説明

ピペットチップの搬送装置

【課題】ピペットチップを搬送する際に、ピペットチップに加わる負荷を軽減する。
【解決手段】本願発明のピペットチップの搬送装置は、ピペットチップ31の基端側の開口部31aから挿入されるチップピックアップ装置22と、ピペットチップ31を吸着するためにチップピックアップ装置22に負圧を加える負圧源54と、を有することを特徴とする。具体的には、チップピックアップ装置22に、ピペットチップ31の基端側の開口部31aに当接して、ピペットチップ31への所定量以上の挿入を阻止する当接部22bを設けるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体や試薬のサンプリング及び分注などのために使用されるピペットチップの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動免疫測定装置などの自動分析装置においては、検体や試薬のサンプリング及び分注のために、汚染物持ち越しの心配のないディスポーザルピペットチップが使用されている。
【0003】
多数のディスポーザルピペットチップの配置構成と分注ノズルヘッドへの装着の手順については、従来、いくつかの方式が採用されている。
【0004】
第1の方式は、載置したピペットチップラック上に2次元マトリクス状に並列された多数のピペットチップの各中心軸に対して、水平直交軸(X軸、Y軸)方向および/又は水平角度軸方向に可動なアームに接続された分注ノズルヘッドに正確に位置決めして、ピペットチップを直接圧入する方式である。
【0005】
第2の方式は、ピペットチップ搭載ラックを、分注ノズルヘッドの可動方向であるX方向(水平方向)及びX方向に直行するY方向(水平方向)に搬送するとともに、分注ノズルヘッドをこれに直交するY方向及びX方向に駆動する、分担方式である(たとえば、特許文献1参照)。
【0006】
また、第3の方式として、分注ノズルヘッドのホームポジションの近傍にピペットチップを装着するための装着ポートを設け、この装着ポートにチップ搭載ラックからピペットチップを搬送する方式がある。装着ポートへの搬送手段としては、ノズル形状の部材をピペットチップに圧入したり、搬送用の爪でピペットチップを把持する方法が考えられる。
【特許文献1】特許第3733431号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、第1の方式は、ピペットチップ又はラックの数が増えるにつれて、広範囲にわたって分注ノズルヘッドの高度な位置決め精度が必要になる。
【0008】
また、分担方式では、例えば複数の96本収納用ピペットチップ搭載ラックを処理する場合に、ラックの数に応じてその移動距離が長くなり、ピペットチップ搭載ラックの静止占有面積の2倍の移動占有面積が必要になる。このため、装置が大型化するという問題がある。
【0009】
さらに、第3の方式では、ノズル形状の部材をピペットチップに圧入した際にピペットチップが変形するおそれがある。また、爪で把持する方法では、上記と同様に高度な位置決め精度が必要になる。
【0010】
そこで、本願発明は、ピペットチップの高度な位置決め精度を不用とすることを第目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願発明のピペットチップの搬送装置は、ピペットチップの基端側の開口部から挿入されるノズルヘッドと、前記ピペットチップを吸着するために前記ノズルヘッドに負圧を加える負圧手段と、を有することを特徴とする。
【0012】
具体的には、前記ノズルヘッドに、前記ピペットチップの基端側の開口部に当接して、前記ピペットチップへの所定量以上の挿入を阻止する当接部を設けるとよい。この場合、前記ノズルヘッドの前記当接部が、前記ピペットチップの基端側の開口部に当接した状態で、前記負圧手段による負圧を解除すると、前記ピペットチップは重力落下するようにするのが好ましい。
【0013】
前記ノズルヘッドの先端部を、前記ピペットチップの先端側の開口部に向かって漸減する円錐台状に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、ピペットチップの基端側の開口部からノズルヘッドを挿入することにより、ピペットチップを吸着できるため、ノズルヘッドの位置決め精度を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0016】
ここで、図1及び図2は、本発明の実施例であるチップピックアップ装置を適用した自動分析装置の平面図であり、図1は吸着前の状態を図示しており、図2は吸着時の状態を図示している。ただし、これらの図では、説明を簡素化するため、自動分析装置の下工程の機器(例えば、分注装置、インキュベータ)を省略して図示している。図3は、ピックアップ装置の断面図である。図4は、ピックアップ装置の動作制御を行うためのブロック図である。
【0017】
これらの図において、ピックアップ装置11は、搬送アーム12に支持されており、ピックアップ装置搬送モータユニット53(図4参照)から駆動力を受けて搬送アーム12上をX軸方向にスライド移動する。この搬送アーム12は、搬送アーム駆動モータユニット52(図4参照)から駆動力を受けて、Y軸方向、Z軸方向にピックアップ装置11とともに一体的に移動する。
【0018】
CPU51(図4参照)は搬送アーム駆動モータユニット52及びピックアップ装置搬送モータユニット53に対して電気的に接続されており、不図示のコンピュータを介して入力された位置情報からこれらのモータユニット52、53の必要駆動パルス数を算出し、この駆動パルス数に応じた駆動を行うように、駆動信号を出力する。
【0019】
この駆動信号に基づき、ピックアップ装置11及び搬送アーム12には、前記位置情報に応じた位置、例えば、図2に図示するように、ピペットチップ搭載ラック3の左下隅に配置されるピペットチップ31の真上に移動する。
【0020】
ピックアップ装置11には、不図示の反応容器をピックアップするための容器ピックアップ装置21と、ピペットチップ31をピックアップするためのチップピックアップ装置22が搭載されている。
【0021】
ピペットチップ31は、検体や試薬のサンプリング及び分注などのために使用される。
【0022】
搬送レーン16は、X軸方向にスライド移動可能に設けられており、この搬送レーン16の略一端部には、チップピックアップ装置22にピックアップされたピペットチップ31を装着するためのピペットチップ装着ポート16bが凹状に形成されている。このピペットチップ装着ポート16bに装着されたピペットチップ31は、搬送レーン16により不図示の分注ノズルヘッドの略直下に搬送される。
【0023】
次に、図3及び図4を参照しながら、チップピックアップ装置22について詳細に説明する。
【0024】
チップピックアップ装置22の吸引パイプ22aは、負圧手段としての負圧源54(図4参照)に接続されており、この吸引パイプ22aの先端部には、下方に向かって漸減する円錐台状のガイド部22cが形成されている。ガイド部22cの基端部には、ガイド部22cよりも外形寸法の大きい当接部22bが形成されている。
【0025】
これらの当接部22b及びガイド部22cは、同一材料(例えば、ステンレス鋼SUS303等の金属、樹脂)を用いて切削形成してもよいし、射出成型することもできる。また、機密性を確保できれば、異なる部材をネジ止め又は接着することにより形成してもよい。
【0026】
吸引パイプ22aには、圧力センサ55が配置されており、この圧力センサ55から出力された圧力情報はCPU51に入力される。なお、搬送アーム駆動モータユニット52、ピックアップ装置搬送モータユニット53には、例えば、ステッピングモータ、超音波モータを用いることができる。
【0027】
この種の吸引式の搬送装置は、通常、開口部が形成されたワークを搬送するためには用いられない。当該開口部からエアが入り込み、吸着に必要な圧力を確保できないからである。しかしながら、本発明のワークはピペットチップ31であり、ピペットチップ31の先端側の開口部31bの径は、極めて小径に設定されている。したがって、ピペットチップ31の基端側の開口部31aからノズル(ガイド部22c)を挿入することにより、吸着に必要な圧力を得ることができ、安定的にピペットチップ31を搬送することができる。
【0028】
容器ピックアップ装置21は、負圧により不図示の反応容器を吸着するが、詳細な説明については省略する。なお、容器ピックアップ装置21の負圧源は、チップピックアップ装置22と共用してもよいし、別体で設けてもよい。
【0029】
次に、図5及び図6を参照しながら、チップピックアップ装置22の動作について説明する。ここで、図5はチップピックアップ装置22の動作説明図であり、図6はチップピックアップ装置の動作方法を示すフローチャートである。なお、下記の動作制御は、CPU51によって実行されるものとする。
【0030】
初期状態において、ピックアップ装置11は図1に図示する位置で待機しているものとする。
【0031】
不図示の動作開始ボタンがオンされると、搬送アーム駆動モータユニット52及びピックアップ装置搬送モータユニット53により、チップピックアップ装置22はピペットチップ搭載ラック3に収容されたピペットチップ31の真上に設定された吸引位置に移動する(ステップS101、図5(a)参照)。
【0032】
ここで、図5(a)に図示するように、吸引位置において、ガイド部22cの先端部はピペットチップ31の内部に挿入され、かつ、当接部22bは、ピペットチップ31の基端側の開口部31aから離間している。
【0033】
チップピックアップ装置22が吸引位置に移動すると、負圧源54による吸引動作が開始される(ステップS102)。CPU51は、圧力センサ55から出力される圧力情報に基づき、吸引圧が閾値を超えたかどうかをモニタしており(ステップS103)、吸引圧が閾値を超えた場合には、ピペットチップ31の吸着に成功したものと判別して、吸着したピペットチップ31を搬送レーン16に搬送するように搬送アーム駆動モータユニット52、ピックアップ装置搬送モータユニット53及び捕捉アーム駆動モータユニット56に駆動信号を出力する(ステップS104)。
【0034】
ピペットチップ31がチップピックアップ装置22に吸着された状態を図5(b)に示す。同図に示すように、ピペットチップ31の基端側の開口部31aはチップピックアップ装置22の当接部22bに当接しており、ピペットチップのガイド部22cはピペットチップ31の内径部に密着していない。つまり、負圧源54による吸引を解除したときに、ピックアップ装置22からピペットチップ31を重力落下させるように、ピペットチップ31の内径部にガイド部22cは挿入されている。
【0035】
つまり、吸引されたピペットチップ31の基端側の開口部31aをチップピックアップ装置22の当接部22bに当接させることにより、チップピックアップ装置22の所定量以上の挿入を阻止して、チップピックアップ装置22のガイド部22cがピペットチップ31の内径部に圧入(当接)されるのを防止している。これにより、ノズルを押入装着する場合に起こりうるピペットチップ31の変形を回避することができる。
【0036】
漸減する円錐台の傾斜角度は、吸着すべきピペットチップ31の内部の傾斜角度に合わせるのが好適である。これにより、吸着が完了する直前のガイド部22cとピペットチップ31との隙間が狭くなり、ピペットチップ31が容易に浮上してチップピックアップ装置22に吸着されやすくなる。
【0037】
また、ピペットチップ搭載ラック3上に設置されたピペットチップ31と吸引管22aとの中心軸が位置ずれをしている場合には、吸引時にピペットチップ31はガイド部22bに当接しながらガイドされるため、位置ずれを少なくすることができる。これにより、自動分析装置の処理速度を速めることができる。
【0038】
さらに、ピペットチップ31を吸着する際に、ピペットチップ搭載ラック3を移動させる必要がないため、自動分析装置全体を小型化することができる。
【0039】
チップピックアップ装置22がピックアップ装着ポート16bの真上に達すると、負圧源54による吸引動作が停止され、チップピックアップ装置22に装着されたピペットチップ31は重力落下して、ピックアップ装着ポート16bの凹状部に載置される。上述の構成によれば、負圧減54による吸引動作を停止するのみで、ピックアップ装着ポート16bにピペットチップ31を載置できるため、装置全体を簡素化して、コストを削減することができる。載置されたピペットチップ31は、次に分注用の吸引ノズルによるピックアップ装着ポート16b内で押入装着される。
【0040】
ステップS105において、設定時間内に吸引圧が閾値を越えなかったと判別された場合には、次のピペットチップ31に移行する。
(他の実施例)
ガイド部22cは、円錐状に限定されるものではなく、例えば、円筒状に形成することもできる。
【0041】
当接部22bにピペットチップ31が当接する際の衝撃力を緩和する緩衝手段(例えば、バネ、ゴム)を設けてもよい。緩衝手段を設けることにより、ピペットチップ31に加わる負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】自動分析装置の平面図である(ピペットチップの吸着前)。
【図2】自動分析装置の平面図である(ピペットチップの吸着時)
【図3】ピックアップ装置の断面図である。
【図4】ピックアップ装置の動作制御を行うためのブロック図である。
【図5】チップピックアップ装置の動作説明図である。
【図6】チップピックアップ装置の動作方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
3 容器ストレージラック
11 ピップアップ装置
12 搬送アーム
16 搬送レーン
16b ピックアップ装着ポート
21 容器ピップアップ装置
22 チップピックアップ装置
22a 吸引管
22b 当接部
22c ガイド部
31 ピペットチップ
31a 基端側の開口部
31b 先端側の開口部
51 CPU
52 搬送アーム駆動モータユニット
53 ピックアップ装置搬送モータユニット
54 負圧源
55 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットチップの基端側の開口部から挿入されるノズルヘッドと、
前記ピペットチップを吸着するために前記ノズルヘッドに負圧を加える負圧手段と、を有することを特徴とするピペットチップの搬送装置。
【請求項2】
前記ノズルヘッドは、前記ピペットチップの基端側の開口部に当接して、前記ピペットチップへの所定量以上の挿入を阻止する当接部を有することを特徴とする請求項1に記載のピペットチップの搬送装置。
【請求項3】
前記ノズルヘッドの前記当接部が、前記ピペットチップの基端側の開口部に当接した状態で、前記負圧手段による負圧を解除すると、前記ピペットチップは重力落下することを特徴とする請求項2に記載のピペットチップの搬送装置。
【請求項4】
前記ノズルヘッドの先端部は、前記ピペットチップの先端側の開口部に向かって漸減する円錐台状に形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のピペットチップの搬送装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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