説明

ピラゾール化合物の製造に有用な合成中間体の製造方法

本発明は式(I)[式中、R9は、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキル、(CH2nPh、及び(CH2nヘテロアリール{ここで、n=0、1、又は2である}から選ばれ、当該基の各々は、場合により、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルカノイル、C1-4ハロアルカノイル、C1-4アルキルスルフィニル、C1-4ハロアルキルスルフィニル、C1-4アルキルスルホニル、C1-4ハロアルキルスルホニル、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ハロシクロアルキルから独立して選ばれる1以上の基により、任意の炭素原子上で置換され;そしてR9は水素でありうる]で表される化合物の製造方法であって、当該方法が、極性溶媒中で、20℃を超えない温度にて式(II)[式中、R9は上で定義されるとおりである]で表されるシアノアセタートを、ホルムアルデヒド・シアノヒドリン及び無機塩基と反応させることを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あるシアノメチルプロパン誘導体(例えば、2,3-ジシアノプロピオナート)を製造する方法、及びこれらの化合物を、殺虫剤及び殺虫剤中間体の合成において使用することに関する。特に、本発明は、エチル-2,3-ジシアノプロピオナートの製造に関する。
【0002】
エチル-2,3-ジシアノプロピオナートは、アリール・ピラゾール環の製造において使用される中間体であり、アリールピラゾール環の多くは広範囲の種の外部寄生虫に対し致死的である。特に、2,3-ジシアノプロピオナート誘導体は、1-フェニル・ピラゾール及び1-ピリジル・ピラゾール化合物の製造に特に有用である。
【0003】
当初、エチルシアノアセタートのアルキル化は、DMF/K2CO3(D.A.White、Synth. Commun.、7(8)、559、1977)、及びDBU/トルエン(N.Choら、Bull. Chem. Soc. Jpn.、156、1716-19、1979)を使用してクロロアセトニトリルを用いて行われた。両方の方法は、モノアルキル化のみを与えるといわれているが、実際は両方ともジアルキル化のみが観察される。
【0004】
Thorpe及びHigsonの方法(J.F.Thorpe、A. Higson、JCS、89、1455、1906) は、以下に記載されるように、室温以上の温度で、ホルムアルデヒド・シアノヒドリン(グリコロニトリルとして知られている)のエタノール溶液とNaOMeを使用して、エチルシアノアセタートをアルキル化することに関する。
【化1】

【0005】
残念なことに、グリコロニトリルは、エタノールで溶媒置換する前に、エーテルでソックレー抽出(Soxhlet extraction)しなければならない水溶液としてのみ利用できる。当該方法は、低収量しか得ることができず、そして典型的には20〜50%、そして多くの場合この範囲の低い側で変動する収率を与えるという不利な点を有する。この具体的な反応についての一の問題は、H.Junek、W.Wilfinger、Monatsch. Chem.、1970(101)、1208により同定されたように、エチルシアノアセタートの多くが、自己凝集して、以下の:
【化2】

で表される不飽和生成物を与えるという点である。
【0006】
別の文献の方法(D.A.White、JCS Perkin I 1926、1976)が以下に記載され、アクリロニトリルをCO2及びテトラエチル・アンモニウム・シアニドと使用することは、所望される2,3-ジシアノプロピオナート生成物を幾つかを与えた。しかしながら、当該方法は、多くの副生成物を生成する不利な点を有した。
【化3】

【0007】
Thorpe及びHigsonにより報告された、ホルムアルデヒド・シアノヒドリンをエチル・シアノアセタートのナトリウム塩と反応させることによる2,3-ジシアノプロピオナートの製造は、上で記載されたホルムアルデヒド・シアノヒドリン中間体を単離することが最初に必要とされる重大な欠点に悩まされる。EP888291は、シアノメチル・プロパン誘導体を調製するための方法を提供することにより、ホルムアルデヒド・シアノヒドリンを用いることに関わる欠点を克服することを試みる。当該方法は、ホルムアルデヒド・シアノヒドリンの使用を完全に避け、そして結果として、ホルムアルデヒド・シアノヒドリンに関わるダイマー化副反応を避ける。残念なことに、当該方法は、シアニド塩を使用せねばならず、そうして注意深い取り扱いが常に必要とされ、そして、シアン化水素が遊離しないように反応条件を常に塩基性pHに維持しなければならないという問題点を有する。当該反応はまた、さらに取り扱いの難しいホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドの供給を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の方法において生じる問題を克服した2,3-ジシアノプロピオナート誘導体の製造方法を提供することが、本発明の目的である。1以上の以下の目的:ホルムアルデヒド及びシアン化塩の使用を避けること、文献で報告されたダイマー化副反応を避けること、及び所望の生成物を直接、高収量でかつ高純度で提供すること、を満たす方法を提供することもまた本発明の目的である。
【0009】
現存する経路に対して改善された収量を提供する2,3-ジシアノプロピオナート誘導体への経路を提供することも本発明の目的である。不必要な合成ステップ又は試薬及び/又は精製ステップの使用を避けることも、本発明の方法の目的である。そのための重要な目的は、必要とされる合成ステップの数を最小にし、そして競合反応の問題及び/又は有害物質の廃棄を避ける方法を提供することである。2,3-ジシアノプロピオナート誘導体への素早くかつそうして経済的な経路を提供することも本発明の目的である。
【0010】
好ましくは比較的短い時間の内に完了されうる反応においてアリール・ピラゾール誘導体への簡便な経路を提供することも本発明の目的である。こうして、新規化合物の入手を可能にするアリールピラゾール誘導体を生産するための効率的な合成方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
全ての文献報告及びEP888291にいおいて観察された問題にもかかわらず、ホルムアルデヒド・シアノヒドリンを用いて、2,3-ジシアノプロピオナート誘導体を優れた収率で製造できる新規の方法を発見した。
【0012】
シアノアセタートとホルムアルデヒド・シアノヒドリンとの間の反応において、温度を注意深く制御することが、かなりきれいで完全な反応を与えたということを発見した。さらに、使用前にグリコニトリルを精製する必要なく、グリコニトリルを使用して反応を行うことができるということを発見した。
【0013】
特に、注意深く温度を制御するという条件の下で、DMFなどの極性溶媒中で、そしてK2CO3などの無機塩基の存在下で、エチルシアノアセタートと水性グリコニトリルとの間の反応が行われうるということを発見した。実際には、温度を保証する当該方法は、温度を20℃超に上昇させることはない。本発明の反応は上手くいき、そして所望の生成物をかなり良好な収率で提供し、最大95%の収率が得られる。
【0014】
本発明の方法が、水性グリコニトリルを使用し、そして水性グリコニトリルのソックレー抽出をする必要を避けるという更なる利点が存在する。当該事実は、時間と費用の大幅な節約を可能にする。なぜなら、今日まで、使用前にグリコニトリルを精製することが常に必要とされていたからである。精製は、通常、ソックレー抽出器内で、ジエチルエーテルを用いて連続的に水性グリコニトリルを抽出することにより達成される。しかしながら、当該方法においてグリコニトリルが熱され、そして結果としてシアン化水素とホルムアルデヒドへ分解しうるという問題がある。これは重大な問題である。さらに、水性グリコニトリルは通常安定剤を含んでおり、当該安定剤は当該物質がソックレー抽出器内で還流される際に失われる。これはまた、グリコニトリルの分解を導く。
【0015】
従来技術の方法のさらに不利な点は、精製プロセスが時間の浪費であるという点である。こうして、これは複雑さを当該方法に与え、当該方法を、実行するのに経済的でないものにする。本発明の方法は、驚くべきことに、反応条件を注意深く制御するという条件の下で、当該精製ステップを必要性とすることなく行われうる。このことは、かなりの時間及び費用の節約となる。
【0016】
従来技術の方法では固体試薬が必要とされる一方、本発明の方法は試薬が液体形態であるという点で従来技術の方法を超える利点を有する。特に、含まれる物質が毒性又は有害である場合、固体又は気体状の試薬の取り扱いは、液体の取り扱いよりずっと問題となる。液体試薬の添加が、固体又は気体の添加の場合より、ずっと制御しやすいという利点もある。
【0017】
20℃超に温度を上げることは、収率の有意な低下をもたらし、主要不純物を生じさせる;この不純物は、Thorpe及びHigsonにより報告された不純物であると推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一の態様に従って、以下の式(I):
【化4】

[式中、
9は、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキル、(CH2nPh、及び(CH2nヘテロアリール{ここで、n=0、1、又は2である}から選ばれ、これらの基の各々は、任意の炭素原子上で以下の:ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルカノイル、C1-4ハロアルカノイル、C1-4アルキルスルフィニル、C1-4ハロアルキルスルフィニル、C1-4アルキルスルフォニル、C1-4ハロアルキルスルフォニル、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ハロシクロアルキルから独立して選ばれる1以上の基により場合により置換されてもよく、
そしてR9は水素でありうる]
で表される化合物を製造するための方法であって、当該方法が以下の式(II):
【化5】

[式中、R9は上で定義される通りである]
で表されるシアノアセタートを、20℃を超えない室温で極性溶媒中においてホルムアルデヒド・シアノヒドリン及び無機塩基と反応させることを含む、前記方法が提供される。
【0019】
好ましくは、R9はH;C1-8アルキル、CH2Ph、又はPhであり、各々は、以下の:ハロゲン、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、及びC1-4ハロアルコキシから独立して選ばれる1以上の基により場合により置換される。ここで、ハロゲン原子は同一又は異なっていてもよい。
最も好ましくはR9は、メチル又はエチルである。
【0020】
上の定義に置いて、ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。必須である炭素原子数を含むアルキル及びアルコキシ基は、示唆された場合を除き、非分枝状又は分枝状の鎖でありうる。アルキルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、及びt−ブチルを含む。シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルを含む。
【0021】
適切な無機塩基は、アルカリ金属炭酸塩及び水酸化物を含む。
【0022】
生成物は、例えば、硫酸又は塩酸などの鉱酸で反応混合物を酸性化すると都合よく単離されて、式(I)の化合物を高収率で与える。一の実施態様では、高収率は、反応混合液が水を添加せずに酸性化される場合に得ることができる。
【0023】
反応は、一般的に約1モル当量の式(II)の化合物;約0.95〜1.0モル当量の無機塩基、及び約1モル当量のホルムアルデヒド・シアノヒドリンを用いて行われる。
【0024】
本反応は、溶媒の存在下で行われてもよい。好ましくは、反応は、極性溶媒中で行われる。当該溶媒は、好ましい実施態様において、水混和性であるべきである。当該溶媒は、通常、メタノール、エタノール、又はプロパノールなどのアルコールであり;又はジメチル・ホルムアミド(DMF);DMSO(ジメチルスルホキシド);DMAC(ジメチルアセトアミド);MeCN;N−メチル・ピロリドン(NMP);ジオキサン;テトラヒドロフラン(THF);又はジメトキシエタンから選ばれてもよい。特に好ましい溶媒は、メタノール又はエタノールなどのC1-C8アルコールである。
【0025】
反応温度は決定的であり、そして反応は、20℃を超えない温度で行われなければならない。一般的に、最良の結果は、他の反応物質を混合した後に、無機塩基を導入することにより得られる。
【0026】
式(I)の化合物は、例えば、欧州特許公開第0295117号及び第0234119号、及びWO93/06089において記載されるように、殺虫剤として活性な化合物の製造において有用である。
【0027】
特に、本発明の方法は、別の殺虫剤中間体のin situ製造の一部を形成してもよい。こうして、さらなる態様では、本発明は、以下の式(III):
【化6】

[式中、
1は、水素;ハロ;C1-6アルキル及びC1-6アルコキシ(ここでこれらの各々は、場合により、1以上の独立して選ばれるハロ原子で置換される);−S(O)n1-6アルキル;及びペンタフルオロチオ;シアノ;C1-6アルカノイル(ここで、C1-6アルカノイルは、場合により1以上の独立して選ばれるハロ原子で置換されうる)から独立して選ばれる1以上の基により場合により置換されるアリール又はヘテロアリールであり、
2は、水素;ハロ;C1-6アルキル;−S(O)n1-6アルキル;−(CH2m3-8シクロアルキル(ここで、−(CH2m3-8シクロアルキルは、ハロ及びC1-6アルキルから独立して選ばれる1以上の置換基で場合により置換されうる);シアノ;ニトロ;−(CH2mNRab;C1-6アルカノイル(ここでC1-6アルカノイルは、ハロ及びC1-4アルコキシから独立して選ばれる1以上の基により場合により置換されうる);フェニル;オキサジアゾール;−C(O)NRab;−NRaC(O)Rb;C2-6アルケニル;及びC2-6アルキニルから選ばれ;
5は、水素;ヒドロキシ;C1-6アルキル;NRab;ハロ及びC1-6アルコキシから選ばれ;
各nは、独立して0、1、又は2であり;
各mは、独立して0、1、2、又は3であり;
そしてここで、
hetは、4〜7員環の複素環基を表し、当該基は、芳香族又は非芳香族であり、そして、窒素、酸素、硫黄、及びその混合物から選ばれる1以上のヘテロ原子を含み、そしてここで、当該複素環は、結合価が許容する場合、以下の:ハロ、シアノ、ニトロ、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6アルコキシ、OC(O)C1-6アルキル、C(O)C1-6アルキル、C(O)OC1-6アルキル、及びNRabから選ばれる1以上の置換基で場合により置換及び/又は末端化され(terminated)、
各C1-6アルキル基は、分枝状であるか又は非分枝状であり、そして場合により、シアノ;ハロ;ヒドロキシ;ニトロ;C1-6アルコキシ;NRab;S(O)n1-6アルキル;S(O)n3-8シクロアルキル;S(O)n1-6アルキルhet;C3-8シクロアルキル;及びフェニルから独立して選ばれる1以上の基により場合により置換されうる;
各フェニルは、場合により、シアノ;ハロ;ヒドロキシ;ニトロ;C1-6アルキル;C1-6ハロアルキル;及びC1-6アルコキシから独立して選ばれる1以上の置換基により置換されてもよく;そして
各Ra及びRbは、水素;C1-6アルキル;及びC3-8シクロアルキル(ここでC3-8シクロアルキルは、ハロ及びC1-6アルキルから独立して選ばれる1以上の置換基で場合により置換されてもよい)から独立して選ばれ;或いは
a及びRbは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、4〜7員環を形成してもよい]
で表される化合物の製造方法であって、当該方法が以下の:
(a) 上で定義される式(II)のシアノアセタートを、シアニド塩及びホルムアルデヒド若しくはその元化合物(source)と反応させて、上で定義される式(I)の化合物を与え;そして
(b) こうして得られた式(I)の化合物を、以下の式(IV):
【化7】

[式中、R1は上で定義されるとおりである]
で表される化合物のジアゾニウム塩と反応させて、以下の式(V):
【化8】

[式中、R、R1、及びR2は上で定義されるとおりである]
で表される化合物を与えて、次に上記式(V)の化合物の環化を行う
を含む、前記製造方法を提供する。
【0028】
一の実施態様では、R1がフェニル又はピリジルであることが好ましく、そしてR1がフェニルであることがより好ましい。
【0029】
好ましくは、R1基がフェニルである場合、R1基は3箇所で置換されており、そしてより好ましくは、2-、4-、及び6-位において、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルキルチオ、SF5、及び−COOC1-8アルキルを含む群から選ばれる任意の置換基で置換されており、ここで当該任意の置換基は、それ自身、化学的に可能である場合、独立して選ばれる1以上のハロゲン原子により置換されてもよい。
【0030】
より好ましくは、R1は、2,4,6-トリ置換フェニルであって、ここで2-及び6-位の置換基は、各々独立して、水素及びハロから選ばれ;そして4-位の置換基は、1以上の独立して選ばれるハロ原子で場合により置換されうるC1-4アルキル;1以上の独立して選ばれるハロ原子で場合により置換されうるC1-4アルコキシ;1以上の独立して選ばれるハロ原子で場合により置換されうるS(O)n1-4アルキル;ハロ及びペンタフルオロチオからから選ばれる。
【0031】
より好ましくは、R1は、2-、4-、及び6-位において置換基を有するフェニル基であり、これらの位置における置換基は、クロロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及びペンタフルオロチオから独立して選ばれる。
【0032】
さらにより好ましくは、R1は、2-位及び6-位の置換基がクロロであり、そして4位の置換基が、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、及びペンタフルオロチオから選ばれる、フェニル基である。
【0033】
1が、3,5-二置換ピリジン-2-イルであって、当該3位の置換基が、水素及びハロから選ばれ;そして5位の置換基が、上で定義されるように場合により置換されるC1-6アルキル;1以上の独立して選択されるハロ原子で場合により置換されうるC1-6アルコキシ;S(O)n1-6アルキル;ハロ、及びペンタフルオロチオから選ばれる、3,5-二置換ピリジン-2-イルであることが好ましい。
【0034】
好ましくは、hetは、1、2、又は3個のヘテロ原子を含み、独立して1個のN原子、1又は2個のO原子、及び1又は2個のS原子から選ばれる5-又は6-員環の複素環基を表す。
【0035】
より好ましくは、hetは、好ましくは、ピラゾリル、イミダゾリル(imidazolylyl)、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チオフェニル、ピロリル、及びピリジルから選ばれ、ここで当該基は、場合により、C1-6アルキル及びハロゲンから独立して選ばれる1以上の基により置換されうる。
【0036】
より好ましくは、hetは、ピリジル、ピラゾリル、オキサゾリル、及びイソキサゾリルから選ばれる。
より好ましくは、hetは、ピリジル及びオキサゾリルから選ばれる。
【0037】
好ましくは、R2は、シアノ;C1-6アルキル;及びハロ及びC1-6アルキルから独立して選ばれる1以上の置換基で場合により置換されうるC3-8シクロアルキル;ハロ及びC1-4アルコキシから独立して選ばれる1以上の基により場合により置換されうるC1-6アルカノイル;及びハロから選ばれる。
【0038】
より好ましくはR2は、C1-6アルキル及びシアノから選ばれる。
さらにより好ましくはR2は、トリフルオロメチル及びシアノから選ばれる。
最も好ましくはR2はシアノである。
【0039】
好ましくは、R5は、−(CH2mNRabであり、ここでRa及びRbは上で定義されるとおりであり、より好ましくはm=0であり、そして最も好ましくはR5はアミノである。
【0040】
上記式(V)の化合物は、異なるエナンチオマーを生じさせる不斉中心を有し、そして異なる幾何異性体又はその混合物として存在してもよい。全てのかかる形態は、本発明により包含される。
【0041】
本方法では、反応ステップ(a)の生成物は、一般的に、鉱酸のアルコール溶液、好ましくは塩化水素のエタノール溶液で酸性化される。これは、ステップ(a)(Rが水素により置き換えられた式(I)の対応化合物を導く)の全ての酸副生成物が再エステル化されることを保証する。
【0042】
反応ステップ(b)は、一般的に、不活性溶媒、例えば水、アセトニトリル、ジクロロメタン、若しくはDMF、又はより好ましくはアルコール溶媒(例えばメタノール若しくはエタノール)の存在下で行われ、そして場合により(例えば酢酸ナトリウムで)緩衝化される。
【0043】
式(IV)の化合物のジアゾニウム塩は、文献において知られているジアゾ化試薬を用いて製造されてもよく、そしてモル当量の亜硝酸ナトリウムと鉱酸(例えば塩酸又は硫酸)で、約-10℃〜約50℃、より好ましくは約0℃〜約5℃の温度にて都合よく調製される。式(IV)の化合物のジアゾニウム塩は、一般的にin situにおいて、アルコールなどの溶媒として製造されて、ジアゾニウム塩を素早く低減させた。本反応において、上記式(V)の化合物を与えるための式(IV)の化合物のジアゾニウム塩の反応は、一般的にジアゾニウム塩の還元より早く生ずる。
【0044】
好ましくは水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、又はアンモニア水溶液などの塩基を伴う温和な条件を用いた次なる加水分解は、式(V)の化合物の環化させて、式(III)の化合物にするために必要でありうる。
【0045】
式(II):(IV)の化合物のモル比は、一般的に約1.5:1〜約1:4であり、好ましくは約1.3:1〜約1:1であり、より好ましくは約1.1:1である。
以下の非制限的な例が本発明を例示する。
【実施例】
【0046】
実施例1
エチル-αβ-ジシアノプロピオナートの製造方法
エチルシアノアセタートを、5ml/gのDMF中で攪拌し、そして1当量のグリコロニトリルを温度を20℃以下に維持しながら滴下して加えた。次に、塩基を加えた際にわずかな発熱が観察されるので、温度を調節してして少しずつK2CO3を加えた。反応液を一晩室温で攪拌させておいた。過剰量のK2CO3をろ過して取り除き、そしてろ液を4N・HClでpH4に酸性化した。溶媒を中程度の吸引下で取り除き、そして残渣をCH2Cl2に溶解し、MgSO4で乾燥させ、そして揮散させて95%の収率で橙色/赤色油を得た。本発明の方法の優れている点は、従来技術に比べて明らかである。
【0047】
実施例2
エチルシアノアセタート(511.7g;4.52mol)をDMF(1.81L)中に溶解し、そして溶液を室温で攪拌した。グリコロニトリルを、氷/水冷却を用いて20℃を超えないように反応温度を維持しながら5分かけて、上記溶液に加えた。次に炭酸カリウム(625.3g、4.52mol)を、氷/水冷却をして15〜25℃の間で反応温度を維持して、30分かけて反応混合液に少しずつ加え、そして添加をおえると、反応液を16時間攪拌させて置いた。反応混合液をろ過して無機成分を取り除き、そして反応混合液のpHを濃HClを用いてpH4に調節した。得られた橙/黄色スラリーを減圧下で80℃にて蒸発させて、DMFを取り除いた。酢酸エチル(4.25ml/g)を加え、そして反応混合液を10分間攪拌し、その後反応混合液をろ過した。得られたろ過ケーキを酢酸エチル(0.21ml/g)で洗浄し、そしてろ液を希塩類溶液(3.2ml/g)で洗浄し、続いて飽和塩類溶液(2.1ml/g)で2回洗浄させた。最後のろ液を次に減圧下で蒸発させて、77%の収率の暗茶/黒色油を示す527.7gの生成物を得た。NMR(CDCl3)データーは構造と一致した。
【0048】
上で例示された方法は、他のαβ-ジシアノプロピオナート誘導体を製造するために適用される。
【0049】
実施例3
5−アミノ−3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)ピラゾールの製造方法
EP0295117の参考実施例2に記載されるとおりに、5−アミノ−3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチル−フェニル)ピラゾールを、2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチル・アニリン及びエチル−2,3ジシアノプロピオナートから製造することができる。当該化合物は、4−置換-1−アリール・ピラゾール類の合成用の有用な開始物質であり、当該物質は、例えばEP0946515に記載される物質から、慣用の合成方法により得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I):
【化1】

[式中、
9は、C1-8アルキル、C3-8シクロアルキル、(CH2nPh、及び(CH2nヘテロアリール{ここで、n=0、1、又は2である}から選ばれ、当該基の各々は、ハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、C1-4アルコキシ、C1-4ハロアルコキシ、C1-4アルカノイル、C1-4ハロアルカノイル、C1-4アルキルスルフィニル、C1-4ハロアルキルスルフィニル、C1-4アルキルスルホニル、C1-4ハロアルキルスルホニル、C3-8シクロアルキル、及びC3-8ハロシクロアルキルから独立して選ばれる1以上の基により、任意の炭素原子上で場合により置換され;そして
9は水素でありうる]
で表される化合物の製造方法であって、当該方法が以下の式(II):
【化2】

[式中、R9は、上で定義される通りである]
で表されるシアノアセタートを、20℃を超えない温度で極性溶媒中においてホルムアルデヒド・シアノヒドリン及び無機塩基と反応させることを含む、前記方法。

【公表番号】特表2008−504361(P2008−504361A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518731(P2007−518731)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/IB2005/002038
【国際公開番号】WO2006/003501
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】