説明

ピペッティング装置における液体分注方法及びピペッティング装置

本発明にかかる液体分注方法にあっては、液体がポンプによりピペットへ吸引された後に、ピペットに接続されたバルブ又はバルブセットを介して該ピペットヘ導入される外部空気の量に比例して、所望の液体吐出量がピペットから分注される。ここで、導入される外部空気の量は、外部空気がピペットへ導入される時間及び/又は流速及び/又はダンピングを決定することにより、プロセッサ内でプログラムされる。本発明にかかるピペッティング装置は、ピペット5(pipette(4)はpipette(5)の誤記)を据え付けるためのホルダー4(handle(3)はholder(4)の誤記)を具備し、ピペット5に接続されるエアポンプ6と、装置の作動を制御するプロセッサ15とを夫々内蔵するハウジング1からなる。また、該ピペッティング装置は、液体分注がなされている間に外部からの空気流をプロセッサ15により制御するための、ピペット5に接続されるバルブセット10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペッティング装置における液体分注方法及びピペッティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許文献第3818704号公報は、ハンドル及びピペットを据え付けるためのホルダーを具備するハウジングからなるピペッティング装置を開示している。かかる装置は、さらに、液体をピペット内へ吸引するための吸引アセンブリと、装置側の負圧を大気圧へ開放するようにして、吸引された液体をピペットから分注するための分注アセンブリとを備えている。
【0003】
米国特許文献第5509318号公報は、所定量の液体を吸引及び分注するための、標準のガラス管又はプラスティックピペットを用いる作動に適用されるピペット充填自動装置を明らかにしている。ここで、該装置は、ハンドル及びピペットを据え付けるためのホルダーを具備するハウジング、電動モータ、圧縮可能なホースを有し、ハウジング内に固定されて、液体の流れを引き起こす蠕動ポンプ、ポンプをピペットホルダーに接続するためのチューブ、並びにモータとポンプを制御するための制御システムを備えている。
【0004】
さらに、米国特許文献第6090348号公報は、装置のマニュアル制御をシミュレートするために、マニュアル操作モードにあるピペット充填電子装置の制御方法を明らかにしている。かかるピペット充填装置は、液体を吸引するための第1操作ボタン、該装置に据え付けられたピペットから液体を吐出するための第2操作ボタン、及び該装置のマニュアル操作モードを制御するためのコンピュータシステムを備えている。この発明にかかる方法にあっては、初めに、ピペット充填装置が始動して、コンピュータ制御システムがマニュアル操作モードで駆動し、ピペットを液体中に浸漬して、該ピペット充填装置が液体を吸引するように第1操作ボタンを押圧し、それからピペットを液体から離間させる。続いて、ピペット充填装置により吸引された液体を吐出するために、第2操作ボタンを押圧する。ここで、液体の吸引及び吐出の割合は、第1及び第2操作ボタンに夫々加えられる力の大きさに関係するものであり、コンピュータシステムは、マニュアルピペット充填装置をシミュレートするために、マニュアル操作モードにあるピペット充填装置に液体の吸引及び吐出の割合を制御させる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ピペットを据え付けるためのホルダーを具備し、ピペットに接続されるエアポンプと、装置の作動を制御するプロセッサとを夫々内蔵するハウジングからなるピペッティング装置における、ポンプを用いて液体をピペットへ吸引した後に、ピペットに接続されたバルブ又はバルブセットを介して該ピペットヘ導入される外部空気の量に比例して、所望の液体吐出量がピペットから分注される液体分注方法であって、
導入される外部空気の量が、外部空気がピペットへ導入される時間及び/又は流速及び/又はダンピングを決定することによってプロセッサ内でプログラムされるものである。
【0006】
ピペットへ導入される外部空気の量は、プロセッサメモリに記憶された液体及び/又はピペットのタイプに関連付けられた空気流関数に基づいて決定されることが好ましい。
【0007】
ピペットへ導入される外部空気の量は、プロセッサメモリに記憶された液体及び/又はピペットのタイプに関連付けられた標準空気流テーブルに基づいて決定されることが好ましい。
【0008】
空気流に関するデータは、外部機器からプロセッサメモリへインプットされることが好ましい。
【0009】
外部機器は、電信により又は無線電信の方法でピペッティング装置と通信するものであることが好ましい。
【0010】
プログラミング可能なコントローラ又はコンピュータが、外部機器として用いられることが好ましい。
【0011】
また本発明は、ピペットを据え付けるためのホルダーを具備し、かつピペットに接続されるエアポンプを内蔵するハウジングからなるピペッティング装置であって、
液体分注がなされている間に外部からの空気流を制御するための、ピペット5に接続される少なくとも一つのバルブを備えているものである。
【0012】
さらに、本発明にかかる変更例は、ピペットを据え付けるためのホルダーを具備し、かつピペットに接続されるエアポンプと、装置の作動を制御するプロセッサとを夫々内蔵するハウジングからなるピペッティング装置であって、
液体分注がなされている間に外部からの空気流をプロセッサにより制御するための、ピペットに接続されるバルブセットを備えているものである。
【0013】
エアポンプに接続され、液体吸引ボタンと液体分注ボタンとにより操作される空気流分配器と、ピペットとの間に、バルブセットの流出側が接続されていることが好ましい。
【0014】
装置は、外部空気の流路に少なくとも一つの空気流ダンパーをバルブと共に備えていることが好ましい。
【0015】
装置は、バルブセットの入口に接続される空気流ダンパーセットを備えていることが好ましい。
【0016】
プログラム分注ボタンは、ディスプレイ及び機能選択と機能確認のためのボタンと共に、プロセッサに接続されていることが好ましい。
【0017】
バルブセットは、プロセッサにより制御されることが好ましい。
【0018】
空気流ダンパー及び/又は空気流ダンパーセットは、プロセッサにより制御されることが好ましい。
【0019】
プロセッサは、外部機器から制御されることが好ましい。
【0020】
装置は、空気流分配バルブと、ピペットと、バルブセットからの出口との間に接続される空気流三路管を備えていることが好ましい。
【0021】
装置は、バルブセットからの流出側と空気流三路管との間に接続される多岐管を備えていることが好ましい。
【0022】
プログラム分注ボタンの機能は、プロセッサによりプログラムに沿って切換られた後に、液体吸引ボタンにより代替されることが好ましい。
【0023】
プロセッサは、使用された液体及び/又はピペットのタイプを考慮に入れる空気流関数又は標準空気流テーブルをメモリに記憶して具備していることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明による解決手段は、液体分注を、とりわけ予め設定された液体量をピペッティング装置のピペットから吐出するプログラムされた液体分注を、高い精度で保証するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
添付図面に明示された本発明の最良の実施形態例を、以下に詳細にわたって説明する。
【0026】
図1の縦断面図に示されたピペッティング装置は、ハンドル2と、先端にピペット5を据え付けるためのホルダー4が付設されるスリーブ3とを具備するハウジング1を備えている。ハウジング1のハンドル2内には、モータ7により駆動するエアポンプ6、空気流分配バルブ8、空気流三路管9、バルブアセンブリ10、空気流ダンパーセット11、及び多岐管12、並びに、液体吸引ボタン13及び液体分注ボタン14が夫々配設されている。一方、該装置のハウジング1のスリーブ3内には、プロセッサ15、ディスプレイ16、機能選択と機能確認のためのボタン17,18、プログラム分注ボタン19、及び充電電池20が、夫々配設されている。
【0027】
本発明にかかる各構成要素の機能上の関連が、図2に示されている。充電電池20から電力供給を受けるモータ7により駆動するエアポンプ6は、液体吸引ボタン13と液体分注ボタン14とにより操作される空気流分配バルブ8からの空気チューブに接続されている。また、該空気流分配バルブ8の出口は、さらに空気流三路管9を介して、ホルダー4及び該ホルダー4に据え付けられるピペット5へと至る空気チューブに接続されている。ここで、上述のアセンブリは、既知のピペッティング装置である。
【0028】
本発明の最良の実施形態例にかかるピペッティング装置にあっては、バルブアセンブリ10が、ピペット5から液体分注がなされている間に外部からの空気流を制御するために適用される。バルブアセンブリ10の出口は、空気チューブにより、空気流三路管9へ、さらにはホルダー4に据え付けられるピペット5に接続されており、またバルブアセンブリ10への入口は、同時に外部空気の入口となっている。ここで、ピペット5へと至る外部空気の流路内におけるバルブアセンブリ10への入口には、空気流ダンパーセット11が配設されており、一方、バルブアセンブリ10からの出口には、外部空気の多岐管12が配設されている。
【0029】
エアポンプ6、空気流バルブアセンブリ10、及び空気流ダンパーセット11は、使用された液体及び/又はピペット5のタイプを考慮に入れる空気流関数又は標準空気流テーブルをメモリに記憶して具備しているプロセッサ15に制御される。一方、付設されたディスプレイ16を備えるプロセッサ15は、機能選択及び機能確認のためのボタン17,18、プログラム分注ボタン19、並びに空気流分配バルブ8からの液体吸引ボタン13及び液体分注ボタン14により操作される。ここで、本発明にかかるピペッティング装置の別の実施形態例において、プログラムされた一連の行程が完了したときに、又は液体分注ボタン14が押圧されたときにその吸引機能を回復することとなる液体吸引ボタン13に、プロセッサ15によりプログラムに沿って切換られた後に、プログラム分注ボタン19の機能を代替させることによって、該プログラム分注ボタン19の適用は不必要となる。
【0030】
本発明にかかるピペッティング装置によるピペットからの液体分注方法は、次のようにして行われる。まず初めに、装置の作動行程に関するデータが、使用された液体及び/又は適用されたピペット5に関連付けられた空気流関数又は標準空気流テーブルの形式で、プロセッサ15のメモリにインプットされる。該装置の作動行程(のデータ)は、主に外部空気の導入時間、流速及び外部空気の導入のダンピングに関係する、ピペット5へ導入される外部空気の量を含んでいる。作動行程のデータは、備え付けられたボタンを用いてピペッティング装置へ直接入力しても、又は外部機器から入力してもよい。外部機器は、電信又は無線電信により、とりわけ無線信号により又は光学的な方法でピペッティング装置と通信を行えるものでよく、プログラミング可能なコントローラ又はコンピュータが、該外部機器として好適に用いられる。
【0031】
吸引ボタン13を押圧し、エアポンプ6を使用することによってピペット5へ液体を吸引した後に、プログラムされた分注行程が実行される。ディスプレイ16から呼び出されるデータの同期試験を備えた機能選択及び機能確認のためのボタン17,18により、ピペット5のデータが選択され得るか、又は自動選択が確認される。次に、例えば通常作動、工場で予め設定されたプログラムに応じた作動、又は使用者自身のプログラムに応じた作動といった作動行程が選択される。工場で予め設定されたプログラム又は使用者自身のプログラムに応じた作動の枠組み内では、滴定、液体の等量連続分注、又は液体の異容量連続分注が選択され得る。選択された行程、ピペット、液体、又はその他のパラメータに応じて、プロセッサ15は、外部空気を導入する時間及び/又は流速、並びに分注される吐出量に適したダンピングの大きさを決定する。ピペッティング装置の作動状態に関する情報は、ディスプレイ16上に表示される。プログラムされた液体吐出量の分注を引き起こすプログラム分注ボタン19の押圧を解除することは、作動の安全性を保障するためであるが、液体分注過程の中止を意味する。該行程を元に戻すためには、分注ボタン14を押圧することにより、残存している液体を吐き出し、そして次に、プログラムされた方法で、吸引ボタン13を押圧することによって、液体を吸引(aspiredはaspiratedの誤記)しなければならない。ピペットを溢れさせないようにするために、分注ボタンが予め押圧されていない場合にあっては、吸引ボタン13を押圧しても、プログラムされた液体吸引が行われないようにしている。その直後のプログラム分注ボタン19の押圧と、その維持により、その間で、当該直後のプログラムされた液体量の分注がもたらされる。ここで、プログラムされた液体量の各々の分注は、その場所に用いられる空気流ダンパーセット11からの空気流ダンパーに接続されたバルブセット10からの適切なバルブを所定時間にわたって開放することにより達成されるものであり、またバルブセット10及び空気流ダンパーセット11の両方は、プロセッサ15により制御される。
【0032】
本発明の別の最良の実施形態例では、ピペット5を据え付けるためのホルダーを具備し、かつピペット5に接続されるエアポンプ6を内蔵するハウジング1を備えるピペッティング装置が、液体分注がなされている間に外部からの空気流を制御するための、ピペット5に接続されるバルブを備える。さらに、該装置は、かかるバルブと共に外部空気の流路内に空気流ダンパーを備える。本実施形態例では、液体分注のための外部空気流制御バルブと、空気流ダンパーの両方が、例えばプロセッサからのアナログ信号又はデジタル信号によって制御され得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
明細書中に取り入れられ、その一部を構成する添付図面は、本発明の具体例を明示するものであり、その記述と共にして、本発明の本質的部分を説明するために役立つ。
【図1】本発明にかかるピペッティング装置を示す縦断面図である。
【図2】本発明にかかる各構成要素の機能上の関連を示す一覧図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットを据え付けるためのホルダーを具備し、ピペットに接続されるエアポンプと、装置の作動を制御するプロセッサとを夫々内蔵するハウジングからなるピペッティング装置における、ポンプを用いて液体をピペットへ吸引した後に、ピペットに接続されたバルブ又はバルブセットを介して該ピペットヘ導入される外部空気の量に比例して、所望の液体吐出量がピペットから分注される液体分注方法であって、
導入される外部空気の量が、外部空気がピペットへ導入される時間及び/又は流速及び/又はダンピングを決定することによってプロセッサ内でプログラムされることを特徴とするピペッティング装置における液体分注方法。
【請求項2】
ピペットへ導入される外部空気の量が、プロセッサメモリに記憶された液体及び/又はピペットのタイプに関連付けられた空気流関数に基づいて決定されることを特徴とする請求項1記載の液体分注方法。
【請求項3】
ピペットへ導入される外部空気の量が、プロセッサメモリに記憶された液体及び/又はピペットのタイプに関連付けられた標準空気流テーブルに基づいて決定されることを特徴とする請求項1記載の液体分注方法。
【請求項4】
空気流に関するデータが、外部機器からプロセッサメモリへインプットされることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液体分注方法。
【請求項5】
外部機器が、電信により又は無線電信の方法でピペッティング装置と通信するものであることを特徴とする請求項4記載の液体分注方法。
【請求項6】
プログラミング可能なコントローラ又はコンピュータが、外部機器として用いられることを特徴とする請求項4記載の液体分注方法。
【請求項7】
ピペットを据え付けるためのホルダーを具備し、かつピペットに接続されるエアポンプを内蔵するハウジングからなるピペッティング装置であって、
液体分注がなされている間に外部からの空気流を制御するための、ピペット5に接続される少なくとも一つのバルブを備えていることを特徴とするピペッティング装置。
【請求項8】
ピペットを据え付けるためのホルダーを具備し、かつピペットに接続されるエアポンプと、装置の作動を制御するプロセッサとを夫々内蔵するハウジングからなるピペッティング装置であって、
液体分注がなされている間に外部からの空気流をプロセッサ15により制御するための、ピペット5に接続されるバルブセット10を備えていることを特徴とするピペッティング装置。
【請求項9】
エアポンプ6に接続され、液体吸引ボタン13と液体分注ボタン14とにより操作される空気流分配器8と、ピペット5との間に、バルブセット10の流出側が接続されていることを特徴とする請求項8記載のピペッティング装置。
【請求項10】
外部空気の流路に少なくとも一つの空気流ダンパーを、バルブと共に備えていることを特徴とする請求項7記載のピペッティング装置。
【請求項11】
バルブセット10の入口に接続される空気流ダンパーセット11を備えていることを特徴とする請求項8記載のピペッティング装置。
【請求項12】
プログラム分注ボタン19が、ディスプレイ16及び機能選択と機能確認のためのボタン17,18と共に、プロセッサ15に接続されていることを特徴とする請求項8記載のピペッティング装置。
【請求項13】
バルブセット10がプロセッサ15により制御されることを特徴とする請求項8記載のピペッティング装置。
【請求項14】
空気流ダンパー及び/又は空気流ダンパーセット11が、プロセッサ15により制御されることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載のピペッティング装置。
【請求項15】
プロセッサ15が外部機器から制御されることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のピペッティング装置。
【請求項16】
空気流分配バルブ8と、ピペット5と、バルブセット10からの出口との間に接続される空気流三路管9を備えていることを特徴とする請求項9記載のピペッティング装置。
【請求項17】
バルブセット10からの流出側と空気流三路管9との間に接続される多岐管12を備えていることを特徴とする請求項16記載のピペッティング装置。
【請求項18】
プログラム分注ボタン19の機能が、プロセッサ15によりプログラムに沿って切換られた後に、液体吸引ボタン13により代替されることを特徴とする請求項12記載のピペッティング装置。
【請求項19】
プロセッサ15が、使用された液体及び/又はピペットのタイプを考慮に入れる空気流関数又は標準空気流テーブルをメモリに記憶して具備していることを特徴とする請求項8記載のピペッティング装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−513023(P2006−513023A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566353(P2004−566353)
【出願日】平成15年4月8日(2003.4.8)
【国際出願番号】PCT/PL2003/000035
【国際公開番号】WO2004/062805
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(503435826)
【Fターム(参考)】