説明

ピリピロペンA生合成遺伝子

【課題】新規なピリピロペン類縁体の生産、ピリピロペンA生産菌の生産性の向上、微生物殺虫剤の製造、害虫耐性植物の創出等に有用なピリピロペンA生合成遺伝子を提供する。
【解決手段】ピリピロペンAの生合成に関与する少なくとも一種のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでなる単離された新規ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含んでなる組換えベクター、および該ポリヌクレオチドを含んでなる形質転換体。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、2008年7月24日に出願された日本出願特願2008−190862号、2008年10月20日に出願された日本出願特願2008−270294号、および2009年1月30日に出願された日本出願特願2009−20591号に基づく優先権の主張を伴うものであり、これら日本出願の全開示内容は、引用することにより本願の開示の一部とされる。
【発明の背景】
【0002】
技術分野
本発明は、ピリピロペンA生合成遺伝子に関する。
【0003】
背景技術
ピリピロペンAは、特開平4−360895号公報(特許文献1)およびJournal of Antibiotics(1993),46(7),1168−9(非特許文献1)に開示されるように、ACAT(アシルCoA・コレステロールアシルトランスフェラーゼ)阻害活性を有し、コレステロール蓄積に起因する疾患の治療等への応用が期待されている。
【0004】
また、有機合成化学協会誌(1998),56巻6号,478−488頁(非特許文献2)、WO94/09147号公報(特許文献2)、特開平6−184158号公報(特許文献3)、特開平8−239385号公報(特許文献4)、特開平8−259569号公報(特許文献5)、特開平8−269062号公報(特許文献6)、特開平8−269063号公報(特許文献7)、特開平8−269064号公報(特許文献8)、特開平8−269065号公報(特許文献9)、特開平8−269066号公報(特許文献10)、特開平8−291164号公報(特許文献11)、およびJournal of Antibiotics(1997),50(3),229−36.(非特許文献3)には、ピリピロペン類縁体および誘導体およびそれらのACAT阻害活性について開示されている。
【0005】
さらに、Applied and Environmental Microbiology(1995),61(12),4429−35.(非特許文献4)には、ピリピロペンAが、オオタバコガ幼虫に対して殺虫活性を有することが開示されている。さらに、WO2004/060065号公報(特許文献12)には、ピリピロペンAが、コナガ幼虫およびチャイロコメムシダマシに対して殺虫活性を有することが開示されている。
【0006】
また、WO2006/129714号公報(特許文献13)およびWO2008/066153号公報(特許文献14)には、ピリピロペン類縁体がアブラムシに対して殺虫活性を有することが開示されている。
【0007】
さらに、ピリピロペンAの生産菌として、特開平4−360895号公報(特許文献1)にはアスペルギルス フミガタスFO-1289株、Applied and Environmental Microbiology(1995),61(12),4429−35.(非特許文献4)には、ユーペニシリウム レティキュロスポラムNRRL-3446株、WO2004/060065号公報(特許文献12)にはペニシリウム グリセオフルバムF1959株、および公開技報2008-500997号(特許文献15)にはペニシリウム コピロビウムPF1169株が開示されている。
【0008】
また、ピリピロペンAの生合成ルートとして、Journal of Organic Chemistry(1996), 61,882-886. (非特許文献5)およびChemical Review(2005), 105, 4559-4580. (非特許文献6)には、アスペルギルス フミガタスFO-1289株での推定生合成ルートが開示されており、アスペルギルス フミガタスFO-1289株においてポリケチド合成酵素およびプレニルトランスフェラーゼのそれぞれによって合成された部分構造が結合され、環化酵素によりピリピロペンAが合成されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−360895号公報
【特許文献2】WO94/09147号公報
【特許文献3】特開平6−184158号公報
【特許文献4】特開平8−239385号公報
【特許文献5】特開平8−259569号公報
【特許文献6】特開平8−269062号公報
【特許文献7】特開平8−269063号公報
【特許文献8】特開平8−269064号公報
【特許文献9】特開平8−269065号公報
【特許文献10】特開平8−269066号公報
【特許文献11】特開平8−291164号公報
【特許文献12】WO2004/060065号公報
【特許文献13】WO2006/129714号公報
【特許文献14】WO2008/066153号公報
【特許文献15】公開技報2008-500997号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Journal of Antibiotics(1993),46(7),1168−9
【非特許文献2】有機合成化学協会誌(1998),56巻6号,478−488頁
【非特許文献3】Journal of Antibiotics(1997),50(3),229−36.
【非特許文献4】Applied and Environmental Microbiology(1995),61(12),4429−35.
【非特許文献5】Journal of Organic Chemistry(1996), 61,882-886.
【非特許文献6】Chemical Review(2005), 105, 4559-4580.
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、今般、ピリピロペンAの生合成に関与する少なくとも一種のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を見出した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
【0012】
従って、本発明の目的は、ピリピロペンAの生合成に関与する少なくとも一種のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離された新規ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含んでなる組換えベクター、および該ポリヌクレオチドを含んでなる形質転換体を提供することにある。
【0013】
そして、本発明の一つの態様によれば、単離されたポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号266のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号266のヌクレオチド配列と厳密な条件下でハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または
(c)配列番号267〜274から選択される少なくとも一つのアミノ酸配列またはそれと実質的に同等なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
であることを特徴とするポリヌクレオチドが提供される。
【0014】
また、本発明の別の態様によれば、単離されたポリヌクレオチドであって、以下の(1)または(2)のいずれかに記載されたヌクレオチド配列から選択された少なくとも1個のヌクレオチド配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド:
(1)下記(a)−(h)のいずれかに記載されたヌクレオチド配列:
(a) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の3342番から5158番までのヌクレオチド配列
(b) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の5382番から12777番までのヌクレオチド配列
(c) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の13266番から15144番までのヌクレオチド配列
(d) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の16220番から18018番までのヌクレオチド配列
(e) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の18506番から19296番までのヌクレオチド配列
(f) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の19779番から21389番までのヌクレオチド配列
(g) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の21793番から22877番までのヌクレオチド配列
(h) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の23205番から24773番までのヌクレオチド配列
(2)(1)において記載されたヌクレオチド配列と厳密な条件下でハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列
が提供される。
【0015】
さらに、本発明の別の態様によれば、ピリピロペンAの生合成に関与する少なくとも一種のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0016】
また、本発明の別の態様によれば、ポリケチド合成酵素活性、プレニルトランスフェラーゼ活性、水酸化酵素活性、アセチル化酵素活性、またはアデニル酸合成酵素活性のいずれか一つまたはそれ以上の活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0017】
さらに、本発明の別の態様によれば、ペニシリウム コピロビウム(Penicillium coprobium)PF1169株由来のものであるポリヌクレオチドが提供される。
【0018】
また、本発明の別の態様によれば、前記ポリヌクレオチドを含んでなる組換えベクターが提供される。
【0019】
さらに、本発明の別の態様によれば、前記ポリヌクレオチドを含んでなる形質転換体が提供される。
【0020】
また、本発明の一つの態様によれば、前記(c)または(d)のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを組込んだ形質転換体を同時に、または別々に培養し、下記式のピリピロペンEからピリピロペンA前駆体を単離することを特徴とする、ピリピロペンA前駆体の製造法が提供される:
【化1】


【0021】
さらに、前記ピリピロペンA前駆体が下記式(I)で表されるものである製造法が提供される:
【化2】


【0022】
また、前記形質転換体を培養し、下記式のピリピロペンOからピリピロペンA前駆体を単離することを特徴とする、ピリピロペンA前駆体の製造法が提供される:
【化3】


【0023】
さらに、前記ピリピロペンA前駆体が下記式(II)で表されるものである製造法が提供される:
【化4】


【0024】
本発明の一つの態様によれば、新規なピリピロペン類縁体の生産、ピリピロペンA生産菌の生産性の向上、新規な微生物殺虫剤の製造、および新規な害虫耐性植物等を創出できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】は、PCR産物のアガロースゲルによる電気泳動パターンを示す。電気泳動は、以下のプライマーを用いて増幅させたPCR産物を用いた。M:分子量マーカー(100bp ラダー)、レーン1:配列番号1および2のプライマー、レーン2:配列番号239および240のプライマー、レーン3:配列番号237および238のプライマー、レーン4:配列番号241および242のプライマー、レーン5:配列番号247および248のプライマー、レーン6:配列番号251および252のプライマー、レーン7:配列番号245および246のプライマー、レーン8:配列番号243および244のプライマー、レーン9:配列番号249および250のプライマー、レーン10:配列番号235および236のプライマー、レーン11:配列番号233および234のプライマー、レーン12:配列番号227および228のプライマー、レーン13:配列番号229および230のプライマー、レーン14:配列番号231および232のプライマー。
【図2】は、図1と同様、PCR産物のアガロースゲルによる電気泳動パターンを示す。電気泳動は、以下のプライマーを用いて増幅させたPCR産物を用いた。M:分子量マーカー(100bp ラダー)、レーン1:配列番号253および254のプライマー、レーン2:配列番号257および258のプライマー、レーン3:配列番号259および260のプライマー、レーン4:配列番号255および256のプライマー、レーン5:配列番号261および262のプライマー。
【図3】は、図1と同様、PCR産物のアガロースゲルによる電気泳動パターンを示す。電気泳動は、以下のプライマーを用いて増幅させたPCR産物を用いた。レーン1:分子量マーカー(100bp ラダー)、レーン2:配列番号264および265のプライマー(400bp増幅断片)。
【図4】は、pUSAのプラスミドマップを表す。
【図5】は、pPP2のプラスミドマップを表す。
【図6】は、P450-2 cDNA増幅のスキームを表す。
【図7】は、pPP3のプラスミドマップを表す。
【図8】は、ピリピロペンEの重アセトニトリル中でのH−NMRスペクトルを表す。
【図9】は、プラスミドpPP2で形質転換されたAspergillus oryzaeの培養生成物の重アセトニトリル中でのH−NMRスペクトルを表す。
【図10】は、ピリピロペンOの重アセトニトリル中でのH−NMRスペクトルを表す。
【図11】は、プラスミドpPP3で形質転換されたAspergillus oryzaeの培養生成物の重アセトニトリル中でのH−NMRスペクトルを表す。
【発明の具体的説明】
【0026】
微生物の寄託
プラスミドpCC1−PP1で形質転換された大腸菌(Escherichia coli EPI300TM−T1)は、2008年10月9日(原寄託日)付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託 センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、受託番号がFERM BP−11133(国内寄託FERM P−21704より移管)(寄託者が付した識別のための表示:Escherichia coli EPI300TM−T1/pCC1−PP1)として寄託されている。
【0027】
プラスミドpPP2で形質転換されたAspergillus oryzaeは、2009年6月23日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託 センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、受託番号がFERM BP−11137(寄託者が付した識別のための表示:Aspergillus oryzae PP2-1)として寄託されている。
【0028】
プラスミドpPP3で形質転換されたAspergillus oryzaeは、2009年7月3日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託 センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に、受託番号がFERM BP−11141(寄託者が付した識別のための表示:Aspergillus oryzae PP3-2)として寄託されている。
【0029】
単離ポリヌクレオチド
本発明は、単離されたポリヌクレオチドである。本発明による単離されたポリヌクレオチドは、(a)配列番号266のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、(b)配列番号266のヌクレオチド配列と厳密な条件下でハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または(c)配列番号267〜274から選択される少なくとも一つのアミノ酸配列またはそれと実質的に同等なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドである。前記単離されたポリヌクレオチドは、ピリピロペンAの生合成に関与する酵素活性を有する少なくとも一種のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有することが好ましい。
【0030】
本発明において「実質的に同等なアミノ酸配列」とは、一つ若しくは複数個のアミノ酸の置換、欠失、付加、または挿入による改変を有するが、ポリペプチドの活性に影響を受けないアミノ酸配列を意味する。改変されるアミノ酸残基の数は、好ましくは1〜40個、より好ましくは1〜数個、さらに好ましくは1〜8個、最も好ましくは1〜4個である。
【0031】
そして、活性に影響を与えない改変の例としては、保存的置換が挙げられる。「保存的置換」とは、ポリペプチドの活性を実質的に変化しないように1若しくは複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基によって置き換えることを意味する。例えば、ある疎水性アミノ酸残基を別の疎水性アミノ酸残基によって置換する場合、ある極性アミノ酸残基を同じ電荷を有する別の極性アミノ酸残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似したアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニン等が挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システイン等が挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジン等が挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
【0032】
また、本発明の単離されたポリヌクレオチドは、以下の(1)または(2)のいずれかに記載されたヌクレオチド配列から選択される少なくとも1個のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドであってもよい:
(1)下記(a)−(h)のいずれかに記載されたポリヌクレオチド配列:
(a) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の3342番から5158番までのヌクレオチド配列
(b) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の5382番から12777番までのヌクレオチド配列
(c) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の13266番から15144番までのヌクレオチド配列
(d) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の16220番から18018番までのヌクレオチド配列
(e) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の18506番から19296番までのヌクレオチド配列
(f) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の19779番から21389番までのヌクレオチド配列
(g) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の21793番から22877番までのヌクレオチド配列
(h) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の23205番から24773番までのヌクレオチド配列
(2)(1)において記載されたヌクレオチド配列と厳密な条件下でハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列。
【0033】
上記(1)または(2)のいずれかに記載されたヌクレオチド配列から選択される少なくとも1個のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、ピリピロペンAの生合成に関与する酵素活性を有する少なくとも一種のポリペプチドをコードすることが好ましい。
【0034】
本発明において「厳密な条件」とは、ハイブリダイゼーション後のメンブレンの洗浄操作を、高温度低塩濃度溶液中で行うことを意味し、例えば、2×SSC濃度(1×SSC:15mMクエン酸3ナトリウム、150mM塩化ナトリウム)、0.5%SDS溶液中で、60℃、20分間の洗浄条件を意味する。
【0035】
また、本発明による上記(1)または(2)のいずれかに記載されたヌクレオチド配列から選択される少なくとも1個のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、ポリケチド合成酵素活性、プレニルトランスフェラーゼ活性、水酸化酵素活性、アセチル化酵素活性、またはアデニル酸合成酵素活性のいずれか一つまたはそれ以上の活性を有するポリペプチドをコードするものであり、特に水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードするものである。
【0036】
さらに、本発明の一つの態様によれば、前記ポリヌクレオチドは、前記ピリピロペンEまたはOの7位および/または13位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするものであり、または前記ピリピロペンEの11位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするものである。
【0037】
単離ポリヌクレオチドの取得
本発明による単離ポリヌクレオチドの取得方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法によりペニシリウム コピロビウムPF1169株または糸状菌から単離することができる。
【0038】
下記の実施例9の方法等で得られる相同配列を元にポリケチド合成酵素遺伝子を特異的に増幅することのできるプライマーを合成し、別途作成したペニシリウム コピロビウムPF1169株のフォスミドゲノムライブラリーに対してPCRさらにコロニーハイブリダイゼーションを行い、組換えベクターを取得し、インサートDNAの塩基配列を決定する。
【0039】
また、下記の実施例9の方法等で得られる相同配列を元にプレニルトランスフェラーゼ遺伝子を特異的に増幅することのできるプライマーを合成し、前記と同様にインサートDNAの塩基配列を決定する。
【0040】
さらに、下記の実施例9の方法等で得られる相同配列を元にポリケチド合成酵素遺伝子およびプレニルトランスフェラーゼ遺伝子のいずれか一方もしくは両方を特異的に増幅することのできるプライマーを合成し、前記と同様にインサートDNAの塩基配列を決定する。
【0041】
また、本発明による配列番号266および上記(1)または(2)のいずれかに記載されたヌクレオチド配列から選択される少なくとも1個のヌクレオチド配列の相同配列を元にポリケチド合成酵素遺伝子、プレニルトランスフェラーゼ遺伝子、水酸化酵素遺伝子、アセチル化酵素遺伝子、またはアデニル酸合成酵素遺伝子のいずれか一つまたはそれ以上、好ましくは水酸化酵素遺伝子を特異的に増幅することのできるプライマーを合成し、前記と同様にインサートDNAの塩基配列を決定する。
【0042】
さらに、種々の糸状菌ポリケチド合成酵素に保存されているアミノ酸配列より増幅用縮重プライマーを合成し、インサートDNAの塩基配列を決定する。
【0043】
形質転換体
一般に、遺伝子組換えにより二次代謝産物の生産性を向上させる方法として、律速反応となっている生合成反応を触媒するタンパク質をコードする遺伝子の発現増強、生合成遺伝子の発現を制御する遺伝子の発現増強や遺伝子破壊、不必要な二次代謝系の遮断等が挙げられる。よって、生合成遺伝子が特定されれば、適当なベクターに連結し、生産菌に導入することにより、二次代謝産物の生産性を向上させることができる。
【0044】
一方、遺伝子組換えにより新規活性物質を創出するには、ポリケチド合成酵素のドメイン改変[池田と大村著,蛋白質核酸酵素,第43巻,p.1265-1277,1998年]、[カレラス アンド サンティ(Carreras, C. W.and Santi,D.V.)著,「カレント・オピニオン・イン・バイオテクノロジー(Cu rrent Opinion in Biotechnology)」,(英国),1998年,第9巻,p.403-411]、[ハッチンソン(Hutchinson, C. R.)著,「カレント・オピニオン・イン・マイクロバイオロジー(Current Opinion in Microbiology)」,(英国),1998年,第1巻,p.319-329]、[カッツ アンド マクダニエル(Katz, L. and McDaniel, R.)著,「メディシナル・リサーチ・レビューズ(Medicinal Research Reviews)」,(米国),1999年,第19巻,p.543-558]、生合成遺伝子の破壊、他の生物からの修飾酵素遺伝子の導入[ハッチンソン(Hutchinson, C. R.)著,「バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)」,(米国),1994年,第12巻,p.375-380]等が行われている。よって、生合成遺伝子が特定されれば、適当なベクターに連結し、二次代謝産物の生産菌に導入することにより新規活性物質を創出することが可能となる。
【0045】
従って、本発明による単離ポリヌクレオチドを適当なベクターに連結して宿主に導入し、発現させること、その発現を増強すること、または一部の単離ポリヌクレオチドの相同組換えを利用して遺伝子破壊を行いその機能を欠損させることにより、ピリピロペンAを生産し、またはその生産性を向上させることができる。
【0046】
相同組換えを利用した遺伝子破壊は常法に従って実施することができ、遺伝子破壊に用いられるベクターの作成やベクターの宿主への導入は当業者に自明である。
【0047】
本発明による組換えベクターは、好ましくは、配列番号266および上記(1)に記載されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、配列番号266および上記(1)において記載されたヌクレオチド配列と厳密な条件下でハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、および配列番号267〜274から選択される少なくとも一つのアミノ酸配列またはそれと実質的に同等なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドのいずれか一種またはそれ以上を含んでなることが好ましい。さらに好ましくは、本発明による組換えベクターは、前記ポリペプチドがピリピロペンEまたはOの7位および/または13位を水酸化するポリヌクレオチドを含んでなるものであり、また前記ポリペプチドがピリピロペンEの11位を水酸化するポリヌクレオチドを含んでなるものである。
【0048】
遺伝子導入用の組換えベクターは、本発明により提供されるポリヌクレオチドを、例えば、[サンブルーク(Sambrook, J.)ら著,「モレキュラー・クローニング(Molecular cloning):ア・ラボラトリー・マニュアル(a laboratory manual)」,(米国),第2版,コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory),1989年]に記載の遺伝子組換え技術の常法に従って目的に応じて適当な形態に修飾し、ベクターに連結することによって作製することができる。
【0049】
本発明において使用される組換えベクターは、ウイルス、プラスミド、フォスミド、またはコスミドベクター等から適宜選択することができる。例えば、宿主細胞が大腸菌の場合はλファージ系のバクテリオファージ、pBR、pUC系のプラスミド、枯草菌の場合はpUB系のプラスミド、酵母の場合はYEp、YRp、YCp、YIp系のプラスミドベクターが挙げられる。
【0050】
また、使用されるプラスミドの内の少なくとも一つは、形質転換体を選抜するための選択マーカーを含むのが好ましく、選択マーカーとしては薬剤耐性遺伝子、栄養要求性を相補する遺伝子を使用することができる。その好ましい具体例としては、使用する宿主が細菌の場合は、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子などであり、酵母の場合はトリプトファン生合成遺伝子(TRP1)、ウラシル生合成遺伝子(URA3)、ロイシン生合成遺伝子(LEU2)などであり、カビの場合はハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子、ブレオマイシン耐性遺伝子、オーレオバシジン耐性遺伝子などであり、植物の場合にはカナマイシン耐性遺伝子、ビアラホス耐性遺伝子などが挙げられる。
【0051】
さらに、本発明において利用される発現ベクターとしてのDNA分子は、各遺伝子の発現に必要なDNA配列、例えばプロモーター、転写開始信号、リボソーム結合部位、翻訳停止シグナル、転写終結信号などの転写調節信号、翻訳調節信号を有しているのが好ましい。プロモーターとしては、大腸菌においてはラクトースオペロン、トリプトファンオペロンなどのプロモーター、酵母ではアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子、酸性フォスファターゼ遺伝子、ガラクトース資化性遺伝子、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子などのプロモーター、カビではα−アミラーゼ遺伝子、グルコアミラーゼ遺伝子、セロビオハイドロラーゼ遺伝子、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、abp1遺伝子などのプロモーター、植物ではCaMV 35S RNAプロモーター、 CaMV 19S RNAプロモーター、ノパリン合成酵素遺伝子プロモーターが好ましく用いることができるものとして挙げられる。
【0052】
本発明による単離ポリヌクレオチドを導入する宿主は、用いるベクターの種類に応じて、放線菌、大腸菌、枯草菌、酵母、糸状菌、植物細胞等の中から適宜選択されて良い。
【0053】
組換えベクターの宿主への導入方法としては、接合伝達、ファージによる形質導入、さらにカルシウムイオン法、リチウムイオン法、エレクトロポレーション法、PEG法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法といった形質転換の方法の中から、供試する宿主細胞に応じて用いれば良い。
【0054】
本発明において複数の遺伝子を宿主細胞に導入する場合には、各遺伝子は同一または別々のDNA分子に含まれていても良い。さらに、宿主細胞が細菌である場合には、各遺伝子をポリシストロン性mRNAとして発現させるように設計し、一つのDNA分子とすることも可能である。
【0055】
本発明による形質転換体は、好ましくは、配列番号266および上記(1)において記載されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、配列番号266および上記(1)において記載されたヌクレオチド配列と厳密な条件下でハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、および配列番号267〜274から選択される少なくとも一つのアミノ酸配列またはそれと実質的に同等なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドのいずれか一種またはそれ以上を含んでなることが好ましい。
【0056】
また、得られた形質転換体を常法により、培養し、新たに獲得した性質を調べることができる。培地としては、慣用の成分、例えば炭素源としてはグルコース、シュクロース、水飴、デキストリン、澱粉、グリセロール、糖蜜、動・植物油等が使用できる。また、窒素源としては大豆粉、小麦胚芽、コーン・スティープ・リカー、綿実粕、肉エキス、ポリペプトン、マルトエキス、イーストエキス、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等が使用できる。その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、リン酸(リン酸水素2カリウム等)、硫酸(硫酸マグネシウム等)、およびその他のイオンを生成することのできる無機塩類を添加することも有効である。また、必要に応じてチアミン(チアミン塩酸塩等)等の各種ビタミン、グルタミン酸(グルタミン酸ナトリウム等)、アスパラギン(DL-アスパラギン等)等のアミノ酸、ヌクレオチド等の微量栄養素、抗生物質等の選抜薬剤を添加することもできる。さらに、菌の発育を助け、ピリピロペンAの生産を促進するような有機物および無機物を適当に添加することができる。
【0057】
培地のpHは、例えばpH 5.5〜pH 8程度である。培養法としては、好気的条件での固体培養法、振とう培養法、通気撹拌培養法、または深部好気培養法により行うことができるが、特に深部好気培養法が最も適している。培養に適当な温度は、15℃〜40℃であるが、多くの場合22℃〜30℃付近で生育する。ピリピロペンAの生産は、培地および培養条件、または使用した宿主により異なるが、何れの培養法においても通常2日〜10日間でその蓄積が最高に達する。培養中のピリピロペンAの量が最高になった時に培養を停止し、培養物から目的物質を単離、精製する。
【0058】
培養物からピリピロペンAを単離するためには、その性状を利用した通常の分離手段、例えば溶剤抽出法、イオン交換樹脂法、吸着または分配カラムクロマトグラフィー法、ゲル濾過法、透析法、沈殿法、結晶化法等を単独で、または適宜組み合わせて抽出精製することができる。
【0059】
ピリピロペンA前駆体の製造法
ピリピロペンAを単離するために、ピリピロペンA前駆体から公知の方法を用いてピリピロペンAを単離することができる。公知の方法としては例えば、WO2009/022702号公報の方法が挙げられる。上記一種またはそれ以上を含むベクターを含む微生物とともに培養して、ピリピロペンEからピリピロペンA前駆体を単離することができる。ピリピロペンA前駆体は、例えば、前記式(I)で表される化合物であってもよい。
【0060】
また、一種またはそれ以上を含むベクターを含む微生物とともに培養して、ピリピロペンOからピリピロペンA前駆体を単離することができる。例えば、前記式(II)で表される化合物であってもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1:ペニシリウム コピロビウムPF1169株のゲノムDNAの調製
三角フラスコ(1L)に滅菌したNB培地 500mlを入れ、1/2CMMY寒天培地において、28℃で、4日間前培養していたペニシリウム コピロビウムPF1169株(公開技報2008-500997号(特許文献15))を上記の培地に加え、28℃で、4日間液体培養した。ミラクロスで濾過により、菌体5gを得た。この菌体よりゲノムDNA精製キット Genomic-tip 100/G(キアゲン株式会社製)を、添付のマニュアルに従い、30ugのゲノムDNAを取得した。
【0063】
実施例2:ポリケチド合成酵素(PKS)増幅用縮重プライマーとその増幅断片
種々の糸状菌ポリケチド合成酵素に保存されているアミノ酸配列より増幅用縮重プライマーとして 下記プライマーをデザインし、合成した:
LC1 : GAYCCIMGITTYTTYAAYATG(配列番号1)
LC2c: GTICCIGTICCRTGCATYTC(配列番号2)
(ただし、R=A/G、Y=C/T、M=A/C、I=イノシン)。
この縮重プライマーを使用して、実施例1において調製したゲノムDNAと、ExTaqポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社製)とを、添付のマニュアルに従い反応させ、約700bpの増幅断片を検出した(図1参照)。そして、前記増幅断片を解析し、その内部500bpの配列を特定した(配列番号3)。
【0064】
実施例3:ゲノムDNAの大量シークエンスとアミノ酸配列相同性検索
実施例1において得られたペニシリウム コピロビウムPF1169株のゲノムDNAを大量シークエンスと、アミノ酸配列の相同性検索とに供した。具体的にはゲノムDNA 50ugの一部を前処理の後、Roche社454FLX DNAシークエンサーに供し、約250bp、10.3万本のフラグメント配列(総計49Mbの配列)を取得した。
【0065】
この配列に対し、ポリケチド合成酵素およびプレニルトランスフェラーゼで既知である配列として、下記の五種の配列(ポリケチド合成酵素:Aspergillus(A.) fumigatus PKS 2146a.a.およびPenicillium(P.) griseofluvum 6-methylsalycilic acid synthase 1744a.a.、プレニルトランスフェラーゼ:Aspergillus (A.) fumigatus Prenyltransferase、Aspergillus(A.) fumigatus Prenyltransferase(4-hydroxybezoate octaprenyltransferase)、およびPenicillium(P.) marneffei Prenyltransferase由来の配列)を選定し、相同配列検索ソフトblastxによる検索を実施した。それぞれ89本、86本、2本、1本、および3本の相同配列を取得した(表1参照)。さらに、A. fumigatus PKS 2146a.a.およびP. griseofluvum 6-methylsalycilic acid synthase 1744a.a.の相同配列から、それぞれ19本、23本のコンティグ配列を取得した(A. fumigatus PKS 2146a.a.のコンティグ配列:配列番号179〜197、P. griseofluvum 6-methylsalycilic acid synthase 1744a.a.のコンティグ配列:配列番号198〜220)(表1参照)。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例4:ゲノムDNAからのPCR増幅
実施例3において取得したblastxの検索結果より、ポリケチド合成酵素に対して、配列番号227〜252に示す13種のプライマー対を合成した。同様に、プレニルトランスフェラーゼに対して、配列番号253〜262に示す5種のプライマー対を合成した。これらのプライマーを用いて、ゲノムDNAに対するPCRを行ったところ、全プライマー対について期待される大きさの増幅断片を認めた(図1および図2参照)。
【0068】
実施例5:ファージゲノムライブラリーの作製
ペニシリウム コピロビウムPF1169株のλファージゲノムライブラリーを、λBlueSTAR Xho I Half-site Arms Kit ( タカラバイオ株式会社製 Cat. No. 69242-3)を用いて、添付のマニュアルに従い、構築した。すなわち、ゲノムDNAを、制限酵素Sau3A1を用いて部分分解し、約20kbのDNA断片0.5ugをキットに添付されたλBlueSTAR DNA0.5ugに連結した。このライゲーション溶液をLambda INN Packaging kit(株式会社ニッポンジーン製)を用い、キットに添付のマニュアルに基づいてin vitroパッケージングを行い、1mlの溶液を取得した。このパッケージングされたファージ溶液10ulを大腸菌ER1647株100ulに感染させ、プラーク形成培地において、37℃で、一晩培養後、約500クローンのプラークを得た。このように感染により10〜20kbのペニシリウム コピロビウムPF1169株のゲノム DNA が導入されたファージ約50000クローンからなるゲノムライブラリーを作製した。
【0069】
実施例6:ファージライブラリーからのスクリーニング
実施例5において調製したファージライブラリー10000クローンに対して、上記で調製したLC1−LC2cプライマー対により増幅させたPCR産物をプローブとして、プラークハイブリダイゼーションによる1次スクリーニングを行った。プローブの標識と検出にはAlkPhos Direct Labelling and Detection System with CDP-Star(GEヘルスケア株式会社製 Cat. No. RPN3690)を用いた。前記ハイブリダイゼーションは、添付のマニュアルに従い、実施した。
【0070】
1次スクリーニングにより、6クローンが候補として残った。さらに、プラークハイブリダイゼーションによる2次スクリーニングの結果、4クローンを取得した。これらの陽性クローンは大腸菌BM25.8株に感染させ、添付のマニュアルに従いファージをプラスミドに変換させ、目的領域を含む4種のプラスミドを取得した。
【0071】
実施例7:フォスミドゲノムライブラリーの作製
ペニシリウム コピロビウムPF1169株のゲノムライブラリーは、CopyControl Fosmid Library Production Kit(EPICENTRE社製、Cat. No.CCFOS110)を、添付のマニュアルに従い、構築した。すなわち、約40 kbのゲノムDNA0.25ugのDNA断片を末端の平滑化を行った後、フォスミドベクターpCCFOS(Epicentre社製)に組み込んだ。このライゲーション溶液を同キット添付のMaxPlaxLambda Packaging Extractを用い、キットに添付のマニュアルに基づいて、in vitroパッケージングを行った。このパッケージングされたウィルス溶液10ulを大腸菌EPI300TM-T1R株100ulに感染させ、クロラムフェニコール含有培地において、37℃で、一晩培養し選抜したところ、300クローンのコロニーを得た。このように感染により40kbのペニシリウム コピロビウムPF1169株のゲノムDNA が導入されたフォスミド約30000クローンを取得した。1wellあたり約50クローンとなるように96wellプレートに分注し、つまり、96のプール、約4800クローンからなるゲノムライブラリーを作製した。
【0072】
実施例8:フォスミドライブラリースクリーニング
フォスミド添付のマニュアルに従い、実施例7において作成したライブラリーの96プールより各プラスミドDNAを調製した。実施例2で合成したポリケチド合成酵素増幅用縮重プライマーを用いて、この96プールのプラスミドDNAサンプルに対して、PCRを行った。その結果、約700bpのDNA断片が、9プールより増幅した。さらにこのポジティブプールから、約300クローン以上のコロニーを含むシャーレを作製し、コロニーハイブリダイゼーションにより再スクリーニングした。その結果、LC1-LC2cプライマー対を用いて、約4800クローンより9種のフォスミドを取得した。
【0073】
実施例9:ゲノムDNAの大量シークエンスとアミノ酸配列相同性検索
実施例1において得られたペニシリウム コピロビウムPF1169株のゲノムDNAを大量シークエンスと、アミノ酸配列の相同性検索とに供した。具体的にはゲノムDNA 50ugの一部を前処理の後、Roche社454FLX DNAシークエンサーに供し、平均コンティグ長19.621kb、1405本のフラグメント配列(総塩基長27.568160Mbの配列)を取得した。
この配列に対し、ポリケチド合成酵素およびプレニルトランスフェラーゼで既知である配列として、下記の五種の配列(ポリケチド合成酵素: Penicillium(P.) griseofluvum 6-methylsalycilic acid synthase 1744a.a.(P22367) およびAspergillus(A.) fumigatus PKS 2146a.a.(Q4WZA8)、プレニルトランスフェラーゼ:Penicillium(P.) marneffei Prenyltransferase(Q0MRO8)、Aspergillus (A.) fumigatus Prenyltransferase(Q4WBI5)、およびAspergillus(A.) fumigatus Prenyltransferase(4-hydroxybezoate octaprenyltransferase)(Q4WLD0)由来の配列)を選定し、相同配列検索ソフトblastxによる検索を実施した。それぞれ22本(P22367)、21本(Q4WZA8)、2本(Q0MRO8)、3本(Q4WBI5)、および3本(Q4WLD0)の相同配列を取得した。
【0074】
実施例10:フォスミドライブラリースクリーニング及びクラスター遺伝子の配列解析 フォスミドキット(EPICENTRE社製 CopyControl Fosmid Library Production Kit)に添付されているマニュアルに従い、実施例7において作成したライブラリーの96プールより各プラスミドDNAを調製した。Roche社454FLX DNAシークエンサーにより決定された塩基配列に基づいてアミノ酸配列の相同性検索を行い、ポリケチド合成酵素とプレニルトランスフェラーゼが近接する領域を検索した。得られた領域のプレニルトランスフェラーゼ塩基配列より400bpのDNA断片を増幅しうるプライマー対(No.27)を合成した。このプライマーを用いて、この48プールのプラスミドDNAサンプルに対して、PCRを行った。その結果期待される約400bpのDNA断片(配列番号263)が、11プールより増幅した(図3参照)。さらに、このポジティブプールのうち6プールから、約300クローン以上のコロニーを含むシャーレを作製し、コロニーハイブリダイゼーションにより再スクリーニングした。その結果、27F + 27Rのプライマー対(27Fプライマー:配列番号264、27Rプライマー:配列番号265)を用いて、約4800クローンより4種のフォスミドを取得した。この内の一つをpCC1-PP1と命名し、挿入断片の全配列を決定した(配列番号266)。
得られたpCC1-PP1により大腸菌Escherichia coli EPI300TM-T1R株(フォスミドキットに付属)を形質転換することにより大腸菌Escherichia coli EPI300TM-T1R株/pCC1-PP1を得た。
なお、前記配列番266の配列とAdenylate-forming enzyme、LovB-like polyketide synthase、水酸化酵素であるCytochrome P450 monooxygenase、Integral membrane protein、FAD-dependent monooxygenase、UbiA-like prenyltransferase、アセチル化酵素であるAcetyltransferase、Toxin biosynthesis protein Tri7、およびCation transporting ATPase(上記酵素は、いずれもAspergillus fumigatus Af293株由来)との、相同性検索をそれぞれ行ったところ、いずれも70%以上の高い相同性を示した。
配列番号266のヌクレオチド3342−5158は、Adenylate-forming enzymeをコードし、その対応するポリペプチドは、配列番号267に記載したアミノ酸配列で示され、配列番号266のヌクレオチド5382−12777は、LovB-like polyketide synthaseをコードし、対応するポリペプチドは、配列番号268に記載したアミノ酸配列で示され、配列番号266のヌクレオチド13266−15144(以下、このポリヌクレオチド配列(P450-1)によりコードされるタンパク質をCytochrome P450 monooxygenase(1)とする)および16220−18018(以下、このポリヌクレオチド配列(P450-2)によりコードされるタンパク質をCytochrome P450 monooxygenase(2)とする)は、Cytochrome P450 monooxygenaseをコードし、対応するポリペプチドは、それぞれ、配列番号269、270に記載したアミノ酸配列で示され、配列番号266のヌクレオチド18506−19296は、Integral membrane proteinをコードし、対応するポリペプチドは、配列番号271に記載したアミノ酸配列で示され、配列番号266のヌクレオチド19779−21389は、FAD-dependent monooxygenaseをコードし、対応するポリペプチドは、配列番号272に記載したアミノ酸配列で示され、配列番号266のヌクレオチド21793−22877は、UbiA-like prenyltransferaseをコードし、対応するポリペプチドは、配列番号273に記載したアミノ酸配列で示され、配列番号266のヌクレオチド23205-24773は、Acetyltransferaseをコードし、対応するポリペプチドは、配列番号274に記載したアミノ酸配列で示され、配列番号266のヌクレオチド25824−27178は、Toxin biosynthesis protein Tri7をコードし、対応するポリペプチドは、配列番号275に記載したアミノ酸配列で示され、配列番号266のヌクレオチド27798−31855は、Cation transporting ATPaseをコードし、対応するポリペプチドは、配列番
号276に記載したアミノ酸配列で示された。
【0075】
実施例11:Aspergillus Oryzaeの形質転換によるピリピロペンEまたはピリピロペンOの水酸化
以下で用いるピリピロペンEは、例えば、特開平8−239385号公報(特許文献4)、WO94/09147号公報、または米国特許5597835号公報に記載される方法に準じた微生物培養法によるか、Tetrahedron Letters, vol. 37, No.36, 6461-6464, 1996に記載される全合成の方法によって製造することができる。また、以下で用いるピリピロペンOは、例えば、J. Antibiotics 49, 292-298, 1996またはWO94/09147号公報に記載される方法に準じた微生物培養法によって製造することができる。
【0076】
(1)糸状菌導入用発現ベクターの作製
pUSA(図4)とpHSG399(タカラバイオ社)をそれぞれKpnI切断し、連結することにより、pUSA-HSGを取得した。このプラスミドをSmaI、KpnIの順で切断し、ゲル精製することで、KpnIの粘着末端とSmaIの平滑末端を有す線状ベクターDNAを取得した。
【0077】
(2)pPP2のプラスミドの作製
Fosmid pCC1-PP1を鋳型として、プライマー対P450-1 with Kpn F(配列番号277)/P450-1 with Swa R(配列番号278)を用いて前記P450-1のポリヌクレオチドを増幅し、精製したDNA断片をpCR-Blunt(Invitorogen社 Cat.No.K2700-20)にクローン化した。得られたプラスミドをKpnIとSwaIで切断し、前記P450-1断片を上述したベクターpUSA-HSGにライゲーションし、図5に示すpPP2のプラスミドを取得した。
【0078】
(3)pPP3のプラスミドの作製
Fosmid pCC1-PP1を鋳型としてとして、図6に示す流れに従い、まず、プライマー対F1(配列番号279)/R1(配列番号280)、F2(配列番号281)/R2(配列番号282)、F3(配列番号283)/R3(配列番号284)、F4(配列番号285)/R4(配列番号286)、F5(配列番号287)/R5(配列番号288)、およびF6(配列番号289)/R6(配列番号290)を用い、エキソンのみを増幅し、六つの断片を取得した。次にこれらの断片を鋳型としてF1/R2、F3/R4、およびF5/R6のプライマー対により増幅し、より長い断片を取得した。さらに、F1/R4およびF1/R6のプライマー対により増幅を繰り返すことによって前記P450-2のポリヌクレオチドのイントロンを含まないcDNAを作製した。このcDNA断片をpCR-Blunt(Invitorogen社 Cat.No.K2700-20)に導入し、得られたプラスミドを鋳型として、プライマー対infusion F of P450-2-cDNA(配列番号291)/infusion R of P450-2-cDNA(配列番号292)により増幅した。キットのマニュアルに基づいて、In-Fusion Advantage PCR Cloning Kit(Clontech社)を用い、図7に示すpPP3のプラスミドを取得した。
【0079】
(4)Aspergillus Oryzae(A. oryzae)の形質転換
CD-Met(L-Methionine 40μg/ml含有)寒天培地でA. oryzae(HL-1105株)を30℃で1週間培養した。このシャーレから分生子(>108)を回収し、500ml のフラスコに100mlのYPD液体培地に接種した。20時間培養(30℃、180rpm)後、毬藻状の菌体を取得した。菌体を3G-1 グラスフィルターで集め、0.8M NaClで洗浄し、よく脱水し、TF溶液I(プロトプラスト化溶液)で懸濁後、30℃、60rpmで2時間振盪した。なお、30分間ごとに顕微鏡で観察し、プロトプラストの存在を確認した。その後、培養液を濾過し、遠心(2000rpm、5分間)によりプロトプラストを回収後、TF溶液IIで洗浄した。洗浄後、0.8容量のTF溶液IIおよび0.2容量のTF溶液IIIを加え混和して、プロトプラスト懸濁液を取得した。
【0080】
この懸濁液200μlにプラスミドDNA(pPP2あるいはpPP3)10μgを加え、氷上で30分間静置し、TF溶液III(1mL)を加え穏やかに混和した。その後、室温で15分間静置して、前記プロトプラストにプラスミドDNAを導入した。これにTF溶液II(8mL)を加え、遠心(2000rpmで5分間)し、1〜2ml残してプロトプラストを回収した。再生培地(下層)に回収したプロトプラスト液を滴下し、再生培地(上層)を流し込み、シャーレを廻して混和後、30℃で4〜5日培養した。出てきたクローンを再生培地(下層)に単離し、植え継ぎ純化することにより形質転換体(Aspergillus oryzae PP2-1および Aspergillus oryzae PP3-2)を取得した。
【0081】
上記TF 溶液I(プロトプラスト化溶液)は下記組成を用いて調製した。
化合物名 濃度
ヤタラーゼ(タカラバイオ社製) 20mg/ml
硫安 0.6M
マレイン酸-NaOH 50mM
上記組成を調製後(pH5.5)、ろ過滅菌を行った。
【0082】
上記TF溶液IIは下記組成を用いて調製した。
化合物名
1.2M Sorbitol (MW=182.17) 43.72g
50mM CaCl2 10ml 1M CaCl2(1/20)
35mM NaCl 1.4ml 5M NaCl
10mM Tris-HCl 2ml 1M Tris-HCl (1/100)
Up to total volume 200ml
上記組成を調製後、オートクレーブ滅菌を行った。
【0083】
上記TF溶液III は下記組成を用いて調製した。
化合物名
60%PEG4000 6g
50mM CaCl2 500μl 1M CaCl2(1/20)
50mM Tris-HCl 500μl 1M Tris-HCl (1/100)
Up to total volume 10ml
上記組成を調製後、ろ過滅菌を行った。
【0084】
上記再生培地は下記組成を用いて調製した。
化合物名 濃度
Sorbitol (MW=182.17) 218.6g 1.2M
NaNO3 3.0g 0.3%(w/v)
KCl 2.0g 0.2%(w/v)
KH2PO4 1.0g 0.1%(w/v)
MgSO4・7H2O 2ml of 1M MgSO4 0.05% 2mM
Trace elements solution 1ml
Glucose 20.0g 2%(w/v)
Up to the total volume 1L
上記組成を調製後(pH 5.5)、オートクレーブ滅菌を行った。
【0085】
また、上記で用いたTrace elements solutionは下記組成を用いて調製した。
化合物名
FeSO4・7H2O 1.0g
ZnSO4・7H2O 8.8g
CuSO4・5H2O 0.4g
Na2B4O7・10H2O 0.1g
(NH4)6Mo7O24・4H2O 0.05g
Up to the total volume 1L
上記組成を調製後、オートクレーブ滅菌を行った。
【0086】
(5)P450-1の機能解析および添加培養試験
1% (w/v)マルトースを含むYPD培地(1% (w/v) Yeast Extract、2% (w/v) Peptone、2% (w/v) Dextrose)に、1/100容のピリピロペンEの2 mg/mLジメチルスルホキシド溶液を添加した培地を培地Aとした。ツァペックドックス寒天培地に培養したAspergillus oryzae PP2-1の菌叢より分生子を採取し、滅菌水に懸濁した。この分生子懸濁液を104 spore/mLに調製し、この調製した分生子懸濁液のうち100 μLを10 mLの培地Aに添加し、25℃で96時間振盪培養した。この培養液に10 mLのアセトンを添加し、よく混合した後、遠心濃縮器を用いてアセトンを留去した。これに10 mLの酢酸エチルを添加し、よく混合した後、酢酸エチル層のみを分取した。遠心濃縮器を用いて酢酸エチルを留去して得られた乾固物を1000 μLのメタノールに溶解した。これをサンプルとして用い、LC-MS(ウォーターズ社、Micromass ZQ、2996PDA、2695 Separation module、Column:Waters XTerra C18 (Φ4.5 x 50 mm、5 μm))、およびLC-NMR (Burker Daltonik社製 Avance500)により分析した。
【0087】
上記LC-MS測定の結果、得られた化合物はピリピロペンEよりも16分子量増加した単一の化合物Aであることを確認した。また、LC-NMR測定の結果、この化合物AはピリピロペンEの11位水酸化体であることを確認した。前記Cytochrome P450 monooxygenase(1)はピリピロペンEを基質とし、ピリピロペンEの11位を水酸化する酵素であることを確認した。
【0088】
前記化合物Aの物理化学的性状を下に示す。
1.マススペクトラム:ES-MS 468M/Z(M+H)+
2.分子式:C27H33NO6
3.HPLC:カラムWaters XTerra Column C18 (5 μm、4.6mm×50mm)、40℃、移動相20%アセトニトリル水から10分間で100% アセトニトリル(リニアグラジエント)、流速0.8ml/分、検出:UV323nmで保持時間 6.696分
4.1H -NMRスペクトル (CD3CN, 2H:3.134、3.157 H-11)
ピリピロペンEおよび上記4に記載の1H -NMRスペクトルのチャートは、それぞれ、図8および図9に示される通りであった。
【0089】
(6)P450-2の機能解析 添加培養試験
1% (w/v)マルトースを含むYPD培地(1% (w/v) Yeast Extract、2%(w/v) Peptone、2%(w/v) Dextrose)に1/100容のピリピロペンEの2mg/mLジメチルスルホキシド溶液を添加した培地を培地B、同じく1/100容のピリピロペンOの2 mg/mLジメチルスルホキシド溶液を添加した培地を培地Cとした。ツァペックドックス寒天培地に培養したAspergillus oryzae PP3-2の菌叢より分生子を採取し、滅菌水に懸濁した。この分生子懸濁液を104 spore/mLに調製し、このうち500μLを50 mLの培地Bまたは培地Cに添加し、25℃で96時間振盪培養した。この培養液に50 mLのアセトンを添加し、よく混合した後、遠心濃縮器を用いてアセトンを留去した。これに50mLの酢酸エチルを添加し、よく混合した後、酢酸エチル層のみを分取した。遠心濃縮器を用いて酢酸エチルを留去して得られた乾固物を1500μLのメタノールに溶解した。これをサンプルとし、LC-MS(ウォーターズ社製 Micromass ZQ、2996PDA、2695 Separation module、Column:Waters XTerra C18 (Φ4.5 x 50mm、5μm))およびLC-MNR(Burker Daltonik社製 Avance500)で分析した。LC-MS測定の結果、培地Bから得られたサンプルから、ピリピロペンEより32分子量の増加した化合物Bを検出した。また、培地Cから得られたサンプルから、ピリピロペンOより32分子量の増加した化合物Cを検出した。さらに、LC-NMR測定の結果、化合物CはピリピロペンOの7位および13位水酸化体であることが確認された。前記Cytochrome P450 monooxygenase(2)は、ピリピロペンEまたはピリピロペンOのそれぞれ7位および13位を水酸化する酵素であることが確認された。
【0090】
化合物Bの物理化学的性状を下に示す。
1.マススペクトラム:ES-MS 484M/Z(M+H)+
2.分子式:C27H33NO7
3.HPLC:カラムWaters XTerra Column C18 (5 μm、4.6mm×50mm)、40℃、移動相20%アセトニトリル水から10分間で100% アセトニトリル(リニアグラジエント)、流速0.8ml/分、検出:UV323nmで保持時間 5.614 分
【0091】
化合物Cの物理化学的性状を下に示す。
1.マススペクトラム:ES-MS 542M/Z(M+H)+
2.分子式:C29H35NO9
3.HPLC:カラムWaters XTerra Column C18 (5 μm、4.6mm×50mm)、40℃、移動相20%アセトニトリル水から10分間で100% アセトニトリル(リニアグラジエント)、流速0.8ml/分、検出:UV323nmで保持時間 5.165 分
4.1H -NMRスペクトル (CD3CN, 1H 4.858 H-13)、(CD3CN, 1H 3.65 H-7)
ピリピロペンOおよび上記化合物Cの1H -NMRスペクトルのチャートは、それぞれ、図10および図11に示される通りであった。
【受託番号】
【0092】
FERM BP−11133
FERM BP−11137
FERM BP−11141

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたポリヌクレオチドであって、
(a)配列番号266のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号266のヌクレオチド配列と厳密な条件下でハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または
(c)配列番号267〜274から選択される少なくとも一つのアミノ酸配列またはそれと実質的に同等なアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド
であることを特徴とする、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
ピリピロペンAの生合成に関与する少なくとも一種のポリペプチドをコードする、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
ポリケチド合成酵素活性、プレニルトランスフェラーゼ活性、水酸化酵素活性、アセチル化酵素活性、またはアデニル酸合成酵素活性のいずれか一つまたはそれ以上の活性を有するポリペプチドをコードする、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
ペニシリウム コピロビウムPF1169株由来のものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
単離されたポリヌクレオチドであって、以下の(1)または(2)のいずれかに記載されたヌクレオチド配列から選択された少なくとも1個のヌクレオチド配列を有することを特徴とする、ポリヌクレオチド:
(1)下記(a)−(h)のいずれかに記載されたヌクレオチド配列:
(a) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の3342番から5158番までのヌクレオチド配列
(b) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の5382番から12777番までのヌクレオチド配列
(c) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の13266番から15144番までのヌクレオチド配列
(d) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の16220番から18018番までのヌクレオチド配列
(e) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の18506番から19296番までのヌクレオチド配列
(f) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の19779番から21389番までのヌクレオチド配列
(g) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の21793番から22877番までのヌクレオチド配列
(h) 配列番号266で示されるヌクレオチド配列の23205番から24773番までのヌクレオチド配列
(2)(1)において記載されたヌクレオチド配列と厳密な条件下でハイブリダイズ可能なヌクレオチド配列。
【請求項6】
ピリピロペンAの生合成に関与する少なくとも一種のポリペプチドをコードする、請求項5に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
ポリケチド合成酵素活性、プレニルトランスフェラーゼ活性、水酸化酵素活性、アセチル化酵素活性、またはアデニル酸合成酵素活性のいずれか一つまたはそれ以上の活性を有するポリペプチドをコードする、請求項5または6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
水酸化酵素活性を有するポリペプチドをコードする、請求項5または6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
ペニシリウム コピロビウムPF1169株由来のものである、請求項5〜8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
ピリピロペンEまたはOの7位および/または13位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードする、請求項5〜9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
ピリピロペンEの11位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードする、請求項5〜9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項1または請求項5に記載のポリヌクレオチドのいずれか一種またはそれ以上を含んでなる、組換えベクター。
【請求項13】
ピリピロペンEまたはOの7位および/または13位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、請求項12に記載の組換えベクター。
【請求項14】
ピリピロペンEの11位を水酸化する活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含んでなる、請求項12に記載の組換えベクター。
【請求項15】
前記組換えベクターがプラスミドpCC1−PP1である、請求項12に記載の組換えベクター。
【請求項16】
前記組換えベクターがプラスミドpPP2である、請求項12に記載の組換えベクター。
【請求項17】
前記組換えベクターがプラスミドpPP3である、請求項12に記載の組換えベクター。
【請求項18】
請求項1または請求項5に記載のポリヌクレオチドのいずれか一種またはそれ以上を含んでなる、形質転換体。
【請求項19】
前記形質転換体がプラスミドpCC1−PP1を含んでなる大腸菌である、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項20】
前記形質転換体がプラスミドpPP2を含んでなるAspergillus oryzaeである、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項21】
前記形質転換体がプラスミドpPP3を含んでなるAspergillus oryzaeである、請求項18に記載の形質転換体。
【請求項22】
請求項12〜17に記載のベクターのいずれか一種またはそれ以上を含む微生物とともに培養して、ピリピロペンEからピリピロペンA前駆体を単離することを特徴とする、ピリピロペンA前駆体の製造法。
【請求項23】
請求項20に記載の形質転換体および請求項21に記載の形質転換体を同時に、または別々に培養し、ピリピロペンEからピリピロペンA前駆体を単離することを特徴とする、ピリピロペンA前駆体の製造法。
【請求項24】
前記ピリピロペンA前駆体が下記式(I)で表されるものである、請求項22または23に記載の製造法:
【化1】


【請求項25】
請求項12〜17に記載のベクターのいずれか一種またはそれ以上を含む微生物とともに培養して、ピリピロペンOからピリピロペンA前駆体を単離することを特徴とする、ピリピロペンA前駆体の製造法。
【請求項26】
請求項21に記載の形質転換体を培養し、ピリピロペンOからピリピロペンA前駆体を単離することを特徴とする、ピリピロペンA前駆体の製造法。
【請求項27】
前記ピリピロペンA前駆体が下記式(II)で表されるものである、請求項25または26に記載の製造法:
【化2】



【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−193878(P2010−193878A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267881(P2009−267881)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【分割の表示】特願2009−548252(P2009−548252)の分割
【原出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000006091)明治製菓株式会社 (180)
【Fターム(参考)】