説明

ピマバンセリンと他の薬剤との併用投与

本明細書中で開示するように、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤との併用投与は、薬剤の有効性に相乗効果を及ぼすことができる。本明細書中で開示するのは、ピマバンセリンを、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬物との組合せで含む組成物である。さらに、本明細書中で開示するのは、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態を改善または治療する方法であって、ピマバンセリンを、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と組み合わせて投与することを含むことができる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願情報
本願は、米国特許仮出願第60/974,426号、2007年9月21日出願、発明の名称「N−SUBSTITUTED PIPERIDINE DERIVATIVES AS SEROTONIN RECEPTOR AGENTS」;同第60/986,250号、2007年11月7日出願、発明の名称「CO−ADMINISTRATION OF PIMAVANSERIN WITH OTHER AGENTS」および同第61/050,976号、2008年5月6日出願、発明の名称「CO−ADMINISTRATION OF PIMAVANSERIN WITH OTHER AGENTS」の優先権を主張するものであり、これらの文献は全て、あらゆる目的において、全ての図面を含めその全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0002】
背景
分野
本願は、化学および医薬の分野に関する。より詳細には、本明細書中では、コリン作動異常(cholinergic abnormality)を特徴とするものなどの疾患状態を治療するために使用できる方法および組成物が開示される。
【0003】
関連技術の説明
アルツハイマー病など認知障害を伴う状態は、脳の中のアセチルコリンの喪失を伴う。これは、より上流の過程において決定的に重要に関与する関連皮質および海馬など脳の複数の領域を広く神経支配する、前脳基底核中のコリン作動性ニューロンが変性した結果と考えられる。
【0004】
アセチルコリン合成のための前駆体であるコリンのレベルを増やすこと、および、アセチルコリンを代謝する酵素であるアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を遮断することについては、アセチルコリンレベルを増やす試みに焦点が当てられてきた。これまで、コリンまたはホスファチジルコリンの投与により中枢のコリン作動性機能を高める試みは成功していない。AChE阻害薬は、治療的な有効性を示してはいるが、腹部疝痛、悪心、嘔吐および下痢など、末梢介在部および中枢介在部でのアセチルコリンの過剰な増加による頻繁なコリン作動性副作用があることが見出されている。このような消化器系の副作用は、治療される患者の約3分の1において観察されている。加えて、タクリンなどいくつかのAChE阻害薬は、患者の約30%において観察される、肝臓トランスアミナーゼが上昇している顕著な肝毒性を引き起こすことも見出されている。したがって、AChE阻害薬の有害作用は、その臨床的有用性を大幅に制限している。
【0005】
アセチルコリン受容体のムスカリン性Mサブタイプを直接作動させることによるアセチルコリン作動性の伝達減少の効果を改善するための試みは成功しないことが証明されているが、その理由は、公知のムスカリン性作動薬は多様なムスカリン性受容体サブタイプでの作用が特異性を欠き、その結果、その臨床的有用性を制限する用量制限副作用がもたらされることである。例えば、Mムスカリン性作動薬アレコリンは、MだけでなくMムスカリン性受容体サブタイプの作動薬であることが見出されており、認知障害の治療においてあまり有効ではなく、これは恐らく、MおよびM受容体が介在する用量制限副作用が理由である。同様に、キサノメリン(Shannonら、J.Pharmacol.Exp.Ther.、1994、269、271;Shannonら、Schizophrenia Res.、2000、42、249)は、アルツハイマー病患者における精神病性行動の症状を低下させることが示されているM/M選択性のムスカリン性受容体作動薬である(Bodickら、Arch.Neurol.、1997、54、465)が、その臨床的有用性を大幅に制限する治療誘導性の副作用が生じる難点もある。
【0006】
概要
本明細書中に記載の一実施形態は、ピマバンセリンまたはその塩、溶媒和物、多形もしくは単離された実質的に純粋な代謝産物と、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とを含むことができる組成物に関する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬であってもよい。一実施形態では、コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬およびブチリルコリンエステラーゼ阻害薬から選択できる。例示的なコリンエステラーゼ阻害薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:メトリホネート、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、ピリドスチグミン、アムベノニウム、デマルカリウム(demarcarium)、リバスチグミン、アルジカルブ、ベンジオカルブ、ブフェンカルブ、カルバリル、カルベンダジム、カルベタミド、カルボフラン、クロルブファム、クロロプロファム、エチオフェンカルブ、ホルメタネート、メチオカルブ、メトミル、オキサミル、フェンメジファム、ピンミカルブ(pinmicarb)、ピリミカルブ、プロパモカルブ、プロファム、プロポクスル、ガランタミン、ドネペジル(E−2020)、タクリン、エドロホニウム、フェノチアジン、エコチオフェート、フルオロリン酸ジイソプロピル、ジメボン、Huperzine A、T−82((2−[2−(1−ベンジルピペリジン−4−イル)エチル]−2,3−ジヒドロ−9−メトキシ−1H−ピロロ[3,4−b]キノリン−1−オンヘミフマレート))、TAK−147(ザナペジル)、フェンセリン、キロスチグミン、ガンスチグミン、ブチロフェノン、イミプラミン、トロペート(tropate)、フェンシクリジン、クラーレ様薬物(curariform)、エテホン、エトプロパジン、イソ−OMPA、テトラヒドロフロベンゾフランシムセリン、Nフェネチルノルシムセリン、N−ベンジルノルシムセリン、N,N−ビスノルシムセリン、N−N−ビスベンジルノルフィゾスチグミン、N,N−ビスベンジルノルフェンセリンおよびN,N−ビスベンジルノルシムセリン。一実施形態では、コリンエステラーゼ阻害薬はタクリンであってもよい。
【0007】
他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、ムスカリン性受容体作動薬であってもよい。適当なムスカリン性受容体作動薬の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:キサノメリン、カルバミルコリン、オキソトレモリン、メタコリン、ベタネコール、セビメリン(AFI02B)、AF150(S)、AF267B、アセクリジン、アレコリン、ミラメリン、タルサクリジン、ピロカルピンおよび(S)−2−エチル−8−メチル−1−チア−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−3−オン(Torrey Pines NGX267)。一実施形態では、ムスカリン性受容体作動薬は、キサノメリンであってもよい。
【0008】
さらに他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、グルタミン酸作動性拮抗薬であってもよい。適当なグルタミン酸作動性拮抗薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:アマンタジン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、イボガイン、ケタミン、トラマドール、メタドンおよびメマンチン。一実施形態では、グルタミン酸作動性拮抗薬はメマンチンであってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、コリン作動薬であってもよい。例示的なコリン作動薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:プラミラセタム、ピラセタム、オキシラセタム、コリン−L−アルホスセレート(alfoscerate)、ネブラセタム、ベシピルジンおよびタルチレリン。
【0010】
他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、カルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬であってもよい。例示的なカルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:レボカルニチン、ST−200(アセチル−1−カルニチン)およびネフィラセタム。
【0011】
さらに他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、アセチルコリン放出刺激薬であってもよい。例示的なアセチルコリン放出刺激薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:SIB−1553A((+/−)−4−[[2−(1−メチル−2−ピロリジニル)エチル]チオ]フェノールヒドロクロリド)およびT−588((1R)−1−ベンゾ[b]チオフェン−5−イル−2−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]エタン−1−オールヒドロクロリド)。
【0012】
さらに他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、コリン取込刺激薬であってもよい。一実施形態では、コリン取込刺激薬は、MKC−231(2−(2−オキソピロリジン−1−イル)−N−(2,3−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロフロ[2,3−b]キノリン−4−イル)アセトアミド)であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、ニコチン性アセチルコリン受容体作動薬であってもよい。適当なニコチン性アセチルコリン受容体作動薬の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:ニコチン、ABT−418、ABT−089、SIB−1508Y、A−582941、DMXB−A、Sazetidine−A、VareniclineおよびTC−1734。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、5−HT6拮抗薬および/または5−HT6逆作動薬であってもよい。適当な5−HT6拮抗薬および/または5−HT6逆作動薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:SB−742457、SB−271046、SB−399885、SB−357134、SB−258585、RO−436854、RO−0406790およびRO−65−7674。
【0015】
本明細書中に記載の別の実施形態は、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態を改善または治療する方法であって、治療上有効量の本明細書中に記載の1つまたは複数の組成物を、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態に罹患している対象に投与することを含むことができる方法に関する。
【0016】
本明細書中に記載のさらに別の実施形態は、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態を改善または治療する方法であって、治療上有効量のピマバンセリンを、治療上有効量の1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤(本明細書中に記載のものなど)と組み合わせて、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態に罹患している対象に投与することを含むことができる方法に関する。一実施形態では、ピマバンセリンは、該薬剤の前に投与できる。別の実施形態では、ピマバンセリンは、該薬剤の後に投与できる。さらに別の実施形態では、ピマバンセリンは、該薬剤とほぼ同時に投与できる。例示的な疾患状態としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:神経精神障害、神経変性障害および錐体外路障害。適当な疾患状態の他の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:認知障害、健忘症、錯乱、記憶喪失、注意欠陥障害、鬱病、疼痛、睡眠障害、精神病、幻覚、攻撃性およびパラノイア。一実施形態では、精神病は、薬物誘導性精神病、治療誘導性精神病、および、疾患に伴う精神病から選択できる。いくつかの実施形態では、精神病を伴う疾患は、認知症、心的外傷後ストレス障害、アルツハイマー病、パーキンソン病および統合失調症であってもよい。一実施形態では、精神病は、アルツハイマー病誘導性の精神病であってもよい。一実施形態では、精神病は、統合失調症誘導性の精神病であってもよい。一実施形態では、精神病は、認知症に関連する精神病であってもよい。さらに他の例示的な疾患状態としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、フリードライヒ運動失調症(Friederich's ataxia)、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、ダウン症候群、ピック病、認知症、臨床的鬱病、加齢関連認知低下、注意欠陥障害、乳幼児突然死症候群および緑内障。一実施形態では、疾患状態は、アルツハイマー病であってもよい。いくつかの実施形態では、疾患状態は、認知障害であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】アンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示し、移動距離をタクリン投与量の関数として示すグラフである。
【図2】アンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示し、阻害率(%)をタクリン投与量の関数として示すグラフである。
【図3】アンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示し、移動距離をキサノメリン投与量の関数として示すグラフである。
【図4】アンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示し、阻害率(%)をキサノメリン投与量の関数として示すグラフである。
【図5】新規物体認識試験の結果を示し、新規物体の探索に費やされる時間の比率(%)をタクリン投与量の関数として示す棒グラフである。
【図6】新規物体認識試験の結果を示し、投与された薬物または複数薬物の組合せに関連し、新規物体の探索に費やされる時間の比率(%)を示す棒グラフである。
【図7】アンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示し、移動距離を時間の関数として示すグラフである。
【図8】アンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示し、移動距離を時間の関数として示すグラフである。
【図9】Mノックアウトマウスにおけるアンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示し、移動距離をピマバンセリン投与量の関数として示すグラフである。
【図10】Mノックアウトマウスにおけるアンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示し、阻害率(%)をピマバンセリン投与量の関数として示すグラフである。
【0018】
詳細な説明
別に定義しない限り、本明細書中で使用する全ての専門用語および科学用語は、当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で参照される全ての特許、出願、公開済みの出願および他の刊行物は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0019】
1つまたは複数のキラル中心を有する本明細書中に記載の一切の化合物において、絶対立体化学が明確に示されていなければ、その場合、各中心は独立に、R立体配置もしくはS立体配置のものまたはその混合物であってもよいことは理解される。したがって、本明細書中で提供される化合物は、鏡像異性体的に純粋であるか、または立体異性体混合物であってもよい。加えて、幾何異性体を生じさせる1つまたは複数の二重結合(複数可)(EまたはZと規定できる)を有する本明細書中に記載の一切の化合物において、各二重結合は独立に、EもしくはZまたはその混合であってもよいことは理解される。同様に、全ての互変異性の形態が含まれることも意図している。
【0020】
「作動薬」は、受容体の定常活性(すなわち、受容体が介在するシグナル伝達)を増加させる化合物と定義される。
【0021】
「逆作動薬」は、受容体の定常活性(すなわち、受容体が介在するシグナル伝達)を減少させる化合物と定義される。そのような化合物は、負拮抗薬(negative antagonist)としても知られる。逆作動薬は、一切のリガンドが存在しない状況で生じる定常状態と比較して不活性な状態を受容体に受け入れさせる、受容体に対するリガンドである。したがって、拮抗薬は作動薬の活性を阻害できるのに対し、逆作動薬は、作動薬が存在しない状況において受容体の立体配置を変化させることができるリガンドである。逆作動薬の概念は、BondらによりNature、374、272(1995)において検討されている。より具体的には、Bondらは、不活性な立体配置と自発的活性のある立体配置との間が平衡状態である場合には、リガンドに結合していないβ−アドレノセプターが存在すると述べた。作動薬は、活性のある立体配置をとる受容体を安定化させると述べられている。逆に、逆作動薬は、受容体の不活性な立体配置を安定化させると考えられる。したがって、拮抗薬が、作動薬を阻害することによりその活性を示すのに対し、逆作動薬は、リガンドに結合していない受容体が活性のある立体配置に自発的に変換することを阻害することにより、作動薬が存在しない状況においてその活性を追加的に示すことができる。
【0022】
本明細書中で使用する場合、「拮抗薬」は、受容体への結合について作動薬または逆作動薬と競合することにより受容体上での作動薬または逆作動薬の作用を遮断する化合物を指す。拮抗薬は、受容体上の作動薬の作用を弱める。しかし、拮抗薬(「中立的な作動薬」としても知られる)は、構成的な受容体活性に影響を及ぼさない。拮抗薬は、可逆的または不可逆的に結合してもよく、拮抗薬が代謝されるか、または分離されるか、または物理的もしくは生物学的な過程により他の形で除去されるまで、受容体の活性を低下させてもよい。
【0023】
本明細書中で使用する場合、用語「純粋な」、「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」は、他の異なる化合物と結合していない本実施形態の化合物(該化合物は、自然な状態で見出される場合には、その自然な状態で該他の異なる化合物と結合すると考えられる)を指す。本明細書中で「純粋な」、「精製された」、「実質的に精製された」または「単離された」と記載されるいくつかの実施形態では、化合物は、所与の試料の質量(重量%)の少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、99%を含んでもよい。
【0024】
ピマバンセリン、別名、N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N−(4−フルオロフェニルメチル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド、N−[(4−フルオロフェニル)メチル]−N−(1−メチル−4−ピペリジニル)−N’−[[4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]メチル]ウレア、1−(4−フルオロベンジル)−1−(1−メチルピペリジン−4−イル)−3−[4−(2−メチルプロポキシ)ベンジル]ウレアまたはACP−103は、式(I):
【0025】
【化1】


の構造を有する。
【0026】
ピマバンセリンは、セロトニン受容体で活性を呈し、5−HT2A受容体の逆作動薬として作用する。5−HT2A受容体のヒト表現型を一過性に発現する細胞について実施する実験から、受容体に対して作用する追加的なリガンドが存在しない状況では、ピマバンセリンは、当該受容体のシグナル伝達を弱めることが示されている。したがって、ピマバンセリンは、5−HT2A受容体で逆作動薬活性を有することが見出されており、この受容体が示す、作動薬に刺激されていない定常的で構成的なシグナル伝達応答を弱めることが可能である。ピマバンセリンが5−HT2A受容体の逆作動薬であるという観察は、この薬物が、内因性作動薬または外因性の合成作動薬リガンドが介在する5−HT2A受容体の活性化を拮抗させる能力を有することを示唆してもいる。ピマバンセリンは、5−HT2A受容体への高い親和性を呈し、pK>9である。in vivoでのヒトおよび非ヒト動物の試験から、ピマバンセリンは抗精神病活性、抗運動障害活性および抗不眠症活性を呈することがさらに示されている。ピマバンセリンのそのような特性は、米国特許公開第2004−0213816号、2004年1月15日出願、発明の名称「SELECTIVE SEROTONIN 2A/2C RECEPTOR INVERSE AGONISTS AS THERAPEUTICS FOR NEURODEGENERATIVE DISEASES」中に記載があり、同文献は、参照により、一切の図面を含めその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0027】
ピマバンセリンは、5−HT2A受容体で選択的な活性を呈する。具体的には、ピマバンセリンは36個のヒトモノアミン作動性受容体のうち31個で機能活性をもたず(pEC50またはpKが<6)、そのような受容体としては、5−HT1A、5−HT1B、5−HT1D、5−HT1E、5−HT1F、5−HT2B、5−HT3、5−HT4、5−HT6A、5−HT7A、アドレナリン作動性α1A、アドレナリン作動性α1B、アドレナリン作動性α1D、アドレナリン作動性α2A、アドレナリン作動性α2B、アドレナリン作動性β2、ドパミンD1、ドパミンD2、ドパミンD3、ドパミンD4、ヒスタミンH1、ヒスタミンH2およびヒスタミンH3が挙げられる。したがって、ピマバンセリンは、5−HT2A受容体での親和性が高く、他の大部分のモノアミン作動性受容体との親和性はほとんど乃至全くない。一実施形態では、ピマバンセリンは、D2およびD4受容体を含めたドパミン受容体に対し6未満のpKを呈する。
【0028】
加えて、ピマバンセリンは、高い安定性、経口での良好な生体利用率および長い半減期を呈する。具体的には、ピマバンセリンは、in vitroでのヒトミクロソームからのクリアランス速度は遅く(1mg当たり<10μL/分)、ヒトへの経口投与時にはおよそ55時間の半減期を呈した。
【0029】
1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と共に、多様な形態のピマバンセリンを組成物中で使用できる。例えば、いくつかの塩および結晶の形態のピマバンセリンを使用できる。例示的な塩としては、酒石酸塩、ヘミ酒石酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩およびエジシル酸(エタンジスルホン酸)塩が挙げられる。前述のイオンを含めたピマバンセリンの塩は、中でも、米国特許公開第2006−0111399号、2005年9月26日出願、発明の名称「SALTS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND THEIR PREPARATION」中に記載があり、同文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。酒石酸塩の2つの結晶形態は、それぞれ、A型結晶およびC型結晶と呼ばれ、米国特許公開第2006−0106063号、2005年9月26日出願、発明の名称「SYNTHESIS OF N−(4−FLUOROBENZYL)−N−(1−METHYLPIPERIDIN−4−YL)−N’−(4−(2−METHYLPROPYLOXY)PHENYLMETHYL)CARBAMIDE AND ITS TARTRATE SALT AND CRYSTALLINE FORMS」中に記載があり、同文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。米国特許公開第2007−0260064号、2007年5月15日出願、および、同第2007−0264330号、2007年5月15日出願、それぞれの発明の名称「PHARMACEUTICAL FORMULATIONS OF PIMAVANSERIN」中に、より詳細な記載があるものなど、ピマバンセリン(例えば酒石酸塩など)を錠剤に製剤してもよく、これらの文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0030】
同様に、ピマバンセリンの単離された実質的に純粋な代謝産物も使用できる。使用できる適当な代謝産物は、下記に示す式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の化学構造を有する。
【0031】
【化2−1】


【化2−2】

【0032】
本明細書中に記載のとおりの式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物は、多様な形式で調製できる。式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物に至る一般的な合成経路をスキームA〜Eに示す。示してある経路は例証的なものにすぎず、それがどのようなものであれ、本発明の範囲をいかなる様式であろうとも限定することを意図してもいなければ、そのように解釈されるべきでもない。当業者であれば、開示された合成の改変形を認識し、本明細書中の開示内容に基づく代替的な経路を工夫することが可能と思われるが、そのような全ての改変形および代替的な経路は、本発明の範囲内である。
【0033】
スキームA
【化3】

【0034】
スキームAは、式(II)の化合物を形成するための一般的な反応スキームを示すものである。スキームAに示すように、二級アミンとイソシアネートとを合わせて式(II)の化合物の4−メトキシベンジル誘導体を作製できる。メトキシ基は、当業者に公知の方法を使用して、例えば、三ハロゲン化ホウ素を使用して式(II)の化合物を形成することで、ヒドロキシ基に変換できる。
【0035】
スキームB
【化4】

【0036】
式(III)の化合物を合成するための例示的な方法をスキームBに示す。保護された4−ピペリドイノン(piperidoinone)および4−フルオロベンジルアミンは、還元的アミノ化を受けてN−(4−フルオロベンジル)−4−アミノ−1−トリフルオロアセチルピペリジンを形成できる。次に、その結果生じる二級アミンを適切なイソシアネートと反応させて、窒素保護されたカルバミドを形成できる。炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩を使用してアシル保護基を切断して、式(III)の化合物を形成できる。
【0037】
スキームC
【化5】

【0038】
式(IV)の化合物を合成するための1つの方法をスキームCに示す。エポキシドの求核開環により、式(II)の化合物を酸化イソブチレンと反応させて式(IV)の化合物を形成できる。
【0039】
スキームD
【化6】

【0040】
スキームDは、式(V)の化合物を形成するための一般的な反応スキームを示すものである。スキームDに示すように、式(II)の化合物をハロヒドリンと反応させて式(V)の化合物を形成できる。本明細書中に記載の全ての化合物は、当業者に公知の方法を用いて精製できる。
【0041】
スキームE
【化7】

【0042】
式(VI)の化合物を合成するための方法の一例をスキームEに示す。スキームEに示すように、N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N−(4−フルオロフェニルメチル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドを、適当な酸化剤を用いて酸化させて、式(VI)の化合物を形成できる。適当な酸化剤は当業者に公知である。適当な酸化剤の一例は、メタクロロ過安息香酸である。本明細書中に記載の全ての化合物は、当業者に公知の方法を用いて精製できる。
【0043】
本発明においてピマバンセリンを使用するとき、その塩、水和物、多形および単離された実質的に純粋な代謝産物を、個別または組み合わせた形のいずれかで、ピマバンセリンの代わりに使用できるであろうことは理解される。一実施形態では、使用できるピマバンセリンの形態は、その酒石酸塩である。
【0044】
本明細書中で開示するいくつかの実施形態は、ピマバンセリンを、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と併用投与することに関する。「併用投与」または「組合せ」での投与とは、2つ以上の薬剤が対象の血流中で同時に見出されることがあることを意味し、薬剤が実際に投与される時期または様式を問わない。いくつかの実施形態では、ピマバンセリンは、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と、ほぼ同時に投与できる。本明細書中で使用する場合、ほぼ同時に、とは、実質的に同時であるか、または、間に測定可能な長さの時間がはさまれないことを意味する。例えば、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とを単一剤形の形で合わせることにより同時投与が達成できる。別の実施形態では、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とは、逐次的に投与できる。例えば、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とは、それぞれ、別々の用量として製剤できる。一実施形態では、ピマバンセリンは、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤の前に投与できる。別の実施形態では、ピマバンセリンは、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤の後に投与できる。別の実施形態では、測定可能な長さの時間が各投与間で経過する。一実施形態では、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とは、経口など同じ経路により投与できる。別の実施形態では、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とは、一方が経口投与されており、他方が静脈内投与(i.v.)されているなど、異なる経路により投与される。一実施形態では、ピマバンセリンの薬物動態と1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤の薬物動態とは、実質的に同じである。
【0045】
驚くべきことに、ピマバンセリンと、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤との併用投与は、薬剤の有効性に相乗的に影響を及ぼすことができることが見出されている。本明細書中で開示するいくつかの実施形態は、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とを含むことができる組成物に関する。本明細書中で開示するいくつかの実施形態は、相乗効果を達成するために、ピマバンセリンを、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と組み合わせて投与することにより疾患状態を治療または改善する方法に関する。一実施形態では、この薬剤は、Mムスカリン性受容体の活性を促進できる。
【0046】
先に述べたように、ピマバンセリンを、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と組み合わせて投与すると、薬剤の有効性を相乗的に高めることが見出されている。コリン作動異常を改善する薬剤は、さまざまな機序により作用してもよく、そのような機序としては以下が挙げられるがこれらに限定されない:アセチルコリン濃度を高めること、ムスカリン性受容体(例えばM1受容体)の活性を高めること、コリン輸送における交互性を正すこと、アセチルコリン放出障害を正すこと、ニコチン性およびムスカリン性の受容体の発現不足に対処すること、ニューロトロフィンの支持機能障害を正すこと、および/または軸索の支持(axonal support)不足を正すこと。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬、ムスカリン性作動薬、グルタミン酸作動性拮抗薬、コリン作動薬、カルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬、アセチルコリン放出刺激薬およびコリン取込刺激薬から選択できる。
【0047】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬であってもよい。一実施形態では、コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬およびブチリルコリンエステラーゼ阻害薬から選択できる。例示的なコリンエステラーゼ阻害薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:メトリホネート、エコチオフェートおよびフルオロリン酸ジイソプロピルなどの有機ホスフェート;フィゾスチグミン、ネオスチグミン、ピリドスチグミン、アムベノニウム、デマルカリウム、リバスチグミン、アルジカルブ、ベンジオカルブ、ブフェンカルブ、カルバリル、カルベンダジム、カルベタミド、カルボフラン、クロルブファム、クロロプロファム、エチオフェンカルブ、ホルメタネート、メチオカルブ、メトミル、オキサミル、フェンメジファム、ピンミカルブ、ピリミカルブ、プロパモカルブ、プロファムおよびプロポクスルなどのカルバメート;ガランタミンなどのフェナントリン(phenanthrine)誘導体;ドネペジルなどのピペリジン;タクリン;エドロホニウム;フェノチアジン;ジメボン(3,6−ジメチル−9−(2−メチルピリジル−5)−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−γ−カルボリンジヒドロクロリド);Huperzine A;T−82((2−[2−(1−ベンジルピペリジン−4−イル)エチル]−2,3−ジヒドロ−9−メトキシ−1H−ピロロ[3,4−b]キノリン−1−オンヘミフマレート));TAK−147(ザナペジル);フェンセリン;キロスチグミン;ガンスチグミン;ならびに、ブチロフェノン、イミプラミン、トロペート、フェンシクリジン、クラーレ様薬物、エテホン、エトプロパジン、イソ−OMPA、テトラヒドロフロベンゾフランシムセリン、Nフェネチルノルシムセリン、N−ベンジルノルシムセリン、N,N−ビスノルシムセリン、N−N−ビスベンジルノルフィゾスチグミン、N,N−ビスベンジルノルフェンセリンおよびN,N−ビスベンジルノルシムセリンなどのブチルコリンエステラーゼ阻害薬。
【0048】
他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、ムスカリン性作動薬であってもよい。例示的なムスカリン性受容体作動薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:キサノメリン、カルバミルコリン、オキソトレモリン、メタコリン、ベタネコール、セビメリン(AF102B)、AF150(S)、AF267B、アセクリジン、アレコリン、ミラメリン、タルサクリジン、ピロカルピンおよび(S)−2−エチル−8−メチル−1−チア−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−3−オン(Torrey Pines NGX267)。一実施形態では、ムスカリン性作動薬は、キサノメリンであってもよい。
【0049】
さらに他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、グルタミン酸作動性拮抗薬であってもよい。例示的なグルタミン作動性拮抗薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:メマンチン、アマンタジン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、イボガイン、ケタミン、トラマドールおよびメタドン。
【0050】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、コリン作動薬であってもよい。例示的なコリン作動薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:プラミラセタム、ピラセタム、オキシラセタム、コリン−L−アルホスセレート、ネブラセタム、ベシピルジンおよびタルチレリン。
【0051】
他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、カルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬であってもよい。例示的なカルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:レボカルニチン、ST−200(アセチル−1−カルニチン)およびネフィラセタム。
【0052】
さらに他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、アセチルコリン放出刺激薬であってもよい。例示的なアセチルコリン放出刺激薬としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:SIB−1553A((+/−)−4−[[2−(1−メチル−2−ピロリジニル)エチル]チオ]フェノールヒドロクロリド)およびT−588((1R)−1−ベンゾ[b]チオフェン−5−イル−2−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]エタン−1−オールヒドロクロリド)。
【0053】
さらに他の実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、コリン取込刺激薬であってもよい。一実施形態では、コリン取込刺激薬は、MKC−231(2−(2−オキソピロリジン−1−イル)−N−(2,3−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロフロ[2,3−b]キノリン−4−イル)アセトアミド)であってもよい。
【0054】
本明細書中で開示する他の実施形態は、ピマバンセリンと、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と、薬学上許容される塩、担体、賦形剤および/または添加剤とを含むことができる医薬組成物に関する。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「薬学上許容される塩」は、化合物の生物学的な活性および特性を妨げない化合物の塩を指す。医薬塩は、本明細書中で開示する化合物を酸または塩基と反応させることにより得ることができる。塩基により形成される塩としては、限定するものではないが以下が挙げられる:アンモニウム塩(NH);アルカリ金属(限定するものではないが、ナトリウムまたはカリウムなど)の塩;アルカリ土類(限定するものではないが、カルシウムまたはマグネシウムなど)の塩;有機塩基(限定するものではないが、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなど)の塩;およびアミノ酸(限定するものではないが、アルギニンおよびリシンなど)のアミノ基を有する塩。有用な酸ベースの塩としては、限定するものではないが以下が挙げられる:塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびサリチル酸塩。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「担体」は、細胞または組織の中への化合物の組込みを容易にする化合物を指す。例えば、限定するものではないが、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、対象の細胞または組織の中への多くの有機化合物の取込みを容易にする、一般に利用される担体である。
【0057】
本明細書中で使用する場合、「賦形剤」は、薬理活性には欠けるが薬学的に必要または望ましい可能性のある、組成物中の成分を指す。例えば、賦形剤は、製造または投与するにはその質量が小さすぎる効能のある薬物の体積を増やすために使用してもよい。賦形剤は、注射、摂取または吸入により投与するために薬物を溶解させるための液体であってもよい。当技術分野における賦形剤の一般的な形態は、限定するものではないが、ヒトの血液の組成を模したリン酸緩衝生理食塩水などの緩衝水溶液である。
【0058】
本明細書中で使用する場合、「添加剤」は、限定するものではないが、体積、粘稠性、安定性、結合能力、潤滑性、分解能力などを組成物にもたらすために組成物に加えられる不活性な物質を指す。「賦形剤」は、添加剤の一種である。
【0059】
本明細書中で開示する医薬組成物は、それ自体が公知の様式で、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、封入または打錠の工程により製造してもよい。妥当な製剤は、選択する投与経路によって決まる。本明細書中に記載の組成物の製剤手法は、当業者に公知である。活性成分は、その意図される目的を達成するのに有効な量で含有される。本明細書中で開示する医薬の組合せで使用される化合物の多くは、薬学的に相容な対イオンを有する塩として供給してもよい。
【0060】
本明細書中で開示するいくつかの実施形態は、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態を改善または治療する方法であって、治療上有効量のピマバンセリンと、治療上有効量の1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とを、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態に罹患している対象に投与することを含むことができる方法に関する。コリン作動異常としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:コリン輸送における交互性、アセチルコリン放出障害、ニコチン性およびムスカリン性の受容体の発現不足、ニューロトロフィンの支持機能障害および軸索輸送の不足。前述のものは、健常対象と比較した場合の異常として分類される。本明細書中で開示する他の実施形態は、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態を改善または治療する方法であって、治療上有効量のピマバンセリンと、治療上有効量の1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とを、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態に罹患している対象に投与することを含むことができる方法に関する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬、ムスカリン性作動薬およびグルタミン酸作動薬から選択できる。一実施形態では、この薬剤は、Mムスカリン性受容体の活性を促進する。
【0061】
本明細書中で開示する組成物による治療に適した状態としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:認知障害、健忘症、錯乱、記憶喪失、注意欠陥障害、視覚欠損、鬱病、疼痛、睡眠障害、精神病、眼内圧上昇、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、ハンチントン舞踏病、フリードライヒ運動失調症(Friederich's ataxia)、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、ダウン症候群、ピック病、認知症、臨床的鬱病、加齢関連認知低下、注意欠陥障害、乳幼児突然死症候群、緑内障、躁病、双極性障害、単極性障害、分裂感情障害、統合失調症様障害および不安。統合失調症以外の他の原因の精神病(薬物誘導性および治療誘導性のものなど)、認知症および他の神経変性障害(ハンチントン病およびアルツハイマー病など)を伴う精神病も適当であることに注目すべきである。
【0062】
いくつかの実施形態では、神経精神障害を治療、改善または防止するために、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤とを組み合わせて投与でき、このような障害としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:統合失調症、分裂感情障害、躁病、鬱病(気分変調、治療抵抗性鬱、および精神病を伴う鬱など)、認知障害、攻撃性(衝動的攻撃性など)、パニック発作、強迫性障害、境界性人格障害、境界性障害、多重性発達障害(multiplex developmental disorder)(MDD)、行動障害(加齢関連認知症に伴う行動障害など)、精神病(認知症に伴う精神病、パーキンソン病の治療など、治療により誘導されるか、または心的外傷後ストレス障害に伴うものなど)、自殺傾向、双極性障害、睡眠障害(睡眠維持不眠症、慢性不眠症、一過性不眠症および睡眠時周期性四肢運動(PLMS)など)、中毒(薬物中毒またはアルコール中毒、オピオイド中毒およびニコチン中毒など)、注意欠陥多動障害(ADHD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、トゥレット症候群、不安(全般性不安障害(GAD)など)、自閉症、ダウン症候群、学習障害、心身障害、アルコール離脱、てんかん、疼痛(慢性疼痛、神経因性疼痛、炎症性疼痛、糖尿病の末梢神経障害、線維筋痛症、ヘルペス後神経痛および反射性交感神経性ジストロフィーなど)、低グルタミン酸作動症(hypoglutamatergia)に伴う障害(統合失調症、小児自閉症および認知症など)およびセロトニン症候群。
【0063】
いくつかの実施形態では、ピマバンセリンは、神経変性障害を治療、改善または防止するために、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と組み合わせて投与できる。例示的な神経変性障害としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:アルツハイマー病(アルツハイマー病に伴う精神病および/または認知症など)、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳萎縮症、前頭側頭認知症、核上麻痺またはレヴィー小体型認知症。一実施形態では、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤との併用投与は、精神病を伴うアルツハイマー病を治療するために使用できる。いくつかの実施形態では、治療できるアルツハイマー病に伴う症状としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:激越、攻撃性、妄想、幻覚、鬱病、不眠症および不安。
【0064】
いくつかの実施形態では、ピマバンセリンは、錐体外路障害を治療、改善または防止するために、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と組み合わせて投与できる。錐体外路障害の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:運動障害(パーキンソン病の治療により誘導されるものなど)、運動緩徐、硬直、精神運動遅滞、チック、静坐不能(神経遮断剤またはSSRI剤により誘導されるものなど)、フリードライヒ運動失調症(Friedrich's ataxia)、マシャド・ジョゼフ病、ジストニア、振戦、下肢静止不能症候群および筋クローヌス。
【0065】
いくつかの実施形態では、ピマバンセリンは、精神病を治療、改善または防止するために、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と組み合わせて投与できる。精神病の機能的原因としては、以下を挙げることができる:統合失調症;双極性障害;重篤な臨床的鬱病;重篤な心理社会的ストレス;睡眠遮断;脳腫瘍などの神経障害;レヴィー小体を伴う認知症;多発性硬化症;類肉腫症;低カルシウム血症、高ナトリウム血症、低ナトリウム血症(hyonatremia)、低カリウム血症(hyopkalemia)、低マグネシウム血症、高マグネシウム血症、高カルシウム血症、低リン酸血症および低血糖症などの電解質障害;ループス;AIDS;ハンセン病;マラリア;インフルエンザ;耳下腺炎;向精神薬中毒症;アルコール、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、抗コリン薬、アトロピン、スコポラミン、シロバナチョウセンアサガオ、抗ヒスタミン薬、コカイン、アンフェタミン、ならびに、大麻、LSD、シロサイビン、メスカリン、MDMAおよびPCPなどの幻覚発現物質などの離脱。精神病は、妄想、幻覚、解体した会話、解体した行動、現実の著しい歪曲、精神力低下、情動応答低下、変動する意識レベル、乏しい運動協調性、単純な精神的作業の実行不能、人物、場所または時間に関する失見当識、錯乱および/または記憶障害などの症状を含んでもよい。一実施形態では、対象は、精神病の急性的な悪化を経験中であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の組合せは、統合失調症を治療するために使用できる。一実施形態では、精神病は、統合失調症を伴うものであってもよい。一実施形態では、対象は、抗精神病療法に対して、以前応答を呈したことがあるか、または、現在応答を呈している。一実施形態では、対象は、中等度の精神病状態を呈する。
【0066】
一実施形態では、ピマバンセリンと1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤との併用投与は、鬱病を治療、改善または防止するために使用できる。
【0067】
いくつかの実施形態では、ピマバンセリンは、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤が治療効果を発揮する能力を増強する。例えば、いくつかの実施形態では、ピマバンセリンは、コリンエステラーゼ阻害薬、ムスカリン性作動薬および/またはグルタミン酸作動性拮抗薬が治療効果を発揮する能力を増強する。いくつかの実施形態では、ピマバンセリンは、コリンエステラーゼ阻害薬、ムスカリン性作動薬、および/またはグルタミン酸作動性拮抗薬が精神病を治療し、および/または認知を高める能力を増強する。
【0068】
いくつかの実施形態では、ピマバンセリンの、1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤との併用投与は、以下を治療、改善または防止するために使用できる:化学療法誘導性の催吐、虚弱、オン/オフ現象、インスリン非依存性糖尿病、メタボリックシンドローム、自己免疫障害(ループスおよび多発性硬化症など)、敗血症、眼内圧上昇、緑内障、網膜疾患(加齢黄斑変性症など)、シャルル・ボネ症候群、薬物乱用、睡眠無呼吸、膵炎(pancreatis)、摂食障害、過食症、アルコール依存症に伴う障害、脳血管発作、筋萎縮性側索硬化症、AIDS関連の認知症、脳または脊髄の外傷性損傷、耳鳴り、閉経期の症状(のぼせなど)、性機能不全(女性の性機能不全、女性の性的覚醒機能不全、性的欲求低下障害、性欲低下、疼痛、嫌悪、女性のオルガスム障害および射精困難など)、男性の低生殖能力、精子の低運動性、抜け毛または毛髪痩せ、失禁、痔核、偏頭痛、高血圧症、血栓症(心筋梗塞、脳卒中、突発性の血小板減少性紫斑病、血栓性の血小板減少性紫斑病および末梢血管疾患に伴う血栓症など)、ホルモン活性異常(ACTH、コルチコステロン、レンニンまたはプロラクチンのレベル異常など)、ホルモン障害(クッシング病、アジソン病、および高プロラクチン血症など)、下垂体腫瘍(プロラクチン産生下垂体腺種など)、下垂体腫瘍に伴う副作用(高プロラクチン血症、不妊症、月経の変化、無月経、乳汁漏出、性欲減退、膣乾燥、骨粗鬆症、インポテンス、頭痛、失明および複視など)、血管攣縮、虚血、心不整脈、心不全、喘息、気腫および/または食欲障害。
【0069】
いくつかの実施形態では、ピマバンセリンは、精神病を治療、改善および/または防止するために使用できる。一実施形態では、精神病は、アルツハイマー病誘導性の精神病である。
【0070】
本明細書中で使用する場合、用語「治療すること」、「治療」、「治療上の」または「療法」は、疾患または状態の完全な治癒または消滅を必ずしも意味しない。疾患または状態の任意の望ましくない徴候または症状を任意の程度まで軽減することは全て、治療および/または療法と見なすことができる。さらに、治療は、対象の全体的な幸福感または外見を悪化させる可能性のある行為を含むことがある。
【0071】
用語「治療上有効量」は、表示される生物学的または医薬的な応答を引き出す活性化合物または薬剤の量を示すために使用される。例えば、治療上有効量の化合物は、疾患の症状を防止、軽減または改善するために必要な量であるか、または治療中の対象の生存を延長するものであってもよい。この応答は、組織、系、動物またはヒトにおいて生じるものであってもよく、治療中の疾患の症状の軽減を含む。治療上有効量の決定は、特に、本明細書中で提供される詳細な開示に照らせば、十分に当業者の能力の範囲内である。用量として必要な、本明細書中で開示する化合物の治療上有効量は、投与経路、治療対象である動物の種類(ヒトを含む)、および検討下の特定の動物の身体的特徴によって決まることになる。用量は、所望の効果を達成するように調整できるが、体重、食餌、併用する医薬および医療業界における当業者であれば認識するであろう他の因子などの因子によって決まることになる。
【0072】
本明細書中で使用する場合、「対象」は、治療、観察または実験の対象である動物を指す。「動物」は、魚、甲殻類、爬虫類、とりわけ哺乳動物など、冷血および温血の脊椎動物ならびに無脊椎動物を包含する。「哺乳動物」は、限定するものではないが、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長動物(サル、チンパンジーおよび類人猿、とりわけヒトなど)を包含する。
【0073】
本明細書中に記載の組成物は、それ自体で、または、他の活性成分(併用療法などの場合)もしくは担体、賦形剤、添加剤もしくはそれらの組合せと混合されている医薬組成物の形でヒト対象に投与できる。本明細書中に記載の組成物を投与するための手法は、当業者に公知である。適当な投与経路としては、例えば、経口投与、直腸投与、局所的な経粘膜投与または経腸投与を挙げることができ、非経口送達としては、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、髄内注射のみならず、くも膜下腔内注射、脳室内の直接注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、眼内注射またはエアロゾル吸入薬が挙げられる。
【0074】
この組成物は、全身的な様式ではなく局所的な様式で、例えば、感染領域中に直接、多くの場合デポ製剤または持続放出製剤の形で、化合物を注射することにより投与してもよい。
【0075】
この組成物は、必要に応じ、パックまたはディスペンサー装置に入れた状態で提供されてもよく、このようなパックまたはディスペンサー装置は、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有してもよい。パックは、例えば、ブリスターパックなど、金属またはプラスチックの箔を備えていてもよい。パックまたはディスペンサー装置は、投与のための使用説明書が添付されていてもよい。また、パックまたはディスペンサーは、医薬品の製造、使用または販売を規制する行政機関により規定された形態の容器に関連する注意書きが添付されていてもよく、この注意書きは、ヒトまたは動物に投与するための薬物の形態についての当局による認可を反映する。そのような注意書きは、例えば、処方薬または認可された製品挿入物について米国食品医薬品局により認可されたラベル表示であってもよい。適合する医薬担体中で製剤された、本明細書中に記載の化合物を含むことができる組成物は、表示された状態の治療用に、調製し、適切な容器に入れ、ラベル貼付してもよい。
【0076】
当業者には容易に明らかになろうが、投与される有用なin vivo投与量および特定の投与様式は、年齢、体重、苦痛の重篤度、および、治療される哺乳動物の種、採用される特定の化合物、およびこれらの化合物が採用される具体的な用途により変わる可能性がある(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」における記載を参照。同文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。とりわけ1章、1ページを参照)。有効な投与量レベル(所望の結果を達成するのに必要な投与量レベル)の決定は、慣用的な薬理学的方法を用いて当業者により達成できる。典型的に、製品のヒト臨床適用は、より低い投与量レベルで開始し、所望の効果が達成されるまで投与量レベルを増加させる。あるいは、確立された薬理学的方法を用いて本発明の方法により同定された組成物の有用な用量および投与経路を、許容されるin vitro試験を用いて確認できる。薬学上許容される塩の投与の場合は、投与量は遊離塩基として算出してもよい。
【0077】
正確な投与量は、薬物別に(on a drug-by-drug basis)で決定されるであろうが、ほとんどの場合、投与量に関してはいくらか一般化できる。典型的には、対象に投与される組成物の用量範囲は、対象の体重1kg当たり約0.5〜約1000mg、または対象の体重1kg当たり約1〜約500mg、または1kg当たり約10〜約500mg、または約50〜約100mgであってもよい。加えて、成人のヒト対象についての1日の投与量レジメンは、例えば、各成分の経口用量が約0.1mg〜約500mgの間、好ましくは約1mg〜約250mgの間、例えば約5〜約200mg、または、各成分の静脈内用量、皮下用量または筋肉内用量が約0.01mg〜約100mgの間、好ましくは約0.1mg〜約60mgの間、例えば、遊離塩基として算出された、本明細書中で開示する医薬組成物または薬学上許容されるその塩の各成分が約1〜約40mgであってもよい。投薬は、対象の必要に応じ、1日または複数日の過程において投与される1回のみ、または、2回以上一組であってもよい。いくつかの実施形態では、この化合物は、継続的な療法の期間(例えば1週間以上、または数カ月間または数年間)にわたり投与されることになろう。
【0078】
化合物のヒト投与量が少なくとも何らかの状態について確立されている場合、この組成物は、その同じ投与量、または、確立されているヒト投与量の約0.1%〜約500%の間、より好ましくは約25%〜約250%の間の投与量を用いることになる。ヒト投与量が確立されていない場合(新しく発見された医薬組成物の場合のように)、適当なヒト投与量は、動物における毒性試験および有効性試験により適格とされた場合にはED50もしくはID50値から、または、in vitro試験もしくはin vivo試験から導かれる他の適切な値から推測できる。
【0079】
当業者には理解されようが、ある状況では、本明細書中で開示する化合物を、とりわけ侵攻性疾患または感染症を有効かつ積極的に治療するために、前述の好ましい投与量範囲を超える、またはそれをさらにはるかに超える量で投与することが必要な場合がある。
【0080】
投与の量および間隔は、調節効果または最小有効濃度(MEC)を維持するだけ十分な活性部分の血漿レベルとなるように個別に調整してもよい。MECは、各化合物について異なると考えられるが、in vitroでのデータから推定できる。MECを達成するために必要な投与量は、個々の特徴および投与経路によって決まることになろう。しかし、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを用いて血漿濃度を決定できる。
【0081】
投与間隔は、MEC値を用いて決定することもできる。組成物は、時間の10〜90%、好ましくは30〜90%の間、最も好ましくは50〜90%の間にわたり血漿レベルをMECより上に維持するレジメンを用いて投与すべきである。局所投与または選択的取込みの場合は、薬物の有効な局所濃度は、血漿濃度に関連しない可能性がある。
【0082】
毒性または臓器機能不全を理由に投与を終了、中断または調整する方式および時期は、担当医師が知っておくことになることに注意すべきである。逆に、担当医師は、臨床応答が妥当でない(毒性を除く)場合には、より高いレベルに治療薬を調整することも承知しておくことになろう。関心のある障害の管理における投与用量の規模は、治療対象となる状態の重篤度および投与経路に伴い変化することになろう。状態の重篤度は、例えば、部分的には、標準的な予後評価法により評価してもよい。さらに、用量および恐らくは投与頻度は、個々の対象の年齢、体重および応答によっても変化するであろう。上で検討したものに匹敵するプログラムは、動物用の医薬において使用してもよい。
【0083】
非ヒト動物試験においては、潜在的製品の施用は、より高い投与量レベルで開始して、所望の効果がもはや達成されないか、または有害な副作用が消失するまで、投与量を減らしていく。投与量は、所望の効果および治療上の適応に応じて、広い範囲に及ぶことがある。あるいは、投与量は、当業者には理解されるように、対象の表面積に基づいて算出してもよい。
【0084】
本明細書中で開示する化合物は、公知の方法を用いて、有効性および毒性について評価できる。例えば、特定の化合物の、または、ある化学部分を共有する当該化合物のサブセットの毒性は、細胞株(哺乳動物、好ましくはヒトの細胞株など)に対するin vitro毒性を定量することにより確認してもよい。そのような試験の結果は、哺乳動物などの動物、またはより具体的にはヒトにおける毒性を予測することが多い。あるいは、動物モデル(マウス、ラット、ウサギまたはサルなど)における特定の化合物の毒性は、公知の方法を用いて定量してもよい。特定の化合物の有効性は、認識されているいくつかの方法(in vitro法、動物モデルまたはヒトの臨床試験など)を用いて確認してもよい。認識されているin vitroモデルはほぼ全てのクラスの状態について存在し、そのような状態としては、限定するものではないが、癌、心血管疾患および多様な免疫機能障害が挙げられる。同様に、許容される動物モデルを用いて、そのような状態を治療するための化学薬品の有効性を確認してもよい。有効性を定量するためのモデルを選択する際、当業者は、最新技術を参考にして、適切なモデル、用量および投与経路およびレジメを選択できる。当然ながら、ヒト臨床試験を用いて、ヒトにおける化合物の有効性を定量することもできる。
【0085】
実施例
化学:Varian Mercury−VX400MHz分光計を用い、400MHzでH NMRスペクトルを記録し、残留溶媒ピークのクロロホルム(CDCl)7.26ppm、メタノール(CDOD)3.31ppmを基準にして、δ値[ppm]で化学シフトを得る。結合定数Jをヘルツで記録する。特に明記しない限り、化合物のNMRスペクトルは、その遊離アミン形態について記載する。Merck製のシリカゲル60(粒子サイズ0.030〜0.070mm)を使用して、カラムクロマトグラフィーを実施した。材料および溶媒は、商業的供給源から入手できる最高グレードのものであり、これをさらに精製せずに使用した。逆相C18固相抽出カートリッジ(SPE)は、Discovery(商標)Solid Phase Extraction Products、Supelco製のDSC−18 2g/12mLカラムであった。ダイオードアレイ検出器(190〜450nm)、UV検出器、および、エレクトロスプレーイオン化を用いるMicromass ZMD質量分析計を使用したWaters/Micromass HPLC/MSを用いて、分取HPLCを実施した。YMC J’sphere ODS H80 19×100mmカラムを使用した。移動相は、水/アセトニトリル中の0.15%TFAであり、勾配は、30%アセトニトリルで開始し、13分かけて100%アセトニトリルにした。流速は17mL/分であった。
【0086】
HPLC/LCMS法:ダイオードアレイ検出器(190〜450nm)、UV検出器、および、エレクトロスプレーイオン化を用いるMicromass ZMD質量分析計を使用したWaters/Micromass HPLC/MS上に試料を流した。Phenomenex Luna C18(2)3μm、75×4.6mmカラムを使用した。移動相は、水/アセトニトリル中の10mM酢酸アンモニウムであり、勾配は、30%アセトニトリルで開始し、12分かけて95%アセトニトリルにした。流速は1.0mL/分であった。
【0087】
塩酸塩の調製:三級アミン生成物をジクロロメタン中に溶解させて、ジエチルエーテル中の過剰な1M HClで処理し、n−ヘプタンから沈殿させた。真空中で溶媒を除去し、乾燥後、無色の固体として、定量的な収率で塩酸塩を得た。
【0088】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−ヒドロキシベンジル)カルバミドヒドロクロリド
1−メチルピペリジン−4−オン(1.15mL、10mmol)からN−((4−フルオロフェニル)メチル)−4−アミノ−1−メチルピペリジンを調製し、これをメタノール(30mL)中で溶解させた。4−フルオロベンジルアミン(1.25mL、10mmol)を加え、酢酸を用いてpHを5に調節した。NaBHCN(1.25g、20mmol)を加え、反応混合物を3時間撹拌し、その後それを濃縮した。2Mの水性NaOH(30mL)を加え、この混合物をジクロロメタン(2×50mL)で抽出した。有機相を合わせたものをNaSO上で乾燥させ、濾過し蒸発させてから、クーゲルロール蒸留によりこの粗生成物を精製して、清澄な油としての所望の生成物(1.1g、50%)を得た。
【0089】
N−(4−フルオロベンジル)−4−アミノ−1−メチルピペリジン(4.00g、18.0mmol)をジクロロメタン(150mL)中で溶解させた。ジクロロメタン(50mL)中の4−メトキシベンジルイソシアネート(3.26g、20.0mmol)を滴加し、この混合物を室温で3時間撹拌した。フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の0〜10%メタノール)によりこの粗混合物を濃縮し精製して、N−((4−フルオロフェニル)メチル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−((4−メトキシフェニル)メチル)カルバミド(4.91g、71%)を得た。このカルバミド(4.91g、13.0mmol)を乾燥ジクロロメタン(50mL)中で溶解させた。この溶液を0℃に冷却し、三臭化ホウ素(ジクロロメタン中に1M、39.0mL、39.0mmol)を滴加し、この混合物を室温で20時間撹拌した。水(50mL)およびn−ブタノール(10mL)を加え、相分離させた。ジクロロメタン(50mL)とn−ブタノール(10mL)との混合物を用いて、2回目の水相抽出を行った。有機相を合わせたものを蒸発させ、その結果得られる固体をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の0〜20%メタノール)により精製して、半純粋な固体(semi-pure solid)(3.17g、67%)を得た。分取HPLCにより、分析量(analytical amount)(25mg)のこの材料を精製して、無色の油(10mg)を得た。LC−MSは、[M+H]=372(特徴的な断片:223)を示した。1H-NMR (CD3OD, 400 MHz, 遊離塩基): δ 7.25-6.62 (m, 8H), 4.46 (s, 2H), 4.22 (s, 2H), 4.15-4.06 (m, 1H), 2.89-2.82 (m, 2H), 2.23 (s, 3H), 2.14-2.05 (m, 2H), 1.74-1.61 (m, 4H).
【0090】
回収した化合物をその塩酸塩に変換し、これを無色の固体として得た。
【0091】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(ピペリジン−4−イル)−N’−(4−イソブトキシベンジル)カルバミドヒドロクロリド
4−ピペリドンヒドロクロリド一水和物(4.0g、26.0mmol)をジクロロメタン(130mL)中で溶解させた。トリエチルアミン(8.66g、85.8mmol)を加えた後、この混合物を10分間撹拌してから、0℃に冷却した。撹拌しながらトリフルオロ酢酸無水物(12.0g、57.2mmol)を滴加した。室温で2時間後、水(100mL)を加えることにより反応を止めた。ジクロロメタン(2×100mL)を用いて水相を抽出した。有機相を合わせたものをNaSO上で乾燥させ、濾過し濃縮して、1−トリフルオロアセチル−4−ピペリドン(5.07g、100%)を得た。4−フルオロベンジルアミン(3.14g、25.9mmol)および1−トリフルオロアセチル−4−ピペリドン(5.07g、25.9mmol)を、酢酸(150mL)でpH5に調節したメタノール溶液に加えた。この反応混合物を5分間撹拌し、撹拌しながらNaBHCN(2.46g、38.9mmol)をゆっくり加えた。室温で20時間後、反応を濃縮した。2Mの水性NaOH(100mL)を加え、ジクロロメタン(2×100mL)で抽出した。有機相を合わせたものをNaSO上で乾燥させ、濾過し濃縮して、N−(4−フルオロベンジル)−4−アミノ−1−トリフルオロアセチルピペリジン(2.91g、37%)を得た。
【0092】
4−イソブトキシフェニル酢酸(7.6g、36.5mmol)から4−イソブトキシベンジルイソシアネートを調製した(古典的文献の手順により、臭化イソブチルとのウィリアムソンエーテル合成、次いでエステルの鹸化によりメチル4−ヒドロキシフェニルアセテートから調製した。代替的な経路については、Profft、Drux、J.Prakt.Chem.、1956、4(3)、274〜275を参照)(同文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)、これをTHF(50mL)中に溶解させた。Proton Sponge(商標)(8.2g、38mmol)を加え、この混合物を15分間撹拌した。ジフェニルホスホリルアジド(10.6g、38mmol)を滴加し、この混合物を4時間、環流するまで加熱した。この混合物を室温に冷却してから、−18℃の冷凍庫中に20時間置いた。この結果得られる白色の沈殿物をジエチルエーテル(250mL)と共に15分間激しく撹拌してから濾過した。濾液を蒸発させて所望の生成物を得、さらに精製せずにこれを使用した。
【0093】
N−(4−フルオロベンジル)−4−アミノ−1−トリフルオロアセチルピペリジン(2.91g、9.6mmol)をジクロロメタン(50mL)中で溶解させ、ジクロロメタン(50mL)中の4−イソブトキシベンジルイソシアネート(1.97g、9.6mmol)溶液を加えた。この反応混合物を20時間撹拌し、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の0〜5%メタノール)により粗生成物を精製して、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−トリフルオロアセチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−イソブトキシベンジル)カルバミド(3.90g、91%)を得た。
【0094】
このカルバミド(3.90g、8.7mmol)をメタノール(12mL)中で溶解させ、撹拌しながら、メタノール(100mL)中の炭酸カリウム2M溶液に加えた。4時間後、メタノールを蒸発させ、ジクロロメタン(2×100mL)で水相を抽出した。有機相を合わせたものをNaSO上で乾燥させ、濾過し濃縮して、半純粋な固体(2.95g、85%)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の10%メタノール+1%トリエチルアミン)により分析量(200mg)のこの粗生成物を精製して、無色の固体(100mg)を得た。LC−MSは、[M+H]=414(特徴的な断片:209)を示した。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz, 遊離塩基): δ 7.21-6.75 (m, 8H), 4.47-4.42 (m, 1H), 4.39 (t, J=5.0 Hz, 1H), 4.35 (s, 2H), 4.27 (d, J=5.0 Hz, 2H), 3.68 (d, J=6.0 Hz, 2H), 3.13-3.06 (m, 2H), 2.74-2.66 (m, 2H), 2.11-1.99 (m, 1H), 1.78-1.71 (m, 3H), 1.58-1.46 (m, 2H), 1.00 (d, J=6.0 Hz, 6H).
【0095】
回収した化合物をその塩酸塩に変換し、これを無色の固体として得た。
【0096】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−[4−(2−ヒドロキシ)イソブトキシベンジル]カルバミドヒドロクロリド
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−ヒドロキシベンジル)カルバミド(375mg、1.0mmol)をDMF(15mL)中で溶解させた。KOH(281mg、5.0mmol)を加え、この混合物を室温で30分撹拌した。酸化イソブチレン(216mg、3.0mmol)を加え、この混合物を20時間40℃に温めた。酸化イソブチレン(216mg、3.0mmol)を加え、この混合物を40℃でさらに20時間撹拌した。水(50mL)を加え、ジクロロメタン(2×60mL)でこの混合物を抽出した。有機相を合わせたものをNaSO上で乾燥させ、濾過し蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中の5%メタノール)、次いでC18−SPEカートリッジ上を通過させ、30%アセトニトリル/水および3.5mM酢酸アンモニウム緩衝液を用いて溶出させることにより、粗生成物を精製した。アセトニトリルを蒸発させ、アンモニア水を用いて水相をアルカリ性にした。この生成物をジクロロメタン(2×100mL)中に抽出し、有機相を合わせたものをNaSO上で乾燥させ、濾過し蒸発させて、無色の油(122mg、28%)を得た。LC−MSは、[M+H]=444(特徴的な断片:223)を示した。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz, 遊離塩基): δ 7.21-6.77 (m, 8H), 4.49-4.43 (t, J=5.5 Hz, 1H), 4.37-4.26 (m, 5H), 3.75 (s, 2H), 2.89-2.82 (m, 2H), 2.25 (s, 3H), 2.10-2.01 (m, 2H), 1.76-1.58 (m, 4H), 1.33 (s, 6H).
【0097】
回収した化合物をその塩酸塩に変換し、これを無色の固体として得た。
【0098】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(R)−[(3−ヒドロキシ)−イソブトキシ]ベンジル)カルバミド
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−ヒドロキシベンジル)カルバミド(75mg、0.20mmol)をDMF(3mL)中で溶解させた。水酸化カリウム(56mg、1.00mmol)を加え、この混合物を室温で15分撹拌した。(R)−(−)−3−ブロモ−2−メチル−1−プロパノール(93mg、0.60mmol)を加えた。この混合物を60℃まで5時間加熱した。この反応混合物を室温に冷却し、ジクロロメタン(50mL)に加え、1M水酸化カリウム(50mL)で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し蒸発させた。この結果得られる油を分取HPLCにより精製して、無色の油としてのN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(R)−[(3−ヒドロキシ)−イソブトキシ]ベンジル)カルバミド(5mg、6%)を得た。LC−MSは、[M+H]=444(特徴的な断片:223)を示した。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz, 遊離塩基): δ 7.20-6.78 (m, 8H), 4.47 (t, J = 5 Hz, 1H), 4.35-4.29 (m, 3H), 4.27 (d, J = 5.0 Hz, 2H), 3.92-3.89 (m, 2H), 3.68 (d, J = 6.0 Hz, 2H), 2.89-2.82 (m, 2H), 2.25 (s, 3H), 2.22-2.13 (m, 1H), 2.10-2.02 (m, 2H), 1.83-1.76(bs, 1H), 1.75-1.59 (m, 4H) 1.02 (d, J= 6.0 Hz, 3H).
【0099】
回収した化合物をその塩酸塩に変換し、これを無色の固体として得た。
【0100】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチル−1−オキソピペリジン−4−イル)−N’−(4−イソブトキシベンジル)カルバミド
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−イソブトキシベンジル)カルバミド(100mg、0.234mmol)をジクロロメタン(10mL)中で溶解させた。この溶液を0℃に冷却し、メタクロロ過安息香酸(57〜86%、106mg、0.351mmol)を加えた。この反応混合物を、室温で20時間撹拌し、その後、飽和した水性NaHCO(10mL)で洗浄した。有機相をNaSO上で乾燥させ、濾過し蒸発させた。この結果得られる油を分取HPLCにより精製して、無色の油としてのN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチル−1−オキソピペリジン−4−イル)−N’−(4−イソブトキシベンジル)カルバミド(10mg、10%)を得た。LC−MSは、[M+H]=444(特徴的な断片:239)を示した。1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ 7.20-6.76 (m, 8H), 4.63-4.53 (m, 2H), 4.43 (s, 2H), 4.24 (d, J=5.0 Hz, 2H), 3.66 (d, J=7.0 Hz, 2H), 3.31-3.24 (m, 4H), 3.19 (s, 3H), 2.62-2.51 (m, 2H), 2.10-1.99 (m, 1H), 1.69-1.62 (m, 2H), 1.00 (d, J=7.0 Hz, 6H).
【0101】
in vitroでの受容体活性の定量
受容体の選択および増幅(R−SAT)アッセイ:機能的受容体アッセイ、Receptor Selection and Amplification Technology(R−SAT(登録商標))を用いて(これまでに記載の手順(Brann,M.R.、米国特許第5,707,798号、1998;Chem.Abstr.、1998、128、111548)からの小規模改変形を用いて5−HT2A受容体での有効性について化合物をスクリーニングした。手短に言えば、NIH3T3細胞を96ウェルの組織培養プレート中で70〜80%コンフルエンスまで培養した。superfect(Qiagen Inc.)を使用して、製造者のプロトコールどおりに、細胞に12〜16時間プラスミドDNAを形質移入した。R−SAT’sは、一般に、50ng/ウェルの受容体および20ng/ウェルのβ−ガラクトシダーゼプラスミドDNAを用いて実施した。使用した全ての受容体およびGタンパク質コンストラクトは、すでに説明したように、pSI哺乳動物の発現ベクター(Promega Inc)中にあった。公開されている配列(Saltzmanら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、1991、181、1469)に基づくオリゴデオキシヌクレオチドを使用して、脳のcDNAからのネステッドPCRにより、5−HT2Aまたは5−HT2C受容体遺伝子を増幅させた。大規模な形質移入の場合は、細胞を12〜16時間形質移入させてから、トリプシン化し、DMSO中で凍結させた。凍結した細胞を追って解凍し、薬物を含有する96ウェルプレートの1ウェル当たり10,000〜40,000細胞の規模で播種した。次に、いずれの方法でも、周囲COが5%の湿気のある環境中で細胞を5日間培養した。次に、プレートから媒体を除去してから、β−ガラクトシダーゼ基質であるo−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(PBS中のONPG+5%NP−40)を加えることにより、マーカー遺伝子の活性を測定した。この結果得られる熱量測定反応を、分光光度プレートリーダー(Titertek Inc.)中において420nMで測定した。コンピュータープログラムXLFit(IDBSm)を用いて全てのデータを分析した。有効性は、対照化合物(5−HT2Aの場合においてはリタンセリン)による抑制と比較した場合の最大抑制比率(%)である。pIC50は、対数(IC50)の負の値であり、このときIC50は、最大抑制50%をもたらす計算上のモル濃度である。N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N−(4−フルオロフェニルメチル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの多様な代謝産物(式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物だけでなく他の代謝産物も含む)を、本明細書中に記載の要領でアッセイした。アッセイした代謝産物は、さまざまな活性レベルを示し、代謝産物のいくつかは、医薬品として使用するには低すぎるレベルを呈した。しかし、式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物は、下記の表中に示すように、高い逆作動薬活性および拮抗薬活性を示した。このデータから、式(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物は医薬品として有用である可能性があることが示唆される。
【0102】
【表1】

【実施例1】
【0103】
タクリンを用いた場合のアンフェタミン誘導性活動亢進
この試験は、各横軸に沿って16個の赤外光線(infrared photobeam)(前後左右、Accuscan Instruments,Inc.、Columbus、OH製)を備えたアクリル製チャンバー(42cm×42cm×30cm)中で行った。初めに、活動チャンバー(activity chamber)に入れる60分前にビヒクル(veh)またはピマバンセリン(0.03mg/kg)のいずれかをマウスに投与した。活動チャンバーに入れる30分前に、ビヒクルまたは薬物(タクリンもしくはキサノメリンのいずれか)を注射した。運動活動チャンバーに入れる15分前に、アンフェタミン(3mg/kg)をマウス体内に注射した。マウスは、事前にチャンバーに触れさせてはおらず、マウスの別々の群において各用量の組合せをテストした。
【0104】
総移動距離(DT)としてセンチメートル単位で活動を測定し、15分のセッションを通じて定量した。ビヒクルまたは一定用量のピマバンセリンいずれかの存在下での薬物について、用量応答曲線を作図した。用量応答曲線を生成するために、DTの生データを阻害率(%)に変換した:MPI(%)=((DT薬物または薬物の組合せ−DTアンフェタミン対照)/(DTビヒクル対照−DTアンフェタミン対照))100。次に、線形回帰分析を行い、活性(ED50)および95%信頼区間を50%低下させると考えられる理論用量を定量した。タクリンおよびキサノメリンについてのこれらの試験の結果を図1〜4に示す。
【0105】
図1は、ビヒクル対照またはアンフェタミンを摂取したマウスにおいて投与されたタクリンの投与量の関数としての総移動距離を示すものである。図1に示すように、タクリンの投与量が増えるにつれ、総移動距離は減少した。このことは、マウスにおけるアンフェタミン誘導性活動亢進を抑制するタクリンの能力を示すものである。さらに図1では、タクリンをピマバンセリンと組み合わせて投与すると、特定の投与量のタクリンについては、アンフェタミンを摂取したマウスの総移動距離がさらに減少したことが示される。図2は、マウスにおけるアンフェタミン誘導性活動亢進の阻害率(%)をタクリン投与量の関数として示すものである。タクリンの用量が増えると、結果としてアンフェタミン誘導性活動亢進がより大きく阻害された。これに対し、タクリンをピマバンセリンと組み合わせて投与すると、さらに、特定の投与量のタクリンについて阻害する結果となった。したがって、ピマバンセリンは、マウスにおけるアンフェタミン誘導性活動亢進を抑制するタクリンの能力を増強する。図3および4は、キサノメリン投与量の関数としての総移動距離およびキサノメリン投与量の関数としての阻害率(%)を、それぞれ、アンフェタミンを使用し、または使用せずに処置したマウスにおいて示すものである。図1および2に示すようなタクリンと同様の結果が、キサノメリンについても観察された。これらの結果から、ピマバンセリンがコリンエステラーゼ阻害薬およびムスカリン性受容体作動薬の抗精神病様活性を高めることが実証された。
【実施例2】
【0106】
新規物体認識
対象は、Harlan Laboratoriesから購入した、到着時の体重が15〜20gの雄のC57 BK/6マウスであった。動物を1ケージ当たり8匹ずつ収容し、食餌および水は自由に摂取できるようにした。動物は、行動テストに先立ち、12時間の光周期(午前6時に点灯)で4〜7日間収容した。
【0107】
新規物体認識(NOR)は、45.7×33.7×19cmのサイズの白色のプラスチック桶から成る新規の環境中で行った。各試行に先立ち、プラスチックで裏打ちされたベンチトップ用の紙1枚で桶の底を覆った。探索する機会が与えられた場合にマウスが探索時間を物体間で均等に分けることになるように選ばれた、同一の物体2セットがあった。「A」の物体は、高さ4cm×直径7cmのサイズの黄色いセラミック製の12面のラミキンであった。「B」の物体は、8×8×4cmのステンレス鋼製の4面のラミキンであった。
【0108】
各試験日の始めに、動物を6匹の群にして清潔なケージの中に入れた。テストは3段階で行った:順化、サンプルおよびテスト。
【0109】
順化段階では、6匹のマウスの各群をNORチャンバー中に集団で入れて、30分間自由に探索させた。順化後、動物に注射し(用量および前処置時間はテスト薬物により異なる)、ケージ中に戻して前処置のための休止期間を待った。
【0110】
サンプル段階中は、2つの同一の物体(前述の「A」または「B」の物体)をNORチャンバー中に入れた。物体は、壁からおよそ5cm離してアリーナの長軸の対角上に置き、対象は、何も置いていない角(neutral corner)の一方の中に入れた(対象全体で交互にする)。各マウスを1匹ずつNORチャンバー中に入れ、チャンバーおよび物体を3分間探索させた。各位置での探索に費やされた時間を記録した。物体を直接嗅ぐことまたは触ることを探索として記録した。3分後、各マウスをアリーナから取り出し、元のケージ中に戻した。
【0111】
テスト段階は、サンプル段階の1〜2時間後に行った。テスト期間中は、なじみのある(サンプル期間中に見ていた)物体1個および新規物体1個を、サンプル段階中に使用したのと同じ位置でチャンバー中に入れ、各マウスに3分探索させた。テストセッションは、各対象の処置条件について知らされていない観察者がビデオに記録し採点した。物体を直接嗅ぐことまたは触ることに費やされる一切の時間を探索としてカウントした。新規物体となる物体、および、新規物体を置いた位置は、対象全体で釣り合っていた。各試行(順化、サンプルおよびテスト)に先立ち、全ての機器をCloroxワイプで拭き、ベンチペーパー(適合するようにカットしてある)をチャンバーの底に入れた。
【0112】
各物体の探索に費やされる時間(T=新規物体の探索に費やされる時間、T=なじみのある物体の探索に費やされる時間)に加え、各対象について2つの測定値を定量した:探索率(新規物体の探索に費やされる時間の比率(%))ER=T100/(T+T)および識別指数(新規の物への好み)DI=(T−T)/(T+T)。
【0113】
サンプル段階中は、いずれの処置条件においても一方の位置を他方より好むことはないであろうと予想された。テスト段階中は、ビヒクル処置した動物は、1時間後、新規物体への好みを示す(これにより、動物はなじみのある物体を認識することが示唆される)と予想されたが、2時間後にはベースラインの探索率に戻ることが予想された。
【0114】
【化8】

【0115】
タクリンを使用するこの試験の結果を図5および6に示す。図5は、各対象が新規物体の探索に費やす時間の比率(%)を、摂取したタクリンの投与量の関数として示すものである。タクリンの投与量が増えるにつれ、新規物体の探索に費やされる時間の比率(%)も高まった。新規物体の探索のほうが好まれることから、一方の物体が新規であり他方の物体はなじみのある物であることを対象が認識および識別することが示唆される。したがって、図5は、タクリンが対象の認知を向上させることを実証するものである。
【0116】
図6は、4つの対象群について新規物体認識データを比較するものである。各群を、ビヒクル、ピマバンセリン、タクリン、または、ピマバンセリンとタクリンとの組合せで処置した。図6に示すように、新規物体の探索に費やされる時間の比率(%)は、ピマバンセリンとタクリンとの組合せで処置した群の場合が最も高かった。特に、この群は、ピマバンセリンまたはタクリンのいずれかを個別に摂取していた群より結果が良好であった。この知見から、ピマバンセリンがタクリンの認知促進効果(pro-cognitive effect)を高める能力が実証される。
【実施例3】
【0117】
アミロイドタンパク質を用いた活動亢進試験
この試験は、各横軸に沿って16個の赤外光線(前後左右、Accuscan Instruments,Inc.(Columbus、OH製)を備えたアクリル製チャンバー(42cm×42cm×30cm)中で行った。対象は、アミロイドβタンパク質断片(25〜35)のICV注入または生理食塩水(sham)のICV注入を7〜10日間受けるマウスであった。この手順の結果、アミロイドプラークが形成され認知が損なわれることにより、アルツハイマー病の効果が模擬的に再現されることが示されている。
【0118】
対象に対しアンフェタミン誘導性活動亢進試験を行った。運動活動チャンバーに入れる前に、対象にアンフェタミン(3mg/kg)またはビヒクルを15分注射した。総移動距離(DT)としてセンチメートル(cm)単位で活動を測定し、60分セッションを通じて20分経過毎に定量した。この試験の結果を図7に示す。
【0119】
図7は、移動距離を時間の関数として示すものである。生理食塩水を注射した対象のうち、アミロイドβマウスは、所与の長さの時間にわたり、対照動物と同じ距離を移動した。したがって、これらのマウスは、正常な基礎レベルの運動活動を呈した。アンフェタミンを注射した対象のうち、アミロイドβマウスは、対照マウスより平均してより長い距離を移動した。この知見から、アミロイドβマウスは、対照動物と比較してアンフェタミンへの高い応答を示すことが実証される。
【0120】
引き続いての試験では、行動テストの60分前にピマバンセリン(0.3mg/kg)またはビヒクルのいずれかでマウスを前処置し、次いで、運動活動チャンバーに入れる15分前に、全ての対象にアンフェタミン(3mg/kg)を注射した。総移動距離(DT)としてセンチメートル(cm)単位で活動を測定し、60分セッションを通じて20分毎に定量した。
【0121】
図8は、アンフェタミン前処置を行った後の移動距離を時間の関数として示すものである。ビヒクルで処置した対象のうち、アミロイドβマウスは、対照マウスより長い距離を移動した。これに対し、ピマバンセリンで処置した対象の中では、対象は、アミロイドβ群に属するか対照群に属するかにかかわらず、同様の距離を移動した。したがって、対照マウスにおいては、ピマバンセリン単独では、アンフェタミンにより誘導される活動亢進は低下しなかった。しかし、アルツハイマー病モデルのモデルにおいては、ピマバンセリンは、アンフェタミンに対する高まった運動応答を改善させた。この結果から、ピマバンセリンはアルツハイマー病に伴う精神病を治療、改善または防止するうえで有効である可能性があることが示唆される。
【実施例4】
【0122】
M1ノックアウトマウスを用いた活動亢進試験
この試験は、各横軸に沿って16個の赤外光線(前後左右、Accuscan Instruments,Inc.(Columbus、OH製)を備えたアクリル製チャンバー(42cm×42cm×30cm)中で行った。対象は、Mムスカリン性受容体欠損マウス(MKO)または野生型(WT)対照であった。ビヒクルまたはアンフェタミン(3mg/kg、腹腔内)の45分前に、ビヒクル(生理食塩水)またはテスト化合物(ピマバンセリン、0.03または0.3mg/kg)を注射した。15分後、運動活動チャンバー中にマウスを入れ、その活動を記録した。用量応答曲線を生成するため、DTの生データをMPI(%)に変換した:MPI(%)=((DT薬物−DT MK801対照)/(DTビヒクル対照−DT MK801対照))100。次に、線形回帰分析を行い、活性(ED50)および95%信頼区間を50%低下させると考えられる理論用量を定量した。マウスは、前もってチャンバーに触れさせず、マウスの別々の群において各用量の組合せをテストした。これらの試験の結果を図9〜10に示す。
【0123】
図9は、アンフェタミン誘導性活動亢進試験の結果を示すものであり、移動距離をピマバンセリン投与量の関数として示している。いかなる特定の理論に拘束されることも望まないが、ヒトにおける精神病は線条体中のドパミン増大と関連がある可能性がある。ムスカリン性M1受容体が欠損したマウスは活動が亢進しており、これは、線条体中のドパミンレベル増大と相関がある可能性がある。図9に示すように、ピマバンセリンのみの投与は、ビヒクル対照と比較して、運動活動に何ら有意な効果を及ぼさなかった。しかし、アンフェタミン投与時には、MKOマウスは、WT対照と比較して運動応答が高まった。ピマバンセリンは、WT対象におけるアンフェタミン誘導性の活動を変化させなかったが、M1KO対象において高まったアンフェタミン応答を改善させた。したがって、ピマバンセリン処置後、アンフェタミンの活性は、WT対象およびM1KO対象の両方において同様に増加した。
【0124】
図10は、図9に示す移動距離データから生成されたピマバンセリン投与量の関数としての阻害率(%)を示すものである。図10により実証されるように、ピマバンセリンは、アンフェタミン誘導性活動亢進の阻害を増加させた。図9および10に示す結果から、ピマバンセリンは、ムスカリン性M1受容体欠損マウスにおけるアンフェタミン誘導性活動亢進の増大を低下させることが示唆される。アンフェタミン誘導性活動亢進が改善されることからヒトにおける抗精神病活性が予測されるので、これらのデータは、ピマバンセリンはアルツハイマー病誘導性の精神病などムスカリン性受容体活性の欠損と関連する精神病を治療または改善するうえで有効である可能性があることを示唆している。
【0125】
実施形態および実施例を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく多数および多様な改変形を作ることができることは理解されるべきである。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピマバンセリンまたはその塩、溶媒和物、多形もしくは単離された実質的に純粋な代謝産物と、
1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と
を含む組成物。
【請求項2】
前記薬剤がコリンエステラーゼ阻害薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コリンエステラーゼ阻害薬が、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬およびブチルコリンエステラーゼ阻害薬から成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コリンエステラーゼ阻害薬が、メトリホネート、フィゾスチグミン、ネオスチグミン、ピリドスチグミン、アムベノニウム、デマルカリウム、リバスチグミン、アルジカルブ、ベンジオカルブ、ブフェンカルブ、カルバリル、カルベンダジム、カルベタミド、カルボフラン、クロルブファム、クロロプロファム、エチオフェンカルブ、ホルメタネート、メチオカルブ、メトミル、オキサミル、フェンメジファム、ピンミカルブ、ピリミカルブ、プロパモカルブ、プロファム、プロポクスル、ガランタミン、ドネペジル、タクリン、エドロホニウム、フェノチアジン、エコチオフェート、フルオロリン酸ジイソプロピル、ジメボン、Huperzine A、T−82((2−[2−(1−ベンジルピペリジン−4−イル)エチル]−2,3−ジヒドロ−9−メトキシ−1H−ピロロ[3,4−b]キノリン−1−オンヘミフマレート))、TAK−147(ザナペジル)、フェンセリン、キロスチグミン、ガンスチグミン、ブチロフェノン、イミプラミン、トロペート、フェンシクリジン、クラーレ様薬物、エテホン、エトプロパジン、イソ−OMPA、テトラヒドロフロベンゾフランシムセリン、Nフェネチルノルシムセリン、N−ベンジルノルシムセリン、N,N−ビスノルシムセリン、N−N−ビスベンジルノルフィゾスチグミン、N,N−ビスベンジルノルフェンセリンおよびN,N−ビスベンジルノルシムセリンから成る群から選択される、請求項2または3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記コリンエステラーゼ阻害薬がタクリンである、請求項2から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記薬剤がムスカリン性受容体作動薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ムスカリン性受容体作動薬が、キサノメリン、カルバミルコリン、オキソトレモリン、メタコリン、ベタネコール、セビメリン(AF102B)、AF150(S)、AF267B、アセクリジン、アレコリン、ミラメリン、タルサクリジン、ピロカルピンおよび(S)−2−エチル−8−メチル−1−チア−4,8−ジアザスピロ[4.5]デカン−3−オン(Torrey Pines NGX267)から成る群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ムスカリン性受容体作動薬がキサノメリンである、請求項6または7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記薬剤がグルタミン酸作動性拮抗薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記グルタミン酸作動性拮抗薬が、アマンタジン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、イボガイン、ケタミン、トラマドール、メタドンおよびメマンチンから成る群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記グルタミン酸作動性拮抗薬がメマンチンである、請求項9または10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記薬剤がコリン作動薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記コリン作動薬が、プラミラセタム、ピラセタム、オキシラセタム、コリン−L−アルホスセレート、ネブラセタム、ベシピルジンおよびタルチレリンから成る群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記薬剤がカルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記カルニチンアセチルトランスフェラーゼ刺激薬が、レボカルニチン、ST−200(アセチル−1−カルニチン)およびネフィラセタムから成る群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬剤がアセチルコリン放出刺激薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記アセチルコリン放出刺激薬が、SIB−1553A((+/−)−4−[[2−(1−メチル−2−ピロリジニル)エチル]チオ]フェノールヒドロクロリド)およびT−588((1R)−1−ベンゾ[b]チオフェン−5−イル−2−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]エタン−1−オールヒドロクロリド)である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記薬剤がコリン取込刺激薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記コリン取込刺激薬が、MKC−231(2−(2−オキソピロリジン−1−イル)−N−(2,3−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロフロ[2,3−b]キノリン−4−イル)アセトアミド)である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記薬剤がニコチン性アセチルコリン受容体作動薬である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記ニコチン性アセチルコリン受容体作動薬が、ABT−418、ABT−089、SIB−1508Y、A−582941、DMXB−A、Sazetidine−A、VareniclineおよびTC−1734から成る群から選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記薬剤が、5−HT6拮抗薬および5−HT6逆作動薬から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記薬剤が、SB−742457、SB−271046、SB−399885、SB−357134、SB−258585、RO−436854、RO−0406790およびRO−65−7674から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態を改善または治療する方法であって、治療上有効量の請求項1から23のいずれか一項に記載の1つもしくは複数の組成物またはピマバンセリンの代謝産物を、1つもしくは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態に罹患している対象に投与するステップを含む方法。
【請求項25】
1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態を改善または治療する方法であって、治療上有効量のピマバンセリンまたはその塩、溶媒和物、多形、代謝産物もしくは単離された実質的に純粋な代謝産物を、治療上有効量の1つまたは複数のコリン作動異常を改善する薬剤と組み合わせて、1つまたは複数のコリン作動異常を特徴とする疾患状態に罹患している対象に投与するステップを含む方法。
【請求項26】
ピマバンセリンが前記薬剤の前に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ピマバンセリンが前記薬剤の後に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
ピマバンセリンが前記薬剤とほぼ同時に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患状態が、神経精神障害、神経変性障害および錐体外路障害から成る群から選択される、請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記神経精神障害が以下から成る群から選択される、請求項29に記載の方法:統合失調症、分裂感情障害、躁病、鬱病、認知障害、攻撃性、パニック発作、強迫性障害、境界性人格障害、境界性障害、多重性発達障害(MDD)、行動障害、精神病、自殺傾向、双極性障害、睡眠障害、中毒、注意欠陥多動障害(ADHD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、トゥレット症候群、不安、自閉症、ダウン症候群、学習障害、心身障害、アルコール離脱、てんかん、疼痛、低グルタミン酸作動症に伴う障害およびセロトニン症候群。
【請求項31】
前記神経変性障害が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、脊髄小脳萎縮症、前頭側頭認知症、核上麻痺またはレヴィー小体型認知症から成る群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記錐体外路障害が、運動障害、運動緩徐、硬直、精神運動遅滞、チック、静坐不能、フリードライヒ運動失調症、マシャド・ジョゼフ病、ジストニア、振戦、下肢静止不能症候群および筋クローヌスから成る群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記疾患状態が、認知障害、健忘症、錯乱、記憶喪失、注意欠陥障害、鬱病、疼痛、精神病、幻覚、攻撃性およびパラノイアから成る群から選択される、請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記精神病が、薬物誘導性精神病、治療誘導性精神病、および、疾患に伴う精神病から成る群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患が、認知症、心的外傷後ストレス障害、アルツハイマー病、パーキンソン病および統合失調症から成る群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患状態が、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、フリードライヒ運動失調症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、ダウン症候群、ピック病、認知症、臨床的鬱病、加齢関連認知低下、注意欠陥障害、乳幼児突然死症候群および緑内障から成る群から選択される、請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患状態がアルツハイマー病である、請求項24から28のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−540454(P2010−540454A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526035(P2010−526035)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/077139
【国際公開番号】WO2009/039460
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(502295674)アカディア ファーマシューティカルズ,インコーポレーテッド (16)
【Fターム(参考)】