説明

ピリチオン含有コーティング組成物の変色防止

【課題】耐変色性のピリチオン含有水性コーティング組成物を提供する。
【解決手段】水性の抗菌性組成物において望ましくない変色を除去する方法であって、前記水性の抗菌性組成物は、ビニル、アルキド、エポキシ、アクリル、ポリエステル樹脂、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた樹脂と、第二鉄イオン、第二銅イオン、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた溶解金属イオンとを含有しており、且つ、単一ピリチオンを含有しており、前記単一ピリチオンは亜鉛ピリチオンであり、前記組成物を前記組成物中の前記溶解金属イオンの量に少なくとも等しいモル量の亜鉛イオンと接触させること、前記亜鉛イオンの前記量が前記組成物中の100ppm〜10,000ppmであることを特徴とする、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にはコーティング組成物に関し、より詳しくは、それらの湿潤状態においても且つ乾燥後にも、即ち、基体上の乾燥皮膜の形態においても、向上した抗菌効力と変色抵抗性を特徴としているかかる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリチオンは無数の応用において有効である周知の抗菌性添加物である。ナトリウムピリチオン(1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオンのナトリウム塩、ナトリウムピリジン−2−チオール−N−オキシド、又は2−ピリジンチオール−1−オキシド・Na塩とも称される)は優れた抗菌性質を有する一つのピリチオン塩であり、そして金属工作用流体、潤滑剤、化粧品及び洗面用化粧品のような機能性流体における殺生物剤及び保存料として典型的に使用される。ナトリウムピリチオンは普通は例えば米国特許第3,159,640号に開示されているように2−クロロピリジン−N−オキシドをNaSH及びNaOHと反応させることによって製造される周知の商品である。
【0003】
同様に、亜鉛ピリチオン(亜鉛ピリジン−2−チオール−N−オキシドまたはビス [1−ヒドロキシ−2(H)ピリジンチオナト] −亜鉛としても知られている)は優れた抗菌性添加物である。亜鉛ピリチオンは例えば米国特許第2,809,971号に開示されているように1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン又はその可溶性塩を亜鉛塩(例えばZnSO)と反応させて亜鉛ピリチオン沈殿物を生成することによって製造されてもよい。亜鉛ピリチオンは金属工作用流体、プラスチック、塗料、接着剤及び化粧品の中に広スペクトル抗菌剤及び保存料として使用されてきた。その主な用途は毛髪用製品の中のフケ防止剤として、様々な化粧品の中の保存料として、および船用塗料の中の汚れ防止剤としてである。塗料、接着剤、コーキング材及びシーラントの中の亜鉛ピリチオンの商業的用途は増大しつつある。
【0004】
ナトリウムピリチオン又は亜鉛ピリチオンを含有する組成物は第二鉄イオンの存在下では青色に変わる傾向がある;より高い量の第二鉄イオンが存在する場合よりもはるかに低い単なる痕跡量の第二鉄イオンが存在する場合でさえ、そうである。同様に、紫外線(それは戸外の自然光の成分である)の存在下では、ピリチオン成分の光崩壊が起こるであろう。この青色又は黄色の変色は望まない色形成に関する機能的理由ばかりでなく審美的理由で望ましくない。
【0005】
塗料、接着剤、コーキング材及びシーラントの美学は通常は基体上の乾燥被膜を形成するために乾燥後に特定の望ましい色を要求するので、及びかかる製品の配合者は特異な色効果を達成するためにどんなことでもするので、配合物を所期の白色又は色彩から大きく変化させる何らかの成分は色配合者の仕事を非常に難しくするであろう。たとえば、水性塗料、塗料基材(即ち、顔料添加前の部分配合塗料)、接着剤、コーキング材及びシーラントを配合する場合、添加物における何らかの不必要な色は配合製品の色彩に悪影響を与えることがある。かかる変色は所期の製品の色彩に典型的に悪影響を与え、色のよくない製品を生じる。
【0006】
同様に、戸外の自然光の成分としての紫外線(「UV」)による基体上の乾燥塗膜の黄変は2つの点で塗料に悪影響を与える。第一に、塗料の黄色化はUV暴露で塗料が変色するのであるから審美上問題である。第二に、UV暴露に起因するピリチオンの光崩壊は塗料皮膜を保護するのに利用可能なピリチオンの量を減少させる。
【0007】
過去において、青色に変色する問題に対する様々な解決法が提案されてきた。例証すると、米国特許第4,957,658号及び第4,818,436号は塗料及び機能性流体(例えば、金属工作用流体)の中の第二鉄イオンとピリチオンの存在に起因する上記変色問題に対して、それぞれ、塗料又は機能性流体に1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を添加することによる解決法を開示している。‘658号及び‘436号特許は変色に対する良好な解決法を提案しているけれども、これら解決法は要望されたほど常に費用効果があるとか永久的であるとかするわけではない。
【0008】
別の例証として、米国特許第4,161,526号は有機カルボン酸又は無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛又は酸化亜鉛、又はそれらの混合物を約0.01%〜約1%含有している、皮膚又は毛髪に適用するための白色乃至クリームイエローのピリチオン、ピリチオン塩又はジピリチオンを開示している。‘526号特許の組成物は組成物の中の着色したピリチオン、ピリチオン塩又はジピリチオンの汚染物質(鉄ピリチオンであると言われる)の形成によって起こる変色を防止又は除去することに有効であると言われている。‘526号特許は皮膚又は毛髪のケアには関連しない及び鉄ピリチオンを含有しない組成物における変色問題に対する解決法を教示していない。
【0009】
変色問題に加えて、第二鉄イオンのような不必要な鉄はピリチオンの抗菌性能に関して機能的問題を引き起こすことがある。本発明者らによれば、この性能問題はピリチオンが第二鉄イオンの存在下で青色沈殿物を形成しがちであり、そしてピリチオンの沈殿が組成物中の利用可能ピリチオンの量を減少させ、それによってその殺生物的保護を低下させるという事実の結果であると考えられる。
【0010】
更に、本発明者らは、ピリチオン含有塗料の中の大量の酸化亜鉛の存在は基体上に乾燥皮膜を形成するように乾燥されたときの塗料にピリチオンが与える短期(又は初期段階)の抗菌効力を阻害することがあることを解明した。この低下した短期効力は塗料の性能に、特に、塗料皮膜のカビ増殖抵抗性に関して、悪影響を与える。
【0011】
様々なピリチオン含有水性コーティング組成物、特に、塗料、接着剤、コーキング材及びシーラントにおける黄色、青色及び緑色の変色問題に対する新たな解決法は大いに望まれている。好ましい解決法は鉄又は銅を含有するコーティング組成物の中にピリチオンを使用することを組成物に何らの変色も生じさせることなく可能にするものを包含し、そしてそれは上記従来技術によって要求されてきたものよりも安価であり、長期耐久性であり、及び/又は低レベルでの添加物使用である。特に好ましい解決法、即ち、コーティング組成物および得られる被膜の改良された短期及び長期の微生物攻撃に抗する抗菌耐性を提供するそれは、塗料、接着剤、コーキング材及びシーラントの製造集団によって大いに要望されている。本発明はかかる解決法を提供する。
【0012】
【特許文献1】米国特許第4957658号
【特許文献2】米国特許第4818435号
【特許文献3】米国特許第4161526号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
一つの局面においては、本発明は、
a)水、
b)基材、
c)組成物の重量を基準にして0.01%〜2.0%の量のピリチオン塩、及び
d)組成物の重量を基準にして0.001%〜10%の濃度の、塗料製造に適する多数の等級から選ばれた酸化亜鉛化合物、
を含んでいる水性コーティング組成物に関する。代表的なコーティング組成物には、塗料、接着剤、コーキング材、シーラント、ラテックスエマルジョン、顔料スラリ、パッチングコンパウンド、目地材(joint compound)、又はコンクリート添加物の、水性組成物が包含される。
【0014】
別の局面においては、本発明はピリチオン含有コーティング組成物の乾燥皮膜の前記ピリチオンの紫外光崩壊に起因する変色を抑制する方法に関し、それは前記コーティング組成物の中に、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた亜鉛化合物の有効量を組み入れることを含んでいる。
【0015】
更に別の局面においては、本発明は第二鉄イオン、第二銅イオン及びそれらの組合せからなる群から選ばれた溶解金属イオンを含有し且つピリチオンを含有する水性の抗菌性組成物における望ましくない変色を除去する方法に関し、それは前記組成物を前記組成物中の前記溶解金属イオンの量に少なくとも等しいモル量の亜鉛イオンと接触させることを含んでいる。
【0016】
更に別の局面においては、本発明は防カビ効力と組成物中のピリチオンの存在に起因する変色を防護されたこととを特徴とする水性の抗菌性組成物に関し、前記組成物は水性塗料、接着剤、コーキング材及びシーラント、及びそれらの組合せからなる群から選ばれ、前記組成物は水、ピリチオン塩又は酸、有機基材、及び亜鉛化合物を含んでおり、前記亜鉛イオンは前記組成物中に、コーティング組成物の重量を基準にして0.001%〜10%の量で存在している。
【0017】
更に別の局面においては、本発明は木質、金属、プラスチック基体、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた基体と、前記基体の上の被膜とを含んでいるコーティッド基体に関し、前記被膜はピリチオンと、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた亜鉛化合物とを含んでいる。
【0018】
これら及びその他の局面は本発明についての下記の詳細な記述を閲読するときに明らかになるであろう。
【0019】
この度、本発明によって、驚くべきことには、コーティング組成物中の亜鉛化合物(例えば、亜鉛塩、酸化亜鉛又は水酸化亜鉛)とピリチオン化合物(好ましくは亜鉛ピリチオン)の組合せはコーティング組成物を基体に適用することによってつくられた乾燥被膜に関して抗菌(特に、防カビ)効力とUV光に対する耐性との有益な組合せを付与することが明らかにされた。
【0020】
また、本発明によって、驚くべきことには、ピリチオンと第二鉄又は第二銅イオンとを含有する組成物への亜鉛の添加はそうしないときのかかる組成物に起因する変色問題を軽減又は回避することが明らかにされた。何らかの特定の理論で拘束することを望むものではないが、変色問題の多数の潜在的原因が存在する。たとえば、水道水の中の不必要なイオンおよびコーティング組成物の「フィラー(filler)」成分、例えば、鉄イオン、の存在は不溶性の鉄ピリチオン沈殿物の生成を引き起こし、それは組成物を変色させるばかりでなくナトリウムピリチオン含有組成物の中の利用可能なピリチオンを枯渇させ、それによって組成物の抗菌効力を低下させる。
【0021】
加えて、紫外線、即ち、戸外の自然光の成分はピリチオンを含有する乾燥皮膜を黄色化させがちである。ピリチオン含有コーティング組成物の中に酸化亜鉛がコーティング組成物の重量を基準にして0.02重量%〜0.5重量%の好ましい範囲内で存在することは、コーティング組成物による基体のコーティングから得られた乾燥皮膜の不必要な黄色化又はその他の変色を回避するばかりでなく、コーティング組成物の抗菌効力及び不必要な青色化又はその他の変色の回避の両方に寄与する。
【0022】
用語「変色(discoloration)」は、ピリチオン含有コーティング組成物に関してここで使用されるときは、何らかの許容されない灰色、青色、黒色、赤紫色、緑色、又は塗料又は塗料基材配合物の固有色又は所期の人工色をはずれる色、を記述することを意図されている。また、用語「変色」はコーティング組成物による基体のコーティングから得られた乾燥皮膜の何らかの黄色又は褐色の変色を記述することも意図されている。かかる黄色又は褐色の変色は被膜の中のピリチオンの光崩壊によって典型的に引き起こされる。
【0023】
コーティング組成物の変色はコーティング組成物の製造中に使用された出発物質からコーティング組成物の中に入り込んだ不必要な金属イオン(例えば、鉄又は銅)に帰因させることができる。代表的な出発物質はナトリウムピリチオン、亜鉛ピリチオン及びそれらの組合せの形態の中のピリチオン源ばかりでなく、水道水、及びフィラー(例えば、炭酸カルシウム)を包含する。例えば、ナトリウムピリチオン自体の固有色は明澄な黄色である。しかしながら、鉄及び/又は銅汚染物質については、コーティング組成物の製造に使用された水道水又はフィラーから水性組成物の中に導入されるのが全く普通のことである。変色の大きさを定量化する一つの方法は反射色パラメーターを測定し、そしてそれらから白色度を算出することによる。別の方法は所望の色又は白色と比較して、オフホワイトの何からの徴候について組成物を目視検査することである。
【0024】
水性塗料、接着剤、コーキング材及びシーラントにおいては、250ppm以上の量における有意レベルの第二鉄又は第二銅イオン不純物は普通でないことはない。有機酸又は無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛又は酸化亜鉛、又はそれらの混合物の有効量を組成物の中に組み入れることにより、ピリチオンによって拘束された第二鉄イオンの存在に典型的に起因する青色の変色は適切に低減、解消又は回避され、銅イオンの存在に起因する緑色の変色も同様である。
【0025】
上記の有機酸又は無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛又は酸化亜鉛、又はそれらの組合せの、それを中に使用しているコーティング組成物における及び基体をコーティング組成物で被覆することによってつくられた得られた乾燥皮膜における変色を防止するのに必要な量は、それを中に使用しているコーティング組成物の重量を基準にして0.001%以下〜10%以上(有利には、0.001%〜3%、より有利には、0.02%〜0.5%)の広い範囲にわたり変動可能である。
【0026】
酸化亜鉛を使用したときに乾燥皮膜における短期と長期の抗菌効力の有利な組合せを提供するためには、酸化亜鉛の量は、好ましくは、コーティング組成物の重量を基準にして0.5重量%を越えるべきでない(有利には、0.002%〜0.2%)ということがこの度判明した。0.5%を越えると、これら成分の両方に存在する亜鉛に起因する周知の「共通イオン効果(common ion effect)」のために乾燥皮膜における亜鉛ピリチオンの短期効力を阻害するリスクがある。この「共通イオン効果」は亜鉛イオン、ピリチオンイオン、及びイオン化されていない亜鉛ピリチオンのどれもが組成物中に存在している場合には平衡を、イオン化されていない亜鉛ピリチオンの方向に強制し、そして亜鉛ピリチオンの抗菌効力はこの成分がイオン化されてない形態にとどまる限り阻害される。
【0027】
本発明の方法及び組成物に使用されるピリチオンは望むならばピリチオン酸が使用できるが、好ましくは、ピリチオン塩、例えば、ナトリウムピリチオン、亜鉛ピリチオン、キトーサンピリチオン、二流化マグネシウムピリチオン、等である。より好ましいピリチオン塩はナトリウムピリチオン及び亜鉛ピリチオンを包含し、最も好ましくは、亜鉛ピリチオンである。
【0028】
本発明に有効なナトリウムピリチオンは周知の市販品であり、それは普通は米国特許第3,159,640号の開示によって例証される如く2−クロロピリチオン−N−オキシドをNaSH及びNaOHと反応させることで製造される。
【0029】
亜鉛ピリチオンは米国特許第2,809,971号の開示によって例証されているように1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオン(即ちピリチオン酸)又はその可溶性塩を亜鉛塩(例えば、ZnSO)と反応させて亜鉛ピリチオン沈殿を生成することによって製造されてもよい。
【0030】
本発明の水性組成物は様々な用途に、例えば、石鹸、シャンプー、スキンケア医薬、塗料として有効であり、又は、抗菌成分に加えて必須成分を含有するように配合されるときにはプラスチックの又は織られた又は織られてない糸の中又は上に組み込まれる。
【0031】
本発明の抗菌性組成物は特に塗料の形態において有効であり、それには、屋内及び屋外の家庭用塗料、工業用及び商業用塗料が包含される。加えて、抗菌性組成物は抗菌成分がラテックスタイスの外部用塗料の中に組み入れられるときには望ましい結果を提供する。
【0032】
本発明のコーティング組成物は木質、プラスチック又は金属基体のような基体に適切に適用され、そして乾燥して乾燥被膜になる。
【0033】
本発明のコーティング組成物を基体上に塗布し乾燥することによって形成された乾燥皮膜はコーティング組成物を塗った板を用いる屋外暴露試験によって示される通り、菌類及び藻類の増殖に対して優れた抵抗性を示す。しかしながら、或る種の塗料配合物、即ち、親水性成分に富むものは、試験被膜に比べて、カビ及び藻の両方の増殖にとってより好ましい環境を提供するであろう。カビは生存するのに湿気を必要とする。塗膜の中の親水性物質は皮膜の水分レベルをより高く保つであろう。これはカビにとってよりよい環境を提供し、そして親水性物質の加速された浸出に寄与する。これら配合物の中の親水性成分は比較的可溶性の抗菌添加物を配合物から浸出させる傾向があり、従ってこの浸出効果による長期抗菌保護を犠牲にして良好な短期抗菌保護を提供する。これら環境下では、本発明に従って、亜鉛ピリチオン、即ち、比較的水不溶性の抗菌添加物を、比較的水溶性の抗菌添加物と組み合わせて使用することは、親水性成分を高レベルで含有する塗料配合物を用いてつくられる乾燥塗膜において要望される短期と長期の抗菌保護の優れた組合せを提供する。本発明に従って亜鉛ピリチオンと組み合わせて使用されるときに乾燥皮膜の効力のための補助の殺生物剤として有効である比較的水溶性の抗菌物質は、ヨードプロピルブチルカルバメート(「IPBC」)、n−オクチルイソチアゾリン−オン(「OIT」)、メチレンチオシアネート(「MTC」)、チオシアノメチルチオベンゾチアゾール(「TCMTB」)、チアゾリルベンズイミダソール(「TBZ」)、ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチルエステル(「BCM」)、トリアゾール、例えば、クロロフェニルエチルジメチルエチルトリアゾールエタノール(「テブコナゾール(Tebuconazole)」、バイエルから市販されている)、置換トリアゾリン、例えばt−ブチルアミノシクロプロピルアミノメチルチオ−s−トリアゾール、及びジクロロフェニルジメチルウレア(「デュウロン(Diuron)」、バイエルから市販されている)、及びそれらの組合せを包含する。これら補助殺生物剤は亜鉛ピリチオン−対−補助殺生物剤の1:10から10:1までのモル比を含有する塗料を提供するように、所望の塗料に単独で又は亜鉛ピリチオンとの混合状態で適切に添加される。
【0034】
代表的には、塗料組成物は抗菌成分の他に、この分野で周知のように樹脂、顔料、及び様々な任意的添加物例えば増粘剤(単数又は複数)、湿潤剤、等を含有する。樹脂は好ましくは、ビニル、アルキド、エポキシ、アクリル、ポリウレタン及びポリエステル樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる。樹脂は好ましくは、塗料又は塗料基材の重量を基準にして約20%〜約80%の量で使用される。
【0035】
更に、本発明の塗料組成物は粘度、湿潤力及び分散性に、更には凍結及び電解質に対する安定性に及び発泡性に好ましい影響を与える任意的な添加物を付随的に含有してもよい。船用塗料を製造する場合には、塗料はその海洋環境中で塗料を徐々に「脱落(slough off)」させることによって海洋環境の水媒体との接触で塗料の表面に新たに露出された殺生物剤の更新殺生物効力を生じさせるように、好ましくは膨潤剤を含有する。膨潤剤の例は天然又は合成のクレー、例えば、カオリン、モンモリロナイト及びベントナイト、クレーマイカ(白雲母)、及びクロライト(ヘクトナイト)等である。クレーの他に、天然又は合成のポリマー、例えば、ポリマーゲル(POLYMERGEL)として市販されているもの、を含めて、他の膨潤剤も所期の「脱落」効果を付与する本発明の組成物に有効であることが判明した。膨潤剤は単独又は組合せで使用できる。任意的添加物の全体の量は好ましくは、塗料組成物の全重量を基準にして20重量%以下であり、より好ましくは約1重量%〜約5重量%である。
【0036】
増粘剤の例は、セルロース30誘導体、例えば、メチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル及びカルボキシメチル セルロース、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(アクリル酸)の塩、及びアクリル酸/アクリルアミド共重合体の塩を包含する。
【0037】
適する湿潤及び分散剤はポリホスホン酸ナトリウム、低分子量ポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(エタンスルホン酸)の塩、ポリ(ビニルホスホン酸)の塩、ポリ(マレイン酸)の塩、及びマレイン酸とエチレンの共重合体の塩、3〜18炭素原子数の1オレフィン、及び/又はスチレンを包含する。
【0038】
凍結及び電解質に対する安定性を増加させるには、塗料組成物に様々なモノマー、1.2−ジオール、例えば、グリコール、プロピレングリコール(1.2)及びブチレングリコール(1.2)又はそれらのポリマー、又はエトキシル化された化合物を添加してもよい。例えば、エチレンオキシドと長鎖アルカノールの反応生成物、アミン、アルキドフェノール、ポリ(プロピレングリコール)、又はポリ(ブチレングリコール)、又はそれらの組合せ、等。
【0039】
塗料組成物の皮膜形成の最小温度は溶剤、例えば、エチレングリコール、ブチルグリコール、エチルグリコールアセテート、エチルジグリコールアセテート、ブチルジグリコールアセテート、又はアルキル化芳香族炭化水素の添加によって低下されてもよい。消泡剤としては、例えば、ポリ(プロピレングリコール)及びポリシロキサンが適する。任意的には他の殺生物剤が本発明の塗料配合物の中に更に組み入れられることができる。
【0040】
本発明の塗料組成物は天然又は合成物質、例えば、木質、紙、金属、編織物及びプラスチックのための塗料として使用されてもよい。それは屋外用塗料として特に適しており、そして船用塗料としての使用のために優れている。
【0041】
本発明の水性組成物のための別の有意な用途は抗菌成分の他に例えばラテックスエマルジョン、任意的なロジンエマルジョン、任意的な可塑剤、任意的な酸化防止剤、及び任意的な顔料又はフィラー(例えば、炭酸カルシウム)を典型的に含有しているラテックスタイル接着剤としての使用である。本発明の水性組成物の更に別の有意な用途は、抗菌成分の他に、アクリルラテックス、非イオン界面活性剤、分散剤、任意的な可塑剤、及び任意的な顔料又はフィラー(例えば炭酸カルシウム)を典型的に含有するラテックスコーキング材としてである。
【0042】
本発明の水性の抗菌性組成物はここに記載されている様々な応用のいずれかにおいて、殺菌剤及び保存料として、単独で又は水、液状炭化水素、エタノール、イソプロパノール等のような不活性担体との組合せで有効である。それらは様々な基体上の細菌及び真菌類を防除するために通常の手順を使用して用いることができ、そして細菌又は真菌の生物に又は基体上に抗菌的量で吹き付け、浸漬、しみ込み、等のような通常の手順によって適用することができる。
【0043】
本発明は下記の実施例によって更に例証される。別に言及しない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」である。
【0044】
本発明はそれらの特定の態様を引用して上記に記述したけれども、ここに開示された発明の概念から逸脱することなく、多数の変化、変更及び変動が可能であることは明らかである。従って、添付の請求の範囲の思想及び広い範囲の中に入るかかる全ての変化、変更及び変動を包囲することを意図している。
【0045】
下記の実施例は本発明を例証するがその範囲をどのようにも制限しないことを意図している。
【0046】
比較例A
アクリルラテックス家庭用塗料におけるカビに対する
抗菌剤としての酸化亜鉛の効力
ラテックス家庭用塗料における防カビ添加物としての酸化亜鉛の有効性を試験するために、下記実験を行った。塗料は下記組成を有して製造された:
酸化亜鉛を含有するラテックス塗料配合物:
成分 g数
水 240.0
ヒドロキシエチルセルロース 6.0
タモール(Tamol) 960 (1) 6.2
エチレングリコール 50.0
コロイド 643 (2) 2.0
トリトン(登録商標)CF−10 (3) 5.0
トリポリ燐酸カリウム 3.0
顔料グラインド:
二酸化チタン(ルチル) 500.0
珪酸マグネシウムアルミニウム 335.0
アタパルジャイト クレー 6.0
酸化亜鉛 12.0
珪酸アルミニウム 47.0
プロピレングリコール 68.0
レット ダウン(let Down):
水 201.0
アクリルラテックスエマルジョン(固形分60.0%) 760.0
コロイド 643 6.0
テキサノール(登録商標)(4) 22.0
ヒドロキシエチルセルロース(水中の2.5%) 80.0
アンモニア 0.5
全体の質量(g数) 2349.7
この塗料は塗膜が塗膜上のカビの成長を支援するか否かを測定するために下塗り無しのストローブマツ(white pine)基体に2つの皮膜に刷毛塗りされた。屋外で4カ月経過後、成長はASTM D 3274−82の手順に従って6の等級(中成長)に等級付けされた。
【0047】
比較例B
アクリルラテックス家庭用塗料における亜鉛ピリチオンの効力
ラテックス家庭用塗料における防カビ添加物としての酸化亜鉛の有効性の別の試験として、下記実験を行った。塗料は下記組成を有して製造された:
亜鉛ピリチオンを含有し酸化亜鉛を含有しないラテックス塗料配合物:
成分 g数
水 240.0
ヒドロキシエチルセルロース 6.0
タモール 960 (1) 6.2
エチレングリコール 50.0
コロイド 643 (2) 2.0
トリトン(登録商標)CF−10 (3) 5.0
トリポリ燐酸カリウム 3.0
顔料グラインド:
二酸化チタン(ルチル) 500.0
珪酸マグネシウムアルミニウム 335.0
アタパルジャイト クレー 6.0
亜鉛ピリチオン48%分散物 24.0
珪酸アルミニウム 47.0
プロピレングリコール 68.0
レット ダウン:
水 201.0
アクリルラテックスエマルジョン(固形分60.0%) 760.0
コロイド 643 6.0
テキサノール(登録商標)(4) 22.0
ヒドロキシエチルセルロース(水中の2.5%) 80.0
アンモニア 0.5
全体の質量(g数) 2361.7
この塗料は塗膜が塗膜上のカビの成長を支援するか否かを測定するために下塗り無しのストローブマツ基体に2つの皮膜に刷毛塗りされた。屋外で4カ月経過後、成長はASTM D 3274−82の手順に従って8の等級(軽成長)に等級付けされた。
【0048】
実施例1
アクリルラテックス家庭用塗料における
亜鉛ピリチオン及び酸化亜鉛の効力
ラテックス家庭用塗料における防カビ添加物の組合せとして酸化亜鉛と亜鉛ピリチオンの組合せの有効性を試験するために、下記実験を行った。塗料は下記組成を有して製造された:
亜鉛ピリチオンと酸化亜鉛を含有するラテックス塗料配合物:
成分 g数
水 240.0
ヒドロキシエチルセルロース 6.0
タモール 960 (1) 6.2
エチレングリコール 50.0
コロイド 643 (2) 2.0
トリトン(登録商標)CF−10 (3) 5.0
トリポリ燐酸カリウム 3.0
顔料グラインド:
二酸化チタン(ルチル) 500.0
珪酸マグネシウムアルミニウム 335.0
アタパルジャイト クレー 6.0
亜鉛ピリチオン48%分散物 18.0
酸化亜鉛 3.0
珪酸アルミニウム 47.0
プロピレングリコール 68.0
レット ダウン:
水 201.0
アクリルラテックスエマルジョン(固形分60.0%) 760.0
コロイド 643 6.0
テキサノール(登録商標)(4) 22.0
ヒドロキシエチルセルロース(水中の2.5%) 80.0
アンモニア 0.5
全体の質量(g数) 2361.7
脚注
(1) アニオン性分散剤、ローム アンド ハース社の製品
(2) 消泡剤、ローン‐ポーレンク社(Rhone-Poulenc Corp)の製品
(3) 非イオン性界面活性剤、ユニオン カーバイド社の製品
(4) 融合剤、イーストマン コダック社の製品

この塗料は塗膜が塗膜上のカビの成長を支援するか否かを測定するために下塗り無しのストローブマツ基体に2つの皮膜に刷毛塗りされた。屋外で4カ月経過後、成長はASTM D 3274−82の手順に従って10の等級(無成長)に等級付けされた。
上記3つの例(比較例A、比較例B、及び実施例1)からの塗料3つ全ては異なる木片を使用する影響を最小にするためにマツの同じ板上の3つの別々の区画に塗布された。実施例1によって、亜鉛ピリチオンと酸化亜鉛の組合せは塗布された木質基体の上のカビの成長に対する完全抵抗を適切に付与することが実証されているが、酸化亜鉛又は亜鉛ピリチオンの単独(比較例A及びB)はかかる抵抗を付与しない。
【0049】
実施例2
ピリチオン含有塗料基材における
紫外光暴露によって起こる黄変を回避することの酸化亜鉛の効果
ピリチオン含有塗料における紫外線に起因する黄変を回避、解消又は低減することの酸化亜鉛の有効性を試験するために、下記実験を行った。
亜鉛ピリチオンを含有する水性ラテックス塗料配合物と亜鉛ピリチオンを含有しないものとの2つのサンプルがパネルに適用され、そしてQUV耐候試験機で500時間暴露された。黄色度指数(「YI」)が暴露ゼロ時間と暴露500時間後に測定された。亜鉛ピリチオンを含有しない塗料についての500時間暴露後のYIの差は黄色度の1.34の増加であった。0.3重量%の活性亜鉛ピリチオンを含有する塗料についてのYIの差は3.68の増加であり、それは亜鉛ピリチオンを含有する塗料ではUV暴露による黄色化が増加したことを表している。
これら塗料の各々のサンプルに0.5%の酸化亜鉛が添加された。酸化亜鉛を含有しない塗料についてのYIの差はQUV耐候試験機で500時間暴露後には0.37の増加であった。亜鉛ピリチオンを含有した塗料についてのYIの差は500時間暴露後には0.19であった。この結果は塗料が紫外光に暴露されたときの亜鉛ピリチオン含有塗料における黄色の発現を酸化亜鉛が防止することを実証している。
ピリチオンを含有した及び含有しないラテックス塗料配合物:
成分 A B
水 103.0 g 103.0
ヒドロキシエチルセルロース 2.5 2.5
タモール 960 (1) 12.90 12.9
エチレングリコール 18.00 18.0
コロイド 643 (2) 2.0 2.0
ヌオセプト(Nuosept) 95 3.00 3.0
トリポリ燐酸カリウム 2.0 2.0
顔料グラインド:
二酸化チタン(ルチル) 200.0 200.0
珪酸ナトリウムカリウムアルミニウム 225.0 225.0
アタパルジャイト クレー 4.0 4.0
レット ダウン:
水 50.0 50.0
アクリルラテックスエマルジョン(固形分63.0%) 260.0 260.0
コロイド 643 4.0 4.0
テキサノール(登録商標)(3) 12.0 12.0
ヒドロキシエチルセルロース(水中の2.5%) 132.0 132.0
アンモニア 1.0 1.0
亜鉛ピリチオン48%分散物
全体の質量(g数) 1031.4 1037.4
全体の質量(g数)にまとめられているように、亜鉛ピリチオンを含有した塗料と含有しない塗料の黄色化を比較するために、A及びBどちらも200gに対して、2.00gの50%酸化亜鉛分散物を添加した。
【0050】
実施例3
ピリチオン含有塗料基材における
紫外光暴露によって起こる黄変を回避することの低量酸化亜鉛の効果
より低い濃度の酸化亜鉛がピリチオン含有塗料における紫外線に起因する黄変を回避、解消又は低減することの有効性を付与するのに使用できるか否かを試験するために、下記実験を行った。実施例2の手順に従って、2つの塗料が下記の通り製造された;実施例2に対して、下記の通り製造された:
成分 A B
水 103.0 g 103.0
ヒドロキシエチルセルロース 2.5 g 2.5
タモール 960 (1) 12.90 12.9
エチレングリコール 18.00 18.0
コロイド 643 (2) 2.0 2.0
ヌオセプト 96 3.00 3.0
トリポリ燐酸カリウム 2.0 2.0
顔料グラインド:
二酸化チタン(ルチル) 200.0 200.0
珪酸ナトリウムカリウムアルミニウム 225.0 225.0
アタパルジャイト クレー 4.0 4.0
酸化亜鉛 2.0 6.0
レット ダウン:
水 50.0 50.0
アクリルラテックスエマルジョン(固形分63.0%) 260.0 260.0
コロイド 643 4.0 4.0
テキサノール(登録商標)(3) 12.0 12.0
ヒドロキシエチルセルロース(水中の2.5%) 132.0 132.0
アンモニア 1.0 1.0
亜鉛ピリチオン48%分散物 6.0 6.0
全体の質量(g数) 1045.4 1049.4
脚注
(1) アニオン性分散剤、ローム アンド ハース社の製品
(2) 消泡剤、ローン‐ポーレンク社の製品
(3) 融合剤、イーストマン コダック社の製品

これら塗料からの皮膜がQUV耐候試験機でUVA340バルブによる連続光に72時間暴露された。YI指数はその時に測定され、そして時間ゼロにおけるYIからの差は下記の通りであった。
YI
塗料サンプルA 1.35
塗料サンプルB 0.76
この実施例で与えられた結果は配合物中の0.2%より少ない酸化亜鉛がUV暴露に起因する黄色化の減少をもたらすことを実証している。全体で0.6重量%にするために更に0.4%の酸化亜鉛の追加はUV誘発黄色化の更により大きな低減をもたらした。
【0051】
実施例4
塗料基材における
ピリチオンと第二鉄イオンの存在に起因する青変色の解消
ナトリウムピリチオン含有塗料基材における第二鉄イオンの存在に起因する青色着色を解消することの酸化亜鉛の効力。
ピリチオン含有塗料における第二鉄イオンに起因する青色を解消又は低減することの酸化亜鉛の有効性を試験するために、下記の実験を行った。
ナトリウムピリチオンと酸化亜鉛を含有する下記の水性(ラテックス)塗料配合物の各150gの重さの2つのサンプルをプラスチック製カップに入れた。次いで、木製の舌圧子(tongue depressor)を各サンプルの中に浸漬し、次いで乾燥するにまかせて対照又は「ブランク」比較を提供した。次いで、各サンプルに塩化第二鉄を添加して各サンプル中の第二鉄イオンの濃度64ppmを与えた。比較の基準を提供するために舌圧子の被覆を行った。塗料自体又は塗布された舌圧子の乾燥皮膜には変色が形成されなかった。

ナトリウムピリチオンと酸化亜鉛を含有するラテックス塗料配合物:
成分 g数
水 240.00
ヒドロキシエチルセルロース 6.0
タモール 850 (1) 14.2
エチレングリコール 50.0
コロイド 643 (2) 2.0
トリトン(登録商標)CF−10 (3) 5.0
ナトリウムピリチオン(40%活性) 3.0
トリポリ燐酸カリウム 3.0
顔料グラインド:
二酸化チタン(ルチル) 424.0
珪酸マグネシウムアルミニウム 228.0
アタパルジャイト クレー 3.0
酸化亜鉛 50.0
珪酸アルミニウム 100.0
プロピレングリコール 68.0
レット ダウン:
水 84.0
アクリルラテックスエマルジョン(固形分58.0%) 700.0
コロイド 643 6.0
テキサノール(登録商標)(4) 18.6
ヒドロキシエチルセルロース(水中の2.5%) 236.4
全体の質量(g数) 2241.2
(1) アニオン性分散剤、ローム アンド ハース社の製品
(2) 消泡剤、ローン−ポーレンク社の製品
(3) 非イオン性界面活性剤、ユニオン カーバイド社の製品
(4) 融合剤、イーストマン コダック社の製品

次に、比較として、ナトリウムピリチオンを含有し酸化亜鉛を含有しない下記の水性(ラテックス)塗料配合物の各150gの重さの2つのサンプルを紙コップに入れた。次いで、木製の舌圧子を各サンプルの中に浸漬し、次いで乾燥するにまかせて対照又は「ブランク」比較を提供した。次いで、各サンプルに塩化第二鉄を添加して各サンプル中の第二鉄イオンの濃度64ppmを与えた。比較のための基準を提供するために、舌圧子の上の比較の塗膜を目視観察した。30分後に、塗料自体及び塗布された舌圧子の乾燥皮膜に青味がかった灰色の変色が形成された。
ナトリウムピリチオンと酸化亜鉛を含有するラテックス塗料配合物:
成分 g数
水 240.00
ヒドロキシエチルセルロース 6.0
タモール 850 (5) 14.2
エチレングリコール 50.0
コロイド 643 (6) 2.0
トリトン(登録商標)CF−10 (7) 5.0
ナトリウムピリチオン(40%活性) 3.0
トリポリ燐酸カリウム 3.0
顔料グラインド:
二酸化チタン(ルチル) 424.0
珪酸マグネシウムアルミニウム 228.0
アタパルジャイト クレー 3.0
珪酸アルミニウム 100.0
プロピレングリコール 68.0
レット ダウン:
水 84.0
アクリルラテックスエマルジョン(固形分58.0%) 700.0
コロイド 643 6.0
テキサノール(登録商標)(8) 18.6
ヒドロキシエチルセルロース(水中の2.5%) 236.4
全体の質量(g数) 2191.2

(5) アニオン性分散剤、ローム アンド ハース社の製品
(6) 消泡剤、ローン−ポーレンク社の製品
(7) 非イオン性界面活性剤、ユニオン カーバイド社の製品
(8) 融合剤、イーストマン コダック社の製品
【0052】
実施例5
塗料における
ピリチオンと第二鉄イオンの存在に起因する青変色の解消
亜鉛ピリチオン含有塗料における第二鉄イオンの存在に起因する青着色を解消することの酸化亜鉛の効力。
第二鉄イオンの存在下では、亜鉛ピリチオン含有組成物もナトリウムピリチオン含有塗料より遙に低い割合ではあるが青色乃至灰に変化する傾向があった。
1.0%の酸化亜鉛を含有する白色塗料に48%の水性亜鉛ピリチオンをサンプル中の亜鉛ピリチオンが3000ppmレベルになるように添加した。次いで塩化第二鉄を添加してサンプル中の第二鉄イオンの濃度64ppmを与えた。1カ月放置したとき、塗料は変色が認められなかった。
この組成物が裸の鋼又は銅の上に塗布されたとき、変色は検出されない。銅は塗料を緑がかった色に変えることが予想され、そして鋼は塗料を青みがかった色に変えることが予想されたので、この結果は驚くべきことである。
比較として、酸化亜鉛を含有しない白色塗料に48%の水性亜鉛ピリチオンをサンプル中の亜鉛ピリチオンが3000ppmレベルになるように添加した。次いで、塩化第二鉄を添加してサンプル中の第二鉄イオンの濃度64ppmを与えた。1週間放置したとき、塗料は色が青みを帯びたものに変わった。
【0053】
実施例6
水性塗料における
ピリチオンと第二鉄イオンの存在に起因する変色を除く方法
白色塗料に48%の水性亜鉛ピリチオンを添加してサンプル中の亜鉛ピリチオン3000ppmのレベルを与えた。次いで塩化第二鉄を添加してサンプル中の第二鉄イオンの濃度25ppmを与えた。2日間放置したとき、塗料は色が青みを帯びたものに変わった。この塗料に0.007%(70ppm)の硫酸亜鉛を添加し、そしてこの塗料を5分間混合した。更に5分間攪拌した後には、塗料が白色化したこと及び青みがかった色がもはや認められないことが観察された。この塗料への硫酸亜鉛の添加は亜鉛ピリチオンと塩化第二鉄の添加から生じた青色を除去した。
【0054】
本願は下記発明に関する。
1. a)水、
b)ビニル、アルキド、エポキシ、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた樹脂である基本媒体、
c)組成物の重量を基準にして0.01%〜2.0%の量のピリチオン塩、及び
d)コーティング組成物の重量を基準にして0.001%〜10%の濃度の、塗料製造に適する多数の等級から選ばれた酸化亜鉛化合物、
を特徴としている水性コーティング組成物。
2. 前記酸化亜鉛がコーティング組成物の重量を基準にして0.001%〜3%の量で存在することを特徴とする、項目1のコーティング組成物。
3. 前記酸化亜鉛がコーティング組成物の重量を基準にして0.02%〜0.5%の量で存在することを特徴とする、項目1のコーティング組成物。
4. 前記酸化亜鉛がコーティング組成物の重量を基準にして0.002%〜0.2%の量で存在することを特徴とする、項目1のコーティング組成物。
5. 前記コーティング組成物がポリマーラテックスを含んでいることを特徴とする、項目1のコーティング組成物。
6. 前記組成物が更に、ヨードプロピルブチルカルバメート(「IPBC」)、n−オクチルイソチアゾリン−オン(「OIT」)、メチレンチオシアネート(「MTC」)、チオシアノメチルチオベンゾチアゾール(「TCMTB」)、チアゾリルベンズイミダゾール(「TBZ」)、ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチルエステル(「BCM」)、トリアゾール、例えばクロロフェニルエチルジメチルエチルトリアゾールエタノール、置換トリアゾリン、例えばt−ブチルアミノシクロプロピルアミノメチルチオ−s−トリアゾール、及びジクロロフェニルジメチルウレア、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた補助殺生物剤を含有することを特徴とする、項目1のコーティング組成物。
7. ビニル、アルキド、エポキシ、アクリル、ポリエステル樹脂、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた樹脂を含んでいる塗料であるピリチオン含有コーティング組成物の乾燥皮膜の、前記ピリチオンの紫外光崩壊に起因する変色を抑制する方法であって、前記コーティング組成物の中に、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた亜鉛化合物の有効量を組み入れること、前記亜鉛化合物が前記コーティング組成物の中にコーティング組成物の重量を基準にして0.001%〜10%の量で使用されることを特徴とする、前記方法。
8. 前記亜鉛化合物が、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、項目7の方法。
9. ビニル、アルキド、エポキシ、アクリル、ポリエステル樹脂、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた樹脂を含んでいる塗料であり、第二鉄イオン、第二銅イオン、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた溶解金属イオンを含有しており、且つピリチオンを含有している、水性の抗菌性組成物において望ましくない変色を除去する方法であって、前記組成物を前記組成物中の前記溶解金属イオンの量に少なくとも等しいモル量の亜鉛イオンと接触させること、前記亜鉛イオンの前記量が前記組成物中の100ppm〜10,000ppmであることを特徴とする、前記方法。
10. 前記亜鉛イオンは、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた亜鉛化合物を前記組成物の中に組み入れることにより付与されることを特徴とする、項目9の方法。
11. 水性塗料、接着剤、コーキング材及びシーラント、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた水性の抗菌性コーティング組成物であって、水、ピリチオン塩又は酸、有機性基本媒体及び亜鉛化合物を含有していること、前記亜鉛イオンがコーティング組成物の重量を基準にして0.001%〜10%の量で前記組成物中に存在することを特徴とし、防カビ効力と、その中のピリチオンの存在に起因する変色を生じないように防護されていることとを特徴とする前記コーティング組成物。
12. 木質、金属、プラスチックの基体、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた基体と、前記基体上の塗膜とを含んでいるコートされた基体であって、前記塗膜がピリチオンと、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた亜鉛化合物とを特徴とし、前記亜鉛化合物がコーティング組成物の重量を基準にして0.001%〜10%の量で前記塗膜の中に存在していることを特徴とする、前記コートされた基体。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性の抗菌性組成物において望ましくない変色を除去する方法であって、
前記水性の抗菌性組成物は、ビニル、アルキド、エポキシ、アクリル、ポリエステル樹脂、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた樹脂と、第二鉄イオン、第二銅イオン、およびそれらの組合せからなる群から選ばれた溶解金属イオンとを含有しており、且つ、単一ピリチオンを含有しており、前記単一ピリチオンは亜鉛ピリチオンであり、
前記組成物を前記組成物中の前記溶解金属イオンの量に少なくとも等しいモル量の亜鉛イオンと接触させること、前記亜鉛イオンの前記量が前記組成物中の100ppm〜10,000ppmであることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記亜鉛イオンは、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた亜鉛化合物を前記組成物の中に組み入れることにより付与されることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
前記亜鉛化合物が、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項4】
水性塗料、接着剤、コーキング材及びシーラント、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた水性の抗菌性コーティング組成物であって、
水、ピリチオン塩又は酸、有機性基本媒体及び亜鉛化合物を含有していること、前記亜鉛イオンがコーティング組成物の重量を基準にして0.02%〜0.5%の量で前記組成物中に存在することを特徴とし、
防カビ効力と、その組成物中の単一ピリチオンの存在に起因する変色を生じないように防護されていて、前記単一ピリチオンは亜鉛ピリチオンであることとを特徴とする、前記コーティング組成物。
【請求項5】
木質、金属、プラスチックの基体、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた基体と、前記基体上の塗膜とを含んでいるコートされた基体であって、
前記塗膜が、亜鉛ピリチオンである単一ピリチオンと、有機酸の亜鉛塩、無機酸の亜鉛塩、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた亜鉛化合物とを特徴とし、
前記亜鉛化合物がコーティング組成物の重量を基準にして0.02%〜0.5%の量で前記塗膜の中に存在していることを特徴とする、前記コートされた基体。


【公開番号】特開2009−108326(P2009−108326A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331933(P2008−331933)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【分割の表示】特願平10−536649の分割
【原出願日】平成10年2月3日(1998.2.3)
【出願人】(500000175)アーチ ケミカルズ,インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】