説明

ピログルタミン酸塩並びにデキストロセチリジン及びレボセチリジンの合成のための中間体の光学分割におけるその使用

【課題】新規で鏡像異性的に実質的に純粋な中間体を使用するレボセチリジンなどの鏡像異性的に実質的に純粋な化合物のより簡単な調製方法の提供。
【解決手段】(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;又は(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩。混合物の化学分割による(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド(I)及び(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド(II)の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なピログルタミン酸塩に関し、及び特に医薬活性化合物の調製のための、合成中間体としてのその使用に関する。
【0002】
本発明は、それぞれ式I及び式IIに対応する(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの調製方法にも関する。(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドは、それぞれデキストロセチリジン及びレボセチリジンの合成の中間体である。
【化1】

【背景技術】
【0003】
ラセミ混合物であるセチリジン([2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]酢酸)からのレボセチリジン及びデキストロセチリジンの調製方法は、英国特許第2225320号及び同2225321号並びに欧州特許第0663828号から既知である。セチリジン、その個々の光学異性体、又は医薬として許容されるその塩の調製方法は、欧州特許第0058146号、英国特許第2225320号、同2225321号、米国特許第5,478,941号、欧州特許出願第0601028号及び同0801064号及び国際特許出願公開WO第97/37982号に記載されている。英国特許第2,225,321号には、鏡像異性的に純粋な又はラセミ体の[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]−アセトニトリルの加水分解を含む、左旋性形態、右旋性形態又はそれらの混合物でのセチリジンの調製方法が記載されている。WO第2004/065360号には、レボセチリジンの調製方法について記載されており、ここでは鏡像異性的に純粋な中間体が使用されている。
【0004】
(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの調製方法は、欧州特許第0617028号から既知である。
【0005】
分割用光学活性酸などの従来の手段を使用したセチリジン又はその前駆体の鏡像異性体の分割は既知である(国際特許出願公開第94/06429号)。2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのキラルHPLCによる分割は既知である(Organic Process Research and Development, vol. 5, 2001, pages 110−115)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、新規で鏡像異性的に実質的に純粋な中間体を使用する、レボセチリジンなどの鏡像異性的に実質的に純粋な化合物の、代替のより簡単な調製方法を今や見出した。
【0007】
「鏡像異性的に実質的に純粋な」化合物とは、少なくとも96%の鏡像体過剰率を有する化合物であると理解すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚いたことに、ジアステレオマー塩の形成及びこれらの塩の結晶化による分割は、(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの部分的に濃縮した混合物、及び最終的には、鏡像異性的に実質的に純粋な(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び鏡像異性的に実質的に純粋な(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドを得るための工業的利用がより容易である有望な代替方法であることを見出した。
【0009】
この技術は、工業規模に移行して、医薬品用途に必要な光学純度を有する製品を効率的に優れた生産効率で製造することができる。
【0010】
第1の態様では、本発明は、(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;又は(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩から選択された化合物に関する。これらの化合物は、ジアステレオマー的に部分的に濃縮した化合物でよく、又はジアステレオマー的に実質的に純粋な化合物でよい。「ジアステレオマー的に実質的に純粋な」化合物とは、少なくとも96%のジアステレオマー過剰率を有する化合物であると理解すべきである。
【0011】
本発明による好ましい実施形態では、塩はジアステレオマー的に実質的に純粋な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の化合物は、(R)−及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの混合物と、(S)−ピロリドン−5−カルボン酸(L−ピログルタミン酸とも称される)又は(R)−ピロリドン−5−カルボン酸(D−ピログルタミン酸とも称される)との反応により得ることができる。
【0013】
鏡像異性体、例えば(R)−及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの混合物は、鏡像異性体のラセミ混合物又は鏡像異性体の部分的に濃縮した混合物でよい。鏡像異性体の「ラセミ混合物」とは、鏡像異性体のモル比が1の混合物であると理解すべきである。
【0014】
立体異性体の「部分的に濃縮した混合物」とは、立体異性体のモル比が1超の混合物であると理解すべきである。ここでの定義の意味の範囲内での立体異性体とは、例えばジアステレオマー又は鏡像異性体である。
【0015】
(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;又は(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩は、鏡像異性的に実質的に純粋なセチリジン誘導体の合成、すなわちデキストロセチリジン合成及びレボセチリジン合成のそれぞれに使用することができる。
【0016】
第2の態様では、本発明は、特に医薬活性化合物調製のための、合成中間体としての、(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;又は(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩の使用に関する。
【0017】
他の実施形態によれば、本発明は、(S)−ピロリドン−5−カルボン酸又は(R)−ピロリドン−5−カルボン酸の存在下での、(R)−及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ体又は部分的に濃縮した混合物の化学分割による、(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの調製方法に関する。
【0018】
通常、(R)−及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ混合物の化学分割が行われる。
【0019】
本発明は、鏡像異性的に実質的に純粋な(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び鏡像異性的に実質的に純粋な(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの調製方法に関することが好ましい。本発明の方法において、(S)−ピロリドン−5−カルボン酸を使用することが好ましい。通常これは反応を進めるのに十分な量で使用する。
【0020】
通常、ラセミ混合物の分割が行われる。一般に、(S)−ピロリドン−5−カルボン酸の量は、(R)−及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ混合物1モル当たり0.1〜4モルである。この量は、1モル当たり0.4〜1.5モルであることが好ましい。この量は、1モル当たり0.75〜1.25モルであることが更に好ましい。(S)−ピロリドン−5−カルボン酸の量が、(R)−及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ混合物1モル当たり0.9〜1.1モルの範囲で最良の結果を得た。
【0021】
通常、本発明による方法は溶媒又は溶媒混合物の存在下で行う。溶媒又は溶媒混合物は、前記溶媒又は溶媒混合物が反応に参加しなければ、任意の溶媒又は溶媒混合物でよい。
【0022】
一般に、本発明の溶媒は、有機溶媒である。通常、本発明の溶媒は、水;エタノール、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール、;アセトン、ブタン−2−オン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;MTBE(メチルtert−ブチルエーテル)、THF(テトラヒドロフラン)などのエーテル;AcOMe(酢酸メチル)、AcOEt(酢酸エチル)、AcOiPr(酢酸イソプロピル)などのエステル;又は2種類以上のこのような溶媒の混合物から選択される。本発明の溶媒は、酢酸エチル;THF;酢酸エチルとメタノールとの混合物;水とTHFとの混合物;THFとメタノールとの混合物;又はこれらの混合物から選択されることが好ましい。本発明の溶媒は、酢酸エチル;THF;酢酸エチルとメタノールとの混合物(4:1);THFとメタノールとの混合物(4:1)から選択されることが更に好ましい。本発明の最も好ましい溶媒は、酢酸エチルとメタノールとの混合物(4:1);及びTHFとメタノールとの混合物(4:1)である。溶媒が酢酸エチルとメタノールとの混合物(4:1)で、最良の結果が得られた。
【0023】
一般に、溶媒の量は、2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド1モル当たり0.4L〜8Lである。溶媒の量は、1モル当たり1.0L〜4Lであることが好ましい。溶媒の量は、1モル当たり1.6L〜2.8Lであることが更に好ましい。溶媒の量が、(R)−及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ混合物1モル当たり1.2L〜2.8Lで最良の結果が得られた。
【0024】
本発明の方法では、接触温度は、周囲温度から使用する溶媒の沸点までである。
【0025】
結晶化は、自発的であってもよいし、又は(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩;又は(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩のジアステレオマー的に実質的に純粋な結晶を反応媒体に添加することにより開始してもよい。
【0026】
結晶化によって得たジアステレオマー的に実質的に純粋な塩又はジアステレオマー的に部分的に濃縮した塩は、再結晶させてもよく、又は同様の方法で処理して活性アミドの鏡像体過剰率を更に増加させてもよい。
【0027】
ジアステレオマー的に実質的に純粋な塩を得た後で、適切な方法により分解して、鏡像異性的に実質的に純粋な2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び分割剤を単離してもよいし、又は鏡像異性的に実質的に純粋な塩酸セチリジンに直接変換してもよい。
【0028】
ジアステレオマー的に実質的に純粋な塩を分解するために、任意の方法を使用できる。例えば、ジアステレオマー的に実質的に純粋な塩を含有する水溶液をアルカリ性にしてよく、鏡像異性的に実質的に純粋な(R)又は(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドは、それを水層から分離する適切な有機溶媒で抽出でき、次いで有機溶媒を蒸留して取り除き、したがって鏡像異性的に実質的に純粋な(R)又は(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの単離をすることができる。
【0029】
鏡像異性的に実質的に純粋な(R)又は(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの抽出に使用される適切な溶媒は、トルエン、酢酸エチル、ジクロロメタンなどの任意の水非混和性の有機溶媒でよい。
【0030】
一実施形態によれば、本発明は、ジアステレオマー的に部分的に濃縮した(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩又はジアステレオマー的に部分的に濃縮した(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩を得る方法に関し、この方法は、
(R)−及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ体又は部分的に濃縮した混合物と、(S)−ピロリドン−5−カルボン酸とを、溶媒中で混合するステップと、
反応媒体を任意選択で加熱して還流するステップと、
前記反応媒体を冷却するステップと、
固体を溶液から分離するステップとを含む。
【0031】
本発明によるジアステレオマー的に部分的に濃縮した塩は、ジアステレオマーのモル比が2超であることが好ましく、3超が更に好ましく、4超が最も好ましい。
【0032】
他の実施形態によれば、本発明は、ジアステレオマー的に実質的に純粋な(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩又はジアステレオマー的に部分的に濃縮した(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩を得る方法に関し、この方法は、
2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ体又は部分的に濃縮した混合物と、(S)−ピロリドン−5−カルボン酸とを、溶媒中で混合するステップと;
反応媒体を任意選択で加熱還流させるステップと;
前記反応媒体を冷却するステップと;
固体を溶液から分離するステップと;
固体と溶媒とを任意選択で混合し、
反応媒体を任意選択で加熱還流し、
前記反応媒体を冷却し、
固体を溶液から分離し、
固体を乾燥させることにより、任意選択で再結晶させるステップ;とを含む。
【0033】
再結晶化ステップは、所望の割合のジアステレオマーを得るために当業者が必要と考えるだけ何回も行ってよい。本発明によるジアステレオマー的に実質的に純粋な塩は、96%超のジアステレオマー過剰率を有することが好ましく、97%超が更に好ましく、98%超が最も好ましい。
【0034】
本発明により得た鏡像異性的に実質的に純粋な(R)−又は(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドは、96%超の鏡像体過剰率を有することが好ましく、97%超が更に好ましく、98%超が最も好ましい。
【0035】
他の実施形態では、本発明は、鏡像異性的に実質的に純粋な(R)又は(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの調製方法を提供する。
【0036】
驚いたことに、本発明による方法は、(S)又は(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドを、産業設備で非常に高い生産効率で得ることを可能にし、(R)及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ混合物から、1kg当たり270gまでの鏡像異性的に実質的に純粋な(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの分離を可能にすることが認められた。
【0037】
他の鏡像異性体を基準としたある鏡像異性体の量は、「%ee」と省略される鏡像体過剰率で好都合に表される。鏡像体過剰率は、下記により計算できる。
%ee=[([A]−[B]):([A]+[B])]×100([A]は、鏡像異性体の一方の濃度、[B]は、他方の鏡像異性体の濃度である。)完全溶解した物質中では、鏡像体過剰は全物質の重量に等しいので、%eeは100%である。この場合、化合物の光学純度は100%となる。それぞれの鏡像異性体の濃度は、当然ながら同じ基準で表され、鏡像異性体は同じ分子量を有するので、モル基準の重量でも表すことができる。
【0038】
光学純度を決定するために使用するキラルHPLC方法は、以下の通りである。
試料を移動相に溶解し、濃度を約1mg/mLとなるように調節した。
検出器:紫外線吸収光度計(210nm)
カラム:Daicel Chiralpak AD、l0μm、250×4.6mm
カラム温度:室温
移動相:n−ヘキサン/イソプロパノール(50:50)
流量:1ml/分
ピーク測定範囲:試料の注入後20分以内の範囲
保持時間:(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド、約6〜8分
保持時間:(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド、約11〜15分
(R)異性体(%)の量を、下記の式で計算した。
【化2】


:(R)異性体のピーク面積の割合
:(S)異性体のピーク面積の割合
【0039】
下記の実施例は、本発明の方法を例示し、本発明の好ましい実施形態を参照して操作の詳細を示すが、本発明はこれらの特定の操作条件に限定されないことを明確に理解されたい。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
ラセミ体の2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド及び(S)−ピロリドン−5−カルボン酸からの、ジアステレオマー的に実質的に純粋な(R)−[2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩の調製
3Lの二重ジャケット式ガラス製反応器内に、(S)−ピロリドン−5−カルボン酸(100g、0.775mol)、2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドのラセミ混合物(300g、0.775mol)及びAcOEt−MeOH(酢酸エチル4:メタノール1)混合物1200mLを導入した。固体の完全溶解が観察されるまで反応媒体を還流させた。次いで、反応媒体を11時間以内で20℃に冷まし、次いで20℃で24時間撹拌した。濾過後に、固体を2×250mLのAcOEt−MeOH(9:1)混合物で洗浄した。湿った固体、すなわちジアステレオマー的に部分的に濃縮した(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩の重量は、165.6gであった。
【0041】
ジアステレオマー的に部分的に濃縮した(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩150gを、AcOEt−MeOH(4:1)600mLと共に3Lの二重ジャケット式ガラス製反応器に再導入した。混合物を2時間還流し、12時間以内で20°Cに冷ました。20°Cで5時間後に、結晶を濾過し、AcOEt−MeOH(9:1)(250mL)で洗浄した。乾燥した結晶の重量は、102gであった。
【0042】
ジアステレオマー的に実質的に純粋な(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩の収率は、27%である(50%の最大収率と比較して)。
ジアステレオマー過剰率:96%
融点:159.5°C
【化3】

【0043】
(実施例2)
ジアステレオマー的に実質的に純粋な(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩からの、鏡像異性的に実質的に純粋な(R)−[2−[4−[(4−クロロフェニル)フェニルメチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]アセトアミドの調製
前述の結晶25gを、水−トルエン懸濁液に分散させ、次いで50%NaOH10gを加えた。2層の均質化が観察されるまで、混合物を室温で磁気撹拌した。反応混合物を、1Lの分離漏斗に移し、有機層及び水層をデカントした。次いで、水層を100mLのトルエンにより3回抽出し、有機層を回収し、水で2回洗浄した。溶媒を減圧下で蒸留して取り除き、鏡像異性的に実質的に純粋な(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドを油化合物として得て、この化合物は静置するとすぐに結晶化した。収率:20g(収率:100%)。
鏡像体過剰率=96%
【化4】

【0044】
本発明者らは、本出願においては96%である医薬品用途に必要な光学純度を有する実質的に鏡像異性的に/ジアステレオマー的に純粋な生成物を得た。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩、
(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(S)−ピロリドン−5−カルボン酸塩、
(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩、又は
(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド−(R)−ピロリドン−5−カルボン酸塩から選択される化合物。
【請求項2】
ジアステレオマー的に実質的に純粋な、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
(S)−ピロリドン−5−カルボン酸又は(R)−ピロリドン−5−カルボン酸の存在下での(R)及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの混合物の化学分割を含む、(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド又は(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの調製方法。
【請求項4】
前記化学分割を溶媒又は溶媒混合物の存在下で行うことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が酢酸エチル及びメタノールの混合物であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(S)−ピロリドン−5−カルボン酸又は(R)−ピロリドン−5−カルボン酸の存在下での(R)及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの混合物の化学分割を含むことを特徴とする、請求項3に記載の、鏡像異性的に実質的に純粋な(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミド又は鏡像異性的に実質的に純粋な(R)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの調製方法。
【請求項7】
(R)及び(S)−2−[4−(4−クロロベンズヒドリル)ピペラジン−1−イル]−エトキシアセトアミドの混合物がラセミ混合物であることを特徴とする、請求項3から6までのいずれか一項に記載の方法。


【公開番号】特開2013−32380(P2013−32380A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−226914(P2012−226914)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2007−557385(P2007−557385)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(504000041)ユセベ ファルシム ソシエテ アノニム (9)
【Fターム(参考)】