ピリドキサール5’−リン酸の静脈用製剤、調製方法、およびその使用
本発明は、ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤およびその製造方法を提供する。また、本発明は、当該凍結乾燥製剤から再構成される、ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤を提供する。さらに、本発明は、凍結乾燥された注射可能な製剤の使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリドキサール5'−リン酸の製薬剤、特に静脈内投与に適した製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリドキサール5'−リン酸(P5P)は、高血圧症、脳血管障害、心血管障害、および糖尿病等の種々の疾患を治療および予防するのに有用である。例えば、米国特許第6,051,587号、第6,417,204号、第6,548,519号、第6,586,414号、第6,605,612号、第6,667,315号、第6,780,997号、第6,677,356号、第6,489,348号、および第6,043,259号を参照のこと。
【0003】
ピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤は、従来技術において公知である。しかし、ピリドキサール5'−リン酸の水溶液は安定性に劣る。また、溶液形態では感光性が高く、粉末形態でも程度は比較的低いものの感光性がある。よって、従来技術に係るピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤では、安定性を向上し貯蔵寿命を延長させる保存剤を含有する必要があった。しかし、このような保存剤は、望ましくない副作用を増加させ、ピリドキサール5'−リン酸の感光性に対処するものではないことが多い。また、このような保存剤は、規制認可における使用に適さないことが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、劣化の影響を受けにくく、保存剤を含有する必要のない、ピリドキサール5'−リン酸の新規な静脈用製剤を提供する。当該静脈用製剤は、向上した薬物動態プロファイルを示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
一局面において、本発明は、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとの凍結滅菌水溶液を凍結乾燥することによって調製されたピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態において、溶液のpHが7.0〜7.3である。
【0007】
本発明の他の実施形態において、凍結乾燥製剤はマンニトールをさらに含有する。
【0008】
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る凍結乾燥製剤から再構成されるピリドキサール5'−リン酸を含有し、静脈内投与に適した滅菌キャリアを用いた注射可能な製剤を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態において、滅菌キャリアは注射用水である。
【0010】
さらなる局面において、本発明は、(a)ピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとを含有し、pHが7.0〜7.3である滅菌液を調製する工程と、(b)溶液を凍結する工程と、(c)凍結溶液を凍結乾燥する工程とを含むピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤の調製プロセスを提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態において、滅菌液はマンニトールをさらに含有する。
【0012】
本発明の他の実施形態において、滅菌液は、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸を含有する。
【0013】
さらなる局面において、本発明は、指示と、別々の容器に、(a)本発明に係るピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤と、(b)静脈内投与に適した滅菌キャリアとを含む本発明に係る注射可能な製剤を調製するのに有用なキットを提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、キットは滅菌キャリアとして注射用水を含む。
【0015】
本発明のさらなる実施形態において、キットは、注射可能な製剤の容器であって、製剤を選択された量および濃度に調製することを容易にするように寸法決めされた容器をさらに含む。
【0016】
さらなる局面において、本発明は、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者への投与に適した注射可能な製剤を調製するための、本発明に係る凍結乾燥製剤の使用を提供する。
【0017】
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者の治療方法を提供する。
【0018】
さらなる局面において、本発明は、有効な量の本発明に係る注射可能な製剤を投与することを含む、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率の低減方法を提供する。
【0019】
さらなる局面において、本発明は、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率を低減するための、本発明に係る注射可能な製剤の使用を提供する。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者の治療方法を提供する。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者への投与に適した注射可能な製剤を調製するための、本発明に係る凍結乾燥製剤の使用を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態において、外科手術は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)である。
【0023】
詳細な説明
本発明は、ピリドキサール5'−リン酸の新規な凍結乾燥した注射可能な製剤、およびその使用を提供する。ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤は、ピリドキサール5'−リン酸を用いる治療の必要がある患者への静脈内投与に適している。本発明の注射可能な製剤は、いかなる重大な副作用もなく向上した薬物動態を有する。本発明の注射可能な製剤の静脈内投与により、ピリドキサール5'−リン酸の持続する血漿中レベルは、従来技術に係る製剤よりも高くなる。
【0024】
ピリドキサール5'−リン酸の安定した静脈用製剤を調製するこれまでの試みでは、毒性の可能性または発癌性の可能性がある保存剤の添加を必要としていた。保存剤がない場合、ピリドキサール5'−リン酸の水溶液は急速に劣化するため、静脈内投与には適さない。本発明者は、いかなる従来の保存剤も添加することを必要としない安定した注射可能な製剤を調製するために再構成可能な、ピリドキサール5'−リン酸の新規な凍結乾燥製剤を見出した。適切なキャリア内で再構成前にマンニトールとともにピリドキサール5'−リン酸を凍結乾燥することによって、ピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤の安定性は、驚くべきことに有意に上昇した。さらに、このように調製した静脈用製剤は、有効成分の薬物動態特性を損なうこともいかなる重大な副作用もなく、向上した安定性を示した。
【0025】
本発明の製剤は、心血管および脳血管合併症の治療に特に有用である。冠動脈バイパス術(CABG)および経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、北米において最も頻繁に用いられる2大処置法である。手術中、患者には抗血小板および抗血栓療法が施され、虚血性合併症の頻度が低減される。特に、用いられる療法としては、ヘパリン、アブシキシマブ(abciximab)、およびエプチフィバチド(eptifibatide)が挙げられる。これらは、単独または互いに組み合わせての使用が可能である。本発明は、虚血性合併症をさらに低減するためにCABGまたはPCI中に静脈内投与可能なピリドキサール5'−リン酸の製剤を提供する。
【0026】
本発明に係る製剤は、ピリドキサール5'−リン酸の錠剤等の経口用形態を嚥下することが不可能な卒中患者への投与にも適している。また、病院環境において、経口用製剤とは対照的に、ピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤は、ピリドキサール5'−リン酸の経口投与に付随し得る胃の不快感、悪心、嘔吐、および下痢を引き起こすことなく、ピリドキサール5'−リン酸の血漿中レベルを上昇させるという利点を提供する。さらに、静脈用製剤は、数分以内に高い血漿中レベルを実現するが、経口用製剤が同様のレベルに到達するのには数時間を要する場合がある。従って、静脈用製剤は、経口投与が可能または理想的ではない緊急事態(例えば、MIまたは卒中の治療、緊急PCIまたはバイパス)において理想的である。
【0027】
ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤および調製方法
一局面において、本発明は、ピリドキサール5'−リン酸と、水酸化ナトリウムと、必要に応じてマンニトールとの凍結滅菌水溶液を凍結乾燥することによって調製されたピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤を提供する。
【0028】
ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤は、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥した滅菌水溶液を含有する。
【0029】
ここで用いられる「補給濃度」とは、ビタミンまたは代謝物質欠乏症の患者のビタミンまたは代謝物質レベルを通常レベルへと回復するための濃度を意味するものとして定義され、ビタミンまたは代謝物質レベルを通常代謝レベルを超えて上昇させるのに適した濃度を含まない。
【0030】
凍結乾燥製剤は、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩を用いて調製される。ピリドキサール5'−リン酸の一水化物および無水物のいずれもが本発明の薬学的組成物の調製に適している。ピリドキサール5'−リン酸は、これらに限定されないが、クエン酸塩、酒石酸塩、および重硫酸塩塩等の、薬学的に適合可能な対イオンを有する塩の形態で提供され得る。薬学的に適合可能な塩は、これらに限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、および琥珀酸等の各種酸で形成され得る。塩の形態は、対応する遊離塩基の形態よりも、水性溶媒または他のプロトン性溶媒に溶解しやすい。
【0031】
ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤の調製における第1の工程は、ピリドキサール5'−リン酸および水酸化ナトリウムを含有する滅菌液を調製する工程である。
【0032】
好適な実施形態において、滅菌液は、pHが約7.0〜7.3である。当該溶液は、まず、ピリドキサール5'−リン酸および水酸化ナトリウムを適切な量の水に溶解し、pHを調節することによって調製される。
【0033】
ここで用いられる「重量パーセント/重量(%w/w)」という語は、特定の化合物またはキャリアの、当該化合物またはキャリアが一構成要素となる組成物の総重量に対する重量パーセントを意味する。
【0034】
一実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜25%w/w含有する。
【0035】
好適な一実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5’−リン酸を約1〜15%w/w含有する。
【0036】
さらなる好適な実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5’−リン酸を約1〜10%w/w含有する。
【0037】
さらなる好適な実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5’−リン酸を約5%w/w含有する。
【0038】
他の実施形態において、滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.1〜10%w/w含有する。
【0039】
好適な一実施形態において、滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜5%w/w含有する。
【0040】
さらなる好適な実施形態において、滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜3%w/w含有する。
【0041】
さらなる好適な実施形態において、滅菌液は、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w含有する。
【0042】
他の実施形態において、滅菌液は、マンニトールをさらに含んでいてもよい。滅菌液がマンニトールを含有する実施形態において、滅菌液は、まず、ピリドキサール5'−リン酸および水酸化ナトリウムを適切な量の水に溶解し、pHを調節し、次いで、マンニトールをピリドキサール5'−リン酸/水酸化ナトリウム溶液に溶解することによって調製される。結果として得られる溶液は、次いで、フィルター滅菌等によって滅菌される。
【0043】
一実施形態において、滅菌液は、マンニトールを約0.2〜10%w/w含有する。
【0044】
一実施形態において、滅菌液は、マンニトールを約0.5〜5%w/w含有する。
【0045】
好適な一実施形態において、滅菌液は、マンニトールを約3%w/w含有する。
【0046】
より好適な実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5’−リン酸を約5%w/w、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w、およびマンニトールを約2.8%w/w含有する。
【0047】
滅菌液は、次いで、アンプルまたはバイアル等の滅菌プラスチックまたはガラス容器に適切な量に分配してもよい。
【0048】
単一のバイアルに詰められるピリドキサール5'−リン酸の量は、25mg〜1000mg、50〜1000mg、より好ましくは100〜750mgで変動し得る。水酸化ナトリウムおよびマンニトールの量は、ピリドキサール5'−リン酸の量に依存する。本発明の一実施形態において、凍結乾燥製剤の1回分の投薬形態は、ピリドキサール5'−リン酸を約250mg、水酸化ナトリウムを約80.5mg、マンニトールを約150mg、およびWFI(注射用水)を約5.0ml含有する。
【0049】
滅菌液が容器に等分されると、溶液は、−20〜−45℃の温度で凍結される。実質的に凍結された水溶液は、凍結乾燥が開始されるまで、この温度で維持され得る。
【0050】
実質的に凍結された水溶液の凍結乾燥は、例えば、一次乾燥と二次乾燥との両方を含んで実行され得る。一次乾燥は、例えば、凍結された水分および/または他の溶媒の実質的に全てを除去するのに十分な時間、約0.1〜0.5トルの実質的な真空下で、真空および熱を制御しながら加えることによって、昇華により実行され得る。次いで、二次乾燥は、最終的に極微量となった吸着した水分または他の溶媒を可能な限り多く除去するように実質的に同様の真空下で実行されることが好ましく、これによって乾燥ケーキまたは粉体が得られる。
【0051】
一次乾燥が実行される温度は、溶液を実質的または完全に凍結された形態に維持するように、プロセスの最初は−10℃から0℃の範囲とする。当該プロセスが進行し、生成物の温度が所望の貯蔵温度に達するにつれ、一次乾燥段階が完了する。二次乾燥が実行される温度は、吸着した水分および/または他の溶媒を除去するために、25℃から35℃の範囲とする。結果として得られるケーキまたは粉体の水分含有率は、2.5重量%未満であることが好ましい。凍結乾燥が完了すると、この凍結乾燥製剤を含有する滅菌されたプラスチックまたはガラス容器を栓または封止し得る。
【0052】
結果として得られる凍結乾燥製剤は、暗所において2〜8℃の温度で保管する場合、物理的および化学的安定性を示す。
【0053】
ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤および調製方法
他の局面において、本発明は、静脈内投与に適した滅菌キャリアを用いた、本発明に係る凍結乾燥製剤から再構成される、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸を含有する注射可能な製剤を提供する。本発明に係る凍結乾燥製剤を適切な量のWFI(注射用水)中で再構成して、注射可能な製剤を得ることが好ましい。結果として得られる注射可能な製剤は、ボーラス投与に特に適している。好ましくは、注射可能な製剤中のピリドキサール5'−リン酸の濃度は、1〜100mg/ml、5〜75mg/ml、より好ましくは10〜50mg/mlの範囲にある。
【0054】
ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤の調製用キット
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る注射可能な製剤を調製するための指示と、別々の容器に、(a)本発明に係るピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤と、(b)静脈内投与に適した滅菌キャリアとを含む注射可能な製剤を調製するのに有用なキットを提供する。好適な一実施形態において、滅菌キャリアはWFIである。好適な他の実施形態において、当該キットは、注射可能な製剤の容器であって、注射可能な製剤を選択された量および濃度に調製することを容易にするように寸法決めされた容器をさらに含む。
【0055】
凍結乾燥製剤および滅菌キャリアは、単回ボーラス注射に適した量に等分可能である。凍結乾燥製剤および滅菌キャリアは、長期投与に適した量に等分可能である。当該キットは、注射用製剤を、さらに測定することなく指定された濃度および量に調製することを容易にするように寸法決めされた容器を含むことが可能である。当該容器は、注射器本体であってもよいし、または、注射器とともに用いられるのに適するものであってもよい。
【0056】
ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤の使用
高用量のピリドキサール5'−リン酸の忍容性における限界要因は、悪心および嘔吐に主として特徴付けられる胃腸の不快感である。本発明は、経口投与に付随する胃腸の副作用が最小限の、高用量のピリドキサール5'−リン酸の静脈内投与に適した新規な注射可能な製剤を提供する。本発明に係る注射可能な製剤は、従来技術に係るピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤の安定性の問題を克服する。溶液形態では感光性が高く、粉末形態でも程度は比較的低いものの感光性がある従来技術に係るピリドキサール5'−リン酸製剤と比較して、本発明の注射可能な製剤に含有されるピリドキサール5'−リン酸の水溶液の安定性は向上している。本発明に係る静脈用製剤は、安定性を向上し貯蔵寿命を延長させる保存剤を含有する必要がないか、または、従来技術に係る製剤よりもその必要性が低い。
【0057】
本発明に係る注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者の治療方法が提供される。
【0058】
他の局面において、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率の低減方法であって、有効な量の本発明に係る注射可能な製剤を投与することを含む方法が提供される。
【0059】
ピリドキサール−5'−リン酸の静脈内投与は、外科手術を受け、抗血小板および抗血栓療法を必要とする患者の治療において、虚血性合併症の頻度を低減するのに特に有用である。さらなる局面において、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者の治療方法であって、本発明に係る注射可能な製剤を静脈内投与することを含む方法が提供される。当該外科手術は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)等の心血管に関連する処置であり得る。
【0060】
注射可能な製剤の1回分の用量は、ピリドキサール−5'−リン酸を10〜1000mg、好ましくはピリドキサール−5'−リン酸を50mg〜100mg、100〜1000mg、より好ましくはピリドキサール5'−リン酸を250〜1000mg含有し得る。本発明に係る注射可能な製剤は、例えば単回ボーラス注射等の、1日1回または2回の投与に適している。注射可能な製剤は、長期または継続投与においても用いられ得る。
【0061】
注射可能な製剤は、一般的に、特定の1つまたは複数の症状の治療または予防処置に有効な量が投与される。最適な投薬量は、症状、その重度、合併症等を考慮して、各治療法および症状に対する標準的な方法により決定されることは言うまでもない。さらに、治療上有効な用量とは、このような障害に付随する症候を改善するのに十分である化合物の量を意味する。即座の適用例における当該化合物の製剤化および投与技術は、『レミントン製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)』(マック出版社(Mack Publishing Co.)ペンシルバニア州イーストン、最新版)に見ることができる。哺乳類、特に人間への投与に対しては、有効薬剤の1日あたりの投薬レベルは100〜1000mg、典型的には約200〜500mgとなることが予期される。どのような場合でも、医師は、年齢、体重、および特定の個人の反応により異なる個人に最も適した実際の投薬量を決定することができる。上記の投薬量は、平均的な場合の例である。より多いまたはより少ない投薬量範囲がよい個々の例が存在し得ることは勿論であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0062】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明はこれら明確な実施形態に限定されず、種々に変更および修正がなされることが当業者には理解されよう。このような変更および修正は全て添付の特許請求の範囲に含まれるものとされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
実施例
実施例1―ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤(P5P)の調製
表1は、ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤の1回分の用量の組成を示す。各バイアルは250mgのP5Pを提供する。
【0064】
【表1】
以下の手順は、5Lバッチのピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤を調製するためのものである。バッチサイズは、相対量を比例的に増減することにより、大きくまたは小さくすることが可能である。
【0065】
ガラス器具およびバイアルの準備―ガラスバイアルを、250℃±15℃の温度で洗浄および脱パイロジェンを行った。凍結乾燥製剤の調製に用いる、磁気攪拌棒、ピペット、エルレンマイヤー・フラスコ、フラスコ、フィルター、栓、および封止材を含む全ガラス器具ならびに装置を、121℃±3℃の温度で45分間圧熱滅菌することによって滅菌した。
【0066】
P5P溶液の調製―1バイアルあたりの最終濃度を250mgとするのに必要とされるP5Pの量の計算において、有効薬剤成分の含水率が7.71%であるので、補正係数1.08を用いた。
【0067】
各5Lバッチに対して、4kgのWFI(必要全体量の80%)の溶液の中心に窒素を通気した。処理を通じて磁気攪拌を行いながら、4kgのWFIに水酸化ナトリウムを80.6gおよびP5Pを270.4g溶解して、透明な溶液を得た。続いて、1規定NaOHまたは1規定HClを用いて、溶液のpHをpH7.0〜7.3に調節した。pH調節に続いて、溶液が透明になるまで、磁気攪拌を続けながらP5P/NaOH溶液にマンニトールを150.3mg溶解した。次いで、追加用WFIを加えて、溶液の重量を5.245kg(濃度1.049g/ml)に調節した。次いで、溶液を、0.2μmのミリパック(Milipack)K40ガンマゴールドモデルフィルターに通して滅菌濾過し、フィルターの完全性について調べた。
【0068】
凍結乾燥―投薬量が5.10〜5.30mLの範囲(1バイアルあたりの重量は5.35〜5.56gに等しい)となるように、ディスペンサポンプセットを用いて、クラス100のクリーンルームにおいて無菌状態で、個々のバイアルを充填した。2−メルカプトベンゾチアゾールを含まないブロモブチル栓でバイアルに部分的に栓をした。部分的に栓をしたバイアルのトレイを、4℃に予め冷却した凍結乾燥室へと投入した。凍結乾燥は、冷却温度が−45℃、一次冷却時間が6時間、一次乾燥時間(窒素雰囲気内)が50時間、二次乾燥温度が35℃、二次乾燥時間が48時間というパラメータで行った。
【0069】
凍結乾燥後、付属のプラスチックボタンを有するアルミニウム封止材で、バイアルを圧着した。バイアルを、2〜8℃で保管した。
【0070】
実施例2−静脈内投与されるピリドキサール5'−リン酸(P5P)と経口投与されるものとの生物学的利用能に関する比較
第1相臨床実験を行い、静脈内投与したP5Pの薬物動態と経口投与したP5Pの薬物動態とを比較した。当該試験は、単回投与漸増(single dose escalation)試験であった。
【0071】
静脈内投与として、P5Pをボーラス注射により絶食状態において投与した。1、5、10、および20mg/kgの用量のP5Pについて調べた。6人の被験者が各投薬量グループに割り当てられた。
【0072】
経口投与として、P5Pを単回の非コート錠または単回の腸溶性コート錠として絶食状態において投与した。非コート錠として、5、10、17.5、および25mg/kgの用量のP5Pについて調べた。腸溶性コート錠として、15、30、および60mg/kgの用量のP5Pについて調べた。
【0073】
静脈内投与または経口投与の24時間後に、P5P、ピリドキサール、および4−ピリドキシン酸を血漿および尿の両方において評価した。結果を表2および表3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
この結果から、P5Pの生物学的利用能は、経口投与よりも静脈内投与された場合の方が高いことが分かる。
【0076】
実施例3―単回静脈内投与における1、5、10、および20mg/kgのピリドキサール5'−リン酸(P5P)の、薬物動態および有害事象の発生率に関する比較
方法―健康な男女被験者の4つのグループに絶食状態で投与されるP5P静脈内注射可能な溶液の、1、5、10、20mg/kgの用量における安全性および忍容性を評価し、P5Pの薬物動態パラメータを求めるために設計された単盲検、単回投与漸増、非ランダム化、4相、非クロスオーバー試験を行った。
【0077】
絶食状態の被験者を、4つのグループのいずれかに割り当てた(1グループあたりの被験者は6人とした)。
【0078】
各相において投与の24時間後に収集された血漿試料から、ピリドキサール−5'−リン酸(P5P)の濃度を測定した。
【0079】
薬物動態パラメータAUCt、AUCinf、Cmax、Tmax、Kel、Thalf、Vd、CL、MRT、およびFを、最終データセットの各被験者のピリドキサール−5'−リン酸(P5P)血漿中レベルに基づいて求めた。
【0080】
生命徴候、ECG、および報告される有害事象を記録することにより、試験を通じて各被験者についての安全性データを収集した。
【0081】
被験者の数(計画された数および分析された数)
グループ1では、6人の被験者に投与した(1mg/kg)。6人の被験者に関して、試験の第1相を完了し、分析を行った。
【0082】
グループ2では、6人の被験者に投与した(5mg/kg)。6人の被験者に関して、試験の第2相を完了し、分析を行った。
【0083】
グループ3では、6人の被験者に投与した(10mg/kg)。6人の被験者に関して、試験の第3相を完了し、分析を行った。
【0084】
グループ4では、6人の被験者に投与した(20mg/kg)。5人の被験者に関して、試験の第4相を完了し、分析を行った。
【0085】
診断および主たる組み入れ基準
被験者は、薬剤投与の21日前以内に、以下の組み入れ基準の全てに合致した。
【0086】
1)健康な非喫煙の男女被験者であり、年齢は18歳以上55歳以下である。
【0087】
2)体重は、被験者の身長および体格に対する適切な体重(1983年版のメトロポリタン生命保険会社(Metropolitan LifeInsurance Company)Scale、統計部)の±10%以内である。
【0088】
3)HIV、B型肝炎表面抗原およびC型肝炎抗体、薬物乱用(マリファナ、アンフェタミン、バルビタール酸塩(barbiturate)、コカイン、オピエート、ベンゾジアゼピン、およびメタドン)に対する尿検査、コチニン(尿検査)、ならびに血清HCG(女性のみ)に対して陰性である。
【0089】
4)重大な疾患または理学的検査において臨床的に重大な所見がない。
【0090】
5)臨床検査値に臨床的に重大な異常がない。
【0091】
6)生命徴候測定および12誘導心電図(ECG)に臨床的に重大な所見がない。
【0092】
7)試験処置を受ける前に、試験の性質について知らされており、書面による同意を受け取っている。
【0093】
8)当該試験に参加する女性は、子どもを持つことができない(例えば、閉経後、卵管結紮、子宮摘出)、または禁欲を継続する(性行為を行わない)意思がある、または2重バリア避妊の有効な方法を用いる(相手がコンドームを用い、かつ、女性がペッサリー、避妊用スポンジ、殺精薬、またはIUDを用いる)意思がある、またはホルモン避妊薬(経口、皮下挿入、パッチ、または注射)を用いる意思がある。
【0094】
9)当該試験に参加する女性は、授乳中ではない。
【0095】
試験用生成物として、実施例1の方法に従って調製された50mg/mlのP5Pの静脈内注射可能な溶液(CanAmバイオリサーチ社(CanAm BioResearch Inc.)カナダ、ロット番号LP1459、製造日12/03)を用いた。単回の1、5、10、または20mg/kgの用量を、静脈内注射で与えた。治療継続期間は単回投与分であった。
【0096】
評価基準
一次エンドポイント―安全性パラメータ―当該試験において調べられた安全性パラメータは、生命徴候測定(血圧、脈拍数)、ECG測定(投与の1、2、および12時間後)、血小板機能試験、試験期間内に被験者に生じた有害事象の重度および因果関係、ならびに臨床検査(臨床化学、血液学、尿分析)であった。
【0097】
二次エンドポイント―薬物動態(PK)パラメータ−ピリドキサール−5'−リン酸(P5P)の血漿中濃度を、有効と認められた分析方法で測定した。これらの濃度レベルに基づいて、AUCt、AUCinf、Cmax、Tmax、Kel、Thalf、Vd、CL、MRT、およびFを求めた。
【0098】
統計方法―求められた薬物動態パラメータに対する治療により、記述統計を計算した。
【0099】
検討および結論
総合的に、臨床試験において確立されたP5Pの注射可能な溶液の安全性プロファイルにより、当該生成物は、単回投与の場合は20mg/kgの用量まで、深刻または永続的な治療に関連する作用なしに忍容性が良好であることが示された。当該試験において観察されるP5Pの一般的な副作用には、悪心、嘔吐、および胃の不調があった。有害事象のいずれも、被験者の安全性または試験結果の完全性に有意な影響を与えなかった。
【0100】
試験結果から生成された有害事象プロファイルによると、P5Pは、20mg/kgの用量まで安全かつ忍容性が良好である。
【0101】
P5Pの投与前濃度は非常に低く、対応するCmax値の1%未満であった(0.01%〜0.44%の範囲)。ピリドキサール(PAL)の投与前濃度はわずかに高く、Cmax値の0.06%〜2.47%であった。
【0102】
1人の被験者(被験者23)のみが、4−ピリドキシン酸(PA)のゼロでない投与前レベルを示し、当該レベルはCmaxパラメータの0.06%であった。なお、必要に応じ、ベースライン(投与前レベルの平均値)を、データの薬物動態分析前に、測定された分析対象レベルから差し引いた。
【0103】
初期の急速上昇の後、P5P濃度−時間プロファイルは緩やかに低下した。これは主に、分布相の後により緩やかな消失相が続くことに起因する(図1〜図3)。終了期線形相上に3つのデータ点のみをとり、見かけの消失半減期を求めるのに用いた。サンプリングまでの24時間の時間は、P5Pの実際の消失相を取り込むのに十分に長くはなかった可能性がある。求められた値は、全用量にわたり5〜6時間で一致していた(表4)。
【0104】
【表4】
分布が主となる相は、2つの代謝物質ピリドキサール(PAL)および4−ピリドキシン酸(PA)では明らかには観察されなかった。見かけの消失半減期は、PAL(表5)では約4時間であり、PA(表6)では約2〜3.5時間であった。
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
第4の注入開始後、PALは、約0.30〜0.70時間で最高血漿中レベルに到達し(図4〜図6)、PAは、約0.70〜1.0時間で最高濃度となった(図7〜図9)。これらの値は、続いて起こるこれらの代謝物質の形成と一致する。
【0107】
変化のないP5Pの尿中排泄は、ごく僅かである。投与された用量の0.5%未満が、尿中にP5Pとして見受けられた(表10)。同様に、全体用量の約2〜3%という非常に少ない量が、尿中にPALとして排泄された(表10)。
【0108】
PAは、尿に最も大量に見られた。24時間の間に、与えられた用量の30%〜52%が、尿中に4−ピリドキシン酸として排泄された。
【0109】
薬物動態パラメータ値と用量との関係の分析結果を、以下の表7にまとめる。
【0110】
【表7】
【0111】
【表8】
血漿中AUCinfおよびCmaxのパラメータはいずれも、すべての分析対象において用量に依存する。線形回帰の決定係数(R2)は非常に高く、投与係数(b1)の求められた値は有意にゼロと異なる。
【0112】
b1の95%信頼区間(CI)が1を含むことから、血漿中P5PのCmaxパラメータについて、用量比例性が明らかである。血漿の場合、P5PのAUCinfは比例性から僅かにずれているように見える。0.85〜0.96である、b1の95%CIは、1の値を含まない。しかし、ずれは非常に小さく、実験誤差により説明され得る。このずれは、クリアランスCLで観察される用量依存性の理由であり得る。係数b1は、有意にゼロと異なるが、決定係数は0.26048と非常に低く、b1の値も0.10と非常に低い。
【0113】
代謝物質PALおよびPAの場合、AUCinfおよびCmaxのパラメータはいずれも、用量から予期されるよりも高くなることが分かる。係数b1の95%信頼区間は、1を超えた値を維持する。このずれは、PALの分析対象ではより顕著になる。
【0114】
見かけの消失半減期(Thalf)および平均滞留時間(MRT)は、3つの分析対象全てにおいて、用量に依存していない。投与係数(b1)は、有意にゼロと異ならないため、1mg/kg〜20mg/kgの用量範囲において消失半減期および平均滞留時間は一定となると結論付けられる。
【0115】
実施例4―4日間にわたる10mg/kgのピリドキサール5'−リン酸(P5P)の単回静脈内投与における生物学的利用能および有害事象の発生率
分析されるデータセット―6人の健康な成人の非喫煙者に、連続する4日間にわたって、10mg/kbの単一の日用量のP5Pを静脈内投与し、試験を完了した。試験プロトコルに従って、試験を完了した全被験者からのデータを、薬物動態分析および統計分析に用いた。
【0116】
被験者に関する統計―年齢(歳)は、平均が33±10であり、範囲が19〜49であり、中央値が32である。身長(cm)は、平均が168.7±4.8であり、範囲が163.0〜175.5であり、中央値が68.75である。体重(kg)は、平均が70.9±10.0であり、範囲が56-0〜83.2であり、中央値が68.75である。BMI(kg/m2)は、平均が24.9±3.0であり、範囲が20.6〜29.3であり、中央値が25である。
【0117】
分析方法―血漿および尿試料を分析に用いた。P5P、PAL、およびPAレベルを、HPLC/FLDによって得た。定量化レベルは、血漿では5ng/mL、尿では100ng/mLであった。試料分析の検量線範囲は、血漿では5ng/mL〜5000ng/mL、尿では100ng/mL〜50,000ng/mLであった。
【0118】
安全性に関する方法―当該試験において調べられた安全性パラメータは、有害事象、生命徴候測定、ECG、理学的検査、および標準的な臨床検査による評価であった。
【0119】
治療遵守の測定
被験者は直接観察下で投与を受け、被験者識別は確認を受け、予め分配された薬物との照合が行われたため、治療遵守は100%であると測定された。さらに、被験者は、プラセボ注射の少なくとも10時間前(0日目)から4回目の投与の24.0時間後の採血(5日目)まで、SFBCアナファーム臨床調査施設(SFBC Anapharm Clinical Research Facility)に留められた。
【0120】
統計方法
各被験者のP5P、PAL、およびPAの血漿中濃度データ、サンプリング時間、ならびに治療日を、BRI生物薬学リサーチ社(BRI Biopharmaceutical Research Inc.)からSFBC An.apbam1の統計部へと、電子的に送信した。データを、ハードコピーと照合した。
【0121】
サンプリング中の時間のずれは、以下のように扱った。全てのサンプリング時間に対して、予定されたサンプリング時間と実際のサンプリング時間との間の差が1分未満の場合、許容し得るとした。差がこの時間制限を超えた場合、時間のずれに関わらず常にゼロ(0.000)と報告される投与前の試料を除いて、実際のサンプリング時間(3桁に四捨五入したもの)を用いて薬物動態パラメータを計算した。予定されたサンプリング時間を、報告の統計部分における濃度表およびグラフに示した。
【0122】
入手不可能な試料は、濃度表においてNS(No Sample、試料なし)と記録した。これらの試料は、薬物動態分析および統計分析では、存在しないものとして扱った。
【0123】
SFBCアナファームにおいて、薬物動態分析(非コンパートメント型およびコンパートメント型)を行った。薬物動態パラメータは、Bioequiv(商品名リリース3.40)またはWinNonLin(商品名リリース4.0.1)を用いて計算した。Bioequivは、SFBCアナファームにおいて生物学的同等性試験のために開発および試験されてきた独自のソフトウェアである。当該ソフトウェアは、FDA、HPFB、およびBMEAガイダンスに従って、薬物動態パラメータ分析および統計の分析の非コンパートメント型分析を行う(SASリリース6.12による)。
【0124】
各サンプリング時間および治療におけるP5P(ベースライン補正後および未補正の両方)、PAL、ならびにPAの血漿中濃度について、平均、標準偏差(SD)、変動係数(CV(%))、ならびに範囲(最低および最高)を計算した。
【0125】
非コンパートメント型薬物動態分析において、AUC0-t、(ng・h/mL)、AUC0-τ(ng・h/mL)、AUC0-inf(ng・h/mL)、Cmax(ng/mL)、Cmin(ng/mL)、Cavg(ng/mL)、Fl(%)、Ae0-t(ng)、AUCt/inf(%)、Tmax(h)、T1/2 el(h)、Kel(h-1)、TLIN(h)、LQCT(h)、CLT(L/h)、CLR(L/h)、Vβ(L)、MRT(h)、および蓄積率について、平均、SD、CV(%)、範囲(最低および最高)、中央値、ならびに四分位範囲を計算した。これらの薬物動態パラメータの計算について以下に説明する。
【0126】
最高観察濃度、最低観察濃度、平均濃度、および観察ピーク濃度の時間
各被験者および各分析対象について、最高観察濃度Cmaxおよび当該ピーク濃度に到達する時間Tmaxを得た。4日目のデータでは、各被験者および各分析対象について最低観察濃度Cminを得、CavgをAUC0-τ/τにより計算した。
【0127】
変動率―4日目のデータでは、1回の投与後のピークを通る変動率(Fl(%))を、100×([Cmax−Cmin]/Cavg)により計算した。
【0128】
半減期および消失速度定数−消失速度定数(Kel)を計算するために、血漿中濃度値(y)の自然対数(Ln)対時間(x)に対して回帰分析を行った。計算は、対数線形消失相が開始した時点(TLIN)から定量限度を超える最後の濃度が現れた時点(LQCT)までの間行った。Kelは(−1)を乗算した勾配とされ、見かけの半減期(T1/2 el)は(ln2)/Kelとされた。
【0129】
TLINおよびLQCT―各被験者および各治療について、ln−線形Kelの計算を開始する時点TLIN、およびKelを求めるのに用いられる最後の定量化可能な濃度のサンプリング時間LQCTが、(SFBCアナファームの標準的な操作手順に従って)科学者によって得られた。終了期消失相中の少なくとも4つのゼロでない観察値を用いて、Kelを計算した。入手可能な観察値が4つ未満の場合、少なくとも3つの観察値を用いた。
【0130】
濃度−時間曲線下面積―時間0.000hから最後のゼロでない濃度まで、線形台形則を用いて、AUC0-tを計算した。
【0131】
時間0.000hから24.0hまで、線形台形則を用いて、AUC0-τを計算した。
【0132】
AUC0-infを、AUC0-t+Ct/Kelにより計算した。
【0133】
式中、Ctは、治療に対して最後に観察されたゼロでない濃度であり、AUC0-tは、分析対象の時間0から最後のゼロでない濃度の時間までのAUCであり、Kelは、消失速度定数である。
【0134】
AUCt/infは、AUC0-t(またはAUC0-τ)のAUC0-infに対する割合として計算される。
【0135】
全身および腎クリアランス―P5Pに対する全身クリアランスを求め、用量/AUC0-infにより計算した。全分析対象に対する腎クリアランスを求め、Ae0-t/AUC0-infにより計算した。式中、Ae0-tは、0.000hから24.0hまでの累積尿中排泄である。
【0136】
分布量−終了期相(Vβ)に基づく分布量を、P5Pについては用量/(Kel×AUC0-inf)により計算し、PALおよびPAについてはAe0-t/(Kel×AUC0-inf)により計算した。4日目のデータでは、AUC0-infの代わりにAUC0-τを用いた。
【0137】
平均滞留時間―平均滞留時間を、AUMC/AUC0-infにより計算した。
【0138】
蓄積率―4日目のデータでは、理論上の蓄積率(試験した投与後の時間を用い、用量−線形動態を推測する)を、1/[1−e(-Kel×τ)]により計算した。
【0139】
統計の分析―全分析対象について、AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxのln変換データに対する分散分析を行った。全てのANOVAは、SAS(Windows(登録商標)用リリース6.12)一般線形モデル(GLM)プロシージャで行った。モデルには、被験者および治療日が含まれた。全ての平方和(タイプI、II、III、およびIV)が報告された。被験者および日毎の作用を、滞留平均二乗誤差と比較分析した。確率値(P)を、タイプIIIの平方和から得た。全分析において、「F」に関する確率が0.050未満の場合、作用が統計的に有意であるとした。ln変換したAUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxデータの対の比較に基づいて、式「e(X-Y)×100」により計算された最小二乗平均の割合、およびln変換AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxの90%幾何学的信頼区間を得た。最終的に、被験者内CVを得た。
【0140】
薬物動態および統計問題の分析
非コンパートメント型薬物動態分析
当該試験における一次非コンパートメント型薬物動態パラメータは、AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxであり、二次薬物動態パラメータは、AUCt/inf、Tmax、Kel、T1/2 el、(P5Pに対する)CLT、CLR、Vβ、MRT、およびAe0-tであった。4日目のデータでは、Cmin、Cavg、Fl(%)、AUC0-τ、および蓄積率のパラメータも計算した。
【0141】
1日目および4日目における薬物動態分析のための血液試料を、各日の投与前、ならびに投与の0.083、0.167.0.250、0.500、0.750、1.00、1.50、2.00、3.00、4.00、6.00、8.00、12.0、および24.0時間後に収集した。尿試料を、1日目および4日目において、投与の0.000〜4.00、4.00〜8.00、8.00〜12.0、および12.0〜24.0時間後の8回収集した。
【0142】
各サンプリング時間において各被験者で測定された血漿中濃度を、治療日に従い、ベースライン補正後P5Pについて表9および表10、未補正P5Pについて表11および表12、PALについて表13および表14、ならびにPAについて表14および表15に示す。未変換およびln変換のサンプリング期間にわたる平均血漿中レベルのグラフを、ベースライン補正後P5Pについて図10および図11、未補正P5Pについて図12および図13、PALについて図14および図15、ならびにPAについて図16および図17に示す。ln変換データの図におけるラインは、Kelを求めるのに用いる回帰直線である。
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
【表11】
【0146】
【表12】
【0147】
【表13】
【0148】
【表14】
【0149】
【表15】
【0150】
【表16】
治療日に従った各被験者の非コンパートメント型薬物動態パラメータの計算値を、補正後および未補正のP5P、PAL、およびPAについて表10、表12、表14、および表16に示す。
【0151】
一次パラメータ
各被験者および分析対象について、濃度−時間曲線下面積(0−t時間)を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9および表10に示す。AUC0-tの平均値(%CV)は、1日目では277978.56ng・h/mL(19.72%)であり、4日目では302742.00ng・h/mL(28.39%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11および表12に示す。AUC0-tの平均値(%CV)は、1日目では278624.79ng・h/mL(19.85%)であり、4日目では303393.72ng・h/mL(28.51%)であった。PALの結果を、表11および表12に示す。AUC0-tの平均値(%CV)は、1日目では22292.93ng・h/mL(15.31%)であり、4日目では29682.94ng・h/mL(16.92%)であった。PAの結果を、表11および表12に示す。AUC0-tの平均値(%CV)は、1日目では20736.28ng・h/mL(17.29%)であり、4日目では20704.80ng・h/mL(17.94%)であった。ln変換AUC0-tデータに対して行われたANOVAの結果を、P5P(ベースライン補正後)、P5P(未補正)、PAL、およびPAのそれぞれについて表710、表12、表14、および16に示す。ANOVAによると、P5P(ベースライン補正後および未補正)ならびにPAについて、当該パラメータに関して4日目と1日目との間に統計的に有意な差は何ら検出されなかった。ANOVAによると、PALについて、当該パラメータに関して4日目と1日目との間に統計的に有意な差が検出された。P5P(ベースライン補正後)、P5P(未補正)、PAL、およびPAのそれぞれについて、最小二乗平均による割合、90%幾何学的信頼区間、および被験者内CVを得た。その結果を表17にまとめる。
【0152】
【表17】
各被験者および分析対象について、濃度−時間曲線下面積(0−無限)を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。AUC0-infの平均値(%CV)は、1日目では283108.04ng・h/mL(20.70%)であり、4日目では311764.84ng・h/mL(29.09%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。AUC0-infの平均値(%CV)は、1日目では284071.57ng・h/mL(20.91%)であり、4日目では312753.76ng・h/mL(29.27%)であった。PALの結果を、表13に示す。AUC0-infの平均値(%CV)は、1日目では22444.06ng・h/mL(15.13%)であり、4日目では30077.45ng・h/mL(16.66%)であった。PAの結果を、表15に示す。AUC0-infの平均値(%CV)は、1日目では21219.58ng・h/mL(17.37%)であり、4日目では21097.95ng・h/mL(17.13%)であった。
【0153】
ANOVAによると、P5P(ベースライン補正後および未補正)ならびにPAについて、当該パラメータに関して4日目と1日目との間に統計的に有意な差は何ら検出されなかった。ANOVAによると、PALについて、当該パラメータに関して4日目と1日目との間に統計的に有意な差が検出された。P5P(ベースライン補正後)、P5P(未補正)、PAL、およびPAのそれぞれについて、最小二乗平均による割合、90%幾何学的信頼区間、および被験者内CVを得た。その結果を表18にまとめる。
【0154】
【表18】
各被験者および分析対象について、ピークすなわち最高血漿中濃度を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。Cmaxの平均値(%CV)は、1日目では190536ng/mL(14.69%)であり、4日目では213392ng/mL(21.92%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Cmaxの平均値(%CV)は、1日目では190564ng/mL(14.69%)であり、4日目では213419ng/mL(21.92%)であった。PALの結果を、表13に示す。Cmaxの平均値(%CV)は、1日目では7629ng/mL(79.63%)であり、4日目では6902ng/mL(42.54%)であった。PAの結果を、表15に示す。Cmaxの平均値(%CV)は、1日目では4362ng/mL(18.27%)であり、4日目では4238ng/mL(18.20%)であった。ANOVAによると、全分析対象について、当該パラメータに関して治療間に統計的に有意な差は何ら検出されなかった。P5P(ベースライン補正後)、P5P(未補正)、PAL、およびPAのそれぞれについて、最小二乗平均による割合、90%幾何学的信頼区間、および被験者内CVを得た。その結果を表19にまとめる。
【0155】
【表19】
1日目および4日目に共通する二次パラメータ
各被験者および各分析対象について、AUC0-tのAUC0-infに対する割合(%)を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。AUCt/infの平均値(%CV)は、1日目では98.33%(0.96%)であり、4日目では97.23%(1.05%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。AUCt/infの平均値(%CV)は、1日目では98.24%(1.03%)であり、4日目では97.14%(1.07%)であった。PALの結果を、表13に示す。AUCt/infの平均値(%CV)は、1日目では99.31%(0.41%)であり、4日目では98.66%(0.89%)であった。PAの結果を、表15に示す。AUCt/infの平均値(%CV)は、1日目では97.73%(1.24%)であり、4日目では98.01%(1.45%)であった。全分析対象について1日目および4日目の両方で平均AUCt/infが80%を超えている場合、サンプリング継続期間が十分であることを意味していた。
【0156】
各被験者および分析対象について、尿中に排泄された全体量(0−t時間)を計算した(P5Pベースライン補正後データは除く)。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Ae0-tの平均値(%CV)は、1日目では848625ng(72.13%)であり、4日目では558650ng(74.20%)であった。PALの結果を、表13に示す。Ae0-tの平均値(%CV)は、1日目では18583712ng(37.13%)であり、4日目では21011635ng(21.38%)であった。PAの結果を、表15に示す。Ae0-tの平均値(%CV)は、1日目では172950596ng(38.45%)であり、4日目では225885311ng(20.95%)であった。
【0157】
各被験者および分析対象について、ピーク濃度に到達する時間を得た。P5P(ベースライン補正後および未補正)の結果を、それぞれ表6および表8にまとめる。Tmaxの平均値(%CV)は、1日目では0.089h(45.25%)であり、4日目では0.081h(41.92%)であった。PALの結果を、表13にまとめる。Tmaxの平均値(%CV)は、1日目では0.525h(19.45%)であり、4日目では0.691h(27.22%)であった。PAの結果を、表15にまとめる。Tmaxの平均値(%CV)は、1日目では0.611h(35.24%)であり、4日目では0.528h(19.13%)であった。
【0158】
各被験者および分析対象について、消失速度定数を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。Kelの平均値(%CV)は、1日目では0.1381h-1(16.38%)であり、4日目では0.1183h-1(14.41%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11およびに示す。Kelの平均値(%CV)は、1日目では0.1360h-1(16.60%)であり、4日目では0.1170h-1(14.35%)であった。PALの結果を、表13に示す。Kelの平均値(%CV)は、1日目では0.2064h-1(12.70%)であり、4日目では0.1775h-1(13.27%)であった。PAの結果を、表15に示す。Kelの平均値(%CV)は、1日目では0.3092h-1(17.01%)であり、4日目では0.2547h-1(20.59%)であった。
【0159】
各被験者および治療日について、見かけの半減期を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。T1/2 elの平均値(%CV)は、1日目では5.14h(17.65%)であり、4日目では5.96h(14.33%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。T1/2 elの平均値(%CV)は、1日目では5.22h(18.00%)であり、4日目では6.02h(14.14%)であった。PALの結果を、表13に示す。T1/2 elの平均値(%CV)は、1日目では3.40h(12.11%)であり、4日目では3.96h(13.56%)であった。PAの結果を、表15に示す。T1/2 elの平均値(%CV)は、1日目では2.30h(19.38%)であり、4日目では2.83h(23.55%)であった。
【0160】
各被験者について、P5P(ベースライン補正後および未補正)に対する全身クリアランスを計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。CLTの平均値(%CV)は、1日目では2.55L/h(14.75%)であり、4日目では2.42L/h(15.82%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。CLTの平均値(%CV)は、1日目では2.55L/h(14.92%)であり、4日目では2.42L/h(15.92%)であった。
【0161】
各被験者および分析対象について、腎クリアランスを計算した(ベースライン補正後P5Pは除く)。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。CLRの平均値(%CV)は、1日目では0.00279L/h(63.53%)であり、4日目では0.00174L/h(44.71%)であった。PALの結果を、表13に示す。CLRの平均値(%CV)は、1日目では0.85952L/h(43.20%)であり、4日目では0.72392L/h(27.23%)であった。PAの結果を、表15に示す。CLRの平均値(%CV)は、1日目では8.61246L/h(49.20%)であり、4日目では10.75339L/h(20.36%)であった。
【0162】
各被験者および分析対象に基づく、終了期相における分布量を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表6に示す。Vβの平均値(%CV)は、1日目では18.59L(10.05%)であり、4日目では20.75L(19.65%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Vβの平均値(%CV)は、1日目では18.82L(10.03%)であり、4日目では20.92L(19.36%)であった。PALの結果を、表10に示す。Vβの平均値(%CV)は、1日目では4.35L(50.05%)であり、4日目では4.21L(38.82%)であった。PAの結果を、表15に示す。Vβの平均値(%CV)は、1日目では28.61L(49.49%)であり、4日目では44.45L(33.63%)であった。
【0163】
各被験者および分析対象について、平均滞留時間を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。MRTの平均値(%CV)は、1日目では3.40h(20.68%)であり、4日目では3.99h(16.84%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。MRTの平均値(%CV)は、1日目では3.45h(21.20%)であり、4日目では4.03h(16.93%)であった。PALの結果を、表13に示す。MRTの平均値(%CV)は、1日目では4.06h(17.24%)であり、4日目では4.74h(20.29%)であった。PAの結果を、表15に示す。MRTの平均値(%CV)は、1日目では3.85h(15.94%)であり、4日目では4.24h(21.69%)であった。
【0164】
4日目に特定した二次パラメータ
4日目に、各被験者および分析対象について、最低濃度すなわち通過濃度を得た。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表3に示す。Cminの平均値(%CV)は、946ng/mL(61.50%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Cminの平均値(%CV)は、974ng/mL(61.89%)であった。PALの結果を、表13に示す。Cminの平均値(%CV)は、56.8ng/mL(49.95%)であった。PAの結果を、表15に示す。Cminの平均値(%CV)は、12.9ng/mL(194.30%)であった。
【0165】
4日目に、各被験者および分析対象について、平均濃度を得た。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。Cavgの平均値(%CV)は、12614.42ng/mL(28.40%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Cavgの平均値(%CV)は、12641.59ng/mL(28.52%)であった。PALの結果を、表13に示す。Cavgの平均値(%CV)は、1236.81ng/mL(16.92%)であった。PAの結果を、表15に示す。Cavgの平均値(%CV)は、885.04ng/mL(16.25%)であった。
【0166】
4日目に、各被験者および分析対象について、変動率を得た。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。Fl(%)の平均値(%CV)は、1734.69%(21.82%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Fl(%)の平均値(%CV)は、1731.62%(21.88%)であった。PALの結果を、表13に示す。Fl(%)の平均値(%CV)は、537.81%(28.22%)であった。PAの結果を、表15に示す。Fl(%)の平均値(%CV)は、482.53%(17.05%)であった。
【0167】
4日目に、各被験者および分析対象について、濃度−時間曲線下面積(0−τ)を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。AUC0-τの平均値(%CV)は、302742.00ng・h/mL(28.39%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。AUC0-τの平均値(%CV)は、303393.72ng・h/mL(28.51%)であった。PALの結果を、表13に示す。AUC0-τの平均値(%CV)は、29682.94ng・h/mL(16.92%)であった。PAの結果を、表15に示す。AUC0-τの平均値(%CV)は、21240.85ng・h/mL(16.25%)であった。
【0168】
4日目に、各被験者および分析対象について、理論上の蓄積率を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。蓄積率の平均値(%CV)は、1.07(2.62%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。蓄積率の平均値(%CV)は、1.07(2.63%)であった。PALの結果を、表13に示す。蓄積率の平均値(%CV)は、1.02(0.91%)であった。PAの結果を、表15に示す。蓄積率の平均値(%CV)は、1.00(0.58%)であった。
【0169】
非コンパートメント型薬物動態および統計の結論
ANOVAによると、P5P(ベースライン補正後および未補正の両方)ならびにPAについて、ln変換AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxに関して治療日の間に統計的に有意な差は何ら検出されなかった。
【0170】
ANOVAによると、PALについては、ln変換AUC0-tおよびAUC0-infに関して治療日の間に統計的に有意な差が検出されたが、Cmaxに関しては検出されなかった。
【0171】
全分析対象について平均AUCt/infが80%を超える場合、サンプリング継続期間が薬物動態の特徴を良く捕らえるのに十分であることを意味していた。AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxの被験者内CVは、それぞれ、P5P(ベースライン補正後)では7.56%、7.14%、および9.84%であり、P5P(未補正)では7.54%、7.10%、および9.84%であり、PALでは3.12%、3.18%、および21.10%であり、PAでは3.39%、4.20%、および2.71%であった。
【0172】
ln変換AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxの基準品に対する、試験品の最小二乗平均の割合の90%幾何学的信頼区間の結果は、P5P(ベースライン補正後および未補正の両方)ならびにPAでは80.00%〜125.00%の範囲であったが、PALでは当該範囲外であった。これらの結果から、P5PおよびPAの場合、1日1回投与の投薬計画で、蓄積が生じにくく、(P5Pの)吸収または(PAの)生体内変化の速度および程度における変化が有意とはなり得ないことが分かる。PALの場合、理論上の蓄積率は1に近いが、個々の濃度−時間プロファイルによると、P5Pの1日1回投与では4日後に蓄積が生じることが明らかである。
【0173】
安全性評価
当該試験中、全体で40の有害事象が6人の被験者に生じた。注射した部位の炎症が、3人の被験者(被験者の50.0%)より報告された。しかし、臨床試験分担医師によると、これらの有害事象は処置に関連するものと判断され、試験薬物とは無関係なものとして記録された。その他の関連する可能性のある、試験中に報告された有害事象の内、悪心、眩暈(眩暈感および眩暈)、知覚異常(親指[右手]の先にピンや針のような感触および背中や首に刺痛を感じ、寒気を感じる[右手])、ならびに尿中白血球という有害事象が、1人より多い被験者より報告された。ヘモグロビンの低下、不安感、カテーテル部位(右手)の傷、尿中赤血球、大腿の筋痙攣、血液中の好中球の低下、痛み(両脚)、背中下部の痛み、背中および首の痛み、胸部両側の丘疹、口腔内の唾液増加、身体の発汗、失神、口腔内の味覚異常、ならびに暑さを感じることという、その他の有害事象が、1人のみの被験者より報告された。
【0174】
悪心、眩暈(眩暈感および眩暈)、ならびに口腔内の味覚異常は、予期される有害事象であった。眩暈(眩暈感および眩暈)は、2人の被験者(被験者の33.3%)より報告された。悪心は、3人の被験者(被験者の50.0%)より報告された。口腔内の味覚異常は、1人の被験者(16.7%)より報告された。最高重度は、3人の被験者(被験者番号01〜04)では軽度であり、1人の被験者(被験者番号04)では中度であった。当該試験中、下痢や嘔吐は報告されなかった。
【0175】
尿中の白血球(WBC)の上昇(膿尿症)という臨床的に重大な臨床検査の結果が、2人の被験者に観察された。1人の被験者(#03)は、スクリーニングおよび−1〜3日目の時点で、白血球エステラーゼに対して陰性であった(白血球エステラーゼが陰性であったため、顕微鏡による評価はその際行わなかった)。当該被験者は、4日目に、白血球エステラーゼに対して+、WBCに対して3〜5/HPFを示した。5日目に、白血球エステラーゼは+のままであったが、WBCは10/20/HPFへと上昇した。約11日後に行われた追跡調査では、正常な結果が得られた。別の被験者(#06)は、スクリーニングの時点で、白血球エステラーゼに対して極微量の値、WBCに対して3〜5/HPFを示した。1日目に、白血球エステラーゼに対して+、WBCに対して0〜2/HPFを示した。2日目に、白血球エステラーゼに対して+、WBCに対して陰性を示した。しかし、−1および3日目では、白血球エステラーゼの結果は陰性であった。当該被験者は、4日目に、白血球エステラーゼに対して++、WBCに対して10〜20/HPFを示した。5日目に、白血球エステラーゼは+へと低下し、WBCは5〜10/HPFへと低下した。
【0176】
結論
当該試験中、深刻な、重度の、または重大な有害事象は何ら報告されなかった。本研究の臨床部分の結論として、試験後臨床検査、理学的検査、生命徴候測定、およびECGの結果により、被験者の健康状態に有意な差がないことが確認された。総合的に、臨床実験において確立された当該製剤の安全性プロファイルにより、当該生成物は、深刻または永続的な治療に関連する作用なしに忍容性が良好であることが示された。
【0177】
ln変換AUC0-t>AUC0-inf、およびCmaxの基準品に対する、試験品の最小二乗平均の割合の90%幾何学的信頼区間の結果は、P5P(ベースライン補正後および未補正の両方)ならびにPAでは80.00%〜125.00%の範囲であったが、PALでは当該範囲外であった。これらの結果から、P5PおよびPAの場合、1日1回投与の投薬計画で、蓄積が生じにくく、(P5Pの)吸収または(PAの)生体内変化の速度および程度における変化が有意とはなり得ないことが分かる。PALの場合、理論上の蓄積率は1に近いが、個々の濃度−時間プロファイルによると、P5Pの1日1回投与では4日後に蓄積が生じることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均の実測血漿中ピリドキサール5'−リン酸濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図2】図2は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中ピリドキサール5'−リン酸濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図3】図3は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中ピリドキサール5'−リン酸対数濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図4】図4は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均の実測血漿中ピリドキサール濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図5】図5は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中ピリドキサール濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図6】図6は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中ピリドキサール対数濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図7】図7は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均の実測血漿中4−ピリドキシン酸濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図8】図8は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中4−ピリドキシン酸濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図9】図9は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中4−ピリドキシン酸対数濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図10】図10は、1日目および4日目に測定された、ベースライン補正後血漿中ピリドキサール5'−リン酸平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図11】図11は、1日目および4日目に測定された、ベースライン補正後血漿中ピリドキサール5'−リン酸ln変換平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図12】図12は、1日目および4日目に測定された、未補正血漿中ピリドキサール5'−リン酸平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図13】図13は、1日目および4日目に測定された、未補正血漿中ピリドキサール5'−リン酸ln変換平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図14】図14は、1日目および4日目に測定された、血漿中ピリドキサール平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図15】図15は、1日目および4日目に測定された、血漿中4−ピリドキシン酸ln変換平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図16】図16は、1日目および4日目に測定された、血漿中4−ピリドキシン酸平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図17】図17は、1日目および4日目に測定された、血漿中ピリドキサールln変換平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリドキサール5'−リン酸の製薬剤、特に静脈内投与に適した製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ピリドキサール5'−リン酸(P5P)は、高血圧症、脳血管障害、心血管障害、および糖尿病等の種々の疾患を治療および予防するのに有用である。例えば、米国特許第6,051,587号、第6,417,204号、第6,548,519号、第6,586,414号、第6,605,612号、第6,667,315号、第6,780,997号、第6,677,356号、第6,489,348号、および第6,043,259号を参照のこと。
【0003】
ピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤は、従来技術において公知である。しかし、ピリドキサール5'−リン酸の水溶液は安定性に劣る。また、溶液形態では感光性が高く、粉末形態でも程度は比較的低いものの感光性がある。よって、従来技術に係るピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤では、安定性を向上し貯蔵寿命を延長させる保存剤を含有する必要があった。しかし、このような保存剤は、望ましくない副作用を増加させ、ピリドキサール5'−リン酸の感光性に対処するものではないことが多い。また、このような保存剤は、規制認可における使用に適さないことが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、劣化の影響を受けにくく、保存剤を含有する必要のない、ピリドキサール5'−リン酸の新規な静脈用製剤を提供する。当該静脈用製剤は、向上した薬物動態プロファイルを示す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要約
一局面において、本発明は、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとの凍結滅菌水溶液を凍結乾燥することによって調製されたピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態において、溶液のpHが7.0〜7.3である。
【0007】
本発明の他の実施形態において、凍結乾燥製剤はマンニトールをさらに含有する。
【0008】
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る凍結乾燥製剤から再構成されるピリドキサール5'−リン酸を含有し、静脈内投与に適した滅菌キャリアを用いた注射可能な製剤を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態において、滅菌キャリアは注射用水である。
【0010】
さらなる局面において、本発明は、(a)ピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとを含有し、pHが7.0〜7.3である滅菌液を調製する工程と、(b)溶液を凍結する工程と、(c)凍結溶液を凍結乾燥する工程とを含むピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤の調製プロセスを提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態において、滅菌液はマンニトールをさらに含有する。
【0012】
本発明の他の実施形態において、滅菌液は、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸を含有する。
【0013】
さらなる局面において、本発明は、指示と、別々の容器に、(a)本発明に係るピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤と、(b)静脈内投与に適した滅菌キャリアとを含む本発明に係る注射可能な製剤を調製するのに有用なキットを提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、キットは滅菌キャリアとして注射用水を含む。
【0015】
本発明のさらなる実施形態において、キットは、注射可能な製剤の容器であって、製剤を選択された量および濃度に調製することを容易にするように寸法決めされた容器をさらに含む。
【0016】
さらなる局面において、本発明は、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者への投与に適した注射可能な製剤を調製するための、本発明に係る凍結乾燥製剤の使用を提供する。
【0017】
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者の治療方法を提供する。
【0018】
さらなる局面において、本発明は、有効な量の本発明に係る注射可能な製剤を投与することを含む、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率の低減方法を提供する。
【0019】
さらなる局面において、本発明は、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率を低減するための、本発明に係る注射可能な製剤の使用を提供する。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者の治療方法を提供する。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者への投与に適した注射可能な製剤を調製するための、本発明に係る凍結乾燥製剤の使用を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態において、外科手術は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)である。
【0023】
詳細な説明
本発明は、ピリドキサール5'−リン酸の新規な凍結乾燥した注射可能な製剤、およびその使用を提供する。ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤は、ピリドキサール5'−リン酸を用いる治療の必要がある患者への静脈内投与に適している。本発明の注射可能な製剤は、いかなる重大な副作用もなく向上した薬物動態を有する。本発明の注射可能な製剤の静脈内投与により、ピリドキサール5'−リン酸の持続する血漿中レベルは、従来技術に係る製剤よりも高くなる。
【0024】
ピリドキサール5'−リン酸の安定した静脈用製剤を調製するこれまでの試みでは、毒性の可能性または発癌性の可能性がある保存剤の添加を必要としていた。保存剤がない場合、ピリドキサール5'−リン酸の水溶液は急速に劣化するため、静脈内投与には適さない。本発明者は、いかなる従来の保存剤も添加することを必要としない安定した注射可能な製剤を調製するために再構成可能な、ピリドキサール5'−リン酸の新規な凍結乾燥製剤を見出した。適切なキャリア内で再構成前にマンニトールとともにピリドキサール5'−リン酸を凍結乾燥することによって、ピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤の安定性は、驚くべきことに有意に上昇した。さらに、このように調製した静脈用製剤は、有効成分の薬物動態特性を損なうこともいかなる重大な副作用もなく、向上した安定性を示した。
【0025】
本発明の製剤は、心血管および脳血管合併症の治療に特に有用である。冠動脈バイパス術(CABG)および経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は、北米において最も頻繁に用いられる2大処置法である。手術中、患者には抗血小板および抗血栓療法が施され、虚血性合併症の頻度が低減される。特に、用いられる療法としては、ヘパリン、アブシキシマブ(abciximab)、およびエプチフィバチド(eptifibatide)が挙げられる。これらは、単独または互いに組み合わせての使用が可能である。本発明は、虚血性合併症をさらに低減するためにCABGまたはPCI中に静脈内投与可能なピリドキサール5'−リン酸の製剤を提供する。
【0026】
本発明に係る製剤は、ピリドキサール5'−リン酸の錠剤等の経口用形態を嚥下することが不可能な卒中患者への投与にも適している。また、病院環境において、経口用製剤とは対照的に、ピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤は、ピリドキサール5'−リン酸の経口投与に付随し得る胃の不快感、悪心、嘔吐、および下痢を引き起こすことなく、ピリドキサール5'−リン酸の血漿中レベルを上昇させるという利点を提供する。さらに、静脈用製剤は、数分以内に高い血漿中レベルを実現するが、経口用製剤が同様のレベルに到達するのには数時間を要する場合がある。従って、静脈用製剤は、経口投与が可能または理想的ではない緊急事態(例えば、MIまたは卒中の治療、緊急PCIまたはバイパス)において理想的である。
【0027】
ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤および調製方法
一局面において、本発明は、ピリドキサール5'−リン酸と、水酸化ナトリウムと、必要に応じてマンニトールとの凍結滅菌水溶液を凍結乾燥することによって調製されたピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤を提供する。
【0028】
ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤は、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥した滅菌水溶液を含有する。
【0029】
ここで用いられる「補給濃度」とは、ビタミンまたは代謝物質欠乏症の患者のビタミンまたは代謝物質レベルを通常レベルへと回復するための濃度を意味するものとして定義され、ビタミンまたは代謝物質レベルを通常代謝レベルを超えて上昇させるのに適した濃度を含まない。
【0030】
凍結乾燥製剤は、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩を用いて調製される。ピリドキサール5'−リン酸の一水化物および無水物のいずれもが本発明の薬学的組成物の調製に適している。ピリドキサール5'−リン酸は、これらに限定されないが、クエン酸塩、酒石酸塩、および重硫酸塩塩等の、薬学的に適合可能な対イオンを有する塩の形態で提供され得る。薬学的に適合可能な塩は、これらに限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、および琥珀酸等の各種酸で形成され得る。塩の形態は、対応する遊離塩基の形態よりも、水性溶媒または他のプロトン性溶媒に溶解しやすい。
【0031】
ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤の調製における第1の工程は、ピリドキサール5'−リン酸および水酸化ナトリウムを含有する滅菌液を調製する工程である。
【0032】
好適な実施形態において、滅菌液は、pHが約7.0〜7.3である。当該溶液は、まず、ピリドキサール5'−リン酸および水酸化ナトリウムを適切な量の水に溶解し、pHを調節することによって調製される。
【0033】
ここで用いられる「重量パーセント/重量(%w/w)」という語は、特定の化合物またはキャリアの、当該化合物またはキャリアが一構成要素となる組成物の総重量に対する重量パーセントを意味する。
【0034】
一実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜25%w/w含有する。
【0035】
好適な一実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5’−リン酸を約1〜15%w/w含有する。
【0036】
さらなる好適な実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5’−リン酸を約1〜10%w/w含有する。
【0037】
さらなる好適な実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5’−リン酸を約5%w/w含有する。
【0038】
他の実施形態において、滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.1〜10%w/w含有する。
【0039】
好適な一実施形態において、滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜5%w/w含有する。
【0040】
さらなる好適な実施形態において、滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜3%w/w含有する。
【0041】
さらなる好適な実施形態において、滅菌液は、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w含有する。
【0042】
他の実施形態において、滅菌液は、マンニトールをさらに含んでいてもよい。滅菌液がマンニトールを含有する実施形態において、滅菌液は、まず、ピリドキサール5'−リン酸および水酸化ナトリウムを適切な量の水に溶解し、pHを調節し、次いで、マンニトールをピリドキサール5'−リン酸/水酸化ナトリウム溶液に溶解することによって調製される。結果として得られる溶液は、次いで、フィルター滅菌等によって滅菌される。
【0043】
一実施形態において、滅菌液は、マンニトールを約0.2〜10%w/w含有する。
【0044】
一実施形態において、滅菌液は、マンニトールを約0.5〜5%w/w含有する。
【0045】
好適な一実施形態において、滅菌液は、マンニトールを約3%w/w含有する。
【0046】
より好適な実施形態において、滅菌液は、ピリドキサール5’−リン酸を約5%w/w、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w、およびマンニトールを約2.8%w/w含有する。
【0047】
滅菌液は、次いで、アンプルまたはバイアル等の滅菌プラスチックまたはガラス容器に適切な量に分配してもよい。
【0048】
単一のバイアルに詰められるピリドキサール5'−リン酸の量は、25mg〜1000mg、50〜1000mg、より好ましくは100〜750mgで変動し得る。水酸化ナトリウムおよびマンニトールの量は、ピリドキサール5'−リン酸の量に依存する。本発明の一実施形態において、凍結乾燥製剤の1回分の投薬形態は、ピリドキサール5'−リン酸を約250mg、水酸化ナトリウムを約80.5mg、マンニトールを約150mg、およびWFI(注射用水)を約5.0ml含有する。
【0049】
滅菌液が容器に等分されると、溶液は、−20〜−45℃の温度で凍結される。実質的に凍結された水溶液は、凍結乾燥が開始されるまで、この温度で維持され得る。
【0050】
実質的に凍結された水溶液の凍結乾燥は、例えば、一次乾燥と二次乾燥との両方を含んで実行され得る。一次乾燥は、例えば、凍結された水分および/または他の溶媒の実質的に全てを除去するのに十分な時間、約0.1〜0.5トルの実質的な真空下で、真空および熱を制御しながら加えることによって、昇華により実行され得る。次いで、二次乾燥は、最終的に極微量となった吸着した水分または他の溶媒を可能な限り多く除去するように実質的に同様の真空下で実行されることが好ましく、これによって乾燥ケーキまたは粉体が得られる。
【0051】
一次乾燥が実行される温度は、溶液を実質的または完全に凍結された形態に維持するように、プロセスの最初は−10℃から0℃の範囲とする。当該プロセスが進行し、生成物の温度が所望の貯蔵温度に達するにつれ、一次乾燥段階が完了する。二次乾燥が実行される温度は、吸着した水分および/または他の溶媒を除去するために、25℃から35℃の範囲とする。結果として得られるケーキまたは粉体の水分含有率は、2.5重量%未満であることが好ましい。凍結乾燥が完了すると、この凍結乾燥製剤を含有する滅菌されたプラスチックまたはガラス容器を栓または封止し得る。
【0052】
結果として得られる凍結乾燥製剤は、暗所において2〜8℃の温度で保管する場合、物理的および化学的安定性を示す。
【0053】
ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤および調製方法
他の局面において、本発明は、静脈内投与に適した滅菌キャリアを用いた、本発明に係る凍結乾燥製剤から再構成される、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸を含有する注射可能な製剤を提供する。本発明に係る凍結乾燥製剤を適切な量のWFI(注射用水)中で再構成して、注射可能な製剤を得ることが好ましい。結果として得られる注射可能な製剤は、ボーラス投与に特に適している。好ましくは、注射可能な製剤中のピリドキサール5'−リン酸の濃度は、1〜100mg/ml、5〜75mg/ml、より好ましくは10〜50mg/mlの範囲にある。
【0054】
ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤の調製用キット
さらなる局面において、本発明は、本発明に係る注射可能な製剤を調製するための指示と、別々の容器に、(a)本発明に係るピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤と、(b)静脈内投与に適した滅菌キャリアとを含む注射可能な製剤を調製するのに有用なキットを提供する。好適な一実施形態において、滅菌キャリアはWFIである。好適な他の実施形態において、当該キットは、注射可能な製剤の容器であって、注射可能な製剤を選択された量および濃度に調製することを容易にするように寸法決めされた容器をさらに含む。
【0055】
凍結乾燥製剤および滅菌キャリアは、単回ボーラス注射に適した量に等分可能である。凍結乾燥製剤および滅菌キャリアは、長期投与に適した量に等分可能である。当該キットは、注射用製剤を、さらに測定することなく指定された濃度および量に調製することを容易にするように寸法決めされた容器を含むことが可能である。当該容器は、注射器本体であってもよいし、または、注射器とともに用いられるのに適するものであってもよい。
【0056】
ピリドキサール5'−リン酸の注射可能な製剤の使用
高用量のピリドキサール5'−リン酸の忍容性における限界要因は、悪心および嘔吐に主として特徴付けられる胃腸の不快感である。本発明は、経口投与に付随する胃腸の副作用が最小限の、高用量のピリドキサール5'−リン酸の静脈内投与に適した新規な注射可能な製剤を提供する。本発明に係る注射可能な製剤は、従来技術に係るピリドキサール5'−リン酸の静脈用製剤の安定性の問題を克服する。溶液形態では感光性が高く、粉末形態でも程度は比較的低いものの感光性がある従来技術に係るピリドキサール5'−リン酸製剤と比較して、本発明の注射可能な製剤に含有されるピリドキサール5'−リン酸の水溶液の安定性は向上している。本発明に係る静脈用製剤は、安定性を向上し貯蔵寿命を延長させる保存剤を含有する必要がないか、または、従来技術に係る製剤よりもその必要性が低い。
【0057】
本発明に係る注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者の治療方法が提供される。
【0058】
他の局面において、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率の低減方法であって、有効な量の本発明に係る注射可能な製剤を投与することを含む方法が提供される。
【0059】
ピリドキサール−5'−リン酸の静脈内投与は、外科手術を受け、抗血小板および抗血栓療法を必要とする患者の治療において、虚血性合併症の頻度を低減するのに特に有用である。さらなる局面において、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者の治療方法であって、本発明に係る注射可能な製剤を静脈内投与することを含む方法が提供される。当該外科手術は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)等の心血管に関連する処置であり得る。
【0060】
注射可能な製剤の1回分の用量は、ピリドキサール−5'−リン酸を10〜1000mg、好ましくはピリドキサール−5'−リン酸を50mg〜100mg、100〜1000mg、より好ましくはピリドキサール5'−リン酸を250〜1000mg含有し得る。本発明に係る注射可能な製剤は、例えば単回ボーラス注射等の、1日1回または2回の投与に適している。注射可能な製剤は、長期または継続投与においても用いられ得る。
【0061】
注射可能な製剤は、一般的に、特定の1つまたは複数の症状の治療または予防処置に有効な量が投与される。最適な投薬量は、症状、その重度、合併症等を考慮して、各治療法および症状に対する標準的な方法により決定されることは言うまでもない。さらに、治療上有効な用量とは、このような障害に付随する症候を改善するのに十分である化合物の量を意味する。即座の適用例における当該化合物の製剤化および投与技術は、『レミントン製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)』(マック出版社(Mack Publishing Co.)ペンシルバニア州イーストン、最新版)に見ることができる。哺乳類、特に人間への投与に対しては、有効薬剤の1日あたりの投薬レベルは100〜1000mg、典型的には約200〜500mgとなることが予期される。どのような場合でも、医師は、年齢、体重、および特定の個人の反応により異なる個人に最も適した実際の投薬量を決定することができる。上記の投薬量は、平均的な場合の例である。より多いまたはより少ない投薬量範囲がよい個々の例が存在し得ることは勿論であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
【0062】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明はこれら明確な実施形態に限定されず、種々に変更および修正がなされることが当業者には理解されよう。このような変更および修正は全て添付の特許請求の範囲に含まれるものとされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
実施例
実施例1―ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤(P5P)の調製
表1は、ピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤の1回分の用量の組成を示す。各バイアルは250mgのP5Pを提供する。
【0064】
【表1】
以下の手順は、5Lバッチのピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤を調製するためのものである。バッチサイズは、相対量を比例的に増減することにより、大きくまたは小さくすることが可能である。
【0065】
ガラス器具およびバイアルの準備―ガラスバイアルを、250℃±15℃の温度で洗浄および脱パイロジェンを行った。凍結乾燥製剤の調製に用いる、磁気攪拌棒、ピペット、エルレンマイヤー・フラスコ、フラスコ、フィルター、栓、および封止材を含む全ガラス器具ならびに装置を、121℃±3℃の温度で45分間圧熱滅菌することによって滅菌した。
【0066】
P5P溶液の調製―1バイアルあたりの最終濃度を250mgとするのに必要とされるP5Pの量の計算において、有効薬剤成分の含水率が7.71%であるので、補正係数1.08を用いた。
【0067】
各5Lバッチに対して、4kgのWFI(必要全体量の80%)の溶液の中心に窒素を通気した。処理を通じて磁気攪拌を行いながら、4kgのWFIに水酸化ナトリウムを80.6gおよびP5Pを270.4g溶解して、透明な溶液を得た。続いて、1規定NaOHまたは1規定HClを用いて、溶液のpHをpH7.0〜7.3に調節した。pH調節に続いて、溶液が透明になるまで、磁気攪拌を続けながらP5P/NaOH溶液にマンニトールを150.3mg溶解した。次いで、追加用WFIを加えて、溶液の重量を5.245kg(濃度1.049g/ml)に調節した。次いで、溶液を、0.2μmのミリパック(Milipack)K40ガンマゴールドモデルフィルターに通して滅菌濾過し、フィルターの完全性について調べた。
【0068】
凍結乾燥―投薬量が5.10〜5.30mLの範囲(1バイアルあたりの重量は5.35〜5.56gに等しい)となるように、ディスペンサポンプセットを用いて、クラス100のクリーンルームにおいて無菌状態で、個々のバイアルを充填した。2−メルカプトベンゾチアゾールを含まないブロモブチル栓でバイアルに部分的に栓をした。部分的に栓をしたバイアルのトレイを、4℃に予め冷却した凍結乾燥室へと投入した。凍結乾燥は、冷却温度が−45℃、一次冷却時間が6時間、一次乾燥時間(窒素雰囲気内)が50時間、二次乾燥温度が35℃、二次乾燥時間が48時間というパラメータで行った。
【0069】
凍結乾燥後、付属のプラスチックボタンを有するアルミニウム封止材で、バイアルを圧着した。バイアルを、2〜8℃で保管した。
【0070】
実施例2−静脈内投与されるピリドキサール5'−リン酸(P5P)と経口投与されるものとの生物学的利用能に関する比較
第1相臨床実験を行い、静脈内投与したP5Pの薬物動態と経口投与したP5Pの薬物動態とを比較した。当該試験は、単回投与漸増(single dose escalation)試験であった。
【0071】
静脈内投与として、P5Pをボーラス注射により絶食状態において投与した。1、5、10、および20mg/kgの用量のP5Pについて調べた。6人の被験者が各投薬量グループに割り当てられた。
【0072】
経口投与として、P5Pを単回の非コート錠または単回の腸溶性コート錠として絶食状態において投与した。非コート錠として、5、10、17.5、および25mg/kgの用量のP5Pについて調べた。腸溶性コート錠として、15、30、および60mg/kgの用量のP5Pについて調べた。
【0073】
静脈内投与または経口投与の24時間後に、P5P、ピリドキサール、および4−ピリドキシン酸を血漿および尿の両方において評価した。結果を表2および表3に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
この結果から、P5Pの生物学的利用能は、経口投与よりも静脈内投与された場合の方が高いことが分かる。
【0076】
実施例3―単回静脈内投与における1、5、10、および20mg/kgのピリドキサール5'−リン酸(P5P)の、薬物動態および有害事象の発生率に関する比較
方法―健康な男女被験者の4つのグループに絶食状態で投与されるP5P静脈内注射可能な溶液の、1、5、10、20mg/kgの用量における安全性および忍容性を評価し、P5Pの薬物動態パラメータを求めるために設計された単盲検、単回投与漸増、非ランダム化、4相、非クロスオーバー試験を行った。
【0077】
絶食状態の被験者を、4つのグループのいずれかに割り当てた(1グループあたりの被験者は6人とした)。
【0078】
各相において投与の24時間後に収集された血漿試料から、ピリドキサール−5'−リン酸(P5P)の濃度を測定した。
【0079】
薬物動態パラメータAUCt、AUCinf、Cmax、Tmax、Kel、Thalf、Vd、CL、MRT、およびFを、最終データセットの各被験者のピリドキサール−5'−リン酸(P5P)血漿中レベルに基づいて求めた。
【0080】
生命徴候、ECG、および報告される有害事象を記録することにより、試験を通じて各被験者についての安全性データを収集した。
【0081】
被験者の数(計画された数および分析された数)
グループ1では、6人の被験者に投与した(1mg/kg)。6人の被験者に関して、試験の第1相を完了し、分析を行った。
【0082】
グループ2では、6人の被験者に投与した(5mg/kg)。6人の被験者に関して、試験の第2相を完了し、分析を行った。
【0083】
グループ3では、6人の被験者に投与した(10mg/kg)。6人の被験者に関して、試験の第3相を完了し、分析を行った。
【0084】
グループ4では、6人の被験者に投与した(20mg/kg)。5人の被験者に関して、試験の第4相を完了し、分析を行った。
【0085】
診断および主たる組み入れ基準
被験者は、薬剤投与の21日前以内に、以下の組み入れ基準の全てに合致した。
【0086】
1)健康な非喫煙の男女被験者であり、年齢は18歳以上55歳以下である。
【0087】
2)体重は、被験者の身長および体格に対する適切な体重(1983年版のメトロポリタン生命保険会社(Metropolitan LifeInsurance Company)Scale、統計部)の±10%以内である。
【0088】
3)HIV、B型肝炎表面抗原およびC型肝炎抗体、薬物乱用(マリファナ、アンフェタミン、バルビタール酸塩(barbiturate)、コカイン、オピエート、ベンゾジアゼピン、およびメタドン)に対する尿検査、コチニン(尿検査)、ならびに血清HCG(女性のみ)に対して陰性である。
【0089】
4)重大な疾患または理学的検査において臨床的に重大な所見がない。
【0090】
5)臨床検査値に臨床的に重大な異常がない。
【0091】
6)生命徴候測定および12誘導心電図(ECG)に臨床的に重大な所見がない。
【0092】
7)試験処置を受ける前に、試験の性質について知らされており、書面による同意を受け取っている。
【0093】
8)当該試験に参加する女性は、子どもを持つことができない(例えば、閉経後、卵管結紮、子宮摘出)、または禁欲を継続する(性行為を行わない)意思がある、または2重バリア避妊の有効な方法を用いる(相手がコンドームを用い、かつ、女性がペッサリー、避妊用スポンジ、殺精薬、またはIUDを用いる)意思がある、またはホルモン避妊薬(経口、皮下挿入、パッチ、または注射)を用いる意思がある。
【0094】
9)当該試験に参加する女性は、授乳中ではない。
【0095】
試験用生成物として、実施例1の方法に従って調製された50mg/mlのP5Pの静脈内注射可能な溶液(CanAmバイオリサーチ社(CanAm BioResearch Inc.)カナダ、ロット番号LP1459、製造日12/03)を用いた。単回の1、5、10、または20mg/kgの用量を、静脈内注射で与えた。治療継続期間は単回投与分であった。
【0096】
評価基準
一次エンドポイント―安全性パラメータ―当該試験において調べられた安全性パラメータは、生命徴候測定(血圧、脈拍数)、ECG測定(投与の1、2、および12時間後)、血小板機能試験、試験期間内に被験者に生じた有害事象の重度および因果関係、ならびに臨床検査(臨床化学、血液学、尿分析)であった。
【0097】
二次エンドポイント―薬物動態(PK)パラメータ−ピリドキサール−5'−リン酸(P5P)の血漿中濃度を、有効と認められた分析方法で測定した。これらの濃度レベルに基づいて、AUCt、AUCinf、Cmax、Tmax、Kel、Thalf、Vd、CL、MRT、およびFを求めた。
【0098】
統計方法―求められた薬物動態パラメータに対する治療により、記述統計を計算した。
【0099】
検討および結論
総合的に、臨床試験において確立されたP5Pの注射可能な溶液の安全性プロファイルにより、当該生成物は、単回投与の場合は20mg/kgの用量まで、深刻または永続的な治療に関連する作用なしに忍容性が良好であることが示された。当該試験において観察されるP5Pの一般的な副作用には、悪心、嘔吐、および胃の不調があった。有害事象のいずれも、被験者の安全性または試験結果の完全性に有意な影響を与えなかった。
【0100】
試験結果から生成された有害事象プロファイルによると、P5Pは、20mg/kgの用量まで安全かつ忍容性が良好である。
【0101】
P5Pの投与前濃度は非常に低く、対応するCmax値の1%未満であった(0.01%〜0.44%の範囲)。ピリドキサール(PAL)の投与前濃度はわずかに高く、Cmax値の0.06%〜2.47%であった。
【0102】
1人の被験者(被験者23)のみが、4−ピリドキシン酸(PA)のゼロでない投与前レベルを示し、当該レベルはCmaxパラメータの0.06%であった。なお、必要に応じ、ベースライン(投与前レベルの平均値)を、データの薬物動態分析前に、測定された分析対象レベルから差し引いた。
【0103】
初期の急速上昇の後、P5P濃度−時間プロファイルは緩やかに低下した。これは主に、分布相の後により緩やかな消失相が続くことに起因する(図1〜図3)。終了期線形相上に3つのデータ点のみをとり、見かけの消失半減期を求めるのに用いた。サンプリングまでの24時間の時間は、P5Pの実際の消失相を取り込むのに十分に長くはなかった可能性がある。求められた値は、全用量にわたり5〜6時間で一致していた(表4)。
【0104】
【表4】
分布が主となる相は、2つの代謝物質ピリドキサール(PAL)および4−ピリドキシン酸(PA)では明らかには観察されなかった。見かけの消失半減期は、PAL(表5)では約4時間であり、PA(表6)では約2〜3.5時間であった。
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
第4の注入開始後、PALは、約0.30〜0.70時間で最高血漿中レベルに到達し(図4〜図6)、PAは、約0.70〜1.0時間で最高濃度となった(図7〜図9)。これらの値は、続いて起こるこれらの代謝物質の形成と一致する。
【0107】
変化のないP5Pの尿中排泄は、ごく僅かである。投与された用量の0.5%未満が、尿中にP5Pとして見受けられた(表10)。同様に、全体用量の約2〜3%という非常に少ない量が、尿中にPALとして排泄された(表10)。
【0108】
PAは、尿に最も大量に見られた。24時間の間に、与えられた用量の30%〜52%が、尿中に4−ピリドキシン酸として排泄された。
【0109】
薬物動態パラメータ値と用量との関係の分析結果を、以下の表7にまとめる。
【0110】
【表7】
【0111】
【表8】
血漿中AUCinfおよびCmaxのパラメータはいずれも、すべての分析対象において用量に依存する。線形回帰の決定係数(R2)は非常に高く、投与係数(b1)の求められた値は有意にゼロと異なる。
【0112】
b1の95%信頼区間(CI)が1を含むことから、血漿中P5PのCmaxパラメータについて、用量比例性が明らかである。血漿の場合、P5PのAUCinfは比例性から僅かにずれているように見える。0.85〜0.96である、b1の95%CIは、1の値を含まない。しかし、ずれは非常に小さく、実験誤差により説明され得る。このずれは、クリアランスCLで観察される用量依存性の理由であり得る。係数b1は、有意にゼロと異なるが、決定係数は0.26048と非常に低く、b1の値も0.10と非常に低い。
【0113】
代謝物質PALおよびPAの場合、AUCinfおよびCmaxのパラメータはいずれも、用量から予期されるよりも高くなることが分かる。係数b1の95%信頼区間は、1を超えた値を維持する。このずれは、PALの分析対象ではより顕著になる。
【0114】
見かけの消失半減期(Thalf)および平均滞留時間(MRT)は、3つの分析対象全てにおいて、用量に依存していない。投与係数(b1)は、有意にゼロと異ならないため、1mg/kg〜20mg/kgの用量範囲において消失半減期および平均滞留時間は一定となると結論付けられる。
【0115】
実施例4―4日間にわたる10mg/kgのピリドキサール5'−リン酸(P5P)の単回静脈内投与における生物学的利用能および有害事象の発生率
分析されるデータセット―6人の健康な成人の非喫煙者に、連続する4日間にわたって、10mg/kbの単一の日用量のP5Pを静脈内投与し、試験を完了した。試験プロトコルに従って、試験を完了した全被験者からのデータを、薬物動態分析および統計分析に用いた。
【0116】
被験者に関する統計―年齢(歳)は、平均が33±10であり、範囲が19〜49であり、中央値が32である。身長(cm)は、平均が168.7±4.8であり、範囲が163.0〜175.5であり、中央値が68.75である。体重(kg)は、平均が70.9±10.0であり、範囲が56-0〜83.2であり、中央値が68.75である。BMI(kg/m2)は、平均が24.9±3.0であり、範囲が20.6〜29.3であり、中央値が25である。
【0117】
分析方法―血漿および尿試料を分析に用いた。P5P、PAL、およびPAレベルを、HPLC/FLDによって得た。定量化レベルは、血漿では5ng/mL、尿では100ng/mLであった。試料分析の検量線範囲は、血漿では5ng/mL〜5000ng/mL、尿では100ng/mL〜50,000ng/mLであった。
【0118】
安全性に関する方法―当該試験において調べられた安全性パラメータは、有害事象、生命徴候測定、ECG、理学的検査、および標準的な臨床検査による評価であった。
【0119】
治療遵守の測定
被験者は直接観察下で投与を受け、被験者識別は確認を受け、予め分配された薬物との照合が行われたため、治療遵守は100%であると測定された。さらに、被験者は、プラセボ注射の少なくとも10時間前(0日目)から4回目の投与の24.0時間後の採血(5日目)まで、SFBCアナファーム臨床調査施設(SFBC Anapharm Clinical Research Facility)に留められた。
【0120】
統計方法
各被験者のP5P、PAL、およびPAの血漿中濃度データ、サンプリング時間、ならびに治療日を、BRI生物薬学リサーチ社(BRI Biopharmaceutical Research Inc.)からSFBC An.apbam1の統計部へと、電子的に送信した。データを、ハードコピーと照合した。
【0121】
サンプリング中の時間のずれは、以下のように扱った。全てのサンプリング時間に対して、予定されたサンプリング時間と実際のサンプリング時間との間の差が1分未満の場合、許容し得るとした。差がこの時間制限を超えた場合、時間のずれに関わらず常にゼロ(0.000)と報告される投与前の試料を除いて、実際のサンプリング時間(3桁に四捨五入したもの)を用いて薬物動態パラメータを計算した。予定されたサンプリング時間を、報告の統計部分における濃度表およびグラフに示した。
【0122】
入手不可能な試料は、濃度表においてNS(No Sample、試料なし)と記録した。これらの試料は、薬物動態分析および統計分析では、存在しないものとして扱った。
【0123】
SFBCアナファームにおいて、薬物動態分析(非コンパートメント型およびコンパートメント型)を行った。薬物動態パラメータは、Bioequiv(商品名リリース3.40)またはWinNonLin(商品名リリース4.0.1)を用いて計算した。Bioequivは、SFBCアナファームにおいて生物学的同等性試験のために開発および試験されてきた独自のソフトウェアである。当該ソフトウェアは、FDA、HPFB、およびBMEAガイダンスに従って、薬物動態パラメータ分析および統計の分析の非コンパートメント型分析を行う(SASリリース6.12による)。
【0124】
各サンプリング時間および治療におけるP5P(ベースライン補正後および未補正の両方)、PAL、ならびにPAの血漿中濃度について、平均、標準偏差(SD)、変動係数(CV(%))、ならびに範囲(最低および最高)を計算した。
【0125】
非コンパートメント型薬物動態分析において、AUC0-t、(ng・h/mL)、AUC0-τ(ng・h/mL)、AUC0-inf(ng・h/mL)、Cmax(ng/mL)、Cmin(ng/mL)、Cavg(ng/mL)、Fl(%)、Ae0-t(ng)、AUCt/inf(%)、Tmax(h)、T1/2 el(h)、Kel(h-1)、TLIN(h)、LQCT(h)、CLT(L/h)、CLR(L/h)、Vβ(L)、MRT(h)、および蓄積率について、平均、SD、CV(%)、範囲(最低および最高)、中央値、ならびに四分位範囲を計算した。これらの薬物動態パラメータの計算について以下に説明する。
【0126】
最高観察濃度、最低観察濃度、平均濃度、および観察ピーク濃度の時間
各被験者および各分析対象について、最高観察濃度Cmaxおよび当該ピーク濃度に到達する時間Tmaxを得た。4日目のデータでは、各被験者および各分析対象について最低観察濃度Cminを得、CavgをAUC0-τ/τにより計算した。
【0127】
変動率―4日目のデータでは、1回の投与後のピークを通る変動率(Fl(%))を、100×([Cmax−Cmin]/Cavg)により計算した。
【0128】
半減期および消失速度定数−消失速度定数(Kel)を計算するために、血漿中濃度値(y)の自然対数(Ln)対時間(x)に対して回帰分析を行った。計算は、対数線形消失相が開始した時点(TLIN)から定量限度を超える最後の濃度が現れた時点(LQCT)までの間行った。Kelは(−1)を乗算した勾配とされ、見かけの半減期(T1/2 el)は(ln2)/Kelとされた。
【0129】
TLINおよびLQCT―各被験者および各治療について、ln−線形Kelの計算を開始する時点TLIN、およびKelを求めるのに用いられる最後の定量化可能な濃度のサンプリング時間LQCTが、(SFBCアナファームの標準的な操作手順に従って)科学者によって得られた。終了期消失相中の少なくとも4つのゼロでない観察値を用いて、Kelを計算した。入手可能な観察値が4つ未満の場合、少なくとも3つの観察値を用いた。
【0130】
濃度−時間曲線下面積―時間0.000hから最後のゼロでない濃度まで、線形台形則を用いて、AUC0-tを計算した。
【0131】
時間0.000hから24.0hまで、線形台形則を用いて、AUC0-τを計算した。
【0132】
AUC0-infを、AUC0-t+Ct/Kelにより計算した。
【0133】
式中、Ctは、治療に対して最後に観察されたゼロでない濃度であり、AUC0-tは、分析対象の時間0から最後のゼロでない濃度の時間までのAUCであり、Kelは、消失速度定数である。
【0134】
AUCt/infは、AUC0-t(またはAUC0-τ)のAUC0-infに対する割合として計算される。
【0135】
全身および腎クリアランス―P5Pに対する全身クリアランスを求め、用量/AUC0-infにより計算した。全分析対象に対する腎クリアランスを求め、Ae0-t/AUC0-infにより計算した。式中、Ae0-tは、0.000hから24.0hまでの累積尿中排泄である。
【0136】
分布量−終了期相(Vβ)に基づく分布量を、P5Pについては用量/(Kel×AUC0-inf)により計算し、PALおよびPAについてはAe0-t/(Kel×AUC0-inf)により計算した。4日目のデータでは、AUC0-infの代わりにAUC0-τを用いた。
【0137】
平均滞留時間―平均滞留時間を、AUMC/AUC0-infにより計算した。
【0138】
蓄積率―4日目のデータでは、理論上の蓄積率(試験した投与後の時間を用い、用量−線形動態を推測する)を、1/[1−e(-Kel×τ)]により計算した。
【0139】
統計の分析―全分析対象について、AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxのln変換データに対する分散分析を行った。全てのANOVAは、SAS(Windows(登録商標)用リリース6.12)一般線形モデル(GLM)プロシージャで行った。モデルには、被験者および治療日が含まれた。全ての平方和(タイプI、II、III、およびIV)が報告された。被験者および日毎の作用を、滞留平均二乗誤差と比較分析した。確率値(P)を、タイプIIIの平方和から得た。全分析において、「F」に関する確率が0.050未満の場合、作用が統計的に有意であるとした。ln変換したAUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxデータの対の比較に基づいて、式「e(X-Y)×100」により計算された最小二乗平均の割合、およびln変換AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxの90%幾何学的信頼区間を得た。最終的に、被験者内CVを得た。
【0140】
薬物動態および統計問題の分析
非コンパートメント型薬物動態分析
当該試験における一次非コンパートメント型薬物動態パラメータは、AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxであり、二次薬物動態パラメータは、AUCt/inf、Tmax、Kel、T1/2 el、(P5Pに対する)CLT、CLR、Vβ、MRT、およびAe0-tであった。4日目のデータでは、Cmin、Cavg、Fl(%)、AUC0-τ、および蓄積率のパラメータも計算した。
【0141】
1日目および4日目における薬物動態分析のための血液試料を、各日の投与前、ならびに投与の0.083、0.167.0.250、0.500、0.750、1.00、1.50、2.00、3.00、4.00、6.00、8.00、12.0、および24.0時間後に収集した。尿試料を、1日目および4日目において、投与の0.000〜4.00、4.00〜8.00、8.00〜12.0、および12.0〜24.0時間後の8回収集した。
【0142】
各サンプリング時間において各被験者で測定された血漿中濃度を、治療日に従い、ベースライン補正後P5Pについて表9および表10、未補正P5Pについて表11および表12、PALについて表13および表14、ならびにPAについて表14および表15に示す。未変換およびln変換のサンプリング期間にわたる平均血漿中レベルのグラフを、ベースライン補正後P5Pについて図10および図11、未補正P5Pについて図12および図13、PALについて図14および図15、ならびにPAについて図16および図17に示す。ln変換データの図におけるラインは、Kelを求めるのに用いる回帰直線である。
【0143】
【表9】
【0144】
【表10】
【0145】
【表11】
【0146】
【表12】
【0147】
【表13】
【0148】
【表14】
【0149】
【表15】
【0150】
【表16】
治療日に従った各被験者の非コンパートメント型薬物動態パラメータの計算値を、補正後および未補正のP5P、PAL、およびPAについて表10、表12、表14、および表16に示す。
【0151】
一次パラメータ
各被験者および分析対象について、濃度−時間曲線下面積(0−t時間)を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9および表10に示す。AUC0-tの平均値(%CV)は、1日目では277978.56ng・h/mL(19.72%)であり、4日目では302742.00ng・h/mL(28.39%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11および表12に示す。AUC0-tの平均値(%CV)は、1日目では278624.79ng・h/mL(19.85%)であり、4日目では303393.72ng・h/mL(28.51%)であった。PALの結果を、表11および表12に示す。AUC0-tの平均値(%CV)は、1日目では22292.93ng・h/mL(15.31%)であり、4日目では29682.94ng・h/mL(16.92%)であった。PAの結果を、表11および表12に示す。AUC0-tの平均値(%CV)は、1日目では20736.28ng・h/mL(17.29%)であり、4日目では20704.80ng・h/mL(17.94%)であった。ln変換AUC0-tデータに対して行われたANOVAの結果を、P5P(ベースライン補正後)、P5P(未補正)、PAL、およびPAのそれぞれについて表710、表12、表14、および16に示す。ANOVAによると、P5P(ベースライン補正後および未補正)ならびにPAについて、当該パラメータに関して4日目と1日目との間に統計的に有意な差は何ら検出されなかった。ANOVAによると、PALについて、当該パラメータに関して4日目と1日目との間に統計的に有意な差が検出された。P5P(ベースライン補正後)、P5P(未補正)、PAL、およびPAのそれぞれについて、最小二乗平均による割合、90%幾何学的信頼区間、および被験者内CVを得た。その結果を表17にまとめる。
【0152】
【表17】
各被験者および分析対象について、濃度−時間曲線下面積(0−無限)を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。AUC0-infの平均値(%CV)は、1日目では283108.04ng・h/mL(20.70%)であり、4日目では311764.84ng・h/mL(29.09%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。AUC0-infの平均値(%CV)は、1日目では284071.57ng・h/mL(20.91%)であり、4日目では312753.76ng・h/mL(29.27%)であった。PALの結果を、表13に示す。AUC0-infの平均値(%CV)は、1日目では22444.06ng・h/mL(15.13%)であり、4日目では30077.45ng・h/mL(16.66%)であった。PAの結果を、表15に示す。AUC0-infの平均値(%CV)は、1日目では21219.58ng・h/mL(17.37%)であり、4日目では21097.95ng・h/mL(17.13%)であった。
【0153】
ANOVAによると、P5P(ベースライン補正後および未補正)ならびにPAについて、当該パラメータに関して4日目と1日目との間に統計的に有意な差は何ら検出されなかった。ANOVAによると、PALについて、当該パラメータに関して4日目と1日目との間に統計的に有意な差が検出された。P5P(ベースライン補正後)、P5P(未補正)、PAL、およびPAのそれぞれについて、最小二乗平均による割合、90%幾何学的信頼区間、および被験者内CVを得た。その結果を表18にまとめる。
【0154】
【表18】
各被験者および分析対象について、ピークすなわち最高血漿中濃度を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。Cmaxの平均値(%CV)は、1日目では190536ng/mL(14.69%)であり、4日目では213392ng/mL(21.92%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Cmaxの平均値(%CV)は、1日目では190564ng/mL(14.69%)であり、4日目では213419ng/mL(21.92%)であった。PALの結果を、表13に示す。Cmaxの平均値(%CV)は、1日目では7629ng/mL(79.63%)であり、4日目では6902ng/mL(42.54%)であった。PAの結果を、表15に示す。Cmaxの平均値(%CV)は、1日目では4362ng/mL(18.27%)であり、4日目では4238ng/mL(18.20%)であった。ANOVAによると、全分析対象について、当該パラメータに関して治療間に統計的に有意な差は何ら検出されなかった。P5P(ベースライン補正後)、P5P(未補正)、PAL、およびPAのそれぞれについて、最小二乗平均による割合、90%幾何学的信頼区間、および被験者内CVを得た。その結果を表19にまとめる。
【0155】
【表19】
1日目および4日目に共通する二次パラメータ
各被験者および各分析対象について、AUC0-tのAUC0-infに対する割合(%)を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。AUCt/infの平均値(%CV)は、1日目では98.33%(0.96%)であり、4日目では97.23%(1.05%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。AUCt/infの平均値(%CV)は、1日目では98.24%(1.03%)であり、4日目では97.14%(1.07%)であった。PALの結果を、表13に示す。AUCt/infの平均値(%CV)は、1日目では99.31%(0.41%)であり、4日目では98.66%(0.89%)であった。PAの結果を、表15に示す。AUCt/infの平均値(%CV)は、1日目では97.73%(1.24%)であり、4日目では98.01%(1.45%)であった。全分析対象について1日目および4日目の両方で平均AUCt/infが80%を超えている場合、サンプリング継続期間が十分であることを意味していた。
【0156】
各被験者および分析対象について、尿中に排泄された全体量(0−t時間)を計算した(P5Pベースライン補正後データは除く)。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Ae0-tの平均値(%CV)は、1日目では848625ng(72.13%)であり、4日目では558650ng(74.20%)であった。PALの結果を、表13に示す。Ae0-tの平均値(%CV)は、1日目では18583712ng(37.13%)であり、4日目では21011635ng(21.38%)であった。PAの結果を、表15に示す。Ae0-tの平均値(%CV)は、1日目では172950596ng(38.45%)であり、4日目では225885311ng(20.95%)であった。
【0157】
各被験者および分析対象について、ピーク濃度に到達する時間を得た。P5P(ベースライン補正後および未補正)の結果を、それぞれ表6および表8にまとめる。Tmaxの平均値(%CV)は、1日目では0.089h(45.25%)であり、4日目では0.081h(41.92%)であった。PALの結果を、表13にまとめる。Tmaxの平均値(%CV)は、1日目では0.525h(19.45%)であり、4日目では0.691h(27.22%)であった。PAの結果を、表15にまとめる。Tmaxの平均値(%CV)は、1日目では0.611h(35.24%)であり、4日目では0.528h(19.13%)であった。
【0158】
各被験者および分析対象について、消失速度定数を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。Kelの平均値(%CV)は、1日目では0.1381h-1(16.38%)であり、4日目では0.1183h-1(14.41%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11およびに示す。Kelの平均値(%CV)は、1日目では0.1360h-1(16.60%)であり、4日目では0.1170h-1(14.35%)であった。PALの結果を、表13に示す。Kelの平均値(%CV)は、1日目では0.2064h-1(12.70%)であり、4日目では0.1775h-1(13.27%)であった。PAの結果を、表15に示す。Kelの平均値(%CV)は、1日目では0.3092h-1(17.01%)であり、4日目では0.2547h-1(20.59%)であった。
【0159】
各被験者および治療日について、見かけの半減期を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。T1/2 elの平均値(%CV)は、1日目では5.14h(17.65%)であり、4日目では5.96h(14.33%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。T1/2 elの平均値(%CV)は、1日目では5.22h(18.00%)であり、4日目では6.02h(14.14%)であった。PALの結果を、表13に示す。T1/2 elの平均値(%CV)は、1日目では3.40h(12.11%)であり、4日目では3.96h(13.56%)であった。PAの結果を、表15に示す。T1/2 elの平均値(%CV)は、1日目では2.30h(19.38%)であり、4日目では2.83h(23.55%)であった。
【0160】
各被験者について、P5P(ベースライン補正後および未補正)に対する全身クリアランスを計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。CLTの平均値(%CV)は、1日目では2.55L/h(14.75%)であり、4日目では2.42L/h(15.82%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。CLTの平均値(%CV)は、1日目では2.55L/h(14.92%)であり、4日目では2.42L/h(15.92%)であった。
【0161】
各被験者および分析対象について、腎クリアランスを計算した(ベースライン補正後P5Pは除く)。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。CLRの平均値(%CV)は、1日目では0.00279L/h(63.53%)であり、4日目では0.00174L/h(44.71%)であった。PALの結果を、表13に示す。CLRの平均値(%CV)は、1日目では0.85952L/h(43.20%)であり、4日目では0.72392L/h(27.23%)であった。PAの結果を、表15に示す。CLRの平均値(%CV)は、1日目では8.61246L/h(49.20%)であり、4日目では10.75339L/h(20.36%)であった。
【0162】
各被験者および分析対象に基づく、終了期相における分布量を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表6に示す。Vβの平均値(%CV)は、1日目では18.59L(10.05%)であり、4日目では20.75L(19.65%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Vβの平均値(%CV)は、1日目では18.82L(10.03%)であり、4日目では20.92L(19.36%)であった。PALの結果を、表10に示す。Vβの平均値(%CV)は、1日目では4.35L(50.05%)であり、4日目では4.21L(38.82%)であった。PAの結果を、表15に示す。Vβの平均値(%CV)は、1日目では28.61L(49.49%)であり、4日目では44.45L(33.63%)であった。
【0163】
各被験者および分析対象について、平均滞留時間を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。MRTの平均値(%CV)は、1日目では3.40h(20.68%)であり、4日目では3.99h(16.84%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。MRTの平均値(%CV)は、1日目では3.45h(21.20%)であり、4日目では4.03h(16.93%)であった。PALの結果を、表13に示す。MRTの平均値(%CV)は、1日目では4.06h(17.24%)であり、4日目では4.74h(20.29%)であった。PAの結果を、表15に示す。MRTの平均値(%CV)は、1日目では3.85h(15.94%)であり、4日目では4.24h(21.69%)であった。
【0164】
4日目に特定した二次パラメータ
4日目に、各被験者および分析対象について、最低濃度すなわち通過濃度を得た。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表3に示す。Cminの平均値(%CV)は、946ng/mL(61.50%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Cminの平均値(%CV)は、974ng/mL(61.89%)であった。PALの結果を、表13に示す。Cminの平均値(%CV)は、56.8ng/mL(49.95%)であった。PAの結果を、表15に示す。Cminの平均値(%CV)は、12.9ng/mL(194.30%)であった。
【0165】
4日目に、各被験者および分析対象について、平均濃度を得た。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。Cavgの平均値(%CV)は、12614.42ng/mL(28.40%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Cavgの平均値(%CV)は、12641.59ng/mL(28.52%)であった。PALの結果を、表13に示す。Cavgの平均値(%CV)は、1236.81ng/mL(16.92%)であった。PAの結果を、表15に示す。Cavgの平均値(%CV)は、885.04ng/mL(16.25%)であった。
【0166】
4日目に、各被験者および分析対象について、変動率を得た。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。Fl(%)の平均値(%CV)は、1734.69%(21.82%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。Fl(%)の平均値(%CV)は、1731.62%(21.88%)であった。PALの結果を、表13に示す。Fl(%)の平均値(%CV)は、537.81%(28.22%)であった。PAの結果を、表15に示す。Fl(%)の平均値(%CV)は、482.53%(17.05%)であった。
【0167】
4日目に、各被験者および分析対象について、濃度−時間曲線下面積(0−τ)を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。AUC0-τの平均値(%CV)は、302742.00ng・h/mL(28.39%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。AUC0-τの平均値(%CV)は、303393.72ng・h/mL(28.51%)であった。PALの結果を、表13に示す。AUC0-τの平均値(%CV)は、29682.94ng・h/mL(16.92%)であった。PAの結果を、表15に示す。AUC0-τの平均値(%CV)は、21240.85ng・h/mL(16.25%)であった。
【0168】
4日目に、各被験者および分析対象について、理論上の蓄積率を計算した。P5P(ベースライン補正後)の結果を、表9に示す。蓄積率の平均値(%CV)は、1.07(2.62%)であった。P5P(未補正)の結果を、表11に示す。蓄積率の平均値(%CV)は、1.07(2.63%)であった。PALの結果を、表13に示す。蓄積率の平均値(%CV)は、1.02(0.91%)であった。PAの結果を、表15に示す。蓄積率の平均値(%CV)は、1.00(0.58%)であった。
【0169】
非コンパートメント型薬物動態および統計の結論
ANOVAによると、P5P(ベースライン補正後および未補正の両方)ならびにPAについて、ln変換AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxに関して治療日の間に統計的に有意な差は何ら検出されなかった。
【0170】
ANOVAによると、PALについては、ln変換AUC0-tおよびAUC0-infに関して治療日の間に統計的に有意な差が検出されたが、Cmaxに関しては検出されなかった。
【0171】
全分析対象について平均AUCt/infが80%を超える場合、サンプリング継続期間が薬物動態の特徴を良く捕らえるのに十分であることを意味していた。AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxの被験者内CVは、それぞれ、P5P(ベースライン補正後)では7.56%、7.14%、および9.84%であり、P5P(未補正)では7.54%、7.10%、および9.84%であり、PALでは3.12%、3.18%、および21.10%であり、PAでは3.39%、4.20%、および2.71%であった。
【0172】
ln変換AUC0-t、AUC0-inf、およびCmaxの基準品に対する、試験品の最小二乗平均の割合の90%幾何学的信頼区間の結果は、P5P(ベースライン補正後および未補正の両方)ならびにPAでは80.00%〜125.00%の範囲であったが、PALでは当該範囲外であった。これらの結果から、P5PおよびPAの場合、1日1回投与の投薬計画で、蓄積が生じにくく、(P5Pの)吸収または(PAの)生体内変化の速度および程度における変化が有意とはなり得ないことが分かる。PALの場合、理論上の蓄積率は1に近いが、個々の濃度−時間プロファイルによると、P5Pの1日1回投与では4日後に蓄積が生じることが明らかである。
【0173】
安全性評価
当該試験中、全体で40の有害事象が6人の被験者に生じた。注射した部位の炎症が、3人の被験者(被験者の50.0%)より報告された。しかし、臨床試験分担医師によると、これらの有害事象は処置に関連するものと判断され、試験薬物とは無関係なものとして記録された。その他の関連する可能性のある、試験中に報告された有害事象の内、悪心、眩暈(眩暈感および眩暈)、知覚異常(親指[右手]の先にピンや針のような感触および背中や首に刺痛を感じ、寒気を感じる[右手])、ならびに尿中白血球という有害事象が、1人より多い被験者より報告された。ヘモグロビンの低下、不安感、カテーテル部位(右手)の傷、尿中赤血球、大腿の筋痙攣、血液中の好中球の低下、痛み(両脚)、背中下部の痛み、背中および首の痛み、胸部両側の丘疹、口腔内の唾液増加、身体の発汗、失神、口腔内の味覚異常、ならびに暑さを感じることという、その他の有害事象が、1人のみの被験者より報告された。
【0174】
悪心、眩暈(眩暈感および眩暈)、ならびに口腔内の味覚異常は、予期される有害事象であった。眩暈(眩暈感および眩暈)は、2人の被験者(被験者の33.3%)より報告された。悪心は、3人の被験者(被験者の50.0%)より報告された。口腔内の味覚異常は、1人の被験者(16.7%)より報告された。最高重度は、3人の被験者(被験者番号01〜04)では軽度であり、1人の被験者(被験者番号04)では中度であった。当該試験中、下痢や嘔吐は報告されなかった。
【0175】
尿中の白血球(WBC)の上昇(膿尿症)という臨床的に重大な臨床検査の結果が、2人の被験者に観察された。1人の被験者(#03)は、スクリーニングおよび−1〜3日目の時点で、白血球エステラーゼに対して陰性であった(白血球エステラーゼが陰性であったため、顕微鏡による評価はその際行わなかった)。当該被験者は、4日目に、白血球エステラーゼに対して+、WBCに対して3〜5/HPFを示した。5日目に、白血球エステラーゼは+のままであったが、WBCは10/20/HPFへと上昇した。約11日後に行われた追跡調査では、正常な結果が得られた。別の被験者(#06)は、スクリーニングの時点で、白血球エステラーゼに対して極微量の値、WBCに対して3〜5/HPFを示した。1日目に、白血球エステラーゼに対して+、WBCに対して0〜2/HPFを示した。2日目に、白血球エステラーゼに対して+、WBCに対して陰性を示した。しかし、−1および3日目では、白血球エステラーゼの結果は陰性であった。当該被験者は、4日目に、白血球エステラーゼに対して++、WBCに対して10〜20/HPFを示した。5日目に、白血球エステラーゼは+へと低下し、WBCは5〜10/HPFへと低下した。
【0176】
結論
当該試験中、深刻な、重度の、または重大な有害事象は何ら報告されなかった。本研究の臨床部分の結論として、試験後臨床検査、理学的検査、生命徴候測定、およびECGの結果により、被験者の健康状態に有意な差がないことが確認された。総合的に、臨床実験において確立された当該製剤の安全性プロファイルにより、当該生成物は、深刻または永続的な治療に関連する作用なしに忍容性が良好であることが示された。
【0177】
ln変換AUC0-t>AUC0-inf、およびCmaxの基準品に対する、試験品の最小二乗平均の割合の90%幾何学的信頼区間の結果は、P5P(ベースライン補正後および未補正の両方)ならびにPAでは80.00%〜125.00%の範囲であったが、PALでは当該範囲外であった。これらの結果から、P5PおよびPAの場合、1日1回投与の投薬計画で、蓄積が生じにくく、(P5Pの)吸収または(PAの)生体内変化の速度および程度における変化が有意とはなり得ないことが分かる。PALの場合、理論上の蓄積率は1に近いが、個々の濃度−時間プロファイルによると、P5Pの1日1回投与では4日後に蓄積が生じることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】図1は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均の実測血漿中ピリドキサール5'−リン酸濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図2】図2は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中ピリドキサール5'−リン酸濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図3】図3は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中ピリドキサール5'−リン酸対数濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図4】図4は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均の実測血漿中ピリドキサール濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図5】図5は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中ピリドキサール濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図6】図6は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中ピリドキサール対数濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図7】図7は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均の実測血漿中4−ピリドキシン酸濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図8】図8は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中4−ピリドキシン酸濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図9】図9は、1、5、10、および20mg/kgの血漿中ピリドキサール5'−リン酸の単回静脈内投与についての、平均のベースライン調節後血漿中4−ピリドキシン酸対数濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図10】図10は、1日目および4日目に測定された、ベースライン補正後血漿中ピリドキサール5'−リン酸平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図11】図11は、1日目および4日目に測定された、ベースライン補正後血漿中ピリドキサール5'−リン酸ln変換平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図12】図12は、1日目および4日目に測定された、未補正血漿中ピリドキサール5'−リン酸平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図13】図13は、1日目および4日目に測定された、未補正血漿中ピリドキサール5'−リン酸ln変換平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図14】図14は、1日目および4日目に測定された、血漿中ピリドキサール平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図15】図15は、1日目および4日目に測定された、血漿中4−ピリドキシン酸ln変換平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図16】図16は、1日目および4日目に測定された、血漿中4−ピリドキシン酸平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【図17】図17は、1日目および4日目に測定された、血漿中ピリドキサールln変換平均濃度と時間とを対比させた線グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとの凍結滅菌水溶液を凍結乾燥することによって調製されたピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤。
【請求項2】
前記溶液のpHが7.0〜7.3である請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項3】
マンニトールをさらに含有する請求項1または2に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜25%w/w含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項5】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜15%w/w含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項6】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜10%w/w含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項7】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約5%w/w含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項8】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.1〜10%w/w含有する請求項1〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項9】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜5%w/w含有する請求項1〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項10】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜3%w/w含有する請求項1〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項11】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w含有する請求項1〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項12】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.1〜15%w/w含有する請求項3〜11のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項13】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.5〜10%w/w含有する請求項3〜11のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項14】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.5〜5%w/w含有する請求項3〜11のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項15】
前記滅菌液は、マンニトールを約3%w/w含有する請求項3〜11のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項16】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約5%w/w、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w、マンニトールを約2.8%w/w含有する請求項3〜15のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項17】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約250mg、水酸化ナトリウムを約80.5mg、マンニトールを約150mg含有する請求項3〜16のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤から再構成されるピリドキサール5'−リン酸を含有し、静脈内投与に適した滅菌キャリアを用いた注射可能な製剤。
【請求項19】
前記滅菌キャリアは注射用水である請求項18に記載の注射可能な製剤。
【請求項20】
(a)ピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとを含有し、pHが7.0〜7.3である滅菌液を調製する工程と、
(b)前記溶液を凍結する工程と、
(c)前記凍結溶液を凍結乾燥する工程とを含むピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤の調製プロセス。
【請求項21】
工程(a)は、マンニトールを、ピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとの前記滅菌液に溶解することをさらに含む請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記滅菌液は、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸を含有する請求項20または21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜25%w/w含有する請求項20〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜15%w/w含有する請求項20〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜10%w/w含有する請求項20〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項26】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約5%w/w含有する請求項20〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項27】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.1〜10%w/w含有する請求項20〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項28】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜5%w/w含有する請求項20〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項29】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜3%w/w含有する請求項20〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項30】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w含有する請求項20〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項31】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.1〜15%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項32】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.5〜10%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項33】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.5〜5%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項34】
前記滅菌液は、マンニトールを約3%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項35】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約5%w/w、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w、マンニトールを約2.8%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項36】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約250mg、水酸化ナトリウムを約80.5mg、マンニトールを約150mg含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項37】
請求項18に記載の注射可能な製剤を調製するための指示と、
別々の容器に、
(a)請求項1〜17のいずれかに記載のピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤と、
(b)静脈内投与に適した滅菌キャリアとを含む前記注射可能な製剤を調製するのに有用なキット。
【請求項38】
前記滅菌キャリアは注射用水である請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記注射可能な製剤の容器であって、前記製剤を選択された量および濃度に調製することを容易にするように寸法決めされた容器をさらに含む請求項37または38に記載のキット。
【請求項40】
ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者への投与に適した注射可能な製剤を調製するための、請求項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤の使用。
【請求項41】
請求項18または19に記載の注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者の治療方法。
【請求項42】
有効な量の請求項18または19に記載の注射可能な製剤を投与することを含む、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率の低減方法。
【請求項43】
ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率を低減するための、請求項18または19に記載の注射可能な製剤の使用。
【請求項44】
請求項18または19に記載の注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者の治療方法。
【請求項45】
前記外科手術は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者への投与に適した注射可能な製剤を調製するための、請求項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤の使用。
【請求項47】
前記外科手術は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)である請求項46に記載の使用。
【請求項1】
補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとの凍結滅菌水溶液を凍結乾燥することによって調製されたピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤。
【請求項2】
前記溶液のpHが7.0〜7.3である請求項1に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項3】
マンニトールをさらに含有する請求項1または2に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項4】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜25%w/w含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項5】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜15%w/w含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項6】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜10%w/w含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項7】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約5%w/w含有する請求項1〜3のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項8】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.1〜10%w/w含有する請求項1〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項9】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜5%w/w含有する請求項1〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項10】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜3%w/w含有する請求項1〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項11】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w含有する請求項1〜7のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項12】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.1〜15%w/w含有する請求項3〜11のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項13】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.5〜10%w/w含有する請求項3〜11のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項14】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.5〜5%w/w含有する請求項3〜11のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項15】
前記滅菌液は、マンニトールを約3%w/w含有する請求項3〜11のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項16】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約5%w/w、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w、マンニトールを約2.8%w/w含有する請求項3〜15のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項17】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約250mg、水酸化ナトリウムを約80.5mg、マンニトールを約150mg含有する請求項3〜16のいずれかに記載の凍結乾燥製剤。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤から再構成されるピリドキサール5'−リン酸を含有し、静脈内投与に適した滅菌キャリアを用いた注射可能な製剤。
【請求項19】
前記滅菌キャリアは注射用水である請求項18に記載の注射可能な製剤。
【請求項20】
(a)ピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとを含有し、pHが7.0〜7.3である滅菌液を調製する工程と、
(b)前記溶液を凍結する工程と、
(c)前記凍結溶液を凍結乾燥する工程とを含むピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤の調製プロセス。
【請求項21】
工程(a)は、マンニトールを、ピリドキサール5'−リン酸と水酸化ナトリウムとの前記滅菌液に溶解することをさらに含む請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記滅菌液は、補給濃度よりも高い濃度のピリドキサール5'−リン酸を含有する請求項20または21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜25%w/w含有する請求項20〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜15%w/w含有する請求項20〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約1〜10%w/w含有する請求項20〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項26】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約5%w/w含有する請求項20〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項27】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.1〜10%w/w含有する請求項20〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項28】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜5%w/w含有する請求項20〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項29】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約0.5〜3%w/w含有する請求項20〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項30】
前記滅菌液は、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w含有する請求項20〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項31】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.1〜15%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項32】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.5〜10%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項33】
前記滅菌液は、マンニトールを約0.5〜5%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項34】
前記滅菌液は、マンニトールを約3%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項35】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約5%w/w、水酸化ナトリウムを約1.5%w/w、マンニトールを約2.8%w/w含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項36】
前記滅菌液は、ピリドキサール5'−リン酸を約250mg、水酸化ナトリウムを約80.5mg、マンニトールを約150mg含有する請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項37】
請求項18に記載の注射可能な製剤を調製するための指示と、
別々の容器に、
(a)請求項1〜17のいずれかに記載のピリドキサール5'−リン酸の凍結乾燥製剤と、
(b)静脈内投与に適した滅菌キャリアとを含む前記注射可能な製剤を調製するのに有用なキット。
【請求項38】
前記滅菌キャリアは注射用水である請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記注射可能な製剤の容器であって、前記製剤を選択された量および濃度に調製することを容易にするように寸法決めされた容器をさらに含む請求項37または38に記載のキット。
【請求項40】
ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者への投与に適した注射可能な製剤を調製するための、請求項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤の使用。
【請求項41】
請求項18または19に記載の注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある患者の治療方法。
【請求項42】
有効な量の請求項18または19に記載の注射可能な製剤を投与することを含む、ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率の低減方法。
【請求項43】
ピリドキサール5'−リン酸または薬学的に許容可能なその塩の経口投与に付随する悪心および嘔吐の発生率を低減するための、請求項18または19に記載の注射可能な製剤の使用。
【請求項44】
請求項18または19に記載の注射可能な製剤を静脈内投与することを含む、ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者の治療方法。
【請求項45】
前記外科手術は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ピリドキサール−5−リン酸を用いる治療の必要がある外科手術を受ける患者への投与に適した注射可能な製剤を調製するための、請求項1〜17のいずれかに記載の凍結乾燥製剤の使用。
【請求項47】
前記外科手術は、冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)である請求項46に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2008−534521(P2008−534521A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503331(P2008−503331)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000467
【国際公開番号】WO2006/102748
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(502066591)メディキュア インターナショナル インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MEDICURE INTERNATIONAL INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/CA2006/000467
【国際公開番号】WO2006/102748
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(502066591)メディキュア インターナショナル インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MEDICURE INTERNATIONAL INC.
【Fターム(参考)】
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