説明

ピラジン誘導体の製造法

【課題】
医薬、殊にアデノシン拮抗剤として知られる2−アミノピラジン誘導体の公知の製造法に対して安全かつ総工程数の短縮された、かつ全収率の向上した別途製造法、及びその中間体、並びに該中間体の製法を提供する。
【解決手段】
本発明者らは、2−アミノピラジン誘導体の別途製造法について鋭意検討した結果、隣接する炭素原子がジケトンであるピリダジノン誘導体又はその塩とジアミノプロピオン酸誘導体又はその塩を反応させることで安全かつ効率的にピラジン環を構築でき、また該反応で得られたピラジン化合物又はその塩を中間体として採用することで、2−アミノピラジン誘導体を効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、殊にアデノシン拮抗剤として知られる2−アミノピラジン誘導体の製造法、及びその中間体、並びに該中間体の製法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−アミノピラジン誘導体は、医薬あるいはその製造原料として有用であり、例えば、うつ病、痴呆(例えばアルツハイマー病、脳血管性の痴呆、パーキンソン病に伴う痴呆等)、パーキンソン病、不安、疼痛、脳血管疾患(例えば卒中等)、心不全等の予防および/または治療に有用であることが知られている(特許文献1及び2)。
【0003】
当該特許文献では、下記式(XI)及び(XII)で示される化合物が報告されている。
【化16】


(式中の記号は当該公報参照。)
【0004】
化合物(XI)については、例えば、化合物A若しくはその塩を原料化合物とした、以下の製造法が報告されている(特許文献1)。
【化17】

【0005】
又、化合物(XII)については、例えば、化合物B若しくはその塩を原料化合物とした、以下の製造法が報告されている(特許文献2)。
【化18】


【特許文献1】国際公開第05/040151号パンフレット
【特許文献2】国際公開第05/095384号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの2−アミノピラジン誘導体(VIII)の製造法は、多くの工程を要したり、有毒なシアンガスの発生を伴う等好ましいものではなかった。従って、工業生産上、安全かつ総工程数の短縮された、かつ全収率の向上した2−アミノピラジン誘導体(VIII)又はその塩の製造法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、2−アミノピラジン誘導体の別途製造法について鋭意検討した結果、以下に示す製造法により、式(VIII)で示される化合物を安全かつ効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明によれば、まず2−アミノピラジン誘導体(VIII)の別途製造法を提供するにあたり、式(I)で示される化合物又はその塩と式(II)で示される化合物又はその塩を反応させることを特徴とする、式(III)で示される化合物又はその塩の製造法が提供される。
【化19】

【0009】
次に、式(III)で示される化合物又はその塩より得られる式(IIIa)で示される化合物又はその塩を転位反応に付すことを特徴とする式(VII)で示される化合物又はその塩の製造法が提供される。
【化20】

【0010】
更に、式(VII)で示される化合物又はその塩を脱保護することを特徴とする、式(VIII)で示される化合物又はその塩の製造法が提供される。
【化21】

【0011】
また、式(IVa)で示されるピリドン誘導体又はその塩と式(V)で示される化合物又はその塩とを反応させて式(VIa)で示されるピリドン誘導体又はその塩を製造する工程と、式(VIa)で示されるピリドン誘導体又はその塩を酸化反応に付す工程を含むことを特徴とする式(Ia)で示される化合物又はその塩の製造法が提供される。
【化22】

【0012】
また、式(VIa)で示されるピリドン誘導体又はその塩を酸化反応に付すことを特徴とする式(Ia)で示される化合物又はその塩の製造法が提供される。
【化23】

【0013】
また、更に、上述の製造法における、有用な中間体となる式(Ia)で示される化合物又はその塩、式(III)で示される化合物又はその塩、式(VII)で示される化合物又はその塩は新規化合物であり、本発明はそれらの化合物又はその塩にも関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造法によれば、医薬、殊にアデノシン拮抗剤として知られる2−アミノピラジン誘導体(VIII)を少ない工程数かつ収率良く製造できる。本製造法は、従来法の課題であったシアンガスの発生を伴うこともなく工業生産上、安全かつ総工程数の短縮された収率の良い製造法である。また、本製造法によると、式(I)で示される化合物又はその塩とR2がHである式(II)で示される化合物又はその塩とのピラジン環形成反応において、本発明化合物(IIIa)とその副生成物である位置異性体とは、カラムクロマトグラフィーによる分離及び/又は精製以外に、反応後に塩基処理した水層を酸性条件とすることで本発明化合物(IIIa)を析出させることもできる。この製造法では、本発明化合物(IIIa)と該位置異性体をカラムクロマトグラフィーを用いずに分離及び/又は精製可能なため容易かつ工業生産上有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、
「低級アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭素数が1から6(以後、C1-6と略す)のアルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。別の態様としては、C1-4アルキルである。
「低級アルケニル」とは、直鎖又は分枝状のC2-6のアルケニル、例えばビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、1-メチルビニル、1-メチル-2-プロペニル、1,3-ブタジエニル、1,3-ペンタジエニル等である。別の態様としては、C2-4アルケニルである。
「低級アルキニル」とは、直鎖又は分枝状のC2-6のアルキニル、例えばエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、1-メチル-2-プロピニル、1,3-ブタジイニル、1,3-ペンタジイニル等である。別の態様としては、C2-4アルキニルである。
【0016】
「アリール」とは、C6-14の単環〜三環式芳香族炭化水素環基であり、C5-8シクロアルケンとその二重結合部位で縮合した環基を包含する。例えば、フェニル、ナフチル、5-テトラヒドロナフチル、4-インデニル、1-フルオレニル等である。
【0017】
「ヘテロ環」とは、i)酸素、硫黄及び窒素から選択されるヘテロ原子を1〜4個含有する3〜8員の、別の態様としては5〜7員の単環ヘテロ環、並びに、ii)当該単環ヘテロ環が、単環へテロ環、ベンゼン環、C5-8シクロアルカン及びC5-8シクロアルケンからなる群より選択される1又は2個の環と縮環し形成される、酸素、硫黄および窒素から選択されるヘテロ原子を1〜5個含有する二〜三環式ヘテロ環、から選択される環基を意味する。環原子である硫黄又は窒素が酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよい。
「ヘテロ環」として以下の態様が挙げられる。
【0018】
(1)単環式飽和へテロ環
(a)1〜4個の窒素原子を含むもの、例えば、アゼパニル、ジアゼパニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、アゾカニル等;
(b)1〜3個の窒素原子、ならびに1〜2個の硫黄原子および/または1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル等;
(c)1〜2個の硫黄原子を含むもの、例えば、テトラヒドロチオピラニル等;
(d)1〜2個の硫黄原子および1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、オキサチオラニル等;
(e)1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、オキシラニル、オキセタニル、ジオキソラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、1,4-ジオキサニル等;
【0019】
(2)単環式不飽和へテロ環基
(a)1〜4個の窒素原子を含むもの、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジ二ル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、ジヒドロトリアジニル、アゼピニル等;
(b)1〜3個の窒素原子、ならびに1〜2個の硫黄原子および/または1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ジヒドロチアジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサジニル等;
(c)1〜2個の硫黄原子を含むもの、例えば、チエニル、チエピニル、ジヒドロジチオピラニル、ジヒドロジチオニル等;
(d)1〜2個の硫黄原子および1〜2個の酸素原子を含むもの、具体的には、ジヒドロオキサチオピラニル等;
(e)1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、フリル、ピラニル、オキセピニル、ジオキソリル等;
【0020】
(3)縮合多環式飽和へテロ環基
(a)1〜5個の窒素原子を含むもの、例えば、キヌクリジニル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、3-アザビシクロ[3.2.2]ノナニル等;
(b)1〜4個の窒素原子、ならびに1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、トリチアジアザインデニル、ジオキソロイミダゾリジニル等;
(c)1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、2,6-ジオキサビシクロ[3.2.2]オクト-7-イル等;
【0021】
(4)縮合多環式不飽和へテロ環基
(a)1〜5個の窒素原子を含むもの、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、テトラヒゾロベンゾイミダゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル、テトラヒドロイソキノリル、インダゾリル、イミダゾピリジル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル、カルバゾリル、アクリジニル、キノキサリニル、ジヒドロキノキサリニル、テトラヒドロキノキサリニル、フタラジニル、ジヒドロインダゾリル、ベンゾピリミジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、シンノリニル等;
(b)1〜4個の窒素原子、ならびに1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾチアゾリル、イミダゾチアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル等;
(c)1〜3個の硫黄原子を含むもの、例えば、ベンゾチエニル、ベンゾジチオピラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル等;
(d)1〜3個の硫黄原子および1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾオキサチオピラニル、フェノキサジニル等;
(e)1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロマニル、クロメニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル等;
など。
【0022】
「保護されたカルボキシ」基は、以下の基を包含しうる。
(1)エステル化されたカルボキシ基。具体的には、-CO-O-低級アルキル、-CO-O-低級アルケニル、-CO-O-低級アルキニル、-CO-O-低級アルキレン-O-低級アルキル、-CO-O-低級アルキレン‐アリール、-CO-O-低級アルキレン-O-アリール等が挙げられる。
(2)アミド化されたカルボキシ基、具体的には、-CO-NH2、-CO-NH-低級アルキル、-CO-N(低級アルキル)2、-CO-N(低級アルキル)-アリール、-CO-N(低級アルキル)-(低級アルキレン-アリール)、-CO-NH-低級アルキレン-OH、-CO-NH-低級アルキレン-CO2H等が挙げられる。
【0023】
本明細書において、「置換されていてもよい」とは、無置換、若しくは置換基を1〜5個有していることを意味する。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい
【0024】
本明細書において、「転位反応」とは、一般的に保護された若しくは保護されていないカルボキシ基を有する化合物を原料として、該部分を保護された若しくは保護されていないアミノ基に変換することのできる反応をいい、特に限定されないが、例えば、クルティウス転位反応、ホフマン転位反応、ラッセン転位反応、シュミット反応等があげられ、好ましくは、クルティウス転位反応である
【0025】
R1、R2、R3、Zにおける「置換されていてもよい低級アルキル」、R2、R3、Zにおける「置換されていてもよい低級アルケニル」、R2、R3、Zにおける「置換されていてもよい低級アルキニル」、R2、R3、Zにおける「置換されていてもよいアリール」、R2、R3、Zにおける「置換されていてもよいヘテロ環」、Yにおける「置換されていてもよい-O-低級アルキル」、「置換されていてもよい-O-低級アルケニル」、「置換されていてもよい-O-低級アルキニル」、「置換されていてもよい-O-アリール」、「置換されていてもよい-O-CO-低級アルキル」、「置換されていてもよい-O-CO-低級アルケニル」、「置換されていてもよい-O-CO-低級アルキニル」、「置換されていてもよい-O-CO-アリール」、「置換されていてもよい-O-SO2-低級アルキル」、「置換されていてもよい-O-SO2-低級アルケニル」、「置換されていてもよい-O-SO2-低級アルキニル」、「置換されていてもよい-O-SO2-アリール」において許容される置換基としては、以下の(a)乃至(h)に示される基が挙げられる。なお、RZは、-OH、-O-低級アルキル、1〜2個の低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、-CO2H、-CO2-低級アルキル、1〜2個の低級アルキルで置換されていてもよいカルバモイル、アリール(このアリールはハロゲンで置換されていてもよい)、芳香族ヘテロ環及びハロゲンからなる群より選択される1つ以上の基で置換されていてもよい低級アルキルを示す。
(a)ハロゲン。
(b)-OH、-O-RZ、-O-アリール、-OCO-RZ、オキソ(=O)、-OSO3H、-OP(O)(O-RZ)2、-P(O)(O-RZ)2、-OP(O)(OH)(O-RZ)、-P(O)(OH)(O-RZ)、-OP(O)(OH)2、-P(O)(OH)2
(c)-SH、-S-RZ、-S-アリール、-SO-RZ、-SO-アリール、-SO2-RZ、-SO3H、-SO2-アリール、1つ又は2つのRZで置換されていてもよいスルファモイル。
(d)1つ又は2つのRZで置換されていてもよいアミノ、-NHCO-RZ、-NHCO-アリール、-NHSO2-RZ、-NHSO2-アリール、ニトロ、イミノ(=N-RZ)。
(e)-CHO、-CO-RZ、-CO2H、-CO2-RZ、1つ又は2つのRZ若しくはアリールで置換されていてもよいカルバモイル、-CO-非芳香族ヘテロ環(この非芳香族ヘテロ環は-CO2H若しくは-CO2-RZで置換されていてもよい)、シアノ。
(f)アリール若しくはシクロアルキル。なお、これらの基は、-OH、-O-低級アルキル、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、-CO2H、-CO2-RZ、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいカルバモイル、アリール、芳香族ヘテロ環、ハロゲン及びRZからなる群より選択される1つ以上の基でそれぞれ置換されていてもよい。
(g)芳香族ヘテロ環若しくは非芳香族ヘテロ環。なお、これらの基は、-OH、-O-低級アルキル、オキソ(=O)、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいアミノ、-CO2H、-CO2-RZ、1つ又は2つの低級アルキルで置換されていてもよいカルバモイル、アリール、芳香族ヘテロ環、ハロゲン及びRZからなる群より選択される1つ以上の基でそれぞれ置換されていてもよい。
(h)上記(a)乃至(g)に示される置換基より選択される1つ以上の基で置換されていてもよい低級アルキル。
【0026】
置換されている態様においてジ置換の場合、2個の置換基は互いに同一でも相互に異なっていてもよい。
【0027】
「ハロゲン」は、F、Cl、Br、Iを意味する。
【0028】
R1として、好ましくは置換されていてもよい低級アルキル;より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルである。
R2として、好ましくはH、置換されていてもよい低級アルキル;より好ましくは、H若しくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピルである。
R3として、好ましくは保護されたカルボキシ;より好ましくは、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、アリルオキシカルボニルである。
Yとして、好ましくは、ハロゲン若しくは-O-SO2-(置換されていてもよい低級アルキル);より好ましくは、I、Br、-O-SO2-CF3である。
Zとして、好ましくは置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいアルキニル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロ環;より好ましくは、スチリル、フェニルエチニル、フェニル、2-メトキシフェニル、3-メトキシフェニル、4-メトキシフェニル、2-クロロフェニル、3-クロロフェニル、4-クロロフェニル、2-フルオロフェニル、3-フルオロフェニル、4-フルオロフェニル、2-トリフルオロメトキシフェニル、3-トリフルオロメトキシフェニル、4-トリフルオロメトキシフェニル、3, 4-ジフルオロフェニル、3, 5-ジフルオロフェニル、2, 3-ジフルオロフェニル、2, 4-ジフルオロフェニル、2, 5-ジフルオロフェニル、4-シアノフェニル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、5-メチル-2-チエニル、4-ピラゾリル、4-ピリジル、6-メトキシ-3-ピリジルである。
【0029】
本発明化合物には、幾何異性体が存在しうる。本明細書中、本発明化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
また、本発明化合物には、不斉炭素原子に基づく光学異性体が存在しうる。本発明は、本発明化合物の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
【0030】
また、本発明化合物の塩とは、酸もしくは塩基との付加塩である。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の無機塩基やアンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等の有機塩基との塩基付加塩が挙げられる。
【0031】
さらに、本発明は、本発明化合物及びその塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
【0032】
(製造法)
本発明化合物及びその塩は、その基本構造あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料から中間体へ至る段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような保護基としては、例えば、ウッツ(P. G. M. Wuts)及びグリーン(T. W. Greene)著、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」に記載の保護基等を挙げることができ、これらの反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行なったあと、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。
以下、本発明の製造法を説明する。各製法は、当該説明に付した参考文献を参照して行うこともできる。なお、本発明の製造法は以下に示した例には限定されない。
尚、原料化合物(IV)は、公知の反応、例えば日本化学会編「実験化学講座」(丸善)や特許文献2若しくは国際公開第04/016605号パンフレット記載の反応等を用いて、容易に製造することができる。
【0033】
(第1工程)
【化24】


化合物(VI)は、化合物(IV)と化合物(V)とのカップリング反応により得ることができる。
本反応は、公知の反応、例えば日本化学会編「実験化学講座」(丸善)や国際公開第05/095384号パンフレット若しくは国際公開第04/016605号パンフレット記載の反応等を用いて、容易に行うことができる。
〔文献〕
A. d. Meijere及びF. Diederich編、「Metal-Catalyzed Cross-Coupling Reactions」、第1版、VCH Publishers Inc.、1997年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」13巻(2005年)(丸善)
【0034】
(第2工程)
【化25】


本発明化合物(I)は、化合物(VI)の酸化反応により得ることができる。
この反応では、反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは0℃から150℃、更に好ましくは105℃から120℃で、化合物(VI)を等量若しくは過剰量の酸化剤で、通常0.1から5時間、好ましくは1から2時間処理する。
ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定されないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン若しくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、水或いはこれらの混合物が挙げられる。酸化剤としては、例えば、ヨウ素若しくは塩化パラジウム存在下のDMSO等が用いられる。
尚、本反応は、第1工程の反応で得られた化合物(VI)を単離することなく連続的に行うこともできる。
【0035】
(第3工程)
【化26】


発明化合物(III)は、化合物(I)と化合物(II)との環化反応後、酸化反応により芳香化させることで得ることができる。
環化反応の工程は、反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは0℃から100℃、更に好ましくは15℃から65℃で、化合物(I)と化合物(II)とを当量若しくは一方を過剰量用い、通常0.1から5時間、好ましくは3から4時間程度反応させることにより行われる。
酸化反応の工程では、環化反応で得られた生成物を単離し、あるいは単離することなく反応を行う。反応は酸化剤存在下で、冷却下から加熱下、好ましくは0℃から100℃、更に好ましくは10℃から35℃で通常0.1から5時間、好ましくは0.5から1時間反応させる。塩基の存在下に反応を行うのが好ましい場合がある。又、触媒又は非触媒条件下で空気酸化することもできる。
これらの工程で用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)等のアルコール類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、DMF、DMSO、酢酸エチル、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられる。ここで用いられる酸化剤の例としては、特に限定されないが、ヨウ素若しくは塩化パラジウム存在下のDMSO等があげられる。又、ここで用いられる塩基の例としては、特に限定されないが、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン若しくはN-メチルモルホリン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム若しくは水酸化ナトリウム等の無機塩基があげられ、好ましくは有機塩基であり、更に好ましくはトリエチルアミンである。環化反応の工程においても酸又は上述の塩基の存在下で行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。ここで用いられる酸の例としては、p-トルエンスルホン酸、無水酢酸等の有機酸、塩酸、硫酸等の無機酸等があげられる。
尚、本反応においては、本発明化合物(III)以外に保護された若しくは保護されていないカルボキシ基の位置異性体が副生成物として生じ得る。かかる場合、該位置異性体と本発明化合物(III)は、カラムクロマトグラフィーによって分離及び/又は精製できる。
また、保護されていないカルボキシ基を有する位置異性体と本発明化合物は、以下で説明する処理によっても分離及び/又は精製可能であり、カラムクロマトグラフィーを必要とせず、工業生産上有利な場合がある。
本反応後、水及び有機溶媒を加え、塩基にてpH 7以上、好ましくはpH 7.5〜10.0、より好ましくはpH 8.5〜9.0に調整し、水層を分離する。次に、この水層を酸にてpH 7以下、好ましくはpH 3〜5、更に好ましくはpH 3.5〜4.5、更に好ましくはpH 3.8〜4.0に調整した後、冷却下から加熱下、好ましくは0℃から50℃、更に好ましくは15℃から25℃で0.1〜5時間、好ましくは0.5〜3時間攪拌することにより、本発明化合物(III)を結晶として析出させることができ、これを水層と濾別することにより、本発明化合物(III)を分離及び/又は精製することができる。
ここで用いられる有機溶媒の例としては、本反応で用いられる溶媒と同様であり、好ましくは酢酸エチルである。また、ここで用いられる塩基の例としては、本反応で用いられる塩基と同様であり、好ましくは無機塩基であり、更に好ましくは水酸化ナトリウムである。更に、ここで用いられる酸の例としては、本反応で用いられる酸と同様であり、好ましくは無機酸であり、更に好ましくは塩酸である。
〔文献〕
S. R. Sandler及びW. Karo著、「Organic Functional Group Preparations」、第2版、第1巻、Academic Press Inc.、1991年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
【0036】
(第4工程)
【化27】


本工程は化合物(IIIa)から化合物(XI)を製造する工程である。
本発明化合物(VII)は、化合物(IIIa)をアシルアジド(IX)へ変換後、クルティウス(Curtius)転位反応によりイソシアナート(X)とした後に、水若しくはtert-ブタノール等との付加反応により得ることができる。
アジド化の工程は、反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは0℃から100℃、更に好ましくは25〜35℃で、化合物(IIIa)を等量若しくは過剰量のジフェニルホスホリルアジド等のアジ化試薬と通常0.1から10時間、好ましくは3〜6時間程度反応させることにより行われる。又は、(IIIa)を酸塩化物等の反応性誘導体とし、アジ化ナトリウム等のアジ化物塩と反応させることによっても製造できる。尚、(IIIa)は、R2がH以外の化合物(III)を用い、前記「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」記載の方法により得ることができる。
転位反応の工程では、アシルアジド(IX)を反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは0℃から100℃、更に好ましくは70〜90℃で、通常0.1から10時間、好ましくは1〜4時間程度反応させることにより行われる。
付加反応の工程では、反応混合物を等量若しくは過剰量の水若しくはtert-ブタノール等に加熱下、好ましくは0℃から100℃、更に好ましくは70〜90℃で加えた後通常0.1から10時間、好ましくは1〜3時間程度反応させる。尚、水との付加反応では、付加の後に脱離反応が進行したR3がHの化合物(VII)が得られる。
尚、中間体であるアシルアジド(IX)及びイソシアナート体(X)が安定である場合には、これを一旦単離した後に次の反応を行っても良い。更に、クルティウス転位反応において、その後にtert-ブタノール等と反応させる場合には、アシルアジド(IX)の転位反応の系中にtert-ブタノール等を存在させて化合物(VII)を合成することができる。
又、水と付加反応させてR3がHの化合物(VII)を得る場合には、アシルアジド(IX)の反応液を加熱した水、もしくは水と有機溶媒の混合溶液に滴下することで、転位・付加・脱離反応を一段階で行うこともできる。
これらの工程で用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン若しくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、MeOH、EtOH、tert-ブタノール等のアルコール類、DMF、DMSO、酢酸エチル、水、アセトニトリルが挙げられる。
〔文献〕
S. R. Sandler及びW. Karo著、「Organic Functional Group Preparations」、第2版、第2巻、Academic Press Inc.、1991年
【0037】
(第5工程)
【化28】


本発明化合物(VIII)は、化合物(VII)の脱保護反応により得ることができる。
ここで、脱保護反応は、グリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」を参照して実施することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づき、本発明化合物の製造法を更に詳細に説明する。尚、本発明は、下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また、式(VIII)の化合物の製造法は、以下に示される具体的実施例の製造法のみに限定されるものではなく、式(VIII)の化合物はこれらの製造法の組み合わせ、あるいは当業者に自明である方法によっても製造されうる。
【0039】
実施例1
窒素ガス雰囲気下、1-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)-2-フェニルエタン-1,2-ジオン50.0 kg及び(RS)-2,3-ジアミノプロパン酸一臭化水素酸塩41.1 kgのMeOH 1000 L溶液に、トリエチルアミン74.9 kgを滴下した後、25℃にて3時間攪拌した。引き続き10℃に冷却し、ヨウ素47.0 kgを添加し30分攪拌した後、25%(w/v)チオ硫酸ナトリウム水溶液100 Lを添加した。反応液を、約250 Lまで減圧濃縮した後、市水500 L、酢酸エチル500 Lを添加した。その後24%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液でpH 8.5〜9.0に調整した後、静置し分液した。水層を濃塩酸でpH 3.8〜4.0に調整した後、30分攪拌後、さらに濃塩酸でpH 3.5〜3.6に調整し1時間攪拌した。析出結晶を濾過した後、市水150 Lで洗浄し、減圧乾燥後5-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)-6-フェニルピラジン-2-カルボン酸44.8kgを結晶として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ0.75(6H,d,J=6.6Hz),4.91(1H,m),
7.07(1H,d,J=9.6Hz),7.38−7.54(5H,m),8.02(1H,d,J=9.6Hz),9.21(1H,s)
MS(API-ES) m/z 359(M+Na)
【0040】
実施例2
窒素ガス雰囲気下、5-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)-6-フェニルピラジン-2-カルボン酸44.0 kgのトルエン132 L、tert-BuOH 66 L溶液に、トリエチルアミン15.9 kg、ジフェニルホスホリルアジド(以下「DPPA」と略す)43.3 kgを加え、90℃にて2時間攪拌した。反応液を60℃に冷却し、2%(w/v)重曹水132 Lを滴下した。さらに5℃まで冷却し、30分以上攪拌後、市水132 Lを滴下した。その後、5℃で1時間攪拌した。析出結晶を濾過した後、アセトン/市水(3:2)混液440 Lで洗浄し、減圧乾燥後[5-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)-6-フェニルピラジン-2-イル]カルバミン酸tert-ブチルエステル38.4kgを結晶として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ0.75(6H,d,J=6.6Hz),1.51(9H,s),4.91(1H,m),
7.01(1H,d,J=9.6Hz),7.34−7.40(5H,m),7.90(1H,d,J=9.6Hz),
9.06(1H,s),10.44(1H,s)
MS(API-ES) m/z 430(M+Na)
【0041】
実施例3
窒素ガス雰囲気下、[5-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)-6-フェニルピラジン-2-イル]カルバミン酸tert-ブチルエステル38.0 kgの酢酸エチル114 L、MeOH 38 L溶液に4M-塩化水素/酢酸エチル76 Lを添加後60℃に加熱し6時間攪拌した。反応液を10℃に冷却し、酢酸エチル646 L、市水380 Lを添加し、24%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液でpH 8.5〜9.0に調整した。その後60℃まで加熱後静置し分液した。得られた有機層に市水380 Lを仕込み、内温60℃で攪拌後静置し分液した。さらにその有機層を約380 Lまで減圧濃縮した後25℃にてn-ヘプタン380 Lを滴下し、5℃まで冷却した。析出結晶を濾過し、予め冷却したn-ヘプタン/酢酸エチル(1:1)混液114 Lで洗浄し減圧乾燥後、粗結晶21.5 kgを得た。この粗結晶の酢酸エチル645 L懸濁液を75℃に加熱溶解後、酢酸エチル43 L添加した。その後0℃に冷却し、析出結晶を濾過し0℃に冷却した酢酸エチル65 Lで洗浄し乾燥後、6-(5-アミノ-3-フェニルピラジン-2-イル)-2-イソプロピル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン16.1 kgを結晶として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ0.74(6H,d,J=6.6Hz),4.88(1H,m),6.87(2H,s),
6.94(1H,d,J=9.6Hz),7.32(5H,m),7.79(1H,d,J=9.6Hz),7.93(1H,s)
MS(API-ES) m/z 330(M+Na)
【0042】
実施例4
窒素ガス雰囲気下、5-ブロモ-1-イソプロピル-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン75.0 kg、トリフェニルホスフィン1.82 kgのDMF 375 L溶液にフェニルアセチレン46.1 kg、Cs2CO3 147 kg、続いてCuI 661 g、酢酸パラジウム779 gを添加した。内温85℃にて2時間攪拌後、反応終了液を内温25℃迄冷却し、酢酸エチル750 L、市水750 Lを添加し、攪拌後静置し分液した。有機層に1M塩酸 750 Lを添加し攪拌後、静置し分液した。有機層に20(w/v)%食塩水 750 Lを添加し攪拌後、静置し分液した。有機層に活性炭 7.5 kgを仕込み、攪拌後炭末処理液を濾過し、酢酸エチル150 Lにて洗浄した。濾過液にDMSO 225 Lを加え、溜去液が出なくなるまで濃縮した後、ヨウ素 17.6 kgを添加し、内温110℃まで昇温し、約1時間攪拌した。反応終了液を内温25℃迄冷却し、酢酸エチル900 L、市水900 Lを添加し、攪拌後静置し分液した。有機層に5% (w/v)Na2S2O3・5 H2O水溶液900 Lを添加し、攪拌した。その懸濁液を濾過助剤(珪藻土)にて濾過し、不溶物を除去した後、酢酸エチル150 Lで洗浄し、攪拌後静置し分液した。有機層に内温25〜35℃にて20%(w/v)NaCl水溶液900 Lを添加し、攪拌後静置し分液した。有機層を約113 Lになるまで濃縮した後、イソプロピルアルコール(以下「IPA」と略す)450 Lを添加し、更に約263 Lまで濃縮した。濃縮液を内温25〜35℃まで冷却攪拌後、ジイソプロピルエーテル(以下「IPE」と略す)300 Lを滴下し攪拌後、内温0℃にて攪拌した。析出結晶を濾過後、冷却したIPA 150 Lにて洗浄し、減圧乾燥後1-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-3-ピリジル)-2-フェニルエタン-1,2-ジオン66.7kgを結晶として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.34(6H,d,J=6.8Hz),4.98(1H,m),
6.55(1H,d,J=9.6Hz),7.63(2H,m),7.79(1H,m),7.86(1H,m),7.97(2H,m),
8.51(1H,d,J=2.5Hz)
MS(API-ES) m/z 292(M+Na)
【0043】
実施例5

窒素ガス雰囲気下、1-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-3-ピリジル)-2-フェニルエタン-1,2-ジオン15.5 kg、(RS)-2,3-ジアミノプロパン酸一臭化水素酸塩11.7 kgのMeOH 310 L溶液に、トリエチルアミン23.3 kgを添加し、内温55℃にて3時間攪拌した。反応液を25℃に冷却し、ヨウ素14.6 kgを添加し、内温40℃で攪拌した。その後20%(w/v)チオ硫酸ナトリウム水溶液31Lを添加した後、約78Lまで減圧濃縮した。その濃縮液にMeOH 62L、市水310 L、酢酸エチル310 Lを添加した後、12%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液にてpH 8.5〜9.0に調整し攪拌後静置し分液した。その水層を1M塩酸にてpH 3.8〜4.0に調整した後、析出結晶を濾過し、50%(v/v)MeOH 31 Lで洗浄後、減圧乾燥し、粗結晶12.3 kgを得た。得られた粗結晶12.3 kgをアセトン738 Lに懸濁し、内温50〜60℃にて懸濁した後、25〜35℃に冷却し懸濁攪拌した。析出結晶を濾過し、アセトン25 Lで洗浄し減圧乾燥後、5-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-3-ピリジル)-6-フェニルピラジン-2-カルボン酸 11.3 kgを結晶として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.01(6H,d,J=7.2Hz),4.90(1H,m),
6.41(1H,d,J=9.5Hz),7.43−7.67(7H,m),9.17(1H,s),13.70(1H,brs)
MS(API-ES) m/z 358(M+Na)
【0044】
実施例6
窒素ガス雰囲気下、5-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-3-ピリジル)-6-フェニルピラジン-2-カルボン酸 10.9 kgのDMF 33L及び酢酸エチル44 L溶液に、トリエチルアミン3.9 kgを添加した。次に内温25℃にてDPPA 10.7 kgを添加し、25℃で3時間攪拌した。反応終了液を予め75℃に加温したDMF 33 L、市水5 L、酢酸エチル22 Lの混合液中に滴下後、酢酸エチル22 Lにて分液した。有機層を3時間攪拌した後、内温30℃にて、酢酸エチル87 Lを添加した。さらに 4%水酸化ナトリウム水溶液にてpH 8〜8.5、内温45℃に調整した後、活性炭2.2 kgを仕込み撹拌した。活性炭を濾別した後、酢酸エチル55 Lで洗浄した濾過液に5%食塩水 65 Lを加え、攪拌後静置分液した。水層を内温70℃まで昇温し、酢酸エチル131 L及び20%食塩水 27 Lにて再抽出した後、合わせた有機層に内温60℃にて活性炭2.2 kgを仕込み、内温60℃にて撹拌した。活性炭を濾別し、酢酸エチル44 Lで洗浄し、その濾過液を約45 Lまで減圧濃縮した後、EtOH 98 L、市水109 Lを添加し攪拌溶解した。その溶解液に内温45℃で市水327 Lを滴下し、その後5℃に冷却し析出結晶を濾過した。濾過した結晶は5℃に冷却したEtOH 8 L/市水 25 L混液で洗浄し、減圧乾燥後、5-(5-アミノ-3-フェニルピラジン-2-イル)-1-イソプロピル-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン6.9kgを結晶として得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ0.96(6H,d,J=6.8Hz),4.91(1H,m),
6.32(1H,d,J=9.4Hz),6.59(2H,s),7.21(1H,d,J=2.4Hz),
7.31−7.65(6H,m),7.94(1H,s)
MS(API-ES) m/z 329(M+Na)
【0045】
実施例7
窒素雰囲気下、5-ブロモ-1-イソプロピル-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン65.0 kg及び4-フルオロフェニルアセチレン47.0 kgのDMF 325 L溶液に酢酸パラジウム 675 g、トリフェニルホスフィン1.6 kg、CuI 573 g、Cs2CO3 127.4 kgを順次添加し、85℃にて1時間攪拌した。反応液を50℃以下に冷却し、酢酸エチル 650 L及び市水 650 Lを滴下し、分液した。有機層を3.5%(w/v)塩酸 650 Lにて洗浄後,、さらに20%(w/v)食塩水 650 Lにて洗浄した。得られた有機層にDMSO 325 Lを仕込み、減圧濃縮後ヨウ素15.3 kgを加え120℃にて1時間攪拌した。反応終了液を70℃に冷却後、酢酸エチル975 L、市水650 L、20%(w/v)食塩水325 L、活性炭13.0 kgを順次加え撹拌後、活性炭を濾別し、酢酸エチル325 Lで洗浄した。濾過液を分液した有機層を10%(w/v)チオ硫酸ナトリウム水溶液975 L,20%(w/v)食塩水650 Lにて順次洗浄した。次に有機層を約325 Lまで濃縮し、この濃縮液にIPA 650 Lを加え、約325 Lまで濃縮後、さらにIPA 1625 Lを滴下した。0℃に冷却し結晶を濾過した後、冷却したIPA/IPE(1/2)混液195 Lで洗浄した。減圧乾燥後、1-(4-フルオロフェニル)-2-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-3-ピリジル)エタン-1,2-ジオン60.5 kgを得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.33(6H,d,J=6.8Hz),4.97(1H,m),
6.54(1H,d,J=9.5Hz),7.46(2H,m),7.86(1H,m),8.07(2H,m),8.49(1H,d,J=2.6Hz)
MS(API-ES) m/z 310(M+Na)
実施例8
窒素雰囲気下、1-(4-フルオロフェニル)-2-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-3-ピリジル)エタン-1,2-ジオン 35.0 kg及び(RS)-2,3-ジアミノプロパン酸一臭化水素酸塩 24.8 kgのMeOH 700 L溶液にトリエチルアミン49.3 kgを添加した後、65℃にて3時間攪拌した。その反応液を10℃に冷却し、ヨウ素30.9 kgを添加し5分攪拌後、25%(w/v)チオ硫酸ナトリウム水溶液70 Lを添加した。その反応液を約175 Lまで減圧濃縮し、市水350 L及び酢酸エチル350 Lを滴下した後、24%(w/v)水酸化ナトリウム水溶液でpH 8.5〜9.0に調整した。静置分液した水層を濃塩酸でpH 3.8〜4.0に調整し、攪拌し析出結晶を濾過後,減圧乾燥し粗結晶20 kgを得た。その粗結晶のMeOH 280 L溶液を内温45℃にて懸濁した後、さらに内温20℃にて懸濁し、析出結晶を濾過した。MeOH 70 Lで洗浄後、減圧乾燥し6-(4-フルオロフェニル)-5-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-3-ピリジル)ピラジン-2-カルボン酸15.5 kgを得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.09(6H,d,J=6.4Hz),4.94(1H,m),6.42(1H,d,J=9.5Hz),7.33(2H,m),7.61(4H,m),9.13(1H,s),13.73(1H,br)
MS(API-ES) m/z 376(M+Na)
実施例9
窒素雰囲気下、6-(4-フルオロフェニル)-5-(1-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-3-ピリジル)ピラジン-2-カルボン酸15.0 kgの酢酸エチル150 L溶液にトリエチルアミン5.6 kgを添加し、内温25℃で10分間攪拌した。その後DPPA 15.2 kgを添加し、25℃で5時間攪拌した。その反応液を予め75℃に加温したDMF 75 L及び市水7.5 Lの混合液に滴下後、酢酸エチル75 Lを滴下し、75℃で2時間攪拌した。その後酢酸エチル75 L、5%(w/v)炭酸水素ナトリウム水溶液225 L、20%(w/v)食塩水75 Lを加え内温55℃で攪拌し分液した。水層は酢酸エチル150 Lにて再抽出し、合わせた有機層を20%(w/v)食塩水300 Lにて洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム7.5 kg,活性炭3.0 kgを仕込み、60℃で撹拌後、不溶物を濾別し酢酸エチル30 Lで洗浄した。濾過液を約150 Lまで減圧濃縮後15℃に冷却し、n-ヘプタン300 Lを滴下した。さらに0℃に冷却し析出結晶を濾過し、予め0℃に冷却した酢酸エチル/n-ヘプタン(1/2)混液45 Lで洗浄した後、減圧乾燥し粗結晶9.9 kgを得た。その粗結晶のエタノール120 L、水30 Lの懸濁液を75℃に加熱溶解後エタノール/水(4/1)混液 30 Lを滴下し、25℃に冷却した。その後、水100 L を滴下し、さらに0℃迄冷却した後、析出結晶を濾過した。予め0℃に冷却したエタノール/水(1/1)混液36 Lで洗浄後減圧乾燥し、5-[5-アミノ-3-(4-フルオロフェニル)ピラジン-2-イル]-1-イソプロピル-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン8.5 kgを得た。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ1.01(6H,d,J=6.8Hz),4.94(1H,m),6.34(1H,d,J=9.2Hz),6.61(2H,s),7.19〜7.27(3H,m),7.40−7.45(3H,m),7.93(1H,s)
MS(API-ES) m/z 347(M+Na)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


(式中、
R1は、H又は置換されていてもよい低級アルキルであり、
Xは、N又はCHであり、
Zは、H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シアノ、アリール又はヘテロ環
をそれぞれ示す。)
で示される化合物又はその塩と
式(II)
【化2】


(式中、
R2は、H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール又はヘテロ環
を示す。)
で示される化合物又はその塩を反応させることを特徴とする
式(III)
【化3】


(式中、記号は前記同様。)
で示される化合物又はその塩の製造法。
【請求項2】
式(IVa)
【化4】


(式中、
R1は、H又は置換されていてもよい低級アルキルであり、
Yは、ハロゲン又はそれぞれ置換されていてもよい、-O-低級アルキル、-O-低級アルケニル、-O-低級アルキニル、-O-アリール、-O-CO-低級アルキル、-O-CO-低級アルケニル、-O-CO-低級アルキニル、-O-CO-アリール、-O-SO2-低級アルキル、-O-SO2-低級アルケニル、-O-SO2-低級アルキニル、-O-SO2-アリール
をそれぞれ示す。)
で示されるピリドン誘導体又はその塩と
式(V)
【化5】


(式中、
Zは、H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シアノ、アリール又はヘテロ環
を示す。)
で示されるアセチレン誘導体又はその塩とを反応させて、
式(VIa)
【化6】


(式中、記号は前記同様。)
で示されるピリドン誘導体又はその塩を製造する工程と、
式(VIa)で示されるピリドン誘導体又はその塩を酸化反応させる工程を含むことを特徴とする
式(Ia)
【化7】


(式中、記号は前記同様。)
で示される化合物又はその塩の製造法。
【請求項3】
式(VIa)
【化8】


(式中、
R1は、H又は置換されていてもよい低級アルキルであり、
Zは、H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シアノ、アリール又はヘテロ環
をそれぞれ示す。)
で示されるピリドン誘導体又はその塩を酸化反応させることを特徴とする
式(Ia)
【化9】


(式中、記号は前記同様。)
で示される化合物又はその塩の製造法。
【請求項4】
式(Ia)で示される化合物又はその塩。
【化10】


(式中の記号は、以下の意味を示す。
R1:H又は置換されていてもよい低級アルキル;
Z:H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シアノ、アリール又はヘテロ環。)
【請求項5】
式(III)で示される化合物又はその塩。
【化11】


(式中の記号は、以下の意味を示す。
R1:H又は置換されていてもよい低級アルキル;
R2:H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール又はヘテロ環;
X:N又はCH;
Z:H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シアノ、アリール又はヘテロ環。)
【請求項6】
式(III)
【化12】


(式中、
R1は、H又は置換されていてもよい低級アルキルであり、R2は、H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、アリール又はヘテロ環であり、
Xは、N又はCHであり、
Zは、H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シアノ、アリール又はヘテロ環
をそれぞれ示す。)
で示される化合物又はその塩を転位反応に付すことを特徴とする
式(VII)
【化13】


(式中、
R1は、H又は置換されていてもよい低級アルキルであり、
R3は、H又は保護されたカルボキシであり、
Xは、N又はCHであり、
Zは、H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シアノ、アリール又はヘテロ環
をそれぞれ示す。)
で示される化合物又はその塩の製造法。
【請求項7】
式(VII)で示される化合物又はその塩。
【化14】


(式中の記号は、以下の意味を示す。
R1:H又は置換されていてもよい低級アルキル;
R3:保護されたカルボキシ;
X:N又はCH;
Z:H又はそれぞれ置換されていてもよい、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シアノ、アリール又はヘテロ環。)
【請求項8】
式(VII)で示される化合物又はその塩を脱保護することを特徴とする
式(VIII)
【化15】


(式中、記号は前記同様。)
で示される化合物又はその塩の製造法。
【請求項9】
式(I)で示されるピリダジノン誘導体又はその塩と式(II)で示される化合物又はその塩を反応させて得られる式(III)で示される化合物又はその塩を原料とすることを特徴とする式(VIII)で示される化合物又はその塩の製造法。
【請求項10】
式(III)で示される化合物又はその塩を転位反応に付すことを特徴とする式(VIII)で示される化合物又はその塩の製造法。

【公開番号】特開2010−13369(P2010−13369A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172641(P2008−172641)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】