説明

ピラゾール誘導体およびサイクリン依存性キナーゼの阻害剤としてのその使用

本出願は、疾患の処置、予防および/または寛解に有用な式(I)の有機化合物、特に、蛋白質キナーゼを阻害するピラゾール化合物および誘導体を記載している。該有機化合物は、増殖性疾患の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、疾患に関連している酵素および他の生体分子の構造のより良い理解によって、新規治療薬の探索が非常に促進されている。詳細な研究の対象となっている酵素の一つの重要なクラスは、蛋白質キナーゼである。
【背景技術】
【0002】
蛋白質キナーゼは、細胞内の種々のシグナル伝達プロセスの制御を担う構造的に関連した酵素の大きなファミリーを構成する (Hardie, G. and Hanks, S. The Protein Kinase Facts Book, I and II, Academic Press, San Diego, Calif.: 1995)。蛋白質キナーゼは、その構造および触媒機能の保存により、共通の先祖遺伝子から進化したと考えられている。ほとんど全てのキナーゼは、類似の250〜300アミノ酸触媒ドメインを含む。キナーゼは、それらがリン酸化する基質(例えば蛋白質−チロシン、蛋白質−セリン/トレオニン、脂質など)によってファミリーに類別され得る。これらのキナーゼファミリーのそれぞれに全般的に対応する配列モチーフが同定されている(例えば Hanks, S. K., Hunter, T., FASEB J. 1995, 9, 576-596; Knighton et al., Science 1991, 253, 407-414; Hiles et al., Cell 1992, 70, 419-429; Kunz et al., Cell 1993, 73, 585-596; Garcia-Bustos et al., EMBO J. 1994, 13, 2352-2361を参照のこと。)。
【0003】
一般的に、蛋白質キナーゼは、三リン酸ヌクレオシドから、シグナル伝達経路に関与する蛋白質アクセプターへのホスホリル移動に作用することによって、細胞間シグナル伝達を媒介する。これらのホスホリル化事象は、標的蛋白質の生物学的機能を調節または制御し得る分子オン/オフスイッチとして作用する。これらのホスホリル化事象は、結局、種々の細胞外および他の刺激に応答して引き起こされる。このような刺激の例は、環境的および化学的ストレスシグナル(例えば浸透圧ショック、熱ショック、紫外線照射、細菌性内毒素およびH)、サイトカイン(例えばインターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子−α(TNF−α))、および、増殖因子(例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)および線維芽細胞増殖因子(FGF))を含む。細胞外刺激は、細胞増殖、移動、分化、ホルモン分泌、転写因子活性化、筋肉収縮、ブドウ糖代謝、蛋白質合成制御、および細胞周期制御に関連する1つ以上の細胞応答に影響を与え得る。
【0004】
多くの疾患は、上記の蛋白質キナーゼ介在事象によって引き起こされる異常な細胞応答に関連している。これらの疾患は、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨の疾患、代謝性疾患、神経学的および神経変性疾患、癌、心血管疾患、アレルギーおよび喘息、アルツハイマー病、およびホルモン関連疾患を含み、これらに限定されない。従って、治療薬として有効な蛋白質キナーゼ阻害剤を発見するために、医療化学において相当な努力がなされている。
【0005】
哺乳動物の細胞周期の開始、進行および完了は、細胞増殖に不可欠な種々のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)複合体によって制御されている。これらの複合体は、少なくとも1個の触媒的(CDK自身)および制御的(サイクリン)サブユニットを含む。細胞周期の制御においてより重要な幾つかの複合体は、サイクリン A(cdc2としても知られているCDK1およびCDK2)、サイクリン B1〜B3(CDK1)およびサイクリン D1〜D3(CDK2、CDK4、CDK5、CDK6)、サイクリン E(CDK2)を含む。これらの複合体はそれぞれ、細胞周期の特定の期に関与している。しかし、CDKファミリーのメンバーが全て、専ら細胞周期制御に関与しているわけではない。例えば、CDK7、CDK8およびCDK9は、転写の制御に関係しており、CDK5は、神経細胞および分泌細胞の機能において役割を果たす。
【0006】
CDKの活性は、他の蛋白質との一過性の結合によって、および、その細胞内局在化の変化によって、転写後に制御される。腫瘍の発症は、遺伝子変異およびCDKおよびそのレギュレーターの脱制御に密接に関連しており、このことは、CDKの阻害剤が、抗癌治療に有用であることを示唆している。実際、初期の結果は、形質転換させた細胞および正常細胞が、例えばサイクリン A/CDK2の必要性の点で異なることを示唆しており、また、慣用の細胞傷害性薬物および細胞増殖阻害薬で観察される全身的な宿主毒性がない新規の抗悪性腫瘍薬を開発できる可能性を示唆している。細胞周期関連CDKの阻害は、例えば腫瘍適用に明らかに関連しているが、RNAポリメラーゼ制御CDKの阻害は関連していないかもしれない。他方、CDK9/サイクリン T機能の阻害が、近年、HIV複製の予防と関連付けられ、従って、新規CDK生物学の発見がCDK阻害剤の新規の治療的適応を開拓し続けている(Sausville, E. A. Trends Molec. Med. 2002, 8, S32-S37)。
【0007】
CDKの機能は、例えば網膜芽細胞腫蛋白質、ラミン、ヒストンH1および紡錘体の構成要素を含む特定の蛋白質をリン酸化し、その結果、活性化または不活性化することである。CDKが媒介する触媒段階は、ATPから巨大分子酵素基質へのリン酸基転移を含む。幾つかのグループの化合物(例えばFischer, P. M. Curr. Opin. Drug Discovery Dev. 2001, 4, 623-634を参照のこと。)は、CDK特異的ATP拮抗のために、抗増殖特性を有することが見出されている。
【0008】
分子レベルで、cdk/サイクリン複合体活性の媒介には、一連の刺激性および阻害性リン酸化または脱リン酸化事象を必要とする。Cdkリン酸化は、cdk活性化キナーゼ(CAK)および/またはキナーゼ、例えばwee1、Myt1およびMik1のグループによって行われる。脱リン酸化は、ホスファターゼ、例えばcdc25(aおよびc)、pp2aまたはKAPによって行われる。
【0009】
Cdk/サイクリン複合体活性は、さらに、内因性細胞蛋白質性阻害剤の2つのファミリー:Kip/CipファミリーまたはINKファミリーによって制御され得る。INK蛋白質は、cdk4およびcdk6に特異的に結合する。p16ink4(MTS1としても知られる)は、多数の原発性癌において変異しているかまたは欠失している、潜在的な腫瘍抑制遺伝子である。Kip/Cipファミリーは、蛋白質、例えばp21Cip1,Waf1、p27Kip1およびp57kip2を含む。先に論じた通り、p21は、p53によって誘発され、cdk2/サイクリン(E/A)およびcdk4/サイクリン(D1/D2/D3)複合体を活性化することができる。異常に低いレベルのp27発現が、乳癌、大腸癌および前立腺癌で観察されている。逆に、固形腫瘍において、サイクリン Eの過剰発現は、患者の予後の悪さと相関していることが示されている。サイクリン D1の過剰発現は、食道癌、乳癌、扁平上皮癌および非小細胞肺癌に関連している。
【0010】
増殖細胞の細胞周期の調節および駆動におけるcdkおよびその関連蛋白質の中心的役割は、上で概略されている。また、cdkが重要な役割を果たす幾つかの生化学的経路も記載されている。従って、cdk全般または特定のcdkを標的とした治療を用いた、増殖障害、例えば癌の単剤治療の開発が、潜在的に非常に望ましい。Cdk阻害剤はまた、とりわけ、ウイルス感染、自己免疫性疾患および神経変性疾患のような他の疾患を処置するために用いられ得ると考えられる。Cdk標的治療はまた、現行の、または新規の治療薬との組み合わせ治療に用いられるとき、前記の疾患の処置に臨床的利益を提供し得る。Cdk標的抗癌治療は、DNAと直接相互作用せず、その結果、二次的な腫瘍発症のリスクが軽減されるために、多くの現行の抗腫瘍剤に対して潜在的に利点を有する。
【0011】
このように、ヒトの疾患を処置するための新規の治療薬を発見する必要性が引き続き存在する。従って、蛋白質キナーゼ、例えばCDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8およびCDK9の阻害剤の開発に対する必要性が大きい。
【発明の概要】
【0012】
本発明の概要
蛋白質キナーゼ関連障害のための新規の処置および治療の必要性が残存している。また、癌、移植拒絶反応および自己免疫性疾患の1個以上の症候を処置または予防または寛解するのに有用な化合物の必要性がある。さらに、本明細書で提供される化合物を用いた、蛋白質キナーゼ、例えばCDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8およびCDK9の活性を調節する方法の必要性がある。一つの局面において、本発明は、式Ia:
【化1】

[式中、
1aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、アルキルアリール、アルコキシ、アルキルシクロアルキル、ヒドロキシル、het、アルキルhet、アリールシクロアルキル、hetシクロアルキル、C(0−6)11a12a、シクロアルキルアリール、またはシクロアルキルhetであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
2aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロ、CN、CONH、アルキル、またはシクロアルキルであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
3aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、het、ヒドロキシル、ハロ、CN、CHO、OR7a、NHR7a、NHSO7a、NHCONHR7a、NHCOOR7a、CHOR7a、CONR8a9aであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
7a、R8a、およびR9aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、het、アリールであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
Xaは、NまたはCR10a(ここで、R10aは、H、ハロゲン、アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。)であり;
4aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、het、またはハロであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
13aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはC(0−6)11a12aであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく、
11aおよびR12aは、独立して、H、結合、NH(0−2)、−O−、ヒドロキシル、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、C(O)C(0−6)、アルコキシ、ハロ、シクロアルキル、het、C(O)OC(0−6)、CNであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
hetは、N、O、およびSから選択される1〜4個の環ヘテロ原子を含む、芳香族性であっても非芳香族性であってもよい5〜7員の単環式ヘテロ環式環であるか;あるいは、N、OおよびSから選択される1、2、または3個の環ヘテロ原子を含む芳香族性であっても非芳香族性であってもよい5〜7員のヘテロ環式環を1個含む、8〜12員の縮合環系であり、ここで、hetは、非置換であるか、あるいは置換されており;
1a、R2a、R3a、R4a、R7a、R8a、R9a、R11a、R12a、およびR13aは、1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、シクロアルキル、ハロ、アルコキシ、het、アリール、アルキルアリール、ヒドロキシル、CF、COOアルキル、CR3a、およびカルボニルで置換されていてもよい。]
の化合物を提供する。
【0013】
他の局面において、本発明は、式I:
【化2】

[式中、
は、C1−6−アルキル、C3−14−シクロアルキル、3〜14員シクロヘテロアルキル基、C6−14アリール、C1−6−アルコキシ、C1−6アルキルC6−14アリール、C1−6アルキルC3−14シクロアルキル、C1−6アルキル−3〜14員シクロヘテロアルキル基、C1−6アルキル−5〜14員ヘテロアリール基、C1−6アルキルOR、C1−6アルキルNR、C1−6アルコキシC6−14アリール、C1−6アルキルCN、またはC1−6アルキルC(O)ORであり、これらは、非置換であっても、1個以上のC1−6−アルキル、C6−14−アリール、ヒドロキシル、C1−6−アルキルハロ、C1−6アルコキシハロ、ハロ、C1−6−アルコキシ、C1−6アルキルC6−14アリール、C(O)OR、CN、オキソ、またはNR10で置換されていてもよく;
は、H、C1−6−アルキル、C2−6−アルケニル、C2−6−アルキニル、ヒドロキシル、またはハロであり;
およびRは、独立して、H、C1−6−アルキル、C3−14−シクロアルキル、またはハロであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
、R、R、R、R、およびR10は、独立して、水素、C1−6−アルキル、C2−6−アルケニル、C2−6−アルキニル、C3−14−シクロアルキル、5〜14員のヘテロアリール基、C6−14−アリール、C(O)OR11、またはC(O)R11であり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
Xは、NまたはCR12であり;
11およびR12は、独立して、H、ハロゲン、またはC1−6−アルキルである。]
の化合物または薬学的に許容される塩を提供する。
【0014】
本発明の一つの局面において、蛋白質キナーゼは、蛋白質チロシンキナーゼである。一つの態様において、蛋白質キナーゼは、abl、ATK、ber−abl、Blk、Brk、Btk、c−fms、e−kit、c−met、c−src、CDK、cRafl、CSFIR、CSK、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、ERK、Fak、fes、FGFRI、25 FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFR5、Fgr、FLK−4、flt−1、Fps、Frk、Fyn、GSK、Gst−Flkl、Hck、Her−2、Her−4、IGF−lR、INS−R、Jak、JNK、KDR、Lck、Lyn、MEK、p38、PANHER、PDGFR、PLK、PKC、PYK2、Raf、Rho、ros、SRC、t'eII t'e2、TRK、TYK2、UL97、VEGFR、Yes、およびZap70からなる群から選択される。他の態様において、該蛋白質キナーゼは、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8およびCDK9からなる群から選択される。また、他の態様において、蛋白質キナーゼは、CDK4である。
【0015】
本発明の他の局面において、蛋白質キナーゼは、細胞培養物中のものである。また、他の局面において、蛋白質キナーゼは、哺乳動物中のものである。
【0016】
他の局面において、本発明は、蛋白質キナーゼ関連障害を処置する方法であって、蛋白質キナーゼ関連障害を処置するために、処置を必要とする対象に、薬学的に許容される量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。一つの態様において、蛋白質キナーゼは、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、およびCDK9からなる群から選択される。特定の態様において、蛋白質キナーゼは、CDK4である。
【0017】
他の局面において、本発明は、セリントレオニンキナーゼ関連障害を処置する方法であって、セリントレオニンキナーゼ関連障害を処置するために、処置を必要とする対象に、薬学的に許容される量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。一つの態様において、該障害は、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8、およびCDK9からなる群から選択される。特定の態様において、蛋白質キナーゼはCDK4である。
【0018】
他の態様において、蛋白質キナーゼ関連障害は、血管増殖性障害、線維性障害、メサンギウム細胞増殖性障害、代謝障害、アレルギー、喘息、血栓症、神経系疾患および癌からなる群から選択される。
【0019】
他の態様において、蛋白質キナーゼ関連障害は、癌である。また、他の態様において、癌は、乳癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌、肺癌、脳の癌、喉頭癌、リンパ系の癌、泌尿生殖器の癌(膀胱癌および前立腺癌を含む)、骨の癌、および膵臓癌からなる群から選択される。
【0020】
他の態様において、蛋白質キナーゼ関連障害は、臓器移植拒絶反応、異種移植、狼瘡、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、1型糖尿病および糖尿病由来合併症、癌、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫性甲状腺障害、潰瘍性大腸炎、クローン病、アルツハイマー病および白血病からなる群から選択される。
【0021】
また、別の態様において、該疾患は、免疫応答、自己免疫性疾患、神経変性疾患、または、固形悪性腫瘍または血液悪性腫瘍から選択される。また、他の態様において、該疾患は、アレルギー反応またはI型過敏反応、喘息、移植片対宿主病、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症、白血病、またはリンパ腫から選択される。
【0022】
他の局面において、本発明は、自己免疫性疾患を処置する方法であって、自己免疫性疾患を処置するために、処置を必要とする対象に、薬学的に許容される量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。一つの態様において、自己免疫性疾患は、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性新生児血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性血球減少症、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、心筋炎、再発性多発軟骨炎、リウマチ性心疾患、糸球体腎炎、多発性硬化症、神経炎、ブドウ膜眼炎、多腺性内分泌障害、紫斑病、ライター病、全身硬直症候群、自己免疫性肺炎症、自閉症、ギラン・バレー症候群、インシュリン依存性糖尿病、自己免疫性炎症性眼疾患、自己免疫性甲状腺炎、甲状腺機能低下症、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、天疱瘡、受容体自己免疫、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、混合性結合組織病、多発性筋炎/皮膚筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、不妊症、糸球体腎炎、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、真性糖尿病、アドレナリン作用薬耐性、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、血管炎、心筋梗塞後、心術後症候群、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息、炎症性筋疾患、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変およびT細胞介在過敏症疾患からなる群から選択される。
【0023】
他の局面において、本発明は、癌を処置する方法であって、癌性疾患または障害を処置するために、処置を必要とする対象に、薬学的に許容される量の式Iの化合物を投与することを含む方法を提供する。一つの態様において、癌は、膀胱癌、頭頚部癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、大腸癌、肺癌、脳の癌、喉頭癌、リンパ系の癌、泌尿生殖器の癌、消化器の癌、前立腺癌、骨の癌、小細胞肺癌、神経膠腫、結腸直腸癌および膵臓癌からなる群から選択される。
【0024】
本発明の他の局面において、式Iの化合物またはその塩は、抗炎症剤、抗増殖剤、化学療法剤、免疫抑制剤、抗癌剤、細胞傷害性薬物、または式Iの化合物またはその塩以外のキナーゼ阻害剤と、同時にまたは連続して投与される。一つの態様において、式Iの化合物またはその塩は、PTK阻害剤、シクロスポリン A、CTLA4−Ig、抗ICAM−3抗体、抗IL−2受容体抗体、抗CD45RB抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD80抗体、抗CD86抗体およびモノクローナル抗体OKT3から選択される抗体、CD40とgp39の間の相互作用を遮断する薬物、CD40およびgp39から構成される融合蛋白質、NF−κB機能阻害剤、非ステロイド抗炎症剤、ステロイド、金化合物、抗増殖剤、FK506、ミコフェノール酸モフェチル、細胞傷害性薬物、TNF−α阻害剤、抗TNF抗体または可溶性TNF受容体、ラパマイシン、レフルノミド、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、マイトマイシン C、エクチナサイジン 743、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン(leurosidine)、エポチロン、ビンデシン、ロイロシン(leurosine)またはそれらの誘導体の1種以上と、同時にまたは連続して投与される。
【0025】
他の局面において、本発明は、蛋白質キナーゼ関連障害処置パッケージであって、該処置が、蛋白質キナーゼ関連障害を処置するのに有効な量の蛋白質キナーゼ調節化合物を用いるための指示書と共に包装された式Iの蛋白質キナーゼ調節化合物を含む処置パッケージを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の詳細な説明
本発明は、化合物、例えばピラゾリルピリジンおよびピラゾリルピリミジン化合物、ならびにその中間体、ならびに蛋白質キナーゼ関連障害の処置に使用するための本化合物を含む医薬組成物を目的とする。本発明はまた、Jak1、Jak2およびJak3、ならびにCDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8およびCDK9のモジュレーターとしての、本発明の化合物またはその組成物を目的とする。本発明はまた、細胞において、蛋白質キナーゼ活性を阻害するための組み合わせ治療の方法、あるいは、本発明の化合物またはその医薬組成物またはキットを用いて、患者において、癌、移植拒絶反応および自己免疫性疾患の1つ以上の症候を処置、予防または寛解するための組み合わせ治療の方法を目的とする。
【0027】
一つの局面において、本発明は、式Ia:
【化3】

[式中、
1aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキル、アルキルアリール、アルコキシ、アルキルシクロアルキル、ヒドロキシル、het、アルキルhet、アリールシクロアルキル、hetシクロアルキル、C(0−6)11a12a、シクロアルキルアリール、またはシクロアルキルhetであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
2aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシル、ハロ、CN、CONH、アルキル、またはシクロアルキルであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
3aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、het、ヒドロキシル、ハロ、CN、CHO、OR7a、NHR7a、NHSO7a、NHCONHR7a、NHCOOR7a、CHOR7a、CONR8a9aであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
7a、R8a、およびR9aは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、het、アリールであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
Xaは、NまたはCR10a(ここで、R10aは、H、ハロゲン、アルキル、アルケニル、またはアルキニルである。)であり;
4aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、het、またはハロであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
13aは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、またはC(0−6)11a12aであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく、
11aおよびR12aは、独立して、H、結合、NH(0−2)、−O−、ヒドロキシル、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、C(O)C(0−6)、アルコキシ、ハロ、シクロアルキル、het、C(O)OC(0−6)、CNであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
hetは、N、O、およびSから選択される1〜4個の環ヘテロ原子を含む、芳香族性であっても非芳香族性であってもよい5〜7員の単環式ヘテロ環式環であるか;あるいは、N、OおよびSから選択される1、2、または3個の環ヘテロ原子を含む芳香族性であっても非芳香族性であってもよい1個の5〜7員のヘテロ環式環を含む、8〜12員の縮合環系であり、ここで、hetは、非置換であるか、あるいは置換されており;
1a、R2a、R3a、R4a、R7a、R8a、R9a、R11a、R12a、およびR13aは、1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルアリール、シクロアルキル、ハロ、アルコキシ、het、アリール、アルキルアリール、ヒドロキシル、CF、COOアルキル、CR3a、およびカルボニルで置換されていてもよい。]
の化合物を提供する。
【0028】
一つの態様において、本発明は、R1aが、het、シクロアルキルアリール、アルキルアリール、C(0−6)11a12a、またはアルキルhetであり、これらが置換されていても非置換であってもよく、R13aがHである、式Iaの化合物を含む。
【0029】
他の態様において、本発明は、R1aが、hetまたはシクロアルキルアリールであり、これらが置換されていても非置換であってもよく;R2aが、H、ハロ、またはアルキルであり、ここで、アルキルが置換されていても非置換であってもよく;R3aがHまたはアルキルであり、ここで、アルキルが置換されていても非置換であってもよく;R4aが、アルキルまたはシクロアルキルであり、これらが置換されていても非置換であってもよい、式Iaの化合物を含む。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、
1aが、
【化4】

から選択され、
3aが、メチルまたはイソプロピルである、
式Iaの化合物を含む。
【0031】
他の局面において、本発明は、式I:
【化5】

[式中、
は、C1−6−アルキル、C3−14−シクロアルキル、3〜14員シクロヘテロアルキル基、C6−14アリール、C1−6−アルコキシ、C1−6アルキルC6−14アリール、C1−6アルキルC3−14シクロアルキル、C1−6アルキル−3〜14員シクロヘテロアルキル基、C1−6アルキル−5〜14員ヘテロアリール基、C1−6アルキルOR、C1−6アルキルNR、C1−6アルコキシC6−14アリール、C1−6アルキルCN、またはC1−6アルキルC(O)ORであり、これらは、非置換であっても、1個以上のC1−6−アルキル、C6−14−アリール、ヒドロキシル、C1−6−アルキルハロ、C1−6アルコキシハロ、ハロ、C1−6−アルコキシ、C1−6アルキルC6−14アリール、C(O)OR、CN、オキソ、またはNR10で置換されていてもよく;
は、H、C1−6−アルキル、C2−6−アルケニル、C2−6−アルキニル、ヒドロキシル、またはハロであり;
およびRは、独立して、H、C1−6−アルキル、C3−14−シクロアルキル、またはハロであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
、R、R、R、RおよびR10は、独立して、水素、C1−6−アルキル、C2−6−アルケニル、C2−6−アルキニル、C3−14−シクロアルキル、5〜14員のヘテロアリール基、C6−14−アリール、C(O)OR11、またはC(O)R11であり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
Xは、NまたはCR12(ここで、R11およびR12は、独立して、H、ハロゲン、またはC1−6−アルキルである。)である。]
の化合物または薬学的に許容される塩を提供する。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、Rが、C1−6−アルキル、C3−14−シクロアルキル、C6−14アリール、3〜14員シクロヘテロアルキル基、C1−6アルキルC6−14アリール、C1−6アルキルC3−14シクロアルキル、C1−6アルキル−3〜14員シクロヘテロアルキル基、またはC1−6アルキル−5〜14員ヘテロアリール基であり、これらは、非置換であっても、1個以上のC1−6−アルキル、C6−14−アリール、ヒドロキシル、C1−6−アルキルハロ、ハロ、C1−6−アルコキシ、C1−6アルキルC6−14アリールで置換されていてもよい、式Iの化合物を含む。
【0033】
式Iの化合物の他の好ましい態様において、Rは、C3−14−シクロアルキル、C6−14アリール、3〜14員のシクロヘテロアルキル基、C1−6アルキルC6−14アリール、またはC1−6アルキルC3−14シクロアルキルであり、これらは、非置換であっても、1個以上のC1−6−アルキルまたはC6−14−アリールで置換されていてもよい。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、
が、
【化6】

から選択され;
が、メチルまたはイソプロピルである、
式Iaの化合物を含む。
【0035】
式Iの化合物の他の好ましい態様において、RおよびRは、独立して、H、C1−6−アルキル、またはC3−14−シクロアルキルである。
式Iの化合物の他の好ましい態様において、RおよびRの一方がHであり、RおよびRの他方がC1−6−アルキル、またはC3−14−シクロアルキルである。
式Iの化合物の他の好ましい態様において、RはHであり、Rは、メチル、エチルまたはプロピルである。他の好ましい態様において、Rはイソプロピルである。
【0036】
式Iについての記載はまた、式Iaについても言及することを意図しており、かつ、式Iaについての記載はまた、式Iについても言及することを意図していると認識される。
【0037】
式Iの化合物の他の好ましい態様において、Xは、NまたはCHである。式Iの化合物の他の好ましい態様において、XはNである。
【0038】
他の態様において、本発明は、治療有効量の式IまたはIaの化合物を含む医薬組成物を含む。
他の態様において、本発明は、医薬、特に癌用医薬における、式IまたはIaの化合物を含む。
【0039】
他の態様において、本発明は、増殖性疾患に罹患している哺乳動物を処置する方法であって、処置を必要とする哺乳動物に、治療有効量の式IまたはIaの化合物を投与することを含む方法を含む。また、他の態様において、本発明は、細胞増殖を阻害する方法であって、細胞増殖の阻害に有効な量の式IまたはIaの化合物を、処置を必要とする細胞または哺乳動物に投与することを含む方法を含む。
【0040】
特定の態様において、本発明の化合物は、さらに、abl、ATK、ber−abl、Blk、Brk、Btk、c−fms、e−kit、c−met、c−src、CDK、cRafl、CSFIR、CSK、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、ERK、Fak、fes、FGFRI、25 FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFR5、Fgr、FLK−4、flt−1、Fps、Frk、Fyn、GSK、Gst−Flkl、Hck、Her−2、Her−4、IGF−lR、INS−R、Jak、JNK、KDR、Lck、Lyn、MEK、p38、PANHER、PDGFR、PLK、PKC、PYK2、Raf、Rho、ros、SRC、t'eII t'e2、TRK、TYK2、UL97、VEGFR、YesおよびZap70からなる群から選択される蛋白質キナーゼを含む(これらに限定されない)、蛋白質キナーゼのモジュレーターとして特徴付けられる。
【0041】
好ましい態様において、該蛋白質キナーゼは、CDK1、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK8およびCDK9からなる群から選択される。他の好ましい態様において、該蛋白質キナーゼは、Jak1、Jak2およびJak3からなる群から選択される。特に好ましい態様において、該蛋白質キナーゼは、Jak3およびCDK4からなる群から選択される。
【0042】
他の態様において、本発明の化合物は、蛋白質キナーゼ関連障害を処置するために用いられる。本明細書で用いられるとき、“蛋白質キナーゼ関連障害”という用語は、蛋白質キナーゼ、例えばCDK4およびJak3の活性に関連している障害および状態(例えば疾病状態)を含む。蛋白質キナーゼ関連障害の非限定的な例は、血管増殖性障害、線維性障害、メサンギウム細胞増殖性障害、代謝障害、アレルギー、喘息、血栓症、神経系疾患、臓器移植拒絶反応、自己免疫性疾患および癌を含む。他の態様において、本発明の化合物は、さらに、蛋白質キナーゼ、例えばJak3およびCDK4の組み合わせのモジュレーターとして特徴付けられる。
【0043】
特定の態様において、本発明の化合物は、蛋白質キナーゼ関連疾患のために用いられる。1種以上の蛋白質キナーゼの阻害剤としての本発明の化合物の使用。使用は、蛋白質キナーゼの1種以上のアイソフォームを阻害する処置であってもよいと考えられる。
【0044】
本発明の化合物は、サイクリン依存性キナーゼ酵素(CDK)の阻害剤である。理論に束縛されることなく、CDK4/サイクリン D1の複合体の阻害が、Rb/不活性型E2F複合体のリン酸化をブロックし、それにより、活性化されたE2Fの放出が妨げられ、最終的に、E2F依存性DNA転写がブロックされる。このことは、G細胞周期の阻止を誘発する効果を有する。特に、CDK4経路は、腫瘍特異的脱制御および細胞傷害効果を有することが示されている。
【0045】
さらに、本発明の化合物は、自己反応性またはアロ反応性T細胞の増殖を阻止する能力を有し、その結果、自己免疫性疾患ならびに移植拒絶反応に有益な効果を有する。
【0046】
本発明は、癌、移植拒絶反応および自己免疫性疾患、ならびに上記の蛋白質キナーゼ関連障害の1つ以上の症候の処置を含むが、本発明は、本化合物が、疾患の処置の意図された機能を発揮することによる方法に限定されることを意図しない。本発明は、例えば癌、移植拒絶反応および自己免疫性疾患に対する処置を行うことを可能とする全ての方法での本明細書で記載された疾患の処置を含む。
【0047】
特定の態様において、本発明は、本発明の化合物の何れかの医薬組成物を提供する。関連の態様において、本発明は、何れかの本発明の化合物および薬学的に許容される担体または賦形剤の医薬組成物を提供する。特定の態様において、本発明は、新規化学化合物である化合物を含む。
【0048】
一つの態様において、本発明は、蛋白質キナーゼ関連障害処置パッケージを含む。処置パッケージは、有効量の本発明の化合物を意図された使用に用いるための指示書と共に包装された、本発明の化合物を含む。
【0049】
本発明の化合物は、特に蛋白質キナーゼ関連障害、例えば癌、移植拒絶反応および自己免疫性疾患を処置するのに有効である医薬組成物中の有効成分として適切である。種々の態様において、医薬組成物は、他の薬学的に許容される賦形剤、担体、充填剤、希釈剤などと共に、薬学的に有効な量の本発明の活性な薬物を有する。フレーズ“薬学的に有効な量”は、本明細書で用いるとき、治療的効果を達成するために、特に、蛋白質キナーゼ活性を制御する、調節するまたは阻害するために、例えば蛋白質キナーゼ活性を阻害するために、あるいは、癌、移植拒絶反応または自己免疫性疾患を処置するために、宿主、または宿主の細胞、組織もしくは臓器に投与するのに必要な量を示す。
【0050】
他の態様において、本発明は、蛋白質キナーゼの活性を阻害する方法を提供する。該方法は、細胞を、本発明の化合物の何れかと接触させることを含む。関連の態様において、該方法は、さらに、本化合物が、蛋白質キナーゼの活性を選択的に阻害するのに有効な量で存在することを規定する。
【0051】
他の態様において、本発明は、対象において、癌、移植拒絶反応または自己免疫性疾患を処置する医薬を製造するための、本発明の化合物の何れかの使用を提供する。
【0052】
他の態様において、本発明は、本発明の化合物の何れかの製剤化を含む、対象を処置するための医薬の製造方法を提供する。
【0053】
定義
用語“処置する”、“処置された”、“処置すること”または“処置”は、処置される状態、障害または疾患に関連する、または、それによって引き起こされる少なくとも1つの症候を軽減するまたは緩和することを含む。特定の態様において、該処置は、蛋白質キナーゼ関連障害を誘発し、その後本発明の化合物を活性化し、それが続いて処置される蛋白質キナーゼ関連障害に関連する、または、それによって引き起こされる少なくとも1つの症候を軽減するまたは緩和することを含む。例えば、処置は、障害の1つまたは複数の症候の軽減または障害の完全な根絶であり得る。
【0054】
用語“対象”は、蛋白質キナーゼの活性に関連した疾患、障害または状態に罹患し得る、または悩まされている生物、例えば原核生物および真核生物を含むことを意図している。対象の例は、哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラットおよびトランスジェニック非ヒト動物を含む。特定の態様において、対象はヒトであり、例えば癌、移植拒絶反応および自己免疫性疾患、および本明細書に記載された他の疾患または状態に罹患している、罹患するリスクがある、または潜在的に罹患し得るヒトである。他の態様において、対象は細胞である。
【0055】
用語“蛋白質キナーゼ調節化合物”、“蛋白質キナーゼのモジュレーター”または“蛋白質キナーゼ阻害剤”は、蛋白質キナーゼの活性を、調節する、例えば阻害するまたは他の方法で変化させる化合物を言う。蛋白質キナーゼ調節化合物の例は、式Iの化合物、ならびに表1および2の化合物、および本明細書に記載された他の実施例の化合物(その薬学的に許容される塩、ならびにそれらのエナンチオマー、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、アトロプ異性体またはラセミ化合物を含む)を含む。
【0056】
さらに、本発明の方法は、対象に、有効量の本発明の蛋白質キナーゼ調節化合物、例えば式Iの蛋白質キナーゼ調節化合物、ならびに表1および2の化合物、および本明細書で記載された他の例(その薬学的に許容される塩、ならびにそれらのエナンチオマー、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ジアステレオマー、アトロプ異性体、またはラセミ化合物を含む)を投与することを含む。
【0057】
用語“アルキル”は、本明細書で用いられるとき、直鎖アルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、分枝鎖アルキル基(イソプロピル、tert−ブチルなど)、シクロアルキル(脂環式)基(シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル)、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基を含む。
【0058】
本明細書で用いられるとき、“シクロアルキル”は、環化アルキル、アルケニルおよびアルキニル基を含む、非芳香族性炭素環基を言う。シクロアルキル基は、単環式(例えばシクロヘキシル)であっても多環式(例えば縮合環系、架橋環系、および/またはスピロ環系を含む)であってもよく、ここで、炭素原子は、環系の内側または外側に位置する。シクロアルキル基は、全体として、3から14個の環原子(例えば単環式シクロアルキル基については3から8個の炭素原子、多環式シクロアルキル基については7から14個の炭素原子)を有し得る。シクロアルキル基の何れかの適当な環の位置で、規定された化学構造と共有結合で結合し得る。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルボルニル、ノルピニル、ノルカリル、アダマンチル、およびスピロ[4.5]デカニル基、ならびにこれらのホモログ、異性体などを含む。幾つかの態様において、シクロアルキル基は、所望により、−L'−Rおよび−L'−R10(ここで、L'、R、およびR10は、本明細書で記載された通りである。)から独立して選択される4個までの基で置換されていてもよい。例えば、シクロアルキル基は、1個以上のオキソ基で置換されていてもよい。
【0059】
本明細書で用いられるとき、“ヘテロ原子”は、炭素または水素以外の何れかの元素を言い、例えば、窒素、酸素、硫黄、リンおよびセレンを含む。
【0060】
本明細書で用いられるとき、“シクロヘテロアルキル”は、O、N、およびSから選択される少なくとも1個(例えば1個、2個、3個、4個または5個)の環ヘテロ原子を含み、かつ、所望により1個以上の(例えば1個、2個、または3個)の二重結合または三重結合を含む非芳香族性シクロアルキル基を言う。シクロヘテロアルキル基は、全体として、1から5個の環ヘテロ原子を含む3から14個の環原子を有していてもよい(例えば単環式シクロヘテロアルキル基については3〜6個の環原子、そして多環式シクロヘテロアルキル基については7から14個の環原子)。シクロヘテロアルキル基は、結果として安定な構造を生じる定義された化学構造に、何れかのヘテロ原子(複数を含む)または炭素原子(複数を含む)で共有結合していてもよい。シクロヘテロアルキル環中の1個以上のNまたはS原子は、酸化されていてもよい(例えばモルホリン N−オキシド、チオモルホリン S−オキシド、チオモルホリン S,S−ジオキシド)。幾つかの態様において、シクロヘテロアルキル基の窒素原子は、置換基、例えば、−L'−Rまたは−L'−R10基(ここで、L'、R、およびR10は、本明細書で記載した通りである。)を有していてもよい。シクロヘテロアルキル基はまた、1個以上のオキソ基を含んでもよく、例えばフタルイミジル、ピペリドニル、オキサゾリジノニル、2,4(1H,3H)−ジオキソ−ピリミジニル、ピリジン−2(1H)−オニルであってもよい。シクロヘテロアルキル基の例は、とりわけ、モルホリニル、チオモルホリニル、ピラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、オキサゾリジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピロリジニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピペリジニル、ピペラジニルなどを含む。幾つかの態様において、シクロヘテロアルキル基は、所望により、−L'−Rおよび−L'−R10(ここで、L'、R、およびR10は、本明細書で記載した通りである。)から独立して選択される4個までの基で置換されていてもよい。
【0061】
本明細書で用いられるとき、“アリール”は、芳香族性単環式炭化水素環系、または、少なくとも1個の環系中の環が芳香族性炭化水素環であって、それ以外の環系中の芳香環も炭化水素のみを含む多環式環系を言う。幾つかの態様において、単環式アリール基は、6から14個の炭素原子を有していてもよく、多環式アリール基は、8から14個の炭素原子を有していてもよい。アリール基は、何れかの炭素原子(複数を含む)で定義された化学構造に共有結合して、安定な構造を生じ得る。幾つかの態様において、アリール基は、芳香族性炭素環式環のみを有していてもよく、例えばフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル基などである。他の態様において、アリール基は、少なくとも1個の芳香族性炭素環式環が1個以上のシクロアルキルまたはシクロヘテロアルキル環と縮合している(すなわち共通している1個の結合を有する)、多環式環系であってもよい。このようなアリール基の例は、とりわけ、シクロペンタンのベンゾ誘導体(すなわち5,6−二環式シクロアルキル/芳香環系であるインダニル基)、シクロヘキサンのベンゾ誘導体(すなわち6,6−二環式シクロアルキル/芳香環系であるテトラヒドロナフチル基)、イミダゾリンのベンゾ誘導体(すなわち5,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香環系であるベンゾイミダゾリニル基)、および、ピランのベンゾ誘導体(すなわち6,6−二環式シクロヘテロアルキル/芳香環系であるクロメニル基)を含む。アリール基の他の例は、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、インドリニル基などを含む。幾つかの態様において、アリール基はそれぞれ、所望により、−L'−Rおよび−L'−R10(ここで、L'、RおよびR10は、本明細書で記載された通りである。)から独立して選択される、4個までの基で置換されていてもよい。
【0062】
本明細書で用いられるとき、“ヘテロアリール”は、O、NおよびSから選択される少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む芳香族性単環式環系、または、環系中の少なくとも1個の環が芳香族性であって、少なくとも1個の環ヘテロ原子を含む多環式環系を言う。ヘテロアリール基は、全体として、5から14個の環原子を有していてもよく、1〜5個の環ヘテロ原子を含んでいてもよい。幾つかの態様において、ヘテロアリール基は、1個以上の芳香族性炭素環式環、非芳香族性炭素環式環、または非芳香族性シクロヘテロアルキル環と縮合している単環式ヘテロアリール環を含んでいてもよい。ヘテロアリール基は、何れかのヘテロ原子または炭素原子で定義された化学構造に共有結合して、安定な構造を生じ得る。一般的に、ヘテロアリール環は、O−O、S−SまたはS−O結合を含まない。しかし、ヘテロアリール基中の1個以上のNまたはS原子は、酸化されていてもよい(例えばピリジン N−オキシド、チオフェン S−オキシド、チオフェン S,S−ジオキシド)。ヘテロアリール基の例は、例えば次に示された5員および6員の単環式環系および5員〜6員の二環式環系を含む:
【化7】

ここで、Tは、O、S、NH、N−L'−R、またはN−L'−R10(ここで、L'、RおよびR10は、本明細書で定義された通りである。)である。このようなヘテロアリール環の例は、ピロリル、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、キノリル、2−メチルキノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、シンノリニル、1H−インダゾリル、2H−インダゾリル、インドリジニル、イソベンゾフリル、ナフチリジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、オキサゾロピリジニル、チアゾロピリジニル、イミダゾピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ピリドピリミジニル、ピリドピラジニル、ピリドピリダジニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル基などを含む。ヘテロアリール基のさらなる例は、4,5,6,7−テトラヒドロインドリル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾチエノピリジニル、ベンゾフロピリジニル基などを含む。幾つかの態様において、ヘテロアリール基は、−L'−Rまたは−L'−R10(ここで、L'、R、よびR10は、本明細書で記載された通りである。)から独立して選択される4個までの基で置換されていてもよい。
【0063】
2個の置換基が、共に結合している窒素と一体となってhetであるとき、得られるヘテロ環式環は、窒素含有環、例えばアジリジン、アゼチジン、アゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン(morphiline)、ピロール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン、イソオキサゾールなどであると理解される。ここで、当該hetは、非置換であっても、上で定義された通りに置換されていてもよい。
【0064】
“Het”は、本明細書で用いられるとき、少なくとも1個のS、OまたはN環ヘテロ原子を含むヘテロアリールおよびヘテロ環式化合物を言う。より具体的には、“Het”は、N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む5〜7員のヘテロ環式環であるか、あるいは、N、OおよびSから選択される1個、2個もしくは3個のヘテロ原子を含む少なくとも1個の5〜7員のヘテロ環式環を含む8〜12員の縮合環系である。hetの例は、本明細書で用いられるとき、非置換および置換ピロリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフリル、ピペリジル、ピペラジル、プリニル、テトラヒドロピラニル、モルホリノ、1,3−ジアゼパニル(diazapanyl)、1,4−ジアゼパニル(diazapanyl)、1,4−オキサゼパニル、1,4−オキサチアパニル(oxathiapanyl)、フリル、チエニル、ピリル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、インダゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ピロリジル、ピロリジニル、チアゾリル、オキサゾリル、ピリジル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、ピリドピラジニル、ピロロピリジル、フロピリジル、インドリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフリル、ベンゾインドリル、ベンゾチエニル、ピラゾリル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル、モルホリニル、ベンゾオキサゾリル、ピロロキノリル、ピロロ[2,3−b]ピリジニル、ベンゾトリアゾリル、オキソベンゾオキサゾリル、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ベンゾイミダゾリル、キノリニル、インダニルなどを含み、これらに限定されない。ヘテロアリールは、hetの定義の範囲内である。ヘテロアリールの例は、ピリジル、ピリミジニル、キノリル、チアゾリルおよびベンゾチアゾリルである。最も好ましいhetは、ピリジル、ピリミジニルおよびチアゾリルである。hetは、非置換であっても、本明細書で定義された通りに置換されていてもよい。それは、置換されていないか、あるいは、置換されているならば、ハロゲン、特にフッ素または塩素、ヒドロキシ、C−Cアルキル、例えばメチルもしくはエチル、C−Cアルコキシ、特にメトキシもしくはエトキシ、ニトロ、−O−C(O)−C−Cアルキルまたは−C(O)−O−C−Cアルキル、SCNまたはニトロによって、炭素原子上で置換されているか、あるいは、C−Cアルキル、特にメチルもしくはエチル、−O−C(O)−C−Cアルキルまたは−C(O)−O−C−Cアルキル、例えばカルボメトキシもしくはカルボエトキシによって、窒素原子上で置換されていることが好ましい。
【0065】
2個の置換基が、共に結合している窒素と一体となってhetであるとき、得られるヘテロ環式環は、窒素含有環、例えばアジリジン、アゼチジン、アゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン(morphiline)、ピロール、ピラゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン、イソオキサゾールなどであると理解される。ここで、当該hetは、非置換であっても、上で定義された通りに置換されていてもよい。
【0066】
“ハロ”またはハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、特に、フッ素および塩素である。
【0067】
特記しない限り、上記またはその組み合わせの何れかの“アルキル”は、直鎖または分枝鎖アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチルおよび分枝鎖ペンチル、n−ヘキシルおよび分枝鎖ヘキシルなどを含む。
非置換とは、水素が唯一の置換基であることを意味することを意図している。
【0068】
本明細書で記載されたものを除いて、上で定義された何れのアリール、het、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはシクロアルキルも、非置換であっても、ハロ(例えばClまたはBr);ヒドロキシ;低級アルキル(例えばC−Cアルキル);本明細書で定義された置換基の何れかで置換されていてもよい低級アルキル;低級アルケニル;低級アルキニル;低級アルカノイル;低級アルコキシ(例えばメトキシ);アリール(例えばフェニルまたはナフチル);置換アリール(例えばフルオロフェニルまたはメトキシフェニル);アリール低級アルキル、例えばベンジル、アミノ、モノまたはジ−低級アルキル(例えばジメチルアミノ);低級アルカノイルアミノ、アセチルアミノ;アミノ低級アルコキシ(例えばエトキシアミン);ニトロ;シアノ;シアノ低級アルキル;カルボキシ;低級カルボアルコキシ(例えばメトキシカルボニル;n−プロポキシカルボニルまたはイソプロポキシカルボニル)、低級アリールオイル(aryloyl)、例えばベンゾイル;カルバモイル;N−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキルカルバモイル;低級アルキルカルバミン酸エステル;アミジノ;グアニジン;ウレイド;メルカプト;スルホ;低級アルキルチオ;スルホアミノ;スルホンアミド;ベンゾスルホンアミド;スルホネート;スルファニル低級アルキル(例えばメチルスルファニル);スルホアミノ;アリールスルホンアミド;ハロゲン置換もしくは非置換アリール スルホネート(例えばクロロ−フェニル スルホネート);低級アルキルスルフィニル;アリールスルフィニル;アリール−低級アルキルスルフィニル;低級アルキルアリールスルフィニル;低級アルカンスルホニル;アリールスルホニル;アリール−低級アルキルスルホニル;低級アリールアルキル;低級アルキルアリールスルホニル;ハロゲン−低級アルキルメルカプト;ハロゲン−低級アルキルスルホニル、例えばトリフルオロメタンスルホニル;ホスホノ(−P(=O)(OH));ヒドロキシ−低級アルコキシホスホリルまたはジ−低級アルコキシホスホリル;尿素および置換尿素;アルキルカルバミン酸エステルまたはカルバメート(例えばエチル−N−フェニル−カルバメート);または低級アルキル(例えばメチル、エチルまたはプロピル)からなる群から選択される、4個までの、好ましくは1個、2個または2個の置換基によって、独立して置換されていてもよい。
【0069】
一つの態様において、上記のアルキル、シクロアルキルおよびアリール基は、独立して、非置換であるか、あるいは、低級アルキル、アリール、アリール低級アルキル、カルボキシ、低級カルボアルコキシ、特にハロゲン、−OH、−SH、−OCH、−SCH、−CN、−SCNまたはニトロによって置換されている。
【0070】
本明細書で用いられるとき、用語“アルキルアリール”は、架橋アルキレン基によって主鎖に連結しているアリール基を言う。例は、ベンジル、フェネチル、ナフチルメチルなどを含み、これらに限定されない。同様に、アルキルシアノ基は、架橋アルキレン基によって主鎖に連結しているシアノ基を言う。また、同様に、アルキルシクロアルキルは、架橋アルキレン基によって主鎖に連結しているシクロアルキル基を言う。“アルキルhet”基は、アルキル基によって主鎖に架橋されているhet基を言う。
【0071】
他方、用語“アリールアルキル”は、アリール基によって主鎖に架橋されているアルキル基を言い、例えばフェニレン基である。例は、メチルフェニル、エチルフェニルなどを含み、これらに限定されない。同様に、“アリールシクロアルキル”基は、アリール基によって主鎖に架橋されているシクロアルキル基を言う。
【0072】
用語“hetシクロアルキル”は、het基によって主鎖に架橋されているシクロアルキル基を言う。“シクロアルキルアリール”基は、シクロアルキル基によって主鎖に架橋されているアリール基を言い、そして、“シクロアルキルhet”基は、シクロアルキル基によって主鎖に架橋されているhet基を言う。“hetシクロアルキル”、“シクロアルキルアリール”および“シクロアルキルhet”はそれぞれ、2つの基の結合した環であり得る。
【0073】
用語“アルコキシ”は、酸素原子によって主鎖に連結している、本明細書で定義されたアルキル基を言う。“アルコキシ”基はまた、基中に含まれるエーテル官能性を有するアルキル基、すなわち何れかの位置で主鎖に含まれる酸素−O−を有するアルキル基を言う。例は、メトキシ、エトキシなどを含み、これらに限定されない。
【0074】
用語C(O)は−C=O基を言い、それは、ケトンであってもアルデヒドであっても酸もしくは酸の誘導体であってもよいと理解されるべきである。同様に、S(O)は、−S=O基を言う。“ヒドロキシル”基は−OH基を言う。
【0075】
癌および自己免疫性疾患における使用
本発明の化合物は、有益な薬理学的性質を有し、疾患の処置に有用である。特定の態様において、本発明の化合物は、増殖性疾患または癌の処置に有用である。
【0076】
増殖性疾患は、主に腫瘍疾患(または癌)(および/または何れかの転移)である。本発明の化合物は、特に、乳癌、尿生殖器の癌、肺癌、消化器の癌、類表皮癌、多発性骨髄腫、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、神経芽腫、鼻、頭部および/または頚部の癌、または、膀胱癌、より広義の腎臓、脳または胃の癌である腫瘍;特に(i)乳房の腫瘍;類表皮腫瘍、例えば類表皮頭部および/または頚部腫瘍、または口腔腫瘍;肺腫瘍、例えば小細胞性もしくは非小細胞性肺腫瘍;消化器の腫瘍、例えば結腸直腸腫瘍;または尿生殖器の腫瘍、例えば、前立腺腫瘍(特にホルモン不応性前立腺腫瘍);または(ii)他の化学療法による処置に不応性である増殖性疾患;または(iii)多剤耐性のために他の化学療法剤による処置に不応性である腫瘍の処置に有用である。
【0077】
本発明のより広い意味において、増殖性疾患は、さらに、過剰増殖状態、例えば白血病、過形成、線維症(特に、肺線維症、さらに、他のタイプの線維症、例えば腎線維症)、血管新生、乾癬、アテローム性動脈硬化症および血管における平滑筋増殖、例えば血管形成術後の狭窄または再狭窄であってもよい。
【0078】
腫瘍、腫瘍疾患、癌腫、または癌を記載するときはまた、腫瘍および/または転移の位置にかかわらず、元の臓器または組織および/または他の何れかの位置への転移を、それらに代えて含むか、または、それらに追加して含む。
【0079】
本発明の化合物は、特にヒトの癌細胞において、例えば癌性腫瘍において、正常細胞より速く増殖する細胞に選択的に毒性であるか、または正常細胞より速く増殖する細胞に対してより毒性が強い。本化合物は、著しい抗増殖効果を有し、分化を促進し、例えば細胞周期を阻止し、アポトーシスを起こす。
【0080】
また、他の特定の態様において、本発明の化合物は、自己免疫性疾患の処置に有用である。本発明の化合物によって処置される自己免疫性疾患の例は、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性新生児血小板減少症、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性血球減少症、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、心筋炎、再発性多発軟骨炎、リウマチ性心疾患、糸球体腎炎、多発性硬化症、神経炎、ブドウ膜眼炎、多腺性内分泌障害、紫斑病、ライター病、全身硬直症候群、自己免疫性肺炎症、自閉症、ギラン・バレー症候群、インシュリン依存性糖尿病、自己免疫性炎症性眼疾患、自己免疫性甲状腺炎、甲状腺機能低下症、全身性エリテマトーデス、グッドパスチャー症候群、天疱瘡、受容体自己免疫、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、関節リウマチ、混合性結合組織病、多発性筋炎/皮膚筋炎、悪性貧血、特発性アジソン病、不妊症、糸球体腎炎、水疱性類天疱瘡、シェーグレン症候群、真性糖尿病、アドレナリン作用薬耐性、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、白斑、血管炎、心筋梗塞後、心術後症候群、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、喘息、炎症性筋疾患、慢性活動性肝炎、原発性胆汁性肝硬変およびT細胞介在過敏症疾患を含み、これらに限定されない。
【0081】
本発明の化合物はまた、加齢黄斑変性を含む眼の疾患を処置するのに有用であると予測される。
【0082】
用語“使用”は、適切かつ好都合であれば、次に示す発明の態様の何れか1つ以上を含む:蛋白質キナーゼ関連障害の処置における使用;これらの疾患の処置に使用する医薬組成物の製造における使用、例えば医薬の製造における使用;これらの疾患の処置における本発明の化合物の使用方法;これらの疾患を処置するための本発明の化合物を有する医薬製剤;およびこれらの疾患の処置に使用するための本発明の化合物。特に、処置されるべきであって本発明の化合物の使用が好ましい疾患は、癌、移植拒絶反応または自己免疫性疾患、ならびに、蛋白質キナーゼの活性に依存する疾患から選択される。用語“使用”は、さらに、蛍光またはタグと結合させたとき、または放射活性としたとき、研究用試薬、診断薬または造影剤として用いられ得るように、トレーサーまたは標識として提供されるのに十分な程、蛋白質キナーゼに結合する、本組成物の態様を含む。
【0083】
アッセイ
本発明の化合物による蛋白質キナーゼ活性の阻害は、当技術分野で利用可能な幾つかのアッセイを用いて測定され得る。このようなアッセイの例は、下記の実施例の章に記載されている。
【0084】
医薬組成物
化合物の“有効量”という用語は、蛋白質キナーゼ関連障害を処置または予防するのに、例えば蛋白質キナーゼ関連障害の種々の形態学的および身体的症候を予防する、および/または、本明細書で記載した疾患または状態を予防するのに必要なまたは十分な量である。一つの例において、本発明の化合物の有効量は、対象において蛋白質キナーゼ関連障害を処置するのに十分な量である。有効量は、例えば対象の大きさや体重、病気のタイプ、または特定の本発明の化合物などの因子に依存して変化し得る。例えば、本発明の化合物の選択は、“有効量”を構成する量に影響を及ぼし得る。当業者は、本明細書に含まれる要因を試験して、過度の実験をすることなく本発明の化合物の有効量に関して決定をすることができる。
【0085】
投与レジメは、有効量の構成に影響を及ぼし得る。本発明の化合物は、蛋白質キナーゼ関連障害の発症前または発症後の何れかで対象に投与され得る。さらに、幾つかの分割投与であっても時差をつけた投与であってもよく、毎日投与されても逐次投与されてもよく、あるいは、投与が連続注入で行われてもよく、また、ボラス注射で投与されてもよい。さらに、本発明の化合物の投与は、治療状況または予防状況の緊急性に比例して増大または減少させてもよい。
【0086】
本発明の化合物は、本明細書で記載された状態、障害または疾患の処置に、あるいは、これらの疾患の処置に使用する医薬組成物の製造に使用され得る。これらの疾患の処置における本発明の化合物の使用方法、または、これらの疾患を処置するための本発明の化合物を有する医薬製剤。
【0087】
用語“医薬組成物”は、哺乳動物、例えばヒトに投与するのに適当な製剤を含む。本発明の化合物が、哺乳動物、例えばヒトに投与されるとき、それらは、それ自身で、または、薬学的に許容される担体と組み合わせて、例えば0.1から99.5%(より好ましくは0.5から90%)の有効成分を含む医薬組成物として提供されてもよい。
【0088】
“薬学的に許容される担体”というフレーズは、当技術分野で認識されているものであり、本発明の化合物を哺乳動物に投与するのに適当な薬学的に許容される物質、組成物またはビークルを含む。担体は、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または身体の一つの臓器または部分から別の臓器または部分に対象の薬物を運ぶまたは輸送するのに関与する封入物質を含む。担体は、それぞれ、製剤の他の成分と相溶性であるという意味で、かつ、患者に危害を与えないという意味で“許容される”ものでなければならない。薬学的に許容される担体として提供され得る物質の幾つかの例は、糖類、例えば乳糖、ブドウ糖およびショ糖;澱粉、例えばとうもろこし澱粉およびじゃがいも澱粉;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース ナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末状トラガカントゴム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバターおよび坐剤用蝋;油脂、例えば落花生油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、コーン油および大豆油;グリコール類、例えばプロピレン グリコール;ポリオール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレン グリコール;エステル類、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンを含まない水;等張性食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;および医薬製剤に用いられる他の非毒性の相溶性物質を含む。
【0089】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色料、放出剤、被覆剤、甘味料、風味剤、香料、保存料、および抗酸化剤もまた、組成物中に存在してもよい。
【0090】
薬学的に許容される抗酸化剤の例は、水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど;金属キレート化剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含む。
【0091】
本発明の製剤は、経口、鼻腔、局所、頬側、舌下、直腸、膣内および/または非経腸投与に適当な製剤を含む。製剤は、好都合であれば、単位投与形で提供されてもよく、製薬業界で周知の何れの方法によって製造されてもよい。担体物質と組み合わせて単位投与形を製造し得る有効成分の量は、一般的に、治療効果を生じる化合物の量である。一般的に、100%のうち、この量は、約1%から約99%の有効成分の範囲であり、好ましくは約5%から約70%、最も好ましくは約10%から約30%の範囲である。
【0092】
これらの製剤または組成物を製造する方法は、本発明の化合物を、担体、および所望により1種以上の補助成分と組み合わせる段階を含む。一般的に、製剤は、本発明の化合物を、液体の担体または微細化した固体の担体と、あるいはこれらの両方と組み合わせて、次いで必要であれば製品に成形することによって製造される。
【0093】
経口投与に適当な本発明の製剤は、カプセル剤、サシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ(風味付けした基剤、通常ショ糖およびアラビアゴムまたはトラガカントゴムを使用)、粉剤、顆粒剤の形態で、あるいは、水性もしくは非水性液体の溶液もしくは懸濁液として、あるいは、油中水型または水中油型エマルジョンとして、あるいは、エリキシルまたはシロップまたはトローチ(pastille)(不活性基剤、例えばゼラチンおよびグリシン、またはショ糖およびアラビアゴムを使用)および/または洗口剤などであってもよく、それぞれは、有効成分として、予め定められた量の本発明の化合物を含む。本発明の化合物はまた、ボラス、舐剤またはペーストとして投与され得る。
【0094】
経口投与のための本発明の固体投与形(カプセル剤、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉剤、顆粒剤など)において、有効成分は、1種以上の薬学的に許容される担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または、下記の何れかと混合される:充填剤または増量剤、例えば澱粉、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、および/またはケイ酸;結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、および/またはアラビアゴム;湿潤剤(humectant)、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、じゃがいも澱粉またはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム;溶解遅延剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;湿潤剤(wetting agent)、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール;吸収剤(absorbent)、例えばカオリンおよびベントナイト・クレイ;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物;ならびに着色料。カプセル剤、錠剤および丸薬の場合において、医薬組成物はまた、緩衝剤を含んでもよい。同様のタイプの固体組成物はまた、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセル中、充填剤として、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤、および高分子量ポリエチレングリコールなどを用いてもよい。
【0095】
錠剤は、所望により1種以上の補助成分と共に、打錠または成形によって作られ得る。打錠された錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性な希釈剤、保存料、崩壊剤(例えば、澱粉グリコール酸ナトリウムまたは架橋カルボキシメチルセルロース ナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて製造され得る。成形された錠剤は、不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、適当な機械で成型することによって作られ得る。
【0096】
本発明の医薬組成物の錠剤および他の固体投与形、例えば糖衣錠、カプセル剤、丸薬および顆粒剤は、所望により割線を入れてよく、コーティングおよびシェル、例えば腸溶性コーティングおよび製剤業界で周知の他のコーティングを施してもよい。それらはまた、例えば、望ましい放出プロファイルを提供するために種々の割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリックス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを用いて、有効成分の遅延または制御放出を提供するよう製剤化され得る。それらは、例えば、バクテリア保持フィルターでの濾過によって、あるいは、使用の直前に滅菌処理した水または幾つかの他の滅菌処理した注射可能な媒体に溶解し得る、滅菌処理した固体組成物の形態に滅菌処理剤を入れることによって、滅菌処理してもよい。これらの組成物はまた、所望により乳白剤(opacifying agent)を含んでもよく、また、消化器の特定の部分のみで、または消化器の特定の部分で優先的に、所望により遅延されて、有効成分を放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例は、ポリマー物質および蝋を含む。有効成分はまた、適切であれば1種以上の上記の賦形剤と共に、マイクロカプセルに入れられた形態であってもよい。
【0097】
本発明の化合物の経口投与のための液体投与形は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含む。有効成分に加えて、液体投与形は、当技術分野で一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば水または他の溶媒、溶解剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油脂(特に綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
【0098】
不活性な希釈剤以外にも、経口用組成物はまた、アジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、風味剤、着色料、香料および保存料を含み得る。
【0099】
活性な化合物に加えて、懸濁液は、懸濁剤、例えば、エトキシ化イソステアリル アルコール類、ポリオキシエチレン ソルビトール、および、ソルビタン エステル類、微晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカントゴム、ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0100】
直腸または膣の投与のための本発明の医薬組成物の製剤は、坐剤として提供され、これらは、1種以上の本発明の化合物を、1種以上の適当な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって製造され得る。当該賦形剤または担体は、室温で固体であるが体温で液体であって、その結果直腸または膣内で融解して活性な化合物を放出するもの、例えばココアバター、ポリエチレン グリコール、坐剤用蝋、またはサリチレートを含む。
【0101】
膣の投与に適当な本発明の製剤はまた、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤を含み、これらは、当技術分野で適切であると知られている担体を含む。
【0102】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための投与形は、粉剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤を含む。活性な化合物は、滅菌された条件下で、薬学的に許容される担体、および、必要であるかもしれない何らかの保存料、緩衝剤または噴射剤と混合され得る。
【0103】
軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本発明の活性な化合物に加えて、賦形剤、例えば動物性および植物性脂肪、油脂、蝋、パラフィン、澱粉、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレン グリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはそれらの混合物を含み得る。
【0104】
粉剤およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、賦形剤、例えば乳糖、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物を含み得る。スプレーは、さらに、慣用の噴射剤、例えばクロロフルオロ炭化水素および揮発性の非置換炭化水素、例えばブタンおよびプロパンを含み得る。
【0105】
経皮パッチは、本発明の化合物の身体への制御送達を提供するという、さらなる利点を有する。当該投与形は、本化合物を適切な媒体に溶解または分散することによって作られ得る。吸収促進剤はまた、本化合物の皮膚への流量を増加させるために用いられ得る。流入速度は、速度制御膜を提供することによって、あるいは、ポリマーマトリックスまたはゲル中に活性な化合物を分散させることによって制御され得る。
【0106】
眼の製剤は、眼の軟膏、粉末、溶液などであり、また、本発明の範囲内に含まれることを意図されている。
【0107】
非経腸投与に適当な本発明の医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容される滅菌処理された等張性水性または非水性溶液、分散液、懸濁液、またはエマルジョンと組み合わせた1種以上の本発明の化合物を含むか、または使用の直前に滅菌処理された注射可能な溶液または分散液に再構成され得る滅菌処理された粉末である。当該医薬組成物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図された受容者の血液と製剤を等張性とする溶質、懸濁剤、または濃厚化剤を含んでもよい。
【0108】
本発明の医薬組成物に用いられ得る適当な水性および非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル類、例えばオレイン酸エチルを含む。例えば被覆物質、例えばレシチンの使用によって、分散液の場合では必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。
【0109】
これらの組成物はまた、アジュバント、例えば保存料、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含んでもよい。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含むことによって確保され得る。また、等張化剤、例えば糖類、塩化ナトリウムなどを組成物に含むことも望ましい。さらに、注射可能な薬学的形態の遅延された吸収は、吸収を遅延させる薬物、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによってもたらされ得る。
【0110】
幾つかの場合において、薬物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射において薬物の吸収を遅らせることが望ましい。このことは、水溶性が低い結晶性または非晶形の物質の液体懸濁液を使用することによって達成され得る。薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次いで、結晶の大きさや結晶形に依存し得る。あるいは、非経腸投与された薬物の遅延吸収は、薬物を油性のビークルに溶解または懸濁することによって達成される。
【0111】
注射可能なデポー形態は、生分解性ポリマー中、例えばポリラクチド−ポリグリコリド中に、対象の化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作られる。薬物:ポリマーの比率および用いられた特定のポリマーの性質に依存して、薬物の放出速度は制御され得る。他の生分解性ポリマーの例は、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)を含む。注射可能なデポー製剤はまた、薬物をリポソームまたは身体組織に融和性であるマイクロエマルジョン中にトラップすることによって製造される。
【0112】
本発明の製剤は、経口、非経腸、局所または直腸に投与され得る。それらは、当然に、それぞれの投与経路に適当な形態によって投与される。例えば、それらは、錠剤またはカプセル剤の形態で、注射、吸入、眼用ローション、軟膏、坐剤などによって投与され、注射、注入または吸入によって;ローションまたは軟膏によって、局所投与で、そして坐剤によって直腸投与で投与される。経口投与および/または静脈内投与が好ましい。
【0113】
“非経腸投与”および“非経腸で投与される”というフレーズは、本明細書で用いられるとき、経腸投与および局所投与以外の投与形態を意味し、通常、注射による投与を意味し、そして、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、角質下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、胸骨内の注射および注入を含み、これらに限定されない。
【0114】
“全身投与”、“全身に投与される”、“末梢投与”および“末梢に投与される”というフレーズは、本明細書で用いられるとき、化合物、薬物または他の物質を、それが患者の系に入り、代謝および他の類似のプロセスを受けるように、中枢神経系への直接投与以外で投与すること、例えば皮下投与を意味する。
【0115】
これらの化合物は、ヒトおよび他の動物に、経口で、例えばスプレーとして鼻に、直腸に、膣内に、非経腸で、大槽内に、および、頬側および舌下投与を含む粉剤、軟膏もしくは滴剤としての局所投与を含む、何らかの適当な投与経路によって、治療のために投与され得る。
【0116】
選択された投与経路にかかわらず、適当な水和された形態で用いられ得る本発明の化合物は、および/または本発明の医薬組成物は、当技術分野で既知の慣用の方法によって、薬学的に許容される投与形に製剤化される。
【0117】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量は、特定の患者、組成物および投与方法において、患者への毒性がなく、かつ望ましい治療応答を達成するのに有効な有効成分の量が得られるように変化させ得る。
【0118】
選択された投与量は、用いられた特定の本発明の化合物またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出速度、処置の持続時間、用いられる特定の化合物との組み合わせに使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態およびこれまでの病歴、および医学業界で周知の因子を含む種々の因子に依存する。
【0119】
当技術分野の通常の技術を有する医師または獣医は、必要な医薬組成物の有効量を、たやすく決定し、処方し得る。例えば、医師または獣医は、医薬組成物中で用いられる本発明の化合物の投与を、望ましい効果に到達するために、必要な量より少ない量で開始し、望ましい効果が達成されるまで投与量を徐々に増大させ得る。
【0120】
一般的に、本発明の化合物の適当な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最も低い用量である本化合物の量である。このような有効量は、一般的に、上記の因子に依存する。一般的に、患者への本発明の化合物の静脈内および皮下の投与量は、指示された鎮痛効果のために用いられるとき、約0.0001から約100mg/kg体重/日、より好ましくは、約0.01から約50mg/kg体重/日、さらにより好ましくは約1.0から約100mg/kg体重/日の範囲である。有効量は、蛋白質キナーゼ関連障害を処置する量である。
【0121】
望ましいならば、活性な化合物の有効な1日投与は、所望により単位投与形で、1日を通して適切な間隔で個別に、1日2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上に分けて投与され得る。
【0122】
本発明の化合物は、単独で投与することが可能であるが、医薬組成物として本化合物を投与することが好ましい。
【0123】
合成手順
本発明の化合物は、次に示す条件の1つ以上を含む(これらに限定されない)、当技術分野に既知の手順を用いて、一般的に利用可能な化合物から製造される:
本明細書の範囲内において、本発明の化合物の特定の望ましい最終生成物を構成しない、容易に除去される基は、特記しない限り“保護基”と呼ばれる。このような保護基による官能基の保護、保護基自身、およびその脱保護反応は、例えば、標準的な参考文献、例えば Science of Synthesis: Houben-Weyl Methods of Molecular Transformation. Georg Thieme Verlag, Stuttgart, Germany, 2005. 41627 pp. (URL: http://www.science-of-synthesis.com (Electronic Version, 48 Volumes))に;J. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973に;T. W. Greene and P. G. M. Wuts, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Third edition, Wiley, New York 1999に;“The Peptides”; Volume 3 (editors: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981に;“Methoden der organischen Chemie”(Methods of Organic Chemistry), Houben Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974に;H. D. Jakubke and H. Jeschkeit, “Aminosaeuren, Peptide, Proteine”(Amino acids, Peptides, Proteins), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982に;および Jochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate”(Chemistry of Carbohydrates: Monosaccharides and Derivatives), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974に記載されている。保護基の特性は、例えば加溶媒分解、還元、光分解によって、あるいは、生理学的条件下で(例えば酵素による切断によって)、容易に(すなわち望ましくない副反応を起こすことなく)除去され得ることである。
【0124】
少なくとも1個の塩形成基を有する本発明の化合物の塩は、それ自身既知の方法で製造され得る。例えば、酸性の基を有する本発明の化合物の塩は、例えば金属化合物で、例えば適当な有機カルボン酸のアルカリ金属塩、例えば2−エチルヘキサン酸のナトリウム塩で、または、有機アルカリ金属化合物もしくはアルカリ土類金属化合物、例えば対応する水酸化物、炭酸塩、または炭酸水素塩、例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウム、または炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸水素カリウムで、または、対応するカルシウム化合物で、または、アンモニアもしくは適当な有機アミンで処理することによって形成され、化学量論的な量または好ましいならば少しだけ過剰量の塩形成剤が用いられ得る。本発明の化合物の酸付加塩は、慣用の方法で、例えば本化合物を、酸または適当なアニオン交換剤で処理することによって得られる。酸性および塩基性塩形成基、例えば遊離のカルボキシ基及び遊離のアミノ基を含む本発明の化合物の内部塩は、例えば、塩を中和することによって、例えば酸付加塩を、例えば弱い塩基で等電点まで中和することによって、またはイオン交換剤で処理することによって、形成され得る。
【0125】
塩は、慣用の方法で、遊離化合物に変換され得る。金属塩およびアンモニウム塩は、例えば適当な酸で処理することによって変換され得る。酸付加塩は、例えば適当な塩基性反応剤で処理することによって変換され得る。
【0126】
本発明によって得られる異性体の混合物は、それ自身既知の方法で、個々の異性体に分離され得る。ジアステレオアイソマーは、例えば、多相性溶媒混合物間で分配することによって、再結晶によって、および/または、例えばシリカゲルのクロマトグラフィーによる分離によって、あるいは、例えば逆相カラムの中速液体クロマトグラフィーによって、分離され得る。また、ラセミ化合物は、例えば光学的に純粋な塩形成反応剤と塩を形成し、得られたジアステレオアイソマーの混合物を、例えば分別結晶によって、あるいは、光学活性なカラム物質によるクロマトグラフィーによって、分離し得る。
【0127】
中間体および最終生成物は、標準的な方法によって、例えばクロマトグラフィー法、分配法、結晶化(再結晶)などを用いて、後処理および/または精製され得る。
【0128】
一般的な工程の条件
一般的に、本開示の全体で記載された全ての工程について、下記が適用される。
本発明の化合物を合成する工程は、具体的に記載された反応条件を含むそれ自身既知の反応条件下で、例えば用いられる反応剤に対して不活性であってそれらを溶解する溶媒または希釈剤を含む溶媒または希釈剤の非存在下または慣例的には存在下で、触媒、縮合剤または中和剤、例えばイオン交換剤、例えばH形態のカチオン交換剤の非存在下または存在下で、反応および/または反応剤の性質に応じて、低温で、通常の温度で、または高温で、例えば約−80℃から約150℃、例えば−80から−60℃で、室温で、−20から40℃で、または還流温度で、大気圧で、または密閉容器中で、適切であるとき加圧下で、および/または、不活性雰囲気中、例えばアルゴンまたは窒素雰囲気下で行われ得る。
【0129】
反応の全ての段階で、形成された異性体混合物は、例えばScience of Synthesis: Houben-Weyl Methods of Molecular Transformation. Georg Thieme Verlag, Stuttgart, Germany. 2005に記載された方法と類似の方法で、個々の異性体、例えばジアステレオアイソマーまたはエナンチオマー、あるいは、何れかの望ましい異性体混合物、例えばラセミ化合物またはジアステレオアイソマーの混合物に分離され得る。
【0130】
溶媒は、何れかの特定の反応に適切なものを選択してもよく、そして、具体的に記載された溶媒、または、工程の説明において特記しない限り、例えば、水、エステル類、例えば低級アルキル−低級アルカノエート、例えば酢酸エチル、エーテル類、例えば脂肪族エーテル類、例えばジエチルエーテル、または、環状エーテル類、例えばテトラヒドロフランもしくはジオキサン、液体芳香族性炭化水素、例えばベンゼンもしくはトルエン、アルコール類、例えばメタノール、エタノールまたは1−もしくは2−プロパノール、ニトリル類、例えばアセトニトリル、ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチレンもしくはクロロホルム、酸アミド、例えばジメチルホルムアミドもしくはジメチルアセトアミド、塩基、例えばヘテロ環窒素塩基、例えばピリジンもしくはN−メチルピロリジン−2−オン、カルボン酸無水物、例えば低級アルカン酸無水物、例えば酢酸無水物、環状、直鎖または分枝鎖炭化水素、例えばシクロヘキサン、ヘキサンもしくはイソペンタン、あるいは、これらの溶媒の混合物、例えば水溶液を含む。このような溶媒混合物はまた、クロマトグラフィーまたは分配による後処理において用いられ得る。
【0131】
塩を含む化合物はまた、水和物の形態でも得られ、あるいは、その結晶は、例えば、結晶化に用いられた溶媒を含み得る。異なる結晶形が存在してもよい。
【0132】
本発明はまた、工程の何れかの段階で中間体として得られる化合物が出発物質として用いられ、残りの工程が行われる形式の工程、あるいは、出発物質が、反応条件下で形成されるかまたは誘導体の形態、例えば保護された形態または塩の形態で用いられるか、または、本発明による工程によって得られる化合物が工程の条件下で生産され、そのままさらなる工程にかけられる形式の工程に関する。
【0133】
プロドラッグ
本発明はまた、本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグを含む医薬組成物、および、本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグを投与することによって蛋白質キナーゼ関連障害を処置する方法を包含する。例えば遊離のアミノ基、アミド基、ヒドロキシ基またはカルボキシル基を有する本発明の化合物は、プロドラッグに変換され得る。プロドラッグは、アミノ酸残基または2個以上の(例えば2個、3個または4個)のアミノ酸残基のポリペプチド鎖が、アミド結合またはエステル結合によって、本発明の化合物の遊離のアミノ基、ヒドロキシ基またはカルボン酸基に共有結合している。アミノ酸残基は、一般的に3文字記号によって示される20種の天然由来のアミノ酸を含み、また、4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン(demosine)、イソデスモシン(isodemosine)、3−メチルヒスチジン、ノルバリン、β−アラニン、γ−アミノ酪酸、シトルリン、ホモシステイン、ホモセリン、オルニチンおよびメチオニンスルホンを含み、これらに限定されない。プロドラッグのさらなるタイプもまた包含される。例えば、遊離のカルボキシル基は、アミド類またはアルキルエステル類として誘導体化され得る。遊離のヒドロキシ基は、Advanced Drug Delivery Reviews, 1996, 19, 115に概略された通りに、ヘミスクシネート、リン酸エステル、ジメチルアミノアセテートおよびホスホリルオキシメチルオキシカルボニルを含む(これらに限定されない)基を用いて誘導体化され得る。ヒドロキシ基およびアミノ基のカルバメート プロドラッグもまた、カーボネート プロドラッグとして含まれ、同様に、ヒドロキシ基のスルホン酸エステル類および硫酸エステルも含まれる。アシル基が所望によりエーテル、アミンおよびカルボン酸官能基を含む(これらに限定されない)基で置換されているアルキル エステルであってもよい場合、または、アシル基が上記のアミノ酸エステルである場合、ヒドロキシ基を(アシルオキシ)メチルまたは(アシルオキシ)エチル エーテル類として誘導体化することもまた包含される。このタイプのプロドラッグは、J. Med. Chem. 1996, 39, 10に記載されている。遊離のアミンはまた、アミド、スルホンアミドまたはホスホンアミドとして誘導体化され得る。これらのプロドラッグの部分は全て、エーテル、アミンおよびカルボン酸官能基を含む(これらに限定されない)基を組み込み得る。
【0134】
従って、本発明の化合物の何れの記載も、適切かつ好都合であるとき、対応する本発明の化合物のプロドラッグについても言及していると理解されるべきである。
【0135】
組み合わせ剤
本発明の化合物はまた、対象において蛋白質キナーゼ関連障害の処置のために、他の薬物(複数を含む)、例えば本発明の化合物であるまたは本発明の化合物ではないさらなる蛋白質キナーゼ阻害剤と組み合わせて用いられてもよい。
【0136】
用語“組み合わせ”は、1個の投与形単位における固定化された組み合わせを意味するか、あるいは、本発明の化合物および組み合わせパートナーが、独立して同時に投与され得るか、または特に組み合わせパートナーが協同的な効果、例えば相乗効果を示し得る時間間隔で、別個に投与され得る、またはその何れかの組み合わせである、組み合わされた投与のための複数パーツのキットを意味する。
【0137】
本発明の化合物は、抗炎症剤、抗増殖剤、化学療法剤、免疫抑制剤、抗癌剤、細胞傷害剤、または、式Iの化合物もしくはその塩以外のキナーゼ阻害剤と、同時にまたは連続して投与され得る。本発明の化合物と組み合わせて投与され得る薬物のさらなる例は、PTK阻害剤、シクロスポリン A、CTLA4−Ig、抗ICAM−3、抗IL−2受容体、抗CD45RB、抗CD2、抗CD3、抗CD4、抗CD80、抗CD86、およびモノクローナル抗体OKT3から選択される抗体、CD40とgp39の相互作用をブロックする薬物、CD40およびgp39から構成される融合蛋白質、NF−κB機能阻害剤、非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド、金化合物、抗増殖剤、FK506、ミコフェノール酸モフェチル、細胞傷害性薬物、TNF−α阻害剤、抗TNF抗体、または、可溶性TNF受容体、ラパマイシン、レフルノミド、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、パクリタキセル、シスプラチン、カルボプラチン、ドキソルビシン、カルミノマイシン、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、マイトマイシン C、エクチナサイジン 743、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン(leurosidine)、エポチロン、ビンデシン、ロイロシン(leurosine)、または、これらの誘導体を含み、これらに限定されない。
【0138】
本発明の化合物および何れかのさらなる薬物は、別個の投与形で製剤化され得る。あるいは、患者に投与される投与形の数を減らすために、本発明の化合物および何れかのさらなる薬物は、何れかの組み合わせで、同時に製剤化され得る。例えば、本発明の化合物は、1個の投与形で製剤化され、さらなる薬物は、別の投与形で同時に製剤化され得る。複数の別個の投与形は何れも、同時に投与されても異なる時間で投与されてもよい。
【0139】
あるいは、本発明の組成物は、本明細書に記載されたさらなる薬物を含む。それぞれの成分は、別個の組成物中に存在していてもよく、組み合わせ組成物中に存在していてもよく、また単一の組成物中に存在していてもよい。
【0140】
本発明の実施例
本発明は、下記の実施例によって、さらに説明される。該実施例は、さらなる限定を構成しない。本発明の実施は、特記しない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子導入生物学、微生物学および免疫学の慣用の方法を用い、当該方法は、当技術分野の技術の範囲内である。
【0141】
一般的な合成法
本発明の化合物を合成するために用いられる全ての出発物質、構成要素、反応剤、酸、塩基、脱水剤、溶媒および触媒は、市販されているか、あるいは、当業者に既知の有機合成法によって製造され得る (Houben-Weyl 4th Ed. 1952, Methods of Organic Synthesis, Thieme, Volume 21)。さらに、本発明の化合物は、下記の実施例で示す通り、当業者に既知の有機合成法によって製造され得る。
【0142】
略号のリスト
【表1】

【0143】
実施例
本発明の化合物は、下記の方法に従って製造され得る。
【実施例】
【0144】
実施例1および14
[4−(5−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリジン−2−イル]−(2−メチル−ベンジル)−アミン
【化8】

無水THF(50ml)中のジイソプロピルアミン(12.6ml, 89.9mmol)の溶液に、n−ブチルリチウム(42.2ml, ヘキサン中1.6M)を、0℃で滴下する。0℃で30分後、2−フルオロ−4−メチルピリジン(5g, 45mmol)を加える。得られた混合物を0℃で30分間撹拌する。イソ酪酸メチル(5.4ml, 47.3mmol)を0℃で添加した後、該反応混合物を一夜撹拌する。反応混合物を酢酸で0℃でクエンチし、水で希釈し、エチルエーテルで抽出する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空で濃縮する。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し(SiO, EtOAc/ヘプタン 7:93から60:40)、4.8gの1−(2−フルオロ−ピリジン−4−イル)−3−メチル−ブタン−2−オンを、明黄色がかった固体として得る。
LCMS: 182 (M+H)+
【0145】
無水トルエン(20ml)中の1−(2−フルオロ−ピリジン−4−イル)−3−メチル−ブタン−2−オン(4.8g, 26.5mmol)の溶液に、N,N−ジメチルホルムアミド ジメチルアセタール(16.0ml, 120.6mmol)を加える。該反応物を90℃で4時間加熱する。該混合物を真空で濃縮し、粗生成物1−ジメチルアミノ−2−(2−フルオロ−ピリジン−4−イル)−4−メチル−ペンタ−1−エン−3−オンを得る。粗生成物をそのまま用いる。
LCMS: 237 (M+H)+
【0146】
メタノール(50ml)中の、1−ジメチルアミノ−2−(2−フルオロ−ピリジン−4−イル)−4−メチル−ペンタ−1−エン−3−オン(粗製, 26.5mmol)の溶液に、ヒドラジン(0.84ml, 26.5mmol)を、0℃で加える。該反応混合物を4時間撹拌し、EtOAcで希釈し、水で洗浄する。有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(SiO, EtOAc/ヘプタン 5:1)、3.8gの2−フルオロ−4−(5−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリジンを白色の固体として得る。
LCMS: 206 (M+H)+
1HNMR: (CDCl3, 400MHz) δ 8.18 (d, 1H), 7.69 (s, 1H), 7.18 (m, 1H), 3.29 (m, 1H), 1.33 (d, 6H).
【0147】
無水DMSO(0.25ml)中の、2−フルオロ−4−(5−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリジン(30mg, 0.15mmol)の溶液に、2−メチル−ベンジルアミン(37μl, 0.3mmol)を加える。該反応混合物を150℃で一夜撹拌し、EtOAcで希釈し、水で、そして塩水で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空で濃縮する。粗生成物を分取HPLCによって精製し、18.8mgの[4−(5−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリジン−2−イル]−(2−メチル−ベンジル)−アミンを得る(実施例1)。
LCMS: 307 (M+H)+
【0148】
実施例2〜82
適切な出発物質を用いて、実施例1に記載された手順を繰り返すことによって、下記の化合物を得る。
化合物
表1
表に挙げた全ての値は、IC50値(μmol/L)である。
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
【表4】

【0151】
【表5】

【0152】
【表6】

【0153】
【表7】

【0154】
【表8】

【0155】
【表9】

【0156】
【表10】

【0157】
【表11】

【0158】
【表12】

【0159】
【表13】

【0160】
【表14】

【0161】
【表15】

【0162】
【表16】

【0163】
【表17】

【0164】
【表18】

【0165】
【表19】

【0166】
【表20】

【0167】
【表21】

【0168】
【表22】

【0169】
【表23】

【0170】
【表24】

【0171】
【表25】

【0172】
【表26】

【0173】
【表27】

【0174】
【表28】

【0175】
実施例83および176
(R)−インダン−1−イル−[4−(3−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミン
【化9】

無水THF(50ml)中の、ジイソプロピルアミン(10.1ml, 71.8mmol)の溶液に、n−ブチルリチウム(33.6ml, ヘキサン中1.6M)を、0℃で滴下する。0℃で30分後、4−メチル−2−(メチルチオ)ピリミジン(5ml, 35.9mmol)を加える。得られた混合物を0℃で30分間撹拌する。イソ酪酸メチル(4.3ml, 37.7mmol)を0℃で添加した後、該反応混合物を終夜撹拌する。該反応混合物を、酢酸で、0℃でクエンチし、水で希釈し、エチルエーテルで抽出する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空で濃縮する。残渣を、フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(SiO, EtOAc/ヘプタン 7:93から40:60)、4.3gの3−メチル−1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−ブタン−2−オンを得る。
LCMS: 211.1 (M+H)+
【0176】
無水トルエン(20ml)中の、3−メチル−1−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−ブタン−2−オン(4.3g, 20.5mmol)の溶液に、N,N−ジメチルホルムアミド ジメチルアセタール(15.0ml, 112.9mmol)を加える。該反応物を90℃で4時間加熱する。該混合物を真空で濃縮し、粗生成物である1−ジメチルアミノ−4−メチル−2−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−ペンタ−1−エン−3−オンを得る。粗生成物をそのまま用いる。
LCMS: 266.3 (M+H)+
【0177】
メタノール(20ml)中の、1−ジメチルアミノ−4−メチル−2−(2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−イル)−ペンタ−1−エン−3−オン(粗製, 20.5mmol)の溶液に、ヒドラジン(0.65ml, 20.5mmol)を0℃で加える。該反応混合物を4時間撹拌し、EtOAcで希釈し、水で洗浄する。有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィーによって精製し(SiO, EtOAc/ヘプタン 5:1)、4.28gの4−(3−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−メチルスルファニル−ピリミジンを黄色の固体として得る。
LCMS: 235.1 (M+H)+
【0178】
ジクロロメタン(25ml)中の、4−(3−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−メチルスルファニル−ピリミジン(2.0g, 8.5mmol)の溶液に、mCPBA(5.2g, 21.3mmol)を0℃で加える。該反応混合物を2時間撹拌し、20% Na水溶液でクエンチし、ジクロロメタンで抽出する。該抽出物を飽和NaHCO溶液で、そして塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空で濃縮する。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し(SiO, EtOAc/ヘプタン 10:1)、1.79gの4−(3−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−メタンスルホニル−ピリミジンを白色の固体として得る。
LCMS: 267.1 (M+H)+
【0179】
無水DMSO(0.25ml)中の、4−(3−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−2−メタンスルホニル−ピリミジン(40mg, 0.15mmol)の溶液に、(R)−インダン−1−イルアミン(58μl, 0.45mmol)を加える。該反応混合物を150℃で一夜撹拌し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空で濃縮する。粗生成物を分取HPLCによって精製し、20mgの(R)−インダン−1−イル−[4−(3−イソプロピル−1H−ピラゾール−4−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンを得る(実施例83)。
LCMS: 320.2 (M+H)+
【0180】
実施例84〜191
適切な出発物質を用いて、実施例83に記載された手順を繰り返すことによって、下記の化合物を得る。
表2
表に挙げた全ての値は、IC50値(μmol/L)である。
【表29】

【0181】
【表30】

【0182】
【表31】

【0183】
【表32】

【0184】
【表33】

【0185】
【表34】

【0186】
【表35】

【0187】
【表36】

【0188】
【表37】

【0189】
【表38】

【0190】
【表39】

【0191】
【表40】

【0192】
【表41】

【0193】
【表42】

【0194】
【表43】

【0195】
【表44】

【0196】
【表45】

【0197】
【表46】

【0198】
【表47】

【表48】

【0199】
生物学的活性
p-pRb/S780 ELISA細胞アッセイ
Maxisorpプレート(Nunc 442404)を、DPBS(リン酸緩衝食塩水)で希釈した50μlの1μg/mLの総リン酸化網膜芽細胞腫蛋白質(pRb)抗体(4H1 Cell Signaling 9309L)で、4℃で一夜被覆する。翌日、プレートを、TBST中のSuperblock(Pierce 37535)で1時間から一夜ブロックする。この間に、1回ブロックを入れ替える。細胞を50〜60% コンフルエントで、96ウェルプレート(Corning 3585)中、100μlの完全培地(ウシ胎児血清(Gibco 1600-044)、2mM L−グルタミン(Gibco 25030)および1% ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco 15140-122)を含む培地)に播種し、加湿チャンバー中、37℃で5% COで一夜増殖させる。化合物(DMSO中)を培地で希釈して、110μMから0.027μMの範囲の濃度で化合物の7種の希釈シリーズを作る。10μlの希釈された化合物を細胞に加え、細胞における最終濃度を10μMから0.002μMの範囲とする。細胞を、加湿チャンバー中、37℃で、5% COで、24時間処理する。化合物をインキュベーションした後、40μl/ウェルの溶解緩衝液(50mM Tris−HCl(pH 7.5)(Invitrogen 15567-027)、120mM NaCl(Promega V4221)、1mM EDTA(Gibco 15575-038)、6mM EGTA(Fisher 02783-100)、1% Nonidet P40 (Fluka R02771)で、細胞を溶解する。プレートを、タイタープレート振盪器(Labline model 4625)に、4℃で5分間かけて、細胞を溶解させる。溶解後、10μlの細胞ライセートおよび50μlの1×PBS/10% Superblock (Gibco 10010およびPierce 37535)を、予め被覆してブロックしたMaxisorpプレートのそれぞれのウェルに加え、Oribtron Rotator II (Boekel Industries Model 260250)上で室温で2時間結合させる。次いで、Biostackを備えたBiotekプレート洗浄機を用いて、プレートを1×TBST(Teknova T9201)で3回洗浄する。最終洗浄で吸引しない。最終洗浄液をペーパータオル上に軽くたたきつけ(flicking off)、その後、軽打(tapping)して除く。ppRbS780抗体(Cell Signaling 9307L)を、1×PBS/10% Superblock (Gibco 10010およびPierce 37535)で、1:1000に希釈し、50μlを各ウェルに加える。次いで、プレートを、Oribtron Rotator II (Boekel Industries Model 260250)で1時間インキュベートする。次いで、プレートを先に記載した通りに洗浄する。ヤギ抗ウサギHRP(Promega W401B)を、1×PBS/10% Superblock (Gibco 10010およびPierce 37535)で、1:2500に希釈し、50μlを各ウェルに加える。次いで、プレートを、Oribtron Rotator IIで30分間インキュベートする。次いで、プレートを先に記載した通りに洗浄する。次いで、50μlのUltra TMB ELISA (Pierce 34028)を各ウェルに加える。プレートを、青色を呈するまで、5〜20分間インキュベートする。次いで、50μlの2M 硫酸 (Mallinckrodt 2468-46)を各ウェルに加えて、反応を停止させる。各プレートの450nmの吸光度を、Spectramax Plus (Molecular Devices)で測定する。このアッセイの結果を表1および2に要約する。
【0200】
BrdUアッセイ
細胞増殖 ELISA BrdU (比色)キット(Roche Diagnostic, カタログ番号11647229001, 9115 Hague Road, Indianapolis, IN 50414)を、このアッセイに用いる。簡単には、細胞を、96ウェルプレートに、50〜60%コンフルエントで、RMPI 1640培地中で播種する。翌日に、細胞を望ましい濃度範囲の化合物で処理し、次いで、加湿チャンバー中、37℃で、5% COで24時間インキュベートする。キットによって提供されるプロトコルに従って、細胞をBrdU標識化剤で2時間標識し、次いで、200μlのFixDenatで、室温で30分間固定した。100μlの抗BrdU抗体を細胞に加え、室温で2時間インキュベートする。次いで、細胞を200μl/ウェルのPBSで3回洗浄し、次いで100μlの発色溶液をウェル毎に加える。5〜10分インキュベーションした後、吸光度を、370nmで、Spectramax Plus (Molecular Devices)を用いて測定する。このアッセイの結果を表1および2に要約する。
【0201】
上記の好ましい態様は、本発明の範囲および精神を説明するために示されている。本明細書で示された記載は、他の態様および例を当業者に明らかにする。これらの他の態様および例は、本発明の意図の範囲内である。従って、本発明は、特許請求の範囲によって限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
は、C1−6−アルキル、C3−14−シクロアルキル、3〜14員のシクロヘテロアルキル基、C6−14アリール、C1−6−アルコキシ、C1−6アルキルC6−14アリール、C1−6アルキルC3−14シクロアルキル、C1−6アルキル−3〜14員シクロヘテロアルキル基、C1−6アルキル−5〜14員ヘテロアリール基、C1−6アルキルOR、C1−6アルキルNR、C1−6アルコキシC6−14アリール、C1−6アルキルCN、またはC1−6アルキルC(O)ORであり、これらは、非置換であっても、1個以上のC1−6−アルキル、C6−14−アリール、ヒドロキシル、C1−6−アルキルハロ、C1−6アルコキシハロ、ハロ、C1−6−アルコキシ、C1−6アルキルC6−14アリール、C(O)OR、CN、オキソ、またはNR10で置換されていてもよく;
は、H、C1−6−アルキル、C2−6−アルケニル、C2−6−アルキニル、ヒドロキシル、またはハロであり;
およびRは、独立して、H、C1−6−アルキル、C3−14−シクロアルキル、またはハロであり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
、R、R、R、R、およびR10は、独立して、水素、C1−6−アルキル、C2−6−アルケニル、C2−6−アルキニル、C3−14−シクロアルキル、5〜14員のヘテロアリール基、C6−14−アリール、C(O)OR11、またはC(O)R11であり、これらは、非置換であっても置換されていてもよく;
Xは、NまたはCR12であり;
11およびR12は、独立して、H、ハロゲン、またはC1−6−アルキルである。]
の化合物または薬学的に許容される塩。
【請求項2】
が、C1−6−アルキル、C3−14−シクロアルキル、C6−14アリール、3〜14員のシクロヘテロアルキル基、C1−6アルキルC6−14アリール、C1−6アルキルC3−14シクロアルキル、C1−6アルキル−3〜14員シクロヘテロアルキル基、またはC1−6アルキル−5〜14員ヘテロアリール基であり、これらは、非置換であっても、1個以上のC1−6−アルキル、C6−14−アリール、ヒドロキシル、C1−6−アルキルハロ、ハロ、C1−6−アルコキシ、C1−6アルキルC6−14アリールで置換されていてもよい、請求項1に記載された式Iの化合物。
【請求項3】
が、C3−14−シクロアルキル、C6−14アリール、3〜14員のシクロヘテロアルキル基、C1−6アルキルC6−14アリール、またはC1−6アルキルC3−14シクロアルキルであり、これらは、非置換であっても、1個以上のC1−6−アルキルまたはC6−14−アリールで置換されていてもよい、請求項1から2の何れか1項に記載された式Iの化合物。
【請求項4】
およびRが、独立して、H、C1−6−アルキル、またはC3−14−シクロアルキルである、請求項1から3の何れか1項に記載された式Iの化合物。
【請求項5】
およびRの一方がHであり、RおよびRの他方がC1−6−アルキルまたはC3−14−シクロアルキルである、請求項1から4の何れか1項に記載された式Iの化合物。
【請求項6】
がHであり、Rが、メチル、エチルまたはプロピルである、請求項1から5の何れか1項に記載された式Iの化合物。
【請求項7】
XがNまたはCHである、請求項1から6の何れか1項に記載された式Iの化合物。
【請求項8】
XがNである、請求項1から7の何れか1項に記載された式Iの化合物。
【請求項9】
が、
【化2】

から選択され、
が、メチルまたはイソプロピルである、
請求項1〜8の何れか1項に記載された式Iの化合物。
【請求項10】
治療有効量の請求項1〜9の何れか1項に記載された式Iの化合物を含む医薬組成物。
【請求項11】
増殖性疾患に罹患している哺乳動物を処置する方法であって、処置を必要とする哺乳動物に、治療有効量の請求項1〜9の何れか1項に記載された式Iの化合物を投与することを含む方法。
【請求項12】
細胞増殖を阻止する方法であって、それを必要とする細胞または哺乳動物に、細胞増殖を阻止するのに有効な量の請求項1〜9の何れか1項に記載された式Iの化合物を投与することを含む方法。
【請求項13】
医薬に使用するための、請求項1〜9の何れか1項に記載された式Iの化合物。
【請求項14】
癌に使用するための、請求項1〜9の何れか1項に記載された式Iの化合物。

【公表番号】特表2011−506303(P2011−506303A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536492(P2010−536492)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067037
【国際公開番号】WO2009/071701
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【出願人】(506025512)アステックス・セラピューティクス・リミテッド (42)
【氏名又は名称原語表記】ASTEX THERAPEUTICS LIMITED
【Fターム(参考)】