説明

ピボットアッシー軸受用グリース組成物及びそれを封入したピボットアッシー用軸受

【課題】有機鉛化合物の添加を必要とせず、低温度における特性や流動点を低下させ、低トルクで、アウトガス特性、グリース飛散特性の優れたピボットアッシー軸受用グリース組成物、及びそれを封入したピボットアッシー用軸受を提供する。
【解決手段】増ちょう剤と基油の全質量に対して、増ちょう剤5〜25質量%と基油95〜75質量%を配合したグリース組成物であり、増ちょう剤として、脂肪族、脂環式、芳香族の置換基、またはこれらの組み合わせになる置換基をもつジウレア化合物を含むウレア2種以上を用い、基油として高粘度ポリα−オレフィンと、低粘度ポリα−オレフィンとを、質量比15〜30:85〜70で混合し、40℃における動粘度が 40〜70mm/sであるポリα−オレフィン混合物を用い、添加剤として非鉛系の添加剤を使用したことを特徴とするピボットアッシー軸受用グリース組成物及びそれを封入したピボットアッシー用軸受。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のグリース組成物は、ピボットアッシー軸受に用いるグリースに関し、より詳しくは、始動時において低トルクであり、アウトガス特性、飛散特性の優れたピボットアッシー軸受用グリース組成物さらには鉛化合物を含まないピボットアッシー軸受用グリース組成物及びそれを封入したピボットアッシー用軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基油及びジウレア化合物からなる増ちょう剤 を含み、亜鉛化合物をグリース全量に対して0.1〜10質量%含有することを特徴とするグリース組成物であり、炭素数7〜12の芳香族環含有炭化水素基及び炭素数8〜20の炭化水素基を有するジウレア化合物を用い[芳香族環含有炭化水素基のモル数/(芳香族環含有炭化水素基のモル数+炭化水素基のモル数)]値が0.50〜1.0となるようにグリース全量に対して10〜30質量%配合したことを特徴とするグリース組成物は知られている(特許文献1)。
しかし、このグリースは、自動車の電装部品、エンジン補機であるオルタネータや中間プーリ、カーエアコン用電磁クラッチ等のような高温高速高荷重条件下で使用される部品、あるいは水ポンプのように水と接触する部品に組み込まれる転がり軸受に適したグリース組成物であり、基油として、炭化水素系油、鉱油、エステル系油、エーテル系油等を用いることが開示されている。
【0003】
また、電子計算機、半導体製造装置などに用いる軸受に封入されるグリース組成物において、低騒音性、低振動性が重視される場合は、リチウム石けんを増ちょう剤とし、エステル油を基油とするグリースに代表される低騒音、低トルクグリースが使用されている。しかし、このリチウム石けん−エステル油系グリースは、飛散し易く、そのまま使用した場合は記録媒体を汚損するおそれが大きいという問題点があった(特許文献2)。
さらに、ピボットアッシー軸受に用いるグリースとしては、当社で開発した鉱油とポリα−オレフィンを混合基油とし、増ちょう剤として、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基を有するジウレア化合物を用いたグリースが知られている。
しかし、このグリース組成物は、低温度領域におけるトルク特性に問題があると共に、有機鉛化合物を添加していたため、環境への適合性に問題があった。
【特許文献1】特開2004−323586号公報
【特許文献2】特許第3324628号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基油と増ちょう剤とを組み合わせることにより、有機鉛化合物の添加を必要とせず、低温度領域において、良好なトルク特性や流動性を維持し、室温から駆動温度(約80℃)で、低トルク、アウトガス特性、グリース飛散特性の優れたピボットアッシー軸受用グリース組成物、及びそれを封入したピボットアッシー用軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、増ちょう剤と基油の全質量に対して、増ちょう剤5〜25質量%と基油95〜75質量%を配合したグリース組成物であり、増ちょう剤として、
ウレアA:脂肪族(ALA)/脂環式(ACA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレア、
ウレアB:脂環式(ACA)/芳香族(ARA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレア、および
ウレアC:芳香族(ARA)/脂肪族(ALA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレア
で表されるウレアのうちの2種以上を用い、基油として40℃における動粘度が 350〜450mm/sのポリα−オレフィン(PAO HV)と、40℃における動粘度が 25〜40mm/sのポリα−オレフィン(PAO LV)とを、質量比15〜30:85〜70で混合し、40℃における動粘度が 40〜70mm/sであるポリα−オレフィン混合物を用い、添加剤として非鉛系の添加剤を使用したことを特徴とするピボットアッシー軸受用グリース組成物である。
また、本発明は、ウレアA:脂肪族(ALA)/脂環式(ACA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアとして、式(1)、式(2)及び式(3)
【化10】

(式中、Rは、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基である。)
【化11】

(式中、Rは、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基である。)

【化12】

(式中、Rは、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基であり、Rは、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基である。)
で表されるジウレア化合物を含むウレア、
ウレアB:脂環式(ACA)/芳香族(ARA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアとして、式(2)、式(4)及び式(5)
【化13】

(式中、Rは、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基である。)
【化14】

(式中、Rは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。)
【化15】

(式中、Rは、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基であり、Rは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。)
で表されるジウレア化合物を含むウレア、および
ウレアC:芳香族(ARA)/脂肪族(ALA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアとして、式(1)、式(4)及び式(6)
【化16】

(式中、Rは、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基である。)
【化17】

(式中、Rは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。)
【化18】

(式中、Rは、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基であり、Rは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。)
で表されるジウレア化合物を含むウレアを用いることが出来る。

さらに、本発明は、混合ウレアとして、ウレアA及びウレアBを使用することができる。
また、本発明は、混合ウレアとして、ウレアB及びウレアCを使用することができる。
さらに、本発明は、混合ウレアとして、ウレアA及びウレアCを使用することができる。
また、本発明は、混合ウレアとして、ウレアA、ウレアB及びウレアCを使用することができる。
さらにまた、本発明は、これらのグリースを使用したピボットアッシー用軸受である。

【発明の効果】
【0006】
本発明のピボットアッシー軸受用グリース組成物は、入手しやすい基油と増ちょう剤を用い、低温度領域における優れたトルク特性を実現し、室温から駆動温度(約80℃)で、低トルク、アウトガス特性、グリース飛散特性の優れたピボットアッシー軸受用グリース組成物であり、環境にやさしいタイプのグリースである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、増ちょう剤と基油の全質量に対して、増ちょう剤5〜25質量%と基油95〜75質量%を配合したグリース組成物であり、増ちょう剤が5質量%以下であるとグリースが柔らかすぎ、25質量%以上であるとグリースが硬くなりすぎる。
本発明で用いる増ちょう剤は、代表的には化学式(1)〜(6)で示されるジウレア化合物を含むウレアであり、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を有するジウレア化合物を用いることができる。
これらのウレア化合物を含むウレアは、芳香族アミン、脂環式アミン、脂肪族アミンから選ばれるアミン化合物とジイソシアネート化合物を反応させることにより得られる。
本発明で用いる芳香族アミンとしては、アニリン、炭化水素置換アニリン等を挙げることができる。
本発明で用いる脂環式アミンとしては、シクロヘキシルアミン、炭化水素置換シクロヘキシルアミン等を挙げることができる。
本発明で用いる脂肪族アミンとしては、オクチルアミン(炭素数8)、ステアリルアミン(炭素数18)、ベヘニルアミン(炭素数22)等を挙げることができる。
ジイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4および2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0008】
本発明で用いる基油は、40℃における動粘度が 350〜450mm/sのポリα−オレフィン(PAO HV)と40℃における動粘度が 25〜40mm/sのポリα−オレフィン(PAO
LV)を、質量比15〜30:85〜70で混合し40℃における動粘度が 40〜70mm/sであるポリα−オレフィン混合物を用いることができる。本発明で用いるポリα−オレフィン油は、かつ安全に使用するためには、引火点220℃以上のものを採用することが好ましい。
【0009】
また、本発明で用いるポリα−オレフィン油は、α−オレフィンを低重合してオリゴマーとし、その末端二重結合に水素を添加した構造であり、代表的には下記の式

【化19】

(式中、Rはアルキル基、n=1〜6の整数を表わす。)
で示すことができる。
ポリブテンもポリα−オレフィンの一種であり、このものはイソブチレンを主体とする出発原料から塩化アルミニウムを触媒として重合して製造できる。ポリブテンは、そのまま用いても水素添加して用いてもよい。

【0010】
本発明の、ピボットアッシー用軸受グリース組成物は、添加剤として非鉛系の添加剤を使用するが、このような添加剤としては、鉛原子を含まない酸化防止剤、鉛原子を含まない防錆剤を挙げることができる。
本発明において用いることが出来る具体的な酸化防止剤は、フェニルα(β)ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミン、フェノチアジン等のアミン系酸化防止剤、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)に代表されるフェノール系酸化防止剤等が使用される。
また、本発明において用いることが出来る具体的な防錆剤としては、金属スルホネート、非イオン系、アミン系等の防錆剤等が挙げられる
【0011】
本発明のグリース組成物は、必要に応じて通常グリースに用いられる鉛を含まない各種の添加剤を含有することも可能である。
例えば、ベントン、シリカゲル等のゲル化剤;イオウ系、リン系、有機モリブデン等の極圧剤;脂肪酸、動植物油等の油性剤;石油スルホネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、カルボン酸塩、ソルビタンエステル等の錆止め剤;ポリメタクリレート、ポリイソブチレン、ポリスチレン等の粘度指数向上剤等が挙げられる。
次に、実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
(増ちょう剤の調製)
<ウレアAの調製>
脂肪族アミン(べへニルアミン)4.8g、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン)5.9g
及びジイソシアネート(ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)9.3gを準備した。
<ウレアBの調製>
芳香族アミン(ドデシルアニリン)5.6g、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン)5.3g及びジイソシアネート(ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)9.1gを準備した。
(基油の調製)
基油として、次の2種類の基油を用意した。
基油として40℃における動粘度が 400mm/sのポリα−オレフィン(PAO HV)15.2gと40℃における動粘度が 30mm/sのポリα−オレフィン(PAO LV)を60.8g混合し,40℃における動粘度が 52mm/sであるポリα−オレフィン混合物を作製した。
(添加剤の調製)
酸化防止剤としてアルキルジフェニルアミン2g、防錆剤としてカルシウムスルホネート2gを準備した。
(グリースの作製)
<ウレアAを用いたグリースの調製>
ウレアAを用いたグリースは、基油であるポリα―オレフィン混合物中で脂肪族アミン、脂環式アミン及びジイソシアネートを反応させることにより作製する。
すなわち、上記のウレアAを用いたグリースは、上記のように準備した原料アミンとジイソシアネートを基油中で反応後、攪拌しながら加熱し、150℃に保持後、100℃以下に冷却する。添加剤を順次混合し、三本ロールで均質化する。こうして得られたグリースには、化学反応の結果として、式(1)、式(2)及び式(3)で表される脂肪族(ALA)/脂環式(ACA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアAが含まれている。
<ウレアBを用いたグリースの調製>
ウレアBを用いたグリースは、基油であるポリα―オレフィン混合物中で芳香族アミン、脂環式アミン及びジイソシアネートを反応させることにより作製する。
すなわち、上記のウレアBを用いたグリースは、上記のように準備した原料アミンとジイソシアネートを基油中で反応後、攪拌しながら加熱し、150℃に保持後、100℃以下に冷却する。添加剤を順次混合し、三本ロールで均質化する。こうして得られたグリースには、化学反応の結果として、式(2)、式(4)及び式(5)で表される脂環式(ACA)/芳香族(ARA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアBが含まれている。

<ウレアA及びウレアBを用いたグリースの調製>
ウレアAを用いたグリースとウレアBを用いたグリースを、質量1:4の割合で混合して、ウレアA及びウレアBを用いたグリースを調整した。
増ちょう剤:基油の質量比は、グリース全質量を100として、20:76であった。従って、増ちょう剤と基油の全質量(合計質量)に対する割合は20.8:79.2であった。

(グリースの特性)
得られたグリースは、流動点が−50℃の基油を用いており、低温特性の良いグリースであった。

【実施例2】
【0013】
(増ちょう剤の調製)
<ウレアAの調製>
脂肪族アミン(ベヘニルアミン)3.6g、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン)4.4g
及びジイソシアネート(ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)7.0gを準備した。
<ウレアBの調製>
芳香族アミン(ドデシルアニリン)4.2g、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン)4.0g及びジイソシアネート(ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)6.8gを準備した。
(基油の調製)
基油として、次の2種類の基油を用意した。
基油として40℃における動粘度が 400mm/sのポリα−オレフィン(PAO HV)16.2gと40℃における動粘度が 30mm/sのポリα−オレフィン(PAO LV)を64.8g混合し,40℃における動粘度が 52mm/sであるポリα−オレフィン混合物を作製した。
(添加剤の調製)
添加剤は実施例1と同様に調製した。
(グリースの作製)
グリースは実施例1と同様にして調製した。
<ウレアA及びウレアBを用いたグリース調製>
ウレアAを用いたグリースとウレアBを用いたグリースを、質量比で、1:1の割合で混合して、ウレアA及びウレアBを用いたグリースを調製した。
増ちょう剤:基油の質量比は、グリース全質量を100として、15:81であった。従って、増ちょう剤と基油の全質量に対する質量比は15.6:84.4であった。
(グリースの特性)
得られたグリースは、流動点がー50℃の基油を用いており、低温特性の良いグリースであった。
【実施例3】
【0014】
(増ちょう剤の調製)
<ウレアAの調製>
脂肪族アミン(ベヘニルアミン)2.4g、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン)3.0g
及びジイソシアネート(ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)4.6gを準備した。
<ウレアCの調製>
脂肪族アミン(ベヘニルアミン)3.9g、芳香族アミン(ドデシルアニリン)3.1g及びジイソシアネート(ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)3.0gを準備した。
(基油の調製)
基油として、次の2種類の基油を用意した。
基油として40℃における動粘度が 400mm/sのポリα−オレフィン(PAO HV)17.2gと40℃における動粘度が 30mm/sのポリα−オレフィン(PAO LV)を68.8g混合し,40℃における動粘度が 52mm/sであるポリα−オレフィン混合物を作製した。
(添加剤の調製)
添加剤は実施例1と同様に調製した。
(グリースの作製)
ウレアAを用いたグリースは実施例1と同様にして調製した。
<ウレアCを用いたグリースの調整>
ウレアCを用いたグリースは、基油であるポリα―オレフィン混合物中で脂肪族アミン、芳香族アミン及びジイソシアネートを反応させることにより作製する。
すなわち、上記のウレアCを用いたグリースは、上記のように準備した原料アミンとジイソシアネートを基油中で反応後、攪拌しながら加熱し、150℃に保持後、100℃以下に冷却する。添加剤を順次混合し、三本ロールで均質化する。こうして得られたグリースには、化学反応の結果として、式(1)、式(4)及び式(6)で表される芳香族(ARA)/脂肪族(ALA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアCが含まれている。
<ウレアA及びウレアCを用いたグリースの調製>
ウレアAを用いたグリースとウレアCを用いたグリースを、質量比で、1:1の割合で混合して、ウレアA及びウレアCを用いたグリースを調製した。
増ちょう剤:基油の質量比は、グリース全質量を100として、10:86であった。従って、増ちょう剤と基油の全質量に対する質量比は10.4:89.6であった。
(グリースの特性)
得られたグリースは、流動点がー50℃の基油を用いており、低温特性の良いグリースであった。

(実施例4〜6)

表1の組成になるように、実施例1、2、3と同様にしてグリース組成物を得た。

【表1】

【0015】
(比較例1)
(増ちょう剤の調製)
増ちょう剤として、<ウレアAの調製>
脂肪族アミン(ステアリルアミン)2.4g、脂環式アミン(シクロヘキシルアミン)3.0g及びジイソシアネート(ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート)4.6gを準備した。
表1の割合になるように、基油、添加剤を準備し、実施例1と同様にしてグリース組成物を得た。

【0016】
(比較例2)
比較例1で得られたグリース組成物に、有機鉛化合物(PbDTC ジチオカルバメイト鉛)を加えて、グリース組成物を得た。
【0017】
基油粘度(40℃)は、JIS K2283を、混和ちょう度は、JIS K2220 7を、低温トルクは、JIS K2220 18をそれぞれ用いて求めたものである。アウトガス特性は、雰囲気温度85℃、3時間の揮発量について測定した。揮発量は少ないものほど優れている。

【0018】
本発明の代表例として実施例1、実施例2のピボットアッシー軸受用グリース組成物と、比較例1、比較例2のグリース組成物の特性試験を図1〜図7に示す。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明のピボットアッシー軸受用グリース組成物は、手軽に製造できる上、有機鉛化合物を添加しなくとも、低温域で所定の特性を発揮し、環境に優しいグリースであり、多くの需要が見込まれ、産業上の利用可能性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】平均トルクの比較データ
【図2】平均トルクの比較データグラフ
【図3】ピークーピークのトルクの比較データ
【図4】ピークーピークのトルクの比較データグラフ
【図5】アウトガス特性比較データ
【図6】摩擦係数の比較データ
【図7】一般特性の比較データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増ちょう剤と基油の全質量に対して、増ちょう剤5〜25質量%と基油95〜75質量%を配合したグリース組成物であり、増ちょう剤として、
ウレアA:脂肪族(ALA)/脂環式(ACA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレア、
ウレアB:脂環式(ACA)/芳香族(ARA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレア、および
ウレアC:芳香族(ARA)/脂肪族(ALA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレア
で表されるウレアのうちの2種以上を用い、基油として40℃における動粘度が 350〜450mm/sのポリα−オレフィン(PAO HV)と、40℃における動粘度が 25〜40mm/sのポリα−オレフィン(PAO LV)とを、質量比15〜30:85〜70で混合し、40℃における動粘度が 40〜70mm/sであるポリα−オレフィン混合物を用い、添加剤として非鉛系の添加剤を使用したことを特徴とするピボットアッシー軸受用グリース組成物。
【請求項2】
ウレアA:脂肪族(ALA)/脂環式(ACA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアが、式(1)、式(2)及び式(3)
【化1】

(式中、Rは、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基である。)
【化2】


(式中、Rは、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基である。)

【化3】

(式中、Rは、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基であり、Rは、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基である。)
で表されるジウレア化合物を含むウレアであり、
ウレアB:脂環式(ACA)/芳香族(ARA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアが、式(2)、式(4)及び式(5)
【化4】

(式中、Rは、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基である。)
【化5】

(式中、Rは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。)
【化6】

(式中、Rは、炭素数6〜12の脂環式炭化水素基であり、Rは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。)
で表されるジウレア化合物を含むウレアであり、
ウレアC:芳香族(ARA)/脂肪族(ALA)の置換基をもつジウレア化合物を含むウレアが、式(1)、式(4)及び式(6)
【化7】

(式中、Rは、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基である。)
【化8】

(式中、Rは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。)
【化9】

(式中、Rは、炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基であり、Rは、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基である。)
で表されるジウレア化合物を含むウレアである請求項1に記載したピボットアッシー軸受用グリース組成物。
【請求項3】
混合ウレアとしてウレアA及びウレアBを使用した請求項1又は請求項2に記載したグリース組成物。
【請求項4】
混合ウレアとしてウレアB及びウレアCを使用した請求項1又は請求項2に記載したグリース組成物。
【請求項5】
混合ウレアとしてウレアA及びウレアCを使用した請求項1又は請求項2に記載したグリース組成物。
【請求項6】
混合ウレアとしてウレアA、ウレアB及びウレアCを使用した請求項1又は請求項2に記載したグリース組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載したグリースを充填したピボットアッシー用軸受。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−112998(P2007−112998A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255510(P2006−255510)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000228486)日本グリース株式会社 (8)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】