説明

ピペラジン類の製造方法

【課題】ピペラジン類を、温和な方法で得ることができる方法の提供。
【解決手段】一般式(1)


(式中、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるジエチレントリアミン類を、白金族元素担持ゼオライト触媒の存在下に、環化させ、ピペラジン類を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピペラジン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ピペラジン類は、エポキシ樹脂硬化剤、キレート剤、潤滑油添加剤、アスファルト添加剤、界面活性剤、医薬品中間体など、様々な工業的な用途のある有用な化合物である。ピペラジン類の製造方法として、ジエチレントリアミン類の環化による方法が非特許文献1に開示されているが、350℃の高温を要する反応である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of Catalysis,1993年,144巻,556ページ.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ジエチレントリアミン類の環化によるピペラジン類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、白金族元素担持ゼオライト触媒を用いることにより、350℃以下でジエチレントリアミン類を環化しピペラジン類を製造できることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、一般式(1)
【0007】
【化1】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるジエチレントリアミン類を、白金族元素担持ゼオライト触媒の存在下、環化させることを特徴とする、一般式(2)
【0008】
【化2】

(式中、Rは前記と同じ内容を示す。)で示されるピペラジン類の製造方法に関する。
【0009】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。はじめに、本発明のジエチレントリアミン類(1)およびピペラジン類(2)における置換基Rについて説明する。
【0010】
Rで表される炭素数1〜4のアルキル基は、直鎖、分岐または環状のいずれでもよく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、シクロプロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が例示できる。
【0011】
次にピペラジン類(2)の製造方法を説明する。
【0012】
本発明の製造方法は、白金族元素担持ゼオライト触媒の存在下に行うことが必須である。白金族元素としては収率の点で、ルテニウムが好ましい。白金族元素の担持量および白金族元素担持ゼオライト触媒の使用量に特に制限はない。
【0013】
白金族元素担持ゼオライト触媒のゼオライトとしては、ZSM−5、モルデナイト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、β型ゼオライト、ペンタシル型ゼオライト、シリカライト等が例示できる。
【0014】
白金族元素担持ゼオライト触媒は、既報の含浸法、イオン交換法、混練法、インシピエント・ウエットネス法等で調製することができる。
【0015】
本発明の反応は、水または有機溶媒中で実施することができる。用いることのできる有機溶媒としては、ペンタン、キシレン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒とジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2,2−テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒を例示することができる。さらにはこれらの混合溶媒等が例示できる。収率が良い点で、水が好ましい。溶媒の使用量に特に制限は無い。
【0016】
反応温度は、50〜350℃の温度から適宜選ばれた温度で反応を実施することができるが、収率が良い点で300℃以下で行うことが望ましい。反応時間に特に制限は無い。
【0017】
反応は、溶媒の沸点に応じて、密閉系、開放系のいずれで行っても良い。密閉系で行う場合、大気圧(0.1MPa)から5.0MPaの範囲から適宜選ばれた圧力で行うことができる。また、反応の際の雰囲気は、アルゴン、窒素等の不活性ガス、水素が好ましい。
【0018】
反応後の溶液からピペラジン類(2)を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶、蒸留または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、工業的に有用なピペラジン類を温和な方法で得ることができる。
【実施例】
【0020】
次に本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、用いたゼオライトの表記方法としてゼオライトの名称の前に含有する陽イオンを表記するものとする(例:ナトリウムを陽イオンとして含有するY型ゼオライトは、NaY型ゼオライト)。
【0021】
触媒製造例−1
HZSM−5(シリカアルミナ比51、2.0g)をヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物の1.64mM水溶液(120mL)に加え、24時間室温で撹拌した。撹拌後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を、空気中、550℃で4時間焼成し、Ru担持HZSM−5(1)を得た。
【0022】
触媒製造例−2
HZSM−5ゼオライト(シリカアルミナ比68、2.0g)をヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物の8.18mM水溶液(120mL)に加え、24時間室温で撹拌した。撹拌後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を、空気中、550℃で4時間焼成し、Ru担持HZSM−5(2)を得た。
【0023】
触媒製造例−3
Hベータ型ゼオライト(シリカアルミナ比27、1.0g)をヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物の8.13mM水溶液(60mL)に加え、24時間室温で撹拌した。撹拌後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を、空気中、550℃で4時間焼成し、Ru担持Hベータを得た。
【0024】
触媒製造例−4
シリカライト(2.0g)をヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物の12.3mM水溶液(80mL)に加え、24時間室温で撹拌した。撹拌後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を、空気中、550℃で4時間焼成し、Ru担持シリカライトを得た。
【0025】
触媒製造例−5
NaY型ゼオライト(シリカアルミナ比5.6、2.68g)をヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物の2.65mM水溶液(200mL)に加え、24時間室温で撹拌した。撹拌後、溶媒を減圧留去した。得られた固体を、空気中、550℃で4時間焼成し、Ru担持NaY(1)を得た。
【0026】
触媒製造例−6
NaY型ゼオライト(シリカアルミナ比5.6、2.68g)をヘキサアンミンルテニウム(III)塩化物の5.3mM水溶液(100mL)に加え、24時間室温で撹拌した。撹拌後、ろ過・洗浄し、得られた固体を、空気中、550℃で4時間焼成し、Ru担持NaY(2)を得た。
【0027】
実施例−1
オートクレーブに、触媒製造例1で得られたRu担持HZSM−5(1)(200mg)を入れ、水素雰囲気下200℃、1時間加熱した。室温まで冷却後、窒素気流下で、ジエチレントリアミン(3.0g、29mmol)、水(30mL)を加えた。容器内に窒素を導入し、初気圧を0.1MPaとした。メカニカルスターラーで充分攪拌しながら、250℃で18時間反応させた。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ピペラジンを収率25.3%で得た。
【0028】
実施例−2
Ru担持HZSM−5(1)を、触媒製造例−2で得られたRu担持HZSM−5(2)に替え、反応温度を230℃とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、ピペラジンを収率23.0%で得た。
【0029】
実施例−3
Ru担持HZSM−5(1)を、触媒製造例−3で得られたRu担持Hベータに替えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ピペラジンを収率23.3%で得た。
【0030】
実施例−4
Ru担持HZSM−5(1)を、触媒製造例−4で得られたRu担持シリカライトに替えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ピペラジンを収率10.6%で得た。
【0031】
実施例−5
Ru担持HZSM−5(1)を、触媒製造例−5で得られたRu担持NaY(1)に替えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、ピペラジンを収率22.5%で得た。
【0032】
実施例−6
Ru担持HZSM−5(1)を、触媒製造例−6で得られたRu担持NaY(2)に替え、反応時間を3時間とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、ピペラジンを収率4.6%で得た。
【0033】
実施例−7
オートクレーブに、触媒製造例−1で得られたRu担持HZSM−5(1)(200mg)を入れ、水素雰囲気下200℃、1時間加熱した。室温まで冷却後、窒素気流下で、ジエチレントリアミン(3.0g、29mmol)、水(30mL)を加えた。容器内に水素を導入し、初気圧を0.8MPaとした。メカニカルスターラーで充分攪拌しながら、250℃で18時間反応させた。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ピペラジンを収率20.1%で得た。
【0034】
実施例−8
Ru担持HZSM−5(1)を、触媒製造例−2で得られたRu担持HZSM−5(2)に替え、反応温度を230℃とした以外は、実施例7と同様の操作を行い、ピペラジンを収率22.5%で得た。
【0035】
実施例−9
Ru担持HZSM−5(1)を、触媒製造例−3で得られたRu担持Hベータに替え、反応時間を3時間とした以外は、実施例7と同様の操作を行い、ピペラジンを収率26.0%で得た。
【0036】
実施例−10
オートクレーブに、触媒製造例2で得られたRu担持HZSM−5(2)(200mg)を入れ、水素雰囲気下200℃、1時間加熱した。室温まで冷却後、窒素気流下で、ビス(2−アミノエチル)メチルアミン(3.0g、26mmol)、水(30mL)を加えた。容器内に窒素を導入し、初気圧を0.1MPaとした。メカニカルスターラーで充分で攪拌しながら、250℃で18時間反応させた。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−メチルピペラジンを収率42.4%で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるジエチレントリアミン類を、白金族元素担持ゼオライト触媒の存在下、環化させることを特徴とする、一般式(2)
【化2】

(式中、Rは前記と同じ内容を示す。)で示されるピペラジン類の製造方法。
【請求項2】
Rが水素原子またはメチル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
白金族元素がルテニウムである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
300℃以下で環化させることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−168537(P2011−168537A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33993(P2010−33993)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【出願人】(000173762)公益財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】