説明

ピリミジノン化合物およびその医薬用途

【課題】 掻痒症の治療効果が高く、化学的・代謝的にも安定で、持続性に優れた経口投与可能な掻痒症治療薬を提供すること。
【解決手段】
本発明の一般式(I)
【化1】


(式中の記号は明細書中の記載どおり)
で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物は、化学的・代謝的にも極めて安定で、持続性に優れており、経口投与可能な掻痒症および/または疼痛の予防および/または治療薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬として有用なピリミジノン化合物、その製造方法およびその医薬用途に関する。さらに詳しく言えば、一般式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、すべての記号は後記と同じ意味を表す。)
で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物(以下、一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物を、本発明化合物と略す。)、その製造方法および本発明化合物を有効成分とする掻痒症および/または疼痛の予防および/または治療剤に関する。
【背景技術】
【0004】
掻痒症(痒み)とは種々の疾患によって引き起こされる症状である。皮膚病変を伴う掻痒症の原因疾患としては、湿疹、じんましん、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、疱疹状皮膚炎、乾癬、扁平苔癬、ウルシ皮膚炎、疥癬、薬疹、痒疹、乾皮症、皮脂欠乏症、虫刺症等が挙げられ、皮膚病変を伴わない掻痒症の原因疾患としては、胆汁うっ滞(胆道閉塞)、尿毒症、リンパ腫、白血病、真性赤血球増加症等がある。また、慢性糸球体腎炎、糖尿病、腎硬化症、のう胞腎もしくは全身性疾患にともなう腎障害等の治療として行われる血液透析、または結膜炎、例えば、季節性アレルギー性結膜炎、急性結膜炎、慢性結膜炎、トラコーマ、通年性アレルギー性結膜炎または春季カタルによっても掻痒症は引き起こされる。乾燥した皮膚も全身性掻痒の原因となる。
【0005】
痒みや痛みによる刺激を抑制する組成物として、一般式(A)
【0006】
【化2】

【0007】
(式中、R1は、ヒドロキシ、クロロ、フルオロ、炭素原子数が約2乃至約4のアルキル、アセトキシ、またはトリフルオロメチルを表し、R2は、ニトロ、クロロ、フルオロ、炭素原子数が約2乃至約4のアルキル、アセトキシ、またはトリフルオロメチルを表す。)
で示される1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン化合物(中でも、1−(2−ヒドロキシフェニル)−4−(3−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン)を含有する組成物が報告されている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1には、本発明化合物については全く記載も示唆もない。
【0008】
一方、中枢神経系に対する抑制および/または刺激効果を示す、一般式(B)
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、Xは、3位または4位に結合し、水素原子、ニトロ、トリフルオロメチルまたはハロゲンを表し、R4Bは、炭素原子数が約1〜7のアルキル、フェニル、またはトリメトキシフェニル基を表す。)
で示される1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン化合物(特許文献2参照)や、アミノ酸重縮合体の製造方法に用いられる、一般式(C)
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して、芳香族炭化水素基等を表し、mCは1〜3の整数を表す。)
で示されるピリミジノン化合物(特許文献3および4参照)が報告されているが、これらの化合物が掻痒症の治療に有効であることは、記載も示唆も全くなく、また本発明化合物についても全く記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2005−526841号公報
【特許文献2】米国特許3821221号公報
【特許文献3】特開平7−289282号公報
【特許文献4】特開平7−291991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
掻痒に効果があると報告されている1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン化合物は、酸化を受けやすく、酸性あるいはアルカリ性条件下で化学的に容易に分解し、また肝ミクロソーム中で速やかに代謝されるため、持続性に問題があり、医薬として、特に経口剤として用いるには不適であった。
【0015】
本発明の目的は、掻痒症の治療効果が高く、化学的・代謝的にも安定で、持続性に優れた経口投与可能な掻痒症治療薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、経口投与可能な掻痒症の予防および/または治療に有効である化合物を見つけるべく鋭意検討を行ったところ、一般式(I)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中の記号はすべて後記と同じ意味を表す。)
で示される化合物が上記した目的を達成することを見出し、本発明を完成した。本発明の一般式(I)で示される新規なピリミジノン化合物は、経口投与において高い掻痒症治療効果を有し、化学的・代謝的にも極めて安定で、持続性にも優れた化合物である。
【0019】
すなわち、本発明は、
[1] 一般式(I)
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、Rはニトロ基またはハロゲン原子を表わし、Rは水素原子、水酸基、C1−4アルキルオキシ基、C1−4アルキルカルボニルオキシ基、C1−4アルキルチオ基、C1−4アルキルスルフィニル基またはC1−4アルキルスルホニル基を表わす。)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物;
[2] 以下の化合物群
(1)1−(2−ヒドロキシフェニル)−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン、
(2)1−(2−メトキシフェニル)−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン、
(3)4−(3−クロロフェニル)−1−(2−ヒドロキシフェニル)−6−メチル−2(1H)−ピリミジノン、
(4)4−(3−クロロフェニル)−1−(2−メトキシフェニル)−6−メチル−2(1H)−ピリミジノン、
(5)6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−1−フェニル−2(1H)−ピリミジノン、
(6)2−[6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2−オキソ−1(2H)−ピリミジニル]フェニル アセタート、
(7)6−メチル−1−[2−(メチルチオ)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン、
(8)6−メチル−1−[2−(メチルスルフィニル)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン、および
(9)6−メチル−1−[2−(メチルスルホニル)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン
から選択される前記[1]記載の化合物;
[3] 前項[1]記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる医薬組成物;
[4] 掻痒症の予防および/または治療剤である前項[3]記載の医薬組成物;
[5] 掻痒症が、アトピー性皮膚炎、胆汁うっ滞または尿毒症に伴う掻痒症である前項[4]記載の医薬組成物;
[6] 前項[1]記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物と、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬、免疫抑制薬、プロスタグランジン類、抗アレルギー薬、メディエーター遊離抑制薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬、オピオイド作用薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、フォルスコリン製剤、一酸化窒素合成酵素阻害薬、およびカンナビノイド−2受容体刺激薬から選ばれる1種または2種以上の薬とを組み合わせてなる医薬;
[7] 前項[1]記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする哺乳動物における掻痒症の予防および/または治療方法;
[8] 掻痒症の予防および/または治療剤を製造するための前項[1]記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物の使用;
[9] 掻痒症の予防および/または治療のための前項[1]記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物;および
[10] 前項[1]記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
一般式(I)

【0023】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表わす。)
で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物は、化学的・代謝的安定性に優れ、持続性にも優れた、経口投与可能な掻痒症および/または疼痛の予防および/または治療薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】被験物質をCompound 48/80惹起15分前に経口投与した際の、マウス掻痒モデルにおける抗掻痒作用を表わす。
【図2】被験物質をCompound 48/80惹起30分前に経口投与した際の、マウス掻痒モデルにおける抗掻痒作用を表わす。
【図3】被験物質をCompound 48/80惹起60分前に経口投与した際の、マウス掻痒モデルにおける抗掻痒作用を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中、Rによって表される「C1−4アルキルオキシ基」、「C1−4アルキルカルボニルオキシ基」、「C1−4アルキルチオ基」、「C1−4アルキルスルフィニル基」および「C1−4アルキルスルホニル基」における「C1〜C4アルキル」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基およびこれらの異性体基が挙げられる。「C1−4アルキルオキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基等が挙げられる。「C1−4アルキルカルボニルオキシ基」としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基等が挙げられる。「C1−4アルキルチオ基」としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基等が挙げられる。「C1−4アルキルスルフィニル基」としては、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、tert-ブチルスルフィニル基等が挙げられる。「C1−4アルキルスルホニル基」としては、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニル基等が挙げられる。
【0026】
本明細書中、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を表わす。
【0027】
としては、ニトロ基またはハロゲン原子が好ましく、ハロゲン原子としては、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0028】
としては、水素原子、水酸基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、メチルチオ基、メチルスルフィニル基またはメチルスルホニル基が好ましい。
【0029】
一般式(I)で示される化合物のうち、前記の好ましい基を組み合わせた化合物、実施例に記載されている化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物はすべて好ましい。
【0030】
[異性体]
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルキルオキシ基等には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E体、Z体、シス体、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R体、S体、α配置、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D体、L体、d体、l体)、クロマトグラフィー分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体(アトロプ異性体)、およびこれらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。また、本発明においては、互変異性体による異性体をもすべて包含する。
【0031】
[プロドラッグ]
本明細書中、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとは、生体内において酵素や胃酸等による反応により一般式(I)で示される化合物に変換される化合物をいう。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグとしては、一般式(I)で示される化合物が水酸基を有する場合、該水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例、一般式(I)で示される化合物の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等)等が挙げられる。これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。また、一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは溶媒和物および非溶媒和物のいずれであってもよい。一般式(I)で示される化合物のプロドラッグは廣川書店1990年刊「医薬の開発」第7巻分子設計163ページから198ページに記載されているような、生理的条件で一般式(I)で示される化合物に変化するものであってよい。また、一般式(I)で示される化合物は、同位元素(例えば、H、14C、35S、125I等)等で標識されていてもよい。
【0032】
[塩・溶媒和物]
一般式(I)で示される化合物およびそのプロドラッグは、公知の方法で塩に変換される。塩としては薬理学的に許容される塩がすべて含まれる。薬理学的に許容される塩は毒性の低い、水溶性のものが好ましく、適当な塩として、例えば、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等)、薬学的に許容される有機アミン(トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩等が挙げられる。
【0033】
さらに、一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩は、任意の方法で溶媒和物に変換することもできる。
【0034】
溶媒和物は低毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系の溶媒(例えば、エタノール等)の溶媒和物が挙げられる。
【0035】
[化合物の命名]
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPAC命名法の規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラムであるACD/Name(Advanced Chemistry Development Inc.社製)またはACD/Nameバッチ(Advanced Chemistry Development Inc.社製)を用いるか、あるいは、IUPAC命名法規則に準じて命名したものである。また日本語名への翻訳は「化合物命名法(日本化学会編)」に準拠して行なった。例えば、
【0036】
【化7】

【0037】
で示される化合物は、4−(3−クロロフェニル)−1−(2−メトキシフェニル)−6−メチル−2(1H)−ピリミジノンと命名された。
【0038】
[本発明化合物の製造方法]
一般式(I)で示される化合物は、例えば、以下に示す方法もしくは実施例に示す方法またはこれらに準ずる方法、あるいは公知の方法(例えば、「Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations、2nd Edition(Richard C.Larock,John Wiley & Sons Inc,1999)」記載の方法)を適宜改良することによって製造することができる。なお、以下の各製造方法において、原料化合物は塩として用いてもよい。このような塩としては、前記した一般式(I)で示される化合物の塩として記載したものが用いられる。
【0039】
一般式(I)で示される化合物は、例えば、以下に示す反応工程式1に従って製造することができる。
【0040】
【化8】

【0041】
(反応工程式1中、全ての記号は前記と同じ意味を表わす。)
これらの各反応はそれぞれ公知であり、それらを具体的に説明すると、
(1) 一般式(III)で示される化合物は、例えば、一般式(II)で示される化合物とアセトンを、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等あるいはこれらの混合溶液)中、塩基(例えば、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、ジイソプロピルエチルアミン、リチウムジイソプロピルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、ブチルリチウム、水素化ナトリウム等)または有機触媒(プロリン等)存在下、約−78℃〜約50℃で反応させ、次いで、得られた付加体を、有機溶媒(例えば、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリル等単独で、あるいはそれらのうち複数の溶媒の任意の割合からなる混合溶媒)中、酸化剤(例えば、ジョーンズ(Jones)試薬等)を加え、−20℃〜室温で酸化反応を行うことで製造することができる。
【0042】
(2) 一般式(I)で示される化合物は、例えば、一般式(III)で示される化合物と一般式(IV)で示される化合物を、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等あるいはこれらの混合溶液)中、触媒量の酸(例えば、濃塩酸、または濃硫酸等)存在下25℃〜120℃で反応させ、さらに必要に応じて保護基の脱保護反応に付すことにより製造することができる。
【0043】
前記した反応は、いずれも不活性ガス(アルゴン、窒素等)雰囲気下で行なうことが望ましい。
【0044】
なお、出発原料として用いる一般式(II)および(IV)で示される化合物は、それ自体公知であるか、あるいは公知の方法、例えば、「コンプレヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(第2版)(Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations、2nd Edition)(Richard C.Larock著,John Wiley & Sons Inc,1999)」等に記載された方法あるいは実施例記載の方法を適宜改良して組み合わせて用いることで製造することができる。
【0045】
例えば、一般式(IV)で示される化合物は、一般式(V)

【0046】
(Rは前記と同じ意味を表わす。)
で示される化合物を、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸等)中、シアン酸塩(例えば、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム等)を加え、約0℃〜還流温度で反応させて製造することができる。
【0047】
また、原料化合物は塩として用いてもよい。このような塩としては、例えば、一般式(I)で示される化合物の薬学的に許容される塩等が挙げられる。
【0048】
本明細書中の各反応において、加熱を伴う反応は、当業者にとって明らかなように、水浴、油浴、砂浴またはマイクロウェーブを用いて行なうことができる。
【0049】
本明細書中の各反応において、適宜、高分子ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール等)に担持させた固相担持試薬を用いてもよい。
【0050】
本明細書中の各反応において、反応生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、イオン交換樹脂、スカベンジャー樹脂あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶等の方法により精製することができる。精製は各反応ごとに行なってもよいし、いくつかの反応終了後に行なってもよい。
【0051】
[医薬品への適用]
本発明化合物は、ヒトを含めた動物、特にヒトにおいて、掻痒症および/または疼痛の予防および/または治療に有用である。
【0052】
本発明化合物は、これら難治性掻痒症を含む全ての掻痒症の予防および/または治療に有効であるが、特に、湿疹、じんましん、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、胆汁うっ滞(胆道閉塞)、尿毒症、乾燥皮膚、季節性アレルギー性結膜炎、急性結膜炎、慢性結膜炎、通年性アレルギー性結膜炎または春季カタルに伴う掻痒症、あるいは、糖尿病の治療として行われる血液透析に伴う掻痒症の治療に有効であり、とりわけ、アトピー性皮膚炎、胆汁うっ滞または尿毒症に伴う掻痒症の治療に有効である。
【0053】
本発明化合物が治療効果を示すと考えられる疼痛としては、例えば、関節炎疼痛(例えば、リウマチ、変形性関節症、および滑膜炎等に伴う疼痛等)、癌性疼痛、骨折時の疼痛、手術後疼痛、抜歯後疼痛、ニューロパチックペイン(神経因性疼痛とも言い、例えば、帯状疱疹神経痛、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性末梢神経障害神経痛、反射性交感神経性萎縮症、カウザルギー、開胸術後痛、幻肢痛、視床痛、癌性疼痛、骨折、外傷、または火傷後の疼痛、舌痛症(口腔内灼熱症候群)、および三叉神経痛等)、アロディニア、ハイパーアルゲシア、ヘルペス後疼痛、および生理痛等が挙げられる。
【0054】
本発明化合物は、(1)該化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、(2)該化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、および/または(3)該化合物の副作用の軽減、のために他の薬剤と組み合わせて併用剤として投与してもよい。
【0055】
本発明化合物と他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明化合物を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明化合物を後に投与してもかまわず、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0056】
前記他の薬剤は、低分子化合物であってもよく、また高分子の蛋白、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(DNA、RNA、遺伝子)、アンチセンス、デコイ、抗体であるか、またはワクチン等であってもよい。他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明の治療剤と他の薬剤の配合比は、投与対象の年齢および体重、投与方法、投与時間、対象疾患、症状、組み合わせ等により適宜選択することができる。例えば、本発明の治療剤1質量部に対し、他の薬剤を0.01乃至100質量部用いればよい。他の薬剤は任意の2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、本発明の治療剤の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0057】
本発明化合物は、必要に応じて、医薬として許容される添加剤を加え、単独製剤または配合製剤として汎用されている技術を用いて製剤化することができる。
【0058】
上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0059】
本発明化合物の掻痒症に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬、免疫抑制薬、プロスタグランジン類、抗アレルギー薬、メディエーター遊離抑制薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬、オピオイド作用薬(例えば、κ−オピオイド作動薬等)、ホスホジエステラーゼ阻害薬、フォルスコリン製剤、一酸化窒素合成酵素阻害薬、カンナビノイド−2受容体刺激薬、およびNF−κB等のデコイ製剤等が挙げられる。
【0060】
非ステロイド系抗炎症薬としては、例えば、サザピリン、サリチル酸ナトリウム、アスピリン、アスピリン・ダイアルミネート配合、ジフルニサル、インドメタシン、スプロフェン、ウフェナマート、ジメチルイソプロピルアズレン、ブフェキサマク、フェルビナク、ジクロフェナク、トルメチンナトリウム、クリノリル、フェンブフェン、ナプメトン、プログルメタシン、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、マレイン酸プログルメタシン、アンフェナクナトリウム、モフェゾラク、エトドラク、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ナプロキセン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、ケトプロフェン、フェノプロフェンカルシウム、チアプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、アルミノプロフェン、ザルトプロフェン、メフェナム酸、メフェナム酸アルミニウム、トルフェナム酸、フロクタフェニン、ケトフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、ピロキシカム、テノキシカム、アンピロキシカム、ナパゲルン軟膏、エピリゾール、塩酸チアラミド、塩酸チノリジン、エモルファゾン、スルピリン、ミグレニン、サリドン、セデスG、アミピロ−N、ソルボン、ピリン系感冒薬、アセトアミノフェン、フェナセチン、メシル酸ジメトチアジン、メロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、シメトリド配合剤、および非ピリン系感冒薬等が挙げられる。
【0061】
ステロイド薬としては、例えば、外用薬として、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸ジフロラゾン、フルオシノニド、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジフルプレドナート、プデソニド、吉草酸ジフルコルトロン、アムシノニド、ハルシノニド、デキサメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、吉草酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸デプロドン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、プレドニゾロン、プロピオン酸ペクロメタゾン、およびフルドロキシコルチド等が挙げられる。
【0062】
内服薬または注射剤としては、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、酢酸ハロプレドン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメサゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、パルミチン酸デキサメタゾン、酢酸パラメサゾン、およびベタメタゾン等が挙げられる。
【0063】
吸入薬としては、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、フルニソリド、トリアムシノロン、ST−126P、シクレソニド、デキサメタゾンパロミチオネート、モメタゾンフランカルボネート、プラステロンスルホネート、デフラザコート、メチルプレドニゾロンスレプタネート、およびメチルプレドニゾロンナトリウムスクシネート等が挙げられる。
【0064】
免疫抑制薬としては、例えば、プロトピック(FK−506)、メトトレキサート、シクロスポリン、アスコマイシン、レフルノミド、ブシラミン、およびサラゾスルファピリジン等が挙げられる。
【0065】
プロスタグランジン類(以下、PGと略記する。)としては、PG受容体アゴニスト、PG受容体アンタゴニスト等が挙げられる。PG受容体としては、PGE受容体(EP1、EP2、EP3、EP4)、PGD受容体(DP、CRTH2)、PGF受容体(FP)、PGI受容体(IP)、TX受容体(TP)等が挙げられる。
【0066】
抗アレルギー薬としては、例えば、アンレキサノクス、塩酸アゼラスチン、イスラパファント、イブジラスト、イミトロダストナトリウム、エバスチン、塩酸エピナスチン、フマル酸エメダスチン、オキサトミド、塩酸オザグレル、塩酸オロパタジン、クロモグリカート、クロモグリク酸ナトリウム、フマル酸ケトチフェン、セラトロダスト、塩酸セチリジン、トシル酸スプラタスト、タザノラスト、テルフェナジン、ドミトロバンカルシウム水和物、トラニラスト、ネドクロミル、フェキソフェナジン、塩酸フェキソフェナジン、ペミロラストカリウム、メキタジン、ラマトロバン、レピリナスト、ロラタジン等が挙げられる。
【0067】
メディエーター遊離抑制薬としては、例えば、トラニラスト、クロモグリク酸ナトリウム、アンレキサノクス、レピリナスト、イブジラスト、ダザノラスト、およびペミロラストカリウム等が挙げられる。
【0068】
ロイコトリエン受容体拮抗薬としては、例えば、プランルカスト水和物、モンテルカスト、ザフィルルカスト、MCC−847、KCA−757、CS−615、YM−158、L−740515、CP−195494、LM−1484、RS−635、A−93178、S−36496、BIIL−284、およびONO−4057等が挙げられる。
【0069】
抗ヒスタミン薬としては、例えば、フマル酸ケトチフェン、メキタジン、塩酸アゼラスチン、オキサトミド、テルフェナジン、フマル酸エメダスチン、塩酸エピナスチン、アステミゾール、エバスチン、塩酸セチリジン、ベポタスチン、フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、塩酸オロパタジン、TAK−427、ZCR−2060、NIP−530、モメタゾンフロエート、ミゾラスチン、BP−294、アンドラスト、オーラノフィン、およびアクリバスチン等が挙げられる。
【0070】
オピオイド作用薬としては、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メサドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン等が挙げられ、κ−オピオイド作動薬としては、TRK−820、ナルフラフィン、およびU50488H等が挙げられる。
【0071】
ホスホジエステラーゼ阻害薬としては、例えば、ホスホジエステラーゼ4阻害薬であるロリプラム、シロミラスト(商品名:アリフロ)、Bay19−8004、NIK−616、ロフルミラスト(BY−217)、シパムフィリン(BRL−61063)、アチゾラム(CP−80633)、SCH−351591、YM−976、V−11294A、PD−168787、D−4396、およびIC−485等が挙げられ、ホスホジエステラーゼ5阻害薬としては、例えば、シルデナフィル等が挙げられる。
【0072】
一酸化窒素合成酵素阻害薬としては、例えば、N−ニトロ−L−アルギニン メチルエステル(L−NAME)、N−モノメチル−L−アルギニン(L−NMMA)およびN−ニトロ−L−アルギニン(L−NNA)等が挙げられる。
【0073】
カンナビノイド−2受容体刺激薬としては、例えば、国際公開第02/010135号パンフレットに記載の化合物および国際公開第03/064389号パンフレットに記載の化合物等が挙げられる。
【0074】
本発明化合物の疼痛に対する予防および/または治療効果の補完および/または増強のための他の薬剤としては、例えば、非オピオイド系鎮痛薬(非ステロイド性鎮痛薬、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬等)、オピオイド系鎮痛薬、プロスタグランジン類、N型カルシウムチャネル阻害薬、一酸化窒素合成酵素阻害薬、およびカンナビノイド−2受容体刺激薬等が挙げられる。
【0075】
非オピオイド系鎮痛薬としては、例えば、非ステロイド系抗炎症鎮痛薬(アスピリン、アルミノプロフェン、フルルビプロフェンアキセチル、スプロフェン、ロベンザリット二ナトリウム、テノキシカム、ロキソプロフェンナトリウム、ペルビプロフェン、フルルビプロフェン、ピロキシカム、インドメタシンファルネシル、プラノプロフェン、スリンダク、インドメタシン、ナブメトン、エトドラク、フェナセチン、ナイキサン、ジクロフェナクナトリウム等)、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬(ザルトプロフェン、ニメスリド、ザルトプロフェン、ゾリプロフェン、オキサプロジン、ミロプロフェン、ケトプロフェン、アントルメチングアシル、モフェゾラク、ロルノキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、アセクロフェナク、セレコキシブ、パレコキシブ、およびエトリコキシブ等)、ステロイド性鎮痛薬(リメキソロンおよびプレドニゾロン等)、ヒアルロン酸ナトリウム、オーラノフィン、イプリフラボン、オルゴテイン、アクタリット、スベリウム、サラゾスルファピリジン、およびレフルノミド等が挙げられる。
【0076】
オピオイド系鎮痛薬としては、例えば、リン酸コデイン、塩酸ブプレノフィン、塩酸ペンタゾシン、モルヒネ(塩酸モルヒネおよび硫酸モルヒネ)、フェンタニル、塩酸ペチジン、およびレボルファノ−ル等が挙げられる。
【0077】
N型カルシウムチャネル阻害薬としては、例えば、ONO−2921およびNMED−160等が挙げられる。
【0078】
本発明化合物と他の薬剤の質量比は特に限定されない。
【0079】
他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。
【0080】
また、本発明化合物の予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤には、上記したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0081】
本発明化合物、または本発明化合物と他の薬剤の併用剤を含有する医薬組成物を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。
【0082】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、0.01mgから1000mg、好ましくは0.1mgから500mg、さらに好ましくは0.1mgから300mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるか、または成人一人当たり、一回につき、0.001mgから1000mg、好ましくは0.1mgから100mg、さらに好ましくは0.1mgから50mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるか、または一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0083】
もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0084】
本発明化合物、または本発明化合物と他の薬剤の併用剤を含有する医薬組成物を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤、および非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤、吸入剤等として用いられる。
【0085】
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。
【0086】
このような内服用固形剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0087】
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤・乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0088】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、エアゾル剤、点眼剤、および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により製造、調製される。
【0089】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に研和、または溶融させて製造、調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0090】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて製造、調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0091】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融または乳化させて製造、調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0092】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0093】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0094】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて製造、調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0095】
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。また、エアゾル剤としても構わない。
【0096】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造、調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0097】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤又は吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させて使用する形態であってもよい。
【0098】
これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。
【0099】
例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤等を必要に応じて適宜選択して調製される。
【0100】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(デンプン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤等を必要に応じて適宜選択して調製される。
【0101】
吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(アトマイザー、ネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0102】
非経口投与のための点眼剤には、点眼液、懸濁型点眼液、乳濁型点眼液、用時溶解型点眼液および眼軟膏が含まれる。
【0103】
これらの点眼剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。点眼剤の溶剤としては、例えば、滅菌精製水、生理食塩水、その他の水性溶剤または注射用非水性用剤(例えば、植物油等)等およびそれらの組み合わせが用いられる。点眼剤は、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、界面活性化剤(ポリソルベート80(商品名)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、安定化剤(クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等)、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)等を必要に応じて適宜選択して含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか、無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の滅菌精製水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0104】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される舌下投与のための舌下剤、直腸内投与のための坐剤および腟坐剤等が含まれる。
【0105】
[毒性]
本発明化合物の毒性は十分に低いものであり、医薬品として使用するために十分安全である。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[製造実施例]
クロマトグラフィーによる分離の箇所、TLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表わす。NMRの箇所に示されているカッコ内の溶媒は、測定に使用した溶媒を示している。
【0107】
実施例1
1−(2−ヒドロキシフェニル)ウレア(化合物1)
2−アミノフェノール(10 g, 91.6 mmol)の酢酸(100 mL)懸濁液を、90℃に加熱し、シアン酸カリウム(11.13 g, 137 mmol)を加え、1時間撹拌した。室温まで放冷した反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液をゆっくりと加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後減圧濃縮した。得られた固体をろ取し、メチル tert-ブチルエーテルにて洗浄し、以下の物性値を有する標題化合物(9.06 g, 65%)を得た。
TLC:Rf 0.31 (ヘキサン:酢酸エチル=1:2);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 6.16 (s, 2H), 6.64-6.78 (m, 3H), 7.75-7.86 (m, 1H), 7.95 (s, 1H), 9.87 (s, 1H)。
【0108】
実施例1(1)
1−(2−メトキシフェニル)ウレア(化合物1−1)
2−アミノフェノールの代わりに2−アミノアニソールを用いて、実施例1と同様の操作をし、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
TLC:Rf 0.26 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 3.82 (s, 3H), 6.15 (br-s, 2H), 6.78-6.95 (m, 3H), 7.89 (s, 1H), 8.06 (dd, J=7.5, 2.0Hz, 1H)。
【0109】
実施例2
4−ヒドロキシ−4−(3−ニトロフェニル)−3−ブテン−2−オン(化合物2)
L−プロリン(5.7 g, 49.6 mmol)にアセトン(100 mL)およびジメチルスルホキシド(400 mL)を加え、30分室温にて撹拌した。ここに3−ニトロベンズアルデヒド(25 g, 165 mmol)を加え、さらに3時間撹拌後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をアセトン(500 mL)に溶かし、0℃にてジョーンズ(Jones)試薬(80 mL, 200 mmol, 2.5 M)をゆっくりと添加した。30分後、反応液にメタノール(10 mL)を加え、さらに水を加えてメチル tert-ブチルエーテルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮し、得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0→75:25)にて精製し、以下の物性値を有する標題化合物(4.13 g, 12%)を得た。
TLC:Rf 0.70 (ヘキサン:酢酸エチル=1:1);
1H-NMR(CDCl3):δ 2.25 (s, 3H), 6.25 (s, 1H), 7.65 (t, J=8.06Hz, 1H), 8.12-8.26 (m, 1H), 8.30-8.44 (m, 1H), 8.64-8.74 (m, 1H)。
【0110】
実施例3
1−(2−ヒドロキシフェニル)−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン(化合物3)
化合物2(2.0 g, 9.66 mmol)および化合物1(1.47 g, 9.66 mmol)のエタノール(20 mL)懸濁液に濃塩酸(2 mL)を加え、一晩加熱還流した。放冷後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水にて洗浄した。無水硫酸ナトリウムにて乾燥後、減圧濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=100:0→0:100→酢酸エチル:メタノール=80:20)によって精製し、以下の物性値を有する標題化合物(209 mg, 6.7%)を得た。
TLC:Rf 0.43 (酢酸エチル);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.08 (s, 3H), 6.90-6.99 (m, 1H), 7.00-7.07 (m, 1H), 7.21-7.26 (m, 1H), 7.27-7.35 (m, 1H), 7.36 (s, 1H), 7.86 (t, J=7.96Hz, 1H), 8.39-8.48 (m, 1H), 8.53-8.63 (m, 1H), 8.88-8.96 (m, 1H), 10.08 (s, 1H)。
【0111】
実施例4(1)〜実施例4(8):
3−ニトロベンズアルデヒドまたはその代わりに3−クロロベンズアルデヒドを用い、化合物1またはその代わりに化合物1−1または相当するフェニルウレア誘導体を用いて実施例2→実施例3と同様の操作をし、以下の化合物を得た。
【0112】
実施例4(1)
1−(2−メトキシフェニル)−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン(化合物4−1)
TLC:Rf 0.50 (酢酸エチル);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.04 (s, 3H), 3.78 (s, 3H), 7.06-7.16 (m, 1H), 7.21-7.29 (m, 1H), 7.30-7.42 (m, 2H), 7.43-7.55 (m, 1H), 7.86 (t, J=7.96Hz, 1H), 8.39-8.49 (m, 1H), 8.54-8.64 (m, 1H), 8.88-8.96 (m, 1H)。
【0113】
実施例4(2)
4−(3−クロロフェニル)−1−(2−ヒドロキシフェニル)−6−メチル−2(1H)−ピリミジノン(化合物4−2)
TLC:Rf 0.57 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.04 (s, 3H), 6.88-6.98 (m, 1H), 6.99-7.08 (m, 1H), 7.15-7.36 (m, 3H), 7.54-7.63 (m, 1H), 7.63-7.72 (m, 1H), 8.07-8.15 (m, 1H), 8.15-8.22 (m, 1H), 10.05 (s, 1H)。
【0114】
実施例4(3)
4−(3−クロロフェニル)−1−(2−メトキシフェニル)−6−メチル−2(1H)−ピリミジノン(化合物4−3)
TLC:Rf 0.72 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.01 (s, 3H), 3.77 (s, 3H), 7.05-7.16 (m, 1H), 7.19-7.29 (m, 2H), 7.28-7.38 (m, 1H), 7.42-7.54 (m, 1H), 7.59 (t, J=7.80Hz, 1H), 7.63-7.72 (m, 1H), 8.08-8.15 (m, 1H), 8.15-8.21 (m, 1H)。
【0115】
実施例4(4)
6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−1−フェニル−2(1H)−ピリミジノン(化合物4−4)
TLC:Rf 0.63 (酢酸エチル);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.08 (s, 3 H), 7.36 - 7.44 (m, 3 H), 7.44 - 7.64 (m, 3 H), 7.87 (t, J=8.1 Hz, 1 H), 8.38 - 8.49 (m, 1 H), 8.54 - 8.64 (m, 1 H), 8.87 - 8.97 (m, 1 H)。
【0116】
実施例4(5)
2−[6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2−オキソ−1(2H)−ピリミジニル]フェニル アセタート(化合物4−5)
TLC:Rf 0.68 (酢酸エチル:メタノール=9:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.08 (s, 3 H), 2.10 (s, 3 H), 7.36 - 7.51 (m, 3 H), 7.53 - 7.63 (m, 2 H), 7.87 (t, J=8.1 Hz, 1 H), 8.38 - 8.49 (m, 1 H), 8.55 - 8.67 (m, 1 H), 8.88 - 8.99 (m, 1 H)。
【0117】
実施例4(6)
6−メチル−1−[2−(メチルチオ)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン(化合物4−6)
TLC:Rf 0.42 (ジクロロメタン:メタノール=9:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.05 (s, 3 H), 2.45 (s, 3 H), 7.26 - 7.63 (m, 5 H), 7.87 (t, J=8.1 Hz, 1 H), 8.34 - 8.49 (m, 1 H), 8.51 - 8.67 (m, 1 H), 8.86 - 8.99 (m, 1 H)。
【0118】
実施例4(7)
6−メチル−1−[2−(メチルスルフィニル)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン(化合物4−7)
TLC:Rf 0.55, 0.68 (酢酸エチル:メタノール=9:1);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 1.97 - 2.22 (m, 3 H), 2.60 - 2.82 (m, 3 H), 7.41 - 8.20 (m, 6 H), 8.46 (dd, J=7.8, 1.7 Hz, 1 H), 8.62 (d, J=8.1 Hz, 1 H), 8.87 - 9.01 (m, 1 H)。
【0119】
実施例4(8)
6−メチル−1−[2−(メチルスルホニル)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン(化合物4−8)
TLC:Rf 0.45 (n−ヘキサン:酢酸エチル=1:6);
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.05 (s, 3 H), 3.21 (s, 3 H), 7.49 (s, 1 H), 7.70 (dd, J=7.8, 1.2 Hz, 1 H), 7.78 - 8.01 (m, 3 H), 8.15 (dd, J=7.8, 1.4 Hz, 1 H), 8.38 - 8.54 (m, 1 H), 8.62 (dd, J=8.0, 1.0 Hz, 1 H), 8.82 - 9.06 (m, 1 H)。
[生物学的実施例]
本発明化合物が、医薬品、特に掻痒症の治療薬として有用であることは、以下に示す生物学的実施例に記載の方法およびそれらを適宜改良して実施できる方法により評価することができる。また、本発明化合物が動態学的に、例えば、血中半減期の長さ、消化管内安定性、経口吸収性、バイオアベイラビリティ等の点において優れているということは、公知の方法、例えば、「薬物バイオアベイラビリティ(評価と改善の科学)(現代医療社、1998年7月6日発行)」に記載の方法等によっても容易に評価することができる。
【0120】
生物学的実施例1:マウスCompound 48/80惹起掻痒モデルにおける抗掻痒作用の評価
Compound 48/80(Sigma社、商品コード:C2313)をddY系マウスに皮内投与し、直後から掻き行動を観察した。被験物質はcompound 48/80投与15、30および60分前に経口投与した。Compound 48/80投与直後からマウスの行動を無人環境下でビデオカメラにより撮影し、ビデオの再生により後肢による掻き行動数を30分間計測した。一連の掻き行動を1回とした。
【0121】
結果を図1、2および3に示す。データは、平均値と標準誤差で表示し、媒体群と被験物質投与群でDunnett検定またはt-検定を行った。
【0122】
その結果、本発明化合物は、有意な掻き行動抑制効果を示した。例えば、Compound 48/80投与15分、30および60分前に化合物3を経口投与することにより、掻き行動抑制効果を示した。
【0123】
一方、特表2005−526841号公報記載の比較化合物である1−(2−ヒドロキシフェニル)−4−(3−ニトロフェニル)−1,2,3,6−テトラヒドロピリミジン−2−オン(以下、該化合物を比較化合物Aと記す。)は、Compound 48/80投与15分および30分前投与においては効果を示したものの、60分前投与においては、掻き行動抑制効果を示さなかった。
【0124】
以上の結果から、本発明化合物は経口投与において掻痒症に有効であり、さらに、優れた持続性を有することが示された。
【0125】
生物学的実施例2:ラット肝ミクロソーム中での安定性評価
(1)被験物質溶液の調製
被験物質(10 mmoL/L ジメチルスルホキシド溶液、10μL)を50%アセトニトリル水溶液(190 μL)で希釈し、0.5mmoL/L溶液を作製した。
【0126】
(2)反応0分のサンプル調製
37℃反応用容器に0.5mg/mLラット肝ミクロソーム(0.1 moL/L、リン酸緩衝液(pH 7.4)、Xenotech社、490 μL)を添加し、先の被験物質溶液(10 μL)を加えて5分間プレインキュベーションした。この肝ミクロソーム溶液(10 μL)およびNADPH−Co−factor(BD-Bioscience社、10 μL)を冷アセトニトリル(内部標準物質を含む、180 μL)に添加して標準サンプルとした。
【0127】
(3)反応15分のサンプル調製
先の反応溶液にNADPH−Co−factor(BD-Bioscience社、490 μL)を加えて反応を開始した(最終濃度:肝ミクロソーム 0.5 mg/mL、NADPH 1.3 mmol/L)。15分間インキュベーション後、肝ミクロソーム溶液(20 μL)を冷アセトニトリル(内部標準物質を含む、180 μL)に添加し反応サンプルとした。標準サンプル及び反応サンプルを除蛋白用フィルター付プレートに移し3600rpm、4℃で2分間遠心分離させた後、ろ液(20 μL)をLC−MS(Agilent社;LC/MSD)に注入した。
【0128】
(4)評価方法および結果
残存率(%)は、反応サンプルのレスポンス(被験物質のピーク面積/内部標準物質のピーク面積)を標準サンプルのレスポンスで除した値を100倍して算出した。
【0129】
その結果、本発明化合物は、肝ミクロソーム中で極めて安定であることがわかった。例えば、比較化合物Aは、肝ミクロソーム中で15分間インキュベーション後の残存率が39%であったのに対し、化合物3の残存率は100%であった。
[製剤例]
製剤例1
化合物3(50.0 g)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(2 g)、ステアリン酸マグネシウム(1 g)および微結晶セルロース(47 g)を常法により混合した後打錠して、一錠中に50mgの活性成分を含有する錠剤1000錠を得た。
【0130】
製剤例2
化合物3(20 g)、マンニトール(200 g)、および蒸留水(10 L)を常法により混合した後、除塵フィルターでろ過し、5mLずつアンプルに充填し、オートクレーブで加熱滅菌して、常法により凍結乾燥し、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル1000本を得た。
【0131】
なお、発明を実施するための形態の項において記載した具体的な実施態様および実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするためのものであって、本発明をそのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の特許請求の範囲内で適宜変更して本発明を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明化合物は、化学的・代謝的に安定であり、持続的な掻痒症および/または疼痛の予防および/または治療効果を有するので、医薬品の有効成分として使用することができる。さらに、本発明化合物は、経口投与において、持続的かつ優れた掻痒抑制効果を示すので、経口剤の有効成分として使用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rはニトロ基またはハロゲン原子を表わし、Rは水素原子、水酸基、C1−4アルキルオキシ基、C1−4アルキルカルボニルオキシ基、C1−4アルキルチオ基、C1−4アルキルスルフィニル基またはC1−4アルキルスルホニル基を表わす。)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項2】
以下の化合物群
(1)1−(2−ヒドロキシフェニル)−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン、
(2)1−(2−メトキシフェニル)−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン、
(3)4−(3−クロロフェニル)−1−(2−ヒドロキシフェニル)−6−メチル−2(1H)−ピリミジノン、
(4)4−(3−クロロフェニル)−1−(2−メトキシフェニル)−6−メチル−2(1H)−ピリミジノン、
(5)6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−1−フェニル−2(1H)−ピリミジノン、
(6)2−[6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−2−オキソ−1(2H)−ピリミジニル]フェニル アセタート、
(7)6−メチル−1−[2−(メチルチオ)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン、
(8)6−メチル−1−[2−(メチルスルフィニル)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン、および
(9)6−メチル−1−[2−(メチルスルホニル)フェニル]−4−(3−ニトロフェニル)−2(1H)−ピリミジノン
から選択される請求項1記載の化合物。
【請求項3】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物を有効成分として含有してなる医薬組成物。
【請求項4】
掻痒症の予防および/または治療剤である請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
掻痒症が、アトピー性皮膚炎、胆汁うっ滞または尿毒症に伴う掻痒症である請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物と、非ステロイド系抗炎症薬、ステロイド薬、免疫抑制薬、プロスタグランジン類、抗アレルギー薬、メディエーター遊離抑制薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、抗ヒスタミン薬、オピオイド作用薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、フォルスコリン製剤、一酸化窒素合成酵素阻害薬、およびカンナビノイド−2受容体刺激薬から選ばれる1種または2種以上の薬とを組み合わせてなる医薬。
【請求項7】
請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする哺乳動物における掻痒症の予防および/または治療方法。
【請求項8】
掻痒症の予防および/または治療剤を製造するための請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物の使用。
【請求項9】
掻痒症の予防および/または治療のための請求項1記載の一般式(I)で示される化合物、またはそのプロドラッグ、またはそれらの塩、またはそれらの溶媒和物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−6869(P2012−6869A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144443(P2010−144443)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】