説明

ピリジルメチルベンズアミド誘導体及びスルファミド誘導体を含有する殺菌剤組成物

少なくとも、一般式(I)で表されるピリジルメチルベンズアミド誘導体及びN−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミドを、0.01〜10の(a)/(b)の重量比で含んでいる、組成物。付加的な殺菌活性化合物をさらに含んでいる組成物。該組成物を用いる、作物の植物病原性菌類を予防的又は治療的に防除する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリジルメチルベンズアミド誘導体とスルファミド誘導体を含んでいる、新規殺菌剤組成物に関する。本発明は、さらにまた、植物病原性菌類が発生している場所又は発生しやすい場所に上記組成物を施用することによる、植物病原性菌類を防除する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願EP−A−1056723には、殺菌活性を増大させるためにピリジルメチルベンズアミド誘導体と既知殺菌活性生成物を組み合わせる可能性について包括的に開示されている。
【0003】
国際特許出願WO02/069713には、ピリジルメチルベンズアミド誘導体と亜リン酸又はその誘導体の1つを含んでいる殺菌剤混合物が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記混合物の一部は、相乗効果を示した。それにもかかわらず、環境中に散布される化学製品の薬量を最小限にし、処理に要するコストを減じながら、農業従事者により使用される活性成分又は既知活性成分の混合物に対する耐性菌株の発達を回避又は制御するために、相乗効果を示す新規農薬混合物を使用することには、農業分野において常に高い関心が持たれている
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記特性を有する数種類の新規殺菌剤組成物を見いだした。
【0006】
従って、本発明は、
(a)一般式(I):
【0007】
【化2】

[式中、
・ Rは、水素原子、場合により置換されていてもよいアルキル基又は場合により置換されていてもよいアシル基であり得る;
・ Rは、水素原子又は場合により置換されていてもよいアルキル基であり得る;
・ R及びRは、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、−SF、トリアルキルシリル基、場合により置換されていてもよいアミノ基、アシル基、又は、基E、基OE若しくは基SE(ここで、Eは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はヘテロシクリル基であることができ、また、これらは、それぞれ、場合により置換されていてもよい)であるように選択され得る;
・ pは、0、1、2、3又は4を表す;
・ qは、0、1、2、3又は4を表す]
で表されるピリジルメチルベンズアミド誘導体、並びに、その農業上許容される光学異性体及び/又は幾何異性体、互変異性体、及び、酸又は塩の付加塩;
及び
(b)N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミド;
を、0.01〜10の(a)/(b)の重量比で含んでいる組成物に関する。
【0008】
N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミドは、トリルフルアニドとしても知られているスルファミド誘導体の殺菌剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明との関連において:
・ 用語「ハロゲン」は、臭素、塩素、ヨウ素又はフッ素を意味する;
・ 用語「アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含んでいる直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素基を意味する;
・ 用語「アルケニル」は、2〜6個の炭素原子と二重結合の形態の不飽和を含んでいる直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を意味する;
・ 用語「アルキニル」は、2〜6個の炭素原子と三重結合の形態の不飽和を含んでいる直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を意味する;
・ 用語「アルコキシ」は、1〜6個の炭素原子を含んでいる直鎖又は分枝鎖のアルキルオキシ基を意味する;
・ 用語「アシル」は、ホルミル基を意味するか、又は、2〜6個の炭素原子を含んでいる直鎖又は分枝鎖のアルコキシカルボニル基を意味する;
・ 用語「シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子を含んでいる飽和環状炭化水素基を意味する;
・ 用語「アリール」は、フェニル基又はナフチル基を意味する;
・ 用語「ヘテロシクリル」は、3〜8個の原子(ここで、該原子は、炭素原子又は窒素原子又は硫黄原子又は酸素原子であり得る)を含んでいる、飽和環基、部分的飽和環基、不飽和環基又は芳香族環基を意味する。そのようなヘテロシクリルの例は、ピリジル、ピリジニル、キノリル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリニルなどであり得る;
・ 用語「場合により置換されていてもよい」は、そのように記載されている基が1以上の基(ここで、該基は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、ニトロ、アミン、シアノ又はアシルであり得る)で置換されていてもよいことを意味する。
【0010】
本発明の組成物は、相乗効果を示す。この相乗効果により、環境中に散布される化学物質を減じることが可能となり、また、菌類の処理に要するコストを減じることが可能となる。
【0011】
本発明との関連において、用語「相乗効果(synergistic effect)」は、文献(標題「Calculation of the synergistic and antagonistic responses of herbicide combinations」 Weeds,(1967),15, 20〜22頁)に従い、コルビー(Colby)により定義される。
【0012】
上記文献は、式:
【0013】
【数1】

[式中、Eは、2種類の殺菌剤の示されている薬量(例えば、それぞれ、x及びyに等しい)を組み合わせたものに対して期待される病害の阻害パーセントを表し、xは、化合物(I)の示されている薬量(xに等しい)による観察された病害の阻害パーセントであり、yは、化合物(II)の示されている薬量(yに等しい)による観察された病害の阻害パーセントである]
について言及している。当該組み合わせたものに対して観察された阻害パーセントがEより大きい場合、相乗効果が存在している。
【0014】
本発明との関連において、用語「相乗効果」は、Tammesの方法「Isoboles, a graphic representation of synergism in pesticides」(Netherlands Journal of Plant Pathology, 70(1964),73〜80頁)を適用することにより定義される効果も意味する。
【0015】
本発明の組成物は、一般式(I)で表されるピリジルメチルベンズアミド誘導体を含んでいる。
【0016】
好ましくは、本発明は、一般式(I):
[式中、以下の別個の特徴を単独で又は組み合わせて選択することができる:
・ R及びRに関して、R及びRは、互いに独立して、水素原子又は場合により置換されていてもよいアルキル基であるように選択され得る; さらに好ましくは、R及びRは、互いに独立して、水素原子、メチル基又はエチル基であるように選択され得る; さらに好ましくは、R及びRは、両方とも水素原子であり得る;
・ R及びRに関して、R及びRは、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、場合により置換されていてもよいアミノ基、アシル基、又は、基E、基OE若しくは基SE(ここで、Eは、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又はヘテロシクリル基であることができ、また、これらは、それぞれ、場合により置換されていてもよい)であるように選択され得る; さらに好ましくは、R及びRは、互いに独立して、ハロゲン原子、ニトロ基又はハロゲノアルキル基であるように選択される; さらに好ましくは、R及びRは、互いに独立して、塩素原子、ニトロ基又はトリフルオロメチル基であるように選択され得る;
・ pに関して、pは、1又は2であり得る; さらに好ましくは、pは2であり得る;
・ qに関して、qは、1又は2であり得る; さらに好ましくは、qは2であり得る]
で表されるピリジルメチルベンズアミド誘導体並びにその農業上許容される存在し得る互変異性体及び酸又は塩の付加塩を含んでいる組成物に関する。
【0017】
さらに好ましくは、本発明の組成物中に存在させる一般式(I)のピリジルメチルベンズアミド誘導体は:
・ 化合物(Ia)[ここで、化合物(Ia)は、2,6−ジクロロ−N−{[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]メチル}ベンズアミドである];
又は、
・ 化合物(Ib)[ここで、化合物(Ib)は、N−{[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]メチル}−2−フルオロ−6−ニトロベンズアミドである];
又は、
・ 化合物(Ic)[ここで、化合物(Ic)は、N−{[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]メチル}−2−メチル−6−ニトロベンズアミドである];
並びにその農業上許容される存在し得る互変異性体及び酸又は塩の付加塩である。
【0018】
本発明の組成物は、一般式(I)で表される少なくとも1種類のピリジルメチルベンズアミド誘導体(a)及びトリルフルアニド(b)を、(a)/(b)の重量比が、0.01〜10、好ましくは、0.05〜0.5、さらに好ましくは、0.1〜0.2となるように含んでいる。
【0019】
本発明の組成物は、さらに、第三の殺菌活性成分(c)も含有し得る。
【0020】
第三の殺菌活性成分は、好ましくは、亜リン酸誘導体、亜リン酸自体、又は、亜リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩若しくは金属塩から選択され得る。さらに好ましくは、付加的に含まれている前記殺菌活性化合物は、ホスホン酸水素エチルであるように選択される。
【0021】
ホスホン酸水素エチルは、ホセチル−アルミニウム(Fosetyl−Al)としても知られている殺菌活性化合物である。
【0022】
本発明組成物中に上記で定義した第三の殺菌活性成分(c)が存在している場合、その化合物は、(a):(b):(c)の重量比が0.01:1:0.1〜10:1:10(ここで、化合物(a)と化合物(c)の割合は互いに独立して変動する)となる量で存在し得る。好ましくは、(a):(b):(c)の重量比は、0.05:1:0.5〜0.5:1:5であり得、さらに好ましくは、0.1:1:1〜0.2:1:4であり得る。
【0023】
本発明の組成物は、さらに、農業上許容される支持体、担体又は増量剤などの付加的な他の成分も含有し得る。
【0024】
本明細書において、用語「支持体(support)」は、該活性物質と合することでその活性物質の、特に植物の一部分への、施用を容易にする、天然又は合成の有機又は無機の物質を意味する。かくして、そのような支持体は、一般に不活性であり、また、農業上許容されるものであるべきである。支持体は、固体であってもよいし、又は、液体であってもよい。適切な支持体の例としては、クレー、天然又は合成のシリケート、シリカ、樹脂、蝋、固形肥料、水、アルコール(特に、ブタノール)、有機溶媒、鉱油及び植物油、並びに、それらの誘導体などを挙げることができる。このような支持体の混合物を使用することもできる。
【0025】
上記組成物は、さらにまた、付加的な別の成分も含有することができる。特に、該組成物は、さらに、界面活性剤を含有することができる。該界面活性剤は、イオン性若しくは非イオン性のタイプの乳化剤、分散剤若しくは湿潤剤であることが可能であるか、又は、そのような界面活性剤の混合物であることが可能である。例えば、以下のものを挙げることができる:ポリアクリル酸塩、リグノスルホン酸塩、フェノールスルホン酸塩若しくはナフタレンスルホン酸塩、エチレンオキシドと脂肪アルコールの重縮合物、エチレンオキシドと脂肪酸の重縮合物若しくはエチレンオキシドと脂肪アミンの重縮合物、置換されているフェノール(特に、アルキルフェノール又はアリールフェノール)、スルホコハク酸エステルの塩、タウリン誘導体(特に、アルキルタウレート)、ポリオキシエチル化アルコールのリン酸エステル若しくはポリオキシエチル化フェノールのリン酸エステル、ポリオールの脂肪酸エステル、並びに、硫酸官能基、スルホン酸官能基又はリン酸官能基を含んでいる上記化合物の誘導体など。該活性物質及び/又は該不活性支持体が水不溶性である場合、及び、施用のための媒介物(vector agent)が水である場合、一般に、少なくとも1種類の界面活性剤を存在させることが必要である。好ましくは、界面活性剤の含有量は、該組成物の5重量%〜40重量%であり得る。
【0026】
さらにまた、付加的な成分、例えば、保護コロイド、粘着剤、増粘剤、揺変剤、浸透剤、安定化剤、金属イオン封鎖剤などを含ませることもできる。さらに一般的には、該活性物質は、通常の製剤技術に従う固体又は液体の任意の添加剤と組み合わせることが可能である。
【0027】
一般に、本発明の組成物は、0.05〜99%(重量基準)の活性物質、好ましくは、10〜70重量%の活性物質を含有することができる。
【0028】
本発明の組成物は、エーロゾルディスペンサー(aerosol dispenser)、カプセル懸濁液剤(capsule suspension)、冷煙霧濃厚剤(cold fogging concentrate)、散粉性粉剤(dustable powder)、乳剤、水中油型エマルション剤、油中水型エマルション剤、カプセル化粒剤、細粒剤(fine granule)、種子処理用フロアブル剤(flowable concentrate for seed treatment)、ガス剤(gas)(加圧下)、ガス生成剤(gas generating product)、粒剤、温煙霧濃厚剤(hot fogging concentrate)、大型粒剤(macrogranule)、微粒剤(microgranule)、油分散性粉剤(oil dispersible powder)、油混和性フロアブル剤(oil miscible flowable concentrate)、油混和性液剤(oil miscible liquid)、ペースト剤、植物用棒状剤(plant rodlet)、乾燥種子処理用粉剤(powder for dry seed treatment)、農薬粉衣種子(seed coated with a pesticide)、可溶性濃厚剤(soluble concentrate)、可溶性粉剤(soluble powder)、種子処理用溶液剤(solution for seed treatment)、懸濁液剤(フロアブル剤)、微量散布用液剤(ultra low volume (ulv) liquid)、微量散布用懸濁液剤(ultra low volume (ulv) suspension)、顆粒水和剤(water dispersible granule)、水分散性錠剤(water dispersible tablet)、泥水処理用水和剤(water dispersible powder for slurry treatment)、水溶性顆粒剤(water soluble granule)、水溶性錠剤(water soluble tablet)、種子処理用水溶性粉剤(water soluble powder for seed treatment)、及び、水和剤のような、さまざまな形態で使用することが可能である。
【0029】
これらの組成物には、処理対象の植物又は種子に対して噴霧装置又は散粉装置のような適切な装置により施用される状態にある組成物のみではなく、作物に対して施用する前に希釈することが必要な市販の濃厚組成物も包含される。
【0030】
本発明の殺菌剤組成物を使用して、作物の植物病原性菌類を治療的又は予防的に防除することができる。従って、本発明のさらに別の態様により、作物の植物病原性菌類を治療的又は予防的に防除する方法が提供され、ここで、該方法は、上記で定義した殺菌剤組成物を、種子、植物及び/若しくは植物の果実に施用するか、又は、植物が生育している土壌若しくは植物を栽培するのが望ましい土壌に施用することを特徴とする。
【0031】
作物の植物病原性菌類に対して使用する本発明の組成物は、有効で且つ植物に対して毒性を示さない量の一般式(I)の活性物質を含有している。
【0032】
「有効で且つ植物に対して毒性を示さない量」という表現は、作物上に存在しているか又はおそらく出現するであろう菌類を防除又は駆除するのに充分で、且つ、該作物について植物毒性の感知可能などのような症状も引き起こすことのない、本発明組成物の量を意味する。そのような量は、防除対象の菌類、作物のタイプ、気候条件、及び、本発明の殺菌剤組成物に含まれている化合物に応じて、広い範囲で変動し得る。
【0033】
そのような量は、当業者が実行可能な範囲内にある体系的な圃場試験により決定することが可能である。
【0034】
本発明による処置方法は、塊茎又は根茎のような繁殖材料を処置するのに有効であるのみではなく、種子、実生又は移植実生(seedlings pricking out)及び植物又は移植植物(plants pricking out)を処置するのにも有効である。この処置方法は、根を処置するのにも有効であり得る。本発明による処置方法は、関係している植物の樹幹、茎又は柄、葉、花及び果実のような植物の地上部を処置するのにも有効であり得る。
【0035】
本発明の方法で保護可能な植物の中で、以下のものを挙げることができる:ワタ;アマ;ブドウ;果実作物又は野菜作物、例えば、Rosaceae sp.(例えば、種子果(pip fruit)、例えば、リンゴ及びナシ、さらに、石果、例えば、アンズ、アーモンド及びモモ)、Ribesioidae sp.、Juglandaceae sp.、Betulaceae sp.、Anacardiaceae sp.、Fagaceae sp.、Moraceae sp.、Oleaceae sp.、Actinidaceae sp.、Lauraceae sp.、Musaceae sp.(例えば、バナナの木及びプランタン)、Rubiaceae sp.、Theaceae sp.、Sterculiceae sp.、Rutaceae sp.(例えば、レモン、オレンジ及びグレープフルーツ);マメ科作物、例えば、Solanaceae sp.(例えば、トマト)、Liliaceae sp.、Asteraceae sp.(例えば、レタス)、Umbelliferae sp.、Cruciferae sp.、Chenopodiaceae sp.、Cucurbitaceae sp.、Papilionaceae sp.(例えば、エンドウ)、Rosaceae sp.(例えば、イチゴ);大型作物(big crop)、例えば、Graminae sp.(例えば、トウモロコシ、芝又は禾穀類、例えば、コムギ、イネ、オオムギ及びライコムギ)、Asteraceae sp.(例えば、ヒマワリ)、Cruciferae sp.(例えば、ナタネ)、Papilionaceae sp.(例えば、ダイズ)、Solanaceae sp.(例えば、ジャガイモ)、Chenopodiaceae sp.(例えば、ビート(beetroot));園芸作物及び森林作物(forest crops);さらに、これら作物の遺伝的に修飾された相同物。
【0036】
本発明の方法で保護される植物及びそれら植物の可能性のある病害の中で、以下のものを挙げることができる:
・ コムギ〔以下に示す種子の病害の防除に関して〕:フザリア(fusaria)(Microdochium nivale、及び、Fusarium roseum)、なまぐさ黒穂病(Tilletia cariesTilletia controversa、又は、Tilletia indica)、セプトリア病(Septoria nodorum)、及び、裸黒穂病;
・ コムギ〔以下に示すコムギ植物の地上部の病害の防除に関して〕:穀類眼紋病(cereal eyespot)(Tapesia yallundaeTapesia acuiformis)、立枯病(Gaeumannomyces graminis)、赤かび病(foot blight)(F.culmorumF.graminearum)、ブラックスペック(black speck)(Rhizoctonia cerealis)、うどんこ病(Erysiphe graminis forma specie tritici)、さび病(Puccinia striiformis、及び、Puccinia recondita)、及び、セプトリア病(Septoria tritici、及び、Septoria nodorum);
・ コムギ及びオオムギ〔細菌病及びウイルス病の防除に関して〕:例えば、オオムギ縞萎縮病(barley yellow mosaic);
・ オオムギ〔以下に示す種子の病害の防除に関して〕:網斑病(Pyrenophora gramineaPyrenophora teres、及び、Cochliobolus sativus)、裸黒穂病(Ustilago nuda)、及び、フザリア(fusaria)(Microdochium nivale、及び、Fusarium roseum);
・ オオムギ〔以下に示すオオムギ植物の地上部の病害の防除に関して〕:穀類眼紋病(cereal eyespot)(Tapesia yallundae)、網斑病(Pyrenophora teres、及び、Cochliobolus sativus)、うどんこ病(Erysiphe graminis forma specie hordei)、小さび病(dwarf leaf rust)(Puccinia hordei)、及び、雲形病(leaf blotch)(Rhynchosporium secalis);
・ ジャガイモ〔塊茎の病害の防除に関して〕:(特に、Helminthosporium solaniPhoma tuberosaRhizoctonia solaniFusarium solani)、べと病(Phytopthora infestans)、及び、特定のウイルス(ウイルスY);
・ ジャガイモ〔以下に示す茎葉部の病害の防除に関して〕:夏疫病(Alternaria solani)、べと病(Phytophthora infestans);
・ ワタ〔種子から生育した幼植物の以下に示す病害の防除に関して〕:立枯病及び地際部腐敗(collar rot)(Rhizoctonia solaniFusarium oxysporum)、及び、黒根腐病(black root rot)(Thielaviopsis basicola);
・ タンパク質産生作物(protein yielding crop)、例えば、エンドウ〔以下に示す種子の病害の防除に関して〕:炭疽病(Ascochyta pisiMycosphaerella pinodes)、フザリア(fusaria)(Fusarium oxysporum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、及び、べと病(Peronospora pisi);
・ 油料作物(oil-bearing crop)、例えば、ナタネ〔以下に示す種子の病害の防除に関して〕:Phoma lingamAlternaria brassicae、及び、Sclerotinia sclerotiorum
・ トウモロコシ〔種子の病害の防除に関して〕:(Rhizopus sp.、Penicillium sp.、Trichoderma sp.、Aspergillus sp.、及び、Gibberella fujikuroi);
・ アマ〔種子の病害の防除に関して〕:Alternaria linicola
・ 森林樹〔立枯病の防除に関して〕:(Fusarium oxysporumRhizoctonia solani);
・ イネ〔以下に示す地上部の病害の防除に関して〕:いもち病(Magnaporthe grisea)、紋枯病(bordered sheath spot)(Rhizoctonia solani);
・ マメ科作物〔種子又は種子から生育した幼植物の以下に示す病害の防除に関して〕:立枯病及び地際部腐敗(collar rot)(Fusarium oxysporumFusarium roseumRhizoctonia solaniPythium sp.);
・ マメ科作物〔以下に示す地上部の病害の防除に関して〕:灰色かび病(Botrytis sp.)、うどんこ病(特に、Erysiphe cichoracearumSphaerotheca fuliginea、及び、Leveillula taurica)、フザリア(fusaria)(Fusarium oxysporumFusarium roseum)、斑点病(Cladosporium sp.)、褐点病(alternaria leaf spot)(Alternaria sp.)、炭疽病(Colletotrichum sp.)、セプトリア斑点病(septoria leaf spot)(Septoria sp.)、ブラックスペック(black speck)(Rhizoctonia solani)、べと病(例えば、Bremia lactucaePeronospora sp.、Pseudoperonospora sp.、Phytophthora sp.);
・ 果樹〔地上部の病害に関して〕:モニリア病(Monilia fructigenaeM.laxa)、瘡痂病(Venturia inaequalis)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha);
・ ブドウ〔茎葉部の病害に関して〕:特に、灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Uncinula necator)、黒腐病(Guignardia biwelli)、及び、べと病(Plasmopara viticola);
・ ビート(beetroot)〔以下に示す地上部の病害に関して〕:サーコスポラ葉枯病(cercospora blight)(Cercospora beticola)、うどんこ病(Erysiphe beticola)、斑点病(Ramularia beticola)。
【0037】
好ましくは、本発明の方法で保護可能な植物は、ブドウである。
【0038】
本発明の殺菌剤組成物は、木材の表面又は内部で発生するであろう菌類病に対しても使用することができる。用語「材木」は、全ての種類の木、そのような木を建築用に加工した全てのタイプのもの、例えば、ソリッドウッド、高密度木材、積層木材及び合板などを意味する。本発明による材木の処理方法は、主に、本発明の1種類以上の化合物又は本発明の組成物を接触させることにより行う。これには、例えば、直接的な塗布、噴霧、浸漬、注入、又は、別の適切な任意の方法が包含される。
【0039】
本発明の処理において通常施用される活性物質の薬量は、一般に、また、有利には、茎葉処理における施用では、10〜2000g/ha、好ましくは、50〜1500g/haである。種子処理の場合は、活性物質の施用薬量は、一般に、また、有利には、種子100kg当たり2〜200g、好ましくは、種子100kg当たり3〜150gである。上記で示されている薬量が本発明を例証するための例として挙げられていることは、明確に理解される。当業者は、処理対象の作物の種類に基づいて、該施用薬量を適合させる方法を理解するであろう。
【0040】
さらにまた、本発明の殺菌剤組成物は、遺伝的に修飾されている生物の本発明化合物又は本発明農薬組成物による処理においても使用することができる。遺伝的に修飾されている植物は、興味深いタンパク質をコードする異種の遺伝子がゲノムに安定的に組み込まれている植物である。「興味深いタンパク質をコードする異種の遺伝子(heterologous gene encoding a protein of interest)」という表現は、本質的に、形質転換された植物に新しい農業的特性を付与する遺伝子を意味するか、又は、形質転換された植物の農業的質を改善する遺伝子を意味する。
【0041】
さらにまた、本発明の組成物は、例えば、真菌症、皮膚病、白癬菌性疾患(trichophyton disease)及びカンジダ症、又は、Aspergillus spp.(例えば、Aspergillus fumigatus)に起因する疾患のようなヒト及び動物の菌類病を、治療的又は予防的に処置するのに有効な組成物を調製するのにも使用することもできる。
【0042】
以下の実施例により本発明を例証する。
【実施例】
【0043】
実施例:本発明組成物によるブドウの処理
本実施例は、トマトに対する72時間予防的施用において、ブドウべと病(Plasmopara Viticola)に対する2,6−ジクロロ−N−{[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]メチル}ベンズアミド(化合物(Ia))とトリルフルアニドの混合物の相乗効果を立証する。
【0044】
ブドウ植物(品種 Cabernet−Sauvignon)を、プラスチック製ポット内の砂質土壌で、1ポット当たり1植物で生育させた。2ヶ月齢で(6〜7枚の葉が展開)、これらの植物に、当該2種類の殺菌剤を、単独で、又は、混合して、散布した。混合して施用した殺菌活性化合物は、さらに、混合して用いた薬量と同じ薬量で単独でも施用した。単独の殺菌活性化合物又は混合された殺菌活性化合物は、250L/haの散布水量で施用した。
【0045】
化合物(Ia)/トリルフルアニドの3種類の比(1/5、 1/6.67 及び 1/10)の混合物について試験した。
【0046】
480g/Lの懸濁液剤(SC)の形態にある化合物(Ia)と500g/kgの顆粒水和剤(WG)の形態にあるトリルフルアニド(Euparene)から出発して、1ヘクタール当たり250Lの散布液量に相当する量で施用するための植物保護用混合物を調製する。
【0047】
化合物(Ia)の薬量範囲は、1.56mg/L、12.5mg/L、25mg/L、50mg/L及び75mg/Lである。
【0048】
処理の3日後、汚染された葉から得たPlasmopara viticolaの胞子嚢の水性懸濁液を散布することにより、各植物に接種した。胞子嚢の濃度は、1mL当たり約100,000単位であった。
【0049】
汚染後、植物を飽和雰囲気下18℃で2日間インキュベーションし、次いで、90〜100%の相対湿度、約20℃で、5日間インキュベーションした。
【0050】
汚染の7日後、病徴を、感染させた葉の下面の範囲について、処理はしていないが汚染させた植物との比較で、評価した。
【0051】
上記処理による効力は、アボットの式(Abbott formula):
効力=(未処理−処理/未処理)×100
を用いて計算した。
【0052】
各成分について、50%、70%及び90%の効力を示す、単独の上記殺菌活性化合物又は混合されている上記殺菌活性化合物の濃度を、それらの信頼区間と共に、シグモイド曲線薬量/反応モデルに基づいて決定した。
【0053】
得られた結果の解析は、TAMMESモデル(「Isoboles, a graphic representation of synergism in pesticides」(Neth. J. Plant Path. 70(1964):73−80))又はコルビー(Colby)モデルを用いて行った。
【0054】
得られた結果は、病原体の50%防除、70%防除又は90%防除に対応する評価点(point value)の形で表し、Tammesアイソボール図(isobole diagram)(x軸上に化合物(Ia)の薬量(mg/L)を有し、y軸上にトリルフルアニドの薬量(mg/L)を有する)の中に配置する。
【0055】
評価したさまざまな割合の混合物について、ED50、ED70及びED90(50%、70%及び90%の病害を防除する有効薬量)に対応する計算結果を、以下の表1,表2及び表3に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
これらの結果は、トマト上の病害の50%、70%及び90%を防除するための方法及び比率範囲についての製品の効力を考慮して、Tammes法に従い、各因子当たり3反復に基づいて計算した。
【0060】
トマト疫病についての上記予防的試験は、1/5、1/6.67及び1/10に等しい割合で化合物A及び化合物Bを含んでいる殺菌剤組成物の相乗作用を示している。該病害の50%、70%及び90%を防除するのに必要な化合物の薬量は、相加効果(additional effect)を有する混合物において期待される各化合物の理論的な薬量に比較して、両方の化合物とも少ないことが示された。
【0061】
上記混合物の相乗作用は、データをコルビー(Colby)法で解析しても、同様に、立証される。以下の表4は、本発明の化合物(Ia)とトリルフルアニドの混合物の相乗作用を評価するのにコルビー(Colby)法を使用して得た結果を表している。実際の効力は、理論上の効力を上回っており、これは、1/5、1/6.67及び1/10に等しい割合で化合物(Ia)とトリルフルアニドを含んでいる殺菌剤組成物の相乗作用を示している。
【0062】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(I):
【化1】

[式中、
・ Rは、水素原子、場合により置換されていてもよいアルキル基又は場合により置換されていてもよいアシル基であり得る;
・ Rは、水素原子又は場合により置換されていてもよいアルキル基であり得る;
・ R及びRは、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、−SF、トリアルキルシリル基、場合により置換されていてもよいアミノ基、アシル基、又は、基E、基OE若しくは基SE(ここで、Eは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基又はヘテロシクリル基であることができ、また、これらは、それぞれ、場合により置換されていてもよい)であるように選択され得る;
・ pは、0、1、2、3又は4を表す;
・ qは、0、1、2、3又は4を表す]
で表されるピリジルメチルベンズアミド誘導体、並びに、その農業上許容される光学異性体及び/又は幾何異性体、互変異性体、及び、酸又は塩の付加塩;
及び
(b)N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミド;
を、0.01〜10の(a)/(b)の重量比で含んでいる組成物。
【請求項2】
及びRが、互いに独立して、水素原子又は場合により置換されていてもよいアルキル基であるように選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
及びRが、両方とも水素原子であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項4】
及びRが、互いに独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、場合により置換されていてもよいアミノ基、アシル基、又は、基E、基OE若しくは基SE(ここで、Eは、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又はヘテロシクリル基であることができ、また、これらは、それぞれ、場合により置換されていてもよい)であるように選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
及びRが、互いに独立して、ハロゲン原子、ニトロ基又はハロゲノアルキル基であるように選択されることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ハロゲン原子が塩素原子であり、前記ハロゲノアルキル基がトリフルオロメチル基であることを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
p及びqが、互いに独立して、1又は2であるように選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
pが2であることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
qが2であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
一般式(I)で表される化合物が、
・ 化合物(Ia)[ここで、化合物(Ia)は、2,6−ジクロロ−N−{[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]メチル}ベンズアミドである];
又は、
・ 化合物(Ib)[ここで、化合物(Ib)は、N−{[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]メチル}−2−フルオロ−6−ニトロベンズアミドである];
又は、
・ 化合物(Ic)[ここで、化合物(Ic)は、N−{[3−クロロ−5−(トリフルオロメチル)−2−ピリジニル]メチル}−2−メチル−6−ニトロベンズアミドである];
であるように選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
(a)/(b)の重量比が0.05〜0.5であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
(a)/(b)の重量比が0.1〜0.2であることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
殺菌活性化合物(c)をさらに含んでいる、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
付加的に含まれている前記殺菌活性化合物が、亜リン酸誘導体、亜リン酸自体、又は、亜リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩若しくは金属塩から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
付加的に含まれている前記殺菌活性化合物が、ホスホン酸水素エチルであることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
化合物(c)が、(a):(b):(c)の重量比が0.01:1:0.1から10:1:10(ここで、化合物(a)と化合物(c)の割合は互いに独立して変動する)となる量で存在していることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
農業上許容される支持体、担体、増量剤及び/又は界面活性剤をさらに含んでいることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
作物の植物病原性菌類を予防的又は治療的に防除する方法であって、有効で且つ植物に対して毒性を示さない量の請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物を、種子、植物及び/若しくは植物の果実に施用するか、又は、植物がそこで生育している土壌若しくは植物をそこで栽培するのが望ましい土壌に施用することを特徴とする、前記方法。
【請求項19】
前記植物がブドウであることを特徴とする、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2007−509907(P2007−509907A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537271(P2006−537271)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013117
【国際公開番号】WO2005/060747
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(503325538)バイエル・クロツプサイエンス・エス・アー (73)
【Fターム(参考)】