説明

ピモベンダン及びシクロデキストリンの錯体を含む液体製剤

発明は、医薬上の有効化合物として、置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含む新規液体製剤に関する。特に、本発明は、好ましくは約20〜70%(w/v)濃度のエーテル化シクロデキストリン誘導体、及び好ましくは0.005〜0.15%(w/w)の濃度の5前記置換ベンゾイミダゾールを含む液体製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は医薬品の分野に関する。特に、本発明は、医薬上の有効化合物として、置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含む新規液体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ピモベンダンは、例えば動物、特に犬の拡張型心筋症(DCM)又は代償不全心内膜症(DCE)により発生する鬱血性心不全(CHF)治療のための、周知の化合物である(国際公開第2005/092343号)。ピモベンダンは、ヒトの心臓血管治療用の薬剤製品としても承認されている。
欧州特許第B-008391号では、ピモベンダン(4,5-ジヒドロ-6-[2-(4-メトキシフェニル)-1H-ベンゾイミダゾール-5-イル]-5-メチル-3(2H)-ピリダジノン)が開示されており、ここで参考として全体を取り入れるが、以下の式を有する。
【化1】

欧州特許第A-439030及び国際公開第2005/08467号に既に記載されたとおり、ピモベンダンの薬剤成分は不溶性であり、成分1gが10,000ml以上で可溶である。pH7では、ピモベンダンの溶解度は、100mlにつき約0.1mgである。
成分は、一日に二度、経口経路にて投与する。しかし、ピモベンダンを含む液体製剤は今のところ利用できない。上述の新たな適応症のすべてに素早く作用させるため、静脈経路及び/又は皮下経路による、非経口投与のための注射可能溶液が必須となる。ヒト又は動物のどちらかへ、薬剤製品を静脈経路/皮下経路により投与する上で、水溶性製剤が必要となる。非水溶性溶媒を有する製剤は、深刻な耐性問題の危険があるため許容できず、最先端技術とはいえない。
【0003】
水溶液の溶解度はpHによって決まる。ピモベンダンの溶解度はpH1〜3で著しく高くなるが、溶液中の化学的安定性が減少し、適当な貯蔵寿命を有する安定した溶液を得ることができなくなる。加えて、そのような製剤の局所的耐性は非常に乏しい。これは、目的とする投与量が、約pH3又はそれより低いpHによってのみ得ることができる、溶液中の薬剤濃度を必要とするという事実によるものである。溶液中の必要濃度は、水中のピモベンダンの溶解度を約250だけ超過し、1〜1,000が最大必要増加であった。
【0004】
緩やかに溶解する薬剤の溶解度を向上させるものとして、あるエーテル化β-シクロデキストリン誘導体が知られている(国際公開第85/02767号)。しかしながら、国際公開第85/02767号では、濃度10%までのエーテル化β-シクロデキストリン誘導体の使用についてのみ記載されている。薬剤とエーテル化β-シクロデキストリン誘導体のモル比が1:6〜4:1であるとされていた。上に定められた比率内のフルベンダゾールの溶解度は、30だけ増加したにすぎない。しかしながら、それらの製剤は、ピモベンダン、又は5mg/mlまで、好ましくは0.5〜3mg/ml、さらにより好ましくは0.5〜1.5mg/mlの、治療上有効な量の置換ベンゾイミダゾールを含む液体製剤の調製に好適でない。上述のとおり、1.5mg/mlまでを含むピモベンダン製剤は、少なくとも、pH7での溶解度を約1,000〜1,500増加させることを必要とする。
【発明の概要】
【0005】
本発明の基礎をなす目的は、医薬上の有効化合物として、置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含む液体製剤を提供することであった。
本発明の基礎をなす目的は、医薬上の有効化合物として、置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含む医薬上許容される溶液を提供することであった。
本発明の基礎をなすさらなる目的は、医薬上の有効化合物として、置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含む注射可能溶液を提供することであった。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】pH3、5及び7のエーテル化シクロデキストリン誘導体ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の種々の濃度を含む、水溶液中のピモベンダン、置換ベンゾイミダゾールの飽和溶解度を示す。
【図2】pH3、5及び7のエーテル化シクロデキストリン誘導体ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の種々の濃度を含む、水溶液中のピモベンダン、置換ベンゾイミダゾールの飽和溶解度を示す。
【図3】pH7のリン酸緩衝液10mM中に溶解する、エーテル化シクロデキストリン誘導体ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の種々の20〜25%(w/v)を含む、水溶液中のピモベンダン、置換ベンゾイミダゾールの飽和溶解度を示す。
【図4】pH7のリン酸緩衝液10mM及び塩化ナトリウムに溶解するエーテル化シクロデキストリン誘導体ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の24%(w/v)を含む、水溶液中のピモベンダン、置換ベンゾイミダゾールの飽和溶解度を示す。
【図5】ピモベンダン、置換ベンゾイミダゾールの可溶製剤に対するオートクレーブの効果を示す。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明の実施形態に入る前に、本文及び添付の特許請求の範囲において使用されるとおり、単数形 “a”、“an”及び“the”は、文脈が明らかに別の意味を示さない限り、複数の言及を含むことに留意すべきである。従って、例えば、調製(“a preparation”)という言及は前述の調製を複数含み、担体(“the carrier”)という言及は、1以上の担体及び当業者に知られたその同義語に対する言及である、等である。本文中に使用されるすべての技術的及び科学的用語は、特別な定義がない限り、本発明が所属する分野の一般当業者によって、通常理解されるとおりの意味を有する。すべての定められた範囲及び数値は、特別な指示がない、あるいは当業者により異なって理解されていない限り、1〜5%分変更してもよく、従って、「約」という用語は記載を省略した。本文の記載に類似又は均等する方法及び原料は、本発明の実施又は試験において使用でき、好ましい方法、装置及び原料を以下に記載する。本文中に挙げられたすべての刊行物は、本発明に関して使用できる、刊行物において報告された成分、賦形剤、担体及び方法論を記載及び開示する目的で、ここで参考として取り入れる。本発明においては、上述の開示が先行発明であるという理由で、当該開示を先行する資格がないとの承認として解釈されるべき事項はない。上述の技術的問題の解決は、特許請求の範囲に特徴づけられた記載及び実施形態によって達成する。
【0008】
本発明は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)、エーテル化シクロデキストリン誘導体の濃度の上昇、及びピモベンダンpH約5又は7の置換ベンゾイミダゾールの構造上の員(member)の溶解度の増加の間に、非線形関係が生じるという予期しない観察に基づく。約0.5〜1.5mg/mlのピモベンダンの目的とする濃度を含む溶液は、最終製剤の15%より大きい、好ましくは約20%(w/v)〜70%(w/v)までのHPβCD濃度の使用により得ることができた。前述の非線形関係に基づき、図1により、20(w/v)以上のHPβCD濃度は、ピモベンダンの著しく増加した溶解度が原因であることが分かり、置換ベンゾイミダゾールにも典型的な方法で使用される。概して、本文で使用される“(w/v)”により、最終調製及び製剤の容量当たりの成分の質量を意味する。
【0009】
加えて、HPβCDにより獲得した溶解度の向上が、上昇するpHでは減少しないことは予期せぬ観察であった。低いpH値でのピモベンダンの溶解度は、原則としてより高いpH値の場合より高かった。この効果は、国際公開第2005/08467号によりすでに知られている。また、エーテル化シクロデキストリン誘導体HPβCDを含む溶液にも見受けられる(図1参照)。しかしながら、驚くべきことに、この効果はpH7.0で逆転する。HPβCDの存在下においてpH5のピモベンダンの溶解度は、pH3に比べて著しく減少した。反対に、HPβCDの存在下において、pH7でのピモベンダンの溶解度は、pH5より著しく高い。増加するHPβCD濃度(質量)及びピモベンダンの飽和溶解度における増加間の関係は、pH3で線形であったが、pH7で非線形であった(図1参照)。HPβCDの濃度がより高くなると、ピモベンダンの溶解度がより高くなる。この非線形効果が1,000以上の溶解度の増加を可能にし、治療上有効な量の有効成分を含むピモベンダン、又は他の置換ベンゾイミダゾールの液体製剤の調製に必要である。
【0010】
従って、ある局面によると、本発明はエーテル化シクロデキストリン誘導体及び置換ベンゾイミダゾールを含む液体製剤に関し、エーテル化シクロデキストリン誘導体は、α-、β及びγ-シクロデキストリンエーテルからなる群から選択される。
本文で使用される「液体製剤」という用語は、単に、製剤の大部分が液状で存在することを意味する。本文で使用される「液体製剤」という用語には、いずれの種類の懸濁液に加え、いずれの形の水溶液も含まれる。液体製剤は、懸濁液の形で得た場合、分散系である。一般的な用語において「分散系」とは、ある形の型(分散相)が他の形の型(分散剤)に分かれる二以上の相からなる系を意味する。「懸濁液」とは、発明によれば、液体中の固体粒子の混合物を意味する。好ましくは、発明による液体製剤とは水溶液であり、より好ましくは非アルコール性水溶液である。さらにより好ましくは、これらの液体製剤は、動物の静脈及び/又は皮下投与用の注射可能溶液として好適な水溶液である。本文で使用される「水溶液」という用語は、単に、製剤の大部分が溶解した形で存在することを意味する。本文で使用される非アルコール性水溶液という用語は、製剤が溶解した形で存在することを意味するが、アルコール性、又は他の有機溶媒は含まれない。
【0011】
従って、さらなる局面によると、本発明はエーテル化シクロデキストリン誘導体及び置換ベンゾイミダゾールを含む水溶液に関し、エーテル化シクロデキストリン誘導体は、α-、β及びγ-シクロデキストリンエーテルからなる群から選択される。好ましくは、これらの水溶液は、動物の静脈及び/又は皮下投与用の注射可能溶液であり、あるいは動物の静脈及び/又は皮下投与用の注射可能溶液の調製用に使用できる。
本文で使用されるエーテル化シクロデキストリン誘導体という用語は、α-、β又はγシクロデキストリンを含むが、これに限定されるわけではない。好ましくは、本文で使用されるエーテル化シクロデキストリン誘導体は、エーテル化βシクロデキストリンを意味し、より好ましくは、以下の式であり
(β-CD)-OR (式1)、
残留物Rがヒドロキシアルキル基、及び残留物Rの一部は、任意にアルキル基でよい。式1の部分的なエーテル化βシクロデキストリンは、好ましくは残留物Rがヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル又はジヒドロキシプロピル基で使用され、任意に、残留物Rの一部は、例えば、メチル又は-エチル基でよく、ドイツ公開公報31 18 218により知られているとおり、βシクロデキストリン分子内に7〜14個のメチル基を有する、部分的にメチル化されたβシクロデキストリンエーテルの使用は、本発明の部類に入らない。アルキル基(メチル、エチル)のみを含むβ-シクロデキストリンの部分的なエーテルは、0.05〜0.2の低置換度(以下に定義)を有する場合、本発明に従って好適でありうる。
【0012】
さらに、より好ましくは、本文で使用されるエーテル化シクロデキストリン誘導体は、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。最も好ましくは、本文で使用されるエーテル化シクロデキストリン誘導体は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)であり、例えば、ヨーロッパ薬局方(European Directorate for the Quality of Medicines(EDQM)、2005年第5版、ヨーロッパ薬局方、フランス、ストラスブール、F-67029、コルマール通り226、http://www.pheur.org)に記載されている。医薬品グレードのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、例えば商標Kleptose(登録商標)HP下で販売され、フランス、ロケット社より取り寄せることができる。
【0013】
β-シクロデキストリンは、7個の無水グルコース単位からなる環状構造を有する化合物である。シクロヘプタアミロースとも言及される。7個のグルコース環のそれぞれは、2、3及び6位にエーテル化できる3個のヒドロキシ基を含む。本発明に従って使用される、部分的にエーテル化されたβ-シクロデキストリン誘導体においては、これらのヒドロキシ基の部分のみがヒドロキシアルキル基、及び任意にさらにアルキル基でエーテル化される。米国特許第3,459,731号、カラム4と比較して、対応するアルキレン酸化物との反応で実行し得るヒドロキシアルキル基とのエーテル化の際、置換度はモル置換(MS)、即ちモルにて無水グルコース単位当たりのアルキレン酸化物として述べられる。本発明に従って使用される、β-シクロデキストリンヒドロキシアルキルエーテルにおいては、モル置換は0.05及び10、好ましくは0.2及び2の間である。特に好ましくは、約0.40〜約1.50のモル置換である。アルキル基とのエーテル化は、上述のとおり、完全な置換のため3個であるグルコース単位当たりの置換度(DS)として直接述べることができる。部分的にエーテル化されたβ-シクロデキストリンは、ヒドロキシアルキル基に加えて、0.05〜2.0、好ましくは0.2〜1.5の置換度まで、同様にアルキル基、特にメチル又はエチル基を含む発明の範囲内で使用される。最も好ましくは、アルキル基との置換度は約0.5及び約1.2の間である。
【0014】
従って、さらなる局面によると、本発明は上述のとおり、エーテル化シクロデキストリン誘導体及び置換ベンゾイミダゾールを含む液体製剤に関し、エーテル化シクロデキストリン誘導体はエーテル化β-シクロデキストリンである。好ましくは、上記エーテル化β-シクロデキストリンはヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン又はジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。さらに、より好ましくは、上記エーテル化β-シクロデキストリンはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)であり、例えばヨーロッパ薬局方(European Directorate for the Quality of Medicines(EDQM)、2005年第5版、ヨーロッパ薬局方、フランス、ストラスブール、F-67029、コルマール通り226、http://www.pheur.org)に記載されている。最も好ましくは、上記エーテル化β-シクロデキストリンはKleptose(登録商標)HP(フランス、ロケット社)である。
【0015】
本文で使用される「置換ベンゾイミダゾール」という用語は、限定するわけではないが、チアベンダゾール、フベリダゾール、オキシベンダゾール、パルベンダゾール、カンベンダゾール、メベンダゾール、フェンベンダゾール、フルベンダゾール、アルベンダゾール、オキシフェンダゾール、ノコダゾール、アステミソール(astemisol)及びピモベンダン、その医薬上許容される塩、誘導体、代謝産物又はプロドラッグを意味する。好ましくは、本文で使用される用語、置換ベンゾイミダゾールは、ピモベンダン、又はそのいずれの医薬上許容される塩、誘導体、代謝産物又はプロドラッグを意味する。そのようなピモベンダンは上に記載している。
【0016】
従って、さらなる局面によると、本発明はエーテル化シクロデキストリン誘導体及び置換ベンゾイミダゾールを含む、上述のとおりの液体製剤に関し、
a) エーテル化シクロデキストリン誘導体はエーテル化β-シクロデキストリンであり、好ましくは、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又はジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、さらにより好ましくはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)、及び最も好ましくはKleptose(登録商標)HP(フランス、ロケット社)であり、及び
b) 置換ベンゾイミダゾールはチアベンダゾール、フベリダゾール、オキシベンダゾール、パルベンダゾール、カンベンダゾール、メベンダゾール、フェンベンダゾール、フルベンダゾール、アルベンダゾール、オキシフェンダゾール、ノコダゾール、アステミソール又はピモベンダン、その医薬上許容される塩、誘導体、代謝産物又はプロドラッグであり、好ましくは上に記載したピモベンダン又はそのいずれの医薬上許容される塩、誘導体、代謝産物又はプロドラッグである。
【0017】
液体製剤に必要なエーテル化シクロデキストリンの量は、最終液体製剤、置換ベンゾイミダゾール及び使用される部分のpHによって決まる。しかしながら、驚くべきことに、エーテル化シクロデキストリン誘導体の約15〜70%(w/v)、好ましくは最終製剤のHPβCDの使用は、上述のいずれの置換ベンゾイミダゾールの治療上有効な量を溶解するのに適当である。特に、上述のエーテル化シクロデキストリン誘導体の約15〜70%(w/v)、好ましくは最終製剤のHPβCDの使用は、治療上有効な量のピモベンダンを溶解するのに適当である。従って、さらなる局面によると、本文に記載された最終液体製剤のいずれもが、約15〜70%(w/v)エーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCDを含む。好ましくは、エーテル化シクロデキストリン誘導体の部分、好ましくは最終液体製剤のHPβCDが20〜50%(w/v)、さらに好ましくは20〜40%、さらにより好ましくは20〜30%(w/v)、さらにより好ましくは22〜28%、さらにより好ましくは23〜27%(w/v)、さらにより好ましくは24〜26%(w/v)であり、例えば最終製剤の部分は15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70%(w/v)又はそのいずれの留分である。
【0018】
本文に記載された、液体製剤の置換ベンゾイミダゾールの部分は、通常、0.005と0.15%(w/v)の間、好ましくは0.01と0.15%(w/w)の間、さらに好ましくは0.05及び0.15%(w/w)の間、及びさらになお好ましくは0.075及び0.10%(w/w)である。それゆえ、部分は、例えば0.001、0.002、0.003・・・0.008、0.009等、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05・・・0.08 0.09等、0.10、0.11、0.12・・・0.14、0.15%(w/v)である。好ましくは、置換ベンゾイミダゾールは本文に記載されたいずれかであり、好ましくはピモベンダンである。
従って、さらなる局面によれば、本発明は、上述のとおりエーテル化シクロデキストリン誘導体及び置換ベンゾイミダゾール、好ましくはHPβCD及びピモベンダンを含む液体製剤に関し、上記液体製剤は、
a) 上述のエーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCDを約15〜70%(w/v)、好ましくは20〜50%(w/v)、さらに好ましくは20〜40%、さらにより好ましくは20〜30%(w/v)、さらにより好ましくは22〜28%、さらにより好ましくは23〜27%(w/v)、最も好ましくは24〜26%(w/v)、及び
b) 本文に記載の置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを0.005と0.15%の間(w/v)、好ましくは0.01及び0.15%の間(w/w)、さらに好ましくは0.05と0.15%の間(w/w)、及びさらになお好ましくは0.075と0.1%(w/w)
を含む。
【0019】
特に急性CHF(鬱血性心不全)の治療、また同様に本文に記載される、他の治療上の使用のための、一般的に治療上有効である目的とする投与量は、動物の体重kgにつき、ピモベンダン約0.05〜0.5mg、好ましくは動物の体重kgにつき、ピモベンダン約0.1〜0.3mg、さらにより好ましくは動物の体重kgにつき、ピモベンダン約0.15mgである。薬剤製品中のピモベンダンの目的とする濃度は、安全で均一な注射容量の投与を可能にする0.75mg/mlに設定すべきである。たとえば、体重10kgの犬は、ピモベンダン1.5mgを含む2mlの投与量を摂取するだろう。従って、さらなる局面によれば、本発明は液体製剤に関し、好ましくは、上述のエーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCD及びピモベンダン0.75mg/ml(0.075%(w/v))を含む注射水溶液に関する。より好ましくは、上記液体製剤中のエーテル化シクロデキストリン誘導体の部分は、前述のエーテル化シクロデキストリン誘導体を約15〜70%(w/v)、好ましくは20〜50%(w/v)、さらに好ましくは20〜40%(w/v)、さらにより好ましくは20〜30%(w/v)、さらにより好ましくは22〜28%(w/v)、さらにより好ましくは23〜27%(w/v)、最も好ましくは24〜26%(w/v)含む。最も好ましくは、ピモベンダン0.75mg/ml(0.075%(w/v))、及び最終製剤のHPβCD約15〜70%(w/v)、好ましくは20〜50%(w/v)、さらに好ましくは20〜40%(w/v)、さらにより好ましくは20〜30%(w/v)、さらにより好ましくは22〜28%(w/v)、さらにより好ましくは23〜27%(w/v)、最も好ましくは24〜26%(w/v)を含む液体製剤、好ましくは注射水溶液である。
【0020】
液体製剤は、緩衝液、酸化防止剤、例えばエデト酸ナトリウム、等張剤、例えば塩化ナトリウムの添加を許容でき、動物、特に犬の静脈/又は皮下投与用の使い捨て注射可能溶液として好適である。同様に、防腐剤も添加できる。従って、さらなる局面によれば、本発明は上述の液体製剤のいずれか、好ましくは注射水溶液に関し、本文に記載されたエーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCD、及び本文に記載された置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含み、前述の製剤はさらに医薬上許容される賦形剤、及び/又は塩を含む。
単に一例として、本発明に従った標準液体製剤、特に注射溶液における賦形剤はメグルミン、マクロゴール、ポロキサマー188、パラベン及びグリシンが挙げられた。発明に従った製剤は、他の成分として錯化剤を含んでよい。錯化剤とは、本発明の範囲内において、錯体結合の中に入ることができる分子を意味する。好ましくは、これらの化合物は錯体陽イオン、最も好ましくは金属陽イオンの効果を有することが望ましい。発明に従った製剤は、錯化剤として、好ましくはエデト酸(エチレンジアミン四酢酸:EDTA)またはその公知の塩の一つ、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム又はエチレンジアミン四酢酸ニナトリウム二水和物(エデト酸ナトリウム)を含む。好ましくは、エデト酸ナトリウムが任意にその水和物の形、より好ましくは二水和物の形で使用される。本発明に従って、錯化剤が製剤内に使用される場合、それらの含有量は、発明に従って、好ましくは10mlにつき1〜20mgの範囲、より好ましくは製剤10mlにつき2〜10mgの範囲である。好ましくは、発明に従った製剤は、発明に従い製剤の10mlにつき、約5mgの量で錯化剤を含む。当然、当業者に知られた他の賦形剤も同様に使用できる。
【0021】
従って、さらなる局面によれば、本発明は上述の液体製剤のいずれか、好ましくは注射水溶液に関し、本文に記載されたエーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCD、及び本文に記載された置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含み、前述の製剤はさらに1以上の好適な防腐剤を含み、好ましくはメグルミン、マクロゴール、パラベン及びエチレンジアミン四酢酸から成る群から選択される。
塩に関しては、例えば、これらは塩化物、硫酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化物及び/又は硝酸塩のような無機塩である。さらに、発明に従った散剤は、同様に、例えば、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、琥珀酸塩、エチル琥珀酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホネート(methansulfonate)、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、パラ-トルエンスルホネート(para-toluensulfonate)、パルモアート(palmoate)、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、エストラート(estolate)、グルセプタート(gluceptate)又はラクトビオナート(lactobionate)のような有機塩を含んでよい。同時に、対応する塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、アンモニウムのような医薬上許容される陽イオンを含んでよい。
【0022】
しかしながら本発明は、塩がHPβCDの固定量の存在下で、ピモベンダンの溶解度を減少させ得ることを証明する。この課題を解決する二つの方法が存在する。第一の選択肢はHPβCDの濃度をさらに上昇させることである。もう一つの方法は、塩の量を制限することである。約300mOsm/Kgの質量オスモル濃度になるリン酸塩の添加後、ピモベンダンの溶解度が影響されないことが例示的な方法で示されている。従って、さらなる局面によれば、本発明は上述のすべての液体製剤、好ましくは注射水溶液に関し、本文に記載されたエーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCD、及び本文に記載された置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含み、前述の液体製剤は約250〜350mOsm/Kg、好ましくは約270〜320mOsm/Kg、さらにより好ましくは280〜300mOsm/Kgの質量オスモル濃度を含む。当業者は、上述の液体製剤のいずれかの質量オスモル濃度を、従来技術においてよく知られている方法により、上述の範囲へ調整することができる。例えば、HPβCD約24%(w/v)及びピモベンダン0.75mg/mlを含む液体製剤は、アルカリリン酸塩、好ましくはリン酸ナトリウム10mMを含んでよく、最終液体製剤の質量オスモル濃度を約290〜300mOsm/kgに調整する。
【0023】
発明に従った液体製剤のpHは、好ましくは5.5と8.5の間である。特に、注射可能溶液の場合、pHは好ましくは6.5と7.5の間である。pHを6.5〜7.5に調整するために使用できる好ましい緩衝系は、例えばリン酸塩、酢酸塩及びクエン酸塩緩衝系である。それらの緩衝系の製剤は、例えばヨーロッパ薬局方(European Directorate for the Quality of Medicines(EDQM)、2005年第5版、ヨーロッパ薬局方、フランス、ストラスブール、F-67029、コルマール通り226、http://www.pheur.org)に記載されている。
従って、さらなる局面によれば、本発明は上述の液体製剤のいずれか、好ましくは注射水溶液に関し、本文に記載されたエーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCD、及び本文に記載された置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含み、注射可能溶液の場合、前述の液体製剤をpH5.5〜8.5、好ましくはpH6.5〜7.5に調整する。
【0024】
上述のとおり、本発明の好ましい実施形態は、pH6〜7.5に調整した注射可能溶液に関し、本文に記載されたエーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCD、及び本文に記載された置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含む。そのような場合、等張溶液の製剤はさらに好ましい。
すべての好適な適応症に対し、置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンの作用を速やかに開始させるため、静脈及び/又は皮下経路による非経口投与の注射可能溶液が必須である。水溶性の製剤は、ヒト又は動物のどちらかが、静脈/皮下経路による薬剤製品を投与するために必要であり、非水溶性溶媒を有する製剤は、深刻な耐性問題の危険があるため許容できず、最先端技術とはいえない。
従って、さらなる局面により、この発明は、つまり静脈及び/又は皮下経路による非経口投与のための、上述の液体製剤のいずれかを含む、注射可能な溶液に関する。一回限りの利用ではなく、規定の時間中継続して薬剤を投与する上で有効である。そのような場合、置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含む水溶液の注入による投与が有利である。従って、さらなる局面により、この発明は上述の液体製剤のいずれかを含む、注入用注射可能溶液に関する。
【0025】
溶液は静脈投与のため必須であり、懸濁粒子は寒栓の高いリスクを持ち、除外されなければならない。すぐ使用できる溶液は、投与前に、希釈剤/溶媒を添加することにより戻さなければならない凍結乾燥製品と比べて好ましい。投与されるべき薬剤製品を戻すことは、治療時間が数分延びることとなり、このような致命的な状況においては避けなければならない。加えて、局所的耐性は製剤の等張性及びpH範囲により決まる。約pH7の中性範囲におけるpHが通常好ましく、実際のpHがこの目的から高くはずれると、許容される局所的耐性の危険性が高まる。
従って、さらなる局面により、発明は本文に記載される液体製剤のいずれかに関し、本文に記載されるエーテル化シクロデキストリン誘導体、好ましくはHPβCD及び本文に記載される置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを含み、液体溶液はすぐに使用できる溶液である。すぐに使用できる溶液は、概して、約6.5〜7.5、好ましくは約6.8〜7.2、さらにより好ましくは約7.0のpHに調整する。その上、上記のすぐに使用できる溶液は、同様に、約250〜350mOsm/Kg、好ましくは約270〜320mOsm/Kg、さらにより好ましくは約280〜300mOsm/Kgの質量オスモル濃度へ調整する。驚くべきことに、約300mOsm/Kgになる塩の添加により、置換ベンゾイミダゾール、特にピモベンダンの溶解度が減少したことが判明した。しかしながら、上記のすぐに使用できる溶液の質量オスモル濃度を、約300mOsm/Kg、例えば約305〜310mOsm/Kgへわずかに上昇させることは、当業者に知られていることであり、置換ベンゾイミダゾール、特にピモベンダンの適当な溶解度を確実にする。
【0026】
さらなる局面によって、本発明は上記のとおり液体製剤に関し、製剤は、約i)HPβCD20〜30%(w/w)、ii)ピモベンダン、その医薬上許容される塩、誘導体、代謝産物又はプロドラッグ0.005〜0.15%(w/w);及び任意にiii)安定剤好ましくはEDTA0.025〜0.075%(w/w)を含み;及び液体製剤のpHを約6.5〜7.5に調整し、質量オスモル濃度が約280〜300mOsm/Kgである。
さらなる局面によって、本発明は同様に、本文に記載された液体製剤のいずれの生産物のための製造工程に関する。上述の液体製剤のいずれかの特殊な製剤を踏まえて、これらの製剤は、当業者に知られた存在する(stand)手順によって調製できる。上記方法は、
a) 溶媒中でエーテル化シクロデキストリン誘導体を溶解する工程、
b) 置換ベンゾイミダゾールを工程(a)で得られた溶液へ加える工程、及び
c) 工程(b)で得られた混合物を混ぜ、水溶液の形で液体製剤を得る工程
を含む。
【0027】
好ましくは、そのエーテル化シクロデキストリン誘導体はHPβCDである。さらに、溶媒は好ましくは注射用液である。
より好ましい実施形態に従って、上記製造方法は、
a) エーテル化シクロデキストリン、好ましくはHPβCDを製造容器に量りとる工程、
b) 最終容量のおよそ40〜80%に水を加える工程、
c) 電磁攪拌機又は櫂形攪拌機を用い、エーテル化シクロデキストリンが溶解するまで混合する工程、
d) 緩衝液構成要素を加え、水で変形させ、溶解するまで混合する工程、
e) pHを確かめ、目標値に近いことを確認する工程、及び、必要であれば水酸化ナトリウム又は塩酸で調整する工程、
f) 置換ベンゾイミダゾール、好ましくはピモベンダンを加え、水で変形させ、溶解するまで混合する工程、
g) 水で容量を調節する工程
を含む。
【0028】
さらにより好ましい局面によって、製造方法は
h) 工程g)の液体製剤を濾過し、バイアルへ分配する工程、
i) バイアルを、好ましくは30分間121℃でオートクレーブにて処理する工程
を含む。
さらなる局面によって、本発明は、薬物として本文に記載された液体製剤のいずれかの使用に関する。好ましくは、上記薬物は獣医系の薬物である。さらにより好ましくは、上記薬物は注射溶液である。上記注射溶液は、さらなる局面によると、注入溶液である。
上記のとおり、動物及びヒト、特に犬の急性鬱血性心不全(急性CHF)の治療に関し、医薬の分野では未だ対処されていない需要が存在する。従って、ここに定められた液体製剤は、人間及び獣医学、好ましくは獣医学において使用できる。これまで、この適応症に対し、獣医学において使用を許可された製品はない。従って、致命的な状態において、急性CHFの治療は、急性分利状態における動物の生命を救うことを可能にした重大な革新となるであろう。作用が速やかに開始することにより、動物の状態が目に見えて急速に変化し、獣医及び動物のオーナーは、状況を乗り越えるために取られた手段の成果を評価することができる。加えて、この治療方法は、経口治療ができない場合の治療の選択肢となる。ショック及び/又は胃拡張捻転の治療と同様、心臓血管機能及び/又は麻酔中の腎臓灌流を維持するための手術間近の投与は、速やかに開始するピモベンダン製剤向けの、他の潜在的な適応症である。
【0029】
従って、さらなる実施形態により、本発明はまた、前述の治療を必要とする患者の疾病の治療、又は予防のための医薬組成物の調製に向けた、本文に記載されたピモベンダンを含む液体製剤のいずれのかの使用に関し、適応症は鬱血性心不全(CHF)、急性CHF、代償不全心内膜症(DCE)、拡張型心筋症(DCM)、無症候性(潜在)CHF、無症候性DCM、麻酔中の心臓血管機能及び/又は腎臓灌流の維持、ショック、胃拡張、捻転、心筋及び腎臓虚血(ischemia)から選択される。
上記のとおり、ピモベンダンの通常の治療上有効な量は、動物の体重kg及び投与につきピモベンダン約0.05〜0.5mg、好ましくは動物の体重kg及び投与につきピモベンダン約0.1〜0.3mg、さらにより好ましくは、動物の体重kgにつきピモベンダン約0.15mgである。好ましくは、一日につき一回投与すべきである。
【0030】
さらなる局面により、本発明はまた、疾病の治療及び/又は予防の方法に関し、強心性、低圧性、抗炎症性及び抗血栓症物質は、本文に記載されたとおり、液体製剤のいずれかの治療上有効な量を、前述の治療が必要な患者へ投与する工程を含む、治療上の利益を有する。好ましくは、液体製剤は、動物の体重kg及び投与につきピモベンダン約0.05〜0.5mg、好ましくは動物の体重kg及び投与につきピモベンダン約0.1〜0.3mg、さらにより好ましくは、動物の体重kgにつきピモベンダン約0.15mgの治療上有効な量へ投与される。好ましくは、一日につき一回投与すべきである。
上述のとおり、ピモベンダンはとりわけ鬱血性心不全(CHF)、代償不全心内膜症(DCE)、拡張型心筋症(DCM)、無症候性(潜在)CHF、無症候性DCMの治療における定評ある薬物である。従って、さらなる局面により、本発明は鬱血性心不全(CHF)、代償不全心内膜症(DCE)、拡張型心筋症(DCM)、無症候性(潜在)CHF、無症候性DCM、心筋及び腎臓虚血、ショックを患い、又は有する患者の治療及び/又は防止の方法に直接関し、必要とする当該患者へ本文に記載され、治療上有効な量のピモベンダンを含む液体製剤のいずれかを投与する工程を含む。特に、CHFの治療に治療上有効な量は、動物の体重kg及び投与につき、ピモベンダン約0.05〜0.5mg、好ましくは動物の体重kg及び投与につき、ピモベンダン約0.1〜0.3mg、さらにより好ましくは、動物の体重kg及び投与につき、ピモベンダン約0.15mgである。好ましくは、一日につき一回投与すべきである。そのような治療は、例えば手術、特に外傷と同様胃腸手術が原因となる麻酔、ショック、胃拡張又は捻転の間の心臓血管機能及び/又は腎臓灌流の維持の場合、同様に有利である。
前述の治療のいずれかを必要とする患者は、哺乳動物、好ましくはヒト又は動物である。本文で使用される動物という用語は、犬、猫、モルモット、ハムスター、馬、畜牛、ヤギ、ヒツジ等の伴侶動物を含むが、それに限定されるわけではない。好ましくは、前述の治療を必要とする患者は犬、馬又は猫、最も好ましくは犬である。しかしながら、前述の治療を必要とする動物は、同様にサル、ゾウ、キリン、及び他の有蹄動物、クマ、マウス、及び他の小哺乳動物をも含む。
【0031】
本発明は、さらに
a) 本文に記載された本発明に従って、液体製剤、好ましくは注射可能溶液を入れた容器、
b) 及び、前述の予防又は治療を必要とする患者、好ましくは、上に定義された哺乳動物における、鬱血性心不全の予防及び/又は治療のための、本発明に従った液体製剤、好ましくは注射可能溶液が、好ましくは注射(静脈又は皮下)を経由して使用できるという情報を含むパッケージリーフレット
を含む、部品のキットに関する。
動物の治療の場合、上記パッケージリーフレットは、好ましくはピモベンダンが、上述のとおり、体重kg及び投与につき、好ましくは約0.15mg の投与量で使用すべきであるとの情報を含む。好ましくは、一日につき一回投与されるべきである。より好ましくは、パッケージリーフレットは上述のとおり特殊な適応症を含む。
さらなる局面により、容器は液体製剤2ml、5ml、10ml、50ml又は250mlを含む。好ましくは、容器はピモベンダン3.75、7.5又は37.5mgを含む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施例)
以下の実施例は、本発明をさらに例証するためのものである。しかしながら、本文に開示された発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0033】
実施例:1
異なるpH値でのヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)存在下のピモベンダンの溶解度
ピモベンダン、置換ベンゾイミダゾールの溶解度を、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の種々の濃度及びpH3、5及び7にて試験した。Kleptose(登録商標)HP(フランス、ロケット社)を、医薬品グレードのHPβCDとして使用した。ピモベンダンの飽和溶解度は、HPβCDの10〜40%(w/v)で、pH3、5及び7で調べた。溶液は、リン酸ナトリウム溶液で緩衝した。サンプル溶液は以下の方法を用いて調製した。
a) 試験中の溶液およそ3mlを、電磁攪拌棒を用いてガラスバイアル7mlに設置した。
b) pHを塩酸で調整した。
c) 超過のピモベンダンを加えた。サンプルを超音波浴に設置し、5分間超音波処理し、超過のピモベンダンが存在し、必要な場合さらに加えられることを確認した。
d) サンプルを25℃の水浴中に設置し、少なくとも16時間攪拌した。
e) サンプルを0.2μmPVDFシリンジ濾過器を用いて濾過した。
f) サンプルをHPLCにより分析した。
結果を図1及び2に示す。驚くべきことに、HPβCDの濃度の上昇と、約5又は7の両pHでのピモベンダンの溶解度の増加間にある非線形関係により、ピモベンダンの目的とする濃度を含む溶液は、15%以上の(HPβCD)濃度の使用により得られたことが発見された(図1参照)。加えて、HPβCDにより得られる溶解度の向上は、減少するpHでは上昇しないが、pH7にて、一定のHPβCD濃度での溶解度はpH7がpH3の場合より低く、pH5の場合より高いことが予期せず観察された。HPβCD濃度の上昇(質量)及びピモベンダンの飽和溶解度の上昇の間の関係は、pH3で線形であるが、pH5及びpH7で非線形である(図2参照)。
【実施例2】
【0034】
実施例:2
製剤形成
1.ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのレベル
ピモベンダンの飽和溶解度は、pH7.0のリン酸緩衝液10mM中のHPβCD20〜25%(w/v)で調べた。研究は、HPβCDの三つの異なるバッチで実行し、それぞれの溶液を全く同一に試験した(図3参照)。溶液は、以下の方法を用いて調製した。
a) 試験中の溶液およそ3mlを、電磁攪拌機を用いてガラスバイアル7mlに設置した。
b) 超過のピモベンダンを加えた。サンプルを超音波浴に設置し、5分間超音波処理し、超過のピモベンダンが存在し、必要な場合さらに加えられることを確認した。
c) サンプルを25℃の水浴中に設置し、少なくとも16時間攪拌した。
d) サンプルを0.2μmPVDFシリンジ濾過器を用いて濾過した。
e) サンプルをHPLCにより分析した。
HPβCDの22〜24%(w/v)のレベルを、0.5、0.75及び1.0mg/mlピモベンダンを含む製剤のため選択した。
2.質量オスモル濃度
製剤に等張溶液が必要とされた。HPβCD24%(w/v)及びリン酸緩衝液10mMの製剤は、287mOsm/Kg質量オスモル濃度であった。塩化ナトリウムを加え、質量オスモル濃度を303mOsm/Kgまで上昇させた。HPβCD24%(w/v)にてピモベンダン0.75mg/mlの飽和溶解度を調べ、結果を、塩化ナトリウムで補っていないそれらの製剤と比較した。結果を図4に示す。可溶するピモベンダンの量は、約1.23mg/mlから約0.71mg/mlへ急激に減少した。
3.物理的安定性
HPβCD24%(w/v)、ピモベンダン0.75mg/ml、リン酸塩緩衝液10mM、pH7.0を含む最終製剤のサンプルを、0.2μmシリンジPVDF濾過器で、二つのねじ込みキャップクラスバイアル(two screw cap class vials)へ濾過した。一つのバイアルを室温にて、もう一つを5℃で貯蔵した。サンプルを最初に測定し、一、二週間後、外から見える変化、及び沈殿の様子を測定した。外からは変化が見られず、沈殿の様子も観察されなかった。
3.濾過研究及びオートクレーブ研究
A) HPβCD24%(w/v)、ピモベンダン0.75mg/ml、リン酸緩衝液10mM、pH7.0を含む最終製剤のサンプルを、三つの異なる濾過器(Fluorodyne(登録商標)0.2μm(ポール社)、Durapore(登録商標)0.22μm(ミリポア社)及びSupor(登録商標)0.2μm(ポール社))で濾過した。それぞれの実験に、試験溶液30mlをシリンジ50mlへ設置し、それぞれの型の膜47mmを収容するインラインホルダーで押した。濾過液サンプルをサンプリングポイント1、2、3、4、5、10、15及び25mlで収集し、ピモベンダン含有量に分析した。それぞれの濾過系でピモベンダンの含有量に変化は測定されなかった。
B) HPβCD24%,ピモベンダン0.75mg/ml、リン酸緩衝液10mM、pH7.0を含む最終製剤のサンプルを0.2μmシリンジPVDFで濾過し、濾過液を121℃にて30分間オートクレーブした。結果を図5に示す。製剤をオートクレーブすると、微量の劣化が観察された。レベルは非常に低く、製剤がオートクレーブできることを示した。
【実施例3】
【0035】
実施例:3
製造プロセス
HPβCD及びピモベンダンを含む最終製剤の調製のための製造プロセスは、
a) 製造容器へHPβCDを量りとる工程、
b) 最終容量およそ60%に水を加える工程、
c) 電磁攪拌機又は櫂形攪拌機を用いて、HPβCDが溶解するまで混合する工程、
d) 緩衝液構成要素を加え、水で変形させ、溶解するまで混合する工程、
e) pHを確かめ、pH7に近いことを確認する工程、及び必要な場合、水酸化ナトリウム又は塩酸で調整する工程、
f) ピモベンダンを加え、水で変形させ、溶解するまで混合する工程、
g) 水で容量を調節する工程、
h) 溶液を濾過し、バイアルへ分配する工程、
i) 121℃で30分間バイアルをオートクレーブする工程
である。
【実施例4】
【0036】
実施例:4
液体製剤
A)

B)

C)

D)

E)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エーテル化シクロデキストリン誘導体及び置換ベンゾイミダゾールを含む液体製剤であって、前記エーテル化シクロデキストリン誘導体がα-、β及びγ-シクロデキストリンエーテルから成る群から選択される、液体製剤。
【請求項2】
エーテル化シクロデキストリン誘導体がヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、請求項1記載の液体製剤。
【請求項3】
置換ベンゾイミダゾールがピモベンダン、その医薬上許容される塩、誘導体、代謝産物及びプロドラッグである、請求項1又は2記載の液体製剤。
【請求項4】
エーテル化シクロデキストリン誘導体の部分が、約15〜70%(w/v)含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の液体製剤。
【請求項5】
エーテル化シクロデキストリン誘導体の部分が、約20〜30%(w/v)含む、請求項4記載の液体製剤。
【請求項6】
置換ベンゾイミダゾールの部分が、約0.005〜0.15%(w/v)含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の液体製剤。
【請求項7】
製剤が、さらに医薬上許容される担体、賦形剤、及び/又は塩を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の液体製剤。
【請求項8】
製剤が等張性の、請求項1〜7のいずれか1項記載の液体製剤。
【請求項9】
製剤が約6.5〜7.5のpH値、及び約280〜300mOsm/Kgの質量オスモル濃度を有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の液体製剤。
【請求項10】
製剤が、1以上の好適な防腐剤を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の液体製剤。
【請求項11】
製剤が、ほぼ
a) ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン20〜30%(w/w)、
b) ピモベンダン、その医薬上許容される塩、誘導体、代謝産物又はプロドラッグ0.005〜0.15%(w/w)
を含み、液体のpHを約6.5〜7.5へ調整し、質量オスモル濃度が約280〜300mOsm/Kgである、請求項1〜10のいずれか1項記載の液体製剤。
【請求項12】
液体製剤がさらに1以上の安定剤0.025〜0.075%(w/v)を含む、請求項11記載の液体製剤。
【請求項13】
a) エーテル化シクロデキストリン誘導体を溶媒中に溶解する工程、
b) 置換ベンゾイミダゾールを工程(a)で得られた溶液へ加える工程、及び
c) 工程(b)で得られた混合物を混ぜ、水溶液の形の液体製剤を得る工程
を含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の液体製剤を製造する方法。
【請求項14】
溶媒が水である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
鬱血性心不全を患う患者の治療及び/又は予防の方法であり、前述の治療を必要とする前記患者へ、請求項1〜12のいずれか1項記載の液体製剤を投与する工程を含む方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか1項記載の液体製剤の、薬物としての使用。
【請求項17】
獣医学としての請求項15記載の使用。
【請求項18】
注射又は注入用の、請求項1〜12のいずれか1項記載の液体製剤の使用。
【請求項19】
前述の治療を必要とする患者の疾病の治療、又は予防のための医薬組成物の調製に向けた、請求項1〜12の1項に記載の液体製剤の使用であり、適応症は鬱血性心不全(CHF)、急性CHF、代償不全心内膜症(DCE)、拡張型心筋症(DCM)、無症候性(潜在)CHF、無症候性DCM、麻酔中の心臓血管機能及び/又は腎臓灌流の維持、ショック、胃拡張、捻転、心筋及び腎臓虚血から選択される。
【請求項20】
前述の治療を必要とする患者が馬、犬又は猫である、請求項18記載の方法。
【請求項21】
注射又は注入用の、請求項1〜12のいずれか1項記載の液体製剤の使用。
【請求項22】
鬱血性心不全を患う患者の治療及び/又は予防の方法であり、前述の治療を必要とする前記患者へ、請求項1〜12のいずれか1項記載の液体製剤を投与する工程を含む方法。
【請求項23】
a) 請求項1〜12のいずれか1項記載の液体製剤、及び
b) 液体製剤が、前述の予防又は治療を必要とする患者の、鬱血性心不全の予防及び/又は治療に使用できるという情報を含むパッケージリーフレット
を含む部品のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−508372(P2010−508372A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535699(P2009−535699)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061879
【国際公開番号】WO2008/055871
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(504225895)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (34)
【Fターム(参考)】