説明

ピペリジンアミン化合物およびその使用


【化1】


[式中、
1およびR2は、それぞれ独立して、水素、CN、CF3、OCF3、OCHF2、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、Ra、Rb、SRa、NRab、CH2NRab、ORc、またはCH2ORcから選択され、ここでRa、Rb、およびRcは、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C(O)Rd、C(O)NHRd、CO2dから選択されるか、またはRaおよびRbは一緒になって(CH2)jG(CH2)kまたはG(CH2)jG(ここでGは酸素であり、jは1、2、3または4であり、kは0、1または2である)であってもよく; そしてRdはそれぞれ独立して、C1-6アルキルから選択され;
3は、水素またはC1-4アルキルであり;
6は、水素、CN、C1-4アルキルまたはC1-4アルコキシであり;
7は、水素またはC1-4アルキルであり、そして
Arは、フェニルであるか、または1個もしくは2個の位置で、R4もしくはR5(ここでR4およびR5はそれぞれ独立して、ハロゲン、C1-4アルコキシまたはハロゲン化C1-4アルキルから選択される)から独立して選択される部分で置換されたフェニルである]
で表される化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩、治療におけるその使用、その医薬組成物およびそれを使用する治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロトニン、サブスタンスP(Substance P)またはニューロキニンA (Neurokinin A)が関係している疾患の治療、例えば、高血圧症、鬱病、全般性不安障害、恐怖症、心的外傷後ストレス症候群、回避的人格障害、早漏、摂食障害、肥満症、薬物依存症、群発性頭痛、偏頭痛、疼痛、アルツハイマー病、強迫障害、パニック障害、記憶障害、パーキンソン病、内分泌障害、血管痙攣、大脳性運動失調症、胃腸管障害、統合失調症の陰性症状、月経前症候群、線維性筋痛症候群、緊張性尿失禁、トゥーレット症候群、抜毛狂、窃盗癖、男性インポテンス、注意欠陥過活動障害、慢性発作性偏頭痛、および頭痛のような障害または病状の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳類のニューロキニン類は、末梢神経系および中枢神経系に見出されるペプチド性神経伝達物質である。その3種の主要なニューロキニンは、サブスタンスP(SP)、ニューロキニンA(NKA) およびニューロキニンB(NKB)である。少なくともNKAのN−末端拡張形態は知られている。これらの主要なニューロキニンに関して3種のレセプター型が知られている。これらニューロキニンのSP、NKAおよびNKBに対する相対的選択性に基づいて、それらのレセプターは、それぞれニューロキニン1(NK1)レセプター、ニューロキニン2(NK2)レセプターおよびニューロキニン3(NK3)レセプターとして分類される。末梢においてSPおよびNKAは、C−線維として知られている無髄神経末端の特徴を有するC−求心性感覚ニューロンに局在し、そしてこれらニューロンの選択的脱分極またはC線維の選択的刺激により放出される。C−線維は気道上皮に局在し、そしてタキキニン類が、喘息患者に観察される多くの症候群と明らかに平衡する顕著な効果を生ずることが知られている。哺乳類の気道中のタキキニン類の放出または導入の効果には、気管支収縮、微小血管の透過性の増加、血管拡張、粘液分泌の増加、およびマスト細胞活性化がある。異なる化学構造を有するNK1レセプター、NK2レセプターおよびNK3レセプターと相互作用するニューロキニンアンタゴニストは記載されている。特に、国際公開のWO 98/07722、WO 96/39383およびWO 98/25617、並びに地域公開のEP 428434、EP 474561、EP 515240およびEP 559538には種々の化学構造を有する製剤が開示されている。
【0003】
NK1活性はまた、鬱病および不安症にも関係している。遺伝子組み換えのNK1レセプターを有するマウスは、不安症関連の行動を減少し(Santarelli, L., et. al., Proc. Nat. Acad. Sci. (2001), 98, 1912参照)、そしてNK1アンタゴニストが鬱病の動物モデルで有効であることが報告されている(Papp, M., et. al., Behav. Brain Res. (2000), 115, 19参照)。
【0004】
セロトニン選択性再取り込み阻害剤(SSRIs)は、大鬱病性障害(MDD)の治療のために広範に用いられており、耐性が良く、投与が容易であると考えられている。しかし、SSRIは作用の開始が遅いし、性的機能障害のような望ましくない副作用を伴い、患者のおそらく30%では効果がない (M. J. Gitlin, MJ, J. Clin. Psych., 55, 406-413, 1994参照)。
【0005】
従って、NK1アンタゴニストおよびセロトニン再取り込み阻害剤として二重の作用を有する化合物は、新規な種類の抗鬱剤を提供する。実際に、NK1アンタゴニズムおよびセロトニン再取り込み阻害を組み合わせた化合物は記載されている(Ryckmans, T., et. al., Bioorg. Med. Chem. Lett. (2002), 12, 261参照)。
【発明の開示】
【0006】
本発明者等は、NK1アンタゴニスト活性およびSSRI活性の二重活性を有する新規なピペリジニルアミン誘導体を見出した。従って、本発明は該化合物、該化合物を含有する医薬組成物、並びに中枢神経系(CNS)およびその他の障害を治療するための該化合物の使用方法からなる。
【0007】
本発明化合物は、式I:
【化1】

[式中、
1およびR2は、それぞれ独立して、水素、CN、CF3、OCF3、OCHF2、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、Ra、Rb、SRa、NRab、CH2NRab、ORc、またはCH2ORcから選択され、ここでRa、Rb、およびRcは、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C(O)Rd、C(O)NHRd、CO2dから選択されるか、またはRaおよびRbは一緒になって(CH2)jG(CH2)kまたはG(CH2)jG(ここでGは酸素であり、jは1、2、3または4であり、kは0、1または2である)であってもよく;そしてRdはそれぞれ独立して、C1-6アルキルから選択され;
3は、水素またはC1-4アルキルであり;
6は、水素、CN、C1-4アルキルまたはC1-4アルコキシであり;
7は、水素またはC1-4アルキルであり、そして
Arは、フェニルであるか、または1個もしくは2個の位置で、R4もしくはR5 (ここでR4およびR5はそれぞれ独立して、ハロゲン、C1-4アルコキシまたはハロゲン化C1-4アルキルから選択される)から独立して選択される部分で置換されたフェニルである]
で表される化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩である。
【0008】
本発明の特に好ましい化合物は、式II:
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR7は、式Iについて定義したとおりである)
の化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩である。
【0009】
本発明のその他の化合物は、式IにおいてArが4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メトキシフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、または4−トリフルオロメチルフェニルから選択される化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩である。
【0010】
さらに別の本発明化合物は、式Iにおいて
1が水素、メトキシまたはエチルから選択され;
2が水素またはメトキシから選択され;
3が水素またはメチルから選択される、
化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩である。
【0011】
本発明の別の特徴は、生理学的に許容し得る陰イオンを与える無機酸または有機酸を用いて調製される本明細書に記載の化合物の製薬的に許容し得る塩である。
【0012】
本発明化合物の特に好ましい製薬的に許容し得る塩は、その無機酸または有機酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、スルファミン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、サリチル酸またはキニン酸から選択されるものである。
【0013】
本発明の別の特徴は、本発明化合物、その生体内加水分解性プレカーサまたはその製薬的に許容し得る塩および製薬的に許容し得る担体からなる医薬組成物である。
【0014】
本発明のさらに別の特徴は、SSRI活性と組み合わさったNK1レセプターのアンタゴニズムが有益である疾患状態の治療方法であり、それは本発明化合物、その生体内加水分解性プレカーサまたはその製薬的に許容し得る塩の有効量を温血動物に投与することからなる。
【0015】
本発明のさらに別の特徴は、NK1レセプターおよびSSRI活性のアンタゴニズムが有益である疾患状態に使用するための医薬の製造における本発明化合物、その生体内加水分解性プレカーサまたはその製薬的に許容し得る塩の使用である。
【0016】
本発明のさらに別の特徴は、高血圧症、ガン患者の鬱病、パーキンソン病患者の鬱病、心筋梗塞後鬱病、軽症の症候性鬱病、不妊女性の鬱病、小児性鬱病、大鬱病、単発性鬱病(single episode depression)、再発性鬱病、児童虐待性鬱病、分娩後鬱病、全般性不安障害、広場恐怖症、対人恐怖症、単純恐怖症(simple phobias)、心的外傷後ストレス症候群、回避的人格障害、早漏、拒食症、多食症、肥満症、アルコール中毒、コカイン中毒、ヘロイン中毒、フェノバルビタール中毒、ニコチン中毒、またはベンゾジアゼピン中毒;群発性頭痛、偏頭痛、疼痛、アルツハイマー病、強迫障害、パニック障害、痴呆症、健忘障害、加齢による認識衰退、パーキンソン病の痴呆症、神経安定剤によるパーキンソニズム、錐体外路性終末欠陥症候群、高プロラクチン血症、血管痙攣、脳血管痙攣、大脳性運動失調症、胃腸管障害、統合失調症の陰性症状、月経前症候群、線維筋症候群、緊張性尿失禁、トゥーレット症候群、抜毛狂、窃盗癖、男性インポテンス、注意欠陥過活動性障害、慢性発作性頭痛または哺乳類の血管疾患の関係する頭痛から選択され、ここでNK1レセプターおよびSSRI活性のアンタゴニズムが有益である障害または症状を治療する方法であって、その方法は、該障害または症状を治療するのに有効な本発明記載の化合物またはその製薬的に許容し得る塩の有効量を投与することからなる。
【0017】
本発明の特に好ましい特徴において、ここに記載の障害または症状の治療方法は、本発明化合物を製薬的に許容し得る担体と組み合わせて投与することからなる。
【0018】
式Iの化合物およびそれらの生体内加水分解性プレカーサまたはその製薬的に許容し得る塩は、本明細書に記載され、例示されている方法ないしそれに類似の方法、およびこの化学技術分野で知られている方法によって製造することができる。これらの方法の出発物質は、商業的に入手できない場合には、既知化合物の合成と同様または類似の技術を用いる化学技術から選択されるプレカーサによって製造してもよい。
【0019】
製薬的に許容し得る塩は、対応する酸から常套手段で製造することができる。非製薬的に許容し得る塩は、中間体として有用であることがあり、それらは中間体としての本発明の別の特徴である。
【0020】
光学活性体の製造方法 (例えば、ラセミ体の分割によるかまたは光学活性の出発物質からの合成による)はよく知られており、そして全ての光学活性体、エナンチオマーは本発明化合物である。
【0021】
以下に、生物学的試験方法、データおよび実施例により本発明を説明し、さらに記載する。
本発明化合物、その生体内加水分解性プレカーサまたはその製薬的に許容し得る塩(以下、一まとめにして“化合物”と称する)の有用性は、標準試験および臨床研究、例えば後記の刊行物に開示されたものによって証明することができる。
【0022】
生物学的検定:
試験A:SERT結合検定:
ヒト5-HTTレセプターを発現する安定にトランスフェクトされたHEK293細胞株の凍結膜調製物をレセプターバイオロジー(Receptor Biology) (PerkinElmer社)から購入した。凍結アリコートを迅速に解凍し、ホモジナイズし、次いで50mM TRIS-HCL, 120mM NaCl, 5mM KClを含有し、NaOHでpH7.4に調整した検定バッファー(AB)中に希釈した。最終の蛋白質濃度は40μg/mlであった。試験化合物は、NEN (PerkinElmer)から購入した [3H]-イミプラミン塩酸塩を放射性リガンドとして用いて競合検定で評価した。その原料の放射性リガンドをABで希釈して約2nMの最終濃度にした。[3H]-イミプラミン塩酸塩のKdは、2.7nMと測定された。上記の競合検定は、96-ウエル検定プレート−1個のプレート当たり2個の薬物−で実施した。各化合物の10mM原液からの連続希釈液(通常1μMから38pMの最終濃度まで)をDMSO中で調製した。全ての連続希釈液は20% DMSOを用いて調製した。検定中のDMSO含量は1%未満であった。各培養混合物を96-ウエルプレート(Costar社)中に4個ずつ調製した。ウエル1個当たりの最終検定容量は、10μlの化合物/非特異的(nonspecific)/対照(1% DMSO)、20μlの膜、20μlの [3H]-イミプラミン塩酸塩、および150μlのABであった。特異的結合は10μMのイミプラミンを使用することによって定義した。その結合反応は、バッファーおよび、試験化合物、非特異的または対照のいずれかを含有するウエルに放射性リガンドを添加した直後に膜を加えることによって開始させた。検定プレートをプレートシェーカー上に置き、次いで反応が平衡に達するまで30分間攪拌した。次に、これらのプレートを、パッカードフィルターメート(Packard Filtermate)196を使用して、6% PEI中に予備浸漬したBeckman GF/B フィルターでろ過した。各フィルターを0.2mlの氷冷洗浄バッファー(5mMトリスHCl, pH7.4.)で5回洗浄した。これらのフィルターを乾燥し、次いで35μlのMicroscint20 (Packard社製)を各ウエルに加えた。次いでこれらのプレートをPackard TopCount上で計数してウエル1個当たりのCPMを決定した。Ki値は、各試験化合物について、グラフィックかつ分析的なソフトウエアーパッケージのGraphPad Prismを用いて決定した。
【0023】
試験B:フルオ−4(Fluo-4)色素を用いたNK1 FLIPR検定:
FLIPR検定は、高処理量の全細胞検定で細胞蛍光を正確に測定するように設計された、モレキュラーデバイス社(Molecular Devices, Inc.)が市販している装置を用いて実施した(Schroeder et. al., J. Biomolecular Screening, 1(2), p 75-80, 1996参照)。
FLIPR 機器を用いて、NK1レセプターアゴニストのアセチル-[Arg6, Sar9, Met(O2)11]-サブスタンスP (ASMSP)に対するU373細胞の応答を遮断する効力について化合物を評価した。
U373細胞にフルオ-4色素(Molecular Probes社製)を45分間37℃で取り込ませ、等級分
けした濃度の各化合物に室温で15分間曝して、10nM〜12nMのASMSP (約EC80濃度)で攻撃した。アゴニスト添加後に各応答をそのピーク相対蛍光として測定した。pIC50は、各化合物について11−点濃度−応答曲線から計算した。
【0024】
試薬:
細胞培地:
Earleの塩およびl-グルタミンを有するイーグルのMEM(500mL) セルグロ(Cellgro)10-010-CV
非必須アミノ酸, 100×(5mL) セルグロ 25-025-CI
ピルビン酸ナトリウム, 100mM (5mL) セルグロ 25-000-CI
L-グルタミン, 200mM (5mL) セルグロ 25-005-CI
FBS (50mL) セルグロ 35-010-CV
【0025】
細胞収穫試薬:
DPBS, 1×(Ca++ & Mg++を含まない) セルグロ 21-031-CV
1×トリプシン−EDTA (0.5%トリプシン, 0.53%EDTA-4Na) セルグロ 25-052-CI
【0026】
細胞プレーティング培地:
ウルトラカルチャー(UltraCULTURE) BioWhittaker 12-725F
L-グルタミン, 200mM (5mL/500mL) セルグロ 25-005-CI
【0027】
作業バッファー(Working buffer):
10×ハンク(Hank)の平衡塩溶液(100mL/L) ギブコ(Gibco) 14065-056
HEPESバッファー 1M (15mL/L, [最終]15mM) セルグロ 25-060-CI
プロベネシド(Probenecid) (1Lについて0.71g を6mLの1M NaOHに溶解, [最終] 2.5mM)DDH20を加えて1Lにする, NaOHでpHを7.4に調整 シグマ(Sigma) P-8761
【0028】
色素溶液:
フルオ-4, AM色素、Molecular Probes F-14201。50μgの凍結乾燥色素を23μlのDMSOおよび23μLのPluronic F-127 (Molecular Probes P-3000)に溶解した。次いで46μLの溶解されたフルオ4色素を10mLの作業バッファー溶液に加えて5μMの作業色素濃度を得た。希釈色素のそれぞれ10mLは、25μL/ウエルで、384-ウエル-プレートの細胞に十分である。
【0029】
アゴニスト:
アセチル-[Arg6, Sar9, Met(O2)11]-サブスタンスP (ASMSP)
3.33×10-2 Mの原液。100mgを3.05mLのDMSO中に溶解し、アリコートで4℃に貯蔵した。
【0030】
その他:
DMSO (化合物の溶解およびチップ洗浄のため)
【0031】
細胞培養およびプレーティング操作:
U373細胞を前記の細胞培地(30mL/T-150フラスコ)中で増殖させ、融合したら以下のようにして収穫した。吸引により培地を除去し、Ca++ および Mg++を含まない12mLのDPBSで1回細胞を洗浄した。そのDPBSを吸引し、3mLのトリプシン−EDTAで置き換えた。それらの細胞およびトリプシン/EDTAを室温で約2分培養し、各細胞をフラスコから回収した。収穫反応混合物を、培地9mLの添加によりクエンチし、細胞を摩砕により再懸濁した。細胞を4日毎に1:4のトランスファー密度で通過させた。各実験について、細胞を計数し、400×gで5分間遠心分離にかけることによりペレット化し、次いで細胞プレーティング培地中で480,000細胞/mLの密度で再懸濁した。この細胞懸濁液25μLを、Labsystems Multidrop 384を使用して、黒壁(black-walled)の384-ウエルプレート(Falcon Microtest, 35 3962)の各ウエルに加えて1個のウエルあたり12,000個の細胞を得た。使用する前に、各プレートを37℃で一夜(最小15時間、最大23時間)培養した。
【0032】
化合物およびアゴニストの調製:
各化合物を10mM濃度でDMSO中に溶解し、これら溶液の120μLを、96-ウエルの丸底ポリプロピレン貯蔵プレート(Costar 3365)の各列の第1ウエルに移した。次に2個のこのようなプレート上の化合物をBiomek 2000を使用して、DMSO中で同時に連続希釈した。各希釈液の4μLを、深いウエルプレート(Beckman Coulter 267006)に移した。該プレートは各ウエル中に新たに調製された作業バッファー400μLを含有するようにあらかじめ調製した。この方法から得られた濃度は表1に示すとおりであった。検定期間11点の最終の化合物濃度は、半−対数増加分で、10μMと0.1nMとの間にあった。
【0033】
これらウエルの内容物を混合し、各希釈液の45μLを二重に、384-ウエルポリプロピレン化合物を担持しているプレート(Fisher 12-565-507)に移し、384-ウエルプレートが、両方の96-ウエルプレートからの化合物のそれぞれをそれらの濃度範囲にわたって2個ずつ含有させた。そのプレートのカラム23および24は、全く化合物を含有せず、対照として利用する。カラム23および24中のウエルA−Nは、アゴニストだけを取り込み、そしてそれ故に最大応答を表す。カラム23および24中のウエルO−Pは、バッファーだけを取り込み、アゴニストは全く含まず、そしてそれ故に最小応答を表す。
【0034】
ASMSPアゴニスト取り込みプレートは、ASMSPの原液を用意し、作業バッファー中で希釈して、3.3×10-8 Mの濃度を得ることによって調製した。この溶液の45μLを、バッファーだけを含有し、そして刺激されていない対照として利用するウエル、O23、O24、P23およびP24を除く、384-ウエルポリプロピレンアゴニスト取り込みプレート(Fisher 12-565-507)の全てのウエルに移した。
【0035】
色素取り込み細胞(Dye Loading cells) および添加化合物:
化合物の各384-ウエル検定プレートのために、前記の方法/試薬の部分で述べたようにして、希釈したフロ-4色素10mLを調製した。最初に、各384-ウエルの細胞プレートをCCSパッカード(Packard)プレート洗浄器上で、作業バッファーで1回洗浄した。各ウエル中のいずれもの残留する洗浄後バッファーを手で除去し、25μL/ウエルのフロ-4色素をLabsystems Multidrop 384を用いて加えた。その細胞プレートを37℃インキュベータに45分間戻し、その色素を細胞に浸透させた。色素取り込みの45分後に、細胞プレートを作業バッファーで2回洗浄し、30μL容量のバッファーを各ウエル中に得た。化合物希釈液の5μLを、PlateMateを使用して、化合物プレートから細胞プレートに移した。検定プレートを化合物の存在下で室温において15分間、暗中でインキュベートし、次いでFLIPR上に載せた。
【0036】
FLIPR中の記録応答:
化合物の前インキュベーション15分の後に、各プレートをFLIPR器具上に載せ、15μLのASMSPアゴニストを加え、そのアゴニストに対する細胞応答を90秒間記録した。その応答は、アゴニスト添加後にそのピーク相対蛍光として決定された。
【0037】
データ分析:
FLIPRにより形成されるスタットファイル(stat files)に含まれる結果を、エクセル(Excel)分析テンプレート中にペーストし、次いで異常値を除外し、IC50値を、XLfitを使用してそのテンプレート内において計算した。個々のIC50値をpIC50とともに報告した。化合物について得られた2個のIC50が3倍より多く相違している場合には、その化合物を1回
または2回より多く検定してその値を再決定した。
【0038】
結果:
本発明化合物のSERT検定で得られたKi値は、2nM未満から約180nMであった。本発明化合物のFLIP検定で得られたIC50値は、約70nM〜約2μMであった。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。それらの記載中、適用できる場合ないし特記しない限り、以下の用語、略記および条件を使用する。
aq., 水性; atm, 大気圧; BOC, 1,1-ジメチルエトキシカルボニル; DCM, ジクロロメタン; DMF, N,N-ジメチルホルムアミド; DMSO, ジメチルスルホキシド; EtOH, エタノール;
Et2O, ジエチルエーテル; EtOAc, 酢酸エチル; h, 時間; HPLC, 高圧液体クロマトグラフィー; HOBT, 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール; MeOH, メタノール; min, 分; MS, 質量スペクトル; NMR, 核磁気共鳴; psi, 平方インチ当たりのポンド; RT, 室温; sat., 飽和された; TEA, トリエチルアミン; TFA, トリフルオロ酢酸; THF, テトラヒドロフラン。
【0040】
温度は、特記しない限り、摂氏の度(℃)で記載されており、操作は室温または周囲温度(18-25℃)で実施した。
有機溶液は、無水硫酸ナトリウムまたは硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒の蒸発は回転蒸発器を用いて減圧(4.5-30mm Hg)下、60℃までの浴温度において実施した。
クロマトグラフィーは、特記しない限り、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィーを意味する。溶媒混合組成物は、容量%または容量比として記載されている。
記載されている場合、NMRデータは300MHzで測定した診断用主要プロトンについてのδ値で表示されている (内標準としてのテトラメチルシランに対する100万分率(ppm)で記載されている)。
融点は未修正である。
【0041】
質量スペクトル(MS)は、特記しない限り、大気圧化学イオン化(APCI)による自動化系を用いて得られた。主要の同位体成分に対応する質量、またはほぼ等しい吸光度(アイソトープ分裂)を有する多重質量の化合物に関する最低質量が報告されている。
最終化合物がクエン酸塩に変換されたことが注目される場合には、遊離塩基をメタノール、DCMまたはアセトニトリルに溶解し、メタノール中のクエン酸(1.0当量)と合一し、減圧下で濃縮し、次いで真空乾燥(25-60℃)した。その塩がろ過によりEt2Oから分離されたことが示されている場合には、該化合物のクエン酸塩をEt2O中で4-18時間攪拌し、ろ過により除去し、Et2Oで洗浄し、次いで真空乾燥(25-60℃)した。
【0042】
実施例1:1-N-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化3】

の表題化合物は、以下のようにしてクエン酸塩として製造された。
1-N-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン (0.100g, 0.42ミリモル)およびトリエチルアミン(0.114 mL, 0.82ミリモル)をDMF (5mL)中に含有する冷却溶液
(0℃)に、DMF (2mL)中に3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレン (0.100g, 0.34ミリモル)を含有する溶液を5分かけて加えた。その溶液を0℃で30分攪拌し、次いで一夜、室温に加温させた。その混合物を酢酸エチルと飽和NaHCO3との間に分配し、有機層を除去し、次いで水性層を酢酸エチル(2×)で抽出した。有機抽出物を、1)飽和NaHCO3、2)飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、そして濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(2〜10%MeOH-DCM w/0.5% aq. NH3)により精製して表題化合物を淡黄色固形物(0.07g, 51%収率)として得た。MS m/z 404.50(M+H)。そのクエン酸塩は標準操作により得られた。
上記の必要な1-N-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジンは以下のようにして製造した。
【0043】
a)1-N-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-シアノピペリジン
メクロルエタミン(mechlorethamine)塩酸塩(1.93g, 10ミリモル)および4-クロロフェニルアセトニトリル(1.52g, 10ミリモル)をDMF(20mL)に含有する溶液に、水素化ナトリウム(1.6g, 40ミリモル)を0℃で滴加した。得られた懸濁液を攪拌し、60℃で24時間加熱した。反応混合物を氷水でクエンチし、EtOAc (3×)で抽出した。有機抽出物を合一し、飽和NaCl(3×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜40% DCM-ETOAc)により精製して表題化合物を黄色油状物(2.17g, 92%収率)として得た。MS m/z 235.4 (M+H)。
【0044】
b)1-N-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン
1-N-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-シアノピペリジン(0.95g, 4.05ミリモル)を乾燥THF(15mL)に溶解した溶液に、LAH(THF中1M, 12.15mL, 12.15ミリモル)を加えた。その溶液を室温で2.5時間攪拌した。水(2.5mL)、次いで15% NaOH(2.5mL)および水(2.5mL)を加えることによりその反応混合物をクエンチした。次いで混合物をケイソウ土でろ過し、EtOAcで洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮して表題化合物を黄褐色油状物(0.85g, 87% 収率)として得た。MS m/z 239.5(M+H)。
前記の必要な3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレンは以下のようにして製造した。
【0045】
c) 3-シアノ-1-ヒドロキシメチルナフタレン
DMF(3.75mL, 50.8ミリモル)をメチレンクロリド(60mL)中に含有する冷却溶液(0℃)に、オキサリルクロリド(12.7mL, 145ミリモル)を滴加した。得られた懸濁液を0℃で1時間攪拌した。溶媒を真空下で除去して淡黄色固形物を得た。この固形物をアセトニトリル(50mL)およびTHF(100mL)中に再懸濁し、0℃に冷却した。この冷却した懸濁液に、3-シアノナフタレン-1-カルボン酸(7.5g, 38.1ミリモル)をTHF(150mL)中に含有する溶液を加えた。この反応混合物を0℃で1.5時間攪拌し、次いで-78℃に冷却した。この冷却溶液に、NaBH4(5.2g, 137ミリモル)をDMF(60mL)中に含有する溶液を滴加した。この反応混合物を-78℃で1時間攪拌し、放置して-20℃に加温させ、-20℃で2時間保持し、次いで放置して室温に加温させた。溶媒は真空下で除去した。
残留物を氷冷HCl(1N)水溶液でクエンチし、EtOAc(2×)で抽出した。有機抽出物を合一し、1)HCl(1N)、2)飽和NaCl(2×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜1% DCM-MeOH)により精製して表題化合物を黄色固形物(6.12g, 88%収率)として得た。MS m/zフラグメントのみ。
【0046】
d)3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレン
3-シアノ-1-ヒドロキシメチルナフタレン(5.85g, 31.97ミリモル)をアセトニトリル(100mL)中に含有する溶液に、窒素下で、トリメチルシリルポリホスフェート(15mL)を加えた。反応混合物を室温で15分攪拌した。この溶液にNaI(8.3g, 55.2ミリモル)を加えた。その懸濁液を室温で一夜、攪拌した。溶媒を真空下で除去した。残留物を飽和NaHCO3(600mL)中で懸濁し、酢酸エチル(2×350mL)で抽出した。酢酸エチル抽出物を合一し、それを1)飽和NaHCO3、2)飽和Na2S2O3、3)飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物を酢酸エチルからの晶出により精製して表題化合物を淡黄色固形物(6.59g, 70%収率)として得た。MS m/zフラグメントのみ。
【0047】
実施例2: 1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-メトキシナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化4】

の表題化合物は、1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン(0.089g, 0.40ミリモル)、トリエチルアミン(0.114mL, 0.82ミリモル)、3-シアノ-2-メトキシ-1-ヨードメチルナフタレン(110mg, 0.34ミリモル)、DMF(7mL)を用いる以外は、実施例1と同じ方法でクエン酸塩として製造し、表題化合物は淡黄色固形物(55mg, 39%収率)として得られた。MS m/z 418(M+H)。
上記の必要な1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジンは以下のようにして製造した。
【0048】
a)1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-シアノピペリジン
メクロルエタミン塩酸塩(1.923g, 9.99ミリモル)および4-フルオロフェニルアセトニトリル(1.35g, 9.99ミリモル)をDMF(30mL)中に含有する溶液に、水素化ナトリウム(1.6g, 40ミリモル)を0℃で徐々に加えた。得られた懸濁液を攪拌し、60℃で24時間加熱した。反応混合物を氷水でクエンチし、EtOAc(3×)で抽出した。有機抽出物を合一し、飽和NaCl(3×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(2〜5% MeOH-DCM)により精製して表題化合物を黄色油状物(1.788g, 82%収率)として得た。MS m/z 219.38(M+H)。
【0049】
b)1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン
1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-シアノピペリジン(1.788g, 8.20ミリモル)を乾燥THF(25mL)に溶解した溶液に、LAH(THF中1M, 25mL, 24.6ミリモル)を加えた。その溶液を室温で一夜、攪拌した。水(2.5mL)、次いで15% NaOH(2.5mL)および水(2.5mL)を加えることにより反応混合物をクエンチした。次いでその混合物をケイソウ土でろ過し、EtOAcで洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮して表題化合物を黄色油状物(1.619g, 89%収率)として得た。MS m/z 223.45 (M+H)。
前記の必要な3-シアノ-2-メトキシ-1-ヨードメチルナフタレンは以下のようにして製造した。
【0050】
c)3-シアノ-2-メトキシ-1-ヒドロキシメチルナフタレン
DMF(3.75mL, 50.8ミリモル)をメチレンクロリド(60mL)中に含有する冷却溶液(0℃)にオキサリルクロリド(12.7mL, 145ミリモル)を滴加した。得られた懸濁液を0℃で1時間攪拌した。溶媒を真空下で除去して淡黄色固形物を得た。この固形物をアセトニトリル(50mL)およびTHF(100mL)中に再懸濁し、0℃に冷却した。この懸濁液を冷却し、それに、3-シアノ-2-メトキシナフタレン-1-カルボン酸(9.8g, 38.1ミリモル)をTHF(150mL)に含有する溶液を加えた。反応混合物を0℃で1.5時間攪拌し、次いで-78℃に冷却した。この冷却溶液に、NaBH4(5.2g, 137ミリモル)をDMF(60mL)中に含有する溶液を滴加した。反応混合物を-78℃で1時間攪拌し、放置して-20℃に加温させ、-20℃で2時間保持し、次いで放置して室温に加温させた。溶媒を真空下で除去した。
残留物を氷冷HCl(1N)水溶液でクエンチし、EtOAc(2×)で抽出した。有機抽出物を合一
し、1)HCl(1N)、2)飽和NaCl(2×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜1% DCM-MeOH)により精製して表題化合物を黄色固形物(8.61g, 93%収率)として得た。MS m/zフラグメントのみ。
【0051】
d)3-シアノ-2-メトキシ-1-ヨードメチルナフタレン
3-シアノ-2-メトキシ-1-ヒドロキシメチルナフタレン(2.20g, 9.05ミリモル)をアセトニトリル(45mL)中に含有する溶液に、窒素下、トリメチルシリルポリホスフェート(6mL)を加えた。反応混合物を室温で15分攪拌した。この溶液にNaI(1.7g, 11.3ミリモル)を加えた。反応混合物を1.5時間攪拌した。溶媒を真空下で除去した。残留物を飽和NaHCO3(300mL)中に懸濁し、酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。合一した酢酸エチル抽出物を1)飽和NaHCO3、2)飽和Na2S2O3、3)飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(3:1 DCM-ヘキサン)により精製して表題化合物を黄色固形物(1.98g, 63%収率)として得た。MS m/z フラグメントのみ。
【0052】
実施例3: 1-N-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2,4-ジメトキシナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化5】

の表題化合物は、1-N-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン(0.089g, 0.41ミリモル)、トリエチルアミン(0.114mL, 0.82ミリモル)、3-シアノ-2,4-ジメトキシ-1-ヨードメチルナフタレン(120mg, 0.34ミリモル)、DMF(7mL)を用いる以外は、実施例1と同じ方法でクエン酸塩として製造した。表題化合物は淡黄色固形物(44mg, 23%収率)として得られた。MS m/z 460(M+H)。
上記の必要な1-N-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジンは以下のようにして製造した。
【0053】
a)1-N-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-シアノピペリジン
メクロルエタミン塩酸塩(1.93g, 10ミリモル)および4-メトキシフェニルアセトニトリル(1.48g, 10ミリモル)をDMF(20mL)中に含有する溶液に、水素化ナトリウム(1.6g, 40ミリモル)を0℃で滴加した。得られた懸濁液を攪拌し、60℃で24時間加熱した。反応混合物を氷水でクエンチし、EtOAc(3×)で抽出した。有機抽出物を合一し、飽和NaCl(3×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜40% DCM-ETOAc)により精製して表題化合物を黄色油状物(2.32g, 100%収率)として得た。MS m/z 231(M+H)。
【0054】
b)1-N-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン
1-N-メチル-4-(4-メトキシフェニル)-4-シアノピペリジン(0.93g, 4.05ミリモル)を乾燥THF(15mL)に溶解した溶液に、LAH(THF中1M, 12.15mL, 12.15ミリモル)を加えた。その溶液を室温で2.5時間攪拌した。水(2.5mL)、次いで15% NaOH(2.5mL)および水(2.5mL)を加えることにより反応混合物をクエンチした。この混合物をケイソウ土でろ過し、EtOAcで洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮して表題化合物を黄褐色油状物(0.88g, 93%収率)として得た。MS m/z235(M+H)。
前記の必要な3-シアノ-2,4-ジメトキシ-1-ヨードメチルナフタレンは以下のようにして製造した。
【0055】
c)3-シアノ-2,4-ジメトキシ-1-ヒドロキシメチルナフタレン
DMF(3.75mL, 50.8ミリモル)をメチレンクロリド(60mL)中に含有する冷却溶液(0℃)にオキサリルクロリド(12.7mL, 145ミリモル)を滴加した。得られた懸濁液を0℃で1時間攪拌した。溶媒を真空下で除去して淡黄色固形物を得た。その固形物をアセトニトリル(50mL)およびTHF(100mL)中に再懸濁した。冷却したこの懸濁液に、3-シアノ-2,4-ジメトキシナフタレン-1-カルボン酸(9.8g, 38.1ミリモル)をTHF(150mL)中に含有する溶液を加えた。反応混合物を0℃で1.5時間攪拌し、次いで-78℃に冷却した。この冷却した溶液に、NaBH4(5.2g, 137ミリモル)をDMF(60mL)中に含有する溶液を滴加した。反応混合物を-78℃で1時間攪拌し、放置して-20℃に加温させ、-20℃で2時間保持し、次いで放置して室温に加温させた。溶媒を真空下で除去した。
残留物を氷冷HCl(1N)水溶液でクエンチし、EtOAc(2×)で抽出した。有機抽出物を合一し、1)HCl(1N)、2)飽和NaCl(2×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をヘキサン(3×)で洗浄し、真空乾燥して表題化合物を白色固形物(9.26g, 100%収率)として得た。MS m/zフラグメントのみ。
【0056】
d)3-シアノ-2,4-ジメトキシ-1-ヨードメチルナフタレン
3-シアノ-2,4-ジメトキシ-1-ヒドロキシメチルナフタレン(2.20g, 9.05ミリモル)をアセトニトリル(45mL)中に含有する溶液に、窒素下、トリメチルシリルポリホスフェート(6mL)を加えた。反応混合物を室温で15分攪拌した。この溶液にNaI(1.7g, 11.3ミリモル)を加えた。反応混合物を1.5時間攪拌した。溶媒を真空下で除去した。残留物を飽和NaHCO3(300mL)中に懸濁し、酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。合一した酢酸エチル抽出物を1)飽和NaHCO3、2)飽和Na2S2O3、3)飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(3:1 DCM-ヘキサン)により精製して表題化合物を黄色固形物(1.98g, 63%収率)として得た。MS m/zフラグメントのみ。
【0057】
実施例4: 1-N-メチル-4-(3,4-ジクロロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-エチル-ナフタ-1-イル)-(2-N-メチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化6】

の表題化合物は、1-N-メチル-4-(3,4-ジクロロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン(0.093g, 0.34ミリモル)、トリエチルアミン(0.114mL, 0.82ミリモル)、3-シアノ-2-エチル-1-ヨードメチルナフタレン(109mg, 0.34ミリモル)、DMF(7mL)を用いる以外は、実施例1と同じ方法でクエン酸塩として製造した。表題化合物は淡黄色固形物(102mg, 65%収率)として得られた。MS m/z 466(M+H)。
上記の必要な1-N-メチル-4-(3,4-ジクロロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジンは以下のようにして製造した。
【0058】
a)1-N-メチル-4-(3,4-ジクロロフェニル)-4-シアノピペリジン
メクロルエタミン塩酸塩(7.18g, 37.3ミリモル)、3,4-ジクロロフェニルアセトニトリル(6.97g, 37.5ミリモル)、および乾燥DMF(100mL)を含有する溶液を冷却(氷浴)し、その溶液に水素化ナトリウム(鉱油中の60%分散液)(6g, 150ミリモル)を10分かけて滴下して加えた。得られた懸濁液を60℃で24時間加熱し、次いで氷水でクエンチし、EtOAc(3×)で抽出した。有機抽出物を合一し、水(2×)および飽和NaCl(1×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、
次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(シリカゲル/0〜2% MeOH-DCM)および短路
蒸留により精製して表題化合物を無色油状物(8.24g, 82%)として得、放置すると固化した。MS m/z 269(M+H)。
【0059】
b)1-N-メチル-4-(3,4-ジクロロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン
1-N-メチル-4-(3,4-ジクロロフェニル)-4-シアノピペリジン(5.2g, 19.3ミリモル)および乾燥THF(20mL)を含有する攪拌溶液に、BH3.THF(150mL, 150ミリモル)を加えた。その溶液を攪拌し、18時間還流加熱し、冷却(氷浴)し、MeOHおよび1N aq. HClで慎重にクエンチし、次いで真空下で濃縮した。残留物を8N aq. HClで処理し、その混合物を18時間還流加熱し、次いで冷却し、aq. NaOHおよびaq. NaHCO3を塩基性になるまで加えた。DCMで徹底的に抽出した後に、そのDCM抽出物を合一し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留油状物をクロマトグラフィー(シリカゲル/0〜5% MeOH-DCM w/NH4OH)および短路蒸留により精製して表題化合物を無色油状物(2.16g, 41%)として得た。MS m/z 273(M+H)。
前記の必要な3-シアノ-2-エチル-1-ヨードメチルナフタレンは以下のようにして製造した。
【0060】
c)3-シアノ-2-エチル-1-ヒドロキシメチルナフタレン
DMF(3.75mL, 50.8ミリモル)をメチレンクロリド(60mL)中に含有する冷却溶液(0℃)に、オキサリルクロリド(12.7mL, 145ミリモル)を滴加した。得られた懸濁液を0℃で1時間攪拌した。溶媒を真空下で除去して淡黄色固形物を得た。この固形物をアセトニトリル(50mL)およびTHF(100mL)中に再懸濁した。冷却したこの懸濁液に、3-シアノ-2-エチルナフタレン-1-カルボン酸(8.57g, 38.1ミリモル)をTHF(150mL)中に含有する溶液を加えた。反応混合物を0℃で1.5時間攪拌し、次いで-78℃に冷却した。この冷却溶液に、NaBH4(5.2g, 137ミリモル)をDMF(60mL)中に含有する溶液を滴加した。反応混合物を-78℃で1時間攪拌し、放置して-20℃に加温させ、-20℃で2時間保持し、次いで放置して室温に加温させた。溶媒を真空下で除去した。残留物を氷冷HCl(1N)水溶液でクエンチし、EtOAc(2×)で抽出した。有機抽出物を合一し、1)HCl(1N)、2)飽和NaCl(2×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(95:5 DCM-EtOAc)により精製して表題化合物を白色固形物(6.67g, 83%収率)として得た。MS m/z 194 (M+H-H2O)。
【0061】
d)3-シアノ-2-エチル-1-ヨードメチルナフタレン
3-シアノ-2-エチル-1-ヒドロキシメチルナフタレン(1.50g, 7.11ミリモル)をアセトニトリル(45mL)中に含有する溶液に、窒素下、トリメチルシリルポリホスフェート(6mL)を加えた。反応混合物を室温で15分攪拌した。この溶液にNaI(1.92g, 12.8ミリモル)を加えた。反応混合物を1.5時間攪拌した。溶媒を真空下で除去した。残留物を飽和NaHCO3(300mL)中に懸濁し、酢酸エチル(2×200mL)で抽出した。合一した酢酸エチル抽出物を1)飽和NAHCO3、2)飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(3:1 DCM-ヘキサン)により精製して表題化合物を黄色固形物(1.96g, 86%収率)として得た。MS m/z. 196(M+H-I)。
【0062】
実施例5〜19:
4-クロロフェニルアセトニトリルを適当に置換されたフェニルアセトニトリルに置き換え、そして3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレンを適当に置換された3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレンに置き換える以外は、実施例1〜4に記載のと同様の反応操作によって製造した。
実施例1〜23の実施例および中間体は表1に記載のとおりである。
【0063】
【表1】

【表2】

【0064】
1a, 2a. 実施例1に記載のようにして製造した。
1b.実施例1aに記載のようにして製造した。
1c. 実施例1bに記載のようにして製造した。
2b. ビス(2-クロロエチル)-N-BOCアミン(8.15g, 33.67ミリモル)、3,4-ジクロロフェニルアセトニトリル(5.05g, 27.17ミリモル)、およびDMSO(50mL)を含有する溶液をRTで攪拌し、固形炭酸セシウム(17.6g, 54.02ミリモル)を10分かけて加えた(小別けして)。20時間後、追加の炭酸セシウム(1.7g)を加え、混合物をさらに72時間攪拌した。混合物を水およびEtOAcの間に分配し、水性層を除去し、有機層を追加の水、0.1M aq. HCl (2×)、sat. aq. NaHCO3、およびブラインで逐次洗浄した。有機層を乾燥し、ろ過し、次いで濃縮し、残留物を摩砕して(3:1 ヘキサン/酢酸エチル)、表題化合物(5.26g, 54%)を灰色がかった白色固形物として得た。m.p. 142-145℃。MS m/z 255(M-BOC)。
2c. 1-N-BOC-4-(3,4-ジクロロフェニル)-4-シアノピペリジン(5.25g, 14.78ミリモル)、ラネーNi触媒(5gの50% aq. スラリー)、EtOH(175mL)、および水酸化アンモニウム(88mL)を含有する混合物を水素雰囲気下(50psi)に置き、18時間攪拌した(パール装置中で)。混
合物をろ過し(ケイソウ土で)、濃縮し、次いでクロマトグラフィー(0〜5% MeOH/DCM)により精製して表題化合物を灰色がかった白色固形物(4.53g, 85%)として得た。MS m/z 344(M-CH3)。
3. 実施例18の化合物から以下のようにして製造した。実施例18の化合物(81mg, 0.155ミリモル)をDCM(10mL)中に含有する溶液に、TFA(3mL)を3×1mLに分けて加えた。反応混合物を室温で30分攪拌した。溶媒を除去した。残留物を飽和NaHCO3中で懸濁し、酢酸エチル(2×100ml)で抽出した。合一した有機抽出物を1)飽和NaHCO3(2×35mL)、2)飽和NaCl(2×35mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、溶媒を除去して表題化合物を白色固形物(66mg, 100%収率)として得た。MS m/z. 425(M+H)。
【0065】
実施例24: 1-N-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-N-メチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化7】

の表題化合物を以下のようにしてクエン酸塩として製造した。1-N-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン(実施例1, 0.060g, 0.42ミリモル)に、ホルムアルデヒド(37%水溶液, 2.0mL, 26.7ミリモル)、次にギ酸(0.25mL, 6.5ミリモル)を加えた。この懸濁液を攪拌し、100℃で24時間加熱した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を真空下で除去した。残留物を酢酸エチルと飽和NaHCO3との間に分配し、有機層を除去し、水性層を酢酸エチル(2×)で抽出した。有機抽出物を1)飽和NaHCO3、2)飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をSFCクロマトグラフィー(20〜35% MeOH-CO2 w/0.5%(CH3)2NCH2CH3)により精製して表題化合物を淡橙色固形物(32mg, 48%収率)として得た。MS m/z 417.50(M+H)。クエン酸塩は標準操作で得られた。
【0066】
実施例25: 1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-メトキシナフタ-1-イル)-(2-N-エチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化8】

の表題化合物を以下のようにしてクエン酸塩として製造した。
1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-メトキシナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン(実施例2, 0.050g, 0.12ミリモル)をTHF(1.0mL)中に含有する溶液に、アセトアルデヒド(8.4μL, 0.30ミリモル)を加えた。この反応混合物を5.0分攪拌した。この溶液にMP-トリアセトキシボロヒドリド(0.15g, 0.3ミリモル)を加えた。この懸濁液を18時間攪拌した。樹脂状ビーズを傾写により除去し、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(4〜10% MeOH-DCM w/0.5% aq. NH3)により精製して表題化合物を淡黄褐色フィルム(0.046g, 86%収率)として得た。MS m/z 446(M+H)。クエン酸塩は標準操作により得られた。
【0067】
実施例26: 1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-N-エ
チル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化9】

の表題化合物を以下のようにしてクエン酸塩として製造した。
1-N-メチル-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン(実施例6, 0.050g, 0.129ミリモル)をTHF(1.0mL)中に含有する溶液に、アセトアルデヒド(8.4uL, 0.30ミリモル)を加えた。この反応混合物を5.0分攪拌した。この溶液にMP-トリアセトキシボロヒドリド(0.15g, 0.3ミリモル)を加えた。この懸濁液を18時間攪拌した。樹脂状ビーズを傾写により除去し、溶媒を真空下で除去した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(4〜10% MeOH-DCM w/0.5% aq. NH3)により精製して表題化合物を淡黄褐色フィルム(0.039g, 72%収率)として得た。MS m/z 416(M+H)。クエン酸塩は標準操作により得られた。
【0068】
実施例27〜33:
実施例24に記載のと同様の反応操作により、表2に記載の下記式の化合物が得られた。
【表3】

【0069】
実施例34: 4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化10】

の表題化合物を以下のようにしてクエン酸塩として製造した。
1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン(108mg, 0.228ミリモル)をDCM(2mL)中に溶解した溶液に、トリフルオロ酢酸(0.35mL, 4.56ミリモル)を加えた。この溶液を室温で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、EtOAcおよび飽和NaHCO3を加えた。次いで有機層を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮して表題生成物を発泡性淡黄色固形物(74mg, 87%収率)として得た。MS m/z 374.57(M+H)。クエン酸塩は標準操作により得られた。
上記の必要な1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジンは以下のようにして製造した。
【0070】
a) 4-(4-フルオロフェニル)-4-シアノピペリジン
ビス-2-クロロエチルアミン塩酸塩(4.00g, 22.4ミリモル)および4-フルオロフェニルアセトニトリル(3.03g, 22.4ミリモル)をDMF(100mL)中に含有する溶液に、水素化ナトリウ
ム(3.6g, 89.6ミリモル)を0℃で滴下して加えた。得られた懸濁液を攪拌し、60℃で24時間加熱した。この反応混合物を氷水でクエンチし、EtOAc(3×)で抽出した。有機抽出物を合一し、飽和NaCl(3×)で洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜10% MeOH-DCM)により精製して表題化合物を黄色油状物(3.63g)として得た。MS m/z 205.3(M+H)。
【0071】
b)1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-シアノピペリジン
4-(4-フルオロフェニル)-4-シアノピペリジン(3.63g, 17.8ミリモル)をTHF(90mL)中に溶解した溶液に、Boc-無水物(3.88g, 17.8ミリモル)次いでジイソプロピルエチルアミン(3.1mL, 17.8ミリモル)を滴加した。得られた溶液を室温で24時間攪拌した。この反応混合物を0.1N HClでクエンチし、EtOAc(3×)で抽出した。有機抽出物を合一し、乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜1% MeOH-DCM)により精製して表題化合物を黄色油状物(4.64g, 68%収率, 2工程)として得た。MS m/z 205.26(M+H-Boc)。
【0072】
c)1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン
パール(Parr)瓶中に懸濁したラネーNi(1.4g)およびEtOH(10mL)の懸濁液に、1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-シアノピペリジン(4.64g, 15.2ミリモル)をEtOH(20mL)中で加えた。この溶液を5分間窒素で泡立たせ、NH4OH(20mL, 30%)を加えた。パール瓶を50PSIのH2で室温において24時間振とうした。混合物をセライトでろ過し、ろ液を濃縮した。次いで残留物をDCMおよび水に溶解した。有機層を乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜5% MeOH-DCM)により精製して表題化合物を黄色油状物(3.23g, 69%収率)として得た。MS m/z 209.34(M+H-Boc)。
【0073】
d)1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(アミノメチル)ピペリジン(0.258g, 0.84ミリモル)およびトリエチルアミン(0.281mL, 2.02ミリモル)をDMF(4mL)中に含有する冷却溶液(0℃)に、3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレン(0.245g, 0.84ミリモル)をDMF(3mL)中に含有する溶液を5分かけて加えた。この溶液を0℃で35分攪拌し、次いで一夜放置して室温に加温させた。この混合物を酢酸エチルと飽和NaHCO3との間に分配し、有機層を除去し、水性層を酢酸エチル(2×)で抽出した。有機抽出物を飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜1% MeOH-DCM)により精製して表題化合物を淡黄色油状物(0.302g, 76%収率)として得た。MS m/z 374.54(M+H)。
【0074】
実施例35: 4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-エチルナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン(M696462)
下記構造
【化11】

の表題化合物は、3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレンを3-シアノ-2-エチル-1-ヨードメチルナフタレンに置き換える以外は実施例34と同じ方法でクエン酸塩として製造した。表題化合物は発泡性淡黄色固形物として得られた。MS m/z 402.59(M+H)。
【0075】
実施例36: 4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-メトキシナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化12】

の表題化合物は、3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレンを3-シアノ-2-メトキシ-1-ヨードメチルナフタレンに置き換える以外は実施例34と同じ方法でクエン酸塩として製造した。表題化合物は発泡性淡黄色固形物として得られた。MS m/z 404.57(M+H)。
【0076】
実施例37: 4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(2,4-ジメトキシ-3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化13】

の表題化合物は、3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレンを2,4-ジメトキシ-3-シアノ-1-ヨードメチルナフタレンに置き換える以外は実施例34と同じ方法でクエン酸塩として製造した。表題化合物は発泡性淡黄色固形物として得られた。MS m/z 434.57(M+H)。
【0077】
実施例38: 4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-N-メチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化14】

の表題化合物は以下のようにしてクエン酸塩として製造した。
1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-N-メチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン(68mg, 0.14ミリモル)をDCM(2mL)に溶解した溶液に、トリフルオロ酢酸(0.22mL, 2.8ミリモル)を加えた。この溶液を室温で2時間攪拌した。溶媒を蒸発させ、EtOAcおよび飽和NaHCO3を加えた。次いで有機層を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮して表題生成物を発泡性淡黄色固形物(55mg, 100%収率)として得た。MS m/z 388.56(M+H)。クエン酸塩は標準操作により得られた。
上記の必要な1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-N-メチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジンは以下のようにして製造した。
1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン(0.194g, 0.41ミリモル)をMeOH(10mL)に溶解した溶液に、ナトリウムメトキシド(116mg, 2.1ミリモル)を加えた。この溶液を70℃で1.5時間加熱し、パラホルムアルデヒド(38mg, 1.23ミリモル)を加えた。その混合物を70℃でさらに5時間加熱した。室温に冷却後、水素化ホウ素ナトリウム(31mg, 0.82ミリモル)を加えた。その混合物を室温で24時間攪拌した。EtOAcおよび飽和NaHCO3を加えた。次いで有機層を飽和NaClで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ過し、次いで濃縮した。残留物をクロマトグラフィー(0〜5% MeOH-DCM)により精製して表題化合物を無色油状物(68mg, 34%収率)として得た。MS m/z 488.58(M+H)。
【0078】
実施例39: 4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-メトキシナフタ-1-イル)-(2-N-メチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化15】

の表題化合物は、1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジンを1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-メトキシナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジンに置き換える以外は、実施例38と同じ方法でクエン酸塩として製造された。表題化合物は発泡性淡黄色固形物として得られた。MS m/z 418.57(M+H)。
【0079】
実施例40: 4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-エチルナフタ-1-イル)-(2-N-メチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン(M706931)
下記構造
【化16】

の表題化合物は、1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-
アザプロパ-1-イル))ピペリジンを1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノ-2-エチルナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジンに置き換える以外は、実施例38と同じ方法でクエン酸塩として製造された。表題化合物は発泡性淡黄色固形物として得られた。MS m/z 416.59(M+H)。
【0080】
実施例41: 4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(2,4-ジメトキシ-3-シアノナフタ-1-イル)-(2-N-メチル-2-アザプロパ-1-イル))ピペリジン
下記構造
【化17】

の表題化合物は、1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジンを1-N-Boc-4-(4-フルオロフェニル)-4-(3-(2,4-ジメトキシ-3-シアノナフタ-1-イル)-(2-アザプロパ-1-イル))ピペリジンに置き換える以外は、実施例38と同じ方法でクエン酸塩として製造された。表題化合物は発泡性淡黄色固形物として得られた。MS m/z 448.57(M+H)。
【0081】
実施例42:
製薬技術分野でよく知られた常套手段に従って、式Iの化合物Aのような化合物を含有する下記の代表的な医薬剤形を調製することができる。
錠剤 mg/錠剤
構造式Iの化合物 50.0
マンニトール, USP 223.75
クロスカルメロース(Croscarmellose)ナトリウム 60
トウモロコシデンプン 15
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC), USP 2.25
ステアリン酸マグネシウム 3.0
カプセル剤 mg/カプセル
構造式Iの化合物 10.0
マンニトール, USP 488.5
クロスカルメロースナトリウム 15
ステアリン酸マグネシウム 1.5
【0082】
上記医薬剤形は、それを必要とする患者および治療されている正確な疾患状態によって一定の頻度で投与される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
1およびR2は、それぞれ独立して、水素、CN、CF3、OCF3、COHF2、ハロゲン、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、Ra、Rb、SRa、NRab、CH2NRab、ORc、またはCH2ORcから選択され、ここでRa、Rb、およびRcは、それぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、C(O)Rd、C(O)NHRd、CO2dから選択されるか、またはRaおよびRbは一緒になって(CH2)jG(CH2)kまたはG(CH2)jG(ここでGは酸素であり、jは1、2、3または4であり、kは0、1または2である)であってもよく;そしてRdはそれぞれ独立して、C1-6アルキルから選択され;
3は、水素またはC1-4アルキルであり;
6は、水素、CN、C1-4アルキルまたはC1-4アルコキシであり;
7は、水素またはC1-4アルキルであり、そして
Arは、フェニルであるか、または1個もしくは2個の位置で、R4もしくはR5(ここでR4およびR5はそれぞれ独立して、ハロゲン、C1-4アルコキシまたはハロゲン化C1-4アルキルから選択される)から独立して選択される部分で置換されたフェニルである]
で表される化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩。
【請求項2】
式II:
【化2】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5およびR7は請求項1に定義されるとおりである)
で表される請求項1記載の化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩。
【請求項3】
Arが4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−メトキシフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、または4−トリフルオロメチルフェニルから選択される、請求項1記載の化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩。
【請求項4】
1が水素、メトキシまたはエチルから選択され;
2が水素またはメトキシから選択され;
3が水素またはメチルから選択される、
請求項1記載の化合物、その生体内加水分解性プレカーサおよびその製薬的に許容し得る塩。
【請求項5】
生理学的に許容し得る陰イオンを与える無機酸または有機酸を用いて調製される請求項1記載の化合物の製薬的に許容し得る塩。
【請求項6】
無機酸または有機酸が塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、スルファミン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、フマル酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、サリチル酸またはキニン酸から選択される請求項5記載の化合物の製薬的に許容し得る塩。
【請求項7】
請求項1記載の化合物、その生体内加水分解性プレカーサまたはその製薬的に許容し得る塩および製薬的に許容し得る担体を含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項1記載の化合物、その生体内加水分解性プレカーサまたはその製薬的に許容し得る塩の有効量を温血動物に投与することからなる、SSRI活性と組み合わせたNK1レセプターのアンタゴニズムが有益である疾患状態の治療方法。
【請求項9】
NK1レセプターおよびSSRI活性のアンタゴニズムが有益である疾患状態に使用するための医薬の製造における、請求項1記載の化合物、その生体内加水分解性プレカーサまたはその製薬的に許容し得る塩の使用。
【請求項10】
高血圧症、ガン患者の鬱病、パーキンソン病患者の鬱病、心筋梗塞後鬱病、軽症の症候性鬱病、不妊女性の鬱病、小児性鬱病、大鬱病、単発性鬱病、再発性鬱病、児童虐待性鬱病、分娩後鬱病、全般性不安障害、広場恐怖症、対人恐怖症、単純恐怖症、心的外傷後ストレス症候群、回避的人格障害、早漏、拒食症、多食症、肥満症、アルコール中毒、コカイン中毒、ヘロイン中毒、フェノバルビタール中毒、ニコチン中毒、またはベンゾジアゼピン中毒;群発性頭痛、偏頭痛、疼痛、アルツハイマー病、強迫障害、パニック障害、痴呆症、健忘障害、加齢による認識衰退、パーキンソン病の痴呆症、神経安定剤によるパーキンソニズム、錐体外路性終末欠陥症候群、高プロラクチン血症、血管痙攣、脳血管痙攣、大脳性運動失調症、胃腸管障害、統合失調症の陰性症状、月経前症候群、線維筋症候群、緊張性尿失禁、トゥーレット症候群、抜毛狂、窃盗癖、男性インポテンス、注意欠陥過活動性障害、慢性発作性頭痛または哺乳類の血管疾患の関係する頭痛から選択され、ここでNK1レセプターおよびSSRI活性のアンタゴニズムが有益である障害または症状を治療する方法であって、該障害または症状を治療するのに有効な請求項1記載の化合物またはその製薬的に許容し得る塩の有効量を投与することからなる上記治療方法。
【請求項11】
化合物を製薬的に許容し得る担体と組み合わせて投与する、請求項10記載の方法。

【公表番号】特表2006−512363(P2006−512363A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562205(P2004−562205)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/SE2003/002004
【国際公開番号】WO2004/056771
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】