説明

ピラジンカルボキサミド誘導体及びこれを含有する植物病害防除剤

地球環境への負荷が少なく、低薬量で広い防除スペクトラムを有し、優れた防除効果を示す農園芸用植物病害防除剤として有用な化合物の提供。
式(I)


{式中、Xはハロゲン原子;又はハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C3)アルキル基を示し、Yは水素原子;ハロゲン原子;(C1−C3)アルキル基;又は(C1−C3)アルコキシ基を示し、Rは水素原子;ハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基、(C2−C6)アルケニル基、(C2−C6)アルキニル基、(C1−C6)アルコキシ基、(C2−C6)アルケニルオキシ基、(C2−C6)アルキニルオキシ基、(C1−C6)アルキルチオ基、(C1−C6)アルキルスルフィニル基若しくは(C1−C6)アルキルスルホニル基;(C1−C6)アルコキシカルボニル基;(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基;トリ(C1−C10)アルキルシリル基;又は置換基Zにより置換されていても良いフェニル基、フェノキシ基、ピリジルオキシ基若しくはピリミジルオキシ基を示し、nは1〜5の整数を示す。}で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類、及び該化合物を有効成分として含有する農園芸用植物病害防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ある種のピラジンカルボキサミド誘導体が有害生物防除活性を有することが知られている(例えば、特開平2−175号公報又は国際公開第05/115994号パンフレット参照。)。また、ある種のビフェニル化合物が有害菌類の防除に有効であることが知られている(例えば、特許第3202079号公報参照。)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の化合物は灰色かび病やうどんこ病に対し実用レベルでは全く活性を示さず、特許文献2に記載の化合物は殺ダニ活性を有するものの殺菌活性は低く、特許文献3に記載の化合物はうどんこ病に対する活性が低いばかりでなく、コムギの赤さび病やイネの紋枯れ病等担子菌類による病害に対しては実用レベルの活性を全く示さない等の課題があった。この様に従来技術では農園芸用植物病害防除剤としてその効力や防除スペクトラムの点で必ずしも十分ではなかった。近年、地球環境への負荷が注目されるようになり、農園芸用植物病害防除剤においても低薬量で広い防除スペクトラムを有する化合物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明の一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体及びその塩類が農園芸用植物病害防除剤として優れた防除効果を示すのみならず、極めて広い殺菌スペクトラムを有することを見いだし、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は
1)一般式(I)
【化1】

{式中、Xはハロゲン原子;又はハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C3)アルキル基を示す。Yは水素原子;ハロゲン原子;(C1−C3)アルキル基;又は(C1−C3)アルコキシ基を示す。Rは水素原子;ハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニル基;ハロゲン原子又は水酸基により置換されていても良い(C2−C6)アルキニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルコキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルチオ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルフィニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルホニル基;(C1−C6)アルコキシカルボニル基;(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基;(C1−C10)アルキル基が同一又は異なっても良いトリ(C1−C10)アルキルシリル基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良いフェニル基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良いフェノキシ基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良いピリジルオキシ基;又は置換基Z(Zは後記)により置換されていても良いピリミジルオキシ基を示し、nは1〜5の整数を示す。また、nが2〜5の整数である場合、Rは同一又は異なっていても良く、また隣り合う2つのRが一緒になって、置換基Z(Zは後記)により置換されていても良い(C3−C5)アルキレン基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良い(C2−C4)アルキレンオキシ基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良い(C2−C4)アルケニレンオキシ基;又は置換基Z(Zは後記)により置換されていても良い(C1−C3)アルキレンジオキシ基を示すことができる。Zは水素原子;ハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルコキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルチオ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルフィニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルホニル基;(C1−C6)アルコキシカルボニル基;(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基;又はカルバモイル基を示し、Zが複数ある場合にはZは同一又は異なっていても良い。}で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類、
【0005】
2)Xが塩素原子;臭素原子;沃素原子;メチル基;フルオロメチル基;ジフルオロメチル基;又はトリフルオロメチル基である1)に記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類、
3)Rが水素原子;ハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルコキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルチオ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルフィニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルホニル基;又は(C1−C6)アルコキシカルボニル基を示し、nが2〜5の整数である場合、Rは同一又は異なっていても良く、また隣り合う2つのRが一緒になって(C3−C5)アルキレン基;(C2−C4)アルキレンオキシ基;又はハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C3)アルキレンジオキシ基である1)又は2)に記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類、
4)Yが水素原子である1)乃至3)のいずれかに記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類、
5)1)乃至4)のいずれかに記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類を有効成分として含有することを特徴とする農園芸用植物病害防除剤、及び
6)1)乃至4)のいずれかに記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類の有効量を対象植物又は土壌に処理することを特徴とする植物の病害防除方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、従来技術に比べて優れた性能、特に農園芸用植物病害防除剤として低薬量で広い防除スペクトラムを有する化合物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のピラジンカルボキサミド誘導体の一般式(I)の定義において、「ハロゲン原子」としては、塩素原子、臭素原子、沃素原子又はフッ素原子が挙げられる。「ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、ネオペンチル基、ノルマルヘキシル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキル基;及び同一又は異なっても良い1以上のハロゲン原子により置換された直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキル基を示し、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロイソプロピル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2,3−ジブロモプロピル基等が挙げられる。「(C2−C6)アルケニル基」としては、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ペンテニル基、1−ヘキセニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルケニル基が挙げられる。「(C2−C6)アルキニル基」としては、例えば、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、3−メチル−1−プロピニル基、2−メチル−3−プロピニル基、ペンチニル基、1−ヘキシニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルキニル基が挙げられる。「(C1−C6)アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、セカンダリーブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ノルマルペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ノルマルヘキシルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシ基が挙げられる。
【0008】
「(C2−C6)アルケニルオキシ基」としては、例えば、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基、ペンテニルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルケニルオキシ基が挙げられる。「(C2−C6)アルキニルオキシ基」としては、例えば、プロピニルオキシ基、ブチニルオキシ基、ペンチニルオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜6個のアルキニルオキシ基が挙げられる。「(C1−C6)アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ノルマルプロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ノルマルブチルチオ基、セカンダリーブチルチオ基、ターシャリーブチルチオ基、ノルマルペンチルチオ基、イソペンチルチオ基、ノルマルヘキシルチオ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルチオ基が挙げられる。「(C1−C6)アルキルスルフィニル基」としては、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ノルマルプロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ノルマルブチルスルフィニル基、セカンダリーブチルスルフィニル基、ターシャリーブチルスルフィニル基、ノルマルペンチルスルフィニル基、イソペンチルスルフィニル基、ノルマルヘキシルスルフィニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルスルフィニル基が挙げられる。「(C1−C6)アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ノルマルプロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ノルマルブチルスルホニル基、セカンダリーブチルスルホニル基、ターシャリーブチルスルホニル基、ノルマルペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、ノルマルヘキシルスルホニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルキルスルホニル基が挙げられる。「(C1−C6)アルコキシカルボニル基」としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ノルマルプロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ノルマルブトキシカルボニル基、ターシャリーブトキシカルボニル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシカルボニル基が挙げられる。「(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基」としては、例えば、メトキシイミノメチル基、エトキシイミノメチル基、ノルマルプロポキシイミノメチル基、イソプロポキシイミノエチル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜6個のアルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基が挙げられる。「トリ(C1−C10)アルキルシリル基」としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜10個のアルキルシリル基が挙げられる。「トリ(C1−C10)アルキルシリル基」は、3つの(C1−C10)アルキル基が同一であってもよく、又は異なっていてもよい。「(C3−C5)アルキレン基」としては、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数3〜5個のアルキレン基が挙げられる。「(C2−C4)アルキレンオキシ基」としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数2〜4個のアルキレンオキシ基が挙げられる。「(C1−C3)アルキレンジオキシ基」としては、例えば、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、プロピレンジオキシ基等の直鎖又は分岐鎖状の炭素原子数1〜3個のアルキレンジオキシ基が挙げられる。
【0009】
上記(C2−C6)アルケニル基、(C2−C6)アルキニル基、(C1−C6)アルコキシ基、(C2−C6)アルケニルオキシ基、(C2−C6)アルキニルオキシ基、(C1−C6)アルキルチオ基、(C1−C6)アルキルスルフィニル基、(C1−C6)アルキルスルホニル基又は(C1−C3)アルキレンジオキシ基は、置換し得る位置に1又は2以上のハロゲン原子が置換されていても良い。置換されるハロゲン原子が2以上の場合は、ハロゲン原子は同一又は異なっても良い。
【0010】
本発明の一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体の塩類としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩等の無機酸塩類、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩類、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、トリメチルアンモニウム等の無機又は有機の塩基との塩類等を例示することができる。
【0011】
本発明の一般式(I)で表される化合物において、Xとして好ましくは、塩素原子;臭素原子;沃素原子;メチル基;フルオロメチル基;ジフルオロメチル基;又はトリフルオロメチル基であり、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。
Yとして好ましくは水素原子;ハロゲン原子;又はメチル基であり、更に好ましくは水素原子である。
【0012】
Rとして好ましくは、水素原子;塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基、;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルコキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C4)アルキニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルチオ(C1−C6)基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルフィニル基;又はハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルホニル基;又は(C1−C6)アルコキシカルボニル基であり、或いはnが2以上の場合、Rは同一又は異なっていても良く、また隣り合う2つのRが一緒になって、(C3−C5)アルキレン基;(C2−C4)アルキレンオキシ基;又はハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C3)アルキレンジオキシ基である。Rとして更に好ましくは、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C4)アルキル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C4)アルケニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C4)アルキニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C4)アルコキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C4)アルケニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C4)アルキニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C4)アルキルチオ(C1−C4)基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C4)アルキルスルフィニル基;又はハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C4)アルキルスルホニル基であり、或いはnが2以上の場合、Rは同一又は異なっていても良く、また隣り合う2つのRが一緒になって、ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C3)アルキレンジオキシ基である。
nとして好ましくは1〜3の整数である。
【0013】
本発明化合物は、例えば下記の製造方法1及び2に従って製造されるがこれらに限定されるものではない。
製造方法1
【化2】

(式中、X、Y、R及びnは前記に同じくし、L1は塩素原子、臭素原子、アルコキシ基等の脱離基を表す。)
【0014】
一般式(II)で表されるピラジンカルボン酸誘導体と一般式(III)で表される2−アミノビフェニル誘導体とを塩基の存在下、不活性溶媒中反応させることにより一般式(I)で表される本発明のピラジンカルボキサミド誘導体を製造することができる。本反応における反応温度は通常約−20℃〜120℃の範囲で、反応時間は通常約0.2時間〜24時間の範囲で行われる。一般式(III)で表される2−アミノビフェニル誘導体は一般式(II)で表されるピラジンカルボン酸誘導体に対して通常約0.2〜5倍モルの範囲で使用される。
【0015】
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基類;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類;カリウム−t−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド類;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデック−7−エン等の第三級アミン類;ピリジン、ジメチルアミノピリジン等の含窒素芳香族化合物等を挙げることができる。塩基の量は一般式(II)で表されるピラジンカルボン酸誘導体に対して通常約0.5〜10倍モルの範囲で使用される。使用できる不活性溶媒としては、本反応を著しく阻害しないものであれば良く、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−プロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の鎖状又は環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、水、酢酸等の極性溶媒等を挙げることができ、これらの不活性溶媒は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0016】
本反応に使用される一般式(II)で表されるピラジンカルボン酸誘導体は公知化合物であるが、Xが例えばトリフルオロメチル基で表されるピラジンカルボン酸誘導体(II’)は、例えば以下の参考製造方法1乃至8に示す方法等によって製造することができる。
【0017】
参考製造方法1
【化3】

(式中、halはハロゲン原子を示し、R1は水素原子又は(C1−C6)アルキル基を示し、Meはメチル基を示す。)
一般式(II−1)で表されるハロゲン化ピラジンカルボン酸誘導体を公知文献(例えば、国際公開第05/115994号パンフレット及びJ.Heterocycl Chem.,34,551(1997)を参照。)記載の方法に準じて、フッ化カリウムの存在下、クロロジフルオロ酢酸メチルと反応させることにより、一般式(II’)で表されるトリフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0018】
参考製造方法2
【化4】

(式中、hal及びR1は前記に同じくし、Mはアルカリ金属原子又はNHR13(式中R1は前記に同じ。)を示す。)
一般式(II−1)で表されるハロゲン化ピラジンカルボン酸誘導体を公知文献(例えば、J.Chem.Soc.Perkin TransI,1988,921、Chem.Lett.,12,1719(1981)及び米国特許公報第4814480号公報を参照。)記載の方法に準じて、トリフルオロ酢酸塩と反応させることにより、一般式(II’)で表されるトリフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0019】
参考製造方法3
【化5】

(式中、hal及びR1は前記に同じ。)
一般式(II−1)で表されるハロゲン化ピラジンカルボン酸誘導体を公知文献(例えば、J.Med.Chem.,27(3),255(1984)、J.Chem.Soc.Chem.Commum.,(1992)1,53及びJ.Chem.Soc.Chem.Commum.,1988,638を参照。)記載の方法に準じて、ハロゲン化トリフルオロメチルと反応させることにより、一般式(II’)で表されるトリフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0020】
参考製造方法4
【化6】

(式中、hal及びR1は前記に同じ。)
一般式(II−1)で表されるハロゲン化ピラジンカルボン酸誘導体を公知文献(例えば、Terahedron Letters,Vol.31(23), 3357(1990)を参照。)記載の方法に準じて、マグネシウムと反応させてグリニヤール試薬とし、該グリニヤール試薬を二硫化炭素と反応させた後、フッ化キセノンと反応させることにより、一般式(II’)で表されるトリフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0021】
参考製造方法5
【化7】

(式中、hal及びR1は前記に同じ。)
一般式(II−2)で表される2,3−ジハロゲン化ピラジン類を参考製造方法1乃至4に記載の方法により一方のハロゲン原子をトリフルオロメチル基で置換して一般式(II−3)で表されるトリフルオロメチルピラジン類とした後、もう一方のハロゲン原子をHeck反応(例えば、特開昭64−000047号公報、特開平8−157421号公報及び特開平9−151156号公報を参照。)によりカルボン酸又はエステルへと変換させて一般式(II’)で表されるトリフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0022】
参考製造方法6
【化8】

(式中、hal及びR1は前記に同じ。)
一般式(II−4)で表される2,3−ピラジンジカルボン酸類を公知文献(例えば、特開昭55−59135号公報及び特開昭55−59136号公報を参照。)記載の方法に準じてフッ素化することにより一般式(II’−1)で表されるトリフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0023】
参考製造方法7
【化9】

一般式(II−5)で表される2,3−ピラジンジカルボン酸無水物を公知文献(例えば、特開平8−81456を参照。)記載の方法に準じて塩素化して、一般式(II−6)で表される塩素化物とした後、公知文献(例えば、Zhurnal Obshchei Khimii(1963)のケミカルアブストラクト(AN:1963:475140)を参照。)記載の方法に準じてフッ化水素と反応させることにより、一般式(II’−1)で表されるトリフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0024】
参考製造方法8
【化10】

(式中、R1は前記に同じ。)
一般式(VI−1)又は(VI−2)で表されるケトエステル類とエチレンジアミンとを公知文献(例えば、J.Org.Chem.,45,161(1980)、J.Org.Chem.,45,163(1980)及びIndian J.Org.Chem.Sect.B,23,850(1984)を参照。)記載の方法に準じて反応させて環化し、次いで酸化することにより一般式(II’)で表されるトリフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0025】
Xが例えばジフルオロメチル基で表されるピラジンカルボン酸誘導体(II’−2)は、例えば以下の参考製造方法9に示す方法等によって製造することができる。
参考製造方法9
【化11】

(式中、R1は前記に同じ。LはF−N(CH32、−N(C252、−N(CH2CH2OCH32、−N(CH2CH22Oを表す。)
一般式(II−4)で表される2,3−ピラジンジカルボン酸類を公知文献(例えば、特表2004−528297号公報を参照。)記載の方法に準じて一般式(II−7)で表される酸ハロゲン化物を経て一般式(II−8)で表されるアルデヒドに変換した後、そのホルミル基を公知のフッ素化剤(例えば、J.Org.Chem.,64,7048(1999)を参照。)を用いてフッ素化することにより一般式(II’−2)で表されるジフルオロメチルピラジンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0026】
一般式(III)で表される2−アミノビフェニル誘導体はTerahedron Letters,Vol.28,5093(1987)及びTerahedron Letters,Vol.29,5436(1988)等に記載の方法、又はそれに準じた方法で製造できる。
【0027】
製造方法2
【化12】

{式中、X、Y、R及びnは前記に同じくし、L2は塩素原子、臭素原子、沃素原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の脱離基を示し、L3はB(OH)基、B(OR2)基(式中、R2は同一又は異なっても良く、(C1−C10)アルキル基を示すか、又は2つのR2は末端で結合して−CH2CH2−基又は−C(CH32C(CH32−基を形成してもよい。)又はSn(R33基(式中、R3は同一又は異なっても良く、(C1−C10)アルキル基を示す。)を示す。}
【0028】
一般式(IV)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体と一般式(V)で表される化合物とを触媒及び塩基の存在下、不活性溶媒中反応させることにより一般式(I)で表される本発明のピラジンカルボキサミド誘導体を製造することができる。本反応における反応温度は通常約20℃〜150℃の範囲で、反応時間は通常約1時間〜24時間の範囲で行われる。一般式(V)で表される化合物は一般式(IV)で表されるピラジンカルボン酸誘導体に対して通常約0.8〜5倍モルの範囲で使用される。
【0029】
触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)塩化メチレン錯体、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド等のパラジウム触媒が挙げられる。触媒の使用量は一般式(V)で表される化合物に対して約0.001〜0.1倍モルの範囲で使用される。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基類、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩類等が挙げられる。塩基の使用量は一般式(IV)で表されるピラジンカルボン酸誘導体に対して通常約0.5〜10倍モルの範囲で使用される。
【0030】
本反応は必要に応じて相関移動触媒(例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩等を挙げることができる。)の存在下に行うことができる。また、一般式(V)で表される化合物におけるL3がSn(R3)3基である場合は、反応を効率的に行うために更に例えば、酸化銅(II)、酸化銀(II)等の存在下に反応を行うことができる。使用できる不活性溶媒としては、本反応を著しく阻害しないものであれば良く、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−プロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の鎖状又は環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;アセトニトリル等のニトリル類;酢酸エチル等のエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン、水、酢酸等の極性溶媒を挙げることができ、これらの不活性溶媒は単独で又は2種以上混合して使用することができる。反応終了後、目的物を含む反応系から常法により目的物を単離すれば良く、必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等で精製することにより目的物を製造することができる。製造される化合物には、融点が異なるものが製造される場合がある。それは結晶多形であり、いずれも本発明に含まれる。
【0031】
かくして得られる本発明の一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体の代表例を第1表乃至第5表に例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、物性は融点(℃)を示し、Amorphousと記載した化合物の1HNMRデータを第6表に示した。第1表乃至第5表において、融点を2種類記載している化合物は、少なくとも2種類の結晶多形が存在することを示す。以下の第1表乃至第5表において、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「Pr」はプロピル基を、「Bu」はブチル基を、「Ph」はフェニル基を、「n−」はノルマルを、「i−」はイソを、「t−」はターシャリーを示す。また、Q1及びQ2は以下の構造式で表される基を示す。
【化13】

【0032】

一般式(I):
【化14】

【0033】

【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
【表6】

【0039】
【表6−2】

【表7】

【0040】
【表8】

【0041】
【表9】

【0042】
【表10】

【0043】
【表11】

【0044】
本発明の一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類は、植物の病害に対して防除効果を有する。よって、本発明の一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類は、植物病害防除剤として、特に農園芸用植物病害防除剤として使用できる。このことから、本発明は、上記一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類で植物(特に農園芸用植物)を処理する植物の病害防除方法も提供する。上記一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類による植物の「処理」には、対象植物に対する上記物質の散布、塗布、対象植物が生育している土壌に対する散布、灌注などが含まれる。
本発明の一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類を有効成分として含有する農園芸用植物病害防除剤は、特に水稲、果樹、野菜、その他作物及び花卉の植物病害防除に適している。
【0045】
本発明の農園芸用植物病害防除剤の使用対象病害としては糸状菌類病害、細菌類病害、ウイルス病病害等が挙げられる。糸状菌類病害としては、例えば、不完全菌類による病害(例えば、ボトリチス(Botrytis) 属病害、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属病害、フザリウム(Fusarium)属病害、セプトリア(Septoria)属病害、サルコスポラ(Cercospora)属病害、シュードサルコスポレラ(Pseudocercosporella)属病害、リンコスポリウム(Rhynchosporium)属病害、ピリキュラリア(Pyricularia)属病害、アルタナリア(Alternaria)属病害等)、担子菌類(例えば、ヘミレリア(Hemilelia)属病害、リゾクトニア(Rhizoctonia)属病害、ウスティラゴ(Ustilago)属病害、ティフラ(Typhula)属病害、プッキニア(Puccinia)属病害等)、子のう菌類による病害(例えば、ベンチュリア(Venturia)属病害、ポドスフェラ(Podosphaera)属病害、レプトスファエリア(Leptosphaeria)属病害、ブルメリア(Blumeria)属病害、エリシフェ(Erysiphe)属病害、ミクロドキュウム(Microdochium)属病害、スクレロチニア(Sclerotinia)属病害、ゲウマノマイセス(Gaeumannomyces)属病害、モニリニア(Monilinia)属病害、ウンシヌラ(Unsinula)属病害等)、その他の菌類(例えば、アスコクイタ(Ascochyta)属病害、フォマ(Phoma)属病害、ピシウム(Pythium)属病害、コルティシウム(Corticium)属病害、ピレノフォラ(Pyrenophora)属病害等)等が挙げられる。細菌類病害としては、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属病害、ザントモナス(Xanthomonas)属病害、エルウィニア(Erwinia)属病害等が挙げられる。ウイルス病病害としては、例えば、タバコモザイクウイルス等による病害等が挙げられる。
【0046】
糸状菌類病害の具体的病害としては、例えば、イネいもち病(Pyricularia oryzae)、イネ紋枯病(Rhizoctonia solani)、イネごま葉枯病(Cochiobolus miyabeanus)、イネ苗立ち枯れ病(Rhizopus chinensis,Pythium graminicola,Fusarium graminicola,Fusarium roseum,Mucor sp.,Phoma sp.,Tricoderma sp.)、イネ馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、オオムギ及びコムギ等のうどんこ病(Blumeria graminis)、キュウリ等のうどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、ナス等のうどんこ病(Erysiphe cichoracoarum)及び他の宿主植物のうどんこ病、オオムギ及びコムギ等の眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、コムギ等の黒穂病(Urocystis tritici)、オオムギ及びコムギ等の雪腐病(Microdochium nivalis,Pythium iwayamai,Typhla ishikariensis,Typhla incarnata,Sclerotinia borealis)、オオムギ及びコムギ等の赤かび病(Fusarium graminearum,Fusarium avenaceum,Fusarium culmorum,Microdochium nivalis)、オオムギ及びコムギ等のさび病(Puccinia recondita,Puccinia striiformis,Puccinia graminis)、オオムギ及びコムギ等の立枯病(Gaeumannomyces graminis)、エンバクの冠さび病(Puccinia coronata)、及び他の植物のさび病、キュウリ、イチゴ等の灰色かび病(Botrytis cinerea)、トマト、キャベツ等の菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、ジャガイモ、トマト等の疫病(Phytophthora infestans)及び他の植物の疫病、キュウリべと病(Pseudoperonospora cubensis)、ブドウべと病(Plasmopara viticola)等の種々の植物のべと病、リンゴ黒星病(Venturia inaequalis)、リンゴ斑点落葉病(Alternaria mali)、ナシ黒斑病(Alternaria kikuchiana)、カンキツ黒点病(Diaporthe citri)、カンキツそうか病(Elsinoe fawcetti)、テンサイ褐斑病(Cercospora beticola)、ラッカセイ褐斑病(Cercospora arachidicola)、ラッカセイ黒渋病(Cercospora personata)、コムギ葉枯れ病(Septoria tritici)、コムギふ枯れ病(Leptosphaeria nodorum)、オオムギ網斑病(Pyrenophora teres)、オオムギ斑葉病(Pyrenophora graminea)、オオムギ雲形病(Rhynchosporium secalis)、コムギ裸黒穂病(Ustilago nuda)、コムギなまぐさ黒穂病(Tilletia caries)、シバの葉腐病(Rhizoctonia solani)、シバのダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)等が挙げられる。
【0047】
細菌類病害の具体的病害としては、Pseudomonas属による、例えば、キュウリ斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv.lachrymans)、トマト青枯病(Pseudomonas solanacearum)及びイネ籾枯細菌病(Pseudomonas glumae)、Xanthomonas属による、例えば、キャベツ黒腐病(Xanthomonas campestris)、イネ白葉枯病(Xanthomonas oryzae)及びカンキツかいよう病(Xanthomonas citri)、Erwinia属による、例えば、キャベツ軟腐病(Erwinia carotovora)等が挙げられる。
ウイルス病病害の具体的病害としては、タバコモザイク病(Tobacco mosaic virus)等が挙げられる。
【0048】
本発明の農園芸用植物病害防除剤を使用できる植物としては特に限定されるものではないが、例えば、穀類(例えば、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、オートムギ、トウモロコシ、高粱等)、豆類(例えば、大豆、小豆、そら豆、えんどう豆、落花生等)、果樹・果実類(例えば、リンゴ、柑橘類、梨、ブドウ、桃、梅、桜桃、クルミ、アーモンド、バナナ、イチゴ等)、野菜類(例えば、キャベツ、トマト、ほうれん草、ブロッコリー、レタス、タマネギ、ネギ、ピーマン等)、根菜類(例えば、ニンジン、馬鈴薯、サツマイモ、大根、蓮根、かぶ等)、加工用作物類(例えば、綿、麻、コウゾ、ミツマタ、菜種、ビート、ホップ、サトウキビ、テンサイ、オリーブ、ゴム、コーヒー、タバコ、茶等)、瓜類(例えば、カボチャ、キュウリ、スイカ、メロン等)、牧草類(例えば、オーチャードグラス、ソルガム、チモシー、クローバー、アルファルファ等)、芝類(例えば、高麗芝、ベントグラス等)、香料等用作物類(例えば、ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、胡椒、しょうが等)、花卉類(例えば、キク、バラ、蘭等)等が挙げられる。
【0049】
また、本発明の農園芸用植物病害防除剤は、IPM(総合的有害生物管理)において活用することもできる。IPMには、例えば遺伝子組み換え作物(例えば、除草剤耐性作物、殺虫性タンパク産生遺伝子を組み込んだ害虫耐性作物、病害に対する抵抗性誘導物質産生遺伝子を組み込んだ病害耐性作物、食味向上作物、保存性向上作物、収量向上作物等)の導入、昆虫性フェロモン(例えば、ハマキガ類、ヨトウガ類の交信攪乱剤等)等のフェロモン剤の活用、天敵昆虫等の活用、化学農薬等の活用等が含まれる。本発明の農園芸用植物病害防除剤は、前記化学農薬として活用することができる。
【0050】
本発明化合物を植物病害防除剤の有効成分として用いる場合、他の成分を加えずそのまま用いても良いが、通常は農薬製剤上の常法に従い使用上都合の良い形状に製剤して使用することが好ましい。
即ち、一般式(I)で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類はこれらを適当な不活性担体に、又は必要に応じて補助剤と一緒に適当な割合に配合して溶解、分離、懸濁、混合、含浸、吸着若しくは付着させて適宜の剤型、例えば、懸濁剤、乳剤、液剤、水和剤、顆粒水和剤、粒剤、粉剤、錠剤、パック剤等に製剤して使用できる。
【0051】
本発明で使用できる不活性担体は固体又は液体の何れであっても良い。固体の担体になりうる材料としては、例えば、ダイズ粉、穀物粉、木粉、樹皮粉、鋸粉、タバコ茎粉、クルミ殻粉、ふすま、繊維素粉末、植物エキス抽出後の残渣、粉砕合成樹脂等の合成重合体、粘土類(例えば、カオリン、ベントナイト、酸性白土等)、タルク類(例えば、タルク、ピロフィライト等)、シリカ類{例えば、珪藻土、珪砂、雲母、ホワイトカーボン(含水微粉珪素、含水珪酸ともいわれる合成高分散珪酸で、製品により珪酸カルシウムを主成分として含むものもある。)}、活性炭、イオウ粉末、軽石、焼成珪藻土、レンガ粉砕物、フライアッシュ、砂、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム等の無機鉱物性粉末、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチック担体、硫安、燐安、硝安、尿素、塩安等の化学肥料、堆肥等を挙げることができ、これらは単独で若しくは二種以上の混合物の形で使用できる。
【0052】
液体の担体になりうる材料としては、それ自体溶媒能を有するものの他、溶媒能を有さずとも補助剤の助けにより有効成分化合物を分散させうることとなるものから選択され、例えば代表例として次に挙げる担体を例示できるが、これらは単独で若しくは2種以上の混合物の形で使用され、例えば、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、ジオキサン、セロソルブ、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ケロシン、鉱油等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、アルキルナフタレン等)、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩素化ベンゼン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、ジイソプロピルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレ−ト等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル等)、ジメチルスルホキシド類等を挙げることができる。
【0053】
補助剤としては次に例示する界面活性剤、分散安定化、粘着及び/又は結合助剤、流動性改良剤、解こう剤、消泡剤、防腐剤等を挙げることができ、これらの補助剤は目的に応じて使用できる。補助剤は、単独で用いてもよく、ある場合は二種以上の補助剤を併用して用いてもよく、又ある場合には全く補助剤を使用しないこともできる。
界面活性剤は、例えば有効成分化合物の乳化、分散、可溶化及び/又は湿潤の目的のために使用することができる。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、アルキルアリールスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸縮合物、リグニンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル等が挙げられる。
分散安定化、粘着及び/又は結合助剤は、有効成分化合物の分散安定化を目的として、また粒子成形のための粘着及び/又は結合助剤として使用することができる。分散安定化、粘着及び/又は結合助剤としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、松根油、糠油、ベントナイト、リグニンスルホン酸塩等が挙げられる。
【0054】
流動性改良剤は、固体製品の流動性改良のために使用することができる。流動性改良剤としては、例えば、ワックス、ステアリン酸塩、燐酸アルキルエステル等が挙げられる。解こう剤は、懸濁性製品の分散解こう剤として使用することができる。解こう剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸縮合物、縮合燐酸塩等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン油等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、パラクロロメタキシレノール、パラオキシ安息香酸ブチル等が挙げられる。
更に、本発明の農園芸用植物病害防除剤には、必要に応じて機能性展着剤、ピペロニルブトキサイド等の代謝分解阻害剤等の活性増強剤、プロピレングリコール等の凍結防止剤、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)等の酸化防止剤、紫外線吸収剤等その他の添加剤等も加えることができる。
【0055】
有効成分化合物の配合割合は必要に応じて加減することができ、農園芸用植物病害防除剤100質量部中、約0.01〜90質量部の範囲から適宜選択して使用すれば良く、例えば、乳剤、水和剤、粉剤又は粒剤とする場合は約0.01〜50質量%が適当である。
本発明の農園芸用植物病害防除剤は各種病害を防除するためにそのまま、又は水等で適宜希釈し、若しくは懸濁させた形で使用すれば良い。
本発明の農園芸用植物病害防除剤の使用量は種々の因子、例えば、目的、対象病害、作物の生育状況、病害の発生傾向、天候、環境条件、剤型、施用方法、施用場所、施用時期等により変動するが、有効成分化合物として10アール当たり約0.001g〜10kg、好ましくは約0.01g〜1kgの範囲から目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0056】
本発明の農園芸用植物病害防除剤は、更に防除対象病害虫、防除適期の拡大のため、或いは薬量の低減をはかる目的で他の農園芸用殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、生物農薬等と混合して使用することも可能であり、又、使用場面に応じて除草剤、植物成長調節剤、肥料等と混合して使用することもできる。
かかる目的で使用する他の農園芸殺菌剤としては、例えば、硫黄、石灰硫黄合剤、塩基性硫酸銅、イプロベンホス、エディフェンホス、トルクロホス・メチル、チラム、ポリカーバメイト、ジネブ、マンゼブ、マンコゼブ、プロピネブ、チオファネート、チオファネートメチル、ベノミル、イミノクタジン酢酸塩、イミノクタジンアルベシル酸塩、メプロニル、フルトラニル、ペンシクロン、フラメトピル、チフルザミド、メタラキシル、オキサジキシル、カルプロパミド、ジクロフルアニド、フルスルファミド、クロロタロニル、クレソキシム・メチル、フェノキサニル、ヒメキサゾール、エクロメゾール、フルオルイミド、プロシミドン、ビンクロゾリン、イプロジオン、トリアジメホン、ビテルタノール、トリフルミゾール、イプコナゾール、フルコナゾール、プロピコナゾール、ジフェノコナゾール、ミクロブタニル、テトラコナゾール、ヘキサコナゾール、テブコナゾール、チアジニル、イミベンコナゾール、プロクロラズ、ペフラゾエート、シプロコナゾール、イソプロチオラン、フェナリモル、ピリメタニル、メパニピリム、ピリフェノックス、フルアジナム、トリホリン、ジクロメジン、アゾキシストロビン、チアジアジン、キャプタン、プロベナゾール、アシベンゾラルSメチル、フサライド、トリシクラゾール、ピロキロン、キノメチオネート、オキソリニック酸、ジチアノン、カスガマイシン、バリダマイシン、ポリオキシン、ブラストサイジン又はストレプトマイシン等を挙げることができる。
【0057】
同様の目的で使用する農園芸用殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤としては、例えば、エチオン、トリクロルホン、メタミドホス、アセフェート、ジクロルボス、メビンホス、モノクロトホス、マラチオン、ジメトエート、ホルモチオン、メカルバム、バミドチオン、チオメトン、ジスルホトン、オキシデプロホス、ナレッド、メチルパラチオン、フェニトロチオン、シアノホス、プロパホス、フェンチオン、プロチオホス、プロフェノホス、イソフェンホス、テメホス、フェントエート、ジメチルビンホス、クロルフェビンホス、テトラクロルビンホス、ホキシム、イソキサチオン、ピラクロホス、メチダチオン、クロロピリホス、クロルピリホス・メチル、ピリダフェンチオン、ダイアジノン、ピリミホスメチル、ホサロン、ホスメット、ジオキサベンゾホス、キナルホス、テルブホス、エトプロホス、カズサホス、メスルフェンホスDPS(NK−0795)、ホスホカルブ、フェナミホス、イソアミドホス、ホスチアゼート、イサゾホス、エナプロホス、フェンチオン、ホスチエタン、ジクロフェンチオン、チオナジン、スルプロホス、フェンスルフォチオン、ジアミダホス、ピレトリン、アレスリン、プラレトリン、レスメトリン、ペルメトリン、テフルトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、シペルメトリン、アルファシペルメトリン、シハロトリン、ラムダシハロトリン、デルタメトリン、アクリナトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、シクロプロトリン、エトフェンプロックス、ハルフェンプロックス、シラフルオフェン、フルシトリネート、フルバリネート、メソミル、オキサミル、チオジカルブ、アルジカルブ、アラニカルブ、カルタップ、メトルカルブ、キシリカルブ、プロポキスル、フェノキシカルブ、フェノブカルブ、エチオフェンカルブ、フェノチオカルブ、ビフェナゼート、BPMC(2−セコンダリーブチルフェニル−N−メチルカーバメート)、カルバリル、ピリミカーブ、カルボフラン、カルボスルファン、フラチオカルブ、ベンフラカルブ、アルドキシカルブ、ジアフェンチウロン、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、ヘキサフルムロン、ノバルロン、ルフェヌロン、フルフェノクスロン、クロルフルアズロン、酸化フェンブタスズ、水酸化トリシクロヘキシルスズ、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、メトプレン、ハイドロプレン、ビナパクリル、アミトラズ、ジコホル、ケルセン、クロルベンジレート、フェニソブロモレート、テトラジホン、ベンスルタップ、ベンゾメート、テブフェノジド、メトキシフェノジド、ピリダリル、メタフルミゾン、フルベンジアミド、クロマフェノジド、プロパルギット、アセキノシル、エンドスルファン、ジオフェノラン、クロルフェナピル、フェンピロキシメート、トルフェンピラド、フィプロニル、テブフェンピラド、トリアザメート、エトキサゾール、ヘキシチアゾクス、硫酸ニコチン、ニテンピラム、アセタミプリド、チアクロプリド、イミダクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、ジノテフラン、フルアジナム、ピリプロキシフェン、ヒドラメチルノン、ピリミジフェン、ピリダベン、シロマジン、TPIC(トリプロピルイソシアヌレート)、ピメトロジン、クロフェンテジン、ブプロフェジン、チオシクラム、フェナザキン、キノメチオネート、インドキサカルブ、ポリナクチン複合体、ミルベメクチン、アバメクチン、エマメクチン・ベンゾエート、スピノサッド、BT(バチルス・チューリンゲンシス)、アザディラクチン、ロテノン、ヒドロキシプロピルデンプン、塩酸レバミゾール、メタム・ナトリウム、酒石酸モランテル、ダゾメット、トリクラミド、バストリア又はモナクロスポリウム・フィマトパガム等を挙げることができる。
【0058】
同様に除草剤としては、例えば、グリホサート、スルホセート、グルホシネート、ビアラホス、ブタミホス、エスプロカルブ、プロスルホカルブ、ベンチオカーブ、ピリブチカルブ、アシュラム、リニュロン、ダイムロン、イソウロン、ベンスルフロンメチル、シクロスルファムロン、シノスルフロン、ピラゾスルフロンエチル、アジムスルフロン、イマゾスルフロン、テニルクロール、アラクロール、プレチラクロール、クロメプロップ、エトベンザニド、メフェナセット、ペンディメタリン、ビフェノックス、アシフルオフェン、ラクトフェン、シハロホップブチル、アイオキシニル、ブロモブチド、アロキシジム、セトキシジム、ナプロパミド、インダノファン、ピラゾレート、ベンゾフェナップ、ピラフルフェンエチル、イマザピル、スルフェントラゾン、カフェンストロール、ベントキサゾン、オキサジアゾン、パラコート、ジクワット、ピリミノバック、シマジン、アトラジン、ジメタメトリン、トリアジフラム、ベンフレセート、フルチアセットメチル、キザロホップ・エチル、ベンタゾン又は過酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0059】
次に実施例及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが発明の要旨を超えない限りそれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0060】
N−(4’−トリフルオロメトキシビフェニル−2−イル)−3−メチルピラジン−2−カルボキサミド(化合物No.2−14)の製造
N−(2−ブロモフェニル)−3−メチルピラジン−2−カルボキサミド(0.4g;1.4mmol)及び4−トリフルオロメトキシフェニルボロン酸(0.31g;1.5mmol)のトルエン10mL溶液に炭酸ナトリウム(0.6g;5.7mmol)の水5mL溶液を加え、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g;0.09mmol)を添加した。アルゴン気流下、6時間加熱還流した後、室温にまで冷却し酢酸エチルと水を加え分液した。有機層を水及び飽和食塩水で順次洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧下に濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製して表題化合物(0.35g)を得た。
収率:68%
物性:融点 120〜121℃
【実施例2】
【0061】
N−(4’−クロロビフェニル−2−イル)−3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボキサミド(化合物No.3−6)の製造
4’−クロロビフェニル−2−イルアミン(0.3g;1.5mmol)及び3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボン酸クロリド(0.32g;1.5mmol)のTHF(テトラヒドロフラン)(10mL)溶液にトリエチルアミン(0.2g;2mmol)を加え、室温にて2時間撹拌した。水を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧下に濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して表題化合物(0.47g)を得た。
収率:85%
物性:融点 144〜145℃
【0062】
以下に本発明の代表的な製剤例及び試験例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、製剤例中、部とあるのは質量部を示す。
[製剤例1]
本発明化合物 10部
キシレン 70部
N−メチルピロリドン 10部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルと
アルキルベンゼンスルホン酸カルシウムとの混合物 10部
以上を均一に混合溶解して乳剤とする。
【0063】
[製剤例2]
本発明化合物 3部
クレー粉末 82部
珪藻土粉末 15部
以上を均一に混合粉砕して粉剤とする。
【0064】
[製剤例3]
本発明化合物 5部
ベントナイトとクレーの混合粉末 90部
リグニンスルホン酸カルシウム 5部
以上を均一に混合し、適量の水を加えて混練し、造粒、乾燥して粒剤とする。
【0065】
[製剤例4]
本発明化合物 20部
カオリンと合成高分散珪酸 75部
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルと
アルキルベンゼンスルホン酸カルシウムとの混合物 5部
以上を均一に混合粉砕して水和剤とする。
【0066】
次に、本発明化合物が植物病害防除剤として有用であることを試験例で示す。なお、本発明化合物は第1表乃至第5表に記載の化合物番号で示す。また、比較対照化合物として下記の3種の比較化合物を用いて同様の評価を行った。
比較化合物A:3−メチル−N−(2−メチルインダン−4−イル)ピラジン−2−カルボキサミド(特開平2−175号公報に記載の化合物番号13の化合物)
比較化合物B:N−{3−イソブチル−4−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル}−3−トリフルオロメチルピラジン−2−カルボキサミド(国際公開第05/115994号パンフレットに記載の化合物番号1−43の化合物)
比較化合物C:2−クロロ−N−(4’−クロロビフェニル−2−イル)ニコチン酸アミド(日本特許第3202079号公報に記載の化合物番号3−16の化合物)
【0067】
[試験例1]
リンゴ黒星病防除効果試験
ポットで育成したリンゴ苗木(品種:王林)に本発明化合物を製剤例1にしたがって調製した乳剤を水で所定量に希釈して茎葉散布した。散布翌日にPSA培地(蔗糖20g、寒天15g、ジャガイモ200gの煎汁1000mL、pH7)で培養して得られたリンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis) の胞子懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種14日後に数(1)に従って防除価(%)を求め、下記の判定基準に従って防除効果を判定した。
【数1】

【0068】
判定基準
0 : 防除価9%以下
1 : 防除価10〜19%
2 : 防除価20〜29%
3 : 防除価30〜39%
4 : 防除価40〜49%
5 : 防除価50〜59%
6 : 防除価60〜69%
7 : 防除価70〜79%
8 : 防除価80〜89%
9 : 防除価90〜99%
10: 防除価100%
【0069】
上記の試験の結果、本発明化合物は有効成分濃度50ppm、散布薬量50mLにおいて優れた防除効果を示し、特に化合物No.1−5,1−7,1−14,1−15,1−18,1−21,1−22,1−28,1−31,1−34,1−36,1−37,1−39,1−44,1−47,2−6,2−11,2−36,2−37,3−3,3−4,3−5,3−6,3−11,3−14,3−15,3−18,3−21,3−22,3−23,3−24,3−25,3−26,3−27,3−28,3−33,3−34,3−36,3−37,3−39,3−40,3−43,3−44,3−47,3−51,3−52,3−61,3−63,3−64,3−65,3−69,3−70,3−71,3−74,3−75,3−76及び3−77は判定基準10の高い活性を示した。比較化合物A及び比較化合物Bは判定基準0で効果を示さなかった。有効成分濃度10ppm、散布薬量50mLにおいて本発明化合物の内、化合物No.1−21,1−47,3−3,3−4,3−6,3−11,3−14,3−18,3−21,3−22,3−23,3−24,3−25,3−26,3−27,3−28,3−33,3−34,3−36,3−37,3−39,3−44,3−47,3−61,3−63,3−64,3−65,3−69,3−70,3−71,3−74,3−75,3−76及び3−77は判定基準10の高い活性を示した。
【0070】
[試験例2]
キュウリ灰色かび病防除効果試験
直径9cmのポットで育苗した1葉期のキュウリ(品種:四葉)に本発明化合物を製剤例1にしたがって調製した乳剤を水で所定量に希釈して茎葉散布した。散布翌日にPSA培地で培養して得られたキュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の胞子懸濁液を直径6mmのペーパーディスクに含浸させてキュウリ子葉に置床接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種7日後に数(2)に従って防除価を求め、試験例1の判定基準に従って防除効果を判定した。
【数2】

【0071】
上記の試験の結果、本発明化合物は有効成分濃度200ppm、散布薬量50mLにおいて優れた防除効果を示し、特に化合物No.1−3,1−5,1−6,1−8,1−11,1−14,1−15,1−17,1−18,1−21,1−22,1−28,1−31,1−33,1−36,1−38,1−39,1−40,1−47,2−6,2−21,3−3,3−4,3−5,3−6,3−7,3−8,3−11,3−14,3−15,3−18,3−21,3−22,3−23,3−24,3−25,3−26,3−27,3−28,3−31,3−33,3−34,3−36,3−37,3−39,3−40,3−41,3−42,3−43、3−51,3−52,3−61,3−63,3−64,3−65,3−69,3−70,3−71,3−74,3−75,3−76,3−77及び4−6は判定基準10の高い活性を示した。比較化合物A及び比較化合物Bは判定基準0で効果を示さなかった。
【0072】
[試験例3]
オオムギうどんこ病防除効果試験
直径6cmのポットで育苗した1葉期のオオムギ(品種:関東6号)に本発明化合物を製剤例1にしたがって調製した乳剤を水で所定量に希釈して茎葉散布した。散布翌日にオオムギうどんこ病菌(Blumeria graminis hordei)に罹病したオオムギ葉から得られた胞子を振りかけて接種し、温室内で保持した。接種7日後に試験例1の判定基準に従って防除効果を判定した。
【0073】
上記の試験の結果、本発明化合物は有効成分濃度200ppm、散布薬量50mLにおいて優れた防除効果を示し、特に化合物No.1−4,1−5,1−6,1−11,1−14,1−21,1−22,1−31,1−33,1−36,1−37,1−38,1−39,1−47,2−12,2−14,2−21,2−22,2−36,2−38,3−3,3−4,3−5,3−6,3−7,3−8,3−10,3−11,3−14,3−15,3−18,3−21,3−22,3−23,3−24,3−25,3−26,3−27,3−28,3−29,3−31,3−33,3−34,3−36,3−37,3−38,3−39,3−40,3−41,3−42,3−43,3−47,3−51,3−52,3−61,3−63,3−64,3−65,3−69,3−70,3−71,3−74,3−75,3−76,3−77,4−6,4−21及び4−22は判定基準10の高い活性を示した。比較化合物A、比較化合物Bは判定基準0で効果を示さなかった。比較化合物Cは判定基準4で低い効果であった。有効成分濃度50ppm、散布薬量50mLにおいて本発明化合物の内、化合物No.1−23,3−3,3−4,3−5,3−6,3−7,3−8,3−10,3−11,3−14,3−18,3−21,3−22,3−23,3−24,3−25,3−26,3−27,3−28,3−29,3−31,3−33,3−34,3−36,3−37,3−38,3−39,3−40,3−41,3−42,3−43,3−47,3−61,3−63,3−64,3−65,3−69,3−70,3−71,3−74,3−75,3−76,3−77,4−6,4−21及び4−22は判定基準10の高い活性を示した。比較化合物Cは判定基準0で効果を示さなかった。
【0074】
[試験例4]
コムギ赤さび病防除効果試験
直径6cmのポットで育苗した1葉期のコムギ(品種:ホクシン)に本発明化合物を製剤例1にしたがって調製した乳剤を水で所定量に希釈して茎葉散布した。散布翌日にコムギ赤さび病菌(Puccinia recondita)に罹病したコムギ葉から得られた胞子懸濁液を噴霧接種し、20℃多湿条件下で保持した。接種7日後に試験例1の判定基準に従って防除効果を判定した。
【0075】
上記の試験の結果、本発明化合物は有効成分濃度200ppm、散布薬量50mLにおいて優れた防除効果を示し、特に化合物No.1−4,1−5,1−14,1−15,1−21,1−37,1−38,1−44,2−14,2−21,2−22,2−36,2−38,3−3,3−4,3−5,3−6,3−7,3−8,3−10,3−11,3−14,3−15,3−18,3−21,3−22,3−23,3−24,3−25,3−26,3−27,3−28,3−29,3−31,3−33,3−34,3−35,3−36,3−37,3−38,3−39,3−40,3−41,3−42,3−43,3−44,3−47,3−51,3−52,3−61,3−63,3−64,3−65,3−69,3−70,3−71,3−74,3−75,3−76,3−77,4−6,4−21及び4−22は判定基準10の高い活性を示した。比較化合物Bは判定基準0で効果を示さなかった。比較化合物A及び比較化合物Cはいずれも判定基準6で低い効果であった。有効成分濃度50ppm、散布薬量50mLにおいて本発明化合物の内、化合物No.1−23,3−3,3−4,3−6,3−11,3−18,3−21,3−22,3−23,3−24,3−25,3−26,3−27,3−28,3−29,3−31,3−33,3−34,3−35,3−37,3−38,3−40,3−41,3−42,3−43,3−47,3−61,3−63,3−64,3−65,3−69,3−70,3−71,3−74,3−75,3−76,3−77,4−6,4−21及び4−22は判定基準10の高い活性を示した。比較化合物A及び比較化合物Cは判定基準0で効果を示さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の化合物は、地球環境への負荷が少なく、農園芸用植物病に対して低薬量で広い防除スペクトラムを有し、優れた防除効果を示す農園芸用植物病害防除剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

{式中、Xはハロゲン原子;又はハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C3)アルキル基を示す。Yは水素原子;ハロゲン原子;(C1−C3)アルキル基;又は(C1−C3)アルコキシ基を示す。Rは水素原子;ハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニル基;ハロゲン原子又は水酸基により置換されていても良い(C2−C6)アルキニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルコキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルチオ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルフィニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルホニル基;(C1−C6)アルコキシカルボニル基;(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基;(C1−C10)アルキル基が同一又は異なっても良いトリ(C1−C10)アルキルシリル基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良いフェニル基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良いフェノキシ基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良いピリジルオキシ基;又は置換基Z(Zは後記)により置換されていても良いピリミジルオキシ基を示し、nは1〜5の整数を示す。また、nが2〜5の整数である場合、Rは同一又は異なっていても良く、また隣り合う2つのRが一緒になって、置換基Z(Zは後記)により置換されていても良い(C3−C5)アルキレン基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良い(C2−C4)アルキレンオキシ基;置換基Z(Zは後記)により置換されていても良い(C2−C4)アルケニレンオキシ基;又は置換基Z(Zは後記)により置換されていても良い(C1−C3)アルキレンジオキシ基を示すことができる。Zは水素原子;ハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルコキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルチオ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルフィニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルホニル基;(C1−C6)アルコキシカルボニル基;(C1−C6)アルコキシイミノ(C1−C3)アルキル基;又はカルバモイル基を示し、Zが複数ある場合にはZは同一又は異なっていても良い。}で表されるピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類。
【請求項2】
Xが塩素原子;臭素原子;沃素原子;メチル基;フルオロメチル基;ジフルオロメチル基;又はトリフルオロメチル基である請求項1に記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類。
【請求項3】
Rが水素原子;ハロゲン原子;シアノ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルコキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルケニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C2−C6)アルキニルオキシ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルチオ基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルフィニル基;ハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C6)アルキルスルホニル基;又は(C1−C6)アルコキシカルボニル基を示し、nが2〜5の整数である場合、Rは同一又は異なっていても良く、また隣り合う2つのRが一緒になって(C3−C5)アルキレン基;(C2−C4)アルキレンオキシ基;又はハロゲン原子により置換されていても良い(C1−C3)アルキレンジオキシ基である請求項1又は2に記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類。
【請求項4】
Yが水素原子である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類を有効成分として含有することを特徴とする農園芸用植物病害防除剤。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のピラジンカルボキサミド誘導体又はその塩類の有効量を対象植物又は土壌に処理することを特徴とする植物の病害防除方法。

【公表番号】特表2009−520680(P2009−520680A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528269(P2008−528269)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/JP2006/326180
【国際公開番号】WO2007/072999
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000232623)日本農薬株式会社 (97)
【Fターム(参考)】