説明

ピラーアンテナ取付構造

【課題】ピラーアンテナ用の貫通孔を設けてもピラーリインフォースの強度を維持可能であり、貫通孔を開けるための作業もしやすいピラーアンテナ取付構造を提供する。
【解決手段】車両のサイドボディアウタ110およびこのサイドボディアウタ110の内側に設置されるピラーリインフォース120に、ピラーアンテナ102が挿入される貫通孔112、122を有するピラーアンテナ取付構造100であって、ピラーリインフォース120の上面に、車外側に張り出した平面状の張出部120aを設け、張出部120aを含む平面部分に貫通孔122が開けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のピラーアンテナ取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、多くの車両にラジオ受信用のピラーアンテナが搭載されている。特許文献1に例示されるように、通常、ピラーアンテナは、サイドボディアウタに開けられた貫通孔にアンテナ本体が挿入され、車体に取り付けられている。特許文献1には明示されていないものの、貫通孔はサイドボディアウタの内側で補強を行うピラーリインフォースも貫通している。
【0003】
特許文献2には、サイドボディアウタ(サイドルーフレール)よりも車両内側のルーフ面に貫通孔を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−038808号公報
【特許文献2】特開2000−255332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1から想定されるようにピラーリインフォースに貫通孔を設ければ、その部材の強度は低下する。特にピラーリインフォースは、サイドボディアウタやサイドボディインナを補強するため、それらよりも厚めに形成されている。かかるピラーリインフォースの強度は維持する必要がある。
【0006】
また、ピラーリインフォースに貫通孔を設けるときには、その設置位置により、上面から側面に亘る曲げ加工が施された部分(クラウン)の複数の面をまたいで設けざるを得ない。曲げ加工が施された部分はとりわけ強度が高い部分であり、かかる部分に貫通孔を設けることでピラーリインフォースの強度は著しく低下してしまう。貫通孔自体、複数の面をまたいで形成されるので表面積が不要に大きくなってしまうし、孔開け作業も煩雑である。
【0007】
一方、特許文献2では、ピラーリインフォースに貫通孔を開ける必要がないので、ピラーリインフォースの強度を維持することができるとしている。しかしながら、上述のように、サイドボディアウタ(サイドルーフレール)でなく、それより車両内側のルーフ面にピラーアンテナが設置される。ピラーアンテナは、搭乗者自身の手で伸縮されるものが大半であり、その設置位置が車両内側になればなるほどアンテナの伸縮がしづらくなる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ピラーアンテナ用の貫通孔を設けてもピラーリインフォースの強度を維持可能であり、貫通孔を開けるための作業もしやすいピラーアンテナ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の代表的な構成は、車両のサイドボディアウタおよびこのサイドボディアウタの内側に設置されるピラーリインフォースに、ピラーアンテナが挿入される貫通孔を有するピラーアンテナ取付構造であって、ピラーリインフォースの上面に、車外側に張り出した平面状の張出部を設け、張出部を含む平面部分に貫通孔が開けられていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成によれば、ピラーリインフォースの上面であって平面状の張出部という十分なスペースに貫通孔を開けることができる。とりわけ、曲げ加工が施された部分でなく、平面状の張出部に貫通孔が開けられることで、ピラーリインフォースの強度の低下が著しく抑制される。
【0011】
また、貫通孔を平面状の張出部に形成することは、曲げ加工が施された部分に形成するより加工がしやすいので、作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピラーアンテナ用の貫通孔を設けてもピラーリインフォースの強度を維持可能であり、貫通孔を開けるための作業もしやすいピラーアンテナ取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態にかかるピラーアンテナ取付構造を説明する図である。
【図2】図1の部分詳細図である。
【図3】図2の各断面図である。
【図4】比較例としての従来のピラーアンテナ取付構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態にかかるピラーアンテナ取付構造100を説明する図である。図2は、図1の部分詳細図である。図2では、図1中のサイドボディアウタ110を二点鎖線で図示し、ピラーリインフォース120を実線で図示している。図3は、図2の各断面図である。
【0016】
図2に示すように、車両のサイドボディアウタ110およびその内側に設置されるピラーリインフォース120には、それぞれ貫通孔112、122が開けられている。これら貫通孔112、122は略一直線状に設けられている。ピラーリインフォース120の内側には、不図示のサイドボディインナが備えられる。
【0017】
ピラーアンテナ102は、上記のように略一直線上に設けられた貫通孔112、122に挿入されていて、そのベース部102aがサイドボディアウタ110に固定されている。ベース部102aに対しロッド102bは、電波の受信感度を上げるために搭乗者または電子制御によって伸縮可能となっている。ロッド102bが受信した電波は、コード102cに接続される不図示のラジオ等の電子機器に伝達される。
【0018】
図2および図3に示すように、ピラーリインフォース120には、車外側に張り出した平面状の張出部120aが設けられる。以下、本実施形態と比較する比較例としてのピラーリインフォース220と対比しながら、この張出部120aについて詳細に説明する。
【0019】
図4は、比較例としてのピラーアンテナ取付構造200を説明する図である。図4に示すように、比較例におけるピラーリインフォース220では、強度を向上させるために、随所に曲げ加工が施されていて、上面に充分なスペースを確保し得なかった。そのため、上面から側面に亘る曲げ加工が施された部分の複数の面をまたいで貫通孔222を設けざるを得なかった。
【0020】
強度の高いクラウン部分を切り取ってしまえば、当然ながらピラーリインフォース220全体としての著しい強度の低下を招く。貫通孔222は、複数の面をまたいで形成されるため、孔自体の表面積が不要に大きくなることも強度低下の一因となる。そもそも、複数の面をまたいで貫通孔220を開けることは、孔開け作業がしづらくなるため作業性を低下させる。
【0021】
そこで、図3(a)〜(c)に示すように、本実施形態にかかるピラーリインフォース120では、上記の張出部120aが設けられる。図3(a)および(c)と、図3(b)とを比較すると理解されるように、この張出部120aは局所的に設けられている。すなわち、張出部120aを挟んで前後方向には、比較例と同様にピラーリインフォース220の強度を高めるための曲げ加工されたクラウン120b、クラウン120cが施されている。
【0022】
張出部120aは、サイドボディアウタ110または他の部位に干渉しない限り、車外側に張り出させることができる。そして、ピラーリインフォース120の上面であって、この張出部120aを含む平面部分に貫通孔122が開けられる。曲げ加工が施された部分の複数の面をまたぐのではなく、平面状の張出部120aに貫通孔122が開けられることで、ピラーリインフォース120の強度の低下が著しく抑制される。
【0023】
車外側への張出部120aの張出程度を調整することにより、貫通孔122を開ける際に必要となる孔開けしろを含めて、充分なスペースが確保される。そのため、孔を開ける作業の作業性を従来よりも格段に向上させることができる。
【0024】
なお、張出部120aによってではなく、ピラーリインフォース120を凹ませるように押し潰して平らな上面を形成してもよい。ただしピラーリインフォース120を凹ませて平面部分を形成する場合には、その平面部分の面積は加工前のピラーリインフォース120の形状に依存するため、張出部120aを形成する場合と同等の効果が得られるとは限らない。しかし、本実施形態の特徴たる張出部120aでは、車外側への張出程度を調整することにより、加工前のピラーリインフォース120の形状が幅狭なものであっても貫通孔122を開けるために充分なスペースを確保することができる。
【0025】
上述したピラーアンテナ取付構造100によれば、ピラーリインフォース120の上面であって平面状の張出部120aという十分なスペースに貫通孔122を開けることができる。曲げ加工が施された部分でなく、平面状の張出部120aに貫通孔122が開けられるため、ピラーリインフォース120の強度低下は抑制される。また、平面状の張出部120aは局所的に設けられるものであり、張出部120aを挟んでその前後には、依然としてピラーリインフォース120の強度を向上させるために曲げ加工が施され、クラウン120b、クラウン120cが形成される。これより、ピラーリインフォース120の強度を維持することが可能となる。
【0026】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、車両のピラーアンテナ取付構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
100…ピラーアンテナ取付構造、102…ピラーアンテナ、102a…ベース部、102b…ロッド、102c…コード、110…サイドボディアウタ、112…貫通孔、120…ピラーリインフォース、120a…張出部、120b、120c…クラウン、122…貫通孔、200…ピラーアンテナ取付構造、220…ピラーリインフォース、222…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサイドボディアウタおよび該サイドボディアウタの内側に設置されるピラーリインフォースに、ピラーアンテナが挿入される貫通孔を有するピラーアンテナ取付構造であって、
ピラーリインフォースの上面に、車外側に張り出した平面状の張出部を設け、
前記張出部を含む平面部分に前記貫通孔が開けられていることを特徴とするピラーアンテナ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−98612(P2011−98612A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253596(P2009−253596)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】