説明

ピリダジン化合物および方法

本発明は、新規な化学化合物、組成物ならびにその製造方法および使用に関する。特に、本発明は、ピリダジン化合物および/または関連する複素環誘導体、それを含む組成物、ならびに細胞経路(例えば、シグナル伝達経路)の調節のために、炎症疾患(例えば、アルツハイマー病)の治療もしくは予防のために、研究、薬剤スクリーニング、および治療用途のために、ピリダジン化合物および/または関連する複素環誘導体およびそれを含む組成物を使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部、NIH補助金PO1AG21184およびR01NS47586の下で見出された。米国政府は、本発明において一定の権利を有することができる。
【0002】
(関連出願)
本願は、参照として本明細書に組み込まれる、米国特許仮出願第60/624346号(2004年11月2日出願)および米国特許仮出願第60/723376号(2005年10月4日出願)の優先権を主張する。
【0003】
本発明は、新規な化学化合物ならびにその製造方法および使用に関する。特に、本発明は、ピリダジン化合物および/または関連する複素環誘導体、特に、シンノリン化合物、それを含む組成物、ならびにピリダジン化合物および/または関連する複素環誘導体、特に、シンノリン化合物、およびそれを含む組成物を、細胞経路(例えば、シグナル伝達経路)の調節のために、炎症疾患(例えば、アルツハイマー病)の治療もしくは予防のために、研究、薬剤スクリーニング、および治療用途のために使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
炎症状態および疾患の大部分は、生体の有益な応答および不利な応答間の恒常性のバランスの崩壊に起因する。例えば、細胞の生存およびその他の有益な細胞過程を媒介する栄養分子の産生の減少であるかもしれない、または炎症誘発性のまたは毒性の細胞応答を媒介するその他の有害分子の過剰産生であるかもしれない。タンパク質キナーゼを含むシグナル伝達経路の失調は、多くの場合、これらの疾患の発生または進行において含まれる。例えば、神経炎症は、主にグリア(小膠細胞および星状膠細胞)の異常に高いまたは慢性的な活性化に起因する過程である。グリアのこの過剰活性状態は、神経損傷または死を引き起こすことのできる、炎症および酸化ストレス分子の増加した水準を招くことになる。神経損傷/死は、また、神経炎症の局在化した有害なサイクルの伝播を促す、グリア活性化を誘発することができる[7]。
【0005】
炎症(例えば、神経炎症)サイクルは、炎症疾患(例えば、アルツハイマー病)を治療するための新しい方法の開発において可能性のある治療目標として提案されている。しかしながら、伝統的な非ステロイド系抗炎症薬剤の目標のみに焦点を合わせる化合物の有効性および毒性学的特徴は、今日まで期待に背くものであって、例えば、ほとんどの抗炎症治療は、炎症疾患(例えば、アルツハイマー病等の神経炎症疾患)の進行について限定された効果を伴う、最小限の、長続きしない、症状の緩和をもたらす一時的なものである。炎症疾患(例えば、アルツハイマー病等の神経炎症疾患)の大きな社会的影響は、次の10年間に大いに増加することが予想されるので、診断(例えば、認知減退の診断)後直ぐに投与された場合に、または危険要因と予後値との組合せが確認できる化学的予防パラダイムにおいて、疾患進行に影響を与える抗炎症治療に対する差し迫った必要性が存在する。いずれの治療パラダイムにおいても、新たな薬剤は、良好な治療指数、特に、高齢者において可能性のある毒物学に関する良好な治療指数を有さなければならない。
【0006】
極度の必要性および十分に明確にされた分子目標の存在にもかかわらず、現在の抗炎症薬剤開発の経路は、関連する治療の枠および疾患の進行を変えるために必要とされる治療パラダイム内で作用する化学的に多様な化合物を欠いており、この治療の枠に当てはまる比較的軽視された領域が神経炎症である[1]。したがって、炎症疾患関連経路を調節することのできる抗炎症化合物の新たなクラスの開発が急務である。
【0007】
(発明の概要)
本発明は、新規な化学化合物ならびにその製造方法および使用に関する。特に、本発明は、シンノリン化合物および/または関連する複素環誘導体、それらを含む組成物、ならびにピリダジン化合物および/または関連する複素環誘導体、およびそれらを含む組成物を、細胞経路(例えば、シグナル伝達経路)の調節のために、炎症疾患(例えば、アルツハイマー病)の治療もしくは予防のために、研究、薬剤スクリーニング、および治療用途のために使用する方法を提供する。
【0008】
概して、本発明は、式Ia、Ib、IcおよびId:
【化1】

【0009】
(式中、R、R、RおよびRは、独立に、置換または非置換の、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルコキシ、アルケニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、ヘテロアリール、複素環、アシル、アシルオキシ、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、アミノ、イミノ、アジド、チオール、チオアルキル、チオアルコキシ、チオアリール、ニトロ、ウレイド、シアノ、ハロ、シリル、シリルオキシ、シリルチオ、カルボキシル、カルボニル、カルバモイル、またはカルボキサミドである)を含む式Iの化合物、この互変異性体、異性体、共役塩基、または薬剤として許容されるそれらの塩を対象に投与することを含む、対象において、本明細書において開示される疾患、特に、炎症疾患を治療するための方法を提供する。
【0010】
一態様においては、表3において示されている化合物を除外して、本明細書において定義される式Iの化合物を投与することを含む、対象において、本明細書において開示される疾患を治療するための方法が提供される。
【0011】
本発明は、式Iの1つまたは複数の化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、対象において、本明細書において開示される疾患を治療するための方法に関する。一態様においては、本発明は、治療後の有益な効果を提供する。
【0012】
本発明のその他の態様においては、式Iの化合物、またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩の治療有効量を対象に投与することを含む、炎症を含むまたは特徴とする疾患、特に、神経炎症を、対象において治療するための方法が提供される。さらなる態様においては、式Iの化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩、および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、炎症を含む状態、特に、神経炎症を、対象において治療するための方法が提供される。
【0013】
さらなる態様においては、本発明は、神経炎症、グリアの活性化、炎症誘発性サイトカイン、酸化ストレス関連酵素、急性期タンパク質および/または補体カスケードの成分を阻害または減少する、式Iの治療的化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩、または式Iの化合物あるいはそれらの異性体あるいは薬剤として許容されるそれらの塩、および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物、を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0014】
その他の態様においては、本発明は、式Iの化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩、または式Iの化合物、および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、本明細書において開示される化合物で減少または阻害することのできる、神経炎症を随伴する疾患を、対象において治療するための方法を提供する。
【0015】
本発明方法は、タンパク質キナーゼ、特に、死に関連したタンパク質キナーゼ(DAPK)の活性化を予防または阻害するため;キナーゼ活性、グリア活性化、神経細胞損傷、および/または神経細胞死を減少または阻害するため;細胞シグナル伝達分子産生(例えば、IL−1βおよびTNFα)を阻害するため、疾患の進行を改善するため、またはその様な疾患に罹患している対象において、疾患の比較的軽度の段階を獲得するため;対象における疾患の進行を遅延させるため;疾患に罹患している対象の生存を増加するため;および/または対象における神経変性疾患を治療または予防するために使用されてもよい。
【0016】
本発明方法の特定の態様においては、式Iの化合物は、図および表、特に表4において示される化合物である。
【0017】
本発明方法は、本明細書に開示される疾患に罹患しやすい、または遺伝子的疾病素質を有する対象において治療的にまたは予防的に使用することができる。したがって、本発明は、式Iの化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物の、1つまたは複数の有効量を投与することにより、その様な疾患に対して遺伝子的疾病素質を持つ対象において、本明細書に開示される疾患を予防するための方法を提供する。
【0018】
本発明は、神経変性疾患、特に、アルツハイマー病の治療または予防において特別の用途を有する。したがって、本発明は、式Iの1つまたは複数の化合物、この異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む治療方法であって、神経変性疾患、特にアルツハイマー病の症状を持つ対象への投与により、1つまたは複数の治療効果、特に、有益な効果、さらに詳しく言えば、持続した有益な効果を生み出す治療方法に関する。
【0019】
本発明は、式Iの化合物、この異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩の1つまたは複数、または式Iの化合物の1つまたは複数および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患している対象の寿命を改善するための方法に関する。
【0020】
本発明は、表3において表される化合物を除外するという条件で、本明細書において定義される式Iの化合物に関する。
【0021】
式Iの化合物は、in vivoにおいて活性化合物に転換されるプロドラッグの形態であってもよい。さらに、式Iの化合物は、R、R、R、およびRの1つまたは複数と相互作用する担体を場合により含んでもよい。担体は、ポリマー、炭水化物、もしくはペプチド、またはこれらの組合せであってもよく、例えば、1つまたは複数のアルキル、ハロ、ヒドロキシル、ハロ、またはアミノで場合により置換されていてもよい。
【0022】
本発明の態様に従い、ピリダジン化合物および/またはこの関連する複素環誘導体、特に、シンノリン化合物(例えば、本明細書における図および表、特に、表4において示される化合物またはこれらの誘導体を参照されたい)は、研究、薬剤スクリーニングにおける使用のため、細胞経路(例えば、シグナル伝達経路)の調節のため、および炎症疾患(例えば、アルツハイマー病)の治療または予防のために提供される。いくつかの実施形態においては、本発明は、炎症誘発性および酸化ストレス関連細胞シグナル伝達経路(例えば、活性化グリア細胞における)を調節することのできる化学化合物の新たなクラスを提供する。いくつかの実施形態においては、本明細書における図および表、特に表4の1つまたは複数の化合物は、単独でまたはその他の化合物もしくは治療との組合せで、キナーゼ活性を調節するために使用される。いくつかの実施形態においては、本発明により包含される化合物は、3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン構造(図1、化合物7)を含むトリアジン化合物を含む。いくつかの実施形態においては、本発明により提供される、化合物およびこの化合物を使用する方法は、本明細書における図および表、特に表4において示されるものである。いくつかの実施形態においては、本発明は、また、提供された工程(例えば、図1ならびに材料および方法を参照されたい)を含む、本明細書における図および表の化合物の製造方法を提供する。好ましい実施形態においては、共通の前駆体、3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン(図1、化合物7)は、MW01−2−151WH、MW01−3−202WH、および/またはMW01−3−173WHの合成において使用される。
【0023】
いくつかの実施形態においては、本発明は、MW01−2−151WH、MW01−3−202WHおよびMW01−3−173WH、および/またはこれらの化合物の関連する複素環誘導体およびこの製造方法ならびに、細胞経路(例えば、シグナル伝達経路)を調節するため、研究、薬剤スクリーニングのため、および治療用途のための使用方法を提供する。
【0024】
一態様においては、本発明は、本明細書に開示される疾患の予防および/または治療のための組成物を提供する。したがって、本発明は、疾患を治療するための、式Iの化合物、またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩を含む薬剤組成物、特に、式Iの化合物、またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩の治療有効量を含む薬剤組成物を提供する。さらに詳しく言えば、本発明は、治療効果、特に、本明細書に開示される疾患を治療するための有益な効果を与えるために、対象への投与に適合した形態の薬剤組成物を提供する。
【0025】
その他の態様においては、組成物は、次の1つまたは複数の、対象における減少もしくは逆転をもたらす形態、または疾患に罹患している対象への投与が、次の1つまたは複数の減少もしくは逆転をもたらす様な形態にある:炎症(例えば、神経炎症)、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン[例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF)]、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、および/または細胞死(例えば、神経細胞死)。
【0026】
一態様においては、本発明は、次の1つまたは複数の減少または逆転のために、治療有効量の本発明の化合物を含む組成物を特徴とする:対象における、炎症(例えば、神経炎症)、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、および/または細胞死(例えば、神経細胞死)。組成物は、薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクル中に存在することができる。
【0027】
さらに、本発明は、1つもしくは複数の式Iの化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩を含む安定な薬剤組成物を調製する方法を考慮する。組成物は調製後に、適当な容器に入れられ、指示された疾患の治療のためのラベルを貼ることができる。本発明の組成物の投与のためのその様なラベルは、量、頻度、および投与の方法を含む。
【0028】
いくつかの態様においては、本発明は、本発明の式Iの化合物を含む、市販可能なピル、錠剤、カプセル、軟質および硬質ゼラチンカプセル、トローチ剤、サシェ、カプセル、ベジキャップ、液体ドロップ、エリキシル剤、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エーロゾル(固体としてまたは液体媒体における)、坐薬、無菌注射溶液、および/または無菌充填粉末を作る方法を提供する。
【0029】
一態様においては、本発明の化合物および組成物は、本明細書に開示される疾患を治療するために治療的にまたは予防的に投与されてもよい。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、化合物および組成物は、次のメカニズムの1つまたは複数を使用して疾患の経過を改善するために作用することが可能であるが、これらに限定されない:炎症(例えば、神経炎症)、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン[例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF)]、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、および/または細胞死(例えば、神経細胞死)を予防すること、減少させることおよび/または阻害すること。
【0030】
本発明は、本明細書に開示される疾患を治療するための医薬の調製のための、少なくとも1つの式Iの化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩を含む組成物の使用に関する。本発明は、さらに、本明細書に開示される疾患の予防および/または治療のための医薬の調製における、本発明の薬剤組成物の使用に関する。医薬は、対象による消費に適した形態、例えば、ピル、錠剤、カプセル、軟質および硬質ゼラチンカプセル、トローチ剤、サシェ、カプセル、ベジキャップ、液体ドロップ、エリキシル剤、懸濁液、エマルション、溶液、シロップ、エーロゾル(固体としてまたは液体媒体における)、坐薬、無菌注射溶液、および/または無菌充填粉末であってもよい。
【0031】
本発明は、さらに、1つまたは複数の式Iの化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩、または式Iの1つまたは複数の化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩を含む組成物を含むキットに関する。一態様においては、本発明は、式Iの1つまたは複数の化合物またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩を含む、本明細書に開示される疾患の予防および/または治療のためのキット、容器、および使用法を提供する。本発明のキットの組成物は、薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルをさらに含むことができる。
【0032】
式Iの構造を含む式Iの化合物(特に、表4において表されている化合物)は、次の1つまたは複数を減少または逆転するための基本組成物に対して、構造的骨組みを提供する:炎症(例えば、神経炎症)、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、および/または細胞死(例えば、神経細胞死)。
【0033】
したがって、本発明は、また、式Iの化合物、特に、表4において表される化合物により表されるすべての化合物のライブラリーまたはコレクションを考慮する。態様において、本発明は、次の1つまたは複数を減少または逆転するための、式Iの構造を含む化合物を含む組合せライブラリーを考慮する:炎症(例えば、神経炎症)、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、および/または細胞死(例えば、神経細胞死)。
【0034】
本発明のこれらのおよびその他の態様、特徴、ならびに利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかとされる。
【0035】
(実施形態の詳細な説明)
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語はここに集められる。
【0036】
端点により本明細書において参照される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数および端数を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.90、4および5を含む)。また、すべての数およびこの端数は、「約」という用語により変更されると理解されるべきである。「約」という用語は、参照されている数のプラスまたはマイナス0.1〜50%、5〜50%、または10〜40%、好ましくは10〜20%、さらに好ましくは10%または15%を意味する。さらに、「a」、「an」および「the」は、内容が、別途明瞭に指示するものでない限り、複数の対象を含むものと理解されるべきである。したがって、例えば、「化合物」を含む組成物という場合は、2つ以上の化合物の混合物を含む。
【0037】
本明細書において使用される「投与すること」および「投与」という用語は、本明細書において考慮される化合物または組成物の治療有効量が、予防および/または治療目的のために対象に送達される過程を意味する。組成物は、対象の臨床的状態、投与の場所および方法、投与量、患者の年齢、性別、体重、および医者の知るその他の要因を考慮に入れて、良好な医療行為に従って投与される。
【0038】
本明細書において使用される「共投与」という用語は、少なくとも2つの、化合物または作用薬(例えば、式Iの化合物またはピリダジン)または対象に対する治療の投与を意味する。いくつかの実施形態においては、2つ以上の作用薬/治療の共投与は、同時に起る。その他の実施形態においては、第1の作用薬/治療が、第2の作用薬/治療の前に投与される。当業者は、使用される様々な作用薬/治療の投与の形式および/または経路は、変更してもよいことを理解する。共投与のための適当な投与量は、当業者により容易に決定することができる。いくつかの実施形態においては、作用薬/治療が共投与される場合、それぞれの作用薬/治療は、それらの単独投与に適当な量よりも少ない投与量で投与される。したがって、共投与は、作用薬/治療の共投与が、既知の潜在的に有害な(例えば、有毒な)作用薬の必要投与量を減少させる実施形態において特に望ましい。
【0039】
「治療する」という用語は、その様な用語が適用される疾患またはその様な疾患の1つまたは複数の症状の進行を、逆転、軽減、または阻害することを意味する。対象の状態によって、この用語は、また、疾患を予防することを意味し、疾患の発現を予防し、または疾患に随伴する症状を予防することを含む。治療は、急性または慢性状態のいずれで行われてもよい。この用語は、また、疾患に伴う苦痛の前に、疾患またはその様な疾患に随伴する症状の重篤度を減少させることを意味する。その様な予防または苦痛の前の疾患の重篤度の減少とは、投与の時点で、疾患に苦しめられていない対象に対する本発明の化合物または組成物の投与を意味する。「予防する」とは、また、疾患またはその様な疾患に随伴する1つまたは複数の症状の再発の予防を意味する。「治療」および「治療的に」とは、「治療する」として上で定義されている様な治療行為を意味する。
【0040】
「対象」、「個人」または「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、動物、好ましくは温血動物、例えば、哺乳類等を意味する。哺乳類としては、哺乳類の任意の構成員が挙げられるがこれらに限定されない。一般に、この用語は、ヒトを意味する。この用語は、また、ウマ、ウシ、ヒツジ、家禽類、魚、ブタ、イヌ、ネコを含めた、食用のため、またはペットとして飼育される家畜、および動物園の動物、ヤギ、サル(例えば、ゴリラまたはチンパンジー)、およびラットおよびマウス等の齧歯動物を含む。
【0041】
本発明の態様においては、この用語は、本発明方法により治療される生体を意味する。その様な生体としては、好ましくは、哺乳類(例えば、ハツカネズミ、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等)が挙げられ、最も好ましくは、ヒトが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の特定の態様の文脈においては、「対象」という用語は、炎症、タンパク質キナーゼ活性の調節異常、および/またはアポトーシス過程(apototic process)の調節異常を特徴とする状態に対して治療(例えば、式Iの化合物またはピリダジン化合物、および場合により1つまたは複数のその他の作用薬の投与)を受けるまたは受けたことのある個人を一般的に意味する。
【0042】
治療のための一般的対象としては、本明細書に開示される疾患に苦しむまたは疾患を持っている疑いのある、または疾患に感染しやすい人が挙げられる。対象は、アルツハイマー病等の本明細書に開示される疾患に対して遺伝子的疾病素質を有してもよくまたは有さなくてもよい。特定の態様においては、対象は、認知欠損およびアルツハイマー病の神経病理学の兆候を示す。本発明の実施形態においては、対象は、アルツハイマー病の疑いのある、またはそれに罹患しているものである。
【0043】
本明細書において利用される「健康な対象」という用語は、疾患、障害、虚弱、または不快、さらに詳しく言えば、記憶を害するか、さもなければ減少することが知られている疾患、障害、虚弱、または不快を診断されていない対象、特に、哺乳類を意味する。
【0044】
本明細書において使用される「診断された」という用語は、その兆候および症状(例えば、通常の治療に対する耐性)、または遺伝子分析、病理学的分析、組織学的分析等による疾患の認知を意味する。
【0045】
本明細書において使用される「調節する」という用語は、これらに限定されないが、細胞成長、増殖、アポトーシス等の細胞機能の性状に影響を及ぼす(例えば、促進したりまたは遅延させたりする)化合物(例えば、本明細書における式Iの化合物またはピリダジン化合物)の活性を意味する。
【0046】
「有益な効果」とは、有利な薬理学的および/または治療的効果、および改善された生物学的活性を含む、本発明の特定の態様における本発明の化合物またはこの組成物の効果を意味する。本発明の態様においては、有益な効果としては、次の1つまたは複数の予防、低減、逆転、または阻害が挙げられるがこれらに限定されない:炎症(例えば、神経炎症)、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、および/または細胞死(例えば、神経細胞死)。いくつかの態様においては、有益な効果は、強化された安定性、長い半減期、および/または強化された摂取および血液脳関門を越える輸送を含むがこれらに限定されない、式Iの化合物を含む組成物の好ましい特徴である。
【0047】
有益な効果は、式Iの化合物の効果対この化合物なしの、または本発明の範囲内ではない化合物の効果の統計的分析における統計的に顕著な効果であることができる。「統計的に顕著な」または「顕著に異なる」効果または水準は、標準より高いまたは低い水準を表してもよい。本発明の態様においては、この差は、式Iの化合物なしで得られる効果と比較して、1.5、2、3、4、5または6倍高くまたは低くてもよい。
【0048】
「薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクル」という用語は、活性成分の有効性または活性を妨げず、投与されるホストにとって有毒ではない媒体を意味する。担体、賦形剤、またはビヒクルとしては、希釈剤、バインダー、接着剤、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤、および特定の組成物を調製するために必要とされてもよい吸収剤等のその他の材料が挙げられる。担体等の例としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。活性物質に対するその様な媒体および作用薬の使用は、当技術分野においてよく知られている。
【0049】
本明細書において開示される式Iの化合物は、また、「薬剤として許容される塩」を含む。薬剤として許容される塩とは、過度の毒性、刺激、アレルギー性応答等を持たずに、対象または患者の組織との接触における使用に適し、妥当な利益/危険比に相応した塩を意味する。薬剤として許容される塩は、例えば、S.M.Berge等、J.Pharmaceutical Sciences、1977年、66:1に記載されている。
【0050】
式Iの化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含むことができ、光学異性体、ジアステレオマー、および(R)−または(S)−の様な絶対立体化学に関して定義されてもよいその他の立体異性体を生じてもよい。したがって、式Iの化合物は、すべての可能なジアステレオマーおよび光学異性体、加えてラセミ体および光学的に純粋な形態を含む。光学的に活性な(R)−および(S)−異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製されてもよく、または通常の方法を使用して分割されてもよい。
【0051】
式Iの化合物が、幾何学的非対称の中心を含み、別途特定されない場合は、化合物は、EおよびAの幾何異性体の両方を含むものとされる。
【0052】
すべての互変異性体もまた、式Iの化合物の範囲内に含まれる。
【0053】
式Iの化合物は、非溶媒和形態または薬剤として許容される溶剤、例えば、水、エタノール等との溶媒和形態において存在することができる。溶媒和形態は、本発明の目的に対しては非溶媒和形態と同等とみなされてもよい。
【0054】
「治療有効量」とは、1つまたは複数の所望の効果、特に、1つまたは複数の治療的効果、さらに詳しく言えば、有益な効果を引き出す、式Iの活性化合物またはこれを含む組成物の量または投与量を意味する。物質の治療有効量は、疾患状態、年齢、性別、および対象の体重、および対象における所望の応答を導き出すための物質の能力等の要因により変えることができる。投薬方式は、最適な治療的応答(例えば、持続した有益な効果)を与えるために調整されてもよい。例えば、いくつかの分割した投与量は、毎日投与されてもよく、または投与量は、治療状態の緊急性に比例して減少されてもよい。
【0055】
本明細書において使用される「純粋な」という用語は、一般に、95%純粋よりも優れることを意味し、「実質的に純粋な」とは、本明細書に記載される組成物または治療的投与量を考慮して作られたまたはそのために利用できる化合物が、通常の精製方法により容易にもしくは合理的に除去できない不純物のみを有する様に合成された化合物を意味する。
【0056】
本明細書において使用される「誘導体」という用語は、化学的修飾が、化合物の官能基において、または芳香族環において起る、化学的に修飾された化合物を意味する。式Iの化合物の誘導体(例えば、本発明のピリダジン誘導体)の非限定的例としては、化合物における任意の利用可能な窒素におけるN−アセチル、N−メチル、N−ヒドロキシ基を挙げることができる。
【0057】
「ポリマー」とは、同じ繰り返し単位または異なる繰り返し単位であってもよい2つ以上のモノマーの繰り返し単位を含む分子を意味する。モノマーは、一般に、炭素を含む単純な構造の低分子量分子を含む。ポリマーは、場合により置換されていてもよい。本発明において使用することのできるポリマーとしては、ビニル、アクリル、スチレン、炭水化物由来のポリマー、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシエチレン、ポリメチレングリコール、ポリ−トリメチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、およびこれらのコポリマー、塩および誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の態様においては、ポリマーは、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸);ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コアクリロニトリル)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸−コ−スチレン)、ポリ(ビニルスルホン酸);ポリ(ナトリウム4−スチレンスルホン酸);およびこれらから誘導されるスルフェートおよびスルホネート;ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、およびポリ(ビニルアルコール)である。
【0058】
本明細書において使用される「炭水化物」とは、ポリヒドロキシアルデヒド、またはポリヒドロキシケトンおよびこれらの誘導体を意味する。この用語は、エリトロース、アラビノース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、トレオース、キシロース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、アルドヘキソース、フルクトース、ケトヘキソース、リボース、およびアルドペントース等の単糖類を含む。この用語は、また、二糖類、オリゴ糖、または多糖類を含めた、単糖類単位からなる炭水化物を含む。二糖類の例は、スクロース、ラクトース、およびマルトースである。オリゴ糖は、一般に、3〜9個の単糖類単位を含み、多糖類は、10個を超える単糖類単位を含む。炭水化物基は、式Iの化合物に対する結合の位置以外に、1つ、2つ、3つまたは4つの位置で置換されてもよい。例えば、炭水化物は、場合により置換されていてもよい、1つまたは複数の、アルキル、アミノ、ニトロ、ハロ、チオール、カルボキシル、またはヒドロキシル基で置換されていてもよい。例示される置換炭化水素は、グルコサミン、またはガラクトサミンである。本発明の態様においては、炭水化物は、糖類、特に、ヘキソースまたはペントースであり、アルドースまたはケトースであってもよい。糖類は、DまたはL系列のものであってもよく、アミノ糖、デオキシ糖、およびこれらのウロン酸誘導体を含むことができる。炭水化物がヘキソースである本発明の実施形態においては、ヘキソースは、グルコース、ガラクトース、またはマンノース、またはヘキソサミン、ガラクトサミン、グルコサミン、特に、D−グルコサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース)もしくはD−ガラクトサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−ガラクトース)等のアミノ糖残基等の置換されたヘキソース糖残基である。例としてのペントース糖としては、アラビノース、フコースおよびリボースが挙げられる。
【0059】
糖残基は、1,1結合、1,2結合、1,4結合、1,5結合、または1,6結合で式Iの化合物に結合されてもよい。結合は、式Iの化合物の酸素原子を経由してもよい。酸素原子は、−CH−または−S−基で1回または複数回置き換えることができる。
【0060】
「炭水化物」という用語は、また、レクチン(例えば、コンカナバリンA、コムギ胚芽凝集素、ピーナッツ凝集素、血清ムコイド、およびオロソムコイド)等の糖タンパク質ならびにセレブロシドおよびガングリオシド等の糖脂質を含む。
【0061】
本発明の実施における使用のための「ペプチド」担体は、ペプチド結合により共有結合で結合した1個、2個、3個、4個、もしくは5個またはそれ以上のアミノ酸を含む。ペプチドは、1つまたは複数の天然アミノ酸、ならびにそれらの類似体、誘導体および同族体を含むことができる。ペプチドは、その安定性、生物学的利用能、溶解性等を増加するために修飾することができる。本明細書において使用される「ペプチド類似体」および「ペプチド誘導体」としては、ペプチドの化学構造を模倣した、ペプチドの官能性を維持する分子が挙げられる。本発明における使用のための担体は、アラニン、グリシン、プロリン、メチオニン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、アスパラギン、アラニル−アラニル、プロリル−メチオニル、またはグリシル−グリシル等のアミノ酸であることができる。担体は、アルブミン、アンチトリプシン、マクログロブリン、ハプトグロビン、セルロプラスミン(caeruloplasm)、トランスフェラーゼ(transferring)、α−もしくはβ−リポタンパク質、β−もしくはγ−グロブリンまたはフィブリノゲン等のポリペプチドであることができる。
【0062】
ペプチド類似体、誘導体および模倣体を表す方法は、当技術分野において知られている。例えば、Farmer,P.S.in Drug Design(E.J.Ariens、ed.)Academic Press、New York、1980年、vol.10、119頁〜143頁;Ball.J.BおよびAlewood,P.F.(1990年)J.Mol.Recognition 3:55;Morgan,B.A.およびGainor,J.A.(1989年)Ann.Rep.Med.Chem.24:243、およびFreidinger,R.M.(1989年)Trends Pharmacol.Sci.10:270頁を参照されたい。また、Sawyer,T.K.(1995年)「Peptidomimetic Design and Chemical Approaches to Peptide Metabolism」、in Taylor,M.D.およびAmidon,G.L.(eds.)Peptide−Based Drug Design:Controlling Transport and Metabolism、Chapter 17;Smith,A.B.3rd等(1995年)J.Am.Chem.Soc.117:11113頁〜11123頁;Smith,A.B.3rd等(1994年)J.Am.Chem.Soc.116:9947頁〜9962頁、およびHirschman,R.等(1993年)J.Am.Chem.Soc.115:12550頁〜12568頁を参照されたい。
【0063】
ペプチドは、ある種のアミノ酸(例えば、セリン)の側鎖の官能基またはその他の適当な官能基を介して式Iの化合物に結合することができる。担体は、側鎖の官能基を介して、3個以上のアミノ酸に結合した基を持つ4個以上のアミノ酸を含んでもよい。一態様においては、担体は、1個のアミノ酸、特に、アミノ酸のスルホネート誘導体、例えば、システイン酸である。
【0064】
単独または「チオアルキル」および「アリールアルキル」等のその他の用語内の「アルキル」という用語は、直鎖(即ち、線状)または分枝鎖であってもよい一価の飽和炭化水素基を意味する。本発明における使用のためのアルキル基は、一般に、約1〜20個の炭素原子、特に、約1〜10個、1〜8個または1〜7個、さらに詳しく言えば、約1〜6個または3〜6個の炭素原子を含む。アルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、アミル、sec−ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、ウンデシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、ペンタデシル、n−ヘキサデシル、ヘプタデシル、n−オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ドシル、n−テトラコシル、およびこれらの分枝異形体等が挙げられる。本発明のある態様においては、アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、アミル、トリブチル、sec−ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、およびn−ヘキシルからなる群を含む、またはこれらの群から選択されるC〜C低級アルキル基である。アルキル基は、式Iの化合物の調製を著しく妨げず、化合物の有効性を著しく減少させない位置で、本明細書において定義される置換基で、場合により置換されていてもよい。本発明のある態様においては、アルキル基は、ハロ、低級アルコキシ、低級脂肪族、置換低級脂肪族、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、チオ、アミノ、ケト、アルデヒド、エステル、アミド、置換アミノ、カルボキシル、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、スルフェート、スルホキシド、置換カルボキシル、ハロゲン化低級アルキル(例えば、CF)、ハロゲン化低級アルコキシ、ヒドロキシカルボニル、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルカルボニルオキシ、低級アルキルカルボニルアミノ、環状脂肪族、置換環状脂肪族、またはアリール(例えば、フェニルメチル(即ち、ベンジル))を含む、1〜5個の置換基で置換される。アルキル基上の置換基は、それ自体置換されていてもよい。
【0065】
本発明のある態様に関して本明細書において使用される「置換脂肪族」という用語は、脂肪族水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、チオ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、環状脂肪族、または置換環状脂肪族等)で置換されている、10個未満の炭素を有するアルキルまたはアルカンを意味する。その様な基の例としては、1−クロロエチル等が挙げられるがこれに限定されない。
【0066】
本発明のある態様に関して本明細書において使用される「アミノ置換低級アルキル」という用語は、脂肪族水素原子の1つが、アミノ基で置き換えられている、8個までおよび8個の炭素原子を含む任意のアルキル単位を意味する。その様な例としては、エチルアミノ等が挙げられるがこれに限定されない。
【0067】
本発明のある態様に関して本明細書において使用される「ハロゲン置換低級アルキル」という用語は、脂肪族水素原子の1つが、ハロゲンで置き換えられている、8個までおよび8個の炭素原子を含む任意のアルキル鎖を意味する。その様な例としては、クロロエチル等が挙げられるがこれに限定されない。
【0068】
本明細書において使用される「アセチルアミノ」という用語は、アセチル化されている任意の第一級または第二級アミノを意味する。その様な例としては、アセトアミド等が挙げられるがこれに限定されない。
【0069】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、少なくとも1個の二重結合を含む、不飽和非環式分枝鎖または直鎖炭化水素基を意味する。アルケニル基は、約2〜10個の炭素原子、特に、約3〜8個の炭素原子、さらに詳しく言えば、約3〜6個の炭素原子を含んでもよい。適当なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル(例えば、プロプ−1−エン−1−イル、プロプ−1−エン−2−イル、プロプ−2−エン−1−イル(アリル)、プロプ−2−エン−2−イル)、ブテン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、ヘキセン−1−イル、3−ヒドロキシヘキセン−1−イル、ヘプテン−1−イル、およびオクテン−1−イル等が挙げられるがこれらに限定されない。アルケニル基は、アルキル同様に、場合により置換されていてもよい。
【0070】
本明細書において使用される「アルキニル」という用語は、1つまたは複数の三重結合を含む、不飽和分枝鎖または直鎖炭化水素基を意味する。アルキニル基は、約1〜20個、1〜15個、または2〜10個の炭素原子、特に、約3〜8個の炭素原子、さらに詳しく言えば、約3〜6個の炭素原子を含んでもよい。適当なアルキニル基としては、プロプ−1−イン−1−イル、プロプ−2−イン−1−イル等のエチニル、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イル、ブト−3−イン−1−イル等のブチニル、ペンチン−1−イル、ペンチン−2−イル、4−メトキシペンチン−2−イル、3−メチルブチン−1−イル等のペンチニル、ヘキシン−1−イル、ヘキシン−2−イル、ヘキシン−3−イル等のヘキシニル、および3,3−ジメチルブチン−1−イル基等が挙げられるがこれらに限定されない。アルキニルは、アルキル同様に、場合により置換されていてもよい。「シクロアルキニル」という用語は、環状アルキニル基を意味する。
【0071】
本明細書において使用される「アルキレン」という用語は、約1〜10個の炭素原子を有し、2以上の共有結合のための結合点を有する、線状または分枝基を意味する。その様な基の例は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、エチリデン、メチルエチレン、およびイソプロピリデンである。アルケニレン基がその他の基上の置換基として存在する場合は、2つの置換基で形成される基ではなく単独の置換基と一般的にみなされる。
【0072】
本明細書において使用される「アルケニレン」という用語は、約2〜10個の炭素原子、少なくとも1つの二重結合を有し、2以上の共有結合のための結合点を有する、線状または分枝基を意味する。アルケニレン基の例としては、1,1−ビニリデン(−CH=C−)、1,2−ビニリデン(−CH=CH−)、および1,4−ブタジエニル(−CH=CH−CH=CH−)が挙げられる。
【0073】
本明細書において使用される「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子等のハロゲンを意味する。
【0074】
本明細書において使用される「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は、−OH基を意味する。
【0075】
本明細書において使用される「シアノ」という用語は、4つの共有結合のうち3つが窒素原子により共有される炭素基、特に、−C≡Nを意味する。シアノ基は、本明細書に記載の置換基で置換されていてもよい。
【0076】
本明細書において使用される「アルコキシ」という用語は、置換されていてもよい、メトキシ基等の、1〜約10個の炭素原子のアルキル部分を有する線状または分枝のオキシ含有基を意味する。本発明の態様においては、アルコキシ基は、約1〜10、1〜8または1〜6個の炭素原子を含んでもよい。本発明の実施形態においては、アルコキシ基は、約1〜6個の炭素原子を含み、C〜Cアルキル−O−基(ここで、C〜Cアルキルは、本明細書で示された意味を有する)を含む。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソプロポキシおよびt−ブトキシアルキルが挙げられるがこれらに限定されない。「アルコキシ」基は、「アルキルアルコキシ」基を与えるためのアルキル原子;「ハロアルコキシ」基(例えば、フルオロメトキシ、クロロメトキシ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、フルオロエトキシ、テトラフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、およびフルオロプロポキシ)および「ハロアルコキシアルキル」基(例えば、フルオロメトキシメチル、クロロメトキシエチル、トリフルオロメトキシメチル、ジフルオロメトキシエチル、およびトリフルオロエトキシメチル)を与えるための、フッ素、塩素または臭素等のハロ原子を含む、本明細書において開示される1つまたは複数の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0077】
本明細書において使用される「アルケニルオキシ」という用語は、エテニルオキシまたはプロペニルオキシ基等の、約2〜10個の炭素原子のアルケニル部分を有する線状または分枝のオキシ含有基を意味する。アルケニルオキシ基は、約2〜6個の炭素原子を有する「低級アルケニルオキシ」基であってもよい。アルケニルオキシ基の例としては、エテニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ、およびイソプロペニルオキシアルキルが挙げられるがこれらに限定されない。「アルケニルオキシ」基は、「ハロアルケニルオキシ」基(例えば、トリフルオロエテニルオキシ、フルオロエテニルオキシ、ジフルオロエテニルオキシ、およびフルオロプロペニルオキシ)を与えるための、フッ素、塩素または臭素等のハロ原子を含む、本明細書に開示されている1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。
【0078】
「炭素環式」は、環を形成する原子(水素以外)が炭素だけの、飽和または不飽和、置換または非置換の5〜14員有機核から誘導される基を含む。炭素環式基の例は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、特に、フェニル、ナフチル、ノルボルナニル、ビシクロヘプタジエニル、トルリル、キシレニル、インデニル、スチルベニル、テルフェニリル、ジフェニルエチレニル、フェニルシクロヘキシル、アセナフチレニル、アントラセニル、ビフェニル、ビベンジリル、および関連するビベンジリル同族体、オクタヒドロナフチル、テトラヒドロナフチル、オクタヒドロキノリニル、ジメトキシテトラヒドロナフチル等である。
【0079】
本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、約3〜15個の炭素原子を有し、1つ、2つ、3つ、または4つの環を含み、その様な環が、ペンダント状に結合されていてもよく、または縮合していてもよい基、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、アダマンチル等を意味する。本発明のある態様においては、シクロアルキル基は、約3〜8個の炭素原子を有する「低級シクロアルキル」基、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルである。本発明のいくつかの態様においては、「シクロアルキル」という用語は、シクロアルキル基が、アリール基またはヘテロシクリル基と縮合した基を包含する。シクロアルキル基は、本明細書において開示される基で、場合により置換されていてもよい。
【0080】
本発明のある態様に関して本明細書で使用される「環状脂肪族」という用語は、8個未満の炭素を有するシクロアルカンまたは3以下の縮合環状脂肪族環からなる縮合環系を意味する。その様な例としては、デカリン等が挙げられるがこれに限定されない。
【0081】
本発明のある態様に関して本明細書で使用される「置換環状脂肪族」という用語は、8個未満の炭素を有するシクロアルカンまたは3以下の縮合環状脂肪族環からなる縮合環系であって、脂肪族水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン、ニトロ、チオ、アミノ、ヒドロキシ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、環状脂肪族、または置換環状脂肪族)で置換された基を意味する。その様な例としては、1−クロロデカリル等が挙げられるがこれに限定されない。
【0082】
本明細書で使用される「シクロアルケニル」という用語は、約2〜15個の炭素原子、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合、および1つ、2つ、3つ、または4つの環を含み、その様な環が、ペンダント状に結合されていてもよく、または縮合していてもよい基を意味する。本発明のある態様においては、シクロアルケニル基は、3〜7個の炭素原子を有する「低級シクロアルケニル」基である。シクロアルケニル基の例としては、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘプテニルが挙げられるがこれらに限定されない。シクロアルケニル基は、本明細書において開示される基、特に、同じか異なっていてもよい、1、2、または3個の置換基で場合により置換されていてもよい。
【0083】
本明細書で使用される「シクロアルコキシ」という用語は、オキシ基に結合したシクロアルキル基を意味する。シクロアルコキシ基の例としては、シクロヘキソキシおよびシクロペントキシが挙げられる。シクロアルコキシ基は、本明細書において開示される基で場合により置換されていてもよい。
【0084】
単独でまたは組み合わせて本明細書で使用される「アリール」という用語は、1つ、2つまたは3つの環を含み、その様な環が、ペンダント状に一緒に結合されていてもよく、または縮合していてもよい炭素環式芳香族系を意味する。「縮合」という用語は、2番目の環が、1番目の環と共通のまたは共有の2つの隣接原子を有することにより存在する(即ち、結合されるまたは形成される)ことを意味する。アリール基は、本明細書において開示される基、特に、ヒドロキシル、アルキル、カルボニル、カルボキシル、チオール、アミノ、および/またはハロで場合により置換されていてもよく、特に、置換アリールとしては、アリールアミンおよびアリールアルキルアミンが挙げられるがこれらに限定されない。「アリール」基の例としては、フェニル、ベンジル、ナフチル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、ペンタレニル、アズレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、アセフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニル、およびアントラセニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0085】
本発明のある態様に関して本明細書で使用される「置換アリール」という用語は、芳香族環または少なくとも1つが芳香族である3以下の縮合環を含み、、環炭素上の水素原子の少なくとも1つが、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、ニトロ、チオ、アルキル、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、環状脂肪族、または置換環状脂肪族)で置換された基を意味する。その様な例としては、ヒドロキシフェニル、クロロフェニル等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0086】
本明細書で使用される「アリールオキシ」という用語は、酸素原子に結合した、上で定義される様なアリール基を意味する。アリールオキシ基の例としては、ナフチルオキシ、キノリルオキシ、イソキノリジニルオキシ等が挙げられる。
【0087】
本明細書で使用される「アリールアルコキシ」という用語は、アルコキシ基に結合したアリール基を意味する。アリールアルコキシの一般的例としては、2−フェニルエトキシ、3−ナフト−2−イルプロポキシ、および5−フェニルペンチルオキシが挙げられるがこれらに限定されない。
【0088】
本明細書で使用される「アロイル」という用語は、ベンゾイルおよびトルオイルを含むがこれらに限定されない、本明細書で定義されるカルボニル基に結合した、上で定義される様なアリール基を意味する。アロイル基は、本明細書において開示される基で場合により置換されていてもよい。
【0089】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、炭素、窒素、硫黄および酸素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する、完全に不飽和のヘテロ原子含有環状芳香族基を意味する。ヘテロアリール基は、1つ、2つまたは3つの環を含んでもよく、環は、ペンダント状に結合されていてもよく、または縮合していてもよい。「ヘテロアリール」基の例としては、1〜4個の窒素原子を含む不飽和5〜6員ヘテロモノシクリル基、特に、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル等;1〜5個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環基、特に、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、インダゾリル、キナゾリニル、プテリジニル、キノリジジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、シンノリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、カルバゾリル、プリニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、キノリニル、イソキノリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル等;酸素原子を含む不飽和3〜6員複素単環式基、特に、2−フリル、3−フリル、ピラニル等;硫黄を含む不飽和5〜6員複素単環式基、特に、チエニル、2−チエニル、3−チエニル等;1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む不飽和5〜6員複素単環式基、特に、フラザニル、ベンゾフラザニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、およびオキサジアゾリル;1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環基、特に、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル等;1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含む不飽和5〜6員複素単環式基、例えば、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル等;ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル等の1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環基が挙げられるがこれらに限定されない。この用語は、また、複素環基がアリール基と縮合した基、特に、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、フタラジニル、クロメニル、キサンテニル等の二環式基を含む。ヘテロアリール基は、本明細書において開示される基、例えば、アルキル、アミノ、ハロゲン等、特に、ヘテロアリールアミンで場合により置換されていてもよい。
【0090】
「複素環」という用語は、炭素、窒素、硫黄および酸素から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を有する、飽和したおよび部分的に飽和したヘテロ原子含有環状基を意味する。複素環基は、1つ、2つまたは3つの環を含んでもよく、その様な環は、ペンダント状に結合されていてもよく、または縮合していてもよい。飽和複素環基の例としては、1〜4個の窒素原子を含む、飽和3〜6員複素単環式基[例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、およびピペラジニル];1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む、飽和3〜6員複素単環式基[例えば、モルホリニル;シドノニル];および1〜2個の硫黄原子および1〜3個の窒素原子を含む、飽和3〜6員複素単環式基[例えば、チアゾリジニル]等が挙げられるがこれらに限定されない。部分的に飽和したヘテロシクリル基の例としては、ジヒドロチオフェン、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、およびジヒドロチアゾリルが挙げられるがこれらに限定されない。複素環基の例としては、アジリジニル、アゼチジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、ピロリジニル、アゼピニル、1,3−ジオキソラニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ピペリジニル、1,4−ジオキサニル、モルホリニル、ピラゾリニル、1,4−ジチアニル、チオモルホリニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロチオピラニル、チオキサニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3H−インドリル、キヌクリジニル、キノリジニル等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0091】
本発明のある態様に関して本明細書で使用される「複素環」という用語は、8個未満の炭素を有する、シクロアルカンおよび/またはアリール環系、または3以下の縮合環を含み、環炭素原子の少なくとも1つが、酸素、窒素または硫黄で置換されている縮合環系を意味する。その様な例としては、モルホリノ等が挙げられるがこれに限定されない。
【0092】
本発明のある態様に関して本明細書で使用される「置換複素環」という用語は、8個未満の炭素を有する、シクロアルカンおよび/またはアリール環系、または3以下の縮合環を含む縮合環系を意味し、環炭素原子の少なくとも1つが、酸素、窒素または硫黄で置換されており、脂肪族水素原子の少なくとも1つは、ハロゲン、ヒドロキシ、チオ、ニトロ、アミノ、ケトン、アルデヒド、エステル、アミド、低級脂肪族、置換低級脂肪族、または環(アリール、置換アリール、環状脂肪族、または置換環状脂肪族等)で置換されている。その様な例としては、2−クロロピラニルが挙げられるがこれに限定されない。
【0093】
前述のヘテロアリールおよび複素環基は、C−結合されていてもよく、またはN−結合されていてもよい(それが可能である場合は)。
【0094】
単独で、またはアルキルスルホニルもしくはアリールスルホニルの様にその他の用語と組み合わせて本明細書で使用される「スルホニル」という用語は、二価の基、−SO−を意味する。本発明の態様においては、スルホニル基は、置換または非置換のヒドロキシル、アルキル基、エーテル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、複素環基、炭水化物、ペプチド、またはペプチド誘導体に結合してもよい。
【0095】
単独で、またはアルキルスルフィニル(即ち、−S(O)−アルキル)もしくはアリールスルフィニルの様にその他の用語と組み合わせて本明細書で使用される「スルフィニル」という用語は、二価の基、−S(O)−を意味する。
【0096】
単独または組み合わせて本明細書で使用される「アミノ」という用語は、窒素原子(N)が、水素、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シリル、複素環、または一般的化学式が−NR2122のヘテロアリール(ここで、R21およびR22は、置換されていてもされていなくてもよい、水素、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボニル、カルボキシル、アミノ、シリル、ヘテロアリール、または複素環の任意の組合せであることができる)の任意の組合せで存在する3個の置換基に結合する基を意味する。場合により、窒素原子上の1つの置換基は、ヒドロキシルアミンとして知られているアミンを与えるためにヒドロキシル基(−OH)であってもよい。アミノ基の具体例は、置換されていてもされていなくてもよい、アミノ(−NH)、アルキルアミノ、アシルアミノ、シクロアミノ、非環式アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、および低級アルキルシリルアミノ、特に、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、2−プロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、シクロプロピルアミノ、ベンジルアミノ、アリルアミノ、ヒドロキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ、ピペリジニル、ヒドラジニル、ベンジルアミノ、ジフェニルメチルアミノ、トリチルアミノ、トリメチルシリルアミノ、およびジメチル−t−ブチルシリルアミノである。
【0097】
本明細書で使用される「チオール」という用語は、−SHを意味する。チオールは、本明細書において開示される置換基、特にアルキル(チオアルキル)、アリール(チオアリール)、アルコキシ(チオアルコキシ)またはカルボキシルで置換されていてもよい。
【0098】
単独、またはアルキルスルフェニルの様にその他の用語と組み合わせて使用される「スルフェニル」という用語は、−SR24基(ここで、R24は、水素ではない)を意味する。本発明の態様においては、Rは、置換または非置換のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シリル、複素環、ヘテロアリール、カルボニル、またはカルボキシルである。
【0099】
単独または組み合わせて本明細書で使用される「チオアルキル」という用語は、硫黄原子(S)が、置換されていてもよいアルキルに結合している化学官能基を意味する。チオアルキル基の例は、チオメチル、チオエチル、およびチオプロピルである。チオアルキルは、置換または非置換のカルボキシル、アリール、複素環、またはカルボニルで置換されていてもよい。
【0100】
単独または組み合わせて本明細書で使用される「チオアリール」という用語は、硫黄原子(S)が、一般的化学式の−SR25基(ここで、R25は、置換されていてもよいアリール基である)でアリール基に結合している化学官能基を意味する。チオアリール基および置換チオアリール基の具体例は、チオフェニル、パラ−クロロチオフェニル、チオベンジル、4−メトキシチオフェニル、4−ニトロ−チオフェニル、およびパラ−ニトロチオベンジルである。
【0101】
単独または組み合わせて本明細書で使用される「チオアルコキシ」という用語は、硫黄原子(S)が、一般的化学式の−SR30基(ここで、R30は、置換されていてもよいアルコキシ基である)でアルコキシ基に結合している化学官能基を意味する。「チオアルコキシ基」は、1〜6個の炭素原子、即ち、−S−(O)−C〜Cアルキル基(ここで、C〜Cアルキルは、上で定義されたもの同じ意味を有する)を有してもよい。直鎖または分枝チオアルコキシ基または1〜6個の炭素原子を有する基、またC〜Cチオアルコキシとしても知られる基の具体例としては、チオメトキシおよびチオエトキシが挙げられる。
【0102】
本明細書で使用される「カルボニル」という用語は、4つの共有結合のうち2つを酸素原子と共有する炭素基を意味する。
【0103】
単独または組み合わせて本明細書で使用される「カルボキシル」という用語は、−C(O)OR14または−C(=O)OR14(ここで、R14は、場合により置換されていてもよい、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アミノ、チオール、アリール、ヘテロアリール、チオアルキル、チオアリール、チオアルコキシ、ヘテロアリール、または複素環である)を意味する。カルボキシル基の例は、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、t−アルコキシカルボニル、例えば、t−ブトキシカルボニル等、1つまたは2つのアリール基を有するアリールメトキシカルボニルであり、例えば、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシル、ハロ、および/またはニトロで場合により置換されたフェニル、例えば、ベンジルオキシカルボニル、メトキシベンジルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、2−ブロモエトキシカルボニル、2−ヨードエトキシカルボニル、t−ブチルカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシ−カルボニル、ベンズヒドロキシカルボニル、ジ−(4−メトキシフェニル−メトキシカルボニル、2−ブロモエトキシカルボニル、2−ヨードエトキシカルボニル、2−トリメチルシリルエトキシカルボニル、または2−トリフェニルシリルエトキシカルボニル等が挙げられるがこれらに限定されない。エステル化形態におけるさらなるカルボキシル基は、有機シリルオキシカルボニルを含むシリルオキシカルボニル基である。本発明の態様においては、カルボキシル基は、アルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、特に、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルであってもよい。
【0104】
単独または組み合わせて本明細書で使用される「カルバモイル」という用語は、カルボニル基における2つの非共有の結合の1つに結合した、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モノシクロアルキルアミノ、アルキルシクロアルキルアミノ、およびジシクロアルキルアミノ基を意味する。
【0105】
本明細書で使用される「カルボキサミド」という用語は、−CONH−の基を意味する。
【0106】
本明細書で使用される「ニトロ」という用語は、−NO−を意味する。
【0107】
単独または組み合わせて本明細書で使用される「アシル」という用語は、例えば、場合により置換された、ヒドリド、アルキル(例えば、ハロアルキル)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ(アセチルオキシ、ブチリルオキシ、イソ−バレリルオキシ、フェニルアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシベンゾイルオキシを含む「アシルオキシ」、および置換アシルオキシ、例えば、アルコキシアルキルおよびハロアルコキシ等)、アリール、ハロ、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、スルフィニル(例えば、アルキルスルフィニルアルキル)、スルホニル(例えば、アルキルスルホニルアルキル)、シクロアルキル、シクロアルケニル、チオアルキル、チオアリール、アミノ(例えば、アルキルアミノまたはジアルキルアミノ)、およびアラルコキシから選択される基に結合したカルボニルまたはチオカルボニル基を意味する。「アシル」基の具体例は、ホルミル、アセチル、2−クロロアセチル、2−ブロモアセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、フタロイル、マロニル、ニコチニル等である。
【0108】
本明細書で使用される「ウレイド」という用語は、「−NHCONH−」基を意味する。ウレイド基としては、アルキルで置換されたウレイド、特に、ウレイド基の末端窒素に低級アルキルが結合したウレイドを含む、アルキルウレイドが挙げられる。アルキルウレイドの例としては、N’−メチルウレイド、N’−エチルウレイド、N’−n−プロピルウレイド、N’−i−プロピルウレイド等が挙げられるがこれらに限定されない。また、ウレイド基としては、−NHCON基(ここで、末端窒素は、アルキル、アリール、複素環、およびヘテロアリールを含む、場合により置換された2つの基に結合している)を含むN’,N’−ジアルキルウレイド基が挙げられる。
【0109】
「アルキル」、「アルコキシ」、「アルケニル」、「アルキニル」、「ヒドロキシル」等を含む基に対して本明細書で使用されるこの用語は、非置換基および置換基の両方を意味する。本明細書で使用される「置換」という用語は、指定された原子の正常原子価を超えることなしに、置換が、安定な化合物をもたらす場合に、指定された原子(例えば、水素)の任意の1つまたは複数部分が、本明細書に開示される基から選択されたもので置き換えられていることを意味する。置換基および/または基の組合せは、その様な組合せが、安定な化合物をもたらす場合にのみ可能である。「安定な化合物」とは、反応混合物からの有用な程度の純度への単離および有効な治療剤への調剤に耐えられる十分に頑強な化合物を意味する。
【0110】
式Iの化合物における基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカノイル、アルキレン、アルケニレン、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルキレン、ハロアルケニル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルキル、アリール、アルキルアリール、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、複素環、ヘテロアリール、スルホニル、アルキルスルホニル、スルフィニル、スルホニル、スルフェニル、アルキルスルフィニル、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルコキシ、シクロアルケニルオキシ、アミノ、オキシ、ハロ、アジド、チオ、シアノ、ヒドロキシル、ホスホナート、ホスフィナート、チオアルキル、アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールスルホニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアリールスルフィニル、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールオキシルアルキル、アリールアセトアミドイル、アリールオキシ、アロイル、アラルカノイル、アラルコキシ、アリールオキシアルキル、ハロアリールオキシアルキル、ヘテロアロイル、ヘテロアラルカノイル、ヘテロアラルコキシ、ヘテロアラルコキシアルキル、チオアリール、アリールチオアルキル、アルコキシアルキル、およびアシル基を含むがこれらに限定されない、当業者に明らかな1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。これらの置換基は、それ自体置換されていてもよい。
【0111】
本発明の化合物、組成物、または方法を使用して治療および/または予防することのできる「疾患」としては、炎症(例えば、神経炎症)、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ(DAPK)活性)、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、および/または細胞死(例えば、神経細胞死)の1つまたは複数を随伴するまたは調節を必要とする状態が挙げられる。特に、疾患は、痴呆症、神経変性、CNS脱髄障害、自己免疫障害、または末梢炎症疾患である。
【0112】
疾患は、アミロイド発生タンパク質またはペプチドにより活性化されたマクロファージの存在による炎症過程を特徴とするものであってもよい。したがって、本発明方法は、マクロファージ活性化を阻害することおよび/または炎症過程を阻害することを含んでもよい。方法は、患者におけるマクロファージ侵害または炎症の経路または程度を減少すること、遅くすること、改善すること、または逆転することを含んでもよい。
【0113】
本発明の化合物、組成物および方法を使用して治療および/または予防できる疾患の例としては、アルツハイマー病および関連障害、初老性および老年性形体;アミロイド血管障害;軽度認知障害;アルツハイマー病関連認知症(例えば、血管性認知症またはアルツハイマー認知症);AIDS関連認知症、タウ異常症(tauopathy)(例えば、銀性顆粒認知症、大脳皮質基底核変性症、拳闘家認知症、石灰化を伴う広範性神経原線維錯綜、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、プリオン関連疾患、ハレルフォルデン−スパッツ病、筋緊張性ジストロフィー、ニーマン−ピック病タイプC、神経原線維錯綜を伴う非グアム島人型運動ニューロン疾患、ピック病、脳炎後パーキンソニズム、脳アミロイド血管症、進行性皮質下性グリオーシス、進行性核上麻痺、亜急性硬化性全脳炎、および神経原線維変化のみの認知症)、アルファ−シヌクレイン異常症(例えば、レビー小体を伴う認知症、グリア細胞内封入を伴う多系統萎縮)、多系統萎縮、シャイ−ドレーガー症候群、脊髄小脳失調(例えば、DRPLAまたはマチャド−ジョセフ病);線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、脳の鉄蓄積タイプIを伴う神経変性、嗅覚機能障害、および筋萎縮性側索硬化症);パーキンソン病(例えば、家族性または非家族性);筋萎縮性側索硬化症;痙性対麻痺(例えば、シャペロンおよび/またはトリプルAタンパク質の欠陥機能を随伴する);ハンチントン病、脊髄小脳失調、フリードライヒ運動失調;脳卒中、低酸素症、虚血、梗塞、脳内出血を含む脳血管疾患;外傷性脳損傷;ダウン症候群;アミロイドベータペプチドの外傷後蓄積を伴う頭部損傷;家族性英国認知症;家族性デンマーク認知症;痙攣性運動失調を伴う初老性認知症;脳アミロイド血管症、英国タイプ;痙攣性運動失調脳アミロイド血管症を伴う初老性認知症、デンマークタイプ;ニューロセルピン封入体を伴う家族性脳症(FENIB);アミロイド多発神経障害(例えば、老人性アミロイド多発神経障害または全身性アミロイドーシス);アミロイドベータペプチドによる封入体筋炎;家族性およびフィンランドタイプアミロイドーシス;多発性骨髄腫を随伴する全身性アミロイドーシス;家族性地中海熱;多発性硬化症;視神経炎;ギラン−バレー症候群;慢性炎症性脱髄性多発神経障害;慢性感染症および炎症;急性散在性脳脊髄炎(ADEM);自己免疫内耳疾患(AIED);糖尿病;心筋虚血およびその他の心臓血管障害;膵炎;痛風;炎症性腸疾患;潰瘍性大腸炎;クローン病;リウマチ様関節炎、変形性関節症、動脈硬化症;炎症性大動脈瘤;喘息;成人呼吸窮迫症候群;再狭窄;虚血/再潅流損傷;糸球体腎炎;サルコイドーシス癌;再狭窄;リウマチ熱;全身性紅斑性狼瘡;ライター症候群;乾癬性関節炎;強直性脊椎炎;股関節炎;骨盤内炎症性疾患;骨髄炎;癒着性関節包炎;小数関節炎;関節周囲炎;多発性関節炎;乾癬;スティル病;滑膜炎;炎症性皮膚炎;および創傷治癒が挙げられる。
【0114】
本発明の態様においては、本明細書に開示されている化合物、組成物および方法は、神経炎症(即ち、神経炎症疾患)を含む疾患を予防および/または治療するのに利用されてもよい。神経炎症は、それらの社会的に与える影響を増大させている神経変性障害の様々な配列における疾患病理学および進行の特徴的形態である(最近の展望に対しては、例えば、Prusiner,S.B.(2001年)New Engl.J.Med.344、1516頁〜1526頁を参照されたい)。これらの神経炎症関連障害としては、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症、自己免疫障害、先天的疾患、脳卒中および外傷性脳損傷が挙げられる。神経炎症は、障害または発育変動に対する生物のホメオスタティック応答の一環として有益な役割を正常に果すグリア細胞(例えば、星状膠細胞および小膠細胞)活性化により引き起こされる。しかしながら、グリアの慢性的なまたは過剰な活性化によるこの過程の失調は、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの増加した産生、酸化ストレス関連酵素、急性期タンパク質、および補体カスケードの種々の成分による疾患過程に寄与する(例えば、Akiyama等、(2000年)Neurobiol.Aging 21、383頁〜421頁を参照されたい)。疾患の顕著な特徴である、病状へのグリア活性化の直接的結合は、これらの重大なグリア細胞応答を媒介するシグナル伝達経路、およびこれらの疾患関連経路を調節することのできる細胞透過性リガンドの発見を理解することの重要性を明らかにする。
【0115】
特に、アルツハイマー病(AD)では、β−アミロイド(Aβ)の沈着および神経原線維変化は、グリア活性化、神経損失および認知減退を随伴する。分子レベルでは、アルツハイマー病は、アミロイドプラーク周囲のグリア細胞における一酸化窒素シンターゼ(NOS)の増加した発現;過酸化亜硝酸塩媒介神経損傷の神経病理学的証拠:およびAβ−誘発脳機能障害における一酸化窒素(NO)過剰産生を特徴とする。NOS(iNOS)は、グリア活性化応答の一部として誘発され、NOを発生する酸化ストレス関連酵素である。NOが、超酸化物と一緒に高水準で存在する場合は、反応性の高いNO−誘導分子過酸化亜硝酸塩が発生し、神経細胞死へとつながる。炎症誘発性サイトカインIL−1βは、また、AD脳における活性化グリアにおいて過剰発現し、IL−1β遺伝子における多形が、極く初期の散発性ADの増加したリスクを随伴する(例えば、Du等(2000年)Neurology 55、480頁〜483頁を参照されたい)。また、IL−1βは、アミロイドプラークの成長に影響を及ぼすことができ、さらなるグリア炎症および神経機能障害応答に含まれる(例えば、Griffin等、(1998年)Brain Pathol.8、65頁〜72頁;およびSheng等、(1996年)Neurobiol.Aging 17、761頁〜766頁を参照されたい)。したがって、グリア活性化および特定のグリア産生物は、神経変性障害(例えば、アルツハイマー病)に随伴するので、細胞シグナル伝達経路(例えば、グリア活性化経路)を調節することのできる、本明細書に開示の化合物および組成物は、炎症疾患の治療および予防において特別の用途を有する。
【0116】
本発明の態様においては、本明細書に開示の化合物、組成物、または方法は、タンパク質キナーゼシグナル伝達の失調を含む疾患を予防および/または治療するのに利用されてもよい。タンパク質キナーゼシグナル伝達の失調は、多くの場合、細胞シグナル伝達経路(例えば、グリア細胞活性化経路)の失調を伴う。タンパク質キナーゼは、細胞の成長、分化および死を含む多数の細胞機能を調節することにおいて中心的役割を果すタンパク質の大きなファミリーである。500を超えるタンパク質キナーゼ、およびタンパク質リン酸化反応において厳格な管理を司る130のタンパク質ホスファターゼが存在すると考えられる。各タンパク質キナーゼは、ATPのγ−ホスフェートを、タンパク質基体の特定の残基に移す。タンパク質キナーゼは、さらに、チロシン、セリン/トレオニンまたは受容体残基にもとづく二重特質として分類することができる。セリン/トレオニンキナーゼの例としては、MAPキナーゼ、MAPKキナーゼ(MEK)、Akt/PKB、ジュンキナーゼ(Jun kinase)(INK)、CDK、タンパク質キナーゼA(PRA)、タンパク質キナーゼC(PKC)、およびカルモジュリン(calmodulin)(CaM)−依存性キナーゼ(CaMK)が挙げられる。失調タンパク質キナーゼ活性(例えば、活動亢進または活動低下)は、糖尿病、リウマチ様関節炎、炎症、高血圧、および癌等の増殖性疾患を含む多数の疾患の原因となる、異常なタンパク質リン酸化反応を引き起こす。したがって、異常なキナーゼ活性は、炎症疾患(例えば、アルツハイマー病の様な神経変性障害)を随伴するので、細胞シグナル伝達経路に含まれるキナーゼを調節することのできる、本明細書に開示の化合物および組成物は、炎症疾患の治療および予防に対して特別の用途を有する。
【0117】
(化合物)
本発明は、単離された、純粋な、特に実質的に純粋な式I(式中、R、R、RおよびRは、独立に、置換または非置換の、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルコキシ、アルケニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、ヘテロアリール、複素環、アシル、アシルオキシ、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、アミノ、イミノ、アジド、チオール、チオアルキル、チオアルコキシ、チオアリール、ニトロ、ウレイド、シアノ、ハロ、シリル、シリルオキシ、シリルチオ、カルボキシル、カルボキサミド、カルボニル、またはカルバモイルであり、またはRは、存在しなくてもよく、2位のNと3位のCとの間に二重結合が存在する)の化合物、またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩を提供する。
【0118】
本発明の態様においては、式Iの化合物は、表3において表される化合物を含まない。
【0119】
本発明のその他の態様においては、式Iの化合物は、R、R、RおよびRが、独立に、置換または非置換の、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルコキシ、アルケニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、ヘテロアリール、複素環、アシル、アシルオキシ、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、アミノ、イミノ、アジド、チオール、チオアルキル、チオアルコキシ、チオアリール、ニトロ、ウレイド、シアノ、ハロ、シリル、シリルオキシ、シリルチオ、カルボキシル、カルボキサミド、カルボニル、またはカルバモイルであり、またはRが、存在しなくてもよく、2位のNと3位のCとの間に二重結合が存在するが、(i)RおよびRが、水素であり、Rが存在しない場合は、Rは、クロロ、−SCHCHN(CHCH、または−NR2122(ここで、R21は、エチルであり、R22は、モルホリニル、ベンジルで置換されたピペリジニル、−CHN(CHCHもしくは−N(CHCHであり、またはR21は水素であり、R22は、−NHまたは水素である)ではなく、(ii)Rが水素であり、Rが存在せず、Rが、=Oである場合は、Rは、−COOHまたは−C(=O)−OCHCHではなく、(iii)Rが水素であり、Rが存在せず、Rがクロロである場合は、Rは、メチルではないものが考慮される。
【0120】
実施形態においては、式Iの化合物は、Rが、1〜4個の窒素原子を含む置換複素単環式基、特に、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、RおよびRが、水素であり、Rが存在しない化合物を含まない。
【0121】
実施形態においては、式Iの化合物は、Rが、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、RおよびRが水素であり、Rが存在しない化合物を含まない。
【0122】
その他の態様においては、式Iの化合物は、Rが、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい複素環基であり、場合により、Rが、水素、アルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、特に、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル、またはアルキルアミノカルボニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素であるか存在しないものが考慮される。特定の態様においては、Rは、1〜4個の窒素原子を含む置換または非置換の複素単環式基、特に、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、またはピペラジニル、さらに詳しく言えば、ピペラジニルである。一実施形態においては、1〜4個の窒素原子を含む複素単環式基は、それぞれが置換されていてもよい、ヘテロアリール、アリール、アルキル、または複素環で置換されていてもよい。特定の実施形態においては、Rは、ピリミジニル、ピリジルまたはピリジニル、特にピリミジニル等の1〜4個の窒素原子を含む置換または非置換の不飽和5〜6員ヘテロモノシクリル基;アリールまたは置換アリール、特に、フェニルまたはフェニルアルキル、特にベンジル;またはC〜C等のアルキルで置換されたピペラジニルである。その他の特定の実施形態においては、Rは、1〜4個の窒素原子を含む不飽和5〜6員ヘテロモノシクリル基等の複素環オキシで置換されたピペリジニルおよびオキシ、特に、−O−ピリミジニル、−O−ピリジル、または−O−ピリジニル、特に−O−ピリミジニルで置換されたピペリジニルである。
【0123】
一実施形態においては、式Iの化合物は、Rが、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい複素環基、特に、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、水素、アルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、特に、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル、またはアルキルアミノカルボニルであり、Rが水素であり、Rが水素であるものが考慮される。
【0124】
一実施形態においては、式Iの化合物は、Rが、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい複素環基、特に、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、カルボキシアミジルまたは置換カルボキシアミジルであり、Rが水素であり、Rが水素であるか存在しないものが考慮される。
【0125】
その他の態様においては、式Iの化合物は、Rが、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基であり、場合により、Rが、水素またはアルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、特に、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが水素であるものが考慮される。一実施形態においては、Rは、置換または非置換のモルホリニルまたはシドノニル、特にモルホリニルである。
【0126】
その他の態様においては、式Iの化合物は、Rが、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよいアリールであり、場合により、Rがアルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、特に、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル、または1つもしくは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基、特に、モルホリニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが水素であるものが考慮される。一実施形態においては、Rは、置換されていてもよい、フェニル、ベンジル、ナフチル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、またはペンタレニル、特に、フェニル、ベンジル、またはナフチルである。
【0127】
その他の態様においては、式Iの化合物は、Rが、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜5個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環であり、場合により、Rがアルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、特に、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル、または1つもしくは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基、特に、モルホリニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが水素であるものが考慮される。一実施形態においては、Rはインドリル、イソインドリル、インドリジニル、プリニル、またはハロもしくはアルキル置換されていてもよいベンゾイミダゾリルである。
【0128】
その他の態様においては、式Iの化合物は、Rが、ハロ、特にクロロであり、場合により、Rが、水素、ハロ、アルコキシカルボニル(特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、とりわけ、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル)、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基(特に、モルホリニル)、置換または非置換の複素環(特に、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基、とりわけ、モルホリニルまたはハロ、アルキル、カルボキシ、もしくはアルコキシカルボニルで置換されたモルホリニル)で置換されていてもよいカルボキシル、または−NR2122{ここで、R21は水素であり、R22は、置換アルキル(特に、1つまたは複数のアルキルもしくはシクロアルキル、とりわけ、メチル、ジエチル、シクロプロピルもしくはシクロブチルで置換されたメチルである)}であり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが水素であるものが考慮される。
【0129】
その他の態様においては、式Iの化合物は、Rが、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよいアミノであり、場合により、Rが、水素またはアルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、とりわけ、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素またはアルキル{例えば、アルコキシカルボニル(特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、とりわけ、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル)で置換されていてもよいC〜CまたはC〜Cアルキル}であるものが考慮される。
【0130】
一実施形態においては、Rは、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、水素、C〜Cアルキル、特に、メチル、エチルまたはブチル、アリール、特に、フェニル、ベンジル、またはナフチル、置換アリール、特に、アルキルもしくはハロで置換されたアリール、置換アルキル、特に、複素環、さらに詳しく言えば、1〜5個の窒素原子を含む置換または非置換の不飽和縮合複素環基で置換されたC〜Cアルキルである)である。
【0131】
特定の実施形態においては、Rは、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は水素である)であり、RおよびRは水素であり、Rは、アルキル、特に、アルコキシカルボニル(特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、またはイソプロポキシカルボニル)で置換されていてもよいC〜Cアルキルである。
【0132】
その他の特定の実施形態においては、Rは、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、アリール、特に、アルキルまたはハロで置換されていてもよいフェニルまたはベンジルである)である。
【0133】
さらなる特定の実施形態においては、Rは、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、アリール、特に、ハロで置換されていてもよいフェニルまたはベンジルである)であり、R、RおよびRは水素である。
【0134】
なおさらなる特定の実施形態においては、Rは、−NR2122[ここで、R21は水素であり、R22は、複素環(さらに詳しく言えば、1〜4個の窒素原子を含む置換または非置換の飽和3〜6員複素単環式基、さらに詳しく言えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、およびピペラジニル)で置換されたアルキルである{前記複素環は、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリール、または置換アリール、さらに詳しく言えば、ハロまたはアルキルで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニルまたはベンジル)で置換されていてもよい}]であり、R、RおよびRは水素である。
【0135】
なおさらなる実施形態においては、Rは、=Oであり、Rは、−C(=O)R40(ここで、R40は、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基、特に、モルホリニルである)またはNR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜5個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環、さらに詳しく言えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、プリニル、または置換されていてもよいベンゾイミダゾリルで置換されたアルキルである)である。
【0136】
本発明の態様においては、式Iの化合物は、Rが、水素、ハロ、カルボニル、置換カルボニル、ピペラジニル、置換ピペラジニル、ピペリジニル、置換ピペリジニル、ナフチル、インドリル、モルホリニル、置換プリニル、アミノ、置換アミノ、チオアルキルまたは置換チオアルキルである化合物として提供される。本発明の一実施形態においては、Rは、1つまたは複数のアルキル、フェニル、置換フェニル、ピリミジニル、置換ピリミジニル、またはピリジニルで置換されたピペラジニルである。本発明のその他の実施形態においては、Rは、−NHR21(ここで、R21は、水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニル、特に、−NH、−NHCH−プリニル、−NH−クロロフェニル、NH−ベンゾイミダゾリル、または−NHCHCH−ピペラジニル−ベンジルである)である。
【0137】
本発明の一態様においては、式Iの化合物は、Rが、水素、ハロ、または場合により置換されたカルボキシル、カルボニル、ピペラジニル、モルホリニル、またはアミノである化合物として提供される。一実施形態においては、Rは、−COR(ここで、Rは、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、モルホリニル、置換モルホリニル、またはアルコキシ、特に、−CONHCH−ベンゾイミダゾリル、ピリミジニルで置換されたピペラジニル、カルボキシルまたは置換カルボキシルで置換された−CO−モルホリニル、−COOCHCH、または−NHCH(CHである。)
本発明の態様においては、式Iの化合物は、Rが、水素またはアルキル、特に、C〜Cアルキル、さらに詳しく言えば、メチルまたはエチルである化合物として提供される。
【0138】
本発明の態様においては、式Iの化合物は、Rが、カルボキシルまたは置換カルボキシルで置換されたアルキル(例えば、CHCHCHCOOCHCH)である化合物として提供される。
【0139】
本発明の一態様においては、式Iの化合物は、Rが、ハロ、=O;インドリル、アミノ、または置換されていてもよいピペラジニルであり;Rが、−COR(ここで、Rは、ヒドロキシル、アルコキシまたは置換されていてもよいモルホリニルである)であり;Rが、水素またはアルキルである化合物、または薬剤として許容されるそれらの塩として提供される。
【0140】
一態様においては、本発明は、以下の式I(式中、Rは、水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ハロゲン、アミノ、複素環、置換複素環、シクロアルキル、ヒドロキシ、アミン、置換アミン、アリールアミン、ヘテロアリールアミン、アリールアルキルアミン、ヒドラジニル、置換ヒドラジニル、ピリミジニルおよび置換ピリミジニル、ピリジニルおよび置換ピリジニル、ピラジニルおよび置換ピラジニル、チエニルおよび置換チエニル、チアゾリルおよび置換チアゾリル、ピラゾリルおよび置換ピラゾリル、スチルベニルおよび置換スチルベニル、イミダゾリルおよび置換イミダゾリル、フタラジンおよび置換フタラジン、ピペラジニルおよび/または置換ピペラジニル部分の1つまたは複数で置換されていてもよいピリミジニルで置換されたピペリジニルである)の化合物を提供する。
【0141】
本発明の特定の態様においては、式Iの化合物は、
a)Rがハロゲン化物であり、Rが、アルキル、特に、低級アルキルである、
b)Rが、=Oであり、Rが、−CONHCH−ベンゾイミダゾリルであり、Rが水素である、
c)Rが、=Oまたはハロであり、Rが、−COR(ここで、Rは、置換モルホリニルである)であり、R3が水素である、
d)Rがインドリルであり、Rが、−COR(ここで、Rは、アルコキシ、特に、低級アルコキシである)であり、R3が水素である、
e)Rが、置換ピペラジニル、特に、場合により置換されたアルキルまたはフェニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、−COR(ここで、Rは、アルコキシである)であり、Rが水素である、
f)Rが、場合により置換されたピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、−COR(ここで、Rは、アルコキシである)であり、Rが水素である、
g)Rが、置換されていてもよいピペリジニル、特に、−O−ピリミジニルであり、Rが水素であり、Rが水素である、
h)Rが、置換ピペラジニルであり、Rが水素であり、Rが水素である、
i)Rがハロであり、Rが、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが水素である、
j)RおよびRがハロ、特に、−Clであり、Rが水素である、
k)Rがハロであり、Rが、シクロプロピルで置換されたアルキルアミノであり、Rが水素である、
l)Rがハロであり、Rがモルホリニルであり、Rが水素である、
m)Rがハロであり、Rが、−NHC(CHであり、Rが水素である、
n)Rが、ナフチルまたはインドリルであり、Rがモルホリニルであり、Rが水素である、
o)Rがハロであり、Rが、カルボキシルまたは置換カルボキシル(例えば、−COOCHCH)であり、Rが水素である、
p)Rが、ピリジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、水素、カルボキシルまたは置換カルボキシル(例えば、−COOCHCH、または−CONHC(CH等のカルボキサミド)であり、Rが水素である、
q)Rがモルホリニルであり、Rが水素であり、Rが水素である、
r)Rがハロであり、Rが水素であり、Rが、アルキル、特に、低級アルキルである、
s)Rがアミノであり、RおよびRが水素であり、Rが、カルボキシルまたは置換カルボキシルで置換されたアルキル(例えば、CHCHCHCOOCHCH)である、または
t)Rがハロであり、Rが水素であり、Rが、アルキル、特に、低級アルキルである、
化合物として提供される。
【0142】
本発明の実施形態においては、式Iの化合物は、R、R、および/またはRが、上で定義された通りであり、特に、上記(a)〜(t)において定義された通りであり、Rが存在せず、2位のNと3位のCとの間に二重結合が存在する化合物として提供される。
【0143】
いくつかの実施形態においては、本発明は、図および表、特に表4において表示される新規な有機化合物、および/またはこれらの複素環誘導体を提供する。いくつかの実施形態においては、本発明により包含される化合物としては、3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン構造を含むトリアジン化合物が挙げられる(図1、化合物7)。
【0144】
本発明の化合物を修飾するために使用されてもよい誘導体基は、特許出願第20030176437号(すべての目的に対して、全体の開示が参照として本明細書に組み込まれる)において見出すことができる。
【0145】
式Iの化合物は、in vivoで活性化合物に転換されるプロドラッグの形態であってもよい。例えば、式Iの化合物において、R、R、R、およびRの1つまたは複数は、活性な(例えば、治療的に活性な)化合物、またはその後に活性化合物を生成する中間体化合物を与えるために、対象に投与後に開裂する開裂性基を含んでもよい。開裂性基は、酵素的にまたは非酵素的に除去されるエステルであることができる。
【0146】
式Iの化合物は、化合物に直接または間接に共有的に結合されてもよいポリマー、炭水化物、ペプチドまたはこれらの誘導体等の担体を含んでもよい。担体は、1つまたは複数のアルキル、アミノ、ニトロ、ハロゲン、チオール、チオアルキル、スルフェート、スルホニル、スルフィニル、スルホキシド、ヒドロキシル基を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の置換基で置換されていてもよい。本発明の態様においては、担体は、アラニン、グリシン、プラリン(praline)、メチオニン、セリン、トレオニン、アスパラギン、アラニル−アラニル、プロリル−メチオニル、またはグリシル−グリシルを含むアミノ酸である。担体は、また、式Iの化合物を、特定の組織または器官に的を絞らせる分子を含むこともできる。したがって、担体は、式Iの化合物の脳への移動を促進または強化してもよい。
【0147】
(方法)
式Iの化合物は、その知識および実施例を含む本願の開示を考慮して、当業者に一般に知られている反応および方法を使用して調製することができる。反応は、使用される試薬および材料にとって適当な、そして実施される反応にとって適切な溶剤において行われる。化合物に存在する官能性は、提案される反応工程と整合性がとられるべきことは、有機合成の当業者には理解されるであろう。これは、時に、本発明の化合物を得るために、合成工程の順序の変更、または他と比べて1つの特定の方法スキームの選択を必要とするであろう。また、合成経路の開発におけるその他の主要な考慮すべき事項は、本発明に記載の化合物に存在する反応性官能基の保護のために使用される保護基の選択であることが認識されるであろう。熟練者に対して多くの選択肢を記述している権威ある報告は、GreenおよびWuts(Protective Groups In Organic Synthesis、Wiley and Sons、1991年)である。
【0148】
本発明の化合物を調製するのに使用される出発物質および試薬は、製造業者から入手可能であり、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、vols.1〜17、John Wiley and Sons、New York、N.Y.、1991年;Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、vols.1〜5 and supps.、Elsevier Science Publishers、1989年;Organic Reactions、vols.1〜40、John Wiley and Sons、New York、N.Y.、1991年;March J.:Advanced Organic Chemistry、4th ed.、John Wiley and Sons、New York、N.Y.;およびLarock:Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers、New York、1989年等の参考文献に記載されている手順に従って、当業者によく知られた方法により調製される。
【0149】
出発物質、中間体、および式Iの化合物は、通常の方法、例えば、沈殿、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィー等を使用して、単離および精製されてもよい。式Iの化合物は、物理定数および分光分析方法、特に、HPLCを含めて、通常の方法を使用して特徴付けられてもよい。
【0150】
本質的に塩基性である式Iの化合物は、種々の無機および有機酸と一緒に広範囲の異なる塩を形成することができる。実際には、初めに、式Iの化合物を、反応混合物から、薬剤として許容されない塩として単離し、次いで、後者をアルカリ試薬での処理で遊離塩基化合物に転換し、その後に、遊離塩基を、薬剤として許容される酸付加塩に転換することが望ましい。式Iの塩基化合物の酸付加塩は、塩基化合物を、水性溶剤媒体において、またはメタノールもしくはエタノール等の適当な有機溶剤において、選択された無機または有機酸の実質的に当量で処理することにより容易に調製される。溶剤を注意して蒸発させることにより、所望の固体塩が得られる。
【0151】
本質的に酸性である式Iの化合物は、種々の薬剤として許容されるカチオンと塩基性塩を形成することができる。これらの塩は、相当する酸性化合物を、所望の薬剤として許容されるカチオンを含む水溶液で処理し、次いで、得られた溶液を、好ましくは、減圧下で蒸発乾固することによる通常の方法により調製されてもよい。あるいはまた、これらは、酸性化合物の低級アルカノール溶液と所望のアルカリ金属アルコキシドとを一緒に混合し、次いで、前述と同じ方法において、得られた溶液を蒸発乾固することにより調製されてもよい。どちらの場合においても、試薬の化学量論量が、反応の完結度および最大生成物収率を確実にするために一般的に使用される。
【0152】
特定の態様においては、本発明は、用意された工程を含む、表2において表される化合物を製造する方法を提供する(例えば、図1ならびに材料および方法を参照されたい)。
【0153】
式Iの化合物を生成するために使用される合成スキームの一部として、ピリダジン環の3位の多様化を、共通のハロゲン化ピリダジン前駆体の反応により行った。共通の前駆体、3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン(図1、化合物7)を、先に報告された方法[12〜16]の組合せを使用して調製し、複数の化合物を作るために使用した(例えば、MW01−2−151WH、MW01−3−202WH、およびMW01−3−173WHを参照されたい)。以下の材料および方法において詳細に述べられる様に、化合物は、81〜96%の収率で合成された。すべての精製化合物を、合成を確認するために、HPLC、質量分析およびNMRで確認した。
【0154】
したがって、本発明は、式II
【化2】

【0155】
の化合物を、適当な条件下で、適当な試薬と反応させて、独立に、置換または非置換の、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルコキシ、アルケニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、ヘテロアリール、複素環、アシル、アシルオキシ、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、アミノ、イミノ、アジド、チオール、チオアルキル、チオアルコキシ、チオアリール、ニトロ、ウレイド、シアノ、ハロ、シリル、シリルオキシ、シリルチオ、カルボキシル、カルボキサミド、カルボニル、またはカルバモイルであるR、R、RおよびR基を導入することを含む、式Iの化合物、または薬剤として許容されるこれらの塩の調製方法を提供する。
【0156】
一態様においては、式IIの化合物は、Rに、アルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニルもしくはエトキシカルボニル、またはカルボキシル、特に−C(=O)R40(ここで、R40は、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基、特に、モルホリニルである)またはNR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜5個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環、さらに詳しく言えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、プリニル、または置換されていてもよいベンゾイミダゾリルで置換されたアルキルである)を導入するために、適当な条件下で、適当な試薬と反応させられる。
【0157】
式IIの化合物は、ピリアゾン(pyriazone)において塩素化された式III:
【化3】

【0158】
の化合物を与えるために塩化物と反応させてもよい。
【0159】
式IIIの化合物は、Rに、ハロ、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、アリール、置換アリール、複素環、または置換複素環を導入するために、および/または場合によりRにアルキルを導入するために、適当な条件下で、適当な試薬と反応させてもよい。本発明のこの方法の態様においては、Rは、ピペラジニル、置換ピペラジニル、ピペラジニル、置換ピペラジニル、インドリル、モルホリニル、ナフチルまたは−NR2122[ここで、R21は水素であり、R22は、水素、C〜Cアルキル、特に、メチル、エチルまたはブチル;アリール、特に、フェニル、ベンジル、またはナフチル;置換アリール、特に、アルキルまたはハロで置換されたアリール;置換アルキル{特に、複素環、さらに詳しく言えば、1〜5個の窒素原子を含む置換もしくは非置換の不飽和縮合複素環式基または1〜4個の窒素原子を含む非置換の飽和3〜6員複素単環式基(ここで複素環は、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリール、または置換アリールで置換されていてもよい)で置換されたC〜Cアルキルである}]。
【0160】
一態様においては、本発明は、式I(ここで、R、RおよびRは水素であり、Rは、アミノ、置換アミノ、複素環、または置換複素環、特に、ピペラジニルもしくは置換ピペラジニル、さらに詳しく言えば、アルキル、フェニル、置換フェニル、ピリミジニル、またはピリジニルで置換されたピペラジニルである)の化合物を調製する方法であって、式Iの化合物を製造するために、式IIIの化合物を、アミノ化条件下で、アミノ、置換アミノ、複素環、または置換複素環、特に、ピペラジニルまたは置換ピペラジニルと反応させること、および場合により、Rに、アルコキシカルボニル基またはカルボアミジル基を導入するために、式Iの化合物を適当な条件下で反応させることを含む方法を提供する。得られた化合物は、Rに、アルコキシカルボニル、とりわけ、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニルを導入するために、適当な条件および試薬の下で反応させてもよい。
【0161】
一態様においては、式I(ここで、Rは、カルボキシル、置換カルボキシル、カルボキシアミジルまたは置換カルボキシアミジルである)の化合物は、Rで、置換カルボキシルで置換された3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン(例えば、図6におけるMW01−1−084B−WH)を、ピペラジニルで置換されたピリミジニルと適当な条件下で反応させて、Rで、置換カルボキシルで置換された3−(4−(ピリミジン−2イル)ピペラジン−1−イル)ベンゾ[h]シンノリン(例えば、図6におけるMW01−5−149WH)を製造すること、および場合により、Rが、カルボキシル、カルボキシアミジルまたは置換カルボキシアミジルである化合物を調製するために、得られた化合物を適当な試薬と反応させることを含む方法により調製される。
【0162】
一実施形態においては、式I{ここで、Rが、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、置換カルボキシアミジル(特に、アルキル、とりわけ、ジメチル基で置換されたカルボキシアミジルである)}の化合物は、式I(ここで、Rは、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rは、カルボキシルである)の化合物を、適当な条件下で、塩化チオニルおよびイソプロピルアミンと反応させて、式I{ここで、Rは、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rは、置換カルボキシアミジル(特に、アルキル、とりわけ、ジメチル基で置換されたカルボキシアミジルである)}の化合物を製造することを含む方法により調製される。
【0163】
本発明の化合物、組成物および方法の治療効率および毒性は、細胞培養における標準的薬学手順により、またはED50(母集団の50%において治療的に有効である投与量)もしくはLD50(母集団の50%に対する致死投与量)の統計値等の統計的パラメータを計算すること等による実験動物で決定されてもよい。治療指数は、治療対毒性効果の投与量比であり、ED50/LD50比として表すことができる。大きな治療指数を示す薬剤組成物が好ましい。例えば、1つまたは複数の治療効果、特に、本明細書に開示の有益な効果は、対象または疾患モデル、例えば、アルツハイマー病の症状を持つTgCRND8マウスにおいて証明することができる。
【0164】
生物学的検証を、HPLC/MS分析で決定された、>95%均質な、本明細書に開示の化合物で行った。階層型細胞ベーススクリーニングプロトコルの一部として、LPSで刺激された、BV−2マウス小グリア細胞によるIL−1βおよびTNFα産生を阻止するこれらの能力について、この化合物をスクリーンした。MW01−2−1−151WHおよび3つの構造的に関連した類似体(MW01−3−202WHおよびMW01−3−173WH)のデータが示される(例えば、図2を参照されたい)。本発明の化合物を修飾するために使用されてもよい誘導基は、米国特許出願第20030176437号(すべての目的に対して、全体の開示が参照として本明細書に組み込まれる)において見出すことができる。
【0165】
本明細書に開示の化合物は、肝臓が、初期薬剤代謝の重要な部位であり、動物の全体の代謝およびホメオスタシスにとって重要であるので、経口投与される化合物にとって重要な最初の考慮すべき事柄である肝臓毒性に対してテストすることができる。また、本明細書に開示の化合物は、hERGチャンネル阻害をテストすることにより、心臓の安全性のためにテストされてもよい。
【0166】
(組成物およびキット)
本発明の式Iの化合物は、対象に投与するための薬剤組成物に調剤されてもよい。本発明の薬剤組成物またはそれらの一部分は、適当な薬剤として許容される担体、賦形剤および投与の意図した形態を基に選択されるビヒクルを含み、通常の薬務に合致する。適当な薬剤担体、賦形剤およびビヒクルは、標準テキストの、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company(Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、USA 1985年)に記載されている。例えば、カプセルまたは錠剤の形態における経口投与のためには、活性成分は、ラクトース、デンプン、スクロース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、グルコース、硫酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、マンニトール、ソルビトール等の、経口の非毒性の薬剤として許容される不活性担体と組み合わせることができる。液体形態における形容投与のためには、薬剤成分は、エタノール、グリセロール、水等の任意の経口の非毒性の薬剤として許容される不活性担体と組み合わされてもよい。適当なバインダー(例えば、ゼラチン、デンプン、コーン甘味料、グルコースを含む天然糖;天然および合成ゴム、およびワックス)、潤滑剤(例えば、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、および塩化ナトリウム)、崩壊剤(例えば、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、およびキサンタンガム)、芳香剤、および着色剤は、また、組成物またはこの成分と組み合わされてもよい。本明細書に開示の組成物は、湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤をさらに含むことができる。
【0167】
本発明の組成物は、液体溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、ピル、カプセル、徐放性剤形、または粉末であることができる。組成物は、トリグリセリド等の従来のバインダーおよび担体と一緒に、坐薬として調剤することができる。経口組成物は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含むことができる。例えば、リポソームにおけるカプセル化、微粒子、マイクロカプセル等の種々の送達システムが知られており、本発明の化合物を送達するのに使用することができる。
【0168】
非経口投与のための組成物は、水溶液、シロップ、綿実油、ココナッツ油またはピーナッツ油等の食用油を伴う水性または油性懸濁液およびエマルションを含んでもよい。水性懸濁液のために使用することのできる分散剤または懸濁剤としては、合成または天然ゴム、例えば、トラガカント、アルギネート、アカシア、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ゼラチン、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0169】
非経口投与のための組成物は、無菌の水性または非水性溶剤、例えば、水、等張生理食塩水、等張グルコース溶液、緩衝溶液、または治療的に活性な作用薬の非経口投与のために都合よく使用されるその他の溶剤を含んでもよい。非経口投与を意図した組成物は、また、安定剤、緩衝剤、もしくは防腐剤、例えば、メチルヒドロキシベンゾエート等の酸化防止剤等の通常の添加剤または類似の添加剤を含んでもよい。
【0170】
本発明の組成物は、本明細書に記載の薬剤として許容される塩として調剤することができる。
【0171】
本発明の組成物は、例えば、バクテリア保持フィルターによる濾過、組成物への殺菌剤の添加、組成物の放射線照射、または組成物の加熱によって滅菌されてもよい。あるいはまた、本発明の化合物または組成物は、滅菌固体製剤、例えば、使用直前に、滅菌溶剤に簡単に溶解する凍結乾燥粉末として提供されてもよい。
【0172】
薬剤組成物が調製された後、これらは、適当な容器に入れられ、指示された状態の治療のために標識化される。本発明の組成物の投与のために、その様な標識は、量、頻度、および投与の方法を含む。
【0173】
本発明は、また、有益な効果、特に、持続した有益な効果を提供するために、本発明の薬剤組成物の成分の1つまたは複数で充填された1つまたは複数の容器を含む薬剤パックまたはキットを提供する。その様な容器と一緒に、様々な書面資料、例えば、使用説明書、またはヒト投与のための製造、使用、もしくは販売の機関による証明を示す、標識化、製造、医薬品または生物学商品の使用または販売を規制する政府機関により命じられた方式の注意書等が存在する。
【0174】
本発明は、また、本発明の化合物または薬剤組成物を含むキットを提供する。キットは、本発明の組成物を含む容器を収納し、対象への組成物の投与の指示を収納するパッケージであることができる。
【0175】
(用途)
本発明は、式Iの化合物および、本明細書開示の疾患を治療し、特に、予防し、および/または疾患の重篤度、疾患の病状、および/または本明細書開示の疾患の再発の周期性を改善するための、式Iの化合物を含む組成物の使用を考慮する。本発明は、また、本発明の化合物、組成物または治療を使用して疾患を哺乳類において治療することを考慮する。実施形態における本発明は、より大きな溶解性、安定性、有効性、効力、および/または有用性、特に、より大きな溶解性および安定性を含む有益な効果を提供する化合物を含む組成物を提供する。
【0176】
新しい治療的介入のための新規な化合物および方法は、医薬および疾患治療の多数の分野に必要とされる。例えば、慢性および急性炎症状態は、喘息、急性炎症疾患、血管炎症疾患、慢性的炎症、アテローム性動脈硬化症、血管障害、心筋炎、腎炎、クローン病、関節炎、タイプIおよびII糖尿病および随伴する血管の病状を含むがこれらに限定されない、すべての有機的組織に影響を及ぼす疾患の基礎を形成する。これらの炎症状態の発生は、増大しており、その費用も多額である。例えば、炎症疾患の1形態に過ぎないアルツハイマー病では、直接的コスト(薬剤費、医者の費用、および老人ホームでの介護等)および間接的コスト(アルツハイマー病に罹患している人の生産性の損失およびこれらの個人を介護する人の生産性の損失)は、毎年1000億ドルを超えると推定されている。
【0177】
以下の実施例および関連する検討に関連して、本発明は、炎症、グリア活性化またはリン酸化反応経路および/またはそれらに関わる新たな治療経路の調節に関する様々な方法を提供する。本明細書の他の場所でさらに完全に例示される様に、その様な方法としては、タンパク質キナーゼ活性、グリア活性化、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、細胞アポトーシスおよび/または死に関連したタンパク質キナーゼ活性、および/またはインターロイキンまたは腫瘍壊死因子産生等の炎症誘発性サイトカイン応答を選択的に阻害するための、本発明の化合物および組成物の使用、好ましくは、投与量依存性形式における使用が挙げられるがこれらに限定されない。その様な方法は、活性化したグリア細胞、組織、培養または関連生理学系もしくは媒体へのその後の投与および/または送達を伴う組成物の調製および/または調剤を含むことができ、投与量における、または組成濃度でのその様な投与/送達は、その他の所望の内生的抗炎症応答を実質的に阻害することなしに、所望の調節および/または阻害を行うのに十分である。
【0178】
一態様においては、本発明は、神経細胞死の阻害に関する。選択的神経細胞死は、アルツハイマー病(AD)、および外傷性脳損傷、および脳卒中を含む、多数の神経変性疾患の病状の特徴である。本発明の選択された化合物および組成物は、Aβ−誘発神経細胞死の減少または阻害、特に、カルモジュリン調節タンパク質キナーゼ、例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ(DAPK)等の減少または阻害のために使用されてもよい。
【0179】
いくつかの実施形態においては、本発明は、式Iの化合物の1つまたは複数、特に、本明細書の図および表おいて示される1つまたは複数の化合物、とりわけ、表4において示される化合物またはこれらの化合物の誘導体を含む組成物を投与することを含む、細胞シグナル伝達分子産生(例えば、IL−1βおよびTNFα)を阻害する方法を提供する。
【0180】
本発明は、また、1)炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNFaまたはIL−1p)の量を低下させること、および/または2)シナプス前タンパク質(例えば、シナプトフィシン)および/またはシナプス後タンパク質(例えば、PSD−95)の正常水準を維持するためまたは減少を防止するために使用する化合物(例えば、図および表に列挙される化合物)を提供する。いくつかの実施形態においては、炎症誘発性サイトカインの減少は、正常で健康な個人において見出される水準までである。いくつかの実施形態においては、化合物は、化合物での治療が、疾患が原因の異常に高い炎症誘発性サイトカイン産生(例えば、炎症誘発性サイトカインにおけるAβ−誘発増加)を減少する様に、炎症疾患(例えば、アルツハイマー病)の特徴を示す個人のために提供される。
【0181】
その他の態様においては、本発明の選択された化合物および組成物は、サイトカイン媒介神経細胞死を調節するため、特に、アルツハイマー病およびその他の神経変性障害、および脳損傷、および脳卒中における、NOのサイトカイン誘発発生、死レセプターのFas/TNFRファミリーを介してシグナル伝達するTNFα、および/またはDAPKを調節するために使用されてもよい。神経細胞死における炎症誘発性サイトカインおよびNOの関与の証拠は、Akiyama,H.等、(2000年)Neurobiol.Agir g21、383頁〜421頁;Prusiner,S.B.(2001年)New Engl.J.Med.344、1516頁〜1526頁において検討されている。サイトカイン誘発神経死は、DAPKを含んでいた。
【0182】
一部、本発明は、また、脳グリアおよび神経細胞に加えて、細胞死または組織損失ならびに細胞活性化の阻害に関する。例えば、細胞活性化および組織損失は、急性肺損傷(ALI)等のその他の疾患の特徴である。敗血症、外傷または機械的人工換気によるALIは、高い死亡率および疾病率を伴うが、未だに、ALIの治療のための有効な治療法はほとんど存在していない。ALIは、それ自体が急性心筋梗塞に等しい年間死亡率を有する敗血症中に多く発生する。内皮細胞(EC)機能障害および活性化は、ALIに連関したin vivo応答に関係しており、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)等のECタンパク質キナーゼは、ECバリア機能および活性化にとって重要であることが示されている。同様に、ストレスおよび急性損傷に対する心臓の応答は、タンパク質リン酸化反応調節経路および細胞活性化が細胞死および組織損傷に連関している、急性および慢性損傷を引き起こす。MLCKおよびローキナーゼ等の関連酵素は、これらの過程に関連しており、新たな治療のための目標であってもよい。したがって、式Iの化合物は、低酸素症−虚血、急性肺損傷および/または肺または血管組織における内皮細胞機能障害からの損傷を減少させるために使用することができる。
【0183】
本発明のその他の態様においては、式Iの化合物、または薬剤として許容されるその塩の治療有効量を対象に投与することを含む、炎症、特に神経炎症を含むまたは特徴とする疾患を、対象において治療するための方法が提供される。さらなる態様においては、式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、炎症、特に神経炎症を含む状態を、対象において治療するための方法が提供される。
【0184】
なおさらなる態様においては、本発明は、神経炎症、グリアの活性化、炎症誘発性サイトカイン、酸化ストレス関連酵素、急性期タンパク質および/または補体カスケードの成分を阻害または減少する、式Iの治療的化合物、または薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0185】
その他の態様においては、本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、本明細書に開示の化合物で減少または阻害することのできる炎症随伴疾患を対象において治療するための方法を提供する。
【0186】
その他の態様においては、本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、対象におけるタンパク質キナーゼ、特に、DAPKの活性化を予防または阻害するための方法を提供する。
【0187】
さらなる態様においては、本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、対象におけるキナーゼ活性、グリア活性化、神経細胞損傷、および/または神経細胞死を減少または阻害するための方法を提供する。
【0188】
いくつかの実施形態においては、本発明は、式Iの1つまたは複数の化合物、特に、図および表3および4において示される化合物、またはこれらの化合物の誘導体を含む組成物を投与することを含む、細胞シグナル伝達分子産生(例えば、IL−1βおよびTNFα)を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態においては、化合物、特に、図および表3および4において示される化合物、またはこれらの化合物の誘導体の1つまたは複数が、炎症疾患(例えば、神経炎症疾患、特に、アルツハイマー病)を治療するために、その他の認められている治療法と一緒に共投与される。いくつかの実施形態においては、本発明は、1)炎症誘発性サイトカイン(例えば、TNFαまたはIL−1β)の量を低下させることおよび/または2)シナプス前タンパク質(例えば、シナプトフィシン)またはシナプス後タンパク質(例えば、PSD−95)の正常水準を維持することにおける使用のため、研究、薬剤スクリーニング、または治療目的のための化合物(例えば、図および表3および4において示されている化合物)を提供する。いくつかの実施形態においては、炎症誘発性サイトカインの減少は、正常で健康な個人において見出される水準までサイトカインを減少する。いくつかの実施形態においては、化合物は、化合物での治療が、疾患が原因の異常に高い炎症誘発性サイトカイン産生(例えば、炎症誘発性サイトカインにおけるAβ−誘発増加)を減少する様に、炎症疾患(例えば、神経炎症、特に、アルツハイマー病)の特徴を示す個人のために提供される。
【0189】
一態様においては、本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、疾患の進行を改善するか、その様な疾患(例えば、神経炎症疾患、特に、神経変性疾患、さらに詳しく言えば、アルツハイマー病)に罹患している対象における疾患の比較的軽度の段階を獲得するための方法を提供する。
【0190】
本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、疾患(例えば、神経炎症疾患、特に、神経変性疾患、さらに詳しく言えば、アルツハイマー病)の進行を遅延させるための方法に関する。
【0191】
本発明は、また、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、疾患(例えば、神経炎症疾患、特に、神経変性疾患、さらに詳しく言えば、アルツハイマー病)に罹患している対象の生存を増加するための方法に関する。
【0192】
本発明は、神経変性疾患、特に、アルツハイマー病を治療または予防することにおいて特有の用途を有する。本発明の一態様においては、式Iの化合物は、アルツハイマー病の治療において利用される。アルツハイマー病は、式Iの化合物の治療有効量を投与することにより治療されてもよい。その様な治療は、特に、神経炎症、中枢神経系の低下、知的機能の損失、短期記憶の損失、および見当識障害を含むがこれらに限定されない、アルツハイマー病の変性効果を遅延させるのに有効であってもよい。
【0193】
その他の態様においては、本発明は、投与後の長期間にわたって、神経炎症、炎症(神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)神経細胞損傷、および/または神経細胞死を、逆転または阻害するのに十分な量において本発明の化合物を含む組成物を提供することにより、アルツハイマー病を治療するための方法を提供する。
【0194】
さらなる態様においては、本発明は、投与後の長期間にわたって、神経炎症、炎症(神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死を伴うタンパク質キナーゼ活性)神経細胞損傷、および/または神経細胞死を逆転または阻害するのに十分な投与量において本発明の化合物を提供する組成物を個人に投与することを含む、治療を必要とする患者においてアルツハイマー病を治療するための方法を提供する。
【0195】
一実施形態における本発明は、アルツハイマー病を治療するための方法、即ち、投与後の長期間にわたって認知減退を減少させるのに十分な量において本発明の化合物を含む組成物を、それを必要とする哺乳類に投与し、それによってアルツハイマー病を治療することを含む方法を提供する。
【0196】
一態様においては、本発明は、神経変性疾患、特に、アルツハイマー病の症状を持つ対象への投与により、1つまたは複数の治療効果、特に有益な効果、さらに詳しく言えば持続した有益な効果を、生み出す式Iの1つまたは複数の化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む治療方法に関する。一実施形態においては、有益な効果は、次の1つまたは複数の減少または阻害により証明される:炎症(例えば、神経炎症)、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)、細胞損傷(例えば、神経細胞損傷)、および/または細胞死(例えば、神経細胞死)。
【0197】
疾患がアルツハイマー病である一実施形態においては、本発明の化合物または組成物の有益な効果は、次の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、またはすべて、特に、次の5以上、さらに詳しく言えば、7以上を示すことができる:
a)タンパク質キナーゼ活性(例えば、DAPK)における減少、特に、タンパク質キナーゼ活性における、少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の減少。
b)グリア活性化応答の減少、特に、グリア活性化における、少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の減少。
c)アルツハイマー病の症状を伴う対象において、式Iの化合物の存在しない場合に決定された水準と相対的な脳におけるグリア活性化における減少。特に、化合物は、グリア活性化において、少なくとも約2%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%の減少を引き起こす。
d)酸化ストレス関連応答(例えば、一酸化窒素シンターゼ産生および/または一酸化窒素蓄積)における減少、特に、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積における、少なくとも約0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の減少。
e)細胞アポトーシスおよび/または死に関連したタンパク質キナーゼ活性における減少、特に、細胞アポトーシスおよび/または死に関連したタンパク質キナーゼ活性における、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の減少。
f)炎症誘発性サイトカイン応答における減少、特に、炎症誘発性サイトカイン応答における、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の減少。
g)インターロイキン−1βおよび/または腫瘍壊死因子α産生における減少、特にインターロイキン−1βおよび/または腫瘍壊死因子α産生における、0.05%、0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、20%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の減少。
h)シナプス前タンパク質(例えば、シナプトフィシン)および/またはシナプス後タンパク質の損失予防。
i)アルツハイマー病を持つ対象における疾患の進行の減速。
j)アルツハイマー病の病状を伴う対象における生存の増加。
【0198】
本発明の特定の態様においては、本発明の化合物、組成物または治療の有益な効果は、(a)および(b);(a)、(b)および(c);(a)〜(d);(a)〜(e);(a)〜(f);(a)〜(g);(a)〜(h);(a)〜(i)、または(a)〜(j)で示すことができる。
【0199】
本発明の化合物、薬剤組成物および方法は、持続した有益な効果を有するものを選択することができる。一実施形態においては、本発明の化合物の治療有効量を含む、統計学的に顕著な持続した有益な効果を持つ薬剤組成物が提供される。
【0200】
本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるこの塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、軽度認知障害(MCI)を治療するための方法を提供する。
【0201】
一実施形態においては、本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、対象における認知欠損およびアルツハイマー病神経病状の発症後に、神経炎症、炎症(例えば、神経炎症)において含まれるシグナル伝達経路の活性化、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン(例えば、インターロイキン(IL)または腫瘍壊死因子(TNF))、一酸化窒素シンターゼ産生および一酸化窒素蓄積等の酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性(例えば、死に関連したタンパク質キナーゼ活性)、神経細胞損傷、および/または神経細胞死を逆転または阻害する方法を提供する。
【0202】
本発明は、式Iの化合物、もしくは薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の有効量を投与することにより、本明細書に開示の疾患に対して遺伝子的疾病素質を持つ対象におけるその様な疾患を予防する方法を提供する。
【0203】
本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の有効量を投与することにより、健康な対象の記憶または加齢記憶障害を伴う対象の記憶を改善する方法を提供する。
【0204】
さらに、式Iの化合物、もしくは薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の有効量を投与することを含む、記憶、特に短期記憶および加齢に伴うその他の知的機能障害を改善する方法を提供する。
【0205】
一実施形態においては、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の有効な記憶改善量を哺乳類に投与する工程を含む、記憶を害するか、さもなければ減少させることが知られている、疾患、障害、虚弱または不快と診断されていない、記憶の改善を必要とする哺乳類を治療する方法が提供される。
【0206】
一態様においては、本発明は、式Iの化合物、薬剤として許容されるその塩、または式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む組成物の治療有効量を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患している対象の寿命を改善する方法に関する。
【0207】
いくつかの態様においては、本発明の治療の大きな有効性および効能は、治療の治療可能比、厄介な副作用の減少および毒性を改善することができる。本発明の選択された方法は、また、治療が、症状の発現からずっと後に開始された場合でも、長年の疾患を改善することができる。
【0208】
本明細書に記載の組成物および方法は、治療剤または方法が、単独でも、またはその他の治療剤もしくはその他の治療形態との組合せでもよい様に指示される。これらは、本明細書に記載の状態を治療するために使用される1つまたは複数の治療法または作用薬と一緒に組み合わされてもよくまたは調剤されてもよい。本発明の組成物は、その他の治療剤または治療法と一緒に、同時に、別々に、または順番に投与されてもよい。したがって、式Iの化合物は、ベータ−セクレターゼ阻害剤、アルファ−セクレターゼ阻害剤、およびイプシロン−セクレターゼ阻害剤、疾患が原因のまたは疾患に随伴する合併症の治療のために使用される作用薬、または副作用を治療または予防する一般の医薬、を含むがこれらに限定されない1つまたは複数のさらなる治療剤と一緒に共投与されてもよい。
【0209】
本発明は、また、本明細書に開示の疾患を治療する医薬の調製のための、本発明の少なくとも1つの化合物を含む組成物の使用を考慮する。一実施形態においては、本発明は、障害または疾患の治療における治療効果、特に有益な効果、さらに詳しく言えば持続した有益な効果を与えるための医薬の調製のための、本発明の少なくとも1つの化合物の治療有効量の使用に関する。なお、さらなる実施形態においては、本発明は、疾患の長期のまたは持続された治療のための医薬の調製のための、本発明の化合物の使用を提供する。
【0210】
(投与)
本発明の化合物および組成物は、治療効果、特に有益な効果、とりわけ持続した有益な効果を生むために、対象または患者の体における活性剤の作用部位と活性剤との接触を引き起こす任意の手段で投与することができる。活性成分は、所望の有益な効果を与えるために、別々の時間に、同時に、または順番におよび任意の順序で投与することができる。本発明の化合物および組成物は、徐放性のために、局部に、または全身に送達するために調剤することができる。治療効果、特に有益な効果、さらに詳しく言えば持続した有益な効果を与えるために、本発明の組成物および治療の効果を最適化する投与の形態および経路を選択することは、熟練した医者または獣医の能力の範囲内である。
【0211】
組成物は、錠剤、カプセル(そのそれぞれは、徐放性のまたは時間調節放出の組成物を含む)、ピル、粉末、顆粒、エリキシル剤、チンキ、懸濁液、シロップ、およびエマルション等の経口投薬量形態において投与されてもよい。これらは、また、すべて、薬剤分野の通常の熟練者にはよく知られている投薬量形態を利用して、静脈内(ボーラスまたは注入)、腹腔内、皮下、または筋肉内形態において投与されてもよい。本発明の組成物は、適当な鼻腔内ビヒクルの使用による鼻腔内経路により、または経皮経路、例えば、通常の経皮的皮膚パッチにより投与されてもよい。経皮的送達システムを使用する投与のための投薬量プロトコルは、投薬方式の全体にわたって、断続的よりも連続的であってもよい。徐放性薬剤は、また、治療剤のために使用することもできる。
【0212】
効果、特に有益な効果、さらに詳しく言えば持続された有益な効果を与えるための、特定の障害または疾患の治療において有効である本発明の治療の量は、状態または障害の性質に依存し、標準的臨床方法で決定することができる。薬剤において使用される正確な投与量は、また、投与の経路、および疾患の重篤度に依存し、開業医の判断およびそれぞれの患者の環境により決定されるべきである。
【0213】
したがって、本発明の投薬方式は、作用薬およびこれらの形式の薬効学的特徴および投与の経路;種、年齢、性別、健康、病状、および患者の体重、症状の性質および範囲、同時治療の種類、治療頻度、投与経路、患者の腎臓および肝臓の機能、および所望の効果等の既知の要因によって変動する。
【0214】
投与のための適当な投薬量範囲は、治療効果、特に有益な効果、さらに詳しく言えば持続された有益な効果を与えるために特に選択される。投薬量範囲は、所望の生物学的応答を引き起こすのに一般に有効である。投薬量範囲は、一般に、対象の体重1kg当たり、約0.5mg〜約2g、約1mg〜約1g、約1mg〜約200mg、約1mg〜約100mg、約1mg〜約50mg、約10mg〜約100mg、または約30mg〜70mgである。
【0215】
本発明の組成物または治療は、有益な効果を与えるために、本発明の少なくとも1つの化合物の単位投薬量を含んでもよい。「単位投薬量」または「投薬量単位」とは、患者に投与することができ、活性剤をそのまま、または1つまたは複数の固体もしくは液体の薬学的賦形剤、担体、またはビヒクルとの混合物として含む、物理的におよび化学的に安定な単位投与量を残したまま、簡単に取り扱え、充填することが可能な単位、即ち、単一投与量を意味する。
【0216】
対象は、実質的に任意の所望のスケジュールで、式Iの化合物またはこの組成物もしくは薬剤で治療されてもよい。本発明の組成物は、1日1回または複数回、特に、1日1または2回、週に一度、月に一度または連続的に投与されてもよい。しかしながら、対象は、隔日に、または週に一度の様に頻度を少なくして、または頻度を多くして治療されてもよい。本発明の化合物、組成物または薬剤は、約または少なくとも約1週間、2週間〜4週間、2週間〜6週間、2週間〜8週間、2週間〜10週間、2週間〜12週間、2週間〜14週間、2週間〜16週間、2週間〜6カ月間、2週間〜12カ月間、2週間〜18カ月間、または2週間〜24カ月間、周期的にまたは連続的に対象に投与されてもよい。
【0217】
本発明は、特定の実施例によりさらに詳細に記述される。以下の実施例は、例示目的のためのものであって、いかなる方法によっても本発明を限定しようとするものではない。
【0218】
(実施例)
(実施例1.一般的な材料および方法)
合成化学。すべての試薬および溶剤は、さらなる精製なしで購入物を使用した。合成は、確立された方法およびそれに平行する合成スキームを変更したものを使用して行った。溶剤の除去後に、95%エタノールから再結晶を行った。反応は、逆相カラムCIS(25cm×4.6mm、5μm、Supelco、Bellefbnte、PA)を用いた分析HPLC(Rainin Instruments System Wobum、MA)において、2つの異なるUV波長(X=260nmおよびX=220nmまたは300nm)でモニターしながら行った。溶出液は、(A):水中の0.1%(v/v)TFAおよび(B)0.08%TFAを含む、80%(v/v)アセトニトリル/水であった。1mL/分で、34分にわたり、(A)/(B)100/0〜0/100の線形勾配を使用した。1H−NMRスペクトルを、Varian INOVA(500MHz)分光計を使用して得た。高解像度質量スペクトルを、VG70−250SE質量分析計で得た。
【0219】
細胞培養分析。BV−2マウス小グリア細胞(48ウェルプレートにおいて、5×103細胞/ウェル)を培養し、以前に記載されたアミノピリダジン化合物の存在または不存在において標準グリア活性化刺激リポ多糖類(LPS、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)から)で16時間処理した[4、17]。細胞溶解物におけるEL−1/3およびTNFa水準を、製造業者の指示に基づいて、Meso−Scale Discovery(MSD)キットにおける電気化学蛍光検出により決定した。
【0220】
in vivo分析。Aβ−42注入およびMW01−2−151WHでのC57B1/6マウスの処理を、先に記載された通りに行った[5]。要するに、オリゴマーA/31−42を、超小型浸透圧ポンプで、ICVに28日間注入した。術後21日後に、その後14日間続けて、MW01−2−151WH(2.5mg/kg/日)または溶剤対照(生理食塩水における10%DMSO)を、毎日一度、マウスの腹腔内に注射した。術後60日後に、マウスを潅流し、屠殺して、海馬の終点を、先に記載された通りに測定した[5]。終点分析は、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)およびF4/80染色による活性化星状膠細胞および小膠細胞の免疫組織化学検出、ELISAによる、炎症誘発性サイトカインIL−1|S、TNFa、およびS100Bの水準の測定、および後シナプス肥厚タンパク質−95(PSD−95)の水準の分析による、シナプス損傷の決定を含んでいた。
【0221】
脳摂取分析。0.5%のカルボキシメチルセルロースビヒクル中において、MW01−2−151WHを2.5mg/kg使用して、経口での強制飼養により、マウス(25〜30g)に投与した。投与後、様々な時間で(0〜60分)、マウスを屠殺し、心臓に穿刺して血液を除去し、直ちに脳を取り出し、計量し、液体窒素で急速凍結し、分析まで−80℃で保存した。脳組織を、1.5mlの0.1M過塩素酸中でホモジナイズした。遠心分離(10分間、12,000×g)後、上澄み液を、1M NaOHで中和し、次いで、2mlのジクロロメタンで3度、5分間、3000×gの遠心分離することにより抽出した。3度の連続抽出による有機相を一緒にし、次いで、減圧下で蒸発乾固した。乾燥サンプルを、100μlのHPLC移動相(80%アセトニトリル、0.08%ギ酸、20%HO)で還元し、20μlの還元材料を、HPLC系に注入した。MW01−2−151WHの検出のためのHPLC系は、ガードカラムを持つLuna 5μm CIS、250mm×2mm内径カラム(Phenomenex、Torrance、CA、USA)を使用し、HPLC溶剤(Dionex、model P680ポンプ)を0.2ml/分で送液し、282(Dionex、model UND 170U検出器)で吸光度をモニターした。これらの実験条件下で、MW01−2−151WHの保持時間は15.3分であった。MW01−2−151WHの標準曲線は、未処理のマウスの脳組織に化合物の濃度を増加して添加し、次いで、その脳を抽出し、上述の通りにHPLC分析を行うことにより作成した。曲線下の領域は、0.99の相関係数で、調べられた濃度の範囲にわたってMW01−2−151WH濃度と共に直線的に増加した。我々の実験条件下では、化合物は、29+/−2%の平均回収率で再現可能に抽出された。
【0222】
等級別投与量、急性毒性分析。0.5%のカルボキシメチルセルロース中において、ビヒクル(30% DMSO)またはMW01−2−151WH(3.1、12.5または50mg/kg)を、経口での強制飼養により、3日間、毎日一度投与した。4日目に、マウスを、ペントバルビタールで麻酔に掛け、挿管して、肺を、空気含有シリンジで膨張させた。マウスを、右心室を穿刺して潅流し、次いで、肺、肝臓および腎臓を取り出し、組織学のために4%パラホルムアルデヒドにおいて固定した。各組織の、パラフィン封入ヘマトキシリン&エオシン染色部分を、標準方法で調製した。治療グループがどれであるか分からない病理学者が、損傷組織の顕微鏡評価を行った。
【0223】
MW01−2−151WHは、濃度依存法において、IL−1βおよびTNFαの両方を抑制したが、関連類似体のMW01−3−202WHおよびMW01−3−173WHは、若干少ない抑制活性を示した(例えば、図2を参照されたい)。
【0224】
細胞ベース分析における神経炎症の濃度依存性抑制に基づいて、MW01−2−151WHを、最近開発された動物モデルにおいてテストした[5、6]。Aβ−42をICVに注入され、MW01−2−151WHを末梢的に(腹腔内注射)投与されたマウスは、海馬において、Aβ−誘発神経炎症の著しい阻害を示した(例えば、図3を参照されたい)。MW01−2−151WH処理は、炎症誘発性サイトカインIL−1β、TNFα、およびS100BにおけるAβ−誘発増加を阻止し、多数の活性化GFAP−陽性星状膠細胞およびF4/80陽性小膠細胞を抑制した(例えば、図3を参照されたい)。MW01−2−151WH処理は、また、いくつかの神経保護を示し、そこにおいて、シナプス後タンパク質、PSD−95のAβ−誘発減少を部分的に妨げた(例えば、図3を参照されたい)。
【0225】
炎症疾患(例えば、アルツハイマー病)のためのリード化合物を開発する際に考慮すべき重要な面は、生物学的利用能および毒性の問題に取り組むことである。したがって、マウスへの経口での強制飼養後にMW01−2−151WHが脳に取り込まれる能力を分析した。化合物は、脳組織において急速に検出され、投与後5分以内で最大に達した(例えば、図5を参照されたい)。また、MW01−2−151WH誘発組織毒性を、急性毒性パラダイムにおいて、一連の段階的に増大する投与量をテストすることにより試験した。MW01−2−151WHの3つの異なる投与量(3.1、12.5、または50mg/kg)を、経口での強制飼養で、3日間、毎日一度投与し、マウスを4日目に屠殺し、肝臓、肺、および腎臓を、毒性の組織学的証明のために分析した。組織毒性は、最大投与量のテストでも観察されなかった(例えば、図5を参照されたい)。50mg/kgの高い投与量は、図3において使用される治療投与量よりも20倍高い投与量を表す。組織毒性が、図3における検討のために使用されたアルツハイマー病関連マウスモデルの長期投与状態下で観察されたという証拠はない。したがって、化合物MW01−2−151WHは、生物学的利用が可能であり、脳に急速に取り込まれ、急速および連続投与において非毒性である。
【0226】
表1は、MW01−2−151WHおよびMW01−070Cの間のコンピュータ処理された分子特性における相違を示している例を与える。米国特許出願第20030176437号(すべての目的に対して、その全体の開示が参照として本明細書に組み込まれる)において記載されているMW01−070Cは、生物学的利用が可能なグリア活性化阻害剤として開発され、概念経路検証研究のin vivoでの立証のために使用された[2、5、6]。MW01−2−151WHは、不活性ピリダジンフラグメントの多様性を表すフォーカスドライブラリーからの最小限のピリダジン誘導体として利用される。MW01−2−151WHの物性は、経口での生物学的利用が可能で安全な薬剤の特徴として最近同定されたパラメータ内で、十分に化合物を生成することが考えられるさらなる医薬品化学の改善を可能にする[11]。
【0227】
本明細書において与えられる情報は、薬剤の発見(例えば、アルツハイマー病薬剤の発見)において、炎症サイクル(例えば、神経炎症サイクル)を目標とすることの利益を立証する証拠の蓄積本体に加わる。MW01−2−151WHおよび関連化合物(例えば、図および表を参照されたい)は、所望のin vivo効果を伴う化合物を与える。さらに、これらの化合物は、新規のフォーカスドライブラリー合成および特権的コアフラグメントで開始する反復スクリーンプロトコルで開発することができる(例えば、図1、および米国特許出願第20030176437号を参照されたい)。本発明のフォーカスド化合物ライブラリーは、所望の分子特性、即ちin vivo効果を持ち、安全性プロフィールを約束する化合物を生成する、個々の化学的多様性を提供する。これらの最小限のピリダジン構造は、in vivo機能を有するが、最大の所望の分子量より十分に小さく、なお、今後の薬剤開発(例えば、水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニル、アリールアルキル、置換アリールアルキル、ハロゲン、アミノ、複素環、置換複素環、環状アルキル、ヒドロキシ、アミン、置換アミン、アリールアミン、ヘテロアリールアミン、アリールアルキルアミン、ヒドラジニル、置換ヒドラジニル、ピリミジニルおよび置換ピリミジニル、ピリジニルおよび置換ピリジニル、ピラジニルおよび置換ピラジニル、チエニルおよび置換チエニル、チアゾリルおよび置換チアゾリル、ピラゾリルおよび置換ピラゾリル、スチルベニルおよび置換スチルベニル、イミダゾリルおよび置換イミダゾリル、フタラジンおよび置換フタラジン、ピペラジニルおよび/または置換ピペラジニル部分の付加)においてさらなる医薬品化学の改善の余地がある。
【0228】
(実施例2.急性および慢性毒性分析)
肝臓毒性は、肝臓が、初期の薬剤代謝の主要な部位であり、動物の全体の代謝およびホメオスタシスにとって重要であるので、経口投与される化合物にとって特に重要な最初の考慮すべき事柄である。肝臓損傷は、また、ある種の長期投与薬剤において見られる特発性組織損傷の構成要素である。したがって、マウスへの化合物の経口投与後に、肝臓毒性の初期評価を行うことが重要である。
【0229】
標準的方法は、化合物を、2つの初期in vivo毒性分析(急速の段階的に増大する投与量パラダイムおよび長期の治療的投薬方式)においてテストすることである。段階的に増大する投与量、急性毒性分析のために、マウス(実験グループ当たり5匹)に、0.5%のカルボキシメチルセルロース(あるいはまた、ヒマシ油およびゴマ油が使用できる)中の、テスト化合物またはビヒクルを、経口での強制飼養で、3日間、毎日一度投与する。標準テスト化合物投与量は、3.1、12.5および50mg/kgである;最高投与量は、20×治療的投与量である。4日目に、マウスを屠殺し、肝臓を取り出し、組織学のために固定する。肝臓組織のパラフィン封入ヘマトキシリン&エオシン(H&E)染色部分を、治療グループがどれであるか分からなくした2匹の個体で、損傷について顕微鏡的に分析する。0(最高)〜9(最悪)の半定量組織学的採点法を、構造の特徴(正常から拡大線維形成)、細胞の特徴(正常から拡大浮腫および広範囲に及ぶ壊死)、および炎症浸潤物の程度(正常から拡大浸潤物)を検討するのに適用する。各急性毒性分析に対しては、15mgの化合物が必要とされる。
【0230】
治療的投与量、慢性毒性分析のために、マウス(実験グループ当たり5匹)に、0.5%のカルボキシメチルセルロース中の、化合物またはビヒクルを、経口での強制飼養で、毎日一度、2.5mg/kg/日の治療的投与量で2週間の間投与する。2週間の治療の後に、マウスを屠殺し、肝臓毒性を上述と同様に分析する。各慢性毒性分析に対しては、5mgのテスト化合物が必要とされる。
【0231】
(実施例3.hERGチャンネル阻害分析および心臓のQT間隔分析)
化合物は、この過程の初めに、その後の研究において目標外の毒性となる心臓のQT間隔の延長を誘発する可能性の高い任意の化合物を除去するために、hERG(human ether−a−go−go)カリウムイオンチャンネル結合および阻害についてのスクリーンに掛けられる。hERGチャンネルは、心臓の再分極に決定的に寄与する遅延整流性カリウム電流の活性化を迅速に行う。hERGチャンネル遺伝子における突然変異および電流の薬剤誘発遮断は、延長されたQT間隔を招く活動電位の遅延再分極に繋がっている(Finlayson等、2004年;Recanatini等、2005年;Roden、2004年)。QT延長は、新しい薬剤の心臓の安全性に対する著しく危険な要因と考えられる。したがって、hERGチャンネル阻害に対するテストによる、開発過程の初期における心臓の安全性についての考察は、可能性のある化合物の心臓への安全性障害を評価するのに有効な予測手段を提供する。さらに、FDA(USA)は、これを、将来の認定基準として検討しており、現時点では特別に推奨している。この分析は、商業サービス(MDS PharmaService)を使用して行われてもよい。
【0232】
初期分析は、ヒトHEK−293細胞において安定して発現される組み換えhERGチャンネルに結合するために、H−アステミゾール(nM親和力でhERGチャンネルに結合する参照標準)と競合するテスト化合物の能力をテストする、放射性リガンド結合分析である。ヒト組織であるという理由で選択されたこの細胞株は、hERG電気生理学および薬学に関して完全に特徴付けられ、IKr電流の期待された特徴および期待された薬理学的感応性を示し、培養液での維持が容易である(Zhou等、1998年)。テスト化合物の単一濃度(10μM)を分析し、H−アステミゾール結合の%阻害を計算する。一般的に、>50%阻害を示す任意の化合物を、hERGチャンネル活性分析においてさらにテストする。これは、媒体全体にわたるスクリーンにとっては普通であるが、FDA資料においては推奨されていなく、偽陽性を与える傾向がある。
【0233】
hERGチャンネル活性阻害分析は、hERG Kチャンネル機能における化合物効果について、全体の細胞の電気生理学データを提供する。全体の細胞パッチクランプ方法論は、チャンネル結合を単純に測定することよりはむしろ、イオンチャンネル活性の優れた標準的決定方法であると一般的に考えられる。標準テスト手順は、対数希釈で3〜5の化合物濃度を使用し、各濃度で3通り(3つの細胞)のテストがされる。これは、広い濃度範囲に対してかなり正確なIC50測定を達成すること、およびさらに長引く実験期間中に起る細胞消耗を減少させることとの間のバランスを取ることを可能にする。化合物投与量−応答手順の完了後、既知のhERGチャンネル阻害剤、例えば、アステミゾール等を、正対照として適用する。
【0234】
hERGチャンネル活性の阻害を示す化合物を、心臓のQT間隔の延長に対して、in vivoでのテストにより陽性(hERGチャンネル活性分析は、偽陽性および偽陰性を与えることができる)として実証する。QT間隔の検討は、FDA白書で推奨されている種類の一つである、麻酔を掛けたテンジクネズミで測定された、Lead II心電図におけるQT間隔についての効果に対して化合物を評価することにより行う(Hirohashi等、1991年)。ビヒクルおよび化合物を、グループ当たり5匹の雄のテンジクネズミ(体重330〜350g)のグループに、15mg/kg(10ml/kgの投与量容積)で、経口投与する。この投与量は、動物の体表面積を考慮すると、治療的投与量のほぼ20倍に相当する。心拍数、動脈血圧、およびQT間隔を、ベースラインで、および化合物投与後、15分、30分、45分、および60分後に測定する。0.3mg/kgで静脈内投与されたソタロール(sotalol)は、正対照化合物として利用される。QT間隔を、バゼット(Bazett)式およびフリデリチア(Fridericia)式の両方を使用して心拍数における変化に対して補正する。2つの継続的観察時間において、ビヒクル処理された対照グループに対応する時点で平均変化信頼限界の95%以上のベースラインを越えるQT間隔値における任意の増加は、個々に処理された動物において顕著なQT間隔延長を示す。初期の発見におけるこの機能テストは、ヒトにおいて逆のQT延長の可能性を有してもよい化合物を、よりよく予想および除去するための迅速なコスト効率の良い方法を提供する。
【0235】
(実施例4.3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリンの調製)
共通の前駆体、3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン(7;図1)を、化合物MW01−2−151WH、MW01−3−202WH、およびMW01−3−173WHを作るために使用した。この鍵となる前駆体7を、先に報告された方法の組合せを使用して調製した[12〜16]。不飽和酸3を得るために、グリオキシル酸とα−テトラロン(CAS 529−34−0)2とを縮合させ、相当する飽和酸4に還元した。ヒドラジン水和物での中間体4の環化は、4,4a,5,6−テトラヒドロベンゾ[A]シンノリン−3(2H)−オン(5)を与え、これを、アセトニトリル中で、無水塩化銅(II)で効果的に脱水素し、ピリダジノン6を得た。次いで、共通のクリロロピリダジン7前駆体を、オキシ塩化リンによるピリアジノン6の塩素化により得た。具体的には、100mlのオキシ塩化リン中で5,6−ジヒドロベンゾ[A]シンノリン−3(2H)−オン(6、19.8g、0.1モル)の混合物を、95℃で2時間攪拌した。ほとんどの溶剤を、減圧下での蒸留により除去した。次いで、残渣を、室温まで冷却し、砕いた氷の上に注ぎ、NaOH溶液で中和した。沈殿を濾過し、水で洗浄し、濾過漏斗上で乾燥し、暗緑色固体を得た。粗生成物を、ジクロロメタンに溶解し、短いシリカゲルカラムに通して濾過して脱色し、黄色溶液を得た。溶剤の除去に続いて、95%エタノールからの再結晶で、黄金色の結晶を得た(18.0g、収率82.9%)。HRMS計算値:216.0449、実測値:216.0442;1H NMR(CDCl3):6 8.529(dd,J=5.0,J=3.5,1H)、7.423(dd,J=5.5,J=3.5,2H)、7.353(s,1H)、7.274(t,J=3.5,J=5.0,1H)、2.992(s,4H)。次いで、最終化合物のMW01−3−173WH、MW01−3−202WH、およびMW01−2−151WHを、図1において示される通り、相当するピペラジンでの化合物7のアミノ化反応により合成した。
【0236】
(実施例5.5,6−ジヒドロ−3−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ベンゾ[h]シンノリン(MW01−2−151WH)の調製)
約0.01モルの3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン、約0.05モルの1−(2−ピリミジル)ピペラジンおよび約0.01モルの塩酸アンモニウムの混合物を、15mlの1−BuOH中で調製した。混合物を、130℃で48時間攪拌し、次いで、溶剤を、減圧下で除去した。次いで、残った残渣を、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥した。溶剤の除去に続いて、95%エタノールからの再結晶で、黄金色の結晶を得た。収率87.0%;HPLC:純度96.6%;HRMS計算値:344.1744、実測値:344.1738;1H NMR(CDCl3):d 8.452(d,J=7.5,1H)、8.346(d,J=4.5,2H)、7.200〜7.364(m,3H)、6.794(S,1H)、6.542(t,J=4.5,1H)、3.999(t,J=5.0,4H)、3.808(t,J=5.0,4H)、2.909(s,4H)。
【0237】
(実施例6.5,6−ジヒドロ−3−(4−フェニルピペラジン−1−イル)ベンゾ[h]シンノリン(MW01−3−173WH)の調製)
約0.01モルの3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン、約0.05モルの1−フェニルピペラジンおよび約0.01モルの塩酸アンモニウムの混合物を、15mlの1−BuOH中で調製した。混合物を、130℃で48時間攪拌し、次いで、溶剤を、減圧下で除去した。次いで、残った残渣を、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥した。溶剤の除去に続いて、95%エタノールからの再結晶で、淡黄色の結晶を得た。収率88.1%;HPLC:純度96.0%;HRMS計算値:342.1839、実測値:342.1831;1H NMR(CDCl3):8 8.474(d,J=7.5,1H)、7.222〜7.400(m,4H)、7.012(d,J=10,2H)、6.925(t,J=6.5,3=7.5,1H)、6.824(S,1H)、3.900(s,4H)、3.370(d,J=4.5,4H)、2.932(s,4H)。
【0238】
(実施例7.5,6−ジヒドロ−3−(4−(ピリジム−2−イル)ピペラジン−1−イル)ベンゾ[h]シンノリン(MW01−3−202WH)の調製)
約0.01モルの3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン、約0.05モルの1−(ピリジン−2−イル)ピペラジンおよび約0.01モルの塩酸アンモニウムの混合物を、15mlの1−BuOH中で調製した。混合物を、130℃で48時間攪拌し、次いで、溶剤を、減圧下で除去した。次いで、残った残渣を、酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、無水NaSOで乾燥した。溶剤の除去に続いて、95%エタノールからの再結晶で、淡黄色の結晶を得た。収率81.1%;HPLC:純度96.4%;HRMS計算値:343.1791、実測値:343.1787;1H NMR(CDCl3):5 8.452(d,J=7.5,1H)、8.232(s,1H)、7.211〜7.534(m,4H)、6.794(s,1H)、6.678〜6.731(m,2H)、3.862(d,J=4.0,4H)、3.745(d,J=4.0,4H)、2.918(s,4H)。
【0239】
(実施例8.N−イソプロピル−3−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ベンゾ[h]シンノリン−4−カルボキサミド(MW01−5−184WH)の調製)
一般的な合成スキームは、図7において示され、本明細書に記載の通り、種々の工程が実施された。
【0240】
ジエチル2−(1,2,3,4−テトラヒドロ−1−オキソナフタレン−2−イル)−2−ヒドロキシマロネート(MW01−1−007WH)
必要とされたテトラロン(0.01モル)およびジエチルメソキサレート(0.014モル)の混合物を、100℃で12時間加熱した。冷却後、反応混合物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(8/2)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、白色結晶を得た。収率70.4%。ESI−MS:m/z 321.1(M+H)。
【0241】
エチル2,3,5,6−テトラヒドロ−3−オキソベンゾ[h]シンノリン−4−カルボキシレート(MW01−1−020B−WH)
エタノール(60ml)中で、必要とされたジエステルMW01−1−007WH(0.01モル)およびヒドラジン二塩酸塩(0.01モル)の混合物を、24時間還流した。冷却後、溶剤を蒸発させ、残渣を、5%炭酸水素ナトリウムでpH7とし、ジクロロメタンで抽出した(3×30mL)。無水NaSOでの乾燥および溶剤の蒸発後、生成物を、ジクロロメタン/メタノール(95/5)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーで単離した。収率12.2%。ESI−MS:m/z 271.1(M+H)。
【0242】
エチル3−クロロ−5,6−ジヒドロベンゾ[h]シンノリン−4−カルボキシレート(MW01−1−084B−WH)
0.01モルの置換ピリダジノンMW01−1−020B−WHを、20mLのオキシ塩化リンに懸濁した。懸濁液を、約90℃で2時間加熱し、次いで、室温まで冷却し、400gの氷上に注いだ。混合物を20分間攪拌し、その間に、緑黄色固体が沈殿した。固体を濾過し、水で洗浄し、真空中で濾過漏斗上で乾燥した。次いで、固体を、95%エタノールからの結晶化により精製し、白色結晶を得た。収率87.0%。ESI−MS:m/z 289.1(M+H)。
【0243】
エチル3−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ベンゾ[h]シンノリン−4−カルボキシレート(MW01−5−149WH)
10mlの1−BuOH中で、1.0当量のMW01−5−149WH、2.5当量の2−(ピペリジン−4−イルオキシ)ピリミジン二塩酸塩、2.5当量のトリエチルアミンおよび1.0当量の塩酸アンモニウムの混合物を、130℃、アルゴン下で、48時間攪拌しながら加熱した。溶剤を減圧下で除去した。次いで、残渣を酢酸エチルで抽出し、水およびブラインで洗浄し、MgSOで乾燥した。溶剤を蒸発させた後、生成物を、95%エタノールから結晶化して、黄金色の結晶を得た。収率75%。ESI−MS:m/z 415.2(M+H)。
【0244】
3−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ベンゾ[h]シンノリン−4−カルボン酸(MW01−5−169WH)
2gの固体NaOHを、25mlの無水EtOHに溶解してNaOH溶液(2M)を作った。207mgのMW01−5−149WHを、20mlの無水EtOHに溶解し、次いで、20mlの2NのNaOH/EtOH溶液を添加した。反応混合物を、室温で4時間攪拌し、次いで、溶剤を蒸発により除去した。残渣を水で処理し、希HClでpH5.0に酸性化した。混合物を、CHClで抽出した。有機層を分離し、NaSOで乾燥し、次いで、90%エタノールから再結晶した。収率90%。ESI−MS:m/z 387.2(M+H)。
【0245】
N−イソプロピル−3−(4−(ピリミジン−2−イル)ピペラジン−1−イル)ベンゾ[h]シンノリン−4−カルボキサミド(MW01−5−184WH)
50mgのMW01−5−169WHを、1mlの無水CH2Cl2に溶解し、次いで、200μlの塩化チオニルを添加した。混合物を、5時間還流した。次いで、溶剤を、蒸留により除去し、残渣を、次工程で直接使用した。この様にして得た残渣を、2mlの無水THFに溶解し、これに38mgのイソプロピルアミンを添加した。次いで、反応容器をアルゴンでパージし、次いで、密閉した。混合物を、反応が完了するまで、一般的には約1〜4時間攪拌した。反応の完了は、HPLCでモニターした。次いで、反応混合物を濃縮乾固し、水で処理し、酢酸エチルで抽出した。溶剤の除去に続いて、95%エタノールからの再結晶で、黄色固体を得た。収率81%。ESI−MS:m/z 428.2(M+H
本発明は、実施形態そのものは、本発明の一態様の単一の例示ではあるが、任意の機能的に均等な実施形態は、本発明の範囲内にあることを意図するものであるので、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲に限定されるものではない。事実、本明細書において示され、記載されているものに加えて、本発明の様々な変更は、前述の記述および添付の図面から当業者には明らかとなる。その様な変更は、添付の特許請求の範囲内に入るものである。
【0246】
本明細書において参照されたすべての刊行物、特許および特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許および特許出願が、その全体の開示が参照として組み込まれることを具体的に、個々に指示されている場合は、同じ範囲で、それらの全体の開示が参照として組み込まれる。本明細書において言及されているすべての刊行物、特許および特許出願は、本発明との関連において使用されてもよい、そこに報告されている方法等を記述し、開示する目的のために参照として本明細書に組み込まれる。本発明が、先行発明による開示に先立つものではないことを認めるものと解釈されるべきものは本明細書には存在しない。
【表1】

【表2】

【表3】

【0247】

【0248】

【表4】

【0249】

【0250】

【0251】

【0252】

【0253】

【図面の簡単な説明】
【0254】
【図1】図1は、MW01−2−151WHおよびピリダジン環の5位が芳香族環の6位に結合した類似体の合成のための合成スキームを表す図である。反応および条件:(a)グリオキシル酸、NaOH溶液、EtOH、還流;(b)Zn、HOAc、110℃;(c)NrfcNHi、EtOH、還流;(d)CuCk、CHCN、還流;(e)POCl、95℃;(f)1−BuOH、NFL、Cl、2−置換−ピペラジン。
【図2】図2A〜Cは、MW01−2−151WHおよび関連化合物による、炎症誘発性サイトカイン産生の濃度依存性阻害のグラフである。BV−2細胞は、MW01−2−151WHまたは3つの構造的に関連する類似体(MW01−3−202WHおよびMW01−3−173WH)の不在下または漸増濃度下で、16時間、Meso−Scale Discovery電気化学蛍光検出分析により測定される(例えば、実施例1、材料および方法を参照されたい)、細胞溶解物におけるIL−1βおよびTNFαの水準で、LPS(100ng/ml)で処理された。データは、3通りの測定の平均+/−SEMである。
【図3】図3A〜Fは、Aβ−誘発神経炎症およびシナプス損傷のMW01−2−151WH抑制のグラフである。ビヒクル注入マウス(対照)、溶剤を注射したAβ−注入マウス、およびMW01−2−151WHを注射したAβ−注入マウスの海馬部分または抽出物が、炎症誘発性サイトカインIL−1β(A)、TNFα(B)、およびS100B(C)、およびGFAP−陽性星状膠細胞の数(D)およびF4/80−陽性小膠細胞(E)の水準の測定により、神経炎症に対して評価され、後シナプス肥厚タンパク質95(PSD−95)(F)の水準の分析により、シナプス損傷に対して評価された。データは、2つの独立の実験の1つであり、実験群当たり4〜5匹のマウスに対する平均+SEMである。
【図4】図4A〜Cは、BV−2小膠細胞におけるMW01−2−151WHの細胞ベース活性のグラフである。MW01−2−151WHは、濃度依存性であり、活性化グリアによる炎症誘発性サイトカイン産生の選択的阻害剤である。LPS誘発のMW01−2−151WHによる濃度依存性阻害は、BV2小膠細胞系による、(A)IL−1βおよび(B)TNFα水準において増加する。(C)NO代謝産物、亜硝酸塩の蓄積は、50μMまでの濃度で阻害されなかった。
【図5】経口投与された、MW01−2−20 151WHの治療的投与量の急速な脳摂取のグラフである。マウスに対するMW01−2−151WHの2.5mg/kg投与量の経口強制飼養投与は、投与後に、処分、脳の迅速な除去、および異なる時間での組織処理が続いた(材料および方法において記載されている)。組織サンプルは、過塩素酸処理と、それに続くジクロロメタン中への抽出により処理された。分析および定量化は、投薬を受けていない脳ホモジネートへの既知濃度のMW01−2−151WHの添加による外部校正を使用し、上述の様に処理して、HPLCで行われた。データは、4匹のマウスに対する平均±SEMである。
【図6】図6A〜Fは、治療的に有効な投与量よりも20倍多く投与量を増加した場合の、経口投与されたMW01−2−151WHによる組織毒性の欠如を示す顕微鏡写真を示す図である。ビヒクル(パネルA、C、E)またはMW01−2−151WH(パネルB、D、F)は、50mg/kg(材料および方法において記載されている治療的投与量よりも20倍多い)で3日間、毎日、マウスに経口投与(強制飼養)された。肝臓(A、B)、肺(C、D)または腎臓(E、F)には、毒性の組織学的証拠は存在しなかった。
【図7】MW01−5−184WHの調製のための合成スキームを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの単離された、実質的に純粋な化合物
【化1】

またはこの異性体もしくは薬剤として許容されるそれらの塩
[式中、R、R、RおよびRは、独立に、置換または非置換の、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルコキシ、アルケニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、ヘテロアリール、複素環、アシル、アシルオキシ、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、アミノ、イミノ、アジド、チオール、チオアルキル、チオアルコキシ、チオアリール、ニトロ、ウレイド、シアノ、ハロ、シリル、シリルオキシ、シリルチオ、カルボキシル、カルボキサミド、カルボニル、またはカルバモイルであり、またはRは、存在しなくてもよく、2位のNと3位のCとの間に二重結合が存在し、ただし、(i)RおよびRが水素であり、Rが存在しない場合は、Rは、クロロ、−SCHCHN(CHCH、または−NR2122(ここで、R21は、エチルであり、R22は、モルホリニル、ベンジルで置換されたピペリジニル、−CHN(CHCHもしくは−N(CHCHであり、またはR21は、水素であり、R22は、−NHまたは水素である)ではなく、(ii)Rが水素であり、Rが存在せず、Rが、=Oである場合は、Rは、−COOHまたは−C(=O)−OCHCHではなく、(iii)Rが水素であり、Rが存在せず、Rがクロロである場合は、Rは、メチルではない]。
【請求項2】
表3において表される化合物ではないことを条件とする、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項3】
式Iの化合物におけるRが、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい複素環基であり、場合により、Rが、水素、アルコキシカルボニル、特に、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、またはアルキルアミノカルボニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素であるか存在しない、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
が、1〜4個の窒素原子を含む、置換または非置換の複素単環式基である、請求項3に記載の式Iの化合物。
【請求項5】
が、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、または置換されていてもよいピペラジニルである、請求項4に記載の式Iの化合物。
【請求項6】
前記複素単環式基が、置換されていてもよい、ヘテロアリール、アリール、アルキル、または複素環で置換されている、請求項4または5に記載の式Iの化合物。
【請求項7】
が、1〜4個の窒素原子を含む、置換または非置換の不飽和5〜6員ヘテロモノシクリル(heteromonocyclyl)で置換されたピペラジニルである、請求項4に記載の式Iの化合物。
【請求項8】
前記5〜6員ヘテロモノシクリルが、ピリミジニル、ピリジルもしくはピリジニル;アリールもしくは置換アリール;またはアルキルである、請求項7に記載の式Iの化合物。
【請求項9】
が、複素環オキシ(heterocyclicoxy)で置換されたピペリジニルである、請求項5に記載の式Iの化合物。
【請求項10】
前記複素環オキシが、1〜4個の窒素原子を含み、オキシで置換された、不飽和5〜6員ヘテロモノシクリル基である、請求項9に記載の式Iの化合物。
【請求項11】
が、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、水素、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニル、またはアルキルアミノカルボニルであり、Rが水素であり、Rが水素である、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項12】
が、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基であり、場合により、Rが、水素またはアルコキシカルボニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素であるか存在しない、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項13】
が、置換もしくは非置換のモルホリニルまたはシドノニルである、請求項12に記載の式Iの化合物。
【請求項14】
が、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよいアリールであり、場合により、Rが、アルコキシカルボニル、または1つもしくは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基であり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素であるか存在しない、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項15】
が、置換されていてもよい、フェニル、ベンジル、ナフチル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、またはペンタレニルである、請求項14に記載の式Iの化合物。
【請求項16】
が、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜5個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環であり、場合により、Rが、アルコキシカルボニル、または1つもしくは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基であり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素であるか存在しない、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項17】
が、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、プリニル、またはハロもしくはアルキルで置換されていてもよいベンゾイミダゾリルである、請求項16に記載の式Iの化合物。
【請求項18】
が、ハロであり、場合により、Rが、水素、ハロ、アルコキシカルボニル、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基、置換もしくは非置換の複素環で置換されていてもよいカルボキシル、または−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は置換アルキルである)であり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素であるか存在しない、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項19】
が、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよいアミノであり、場合により、Rが、水素またはアルコキシカルボニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素または置換されていてもよいアルキルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項20】
が、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、水素、アルキル、アリール、置換アリール、置換アルキルである)である、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項21】
が、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は水素である)であり、RおよびRが水素であり、Rが、アルコキシカルボニルで置換されていてもよいC〜Cアルキルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項22】
が、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、アルキルまたはハロで置換されていてもよいアリールである)である、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項23】
が、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、ハロで置換されていてもよいアリールである)であり、RおよびRが水素であり、Rが、水素であるか存在しない、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項24】
が、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、複素環で置換されたアルキルである)であり、RおよびRが水素であり、Rが、水素であるか存在しない、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項25】
が、−NR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、1〜4個の窒素原子を含む、置換または非置換の飽和3〜6員複素単環式基で置換されたアルキルである(ここで、複素環は、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリール、または置換アリールで置換されていてもよい))であり、R、RおよびRが水素である、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項26】
が、=Oであり、Rが、−C(=O)R40(ここで、R40は、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜2個の酸素原子および1〜3個の窒素原子を含む3〜6員複素単環式基である)またはNR2122(ここで、R21は水素であり、R22は、1つまたは複数の適当な置換基を有してもよい、1〜5個の窒素原子を含む不飽和縮合複素環で置換されたアルキルである)である、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項27】
が、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、プリニル、または置換されていてもよいベンゾイミダゾリルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項28】
が、水素、ハロ、カルボニル、置換カルボニル、ピペラジニル、置換ピペラジニル、ピペリジニル、置換ピペリジニル、ナフチル、インドリル、モルホリニル、置換プリニル、アミノ、置換アミノ、チオアルキルまたは置換チオアルキルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項29】
が、1つまたは複数のアルキルで置換されたピペラジニル、フェニル、置換フェニル、ピリミジニル、置換ピリミジニルまたはピリジニルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項30】
が、NHR22(ここで、R22は、水素、アルキル、置換アルキル、フェニル、置換フェニル、特に、−NH、−NHCH−プリニル、−NH−クロロフェニル、または−NHCHCH−ピペラジニル−ベンジルである)である、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項31】
が、水素、ハロ、または場合により置換されたカルボキシル、カルボニル、ピペラジニル、モルホリニル、またはアミノである、前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項32】
が、−COR(ここで、Rは、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、モルホリニル、置換モルホリニル、またはアルコキシ、特に、−CONHCH−ベンゾイミダゾリル、カルボキシルまたは置換カルボキシルで置換された−CO−モルホリニル、COOCHCH、または−NHCH(CHである)である、前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項33】
が、水素、アルコキシカルボニル、またはアルキルアミノカルボニルであり、Rが、水素またはアルキルであり、Rが、水素であるか存在しない、前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項34】
が、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、t−ペンチルオキシカルボニル、またはヘプチルオキシカルボニルである、請求項33に記載の式Iの化合物。
【請求項35】
が、水素またはアルキルである、前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項36】
が、カルボキシルまたは置換カルボキシルで置換されたアルキルである、前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物。
【請求項37】
が、ハロ、=O;インドリル、アミノ、または置換されていてもよいピペラジニルであり;Rが、−COR(ここで、Rは、ヒドロキシル、アルコキシまたは置換されていてもよいモルホリニルである)であり、Rが、水素またはアルキルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項38】
a)Rがハロゲン化物であり、Rがアルキルである、
b)Rが、=Oであり、Rが、−CONHCH−ベンゾイミダゾリルであり、Rが水素である、
c)Rが、=Oまたはハロであり、Rが、−COR(ここで、Rは、置換モルホリニルである)であり、R3が水素である、
d)Rがインドリルであり、Rが、−COR(ここで、Rは、アルコキシである)であり、Rが水素である、
e)Rが、場合により置換されたアルキルまたはフェニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、−COR(ここで、Rは、アルコキシである)であり、Rが水素である、
f)Rが、場合により置換されたピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、−COR(ここで、Rは、アルコキシである)であり、Rが水素である、
g)Rが、置換されていてもよいピペリジニルであり、Rが水素であり、Rが水素である、
h)Rが置換ピペラジニルであり、Rが水素であり、Rが水素である、
i)Rがハロであり、Rが、ピリミジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが水素である、
j)RおよびRがハロであり、Rが水素である、
k)Rがハロであり、Rが、シクロプロピルで置換されたアルキルアミノであり、Rが水素である、
l)Rがハロであり、Rがモルホリニルであり、Rが水素である、
m)Rがハロであり、Rが−NHC(CHであり、Rが水素である、
n)Rが、ナフチルまたはインドリルであり、Rがモルホリニルであり、Rが水素である、
o)Rがハロであり、Rが、カルボキシルまたは置換カルボキシル(例えば、−COOCHCH)であり、Rが水素である、
p)Rが、ピリジニルで置換されたピペラジニルであり、Rが、水素、カルボキシルまたは置換カルボキシルであり、Rが水素である、
q)Rがモルホリニルであり、Rが水素であり、Rが水素である、
r)Rがハロであり、Rが水素であり、Rがアルキルである、
s)Rがアミノであり、RおよびRが水素であり、Rが、カルボキシルまたは置換カルボキシルで置換されたアルキルである、または
t)Rがハロであり、Rが水素であり、Rが、アルキル、特に、低級アルキルである、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項39】
が存在せず、2位のNと3位のCとの間に二重結合が存在する、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項40】
表4において示される、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項41】
、R、RおよびRの1つまたは複数と相互作用する担体をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載の化合物。
【請求項42】
式Iの治療的に有効な化合物を提供するために、R、R、RおよびRの1つまたは複数が、対象への投与後に開裂される開裂基を含む、前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物を含むプロドラッグ。
【請求項43】
前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物、および薬剤として許容される担体、賦形剤、またはビヒクルを含む薬剤組成物。
【請求項44】
式I
【化2】

(式中、独立に、置換または非置換の、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、アルコキシ、アルケニルオキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルコキシ、アロイル、ヘテロアリール、複素環、アシル、アシルオキシ、スルホニル、スルフィニル、スルフェニル、アミノ、イミノ、アジド、チオール、チオアルキル、チオアルコキシ、チオアリール、ニトロ、ウレイド、シアノ、ハロ、シリル、シリルオキシ、シリルチオ、カルボキシル、カルボキサミド、カルボニル、またはカルバモイルであり、またはRは、存在しなくてもよく、2位のNと3位のCとの間に二重結合が存在する)の化合物、または薬剤として許容されるそれらの塩もしくは異性体の治療有効量を対象に投与することを含む、対象における、炎症、炎症に含まれるシグナル伝達経路、細胞シグナル伝達分子産生、グリアの活性化またはグリア活性化経路および応答、炎症誘発性サイトカインまたはケモカイン、酸化ストレス関連応答、急性期タンパク質、補体カスケードの成分、タンパク質キナーゼ活性、細胞損傷、および細胞死シグナル伝達経路の1つまたは複数の調節を必要とする疾患を治療するための方法。
【請求項45】
式Iの化合物が、請求項1から41のいずれか一項において定義される通りである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物または組成物の治療有効量を投与することを含む、炎症を含むまたは炎症を特徴とする疾患を、対象において治療するための方法。
【請求項47】
式Iの化合物または式Iの化合物を含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物で減少または阻害することのできる神経炎症を伴う状態を、対象において治療するための方法。
【請求項48】
式Iの化合物または前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物、および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、対象における、キナーゼ活性、グリア活性化、神経細胞損傷、および/または神経細胞死を低減または阻害するための方法。
【請求項49】
前記請求項のいずれかに記載の式Iの1つまたは複数の化合物を含む組成物を投与することを含む、細胞シグナル伝達分子産生を阻害する方法。
【請求項50】
前記シグナル伝達分子が、IL−1βおよび/またはTNFαである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
式Iの化合物または前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物および薬剤として許容される担体、賦形剤、もしくはビヒクルを含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、対象における神経炎症疾患の進行を遅延させる方法。
【請求項52】
式Iの化合物または前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物を含む組成物の治療有効量を投与することを含む、疾患の進行を改善するため、またはその様な疾患に罹患している対象における疾患の比較的軽度の段階を獲得するための方法。
【請求項53】
前記疾患が、痴呆症、神経変性障害、CNS脱髄障害、自己免疫障害、または末梢性炎症疾患である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
前記疾患が、アルツハイマー病である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
式Iの化合物または前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物を含む組成物の治療有効量を投与することを含む、アルツハイマー病に罹患している対象の生存を増加する方法。
【請求項56】
式Iの化合物または前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物を含む組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、対象における軽度認知障害(MCI)を治療するための方法。
【請求項57】
疾患を治療するための医薬の調製のための、前記請求項のいずれかに記載の式Iの化合物の使用。
【請求項58】
疾患を予防および/または治療するための、前記請求項のいずれかに記載の式Iの1つまたは複数の化合物、容器、および使用説明書を含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−518955(P2008−518955A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539297(P2007−539297)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/039476
【国際公開番号】WO2006/050359
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(500041019)ノースウェスタン ユニバーシティ (24)
【出願人】(507143990)
【Fターム(参考)】