説明

ピペリジン化合物、およびその中間体の製造方法

【課題】効率的にかつ工業規模で安価に、化合物(II)(特にその光学活性体)またはその塩を製造する方法、その方法に用いる有用な中間体を提供すること。
【解決手段】化合物(I)またはその塩を、置換基を有していてもよい環状2級アミンの存在下で環化することを特徴とする、化合物(II)またはその塩の製造方法。


(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬合成の中間体として有用なピペリジン化合物の製造方法、その中間体として有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
後掲の一般式(II)で表されるピペリジン化合物は、例えば、NK−1拮抗剤の合成中間体として有用である。
【0003】
上記ピペリジン化合物を合成する方法として、特許文献1に、高価な4−メトキシピリジンを出発原料とし、有機金属を用いる方法が記載されているが、当該方法は多段階を要する。また、特許文献2には、特許文献1で記載されている方法の他に、4−アミノブタン−2−オンエチレンアセタールを出発原料とする方法も記載されているが、当該方法は、4−アミノブタン−2−オンエチレンアセタール自身の合成に工程数を要する。また、これらの方法は、ラセミ体の合成法であるが、光学活性体を得る場合には、ラセミ体を光学分割等で分離する必要がある。光学活性体を直接合成する方法としては、非特許文献1に記載されている方法に従って合成することが可能と考えられるが、不斉補助基を当量用いる必要がある等の問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2005−154380号公報
【特許文献2】特表2005−524636号公報
【非特許文献1】「ジャーナルオブアメリカンケミカルソサエティ(Journal of American Chemical Society )」、1994年、第116巻、p.4719
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、効率的にかつ工業規模で安価に、一般式(II)で表される化合物(特にその光学活性体)またはその塩を製造する方法、その方法に用いる有用な新規中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、後述するように、一般式(I)で表される化合物(好ましくは、一般式(IV)で表される化合物)またはその塩を、置換基を有していてもよい環状2級アミン(好ましくは、その光学活性体、より好ましくは、酸性プロトンを有する置換基を有し、さらに置換基を有していてもよい光学活性な環状2級アミン)の存在下で反応させることにより、一般式(II)で表される化合物(好ましくは、その光学活性体)またはその塩が簡便に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 一般式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)
で表される化合物(以下、化合物(I)ともいう)またはその塩を、置換基を有していてもよい環状2級アミンの存在下で環化することを特徴とする、一般式(II):
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物(以下、化合物(II)ともいう)またはその塩の製造方法。
【0012】
[2] 一般式(I)で示される化合物が、一般式(IV):
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、A、A、A、AおよびAは、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物(以下、化合物(IV)ともいう)である、上記[1]記載の製造方法。
【0015】
[3] Aがメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である、上記[2]記載の製造方法。
[4] 置換基を有していてもよい環状2級アミンが光学活性である、上記[1]記載の製造方法。
[5] 置換基を有していてもよい環状2級アミンが、酸性プロトンを有する置換基を有し、さらに置換基を有していてもよい環状2級アミンである、上記[1]記載の製造方法。
【0016】
[6] 置換基を有していてもよい環状2級アミンが、式(III):
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、XおよびXは、独立してそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基を示す)
で表される化合物(以下、化合物(III)ともいう)である、上記[1]記載の製造方法。
【0019】
[7] 置換基を有していてもよい環状2級アミンが、式(IIIa):
【0020】
【化5】

【0021】
(式中、XおよびXは、独立してそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基を示す)
で表される化合物(以下、化合物(IIIa)ともいう)である、上記[1]記載の製造方法。
【0022】
[8] Ar−CHO(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)を4−アミノブタン−2−オンまたはその塩と反応させることを特徴とする、一般式(I):
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩の製造方法。
【0025】
[9] Ar−CHO(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)を4−アミノブタン−2−オンまたはその塩と反応させて、一般式(I):
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩を得る工程;および
一般式(I)で表される化合物またはその塩を、置換基を有していてもよい環状2級アミンの存在下で環化して、一般式(II):
【0028】
【化8】

【0029】
(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩を得る工程;
を包含することを特徴とする、一般式(II)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【0030】
[10] Ar−CHO(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)を4−アミノブタン−2−オンまたはその塩と反応させて、一般式(I):
【0031】
【化9】

【0032】
(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩を得る工程;および
一般式(I)で表される化合物またはその塩を、式(IIIa):
【0033】
【化10】

【0034】
(式中、XおよびXは、独立してそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基を示す)
で表される化合物の存在下で環化して、一般式(IIa):
【0035】
【化11】

【0036】
(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物(以下、化合物(IIa)ともいう)またはその塩を得る工程;
を包含することを特徴とする、一般式(IIa)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【0037】
[11] 一般式(I)で示される化合物が、一般式(IV):
【0038】
【化12】

【0039】
(式中、A、A、A、AおよびAは、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物である、上記[8]〜[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12] Aがメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である、上記[11]記載の製造方法。
【0040】
[13] 一般式(I):
【0041】
【化13】

【0042】
(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)
で表される化合物またはその塩。
【0043】
[14] 一般式(IV):
【0044】
【化14】

【0045】
(式中、A、A、A、AおよびAは、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物またはその塩。
[15] Aがメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である、上記[14]記載の化合物。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、化合物(II)またはその塩を、効率的にかつ工業規模で安価に製造することができる。また、置換基を有していてもよい環状2級アミンとして光学活性体を使用すると、光学分割等の手法を用いることなく、化合物(II)の光学活性体またはその塩を簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明について詳細に説明する。
Arで示される「置換基を有していてもよい芳香族基」における「芳香族基」としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル等の芳香族炭化水素基;ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ピロリル、フリル、チエニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル等の芳香族複素環基等が挙げられ、好ましくは、フェニルである。当該「芳香族基」が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルカノイルオキシ基等が挙げられる。
【0048】
ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、フッ素原子である。
【0049】
炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基であり、より好ましくは、メチルである。
【0050】
炭素数1〜8のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、n−ヘプチルオキシ、n−オクチルオキシ等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、より好ましくは、メトキシである。
【0051】
炭素数1〜8のアルカノイルオキシ基としては、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ等が挙げられ、好ましくは、炭素数1〜4のアルカノイルオキシ基であり、より好ましくは、アセチルオキシである。
【0052】
上記置換基としては、好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基等であり、特に好ましくは、フッ素原子、メチル等である。
【0053】
Arは、好ましくは、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基等で置換されていてもよいフェニル基であり、より好ましくは、フッ素原子、メチル等で置換されていてもよいフェニル基である。
【0054】
、A、A、AまたはAで示される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。中でも、フッ素原子が好ましい。
【0055】
、A、A、AまたはAで示される「炭素数1〜4のアルキル基」としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。中でも、メチルが好ましい。
【0056】
、A、A、AおよびAは、好ましくは、独立してそれぞれ、水素原子、フッ素原子またはメチルであり、より好ましくは、Aがメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子であるか、またはA、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子であり、特に好ましくは、Aがメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である。
【0057】
およびXで示される「保護されたヒドロキシル基」におけるヒドロキシル基の保護基としては、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、1−フェニルプロピル、1−フェニルブチル、2−メチル−1−フェニルプロピル、1−フェニルペンチル、2−メチル−1−フェニルブチル、3−メチル−1−フェニルブチル、ジフェニルメチル、1,1−ジフェニルエチル、トリフェニルメチル、ナフチルメチル、1−ナフチルエチル等のアラルキルエーテル系保護基;メチル、tert−ブチル、1−エトキシエチル、3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル、1−メトキシ−1−メチルエチル、メトキシメチル、2−メトキシエトキシメチル等の(置換)アルキルエーテル系保護基;トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、トリブチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル等のシリルエーテル系保護基;アセチル、プロパノイル、ブタノイル、イソブタノイル、ピバロイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、ベンゾイル、4−ニトロベンゾイル、4−メトキシベンゾイル、4−メチルベンゾイル、4−tert−ブチルベンゾイル、4−フルオロベンゾイル、4−クロロベンゾイル、4−ブロモベンゾイル、4−トリフルオロメチル、3−ニトロベンゾイル、3−メトキシベンゾイル、3−メチルベンゾイル、3−tert−ブチルベンゾイル、3−フルオロベンゾイル、3−クロロベンゾイル、3−ブロモベンゾイル、2−ニトロベンゾイル、2−メトキシベンゾイル、2−メチルベンゾイル、2−tert−ブチルベンゾイル、2−フルオロベンゾイル、2−クロロベンゾイル、2−ブロモベンゾイル、3,5−ジニトロベンゾイル、3,5−ジメトキシベンゾイル、3,5−ジメチルベンゾイル、3,5−ジ−tert−ブチルベンゾイル、3,5−ジフルオロベンゾイル、3,5−ジクロロベンゾイル、3,5−ジブロモベンゾイル、2,4−ジニトロベンゾイル、2,4−ジメトキシベンゾイル、3,5−ビス(トリフルオロメチル)、2,4−ジメチルベンゾイル、2,4−ジ−tert−ブチルベンゾイル、2,4−ジフルオロベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイル、2,4−ジブロモベンゾイル、2,5−ジニトロベンゾイル、2,5−ジメトキシベンゾイル、2,5−ジメチルベンゾイル、2,5−ジ−tert−ブチルベンゾイル、2,5−ジフルオロベンゾイル、2,5−ジクロロベンゾイル、2,5−ジブロモベンゾイル、3,4,5−トリフルオロベンゾイル、4−フェニルベンゾイル、2−フェニルベンゾイル、4−メトキシカルボニルベンゾイル、3−メトキシカルボニルベンゾイル、2−メトキシカルボニルベンゾイル等のエステル系保護基等が挙げられ、中でも、ベンゾイル、tert−ブチルジメチルシリル等が好ましく、tert−ブチルジメチルシリルがより好ましい。
【0058】
「置換基を有していてもよい環状2級アミン」の「環状2級アミン」とは、環構成原子としてNHを有する環状化合物であれば特に限定されないが、例えば、環構成原子として、NH以外にさらに窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択されるヘテロ原子を1または2個有していてもよい3〜8員の飽和の環状化合物(例、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン等)が挙げられ、中でも、ピロリジン、ピペリジンが好ましい。
【0059】
当該「環状2級アミン」は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、フェニル基、置換されたアルキル基(当該アルキル基は、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、また、その置換基としては、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基等)、アセチルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ハロゲン原子等が挙げられる)、ヒドロキシル基、保護されたヒドロキシル基、カルボキシル基、アルキルスルホニルアミノ基、パーフルオロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノカルボニルアミノ基、アルキルアミノチオカルボニルアミノ基、テトラゾイル基等が挙げられる。当該置換基の数は特に制限はないが、1〜3個が好ましく、2個以上の場合は、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0060】
「置換基を有していてもよい環状2級アミン」は、好ましくは、フェニル基、置換されたアルキル基、ヒドロキシル基、保護されたヒドロキシル基、カルボキシル基、アルキルスルホニルアミノ基、パーフルオロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノカルボニルアミノ基、アルキルアミノチオカルボニルアミノ基およびテトラゾイル基から選ばれる置換基で置換されていてもよい、ピロリジンまたはピペリジンであり、より好ましくは、カルボキシル基、アルキルスルホニルアミノ基、パーフルオロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノカルボニルアミノ基、アルキルアミノチオカルボニルアミノ基、テトラゾイル基等の酸性プロトンを有する置換基を有し、さらに上記置換基を有していてもよい、ピロリジンまたはピペリジンであり、さらに好ましくは、NHに隣接する炭素原子にカルボキシル基、アルキルスルホニルアミノ基、パーフルオロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノカルボニルアミノ基、アルキルアミノチオカルボニルアミノ基、テトラゾイル基等の酸性プロトンを有する置換基を有し、さらに上記置換基を有していてもよい、ピロリジンまたはピペリジンであり、さらに好ましくは、NHに隣接する炭素原子にカルボキシル基、アルキルスルホニルアミノ基、パーフルオロアルキルスルホニルアミノ基、アルキルアミノカルボニルアミノ基、アルキルアミノチオカルボニルアミノ基、テトラゾイル基等の酸性プロトンを有する置換基を有し、さらに上記置換基を有していてもよいピロリジンであり、さらにより好ましくは、化合物(III)、即ち、NHに隣接する炭素原子にカルボキシル基を有し、かつヒドロキシル基および/または保護されたヒドロキシル基を有していてもよいピロリジンであり、特に好ましくは、XおよびXが共に水素原子である化合物(III)(即ち、プロリン)であるか、またはXがtert−ブチルジメチルシリルオキシであり、かつXが水素原子である化合物(III)であり、最も好ましくは、プロリンである。
【0061】
化合物(I)、(II)または(IV)は、塩の形態としてもよい。塩としては、例えば、無機酸付加塩(例えば、塩酸付加塩、臭化水素酸付加塩、硝酸付加塩、硫酸付加塩、リン酸付加塩等)、有機酸付加塩(例えば、ギ酸付加塩、酢酸付加塩、シュウ酸付加塩、マロン酸付加塩、クエン酸付加塩、フマル酸付加塩、乳酸付加塩、リンゴ酸付加塩、コハク酸付加塩、酒石酸付加塩、トリフルオロ酢酸付加塩等)等の酸付加塩が挙げられる。
【0062】
本発明では、化合物(I)またはその塩を、触媒である置換基を有していてもよい環状2級アミン(以下、単に環状2級アミンともいう)の存在下で環化して、化合物(II)またはその塩を製造する。当該環化反応は、好ましくは、溶媒中で行われる。
【0063】
化合物(I)、環状2級アミンおよび溶媒の添加順序は、特に制限がないが、例えば、(1)まず、化合物(I)またはその塩を溶媒に分散または溶解させ、次いで環状2級アミンを添加する方法、(2)まず、環状2級アミンを溶媒に分散または溶解させ、次いで化合物(I)またはその塩を添加する方法、(3)化合物(I)またはその塩に環状2級アミンおよび溶媒を添加する方法、等が挙げられる。
【0064】
環状2級アミンの使用量は、化合物(I)またはその塩1モルに対して、通常0.005モル〜1モル、好ましくは0.05モル〜0.5モルである。使用量がこの範囲より少ないと、反応速度が十分得られず、この範囲より多いと使用量に見合った効果が得られない傾向がある。
【0065】
溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定はなく、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、エステル溶媒、水、塩素化炭化水素溶媒、非プロトン性極性溶媒、またはこれらの混合溶媒等が好適に使用できるが、非プロトン性極性溶媒が特に好ましい。脂肪族炭化水素溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、イソノナン、n−デカン、イソデカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、石油エーテル等が挙げられ;芳香族溶媒としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、モノフルオロベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン等が挙げられ;エーテル溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジn−ペンチルエーテル、ジn−ヘキシルエーテル、ジn−ヘプチルエーテル、ジn−オクチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシメタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル等が挙げられ;アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、イソヘキシルアルコール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、イソペプチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert−ブチルエーテル等が挙げられ;エステル溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等が挙げられ;塩素化炭化水素溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等が挙げられ;非プロトン性極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等が挙げられ、中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルスルホキシド等が好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ベンゾニトリルが特に好ましい。
【0066】
溶媒の使用量は、化合物(I)またはその塩1kgに対して、通常1L〜100L、好ましくは3L〜30Lである。溶媒量がこの範囲よりも少ないと攪拌性が悪くなる傾向があり、この範囲よりも多いと反応時間が長くなる傾向がある。
【0067】
反応温度は、通常−30℃〜80℃、好ましくは−10℃〜40℃、より好ましくは−5℃〜30℃である。反応時間は、反応温度、試薬の使用量等にもよるが、通常1〜48時間である。
【0068】
反応圧力は、通常常圧であるが、反応速度を速めるために、例えば、0.1〜5Mpa程度の圧力をかけてもよい。
【0069】
化合物(II)の単離は、反応液を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は、化合物(II)を再結晶、抽出精製、蒸留、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法により精製することができる。また、化合物(II)を、例えば、適当な酸(例えば、塩酸)を用いて所望の酸付加塩としてもよい。
【0070】
なお、化合物(II)またはその塩の光学活性体を得るためには、環状2級アミンが光学活性体であるのがよい。当該光学活性体は、好ましくは、化合物(III)の光学活性体、特に化合物(IIIa)であり、中でも、L−プロリン、4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−L−プロリンが好ましく、L−プロリンが特に好ましい。
【0071】
ここで、化合物(III)の光学活性体として、化合物(IIIa)を使用すれば、化合物(IIa)またはその塩が得られ、逆に、式(IIIb):
【0072】
【化15】

【0073】
(式中、XおよびXは上記と同義を示す)
で表される化合物(以下、化合物(IIIb)ともいう)を使用すれば、一般式(IIb):
【0074】
【化16】

【0075】
(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物(以下、化合物(IIb)ともいう)またはその塩が得られる。
【0076】
原料として使用した化合物(I)またはその塩は、好ましくは、化合物(IV)またはその塩であり、より好ましくは、Aがメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である化合物(IV)またはその塩、あるいはA、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である化合物(IV)またはその塩であり、特に好ましくは、Aがメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である化合物(IV)またはその塩である。
【0077】
また、化合物(I)(化合物(IV)を含む)またはその塩は新規な化合物であり、例えば、Ar−CHO(式中、Arは上記と同義を示す。)をTetrahedron Letters 45, 8505 (2004)に記載の方法により製造した4−アミノブタン−2−オンまたはその塩(例えば、塩酸塩)と反応させることにより製造することができる。当該反応は、好ましくは、溶媒中で行われる。
【0078】
Ar−CHO、4−アミノブタン−2−オンまたはその塩および溶媒の添加順序は、特に制限がないが、例えば、(1)まず、Ar−CHOを溶媒に分散または溶解させ、次いで4−アミノブタン−2−オンまたはその塩を添加する方法、(2)まず、4−アミノブタン−2−オンまたはその塩を溶媒に分散または溶解させ、次いでAr−CHOを添加する方法、(3)Ar−CHOに4−アミノブタン−2−オンまたはその塩および溶媒を添加する方法、等が挙げられる。
【0079】
4−アミノブタン−2−オンまたはその塩の使用量は、Ar−CHO1モルに対して、通常1モル〜4モル、好ましくは1.2モル〜2.4モルである。使用量がこの範囲より少ないと、反応速度が十分得られず、この範囲より多いと使用量に見合った効果が得られない傾向がある。
【0080】
溶媒としては、反応を阻害しないものであれば特に限定はなく、例えば、エーテル溶媒、水溶媒、またはこれらの混合溶媒等が好適に使用できるが、エーテル溶媒が特に好ましい。エーテル溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジn−ペンチルエーテル、ジn−ヘキシルエーテル、ジn−ヘプチルエーテル、ジn−オクチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、シクロペンチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシメタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル等が挙げられ;水溶媒としては、水、食塩水、硫酸ナトリウム水溶液、硫酸マグネシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液等が挙げられる。中でも、食塩水、MTBEと食塩水の混合溶媒が特に好ましい。
【0081】
溶媒の使用量は、Ar−CHO1kgに対して、通常1L〜200L、好ましくは10L〜100Lである。溶媒量がこの範囲よりも少ないと攪拌性が悪くなる傾向があり、この範囲よりも多いと反応時間が長くなる傾向がある。
【0082】
反応温度は、通常−20℃〜80℃、好ましくは−10℃〜40℃、より好ましくは5℃〜35℃である。反応時間は、反応温度、試薬の使用量等にもよるが、通常0.5〜12時間である。
【0083】
化合物(I)の単離は、反応液を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は、化合物(I)を再結晶、抽出精製、蒸留、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー法により精製することができるが、特に精製を加えずそのまま、例えば、抽出溶液をそのまま、あるいは溶媒留去後の残渣をそのまま、次工程に付すことができる。また、化合物(I)を、例えば、適当な酸(例えば、塩酸)を用いて所望の酸付加塩としてもよい。
【実施例】
【0084】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0085】
実施例1 4−(4−フルオロベンジリデンアミノ)ブタン−2−オンの合成
Tetrahedron Letters 45, 8505 (2004)の方法に従って合成した4−アミノブタン−2−オン塩酸塩(1.24g,10mmol)に、飽和食塩水(10ml)、MTBE(45ml)及び4−フルオロベンズアルデヒド(0.62g,5.0mmol)を順次室温で加え、この溶液に1.0M水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10−12程度にし、室温で8時間攪拌した。反応液の有機層を分離後、水層をMTBE(50ml)で2回抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水(50ml)洗浄後、無水炭酸カリウムで乾燥し、室温付近で減圧濃縮することにより、表題化合物(0.74g,77%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δppm: 8.29 (s, 1H), 7.69 (dd, J=5Hz, 8Hz, 2H), 7.08 (t, J=8Hz, 2H), 3.84 (t, J=7Hz, 2H), 2.83 (t, J=7Hz, 2H), 2.2 (s, 3H).
【0086】
実施例2 4−(4−フルオロ−2−メチルベンジリデンアミノ)ブタン−2−オンの合成
Tetrahedron Letters 45, 8505 (2004)の方法に従って合成した4−アミノブタン−2−オン塩酸塩(18.5g,150mmol)に、飽和食塩水(300ml)及び4−フルオロ−2−メチルベンズアルデヒド(10.4g,75mmol)を順次室温で加え、この溶液に1.0M水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを12程度にし、室温で1時間攪拌した。反応液にMTBE(200ml)を加えて攪拌し、有機層を分離後、水層をMTBE(200ml)で2回抽出し、有機層を合わせ、飽和食塩水(200ml)で洗浄後、無水炭酸カリウムで乾燥し、室温付近で減圧濃縮することにより、表題化合物(14.1g,91%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δppm: 8.57 (s, 1H), 7.80 (t, J=6Hz, 1H), 6.85-6.92 (m, 2H), 3.85 (t, J=7Hz, 2H), 2.84 (t, J=7Hz, 2H), 2.48 (s, 3H), 2.19 (s, 3H).
【0087】
実施例3 (R)−2−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−4−オンの合成
4−(4−フルオロベンジリデンアミノ)ブタン−2−オン(96.6mg,0.5mmol)に、アセトニトリル(3.8g)及びL−プロリン(11.5mg,0.1mmol)を加え、25℃で28時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(5ml)を加え、酢酸エチル(30ml)で3回抽出した。有機層を合わせ、10%塩酸(30ml)で3回抽出した。抽出した水層を酢酸エチル(25ml)で2回洗浄し、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でpH7−8に中和後、酢酸エチル(30ml)で3回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮することにより、表題化合物(50mg,52%)を得た。得られた化合物の光学純度は64%eeであった。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δppm: 7.35 (dd, J=6Hz, 8Hz, 2H), 7.04 (t, 8Hz, 2H), 3.91 (dd, J=4Hz, 10Hz, 1H), 3.47 (ddd, J=2Hz, 7Hz, 12Hz, 1H), 3.02 (dt, J=3Hz, 12Hz, 1H), 2.40-2.62 (m, 4H).
【0088】
実施例4 (R)−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン−4−オンの合成
4−(4−フルオロ−2−メチルベンジリデンアミノ)ブタン−2−オン(103.7mg,0.5mmol)に、アセトニトリル(5.0g)及びL−プロリン(11.5mg,0.1mmol)を加え、25℃で44時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液(5ml)を加え、酢酸エチル(30ml)で3回抽出した。有機層を合わせ、10%塩酸(30ml)で3回抽出した。抽出した水層を酢酸エチル(25ml)で2回洗浄し、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でpH7−8に中和後、酢酸エチル(30ml)で3回抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮することにより、表題化合物(80mg,77%)を得た。得られた化合物の光学純度は55%eeであった。
1H-NMR (CDCl3, 400MHz) δppm: 7.52 (dd, J=6Hz, 9Hz, 1H), 6.91 (dt, J=2Hz, 9Hz, 1H), 6.85 (dd, J=2Hz, 9Hz, 1H), 4.10 (dd, J=4Hz, 10Hz, 1H), 3.49 (ddd, J=2Hz, 7Hz, 12Hz, 1H), 3.03 (dt, J=3Hz, 12Hz, 1H), 2.41-2.63 (m, 4H), 2.33 (s, 3H).
【0089】
実施例5 (R)−2−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−4−オンの合成
反応溶媒としてアセトニトリルの代わりにDMFを用い、反応時間を20時間とした以外は、実施例3と同様に行い表題化合物を得た。収率は41%で光学純度は47%eeであった。
【0090】
実施例6 (R)−2−(4−フルオロフェニル)ピペリジン−4−オンの合成
触媒としてL−プロリンの代わりに4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−L−プロリンを用い、反応を0℃で24時間行った以外は、実施例3と同様に行い表題化合物を得た。収率は52%で光学純度は61%eeであった。
【0091】
実施例7 (R)−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン−4−オンの合成
反応溶媒としてアセトニトリルの代わりにベンゾニトリルを用い、反応時間を4日とした以外は、実施例4と同様に行い表題化合物を得た。収率は68%で光学純度は56%eeであった。
【0092】
実施例8 (R)−2−(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ピペリジン−4−オンの合成
触媒としてL−プロリンの代わりに4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)−L−プロリンを用い、反応を0℃で38時間行った以外は、実施例3と同様に行い表題化合物を得た。収率は96%で光学純度は50%eeであった。
【0093】
LC条件
ダイセルキラルセル OD-H 4.6mm x25cm
イソプロパノール/ヘキサン=1/9(Vol)
0.6ml/min,
UV220nm
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、化合物(II)を、高価な試薬を用いることなく、効率的にかつ工業規模で安価に製造することができる。また、環状2級アミンとして光学活性体を使用すると、光学分割等の手法を用いることなく化合物(II)の光学活性体を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)
で表される化合物またはその塩を、置換基を有していてもよい環状2級アミンの存在下で環化することを特徴とする、一般式(II):
【化2】


(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項2】
一般式(I)で示される化合物が、一般式(IV):
【化3】


(式中、A、A、A、AおよびAは、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
がメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
置換基を有していてもよい環状2級アミンが光学活性である、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
置換基を有していてもよい環状2級アミンが、酸性プロトンを有する置換基を有し、さらに置換基を有していてもよい環状2級アミンである、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
置換基を有していてもよい環状2級アミンが、式(III):
【化4】


(式中、XおよびXは、独立してそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基を示す)
で表される化合物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
置換基を有していてもよい環状2級アミンが、式(IIIa):
【化5】


(式中、XおよびXは、独立してそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基を示す)
で表される化合物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
Ar−CHO(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)を4−アミノブタン−2−オンまたはその塩と反応させることを特徴とする、一般式(I):
【化6】


(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項9】
Ar−CHO(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)を4−アミノブタン−2−オンまたはその塩と反応させて、一般式(I):
【化7】


(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩を得る工程;および
一般式(I)で表される化合物またはその塩を、置換基を有していてもよい環状2級アミンの存在下で環化して、一般式(II):
【化8】


(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩を得る工程;
を包含することを特徴とする、一般式(II)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項10】
Ar−CHO(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)を4−アミノブタン−2−オンまたはその塩と反応させて、一般式(I):
【化9】


(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩を得る工程;および
一般式(I)で表される化合物またはその塩を、式(IIIa):
【化10】


(式中、XおよびXは、独立してそれぞれ、水素原子、ヒドロキシル基または保護されたヒドロキシル基を示す)
で表される化合物の存在下で環化して、一般式(IIa):
【化11】


(式中、Arは上記と同義を示す)
で表される化合物またはその塩を得る工程;
を包含することを特徴とする、一般式(IIa)で表される化合物またはその塩の製造方法。
【請求項11】
一般式(I)で示される化合物が、一般式(IV):
【化12】


(式中、A、A、A、AおよびAは、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物である、請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
がメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である、請求項11記載の製造方法。
【請求項13】
一般式(I):
【化13】


(式中、Arは置換基を有していてもよい芳香族基を示す)
で表される化合物またはその塩。
【請求項14】
一般式(IV):
【化14】


(式中、A、A、A、AおよびAは、独立してそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
で表される化合物またはその塩。
【請求項15】
がメチルであり、A、AおよびAが水素原子であり、かつAがフッ素原子である、請求項14記載の化合物。

【公開番号】特開2008−169160(P2008−169160A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4987(P2007−4987)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】