説明

ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)遺伝子の細菌からのクローニングおよび配列決定、ならびにその用途

【課題】優れたデカルボキシラーゼ活性と、基質親和性と、熱安定性とを有し、且つ種々のpHで優れた活性を示す、ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードしている単離核酸分子、および、該ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする核酸配列を含む宿主細胞を用いたエタノール製造方法の提供。
【解決手段】広範囲の宿主細胞において高レベルに発現するようなコドン使用頻度となっている核酸分子を含んだ組換え発現ベクターと、該発現ベクターを含む組換え宿主細胞、他のエタノール産生酵素をさらに含んだ宿主細胞、そうした宿主細胞を用いて有用な物質(例えば、アセトアルデヒドおよびエタノール)を産生する方法とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許仮出願第60/288,638号「組換えBacillus megateriumにおける活性Sarcina ventriculiピルビン酸デカルボキシラーゼの高収率産生」、同第60/288,671号「耐酸性嫌気性グラム陰性菌Sarcina ventriculi Goodsir由来のピルビン酸デカルボキシラーゼのクローニング、発現、および特徴決定」、同第60/288,698号「Acetobacter pasteurianus由来のピルビン酸デカルボキシラーゼ:生化学特性、遺伝特性、および生理特性」、同第60/288,622号「酢酸菌Acetobacter pasteurianus由来のピルビン酸デカルボキシラーゼの生化学的および生物物理学的特徴決定」、および、同第60/288,699号「ピルビン酸デカルボキシラーゼ:Acetobacter pasteurianusによる乳酸の酸化的代謝における重要酵素」の優先権を主張するものである。該仮出願はすべて2001年5月4日に申請されたものであり、引用によって本明細書に完全に援用される。本明細書で引用するすべての特許、特許出願、および参考文献の内容は引用によって本明細書に完全に援用される。
【0002】
政府助成研究
本研究の一部は、米国エネルギー省再生可能エネルギー研究所(ZDH-9-29009-04)、エネルギー生命科学プログラム(FG02-96ER20222)、およびフロリダ農業実験ステーションからの助成を受けて行われた。
【背景技術】
【0003】
石油を基にする自動車用燃料を植物由来の再生可能燃料に置き換えることには環境面および社会面で多数の利益がある(Lyndら、(1991) Science 251:1318-1323; Olsonら、(1996) Enzyme Microb. Technol. 18:1-17; Wymanら、(1995) Amer. Chem. Soc. Symp. 618:272-290)。米国では毎年1200億ガロンの自動車用燃料が燃焼されており、これは石油の輸入量に概ね等しい。再生可能な代替燃料としてエタノールを開発することは、輸入石油に対する米国の依存を解消し、環境を改善し、且つ新規雇用を生み出せる可能性をもたらす(Sheehan, (1994) ACS Symposium Series No. 566, ACS Press, pp 1-53)。
【0004】
理論上、自動車燃料としての輸入石油の問題に対する解決策は非常に単純であると考えられる。最終資源である石油を使う代わりに、再生可能資源であるエタノールを植物材料の発酵によって効率的に生産すればよい。事実、ブラジルでは20年以上前からエタノールの生産可能性と主要自動車燃料としての利用可能性が実証されている。同様に、米国でも毎年12億ガロンの燃料用エタノールが生産されている。燃料用エタノールは現在、Saccharomyces cerevisiaeまたはZymomonas mobilis(Z. mobilis)を利用してコーンスターチまたはサトウキビシロップ(ショ糖)から生産されている。しかしいずれの原料でも、石油系自動車燃料の代替を実現するのに必要な量は産生できない。さらに、ショ糖およびコーンスターチはいずれも食品用途との競合が生じる材料であり、出発材料として比較的高価である。
【0005】
さらに、これらの糖基質は植物に含まれる全炭水化物のごく一部にすぎない。事実、植物に含まれる炭水化物の大部分はリグノセルロースである。リグノセルロースはセルロース、ヘミセルロース、ペクチン、リグニンを含む複雑な構造のポリマーである。リグノセルロースは例えば植物の茎、葉、外皮、殻、穂軸に含まれる。これらのポリマーを加水分解すると、グルコース、キシロース、マンノース、ガラクトース、アラビノースなど中性の糖の混合物が生成される。天然に存在する生物で、これらすべての糖を迅速且つ効率的に代謝してエタノールにできるものは知られていない。
【0006】
しかし、この基質資源の活用を目指した取り組みの中で、ガルフ石油会社(Gulf Oil Company)が、酵母処理でセルロースからエタノールを産生する同時糖化発酵(SSF; simultaneous saccharification and fermentation)という方法を開発した(Gaussら、(1976) 米国特許第3,990,944号)。単一の容器内で、セルロース系基質のスラリーに真菌セルラーゼ調合物と酵母とを加えると、セルロースの加水分解と同時にエタノールが生成される。しかし、ガルフ社のSSF法にはいくつかの欠点がある。例えば、酵母の分裂周期が比較的長いこと(24〜36時間)、および、酵母は複雑な糖を発酵できないことである。加えて、現時点では、真菌セルラーゼの添加は大規模バイオエタノール処理には費用がかかりすぎると考えられている(Himmelら、(1997) Amer. Chem. Soc. pp. 2-45; Ingramら、(1987) Appl. Environ. Microbiol. 53:2420-2425; Okamotoら、(1994) Appl. Microbiol. Biotechnol. 42:563-568; Philippidis, G., (1994) Amer. Chem. Soc. pp. 188-217; Saitoら、(1990) J. Ferment. Bioeng. 69:282-286; Sheehan, J., (1994) Amer. Chem. Soc. pp 1-52; Suら、(1993) Biotechnol. Lett. 15:979-984)。
【0007】
さらに、エタノール発酵の重要な酵素であるピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)は植物、酵母、および真菌には広く含まれているものの、細菌に含まれていることは稀であり、動物ではまったく含まれていないため、他の生物を利用したエタノール生成は困難である(9,25)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の概要
酵素法による安価なエタノール発酵の開発は、基質利用の効率性を高め発酵処理の経済性を向上させるうえで大きな可能性をもっている。したがって、複雑な糖を効率的に解重合し、続いて糖を迅速にアルコールへと発酵させるための酵素を開発すること、さらにより有利な手段としてそのような酵素を産生する生物触媒を開発することは、大きな利益があると考えられる。
【0009】
グラム陰性菌およびグラム陽性菌など特定の微生物は多数の発酵酵素を産生する。これらの発酵酵素は、例えばセルロースとヘミセルロースとを解重合して発酵性糖を産生する反応、糖をピルビン酸に変換する反応、基質ピルビン酸をアセトアルデヒドに変換する反応、そして最終的にアセトアルデヒドをエタノールに変換する反応を触媒する能力を有する。しかし、このような生物がすべての必要酵素を最適量で産生することはめったにない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって本発明は、ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードした遺伝子であって、幅広い生物で高レベルに発現しうる遺伝子を提供する。これにより、エタノール発酵に必要な他の重要酵素を産生する生物内で該遺伝子が発現した際、またはそのような生物と該遺伝子とを共培養した際には、きわめて高レベルのエタノール生成が実現され得る。例えばピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)の単独使用またはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)との併用など、これらの酵素は、所望の混合活性を有する粗抽出物として使用してもよく、または、精製組成物として使用してもよい。
【0011】
さらに、生物触媒、好適には組換え細菌、より好適にはエタノール産生細菌を工学的に処理して、これら酵素活性のうち1つまたは複数を糖発酵に十分な特定のレベルまで発現させることも可能である。このような生物触媒は、同時糖化発酵(SSF)として知られる処理により、複雑な糖の分解とそれに続くアルコールへの発酵とを効率的に行うのに適している。
【0012】
本発明の少なくとも一部は、細菌内におけるエタノール発酵の重要酵素をコードしている遺伝子の発見に基づいている。具体的には、Zymobacter palmaeとAcetobacter pasteurianusとSarcina ventriculiとに含まれるpdc遺伝子の同定に成功した。これらの遺伝子は、優れた酵素活性と、例えばピルビン酸などに対する基質親和性と、熱安定性とを有し、且つ種々のpHで優れた活性を示す、ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードしていることが確認された。さらに、本発明のpdc遺伝子は、広範囲の生物において該遺伝子が高レベルに発現するようなコドン使用頻度となっている。
【0013】
したがって、本発明は1つの局面において、ピルビン酸デカルボキシラーゼポリペプチド(PDC)かまたはその生物学的活性部位かをコードしている単離核酸分子と、PDCをコードしている核酸を検出するためのプライマーまたはハイブリダイゼーションプローブとして適した核酸断片とを提供する。
【0014】
1つの実施形態において、本発明のピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)の核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5に示すヌクレオチド配列またはこれらの相補配列と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、またはそれ以上の同一性を有する(該ヌクレオチド配列の全長との比較において)。
【0015】
特定の実施形態では、該単離核酸分子は、配列番号1、配列番号3、配列番号5に示すヌクレオチド配列またはこれらの相補配列を含む。
【0016】
他の実施形態では、pdc 単離核酸分子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6のアミノ酸配列に十分に相同なアミノ酸配列を備えたポリペプチドをコードする核酸配列を含む。特定の実施形態において、pdc核酸分子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、またはそれ以上の同一性を有する(該アミノ酸配列の全長との比較において)(PDC)をコードしているヌクレオチド配列を含む。
【0017】
特定の実施形態では、単離核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列を備えたZymobacter palmaeのピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素のアミノ酸配列をコードする。
【0018】
他の実施形態では、単離核酸分子は、配列番号4のアミノ酸配列を備えたAcetobacter pasteurianusのピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素のアミノ酸配列をコードする。
【0019】
さらに他の実施形態では、単離核酸分子は、配列番号6のアミノ酸配列を備えたSarcina ventriculiのピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素のアミノ酸配列をコードする。
【0020】
別の特定の実施形態では、該核酸分子は、少なくとも約1600個のヌクレオチドの長さがあり、ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする(本明細書に記載したように)。
【0021】
より具体的な実施形態では、本発明は、寄託番号ATCC PTA-4254を割り当てられた米国菌培養収集所への寄託で示されるZymobacter palmaeに由来するpdc遺伝子をコードするプラスミドpJAM3440を提供する。関連した実施形態では、本発明は、寄託番号ATCC PTA-4252を割り当てられた米国菌培養収集所への寄託で示されるAcetobacter pasteurianusに由来するpdc遺伝子をコードするプラスミドpJAM304を提供する。関連した別の実施形態では、本発明は、寄託番号ATCC PTA-4253を割り当てられた米国菌培養収集所への寄託で示されるSarcina ventriculiに由来するpdc遺伝子をコードするプラスミドpJAM419を提供する。
【0022】
本発明の別の実施形態は、核酸分子(好適にはピルビン酸デカルボキシラーゼの核酸分子)であって、非ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)のポリペプチドをコードする核酸分子に対して、ピルビン酸デカルボキシラーゼの核酸分子(すなわちpdc 遺伝子)を特定的に検出する核酸分子に関する。例えば、一実施形態では、こうした核酸分子は、少なくとも50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、500乃至1000、1000乃至1500、1500乃至1500個またはそれ以上のヌクレオチドからなる長さがあり、並びに/または配列番号1、配列番号3、配列番号5に示すヌクレオチド配列、もしくはそれらの相補配列を有する核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。該核酸分子は、全長に占めるヌクレオチドの数が、上述の何れかの数を下限とし、別の数を上限とした範囲内の任意長でよく、例えば全長に60乃至80、300乃至1000、または150-400個のヌクレオチドを備えた分子である、と理解すべきである。
【0023】
特定の実施形態では、該核酸分子は、長さが少なくとも15の(例えば隣接する)ヌクレオチドで、配列番号1、配列番号3、または配列番号5のヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。従って、本発明は、上述の核酸を用いて、本発明のpdc核酸の存在を検出する方法を提供する。
【0024】
他の実施形態では、該核酸分子は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含んだポリペプチドの天然対立遺伝子変異体をコードし、該核酸分子は、それぞれ配列番号1、配列番号3、または配列番号5を含んだ核酸分子に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
【0025】
別の実施形態では、本発明の核酸分子はベクター内に存在し、サロゲートプロモーターおよび/または異種ポリペプチドをコードする付加的核酸配列に作動的に連結していてもよい。
【0026】
特定の実施形態では、本発明は、本発明の核酸分子(例えば、ベクターに含まれるか、該宿主細胞に安定的に組み込まれたもの)を含んだ宿主細胞を提供する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明は、例えば配列番号1、配列番号3、または配列番号5に示した、Zymobacter palmae、Acetobacter pasteurianus、またはSarcina ventriculiのような細菌細胞に由来するピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする異種核酸配列を含む。
【0028】
別の実施形態では、pdc 遺伝子を含む宿主細胞はエタノール産生特性を有したものでよく、例えば、本来的にエタノール産生特性および/またはアルコールデヒドロゲナーゼ、グルカナーゼ、セクレターゼ、もしくはその組合せをさらに有する。関連した実施形態では、該宿主細胞は、糖からエタノールを発酵するのに適している。特定の実施形態では、該宿主細胞は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6に示したPDCをコードする異種核酸を含む組換えエタノール産生宿主細胞である。該異種核酸は、外因性サロゲートプロモーターの制御下にあってもよい。
【0029】
上述の宿主細胞は、グラム陰性菌細胞またはグラム陽性菌細胞でよい。
【0030】
本発明のグラム陰性宿主細胞は、例えば、Gluconobacter、Rhizobium、Bradyrhizobium、Alcaligenes、Rhodobacter、Rhodococcus、Azospirillum、Rhodospirillum、Sphingomonas、Burkholderia、Desulfomonas、Geospirillum、Succinomonas、Aeromonas、Shewanella、Halochromatium、Citrobacter、Escherichia、Klebsiella、Zymomonas、Zymobacter、またはAcetobacterであってよい。
【0031】
本発明のグラム陽性宿主細胞は、例えば、Fibrobacter、Acidobacter、Bacteroides、Sphingobacterium、Actinomyces、Corynebacterium、Nocardia、Rhodococcus、Propionibacterium、Bifidobacterium、Bacillus、Geobacillus、Paenibacillus、Sulfobacillus、Clostridium、Anaerobacter、Eubacterium、Streptococcus、Lactobacillus、Leuconostoc、Enterococcus、Lactococcus、Thermobifida、Cellulomonas、またはSarcinaであってよい。
【0032】
特定の局面において、配列番号2、配列番号4、配列番号6に示すアミノ酸配列と少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、またはそれ以上の同一性を有する(例えば、該アミノ酸配列の全長との比較において)単離ポリペプチドを提供する。
【0033】
一実施形態では、本発明の単離ポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含む。
【0034】
関連した一実施形態では、該単離ポリペプチドは、ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を有する。本発明のピルビン酸デカルボキシラーゼは、ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性などの活性が向上するように、さらに、コドン使用頻度、基質(例えばピルビン酸)親和性、熱安定性、および/または特定のpHにおける活性を向上させるように選択できる。本発明のこうしたピルビン酸デカルボキシラーゼは変化させたり、キメラポリペプチドとして、任意の上述の特性を達成できる。さらに、該ポリペプチドは、例えば、精製または検出用のイミュノタグ(原語:immunotag)等の異種アミノ酸をさらに含むことができる。
【0035】
他の局面では、本発明は、例えば配列番号2、配列番号4、または配列番号6に示したピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素などの本発明のポリペプチド(或いはその断片)に選択的に結合する抗体を提供する。従って、本発明は、こうした抗体を用いて、本発明のピルビン酸デカルボキシラーゼを検出する方法を提供する。
【0036】
別の局面では、本発明は、適切な培養条件下で本発明による上述の核酸の何れかを宿主細胞内で発現させることにより、本発明のピルビン酸デカルボキシラーゼを産生する方法を提供する。該核酸のコドン使用頻度またはコードされた生成物のデカルボキシラーゼ活性(例えば、熱安定性、基体親和性、または様々なpHにおける活性)を向上させるため、該核酸を変化または変異させてもよい。
【0037】
別の局面では、本発明は、ピルビン酸デカルボキシラーゼがピルビン酸からアセトアルデヒドが産生されるのに十分なレベルで発現される条件下で、上述の宿主の何れかを培養することにより、アセトアルデヒドを産生する方法を提供する。関連した実施形態では、アセトアルデヒドを産生するこの方法は、アセトアルデヒドがピルビン酸から産生される条件下で、上記宿主細胞から得られた細胞可溶化物を接触させることにより実行される。従って、本発明は、向上したデカルボキシラーゼ活性を備え、且つ、例えば、熱安定性、様々なpHにおける活性、および/または優れた基体親和性を備えた酵素抽出物を提供する。
【0038】
別の局面では、本発明は、ピルビン酸デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼが、エタノールが主要発酵生産物として産生されるのに十分なレベルで発現される条件下で、上記宿主細胞を培養することによりエタノールを産生する方法を提供する。
【0039】
一局面では、本発明は、デカルボキシラーゼ活性が向上した(例えば、ピルビン酸への向上した親和性、熱安定性、異なるpHにおける活性)ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素を選択する方法を提供し、この選択は、ピルビン酸デカルボキシラーゼのアミノ酸配列を、配列番号2、配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を備えたピルビン酸デカルボキシラーゼの配列と比較し、さらに、該ピルビン酸デカルボキシラーゼの少なくとも1つのアミノ酸残基を配列番号2、配列番号4、または配列番号6の対応するアミノ酸残基と同一性を有するように変化させ、ポリペプチドのピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を向上させることにより行う。
【0040】
関連した実施形態では、本発明は、レシピエントの宿主細胞において発現するようにピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素を選択する方法を提供し、この選択は、ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を、配列番号1、配列番号3、または配列番号5の核酸配列を備えたピルビン酸デカルボキシラーゼと比較し、さらに、該ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする核酸の少なくとも1つのコドンを配列番号1、配列番号3、または配列番号5の対応するコドンと同一性を有するように変化させ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする該変化させた核酸の宿主細胞における発現を向上させることにより行う。
【0041】
関連した別の実施形態では、本発明は、レシピエントの宿主細胞において発現が向上したピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素を選択する方法を提供し、この選択は、ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を、該レシピエントの宿主細胞のコドン使用頻度と比較し、さらに、該ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする核酸の少なくとも1つのコドンを該レシピエントの宿主細胞の対応するコドン使用頻度と一致するように変化させ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする該変化させた核酸の宿主細胞における発現を向上させることにより行う。
【0042】
関連したさらに別の実施形態では、本発明は、レシピエントの宿主細胞において発現が向上したピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素を選択する方法を提供し、この選択は、ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を、該レシピエントの宿主細胞のコドン使用頻度と比較し、さらに、該ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする核酸の1つのコドンに対応した少なくとも1つのtRNAを組換え産生するように変化させ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする該変化させた核酸の宿主細胞における発現を向上させることにより行う。
【0043】
本発明のその他の特徴及び利点は、次の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるはずである。
【0044】
発明の詳細な説明
本発明の全範囲を明確に理解できるように、以下に定義を説明する。
I.定義
【0045】
本明細書中で用いられている「アルコールデヒドロゲナーゼ」という語は、アセトアルデヒドをアルコール、好適には、エタノールに変換することが可能な酵素を含むことが意図されている。
【0046】
「キメラ」という用語は、別のPDCに由来する全ドメインが、PDC中の対応ドメインとともに、例えば、遺伝子工学を用いて、工学的に処理(融合、交換)された突然変異PDCまたは改変されたPDCを含む。
【0047】
「コドン使用頻度」という語は、レシピエントの宿主生物(または、その細胞抽出物)中に発現すると考えられる所与の核酸を分析して得た、核酸を対応するポリペプチドに翻訳するために宿主生物が(好適には、十分なレベルで)必要とする特定のコドンの発生率または「使用頻度」を含むことが意図されている。そのような観察に基づいて、レシピエント宿主には、必要なあらゆるコドンが組換えによって補足されてもよい。一方、別の宿主は、より高いコドン使用頻度を有するように選択することができる。または、(例えば、沈黙突然変異を導入することによって)それ以上制限コドン(limiting codon)を持たないように核酸を変更することもできる。
【0048】
「デカルボキシラーゼ活性」という用語は、ポリペプチドがピルビン酸をアセトアルデヒドに酵素的に変換する能力を含むことが意図されている。典型的に、選択されたポリペプチドの活性は、産生されたポリペプチドに関連する全ての酵素活性、例えば、酵素の、より高い基質親和性、熱安定性、種々のpHにおける安定性、または、これらの属性の組み合わせを包含している。
【0049】
「〜に由来する」という表現は、指示された由来源からのポリヌクレオチドセグメントの(全部または一部)を単離することを含むことが意図されている。この表現は、例えば、指示されたポリヌクレオチド由来源に関連する配列からの、もしくは該配列に基づく、直接的なクローニング、PCR増幅、または人工的合成を含むことが意図されている。
【0050】
「エタノール産生(の)」という用語は、微生物が、一次発酵産物としての炭水化物からエタノールを産生する能力を含むことが意図されている。この用語は、天然に発生したエタノール産生成物、天然に発生した、もしくは、誘発された、突然変異をもつエタノール産生生物、および遺伝子修飾されたエタノール産生生物を含むことが意図されている。
【0051】
「発酵させる」および「発酵」という用語は、それによって、特に、一次発酵産物としての炭水化物から、エタノールが産生される酵素プロセス(例えば、細胞もしくは無細胞の、例えば、溶菌液もしくは精製ポリペプチド混合)を含むことが意図されている。
【0052】
「エタノール産生に関与する遺伝子」という表現は、例えば、基質取り込み、基質処理、エタノール許容度等の、細胞エタノール産生のあらゆる局面を向上させることができる、全ての遺伝子を含むことが意図されている。エタノール産生に関与する遺伝子は、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、分泌性ポリペプチド、およびポリサッカラーゼであり、また、これらの遺伝子またはそれらの類似体は、任意の適切な生物から得ることができる。
【0053】
「グルカナーゼ」という用語は、任意の結合した糖部分、例えば、本明細書中では、複合糖質、例えば、セロオリゴ糖(cellooligosaccharide)およびリグノセルロース(セルロース、ヘミセルロースおよびペクチンを含む)とも称されている、複合炭水化物を含む、二糖類、三糖類、オリゴ糖類の分解または解重合を触媒することができるポリペプチドを含むことが意図されている。これらの用語は、グルカナーゼ、好適には、エンドグルカナーゼのようなセルロースを含むが、それのみならず、例えば、エキソグルカナーゼ、β-グルコシダーゼ、セロビオ加水分解酵素(cellobiohydrolase)、エンド‐1,4-β-キシラナーゼ、β−キシロシダーゼ(β-xylosidase)、α-グルクロニダーゼ、α-L-アラビノフラノシダーゼ(α-L-arabinofuranosidase)、アセチルエステラーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、β-グルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、アラビノシダーゼ(arabinosidase)、マンナナーゼ、ペクチン加水分解酵素、ペクチン酸リアーゼ、またはこれらのセルラーゼの組換え体も含む。
【0054】
「グラム陰性菌細胞」という用語は、当該技術で認められたこの用語の定義を含むことを意図する。典型的に、グラム陰性菌は、Gluconobacter、 Rhizobium、Bradyrhizobium、Alcaligenes、Rhodobacter、Rhodococcus、Azospirillum、Rhodospirillum、Sphingomonas、Burkholderia、Desulfomonas、Geospirillum、Succinomonas、Aeromonas、Shewanella、Halochromatium、Citrobacter、Escherichia、Klebsiella、Zymomonas(例えば、Zymomonas mobilis)、Zymobacter (例えば、Zymobacter palmae)、およびAcetobacter(例えば、Acetobacter pasteurianus)を含む。
【0055】
「グラム陽性菌」という用語は、当該技術で認められたこの用語の定義を含むことを意図する。典型的に、グラム陽性菌は、Fibrobacter、Acidobacter、Bacteroides、Sphingobacterium、Actinomyces、Corynebacterium、Nocardia、Rhodococcus、Propionibacterium、Bifidobacterium、Bacillus、Geobacillus、Paenibacillus、Sulfobacillus、Clostridium、Anaerobacter、Eubacterium、Streptococcus、Lactobacillus、Leuconostoc、Enterococcus、Lactococcus、Thermobifida、Cellulomonas、およびSarcina(例えば、Sarcina ventriculi)を含む。
【0056】
「異種ポリペプチド」という用語は、例えば、真核生物、原核生物、ヴィライ(virii)もしくは合成核酸断片のいずれかの由来源に由来する異種核酸によってコードされ得るポリペプチド、またはその部分を含むことが意図されている。
【0057】
「相同」という語は、第1および第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列が共通の構造的ドメインおよび/または共通の機能的活性を共有するように、十分な数もしくは最低数の、第2のアミノ酸もしくはヌクレオチド配列と同一もしくは等価のアミノ酸残基またはヌクレオチドを含有する第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列(例えば、同一の側鎖を持つアミノ酸残基)を含むことが意図されている。
【0058】
「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、遺伝子操作に好適な細胞、例えば、異種ポリヌクレオチド配列を導入、例えば、形質導入することができる細胞を含むことが意図されている。細胞は、微生物でもよいし、または、より高等な真核生物の細胞、例えば、動物細胞または植物細胞でもよい。この用語は、初めから形質導入されていた子孫(progeny)を含むことが意図されている。特定の実施形態においては、細胞は、細菌細胞、例えば、グラム陰性菌細胞、またはグラム陽性菌細胞である。特に、組換え宿主細胞という用語は、特定の望ましい特性をもつように既に選択され、工学的に処理されている細胞、ならびに、本発明の組成物および方法を用いた更なる修飾に好適な細胞を含むことが意図されている。
【0059】
「単離ポリペプチド」(例えば、単離もしくは精製された生合成酵素)という用語は、そのポリペプチドが由来する微生物からの細胞物質もしくは他の不純ポリペプチドが実質的に含まれない、または、化学合成された場合は、化学的前駆物質もしくは他の化学物質が含まれない、ポリペプチドを含むことが意図されている。
【0060】
「核酸」という用語は、核酸分子、例えば、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含み、さらに非コード調節配列およびイントロンを含むことができるポリヌクレオチドを含むことが意図されている。さらに,この用語は、機能的座位にマッピングする1以上の遺伝子を含むことが意図されている。さらに、この用語は、選択された目的のための特異的遺伝子を含むことが意図されている。該遺伝子は、宿主細胞内在性であってもよいし、または、例えば、エピソームとして維持されたプラスミド、もしくは、ゲノムに安定して統合されたプラスミド(もしくはその断片)として、宿主細胞に組換えによって導入されてもよい。1つの態様において、ポリヌクレオチドセグメントの遺伝子は、炭水化物からエタノールへの生物変換の少なくとも1つの工程に関与する。したがって、この用語は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、分泌ポリペプチド、または、ポリサッカラーゼ(例えば、グルカナーゼもしくはその組み合わせ)等のポリペプチドをコードするあらゆる遺伝子を含むことが意図されている。
【0061】
「突然変異核酸分子」または「突然変異遺伝子」という表現は、ポリペプチド、もしくは突然変異体によってコードされ得るポリペプチドが、ポリペプチドもしくは野生型核酸分子もしくは遺伝子によってコードされたポリペプチドとは異なる活性を示すように、少なくとも1つの改変(例えば、置換、挿入、欠失)を含むヌクレオチド配列を有する核酸分子または遺伝子を含むことが意図されている。
【0062】
「作動的に連結させた」という表現は、目的の核酸分子または遺伝子のヌクレオチド配列を、ヌクレオチド配列の発現(例えば、促進された発現、増加した発現、構成的な発現、基礎発現、減衰された発現、減少した発現、もしくは抑制された発現)、好適には、(例えば、組換え核酸分子が組換えベクターに含まれているとき、本明細書に定義されているように、微生物に導入されているときに)ヌクレオチド配列によってコードされた遺伝子産物の発現を可能とするように、調節配列に連結させることを意味する。
【0063】
「pH」という用語は、当該技術で認められた意味を含むことが意図されている。典型的に、本発明のピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素は、pH約4〜8、特に、pH約5〜7、さらに特に、pH約5.5〜6.0において、デカルボキシラーゼ活性を発揮する。
【0064】
「ピルビン酸デカルボキシラーゼ」という語は、ピルビン酸をアセトアルデヒドに脱炭酸することができる、本明細書に記載の酵素を含むことが意図されている。慣例により、用語「pdc」は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を意味し、一方、用語「PDC」は、pdc 遺伝子の産物、すなわち、ピルビン酸デカルボキシラーゼポリペプチドもしくは酵素を意味する。
【0065】
「組換え核酸分子」という用語は、組換え核酸分子が由来するネイティブもしくは天然の核酸分子とは異なるヌクレオチド配列をもつように(例えば、1以上のヌクレオチドの追加、欠失、もしくは置換により)改変、修飾、もしくは工学的に処理された核酸分子(例えば、DNA分子)を含むことが意図されている。好適には、組換え核酸分子(例えば、組換えDNA分子)は、単離された核酸分子、または調節配列に作動的に連結された本発明の遺伝子(例えば、単離されたpdc遺伝子)を含む。
【0066】
「セクレターゼ」という用語は、別のポリペプチドを細胞の細胞内空間から細胞外環境へ輸送することを容易にする、あらゆるポリペプチド(類)の単体、もしくはそれらと別のポリペプチドとの組み合わせを含むことが意図されている。1つの態様においては、分泌ポリペプチド(類)は、グラム陰性もしくはグラム陽性宿主細胞に分泌活性を付与するのに十分な、全ての必要な分泌ポリペプチド類を包含する。
【0067】
「同時糖化発酵」または「SSF」という用語は、1以上の組換え宿主(もしくは、その精製もしくは未精製の抽出物、および望ましければ、例えば、1以上の異なる由来源からの他の酵素を添加)を、複雑な糖から糖残基への同時分解もしくは解重合、および糖残基のアセトアルデヒドへの変換、および望ましければ、それに続くエタノールへの変換のために、使用することを含むことが意図されている。
【0068】
「基質親和性」という用語は、酵素の基質に対する結合キネティクス、例えば、酵素ピルビン酸デカルボキシラーゼのその基質ピルビン酸(もしくはその類似体)に対するKMを含むことが意図されている。典型的に、本発明のピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素は、KM =約0.1〜約1、特に、KM =約0.1〜約0.5、さらに特に、KM =約0.2〜約0.4の基質(例えば、ピルピン酸)への親和性を有している。
【0069】
「糖」という用語は、糖分子を含むあらゆる炭水化物由来源を含むことが意図されている。そのような糖は、本発明の産物と方法に基づき、解重合(必要であれば)および、それに続いてアセトアルデヒドへの生物変換、続いて発酵によるエタノールへの生物変換を行うための糖の潜在的由来源である。
【0070】
「サロゲートプロモーター」という用語は、本来転写的に制御することができない目的遺伝子、例えば、ピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子を転写的に制御することができる、ポリヌクレオチドセグメントを含むことが意図されている。1つの態様においては、サロゲートプロモーターの転写制御によって目的遺伝子の発現が増加する。別の態様においては、サロゲートプロモーターは、目的遺伝子の5’の位置に配置される。サロゲートプロモーターは、天然のプロモーターに代えて用いることもできるし、または、天然のプロモーターに追加して用いることもできる。サロゲートプロモーターは、それが用いられる宿主細胞に内在性であってもよいし、または、宿主細胞に導入された異種ポリヌクレオチド、例えば、それが用いられる宿主細胞に対して外在性であってもよい。細菌に用いられるのに好適な他のプロモーターとしては、例えば、lacZ、T7およびSP6がある(例えば、後掲のAusubelらを参照されたい)。
【0071】
「熱安定性」および「耐熱性」という用語は、交換可能に用いられているが、これらの用語は、酵素(例えば、細胞内で発現される、細胞抽出物に存在する、細胞溶菌液、または精製されたもしくは部分的に精製された形状)が少なくとも約20℃、好適には約25℃〜25℃で、より好適には、約37℃以上で、特に約50℃以上、例えば、少なくとも約60℃以上で、反応(例えば、ピルビン酸のアセトアルデヒドへの返還)を触媒する能力を表す。
【0072】
II. 単離核酸分子および遺伝子
本発明は、ピルビン酸デカルボキシラーゼというポリペプチド酵素(PDC; pyruvate decarboxylase)をコードしているピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(pdc)を含む核酸分子であって、グラム陰性菌(例えばZymobacter palmae、Acetobacter pasteurianus)およびグラム陽性菌(例えばSarcina ventriculi)から単離された核酸分子に関する。本発明はまた、これらピルビン酸デカルボキシラーゼ遺伝子(すなわちpdc)のうち任意の1つと、調節領域(例えばプロモーターおよびリボソーム結合部位)を含むフランキング領域と、エタノール産生に関与するその他の関連遺伝子(例えばアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(adh))とを含む単離ゲノム核酸も特徴とする。
【0073】
核酸分子は、DNA分子(例えば直線DNA、環状DNA、cDNA、または染色体DNA)と、RNA分子(例えばtRNA、rRNA、mRNA)と、ヌクレオチド類似物を用いて生成されるDNAまたはRNAの類似物とを含む。核酸分子は1本鎖または2本鎖であってよいが、好適には2本鎖DNAである。本発明の単離核酸分子は、該核酸の由来生物の染色体DNA中において通常は該核酸分子に隣接している配列(すなわち、該核酸分子の5'末端および3'末端に存在する配列)を含まないような核酸分子を含む。種々の実施様態において、単離核酸分子は、該核酸分子の由来微生物の染色体DNA内で通常は該核酸分子に隣接しているヌクレオチド配列のうち、約10 kb、5 kb、4 kb、3 kb、2 kb、1 kb、0.5 kb、0.1 kb、50 bp、25 bp、または10 bpより少ない配列を含んでいてもよい。さらに、cDNA分子など「単離された」核酸分子は、組換え技術で作成した場合は他の細胞物質を実質的に有していない状態であってもよく、または、化学的に合成した場合は化学的前駆物質もしくはその他の化学物質を実質的に有していない状態であってもよい。
【0074】
本明細書において、pdc遺伝子(慣例に従って斜体で表記する)は核酸分子(例えばDNA分子またはその一部)を含む。核酸分子とは例えば、生物内において遺伝子間DNA(すなわち、生物の染色体DNA内で通常遺伝子に隣接し且つ/または遺伝子を区切っている介在DNAまたはスペーサーDNA)によって別の遺伝子または他の遺伝子と区切られる、ポリペプチドかまたはRNAをコードしている核酸分子である。遺伝子は、酵素またはその他のポリペプチド分子の合成を指示でき(例えばコーディング配列(例:ポリペプチドをコードしている隣接オープンリーディングフレーム(ORF))を含んでいてもよい)、または、それ自体が生物内で機能を有しうる。生物内の遺伝子は、オペロンとしてクラスター化されていてもよい。本明細書にの定義によれば、オペロンは、遺伝子間DNAによって他の遺伝子および/またはオペロンと区切られる。オペロンに含まれる個々の遺伝子は、その間に遺伝子間DNAがない状態でオーバーラップしていてもよい。
【0075】
本明細書において、単離遺伝子は、該遺伝子の由来生物の染色体DNA内で通常は該遺伝子に隣接している配列を実質的にもたない(すなわち、第二のもしくは別のポリペプチドもしくはRNA分子をコードしている隣接コーディング配列、または隣接する構造配列などをもたない)遺伝子を含み、且つ選択的に、5'末端および3'末端の調節配列(例えばプロモーター配列および/またはターミネーター配列)を含む。1つの実施形態において、単離遺伝子は、ポリペプチドのコーディング配列(例えばPDCポリペプチドをコードしている配列)を主に含む。
【0076】
別の実施形態において、単離遺伝子は、ポリペプチド(例えばPDCポリペプチド)のコーディング配列と、該遺伝子の由来生物の染色体DNAに由来する5'末端および/または3'末端の隣接調節配列(例えば隣接する5'末端および/または3'末端のpdc調節配列)とを含む。好適には、単離遺伝子は、該遺伝子の由来生物の染色体DNA内で通常は該遺伝子に隣接しているヌクレオチド配列のうち、約10 kb、5 kb、2 kb、1 kb、0.5 kb、0.1 kb、50 bp、25 bp、または10 bpより少ない配列を含む。
【0077】
本発明は1つの局面において、単離したpdcの核酸配列または遺伝子、および、単離したアルコールデヒドロゲナーゼ(adh)の核酸配列または遺伝子であって、好適にはグラム陽性菌またはグラム陰性菌に由来する核酸配列または遺伝子を特徴とする。好適には、pdcの核酸または遺伝子は、Gluconobacter、Rhizobium、Bradyrhizobium、Alcaligenes、Rhodobacter、Rhodococcus、Azospirillum、Rhodospirillum、Sphingomonas、Burkholderia、Desulfomonas、Geospirillum、Succinomonas、Aeromonas、Shewanella、Halochromatium、Citrobacter、Escherichia、Klebsiella、Zymomonas(例えばZymomonas mobilis)、Zymobacter(例えばZymobacter palmae)、およびAcetobacter(例えばAcetobacter pasteurianus)からなる群より選択されるグラム陰性菌に由来する核酸または遺伝子である。
【0078】
別の実施形態において、pdcの核酸または遺伝子は、Fibrobacter、Acidobacter、Bacteroides、Sphingobacterium、Actinomyces、Corynebacterium、Nocardia、Rhodococcus、Propionibacterium、Bifidobacterium、Bacillus、Geobacillus、Paenibacillus、Sulfobacillus、Clostridium、Anaerobacter、Eubacterium、Streptococcus、Lactobacillus、Leuconostoc、Enterococcus、Lactococcus、Thermobifida、Cellulomonas、およびSarcina(例えばSarcina ventriculi)からなる群より選択されるグラム陽性菌に由来する核酸または遺伝子である。
【0079】
1つの実施形態において、pdcの核酸または遺伝子はグラム陰性菌Zymobacter palmaeに由来する。
【0080】
別の実施形態において、pdcの核酸または遺伝子はグラム陰性菌Acetobacter pasteurianusに由来する。
【0081】
さらに別の実施形態において、pdcの核酸または遺伝子はグラム陽性菌Sarcina ventriculiに由来する。
【0082】
別の実施形態において、本発明の単離核酸分子は、配列番号1、配列番号3、または配列番号5に示すヌクレオチド配列と少なくとも約60乃至65%、好適には少なくとも約70乃至75%、より好ましくは少なくとも約80〜85%、さらにより好適には少なくとも約90乃至95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0083】
別の実施形態において、単離核酸分子は、配列番号1、配列番号3、または配列番号5に示すヌクレオチド配列を有する核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。このようなストリンジェントな条件は当業者に周知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6.にも記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(例えば高ストリンジェント条件)の具体例としては、45℃の6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイズさせ、続いて50乃至60℃の0.2X SSC、0.1% SDSで1回以上洗浄する方法があるが、これに限定されることはない。好適には、ストリンジェントな条件下で配列番号1、配列番号3、または配列番号5の配列とハイブリダイズする本発明の単離核酸分子は、天然の核酸分子に対応する。典型的に、天然の核酸分子は、天然に発生するヌクレオチド配列を有するRNA分子またはDNA分子を含む。
【0084】
本発明の核酸分子(例えば配列番号1、配列番号3、または配列番号5のヌクレオチド配列を有する核酸分子)は、標準的な分子生物学技術と本明細書に記載の配列情報とを用いて単離できる。例えば、核酸分子は、標準的なハイブリダイゼーションおよびクローニングの技術(例えば、Sambrook, J.、Fritsh, E. F.、およびManiatis, T.著「分子クローニング:実験室マニュアル第2版、コールドスプリングハーバー研究所(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載の方法)を用いて単離することができ、または、配列番号1、配列番号3、もしくは配列番号5の配列に基づいて設計した合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応により単離することもできる。本発明の核酸は、テンプレートとしてcDNA、mRNA、またはゲノムDNAを用い、且つ、標準的なPCR増幅法に基づく適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、増幅してもよい。別の実施形態において、本発明の単離核酸分子は、配列番号1、配列番号3、または配列番号5に示すヌクレオチド配列に相補的な核酸分子を含む。
【0085】
さらに別のpdc核酸配列としては、配列番号2、配列番号4、または配列番号6に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの相同物をコードしている(例えば、配列番号2、配列番号4、または配列番号6に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドに少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%もしくはそれ以上の同一性を有し、且つ該ポリペプチドと実質的に同一の活性を有するポリペプチドをコードしている)配列番号1、配列番号3、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列を含む配列か;配列番号1、配列番号3、もしくは配列番号5のヌクレオチド配列を有する核酸分子の一部もしくは全部に、または配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号6のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしている核酸分子の一部もしくは全部にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列か;または、本明細書に示すpdcヌクレオチド配列に相補的な配列がある。
【0086】
また別の実施形態において、単離されたpdcの核酸分子または遺伝子は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6に示すアミノ酸配列を有するPDCポリペプチドの相同物をコードする核酸分子または遺伝子である。典型的に、「相同物」という用語は、本明細書に記載のポリペプチドもしくは野生型ポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも約30乃至35%、好適には少なくとも約35乃至40%、より好適には少なくとも約40乃至50%、さらにより好適には少なくとも約60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の同一性を有し、且つ、該野生型ポリペプチドと実質的に同等の機能的活性または生物学的活性を有するポリペプチドを含む。例えば、PDC相同物は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと少なくとも約30〜35%、好適には少なくとも35乃至40%、より好適には少なくとも約40〜50%、さらにより好適には少なくとも約60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の同一性を有し、且つ、配列番号2、配列番号4、または配列番号6に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドと実質的に同等の機能的活性または生物学的活性を有する(すなわち、機能的に同等である)(例えば、ピルビン酸デカルボキシラーゼと実質的に同等の活性を有する)。
【0087】
1つの実施形態において、単離されたpdcの核酸分子または遺伝子は、配列番号2、配列番号4、または配列番号6に示すいずれか1つの示すポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0088】
別の実施形態において、単離されたpdc核酸分子は、配列番号1、配列番号3、もしくは配列番号5に示すヌクレオチド配列を有する核酸分子の一部もしくは全部にハイブリダイズするか、または、配列番号2、配列番号4、もしくは配列番号6に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を有する核酸分子の一部もしくは全部にハイブリダイズする。
【0089】
このようなハイブリダイゼーション条件は当業者に周知であり、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.(1995)の第2、4、および6章にも記載されている。その他のストリンジェントな条件としては「分子クローニング:実験室マニュアル」(Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Sambrookら、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor, NY(1989))の第7、9、および11章に記載のものがある。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の具体例としては、65〜70℃の4X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中でハイブリダイズさせ(または42〜50℃の4X SSC+50%ホルムアミド中でハイブリダイズさせ)、続いて65〜70℃の1X SSCで1回以上洗浄する方法があるが、これに限定されることはない。高ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の具体例としては、65〜70℃の1X SSC中でハイブリダイズさせ(または42〜50℃の1X SSC+50%ホルムアミド中でハイブリダイズさせ)、続いて65〜70℃の0.3X SSCで1回以上洗浄する方法があるが、これに限定されることはない。低ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の具体例としては、50〜60℃の4X SSC中でハイブリダイズさせ(または40〜45℃の6X SSC+50%ホルムアミド中でハイブリダイズさせ)、続いて50〜60℃の2X SSCで1回以上洗浄する方法があるが、これに限定されることはない。例えば65〜70℃または42〜50℃など、上記の値の中間の範囲も本発明に含まれるものと意図される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄用の緩衝液中のSSC(1X SSCは0.15 M NaClおよび15 mMクエン酸ナトリウム)はSSPE(1X SSPEは0.15 M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25 mM EDTA、pH 7.4)で代用してもよい。洗浄はハイブリダイゼーション完了後ごとに15分間行う。ハイブリッドの長さが50塩基対未満になると予想される場合、ハイブリダイゼーション温度は該ハイブリッドの融解温度(Tm)より5〜10℃低くする。Tmは次式により決定される:長さ18塩基対未満のハイブリッドについては、Tm(℃) = 2(A + T塩基数) + 4(G + C塩基数)。長さ18〜49塩基対のハイブリッドについては、Tm(℃) = 81.5 + 16.6(log10[Na+]) + 0.41(%G+C) - (600/N)。この式において、Nはハイブリッド中の塩基数、[Na+] はハイブリダイゼーション用緩衝液中のナトリウムイオン濃度である(1X SSCの [Na+] は0.165 M)。
【0090】
さらに、例えばニトロセルロース膜またはナイロン膜などの膜への核酸分子の非特異的ハイブリダイゼーションを低減させるため、ハイブリダイゼーション用および/または洗浄用の緩衝液に追加の試薬を添加してもよく、このことは当業者に理解されるものと思われる。このような試薬としては遮断剤(例えばBSA、またはサケもしくはニシンの精子のキャリアDNA)、洗浄剤(例えばSDS)、キレート剤(例えばEDTA)、フィコール、PVPなどがあるが、これらに限定されることはない。特にナイロン膜を使用する場合は、別のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例として、約65℃の0.25-0.5M NaH2PO4、7% SDS中でハイブリダイズさせ、続いて65℃の0.02M NaH2PO4、1% SDSで1回以上洗浄する(または0.2X SSC、1% SDSを用いる)方法があるが(例えばChurch and Gilbert (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:1991-1995を参照のこと)、これに限定されることはない。別の実施形態において、単離核酸分子は、本明細書に示すpdcヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列(例えば配列番号1、配列番号3、または配列番号5に示すヌクレオチド配列に対する完全な相補配列)を含む。
【0091】
本発明のさらに別の実施形態は、突然変異またはキメラのpdc核酸分子またはpdc遺伝子に関する。典型的に、本明細書において突然変異核酸分子または突然変異遺伝子は、該突然変異によりコードされうるポリペプチドが、野生型の核酸分子または遺伝子によりコードされるポリペプチドとは異なる活性を示すような、少なくとも1つの改変(例えば置換、挿入、欠失)を含むヌクレオチド配列を有する核酸分子または遺伝子を含む。典型的に、キメラpdcは、別のPDCに由来する全ドメインであって、PDC中の対応するドメインとともに遺伝子工学的処理(融合、交換など)が行われたドメインを含む。好適には、突然変異核酸分子または突然変異遺伝子(例えば突然変異pdc遺伝子)は、活性が向上したPDCポリペプチドをコードする。このような活性としては例えば、デカルボキシラーゼ活性(例:基質親和性(例えばピルビン酸に対する親和性));熱安定性;異なるpHにおける活性;またはコドン使用頻度(例:レシピエントの宿主細胞における発現を向上させるようなコドン使用頻度)などがある。
【0092】
III. 組換え核酸分子および組換えベクター
本発明はさらに、本明細書に記載の核酸分子および/または遺伝子(例えば単離した核酸分子および/または遺伝子)であって、好適にはpdc遺伝子、より好適にはグラム陰性菌またはグラム陽性菌に由来するpdc遺伝子を含む組換え核酸分子(例えば組換えDNA分子)に関する。
【0093】
本発明はさらに、本明細書に記載の核酸分子(例えば単離または組換えを行った核酸分子および/または遺伝子)を含むベクター(例えば組換えベクター)を特徴とする。具体的には、本発明は、本明細書に記載の細菌遺伝子の産物であって、好適にはpdc遺伝子の産物、より好適にはグラム陰性菌またはグラム陽性菌のpdc遺伝子の産物、さらに好適にはZymobacter palmae、Acetobacter pasteurianus、またはSarcina ventriculiに由来するpdc遺伝子の産物をコードする核酸配列を含む組換えベクターに関する。
【0094】
組換えベクター(例えばプラスミドベクター、ファージベクター、ファスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、またはその他の精製核酸ベクター)は、該組換えベクターの由来源であるネイティブまたは天然の核酸分子に含まれる核酸配列と比較して、大きい、小さい、または異なる核酸配列を含むよう、改変、修飾、または遺伝子工学的処理を行ってもよい。好適には、組換えベクターは、pdc遺伝子か、または、本明細書中に定義しているように調節配列(例えばプロモーター配列、ターミネーター配列、および/もしくは人工リボソーム結合部位(RBS))作動的に連結させたpdc遺伝子を含む組換え核酸分子を含む。
【0095】
典型的に、pdc遺伝子は、(例えば本明細書中に定義しているように組換え核酸分子を組換えベクターに入れたうえで微生物に導入する場合に)ヌクレオチド配列の発現(例えば発現の増強、発現の増加、構成的発現、基礎発現、発現の弱化、発現の減少、発現の抑制)、好適には該ヌクレオチド配列によりコードされる遺伝子産物の発現を可能にするような様式で、調節配列と作動的に連結させる。
【0096】
調節配列は、他の核酸配列の発現に影響する(例えば修飾または調節の作用を及ぼす)核酸配列を含む。1つの実施形態において、調節配列は、その位置および/または特定の目的遺伝子に対する相対的な配向が、自然状態における該調節配列および目的遺伝子のもの(例えば天然の位置および/または配向)と同様または同一になるように、組換え核酸分子または組換えベクターの中に含まれる。例えば、目的遺伝子は、調節配列であって自然状態の生物において該目的遺伝子に付随または隣接する調節配列と作動的に連結させた(例えば「天然の」調節配列(例:「天然の」プロモーター)に作動的に連結させた)組換え核酸分子または組換えベクターに含まれていてもよい。または、目的遺伝子は、調節配列であって自然状態の生物において別の遺伝子(例えば異なる遺伝子)に付随または隣接する調節配列と作動的に連結させた組換え核酸分子または組換えベクターに含まれていてもよい。または、目的遺伝子は、別の生物に由来する調節配列と作動的に連結させた組換え核酸分子または組換えベクターに含まれていてもよい。例えば、他の微生物に由来する調節配列(例:他の細菌の調節配列、バクテリオファージの調節配列など)を、特定の目的遺伝子に作動的に連結させてもよい。
【0097】
1つの実施形態において、調節配列は、非天然の配列または自然には生じない配列(例えば修飾、変異、置換、誘導、欠失などの操作を行った配列、および、化学合成した配列)である。好適な調節配列としては、プロモーター、エンハンサー、終結シグナル、抗終結シグナル、およびその他の発現制御要素(例えば、リプレッサーもしくはインデューサーの結合対象となる配列、ならびに/または、例えば転写されたmRNAにおける転写ポリペプチドおよび/もしくは転写調節ポリペプチドの結合部位)がある。このような調節配列は、例えばSambrook, J.、Fritsh, E. F.、およびManiatis, T.著「分子クローニング:実験室マニュアル第2版、コールドスプリングハーバー研究所(Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd, ed., Cold Spring Harbor Laboratory)」(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)に記載されている。調節配列には、微生物においてヌクレオチド配列の構成的発現を支配する配列(例えば構成的プロモーターおよび強力な構成的プロモーター);微生物においてヌクレオチド配列の誘導的発現を支配する配列(例えば誘導プロモーター(例:キシロース誘導プロモーター));および、微生物においてヌクレオチド配列の発現を減衰させるまたは抑制する配列(例えばアテニュエイションシグナルまたはリプレッサー配列)が含まれる。調節配列を除去または削除することによって目的遺伝子の発現を調節することも本発明の範囲に含まれる。例えば、目的遺伝子の発現が増強されるよう、転写の負の制御に関与している配列を除去してもよい。
【0098】
1つの態様において、本発明の組換え核酸分子または組換えベクターは、プロモーターまたはプロモーター配列と作動的に連結させた、少なくとも1つの細菌pdc遺伝子産物をコードする核酸配列または遺伝子を含む。本発明の好適なプロモーターとしては、天然のプロモーター、サロゲートプロモーター、および/またはバクテリオファージプロモーターなどがある。1つの実施形態において、プロモーターは、生化学的ハウスキーピング遺伝子に関連付けられたプロモーターまたはエタノール産生経路に関連付けられたプロモーターである。別の態様において、プロモーターはバクテリオファージプロモーターである。その他のプロモーターとしては、バチルス属(例えばBacillus subtilis)において高レベルの発現を促進するtef(翻訳伸長因子(TEF)プロモーター)およびpyc(ピルビン酸カルボキシラーゼ(PYC)プロモーター)などがある。グラム陽性菌に使用できる他の好適なプロモーターとしては、例えばamyEプロモーターまたはファージSP02プロモーターがあるが、これらに限定されることはない。グラム陰性菌に使用できる他の好適なプロモーターとしては例えばtac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、lacIq、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ-PRまたはλ-PLがあるが、これらに限定されることはない。
【0099】
別の実施形態において、本発明の組換え核酸分子または組換えベクターは、1つまたは複数のターミネーター配列(例えば転写ターミネーター配列)を含む。典型的に、ターミネーター配列とは、遺伝子の転写を停止させる機能を果たす調節配列のことを指す。ターミネーター配列(またはタンデムタイプの転写ターミネーター)はさらに、(例えばmRNAに構造を追加することによって)mRNAを、例えばヌクレアーゼに対して安定させる機能を果たしてもよい。
【0100】
さらに別の実施形態において、本発明の組換え核酸分子または組換えベクターは、その配列を含むベクターの検出を可能にするような配列(すなわち、検出可能および/または選択可能マーカー)を含む。このような配列としては例えば、栄養要求性突然変異を克服する配列(例:ura3またはilvE)、蛍光マーカーおよび/もしくは比色マーカー(例:lacZ/β-ガラクトシダーゼ)、ならびに/または、抗生物質耐性遺伝子(例:blaまたはtet)がある。
【0101】
理解されるとおり、本発明のpdc遺伝子はいずれも、例えば本明細書の実施例8および9、ならびに米国特許第5,821,093号、同第5,482,846号、同第5,424,202号、同第5,028,539号、同第5,000,000号、同第5,487,989号、同第5,554,520号、および同第5,162,516号に記載のように、1つ以上のエタノール産生遺伝子(例えばアルコールデヒドロゲナーゼ(adh))、および/または、糖の発酵かもしくは発酵前の段階としての糖の分解かに適した遺伝子産物をコードする遺伝子を含むベクターに導入してもよい。このような2つ以上の遺伝子は、別々の調節要素(例:プロモーター)、共通の調節要素、天然の調節要素、またはこれらの組み合わせを用いて独立に発現させてもよい。
【0102】
IV. 単離ポリペプチド
本発明の別の局面は、単離ペプチド(例えば単離したエタノール産生酵素(例:ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)))に関する。1つの態様において、PDCポリペプチドは、組換えDNA技術により作製され、且つ、標準的なポリペプチド精製技術を用いた適切な精製方法により本発明の微生物から単離可能である。別の実施形態において、ポリペプチドは標準的なペプチド合成技術を用いて化学的に合成される。
【0103】
単離または精製したポリペプチド(例えば単離または精製したPDC)は、該ポリペプチドの由来微生物に由来する細胞物質もしくはその他の夾雑ポリペプチドを実質的に有さず、または、化学的に合成した場合は化学的前駆物質もしくはその他の化学物質を実質的に有さない。1つの態様において、単離または精製したポリペプチドは、夾雑ポリペプチドまたは化学物質を約30%(乾燥重量で)未満しか有さず、より好適には夾雑ポリペプチドまたは化学物質を約20%未満しか有さず、さらにより好適には夾雑ポリペプチドまたは化学物質を約10%未満しか有さず、最も好適には夾雑ポリペプチドまたは化学物質の約5%未満しか有さない。
【0104】
1つの実施形態において、PDCのポリペプチドまたは遺伝子産物は、グラム陽性菌またはグラム陰性菌に由来するポリペプチドまたは遺伝子産物である。好適には、PDCのポリペプチドまたは遺伝子産物は、Gluconobacter、Rhizobium、Bradyrhizobium、Alcaligenes、Rhodobacter、Rhodococcus、Azospirillum、Rhodospirillum、Sphingomonas、Burkholderia、Desulfomonas、Geospirillum、Succinomonas、Aeromonas、Shewanella、Halochromatium、Citrobacter、Escherichia、Klebsiella、Zymomonas(例えばZymomonas mobilis)、Zymobacter(例えばZymobacter palmae)、およびAcetobacter(例えばAcetobacter pasteurianus)からなる群より選択されるグラム陰性菌に由来するポリペプチドまたは遺伝子産物である。
【0105】
別の態様において、PDCのポリペプチドまたは遺伝子産物は、Fibrobacter、Acidobacter、Bacteroides、Sphingobacterium、Actinomyces、Corynebacterium、Nocardia、Rhodococcus、Propionibacterium、Bifidobacterium、Bacillus、Geobacillus、Paenibacillus、Sulfobacillus、Clostridium、Anaerobacter、Eubacterium、Streptococcus、Lactobacillus、Leuconostoc、Enterococcus、Lactococcus、Thermobifida、Cellulomonas、およびSarcina(例えばSarcina ventriculi)からなる群より選択されるグラム陽性菌に由来するポリペプチドまたは遺伝子産物である。好適には、遺伝子産物は、グラム陰性菌であるZymobacter palmaeおよびAcetobacter pasteurianus、ならびにグラム陽性菌であるSarcina ventriculiからなる群より選択される微生物に由来する遺伝子産物である。
【0106】
天然の細菌遺伝子によりコードされるZymobacter palmae由来、Acetobacter pasteurianus由来、またはSarcina ventriculi由来のポリペプチドまたは遺伝子産物である、PDCのポリペプチドまたは遺伝子産物も、本発明の範囲に含まれる。さらに、天然の細菌遺伝子および/またはZymobacter palmae、Acetobacter pasteurianus、もしくはSarcina ventriculiの遺伝子(例えばpdc)とは異なる(例えば、変異した、挿入された、または欠失した核酸を有する遺伝子であるが、本発明の天然遺伝子産物と実質的に同様の(例えばピルビン酸デカルボキシラーゼの活性を有する)ポリペプチドをコードしている遺伝子)細菌由来のポリペプチドまたは遺伝子産物も本発明の範囲に含まれる。
【0107】
例えば、遺伝暗号の縮重を利用して、天然遺伝子がコードしているアミノ酸と同一のアミノ酸をコードする核酸を、当業者が変異(例えば置換)により作製できることは周知である。このことは、特定の生物内で発現させようとする核酸のコドン使用頻度を改善するうえで望ましい可能性がある。さらに、保存的アミノ酸置換をコードする核酸を当業者が変異(例えば置換)により作製できることも周知である。さらに、当業者が、遺伝子産物の機能(例えばデカルボキシラーゼ活性)に天然の遺伝子産物と比較して実質的な影響を及ぼすことなく、一定の程度までアミノ酸の置換、追加、または削除を行いうることも周知であり、このいずれも本発明の範囲に含まれるものと意図される。デカルボキシラーゼ活性、ならびに、例えば酵素/基質親和性、酵素の熱安定性、および/または種々のpHにおける酵素活性は、本明細書に記載のアッセイを用いて容易に決定可能である。
【0108】
1つの実施形態において、本発明の単離ポリペプチド(例えば単離されたピルビン酸デカルボキシラーゼ(例:単離されたPDCポリペプチド))は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、または配列番号8に示すアミノ酸配列を有する。別の実施形態において、本発明の単離ポリペプチドは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、または配列番号8に示すポリペプチドのうち少なくとも1つの相同物である(例えば、配列番号2、配列番号4、配列番号6、または配列番号8のアミノ酸配列と約30〜40%、好適には約40〜50%、より好適には約50〜60%、さらにより好適には約60〜70%、70〜80%、80〜90%、90〜95%もしくはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、それぞれ配列番号2、配列番号4、配列番号6、または配列番号8のアミノ酸配列によりコードされるポリペプチドと実質的に同様の活性を有する)。
【0109】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一性(%)を決定するには、最適な比較ができるよう2つの配列を並べる(例えば、第一のアミノ酸配列または核酸配列にギャップを導入して第二のアミノ酸配列または核酸配列とのアライメントを最適化してもよい)。第一の配列におけるある位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが、それに対応する第二の配列の位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドと同じであるとき、その位置の分子が同一であるという。2つの配列の同一性は、その2つの配列に共通する同一位置の数の関数であり(すなわち、同一性(%)=同一位置の数/位置の総数 x 100)、好適には、アライメントの最適化に要したギャップの数およびサイズも考慮に入れる。
【0110】
2つの配列の比較および同一性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて実現可能である。配列の比較に利用されている数学的アルゴリズムの具体例としては、KarlinおよびAltschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-68に記載され、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-77において改変されたアルゴリズムがあるが、これに限定されることはない。このようなアルゴリズムは、Altschulら (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10に記載のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。本発明の核酸分子に相同するヌクレオチド配列を得るには、NBLASTプログラムでscore = 100、wordlength = 12としてBLASTヌクレオチド検索を行えばよい。本発明のポリペプチド分子に相同のアミノ酸配列を得るには、XBLASTプログラムでscore = 50、wordlength = 3としてBLASTポリペプチド検索を行えばよい。比較のためのギャップアライメントを得るには、Altschulら (1997) Amino Acids Research 25(17):3389-3402に記載のGapped BLASTが利用可能である。BLASTおよびGapped BLASTを利用する場合は、対応するプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータを使用してもよい。http://www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい。配列の比較に利用されている別の数学的アルゴリズムの具体例としては、MyersおよびMiller (1988) Comput Appl Biosci. 4:11-17に記載のアルゴリズムがあるが、これに限定されることはない。このようなアルゴリズムは、例えばGENESTREAMネットワークサーバー(IGH Montpellier、フランス)またはISRECサーバーで利用可能なALIGNプログラムに組み込まれている。アミノ酸配列の比較にALIGNプログラムを利用する場合は、PAM120残基質量表を使用し、ギャップ長ペナルティ = 12、およびギャップペナルティ = 4としてもよい。
【0111】
別の態様において、2つのアミノ酸配列の同一性を、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて、Blossom 62マトリックスまたはPAM250マトリックスを使用し、ギャップ加重 = 12、10、8、6、または 4、ギャップ長加重 = 2、3、または4として決定してもよい。また別の実施形態において、2つの核酸配列の相同度を、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで利用可能)のGAPプログラムを用いて、ギャップ加重 = 50、ギャップ長加重 = 3として決定してもよい。
【0112】
上述の単離PDCポリペプチドに基づき、本明細書に記載の標準的な技術を用いて、PDCポリペプチドまたはその一部に対する免疫特異的な抗体を作製してもよい。
【0113】
V. 使用方法
アセトアルデヒドの産生方法
望ましい産生物としてアセトアルデヒドを清浄且つ効率的に産生する方法は、商業的および工業的に幅広い用途を有する。例えばアセトアルデヒドは、酢酸、調味料、食品、飲料、香料、プラスチック、およびアニリン染料の産生、合成ゴムの製造、鏡の銀めっき処理、ゼラチン繊維の硬化、ならびに研究用に利用されている。さらにアセトアルデヒドは、例えば発酵などによってエタノールを産生するための基質にもなる。
【0114】
したがって本発明は、本発明のPDC酵素を用いて、例えばピルビン酸またはピルビン酸類似物などの基質をアセトアルデヒドに変換するための方法を含む。本発明は、1つの実施形態において、本明細書に記載のpdc遺伝子および遺伝子産物(PDC)を発現する微生物(例えば組換え微生物)を用いてピルビン酸からアセトアルデヒドを産生する方法を提供する。該方法はまた、アセトアルデヒドまたはその類似物への変換または脱炭酸化が可能なピルビン酸か、または転換可能なピルビン酸類似物かが産生されるような生物学的過程(例えば変質または変換)も含む。
【0115】
該方法は、本発明のpdc遺伝子および遺伝子産物と選択的には1つ以上のエタノール産生遺伝子とを発現する微生物とを、糖、ピルビン酸に変換可能な炭素骨格、ピルビン酸、またはピルビン酸類似物に、アセトアルデヒド(またはその類似物)が産生されるような培養条件下で接触させる段階を含む。
【0116】
本発明の別の実施形態においては、上述の微生物を処理して、上述の変換反応を行うための酵素性溶解産物を生成してもよい。また別の実施形態においては、該変換反応を行うため、本明細書に記載のごとくpdc遺伝子産物を精製する。
【0117】
変換反応に使用する微生物および/または酵素(例えば、部分的または完全に精製された溶解産物の形態の酵素)は、その目的の機能(例えば所望の化合物(例:アセトアルデヒド)の産生)を果たしうる形態の微生物および/または酵素である。微生物は完全な細胞であってもよく、または、細胞のうち所望の最終結果を得るために必要な部分のみであってもよい。微生物は、懸濁(例えば緩衝溶液または培地などの適切な溶液中への懸濁)、洗浄(例えば該微生物の培養に使用した培地を除去するための洗浄)、アセトン乾燥、不動化(例えばポリアクリルアミドゲルもしくはk-カラギナンを用いた不動化、または合成支持体(例:ビーズ、マトリックスなど)上への不動化)、固定、架橋、または透過化(例えば化合物(例:基質、中間体、または産物)の通過がより容易になるような、透過化した膜および/または壁面の付与)を行ってもよい。
【0118】
精製したまたは未精製のPDC酵素も(単独でまたは他のエタノール産生酵素と組み合わせて)変換反応に使用してよい。該酵素は、その目的の機能(例えば、所望の化合物(例:アセトアルデヒド、または、必要なエタノール産生性遺伝子産物の存在下においてはエタノール)を得るなど)を果たしうるような形態であってもよい。例えば該酵素は、遊離状態であってもまたは固定化されていてもよい。
【0119】
エタノールの産生方法
本発明の1つの実施形態において、上述の特性を有する宿主細胞はエタノール産生性細胞でもある。したがって本発明は、そのような宿主細胞(またはそれに由来する抽出物/酵素)を用いてエタノールを産生する方法を提供する。さらに、該宿主細胞を利用して、相乗的な分解または解重合により複雑な糖類を単糖へと変換させてもよい。続いて、該宿主細胞により、単純な糖を異化してエタノールへと発酵させてもよい。複雑な糖類から小さな糖残基への解重合とそれに続く発酵とが同時に起こるこの過程は同時糖化発酵(SSF)と呼ばれる。
【0120】
典型的に、発酵条件は、産生細胞株の増殖動態が最適となり、且つ、その培養系で産生される酵素の触媒条件となるような、pHおよび温度が得られるよう決定される(Doranら、(1993) Biotechnol. Progress. 9:533-538)。例えば、Klebsiella(例えばP2株)の場合は35〜37℃且つpH 5.0〜pH 5.4が最適条件と決定された。これらの条件下においては、外因的に付加した真菌由来のエンドグルカナーゼおよびエキソグルカナーゼであっても非常に安定度が高く、長期間にわたって機能し続けた。その他の条件については実施例に記載する。さらに、当技術分野の周知技術を用いて通常の実験を行えば本発明の発酵反応を最適化できることが当業者には理解されるものと思われる。例えば米国特許第5,424,202号および第5,916,787号を参照されたい。これらの特許は引用によって本明細書に明示的に援用される。
【0121】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものと解釈されるべきでない。
【0122】
実施例
他に特に示していない場合、実施例を通して、以下の材料および方法を使用した。略語は以下の通りである。PDCは、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ADHは、アルコールデヒドロゲナーゼ、SDS-PAGEは、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、TPPは、チアミン二燐酸、PCMSは、パラクロロメルクリフェニルスルホン酸(para-chloromercuriphenyl-sulfonic acid)、DTTは、ジチオスレイトール、Apaは、Acetobacter pasteurianus、Sveは、Sarcina ventriculi、Zpaは、Zymobacter palmae、Zmoは、Z. mobilisである。
【0123】
材料と方法
菌株および培地 − Z. palmae 株T109 (IAM 14233、ATCC 51623)を、ATCC 1956 MY培地(酵母エキス 10 g/l;マルトース 20 g/l;KH2PO4 2 g/l;およびNaCl 5 g/l)において、26℃ (200 rpm)で培養した。A. pasteurianus 株NCIB8618(ATCC 12874)を、既に説明した(3、13)ように、2% (v/v) D-L-乳酸が補足された最少培地(pH5.0〜5.5)において、0.1 ml/lの1%(v/v)消泡剤を添加して、25℃で通気しながら成長させた。E. coli 株ER1648 F- fhuA2Δ(lacZ) r1 supE44 trp31 mcrA1272::Tn10(Tetr) his-1 rpsL104 (Strr)xyl-7 mtl-2 metB1 ΔmcrC-mrr)102::Tn10(Tetr) (New England Biolabs、Beverly、MA)、DH5α F- recA1 endA1 hsdR17(rk- mk+) supE44 thi-1 gyrA relA1 (Life Technologies、Rockville、MD)、BL21-CodonPlus-RIL F? ompT hsdS(rB? mB?) dcm+ Tetr gal λ (DE3) endA Hte [argU ileY leuW Camr] (E.coli B 株) (Stratagene、LaJolla、CA)、およびRosetta (DE3) F-ompT hsdSB (rB-MB-) gal dcm lacY1 (pRARE) (Novagen、Madison、WI)を、組換えDNA実験に用いた。E. coli株は、Luria-Bertani (LB)培地において、37℃ (200 rpm)で成長させた。培地には、2% (w/v)グルコースと、アンピシリン(100 mg/l)、カノマイシン(kanomycin)(100 mg/l)、およびクロラムフェニコール(30 mg/l)を含む抗生物質を補足した。
【0124】
DNA単離およびクローニング − プラスミドDNAを、BioRad (Hercules、CA)から入手できるQuantum Prep Plasmid Miniprep Kitを用いて単離した。DNA断片を、1X TAE緩衝液(40 mM トリスアセテート、2mM EDTA、pH8.5)を含んだ0.8% SeaKem GTGアガロース(FMC Bioproducts Rockland、ME)ゲルから、Qiagen(Valencia、CA)から入手できるQIAquickゲル抽出キットを用いて溶出させた。ゲノムDNAは、HarwoodおよびCutting (17)が記載している方法で単離した。
【0125】
Z. palmaeのDNAおよびポリペプチド配列の分析 − プラスミドは、LICORシークエンサー(DNA Sequencing Facility、Department of Microbiology and Cell Science, University of Florida)を用いて、Sangerのジデオキシ法(42)によって配列確認した。DNAおよびポリペプチドの配列のアライメント、および比較には、Genpro 5.0 (Hoefer Scientific, San Francisco、CA)、ClustalW バージョン1.81 (46)、 Treeview バージョン1.5 (39)およびMultiAln (12)を用いた。推定されたアミノ酸配列を、BLASTネットワークサーバを用いて、バイオテクノロジー情報国立センター(the National Center for Biotechnology Information (Bethesda、MD))にあるGenBank、EMBL、およびSwissProtのポリペプチド配列と比較した。
【0126】
PDCポリペプチドの精製 − 表2に示したように、PDC精製を行った。全ての処理は室温で行った。また、全ての精製用緩衝液は、他に特に示されていない限り、1 mM TPPおよび1 mM MgCl2を含有していた。S. ventriculi PDCは、上述のように(45)、組換えE. coli BL21-CodonPlus-RIL(pJAM419) およびRosetta (DE3)(pRARE、pJAM419)から精製した。Z. mobilis PDCは、熱処理、Q-セファロースおよびSuperdex 200での処理を用いて、Z. mobilis PDCを0.22〜0.32 M NaClでQ-セファロースから溶出させたこと以外は、Z. palmae PDCに関して後述するのと同様に、組換えE. coli DH5α (pLOI276)(11)から精製した。
【0127】
(i) Z. palmae PDCの精製 − Z. palmaeおよびE. coli DH5α(pJAM3440)細胞を、静止期まで成長させ、10,000 X g (10分、4oC)の遠心分離によって回収した。細胞(湿重量12〜15 g)を、1mM TPPおよび1mM MgCl2を含有した6体積(6 volumes)の50 mM燐酸ナトリウム緩衝液(緩衝液A)中で、pH 6.5で再懸濁させ、20,000 lb/inで、冷却したフレンチプレスセル(French pressure cell)を通過させた。細胞片は、16,000 X g (20分、4℃)で遠心分離を行って除去した。細胞溶菌液を、30分間60℃まで加熱し、15分間氷上冷却し、16,000 X g (30分、4℃)で遠心分離を行って、変性ポリペプチドを除去した。上澄は、50 mM 緩衝液Aにおいて平衡化したHiLoad Q-セファロース 26/10カラム(Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway、NJ)に加えた。このカラムは、200 mlの50 mM緩衝液Aで洗浄し、400 mlの0〜1 M NaClを用いて4.0 ml/分で直線勾配をつけた。PDCの活性のピークを、0.4〜0.5 M NaClの間で溶出し、プールした。E. coli から、組換えZ. palmae PDCは、150 mM NaClおよび10%グリセロールを含有する50 mM緩衝液Aで平衡化したSuperdex 200 10/30カラム(Amersham Pharmacia Biotech)に0.2 ml/分でアリコート(0.5 ml)を注入することによって、均一性が得られるまで精製した。
【0128】
「未変性の」PDCの、Z. palmaeからの精製には、付加的工程が必要であった。熱処理した溶菌液を、10 mM緩衝液Aで平衡化したヒドロキシアパタイトCHT5-1カラム(BioRad)に加えた。このカラムを、30 mlの10 mM緩衝液Aで洗浄し、30 mlの10 mM〜1 M 燐酸ナトリウムを用いて、0.5 ml/分で直線勾配をつけた。PDC活性のピークを、0.45〜0.5 M燐酸ナトリウムの間で溶出し、プールした。上述のように、Superdex 200 10/30カラムを用いて、アリコートを更に精製した。固体硫酸アンモニウムを、結合した活性化画分に添加して1 Mとし、次に1 M硫酸アンモニウムを含有する50 mMの緩衝液Aで平衡化したPhenyl セファロース 6 Fast Flow(低サブ(low sub))カラム(Amersham Pharmacia Biotech)に充填した。15 ml洗浄後、このカラムを0.5ml/分で、1〜0 M 硫酸アンモニウムの減少直線勾配をつけて展開した。「未変性」PDC活性のピークは、0.55〜0.3 Mの塩で溶出した。
【0129】
(ii) A. pasteurianus PDCの精製 − PDCは、下記の修正を加えて、Z. palmae PDCに関して説明したように、熱処理、Q-セファロース、Superdex 200およびヒドロキシアパタイトを用いて、A. pasteurianus およびE. coli ER1648(pJAM304)から精製した。細胞を30,000 lb/inでフレンチプレスセルを通過させた。Q-セファロースカラムから 0.17〜0.26 M NaClで溶出したPDC活性を、Superdex 200カラムに充填する前に、貯留し、PEG8000に対する透析により濃縮した。
【0130】
Z. palmae PDCおよびA. pasteurianus PDCは、10%のグリセロール中で、液体窒素の存在下で、活性を失うことなく最大1ヶ月間保存した。S. ventriculi PDCおよびZ. mobilis PDCは、4℃で保存した。
【0131】
PDC定量化および酵素活性アッセイ − ポリペプチド濃度は、標準としてウシ血清アルブミンを含むBradford試薬(BioRad)を用いて測定した。PDC活性は、既に記載している(11)ように、パン酵母アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(Sigma- Aldrich、St. Louis、MO)を用いて、結合アッセイにより測定した(11)。反応混合物は、pH 5.0の50 mMのクエン酸ナトリウム緩衝液に、0.15 mM NADH、5 mM MgCl2、0.1 mM TPP、5 mM ピルビン酸および10U ADHを含有しており、他に特に指示がなければ、25℃で測定した。酵素活性の一単位は、毎分1μMのアセトアルデヒドを生成する酵素の量で定義する。
【0132】
PDCポリペプチドの分子量およびアミノ酸配列の決定 − サブユニット分子量および酵素純度は、クマシーブリリアントブルーR-250で染色した12%ポリアクリルアミドゲルを用いて、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により決定した(26)。SDS-PAGEの分子量標準はそれぞれ、ホスホリラーゼbが97.4 kDa、血清アルブミンが66.2 kDa、オバルブミンが45 kDa、炭酸脱水酵素が31 kDa、トリプシンインヒビターが21.5 kDa、およびリゾチームが14.4 kDaであった。未変性の分子量の測定に当たっては、試料を、150 mM NaClを含む、pH 6.5の50 mMの燐酸ナトリウム緩衝液で平衡化したSuperdex 200 10/30カラムに加えた。分子量標準は、血清アルブミンが66 kDa、アルコールデヒドロゲナーゼが150 kDa、α-アミラーゼが200 kDa、アポフェリチンが443 kDa、およびサイログロブリンが669 kDaであった。
【0133】
精製したPDCポリペプチドのN末端配列は、SDS-PAGEと、ポリペプチドのポリ二フッ化ビニリデン膜 (PVDF-PLUS) (Micron Separations Inc.、 Westborough、 MA)へのエレクトロブロッティングを行った後に決定した。配列決定は、自動Edman分解によりフロリダ大学の生化学研究学際センターのポリペプチド化学コア施設(the Polypeptide Chemistry Core Facility of the University of Florida Interdisciplinary Center for Biotechnology Research)で行った。
【0134】
アポ酵素の調整−精製したPDC(0.5 ml当たり0.75 mg)をpH 9.0の1.5 mlの50 mM燐酸ナトリウム緩衝液で希釈し、すぐにCentricon YM30コンセントレーター(Millipore、Bedford、MA)で8倍に濃縮した。体積を0.5 mlに調節した後、ポリペプチドを25℃で45分間インキュベートした。PDCは、10%グリセロールおよび150 mM NaClを含んだ50 mM燐酸ナトリウム緩衝液でpH 9.0で平衡化したSuperdex 200 10/30カラムに加えることによって、非結合のコファクターから精製した。溶出直後に、アポ酵素を、pH 5.0の、50 mMクエン酸ナトリウム緩衝液中に5倍に希釈し、4℃で貯蔵し、16時間以内に再構成アッセイのために使用した。TPPは、15% NaOH中のK3Fe(CN)6を用いたチクローム二燐酸(thichrome diphosphate)へ酸化させた後、蛍光測定した。励起波長および発光波長(emission wavelength)は、それぞれ375nmおよび430nmであった。再構成には、アポ酵素(755 ng)を、1 mM TPPおよび/または1 mMのMgCl2を含んだpH 5.0の50 mMクエン酸ナトリウム緩衝液1 ml中に希釈した。この混合物について、同一緩衝液中のPDC活性を調べるためのアッセイを行った。
【0135】
材料 − 生化学物質は、Sigma-Aldrichから購入した。他の有機および無機分析用化学物質(analytical grade chemicals)は、Fisher Scientific (Atlanta, GA)から入手した。制限エンドヌクレアーゼおよびDNA修飾酵素は、New England BioLabsから入手した。ジゴキシゲニン-11-dUTP(2’-デオキシウリジン-5’-三燐酸塩を11原子スペーサーによってジゴキシゲニンに結合したもの)、ジゴキシゲニンに対するアルカリホスファターゼ接合抗体、コロニーおよびプラークハイブリダイゼーション用のナイロン膜は、Roche Molecular Biochemicalsから入手した。サザンハイブリダイゼイション用の正帯電ナイロン膜は、Ambion (Austin、TX)から入手した。
【実施例1】
【0136】
グラム陰性菌Zymobacter palmaeからのPDC遺伝子の同定および特徴決定
本実施例では、グラム陰性菌Z. palmae からのPDC遺伝子の同定および特徴決定を説明する。
【0137】
手短に述べると、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)オペロンを、精製したタンパク質のN末端アミノ酸配列に基づく縮重オリゴヌクレオチドプローブを用いて、Zymobacter palmaeのゲノムライブラリーから単離した(図1)。組換えE. coli中のPDC活性のためには、この断片(pJAM3440)の1.7-kb PstIからBamHIへのサブクローニングが必要なことが分かった。DNA配列に基づいて、推定上のPDCポリペプチドをコードするこの領域に1668 bpのORF(G + C含有量、55 mol%)を同定した(図1)。正準Shine-Dalgarno配列(GGAGG)は、翻訳開始コドンの10 bp上流に位置していた。さらに、推定上の−35および−10プロモーター(TTcACt-N17-atTAAT、但し、Nは任意のヌクレオチドであり、大文字は細菌性プロモーターコンセンサスに一致する)は、開始コドンの16〜44 bp上流に位置していた(18)。翻訳終止コドンの下流(21 bp)には、2つのステム・ループ構造を形成することが予測された62 bp配列があり、その次には16 bpの、ATが豊富な領域が続き、ρ-独立転写終結に一致していた(18)。Z. mobilis、S. ventriculi、およびA. pasteurianusに由来するものを含めて4つの全ての細菌pdc遺伝子は、モノシストロン性オペロンからは独立して転写されると予想される(11、40、45)。
【0138】
Z. palmae (ZpaPDC)の推定されたPDCポリペプチドは、無水分子量が60,113 Daである556個のアミノ酸(N末端メチオニンを含む)を含有していた。これは、552〜568個のアミノ酸および59,830〜61,809 Daを備えた3つの他の細菌PDCに類似している。GenBank受入番号AF474145が、このZ. palmae配列に割り当てられた。
【実施例2】
【0139】
グラム陰性好気性菌Acetobacter pasteurianusからのPDC遺伝子の同定および特徴決定
本実施例では、グラム陰性好気性菌Acetobacter pasteurianusからのPDC遺伝子の同定および特徴決定を説明する。
【0140】
手短に言うと、染色体DNAは、Harwoodら(17)が記載した方法を用いて、A. pasteurianus細胞から単離した。サザン分析に関しては、ゲノムDNA(1レーン当たり1〜2μg)を制限酵素(AatII、BamHI、ClaI、EcoRIおよびHincII)で切断し、ゲル電気泳動(0.8%アガロース)で分離し、下方向毛細管作用によって正に帯電したナイロン膜に移した。膜は、1%遮断試薬、0.1% N-ラウロイルサルコシン(N-lauroylsarcosine)、および0.02%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有する5X SSC (1X SSC= 0.15 M NaCl + 0.015 M クエン酸ナトリウム)において、60℃で2時間平衡化を行った。ランダムプライマーを用いて、Z. mobilis pdc遺伝子の0.7 kb KpnI断片を鋳型として用いたジキシオジェニン(dixoigenin)-11-dUTPでプローブを標識化した。標識化したプローブ(1 ng/ml)を加えた後、膜を60℃で14時間インキュベートし、2X SSCおよび0.1% SDSを含有する溶液で2回洗浄し(1回の洗浄は5分間)、0.5X SSCおよび0.1%SDSを含有する溶液で2回洗浄した(1回の洗浄は、60℃で15分間)。X線フィルムを用いた化学発光によって信号を視覚化した。
【0141】
A. pasteurianus染色体DNAの5〜7 kbのAatII断片を用いてサブゲノムライブラリーを生成した。オーバーハングは、Vent DNAポリメラーゼを用いて平滑末端に変換し、平滑(Vent DNAポリメラーゼ)で、脱燐酸化した(子ウシの腸のアルカリホスファターゼ)pLITMUS28のXhoI部位に結合させた。転換後は、組換え体を、サザン分析に用いる条件と類似した条件でハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。それによって、pdcおよびaldI全長遺伝子を含んだプラスミドpJAM301が単離できた(図2)。
【0142】
pJAM301中のA. pasteurianuのDNA断片(4.2 kb)を、サンガーのジデオキシ法(42)を用い、LICORシークエンサー(DNA Sequencing Facility、Department of Microbiology and Cell Science、University of Florida)を用いてサブクローニング(図2)および配列決定を行った。GenBank受入番号AF368435 が、この配列に割り当てられた。
【0143】
Genepro 5.0 (Riverside Scientific、Seattle、WA)、ClustalW バージョン1.81 (Thompson ら、1994)、Treeview バージョン1.5 (Page、1996)、およびMultiAln (Corpet、1988)を用いて、DNAおよび/またはポリペプチド配列アライメントおよび比較を行った。推定されたアミノ酸配列を、BLASTネットワークサーバを用いてNational Center for Biotechnology Information (Bethesda、MD)において、GenBank、EMBLおよびSwissProtデータベースから入手可能なポリペプチド配列と比較した。
【0144】
ピルビン酸デカルボキシラーゼ(pdc)遺伝子のZ. mobilis からの断片をDNA-ハイブリダイゼーションプローブとして用いて、G + C含有量が58.5%の6,337 bp AatII断片を、A. pasteurianus ゲノムDNA から単離した(図2)。DNA配列のブラスト分析に基づいて、pdc 遺伝子を同定した。この遺伝子は、548個のアミノ酸 (N末端ホルミルメチオニンを含む)の、pIの計算値が5.49であり、無水分子量が58,873 Daであるポリペプチドをコードすることが予測される(図5)。pdc 遺伝子のコドン使用頻度を、2つの他の細菌pdc 遺伝子、Z. mobilis (11、34、ReynenおよびSahm、J Bacteriol. 170:3310-3313 (1988)) およびS. ventriculiならびにE. coli K-12ゲノムと比較した(表1)。 A. pasteurianus pdc 遺伝子の高いG + C含有率(60.4%)と一致して、そのコドンは、第3の塩基位置においては、Glu、HisおよびTyrを除いて、Cおよび/またはGが多かった。これは、G + Cの含有量の低い、Z. mobilis (52.4%)およびS. ventriculi (30.9%)のpdc 遺伝子とは対照的であり、それらのコドン使用頻度とは異なっていた。
【0145】
A. pasteurianus pdc 遺伝子の5’末端の分析により、GTGの予測された翻訳開始コドンの8 bp上流の正準Shine-Dalgarno配列が明らかになった。さらに、pdc 遺伝子の72〜101 bp上流の領域は、真性細菌σ70依存プロモーター−35および−10コンセンサス配列と高い同一性を有している。pdc 翻訳終止コドンのすぐ下流(17 bp)は、一連の予測されたヘアピンループ構造であり、次にはATに富む領域が続き、pdc 転写のρ独立末端であることがわかる。したがって、A. pasteurianus pdc 遺伝子は、Z. mobilis (11)およびS. ventriculi pdc 遺伝子のようにモノシストロンオペロンとして転写される。
【0146】
更なるオープンリーディングフレーム(ORF)を、pdcから多様に転写される、aldIで表されるORFを含むpdc 遺伝子領域内に同定した(図2)。推定上のaldI 遺伝子は、357個のアミノ酸 (N末端ホルミルメチオニンを含む)の、無水分子量が38,108 DaでありpIの計算値が6.32である、ポリペプチドをコードすることが予測される。推定されたポリペプチド配列 (AldI)は、Zn2+- およびNAD+-依存培地-鎖ADHファミリー(クラスIII)、最も顕著には、グルタミン依存ホルムアルデヒドデヒドロゲナーゼ (GSH-FDH) の膜に非常に類似している(Jornvallら、Eur. J. Biochem 167:195-201 (1987))。GSH-FDH活性に重要な、構造的(C-92、C-95、C-98およびC-106)および触媒作用的(C-40、H-62、およびC-169)亜鉛イオンの両方のための推定されるリガンドであるアミノ酸残基が保存される。ロマスンフォールドコンセンサスシーケンス(残基194-GLGGIG-199) も存在しており、AldIがNAD(P)+と結合しうることを示している。予測されたA. pasteurianus AldI ポリペプチドは、Acetobacterにおけるエタノール酸化に必要な膜結合ALDまたはADH酵素膜の3つのサブユニットに一致する配列はあまりない(Thurner ら、1997; KondoおよびHorinouchi、J Bacteriol. 177:5048-5055 (1997))。その代わり、この予測されたポリペプチドは、GSH-FDH ポリペプチド、特に、α−プロテオバクテリア、シアノバクテリアAnabaena azolla、および程度は低いが、分類学上の分類が酢酸バクテリアと一致するβ-およびγプロテオバクテリアからのGSH-FDH酵素を持つaldI クラスターによってコードされたA. pasteurianus ポリペプチドに対して進化的に密接な関係があることがわかった。
【0147】
pdc 遺伝子を高コピー数プラスミド上に持つ、A. pasteurianus AatII 6.3-kb ゲノム断片のサブクローンを分析して、ADH結合アッセイによってPDC活性を調べた。有意なレベルのPDC活性は、遺伝子の124 bp上流および236 bp下流に加えて、完全なpdc オープンリーディングフレームをもつ、プラスミドpJAM304をもつ菌株のみにおいて検出された((図2)および5)。GenBank受入番号AR368435が、このAcetobacter pasteurianus 配列に割り当てられた。
【実施例3】
【0148】
グラム陽性菌Sarcina ventriculiからのPDC遺伝子の同定および特徴決定
本実施例では、グラム陽性菌Sarcina ventriculiからのPDC遺伝子の同定および特徴決定を説明する。
【0149】
手短に言うと、縮重オリゴヌクレオチド
5’-AARGARGTNAAYGTNGARCAYATGTTYGGNGT-3’(配列番号:11)を、S. ventriculi (Lowe and Zeikus, 1992)から精製したPDCのN末端アミノ酸配列に基づいて合成した(尚、Rは、AまたはGを表し、Nは、A、C、GまたはTを表し、Yは、CまたはTを表す)。このオリゴヌクレオチドを、ジゴキシゲニン-11-dUTPおよびdATPを含む、末端トランスフェラーゼを3’-末端において用いて、供給者(Roche Molecular Biochemicals)が推奨するように標識し、S. ventriculiからのゲノムDNAをスクリーニングするために使用した。
【0150】
サザン分析に関しては、ゲノムDNAを、BglI、EcoRI、またはHincIIを用いて消化し、0.8%アガロース電気泳動によって分離し、正に帯電したナイロン膜に移した(Southern、1975)。膜は、1%遮断試薬(Roche Molecular Biochemicals)、0.1% N-ラウロイルサルコシン(N-lauroylsarcosine)、および0.02% SDSを含有する5X SSC (1X SSC=0.15 M NaCl + 0.015 M クエン酸ナトリウム)において、58℃で18.5時間平衡化した。膜を、0.1%SDSを含有する2 X SSCで、25℃で2回洗浄し(1回の洗浄は5分間)、さらに、0.1% SDSを含有する0.5 X SSCで、58℃で2回洗浄した(1回の洗浄は15分間)。信号を、供給者(Roche Molecular Biochemicals)の指示に従い、比色検出を用いて、視覚化した。
【0151】
サブゲノムライブラリーを作製するために、プラスミドpBR322において、S. ventriculi 染色体DNAをHincIIで消化し、且つ、電気泳動によって分画した。2.5〜3.5-kbのHincII DNA断片を、pBR322のEcoRV部位に連結し、E. coli SE2309に形質転換した。縮重オリゴヌクレオチドを用いて、比色検出によってコロニーをスクリーニングした。この方法によって、1,350 bpのpdc 遺伝子を含有するHincII 断片を持つプラスミドpJAM400を単離した(図3)。
【0152】
S. ventriculiからの全長pdc 遺伝子を容易に単離するために、λBlueSTARベクターシステム(Novagen)を用いて、付加的なサブゲノムライブラリーを作製した。ゲノムDNAを、BclIを用いて消化し、電気泳動により0.8%アガロースにおいて分離し、6.5〜8.5-kbの断片を、λBlueSTAR BamHIの腕に連結させた。供給者(Novagen)の指示に従い、インビトロパッケージを行い、ファージのプレートを作製した。供給者(Roche Molecular Biochemicals)が推奨するように、ランダムプライム法を用いて、ジゴキシゲニン-11-dUTP で標識したpJAM400からのpdc遺伝子の800-bp EcoRI断片を用いて、DNAプローブを作製した。比色検出によって、プラークをスクリーニングした。Cre-loxP介在型サブクローニングを用いて、λBlueSTARファージにCreリコンビナーゼ(Novagen)を発現するE. coli BM25.8を蒔くことによって、陽性プラークのDNAを環状化した。次に、環状化したプラスミドpJAM410 を精製し、E. coli DH5αに電気泳動した。
【0153】
pdc 発現ベクターを作製するために、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって pJAM413から増幅させた後(図3)、プロモーターのないpdc遺伝子をpET21d中にサブクローニングした。プライマーを、BspHI(オリゴ1)およびXhoI(オリゴ2)制限部位を用いて方向性挿入用に設計した。得られた断片をpET21d (Novagen)の互換性のあるNcoI部位およびXhoI部位に連結し、pJAM419を作製した(図3)。pdc 遺伝子のフィディリティーをDNA配列決定によって確認した。
【0154】
S. ventriculiピルビン酸デカルボキシラーゼのオペロンを決定するために、 S. ventriculi (LoweおよびZeikus、1992)から精製したPDC ポリペプチドのN末端アミノ酸配列を用いて、ゲノムDNAにハイブリダイゼーションするために縮重オリゴヌクレオチドを作製した。このアプローチによって、S. ventriculiからの7.0-kb BclI ゲノムDNA断片の単離が容易になった。オリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイゼーションした3,886 bpのHincII-to-HincII領域の両方のストランドの配列決定を行うために、その断片をさらにサブクローニングした(図3)。DNA配列の分析によって、既に精製したventriculi PDCと同一のN末端をもつポリペプチドをコードする1,656 bpのオープンリーディングフレーム(ORF)が明らかになった(図6)。したがって、そのORFは、pdcと指定される。正準Shine-Dalgarno配列は、翻訳開始コドンの7bp上流に位置していた。さらにpdc の82〜110 bp上流の領域は、真性細菌−35および−10プロモーターコンセンサス配列と限定的に一致している。pdc 翻訳終止コドンの下流(43 bp)には、ステム・ループ構造を形成することが予測され、次にはATが豊富な領域が続き、ρ独立転写終結に一致している。したがって、S. ventriculi pdc は、Z. mobilis pdc 遺伝子のようにモノシストロン性オペロンとして転写される(Conwayら、1987)。
【0155】
177のアミノ酸ポリペプチド断片(ORF 1*)をコードするpdc の722 bp上流において、部分的ORFが同定された(図3)。ORF 1*は、複数の仮説上の膜ポリペプチドと(28〜29%)一致しており(GenBank受入番号:CAC11620、CAC24018、CAA22902)、複数の膜貫通ドメインを形成することが予測される(データは、図示していない)。ORF 1*をコードする遺伝子は、推定上のpdcオペロンの−35および−10プロモーターから転写されることは予測されていない。
【0156】
上記研究に基づいて、S. ventriculi pdc遺伝子が、pIの計算値が5.16であり、無水分子量が61,737 Daである、556個のアミノ酸(N末端メチオニンを含む)のポリペプチドをコードすることがわかった。GenBank受入番号 AF354297 が、このSarcina ventriculi 配列に割り当てられた。
【実施例4】
【0157】
PDCポリペプチドに特異的に結合する抗体の作製方法
本実施例では、ピルビン酸デカルボキシラーゼに対する免疫特異的な抗体を作製する方法を説明する。
【0158】
手短に言うと、精製した組換えA. pasteurianus PDC ポリペプチド(300μg)をSDS-PAGEによって分離した。PDCタンパク質を含有するゲル断片を、クマシーブリリアントブルーR-250で染色する前に切除した。これは、ウサギでのポリクローナル抗体(抗ApPDC)作製のための抗原として、供給者(Cocalico Biologicals、 Reamstown、Penn.)の推奨するように用いた。イムノブロット分析では、SDS-PAGEでタンパク質を分離し、pH 6.0の10 mM MES中で、10%メタノールとともに、16時間、20ボルト、4℃で、PVDF膜に移した。抗原を検出するためのイムノブロット処理および比色検出には、標準的な技術を用いた。一次抗体、抗ApPDCを1 : 7,000に希釈した。ヤギ抗ウサギ2次抗体(Fisher Biotech)に結合したアルカリフォスファターゼを1 : 7,500に希釈した。前述の方法を用いて、PDCポリペプチドに特異的に結合したポリクローナル抗血清を同定した。
【0159】
望ましければ、PDCに対する抗体分子は、哺乳動物(例えば、ヒト血液)から単離し、さらに、例えば、タンパク質Aクロマトグラフィーのような公知の技術によって精製して、IgG画分を得ることができる。さらに、免疫化の後の適切なときに、例えば、抗PDC抗体力価が最も高いときに、抗体作製細胞(antibody- producing cells)を、被験体から得て、ハイブリドーマ技術のような標準的な方法(KohlerおよびMilstein (1975) Nature 256:495-497; さらに、例えば、Using Antibodies: A Laboratory Manual, Harlowら、C.S.H.L. Press, Pub. (1999))によって初めて記載された方法)を用いてモノクローナル抗体を作製することができる。
【実施例5】
【0160】
種々の宿主細胞におけるPDC遺伝子のコドン使用頻度を同定する方法
本実施例においては、コドン使用頻度に基づく、発現の向上に好適なPDCポリペプチドを同定するための方法を説明する。
【0161】
種々の生物中にエタノール経路を設計するために、細菌PDCを使用することができる。しかしながら、コドン使用頻度の互換可能なパターンは、好適には、異種の系における機能的発現を確実にするために決定される(4、14、16、22)。G+C含有量の単純な作表(tabulation)が最初の指針となる。これら4つのpdc 遺伝子のG + C含有量は、A. pasteurianus の60%から、S. ventriculiの31%の範囲にある。E. coli のORFの平均G + C含有量は52%であり、これは、Z. mobilis pdc (52%)に一致し、また、Z. palmae pdc (55%)に類似している。大半のアミノ酸において、これらの2つの微生物のコドン使用頻度のパターンは、かなり互いに類似しており、且つ、E. coliに類似している。Z. palmae pdc は、組換え E. coliに高レベルで機能的に発現した(活性に基づくと、ポリペプチドの約1/3)。組換えE. coli において、Z. mobilis pdc およびA. pasteurianus pdc の発現は低レベルであり(活性に基づくと、ポリペプチドの7〜9%)、また、S. ventriculi pdc の発現は不十分であった(活性に基づくと、ポリペプチドの0.3%未満)(45)。
【0162】
より多くの量の機能的組換えS. ventriculi PDCを作製するためには、AGA (アルギニン)、GGA (グリシン)、AUA (イソロイシン)、およびCUA (ロイシン)のようなまれなコドンの追加的tRNA 遺伝子を含有する修飾されたE. coli 宿主を用いることが、高レベルのポリペプチド産生(活性に基づけば、ポリペプチドの略1/4)にとって重要であることが証明されている(45)。S. ventriculi pdc におけるコドン使用頻度のパターンは、B. subtilis のORF と比較して示したように(表1)、G + C含有量の低いグラム陽性菌中にエタノール経路を設計するのに特に有用である。対照的に、A. pasteurianus pdc は、Thermobifidia sp. (23)またはCellulomonas sp. (35)等のG + C含有量の高いセルロース分解性細菌へのホモエタノール経路を設計するのに選択することができる。
【0163】
【表1】

【実施例6】
【0164】
PDC活性の生化学的特徴決定
本実施例では、いくつかの代表的なPDCポリペプチドの生化学的特徴を説明する。
【0165】
4つの代表的な細菌PDCポリペプチドを表2(後掲)に示すように精製した。ZpaPDCは、均一になるまでZ. palmae および組換えE. coliから精製した。比較のために、他の3つの細菌PDCを組換えE. coliから精製した。PDCもまた、A. pasteurianusから精製した。一般的に、「未変性」のPDCの精製には、付加的工程が必要であった(すなわち、フェニルセファロースおよびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)。これは、「組換え」細胞溶菌液と比較して「未変性」化合物は、PDC活性が10〜250倍低いレベルであったためである。全てのPDCポリペプチドのサブユニット分子量は、SDS-PAGEを換算することによって概算すれば55〜60 kDaであり、推定されたポリペプチド配列から計算した質量に一致していた。
【0166】
Z. palmae (MYTVGMYLAE)から精製したPDCのN末端アミノ酸配列は、その遺伝子から推定された配列と一致し、N末端メチオニンを含んでいた。これまでの研究から、S. ventriculi から精製したPDCも、リシン残基に対するアミノ酸(amino to a lysine residue)であるN末端メチオニンを保持していることがわかっている(28、45)。対照的に、A. pasteurianus (TYTVGMYLAERL)から精製したPDCのN末端配列はN末端メチオニンがなく、未変性メチオニンアミノペプチダーゼによる切断を示していた。Z. mobilis から精製したPDCも切断されてN末端セリンにさらされていることがわかった(34)。これらの結果は、高度に保存された、P1′残基によって指示されるメチオニンアミノペプチダーゼの基質特異性に一致する(5)。N末端メチオニンは、第2の残基が小さく、且つ、帯電されていない場合のみ除去される。この基質優先性は、ポリペプチド分解のための 「N末端ルール」(N-end rule)と相反する(47)。
【0167】
PDCポリペプチドの四次構造の決定も行った。ZmoPDCは、共同因子TPPおよびMg2+ を除去した後でさえも240 kDa の四量体として関連している(15)。同様に、SvePDCおよびZpaPDCは、共同因子の解離後でさえも240 kDaの四量体として関連している(データは示していない)。興味深いことに、ApaPDCは、類似の特異的活性をもつ四量体と八量体の両方を形成し(224 kDaおよび447 kDa)、共同因子抽出後は、二量体(120 kDa)に解離された。ApaPDC アポ酵素の活性と四量体構成は、半飽和定数が3.1 μMおよび5.8 μM、Hill定数がそれぞれ1.17〜1.22であるMg2+およびTPPを追加後、完全に回復した。4つの全ての細菌PCDに観察された四量体構成は、大多数の真核生物PDCの四次構造と一致している。しかしながら、ApaPDCと同様に、8 〜10 nmのホモポリマーフィラメントとして関連する糸状真菌Neurospora crassaからのPDCにおいては、より高次の構造が観察された(1)。同様に、植物(トウモロコシ、エンドウ豆および麦芽)において、PDCは最大1 MDaの合成物を形成する(24、27、32)。共同因子除去後のApaPDCの二量体への解離も真核生物の PDCと一致する(25)。
【0168】
【表2】

【実施例7】
【0169】
PDCの熱安定性の特徴決定
この実施例において、いくつかの代表的なPCDポリペプチドの熱安定性を説明する。
【0170】
コファクター(TPPおよびMg2+)の存在下で、細胞溶菌液を60℃に加熱したところ、ZmoPDCは熱的に安定していることが観察されている(11)。この現象をさらに検討するために、飽和コファクターの存在下で種々の温度にさらした後、精製された細菌PDCの活性を25℃で分析した(図7)。3つ全てのグラム陰性PDCは、比較的熱的に安定しており、60℃で、30分加熱後60 〜100%保持されていた。対照的に、精製されたSvePDCは、50℃以上の熱にさらすと、完全に不活化した。アミノ酸組成物は、熱安定性 (30、31、48)を導くものとして普遍的に用いることはできないが、熱的に安定した3つのPDCは、高レベルのアミンおよびシステインならびに低レベルのフェニルアミンを含有していることが観察された。これらの変化は、相同する酵素の組成物比較に基づく熱安定性の上昇に一致するものである(2、31)。アミンのレベルが上昇すると、らせん体および、より小型のポリペプチドコアの形成を容易にすることによって、高温でグラム陰性PDCポリペプチドを安定化させることができる。したがって、本発明はまた、対応するシステインおよび/またはアミノ酸の変化を含むPDC ポリペプチドを発現させるために変更され、熱安定性を向上させたpdc 遺伝子を含む。さらに、熱的に安定している、グラム陰性菌からのPDCを分析したところ、それぞれの室温よりも最適な温度である60℃でのアッセイにおいて、活性が2.5倍以上上昇していることが明らかになった。アレニウスプロットに基づいて、これらの酵素は、活性エンタルピーが12.6 〜14.2 kJ.mol-1 の範囲であり、エントロピー値が−92.8 〜−98.2 J.mol-1.K-1であると推定された。
【実施例8】
【0171】
PDC基質親和性および最適pHの特徴決定
本実施例では、複数の代表的なPDCポリペプチドの基質親和性ならびに最適pHの特徴決定を説明する。
【0172】
特に、細菌ポリペプチドにおいては、最適pHに有意な違いが認められた。ZpaPDC は、pH5.5 〜6.0で最も活性があり(図8)、最適pHが6.0のZmoPDCに類似している(34)。しかしながら、ApaPDCの最適pHは、他の2つのグラム陰性PDCに比べて有意に低く、5.0 〜5.5であった(図8)。グラム陽性 SvePDC(pH6.3 〜7.6)の最適pHはより広範囲であり、グラム陰性PDCに比べて中性であることがわかった(28)。これは、活性部位における、または活性部位近傍の、立体構造および/または帯電した残基に違いがあることを示すものである。
【0173】
真核生物および細菌SvePDCは、基質ピルビン酸の存在下でポジティブコーポラティブカイネティクス(positive cooperative kinetics)を示す(9、25、28)。しかしながら、ZpaPDCおよびApaPDCは、通常のMichaelis-Mentenカイネティクスを示し、ピルビン酸のK値は、0.2 〜0.4 mMであり、Kcat値は、20,500 〜30,500 min-1 であった(最適pH、25℃) (表3)。これらのグラム陰性 PDC酵素に認められる、ピルビン酸に関するアロステリック制御の欠如は、Z. mobilisからの高度に関連性を持つPDCとして確立されたものと類似している(7、34)。さらなる比較として、4つすべてのPDCポリペプチドのカイネティクス定数を、それぞれの最適pHならびにpH7において測定した(表3)。このアプローチは、細菌PDC酵素を分析して、高レベルのエタノール作製にこれまで用いられてきた組換え宿主(例えば、E. coli、Erwinia spp.)の中性のサイトゾルを、より緊密に反映させるために選択された。これらの中等度のpHの変化は、4つすべての細菌PDCポリペプチドの反応の最高速度に僅かな効果しか及ぼさなかった。対照的に、pHは、ピルビン酸のグラム陰性PDCの親和性に有意な効果を及ぼした。最も顕著には、ApaPDCを最適pHから中性条件に移行させたとき、Kの13倍以上の増加が観察された。
【0174】
【表3】

【0175】
これらの結果は、3つのすべてのグラム陰性PDCが、(中性pHで)脱プロトン化されたときよりも、(最適pHで)プロトン化されたときに、より効率的に酵素をピルビン酸に結合することができるアミノ酸残基を持っていることを示す。しかしながら、この残基のプロトン化された状態は、全体的な脱炭酸の速度に影響を及ぼさない。グラム陰性PDCのKの変化は、pH値が5 〜7の間で観察されたので、3つすべての酵素を結合する基質の調整に関与する残基はヒスチジンである可能性がある。遊離ヒスチジンのpKa は、6.04であるが、一方、ピルビン酸、ならびにその他のイオン化可能なアミノ酸(すなわち、Asp、Glu、Lys、およびArg)の残基のpKa は、このpH範囲にはない。
【0176】
1以上のヒスチジンのプロトン化は、ピルビン酸のカルボキシル基でイオン対を形成することによって、または、活性部位を基質により近づきやすくすることによって、基質の結合を容易にするうえで重要である。また、異なる残基が基質結合の調節に関与することも重要であるが、そのpKa は、ポリペプチド環境によって変わる。
【0177】
Z. mobilisのPDC酵素のKcatと比較したKcat/Kに及ぼすpHの効果を、基質結合の調節に関与する残基のpKa値を6.23 〜6.45として、滴定曲線を用いて求めた(21、43)。His113の脱プロトン化によって、柔軟性のあるループ(残基105 〜112)が得られるように立体構造的変化が導かれ、触媒作用の間に活性部位全体に近づくことが示された(43)。His113 もHis114も、特徴決定を行ったすべてのPDCポリペプチドにおいて保持されていた。したがって、His113は、すべてのグラム陰性PDCにおいて観察されたKのpH依存性の変化の論理的候補である。しかしながら、Z. mobilis PDCの活性部位(Asp27、Glu50、His113、His114、およびGlu473)に伸びるイオン化可能な側鎖をもつ5つの重要な残基は、イオン化可能でない残基、または、pKa 値を変更した残基に修飾された(21)。Kcat/KのpH依存度は、これらの修飾による影響を比較的受けず、His113を含むこれらの残基が関与していないことを示している。この同じ研究において、His113を有意に高いpKa 値を持つ残基(すなわち、Arg およびLys)に修飾することによって、ピルビン酸のZmoPDCへの親和性が20倍以上増加することがわかった。
【0178】
これらの結果から、正に帯電した形のHis113は、活性部位が基質結合に対してオープンのままであることがわかった。
【実施例9】
【0179】
種々の生物からのPDC遺伝子のアライメント比較
本実施例では、種々の生物からのピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素(PDC)のアミノ酸配列の比較アライメントを比較・対比した。
【0180】
Z. palmae (ZpaPDC)の推定されたPDC ポリペプチドは、556個のアミノ酸(N末端メチオニンを含む)を含有しており、無水分子量は60,113 Daであった。これは、552〜568個のアミノ酸を含有し、59,830〜61,809 Daである、他の3つの細菌PDCに類似している。ZpaPDCは、pIの計算値が4.93であり、実験的に測定されたZ. mobilis PDCのpI値(4.87 〜5.3)に類似している(7、33)。 ZpaPDCの比較的高いアラニン含有量(13.1%)は、グラム陰性Z. mobilis PDCおよびA. pasteurianus PDC (ZmoおよびApaPDC)のそれとは同等であったが、グラム陽性 S. ventriculi PDC (SvePDC)(6.9%)と比較すると略2倍であった。アミノ酸配列のマルチプルアライメント (図9)およびデンドログラムクラスタ分析から、ZpaPDCは、ApaPDC (同一性:72%)と最も緊密な関係にあり、ZmoPDCと非常に高い関連性があることがわかった (同一性:62%)。3つのすべてのグラム陰性PDCは、植物PDCと類似配列にクラスター化された(例えば、Zea mays PDC; 同一性:39〜40%)。
【0181】
対照的に、グラム陽性SvePDCは、わずか30〜31%だけがグラム陰性PDCと一致しており、代わりに大多数の糸状真菌および酵母PDCと同じグループに分類にされた(例えば、Saccharomyces cerevisiae PDC1; 同一性:38%)。植物界のPDCに共通のN末端延長部は、4つ全ての細菌PDCから欠落していた。TPPとMg2+ の結合に関与する残基は、Z. mobilis および酵母PDCの結晶構造に基づいて、4つ全ての細菌PDCにおいて保存されていた。対照的に、酵母PDC1 (Tyr157およびArg224)の残基は、ピルビン酸類似体のピルバミド(pyruvamide)との結合に基づいて、活性化に関与している(29)。細菌SvePDCにのみ記録され、且つ、残りの3つの細菌PDCには認められなかった。
【0182】
推定されたA. pasteurianus PDCアミノ酸配列を、X線結晶学により分析したZ. mobilis および酵母 (PDC1)からのPDCの配列(Dydaら、1993; Arjunanら、1996; Luら、2000; Dobritzschら、1998)、ならびにZea maysからのPDC配列とともに並べた (図9)。マルチプルアライメントによってA. pasteurianus PDCがZ. mobilis PDCに最も類似していることが明らかになった (同一性:62%、 類似性:74%)。他の植物PDCに共通の、Z. mays PDCのN末端延長部は、A. pasteurianusのそれを含む真菌または細菌PDCポリペプチドには認められなかった。酵母とZ. mobilis PDC酵素の、TPPとMg2+ との結合部位の0.4 nm内に存在することが証明された残基は、A. pasteurianus PDC ポリペプチド配列(V24、D27、E50、T72、V75、N82、H113、H114、T384、D386、G408、I410、D435、S437、L440、I460、N462、G464、I467、E468)中に高度に保存されていた。さらに、Hawkins ら(1989)により提案された、Mg2+ およびTPP結合に関与するとされるTPP依存酵素中に同定されたモチーフもまた、A. pasteurianus PDC ポリペプチド配列 (G435〜N462)中に保存されている。アロステリック制御に関与するとされ、ピルビン酸類似体のピルバミド(pyruvamide)を結合することが証明されている(Luら、2000)、酵母PDC1(Tyr157およびR224)の残基は、A. pasteurianus、Z. mobilis、またはZ. mays PDCポリペプチド中に保存されていなかった。代わりに、これらの残基は、多数の真菌PDCに制限され、活性化された基質であるグラム陽性菌S. ventriculi からのPDC ポリペプチドに関連している (LoweおよびZeikus、1992)。酢酸細菌の細胞溶菌液について観察された、ピルビン酸からのCO2産生のカイネティクスに基づいて(KingおよびCheldelin、1953)、Z. mobilis PDCに類似するA. pasteurianus PDCポリペプチドは、活性化された基質ではないことが結論付けられる。しかしながら、植物PDCは、これらの保存された残基を含まないが、基質によって制御されており、PDCポリペプチド中のアロステリック制御のメカニズムにおける相違を示している。
【0183】
PDCポリペプチドのクラスター分析に基づけば、A. pasteurianus PDCは、Z. mobilis PDCに最も緊密に関連している。このことは、これら2つの細菌がグラム陰性α-プロテオバクテリアとして分類されることに矛盾しない。大多数の真菌PDCと近い進化ルートをもつ、G + C含有量の低いグラム陽性S. ventriculi PDCとは対照的に、α-プロテオバクテリアからのPDCポリペプチドは、植物およびいくつかの分類の異なる真菌PDCにより密接に関連している。
【0184】
同等物
当業者であれば、ここに記載された本発明の具体的な実施形態に多くの同等物が存在することを理解し、或いは、通常の実験を行うだけでそれらを特定できるはずである。そうした同等物は、次の請求の範囲により包含されることが意図されている。さらに、米国特許第5,821,093号、同第5,482,846号、同第5,424,202号、同第5,028,539号、同第5,000,000号、同第5,487,989号、同第5,554,520号、および同第5,162,516号に記載された遺伝子構成物、宿主細胞、および方法の任意のものを用いて本発明を実施可能であり、これらの特許は引用によって本明細書に援用する。
【0185】
引用文献
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【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】Zymobacter palmae pdc 遺伝子の模式図である。プラスミドpJAM3400は、平滑末端を有し、且つ、プラスミドベクターpLITMUS28に連結したZ. palmae ゲノムDNAの6-kbBamHI断片を持つ。残りのプラスミドは、pJAM3400に由来し、pdc 遺伝子に含まれる2.9-kb領域のDNA配列の分析に使用された。プラスミドpJAM3440を用いて、Z. palmae PDCポリペプチドを組換えE. coliにおいて産生させた。矢印は、pdc 遺伝子の転写方向を示す。
【図2】Acetobacter pasteurianus pdc 遺伝子の模式図である。プラスミドpJAM301は、プラスミドベクターpLITMUS28のXhoI部位に連結したA. pasteurianus ゲノム DNAの6,337-bp AatII断片を持つ。AatIIおよびXhoIによって生成された3’-、5’-オーバーハングは、連結の前にVent DNAポリメラーゼで平滑末端化された。残りのプラスミドはpJAM301に由来し、DNA 配列の分析に使用された。プラスミドpJAM304を用いて、A. pasteurianus PDC タンパク質を組換えE. coli において産生させた。矢印は、推定されたORFの転写および翻訳の方向を示している。
【図3】S. ventriculi pdc 遺伝子のpdc 座位、配列決定および特徴決定を行うために作製された種々のプラスミド、ならびにpdc オープンリーディングフレームを含み、且つ、細菌中にpdc遺伝子を高レベルで発現させるのに好適なプラスミドpJAM413、pJAM419、およびpJAM418を示す模式図である。
【図4】pdc 遺伝子およびZymobacter palmae遺伝子の産物の核酸配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【図5】pdc 遺伝子およびAcetobacter pasteurianus遺伝子の産物の核酸配列(配列番号3)およびアミノ酸配列(配列番号4)を示す。推定プロモーターには二重下線を引き、−35および−10領域のプロモーターコンセンサス配列をPDCに予測される配列のすぐ下に示し、且つ、pdcの核酸配列中においては、大文字を用いて強調表示した。DNA配列の上の矢印は、翻訳開始部位を示す。下線を引いた塩基は、“Shine-Dalgarno”リボソーム結合部位を示す。アスタリスクは、翻訳終止コドンを示す。DNA配列の下の矢印は、ρ独立転写終結を促進し得るステム・ループ構造を示す。
【図6】pdc 遺伝子およびSarcina ventriculi遺伝子の産物の核酸配列(配列番号5)およびアミノ酸配列(配列番号6)を示す。
【図7】種々の細菌PDC酵素の熱安定性を示すグラフである。「組換え」Zmo(●)、Zpa(■)、Apa(○)、およびSve(□)は、PDC ポリペプチドを指示された温度で、1 mM TPPおよび1 mM MgCl2 を含む、pH 5.0の50 mM クエン酸ナトリウム緩衝液中で、30分間プレインキュベートし、0?Cに冷却し、同じ緩衝液において、25℃で、残留している活性を調べるアッセイを行った。プレインキュベート後の0?Cにおける活性を100%とする。SvePDCは、組換えE. coli BL21-CodonPlus-RIL (pJAM419)から精製した。
【図8】pHが細菌PDC酵素の活性に及ぼす影響を示すグラフである。●は、「組換え」ZpaPDCを表し、■は、ApaPDC を表す。○は、「未変性」ZpaPDCを表し、□は、ApaPDCを表す。活性は、25?Cで50 mM クエン酸ナトリウム緩衝液において、pH 4.0〜5.0で、ならびに50 mM 燐酸ナトリウム緩衝液において、pH 5.5〜pH 8.0で測定した。最適pHにおける活性を100%とする。
【図9】選択されたPDCポリペプチド、すなわち、Z. mobilis (配列番号8)、A. pasteurianus (配列番号4)、S. ventriculi (配列番号6)、Z. mays (配列番号9)およびS. cerevisiae (配列番号10)とともに整列されたZ. palmae (配列番号2)の推定されたPDCポリペプチドのアミノ酸配列のマルチプルアライメントを示す。機能的に保存されたアミノ酸残基を黒で強調して示し、半分保存されたアミノ酸残基を灰色で強調して示した。(--)は、アライメントに導入されたギャップ表す。(*)は、酵母およびZ. mobilis PDC ポリペプチドの、Mg2+ およびTPP結合部位の0.4 nm以内の残基を示す。酵母PDC1残基は、ピルバミド(pyruvamide)(■)と水素結合している。二重線を引いた残基は、TPP依存酵素中に存在する。略語、およびGenBankもしくは SwissProt受入番号: Zpa=Z. palmae、AF474145; Apa=A. pasteurianus、AR368435; Sce=Saccharomyces cerevisiae、P06169; Sve=Sarcina ventriculi、AF354297; Zma=Zea mays、 P28516; Zmo=Zymomonas mobilis、P06672。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号3、配列番号5、またはそれらの相補配列のヌクレオチド配列に少なくとも60%相同性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子と、
b)配列番号3、配列番号5、またはそれらの相補配列のヌクレオチド配列を含んだ核酸の少なくとも1000個のヌクレオチドの断片を含んだ核酸分子と、
c)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列に少なくとも約50%相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子と、
d)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含んだポリペプチドの断片をコードする核酸分子であって、該断片が、配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列の少なくとも15個の連続するアミノ酸残基を含んだ、核酸分子と、
e)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含んだポリペプチドの天然対立遺伝子変異体をコードする核酸分子であって、配列番号3、または配列番号5を含んだ核酸分子の相補配列に、ストリンジェントなストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子と、からなる群から選択される単離核酸分子。
【請求項2】
a)配列番号3、配列番号5、またはそれらの相補配列のヌクレオチド配列を含む核酸分子と、
c)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子と、
からなる群から選択される、請求項1に記載の単離核酸分子。
【請求項3】
ベクター核酸配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
サロゲートプロモーターに作動的に連結された、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
異種ポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項7】
前記宿主細胞が、グラム陰性菌細胞及びグラム陽性菌細胞とからなる群から選択される、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
前記グラム陰性菌細胞が、Gluconobacter、Rhizobium、Bradyrhizobium、Alcaligenes、Rhodobacter、Rhodococcus、Azospirillum、Rhodospirillum、Sphingomonas、Burkholderia、Desulfomonas、Geospirillum、Succinomonas、Aeromonas、Shewanella、Halochromatium、Citrobacter、Escherichia、Klebsiella、Zymomonas、Zymobacter、およびAcetobacterからなる群より選択される、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項9】
前記グラム陽性菌細胞が、Fibrobacter、Acidobacter、Bacteroides、Sphingobacterium、Actinomyces、Corynebacterium、Nocardia、Rhodococcus、Propionibacterium、Bifidobacterium、Bacillus、Geobacillus、Paenibacillus、Sulfobacillus、Clostridium、Anaerobacter、Eubacterium、Streptococcus、Lactobacillus、Leuconostoc、Enterococcus、Lactococcus、Thermobifida、Cellulomonas、およびSarcinaからなる群より選択される、請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項10】
a)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含んだポリペプチドの断片であって、配列番号4、または配列番号6の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含んだ断片と、
b)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含んだポリペプチドの天然対立遺伝子変異体であって、該ポリペプチドが、配列番号3、または配列番号5を含んだ核酸分子の相補配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によりコードされる、天然対立遺伝子変異体と、
c)配列番号3、または配列番号5のヌクレオチド配列を含む核酸に少なくとも50%相同性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子によりコードされるポリペプチドと、
d)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列に少なくとも30%相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドと、
からなる群から選択される単離ポリペプチド。
【請求項11】
配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の単離ポリペプチド。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、向上したデカルボキシラーゼ活性を有する、請求項10または11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、向上した熱安定性を有する、請求項10または11に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、向上した基質親和性を有する、請求項10または11に記載のポリペプチド。
【請求項15】
異種アミノ酸配列をさらに含む、請求項10または11に記載のポリペプチド。
【請求項16】
請求項10または11に記載のポリペプチドに選択的に結合する抗体。
【請求項17】
a)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含んだポリペプチドと、
b)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含んだポリペプチドの断片であって、配列番号4、または配列番号6の少なくとも15個の連続するアミノ酸を含んだ断片と、
c)配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列を含んだポリペプチドの天然対立遺伝子変異体であって、該ポリペプチドが、配列番号3、または配列番号5を含んだ核酸分子の相補配列に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によりコードされる、天然対立遺伝子変異体と、
からなる群から選択されるポリペプチドを産生する方法であって、
請求項6に記載の宿主細胞を、前記核酸分子が発現する条件で培養する段階を含む、方法。
【請求項18】
請求項10または11に記載のポリペプチドが試料中に存在することを検出する方法であって、
a) 前記試料を、前記ポリペプチドに選択的に結合する化合物に接触させる段階と、
b) 前記化合物が前記試料中の前記ポリペプチドに結合するかどうかを測定して、前記試料中に請求項10に記載のポリペプチドが存在することを検出する段階とを含む、方法。
【請求項19】
前記ポリペプチドに選択的に結合する前記化合物が、抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の核酸分子が試料中に存在することを検出する方法であって、
a) 前記試料を、前記核酸分子の相補配列に選択的にハイブリダイズする核酸プローブまたはプライマーに接触させる段階と、
b) 前記核酸プローブまたはプライマーが前記試料中の前記核酸分子に結合するかどうかを測定して、前記試料中に請求項1に記載の核酸分子が存在することを検出する段階とを含む、方法。
【請求項21】
前記試料がmRNA分子を含み、核酸プローブに接触される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の核酸分子の相補配列に選択的にハイブリダイズする化合物と、使用説明とを含むキット。
【請求項23】
ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする異種核酸配列を含んだ組換え宿主細胞であって、前記核酸配列が、前記宿主細胞におけるコドン使用頻度を向上させるように選択されている、組換え宿主細胞。
【請求項24】
デカルボキシラーゼ活性を向上させるように選択されたピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする異種核酸配列を含んだ組換え宿主細胞。
【請求項25】
熱安定性を向上させるように選択されたピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする異種核酸配列を含んだ組換え宿主細胞。
【請求項26】
ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする前記異種核酸配列が、サロゲートプロモーターに作動的に連結されている、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項27】
ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする前記異種核酸配列が、Zymobacter palmae、Acetobacter pasteurianus、およびSarcina ventriculiからなる群から選択される細菌細胞に由来する、請求項23に記載の宿主細胞。
【請求項28】
前記異種核酸配列が、配列番号3、または配列番号5からなる群から選択される、請求項23乃至26の何れかに記載の宿主細胞。
【請求項29】
前記宿主細胞が、アルコールデヒドロゲナーゼ、グルカナーゼ、およびセクレターゼからなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸をさらに含む、請求項6および23乃至26の何れかに記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記宿主細胞が、アルコールデヒドロゲナーゼをコードする核酸をさらに含む、請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
前記宿主細胞が、エタノール産生特性を備えた、請求項6および23乃至26の何れかに記載の宿主細胞。
【請求項32】
前記宿主細胞が、糖からエタノールを発酵するのに適した、請求項6および23乃至26の何れかに記載の宿主細胞。
【請求項33】
前記宿主細胞が、グラム陰性菌細胞とグラム陽性菌細胞とからなる群から選択される細菌細胞である、請求項23乃至26の何れかに記載の組換え宿主細胞。
【請求項34】
前記グラム陰性菌細胞が、Gluconobacter、Rhizobium、Bradyrhizobium、Alcaligenes、Rhodobacter、Rhodococcus、Azospirillum、Rhodospirillum、Sphingomonas、Burkholderia、Desulfomonas、Geospirillum、Succinomonas、Aeromonas、Shewanella、Halochromatium、Citrobacter、Escherichia、Klebsiella、Zymomonas、Zymobacter、およびAcetobacterからなる群より選択される、請求項33に記載の宿主細胞。
【請求項35】
前記グラム陽性菌細胞が、Fibrobacter、Acidobacter、Bacteroides、Sphingobacterium、Actinomyces、Corynebacterium、Nocardia、Rhodococcus、Propionibacterium、Bifidobacterium、Bacillus、Geobacillus、Paenibacillus、Sulfobacillus、Clostridium、Anaerobacter、Eubacterium、Streptococcus、Lactobacillus、Leuconostoc、Enterococcus、Lactococcus、Thermobifida、Cellulomonas、およびSarcinaからなる群より選択される、請求項33に記載の宿主細胞。
【請求項36】
配列番号4、または配列番号6からなる群から選択されるPDCをコードする異種核酸を含む組換えエタノール産生宿主細胞であって、前記核酸が、外因性サロゲートプロモーターの転写制御下にある、エタノール産生宿主細胞。
【請求項37】
ピルビン酸デカルボキシラーゼが、ピルビン酸からアセトアルデヒドが産生されるのに十分なレベルで発現される条件下で、請求項6および23乃至26の何れかの宿主細胞を培養する段階を含んだ、アセトアルデヒド産生方法。
【請求項38】
前記宿主細胞が、アルコールデヒドロゲナーゼ、セクレターゼ、およびグルカナーゼからなる群から選択されるエタノール産生遺伝子をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
アセトアルデヒドがピルビン酸から産生される条件下で、請求項6および23乃至26の何れかの宿主細胞から得られた細胞可溶化物を接触させる段階を含んだ、アセトアルデヒド産生方法。
【請求項40】
エタノールが主要発酵生産物として産生されるのに十分なレベルで、ピルビン酸デカルボキシラーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼが発現される条件下で、請求項6および23乃至26の何れかの宿主細胞を培養する段階を含んだ、エタノール産生方法。
【請求項41】
前記方法が水溶液中で実行される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記方法が水溶液中で実行される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
請求項6および23乃至26の何れかの宿主細胞に由来するピルビン酸デカルボキシラーゼを検出可能なレベルで含む酵素抽出物。
【請求項44】
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼが、向上したデカルボキシラーゼ活性を有する、請求項37に記載の酵素抽出物。
【請求項45】
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼが、向上したデカルボキシラーゼ活性を有する、請求項40に記載の酵素抽出物。
【請求項46】
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼが、向上した熱安定性を有する、請求項43に記載の酵素抽出物。
【請求項47】
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼが、向上した基質親和性を有する、請求項43に記載の酵素抽出物。
【請求項48】
デカルボキシラーゼ活性が向上したピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素を選択するための方法であって、
ピルビン酸デカルボキシラーゼのアミノ酸配列を、配列番号4、または配列番号6のアミノ酸配列と比較する段階と、
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼの少なくとも1つのアミノ酸残基を、配列番号4、または配列番号6の対応するアミノ酸残基と同一性を有するように変化させ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性を向上させる段階とを含む、方法。
【請求項49】
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性が、ピルビン酸デカルボキシラーゼのピルビン酸への向上した親和性を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼ活性が、向上した熱安定性を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
レシピエント宿主細胞において発現が向上したピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素を選択するための方法であって、
ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を配列番号3、または配列番号5の核酸配列と比較する段階と、
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする前記核酸の少なくとも1つのコドンを、配列番号3、または配列番号5の対応するコドンと同一性を有するように変化させ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする前記変化させた核酸の発現を、前記宿主細胞において向上させる段階とを含む、方法。
【請求項52】
レシピエントの宿主細胞において発現が向上したピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素を選択するための方法であって、
ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を、前記レシピエント宿主細胞のコドン使用頻度と比較する段階と、
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする前記核酸の少なくとも1つのコドンを、前記レシピエント宿主細胞のコドン使用頻度と一致するように変化させ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする前記変化させた核酸の発現を、前記宿主細胞において向上させる段階とを含む、方法。
【請求項53】
レシピエント宿主細胞において発現が向上したピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素を選択するための方法であって、
ピルビン酸デカルボキシラーゼをコードする核酸配列を、前記レシピエント宿主細胞のコドン使用頻度と比較する段階と、
前記ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする前記核酸の1のコドンに対応する少なくとも1つのtRNAを組換え産生するように前記レシピエントの宿主細胞を変化させ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ酵素をコードする前記核酸の発現を、前記宿主細胞において向上させる段階とを含む、方法。
【請求項54】
国際寄託当局であるアメリカン・タイプ・カルチャーコレクション(ATCC)の寄託番号がPTA-4252であるAcetobacter pasteurianusに由来するpdc遺伝子を含むプラスミドpJAM304。
【請求項55】
国際寄託当局であるアメリカン・タイプ・カルチャーコレクション(ATCC)の寄託番号がPTA-4253であるSarcina ventriculiに由来するpdc遺伝子を含むプラスミドpJAM419。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【公開番号】特開2008−99704(P2008−99704A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307396(P2007−307396)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【分割の表示】特願2003−529891(P2003−529891)の分割
【原出願日】平成14年4月29日(2002.4.29)
【出願人】(503404947)ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファンデーション, インク. (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF FLORIDA RESEARCH FOUNDATION, INC.
【住所又は居所原語表記】1938  W. University Avenue, Gainesville, FL 32611 (US)
【Fターム(参考)】