説明

ピペット装置

【課題】回転可能な持ち手部を備えたピペット装置を提供する。
【解決手段】ピペットに液体を吸い込む及びピペットから液体を排出するための手持ちピペット装置は、回転するよう一緒に連結された頭部と持ち手部とを有する。一つ以上の延長モジュールが頭部及び持ち手部の間に連結できる。持ち手部は普段は付勢されているトリガ機構を有しており、前記トリガ機構は可撓性の吸引管及び排出管を挟む。管に対する圧力はトリガ機構を押す事によって解消されることで、一つ以上の導管が部分的又は完全に開く。ピペットホルダは頭部に回転可能及び取り外し可能に連結される。ホルダが回転される時には、取付けられたピペットはピペット装置に対してほぼ垂直又はある角度で配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して液体を扱う装置に関係するものであり、特に液体をピペットに吸い込み、そしてピペットから液体を排出するための手持ちピペット装置に関係する。
【背景技術】
【0002】
従来から、正確な量の液体を供給源から吸い込むためのピペット装置が知られている。典型的なピペット装置は、一端で実験室のピペットに連通しかつ他端において離れた又は局所の空気圧源に連結されている手持ち機器である。ピペット装置内に配置されているバルブがガンを通ってピペットに至る空気の流れを制御する事で、ピペットを通る液体の吸い込み又は排出のいずれかを調節する事ができる。使用者は、ピペット装置上の正圧トリガ又は負圧トリガのいずれかを押す事によってピペットへの空気の流れを制御する。圧力の大きさは予め決められており、ピペットガンハウジング内に配置されているバルブによって調節される。ある従来式のピペット装置は、様々な長さ及び径のピペットと協働及び連通するために、汎用のノーズ取付け具を備えている。異なるピペットの大きさはしばしば異なる流速を必要とするため、ある従来式のピペット装置は、液体の流速を調整するための複雑で高価なバルブ機構を備えている。また、長いピペットの使用は、使用者に手又は腕を快適でない高さに上げることを強いる。
【0003】
完全に持ち運びできるピペット装置においては、局所空気圧源が通常バッテリによって駆動される蠕動ポンプを駆動する事によって提供される。電気によって作動する装置は一般に較正できない他の種類の従来式のピペット装置とはいくらか異なっている。したがって、それらの正確性は、使い捨てのチューブにプリントされた目盛りと使用者の目盛りを見る能力とによってほとんど決定される。しかしながら、他の要因と同様に使用者が右又は左利きであろうとなかろうと、使用者に対するタンクの位置によって充填中に目盛りを直接見ることがしばしば困難である。使用者の頭及び/又は手首は目盛りをより良く見るために回されなければならない。結果的に、ピペットの先端が不注意によって液体から持ち上がり、測定の不正確性や他の困難をもたらすであろう。尚、これらのピペット装置はよく知られているので文献を列挙しない。
【発明の開示】
【0004】
発明のある側面によると、ピペットに液体を吸い込み、そしてピペットから液体を排出するための手持ちのピペット装置は、頭部と、頭部に連結されておりピペットを取り外し可能に受容するためのピペットホルダと、長手軸に対して回転するために頭部に回転可能に連結されることで、使用者に対するピペットの位置を調節することができる持ち手部とを有する。
【0005】
発明の別の面によると、ピペットに液体を吸い込み、そしてピペットから液体を排出するための手持ちピペット装置は、頭部と、頭部に連結されておりピペットを取り外し可能に受容するようになっているピペットホルダと、頭部に連結されている少なくとも一つの延長モジュールと、少なくとも一つの延長モジュールを介して頭部に連結されている持ち手部とを有する。
【0006】
発明のさらに別の面によると、ピペットに液体を吸い込み、そしてピペットから液体を排出するための手持ちピペット装置は、頭部と、頭部に連結されておりピペットを取り外し可能に受容するようになっているピペットホルダと、頭部に連結されている持ち手部と、選択的にピペットに液体を吸い込み、そしてピペットから液体を排出するための持ち手部に操作上関与するトリガ機構とを有する。トリガ機構は、ピペットホルダに流体連通する少なくとも一つの可撓性チューブと、選択的に少なくとも一つの可撓性チューブに係合することでチューブを通って流れる流体の量を少なくとも部分的に制限するために伸びた位置と縮んだ位置との間で移動可能な少なくとも一つの押しボタンとを有する。
【0007】
発明の別の面によると、ピペットに液体を吸い込み、そしてピペットから液体を排出するための手持ちピペット装置は、頭部と、頭部に連結されている持ち手部と、頭部に連結されておりピペットを取り外し可能に受容するようになっているピペットホルダとを有する。ピペットホルダはキャップを有している。前記キャップは、回転可能に頭部に連結されている基部と、キャップが頭部に対して回された時にキャップが回転するように基部から延びている円錐部とを有する。
【0008】
以下における本発明の好適な実施形態の詳細な説明と同様に上述の概要は添付の図面を参照する事によって最も良く理解する事ができる。図面において同種の記号は同種の部材を表している。
【0009】
図面は発明の典型的な実施形態を図示する事のみを意図しており、発明の範囲を限定するように考えられるべきではないことが理解されるであろう。さらに、図面は理解するために必ずしも必要ではない。しかし、発明は添付図面を参照する事によってより詳細に説明されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
特に図1−3を参照すると、本発明のある実施例におけるピペット装置10が図示されている。ピペット装置10はピペット15(図1)を受容するためのピペットホルダ14を備えた頭部12と、ピペット15から流体を排出するための正圧トリガ18及びピペット15へ流体を吸い込むための負圧トリガ20を有するトリガ機構17を備える持ち手部16と、頭部12及び持ち手部16の間に連結される延長モジュール22とを有する事が好ましい。図1に示されるように、持ち手部16は頭部12に直接連結されており、一方で図2においては、持ち手部16は頭部12及び持ち手部16の間に延びる単一の延長モジュール22を介して頭部12に連結されている。図3においては、複数の延長モジュール22が頭部12及び持ち手部16の間に連結されている。
【0011】
一つ以上の延長モジュール22の提供は、ピペットが異なる長さを有する又は液体保持タンク又はタンク内の液面が異なる高さにある場合において、ピペット操作の間に快適な高さに持ち手部16を保持する事ができる点において特に有益である。空間の制限が要因である場合、延長モジュール22は図1の実施形態のように取り外されることで短いピペット装置を提供する事ができる。
【0012】
頭部12は、以下においてより詳細に説明されるように第1の回動連結において持ち手部16に対して回転可能であるため、使用者は持ち手部16に対して頭部12、結果的に取付けられたピペット15を動かす又は回転させる事ができる(図28及び29参照)。一つ以上の延長モジュール22が使用されている場合には、頭部12及び持ち手部16は第1及び第2の回動連結において延長モジュールに対してそれぞれ別々に回転可能である事が好ましい。頭部12及び持ち手部16は、ニュートラルポジション(図27)から図28及び図29において示される位置に約90度にわたって時計回り及び反時計回りの両方向にそれぞれ回転可能である事が好ましい。しかしながら、頭部12及び持ち手部16は180度又は360度をも含むあらゆる所望される角度まで回転できることが理解されるであろう。延長モジュール22は相対的な回転に対して一緒に固定されるように連結されることで、頭部12及び持ち手部16のみが回動または回転できる事が好ましい。しかしながら、あるいは延長モジュール22は例えば図31及び図32に示されるように一緒に回転できるように連結可能である事が理解されるであろう。さらに、頭部12のみ又は持ち手部16のみが一つ以上の延長モジュール22に対して回転可能にできる事も理解されるであろう。
【0013】
本発明のピペット装置10の頭部12及び持ち手部16の回動または回転装置は、固定された頭部及び持ち手部を有する従来式のピペット装置に対していくつかの利点を有する。例えば、本発明によるピペット装置の使用者は、表示を観察するために使用者の手首又は頭を曲げる必要なく、持ち手部16に対して頭部12をピペット15の目盛り及びピペット内の液体の相対位置がよりよく見る事ができる位置に移動又は回動することができる。さらに、回動装置は右利き及び左利きの両方の使用者によるピペット装置10の使用を容易にしており、それは特にニュートラルポジションから時計回り又は反時計回りの90度にわたる頭部12及び/又は持ち手部16の回転運動が可能であることによる。
【0014】
図4−10を参照すると、延長モジュール22は共に連結されて後面30を形成する拡張ハウジング部24、26と、曲がった前面32と、前面32及び後面30の間に広がる側面34、36と、前面32、後面30及び側面34、36の間に広がる上面38及び底面40とを有する事が好ましい。上面38及び底面40は、前面32、後面30及び側面34、36と共に中空の内部28を形成しており、以下においてより詳細に説明されるように電気線(図示しない)及びチューブ42、44(図13)がピペット装置10を稼動するためにそこを通って延びている。
【0015】
上面38及び底面40は、頭部12の下端50及び持ち手部16の上端52の形状に適合する形状を有する事が好ましい。このため、上部の拡張部46が延長モジュール22の上端に形成されており、下部の拡張部48が延長モジュールの下端に形成されている。延長モジュール22が頭部12及び持ち手部16の間に設置される場合、上側の突部46及び下側の突部48は、図2に示されるように頭部12及び延長モジュール22間並びに延長モジュール22及び持ち手部16間の滑らかであり審美性のある継ぎ目を提供する。二つ以上の延長モジュールが用いられている時には、図3に示されるように滑らかで審美性のある継ぎ目が隣り合う延長モジュール間においても同様に提供される。また、拡張部46及び48間に形成されている狭小部54(図2−4)は、ピペット装置10の操作中に握る又は固定することができる追加領域を提供する。結果的に、狭小部54及び持ち手部16の両方が同時につかまれることによってピペット操作中のピペット装置10のより良い安定性を提供する事ができる。
【0016】
図4−9を参照すると、上部の開口56が延長モジュール22の上面38に形成されており、下部の開口58が底面40に形成されている。環状面60は底面40から下向きに延びており、下部の開口58を取り囲んでいる。環状フランジ62が環状面60の下端に形成されており、そこから半径方向に延びる事によって環状ギャップ64を形成している。環状面60の外径は上部の開口56の径に等しい又は径よりわずかに小さいため、例えば図24、25、30及び31に示されるように隣接する延長モジュール22の開口56又は隣接する持ち手部16の上部の開口66(図12、13)に環状ギャップ64を配置することによって、延長モジュール22を隣接する延長モジュール22又は持ち手部16に連結する事ができる。
【0017】
図31をさらに参照すると、二つの延長モジュールを一緒に取付けるために、第1の延長モジュールのハウジング部24、26が分離され、第2の延長モジュールの環状面60が第1の延長モジュールの上部の開口56に一致される事が好ましい。そして、(図7において破線で示されるように)第1の延長モジュールのハウジング部24、26は固定具68によって一緒に固定される。固定具68はそれぞれハウジング部24及び26において対向する突起70及び72を通って延びている。接着剤、溶接、相補的な固定部材などのような別の固定手段がハウジング部を一緒に固定するために使用可能であることが理解されるであろう。
【0018】
図11−16を参照すると、持ち手部16は持ち手ハウジング部74及び76を有し、それらは共に連結される事によって、後面80と、曲がった前面82と、後面80及び前面82の間に広がる側面84及び86と、前面82、後面80及び側面84、86の間に広がる上面88及び底面90とを形成する。上面88及び底面90は前面82、後面80及び側面84、86と共に中空の内部78を形成しており、電気線(図示しない)、チューブ42、44及びトリガ機構17がピペット装置10を稼動させるために内部78の中へと延びている。
【0019】
頭部12の下端50(図1)及び延長モジュール22の底面40(図6)の形状に適合する形状を上面88が有するように、拡張部92が持ち手部16の上端に形成されていることで、持ち手部16は頭部12又は延長モジュール22に直接連結される事ができる。トリガ機構17は拡張部92に内蔵される事が好ましい。狭小部94は拡張部92の下に形成されており、ピペット装置10の頭部12に電力を供給するためのバッテリ96を受容する大きさ及び形状である事が好ましい。このため、側面86の狭小部94は必要に応じてバッテリを交換するための取り外し式のバッテリカバー95を有する。バッテリカバーはネジ97又は対向する側面84にある突起(図示しない)に係合する他の固定具によって適切な位置に保持される。バッテリカバーは他の周知の固定手段によって固定でき、又は再充電コネクタが持ち手部16に設けられるときには除去可能であることが理解されるであろう。また、電力は他の周知手段によってピペット装置10に供給できる事が理解されるであろう。
【0020】
図13−16に最も良く示されているように、トリガ機構17は上述のとおりピペットから流体を排出するための正圧トリガ18と、ピペット15へ流体を吸い上げる又は吸引するための負圧トリガ20とを有する。それぞれのトリガ18、20は、持ち手部16の前面82に形成されている開口102を通って摺動する押しボタン100を有する事が好ましい。圧縮バネ104及びプランジャ106がそれぞれの押しボタン100の穴108内に配置されている。ロッド110は前面82に固定するよう設けられており、穴108と交差するスロット112を通って延びている(図14)。ロッド110はスロット112に沿って延びており、通常の延びた位置(図13)と縮んだ位置(図15)との間におけるバネの付勢に対して押しボタン100の移動中にプランジャ106及びバネ104を適切な場所に保持するのに役立つ。一対のアーム114、116(図14、16)は穴108のそれぞれの側における押しボタン100から後ろ向きに延びている。ピン118はアーム114及び116の間に延びており、それらに固定されるように連結されている。
【0021】
仕切り120が持ち手部16の側壁84及び86の間に延びている。それぞれの仕切りはアーム114、116を受容するための通路122を有する。通路122にかかっているアーム114及び116と、スロット112にかかっているロッド110の組み合わせによって、押しボタン100は延びた位置と縮んだ位置との間において直線方向に誘導される。図13に示されるように通常の延びた位置にあるときには、ピン118及び仕切り120がチューブ42及び44を圧着する又は挟むための圧着部材として機能することで、チューブ内の流体の流れを制御する事ができる。下側の仕切り120が上側の仕切り120からオフセットされる事で、チューブと圧力トリガ部材との間における干渉の可能性を回避する事が好ましい。
【0022】
使用に際して、チューブ42及び44は蠕動式ポンプ(図示しない)の脚部、又は頭部12に設けられる事が好ましい同様のものに連結される事が好ましい。タンクなどからピペット15へ流体を吸い上げようとするときに、押しボタン20がバネ104による付勢に逆らって押される事で、チューブ42から離すようにピン118を押し、チューブの圧着を解除する。ピペット15から流体を排出しようとする場合には、押しボタン20が放されて、押しボタン18がバネ104による付勢に逆らって押される事で、チューブ44から離すようにピン118を押し、チューブの圧着を解除する。圧着機構は全てがチューブの内部を開く又は閉じるために用いられるのみならず、開く又は閉じる量を制御し、それによってチューブを通って流れる流体の量を制御するためにも用いる事ができる。したがって、押しボタン100は完全に延びた位置と完全に縮んだ位置との間のあらゆる中間位置に移動する事ができる。この特徴は、流体の流れに対する多大な制御を提供する一方で、従来式のより精巧なバルブ装置にかかる費用を削減できるため特に有益である。
【0023】
蠕動式ポンプの特殊な構造に依存して、トリガ機構17はポンプを稼動することなく重力によってピペット15から流体を排出するために用いる事ができる。これは蠕動式ポンプのロータが可撓性の蠕動連結を完全に閉鎖しないように設計する事によって達成する事ができる。
【0024】
図17−26を参照すると、頭部12は頭部ハウジング部124及び126を有し、それらは共に連結されることによって、後面130と、曲がった前面132と、後面130及び前面132の間に広がる側面134及び136と、前面132、後面130及び側面134、136の間に広がる上面138及び底面140とを形成する。上面138及び底面140は前面132と、後面130と、側面134及び136と共に中空の内部128(図18)形成しており、電気線(図示しない)と、チューブ42及び44と、蠕動式ポンプ(図示しない)と、電子回路(図示しない)とがピペット装置10を稼動するために中空の内部128内に配置される。後部カバー142は後面130に連結されており、蠕動式ポンプを稼動させるための電気モータ(図示しない)を内蔵する。電気モータはワイヤ(図示しない)によってバッテリ96(図13)又はポンプを稼動させるための他の電源に連結されている。電子回路、モータ及びポンプは周知の部品であるため、更なる説明は行わない。
【0025】
頭部12の底面140は、持ち手部16の上面88(図12及び24)及び延長モジュール22の上面38(図5及び25)の形状に適合する形状を有するため、頭部12は持ち手部16又は延長モジュール22に直接連結する事ができる。
【0026】
図17−19及び22に最も明りょうに示されるように、後部開口144は底面140に形成されている。環状面146は底面140から下向きに延びており、後部開口144を取り囲んでいる。環状フランジ148は環状面146の下端に形成されており、そこから半径方向に延びる事で環状ギャップ150を形成する。O−リング152はギャップ150、好ましくはフランジ148近くに配置されており、環状面146を取り囲んでいる。停止タブ154はフランジ148から半径方向に延びている。環状面146の外径は上部の開口66又は56の径に等しい又は径よりわずかに小さいため、頭部12は、環状面146、したがって環状ギャップ150を隣接する持ち手部16の開口66又は隣接するモジュール22の開口56に配置する事によって隣接する持ち手部16(図1及び24)又は延長モジュール22(図2及び25)に連結する事ができる。
【0027】
ハウジング部12を持ち手部16に回転可能に取付けるために、持ち手部16のハウジング部74、76は分離しており、頭部12の環状面146は持ち手部16の上部の開口66に一致していることが好ましい。また、前記開口66は図24−26に示されるように環状フランジ148と持ち手部16の上面88との間にO−リング152を備える。そして、ハウジング部74、76は(図14及び16において破線で示されている)固定具156によって一緒に固定されており、前記固定具156は持ち手部16のハウジング部74及び76にそれぞれある対向する突起158及び160を通って延びている。接着剤、溶接及び相補的な固定部材などを例とする他の固定手段がハウジング部を固定するために使用可能であることが理解されるであろう。延長モジュール22に対する頭部の回転可能な取付けも同様になされているため、別途に説明は行わない。O−リング152は頭部12と持ち手部16又は延長モジュール22との間の滑らかで制御された回転運動を保証する。
【0028】
図26−29、31及び32を参照すると、頭部16及び/又は延長モジュール22に対する頭部12の回転を制限する事を望む場合には、一対の止め具162、164がハウジング部の上部の開口56又は66の対向する側部に設けられる。頭部12が図27に示されるニュートラルポジションから図28に示される位置へと時計回りに回転する時には、フランジ148から延びたタブ154が止め具162と係合することで、図27の位置から90度を超える時計回りの動きを抑制する。同様に、頭部12が図28に示される位置に向かって反時計回りに回転するときには、フランジ148が止め具164と係合することで、図27の位置から90度を超える反時計回りの動きを抑制する。これによって、合わせて180度の回転が可能となる。止め具は、より大きな又はより小さな回転動作の範囲をもたらすために、開口56又は66近くのあらゆる位置に配置可能である事が理解されるであろう。例えば、頭部がプラスマイナス180度の範囲を超えて回転するよう止め具を配置する事もできる。また、一つの止め具がハウジング部及び/又は延長モジュールに配置され、一対のタブが頭部に配置されることで、同じ範囲の回転動作をもたらすことが可能であることが理解されるであろう。
【0029】
図30及び32に示されるように発明の別の実施形態によると、O−リング152が取り除かれ、頭部12の環状面146が短くされる事で、環状フランジ148の上面が延長モジュール22の上面38の下部に摩擦係合する。
【0030】
また、図17−21を参照すると、頭部12は鋭角に延びる下面172を有する片持ちノーズ170を有する。ノーズの角度は、頭部12が直立した状態で、底面140又は水平軸に対して約7.5から15度の間である事が好ましい。この角度は大きく変更できることが理解されるであろう。
【0031】
ピペットホルダ14は底面140から延びており、環状面174を有している。前記環状面は、取付けられた時に頭部16及び/又は延長モジュール22の長手軸に対して、又はピペット装置が直立に保持されている時に垂直軸に対して約7.5から15度の間の角度で底面172からほぼ下向き且つ前向きに延びていることが望ましい。環状面174は外向きに突き出た環状リッジ176を有する。導管178は環状面174と同軸で底面172を通って延びており、また、頭部12及びチューブ44、46にある親水性フィルタのようなフィルタと流体連通していることが好ましい。フィルタ175は周知の構造及び作用であるため、更なる説明は行わない。可撓性チューブ180は導管178に設けられた上端182と下端184とを有しており、下端184はピペット15の上端を受容し且つ摩擦によって保持する大きさであるため、ピペット15はチューブ180に挿入されたときにチューブ44、46と流体連通することができる。
【0032】
キャップ186は取り外し可能に環状面174に連結されており、中空の基部188と基部から延びる中空の円錐部190とを有する。円錐部190は基部188の中心軸に対して約7.5から15度の間の角度で延びている事が好ましい。しかしながら、基部188に対する円錐部190の特有の角度は広範囲の角度から選択可能であることが理解されるであろう。円錐部190は、可撓性チューブ180に繋がれたときにピペット15が通って延びる開口196を有する。
【0033】
基部188は複数の内向きに突き出た弾性留め具192を備える環状面189を有しており、前記留め具は片持ちノーズ170にキャップ186を保持するためにスナップ動作で環状リッジ176に係合する。このスナップの特徴は、従来の解決策であるネジを使用することなく、ノーズ170にキャップ186を回転可能に連結する単純で効果的な方法を可能にする。タブ194はそれぞれの留め具192に対応しており、環状面189から外向きに延びている事が好ましい。ひとつ以上のタブは、環状リッジから一つ以上の留め具を外し、ノーズ170からキャップ186を取り除くために使用者によって操作されることができる。したがって、ピペットホルダ14をすばやく取り替えるための特徴は従来の方法に対して非常に単純化されている。それ故に、ピペット装置10が販売又は供給されたときに、特定の用途に適合するための多くの種類のピペットホルダによってそれはなされるであろう。三つの可撓性留め具とそれらに付随するタブとが示されているものの、より多い又は少ないタブ及び/又は留め具が使用可能であることが理解されるであろう。また、タブが除去され、及び/又は環状面174にキャップを回転可能に固定するための別の手段が使用可能であることが理解されるであろう。
【0034】
図17、19及び23を参照すると、使用に際して、環状面174上の環状リッジ176と基部188上の留め具192との組み合わせは、従来の解決法のようにピペットホルダ14を緩めたり、又は分離したりすることなく、図23において矢印205によって示されるようにキャップ186を環状面174に対して360度にわたって回転可能にする。ピペット操作中においては、キャップ186は調節された位置にあることが好ましい。このことは、留め具の環状リッジ、頭部にある固定部材(図示しない)及びキャップとの摩擦係合、又は他の固定手段によってなされる。
【0035】
片持ちノーズ170の下面172の角度方向と、基部188及び円錐部190の間の角度関係によって、円錐部はキャップ186の360度にわたる回転の円又は楕円の軌道に従い、キャップは長手軸202に対するピペットの回転ではなく大きな楕円の軌道200に沿ってピペット15の下端198の動きを誘導する。
【0036】
下面172の角度及び基部188と円錐部190との間の角度がほぼ同じであるときには、角度が対向して相互に打ち消しあうまでキャップを回転させることによって、円錐、結果的にピペット15の長手軸202を図17及び23において示されるようにピペット装置10の長手軸204にほぼ平行に向けられる。キャップ186が約180度回転されるときには、ピペット装置15の長手軸202が、図19及び23に示されるように長手軸204に対してある角度206で延びるであろう。角度206の値は下面172の角度と基部及び円錐部の間の角度との合計である。例えば、下面が7.5度であり、円錐部が基部に対して7.5度である場合、軸204に対するピペット装置の合計の角度204は約15度である。チューブ180の可撓性は、ピペット15が楕円の軌道200に沿って自由に動く事を保証する。
【0037】
明細書中で用いられている「好ましい」の用語は発明の一つ以上の実施例に言及しており、限定的な意味で解釈されるべきではないことが理解されるであろう。また、明細書中で用いられている「連結」の用語とその様々な派生語とは直接又は一つ以上の中間部材を介して繋がっている構成を意図していることが理解されるであろう。また、明細書中で用いられている方向及び/又は位置の用語は絶対的ではなく相対的な方向及び/又は位置に関連している。
【0038】
上述の実施例の広範な発明概念から逸脱することなく実施例が変更可能であることは、当業者にとって明らかであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定される事なく、添付された請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲内における変更を網羅する事を意図している。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】持ち手部に連結された頭部を示すピペット装置の側面図
【図2】頭部及び持ち手部の間に連結された延長モジュールを有する図1のピペット装置の側面図
【図3】頭部及び持ち手部の間に連結された複数の延長モジュールを有するピペット装置の側面図
【図4】延長モジュールの側面図
【図5】延長モジュールの上面図
【図6】延長モジュールの底面図
【図7】図4における延長モジュールの7−7線断面図
【図8】図5における延長モジュールの一部の8−8線断面図
【図9】図4における延長モジュールの9−9線断面図
【図10】図4における延長モジュールの10−10線断面図
【図11】ピペット装置の持ち手部の側面図
【図12】持ち手部の上面図
【図13】閉じた位置にあるトリガ機構を示す持ち手部の部分的に断面である側面図
【図14】図13における持ち手部の14−14線断面図
【図15】開いた位置にあるトリガ機構を示す図13と同様の図
【図16】図15における持ち手部の16−16線断面図
【図17】ピペットホルダの細部を示すピペット装置の頭部の部分的に断面である側面図
【図18】図17における頭部の18−18線から見た底面図
【図19】回転した位置にあるピペットホルダを示す図17と同様の図
【図20】図17のピペットホルダの20−20線断面における底面図
【図21】図17におけるピペットホルダの21−21線断面図
【図22】図17における頭部の回転部材の22−22線断面図
【図23】ノーズアセンブリに連結されたピペットの角度位置を調節するための第1の位置と第2の位置との間におけるノーズアセンブリの回転を示すピペット装置の側面図
【図24】頭部及び持ち手部の間における回転連結を部分的な断面で示すピペット装置の一部の側面図
【図25】頭部及び延長モジュールの間における回転連結を部分的な断面で示すピペット装置の一部の側面図
【図26】図24及び25における回転連結の26−26線断面図
【図27】図24及び25におけるピペット装置の27−27底断面図
【図28】頭部に対して第1の位置まで回転した持ち手部又は延長モジュールを備えるピペット装置の図27と同様の図
【図29】頭部に対して第2の位置まで回転した持ち手部又は延長モジュールを備えるピペット装置の図27と同様の図
【図30】頭部及び持ち手部の間における回転連結を部分的な断面で示すピペット装置の一部の側面図
【図31】隣り合う延長モジュール間の回転連結を部分的な断面で示すピペット装置の一部の側面図
【図32】図30及び31における回転連結の32−32線断面図
【符号の説明】
【0040】
10 ピペット装置
12 頭部
14 ピペットホルダ
15 ピペット
16 持ち手部
22 延長モジュール



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットに液体を吸い込むため及び該ピペットから液体を排出するための手持ちピペット装置であって、
長手軸を有し、且つ
頭部と
前記頭部に連結されており、ピペットを取り外し可能に受容するためのピペットホルダと、
前記長手軸に対して回転するために前記頭部に回転可能に連結されることで、使用者に対する前記ピペットの位置を調節することができる持ち手部と
を有するピペット装置。
【請求項2】
前記頭部及び前記持ち手部の間に連結された少なくとも一つの第1の延長モジュールを有し、前記頭部及び前記持ち手部の少なくとも一つは前記長手軸に対して回転するよう前記延長モジュールに連結されている請求項1のピペット装置。
【請求項3】
前記頭部及び前記持ち手部の両方が前記延長モジュールに連結されている請求項2のピペット装置。
【請求項4】
前記第1の延長モジュールと前記持ち手部との間に第2の延長モジュールを有し、前記第1の延長モジュール及び前記第2の延長モジュールは少なくとも実質的に構造が一致する請求項2のピペット装置。
【請求項5】
前記第1の延長モジュール及び前記第2の延長モジュールが一緒に動かないよう連結されている請求項4のピペット装置。
【請求項6】
前記第1の延長モジュール及び前記第2の延長モジュールが長手軸に対して一緒に回転するよう連結されている請求項4のピペット装置。
【請求項7】
前記持ち手部がピペットに液体を選択的に吸い込むため及び該ピペットから液体を選択的に排出するためのトリガ機構を有し、前記トリガ機構が
前記ピペットホルダと流体連通している少なくとも一つの可撓性チューブと、
少なくとも一つの押しボタンとを有し、
前記押しボタンは前記少なくとも一つの可撓性チューブと選択的に係合するために伸びた位置と縮んだ位置との間で移動可能であることにより、少なくとも部分的に前記チューブを通って流れる流体の量を制限する請求項2のピペット装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの押しボタンが完全に前記可撓性チューブを挟むために前記延びた位置に付勢されており、前記チューブを挟まれた状態から部分的又は完全に解放するために前記縮んだ位置に移動可能である請求項7のピペット装置。
【請求項9】
前記持ち手部がピペットに液体を選択的に吸い込むため及び該ピペットから選択的に排出するためのトリガ機構を有し、前記トリガ機構が
前記ピペットに液体を吸い込むため及び前記ピペットから液体を排出するためにそれぞれ前記ピペットホルダと流体連通した第1の可撓性チューブ及び第2の可撓性チューブと、
前記第1の可撓性チューブに選択的に係合することで前記第1の可撓性チューブを通って流れる流体の量を少なくとも部分的に制限するために、延びた位置及び縮んだ位置の間で移動可能な第1の押しボタンと、
前記第2の可撓性チューブに選択的に係合することで前記第2の可撓性チューブを通って流れる流体の量を少なくとも部分的に制限するために、延びた位置及び縮んだ位置の間で移動可能な第2の押しボタンと
を有する請求項2のピペット装置。
【請求項10】
前記押しボタンがそれぞれに関連する前記可撓性チューブを完全に挟むために伸びた位置に付勢されており、それぞれに関連する前記可撓性チューブを挟んだ状態から部分的又は完全に解放するために縮んだ位置に移動可能である請求項9のピペット装置。
【請求項11】
前記ピペットホルダが前記頭部に対して回転可能であるため、前記ピペットの回転位置を調節可能である請求項9のピペット装置。
【請求項12】
前記ピペットホルダがキャップと、前記ピペットを受容するために前記キャップ内に配置された可撓性チューブとを有しており、
前記キャップは長手軸に対して第1の角度で頭部に回転可能に連結された基部と、前記基部の中心軸に対して第2の角度で前記基部から延びている円錐部とを有しており、
前記キャップが前記頭部に対して回転されたときに、前記ピペットが円又は楕円を描く請求項11のピペット装置。
【請求項13】
前記少なくとも一つの延長モジュールが複数の延長モジュールを有しており、前記延長モジュールのそれぞれが構造において少なくとも実質的に同一である請求項2のピペット装置。
【請求項14】
前記頭部及び前記持ち手部の少なくとも一つが前記ピペット装置の長手軸に対して回転するために前記延長モジュールに回転可能に連結されているため、前記ピペットの角度位置を調節することができる請求項13のピペット装置。
【請求項15】
前記円錐部は前記基部の中心軸に対して第1の角度で延びており、前記基部の前記中心軸は前記頭部に対して第2の角度で延びている請求項12のピペット装置。
【請求項16】
前記第1の角度及び前記第2の角度がほぼ同一であることによって、前記キャップが第1の位置にあるときには前記ピペットの長手軸が前記ピペット装置の長手軸とほぼ平行に延びており、前記キャップが第2の位置に回転したときには前記ピペット装置の前記長手軸に対してある角度で延びる請求項15のピペット装置。
【請求項17】
前記頭部が環状面と、前記環状面から外向きに延びた環状リッジとを有し、前記キャップが前記環状リッジと係合するための複数の弾性留め具を有することで、前記キャップを前記頭部に回転可能及び取り外し可能に連結することができる請求項12のピペット装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2008−203254(P2008−203254A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23919(P2008−23919)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(593205738)ベル・アート・プロダクツ・インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】Bel−Art Products, Inc.
【Fターム(参考)】