きを制御可能であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、打者がタイミングをとりやすく、実際のピッチャーが投げる球に近いボールを投げることができ、より実践的なバッティング練習を行うことができるピッチングマシンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態のピッチングマシンを示す(a)斜視図、(b)把持部の側面図である。
【図2】図1に示すピッチングマシンの把持部の(a)正面図、(b)斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態のピッチングマシンを示している。
図1および図2に示すように、ピッチングマシン10は、支持台11と胴体部12と上腕部13と前腕部14と把持部15と第1弾性部材16と第2弾性部材17と第3弾性部材18と第4弾性部材19と駆動部20とを有している。なお、ピッチングマシン10は、右利き投手用である。
【0021】
図1に示すように、支持台11は、前後に細長い直方体状を成している。支持台11は、上面に前後に伸びるスライド孔11aを有している。
【0022】
胴体部12は、やや厚みのある矩形板状を成し、2つの表面を前後に向け、長辺が上下方向に、短辺が左右方向に沿うよう配置されている。胴体部12は、下端面から下方に伸びて設けられた円柱状の取付部12aを有している。胴体部12は、取付部12aを支持台11のスライド孔11aに挿入した状態で、支持台11に垂直上方に伸びるよう設けられている。また、胴体部12は、スライド孔11aに沿って、支持台11に対して前後方向に移動可能、かつ、支持台11との取付位置で前後方向の軸と左右方向の軸と垂直方向の軸とを中心としてそれぞれ回転可能に構成されている。
【0023】
図1に示すように、上腕部13は、細長い棒状を成し、胴体部12の右側面の上部に、胴体部12から右側側方に伸びるよう設けられている。上腕部13は、伸長方向に沿った中心軸周りに前後方向に回転可能に構成されている。前腕部14は、細長い棒状を成し、上腕部13の先端から右側斜め上方に伸びるよう設けられている。前腕部14は、上腕部13との取付位置で前後方向の軸14aを中心として外側に開く方向に回転可能に構成されている。また、前腕部14は、伸長方向に沿った中心軸周りにも回転可能に構成されている。
【0024】
把持部15は、前腕部14の先端にボール1を保持可能に設けられている。図1および図2に示すように、把持部15は、矩形板状の手の平部21と、親指、人差し指および中指に対応する3本の指部22と、人差し指および中指に対応する各指部22を前方に屈曲可能な3つの関節23とを有している。把持部15は、前腕部14との取付位置で左右方向の軸15aを中心として前後に回転可能に構成されている。
【0025】
図1に示すように、上腕部13は、前腕部14が上方に伸びる位置から前方水平になる位置まで回転可能に構成されている。前腕部14は、上腕部13との成す角が110度乃至180度の範囲で回転可能に構成されている。また、前腕部14は、伸長方向に沿った中心軸周りに回外から回内へ180度乃至270度の範囲で回転可能に構成されている。把持部15は、前腕部14の伸長方向から後方に30度の位置から、前方に90度の位置まで回転可能に構成されている。
【0026】
図1に示すように、第1弾性部材16は、コイルスプリングから成り、少し伸ばされた状態で、胴体部12の背面中央下部と上腕部13の胴体部12側の端部とを接続するよう設けられている。これにより、第1弾性部材16は、胴体部12に対して、前腕部14が上方に伸びる位置になるよう、上腕部13を弾性的に保持するようになっている。
【0027】
第2弾性部材17は、スプリングダンパーから成り、上腕部13の中央部と前腕部14の中央部とを接続するよう設けられている。これにより、第2弾性部材17は、上腕部13に対して前腕部14を上方に伸びる位置の方向に付勢するようになっている。また、第2弾性部材17は、ダンパー機能により、前腕部14が上腕部13に対して過伸展しないよう設けられている。
【0028】
第3弾性部材18は、スプリングダンパーから成り、前腕部14の中央部と手の平部21の背面側とを接続するよう設けられている。これにより、第3弾性部材18は、前腕部14に対して把持部15を後方に付勢するようになっている。また、第3弾性部材18は、ダンパー機能により、把持部15が前腕部14に対して過屈曲しないよう設けられている。
【0029】
図2に示すように、第4弾性部材19は、手の平部21の内部に設けられたコイルスプリング24と、コイルスプリング24の先端から人差し指および中指に対応する2本の指部22の内部に伸びてそれぞれ設けられたワイヤ25とを有している。ワイヤ25は、各関節23を通って各指部22の先端に固定されている。第4弾性部材19は、コイルスプリング24の弾性力により、ワイヤ25を介して、人差し指および中指に対応する2本の指部22の各関節23を前方に屈曲させる方向に付勢するよう構成されている。これにより、第4弾性部材19は、各指部22の各関節23を前方に屈曲した状態で、把持部15でボール1を容易に保持可能になっている。
【0030】
図1および図2に示すように、胴体部12、上腕部13、前腕部14および把持部15は、主に鉄から形成されている。胴体部12、上腕部13および前腕部14は、それぞれ強化プラスチック製の胴体外殻部材12b、上腕外殻部材13bおよび前腕外殻部材14bで覆われている。また、把持部15は、全ての指が模倣された樹脂製の手外殻部材15bで覆われている。さらに、胴体部12、上腕部13、前腕部14および把持部15のそれぞれの取付位置が、強化プラスチック製の肩関節外殻部材13c、肘関節外殻部材14cおよび手関節外殻部材15cで覆われている。各外殻部材12b、13b、13c、14b、14c、15b、15cは、胴体部12、上腕部13、前腕部14、把持部15、第1弾性部材16、第2弾性部材17、第3弾性部材18および第4弾性部材19の動きを妨げないよう設けられている。
【0031】
図1に示すように、駆動部20は、支持台11の内部に収納されている。駆動部20は、モーターにより、支持台11に対して胴体部12を前方に移動するよう駆動可能になっている。また、駆動部20は、モーターにより、胴体部12を、支持台11との取付位置で前後方向の軸と左右方向の軸と垂直方向の軸とを中心としてそれぞれ回転駆動可能になっている。これにより、駆動部20は、胴体部12を前方に移動させるとともに、胴体部12を回転させて左斜め前方に傾けるようになっている。また、駆動部20は、把持部15から放たれるボール1に回転をつけて直球および変化球を投球可能に、胴体部12の支持台11に対する移動速度、回転方向、回転角度、回転速度および回転開始のタイミングを制御可能に構成されている。なお、駆動部20は、コンピュータを利用して、胴体部12の動作制御を行っていてもよい。また、駆動部20は、ボール1の回転や変化をより精密に制御するために、把持部15の回転や、各指部22の各関節23の動きを制御可能であってもよい。
【0032】
なお、ピッチングマシン10は、投球時のバランスをとるために、胴体部12の上端面から上方に伸びるよう固定された頭部26と、胴体部12の左側面の上部に、胴体部12から左斜め下方に伸びるよう固定された左上腕部27とを有している。
【0033】
次に、作用について説明する。
ピッチングマシン10は、駆動部20により胴体部12を前方に移動させるとともに、胴体部12を回転させて左斜め前方に傾けることにより、胴体部12−上腕部13−前腕部14−把持部15の動作を、実際のピッチャーの動きに近い立体的な動作にして、把持部15に保持されたボール1を投げることができる。具体的には、まず、駆動部20により、支持台11に対して胴体部12を前方に移動(後方→前方)させるとともに、移動の最終段階で、左右方向の軸を中心として胴体部12を前方に回転させて傾け(後屈位→前屈)、上腕部13が前方に旋回するよう垂直方向の軸を中心として胴体部12を左側に回転させ(右回旋位→左回旋)、前後方向の軸とを中心として胴体部12を左側に回転させて傾ける(直立位→左側屈)。
【0034】
この胴体部12の前方並進ならびに左回旋(捻り)動作によって、第1弾性部材16が弾性的に伸びて、上腕部13が前方向に回転して内旋動作を行う。また、胴体部12の左回旋動作によって発生した求心力モーメントによって、第2弾性部材17が伸びて、前腕部14が外側に開く方向に回転する(肘屈曲位→伸展)。この肩の内旋に対応する上腕部13の回転と、肘の伸展に対応する前腕部14の回転とのコンビネーションによって、前腕部14の回外から回内への動作が生成される。また、胴体部12および上腕部13の動作によって発生した求心力モーメントによって、第3弾性部材18が伸びて、把持部15が前方に回転して伸展、屈曲動作(手背屈→掌屈)を行うとともに、第4弾性部材19の付勢力に反して各指部22の各関節23が伸展し、把持部15に保持されたボール1が開放される。これらの動作により、把持部15に保持されたボール1を投げることができる。
【0035】
このように、本発明に係るピッチングマシン10は、前腕部14の回外から回内への動作や、手首の動きを利用した動作等により、実際のピッチャーの動きに近い動作で投球を行うことができる。このため、実際のピッチャーが投げる球に近いボール1を投げることができる。また、胴体駆動により投球腕の動きが立体的に生成されるため、打者がタイミングをとりやすく、より実践的なバッティング練習を行うことができる。胴体部12の移動や回転の動作を駆動部20で制御することにより、直球だけでなく、カーブやスライダー、シュートなどの変化球を投げることができ、より実践的なバッティング練習を行うことができる。
【0036】
なお、具体的な一例では、ピッチングマシン10は、各部のおおよそのサイズや動作を、実際の投手の大きさやスピードに合わせるよう構成されている。胴体部12は、高さが750mm、重さが40kgである。上腕部13は、長さが300mm、重さが2.2kgである。前腕部14は、長さが275mm、重さが1.5kgである。把持部15は、長さが200mm、重さが0.5kgである。頭部は、高さが400mm、重さが9kgである。左上腕部13は、長さが300mm、重さが4.2kgである。また、胴体部12は、移動速度が2.0m/s、左回旋速度が1200°/sである。これにより、肩の内旋速度が7000°/s、肘の伸展速度が2500°/s、手首の伸展、屈曲速度が2500°/sとなり、140〜150km/hの球速が得られる。
【0037】
なお、図2に示すように、把持部15は、親指と人差し指との間に、保持したボール1の落下を防止するための落球防止膜31を有していてもよい。
ピッチングマシン10は、左利き投手用のものは、右利き投手用のものと左右反転した構成を有しており、左右反転した動作を行うようになっている。
【符号の説明】
【0038】
10 ピッチングマシン
11 支持台
11a スライド孔
12 胴体部
12a 取付部
13 上腕部
14 前腕部
15 把持部
16 第1弾性部材
17 第2弾性部材
18 第3弾性部材
19 第4弾性部材
20 駆動部
21 手の平部
22 指部
23 関節


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、
前記支持台に対し上方に伸びるよう設けられ、前記支持台に対し垂直方向の軸を中心として回転可能に構成された胴体部と、
前記胴体部の左側上部または右側上部から側方に伸びるよう設けられた上腕部と、
前記上腕部の先端から上方に伸びるよう設けられた前腕部と、
前記前腕部の先端にボールを投げられるよう保持可能に設けられた把持部と、
前記支持台に対して前記上腕部が前方に移動するよう前記胴体部を前記垂直方向の軸を中心として回転させる駆動部とを有することを、
特徴とするピッチングマシン。
【請求項2】
前記胴体部は前記支持台に対しさらに左右方向の軸を中心として回転可能に構成され、
前記駆動部は前記上腕部が伸長方向と反対側の斜め前方下側に移動するよう前記胴体部を前記左右方向の軸と前記垂直方向の軸とを中心として回転させる構成を有することを、
特徴とする請求項1記載のピッチングマシン。
【請求項3】
支持台と、
前記支持台に対し上方に伸びるよう設けられ、前記支持台に対して前後方向に移動可能、かつ前記支持台に対し前後方向の軸と左右方向の軸と垂直方向の軸とを中心としてそれぞれ回転可能に構成された胴体部と、
前記胴体部の左側上部または右側上部から側方に伸びるよう設けられ、伸長方向に沿った中心軸周りに回転可能に構成された上腕部と、
前記上腕部に対し前後方向の軸を中心として前記上腕部の先端から上方に伸びる位置と外側に開いた位置との間で回転可能、かつ、伸長方向に沿った中心軸周りに回転可能に設けられた前腕部と、
前記前腕部の先端にボールを投げられるよう保持可能に設けられた把持部と、
前記前腕部が上方に伸びる角度に戻るよう前記上腕部を前記胴体部に対して付勢する第1弾性部材と、
前記上腕部に対して前記前腕部を上方に伸びる方向に戻るよう付勢する第2弾性部材と、
前記支持台に対して前記胴体部を前方に移動させるとともに前記上腕部が伸長方向と反対側の斜め前方下側に移動するよう前記胴体部を前記前後方向の軸と前記左右方向の軸と前記垂直方向の軸とを中心として回転させる駆動部とを有することを、
特徴とするピッチングマシン。
【請求項4】
前記上腕部は、少なくとも前記前腕部が上方に伸びる位置から前方水平になる位置まで回転可能であり、
前記前腕部は、前記上腕部との成す角が110度乃至180度の範囲で回転可能、かつ、伸長方向に沿った中心軸周りに回外から回内へ180度乃至270度の範囲で回転可能であることを、
特徴とする請求項1,2または3記載のピッチングマシン。
【請求項5】
前記把持部は前記前腕部に対し左右方向の軸を中心として前後に回転可能に設けられ、
前記前腕部に対して前記把持部を後方に付勢する第3弾性部材を有することを、
特徴とする請求項1,2,3または4記載のピッチングマシン。
【請求項6】
前記把持部は2本の指部と、各指部を前方に屈曲可能な3つの関節とを有し、
前記把持部で前記ボールを保持可能に、各指部の各関節を前方に屈曲させる方向に付勢する第4弾性部材を有することを、
特徴とする請求項1,2,3,4または5記載のピッチングマシン。
【請求項7】
前記駆動部は、前記把持部から放たれる前記ボールに回転をつけて直球および変化球を投球可能に、前記胴体部の前記支持台に対する移動速度、回転方向、回転角度、回転速度および回転開始のタイミングを制御可能に構成されていることを、特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載のピッチングマシン。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−61076(P2012−61076A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206456(P2010−206456)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(310017921)