説明

ピリドンアゾ化合物

【課題】本発明の目的は、耐熱性に優れる、黄色系色素を提供することである。
【解決手段】
下記式(3’):


上記式(3’)中、
は、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり;
は、水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり;
mは、1〜3の整数である;
で表される、アルコキシシリル基を含む、ピリドンアゾ化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリドンアゾ化合物に関する。より詳しくは、本発明は、耐熱性に優れる、ピリドンアゾ化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
色素は、古くから各種繊維の染色用染料などとして使用されてきたが、近年、インクジェット用インク、合成樹脂および合成繊維材料用染料、高分子材料用着色剤、感熱転写型画像形成材料におけるインクシート、電子写真用のトナー、磁気記録材料、光記録材料などの様々な分野に使用されている。このため、色素に求められる性能も、発色性のみならず、耐光性、耐熱性、溶剤に対する溶解性、樹脂への相溶性など多岐に亘り、これらの性能を併せ持つ色素の開発が望まれている。
【0003】
例えば、黄色系色素として、ピリドンアゾ化合物が知られている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−159459号公報
【特許文献2】特開2006−71822号公報
【特許文献3】特開2009−299030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色素をインクジェット用インクの用途で用いる場合、色素に求められる性能は、これまで溶剤に対する溶解性が主であったが、近年、インクジェット印刷後に被印刷物を高温処理する場合(例えば、食品用容器にインクジェット印刷した後、当該食品容器を加熱殺菌する場合)でも変色しにくいという耐熱性へのニーズも高まっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に記載される従来のピリドンアゾ化合物は、フタロシアニン色素やアゾ金属錯体色素と比較して、耐熱性に乏しいという欠点を有する。そこで、耐熱性が向上されたピリドンアゾ化合物の開発が望まれていた。
【0007】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、耐熱性に優れる、黄色系色素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記式(3’):
【0009】
【化1】

【0010】
上記式(3’)中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり;Rは、水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり;mは、1〜3の整数である;で表される、アルコキシシリル基を含む、ピリドンアゾ化合物によって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性に優れる、黄色系色素を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、下記式(3’):
【0013】
【化2】

【0014】
上記式(3’)中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり;Rは、水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり;mは、1〜3の整数である;で表される、アルコキシシリル基を含む、ピリドンアゾ化合物である。
【0015】
上記で述べたように、従来のピリドンアゾ化合物は、フタロシアニン色素やアゾ金属錯体色素と比較して、耐熱性に乏しいという欠点を有する。具体的には、加熱されると、ピリドンアゾ化合物が昇華してしまったり、分解してしまったりする傾向にあり、結果として、色素の変色や脱色が起こってしまったりしていた。ここで昇華とは、固体から直接気化する場合に加え、液化を経て気化する場合も含むものとする。それに対し、本発明のピリドンアゾ化合物、および、本発明のピリドンアゾ化合物を水処理または酸処理してできる重合物は、耐熱性に優れ、耐昇華性、耐分解性に優れる。そのメカニズムは以下の通りであると推測される。ただし、かかるメカニズムは推測に過ぎず、かかるメカニズムによって本発明の技術的範囲が制限されることはない。
【0016】
すなわち、本発明のピリドンアゾ化合物は、アルコキシシリル基を有する。アルコキシシリル基が導入されているピリドンアゾ化合物が加熱された場合、空気中の微量の水分が触媒的に作用し、アルコキシシリル基が加水分解され、続いて、脱水縮合反応によりシロキサン結合をネットワーク状に形成し、強固な構造を形成する。そのため、熱分解を抑制することができ、また、重合物となるため高温による昇華が抑制される。そのため、インクジェット印刷後に被印刷物を高温処理する場合が想定される場合であっても、かようなインクなどの用途において、かかるピリドンアゾ化合物は、好適に使用できる。
【0017】
加えて、本発明のピリドンアゾ化合物が水や酸(例えば、塩酸、硫酸、燐酸などの無機酸;乳酸、クエン酸、酢酸などの有機酸)の存在下に置かれたような場合(場合によっては、さらに加熱されるような場合)、アルコキシシリル基は加水分解および縮合反応が促進され、単に加熱されるよりもさらに強固な構造を形成する。そのため、単に加熱するよりも熱分解や昇華を抑制することができ、耐溶剤性が向上する。
【0018】
加えて、水や酸、加熱の処理がなされた本発明のピリドンアゾ化合物は、シクロヘキサノン、アセトン、プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセタートなどの有機溶媒への溶解性が減少する。つまりは、インクジェット用のインクとして調製する際は、重合前(モノマーの状態)であるので、インクへの溶解性は確保されているが、印字させた後に、水を吹き付けたり、酸で処理したり、加熱したりすることによって重合が促進され、耐溶剤性が高まることになる。
【0019】
以下、本発明の好ましい形態を説明する。
【0020】
上記のように、本発明は、下記式(3’):
【0021】
【化3】

【0022】
上記式(3’)中、Rは、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり;Rは、水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり;mは、1〜3の整数である;で表される、アルコキシシリル基を含む、ピリドンアゾ化合物である。
【0023】
(R
は、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。好ましくは、Rは、炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
【0024】
ここで、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基は、特に制限されない。このようなアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基などが好ましい。なお、Rが複数存在する(mが2または3である)ときは、各Rは、同一であっても、異なるものであってもよい。
【0025】
(R
は、水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。
【0026】
ここで、炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基は、Rで例示したものが好適に使用でき、これらのうち、有機溶媒への溶解性を考慮すると、Rは、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基などが好ましい。なお、Rが複数存在する(mが1である)ときは、各Rは、同一であっても、異なるものであってもよい。
【0027】
(m)
mは1〜3の整数である。mが1、2および3である場合、本発明のピリドンアゾ化合物は具体的にはそれぞれ以下の構造を有する。
【0028】
【化4】

【0029】
これらのうち、好ましくは、mは2または3であり、特に好ましくは、mは3である。上記のように、アルコキシシリル基が導入されているピリドンアゾ化合物が加熱されても、ピリドンアゾ化合物の昇華や分解が起こる前に重合が起こり、結果として、昇華や分解を抑制することができる。そのため、インクジェット印刷後に被印刷物を高温処理する場合が想定される場合であっても、かようなインクなどの用途において、好適に使用できる。ここでmの数が増えるにつれ、アルコキシシリル基のネットワークがより強固になるため、耐熱性や耐分解性をより向上させることができる。
【0030】
ここで、R、R、mの好ましい組み合わせは、Rがメチル基、エチル基またはプロピル基であり;Rがメチル基、エチル基またはプロピル基であり;mが2または3である。より好ましくは、Rがメチル基またはエチル基であり;Rがメチル基、エチル基またはプロピル基であり;mが3である。かような組み合わせであることによって、ピリドンアゾ化合物の耐熱性を特に向上させることができる。
【0031】
本発明のピリドンアゾ化合物は、より好ましくは、下記式(1)、式(1’)、式(2)または式(2’)の構造を有する。
【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
上記式(1)、式(1’)、式(2)および式(2’)中、
Xは、下記式(3):
【0037】
【化9】

【0038】
で表される基である。
【0039】
(Y)
Yは、それぞれ独立して、−CO−または−SO−である。かようであることによって、有機溶媒への溶解性を向上させる効果を有する。ここで、「それぞれ独立して」としたのは、(1’)で示されるピリドンアゾ化合物には、Yで示される基が2つあるからである(X中にYがある)。
【0040】
(R
は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはフェニル基である。
【0041】
炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基は、好ましくは炭素数2〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。ここで、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基は、特に制限されない。このようなアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、Rは、水素原子、メチル基またはフェニル基であることが好ましく、色素としての着色力の点から、より好ましくは水素原子である。
【0042】
(R
は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、または、下記(4):
【0043】
【化10】

【0044】
であり、この際、R’は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。Rにおける炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基は、好ましくは、炭素数2〜4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。
【0045】
ここで、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、1,2−プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、エチレン基、トリメチレン基、1,2−プロピレン基、テトラメチレン基などが好ましい。
【0046】
(R’)
’は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基である。炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基としては、Rで列挙したものが好ましく例示できる。これらの中でも、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、それぞれ独立して、エチレン基、トリメチレン基、1,2−プロピレン基、テトラメチレン基などが好ましい。
【0047】
(R、R、m)
は、上記と同様の定義であり、Rは、上記と同様の定義であり、mは、上記と同様の定義である。
【0048】
このように、式(3)で表されるXにおいて、上記で説明したものであることによって、ピリドンアゾ化合物が加熱されても、ピリドンアゾ化合物の昇華や分解が起こる前に重合が起こり、結果として、昇華や分解を抑制することができる。そのため、インクジェット印刷後に被印刷物を高温処理する場合が想定される場合であっても、かようなインクなどの用途において、好適に使用できる。
【0049】
ここで、Xにおいて、Y、R、R、R、R、mの好ましい組み合わせは、Yが−CO−または−SO−であり;Rが、水素原子、メチル基またはフェニル基であり;Rが、エチレン基、トリメチレン基、1,2−プロピレン基、またはテトラメチレン基、あるいは、式(4)で示され、この際、R’がエチレン基、トリメチレン基、1,2−プロピレン基、またはテトラメチレン基であり;R、R、mは、上記した組み合わせである。かような組み合わせであることによって、ピリドンアゾ化合物の耐熱性を有意に向上させることができる。
【0050】
(R
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、NO、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基である。Rが導入されることによって、吸収波形をシフトさせ、目的に応じて色目を調節できるという効果がある。
【0051】
ここで、ハロゲン原子としては、特に制限されず、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のいずれでもよいが、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、塩素原子であることが好ましい。
【0052】
また、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル基として、好ましくは、炭素数1〜6の直鎖の直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル基であり、より好ましくは、炭素数1〜3の直鎖の直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル基である。
【0053】
ここで、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖、もしくは環状のアルキル基としては、特に制限されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基および2−エチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基などがより好ましい。
【0054】
また、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基としては、かかる炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基が酸素原子に結合した構造を有する。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、メトキシ基、エトキシ基などが好ましい。
【0055】
(R)
Rは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基、または、炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基である。
【0056】
炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基は、より好ましくは炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数3〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基などがより好ましい。
【0057】
炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基は、炭素数2〜5の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシイソプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、4−ヒドロキシ−3−メチル−ブチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、9−ヒドロキシノニル基、10―ヒドロキシデシル基、11−ヒドロキシウンデシル基、12−ヒドロキシドデシル基等がある。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基などが好ましい。
【0058】
炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基は、炭素数3〜14の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基であることがより好ましい。炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、プロポキシブチル基、プロポキシプロピル基、i−プロポキシプロピル基、i−プロポキシペンチル基、t−ブトキシエチル基、ヘキシロキシブチル基、2−エチルヘキシルオキシプロピル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、i−プロポキシプロピル基、プロポキシプロピル基、2−エチルヘキシルオキシプロピル基などが好ましい。
【0059】
(p)
pは、それぞれ独立して、1〜5の整数であるが、好ましくは1〜3の整数であり、より好ましくは1または2である。このようにアルコキシシリル基を有する、式(3)で表される基が1以上導入されることによって、ピリドンアゾ化合物は、重合性のピリドンアゾ化合物となるため、上述したメカニズムによって、耐熱性を有するものとなる。なお、pが2以上の場合、Xで定義された「Y、R、R、R、R、m」は、それぞれ独立していると理解されなければならない。また、YおよびRも、それぞれ独立していると理解されなければならない。
【0060】
(q)
qは、それぞれ独立して、0〜4の整数であるが、好ましくは0〜3の整数であり、より好ましくは0〜2の整数である。Rは、必須の置換基ではないが、これらの置換基の少なくとも1種を導入する場合には、吸収波形をシフトさせ、目的に応じて色目を調節できるという効果がある。
【0061】
(R
は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
【0062】
炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜5の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜3の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。
【0063】
ここで、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖のアルキル基は、特に制限されない。このようなアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、Rは、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基などがより好ましい。
【0064】
(R
は、それぞれ独立して、炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数7〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアラルキル基、炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルコキシアルキル基、炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基、炭素数2〜10の複素環基、または、−R’−Xであり、この際、R’は、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、Xは、上記と同様の定義である。R’において、好ましくは、メチレン基またはエチレン基であり、好ましくはエチレン基である。
【0065】
炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基は、より好ましくは炭素数2〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数2〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基である。炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などがより好ましい。
【0066】
炭素数7〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアラルキル基は、炭素数7〜14の直鎖もしくは分岐鎖のアラルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数7〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアラルキル基であり、具体的には、ベンジル基、フェニルプロピル基(1−メチル−3−フェニルプロピル基など)、フェニルブチル基(3−アミノ−1−フェニルブチル基など)などのフェニルアルキル基などが好ましい。
【0067】
炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基は、炭素数2〜5の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基であることが好ましい。炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシイソプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、4−ヒドロキシ−3−メチル−ブチル基、6−ヒドロキシヘキシル基、7−ヒドロキシヘプチル基、8−ヒドロキシオクチル基、9−ヒドロキシノニル基、10―ヒドロキシデシル基、11−ヒドロキシウンデシル基、12−ヒドロキシドデシル基等がある。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基などが好ましい。
【0068】
炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基は、炭素数3〜14の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基であることが好ましく、炭素数4〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基であることがより好ましい。炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、プロポキシブチル基、プロポキシプロピル基、i−プロポキシプロピル基、i−プロポキシペンチル基、t−ブトキシエチル基、ヘキシロキシブチル基、2−エチルヘキシルオキシプロピル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、i−プロポキシプロピル基、プロポキシプロピル基、2−エチルヘキシルオキシプロピル基などが好ましい。
【0069】
炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルコキシアルキル基は、炭素数4〜12の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルコキシアルキル基であることが好ましい。ここで、「ヒドロキシアルコキシアルキル基」とは、ヒドロキシ基によって置換されたアルコキシアルキル基を意味する。アルコキシアルキル基は、上記で説明したものが好ましく使用できる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル基などが好ましい。
【0070】
炭素数2〜10の複素環基は、複素環基としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選択された少なくとも1種のヘテロ原子を含む複素環基が含まれ、単環式複素環基に限らず、複数の複素環が縮合した縮合複素環基、複素環と炭化水素環(非芳香族性炭化水素環または芳香族炭化水素環)とが縮合(オルソ縮合、オルソアンドペリ縮合など)した縮合複素環基であってもよい。複素環基は、非芳香族性であってもよく芳香族性であってもよい。さらに、複素環と炭化水素環とが縮合した縮合複素環基においては、複素環または炭化水素環のいずれかが結合手を有していてもよい。ヘテロ原子として窒素原子を有する複素環基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基などの5員または6員単環式複素環基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基などの5員または6員複素環が炭化水素環に縮合した縮合複素環基などが例示でき、ヘテロ原子として酸素原子を有する複素環基としては、フリル基(例えば、テトラヒドロフルフリル基)などの5員または6員単環式複素環基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基などの5員または6員複素環が炭化水素環に縮合した縮合複素環基などが例示できる。ヘテロ原子として硫黄原子を有する複素環基には、チエニル基などの5員または6員単環式複素環基、チアントレニル基などの5員または6員複素環が炭化水素環に縮合した縮合複素環基などが含まれる。また、異種のヘテロ原子を有する複素環基としては、モルホリニル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基などの5員または6員単環式複素環基、フェノキサチイニル基などの5員または6員複素環が炭化水素環に縮合した縮合複素環基などが挙げられる。好ましい複素環基には、ヘテロ原子として少なくとも窒素原子を有する5または6員の複素環基(ピロリル、ピリジルなど)、ヘテロ原子として少なくとも窒素原子を有する5または6員の複素環基と芳香族炭化水素類が縮合した複素環基(例えば、カルバゾリル基)などが含まれる。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、テトラヒドロフルフリル基、4−ピコリル基などが好ましい。
【0071】
(R
は、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、または、下記式(5):
【0072】
【化11】

【0073】
であり、この際、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基である。
【0074】
炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基は、炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であることがより好ましい。炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ペンタン−1,3−ジイル基、ヘキサメチレン基オクタメチレン基、などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、有機溶媒に対する溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、具体的には、エチレン基、テトラメチレン基、ペンタン−1,3−ジイル基、ヘキサメチレン基などが好ましい。
【0075】
(R
は、それぞれ独立して、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、nは、1〜8の整数を表す。この際、n≧2である場合の−(O−R−におけるRも、それぞれ独立している。Rにおける炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基は、Rで説明したものが同様に適用される。これらのうち、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などが好ましい。nは、1〜8の整数であるが、耐熱性、有機溶媒への溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、1〜6の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましい。
【0076】
上記を踏まえると、本発明において好ましいピリドンアゾ化合物の具体例は、以下である。
【0077】
【化12】

【0078】
【化13】

【0079】
上記のようなピリドンアゾ化合物は、本発明の所期の目的を達成することができる。
【0080】
以下、本発明のピリドンアゾ化合物の製造方法の好ましい実施形態を記載する。しかしながら、本発明は、下記好ましい実施形態に制限されるものではない。
【0081】
例えば、下記式(6):
【0082】
【化14】

【0083】
のアミン化合物1、あるいは
下記式(7):
【0084】
【化15】

【0085】
のアミン化合物2をジアゾ化して、ジアゾ化合物を得て、得られたジアゾ化合物を、
下記式(9):
【0086】
【化16】

【0087】
の3−シアノ−6−ヒドロキシピリジン−2(1H)−オン化合物(本明細書中では、単に「(9)化合物」とも称する)、あるいは
下記式(10):
【0088】
【化17】

【0089】
の化合物(本明細書中では、単に「(10)化合物」とも称する)とカップリングし、本発明のピリドンアゾ化合物を製造できる。または、下記式(8):
【0090】
【化18】

【0091】
のアミン化合物3をジアゾ化して、ジアゾ化合物を得て、得られたジアゾ化合物を、
下記式(11):
【0092】
【化19】

【0093】
の化合物(本明細書中では、単に「(11)化合物」とも称する)、あるいは、
下記式(12):
【0094】
【化20】

【0095】
の化合物(本明細書中では、単に「(12)化合物」とも称する)とカップリングし、本発明のピリドンアゾ化合物を製造できる。なお、「アミン化合物1」と「アミン化合物2」と「アミン化合物3」を総称して、単に「アミン化合物」と称する場合もある。
【0096】
なお、上記式(6)〜(12)中、R、p、Y、R、q、R、R、Rは、所望のピリドンアゾ化合物の構造によって規定される。具体的には、これらの定義は、上記と同様の定義であるため、ここでは説明を省略する。
【0097】
上記方法において、ジアゾ化反応は、特に制限されず、無溶媒下であるいは溶媒中で行われてもよいが、好ましくは溶媒中で行なわれる。この際使用できる溶媒としては、酸性溶媒が好ましく使用され、より具体的には、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、濃硫酸などが挙げられる。上記溶媒は、単独で使用されてももしくは2種以上の混合物の形態で使用されてもよく、または水、メタノールなどの他の溶媒との混合物の形態で使用されてもよい。溶媒を使用する際の溶媒の使用量は、特に制限されないが、アミン化合物の濃度が、溶媒の使用量に対し、好ましくは1〜40重量%となるような量である。また、アミン化合物(好ましくは溶液形態)は、−10〜10℃程度にまで冷却されることが好ましい。これにより、後の反応で生成するジアゾニウムが安定でありうる。
【0098】
上記ジアゾ化反応は、好ましくはニトロソ化剤の存在下で行われる。ここで、ニトロソ化剤としては、特に制限されず、公知のニトロソ化剤が使用できる。具体的には、ニトロシル硫酸、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸メチルなどが挙げられる。なお、上記溶媒は、単独で使用されてももしくは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。ニトロソ化剤を使用する際のニトロソ化剤の使用量は、特に制限されないが、アミン化合物1モルに対して、1.0〜1.8モルであることが好ましい。また、上記ニトロソ化剤は、そのままの形態で添加されてもよいが、水やメタノール等で希釈して使用されてもよい。後者の場合、ニトロソ化剤は、3〜40重量%程度に希釈されることが好ましい。
【0099】
上記ジアゾ化反応条件は、アミン化合物のジアゾ化反応が進行して所望のジアゾ化合物を得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、好ましくは−15〜15℃、より好ましくは−10〜10℃である。また、反応時間は、好ましくは1分〜10時間、より好ましくは1.5分〜3時間である。なお、ここでスルファミン酸を添加することにより余剰ニトロソ化剤を分解してもよい。
【0100】
次に、このようにして得られたジアゾニウム化合物を、(9)化合物、(10)化合物、(11)化合物、あるいは、(12)化合物とカップリング反応させる。
【0101】
ここで、上記カップリング反応は、特に制限されず、無溶媒下であるいは溶媒中で行われてもよいが好ましくは溶媒中で行なわれる。例えば、(9)化合物、(10)化合物、(11)化合物、あるいは、(12)化合物は、いずれの形態でジアゾ化合物に添加されてもよいが、好ましくは溶液の形態で添加される。ここで、使用される溶媒は、(9)化合物、(10)化合物、(11)化合物、あるいは、(12)化合物を溶解または分散できるものであれば特に制限されない。例えば、水、メタノールなどが使用される。上記溶媒は、単独で使用されてもまたは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶媒を使用する際の溶媒の使用量は、特に制限されないが、(9)化合物、(10)化合物、(11)化合物、あるいは、(12)化合物の濃度が、好ましくは3〜30重量%となるような量である。
【0102】
また、(9)化合物、(10)化合物、(11)化合物、あるいは、(12)化合物の溶解性、カップリング反応の反応性などを考慮すると、(9)化合物、(10)化合物、(11)化合物、あるいは、(12)化合物の溶液は、さらに塩基を含むことが好ましい。この際、塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。塩基の添加量は、特に制限されないが、(9)化合物、(10)化合物、(11)化合物、あるいは、(12)化合物 1モルに対して、0.9〜20モルである。
【0103】
上記カップリング反応条件は、(9)化合物、(10)化合物、(11)化合物、あるいは、(12)化合物は、との反応が進行して所望のピリドンアゾ化合物を得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、好ましくは−15〜15℃、より好ましくは−10〜10℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1〜30分間、より好ましくは0.5〜20分である。
【0104】
上記カップリング反応終了後、例えば、ろ過などを行うことによって濾別し、乾燥(例えば、真空乾燥)を行うことによって、本発明のピリドンアゾ化合物の前駆体を得る(本明細書中では、単に「ピリドンアゾ化合物前駆体」とも称する)。
【0105】
最後は、所望のピリドンアゾ化合物の構造となるように、所望のシランカップリング剤を適宜選択して、従来公知の方法によって、前記ピリドンアゾ化合物前駆体に、シランカップリング剤由来の基を導入することによって、本発明のピリドンアゾ化合物を作製することができる。
【0106】
一実施形態を説明すると、得られたピリドンアゾ化合物前駆体のカルボン酸(−COOH)またはスルホン酸(−SOH)を、塩素化剤を用いて、カルボン酸クロライド(−COCl)またはスルホニルクロライド(−SOCl)へと変換(塩素化)する。当該塩素化反応は、好ましくは溶媒存在下で行われる。この際に使用される溶媒としては、ピリドンアゾ化合物前駆体および塩素化剤を十分に溶解または分散できるものであれば特に制限はない。この際、2種類以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。溶媒としては、具体的に、アセトニトリル、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、アセトン、エチルメチルケトン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−ジクロロベンゼンなどが挙げられる。使用される溶媒の量も、特に制限はないが、ピリドンアゾ化合物前駆体の濃度が、好ましくは1〜30重量%となるような量である。
【0107】
塩素化反応に用いる塩素化剤は、特に制限はなく、従来公知の塩素化剤を適宜選択することができる。具体的には、塩素化剤としては、塩化チオニル、クロロスルホン酸、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リンなどが挙げられ、塩化チオニルが特に好ましい。塩素化剤の使用量も特に制限はないが、ピリドンアゾ化合物前駆体1モルに対して、1〜8モルである。
【0108】
上記塩素化反応において、ピリドンアゾ化合物前駆体および塩素化剤の添加順序は、特に制限されない。塩素化反応条件は、所望のカルボン酸クロライド、スルホニルクロライドを得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜90℃である。また、反応時間は、好ましくは0.5〜40時間、より好ましくは1〜24時間である。反応終了後、必要に応じ、反応液を水に注ぎ、カルボン酸クロライド、スルホニルクロライドを析出させ、析出物を濾別する。その後、必要に応じて析出物を乾燥(特に、真空乾燥)させることによって、所望のカルボン酸クロライド、スルホニルクロライドを得ることができる。
【0109】
その後、得られた、カルボン酸クロライド、スルホニルクロライドを、所望のアミンを有するシランカップリング剤(以下、「アミノシランカップリング剤」とも称する)と反応させて、酸アミド化、スルホンアミド化することによって、所望のピリドンアゾ化合物を合成する。当該酸アミド化、スルホンアミド化反応は、好ましくは溶媒存在下で行われる。この際に使用される溶媒としては、カルボン酸クロライド、スルホニルクロライドおよびアミノシランカップリング剤を十分に溶解または分散できるものであれば特に制限はない。溶媒としては、具体的に、メタノール、1,2−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、エチルメチルケトン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−ジクロロベンゼンなどが挙げられる。使用される溶媒の量も、特に制限はないが、カルボン酸クロライド化、スルホニルクロライド化された前駆体の濃度が、好ましくは1〜30重量%となるような量である。
【0110】
式(1)、式(1’)、または式(2)で示されるピリドンアゾ化合物を得るための酸アミド化またはスルホンアミド化反応にアミノシランカップリング剤を用いる場合、その使用量は、所望のピリドンアゾ化合物が得られる量であれば特に制限はない。カルボン酸クロライド化、スルホニルクロライド化された前駆体1モルに対して(カルボン酸クロライド化、もしくはスルホニルクロライド化された官能基が1分子あたりn個ある場合は、前駆体1/nモルに対して、ただしnは1以上の整数)、好ましくは0.9〜20モル、より好ましくは1〜10モルで反応させることができる。
【0111】
式(2’)で示されるピリドンアゾ化合物を得るための酸アミド化またはスルホンアミド化反応に、分子中に2個のアミン部位を有するアミノシランカップリング剤を用いる場合、その使用量は、所望のピリドンアゾ化合物が得られる量であれば特に制限はない。カルボン酸クロライド化、スルホニルクロライド化された前駆体1モルに対して(カルボン酸クロライド化、もしくはスルホニルクロライド化された官能基が1分子あたりn個ある場合は、前駆体1/nモルに対して、ただしnは1以上の整数)、好ましくは0.4〜1.3モル、より好ましくは0.45〜1.1モルで反応させることができる。
【0112】
また、酸アミド化、スルホンアミド化反応は、副生するHClをトラップするために、塩基存在下で行われることが好ましい。この際に使用される塩基は、特に制限はないが、具体的には、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられ、特にトリエチルアミンが好ましい。
【0113】
酸アミド化、スルホンアミド化反応において、カルボン酸クロライド化、スルホニルクロライド化された前駆体、ジアミンシランカップリング剤の添加順序は、特に制限されない。例えば、カルボン酸クロライド化、スルホニルクロライド化された前駆体、および、ジアミンシランカップリング剤を同時に添加する方法;カルボン酸クロライド化、スルホニルクロライド化された前駆体を、ジアミンシランカップリング剤に添加する方法;ジアミンシランカップリング剤を、カルボン酸クロライド化、スルホニルクロライド化された前駆体に添加する方法のいずれであってもよい。好ましくは、カルボン酸クロライド化、スルホニルクロライド化された前駆体に、ジアミンシランカップリング剤を添加(特に、滴下)する。このような添加順序とすることによって、目的物を良好な収率で得ることができる。
【0114】
酸アミド化、スルホンアミド化の反応条件は、所望のピリドンアゾ化合物を得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、好ましくは−10〜40℃、より好ましくは−5〜30℃である。また、反応時間は、好ましくは0.01〜2時間、より好ましくは0.1〜1時間である。反応終了後、反応溶液に酸の水溶液(例えば、酢酸、塩酸など)を注ぎ、あるいは、酸の水溶液に反応溶液を注ぎ、析出物を析出させ、析出物を濾別する。その後、必要に応じて析出物を乾燥(特に、真空乾燥)させることによって、本発明のピリドンアゾ化合物を得ることができる。
【0115】
本発明のピリドンアゾ化合物(例えば、印字物)が、加熱下におかれる場合、例えば、80〜100℃、120〜150℃、あるいは、180〜200℃、100〜200時間、24〜48時間、あるいは1〜5時間、加熱下におかれる場合であっても、本発明のピリドンアゾ化合物は、耐熱性が良好であるため、昇華したり、分解したりしにくい。
【0116】
以下、本発明のピリドンアゾ化合物の用途として、インクジェット用インクを例に挙げて説明する。すなわち、本発明の他の形態は、本発明のピリドンアゾ化合物を含むインクジェット用インクである。
【0117】
本発明のインクジェット用インクは、本発明のピリドンアゾ化合物を色素として含む以外は、特開2010−195904号公報、特開2009−132812号公報および特開平11−106693号公報など、従来と同様のインクジェット用インクでありうる。
【0118】
本発明のインクジェット用インクの組成は、本発明のピリドンアゾ化合物を色素として含む以外は公知の組成と同様でありうる。例えば、本発明のインクジェット用インクは、色素、樹脂および溶剤を含む。
【0119】
本発明のインクジェット用インクは、本発明のピリドンアゾ化合物を色素として含有することが必須である。ここで、本発明のピリドンアゾ化合物の配合量は特に制限されないが、インクの総重量に対して、1〜40重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。このような範囲であれば、充分な濃度の印字面が得られ、また、インキ中での安定した溶解状態が得られうる。なお、本発明のピリドンアゾ化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0120】
また、本発明のインクジェット用インクは、他の顔料または染料を併用してもよい。他の顔料または染料は、特に制限されず、公知の顔料または染料が使用できる。なお、上記他の顔料または染料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0121】
本発明のインクジェット用インクに使用される樹脂は特に制限されず、インクジェット用インクに使用される公知の樹脂が使用できる。また、樹脂は、粘度や密着性等の特性を考慮して適宜選択できる。具体的には、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、フェノール樹脂、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。上記樹脂の重量平均分子量は特に制限されず、所望のインク粘度などを考慮して適宜選択できる。具体的には、上記樹脂の重量平均分子量は、1000〜40000が好ましい。このような範囲であれば、インクの粘度を適切な程度に調節できる。また、上記樹脂の配合量(インキの樹脂分)は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、0.5〜20重量%が好ましく、0.6〜15重量%がより好ましい。このような範囲であれば、適度なインク粘度が得られるため、インクを、液滴吐出や方向乱れを起こすことなく、安定して吐出でき、印字面から剥がれることなく被印刷体への密着性に優れ、色素が良好に保持されうる。なお、上記樹脂は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、粘度および密着性等の特性をさらに向上することを目的として、より高分子量の樹脂を併用してもよい。
【0122】
本発明のインクジェット用インクに使用される溶剤は、他の成分(色素や樹脂など)を溶解できるものであれば特に制限されないが。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルアルコール、エチレングリコールモノメチルアルコール等のアルキレングリコールエーテル系溶剤;トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらのうち、ケトン系溶剤が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンがより好ましい。また、上記溶剤の配合量は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、0.1〜20重量%が好ましい。このような範囲であれば、他の成分(色素や樹脂など)を効率よく溶解することができる。なお、上記溶剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0123】
また、上記形態のインクジェット用インクは、他の添加剤を含んでもよい。ここで、他の添加剤としては、特に制限されず、インクジェット用インクに使用される添加剤が同様にして使用できる。例えば、電導度調整剤、アミン、分散剤、重合禁止剤、印刷適性や印刷物耐性を高めるために表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、および酸化防止剤などが挙げられる。なお、これらの他の添加剤は上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0124】
上記形態のインクジェット用インクは、公知の方法によって製造できる。例えば、色素、重合性モノマー、重合開始剤、および必要であれば他の添加剤を、サンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することによって、調製できる。この際、色素の高濃度の濃縮液を予め作製した後、重合性モノマーで希釈してもよい。なお、必要であれば、このようにして得られた分散液を、孔径3μm以下さらには、1μm以下のフィルターで濾過してもよい。
【0125】
本発明のインクジェット用インクの使用形態は、特に制限されず、公知のインクジェットによる印刷方法が適用できる。例えば、本発明のインクジェット用インクをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから被印刷体上に吐出した後、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより被印刷体上のインクは速やかに硬化する。なお、活性エネルギー線の光源として紫外線を照射する場合、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザーやLED、および太陽光を使用することができる。上記光源は、用いる重合開始剤の感度に合わせて適切に選択することが好ましい。本発明のインクの硬化に使用し得る紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500〜5,000mW/cmであることが好ましい。このような照射強度であれば、記録媒体にダメージを与えることなく、また色材の退色を誘発しない。
【0126】
本発明のインクジェット用インクに含まれるピリドンアゾ化合物は、耐熱性に優れる。よって、当該インクジェット用インクが、被印刷体上に吐出された後に熱処理されるような用途に使用される場合であっても、ピリドンアゾ化合物の分解が抑ええられるため、変色を効果的に防止することができる。また、本発明のインクジェット用インクに含まれるピリドンアゾ化合物は、溶剤溶解性にも優れるため、当該インクジェット用インク中において安定した溶解状態が維持され、印字後に重合された後は、耐溶剤性が向上する。
【実施例】
【0127】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0128】
実施例1<化合物(1)の合成>
【0129】
【化21】

【0130】
シアノ酢酸メチル200gとブチルアミン136gを混合し、100℃で5時間撹拌させた後、さらにアセト酢酸メチル226g、引き続きピペリジン181gを滴下し、100℃で5時間撹拌させた。反応溶液を室温まで冷却後、激しく撹拌した7.2重量%塩酸2000gに対し、反応溶液を滴下した。ろ取して得られた析出物をアセトン400g/水600gで撹拌洗浄し、ろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(a)を237g得た。
【0131】
【化22】

【0132】
3−アミノ安息香酸10.0gを9重量%塩酸194gに溶解させ、0℃で亜硝酸ナトリウム5.53gの水(11.1g)溶液を滴下した。1時間撹拌した後、スルファミン酸1.42gを加え、さらに5分間撹拌した。その後、化合物(a)15.0gを水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム4.38g/水164g)に溶解して得られた溶液を、この反応溶液に滴下した。ろ取して得られた析出物をアセトン100g/水300gの混合溶液で撹拌洗浄し、ろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(b)を23.9g得た。
【0133】
【化23】

【0134】
化合物(b)18.0gを1,4−ジオキサン150g中懸濁させ、室温で塩化チオニルを18.1g加えた。80℃で3.5時間撹拌し、濃縮後、加熱真空乾燥し、化合物(c)を18.6g得た。
【0135】
【化24】

【0136】
化合物(c)13.3gをアセトニトリル79.6g中、0℃で撹拌し、懸濁させた。その温度で3−アミノプロピルトリメトキシシラン6.71gとトリエチルアミン10.8gの混合液を滴下し、さらに20分間攪拌した。さらに、その温度で反応溶液に10重量%酢酸水溶液221gを滴下し、析出物を直ちに濾取した。加熱真空乾燥させ、アゾ化合物(1)を16.5g得た。
【0137】
実施例2<化合物(2)の合成>
【0138】
【化25】

【0139】
シアノ酢酸メチル20.0gとエトキシエチルアミン15.8gを混合し、100℃で5時間撹拌させた後、さらにアセト酢酸メチル22.6g、引き続きピペリジン18.1gを滴下し、100℃で6時間撹拌させた。反応溶液を室温まで冷却後、激しく撹拌した7.2重量%塩酸200gに対し、反応溶液を滴下ロートで滴下した。析出物をろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(d)を27.2g得た。
【0140】
【化26】

【0141】
3−アミノ安息香酸7.00gを9重量%塩酸136gに溶解させ、0℃で亜硝酸ナトリウム3.87gの水(7.75g)溶液を滴下した。1時間撹拌した後、スルファミン酸0.99gを加え、さらに5分間撹拌した。その後、化合物(d)11.3gを水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム3.06g/水123g)に溶解して得られた溶液を、この反応溶液に滴下した。ろ取して得られた析出物をろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(e)を17.9g得た。
【0142】
【化27】

【0143】
化合物(e)17.9gを1,4−ジオキサン142g中懸濁させ、室温で塩化チオニルを14.3g加えた。80℃で3時間撹拌し、濃縮後、加熱真空乾燥し、化合物(f)を16.2g得た。
【0144】
【化28】

【0145】
化合物(f)2.00gをアセトニトリル11.5g中、0℃で撹拌し、懸濁させた。その温度で3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.97gとトリエチルアミン1.56の混合液を滴下し、さらに5分間攪拌した。反応溶液を10重量%酢酸水溶液33gに滴下し、析出物を直ちに濾取した。加熱真空乾燥させ、アゾ化合物(2)を2.33g得た。
【0146】
実施例3<化合物(3)の合成>
【0147】
【化29】

【0148】
シアノ酢酸メチル100gとイソプロポキシプロピルアミン109gを混合し、80℃で6.5時間撹拌させた後、さらにアセト酢酸メチル113g、引き続きピペリジン90.3gを滴下し、80℃で5.5時間撹拌させた。反応溶液を室温まで冷却後、激しく撹拌した7.2重量%塩酸1000gに対し、反応溶液を滴下ロートで滴下した。析出物をメタノール300g/水400gで撹拌洗浄後、ろ取し、加熱真空乾燥し、化合物(g)を142g得た。
【0149】
【化30】

【0150】
3−アミノ安息香酸8.00gを9重量%塩酸156gに溶解させ、0℃で亜硝酸ナトリウム4.43gの水(8.86g)溶液を滴下した。40分間撹拌した後、スルファミン酸1.13gを加え、さらに5分間撹拌した。その後、化合物(g)14.6gを水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム3.50g/水159g)に溶解して得られた溶液を、この反応溶液に滴下した。ろ取して得られた析出物をアセトン/水で撹拌洗浄し、ろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(l)を16.6g得た。
【0151】
【化31】

【0152】
化合物(l)16.6gを1,4−ジオキサン123g中懸濁させ、室温で塩化チオニルを12.4g加えた。80℃で4時間撹拌し、濃縮後、加熱真空乾燥し、化合物(m)を16.8g(97モル%)得た。
【0153】
【化32】

【0154】
化合物(m)2.00gをアセトニトリル10.7g中、0℃で撹拌し、懸濁させた。その温度で3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.90gとトリエチルアミン1.46gの混合液を滴下し、さらに15分間攪拌した。反応溶液を10重量%酢酸水溶液33gに滴下し、析出物を直ちに濾取した。加熱真空乾燥させ、アゾ化合物(3)を2.43g得た。
【0155】
実施例4<化合物(4)の合成>
【0156】
【化33】

【0157】
アントラニル酸30.0gを9重量%塩酸583gに溶解させ、0℃で亜硝酸ナトリウム16.6gの水(33.2g)溶液を滴下した。30分間撹拌した後、スルファミン酸4.25gを加え、さらに5分間撹拌した。その後、化合物(a)45.1gを水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム13.1g/水491g)に溶解して得られた溶液を、この反応溶液に滴下した。ろ取して得られた析出物をメタノールで撹拌洗浄し、ろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(p)を75.5g得た。
【0158】
【化34】

【0159】
化合物(p)25.0gを1,4−ジオキサン208g中懸濁させ、室温で塩化チオニルを21.0g加えた。80℃で6時間撹拌し、濃縮後、加熱真空乾燥し、化合物(q)を26.3g得た。
【0160】
【化35】

【0161】
化合物(q)2.00gをアセトニトリル12.0g中、0℃で撹拌し、懸濁させた。その温度で3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.25gとトリエチルアミン1.63gの混合液を滴下し、さらに15分間攪拌した。反応溶液を10重量%酢酸水溶液33gに滴下し、析出物を直ちに濾取した。加熱真空乾燥させ、アゾ化合物(4)を2.16g得た。
【0162】
実施例5<化合物(5)の合成>
【0163】
【化36】

【0164】
シアノ酢酸メチル150gとプロピルアミン82.3gを混合し、50℃で6時間撹拌した後、100℃で3時間撹拌した。その後、アセト酢酸メチル169g、引き続きピペリジン136gを滴下し、100℃で4.5時間撹拌させた。反応溶液を室温まで冷却後、激しく撹拌した7.2重量%塩酸1500gに対し、反応溶液を滴下した。ろ取して得られた析出物をアセトン500gで撹拌洗浄し、ろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(r)を119g得た。
【0165】
【化37】

【0166】
スルファニル酸37.0gを水150g、および濃塩酸32.0gの混合溶液に溶解させた後、5〜10℃で4N亜硝酸ナトリウム25.0gを滴下し、その温度で1時間撹拌した。
【0167】
次いで化合物(r)38.9gに水370gを加え、さらに2N水酸化ナトリウムでpH8に調製した溶液をカップリング成分中に10℃以下の温度に保持して添加した。水酸化ナトリウムでpH5.0に調製してカップリング反応を完結させ、反応終了後塩化ナトリウム100gを用いて塩析させ、析出した生成物を濾別し、加熱真空乾燥することにより下記で表される化合物(s)を61.0g得た。
【0168】
【化38】

【0169】
化合物(s)10gをアセトニトリル59gとDMF4gの混合溶液中懸濁させ、室温で塩化チオニルを7g加えた。40℃で4時間撹拌し、室温まで冷却後、反応液を水100gに空けた。析出物をろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(t)を7.6g得た。
【0170】
【化39】

【0171】
化合物(t)4gをジオキサン30g中、5℃で撹拌し、懸濁させた。その温度で3−アミノプロピルトリエトキシシラン2.2gとトリエチルアミン3.7gの混合液を滴下し、さらに5分間攪拌した。反応溶液を5重量%酢酸水溶液38gに滴下し、析出物を直ちに濾取した。加熱真空乾燥させ、アゾ化合物(5)を5g得た。
【0172】
実施例6<化合物(6)の合成>
【0173】
【化40】

【0174】
スルファニル酸37.0gを水150g、および濃塩酸32.0gの混合溶液に溶解させた後、5〜10℃で4N亜硝酸ナトリウム25.0gを滴下し、その温度で1時間撹拌した。次いで化合物(a)41.7gに水370gを加え、さらに2N水酸化ナトリウムでpH8に調製した溶液をカップリング成分中に10℃以下の温度に保持して添加した。水酸化ナトリウムでpH5.0に調製してカップリング反応を完結させ、反応終了後塩化ナトリウム100gを用いて塩析させ、析出した生成物を濾別し、加熱真空乾燥することにより下記で表される化合物(u)を70.6g得た。
【0175】
【化41】

【0176】
化合物(u)50.0gをアセトニトリル296gとDMF19gの混合溶液中懸濁させ、室温で塩化チオニルを39.5g加えた。40℃で5時間撹拌し、室温まで冷却後、反応液を水444gに空けた。析出物をろ取後、加熱真空乾燥し、化合物(v)を43.8g得た。
【0177】
【化42】

【0178】
化合物(v)3.00gをアセトニトリル19.1g中、0℃で撹拌し、懸濁させた。その温度で3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.71gとトリエチルアミン2.23gの混合液を滴下し、さらに5分間攪拌した。反応溶液を10重量%酢酸水溶液50gに滴下し、析出物を直ちに濾取した。加熱真空乾燥させ、アゾ化合物(6)を3.76g得た。
【0179】
実施例7<重合反応>
化合物(1)0.62gをアセトン6.2gと水3.1gの混合溶媒に懸濁させ、室温で3時間撹拌した。水を加えサンプルを十分析出させた後、ろ取し、加熱真空乾燥し、化合物(1)が重合処理されたアゾ化合物(1)’を得た。
【0180】
実施例8<重合反応>
化合物(2)1.00gをアセトン10.0gと3.6重量%塩酸5.0gの混合溶媒に懸濁させ、室温で3時間撹拌した。水を加えサンプルを十分析出させた後、ろ取し、加熱真空乾燥し、化合物(2)が重合処理されたアゾ化合物(2)’を得た。
【0181】
実施例9〜12<重合反応>
化合物(3)〜(6)をそれぞれ、実施例(8)と同様の操作を行いアゾ化合物(3)’〜(6)’を得た。
【0182】
比較例1<化合物(7)の合成>
【0183】
【化43】

【0184】
スルファニル酸37.0gを水150g、および濃塩酸32.0gと共に十分撹拌した後、4N亜硝酸ナトリウム25.0gを用いて5〜10℃でジアゾ化し、次いで1−エチル−1,2−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソ−3−ピリジンカルボニトリル42.0gに水370gを加え、さらに2N水酸化ナトリウムでpH8に調製した溶液をカップリング成分中に10℃以下の温度に保持して添加した。水酸化ナトリウムでpH5.0に調製してカップリング反応を完結させ、反応終了後塩化ナトリウム100gを用いて塩析させ、析出した生成物を濾別し、60℃で真空乾燥させることにより下記で表される化合物(d)を60.4g得た。
【0185】
【化44】

【0186】
化合物(d)35.0gをジメチルホルムアミド15.6g、およびアセトニトリル215.5gの混合溶媒中、氷冷下撹拌して懸濁させている中に、塩化チオニルを滴下した。しばらくしたら40℃に昇温し、さらに4時間撹拌した。その後、懸濁液を525gの水へ撹拌しながら注ぎ込み、さらに10分間撹拌した。生じた沈殿物を濾取し、60℃で真空乾燥することによりスルホン酸塩化物(e)を29.2g得た。
【0187】
【化45】

【0188】
スルホン酸塩化物(e)29.2gをクロロホルム中に氷冷下懸濁し、2−エチルヘキシルアミン14.9g、およびトリエチルアミン38.9gの混合溶液をゆっくり滴下した。室温まで昇温し、10分間撹拌した後、反応溶液を濃縮した。濃縮液をアセトン150gに溶解した後、1M塩酸600部に注ぎ込み、生じた沈殿物を濾取した。この沈殿物をメタノール400gに加熱還流下溶解し、ゆっくり室温まで冷却した。生じた沈殿物を濾取した後、60℃で真空乾燥することにより化合物(7)を28.4g得た。
実施例1〜6、実施例7〜12、比較例1で得られたアゾ化合物を用いてグラム吸光係数、溶解度試験、昇華性試験を行った。結果を表1にまとめて示した。
【0189】
<グラム吸光係数測定>
得られたアゾ化合物30mgの酢酸エチル溶液をメスフラスコ内で50mLまで希釈し、0.6g/L溶液を調整した。ついで、調整した溶液からホールピペットで1mL取り出し、メスフラスコ内で酢酸エチルを用い50mLまで希釈することにより0.012g/L溶液を調製した。このように調製した溶液を1cm角の硬質ガラス製セルに入れ、分光光度計(日立ハイテク社製 型番U−2910)を用いて吸収スペクトルを測定した。最大吸光度でのグラムあたりの吸光度ε(g)を以下の式で計算した。
【0190】
【数1】

【0191】
<溶解度試験>
得られたアゾ化合物30mgをバイヤル瓶にとり、室温(20℃)下、シクロヘキサノン(CHN)を加え、上記アゾ化合物を溶解させるための必要最小限量のCHNの重量を求めた。求めたCHN重量におけるアゾ化合物の濃度(重量%)を算出し、溶解度(溶解性)とした。
【0192】
<昇華性試験>
アゾ化合物30mgを内径28mm、高さ15mmのシャーレに測りとり、蓋をしてホットプレートで230℃で2時間加熱した。その後、シャーレのふたに付着した化合物を3mLのシクロヘキサノンに溶解し、1cm角の硬質ガラス製セルに入れて分光光度計(日立ハイテク社製 型番U−2910)を用い、吸収スペクトルを測定した。420nmでの吸光度の値を求めた。
【0193】
【表1】

【0194】
実施例1〜6の化合物は、昇華物について420nmにおいての吸光度値が比較例1の比較化合物に比べ、明らかに色素の昇華が抑えられている。アルコキシシリル基が導入されると、加熱により部分的に重合が進み昇華が抑えられる効果が認められる。実施例7〜12の化合物は、実施例1〜6の化合物を意図的に重合させた化合物であるが、実施例1〜10に比べさらに昇華が抑えられている。本発明の化合物は、昇華性に優れかつCHNへの可溶性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(3’):
【化1】

上記式(3’)中、
は、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり;
は、水素原子または炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり;
mは、1〜3の整数である;
で表される、アルコキシシリル基を含む、ピリドンアゾ化合物。
【請求項2】
下記式(1)、式(1’)、式(2)または式(2’)で表される、請求項1に記載のピリドンアゾ化合物:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

上記式(1)、式(1’)、式(2)および式(2’)中、
Xは、下記式(3):
【化6】

で表される基であり;
Yは、それぞれ独立して、−CO−または−SO−であり、
は、水素原子、炭素数1〜5の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基またはフェニル基であり;
は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、または、下記(4):
【化7】

であり、この際、R’は、それぞれ独立して、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり;
は、上記と同様の定義であり;
は、上記と同様の定義であり;
mは、上記と同様の定義であり;
は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、NO、炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基、または、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシ基であり;
Rは、それぞれ独立して、水素、または、炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基、または炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基であり;
pは、1〜5の整数であり;
qは、それぞれ独立して、0〜4の整数であり;
は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり;
は、それぞれ独立して、炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数7〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアラルキル基、炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜16の直鎖もしくは分岐鎖のヒドロキシアルコキシアルキル基、炭素数1〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシアルキル基、炭素数2〜10の複素環基、または、−R’−Xであり、この際、R’は、炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり、Xは、上記と同様の定義であり;
は、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基、または、下記式(5):
【化8】

であり、この際、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であり;ならびに、
nは、1〜8の整数を表す。
【請求項3】
mは3である、請求項1または2に記載のピリドンアゾ化合物。

【公開番号】特開2013−23451(P2013−23451A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157222(P2011−157222)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】