説明

ピッチ付着防止剤及びピッチ付着防止方法

【課題】パルプ及び紙の製造工程におけるピッチ障害の抑制・防止に、特殊な設備を必要としない簡易な設備で簡易に製造できるピッチ付着防止剤と、これを用いたピッチ付着防止方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ポリビニルアルコールにアミノ基を有する化合物を付加する反応によって得られるカチオン変性ポリビニルアルコールを有効成分として含有することを特徴とするピッチ付着防止剤、及びこれを用いたピッチ付着防止方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプ及び紙の製造工程におけるピッチ障害を抑制・防止するためのピッチ付着防止剤及びこれを用いたピッチ付着防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルプ及び紙の製造工程におけるピッチは、木材、パルプあるいは紙から遊離した天然樹脂やガム状物質、さらには、パルプ及び製紙工程で使用される添加薬品等の有機物などを主体とした非水溶性の粘着性物質である。これらピッチは、製紙工程のスラリー中ではコロイド状となって分散しているが、大きなせん断力、急激なpH変化、硫酸バンドの添加等により、そのコロイド状態が破壊されて凝集・巨大化すると考えられている。凝集・巨大化したピッチは、その粘着性により、ファンポンプ、流送配管、チェスト、ワイヤー、フェルト、ロール等の製造装置類へ付着するだけでなく、この付着物が剥離してパルプや紙に再付着することにより、紙の汚点・欠点による品質の低下、断紙の原因となるなど、生産性・作業性を低下させる各種の障害を引き起こしている。近年、紙の多様化によって使用される薬品類が増加し、さらに工程で循環再使用される水の比率が高くなるにつれてピッチ障害は増加し、複雑化してきている。
【0003】
そこで、ピッチ障害を抑制・防止するためにさまざまな方策が行われている。
例えば、ピッチ原因物質を減少させる方法として、木材やチップのシーズニング、パルプの洗浄強化や白水の清浄化の向上が提案された。しかし、シーズニングは6ヶ月〜1年間という期間でその効果が発揮されるため、広い敷地を必要とすること、さらに生産量の増加により原材やチップの確保及び保管が難しくなり、実用上限界がある。パルプの洗浄強化や白水の清浄化向上は、水のクローズド化が進んでいる状況下では大きな改善は困難であり、期待できない。
【0004】
そこで、カチオン性ポリマーを使用し、アニオン電荷を有するピッチと結合させて紙へ抄き込む方法(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)やピッチの粘着性を失わせる方法(例えば特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7参照)等が提案されたが、十分な効果を得るには至っていない。
【0005】
また、非イオン性ポリマーのケン化度70〜80モル%のポリビニルアルコールをピッチ分散剤として用いる方法(例えば特許文献8参照)あるいは、ケン化度50〜100モル%のポリビニルアルコールと高分子量ゼラチンを併用してピッチの堆積を抑制する方法(例えば特許文献9参照)が提案されているが、いずれもピッチ障害防止効果が十分ではない。
【0006】
また、ビニルエステルと特定の重合性アミン化合物単量体を共重合して得られる水溶性カチオン化ポリビニルアルコール共重合体をピッチコントロール剤として用いる方法(例えば特許文献10参照)が提案されているが、共重合に使用される重合性アミン化合物単量体によっては、溶剤回収工程などに悪影響を及ぼすため、使用される重合性アミン化合物単量体の種類が制限される、あるいは、溶剤回収の際に使用する従来設備に加えて付帯設備が必要となるという問題点がある。また、本共重合法で得られる直鎖状のカチオン変性ポリビニルアルコールはある程度の効果は認められるが、満足し得る効果には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−149591号公報
【特許文献2】特公平4−8556号公報
【特許文献3】特公平7−113200号公報
【特許文献4】特開平2−182995号公報
【特許文献5】特開平4−300383号公報
【特許文献6】特許第2840047号公報
【特許文献7】特許第2955388号公報
【特許文献8】特公平2−14479号公報
【特許文献9】特表平11−503497号公報
【特許文献10】特開2002−13097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、パルプ及び紙の製造工程において工程水中に分散したピッチ粒子やコロイド状ピッチの、パルプへの付着、製造装置への付着および該付着物の剥離による紙の汚点・欠点による製品品質の低下、断紙や製造装置の汚れの洗浄などによる生産性の低下等を防止するために、工程水中でのピッチ粒子やコロイド状ピッチの付着性を低下させ、凝集を防止するピッチ付着防止剤を特殊な設備を必要としない簡易な設備で簡易に製造し、これを用いたピッチ付着防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、パルプ及び紙の製造工程におけるピッチ付着防止方法に関して鋭意検討を行った結果、ポリビニルアルコールにアミノ基を有する化合物を付加する反応によって得られるカチオン変性ポリビニルアルコールが優れたピッチコントロール作用を示すとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、パルプ及び紙の製造工程において用いられる、ポリビニルアルコールにアミノ基を有する化合物を付加する反応によって得られるカチオン変性ポリビニルアルコールを有効成分として含有することを特徴とするピッチ付着防止剤であり、請求項2の発明はアミノ基を有する化合物がさらにグリシジル基を有することを特徴とする請求項1記載のピッチ付着防止剤であり、請求項3の発明はアミノ基を有する化合物が尿素であることを特徴とする請求項1記載のピッチ付着防止剤であり、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載のピッチ付着防止剤をパルプスラリーに添加することを特徴とするピッチ付着防止方法であり、請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載のピッチ付着防止剤を溶液の形態としてピッチが付着する製造装置及びその一部に噴霧することを特徴とするピッチ付着防止方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピッチ付着防止剤及びピッチ付着防止方法を用いることにより、パルプや紙、さらにはファンポンプ、配管内、チェスト、ワイヤー、フェルト、ロール等の製造装置類へのピッチの付着抑制及び付着物の粘着性低減・消失により、紙の汚点・欠点が減少して生産性・作業性が向上するなど、ピッチ障害が改善され、紙パルプ工業に益するところが大である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、パルプ及び紙の製造工程において用いられる、ポリビニルアルコールにアミノ基を有する化合物を付加する反応によって得ることができるカチオン変性ポリビニルアルコールを有効成分として含有することを特徴とするピッチ付着防止剤、及びそれを用いたピッチ付着防止方法である。
【0013】
本発明のピッチ付着防止剤は、ポリビニルアルコールにアミノ基を有する化合物を後変性法によって導入して得ることができる。ポリビニルアルコールにアミノ基を導入する後変性法は公知技術であり、簡単な設備で簡易に製造することができる利点がある。本発明のピッチ付着防止剤の製法について特に制限を加えるものではないが、ポリビニルアルコールにアミノ基を導入する後変性の具体的な方法として、ポリビニルアルコールをアミノアセタール化あるいはアミノベンズアセタール化する方法、ポリビニルアルコールにアクリルアミドをマイケル付加後、アクリルアミド単位をホフマン分解する方法、ポリビニルアルコールにグリシジル基含有アミノ化合物を付加する方法、ポリビニルアルコールを尿素変性する方法などが挙げられ、中でもポリビニルアルコールにグリシジル基含有アミノ化合物を付加する方法あるいは尿素変性する方法が好ましい。
【0014】
本発明におけるポリビニルアルコールは、通常、酢酸ビニルを溶液重合後、アルカリでケン化して得ることができる。ポリビニルアルコールは自ら製造しても良いが、製法の簡易化から市販品を用いるのが好ましい。本発明で用いるポリビニルアルコールの重合度は、300〜4,000、好ましくは、500〜3,000である。重合度が300未満では、本発明の目的とするピッチの付着防止作用が不十分で好ましくない。重合度が4,000を越えると、本発明のカチオン変性ポリビニルアルコール使用時の粘性が高くなり、作業上、好ましくない。ポリビニルアルコールのケン化度は特に制限されるものではないが、通常30〜100モル%、入手し易さから70〜100モル%が好ましい。
【0015】
本発明におけるアミノ基を有する化合物は、ポリビニルアルコールに付加反応させた後、公知の方法で4級化してポリビニルアルコールにカチオン電荷を付与できればよいため、1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩のいずれの化合物であってもよいが、なかでも4級化が不要な4級アンモニウム塩であることが好ましい。また、本発明におけるアミノ基を有する化合物は、ポリビニルアルコールとの反応性からエポキシ基、アルデヒド基、イソシアネート基、シラノール基等の反応性基を有することが好ましい。特に好ましくは、グリシジル基を有する4級アンモニウム化合物である。
【0016】
本発明におけるカチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン強度は、トルイジンブルー溶液を指示薬として用いてポリビニル硫酸カリウム溶液にて滴定するコロイド滴定法によって求めることができる。本発明で用いるカチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン強度は、0.01〜5meq/g、好ましくは0.1〜4meq/g、さらに好ましくは0.3〜3meq/gである。カチオン強度が0.01meq/g未満では本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールの効果が十分ではなく、5meq/gを越えるとアミノ化合物を導入する割に効果の向上が少なく好ましくない。
本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールは、水や適当な水溶性有機溶剤に溶解した溶液として、ピッチ付着防止剤としての用途に供する。
【0017】
本発明のピッチ付着防止方法は、本発明のカチオン変性ポリビニルアルコール含むピッチ付着防止剤をピッチ障害の発生している箇所の前段階あるいは前工程のパルプスラリーや工程水・白水にポンプ注入添加する方法、もしくはパルプまたは紙を製造する工程においてピッチ障害が発生しているもしくはピッチが付着しやすい製造装置類、例えば、ワイヤー、ロール、フェルト等の洗浄シャワーラインに圧入してシャワー水とともに噴霧する方法により達成される。
【0018】
本発明のピッチ付着防止剤の添加量は、パルプの種類及び紙の種類、工程の条件、ピッチの発生状況によって変わるため、特に限定されるものではないが、パルプスラリーや工程水・白水に添加する場合は、通常、目安として本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールを対象の絶乾パルプ重量に対して0.001〜10重量%程度、好ましくは0.01〜1重量%程度である。製造装置類に噴霧する場合は、通常、目安として本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールとして、噴霧水に対して0.1〜2,000mg/L程度、好ましくは2〜500mg/L程度である。
【0019】
また、本発明のピッチ付着防止剤の効果を損なわない範囲において、他の工程添加剤、例えば、消泡剤、スケールコントロール剤、スライムコントロール剤及び他のピッチコントロール剤等を配合・併用することに何ら制限を加えるものではない。
【0020】
本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールの作用は、ポリビニルアルコール骨格に、アミノ化合物に由来するカチオン基が櫛状に分岐配列することによって、共重合法で合成される直鎖型に比べ、アニオン電荷を有する白水中のピッチ粒子の吸着性が高まり、その結果、ピッチ付着防止効果が優れるものと考えられる。
【実施例】
【0021】
本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【0022】
(実施例A−1の調製)
撹拌機、還流冷却器、分液ロート、温度計を備えた反応容器に、1%水酸化ナトリウム水溶液200重量部と粉末状ポリビニルアルコール(重合度1,700、ケン化度98〜99モル%)[クラレ製「PVA−117」(商品名)]20重量部を投入し、70℃で1時間撹拌後、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド80%溶液[阪本薬品工業製「SY−GTA80」(商品名)]を28.7重量部投入し、60℃で2時間撹拌し反応させた。反応終了後、酢酸で中和し、グラスフィルターでろ別後、乾燥させ、本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールを得た。本変性物のカチオン強度をコロイド滴定法によって求めた結果、0.72meq/gであった。
【0023】
(実施例A−2〜A−4の調製)
実施例A−1と同様の手法にて、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライドの配合量を変更し、実施例A−2〜A−4の変性物を得た。
【0024】
(実施例A−5の調製)
ポリビニルアルコールを重合度1,700、ケン化度78〜81モル%[日本合成化学工業製「ゴーセノールKH−17」(商品名)]に替えた以外は実施例1と同様の手法にて、実施例A−5の変性物を得た
【0025】
(実施例A−6の調製)
ポリビニルアルコールを重合度500、ケン化度98〜99モル%[クラレ製「PVA−105」(商品名)]に替えた以外は実施例1と同様の手法にて、実施例A−6の変性物を得た
【0026】
(実施例A−7の調製)
4%水酸化カリウム水溶液100重量部を入れたビーカーに粉末状ポリビニルアルコール(重合度1,700、ケン化度98〜99モル%)[クラレ製「PVA−117」(商品名)]20重量部を入れ、室温で1時間浸漬した後、グラスフィルターを用いて余剰のアルカリをろ別した。得た固形物にジメチルアミン・エピクロルヒドリン縮合物50%溶液[長瀬産業製「ワイステックスT−101−50」(商品名)]を7.8重量部添加し、60℃で3時間撹拌した。反応終了後、酢酸で中和し、乾燥させ、本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールを得た。本変性物のカチオン強度をコロイド滴定法によって求めた結果、0.28meq/gであった。
【0027】
(実施例A−8の調製)
実施例A−2と同様の手法にて、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン縮合物の配合量を変更し、実施例A−8の変性物を得た。
【0028】
(実施例A−9の調製)
5%塩酸水溶液300重量部を入れたビーカーに粉末状ポリビニルアルコール(重合度1,700、ケン化度98〜99モル%)[クラレ製「PVA−117」(商品名)]25重量部を溶解させた後、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(関東化学製特級試薬)0.6重量部を加えて、70℃で4時間撹拌した。反応終了後、透析を行って未反応物を除いた後、乾燥させ、本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールを得た。本変性物のカチオン強度をコロイド滴定法によって求めた結果、0.07meq/gであった。
【0029】
(実施例A−10の調製)
撹拌機、還流冷却器、分液ロート、温度計を備えた反応容器に、尿素(関東化学製特級試薬)36重量部、37%ホルマリン水溶液100重量部とアンモニア水2重量部を入れ、pH7.5〜8.5として、80℃で1時間撹拌した。続いて粉末状ポリビニルアルコール(重合度1,700、ケン化度98〜99モル%)[クラレ製「PVA−117」(商品名)]50重量部とリン酸を加えてpHを6〜6.5とし、さらに4時間撹拌した。反応終了後、グラスフィルターでろ別後、乾燥させ、本発明のカチオン変性ポリビニルアルコールを得た。本変性物のカチオン強度をコロイド滴定法によって求めた結果、0.97meq/gであった。
【0030】
表1に、実施例A−1〜A−10のカチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン強度測定結果を示した。
【0031】
【表1】

【0032】
(比較例の化合物)
B−1:ポリビニルアルコール(重合度1,700、ケン化度98〜99モル%)
[クラレ製「PVA−117」(商品名)]
B−2:ポリビニルアルコール(重合度1,700、ケン化度78〜81モル%)
[日本合成化学工業製「ゴーセノールKH−17」(商品名)]
B−3:ポリビニルアルコール(重合度500、ケン化度98〜99モル%)
[クラレ製「PVA−105」(商品名)]
B−4:グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド80%溶液
[阪本薬品工業製「SY−GTA80」(商品名)]
B−5:ジメチルアミン・エピクロルヒドリン縮合物(分子量1,000)50%溶液
[長瀬産業製「ワイステックスT−101−50」(商品名)]
B−6:ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド(分子量70,000)
[センカ製「ユニセンスFPA−102L」(商品名)]
B−7:特許文献10に記載の方法に準じて調製した酢酸ビニルとトリメチル−3−
(1−アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライドの
共重合体。(重合度1,700、ケン化度99モル%、カチオン強度0.03
meq/g)
【0033】
[ピッチ付着防止効果の評価]
(試験1)
新聞古紙を配合して中質紙を抄造しているマシンでは、プレスパートのフェルト、フェルトサクションボックスならびにロールにピッチが付着して問題となっていた。
フェルトサクションボックスに付着したピッチを採取して乾燥させた後、クロロホルム:エタノール=2:1混合溶媒に分散させ、20%濃度のピッチ試料とした。また、本発明のピッチ付着防止剤を有効成分として5%濃度の水溶液とした。200mlビーカーにマシン白水100mlと本発明のピッチ付着防止剤を有効成分として20mg入れ、これをミキサー(特殊機化工業(株)製、TKオートホモミキサーM型)にて8000rpmで撹拌しながら、調製したピッチ試料を固形分として200mg添加し、さらに1分間撹拌した。ビーカー及びミキサーに付着した付着物をクロロホルムにて洗浄・抽出し、付着量を求めた。その結果を表2に示した。
【0034】
【表2】

【0035】
表2の結果から、本発明のピッチ付着防止剤によって、ピッチの付着が効果的に抑制されることが判る。
【0036】
(試験2)
古紙を原料として、ライナーを抄造しているマシンでは、粘着性のピッチが、プレス工程の3Pフェルトに付着して断紙や穴あきが頻発していた。そのため、プレス工程の3Pフェルトのシャワー洗浄ラインにピッチ付着防止剤としてジメチルアミン・エピクロルヒドリン縮合物(B−5)を有効成分として30mg/l(対シャワー水)添加していた。しかし、フェルトを1週間に3回洗浄する必要があるほか、断紙も多く発生して生産に支障をきたしていた。そこで、本発明のピッチ付着防止剤(A−1)及び(A−8)と現行品(B−5)との実機での効果を比較し、結果を表3に示した。評価は、目視観察による「フェルトのピッチ付着量」、「洗浄回数(回/週)」、「断紙回数(回/週)」で行った。この内、「フェルトのピッチ付着量」は現行品使用時と比較し、下記評価基準で判定した。
×:現行品使用時よりもピッチ付着量が多い。
△:現行品使用時とピッチ付着量は同等。
○:現行品使用時よりも付着量少ない。

【0037】
【表3】

【0038】
表3の結果から、本発明のピッチ付着防止剤をシャワー洗浄ラインに添加することにより、優れたピッチの付着防止効果を示し、安定操業に大きく寄与することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、パルプ及び紙の製造工程におけるピッチ障害の抑制・防止に好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ及び紙の製造工程において用いられる、ポリビニルアルコールにアミノ基を有する化合物を付加する反応によって得られるカチオン変性ポリビニルアルコールを有効成分として含有することを特徴とするピッチ付着防止剤。
【請求項2】
アミノ基を有する化合物がさらにグリシジル基を有することを特徴とする請求項1記載のピッチ付着防止剤。
【請求項3】
アミノ基を有する化合物が尿素であることを特徴とする請求項1記載のピッチ付着防止剤。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のピッチ付着防止剤をパルプスラリーに添加することを特徴とするピッチ付着防止方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のピッチ付着防止剤を溶液の形態としてピッチが付着する製造装置及びその一部に噴霧することを特徴とするピッチ付着防止方法。


【公開番号】特開2010−189779(P2010−189779A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32739(P2009−32739)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000234166)伯東株式会社 (135)
【Fターム(参考)】