説明

ピラゾールの調製方法

本発明は、式(I)の化合物を生成するための新規な方法に関する。Hal及びHal’は独立してCl及びFから選択され、R1はCl、F、及びHから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌剤の調製における中間体として有益な、3−ジ−及びトリハロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒドと、3−ジ−及びトリハロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸とについての新規な製造方法、並びに上記方法における中間体として有益な所定の新規な化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸及び3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸は、例えば、国際公開第WO03/070705号及び同第WO03/074491号に記載されるように、ピラゾリルカルボキサニリド殺菌剤の調製における有益な中間体である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それゆえに、本発明の目的は、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸及び3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸の合成における重要中間体を生成するための新規な方法を提供することであり、上記方法は、高収率且つ高品質で、経済的に有利且つ取り扱い性が容易な方法で、高度な位置選択性(ピラゾール環の2つの窒素原子に関する)を有して前記酸を調製することを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様によれば、本発明は、式(I):
【化1】

(式中、Hal及びHal’は独立してCl及びFから選択され、R1はCl、F、及びHから選択される)
の化合物の調製方法であって、
式(II):
【化2】

(式中、Hal、Hal’、及びR1は、上述のものと同じである)
の化合物をビルスマイヤー試薬と反応させることを含む、
式(I)の化合物の調製方法に関する。
【0005】
第2の実施態様において、本発明は式(I):
【化3】

(式中、Hal、Hal’、及びR1は、上述のものと同じである)
の化合物に関する。
【0006】
第3の実施態様において、本発明は式(II):
【化4】

(式中、Hal、Hal’、及びR1は、上述のものと同じである)
の化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ビルスマイヤー試薬
本明細書で用いられるとき、「ビルスマイヤー試薬」なる用語は、式(III)
【化5】

(式中、R2及びR3は独立して、炭素原子が1〜6個のアルキル及びフェニルから選択され、Xはハロゲンであり、Yn-は陰イオンであり、nは1、2、3、または4である)
の化合物を意味する。
【0008】
好ましくは、R2はメチルである。好ましくは、R3はメチルである。さらに好ましくは、R2及びR3は両方ともメチルである。
【0009】
好ましくは、Xはクロロである。
【0010】
好ましくは、Yn-はCl-、F-、Br-、及びSO42-から選択される。さらに好ましくは、Yn-はCl-である。
【0011】
非常に好ましい実施態様では、ビルスマイヤー試薬は、N−クロロメチレン−N,N−ジメチルアンモニウムクロライド(IV)である。
【化6】

【0012】
所定のビルスマイヤー試薬を前もって購入または準備して、本発明においてそれらの試薬を用いてもよい。
【0013】
非常に好ましい実施態様では、ビルスマイヤー試薬はその場で生成される。ビルスマイヤー試薬のその場生成は、式(V)
【化7】

(式中、R2及びR3は上述のものと同じである)
のホルムアミドと活性化剤との反応によって好適に行われる。
【0014】
本明細書で用いられるとき、「活性化剤」なる用語は、式(V)の化合物と反応して、上記の式(IV)で示される対応するビルスマイヤー試薬を得ることができる任意の化合物を意味する。
【0015】
好ましい活性化剤は、オキシ塩化リン、ホスゲン、塩化チオニル、五塩化リン、及び塩化オキサリルである。オキシ塩化リンが最も好ましい。
【0016】
非常に好ましい実施態様において、ビルスマイヤー試薬は、ジメチルホルムアミドとオキシ塩化リンとの反応から、その場で生成される。
【0017】
反応条件
好ましくは、化合物(II)とビルスマイヤー試薬との反応は、好適な溶媒中で起こる。別法では、反応は、溶媒の非存在下で行われ得る。
【0018】
好ましい溶媒は、ジメチルホルムアミド、キシレン、トルエン、メシチレン、tert−ブチルベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、及びイソヘキサン、並びにそれらの組み合わせである。非常に好ましくは、溶媒はジメチルホルムアミドである。
【0019】
好ましくは、ビルスマイヤー試薬は、ヒドラゾン(II)に対して過剰に存在する。さらに好ましくは、ビルスマイヤー試薬は、モル基準で、ヒドラゾン(II)の量の少なくとも2倍の量で存在する。さらに好ましくは、ビルスマイヤー試薬は、モル基準で、ヒドラゾン(II)の量の2〜10倍の量で存在する。さらに好ましくは、ビルスマイヤー試薬は、モル基準で、ヒドラゾン(II)の量の3〜5倍の量で存在する。さらに好ましくは、ビルスマイヤー試薬は、モル基準で、ヒドラゾン(II)の量の約4倍の量で存在する。
【0020】
好ましくは、ヒドラゾン(II)は、ビルスマイヤー試薬に添加される。ヒドラゾン(II)及びビルスマイヤー試薬は好ましくは溶液中にある。好ましくは、添加ステップ中に冷却が用いられる。好ましくは、反応混合物は、添加ステップ中に5〜10℃に保持される。好ましくは、添加は、1〜6時間にわたって、さらに好ましくは約4時間にわたって行われる。
【0021】
ビルスマイヤー試薬へのヒドラゾン(II)の添加後に、反応が継続される。反応過程を測定することが有利であり得ることが、当業者に知られている。好適な技術が、Experimental Organic Chemistry standard and microscale (2nd Edition), L. M. Harwood, C. J. Moody, and J. M. Percy, Blackwell Scientific, 1999 に示されており、例えば、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が含まれる。
【0022】
好ましくは、反応は、1〜48時間、さらに好ましくは6〜24時間、さらに好ましくは約12時間続けられる。
【0023】
好ましくは、反応は不活性雰囲気下で行われる。さらに好ましくは、反応は窒素雰囲気下で行われる。
【0024】
好ましくは、反応は加熱される。さらに好ましくは、反応は25〜150℃にて保持される。さらに好ましくは、反応は50〜125℃にて保持される。さらに好ましくは、反応は75〜85℃にて保持される。
【0025】
アルデヒド(I)の分離を目的とする場合、アルデヒド(I)を分離するために、反応混合物の後処理(work up)が必要または望ましいことがあることが、当業者に知られている。好適な後処理手順は、例えば、Experimental Organic Chemistry standard and microscale (2nd Edition), L. M. Harwood, C. J. Moody, and J. M. Percy, Blackwell Scientific, 1999 に記載されている。
【0026】
アルデヒド(I)を精製するための好適な精製技術についても、当業者に知られている。好適な技術としては、再結晶、蒸留、及びクロマトグラフィーが挙げられる。
【0027】
カルボン酸への酸化
好ましい実施態様において、本発明の方法は、式(I)のアルデヒドを、対応するカルボン酸(VI):
【化8】

またはその塩形態に酸化するステップをさらに含む。
【0028】
アルデヒドをカルボン酸へ酸化するための多くの好適な反応条件が存在する。好適な方法は、例えば、Advanced Organic Chemistry, J. March, John Wiley and Sons, 1992, 701−703頁 に記載されている。
【0029】
好適な酸化剤には、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸、臭素、過酸化物、次亜塩素酸塩、及び酸素が含まれる。好ましくは、酸化剤は過酸化物である。さらに好ましくは、酸化剤は過酸化水素である。
【0030】
好ましくは、酸化剤はアルデヒド(I)に対して過剰に使用される。さらに好ましくは、酸化剤は、モル基準で、アルデヒド(I)の量の少なくとも2倍の量で用いられる。さらに好ましくは、酸化剤は、モル基準で、アルデヒド(I)の量の5〜50倍の量で用いられる。さらに好ましくは、酸化剤は、モル基準で、アルデヒド(I)の量の10〜20倍の量で用いられる。
【0031】
好ましくは、反応は、塩基の存在下で起こる。好ましい塩基には、アルカリ及びアルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸塩が含まれる。さらに好ましい塩基は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムである。非常に好ましい塩基は水酸化ナトリウムである。
【0032】
酸化剤及び塩基の非常に好ましい組み合わせは、過酸化水素及び水酸化ナトリウムである。
【0033】
好ましくは、酸化反応は好適な溶媒中で起こる。水は好ましい溶媒である。
【0034】
また、酸化反応がいつ完了するかを判断するために、酸化反応の過程を測定するための技術が、当業者に知られている。
【0035】
本発明の一実施態様では、「1ポット」手順において、アルデヒド(I)の分離を行わずに、アルデヒド(I)がカルボン酸(VI)へ直接酸化される。
【0036】
いくつかの実施態様において、アルデヒド(I)の酸化は、遊離酸よりもむしろ、カルボン酸(VI)の塩形態をもたらすことができる。これらの実施態様において、酸を用いた処理のステップを用いて、塩形態を遊離酸に変化させることができる。塩酸が好ましい。
【0037】
カルボン酸(VI)を分離するために、反応混合物の後処理が必要または望ましいことがあることが、当業者に知られている。好適な後処理手順は、例えば、Experimental Organic Chemistry standard and microscale (2nd Edition), L. M. Harwood, C. J. Moody, and J. M. Percy, Blackwell Scientific, 1999 に記載されている。
【0038】
カルボン酸(VI)を精製するための好適な精製技術についても、当業者に知られている。好適な技術としては、再結晶、蒸留、及びクロマトグラフィーが挙げられる。
【0039】
ヒドラゾン(II)の調製
ヒドラゾン(II)は、ケトン(VII):
【化9】

とメチルヒドラジンとの縮合によって、好適に調製される。
【0040】
反応は、好ましくは溶媒中で行われる。好ましい溶媒は、ジメチルホルムアミド、キシレン、トルエン、メシチレン、tert−ブチルベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、及びイソヘキサンである。最も好ましくは、溶媒はジメチルホルムアミドである。
【0041】
好ましくは、メチルヒドラジンは、モル基準で、ケトン(VII)の量に対して0.5〜10当量で用いられる。さらに好ましくは、メチルヒドラジンは、モル基準で、ケトン(VII)の量に対して0.7〜5当量で用いられる。さらに好ましくは、メチルヒドラジンは、モル基準で、ケトン(VII)の量に対して0.8〜2当量で用いられる。さらに好ましくは、メチルヒドラジンは、モル基準で、ケトン(VII)の量に対して0.9〜1.1当量で用いられる。
【0042】
反応は好ましくは、酸の存在下で行われる。好ましい酸は有機酸である。さらに好ましい酸は、ギ酸、酢酸、またはプロピオン酸である。別法では、塩酸または硫酸等の無機酸が用いられ得る。
【0043】
酸の好ましい量は、ケトン(VII)の量に対して、0.05〜1当量、さらに好ましくは0.1〜0.5当量、最も好ましくは約0.2当量である。
【0044】
好ましくは、反応は0〜150℃に保持される。さらに好ましくは、反応は10〜30℃に保持される。さらに好ましくは、反応は20〜25℃に保持される。
【0045】
また、酸化反応がいつ完了するかを判断するために、酸化反応の過程を測定するための技術が、当業者に知られている。HPLCはこれに関連して特に有益である。
【0046】
本発明による反応時間は、1〜48時間、さらに好ましくは1〜18時間である。
【0047】
ヒドラゾン(II)の分離を目的とする場合、ヒドラゾン(II)を分離するために、反応混合物の後処理が必要または望ましいことがあることが、当業者に知られている。好適な後処理手順は、例えば、Experimental Organic Chemistry standard and microscale (2nd Edition), L. M. Harwood, C. J. Moody, and J. M. Percy, Blackwell Scientific, 1999 に記載されている。
【0048】
ヒドラゾン(II)を精製するための好適な精製技術についても、当業者に知られている。好適な技術としては、再結晶、蒸留、及びクロマトグラフィーが挙げられる。
【0049】
非常に好ましい実施態様において、ヒドラゾン(II)は、分離しないでビルスマイヤー試薬との後続反応に直接利用される。また一方、ヒドラゾン(II)は、所望により当技術分野で公知の技術にしたがって分離されてもよい。
【0050】
ハロゲン交換
本発明の一実施態様において、反応シーケンスにはハロゲン交換ステップが含まれる。
【0051】
本明細書で用いられるとき、「ハロゲン交換」なる用語は、ある元素のハロゲン原子を、第2の異なる元素のハロゲン原子と交換する反応を意味する。好ましくは、塩素原子はフッ素原子と交換される。
【0052】
ハロゲン交換は、反応シーケンスの任意の好適なステップにて行われ得る。
【0053】
好ましい実施態様において、ハロゲン交換は、3−ジクロロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(VIII)に作用して、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(IX)を生成する。
【化10】

【0054】
他の実施態様では、ハロゲン交換は、3−ジクロロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(X)またはその塩形態に作用して、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(Xl)を生成する。
【化11】

【0055】
ハロゲン交換は、様々な条件下で行われ得る。好ましくは、ハロゲン交換は、F-イオン源の存在下で行われる。好ましい試薬は、AgF、KF、HgF2、Bu4+、HF2-、BrF3、Et3N・2HF、Et3N・3HF、及びHFプラスSbF3である。非常に好ましい試薬はEt3N・3HFである。
【0056】
ハロゲン交換反応は、所望により溶媒中で行われる。別法では、好ましくは、反応は、溶媒が存在しない条件下で行われる。
【0057】
好ましくは、反応は0〜250℃に保持される。さらに好ましくは、反応は50〜200℃に保持される。さらに好ましくは、反応は125〜175℃に保持される。最も好ましくは、反応は約150℃に保持される。
【0058】
また、ハロゲン交換反応がいつ完了するかを判断するために、ハロゲン交換反応の過程を測定するための技術が、当業者に知られている。HPLCはこれに関連して特に有益である。
【0059】
ハロゲン交換反応の生成物の分離を目的とする場合、ハロゲン交換反応の生成物を分離するために、反応混合物の後処理が必要または望ましいことがあることが、当業者に知られている。好適な後処理手順は、例えば、Experimental Organic Chemistry standard and microscale (2nd Edition), L. M. Harwood, C. J. Moody, and J. M. Percy, Blackwell Scientific, 1999 に記載されている。
【0060】
反応生成物を精製するための好適な精製技術についても、当業者に知られている。好適な技術には、再結晶、蒸留、及びクロマトグラフィーが含まれる。
【0061】
好適な実施態様
本発明の好適な実施態様では、R1は水素である。
【0062】
本発明の好適な実施態様では、Hal及びHal’はフッ素である。好ましくは、Hal及びHal’はフッ素であり、R1は水素である。
【0063】
この実施態様における、反応シーケンスをスキーム1に示す。
【0064】
【化12】

【0065】
1,1−ジフルオロアセトン(XII)が、メチルヒドラジンと反応して、対応するヒドラゾン(XIII)を生成する。ヒドラゾン(XIII)とビルスマイヤー試薬との反応によって、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(IX)を生成する。3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(IX)の酸化によって、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(XI)またはその塩形態を生成する。
【0066】
本発明の他の好ましい実施態様では、Hal、Hal’、及びR1は、フッ素である。
【0067】
この実施態様における、反応シーケンスをスキーム2に示す。
【0068】
【化13】

【0069】
1,1,1−トリフルオロアセトン(XIV)が、メチルヒドラジンと反応して、対応するヒドラゾン(XV)を生成する。ヒドラゾン(XV)とビルスマイヤー試薬との反応によって、3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(XVII)を生成する。3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(XVII)の酸化によって、3−トリフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(XVIII)またはその塩形態を生成する。
【0070】
他の好ましい実施態様において、Hal、Hal’は両方ともClであり、R1は水素である。
【0071】
この実施態様における、反応シーケンスをスキーム3に示す。この実施態様では、酸化及びハロゲン交換反応ステップのいずれかが起こって、同じ生成物に達することができる。
【0072】
【化14】

【0073】
スキーム3において、1,1−ジクロロアセトン(XIX)がメチルヒドラジンと反応して、対応するヒドラゾン(XX)を生成する。ヒドラゾン(XX)とビルスマイヤー試薬との反応によって、3−ジクロロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(VIII)を生成する。
【0074】
3−ジクロロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(VIII)の酸化によって、3−ジクロロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(X)またはその塩形態を生成する。その生成物のハロゲン交換によって、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(XI)を生成する。
【0075】
別法では、3−ジクロロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(VIII)のハロゲン交換によって、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(IX)を生成する。その生成物の酸化によって、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(XI)を生成する。
【0076】
好ましい実施態様において、本発明は、式(XI):
【化15】

の化合物の生成方法に関するものであって、
a1)式(XII)(1,1−ジフルオロアセトン):
【化16】

の化合物をメチルヒドラジンと反応させて、式(XIII)(N−[2,2−ジフルオロ−1−メチル−エチリデン]−N’−メチル−ヒドラジン):
【化17】

の化合物を生成すること;
a2)式(XIII)の化合物をジメチルホルムアミド及び活性化剤と反応させて式(IX)(3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド):
【化18】

の化合物を生成すること;並びに
a3)塩基の存在下で酸化剤を用いて、式(IX)の化合物を、式(XI)の化合物に酸化すること、
を含む、式(XI)の化合物の生成方法に関する。
【0077】
方法ステップa1):
上述の方法ステップa1)は好ましくは0℃〜50℃、さらに好ましくは10℃〜25℃の温度範囲にて行われる。
【0078】
反応は、便利に不活性溶媒中で行われる。好ましい不活性溶媒は、ジメチルホルムアミド、キシレン、トルエン、メシチレン、tert−ブチルベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、及びイソヘキサンであって、さらに好ましくは、ジメチルホルムアミドである。
【0079】
本発明による反応において、メチルヒドラジンを、式(IV)の化合物に対して、等モル量か、等モル量未満か、または過剰な量で使用することができる。好ましくは、メチルヒドラジンは等モル量で使用される。
【0080】
反応は、好ましくは酸の存在下で行われる。好適な酸は、有機酸であり、例えば、ギ酸、酢酸、若しくはプロピオン酸;または無機酸であり、例えば、塩酸、若しくは硫酸が挙げられる。好ましくは、酸は有機酸であり、さらに好ましくは、酸は酢酸である。酸の好ましい量は、式(XII)の化合物に対して、0.05〜1当量であり、さらに好ましくは0.1〜0.5当量である。
【0081】
本発明による反応時間は好ましくは1〜48時間であり、さらに好ましくは1〜18時間であり、さらに好ましくは1〜5時間である。
【0082】
本発明による反応は、常圧、減圧、または高圧下にて行われ得る。本発明の一実施態様において、反応は常圧で行われる。
【0083】
好ましくは、式(XIII)の化合物は分離されないが、方法ステップa2)においてその場で消費される。
【0084】
方法ステップa2):
好適な活性化剤は、例えば、オキシ塩化リン、ホスゲン、または塩化チオニルであり、好ましくはオキシ塩化リンである。
【0085】
本発明による反応は好ましくは0℃〜130℃、特に75℃〜100℃の温度範囲にて行われる。
【0086】
反応は、便利に不活性溶媒中で行われる。好ましい不活性溶媒は、方法ステップa1)用に使用された溶媒である。
【0087】
本発明による反応において、活性化剤は、好ましくはオキシ塩化リンであり、概して式(XIII)の化合物に対して過剰に用いられ、好ましくは2倍〜6倍過剰に用いられる。
【0088】
本発明による反応の反応時間は、1〜48時間、好ましくは1〜24時間、さらに好ましくは1〜18時間である。
【0089】
本発明による反応は、標準圧力、高圧、または減圧下で行われ得る。本発明の一実施態様において、反応は標準圧力で行われる。
【0090】
方法ステップa3):
方法ステップa3)用の好適な酸化剤は、例えば、過酸化水素である。酸化剤の好適な量は、例えば、少なくとも1当量であり、好ましくは10〜20当量である。
【0091】
好適な塩基は、例えば、水酸化物であり、例えば、アルカリまたはアルカリ土類の水酸化物であって、NaOHまたはKOH等が挙げられ、好ましくはNaOHである。塩基の好適な量は、例えば、式(IX)の化合物に対して1〜10当量、特に2〜5当量、とりわけ約4当量である。
【0092】
反応は、便利に不活性溶媒中で行われる。好適な不活性溶媒は、例えば、水; メタノール、エタノール、プロパノール、若しくはイソプロパノール等のアルコール; またはテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサン、若しくはトルエン等の非プロトン性溶媒; 及びそれらの混合物であり; 水が特に好ましい。
【0093】
温度は概して0℃〜120℃であり、0℃〜100℃の範囲が好ましく、20℃〜60℃の範囲が特に好ましい。一実施態様において、温度は40〜50℃の範囲である。
【0094】
反応は、常圧または高圧で行われ得る。その反応の反応時間は概して1〜60時間であり、好ましくは1〜6時間である。
【0095】
本発明の第1の実施態様は、高収率で、高度の位置選択性を有し、且つ低コストで、式(I)の化合物を生成することを可能にする。
【0096】
式(II)の化合物は、式(I)の化合物を調製するための重要な中間体であり、特に本発明による本方法のために開発された。したがって、本発明はそれらの化合物にも関係する。
【0097】
第1のさらなる態様は、式(I)の化合物の生成方法であって、
a1)不活性溶媒の存在下にて、式(VII)の化合物をメチルヒドラジンと反応させて式(II)の化合物を生成すること;並びに
a2)オキシ塩化リン及びジメチルホルムアミドを用いて、その化合物を式(I)の化合物に変化させること、
を含む、式(I)の化合物の生成方法である。
前記態様において、ステップa1)及びa2)は、先に述べたように行われる。
【0098】
次の限定しない例は、本発明をより詳細に説明するものである。特に断りがなければ、以下の全ての%値は(w/w)値である。
【実施例】
【0099】
例1:3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(IX)の調製
【0100】
【化19】

【0101】
500mlの三つ口丸底フラスコに、磁性攪拌機、温度計を取り付け、窒素雰囲気にした。1,1−ジフルオロアセトン(式(XII)の化合物)(10.0g)、ジメチルホルムアミド(227g)、及び酢酸(1.35g)を反応容器に入れた。メチルヒドラジン(4.83g)を攪拌された溶液に添加して、反応物を室温にて一晩攪拌した。これによって、出発材料が99%を超えて消費されて、所望のヒドラゾン中間体(式(XIII)の化合物)が得られた。反応物の質量を二等分して、一方を下記のように加工した:第2の500mlの三つ口丸底フラスコに、磁性攪拌機、凝縮装置、温度計を取り付け、窒素雰囲気にした。ジメチルホルムアミド(114g)を反応容器に入れて、50℃に加熱した。オキシ塩化リン(66.1g)を45〜50℃にて攪拌しながら0.75時間にわたって添加した。反応物を1時間、50℃に保持して、次いで10℃に冷却した。上記の調製したヒドラゾン(式(XIII)の化合物)溶液を、5〜10℃に温度を保持しながら、4時間にわたって入れた。反応物を一晩80℃にて攪拌して、次いで、室温に冷却した。ジクロロメタン(500ml)及び氷(330g)を、機械撹拌機を備えたジャケット付き(jacketed)3リットル反応容器に入れた。反応物を、攪拌しながら氷/ジクロロメタンの混合物に0.5時間にわたって入れた。20%の水酸化ナトリウム溶液(220ml)を添加することによってpHを9.8に調製して、いくらかの固体の沈殿物を得た。さらにジクロロメタン(300ml)及び水(750ml)を入れて、混合物をろ過した。ジクロロメタン層を水で洗浄して、水性層をジクロロメタンで抽出した。併合ジクロロメタン層を水で洗浄して、乾燥し(MgSO4)、真空で濃縮した(収率65%で所望の生成物(式(IX)の化合物)が得られた−定量的HPLC)。クーゲルロール蒸留装置によるDMFの除去(70℃、3〜5mbar)によって、暗褐色油として所望の生成物(式(IX)の化合物)が得られた(収率53%で所望の生成物が得られた−定量的HPLC)。
MS:42、51、69、77、83、112、131、141、159、160(M+
1H NMR(CDCl3):4.00(s、3H、NCH3)、6.88(t、1H、CHF2)、7.75(S、1H、ArH)、10.0(s、1H、CHO)
【0102】
例2:3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(XI)
【0103】
【化20】

【0104】
250mlの三つ口丸底フラスコに、磁性攪拌機及び温度計を取り付けた。水(130g)、例1の生成物(式(IX)の化合物)(6.50g)、及び水酸化ナトリウム水溶液(8.17g)を反応容器に入れ、得られた溶液を40〜45℃に加熱した。35%の過酸化水素溶液(39g)を1時間にわたって添加して、次いで、混合物を0.5時間、40〜45℃にて攪拌した(収率83%で所望の生成物(式XI)の化合物)が得られた−定量的HPLC)。36%の塩酸水溶液を添加することによって、反応物のpHを2.5に調節した。得られた沈殿物をろ過によって分離して、水で洗浄した。乾燥(60℃、10mbar)によって、淡黄色の流動性粉末として所望の生成物(XI)を生成した(収率69%で所望の生成物を得た−定量的HPLC)。
MS:42、51、69、80、88、100、108、128、137、159、176(M+
1H NMR(d6−アセトン):3.98(s、3H、NCH3)、7.21(t、1H、CHF2)、8.25(S、1H、ArH)、11.2(broad s、1H、CO2H)
【0105】
例3:3−ジクロロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(VIII)の調製
【0106】
【化21】

【0107】
50mlの三つ口丸底フラスコに、磁性攪拌機、温度計を取り付け、窒素雰囲気にした。ジメチルホルムアミド(30ml)及び1,1−ジクロロアセトン(XIX)(3.05g)を反応容器に入れた。混合物を25℃未満に保ちながらメチルヒドラジン(1.25g)を攪拌された溶液にゆっくり添加した。反応物を0.75時間、室温にて攪拌して所望のヒドラゾン中間体(XX)を生成した。150mlの丸底フラスコに、磁性攪拌機、凝縮装置、温度計を取り付け、窒素雰囲気にした。ジメチルホルムアミド(60ml)を反応容器に入れて、50℃に加熱した。オキシ塩化リン(15.0g)をシリンジポンプによって添加した。反応物を1時間、50℃にて攪拌して、次いで10℃に冷却した。上記の調製したヒドラゾン(式(XX)の化合物)溶液を、5〜10℃に温度を保持しながら、すぐに入れた。反応物を5時間、80℃にて攪拌して、次いで室温に冷却した。反応物の質量を二等分した。ジクロロメタン(100ml)、水(100ml)、及び10%の重炭酸ナトリウム水溶液(150ml)をガラス容器に入れた。反応物の第1の半分を添加して、さらに重炭酸ナトリウム溶液を用いてpHを7〜8に調節した。この手順について、反応物の第2の半分を用いて繰り返した。併合有機層を水(2×100ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO4)、真空で濃縮した。式(VIII)の化合物を、MS及びNMRによって分析した。
MS:42、50、85、94、122、157、192(M+
1H NMR(D7−DMF):3.97(s、3H、NCH3)、7.20(s、1H、CHCl2)、8.05(S、1H、ArH)、10.03(s、1H、CHO)
【0108】
例4:3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(IX)の調製
【0109】
【化22】

【0110】
3−ジクロロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルバルデヒド(1.94g、式(VIII)の化合物)を、100mlのモネル圧力反応容器に入れて、その後に、シリンジで20.1gのトリス(フッ化水素)−トリエチルアミドを入れた。系を、密閉して、内容物を150℃に加熱しながら攪拌した。目標温度に到達した後、反応物を2時間、その温度に保持した。次いで、反応物を一晩静置して、急冷する前に冷却した。急冷は、反応内容物(黒色液体)を水(50ml)に流し入れることによって行われた。次いで、急冷された反応物をメチル−t−ブチルエーテル(2×25ml)で抽出した。分離した後、有機相を塩水で洗浄して、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、ろ過して、真空で濃縮して、赤/茶色の油の形態の式(IX)の化合物(0.38g)を生成した。収率は約40%であった。生成物を、GC及びGCMSによって分析した。
GCMS:42、51、69、77、83、112、131、141、159、160(M+

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、Hal及びHal’は独立してCl及びFから選択され、R1はCl、F、及びHから選択される)
の化合物の調製方法であって、
式(II):
【化2】

(式中、Hal、Hal’、及びR1は、上述のものと同じである)
の化合物をビルスマイヤー試薬と反応させることを含む、
式(I)の化合物の調製方法。
【請求項2】
Hal及びHal’がFである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Hal及びHal’がClである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1がHである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1がFである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の化合物を酸化して、式(VI):
【化3】

(式中、Hal、Hal’、及びR1は、請求項1に記載のものと同じである)
のカルボン酸またはその塩形態を生成するさらなるステップを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
酸化剤が過酸化水素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該酸化が、塩基の存在下で行われる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
Hal及びHal’を、ClからFへ変換するハロゲン交換のステップを含む、請求項3、4、または6に記載の方法。
【請求項10】
該ビルスマイヤー試薬が、POCl3及びジメチルホルムアミドからその場で生成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(II)の化合物が、式(VII):
【化4】

(式中、Hal、Hal’、及びR1は、請求項1に記載のものと同じである)
のケトンとメチルヒドラジンとの反応によって生成される、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(I):
【化5】

(式中、Hal、Hal’、及びR1は、請求項1に記載のものと同じである)
の化合物。
【請求項13】
式(IX):
【化6】

の請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
式(II):
【化7】

(式中、Hal、Hal’、及びR1は、請求項1に記載のものと同じである)
の化合物。
【請求項15】
式(XIII):
【化8】

の請求項14に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−531314(P2010−531314A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513717(P2010−513717)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004829
【国際公開番号】WO2009/000441
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】