説明

ピラゾロアクリドン誘導体の製造法およびその合成中間体



(式中、Rは低級アルキルを表し、Rは水素原子、−CHXまたは−OC(=O)Rを表し、Rは水素原子、ニトロ、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルキルチオまたは置換もしくは非置換のアリールを表す)
本発明は、抗腫瘍活性を有するピラゾロアクリドン誘導体、その合成中間体として有用な1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体等の簡便な工業的製造法等を提供する。
例えば、上記一般式(I)で表される化合物と上記一般式(II)で表される化合物を、塩基存在下反応させて上記一般式(III)で表される化合物を得て、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解することを特徴とする一般式(IV)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、抗腫瘍活性を有するピラゾロアクリドン誘導体、その合成中間体として有用な1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体等の製造法等に関する。
【背景技術】
ピラゾロアクリドン誘導体は抗腫瘍剤として有用であることが知られている[ジャーナル・オブ・メディシィナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、37巻、p.1028−1032(1994年)、特開平5−1064号公報]。また、ピラゾロアクリドン誘導体の製造法としては、例えば特開平5−1064号公報、特開平7−165758号公報等に記載の方法や以下の合成中間体を経由する方法等が知られている[特開平6−107641号公報、特開平2−76878号公報、シンセシス(Synthesis)、p.73−76(1994年)]。
ピラゾロアクリドン誘導体の有用な合成中間体である一般式(A)

(式中、Rはメチル等を表し、R1aは低級アルキル等を表し、R2aはニトロ等を表す)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法としては、例えば一般式(B)

(式中、Rは前記と同義であり、Lはブロモ等を表す)で表される安息香酸誘導体を銅触媒の存在下、一般式(C)

(式中、R1aおよびR2aはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させる製造法が知られている[特開平6−107641号公報、特開平2−76878号公報、シンセシス(Synthesis)、p.73−76(1994年)]。しかしながら、この製造法で使用される一般式(B)で表される安息香酸誘導体は、その製造において保護・脱保護工程等を含む多段階合成工程を要し、その製造に長期間を要することから、簡単にかつ工業的に大量入手することが困難である。また、上記製造法は、銅触媒を用いていることから、重金属含有廃液の処理等における環境への影響も懸念され、工業的製造法としては課題を有している。
以上のことから、目的とする1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体を工業的に大量供給する場合、上記の課題を解決することが求められる。すなわち、銅触媒の使用を回避でき、かつ短工程で効率的に製造できる中間体を経由する1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法の開発が求められている。
【発明の開示】
本発明の目的は、抗腫瘍活性を有するピラゾロアクリドン誘導体、その合成中間体として有用な1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体等の簡便な工業的製造法、それらの合成中間体等を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(14)に関する。
(1) 一般式(I)

(式中、Rは低級アルキルを表す)で表される化合物を、塩基の存在下、一般式(II)

〔式中、Rは水素原子、−CHX(式中、Xは水素原子、ヒドロキシ、低級アルコキシまたはベンジルオキシを表す)または−OC(=O)R(式中、Rは低級アルキルを表す)を表し、Rは水素原子、ニトロ、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルキルチオまたは置換もしくは非置換のアリールを表す〕で表される化合物と反応させて、一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物を得て、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解して、一般式(IV)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体を得る工程を含むことを特徴とする一般式(V)

<式中、R3a、R3b、R3cおよびR3dは同一または異なって、水素原子、低級アルキル、−(CH−Y〔式中、nは1〜6の整数を表し、Yはヒドロキシ、低級アルコキシまたは−NR4a4b{式中、R4aおよびR4bは同一または異なって、水素原子、低級アルキルまたは−(CH−Y[式中、mは1〜6の整数を表し、Yはヒドロキシ、低級アルコキシまたは−NR5a5b(式中、R5aおよびR5bは同一または異なって、水素原子または低級アルキルを表す)を表す]を表すか、またはR4aとR4bが隣接する窒素原子と一緒になって複素環基を形成する}を表す〕または−CH((CHOH)(式中、pは1〜5の整数を表す)を表す>で表されるピラゾロアクリドン誘導体の製造法。
(2) 2,6−ジフルオロベンゾニトリルを塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させて、一般式(VI)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物を得て、得られた一般式(VI)で表される化合物を一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物に変換し、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解して、一般式(IV)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体を得る工程を含むことを特徴とする一般式(V)

(式中、R3a、R3b、R3cおよびR3dはそれぞれ前記と同義である)で表されるピラゾロアクリドン誘導体の製造法。
(3) Rがメチルである上記(1)または(2)記載のピラゾロアクリドン誘導体の製造法。
(4) Rが低級アルキルであり、Rがニトロまたはハロゲンである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のピラゾロアクリドン誘導体の製造法。
(5) 一般式(I)

(式中、Rは前記と同義である)で表される化合物を、塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させて、一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物を得て、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解することを特徴とする一般式(IV)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法。
(6) 2,6−ジフルオロベンゾニトリルを塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させて、一般式(VI)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物を得て、得られた一般式(VI)で表される化合物を一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物に変換し、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解することを特徴とする一般式(IV)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法。
(7) Rがメチルである上記(5)または(6)記載の1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法。
(8) Rが低級アルキルであり、Rがニトロまたはハロゲンである上記(5)〜(7)のいずれかに記載の1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法。
(9) 一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物またはその塩。
(10) Rがメチルである上記(9)記載の化合物またはその塩。
(11) 一般式(I)

(式中、Rは前記と同義である)で表される化合物を、塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させることを特徴とする一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物の製造法。
(12) Rがメチルである上記(11)記載の製造法。
(13) 一般式(VI)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物またはその塩。
(14) 2,6−ジフルオロベンゾニトリルを塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させることを特徴とする一般式(VI)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物の製造法。
以下、一般式(I)で表される化合物を化合物(I)とする。他の式番号の化合物についても同様である。
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の各基の定義において、
低級アルキル、低級アルコキシおよび低級アルキルチオの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分枝状の炭素数1〜6のアルキル、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等があげられる。
アリールとしては、例えば炭素数6〜14のアリール、具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等があげられる。
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、例えばピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、キノリル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル等があげられる。
置換低級アルキル、置換低級アルコキシおよび置換低級アルキルチオにおける置換基としては、例えばハロゲン等があげられる。ここで、ハロゲンは前記ハロゲンと同義である。
置換アリールにおける置換基としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン等があげられる。ここで、低級アルキル、低級アルコキシおよびハロゲンはそれぞれ前記低級アルキル、低級アルコキシおよびハロゲンと同義である。
以下に、本発明における化合物(III)、化合物(IV)、化合物(V)および化合物(VI)の製造法の例について説明する。
製造法1
化合物(IV)は化合物(I)から次の一連の反応工程に従い製造することができる。

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)
工程1:
化合物(III)は、化合物(I)と化合物(II)とを不活性な溶媒中、化合物(II)に対して1〜5当量、好ましくは1〜2当量の塩基存在下、反応させることにより得ることができる。
原料である化合物(I)は、市販品として得られるか、または市販品として簡単にかつ工業的に大量入手することが可能な2,6−ジフルオロベンゾニトリルから、例えばジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー(J.Heterocyclic Chem.)、25巻、p.1173−1177(1988年)等に記載の方法もしくはそれらに準じた方法で製造することができる。
原料である化合物(II)は、例えばジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(J.Am.Chem.Soc.)、74巻、p.2009−2012(1952年)、ケミカル・アブストラクツ(CA)、65巻、2245b(1966年)等に記載の方法またはそれらに準じた方法で製造することができる。
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属原子の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属原子の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属原子の炭酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属原子の炭酸塩、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属水素化物、水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物等を単独でまたはそれらを組み合わせて用いることができ、中でも炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは水素化ナトリウムが好ましい。
不活性な溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系溶媒、N,N−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性溶媒等を単独でまたはそれらを組み合わせて用いることができ、中でもDMFまたはNMPが好ましい。
反応は通常50〜150℃の間の温度で、好ましくは80〜120℃の間の温度で、1〜12時間、好ましくは1〜8時間行なわれる。
化合物(I)は、化合物(II)に対して0.8〜2.0当量、好ましくは1.0〜1.5当量用いられる。
工程2:
化合物(IV)は、工程1で得られる化合物(III)を溶媒中、酸触媒存在下、処理することにより得ることができる。
溶媒としては、水、水と例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶媒との混合溶媒等を用いることができ、前記混合溶媒を使用する場合には、水に対するアルコール系溶媒の混合割合は50重量/重量%以下が好ましく、中でも20重量/重量%以下が好ましい。
酸触媒としては、例えば塩酸、硫酸等の無機酸等を用いることができ、中でも硫酸が好ましく、溶媒に対する酸触媒の濃度は10〜90重量/重量%が好ましく、中でも40〜70重量/重量%の濃度が好ましい。
反応は通常30〜100℃の間の温度で、好ましくは70〜100℃の間の温度で、5分間〜24時間、好ましくは10分間〜6時間行なわれる。
製造法2
製造法1の中間体である化合物(III)は2,6−ジフルオロベンゾニトリルから次の一連の反応工程に従い製造することもできる。

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)
工程3:
化合物(VI)は、2,6−ジフルオロベンゾニトリルと化合物(II)とを不活性な溶媒中、化合物(II)に対して1〜5当量、好ましくは1〜2当量の塩基存在下、反応させることにより得ることができる。
原料である2,6−ジフルオロベンゾニトリルは、市販品として簡単にかつ工業的に大量入手することができる。
塩基としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属原子の水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属原子の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属原子の炭酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属原子の炭酸塩、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属水素化物、水素化カルシウム等のアルカリ土類金属水素化物等を単独でまたはそれらを組み合わせて用いることができ、中でも炭酸ナトリウム、炭酸カリウムまたは水素化ナトリウムが好ましい。
不活性な溶媒としては、例えばDMF、DMA、NMP等のアミド系溶媒、DMI、DMSO等の極性溶媒等を単独でまたはそれらを組み合わせて用いることができ、中でもDMFが好ましい。
反応は通常50〜150℃の間の温度で、好ましくは80〜120℃の間の温度で、1〜10時間、好ましくは1〜8時間行なわれる。
2,6−ジフロロベンゾニトリルは、化合物(II)に対して1.0〜20.0当量、好ましくは1.0〜5.0当量用いられる。
工程4:
化合物(III)は、工程3で得られる化合物(VI)を溶媒中、1〜50当量、好ましくは1〜20当量のアルコキシ化剤で処理することにより得ることができる。
アルコキシ化剤としては、例えばMOR(式中、Mはリチウム、カリウムまたはナトリウムを表し、Rは前記と同義である)等を用いることができ、具体的にはRがメチルである場合、リチウムメトキシド(LiOCH)、ナトリウムメトキシド(NaOCH)、カリウムメトキシド(KOCH)等の固体またはメタノール溶液等を用いることができる。
溶媒としては、例えばDMF、DMA、NMP等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、DMI、DMSO、メタノール等の極性溶媒等を単独でまたはそれらを組み合わせて用いることができ、中でもDMF、DMA、THFもしくはメタノールまたはそれらの混合溶媒が好ましい。
反応は通常50℃〜反応に用いる溶媒の沸点の間の温度で、好ましくは70〜120℃の間の温度でまたは反応に用いる溶媒の沸点で、1〜16時間、好ましくは1〜10時間行なわれる。
製造法3
化合物(V)は、製造法1で得られる化合物(IV)から、例えば特開平2−76878号公報、シンセシス(Synthesis)、p.73−76(1994年)、特開平5−1064号公報、特開平7−165758号公報等に記載の方法またはそれらに準じた方法で製造することができる。
上記各製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される分離精製法、例えば、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
以下に本発明の代表的な実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
実施例1:1−(2−シアノ−3−メトキシフェニル)−3−メチル−6−ニトロインダゾール(化合物1)の合成
2−フルオロ−6−メトキシベンゾニトリル(9.38g)、3−メチル−6−ニトロインダゾール(10.0g)および粉末状炭酸カリウム(7.80g)をDMF(100mL)中、窒素雰囲気下、100℃で6時間攪拌した。反応系を80℃に保持しながら反応液に水(100mL)を滴下した。懸濁液にDMF(50mL)を添加し、攪拌しながら4時間かけて室温まで冷却した。析出した結晶を濾取し、得られた結晶を水(100mL)で洗浄した後、減圧乾燥することにより化合物1(15.1g,収率86.7%)を淡黄色結晶として得た。
融点:244.0℃
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.36(1H,d,J=1.8Hz),8.11(1H,dd,J=1.8,8.8Hz),7.86(1H,d,J=8.8Hz),7.73(1H,t,J=8.6Hz),7.23(1H,d,J=8.6Hz),7.11(1H,d,J=8.6Hz),4.06(3H,s),2.72(3H,s).
13C−NMR(75MHz,CDCl)δ(ppm):163.1,147.5,145.8,142.1,139.3,134.8,128.1,121.6,118.1,116.4,113.4,110.8,106.9,99.5,56.7,12.0.
IR(KBr,cm−1):2849(OCH),2228(CN),1528および1346(NO).
HRMS(ESI):計算値(C1613);309.0988,実測値;309.0979.
実施例2:1−(2−カルボキシ−3−メトキシフェニル)−3−メチル−6−ニトロインダゾール(化合物2)の合成
実施例1で得られた化合物1(1.00g)を50%硫酸水溶液(40mL)に添加し、80℃で1時間攪拌した。反応液を水(200mL)に攪拌しながら徐々に注いだ。白色懸濁液を0℃で2時間以上攪拌した後、析出した結晶を濾取し、得られた結晶を水で洗浄した後、40℃で減圧乾燥することにより化合物2(0.972g,収率91.6%)を得た。
H−NMR(300MHz,DMSO−d)δ(ppm):8.22(1H,dd,J=0.6,1.8Hz),8.10(1H,dd,J=0.6,8.8Hz),8.04(1H,dd,J=1.8,8.8Hz),7.65(1H,t,J=7.9Hz),7.31(1H,d,J=7.9Hz),7.29(1H,d,J=7.9Hz),3.90(3H,s),2.62(3H,s).
実施例3:1−(2−シアノ−3−フルオロフェニル)−3−メチル−6−ニトロインダゾール(化合物3)の合成
2,6−ジフルオロベンゾニトリル(5.89g)、3−メチル−6−ニトロインダゾール(5.00g)および粉末状炭酸カリウム(11.7g)をDMF(85mL)中、窒素雰囲気下、90℃で5時間攪拌した。反応液を室温に冷却した後、析出した不溶物を濾別した。得られた濾液からDMFを減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、水を加えて分液した後、有機層を水および飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。酢酸エチルを減圧留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(溶出液;酢酸エチル/ヘキサン=40/60)、化合物3(2.72g,収率32.5%)を結晶として得た。
融点:199.7℃
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):8.41(1H,d,J=2.0Hz),8.16(1H,dd,J=2.0,8.8Hz),7.89(1H,d,J=8.8Hz),7.81(1H,dt,J=6.0,8.3Hz),7.51(1H,d,J=8.3Hz),7.35(1H,dt,J=0.9,8.3Hz),2.73(3H,s).
13C−NMR(75MHz,CDCl)δ(ppm):164.5(d,J=262Hz),147.7,146.5,141.8(d,J=2.5Hz),139.1,135.3(d,J=10.0Hz),128.4,121.9,121.1(d,J=3.8Hz),116.9,115.6(d,J=19.9Hz),111.2,106.6,99.3(d,J=17.4Hz),12.0.
IR(KBr,cm−1):2233(CN),1535および1350(NO).
実施例4:1−(2−シアノ−3−メトキシフェニル)−3−メチル−6−ニトロインダゾール(化合物1)の合成
実施例3で得られた化合物3(100mg)をメタノール(5.0mL)とTHF(5.0mL)の混合溶媒に懸濁し、懸濁液にナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液(1.30g)を添加した後、75〜80℃で7時間加熱還流した。溶媒を減圧留去した後、残渣にメタノール(5.0mL)および水(5.0mL)を添加した。析出した結晶を濾取し、得られた結晶を水(10mL)で洗浄した後、減圧乾燥することにより化合物1(96.6mg,収率92.7%)を淡黄色結晶として得た。本反応によって得られた化合物1が、実施例1で得られたものと同一であることを、H−NMRスペクトル測定によって確認した。
【産業上の利用可能性】
本発明により、抗腫瘍活性を有するピラゾロアクリドン誘導体、その合成中間体として有用な1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体等の簡便な工業的製造法、それらの合成中間体等が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)

(式中、Rは低級アルキルを表す)で表される化合物を、塩基の存在下、一般式(II)

〔式中、Rは水素原子、−CHX(式中、Xは水素原子、ヒドロキシ、低級アルコキシまたはベンジルオキシを表す)または−OC(=O)R(式中、Rは低級アルキルを表す)を表し、Rは水素原子、ニトロ、ハロゲン、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、置換もしくは非置換の低級アルキルチオまたは置換もしくは非置換のアリールを表す〕で表される化合物と反応させて、一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物を得て、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解して、一般式(IV)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体を得る工程を含むことを特徴とする一般式(V)

<式中、R3a、R3b、R3cおよびR3dは同一または異なって、水素原子、低級アルキル、−(CH−Y〔式中、nは1〜6の整数を表し、Yはヒドロキシ、低級アルコキシまたは−NR4a4b{式中、R4aおよびR4bは同一または異なって、水素原子、低級アルキルまたは−(CH−Y[式中、mは1〜6の整数を表し、Yはヒドロキシ、低級アルコキシまたは−NR5a5b(式中、R5aおよびR5bは同一または異なって、水素原子または低級アルキルを表す)を表す]を表すか、またはR4aとR4bが隣接する窒素原子と一緒になって複素環基を形成する}を表す〕または−CH((CHOH)(式中、pは1〜5の整数を表す)を表す>で表されるピラゾロアクリドン誘導体の製造法。
【請求項2】
2,6−ジフルオロベンゾニトリルを塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させて、一般式(VI)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物を得て、得られた一般式(VI)で表される化合物を一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物に変換し、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解して、一般式(IV)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体を得る工程を含むことを特徴とする一般式(V)

(式中、R3a、R3b、R3cおよびR3dはそれぞれ前記と同義である)で表されるピラゾロアクリドン誘導体の製造法。
【請求項3】
Rがメチルである請求の範囲1または2記載のピラゾロアクリドン誘導体の製造法。
【請求項4】
が低級アルキルであり、Rがニトロまたはハロゲンである請求の範囲1〜3のいずれかに記載のピラゾロアクリドン誘導体の製造法。
【請求項5】
一般式(I)

(式中、Rは前記と同義である)で表される化合物を、塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させて、一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物を得て、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解することを特徴とする一般式(IV)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法。
【請求項6】
2,6−ジフルオロベンゾニトリルを塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させて、一般式(VI)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物を得て、得られた一般式(VI)で表される化合物を一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物に変換し、得られた一般式(III)で表される化合物のシアノ基を加水分解することを特徴とする一般式(IV)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法。
【請求項7】
Rがメチルである請求の範囲5または6記載の1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法。
【請求項8】
が低級アルキルであり、Rがニトロまたはハロゲンである請求の範囲5〜7のいずれかに記載の1−(2−カルボキシフェニル)インダゾール誘導体の製造法。
【請求項9】
一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物またはその塩。
【請求項10】
Rがメチルである請求の範囲9記載の化合物またはその塩。
【請求項11】
一般式(I)

(式中、Rは前記と同義である)で表される化合物を、塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させることを特徴とする一般式(III)

(式中、R、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物の製造法。
【請求項12】
Rがメチルである請求の範囲11記載の製造法。
【請求項13】
一般式(VI)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物またはその塩。
【請求項14】
2,6−ジフルオロベンゾニトリルを塩基の存在下、一般式(II)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物と反応させることを特徴とする一般式(VI)

(式中、RおよびRはそれぞれ前記と同義である)で表される化合物の製造法。

【国際公開番号】WO2004/094423
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505802(P2005−505802)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005891
【国際出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】