説明

ピペリジン誘導体

式Iの化合物はAb(1−42)の産生を選択的に阻害し、従って、アルツハイマー病およびA(b)の脳内沈着に関連する他の状態の治療に効用を有している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体の治療処置に使用するための化合物に関する。より特定的には本発明は、アルツハイマー病のようなβ−アミロイドペプチドの脳内沈着に関連する疾患を治療するため、または、このような疾患に関連する認知症を予防もしくは発症遅延するために有用な化合物を提供する。
【0002】
アルツハイマー病(AD)は最も一般的な認知症の形態である。その診断方法は、American Psychiatric Association(DSM−IV)によって刊行されたDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4th ed.に記載されている。アルツハイマー病は、記憶力および全般的認識機能の進行性低下を臨床的特徴とし、患者の脳皮質および脳連合野に細胞外タンパク質性プラークが沈着することを病理学的特徴とする神経変性障害である。これらのプラークは主としてβ−アミロイドペプチド(Aβ)の原線維凝集物を含む。Aβは、酵素β−セクレターゼおよびγ−セクレターゼが関与する別々の細胞内タンパク質分解イベントを介してアミロイド前駆体タンパク質(APP)から形成される。γ−セクレターゼによって媒介されるタンパク質分解部位が多様性を有する結果としてAβ(1−38)、Aβ(1−40)およびAβ(1−42)のような様々な鎖長のAβが形成される。脳内にはAβ(4−42)のようなN−末端欠失形態も見出されるが、この原因はおそらくβ−セクレターゼによって媒介されるタンパク質分解部位の多様性であろう。便宜上、この文中に使用した“Aβ(1−40)”および“Aβ(1−42)”のような表現はこれらのN−末端欠失変異形を含む。Aβは細胞外媒体に分泌された後、ADの主要神経毒物質であると広く考えられている最初は可溶性の凝集物を形成し(参照:Gongら,PNAS,100(2003),10417−22)、これが最終的にADの病理学的特徴である不溶性沈着物および高密度の神経炎性斑となる。
【0003】
Aβの脳内沈着に関連する他の認知症状態は、脳アミロイド血管症、オランダ型アミロイド症を伴う遺伝性脳出血(HCHWA−D)、多発梗塞性認知症、拳闘家認知症、ダウン症候群を含む。
【0004】
プラーク形成プロセスへの様々な介入がADの治療処置として提案されてきた(参照:たとえばHardy and Selkoe,Science,297(2002),353−6)。提案されたこのような治療方法の1つは、たとえばβ−またはγ−セクレターゼの阻害によってAβの産生を妨害するかまたは減衰させる方法である。また、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3(GSK−3)の阻害、特にGSK−3αの阻害がAβの産生を妨害できることが報告された(参照:Phielら,Nature,423(2003),435−9))。報告された他の治療方法は、Aβの凝集を妨害する化合物の投与、および、Aβに選択的に結合する抗体の投与を含む。
【0005】
しかしながら最近の報告は(Pearson and Peers,J.Physiol.,575.1(2006),5−10)、AβがADにおけるその役割とは別に重要な生理作用を行うことを示唆しており、これは、Aβ産生の妨害が望ましくない副作用に導くかもしれないことを意味する。さらに、γ−セクレターゼはAPP以外のいくつかの異なる基質(たとえば切痕)に作用することが知られており、従ってその阻害もまた望まれない副作用につながるであろう。従って、Aβの産生を完全には抑止せずまたγ−セクレターゼの作用を阻害しないADの治療方法が関心を集めている。
【0006】
提案されたこのような治療方法の1つは、Aβ(1−42)の産生を選択的に減衰させるようなγ−セクレターゼ作用の変調を含む。この変調によって、自己凝集およびプラーク形成の傾向が弱められ、従って脳からいっそう排泄され易くおよび/または神経毒性が弱められたと考えられるAβの短鎖アイソフォームが優先的に分泌される。ある種の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)およびそれらの類似体を含む化合物がこのような効果を示す(参照:WO01/78721およびUS2002/0128319およびWeggenら,Nature,414(2001)212−16;Moriharaら,J.Neurochem.,83(2002),1009−12;およびTakahashiら,J.Biol.Chem.,278(2003),18644−70)。PPARαおよび/またはPPARδの活性を変調する化合物もAβ(1−42)を減少させる効果を有すると報告された(WO02/100836)。一酸化窒素を放出できるNSAID誘導体は動物モデルにおいて改善された抗神経炎症作用を示すことおよび/またはAβの脳内沈着を減少させることが報告された(WO02/092072;Jantzenら,J.Neuroscience,22(2002),226−54)。US2002/0015941は、容量性カルシウム流入活性を増進する物質はAβ(1−42)を減少させることを教示している。
【0007】
Aβ(1−42)産生を選択的に減衰させる別のクラスの化合物がWO2005/054193、WO2005/013985、WO2006/008558、WO2005/108362およびWO2006/043064に開示されている。
【0008】
WO2004/110350はAβレベルを変調するための適当な様々な多環化合物を開示しているがこの文中に記載の化合物は開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0128319号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0015941号明細書
【特許文献3】国際公開第01/78721号
【特許文献4】国際公開第02/100836号
【特許文献5】国際公開第02/092072号
【特許文献6】国際公開第2005/054193号
【特許文献7】国際公開第2005/013985号
【特許文献8】国際公開第2006/008558号
【特許文献9】国際公開第2005/108362号
【特許文献10】国際公開第2006/043064号
【特許文献11】国際公開第2004/110350号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4th ed.,American Psychiatric Association(DSM−IV)
【非特許文献2】Gongら,PNAS,100(2003),10417−22
【非特許文献3】Hardy and Selkoe,Science,297(2002),353−6
【非特許文献4】Phielら,Nature,423(2003),435−9
【非特許文献5】Pearson and Peers,J.Physiol.,575.1(2006),5−10
【非特許文献6】Weggenら,Nature,414(2001)212−16
【非特許文献7】Moriharaら,J.Neurochem.,83(2002),1009−12
【非特許文献8】Takahashiら,J.Biol.Chem.,278(2003),18644−70
【非特許文献9】Jantzenら,J.Neuroscience,22(2002),226−54
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明によれば、式I:
【0012】
【化1】

の化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物が提供される。式中の、
およびRは独立に、H、F、C1−4アルキルまたはフェニルを表すが、但しRとRとが同時にフェニルではないという条件が付帯しており、
Zは
(a)式:
【0013】
【化2】

のスピロ連結部分{ここに、mおよびnはm+nが3または4となるような0から4の整数である}、
(b)部分CH−NR{ここに、RおよびRは、独立にHもしくはC1−6アルキルを表すか、または、それらが付着した窒素原子と共にC1−4アルキル、ハロゲン、CF、ORおよびCOから選択された0から3個の置換基を有している環原子数5または6の非芳香族N−ヘテロシクリル基を完成するか、または、該N−ヘテロシクリル基がC1−4アルキル、ハロゲン、CF、ORおよびCOから選択された0から3個の置換基を有しているベンゼン環に融合しており、RはHまたはC1−4アルキルを表す}、および、
(c)部分CH−Het{ここに、Hetは、ハロゲン、C1−4アルキル、CFおよびフェニルから選択された置換基を場合により有している5員環のヘテロアリール基を表す}
から選択され、
WはNまたはCHを表し、
Vは、S、CR=CR、CR=NまたはN=CRを表すが、但しVがN=CRのときWはCHを表すという条件が付帯しており、
およびRは、独立にHまたは(CH−Xを表し、ここにmは0または1であり、Xはハロゲン、5−または6員環のヘテロアリール、CN、CF、R、OR、N(R、SO、COまたはCON(Rを表し、各Rが独立にH、フェニル、C1−4アルキルもしくはヒドロキシC1−4アルキルを表すか、または、RとRとが一緒に5−または6員環の炭素環式または複素環式の融合環を完成しており、
Arは、フェニル、または、
(a)C1−6アルキル、
(b)C3−6シクロアルキル、
(d)C3−6シクロアルキルC1−6アルキル、
(e)C2−6アルケニル、
(f)ハロゲン、CFおよびC1−6アルキルから選択された2個以下の置換基を場合により有している環原子数10以下の単環式または二環式アリール基、
(g)OR
(h)CO
(i)N(R
(j)SR、および、
(k)CF
から選択された2から4個の置換基を有している5−または6員環のヘテロアリール環を表し、ここに、Rは、おのおのがC1−6アルキルを表すか、または、同じ窒素に付着した2個のR基がハロゲン、CF、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選択された0から2個の置換基を有しているN−ヘテロシクリル基を完成しているか、
あるいは、Arによって表される環が環原子数10以下の単環式または二環式の炭素環式または複素環式環系に融合している。
【0014】
1つの特定実施態様において、RおよびRは独立にH、C1−4アルキルまたはフェニルを表すが、但しRおよびRの双方がフェニルではないという条件が付帯する。HetはC1−4アルキル、CFおよびフェニルから選択された置換基を場合により有している5員環のヘテロアリール基を表し、Xはハロゲン、CN、CF、R、OR、N(R、SO、COまたはCON(Rを表し、Rのおのおのは独立にH、フェニルまたはC1−4アルキルを表し、他のすべての可変要素は上記の定義通りである。
【0015】
式I中に1つの可変要素が2回以上存在するとき、個々の存在において該可変要素が表す具体的意味は他の存在において表される具体的意味から独立している。
【0016】
この文中に使用した“C1−xアルキル”という表現は、xが2以上の整数であり、構成炭素原子数が1からxの範囲である直鎖状および分枝状のアルキル基を表す。具体的なアルキル基はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルである。“C2−6アルケニル”、“ヒドロキシC1−6アルキル”、“ヘテロアリールC1−6アルキル”、“C2−6アルキニル”および“C1−6アルコキシ”のような派生表現も同様に解釈されるべきである。
【0017】
“C3−6シクロアルキル”という表現は、3から6個の環炭素原子を含有している環状非芳香族炭化水素基を表す。実例はシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテニル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む。
【0018】
“複素環式”という用語は、少なくとも1つの環原子がN、OおよびSから選択された単環式または二環式の環系を表す。異なる指示がないならば、この用語は芳香族系を含む飽和系および不飽和系の双方を含む。異なる指示がないならば、複素環基は環炭素または環窒素を介して結合し得る。“ヘテロアリール”は芳香族である複素環基を表す。
【0019】
この文中に使用した“ハロゲン”という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含み、異なる指示がないならば、そのうちでもフッ素および塩素が好ましい。
【0020】
医薬に使用するための式Iの化合物は医薬的に許容される塩の形態であろう。しかしながら他の塩も式Iの化合物または医薬的に許容されるそれらの塩の製造に有用であろう。本発明の化合物の医薬的に許容される適当な塩は、たとえば、本発明の化合物の溶液を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸のような医薬的に許容される酸の溶液に混合することによって形成され得る酸付加塩を含む。あるいは、医薬的に許容される塩は、カルボン酸基を適当な塩基で中和することによって形成し得る。このように形成された医薬的に許容される塩の例は、ナトリウム塩またはカリウム塩のようなアルカリ金属塩、アンモニウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、ならびに、アミン塩(ピリジニウム塩を含む)および第四級アンモニウム塩のような適当な有機塩基と共に形成された塩を含む。
【0021】
式Iに包含される光学異性体および幾何異性体の双方のすべての立体異性形態は単独でまたは何らかの割合の混合物として本発明の範囲内に包含されると理解されたい。
【0022】
式Iにおいて、RおよびRは独立にH、F、C1−4アルキルまたはフェニルを表すが、双方がフェニルを表すことはない。極めて好適には、RおよびRが独立にH、Fまたはメチルを表す。たとえば、RおよびRの双方がHでもよい。あるいは、RおよびRの双方がメチルでもよく、または、RおよびRの一方がHで他方がメチルでもよく、または、RおよびRの一方がHで他方がFでもよい。
【0023】
第一の実施態様において、式I中のZは式:
【0024】
【化3】

[式中、mおよびnはm+nが3または4になるような0から4の整数である]のスピロ連結部分を表す。m+nが3のとき、Zはスピロ連結ピロリジン環を表し、m+nが4のとき、Zはスピロ連結ピペリジン環を表す。1つの下位実施態様においてm=n=2である。代替的な下位実施態様においてmは0でnは3であり、また、別の下位実施態様においてmは1でnは2である。
【0025】
第二の実施態様において、式I中のZは部分CH−NRを表し、ここに、RおよびRは、独立にHもしくはC1−6アルキルを表すか、または、それらが付着した窒素原子と共にC1−4アルキル、ハロゲン、CF、ORおよびCOから選択された0から3個の置換基を有している環原子数5または6の非芳香族N−ヘテロシクリル基を完成しているか、または、該N−ヘテロシクリル基がC1−4アルキル、ハロゲン、CF、ORおよびCOから選択された0から3個の置換基を有しているベンゼン環に融合しており、RはHまたはC1−4アルキルを表す。極めて好適には、RおよびRは場合により上述のように置換されたかまたはベンゾ融合した環原子数5または6のN−ヘテロシクリル基を完成している。該ヘテロシクリル基は飽和でも不飽和でもよいが芳香族ではなく、適当な環の例は、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロピリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、テトラヒドロキノリンおよびテトラヒドロイソキノリン、特にピペリジンおよびそのベンゾ融合誘導体を含む。好ましい置換基は、C1−4アルコキシ(たとえばメトキシ)およびC1−4アルコキシカルボニル(たとえばメトキシカルボニルおよびエトキシカルボニル)を含む。NRによって表される基の具体例は、4−(エトキシカルボニル)ピペリジン−1−イルおよび6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イルを含む。
【0026】
第三の実施態様において、式I中のZは部分CH−Hetを表し、ここに、Hetはハロゲン(たとえば臭素)、C1−4アルキル、CFおよびフェニルから選択された置換基を場合により有している5員環のヘテロアリール基を表す。該ヘテロアリール基は好ましくは少なくとも1個の環窒素、極めて好ましくは2から4個の環窒素を含む。該ヘテロアリール基は環炭素または環窒素を介して分子の残りの部分に付着し得るが、但し窒素を介した結合が環の芳香性の保存に合致するという条件が付帯する。特定実施態様においてヘテロアリール環は窒素を介して結合している。適当なヘテロアリール環の例は、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾールおよびチアジアゾールを含む。Hetによって表される基の具体例は、1H−イミダゾール−1−イル、1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル、1H−テトラゾール−1−イル、2H−テトラゾール−2−イル、4−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル、5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル、4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル、2−メチル−1H−イミダゾール−1−イルおよび4−ブロモ−1H−イミダゾール−1−イルを含む。
【0027】
WはNまたはCHを表し、VはS、CR=CR、CR=NまたはN=CRを表すが、但しVがN=CRを表すとき、WはCHを表すという条件が付帯する。従ってWおよびVは、チアゾール、1,3,4−チアジアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジンおよびトリアジンから選択された環を完成し得る。1つの実施態様において、WはNであり、VはS、CR=CRおよびCR=Nから選択され、従ってWとVとによって完成される環はそれぞれ1,3,4−チアジアゾール、ピリミジンまたはトリアジンである。代替的実施態様において、WはCHであり、VはN=CRを表し、WとVとによって完成される環はピリダジンである。特定実施態様において、WはNであり、VはCR=CRを表す。
【0028】
1つの実施態様において、RおよびRは独立にHまたは(CH−Xを表し、ここにmは0または1であり、Xはハロゲン、5−または6員環のヘテロアリール、CN、CF、R、OR、N(R、SO、COまたはCON(Rを表し、Rはおのおの独立にH、フェニル、C1−4アルキルまたはヒドロキシC1−4アルキルを表す。m=1のとき、Xは極めて好適にはORまたはSOたとえばOHまたはSOMeを表す。Xがヘテロアリール基を表すとき、該ヘテロアリール基は極めて好適にはオキサジアゾール、ピラゾールまたはイミダゾールのような5員環である。Rおよび/またはRによって表される基の具体例はH、F、Cl、Br、CN、CF、メチル、フェニル、メトキシ、エトキシ、CONH、CONMe、NH、COH、COMe、SOMe、ヒドロキシメチルおよびCHSOMeを含む。Rおよび/またはRによって表される基のまた別の具体例は2−ヒドロキシ−2−プロピル、1−ヒドロキシエチルおよび1,3,4−オキサジアゾール−2−イルを含む。
【0029】
代替的実施態様において、VがCR=CRを表すとき、RとRとが一緒に5−または6員環の炭素環式または複素環式の融合環を完成し得る。適当な融合環の例はシクロペンタン、フェニル、チオピランおよびピリジンを含む。
【0030】
Arはフェニルまたは2から4個の上記に定義の置換基を有するかもしくは上記に定義の別の環系に融合した5−または6員環のヘテロアリール環を表す。このような融合環系が存在するとき、Arは好ましくはフェニルを表す。Arによって表されるヘテロアリール環は極めて好適にはピリジン、ピラゾール、イミダゾールまたはトリアゾールのような窒素含有環である。特定実施態様において、Arは置換フェニルまたはピラゾール−5−イルを表す。
【0031】
Arが置換フェニルを表すとき、Arは好ましくは2または3個の置換基を有している。Arが5−または6員環のヘテロアリールを表すとき、Arは好ましくは2個の置換基を有している。Arの具体的意味にかかわりなく、好ましくは置換基の少なくとも1つがC1−6アルキルであり、また好ましくはC1−6アルキル以外の置換基は1個しかない。1つの実施態様において、Arは分子の残りの部分へのArの付着点に隣接の環位置にC1−6アルキル置換基を有している。Arが有している置換基の具体例は、
メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルのようなC1−6アルキル、
OR{ここにRはC1−6アルキル、特にC1−4アルキル、たとえばメトキシおよびエトキシを表す}、
CO{ここにRはC1−6アルキル、特にC1−4アルキル、たとえばCOMeを表す}、
N(R{ここにRはC1−6アルキル、特にC1−4アルキル、たとえばジメチルアミノを表す}、
N(R{ここに2つのR基はハロゲン、CF、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選択された0から2個の置換基を有しているN−ヘテロシクリル基、たとえばピラゾール−1−イル、モルホリン−4−イルおよびアゼチジン−1−イルを完成する}、
CF、および、
ハロゲン、CFおよびC1−6アルキルから選択された2個以下の置換基を場合によっては有している環原子数10以下の単環式または二環式アリール基、たとえばフェニル、2−メチルフェニル、4−フルオロフェニル、3,4−ジフルオロフェニル、3,5−ジフルオロフェニルおよびベンズオキサゾール−2−イル
を含む。
【0032】
代替的実施態様において、Arは環原子数10以下の単環式または二環式の炭素環式または複素環式環系に融合したフェニルを表す。適当な融合環の例はシクロペンタン、ベンゼンおよびベンゾフランを含む。
【0033】
したがって、式Iの化合物のサブセットにおいて、Arは
【0034】
【化4】

を表し、式中のRはC1−6アルキルを表し、R、R10およびR11は独立に、
H、
1−6アルキル、
OR{ここにRはC1−6アルキルを表す}、
CO{ここにRはC1−6アルキルを表す}、
N(R{ここにRはC1−6アルキルを表す}、
N(R{ここに2個のR基はハロゲン、CF、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選択された0から2個の置換基を有しているN−ヘテロシクリル基を完成する}、
CF、または、
ハロゲン、CFおよびC1−6アルキルから選択された2個以下の置換基を場合により有している環原子数10以下の単環式または二環式アリール基
を表すが、但しRおよびR10の少なくとも一方がH以外の基を表し、R11がH以外の基を表すという条件が付帯する。
【0035】
本発明の化合物の別のサブセットは式II:
【0036】
【化5】

の化合物ならびに医薬的に許容されるそれらの塩および水和物から構成される。式中のZ1は、式:
【0037】
【化6】

[式中のmおよびnはm+nが3または4となるような0から4の整数であり、R、R、R、R、RおよびR10は上記と同じ定義および具体的意味を有している]のスピロ連結部分を表す。
【0038】
このサブセットに含まれる化合物の具体例は、式中のRおよびRがHであり、残りの可変要素が次表に示される化合物を含む。
【0039】
【表1】

【0040】
本発明の化合物の別のサブセットは式III:
【0041】
【化7】

[式中のR、R、R、R、R、R、R、RおよびR10は上記と同じ定義および具体的意味を有している]の化合物ならびに医薬的に許容されるそれらの塩および水和物から構成される。
【0042】
このサブセットに含まれる化合物の具体例は、式中のR、R、RおよびRのおのおのがHを表し、残りの可変要素が次表に示される化合物を含む。
【0043】
【表2】

【0044】
本発明の化合物の別のサブセットは式IV:
【0045】
【化8】

[式中のHet、R、R、R、R、R、RおよびR10は上記と同じ定義および具体的意味を有している]の化合物ならびに医薬的に許容されるそれらの塩および水和物から構成される。
【0046】
特定実施態様において、Hetは少なくとも1個の環窒素を含む。極めて好適にはHetが環窒素を介して付着している。
【0047】
このサブセットに含まれる化合物の具体例は、式中のRおよびRがHであり、残りの可変要素が次表に示される化合物を含む。
【0048】
【表3】

【0049】
このサブセットに含まれる化合物のまた別の具体例はこの文中に後出の実施例に開示されている。
【0050】
式Iの化合物は、ピペリジン誘導体(1)をハロゲン化物(2):
【0051】
【化9】

[式中のHalはCl、BrまたはIを表し、R、R、W、V、ZおよびArは上記と同義である]と反応させることによって製造し得る。反応はアルカノール溶媒(たとえばイソプロパノール)中、第三級アミン(たとえばジイソプロピルエチルアミン)の存在下でマイクロ波加熱(たとえば約160℃)によって行う。あるいは、反応がBuchward条件下で、すなわちトルエンまたはジオキサンのような溶媒中、塩基(たとえば炭酸ナトリウム)ならびにPd(0)およびホスフィン触媒の存在下で加熱することによって行われてもよい。適当な触媒は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)および4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンを含む。
【0052】
同様に、化合物(2)は、ジハロゲン化物(3)
【0053】
【化10】

[式中のHal、W、VおよびArは上記と同義である]をAr−NHで処理することによって製造し得る。反応は、非希釈でまたはエタノールのようなアルカノール溶媒中で第三級アミン(たとえばトリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン)の存在下に加熱(たとえば80から120℃の範囲)することによって行う。
【0054】
あるいは、ジハロゲン化物(3)をAr−NHにカップリングさせる前にピペリジン(1)にカップリングさせてもよい。
【0055】
式Iで表される個々の化合物を同じく式Iで表される別の化合物に変換するために慣用の有機合成技術を使用できることが当業者には明らかであろう。このような技術は、エステルもしくはアミドの形成または加水分解、酸化、還元、アルキル化およびカップリングもしくは縮合による炭素−炭素結合形成を含む。このような技術は同様に式1の化合物の合成前駆体にも応用できる。
【0056】
上述の合成スキームの出発材料がそれ自体として市販されていない場合には、市販材料の簡単な化学的修飾によってそれらを入手できる。
【0057】
本発明のある種の化合物は1つ以上のキラル中心の存在または分子全体の非対称性という理由から光学異性体として存在し得る。このような化合物はラセミ形態で製造されるかまたはエナンチオ特異的合成もしくは分割によって個別の鏡像異性体として製造される。新規な化合物はたとえば、分取HPLCのような標準技術によって構成鏡像異性体に分割されてもよく、または、ジ−p−トルオイル−D−酒石酸および/またはジ−p−トルオイル−L−酒石酸のような光学活性酸を用いた塩形成によってジアステレオマー対を形成し次いで分別結晶化および遊離塩基の再生を行ってもよい。新規な化合物はまた、ジアステレオマーエステルまたはアミドを形成し次いでクロマトグラフィー分離およびキラル側基の除去によって分割してもよい。あるいは、式Iの化合物の製造中にラセミ中間体を上記技術によって分割し、所望の鏡像異性体を以後の段階に使用してもよい。
【0058】
上記合成手順のいずれかの進行中に、関係する分子のいずれかに存在する感受性または反応性の基を保護することが必要なおよび/または望ましい場合もあろう。このような保護は、Protective Groups in Organic Chemistry,ed.J.F.W.McOmie,Plenum Press,973;およびT.W.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,3rd ed.,1999に記載されているような慣用の保護基によって行うことができる。保護基は当業界で公知の方法を使用する簡便な後続段階で除去し得る。
【0059】
本発明の化合物は、Aβの1−42アイソフォームの形成を選択的に削減するようにアミロイド前駆体タンパク質に対するγ−セクレターゼの作用を変調するという有用な特性を有しており、従ってAβ(1−42)によって媒介される疾患、特にβ−アミロイドの脳内沈着が関与する疾患の治療方法の開発に役立つことが判明した。
【0060】
本発明のまた別の目的によれば、β−アミロイドの脳内沈着に関連する疾患の治療用または予防用医薬を製造するための、上記に定義の式Iの化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物の使用が提案される。
【0061】
Aβの脳内沈着に関連する疾患は典型的にはアルツハイマー病(AD)、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発梗塞性認知症、拳闘家認知症またはダウン症候群、好ましくはADである。
【0062】
また別の目的において、本発明は、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発梗塞性認知症、拳闘家認知症またはダウン症候群に関連する認知症の治療、予防または発症遅延用医薬の製造における上記に定義の式Iの化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物の使用を提案する。
【0063】
本発明はまた、上記に定義の式Iの化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物を治療的に有効な量でその必要がある患者に投与する段階を含む、Aβの脳内沈着に関連する疾患の治療または予防方法を提供する。
【0064】
また別の目的において本発明は、上記に定義の式Iの化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物を治療的に有効な量でその必要がある患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発梗塞性認知症、拳闘家認知症またはダウン症候群に関連する認知症の治療、予防または発症遅延方法を提供する。
【0065】
式Iの化合物は、Aβ(1−40)のような短鎖アイソフォームの産生を有意に減少させることなく、Aβの(1−42)アイソフォームの産生を選択的に減衰させるようにγ−セクレターゼの作用を変調する。その結果、自己凝集して不溶性沈着物を形成する傾向が弱められ、脳からいっそう排出され易くおよび/または神経毒性が弱められたAβが分泌される。従って本発明のまた別の目的は、上記に定義の式Iの化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物を治療的に有効な量でその必要がある対象に投与する段階を含む、Aβの脳内蓄積の遅延、阻止または予防方法を提供する。
【0066】
式Iの化合物はγ−セクレターゼの活性を抑制するのでなくγ−セクレターゼの活性を変調するので、γ−セクレターゼによって調節される他のシグナル伝達経路(たとえば切痕)の破壊から生じるような副作用の危険が抑制されながら上述の治療効果が得られる。
【0067】
本発明の1つの実施態様において、式Iの化合物は、AD、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発梗塞性認知症、拳闘家認知症またはダウン症候群、好ましくはADに罹っている患者に投与される。
【0068】
本発明の代替的実施態様において、式Iの化合物は、軽度の認識低下または加齢関連認識減退に罹っている患者に投与される。このような処置の有利な結果はADの予防または発症遅延である。加齢関連認識減退および軽度の認識低下(MCI)とは、記憶欠損が存在するが他の認知症診断の判定基準が存在しない状態である(Santacruz and Swagerty,American Family Physician,63(2001),703−13)。(参照:“The ICD−10 Classification of Mental and Behavioural Disorders”,Geneva:World Health Organisation,1992,64−5)。この文中に使用した“加齢関連認識減退”は、記憶および学習、注意および集中、思考、言語および視空間機能の少なくとも1つが少なくとも6ヶ月間継続して低下しまたMMSEのような標準化神経心理学試験のスコアに平均水準を下回る標準偏差が2つ以上あることを意味する。特に、進行性の記憶減退が存在するであろう。MCIのもっと重篤な状態においては、記憶低下の程度が患者の年齢として正常と考えられる範囲外に存在するがADは存在しない。MCIと軽症ADとの鑑別診断はPetersenら,Arch.Neurol,56(1999),303−8によって記載されている。MCIの鑑別診断に関するまた別の情報は、Knopmanら,Mayo Clinic Proceedings,78(2003),1290−1308によって提供されている。高齢者対象の研究においてTuokkoら(Arch,Neurol,60(2003)577−82)は、最初にMCIを示した対象は5年以内に認知症を発症する危険性が3倍であることを知見した。
【0069】
Grundmanら(J.Mol.Neurosci.,19(2002),23−28)は、MCI患者における海馬基底体積の減少が後年のADの前兆となる指標であると報告している。同様に、Andreasenら(Acta Neurol.Scand,107(2003)47−51)は、全タウの高いCSFレベル、ホスホ−タウの高いCSFレベルおよびAβ42の低いCSFレベルのすべてがMCIからADへの進行の危険性増加に関連することを報告している。
【0070】
この実施態様において、式Iの化合物は、記憶機能低下はあるが認知症の症状を示していない患者に有利に投与される。このような記憶機能の低下は典型的には、卒中または下垂体機能不全によって生じた代謝疾患のような全身疾患または脳疾患に帰因するものではない。このような患者は特に55歳以上の人々、とりわけ60歳以上の人々、好ましくは65歳以上の人々であろう。このような患者は彼らの年齢として正常な成長ホルモン分泌のパターンおよびレベルを有しているであろう。しかしながら、このような患者は1つ以上の追加のアルツハイマー病発症危険要因を有しているであろう。このような要因は、家族性疾患履歴、遺伝的疾病素質、高い血清コレステロールおよび成人性真性糖尿病を含む。
【0071】
本発明の特定実施態様において、式Iの化合物は加齢関連認識減退またはMCIに罹っておりさらに家族性疾患履歴、遺伝的疾病素質、高い血清コレステロール、成人性真性糖尿病、海馬基底体積の増加、全タウの高いCSFレベル、ホスホ−タウの高いCSFレベルおよびAβ(1−42)の低いCSFレベルから選択されたAD発症危険要因を1つ以上有している患者に投与される。
【0072】
遺伝的疾病素質(特に若年性AD)はAPP、プレセニリン−1およびプレセニリン−2遺伝子を含む複数の遺伝子の1つ以上に生じた突然変異を原因とする。また、アポリポタンパク質E遺伝子のε4アイソフォームがホモ接合の対象もAD発症の危険性が増している。
【0073】
患者の認識減退または認識低下の程度は、本発明による治療クールの前、最中または後に定期的間隔で評価し、治療中の変化たとえば認識減退の鈍化または停止を検出するのが有利である。この目的には、年齢および教育に合せて調整された平均水準を用いる簡略精神状態検査(Mini−Mental State Examination,MMSE)のような様々の神経心理学的試験が当業界で知られている(Folsteinら,J.Psych.Res.,12(1975),196−198;Anthonyら,Psychological Med,12 1982),397−408;Cockrellら,Psychopharmacology,24(1988),689−692;Crumら,J.Am.Med.Assoc’n.18(1993),386−2391)。MMSEは成人の認識状態の簡単で定量的な検査方法である。これは、認識減退または認識低下をスクリーニングするため、所与の時点の認識減退または認識低下の重篤度を評価するため、個人の認識変化の過程を経時的に追跡するため、および、治療に対する個人の応答記録を作成するために使用できる。他の適当な試験はアルツハイマー病評価スケール(Alzheimer Disease Assessment Scale,ADAS)、特にその認識要素(ADAS−cog)である(参照:Rosenら,Am.J.Psychiatry,141(1984),1356−64)。
【0074】
式Iの化合物は典型的には、1種以上の式Iの化合物と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物の形態で使用される。従ってまた別の目的において本発明は、上記に定義の式Iの化合物または医薬的に許容されるその塩と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。好ましくはこれらの組成物は、錠剤、丸剤、カプセル、散剤、顆粒、滅菌非経口溶液もしくは懸濁液、計量供給エアゾールもしくは液体スプレー、滴剤、アンプル、経皮貼付薬、自己注入デバイスまたは座薬剤のような、経口、非経口、鼻腔内、舌下もしくは直腸内投与するためまたは吸入もしくは吹入によって投与するための単位剤形である。典型的には、医薬担体、たとえば、トウモロコシデンプン、乳糖、ショ糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムおよびリン酸二カルシウム、または、ガム、分散剤、懸濁化剤、または、ソルビタンモノオレエートおよびポリエチレングリコールのような界面活性剤などの慣用の錠剤形成成分、および、水のような他の医薬希釈剤に主要有効成分を混合して、本発明の化合物または医薬的に許容されるその塩を含有する均質なプレ配合組成物を形成する。これらのプレ配合組成物が均質であるというとき、この表現は、有効成分が組成物全体に均等に分散しており従って組成物を均等に有効単位剤形、たとえば錠剤、丸剤およびカプセルに容易に細分できることを意味する。このプレ配合組成物は次に、本発明の有効成分を0.1から約500mgの量で含有する上記種類の単位剤形に細分される。典型的な単位剤形は1から100mg、たとえば1、2、5、10、25、50または100mgの有効成分を含有している。組成物の錠剤または丸剤は、長時間作用という利点を剤形に与えるために剤皮をかけるかまたは他のやり方で複合化される。たとえば、錠剤または丸剤が内側薬剤成分と外側薬剤成分とを含み、後者が前者を包囲する外被の形態にしてもよい。双方の成分は、胃における崩壊に抵抗する機能を果たし、内側成分を無傷で十二指腸に通過させるかその遊離を遅延させる腸溶層によって隔てられている。このような腸溶層または剤皮には様々な材料を使用でき、このような材料は多数の高分子酸、ならびに、高分子酸とセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料との混合物を含む。
【0075】
本発明に有用な組成物が経口投与または注入投与されるように組込まれた液体形態は、水溶液、液体−またはゲル充填カプセル、適宜風味を加えたシロップ、水性または油性の懸濁液、綿実油、ゴマ油、ココヤシ油またはピーナツ油のような食用油で風味を加えたエマルション、ならびに、エリキシル剤および同様の医薬ビヒクルを含む。水性懸濁液用の適当な分散または懸濁化剤は、トラガカントガム、アラビアガム、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)またはゼラチンのような合成および天然のガムを含む。
【0076】
アルツハイマー病を治療または予防するための適当な投薬量レベルは、体重に対して1日あたり約0.01から250mg/kg、好ましくは1日あたり約0.01から100mg/kg、より好ましくは1日あたり約0.5から50mg/kgの有効化合物である。化合物は1日あたり1から4回の用法で投与され得る。しかしながらいくつかの場合にはこれらの範囲外の投薬量も使用し得る。
【0077】
式Iの化合物は場合によりADまたはその症状の治療または予防に有用であることが判っている1種以上の追加の化合物と併用投与され得る。このような追加の化合物はたとえば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(たとえばドネペジルおよびガランタミン)、NMDAアンタゴニスト(たとえばメマンチン)またはPDE4阻害薬(たとえばArifloTMおよびWO 03/018579、WO 01/46151、WO 02/074726およびWO 02/098878に開示された化合物のクラス)を含む。このような追加の化合物はまた、スタチン類たとえばシンバスタチンのようなコレステロール降下薬を含む。このような追加の化合物は同様に、脳内のAβの産生またはプロセシングを修飾することが判っている化合物(“アミロイド修飾物質”)、たとえばAβの分泌を阻害する化合物(γ−セクレターゼ阻害薬、β−セクレターゼ阻害薬およびGSK−3α阻害薬を含む)、Aβの凝集を阻害する化合物、および、Aβに選択的に結合する抗体を含む。このような追加の化合物はまたWO 2004/110443に開示されているような成長ホルモン分泌促進物質を含む。
【0078】
本発明のこの実施態様において、アミロイド修飾物質は、Aβの分泌を阻害する化合物、たとえば、γ−セクレターゼ阻害薬(WO 01/90084、WO 02/30912、WO 01/70677、WO 03/013506、WO 02/36555、WO 03/093252、WO 03/093264、WO 03/093251、WO 03/093253、WO 2004/039800、WO 2004/039370、WO 2005/030731、WO 2005/014553、WO 2004/089911、WO 02/081435、WO 02/081433、WO 03/018543、WO 2004/031137、WO 2004/031139、WO 2004/031138、WO 2004/101538、WO 2004/101539およびWO 02/47671に開示されているような)、または、β−セクレターゼ阻害薬(WO 03/037325、WO 03/030886、WO 03/006013、WO 03/006021、WO 03/006423、WO 03/006453、WO 02/002122、WO 01/70672、WO 02/02505、WO 02/02506、WO 02/02512、WO 02/02520、WO 02/098849およびWO 02/100820に開示されているような)、または、WO 98/28268、WO 02/47671、WO 99/67221、WO 01/34639、WO 01/34571、WO 00/07995、WO 00/38618、WO 01/92235、WO 01/77086、WO 01/74784、WO 01/74796、WO 01/74783、WO 01/60826、WO 01/19797、WO 01/27108、WO 01/27091、WO 00/50391、WO 02/057252、US 2002/0025955およびUS2002/0022621に開示された化合物を含むAβの形成もしくは遊離を阻害する他のいずれかの化合物を含み、また、GSK−3阻害薬、特に、Phielら,Nature,423(2003),435−9に開示されているリチウムのようなGSK−3α阻害薬を含む。
【0079】
あるいは、アミロイド修飾物質は、Aβの凝集を阻害するかまたは他のやり方で神経毒性を弱める化合物であってもよい。好適例は、クリオキノールのようなキレート化剤(Gouras and Beal,Neuron,30(2001),641−2)およびWO 99/16741に開示された化合物、特にDP−109として知られた化合物(Kalendarevら,J.Pharm.Biomed.Anal,24(2001),967−75)を含む。本発明に使用するための適当な他のAβ凝集阻害薬は以下の特許に開示された化合物を含む:ApanTM(Praecis)として知られた化合物を含むWO 96/28471、WO 98/08868およびWO 00/052048;WO 00/064420、WO 03/017994、WO 99/59571(特に、トラミプロサートまたはAlzhemedTMとしても知られる3−アミノプロパン−1−スルホン酸);WO 00/149281およびPTI−777およびPTI−00703(ProteoTech)として知られた組成物;WO 96/39834、WO 01/83425、WO 01/55093、WO 00/76988、WO 00/76987、WO 00/76969、WO 00/76489、WO 97/26919、WO 97/16194およびWO 97/16191。また別の例は、US 4,847,082に開示されたフィチン酸誘導体およびUS 2004/0204387に教示されたイノシトール誘導体を含む。
【0080】
あるいは、アミロイド修飾物質は、Aβに選択的に結合する抗体であってもよい。該抗体はモノクローナルでもポリクローナルでもよいが、好ましくはモノクローナルであり、好ましくはヒト抗体またはヒト化抗体である。好ましくは抗体がWO 03/016466、WO 03/016467、WO 03/015691およびWO 01/62801に記載されているように生物流体の可溶性Aβを封鎖できる。適当な抗体は、ヒト化抗体266(WO 01/62801に記載)およびWO 03/016466に記載されたその修飾形を含む。
【0081】
この文中に使用した“併用で”という表現は、式Iの化合物および追加の化合物の双方が治療的に有効な量で対象に投与されることを必要とするが投与のやり方について制限はない。従って2つの種は対象に同時投与される単一剤形に統合されてもよく、または、対象に同時もしくは順次に投与される個別剤形で提供されてもよい。順次投与は短い時間内に行ってもよくまたは長い時間を隔てて行ってもよい。たとえば一方の種を朝方、他方を夕方に投与するようにしてもよい。別々の種を同じ頻度で投与してもよくまたは異なる頻度で投与してもよい。たとえば一方の種を1日1回、他方の種を1日2回以上投与するようにしてもよい。別々の種は同じ経路によって投与されてもよく、または、異なる経路によってたとえば一方の種が経口によって他方が非経口によって投与されてもよいが、可能ならば双方の種の経口投与が好ましい。追加の化合物が抗体であるとき、抗体は典型的には式Iの化合物とは別にして非経口投与されるであろう。
【実施例】
【0082】
Aβ(1−42)の産生を選択的に阻害する式Iの化合物の能力は以下のアッセイを使用して測定し得る。
【0083】
細胞に基づくγ−セクレターゼアッセイ
直接γ−セクレターゼ基質SPA4CTを超発現しているヒトSH−SY5Y神経芽細胞腫細胞を平板培養する前に酪酸ナトリウム(10mM)で4時間誘発した。フェノールレッド非含有MEM/10%のFBS、50mMのHEPES、1%のグルタミンに入れた96−ウェルプレートに細胞を35,000細胞/ウェル/100μlで平板培養し、37℃、5%COで2時間インキュベートした。
【0084】
10点用量−応答曲線を作成するために、試験する化合物をMeSOに希釈した。典型的には、MeSOに希釈した被験化合物10μlをさらに182μlの希釈バッファ(フェノールレッド非含有MEM/10%のFBS、50mMのHEPES、1%のグルタミン)に希釈し、各希釈物10μlを96−ウェルプレート中の細胞に添加した(MeSOの最終濃度は0.5%になる)。適当なビヒクルおよび阻害薬対照を使用してアッセイウインドーを決定した。
【0085】
37℃、5%COで一夜インキュベーション後、Aβ(40)およびAβ(42)ペプチドをそれぞれ検出するために25μlおよび50μlの培地を標準Mesoアビジン−コートした96−ウェルプレートに移した。25μlのMesoアッセイバッファ(PBS、2%のBSA、0.2%のTween−20)をAβ(40)ウェルに添加し、次いで25μlのそれぞれの抗体プレミックスをウェルに加えた。
Aβ(40)プレミックス:1μg/mlのルテニル化G2−10抗体、4μg/mlのビオチニル化4G8抗体、Origenバッファに希釈
Aβ(42)プレミックス:1μg/mlのルテニル化G2−11抗体、4μg/mlのビオチニル化4G8抗体、Origenバッファに希釈。
(ビオチニル化4G8抗体はSignet Pathology Ltdから提供され、G2−10およびG2−11抗体はChemiconから提供された)。
【0086】
アッセイプレートを4℃のシェーカーに載せて一夜インキュベーション後、Meso Scale Sector 6000 Imagerを製造業者の指示に従って較正した。プレートをウェルあたり150μlのPBSで3回洗浄後、150μlのMeso Scale Discovery読取バッファを各ウェルに添加し、製造業者の指示に従ってSector 6000 Imager上でプレートを読取った。
【0087】
Aβアッセイ用培地の除去後に、MTS(オーエン試薬)によるホルマザンへのバイオ還元を利用する比色細胞増殖アッセイ(CellTiter 96TM AQアッセイ、Promega)を製造業者の指示通りに行って対応する細胞中の細胞生存率を測定した。簡単に説明すると、インキュベーターに戻す前に5μlの10×のMTS/PESを残りの50μlの培地に加えた。〜4時間後に495nmの光学密度を測定した。
【0088】
Aβ(40)およびAβ(42)の阻害に関するLD50値およびIC50値は、適当なソフトウェア(たとえばExcel fit)を使用した非線形回帰適合分析によって計算した。全シグナルおよびバックグラウンドは対応するMeSOおよび阻害薬対照によって決定した。
【0089】
以下の実施例に列挙したすべての化合物は、10μM未満、多くの場合に1.0μM未満のAβ(1−42)阻害用IC50値を有していた。さらにこれらの値は典型的には、対応するAβ(1−40)阻害用IC50値の少なくとも1/2、より典型的には少なくとも1/5、いくつかの場合には少なくとも1/50に減少していた。
【0090】
以下に例示した化合物で得られた代表的なAβ(1−42)阻害用IC50値は以下の範囲であった:
3.0−6.0μM−実施例1、4、7、8、12、17、18、
1.5−3.0μM−実施例14、19、20、23、
0.5−1.5μM−実施例10、15、16、21、22、
<0.5μM−実施例11、24、25。
【0091】
インビボ薬効アッセイ
APP−YACトランスジェニックマウス(20−30g;2−6ヶ月齢)およびスプレーグ−ドーリーラット(200−250g;8−10週齢)を、餌および水は無制限に摂取できるようにして12時間の明/暗サイクルに維持した。マウスおよびラットを一夜絶食させ、次にそれぞれ水:Tween−80(50:50)または10%Tween−80に配合した被験化合物を10ml/kgで経口投与した。化合物スクリーニング試験のために、被験化合物を単一用量(20または100mg/kg)で投与し、1および4時間後に順次にマウスの尾の血管から採血し、最終7時間後に心臓穿刺によってマウスおよびラットから採血した。用量応答試験では、化合物を0.1、3、10、30および100mg/kgの用量で投与し、最終7時間後に心臓穿刺によってマウスおよびラットから採血した。COで安楽死させた後、動物から前脳組織を採取し、−80℃で保存した。脳AβレベルのPD分析のために、10倍容量の0.2%DEA含有50mMのNaCl中で均質化することによって半前脳から可溶性Aβを抽出し、次いで超遠心した。Aβ42/40のレベルはビオチニル化4G8捕獲抗体およびAβ42およびAβ40にそれぞれ対するルテニウム標識12F4またはG210検出抗体を用いたMeso Scaleテクノロジイ(電気化学発光)を使用して分析した。PK分析のために、血液および脳のサンプルをタンパク質沈降手順を用いて処理し、残りの濾液をLC/MS/MSによって分析して薬物露出レベル、脳内浸透およびED50/EC50を適宜決定した。
【0092】
(実施例1)
N−(5−tert−ブチル−2−メチルフェニル)−5−フルオロ−2−[4−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル]ピリミジン−4−アミン
【0093】
【化11】

【0094】
段階1:N−(5−tert−ブチル−2−メチルフェニル)−2−クロロ−5−フルオロピリミジン−4−アミン
【0095】
【化12】

【0096】
エタノール(2mL)中の2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン(307mg,1.84mmol)、2−メチル−5−t−ブチルアニリン(300mg,1.84mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(2mL)の溶液を油浴に入れ80℃で16時間加熱した。混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮した。EtOAc/ヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーBiotage 40Mによって残渣を精製すると、生成物(369mg,68%)が固体として得られた。LC−ESMS測定値[M+H] 294.0(計算値294.1)。
【0097】
段階2:N−(5−tert−ブチル−2−メチルフェニル)−5−フルオロ−2−[4−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)−ピペリジン−1−イル]ピリミジン−4−アミン
2−プロパノール(2mL)中の段階1の生成物(123mg,0.42mmol)、4−(1H−1,2,3−トリアゾール−1−イル)ピペリジン(94mg,0.50mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(2mL)の溶液を150℃のマイクロ波オーブンで2時間照射した。混合物を冷却し、減圧下で溶媒を蒸発させた。EtOAc/ヘキサン(0%−100%)で溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーBiotage 40Sによって残渣を精製すると、生成物(59mg,34%)が固体として得られた。H−NMR(600MHz,CDCl)δ=1.30(9H,s),1.98(2H,qd,J=12.0Hz,4.2Hz),2.22(2H,d,J=12.0Hz),2.27(3H,s),3.02(2H,td,J=14.4Hz,J=2.4Hz),4.72(1H,m),4.88(2H,d,J=13.8Hz),6.52(1H,d,J=2.4Hz),7.08(1H,dd,J=8.4Hz,2.4Hz),7.14(1H,d,J=7.8Hz),7.54(1H,d,J=1.2Hz),7.69(1H,d,J=1.2Hz),7.89(1H,d,J=3Hz),8.04(1H,d,J=2.4Hz)。LC−ESMS測定値[M+H] 410.1(計算値410.2)。
【0098】
(実施例2−25)
以下の表に示す化合物は、段階1で適当なアニリンおよびジクロロピリミジンの誘導体を使用し、段階2で適当なピペリジン誘導体を使用して同じ経路によって製造した。
【0099】
【表4】










【0100】
(実施例41)
【0101】
【化13】

【0102】
2−[(5−tert−ブチル−2−メチルフェニル)アミノ]−6−[4−(1H−イミダゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル]−N,N−ジメチルイソニコチンアミド
2−クロロ−6−[4−(1H−イミダゾール−1−イル)ピペリジン−1−イル]−N,N−ジメチルイソニコチンアミド(250mg,0.749mmol)、5−tert−ブチル−2−メチルアニリン(132mg,0.809mmol)、2−ジシクロヘキシルホスフイノ−2’,4’,6’−トリイソプロピル−1,1’−ビフェニル(187mg,0.392mmol)、Pd(dba)(70mg,0.076mmol)および炭酸カリウム(119mg,0.861mmol)をバイアルで合せて、密封し、N雰囲気下に配置した。ガス抜きしたt−アミルアルコール(3ml)を添加した。混合物を100℃で一夜撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、セライトで濾過し、真空下で濃縮した。残渣をアセトニトリル/水+0.1%TFAで溶出させる分取逆相HPLC(C−18)によって精製すると、生成物が固体として得られた。LC−ESMS測定値[M+H] 461.2(計算値461.6)。
【0103】
以下の化合物は上記と同じ手順を使用して製造した。
【0104】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化14】

[式中、
およびRは独立に、H、F、C1−4アルキルまたはフェニルを表すが、但しRとRとが同時にフェニルではないという条件が付帯しており、
Zは
(a)式:
【化15】

のスピロ連結部分{ここに、mおよびnはm+nが3または4となるような0から4の整数である}、
(b)部分CH−NR{ここに、RおよびRは、独立にHもしくはC1−6アルキルを表すか、または、それらが付着した窒素原子と共にC1−4アルキル、ハロゲン、CF、ORおよびCOから選択された0から3個の置換基を有している環原子数5または6の非芳香族N−ヘテロシクリル基を完成するか、または、前記N−ヘテロシクリル基がC1−4アルキル、ハロゲン、CF、ORおよびCOから選択された0から3個の置換基を有しているベンゼン環に融合しており、RはHまたはC1−4アルキルを表す}、および、
(c)部分CH−Het{ここに、Hetは、ハロゲン、C1−4アルキル、CFおよびフェニルから選択された置換基を場合により有している5員環のヘテロアリール基を表す}
から選択され、
WはNまたはCHを表し、
Vは、S、CR=CR、CR=NまたはN=CRを表すが、但しVがN=CRのときWはCHを表すという条件が付帯しており、
およびRは、独立にHまたは(CH−Xを表し、ここにmは0または1であり、Xはハロゲン、5−または6員環のヘテロアリール、CN、CF、R、OR、N(R、SO、COまたはCON(Rを表し、各Rが独立にH、フェニル、C1−4アルキルもしくはヒドロキシC1−4アルキルを表すか、または、RとRとが一緒に5−または6員環の炭素環式または複素環式の融合環を完成しており、
Arは、フェニル、または、
(a)C1−6アルキル、
(b)C3−6シクロアルキル、
(d)C3−6シクロアルキルC1−6アルキル、
(e)C2−6アルケニル、
(f)ハロゲン、CFおよびC1−6アルキルから選択された2個以下の置換基を場合により有している環原子数10以下の単環式または二環式アリール基、
(g)OR
(h)CO
(i)N(R
(j)SR、および、
(k)CF
から選択された2から4個の置換基を有している5−または6員環のヘテロアリール環を表し、ここに、Rは、おのおのがC1−6アルキルを表すか、または、同じ窒素に付着した2個のR基がハロゲン、CF、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選択された0から2個の置換基を有しているN−ヘテロシクリル基を完成しているか、
あるいは、Arによって表される環が環原子数10以下の単環式または二環式の炭素環式または複素環式環系に融合している]の化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物。
【請求項2】
WがNであり、VがS、CR=CRおよびCR=Nから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arが
【化16】

を表し、式中のRはC1−6アルキルを表し、R、R10およびR11は独立に、
H、
1−6アルキル、
OR{ここにRはC1−6アルキルを表す}、
CO{ここにRはC1−6アルキルを表す}、
N(R{ここにRはC1−6アルキルを表す}、
N(R{ここに2個のR基はハロゲン、CF、C1−4アルキルおよびC1−4アルコキシから選択された0から2個の置換基を有しているN−ヘテロシクリル基を完成する}、
CF、または、
ハロゲン、CFおよびC1−6アルキルから選択された2個以下の置換基を場合により有している環原子数10以下の単環式または二環式アリール基
を表すが、但しRおよびR10の少なくとも一方がH以外の基を表し、R11がH以外の基を表すという条件が付帯する請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式II:
【化17】

[式中、Z1は、式:
【化18】

のスピロ連結部分を表し、ここにmおよびnはm+nが3または4となるような0から4の整数である]の請求項3に記載の化合物または医薬的に許容されるそれらの塩もしくは水和物。
【請求項5】
m=n=2、または、
mが0でnが3、または、
mが1でnが2
である請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
式III:
【化19】

[式中のRおよびRは、独立にHもしくはC1−6アルキルを表すか、または、それらが付着した窒素原子と共にC1−4アルキル、ハロゲン、CF、ORおよびCOから選択された0から3個の置換基を有している環原子数5または6の非芳香族N−ヘテロシクリル基を完成するか、または、前記N−ヘテロシクリル基がC1−4アルキル、ハロゲン、CF、ORおよびCOから選択された0から3個の置換基を有しているベンゼン環に融合しており、RはHまたはC1−4アルキルを表す]の請求項3に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物。
【請求項7】
およびRが場合により置換されるかまたはベンゾ融合した環原子数5または6のN−ヘテロシクリル基を完成している請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
式IV:
【化20】

[式中、Hetは、ハロゲン、C1−4アルキル、CFおよびフェニルから選択された置換基を場合により有している5員環のヘテロアリール基を表す]の請求項3に記載の化合物または医薬的に許容されるその塩もしくは水和物。
【請求項9】
Hetが少なくとも1個の環窒素を含む請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Hetが環窒素を介して分子の残りの部分に結合している請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物および医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
Aβの脳内沈着に関連する疾患の治療または予防に使用するための請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
前記疾患がアルツハイマー病、脳アミロイド血管症、HCHWA−D、多発梗塞性認知症、拳闘家認知症およびダウン症候群から選択される請求項12に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−518083(P2010−518083A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549109(P2009−549109)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/001666
【国際公開番号】WO2008/100412
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】