説明

ピリミジンを含有するNNRTIとRTインヒビターとの組み合わせ物

【課題】HIVに感染した患者の処置またはHIV伝染もしくは感染の予防のために有用な組み合わせ物の提供。
【解決手段】4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリル、およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含み、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効な医薬として使用するための組み合わせ物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIVに感染した患者の処置またはHIV伝染もしくは感染の予防のために有用なピリミジンを含有するNNRTIとヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビターとの組み合わせ物に関する。
【背景技術】
【0002】
HAART療法(高度に活性のある抗レトロウイルス療法(Highly Active Anti −Retroviral Therapy))の導入によって有意な進歩がなされたという事実にも拘らず、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(NRTI)、非ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター(NNRTI)、ヌクレオチド逆転写酵素インヒビター(NtRTI)、プロテアーゼインヒビターおよびさらに一層近年の融合インヒビターに対するHIVウイルスの耐性が、なお、治療の失敗の主要な原因である。例えば、抗HIV組み合わせ物治療を受けている患者の半数が、主として使用された1種以上の薬物に対するウイルスの耐性のために、処置に対して完全には応答しない。さらにまた、耐性ウイルスが新たに感染した個人に持ち越されて、これらの薬物にナイーブな患者のための甚だしく限定される治療の選択をもたらすことが示された。2003年7月のパリにおける国際AIDS会議(International AIDS Conference)において、研究者らは、AIDS薬物に対する耐性のその時までの最大の研究が、ヨーロッパにおけるすべての新たに感染した人々の約10パーセントが薬物耐性株を有することを見い出したと発表した。耐性の伝播を決定する比較的小さい試験が、サンフランシスコのハイリスク・シティー・センター(high−risk city center)において実施された。この試験は27パーセントという最高レベルの耐性を示した。
【0003】
多数の市販されている抗レトロウイルス剤の薬動学的プロフィルは、比較的低い治療学的用量を認めない。抗レトロウイルス剤の乏しい溶解度特性と合わせて、しばしば乏しい薬動学的プロフィルは、薬物にナイーブな患者または第1系列の治療には特に望ましくない高い丸剤の負荷にAIDS患者を直面させる。さらにまた、抗レトロウイルス組み合わせ物療法になおも抵抗するAIDSウイルスの結果として、医者は該抗ウイルス剤について活性薬物の血漿レベルを順序よく押し上げて、変異したHIVウイルスに対する効力を取り戻すが、その結果は、丸剤の負荷でのなお一層高い増加になる。血漿レベルを押し上げることは、また、前記療法を許容しない増大した危険と増大した副作用をもたらすであろう。
【0004】
今日まで、組み合わせ物管理法を計画するいくつかの試みが行われた。例えば、経口錠剤に製剤化され、1日に2回投与される、150mg用量におけるラミブジン(lamivudine)(また3TCとも呼ばれるヌクレオシドRTインヒビター)および300mg用量におけるジドブジン(zidovudine)(またAZTとも呼ばれるヌクレオチドRTインヒビター)の組み合わせ物、あるいは経口錠剤に製剤化され、1日に2回投与される、300mgのアバカビル(abacavir)(ヌクレオシドRTインヒビター)と当量の用量におけるアバカビル硫酸塩、150mg用量のラミブジンおよび300mg用量のジドブジンの組み合わせ物。
【0005】
特許文献1は、ジドブジンおよび他にジドブジンに耐性なHIV集団に対する抗ウイルス活性を増進するために働く作用物を含んでなるHIV感染症の処置のための治療組み合わせ物を記述している。
【0006】
特許文献2は、ジドブジン、ラミブジンおよびロビリデ(loviride)の3剤組
み合わせ物を記述していて、後者はα−APA類の非ヌクレオシドRTインヒビターである。
【0007】
新しい抗レトロウイルス薬物の総説は非特許文献1に記述されている。
【0008】
特許文献3は、具体的に、両野生型および変異株の複製を阻害する能力を有する非ヌクレオシドRTインヒビター(NNRTI)として働くHIV複製阻害特性を有する250種以上のピリミジン誘導体を開示している。該NNRTIの1種は、4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリル(本明細書ではTMC278と呼ばれる)である。特許文献3はまた、これらの化合物の合成方法を開示している。さらに、それは該NNRTIと他の抗レトロウイルス剤、すなわち、スラミン(suramine)、ペンタミジン(pentamidine)、チモペンチン(thymopentin)、カスタノスペルミン、デキストラン(デキストラン硫酸塩)、ホスカルネット(foscarnet)−ナトリウム(トリナトリウムホスホノホルメート)、ジドブジン(3’−アジド−3’−デオキシチミジン、AZT)、ジダノシン(didanosine)(2’,3’−ジデオキシイノシン;ddI)、ザルシタビン(ジデオキシシチジン、ddC)、ラミブジン(2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジン、3TC)、スタブジン(stavudine)(2’,3’−ジデヒドロ−3’−デオキシチミジン、d4T)、アバカビル、ネビラピン(nevirapine)(11−シクロプロピル−5,11−ジヒドロ−4−メチル−6H−ジピリド−[3,2−b:2’,3’−e][1,4]ジアゼピン−6−オン)、エファビレンツ(efavirenz)、デラヴィルジン(delavirdine)、TMC120、TMC125、テノフォビル(tenofovir)、(S)−8−クロロ−4,5,6,7−テトラヒドロ−5−メチル−6−(3−メチル−2−ブテニル)イミダゾ−[4,5,1−jk][1,4]ベンゾジアゼピン−2(1H)−チオン、α−[(2−ニトロフェニル)アミノ]−2,6−ジクロロ−ベンゼン−アセトアミド、RO−5−3335、インジナビル(indinavir)、リトナビル(ritonavir)、サキナビル(saquinavir)、ロピナビル(lopinavir)(ABT−378)、ネルフィナビル(nelfinavir)、アンプレナビル(amprenavir)、TMC126、BMS−232632、VX−175、T−20、T−1249、AMD−3100およびヒドロキシ尿素、との組み合わせ物を開示している。
【0009】
組み合わせ物療法の存在にも拘らず、改善された抗レトロウイルス療法、より具体的にはAIDS療法へのニーズはなおも存在する。このニーズは、具体的には、野生型HIVウイルスのみならず、またますます一般的になる耐性HIVウイルスにも有効である療法について急を要する。かくして、薬物耐性ウイルスの再発を限定もしくは抑制さえし、そして長期間使用でき、かつ効果の続く、低い丸剤負荷をもつ組み合わせ物管理法を設計することが、特に第1系列の療法にとって高く望まれている。
【0010】
本発明の目的は、組み合わせ物が、薬物にナイーブな患者における第1系列の療法として長期間使用できる、1種以上の治療学的に有効な抗レトロウイルス薬物の組み合わせ物を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、抗レトロウイルス薬物が、相補的耐性プロフィルを有して高い耐性バリヤーを生成し、その結果、薬物にナイーブな患者が長期間組み合わせ物を摂取することを可能にする、1種以上の治療学的に有効な抗レトロウイルス薬物の組み合わせ物を提供することである。
【0012】
本発明のその他の目的は、組み合わせ物の各々の活性な抗レトロウイルス薬物が、1日
に1回投与されて、患者に対する丸剤負荷を低下することができる、1種以上の治療学的に活性な抗レトロウイルス薬物の組み合わせ物を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、組み合わせ物の各々の活性な抗レトロウイルス薬物が、一緒に製剤化することができる、1種以上の治療学的に活性な抗レトロウイルス薬物の組み合わせ物を提供することである。
【0014】
本発明のなおさらなる目的は、組み合わせ物の各々の活性な抗レトロウイルス薬物の治療学的に有効な量が、1個の単一製薬学的調合物において一緒に製剤化することができる、1種以上の治療学的に活性な抗レトロウイルス薬物の組み合わせ物を提供することである。
【0015】
本発明のその他の目的は、組み合わせ物がヒトにおけるHIV伝染もしくは感染を予防するために使用することができる、1種以上の治療学的に活性な抗レトロウイルス薬物の組み合わせ物を提供することである。
【0016】
本明細書に引用される全参照文献は、引用によって組み入れられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】WO93/23021
【特許文献2】WO96/01110
【特許文献3】WO03/016306
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Clinical Microbiology and Infection 2003,Vol.9:3,pp.186−193
【発明の概要】
【0019】
かくして、第1の態様では、本発明は、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる組み合わせ物であって;TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物を提供する。
【0020】
かくして、第2の態様では、本発明は、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターを含んでなる組み合わせ物であって;TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物を提供する。
【0021】
第3の態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる組み合わせ物であって;TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物が提供される。
【0022】
第4の態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒ
ビター;および(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる3剤組み合わせ物であって;TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0023】
第5の態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター;および(iii)(ii)のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターとは異なる第2のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターを含んでなる3剤組み合わせ物であって;TMC278および第1および第2のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0024】
その他の態様では、製薬学的に許容できる担体および本明細書で指定される組み合わせ物を含んでなる製薬学的調合物が提供される。
【0025】
また、本発明は、HIVインヒビターとして本明細書で指定される組み合わせ物の使用ならびにHIV感染患者の処置またはHIV伝染もしくは感染の予防におけるその使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、TMC278が、1日に1回の投薬を可能にする好都合な薬動学的プロフィルと組み合わせて、顕著に高い遺伝的バリヤーを有する強力な逆転写酵素インヒビターであるという発見に基づく。TMC278がすべてこれらの性質を一緒に有することを発見したことは驚くべきことであった。これはごく普通のことではない、何故ならば、与えられた薬物によってHIV−1ゲノムにいかなる変異が選択されるか、変異ウイルスが薬物の圧力下で生き残る何かの機会を有するか否か、そのような変異したウイルスの再発を限定もしくは抑制するために、どれだけ多くの薬物が必要とされるか、そして薬物の遺伝的バリヤーを突破することができる耐性ウイルスの発生の抑制を維持するために、どんな頻度でそのような薬物を与えなければならないかを予測することはできないからである。
【0027】
発明の詳細な記載
本明細書で使用されるように、用語「1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビター」は、HIVインヒビターが24時間毎に投薬するために適当であることを意味する。用語「24時間毎に投薬するために適当である」は、HIVインヒビターが24時間毎に投与でき、そしてそれが24時間の間にわたってHIV感染を抑制するのに効果的である有効成分の有効血漿濃度を与えるようなHIVインヒビターであることを意味する。
【0028】
TMC278もしくは4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリルは既知のNNRTIであり、これはWO03/016306に記述されているように製造することができる。TMC278は、塩基形態か、またはこれが好適であるが、適当な製薬学的に許容できる塩形態、特に酸付加塩形態として使用することができる。製薬学的許容できる付加塩は、製薬学的に活性な無毒の塩形態を含むことを意味する。酸付加塩形態は、塩基形態を無機酸、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば塩化水素酸、臭化水素酸など;硫酸;硝酸、リン酸など;または有機酸、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシプロパン酸、2−オキソプロパン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、リンゴ酸、酒石酸、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−メチルベンゼンスルホ
ン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、2−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸など、のような適当な酸と処置することによって得ることができる。本発明における使用に好適な酸は、ハロゲン化水素酸塩、特に塩酸塩である。
【0029】
TMC278は立体異性体、より具体的にはE−およびZ−異性型として存在する。両異性体が本発明の組み合わせ物において使用されてもよい。本明細書においてTMC278として参照される場合は常に、E−およびZ−形態ならびに両形態のすべての混合物が含まれることを意味する。
【0030】
本発明における使用のためにTMC278の好適な形態は、E−異性体、すなわち、(E)−4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリル(本明細書ではE−TMC278と呼ばれる)である。TMC278のZ−異性体、すなわち、(Z)−4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリル(本明細書ではZ−TMC278と呼ばれる)もまた使用できる。それは、野生型HIV−1に対して比較的高い効力を有するが、単一および二重変異株に対してE−異性体に較べて活性が低い。表1は、TMC278のE−およびZ−異性体のnMで表したIC50値を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
本明細書においてTMC278のE−形態(すなわち、E−TMC278)として参照される場合は常に、純粋なE−異性体あるいはE−形態が顕著に存在するE−およびZ−形態のすべての異性体混合物が含まれることを意味する、すなわち、異性体混合物はE−形態の50%以上または特に80%以上、またはなおE−形態の90%以上を含有する。特に関心があるのは、実質的にZ−形態を含有しないE−形態である。本文脈において実質的に含有しないとは、Z−形態が存在しないかほとんど存在しないE−Z−混合物を指す、例えば、異性体混合物は、E−形態の90%、特に95%またはなお98%もしくは99%位の多くを含有する。同じく、本明細書においてTMC278のZ−形態(すなわち、Z−TMC278)として参照される場合は常に、純粋なZ−異性体あるいはZ−形態が顕著に存在するZ−およびE−形態のすべての異性体混合物が含まれることを意味する、すなわち、異性体混合物はZ−形態の50%以上または特に80%以上、またはなおZ−形態の90%以上を含有する。特に関心があるのは、実質的にE−形態を含有しないZ−形態である。本文脈において実質的に含有しないとは、E−形態が存在しないかほとんど存在しないE−Z−混合物を指す、例えば、異性体混合物は、Z−形態の90%、特
に95%またはなお98%もしくは99%位の多くを含有する。
【0033】
TMC278の異性型の塩、特に前記の塩もまた、本発明における使用のために含まれることを意味する。特に関心があるのは、Z−TMC278塩酸塩および特にE−TMC278塩酸塩である。
【0034】
有利には、ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターは、TMC278に対する耐性を惹起しない逆転写酵素における変異を選択する。したがって、特に関心があるのは、(1)TMC278およびヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素の1種以上のインヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターであり、そして(2)ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素の1種以上のインヒビターが、TMC278に対する耐性を惹起しない逆転写酵素における変異を選択する、本明細書において指定されるすべての組み合わせ物である。
【0035】
具体的には、1つの実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体または製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグ、および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターを含んでなる組み合わせ物であって、(1)TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターであり、そして(2)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、TMC278に対する耐性を惹起しない逆転写酵素における変異を選択する、組み合わせ物が提供される。
その他の実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体または製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグ、および(ii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる組み合わせ物であって、(1)TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターであり、そして(2)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、TMC278に対する耐性を惹起しない逆転写酵素における変異を選択する、組み合わせ物が提供される。
【0036】
好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体または製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグ、および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、および(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる3剤組み合わせ物であって、(1)TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターであり、そして(2)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、TMC278に対する耐性を惹起しない逆転写酵素における変異を選択する、3剤組み合わせ物が提供される。
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体または製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグ、および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、および(iii)(ii)のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターとは異なる第2のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターを含んでなる3剤組み合わせ物であって、(1)TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターであり、そして(2)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、TMC278に対する耐性を惹起しない逆転写酵素における変異を選択する、3剤組み合わせ物が提供される。
【0037】
本発明の組み合わせ物主題において使用できる好適なヌクレオチド逆転写酵素インヒビターは、テノフォビルおよびそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレート(tenofovir disoproxil fumarate)を含む。
【0038】
テノフォビルは、レトロウイルスに対する活性を有する現在市販されているアデノシン
ヌクレオチド類似体である。テノフォビルジソプロキシルフマレート(テノフォビルDF)は、1日1回、経口的に投与されるテノフォビルのプロドラッグである。抗ウイルス活性のためには、テノフォビルDFは、ANP類似体に加水分解され、次いで活性のある二リン酸部分へとリン酸化される必要がある[Arimilli et al Antiviral Chemistry and Chemotherapy 1997,8:6(557−564);Fridland et al.Antiviral Research 1997,34]。リンパ球またはマクロファージ中に入った後、プロドラッグは定量的に親の類似体、テノフォビルに転化され、そしてモノ−およびジリン酸エステル代謝物へリン酸化される。この薬物のリン酸化に関与する細胞の酵素はアデニル酸キナーゼおよびヌクレオシド二リン酸キナーゼである[Robbins et al.Antimicrobial Agents and Chemoterapy 1995,39:10(2304−2308);Robbins et al.Antimicrobial Agents and Chemoterapy 1998,42:3(612−617)]。他のヌクレオシド類似体、例えばジドブジンもしくはスタブジンの両方が細胞周期依存性であるのとは異なり、テノフォビルは、休止ならびに循環する末梢血液のリンパ球において効率的にリン酸化される[Robbins et al.1998]。テノフォビルは、主なヒト血液リンパ球およびマクロファージを含む、HIVを標的にできる種々の細胞タイプにおいてHIV−1の複製を阻害できる[Perno et al.Antiviral Research 1992(289−304);Perno et al.Molecular Pharmacology 1996,50:2(359−366)]。テノフォビルジホスフェートの主標的は逆転写酵素(RT)である。テノフォビルジホスフェートは、新生プロウイルスDNA鎖へのデオキシアデノシン三リン酸の組み込みに対する競合インヒビターである。テノフォビルジホスフェートによるHIV−1RTの阻害は約0.9μMの阻害定数を有し、類似体が成長しつつあるウイルスDNA鎖中に組み込まれる場合、それは、さらなる鎖の伸長を終止させることができる。テノフォビルは、それが細胞DNAポリメラーゼを阻害するよりも一層効果的にウイルスRTを阻害する[Suo et al.Journal of Biological Chemistry 1998,273:42(2750−2758)]。リンパ球およびマクロファージ細胞タイプ(MT−2,CEM,ACH8)において種々のHIV−1株の複製を50%(EC50)阻害するのに必要な濃度は、0.2〜10μMの範囲である。抗ウイルス効果は、テノフォビルの無毒な用量において達成される(選択性指数(selectivity index)の範囲100〜2000)。テノフォビルDFは、現在、1日1回摂取される300mg錠剤として市販されている。
【0039】
イン・ビトロでのテノフォビルに対するウイルス耐性は徐々に出現する。K65R変異を発現する組み換えウイルスは、イン・ビトロでテノフォビルに対する3倍減少した感受性を示した[Cherrington et al.Interscience Conference on Antimicrobial agents and Chemotherapy 1997,37th]。注目すべきは、RTに関するM184Vラミブジン関連の耐性変異を発現する臨床HIV株は、変異酵素のKiにおける変化と独立に、イン・ビトロのテノフォビルに対する野生型の感受性または増大した感受性を示す[Miller et al.Interscience Conference on Antimicrobial agents and Chemotherapy 1998,]。サル免疫不全ウイルスの接種後3週目に開始する、テノフォビル(30mg/kgの用量)による新生児アカゲザルの長期間処置(5〜15週)は、テノフォビルに対する約5倍減少した感受性をもつSIVの出現をもたらした[Van Rompay et
al.Antimicrobial agents and Chemotherapy 1996,40:11(2586−2591)]。この低レベルの耐性はK65R変異の出現に関連している。
【0040】
好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体または製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグ、および(ii)テノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートを含んでなる組み合わせ物であって、TMC278およびテノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物が提供される。
【0041】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体または製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグ、および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、および(iii)テノフォビルジソプロキシルフマレートを含んでなる3剤組み合わせ物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよびテノフォビルジソプロキシルフマレートが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0042】
本発明の組み合わせ物において使用できる好適なヌクレオシド逆転写酵素インヒビターは、アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、エントリシタビン(emtricitabine)、ラセミFTCおよびラミブジン(また3TCと呼ばれる)。
【0043】
エントリシタビンもしくは(−)−FTCは、ラセミFTCもしくは(±)−シス−4−アミノ−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシメチル)−1,3−オキサチオラン−5−イル]−2(1H)−ピリミジノン(FTC)の左(−)旋性鏡像異性型である。それは市販されるヌクレオシド類似体であり、HIV−1に対する活性を示す[Hoong
et al.Journal of Organic Chemistry 1992(5563−5565);Jeong et al.Journal of Medicinal Chemistry 1993,36:2(181−195);Van Roey et al.Antiviral Chemistry and Chemotherapy 1993,4:6(369−375)]。FTCの(−)−β−鏡像異性体のイン・ビトロの抗HIV−1活性は、(+)−β−鏡像異性体よりも20倍多いと報告され、そして(+)−鏡像異性体は骨髄性始原細胞に対して(−)−鏡像異性体よりも有意に高い毒性があった[Schinazi et al.Antimicrobial agents and Chemotherapy 1992,36:11(2423−2431)]。FTCに対するHIV−1耐性についての可能性が、増加する薬物濃度の存在下でヒトPBMCおよびMT−2細胞におけるウイルスの連続継代によって評価された。高度に薬物耐性のHIV−1変異株は、感染の2周期以上後の複製しつつあるウイルス集団を支配した。薬物耐性のウイルス粒子から得られたRTは、親株の薬物感受性ウイルスからの酵素と比較して、FTCの5’−三リン酸に対して15〜50倍低い感受性であった。耐性ウイルスから増幅されたRT遺伝子のDNA配列解析は、一貫して、Met(ATG)からVal(GTGもしくはGTA)へのコドン184における変異を同定した[Schinazi et al.Antimicrobial agents and Chemotherapy 1993,37:4(875−881);Tisdale et al.Antiviral Research 1993,20:Suppl
1;Smith et al.Journal of Virology 1997,71:3(2357−2362);Harrer et al.Journal of Infectious Diseases 1996,173:2(476−479);Tisdale et al.Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 1993,90:12(5653−5656)]。HIVに感染した患者の逆転写酵素のYMDDにおけるこの観察された単一変異により、(−)−FTCは単剤療法には適せず、HIVに感染した患者を効果的に処置するためには他の抗レトロウイルス剤と組み合わせて投与されることが必要である。エントリシタビンは1
日1回摂取される200mgカプセル剤として利用できる。
【0044】
ラミブジンは、化学名(−)−2’,3’−ジデオキシ−3’−チアシチジンを有し、例えば、抗ウイルスヌクレオシド類似体として欧州特許第382526号に記述されている。それはまた、例えば、150mg経口錠剤として市販されている十分に確立された、有用な抗レトロウイルス剤である。ラミブジンはまた、ジドブジンと組み合わせて(300mgジドブジン/150mgラミブジン)、そしてラミブジンおよびアバカビル硫酸塩と組み合わせて(300mgジドブジン/150mgラミブジン/300mg当量アバカビル)市販されている。
【0045】
アバカビルは、例えば、20mgアバカビル塩基/mlと当量の濃度においてアバカビル硫酸塩の経口液剤として、または300mgアバカビル塩基と当量濃度のアバカビル硫酸塩の経口錠剤として市販されている十分に確立された有用な抗ウイルス剤である。また、アバカビル硫酸塩は、ラミブジンおよびジドブジンと組み合わせて(300mgジドブジン/150mgラミブジン/300mg当量アバカビル)市販されている。
【0046】
アバカビルは、強力な、選択性抗HIV活性をもつ炭素環式ヌクレオシドである。その場合によっては活性のある形態のアバカビルは欧州特許第434450号に開示されている。不特定の絶対立体化学配置をもつアバカビルのシス−異性体が欧州特許第349242号に記述されている。アバカビルは、今日までに開発されたもっとも強力なNRTIの1つである。1.4log10RNAコピー/ml以上のウイルス負荷における平均的減少が、アバカビル単剤療法の短い過程の後に観察される。イン・ビトロでは、耐性ウイルスはアバカビルによって急速には選択されない。野生型またはジドブジン耐性HIV−1株におけるアバカビルに対する感受性の有意な減少は、MT−4細胞における8〜10継代後までは観察されなかった。HIV逆転写酵素(RT)コドン、65R,74V,115Fおよび/または184Vにおける1組みの耐性変異は、アバカビルによるイン・ビトロの継代中に選択され、そしてこれらの変異の組み合わせは、HIVの実験室株におけるアバカビル感受性に10倍の低下を付与するために要求された。アバカビルの濃度の増強下でのHIV−1の継代において検出された第1の変異はM184Vであり、これはHIV−1の感受性における3倍のみの減少を与える。3TCに対する表現型耐性および/または184V変異の存在は、アバカビル療法へのウイルス負荷応答を妨げない。複数のヌクレオシドに対する耐性は、アバカビルに対する減少したまたは不在の応答に関連している[Kumar et al.Antimicrobial agents and Chemotherapy 1999,43:3(603−608);Lanier et
al.International Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections 1998,5th:Chicago;posted on 16 April 1999]。
【0047】
好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)エントリシタビンを含んでなる組み合わせ物であって、TMC278およびエントリシタビンが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物が提供される。
【0048】
好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ラミブジンを含んでなる組み合わせ物であって、TMC278およびラミブジンが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物が提供される。
【0049】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはそ
の製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩を含んでなる組み合わせ物であって、TMC278およびアバカビルが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターであることを特徴とする、組み合わせ物が提供される。
【0050】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)アバカビル硫酸塩を含んでなる組み合わせ物であって、TMC278およびアバカビル硫酸塩が、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターであることを特徴とする、組み合わせ物が提供される。
【0051】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)エントリシタビン、および(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる3剤組み合わせ物であって、TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびエントリシタビンが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0052】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ラミブジン、および(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる3剤組み合わせ物であって、TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびラミブジンが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0053】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、または好ましくはアバカビル硫酸塩、および(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる3剤組み合わせ物であって、TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびアバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、または好ましくはアバカビル硫酸塩が、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0054】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)エントリシタビン、および(iii)テノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートを含んでなる3剤組み合わせ物であって、TMC278およびエントリシタビンおよびテノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0055】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ラミブジン、および(iii)テノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートを含んでなる3剤組み合わせ物であって、TMC278およびラミブジンおよびテノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0056】
その他の好適な実施態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはそ
の製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、好ましくはアバカビル硫酸塩、および(iii)テノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートを含んでなる3剤組み合わせ物であって、TMC278およびアバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、好ましくはアバカビル硫酸塩およびテノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、3剤組み合わせ物が提供される。
【0057】
また、次の好適な3剤組み合わせ物が含まれる:
(a)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;さらにエントリシタビンおよびテノフォビルジソプロキシルフマレート、
(b)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;さらにラミブジンおよびテノフォビルジソプロキシルフマレート、(c)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;さらにアバカビル硫酸塩およびテノフォビルジソプロキシルフマレート、
(d)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;さらにエントリシタビンおよびラミブジン、
(e)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;エントリシタビンおよびアバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、好ましくはアバカビル硫酸塩、
(f)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、好ましくはアバカビル硫酸塩およびラミブジン。
【0058】
特に、組み合わせ物(a)−(f)の各々において、有効成分、特にTMC278、エントリシタビン、ラミブジン、アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、好ましくはアバカビル硫酸塩、およびテノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートは、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである。
【0059】
本発明の2剤組み合わせ物は、1種以上のさらなる有効成分を含有してもよく、これらは、HIV感染患者を処置するために有用な作用物または他の活性作用物であってもよい。本発明の3剤組み合わせ物は、同様に、1種以上のさらなる有効成分を含有してもよく、これらは、HIV感染患者を処置するために有用な作用物または他の活性作用物であってもよい。好ましくは、これらのすべての追加作用物は、1日に1回投与できる用量において治療学的に有効である。
【0060】
本発明の組み合わせ物の有効成分は、1つのものを同時に(simultaneously)、別々のものを同時に(concurrently)、または別々のものを連続に(sequentially)投与されてもよい。同時投与は、1単位の製薬学的調合物または別々の製薬学的調合物を用いることによって実施できる。一般に、組み合わせ物は局所的、経口的、肛門内、静脈内、皮下または筋肉内の経路によって投与されてもよい。HIV感染の第1系列の治療では、1単位の製薬学的調合物を用いる同時投与が好適である。
【0061】
かくして、その他の態様では、HIV感染に対する同時、別々または連続使用のための組み合わせ調製物として本明細書で指定される組み合わせ物を含有する生産物が提供される。
【0062】
また、本発明は、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含有する生産物であって、TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、HIV感染に対する同時、別々または連続使用のための組み合わせ調製物として、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、生産物を提供する。
【0063】
さらなる態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターを含有する生産物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、HIV感染に対する同時、別々または連続使用のための組み合わせ調製物として、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、生産物が提供される。
【0064】
その他の態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含有する生産物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、HIV感染に対する同時、別々または連続使用のための組み合わせ調製物として、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、生産物が提供される。
【0065】
その他の態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター;および(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含有する生産物であって、TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、HIV感染に対する同時、別々または連続使用のための組み合わせ調製物として、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、生産物が提供される。
【0066】
その他の態様では、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター;および(iii)(ii)のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターとは異なる第2のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターを含有する生産物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、HIV感染に対する同時、別々または連続使用のための組み合わせ調製物として、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、生産物が提供される。
【0067】
本発明の生産物中の有効成分は、治療学的に有効な量において存在し、後者は、ある時間の間、すなわち、調合物の各摂取間の時間、好ましくは約24時間、十分なHIV阻止効果を発揮するのに十分である量を意味する。
【0068】
特別な実施態様は、エントリシタビン、ラセミFTC、ラミブジン、テノフォビルおよびそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートのような本明細書に述べられる特定の有効成分の1種以上を含有する先に指定した生産物である。
【0069】
上記生産物は、有効成分の別々の調合物を含有してもよく、または有効成分の2種もしくは適当であればそれ以上が一緒に製剤化(co−formulate)されてもよい。
【0070】
なお、さらなる態様では、本発明は、本明細書で指定される組み合わせ物および適当な担体を含有する製薬学的調合物を提供する。
【0071】
その他の態様では、製薬学的に許容できる担体ならびに有効成分として、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる製薬学的調合物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、調合物が提供される。
【0072】
本発明は、さらに、製薬学的に許容できる担体ならびに有効成分として、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターを含んでなる製薬学的調合物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、調合物を提供する。
【0073】
なおその他の態様では、製薬学的に許容できる担体ならびに有効成分として、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる製薬学的調合物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、調合物が提供される。
【0074】
なおその他の態様では、製薬学的に許容できる担体ならびに有効成分として、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター;および(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる製薬学的調合物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、調合物が提供される。
【0075】
なおその他の態様では、製薬学的に許容できる担体ならびに有効成分として、(i)TMC278もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター;および(iii)(ii)のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターとは異なる第2のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターを含んでなる製薬学的調合物であって、TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、調合物が提供される。
【0076】
本発明の製薬学的調合物中の有効成分は、治療学的に有効な量において存在し、後者は、ある時間の間、すなわち、調合物の各摂取間の時間、好ましくは約24時間、十分なHIV阻止効果を発揮するのに十分である量を意味する。
【0077】
特別な実施態様は、エントリシタビン、ラセミFTC、ラミブジン、テノフォビルおよびそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートのような本明細書に述べられる特定の有効成分の1種以上を含有する先に指定した製薬学的調合物である。
【0078】
本発明の製薬学的調合物は、異なる投与形式のための種々の形態物に製剤化されてもよい。本発明の製薬学的調合物を製造するために、場合によっては付加塩形態の有効量の有
効成分が、製薬学的に許容できる担体と緊密な混合物に合体されるが、この担体は、投与のために望ましい調製物の形態に応じて広範な種々の形態をとってもよい。本発明の製薬学的調合物は、好ましくは、特に経口的、肛門内、経皮的、または非経口的注射による投与のために適当な単位投薬形態物に製剤化される。例えば、経口投薬形態物における調合物を製造するには、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤および液剤のような経口液状調製物の場合は、すべての常用の製薬学的媒質、例えば水、グリコール、油、アルコールなど、あるいは散剤、丸剤、カプセル剤および錠剤の場合は、固形担体、例えば澱粉、糖、カオリン、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などが使用されてもよい。投与が容易なことから、錠剤およびカプセル剤がもっとも有利な経口用量単位形態物を代表し、この場合には、固形の製薬学的担体が明らかに使用される。非経口組成物では、担体は、通常、少なくとも大部分は無菌水を含有するが、例えば溶解度を助長するために、他の成分が含まれてもよい。例えば、担体が生理食塩水、グルコース溶液または生理食塩水とグルコース溶液の混合液を含有する注射用液剤が調製されてもよい。また、適当な液状担体の場合には、懸濁化剤などが用いられる注射用懸濁剤が調製されてもよい。
【0079】
本発明の1つの態様では、本組み合わせ物は、重量範囲150mg〜600mg、適当な範囲200〜400mgを有する製薬学的に許容できる添加物をさらに含有する経口錠剤形態で製剤化することもできる。本発明による有効成分を含有する便利な経口錠剤形態物は、総公称重量範囲200mg〜1500mg、適当には500mg〜1250mg、より適当には600〜1100mgを有する。
【0080】
本発明の製薬学的調合物の長所は、本組み合わせ物の各成分が1個の製薬学的調合物において一緒に製剤化でき、別々に投与する必要がないという事実にある。そのような一緒に製剤化された単一製薬学的形態物の本組み合わせ物の成分の1日の治療学的抗レトロウイルス量は、好ましくは、単一の単位投薬形態物で製剤化されるが、所望であれば、また複数の単位投薬形態物、例えば、2,3,4,5もしくはそれ以上の単位投薬形態物が投与されてもよい。医者は、患者の症状の重篤度ならびに患者の体重、性別および可能な他のパラメーター、例えば各薬物についての、吸収における個人的差異、生体分布、代謝および排泄速度ならびに当業者には既知の他のファクターを考慮して与えられる正確な用量を決定することができる。
【0081】
また、本発明は、HIV感染患者を処置する方法であって、該方法が本明細書で指定される組み合わせ物を投与することを含む方法を提供する。
【0082】
さらにまた、HIV感染患者を処置する方法であって、該方法が、TMC278もしくはその立体異性体またはその製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグを、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビターと組み合わせて投与することを含み、この方法において、治療学的に有効な量のTMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる、上記方法が提供される。
【0083】
さらにまた、HIV感染患者を処置する方法であって、該方法が、TMC278もしくはその立体異性体またはその製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグを、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターと組み合わせて投与することを含み、この方法において、治療学的に有効な量のTMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる、上記方法が提供される。
【0084】
本発明のさらなる態様は、HIV感染患者を処置する方法であって、該方法が、TMC278もしくはその立体異性体またはその製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグ、およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを投与することを含み、この方法におい
て、治療学的に有効な量のTMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる、上記方法に関する。
【0085】
なお本発明のさらなる態様は、HIV感染患者を処置する方法であって、該方法が、TMC278もしくはその立体異性体またはその製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグを、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターと組み合わせて投与することを含み、この方法において、治療学的に有効な量のTMC278、ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる、上記方法を含む。
【0086】
なお本発明のさらなる態様は、HIV感染患者を処置する方法であって、該方法が、TMC278もしくはその立体異性体またはその製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグを、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、および前者のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターとは異なる第2のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターと組み合わせて投与することを含み、この方法において、治療学的に有効な量のTMC278、ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与することができる、上記方法を含む。
【0087】
本発明の方法における有効成分は、治療学的に有効な量において投与され、後者は、ある時間の間、すなわち、調合物の各摂取間の時間、好ましくは約24時間、十分なHIV阻止効果を発揮するのに十分である量を意味する。
【0088】
特別な実施態様は、エントリシタビン、ラセミFTC、ラミブジン、テノフォビルおよびそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレートのような本明細書に述べられる特定の有効成分の1種以上が投与される先に指定した方法である。
【0089】
本発明の1つの実施態様は、医薬(medicine)として使用するための本組み合わせ物に関する。その他の実施態様は、HIV感染患者を処置する薬物(medicament)の製造における使用のための本発明の組み合わせ物に関する。
【0090】
特に関心があるのは、TMC278が、E−TMC278、好ましくは、TMC278塩酸塩またはより好ましくはE−TMC278塩酸塩である、本明細書で指定されるすべての組み合わせ物、あるいは該組み合わせ物に基づいているすべての生産物、製薬学的調合物、単位投薬形態物、方法および使用である。
【0091】
本発明の組み合わせ物は、AIDSおよび関連する臨床症状、例えばAIDSに関連するコンプレックス(ARC)、進行性リンパ節病(PGL)またはAIDSに関連する神経学的症状、例えば多発性硬化症の処置のために特に有用である。本3剤組み合わせ物は、薬物にナイーブなHIV感染患者の処置のために特別に有用であろう。
【0092】
本発明の組み合わせ物は、また、ヒトにおけるHIV伝染もしくは感染、特に性的伝染の予防のために有用である。かくして、本発明は、パートナー間の性交または関係する密接な接触を介するHIV感染もしくは伝染の予防用薬物の製造のための本発明による組み合わせ物の使用に関する。また、本発明は、いずれかの本発明による組み合わせ物の有効量をそれを必要とする被験者に投与することを含む、パートナー間の性交または関係する密接な接触を介するHIV感染もしくは伝染の予防方法に関する。
【0093】
本発明による組み合わせ物の各有効成分についてそれぞれの1日用量は、10mg〜800mg、好ましくは50〜400mg、より好ましくは50〜300mg、または100〜300mgの範囲であってもよい。特に、TMC278の1日用量は、10mg〜500mg、好ましくは10〜300mg、より好ましくは50〜250mg、なおより好
ましくは50〜200mgの範囲、例えば約100mgであってもよい。
【0094】
1日を基礎に摂取される3剤組み合わせ物の各1対の成分の重量比は、1/10〜10/1の範囲で変化してもよい。適当には、各1対の重量比は1/6〜6/1、より適当には1/4〜4/1、好ましくは1/3〜3/1、より好ましくは1/2〜2/1の間で変化する。
【0095】
表2は、化合物E−TMC278、エントリシタビンおよびテノフォビルの組み合わせ物における各有効成分についての1日用量の若干の例を列挙している。
【0096】
【表2】

【0097】
表3は、TMC278、アバカビルおよびラミブジンの組み合わせ物における各有効成分についての1日用量の若干の例を列挙していて、ここでアバカビル硫酸塩について表に記された用量は、アバカビル塩基の当量用量である。
【0098】
【表3】

【0099】
かくして、本発明による興味ある組み合わせ物は、10mg〜500mgの範囲の1日用量における化合物E−(A)、1日用量150mgのラミブジンおよび1日用量300mg当量のアバカビル塩基を含有する。適当には、そのような組み合わせ物は単一の製薬学的形態物において製剤化される。
【0100】
本発明によるその他の興味ある組み合わせ物は、50mg〜250mgの範囲の1日用量における化合物E−(A)、1日用量150mgのラミブジンおよび1日用量300mg当量のアバカビル塩基を含有する。適当には、そのような組み合わせ物は単一の製薬学的形態物において製剤化される。
【0101】
また、本発明は、製薬学的に許容できる担体および有効成分としての本発明による組み合わせ物の有効量を含んでなる、性交または関係する密接な接触が起きてもよい部位、例えば生殖器、肛門、口、手、下腹部、上部大腿、特に膣および口に適用されるように適合した形態物における製薬学的組成物に関する。適当な特定の適合された組み合わせ物としては、ゲル剤、ゼリー剤、クリーム剤、軟膏剤、フィルム剤、スポンジ剤、フォーム剤、膣内リング、頸管キャップ、肛門または膣適用のための坐剤、膣または肛門または口腔錠剤、口内洗浄液のような、膣、肛門、口および皮膚に適用されるために通常用いられるすべての組成物が引用されてもよい。そのような製薬学的組成物を製造するためには、有効成分としての3剤組み合わせ物の各特定化合物の有効量が、製薬学的に許容できる担体との緊密な混合物において合体されるが、この担体は投与形態に応じて広範な種々の形態をとることができる。投与部位においてそのような製薬学的組成物の残留時間を増強するために、生体接着剤、特に生体接着性ポリマーを組成物中に含むことが得策であろう。生体接着剤は、粘膜もしくは皮膚組織のような生きている生物学的表面に接着する材料として定義できる。
【0102】
かくして、本発明はまた、製薬学的組成物が適用部位に対して生体接着性であることを特徴とする、製薬学的に許容できる担体および有効成分として、本3剤組み合わせ物の各化合物の有効量を含んでなる製薬学的組成物に関する。好ましくは、適用部位は、膣、肛門、口または皮膚であり、もっとも好適には膣である。
【0103】
Otten RAらはJournal of Virology(2000),74(20),9771−9775において、そしてWitvrouwらはAntiviral
research(2000),46(3),215−221において、危険性の高い性的曝露後のHIVウイルスのバリヤー突破(breakthrough)を遅らせるテノフォビルの能力を開示している。
【0104】
Raniらは、Antiviral Chemistry & Chemotherapy(2001),12(Suppl.1),51−59においてウイルスのバリヤー突破を遅らせるラミブジンに能力を記述している。
【0105】
パートナー間の性交または関係する密接な接触を介するHIV感染を予防するTMC278の能力が次の試験において例証できる。未熟な単球に由来する樹状細胞(immMO−DC)は、間隙性樹状細胞の良好なモデルを表し、この細胞は、性的なHIV伝染における初期の標的であり、そして免疫応答の重要なイニシエーターである。これらのimmMO−DCは、パートナー間の性交または関係する密接な接触を介するHIV感染の予防を試験する「イン・ビトロ」モデルにおいて使用された。1つのそのようなモデルは、試験の部において記述されており、TMC278がMO−DC/CD4(+)T細胞の混合培養においてHIVの複製を強力に阻止することを示している。
【実施例1】
【0106】
E−TMC278の薬物動態
二重ブラインドの無作為化したプラセボ対照の第I相試行が、健康な男性ボランティアにおいて単一用量の化合物E−TMC278の安全性、許容性、およびエクス・ビボの薬物動態を評価するために計画された。経口用量12.5、25および50mgがPEG400において調合され、標準食とともに摂取された。薬物動態の結果を表4に示す。
【0107】
健康な男性被験者における化合物E−TMC278の単一100mgおよび200mg経口用量の安全性、許容性、薬物動態およびエクス・ビボの薬力学を評価するための4回の投薬セッションによる、その他の二重ブラインドの無作為化したプラセボ対照の第I相
研究の薬動学の結果がまた、表4に報告される。無作為化は、各セッションについて、6被験者が同用量の化合物E−TMC278を受け、そして3被験者がプラセボを受けるように行われた。各投薬セッションの間には約14日の間隔があった。
【0108】
表4は、高くかつ用量に比例した曝露が得られたことを示している。5個のCmaxデータポイントについての相関係数は0.9897であり、0〜48時間の間の曲線下面積値(AUC0−48hr)については0.9952である。血漿濃度の半減期は37〜39時間の範囲だった。化合物はボランティアによって十分許容された。薬物の関連する副作用は認められなかった。
【0109】
【表4】

【実施例2】
【0110】
化合物E−TMC278のウイルス学的プロフィル
化合物E−TMC278がHIVの自然宿主細胞を用いる細胞に基づくアッセイにおいて試験された。MT−4細胞(ヒトT細胞の細胞系)が、HIV−1(野生型または変異株)により感染され、そして10%胎児ウシ血清の存在下で種々の濃度の抗ウイルス化合物に曝露された。細胞毒性が抗ウイルス活性と平行して決定され、それによって、抗ウイルス作用の選択性が調査できた。活性化合物は、細胞内での複製段階を妨げるためには細胞膜を貫通しなければならない。
【0111】
37℃でのインキュベーション4日後に、HIVおよび疑似感染細胞の生存度が、自動化したテトラゾリウムに基づく比色アッセイによって調査された。この方法は、ウイルスの細胞変性の阻害について両50%阻害濃度(IC50)、IC90、および50%細胞毒性濃度(CC50)の算出を可能にした。比CC50/IC50は、また選択性指数とも呼ばれ、抗ウイルス作用の特異性の指示である。試験したHIV株は:野生型(wt)HIV−1;部位特異的変異誘発(SDM)によって得られた1パネルの単一および二重変異株、およびNNRTIに対する耐性について選択された1パネルの臨床分離株を含んだ。
【0112】
野生型およびSDM変異株に対する活性
HIV−1の限定したパネルが、部位特異的変異誘発(SDM)および相同的組換え技術を用いて構築された。化合物E−TMC278が、市販のNNRTIに対して耐性であることが知られている単一および二重変異株の拡大パネルに対して試験された。ネビラピン(NVP)およびエファビレンツ(EFV)が対照として含まれた。
【0113】
結果が表5に示される(提示された値はIC50(nM)である)。野生型ウイルスでは、得られたIC50は0.4nM(0.15ng/ml)およびIC90は1.3nM(0.48ng/ml)であった。この選択内で化合物E−TMC278に対する最低の感受性は、二重変異株100I+103Nであって、約8nMのIC50および約16n
MのIC90を有した。
【0114】
【表5】

【0115】
イン・ビトロにおける耐性の進展
NNRTIはHIV−1の高度に選択的なインヒビターであるが、それらの現在の臨床使用は、NNRTI(交差−)耐性の急速な出現によって限定される。化合物E−TMC278および第1世代NNRTIネビラピンおよびエファビレンツに対する耐性出現の速度がイン・ビトロで比較された。
【0116】
MT−4細胞が、種々の濃度の化合物E−TMC278(40,200,1000および5000xIC50)の存在下で高い感染多重度(ウイルス集団の遺伝的多様性を細孔にするため、1細胞当たり>1の感染性ウイルス)において野生型HIV−1により感染され、そしてウイルス複製について1週間に2回モニターされた。出現するウイルスが表現型および遺伝子型について収集された。ウイルス複製の証拠のない培養物は、同じ濃度のインヒビターの存在下で全期間30日(10継代)さらに継代培養された。
【0117】
ネビラピンに対する耐性は全試験濃度において3〜6日以内に出現した。バリヤーを突破したウイルスは典型的なY181C変異を有した。エファビレンツによる同じ実験は3
〜7日以内に全濃度(5μMまで)においてG190Eの選択をもたらした。化合物E−TMC278は、野生型ウイルスを用いて30日以内に耐性ウイルスを選択しなかった。二重耐性変異株K103N+Y181C(IC50 0.8nM)が野生型ウイルスの代わりに使用された場合は、耐性は全試験濃度において出現した。単一変異株Y181C(IC50 1.3nM)または103N(IC50 0.3nM)から出発した場合、ウイルスのバリヤー突破は40および200nMでは起きなかったが、10nMにおいて起きた。
【0118】
高い遺伝的多様性というこの実験設定では、第1世代NNRTIに耐性のHIV−1は非常に急速に選択された。耐性ウイルスは、わずか1変異のみを有していた。これに対して、化合物E−TMC278に耐性のHIV−1の出現は遅れるか、または起きなかった。
化合物E−TMC278の心臓血管および肺動脈の安全性
化合物E−TMC278は、人間では、標的とした血漿レベルを満たすか、または超過する血漿レベルでイン・ビボにおいて、ならびにイン・ビトロでは、抗ウイルス濃度を満たすか、または超過するイン・ビトロの濃度において、心臓血管および肺動脈のパラメーターには、ほとんどまたは全く影響を与えなかった。
【実施例3】
【0119】
パートナー間の性交または関係する密接な接触を介するHIV感染を予防する化合物E−TMC278の能力を試験するためのイン・ビトロのモデル
例えば、1つのモデルでは、単球由来の樹状細胞(MO−DC)が、感染多重度(MOI)10−3においてモノトロピック(monotropic)HIV株Ba−Lにより2時間感染された。感染後、細胞は6回洗浄され、10%BCS中に400,000細胞/mlで再懸濁された。オートロガスCD4(+)T細胞が、MO−DCと同じエルートレーション(elutration)のリンパ球フラクションから精製され、2X10細胞/mlの濃度において使用された(比MO−DC/CD4(+)T:1/5)。
【0120】
式(I)の化合物(試験化合物)の連続希釈液が、MO−DC/CD4(+)T細胞混合培養物に添加された。各実験は96穴プレートにおいて実施され、ここでは、各カップはMO−DC50μl、CD4(+)T細胞50μlおよび試験化合物100μlを含有した。試験化合物を含有する培養基の半分は週に2回新鮮にされた。上澄液が培養14日後にELISAにおいて分析された。抗ウイルス活性を決定するために、1次培養の終了時にウイルス複製の50%を抑えることができる試験化合物濃度(EC50)が測定された。化合物E−TMC278では、EC50値は0.55nMであった。
【実施例4】
【0121】
調合物
次の組成の錠剤調合物:
エントリシタビン 300mg
テノフォビルジイソプロキシルフマレート 300mg
E−TMC278塩酸塩 110mg
HPMC2910 15mPa.s 24mg
ポリソルベート20 6mg
クロスポリビドン 18mg
ラクトース1水和物 43mg
ステアリン酸マグネシウム 3mg
タルカム 6mg
【0122】
有効成分およびラクトースが流動化され、そして水中HPMCおよびポリソルベートの
溶液を噴霧される(120ml/錠剤の当量において)。続いて、なお流動化しながら、クロスポリビドンが添加され、続いてステアリン酸マグネシウムおよびタルカムが添加される。かくして得られた顆粒が標準圧縮装置を用いて円柱状の錠剤に圧縮される。
【0123】
以下に本発明の主な特徴と態様を列挙する。
【0124】
1. (i)TMC278とも呼ばれる4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリル、もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および
(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビター
を含んでなる組み合わせ物であって;TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、上記組み合わせ物。
【0125】
2. (i)TMC278、もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および
(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター
を含んでなり;かつ、
TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物。
【0126】
3. (i)TMC278、もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および
(ii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビター
を含んでなり;かつ、
TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物。
【0127】
4. (i)TMC278、もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および
(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター;および
(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビター
を含んでなり;かつ、
TMC278およびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物。
【0128】
5. (i)TMC278、もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;またはそのプロドラッグ;および
(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター;および
(iii)(ii)のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターとは異なる第2のヌクレオシド逆転写酵素インヒビター
を含んでなり;かつ
TMC278およびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターである、組み合わせ物。
【0129】
6. TMC278がそのE−異性型において存在する、1〜5.のいずれかに記載の組み合わせ物。
【0130】
7. ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよび/または1種以上のヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、TMC278に対する耐性を惹起しない逆転写酵素における変異を選択する、1〜6.のいずれかに記載の組み合わせ物。
【0131】
8. ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターが、テノフォビルもしくはそのプロドラッグ
テノフォビルジソプロキシルフマレートである、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0132】
9. ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、エントリシタビン、ラセミFTC、ラミブジン(また3TCと呼ばれる)、アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩である、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0133】
10. ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターがエントリシタビンである、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0134】
11. (i)TMC278もしくは製薬学的に許容できる塩、および
(ii)テノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレート、および
(iii)エントリシタビンを含有する、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0135】
12. ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターがラミブジンである、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0136】
13. (i)TMC278もしくは製薬学的に許容できる塩、および
(ii)テノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレート、および
(iii)ラミブジンを含有する、8.記載の組み合わせ物。
【0137】
14. ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩である、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0138】
15. (i)TMC278もしくは製薬学的に許容できる塩、および
(ii)テノフォビルもしくはそのプロドラッグ テノフォビルジソプロキシルフマレート、および
(iii)アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩を含有する、14.記載の組み合わせ物。
【0139】
16. (i)TMC278もしくは製薬学的に許容できる塩、および
(ii)ラミブジン、および
(iii)エントリシタビンを含有する、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0140】
17. (i)TMC278もしくは製薬学的に許容できる塩、および
(ii)アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩、および
(iii)エントリシタビンを含有する、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0141】
18. (i)TMC278もしくは製薬学的に許容できる塩、および
(ii)ラミブジン、および
(iii)アバカビルもしくはその製薬学的に許容できる塩を含有する、1〜7.のいずれか1つに記載の組み合わせ物。
【0142】
19. 1日を基礎に摂取される3剤組み合わせ物の各1対の成分の重量比が、1/4〜4/1の範囲で変化してもよい、1〜18.のいずれかに1つに記載の組み合わせ物。
【0143】
20. HIV感染に対する同時、別々または連続使用のための組み合わせ調製物として、1〜19.のいずれかに請求される組み合わせ物を含有する生産物。
【0144】
21. 製薬学的に許容できる担体および1〜18.のいずれかに請求される組み合わせ物を含んでなる製薬学的調合物。
【0145】
22. 有効成分として、(i)TMC278もしくはその立体異性体または製薬学的に許容できる塩またはそのプロドラッグ;および(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビター、および(iii)ヌクレオチド逆転写酵素インヒビターを含んでなる21.の調合物。
【0146】
23. 医薬として使用するための1〜18.のいずれかに1つにおいて請求される組み合わせ物。
【0147】
24. パートナー間の性交または関係する密接な接触を介するHIV感染もしくは伝染の予防用薬物の製造のための1〜18.のいずれかに1つにおいて請求される組み合わせ物の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリル、もしくはその立体異性体;またはその製薬学的に許容できる塩;および
(ii)ヌクレオシド逆転写酵素インヒビターおよび/またはヌクレオチド逆転写酵素インヒビター
を含んでなる医薬として使用するための組み合わせ物であって;
4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリルおよびヌクレオチド逆転写酵素インヒビターおよびヌクレオシド逆転写酵素インヒビターが、1日に1回投与できる用量における治療学的に有効なHIVインヒビターであり、
但し、4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]−ベンゾニトリルもしくはその立体異性体または製薬学的に許容できる塩、エントリシタビン、およびテノフォビルもしくはテノフォビルジソプロキシルフマレートから成るものではない、
上記組み合わせ物。

【公開番号】特開2012−51915(P2012−51915A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224982(P2011−224982)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2006−525150(P2006−525150)の分割
【原出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ (94)
【氏名又は名称原語表記】Tibotec Pharmaceuticals
【Fターム(参考)】