説明

ピペット装置

【課題】本体筐体の内部容積を減少させたり、メインテナンス性を損なう等の事態を招来することなく、十分な支持強度を確保してノズルピッチの狭幅化を図る。
【解決手段】ガイド機構10のスライダ14には、突出端部に貫通孔15aを有した保持部15が設けてあり、本体筐体200は、保持部15の下面に取り付けられる先端筐体部210と、保持部15の上面に取り付けられる基端筐体部220とを有し、先端筐体部210及び基端筐体部220は、それぞれ保持部15に対応する部位にフランジ212,223を有し、それぞれのフランジ212,223を介してネジ213,224を締結することによって保持部15に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体筐体の先端部に装着したノズルを介して液体の吸引・吐出を行うピペット本体と、ピペット本体を移動可能に支持するガイド機構とを備えたピペット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、血液や尿等の検体に各種試薬を混合させて分析を行う分析システムには、検体や試薬等の液体を吸引・吐出するピペット装置が適用されている。ピペット装置は、中心孔を有した本体筐体の先端部にノズルを備えたピペット本体と、ピペット本体を移動可能に支持するガイド機構とを備えたもので、ピペット本体においてノズルの内部圧力を適宜増減させることにより、液体の吸引・吐出を行うようにしている。
【0003】
ピペット装置のガイド機構は、例えばピペット本体を長手方向に沿って移動可能に支持するものであり、アクチュエータが駆動した場合にマイクロプレートのウェルや試薬容器に対してノズルの先端を正確に位置決めすることが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−10654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、多数の検体を分析する分析システムでは、分析作業を効率化するため、複数のノズルを並列させ、一度に複数の液体を吸引・吐出することができるように構成されたものも提供されている。この種の分析システムでは、並列した複数のノズルを動作させるため、ノズルの配設ピッチを如何に小さくできるかが、システムの小型化を図る上できわめて重要となる。
【0006】
しかしながら、上述したピペット装置では、ガイド機構とピペット本体との間を接続する保持部が本体筐体の外周をクランプするものであるため、この保持部がノズルの配設ピッチを狭小化する際の妨げとなっている。つまり、本体筐体の外周が保持部によってクランプされたピペット本体にあっては、当該保持部が最大外形寸法部分となるため、隣接するピペット本体の間には、保持部が相互に干渉しないだけの間隙を確保する必要があり、ノズルの最小配設ピッチを保持部の外形寸法より小さく設定することが困難となる。
【0007】
もちろん、本体筐体の外径寸法を小さく構成すれば、保持部の外形寸法も小さく設定することが可能となり、ノズルの配設ピッチを狭小化することができる。しかしながら、本体筐体の外径寸法を小さく構成した場合には、内部の容積も減少することになる。ピペット装置には、本体筐体の内部に液体を吸引・吐出するための機構を収容するように構成したものも存在するが、上述のように本体筐体の外径寸法を小さくした場合、吸引・吐出するための機構を収容することが困難になる恐れがある。
【0008】
また、保持部で本体筐体の外周をクランプするのではなく、本体筐体の外周面に対してその一部に保持部を接着すれば、隣接するピペット装置の保持部が相互に干渉することがないため、本体筐体の内部容積を減少させることなくノズルの配設ピッチを可及的に狭小化することができるようになる。しかしながら、外周面の一部に保持部を接着したピペット装置にあっては、保持部に対して本体筐体を着脱することが困難であり、メインテナンス性の点できわめて不利となるばかりでなく、十分な支持強度を得ることも困難となる。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて、本体筐体の内部容積を減少させたり、メインテナンス性を損なう等の事態を招来することなく、十分な支持強度を確保してノズルピッチの狭幅化を図ることのできるピペット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るピペット装置は、中心孔を有した本体筐体の先端部にノズルを備え、このノズルを介して液体の吸引・吐出を行うピペット本体と、本体筐体を介してピペット本体を移動可能に支持するガイド機構とを備えたピペット装置において、前記ガイド機構は、ガイドロッドに対してスライダを移動可能に配設したものであり、前記スライダには、板状を成し、前記ピペット本体に向けて突出するとともに突出端部に貫通孔を有した保持部が設けてあり、前記本体筐体は、先端部にノズルが装着され、かつ中心孔を前記貫通孔に対応させた状態で基端部が保持部の一方の表面に取り付けられる先端筐体部と、中心孔を前記貫通孔に対応させた状態で保持部の他方の表面に取り付けられる基端筐体部とを有し、前記先端筐体部及び前記基端筐体部は、それぞれ保持部の表面に対応する部位にフランジを有し、それぞれのフランジを介してネジを締結することによって保持部に取り付けたものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上述したピペット装置において、本体筐体とガイド機構のスライダとの間には、互いに係合することにより、スライダに対する本体筐体の軸心回りの取付角度を規定する係合手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上述したピペット装置において、本体筐体の先端筐体部は、開口端における中心孔の内径を保持部の貫通孔と同じ内径に形成し、本体筐体の基端筐体部は、少なくとも外径を保持部の貫通孔に嵌合する寸法に形成した挿入部を有したものであり、前記係合手段は、保持部における貫通孔の内周面及び先端筐体部における中心孔の内周面と、基端筐体部のおける挿入部の外周面との間の互いに対応する部位に形成し、当該挿入部を保持部の貫通孔及び先端筐体部の中心孔に挿入した際に相互に嵌合することによってスライダに対する本体筐体の軸心回りの取付角度を規定する係合溝及び係合突起を有したことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上述したピペット装置において、前記ガイド機構は、ガイドロッドの両端部を支持するガイドブロックを具備し、前記先端筐体部は、ノズルを着脱可能に支持するものであり、かつ操作端部が押込操作された場合に本体筐体に対して移動することにより、作用端部を介してノズルを先端側に押圧することにより当該ノズルをエジェクトするエジェクタを備え、前記エジェクタは、ガイドブロックに対して本体筐体が一方側に移動した場合に操作端部がガイドブロックに当接して押込操作される位置に配設したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、本体筐体の移動を案内するスライダに貫通孔を有した保持部を設け、この保持部を挟む状態で本体筐体の先端筐体部と基端筐体部とをそれぞれ保持部に取り付けるようにしているため、保持部の幅を本体筐体の外径寸法よりも大きく形成する必要がない。従って、ノズルの配設ピッチは、保持部の寸法によって制限を受けることがなくなり、本体筐体の外径寸法に応じて狭小化することが可能になる。この場合、本体筐体の外径寸法を小さく構成する必要がないため、本体筐体の内部容積が減少することもなく、ノズルの配設ピッチを狭小化した上で、液体を吸引・吐出するための機構を収容することも可能になる。しかも、保持部に対して本体筐体の長手方向に沿ってフランジにネジを締結する構成となるため、保持部に対して本体筐体を容易に着脱することが可能となり、メインテナンス性の点で有利となるばかりでなく、十分な支持強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施の形態であるピペット装置を概念的に示す斜視図である。
【図2−1】図2−1は、図1に示したピペット装置の断面図である。
【図2−2】図2−2は、図1に示したピペット装置の断面図である。
【図3】図3は、図1に示したピペット装置に適用するピペット本体の本体筐体を示す分解斜視図である。
【図4−1】図4−1は、図1に示したピペット装置の要部を拡大して示す断面図である。
【図4−2】図4−2は、図4−1におけるA−A線断面図である。
【図5】図5は、図1に示したピペット装置に適用するピペット本体の本体筐体を一部破断して示す分解拡大斜視図である。
【図6】図6は、図1に示したピペット装置の適用例を示す斜視図である。
【図7−1】図7−1は、図1に示したピペット装置においてピペット本体を下方に移動させた状態の側面図である。
【図7−2】図7−2は、図1に示したピペット装置においてピペット本体を上方に移動させた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係るピペット装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態であるピペット装置を示したものである。ここで例示するピペット装置は、検体や試薬等の液体を吸引・吐出する際に適用するもので、ガイド機構10及びピペット本体20を備えている。
【0018】
ピペット装置のガイド機構10は、ピペット本体20を上下方向に沿って移動可能に支持するためのもので、ガイドブロック11を備えている。ガイドブロック11は、図1、図2−1、図2−2に示すように、角柱状を成す基準体11aの上下両端部からそれぞれ同一方向に向けて直角に突出した一対の支持体11b,11cを備え、これら支持体11b,11cの相互間にガイドロッド12及び駆動ロッド13を介してスライダ14を移動可能に支持したものである。基準体11aは、左右方向の幅がその全長に渡って一様に構成してある。一対の支持体11b,11cは、それぞれ左右方向に沿った幅を基準体11aと同じ寸法に形成した矩形平板状を成すものである。基準体11aからの支持体11b,11cの突出長さは、上方に位置するもの11bに比べて下方に位置するもの11cが大きく設定してある。スライダ14は、一対の支持体11b,11cの相互間隔よりも長さが短く、左右方向の幅が基準体11aよりもわずかに小さい直方体状を成すものである。
【0019】
ガイドロッド12は、外周面が滑らかな細径の円柱状を成すもので、軸心が基準体11aの長手方向に沿った状態で、その両端部を介してガイドブロック11の支持体11b,11cに固定してある。このガイドロッド12は、スライダ14に設けたブッシュ14aを介してスライダ14を貫通しており、ガイドブロック11に対してスライダ14を自身の軸心方向に沿って案内することが可能である。
【0020】
駆動ロッド13は、外周面にネジ溝を有した細径の円柱状を成すもので、ガイドロッド12と平行となる状態で、その両端部を介してガイドブロック11の支持体11b,11cに回転可能、かつ軸心方向の移動が阻止された状態で支持させてある。この駆動ロッド13は、スライダ14に設けたナット部材14bに螺合した状態でスライダ14を貫通しており、自身の軸心回りに回転した場合、駆動ロッド13とナット部材14bとの間のネジの作用により、ガイドブロック11に対してスライダ14をガイドロッド12の延在方向に沿って移動させることが可能である。
【0021】
図2−1に示すように、本実施の形態では、ガイドロッド12よりも駆動ロッド13がガイドブロック11の基準体11aに近接した状態でそれぞれを支持体11b,11cに支持させてある。
【0022】
また、駆動ロッド13には、図1、図2−1、図2−2に示すように、支持体11b,11cを貫通した一端部にスライド用回転アクチュエータ30が連結してある。スライド用回転アクチュエータ30は、ガイドブロック11に対して駆動ロッド13をその軸心回りに回転させるためのもので、ブラケット31を介して上方の支持体11bに取り付けてある。本実施の形態では、減速機32を備えたパルスモータ33をスライド用回転アクチュエータ30として適用し、かつ減速機32として、いわゆる不思議歯車機構を適用している。不思議歯車機構は、図には明示していないが、パルスモータ33の駆動軸(図示せず)に固着した駆動ギヤ(図示せず)をサンギヤとし、この駆動ギヤ(図示せず)に対してプラネタリギヤ(図示せず)を歯合させるとともに、プラネタリギヤ(図示せず)に二つのリングギヤ32a,32bの内歯を歯合させたものである。パルスモータ33に近いリングギヤ(以下、「第1リングギヤ32a」という)は、パルスモータ33のケースに取り付けてあり、ガイドブロック11に対する回転が規制された状態にある。もう一つのリングギヤ(以下、「第2リングギヤ32b」という)は、ガイドブロック11に対して駆動ギヤ(図示せず)の軸心回りに回転可能に配設してある。この第2リングギヤ32bは、自身の回転軸心状に位置する部位に出力軸34を備えており、この出力軸34の先端部が駆動ロッド13に連結してある。上記の構成を有するスライド用回転アクチュエータ30では、パルスモータ33が駆動すると、駆動軸(図示せず)の回転が駆動ギヤ(図示せず)、プラネタリギヤ(図示せず)、第2リングギヤ32b及び出力軸34を介して駆動ロッド13に伝達され、ガイドブロック11に対して駆動ロッド13をその軸心回りに回転させることが可能である。
【0023】
ガイド機構10のスライダ14には、ガイドブロック11の基準体11aから離隔した端面に保持部15が設けてある。保持部15は、ガイドロッド12に対して直角となる方向に突出した矩形平板状を成す部分であり、スライダ14と一体に構成してある。保持部15の左右方向に沿った幅は、その全長において一様であり、スライダ14と同一の寸法に形成してある。この保持部15には、図3〜図5に示すように、突出した端部に貫通孔15aが形成してある。貫通孔15aは、横断面が円形の開口であり、その軸心がガイドロッド12と平行になる態様で保持部15の上下両端面に渡って貫設してある。
【0024】
図3〜図5に示すように、保持部15の貫通孔15aには、その内周面に中間係合溝(係合手段)15bが形成してある。中間係合溝15bは、一様な幅を有し、かつ保持部15の上下両端面に開口した凹所であり、貫通孔15aの内周面においてガイドロッド12に近接した位置にガイドロッド12の軸心に沿って形成してある。
【0025】
一方、ピペット装置のピペット本体20は、液体を吸引・吐出を行う部分であり、図1〜図3に示すように、本体筐体200の下端部にノズルNZを装着することによって構成してある。本体筐体200は、スライダ14に設けた保持部15の下面から下方に延在する先端筐体部210と、保持部15の上面から上方に延在する基端筐体部220とを備えて構成したものである。先端筐体部210及び基端筐体部220は、図3〜図5に示すように、保持部15の幅方向に沿った最大幅が保持部15の幅以下となるように構成したもので、それぞれの中心孔211,221の軸心を保持部15に形成した貫通孔15aの軸心に合致させた状態で保持部15に取り付けてある。
【0026】
具体的には、先端筐体部210の上端部において保持部15の下面に対向する部位に一対のフランジ212が設けてあり、それぞれのフランジ212を介して保持部15に取付ネジ213を締結することにより、先端筐体部210が保持部15の下面に対して着脱可能に取り付けてある。一対のフランジ212は、互いに離反する方向に突出する態様で設けたもので、左右方向に沿った幅が保持部15と同じ寸法に形成してある。先端筐体部210の中心孔211は、先端筐体部210の上部開口端において保持部15の貫通孔15aと同一の内径を有するように構成してあり、かつその内周面において保持部15の中間係合溝15bに対応する部位に下方係合溝(係合手段)211aを有している。下方係合溝211aは、中間係合溝15bと同じ幅を有し、かつ下端が閉塞した凹所であり、一対のフランジ212をそれぞれ保持部15の下面に対向させ、かつそれぞれの幅位置を保持部15に一致させた場合に、中間係合溝15bに合致する位置に形成してある。
【0027】
これに対して、基端筐体部220には、下端部に挿入部222が設けてあるとともに、挿入部222の上端となる位置において保持部15の上面に対向する部位に一対のフランジ223が設けてあり、挿入部222を保持部15の貫通孔15aに挿入した状態でそれぞれのフランジ223を介して保持部15に取付ネジ224を締結することにより、保持部15に対して着脱可能に取り付けてある。挿入部222は、上端部よりも細径に形成した部分であり、保持部15の貫通孔15aに嵌合させることが可能である。一対のフランジ223は、互いに離反する方向に突出する態様で設けたもので、左右方向に沿った幅が保持部15と同じ寸法に形成してある。
【0028】
基端筐体部220の挿入部222には、外周面に係合突起(係合手段)222aが設けてある。係合突起222aは、中間係合溝15b及び下方係合溝211aに嵌合することのできる寸法に形成した凸状部分であり、一対のフランジ223をそれぞれ保持部15の上面に対向させ、かつそれぞれ左右方向の幅位置を保持部15に一致させた状態で挿入部222を保持部15の貫通孔15aに挿入した場合に、保持部15の中間係合溝15bに嵌合する位置に形成してある。
【0029】
図2に示すように、基端筐体部220の中心孔221は、ほぼ一様な内径を有し、かつ互いに対向する部位がピンスライド溝221aによって外部に開口する一方、先端筐体部210の中心孔211は、互いに内径の異なるバネ収容部211A、圧力空間部211B及びノズル連通部211Cを有している。ピンスライド溝221aは、基端筐体部220の軸心に沿って延在する狭幅の開口である。バネ収容部211Aは、先端筐体部210の基端部において最も太径に形成した部分であり、上述したように保持部15の貫通孔15aと同一の内径を有するように構成してある。圧力空間部211Bは、バネ収容部211Aよりもわずかに細径に形成した部分であり、バネ収容部211Aとの間に段部221Dを構成している。ノズル連通部211Cは、先端筐体部210の先端部に形成したノズル装着部214に装着されるノズルNZの内径とほぼ等しい内径に形成した部分である。
【0030】
これら本体筐体200の中心孔211,221には、バネ受部材230、プランジャ240、すべりネジ部材250が収容してある。バネ受部材230は、バネ収容部211Aに嵌合可能となる外径を有するとともに、圧力空間部211Bよりもわずかに小さい内径の嵌合孔231を有した円環状部材であり、バネ収容部211Aの下端部に嵌合させてある。バネ受部材230の下端面と段部221Dとの間には、互いの間の水密性を確保するためのO−リング232が介在させてある。このバネ受部材230は、バネ収容部211Aに嵌合された基端筐体部220の先端面との間に介在させた押圧バネ233により、O−リング232を介して常時段部221Dに押圧された状態にある。プランジャ240は、バネ受部材230の嵌合孔231に嵌合する一様の外径を有した円柱状部材であり、外周面をバネ受部材230の嵌合孔231に摺接させた状態で本体筐体200の圧力空間部211Bに対して進退移動することが可能である。すべりネジ部材250は、外周面にネジ溝を有した細径の円柱状部材であり、自身の軸心回りに回転可能、かつ軸心方向に沿った移動が阻止された状態で、その上端部を介して基端筐体部220の中心孔221に支持させてある。このすべりネジ部材250には、外周部にスライドナット251が装着してあるとともに、基端筐体部220から突出した上端部にプランジャ用回転アクチュエータ40が連結してある。
【0031】
スライドナット251は、内周面に形成したネジ溝を介してすべりネジ部材250のネジ溝に螺合した環状部材である。スライドナット251の軸方向長さは、すべりネジ部材250に対して十分に小さく形成してある。このスライドナット251には、外周方向に向けて一対の規制ピン252が設けてあるとともに、プランジャ240の上端部との間に筒状体253及び連結プラグ254が設けてある。規制ピン252は、それぞれの先端部が、基端筐体部220のピンスライド溝221aに収容してあり、すべりネジ部材250が自身の軸心回りに回転した場合にスライドナット251の回転を規制する一方、ピンスライド溝221aに沿ってスライドナット251の軸心方向への移動を案内するものである。筒状体253及び連結プラグ254は、スライドナット251とプランジャ240との間を連結し、スライドナット251が軸心方向に移動した場合にプランジャ240を本体筐体200の圧力空間部211Bに対して進退移動させるものである。尚、図中の符号255は、バネ受部材230とスライドナット251との間に介在させた予圧バネである。この予圧バネ255は、バネ受部材230に対してスライドナット251を常時上方に押圧することにより、スライドナット251のネジ溝とすべりネジ部材250のネジ溝との間のバックラッシュを除去するものである。
【0032】
プランジャ用回転アクチュエータ40は、基端筐体部220に対してすべりネジ部材250をその軸心回りに回転させるためのもので、ブラケット41を介して基端筐体部220の上端部に取り付けてある。本実施の形態では、スライド用回転アクチュエータ30と同様、減速機42を備えたパルスモータ43をプランジャ用回転アクチュエータ40として適用し、かつ減速機42として不思議歯車機構を適用している。不思議歯車機構は、パルスモータ43の駆動軸(図示せず)に固着した駆動ギヤ(図示せず)をサンギヤとし、この駆動ギヤ(図示せず)に対してプラネタリギヤ(図示せず)を介して第1リングギヤ42aの内歯及び第2リングギヤ42bの内歯を歯合させたものである。このプランジャ用回転アクチュエータ40では、パルスモータ43が駆動すると、駆動軸(図示せず)の回転が駆動ギヤ(図示せず)、プラネタリギヤ(図示せず)、第2リングギヤ42b及び出力軸44を介してすべりネジ部材250に伝達され、基端筐体部220に対してすべりネジ部材250をその軸心回りに回転させることが可能である。
【0033】
さらに、ピペット装置のピペット本体20には、本体筐体200の先端部にエジェクタ50が設けてある。エジェクタ50は、先端筐体部210におけるノズル装着部214の外周に軸心方向に沿って移動可能に嵌合させたエジェクタ本体51と、先端筐体部210の外周部に軸心方向に沿って移動可能に配設したエジェクタロッド(操作端部)52とを備えたものである。エジェクタ本体51は、ノズル装着部214の先端部に嵌合する嵌合孔51aを有した平板状部材である。エジェクタロッド52は、細径の円柱状を成す部材であり、先端筐体部210の外周となる位置に互いの軸心が平行となり、かつ自身の軸心延長線がガイドブロック11の下方に配置される支持体11cの下面と交差する状態で先端筐体部210のガイド孔210aに移動可能に配設してある。エジェクタロッド52の下端部は、ガイド孔210aから外部に突出し、エジェクタ本体51に連結してある。エジェクタロッド52においてガイド孔210aよりも上方に位置する部位の端部と先端筐体部210との間には、エジェクタバネ53が介在させてある。エジェクタバネ53は、エジェクタロッド52の上端部に嵌着させたリング52aを介してエジェクタロッド52を常時上方に向けて押圧することにより、エジェクタ本体51をノズル装着部214の上端部に位置させるものである。
【0034】
上記のように構成したピペット装置は、図6に示すように、左右方向に沿って複数並列させた状態でユニット基台K1に取り付けられ、さらにユニット基台K1を介してメイン基台K2の水平方向に沿ったガイドレールGに移動可能に支持された状態で用いられる。各ピペット本体20における先端筐体部210の下端部には、ノズル装着部214においてエジェクタ本体51よりも下方となる部位にノズルNZが装着されている。
【0035】
この状態から、それぞれのピペット装置においてスライド用回転アクチュエータ30を駆動すると、図7−1及び図7−2に示すように、駆動ロッド13が適宜方向に回転することによってスライダ14がガイドブロック11に対して上下方向に移動し、スライダ14の保持部15を介して支持されたピペット本体20がガイドロッド12に沿って上下に移動されることになる。これにより、例えばノズルNZの先端部を吸引すべき液体に浸漬させることができ、あるいは吸引した液体を吐出するための容器に対して上下方向の位置決めを行うことが可能となる。ピペット本体20の上下移動は、スライド用回転アクチュエータ30及びガイド機構10を個別に設けてあるため、ピペット本体20ごとに独立して行うことが可能である。もちろんスライド用回転アクチュエータ30を同時に同方向に駆動すれば、すべてのピペット本体20を連動して上下方向に移動させることも可能である。
【0036】
一方、ピペット装置のプランジャ用回転アクチュエータ40を駆動すると、図2−1及び図2−2に示すように、すべりネジ部材250が適宜方向に回転することによってスライドナット251が本体筐体200に対して上下に移動し、本体筐体200の圧力空間部211Bに対してプランジャ240が進退移動する。圧力空間部211Bに対してプランジャ240が進退移動すると、圧力空間部211Bの内部圧力が増減し、この圧力空間部211Bの圧力変化がノズル連通部211Cを通じてノズルNZの内部に作用することになり、液体の吸引・吐出を行うことが可能となる。
【0037】
ここで、上述したピペット装置によれば、スライダ14に設けた保持部15を挟む状態で本体筐体200の先端筐体部210及び基端筐体部220を保持部15に取り付けるようにしているため、本体筐体200の外径寸法を小さく設定せずとも、保持部15の左右方向に沿った幅を小さく設定することが可能となり、例えば本体筐体200の外径に一致させることができる。従って、左右方向に沿って並列されたノズルNZの配設ピッチNPは、保持部15の寸法によって制限を受けることがなくなり、本体筐体200の外径寸法に応じて設定することが可能となる。これにより、このピペット装置を左右方向に沿って並列させて分析システムを構成した場合にも、その小型化を図ることができるようになる。
【0038】
しかも、フランジ212,223を介して本体筐体200の先端筐体部210及び基端筐体部220を保持部15に締結するようにしているため、取付ネジ213,224が本体筐体200の長手方向に沿ってその外周部に配置されることになる。従って、多数のピペット装置が並列した状態においても、ドライバー等の工具を用いて取付ネジ213,224の締結・弛緩作業を行うことができ、ガイド機構10に対するピペット本体20の着脱作業を容易に行うことが可能となるため、メインテナンス性の点で有利となる。また、先端筐体部210及び基端筐体部220に対してそれぞれ互いに離反する方向に突出したフランジ212,223を一対設けるようにしているため、ガイド機構10に対するピペット本体20の支持強度についても十分に確保することができる。さらに、保持部15に対して先端筐体部210及び基端筐体部220を取り付ける場合には、保持部15の貫通孔15aを介して先端筐体部210の中心孔211に基端筐体部220の挿入部222を挿入すれば、係合突起222aが中間係合溝15b及び下方係合溝211aに嵌合することにより、本体筐体200の軸心回りの取付角度を規定することができるため、組立作業の際に煩雑な位置決め操作を要しない。
【0039】
またさらに、図7−2に示すように、ガイド機構10に対してピペット本体20を最も上動させた状態においては、エジェクタロッド52の上端部がガイドブロック11の支持体11cに当接し、エジェクタバネ53のバネ力に抗してエジェクタロッド52が本体筐体200に対して下方に移動することになる。この結果、エジェクタ本体51が本体筐体200に対して下方に移動するため、スライド用回転アクチュエータ30を利用してノズル装着部214に装着されたノズルNZをエジェクトすることができるようになる。
【0040】
尚、上述した実施の形態では、液体を吸引・吐出するための機構、つまりバネ受部材230、プランジャ240、すべりネジ部材250や押圧バネ233を本体筐体200の内部に格納したピペット装置を例示しているが、必ずしもこれに限定されず、例えば本体筐体にはノズルと外部装置との間を接続するチューブのみを配設し、外部装置の駆動による圧力変化をノズルに伝達して液体を吸引・吐出させるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0041】
10 ガイド機構
11 ガイドブロック
11a 基準体
11b,11c 支持体
12 ガイドロッド
13 駆動ロッド
14 スライダ
14a ブッシュ
14b ナット部材
15 保持部
15a 貫通孔
15b 中間係合溝
20 ピペット本体
30 スライド用回転アクチュエータ
31 ブラケット
32 減速機
32a,32b リングギヤ
33 パルスモータ
34 出力軸
40 プランジャ用回転アクチュエータ
41 ブラケット
42 減速機
42a 第1リングギヤ
42b 第2リングギヤ
43 パルスモータ
44 出力軸
50 エジェクタ
51 エジェクタ本体
51a 嵌合孔
52 エジェクタロッド
52a リング
53 エジェクタバネ
200 本体筐体
210 先端筐体部
211 中心孔
211A バネ収容部
211B 圧力空間部
211C ノズル連通部
211a 下方係合溝
212,223 フランジ
213,224 取付ネジ
214 ノズル装着部
220 基端筐体部
221 中心孔
221D 段部
221a ピンスライド溝
222 挿入部
222a 係合突起
230 バネ受部材
231 嵌合孔
232 O−リング
233 押圧バネ
240 プランジャ
250 すべりネジ部材
251 スライドナット
252 規制ピン
253 筒状体
254 連結プラグ
255 予圧バネ
G ガイドレール
K1 ユニット基台
K2 メイン基台
NZ ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔を有した本体筐体の先端部にノズルを備え、このノズルを介して液体の吸引・吐出を行うピペット本体と、本体筐体を介してピペット本体を移動可能に支持するガイド機構とを備えたピペット装置において、
前記ガイド機構は、ガイドロッドに対してスライダを移動可能に配設したものであり、前記スライダには、板状を成し、前記ピペット本体に向けて突出するとともに突出端部に貫通孔を有した保持部が設けてあり、
前記本体筐体は、先端部にノズルが装着され、かつ中心孔を前記貫通孔に対応させた状態で基端部が保持部の一方の表面に取り付けられる先端筐体部と、中心孔を前記貫通孔に対応させた状態で保持部の他方の表面に取り付けられる基端筐体部とを有し、
前記先端筐体部及び前記基端筐体部は、それぞれ保持部の表面に対応する部位にフランジを有し、それぞれのフランジを介してネジを締結することによって保持部に取り付けたものである
ことを特徴とするピペット装置。
【請求項2】
本体筐体とガイド機構のスライダとの間には、互いに係合することにより、スライダに対する本体筐体の軸心回りの取付角度を規定する係合手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のピペット装置。
【請求項3】
本体筐体の先端筐体部は、開口端における中心孔の内径を保持部の貫通孔と同じ内径に形成し、本体筐体の基端筐体部は、少なくとも外径を保持部の貫通孔に嵌合する寸法に形成した挿入部を有したものであり、
前記係合手段は、保持部における貫通孔の内周面及び先端筐体部における中心孔の内周面と、基端筐体部のおける挿入部の外周面との間の互いに対応する部位に形成し、当該挿入部を保持部の貫通孔及び先端筐体部の中心孔に挿入した際に相互に嵌合することによってスライダに対する本体筐体の軸心回りの取付角度を規定する係合溝及び係合突起を有したことを特徴とする請求項2に記載のピペット装置。
【請求項4】
前記ガイド機構は、ガイドロッドの両端部を支持するガイドブロックを具備し、
前記先端筐体部は、ノズルを着脱可能に支持するものであり、かつ操作端部が押込操作された場合に本体筐体に対して移動することにより、作用端部を介してノズルを先端側に押圧することにより当該ノズルをエジェクトするエジェクタを備え、
前記エジェクタは、ガイドブロックに対して本体筐体が一方側に移動した場合に操作端部がガイドブロックに当接して押込操作される位置に配設したものであることを特徴とする請求項1に記載のピペット装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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