ピロリ菌の分泌毒素に結合するペプチドおよびその用途

【課題】H. ピロリの存在の有無だけでなく、その病原性毒素の識別が可能であり、H. ピロリ毒素に対する特異性が高く、安価かつ迅速に当該菌を検出することができるバイオセンサーとしての毒素タンパク質認識物質およびそれを用いたH. ピロリの検出方法を提供すること。
【解決手段】下式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7
(式中、X1は疎水性アミノ酸、X2は塩基性アミノ酸、X3は疎水性アミノ酸、X4は親水性中性アミノ酸、X5は親水性中性アミノ酸、X6は任意のアミノ酸もしくはジペプチド、X7は疎水性アミノ酸をそれぞれ示す)
で示されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含むペプチドであって、H. ピロリのVacAに対して特異的親和性を有するペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘリコバクター・ピロリの分泌毒素特異的に結合するペプチド、並びに該ペプチドを用いた該分泌毒素の検出方法およびそのための試薬等に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori;以下、H. ピロリと略記する。)はヒト胃粘膜に感染するグラム陰性らせん状桿菌であり、世界人口の約半数が感染していると考えられている。特に、高齢者での感染率は若年者層に比べて非常に高く、70%の人が菌を保有しているものと推測されている。長期的なH. ピロリの感染は慢性的な胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんを引き起こす可能性が示唆されている。
【0003】
H. ピロリを検出する手段として、従来、本菌の産生するウレアーゼの活性を測定する方法(非特許文献1)や、ウレアーゼなどの抗原に対して特異的に結合する抗体を利用した免疫学的測定法が利用されている(非特許文献2)。例えば、ウレアーゼ活性測定方法としては尿素呼気試験がよく用いられている。これは、13Cで標識した尿素がH. ピロリ由来のウレアーゼによってアンモニアと二酸化炭素に変わることを利用して、呼気中の13Cを測定する方法である。この方法は、単にH. ピロリの存在を検出するには簡便で優れた方法であるが、H. ピロリの悪性度を判断することはできない。H. ピロリの病原性は菌株によって異なり、すべての感染者が胃潰瘍や胃がんなどを発症するわけではない。したがって、すべての感染者を対象に除菌を行うことは、耐性菌の出現を助長するとともに、医療経済の観点からも適切ではない。そのため、H. ピロリの病原性の識別が診断ニーズとして存在する。
【0004】
H. ピロリの病原性の主な原因は、菌から宿主細胞に侵入するCagA及びVacAと呼ばれる2種のタンパク質である。CagAはIV型分泌装置を介して胃上皮細胞内に直接注入され、細胞内情報伝達を撹乱し、主に胃がん発症に関連する。一方、VacAは感染細胞内に空胞を形成させて細胞を死滅させ、胃炎や胃潰瘍の原因となる。
【0005】
ところで、病原体の測定・検出方法は、病原体そのものや生体中の特定の成分や化合物を対象とするため、極めて複雑な混合系でも十分に分別能力があることが求められる。また、それに加えて測定の迅速性、操作の簡便さを同時に満たすことも必要である。CagAやVacAを特異的に検出する方法としては、それらに対する抗体を用いたELISA法があるが、洗浄等の工程が多く迅速性に欠けるという問題がある。そこで現在注目されているのがバイオセンサーである。
【0006】
バイオセンサーとは、酵素・微生物・抗体といった生体に関連する物質が有する分子識別機能を利用して、リアルタイムに検出対象物質の検出・計測を行うセンサーのことである。このバイオセンサーには、検出対象物質に対する特異性が高く、穏和な条件で反応し、特別な試薬を必要とせず、安全性が高いといった性能が求められる。本発明者らは以前、ある種の糖脂質ガングリオシドを用いてVacAを検出できることを報告している(特許文献1)。しかし、ガングリオシドは、種々の細菌毒素が宿主細胞内に侵入する際の細胞表面受容体であることから、VacAだけでなく、例えば毒素原性大腸菌の病原性タンパク質である易熱性エンテロトキシン等にも結合するため、特異性の面で十分とはいえない。
【0007】
ペプチドアプタマーとは、特定の分子に対して高い親和性と特異性を持っている人工配列ペプチドである。膨大な配列ライブラリから進化工学的手法で特定の標的分子に結合する可能性のある配列を探索することによって得られるペプチドアプタマーは、製造コストが極めて低いことから、バイオセンサーを構築する上で、抗体に代わる分子認識物質として注目されている。しかしながら、H. ピロリのVacAを特異的に認識するペプチドアプタマーはこれまで報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-57334公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】加藤元嗣、穂刈格、杉山敏郎、浅香正博:H.pyrori感染症の診断と除菌判定, 臨床医, 2001, 27, p.28-33
【非特許文献2】杉山敏郎:H.pyrori血清診断法の現状と問題点, Prog. Med., 1995, 15, p.515-520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、H. ピロリの存在の有無だけでなく、その病原性毒素の識別が可能であり、H. ピロリ毒素に対する特異性が高く、安価かつ迅速に当該菌を検出することができるバイオセンサーとしての毒素タンパク質認識物質およびそれを用いたH. ピロリの検出方法を提供することである。また、本発明の別の目的は、当該毒素タンパク質認識物質を有効成分とするH. ピロリ毒素の中和剤、H. ピロリ感染に起因する疾患の予防及び/又は治療剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、H. ピロリのVacAに特異的に結合するペプチドアプタマーを創製することに成功した。溶液中での蛍光標識分子の動きをもとにして分子間相互作用を解析する蛍光相関分光(FCS)法を利用して、VacAとペプチドアプタマーとの相互作用を解析したところ、結合力の強いペプチドアプタマーは、VacAの凝集体形成を促進することが明らかとなり、FCS法により高感度にVacAを検出することが可能であることが示された。また、ペプチドアプタマーを表面に修飾したセンサーチップを装着した表面プラズモン共鳴(SPR)測定によりVacAが検出可能であることが示され、バイオセンサーの構築にペプチドアプタマーが有用であることが示唆された。
本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]下式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7
(式中、X1は疎水性アミノ酸、X2は塩基性アミノ酸、X3は疎水性アミノ酸、X4は親水性中性アミノ酸、X5は親水性中性アミノ酸、X6は任意のアミノ酸もしくはジペプチド、X7は疎水性アミノ酸をそれぞれ示す)
で示されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含むペプチドであって、H. ピロリのVacAに対して特異的親和性を有するペプチド。
[2]X1がGlyもしくはTrp、X2がArg、X3がValもしくはTyr、X4がAsnもしくはThr、X5がGln、X6がArg、CysもしくはVal-Thr、及びX7がLeuもしくはProである、上記[1]記載のペプチド。
[3]X1がGly、X6がArgもしくはVal-Thr、及びX7がLeuである、上記[2]記載のペプチド。
[4]配列番号1〜4:
Gly-Arg-Val-Asn-Gln-Arg-Leu(配列番号1)
Gly-Arg-Val-Asn-Gln-Cys-Leu(配列番号2)
Trp-Arg-Val-Thr-Gln-Arg-Pro(配列番号3)
Gly-Arg-Tyr-Asn-Gln-Val-Thr-Leu(配列番号4)
のいずれかで表されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含む、上記[2]記載のペプチド。
[5]N末端及びC末端にそれぞれCysを含む1〜3個のアミノ酸が付加され、該Cys間のジスルフィド結合により環状化した、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のペプチド。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載のペプチドを含有してなる、H. ピロリのVacA検出試薬。
[7]該ペプチドが標識されている、上記[6]記載の試薬。
[8]固相表面に固定化されている、上記[6]記載の試薬。
[9]固相がセンサーチップである、上記[8]記載の試薬。
[10]検体中のH. ピロリのVacAを検出する方法であって、
(1) 検体と、上記[6]〜[9]のいずれかに記載の試薬とを接触させる工程、および
(2) 該検体中のVacAと該試薬中のペプチドとの結合を測定する工程
を含む方法。
[11](1) 検体と、上記[9]記載の試薬とを接触させる工程、および
(2) 該検体中のVacAと該試薬中のペプチドとの結合を表面プラズモン共鳴により測定する工程
を含む、上記[10]記載の方法。
[12]検体中のH. ピロリのVacAを検出する方法であって、
(1) 検体と、蛍光標識された上記[1]〜「5」のいずれかに記載のペプチドとを混合して試料溶液を調製する工程、および
(2) 共焦点様光学系を用いて該試料溶液の蛍光信号の時間経過を計測する工程
を含む方法。
[13]検体が除菌処理されたものである、上記[10]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]上記[1]〜[5]のいずれかに記載のペプチドを含有してなる、H. ピロリのVacAの中和剤。
[15]H. ピロリ感染に起因する疾患の予防及び/又は治療用である、上記[14]記載の剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明のペプチドは、H. ピロリのVacAに特異的に結合するので、VacAの検出試薬、即ち、病原性H. ピロリの検出試薬として利用することができる。例えば、本発明のペプチドで表面修飾したセンサーチップを用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)によるVacA及びH. ピロリの検出が可能となる。また、VacAの凝集体形成を促進するので、例えば、蛍光標識した該ペプチドを用いてFCS法を実施することにより、高感度なVacAの検出が可能となる。さらに、本発明のペプチドは、VacAに吸着するので、VacAの中和剤として、H. ピロリの感染に起因する胃炎や胃潰瘍などの疾患の予防及び/又は治療にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1において、高頻度で検出されたアプタマー候補ペプチドのアミノ酸配列(配列番号1〜7)と、コンセンサス配列とを示す図である。
【図2】蛍光標識ペプチドの自己相関解析による、VacAに対するアプタマー候補ペプチドの結合解析の結果を示す図である。
【図3】蛍光標識ペプチドの自己相関解析による、VacAに対するアプタマー候補ペプチドの結合解析の結果を示す図である。
【図4】ペプチドアプタマーによるVacA凝集促進効果を示す図である。
【図5】ペプチドアプタマーを利用した表面プラスモン共鳴(SPR)バイオセンサーのVacA検出結果を示す図である。
【図6】蛍光標識したペプチドアプタマーと共焦点光学系を利用した蛍光相関分光(FCS)法による蛍光変動計測により、種々の濃度のVacAを検出した結果を示す図である。(A)はVacAとの結合力の強いペプチドアプタマーを用いた結果であり、(B)はVacAとの結合力の弱いペプチドアプタマーを用いた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、H. ピロリのVacAに対して特異的親和性を有するペプチド(単に「本発明のペプチド」ともいう)を提供する。本発明のペプチドは、式(I):
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7 (I)
(式中、X1は疎水性アミノ酸、X2は塩基性アミノ酸、X3は疎水性アミノ酸、X4は親水性中性アミノ酸、X5は親水性中性アミノ酸、X6は任意のアミノ酸もしくはジペプチド、X7は疎水性アミノ酸をそれぞれ示す)
で示されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含むペプチドである。
本明細書において、アミノ酸配列は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。また、逆鎖とは、N末端からC末端の並びを逆にしたアミノ酸配列、即ち、(N末端)-X7-X6-X5-X4-X3-X2-X1-(C末端)を意味する。
また、ここで疎水性アミノ酸とは、Ile、Leu、Val、Ala、Phe、Pro、Met、Trp、Tyr及びGlyを意味し、塩基性アミノ酸とは、Arg、Lys及びHisを意味し、親水性中性アミノ酸とは、Asn、Gln、Ser、Thr及びCysを意味し、任意のアミノ酸とは天然に存在する20種のアミノ酸を意味し、任意のジペプチドとは2個の任意のアミノ酸からなるペプチドを意味する。これらのアミノ酸はL体であってもD体であってもよく、両者が混在していてもよいが、好ましくはL体である。
【0016】
好ましくは、式(I)において、X1はGlyもしくはTrpであり、X2はArgであり、X3はValもしくはTyrであり、X4はAsnもしくはThrであり、X5はGlnであり、X6はArg、CysもしくはVal-Thrであり、X7はLeuもしくはProである(式(II))。
(Gly/Trp)-Arg-(Val/Tyr)-(Asn/Thr)-Gln-(Arg/Cys/Val-Thr)-(Leu/Pro) (II)
【0017】
より好ましくは、式(II)において、X1はGlyであり、X6はArgもしくはVal-Thrであり、X7はLeuである(式(III))。
Gly-Arg-(Val/Tyr)-(Asn/Thr)-Gln-(Arg/Val-Thr)-Leu (III)
【0018】
さらに好ましくは、本発明のペプチドは、配列番号1〜4:
Gly-Arg-Val-Asn-Gln-Arg-Leu(配列番号1)
Gly-Arg-Val-Asn-Gln-Cys-Leu(配列番号2)
Trp-Arg-Val-Thr-Gln-Arg-Pro(配列番号3)
Gly-Arg-Tyr-Asn-Gln-Val-Thr-Leu(配列番号4)
のいずれかで表されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含む。
【0019】
本発明のペプチドは、式(I)で表されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含み、かつH. ピロリのVacAに対する親和性(結合能)を保持する限り、そのN末端及び/又はC末端に1〜数個(好ましくは1-5個、より好ましくは1-4個、さらに好ましくは1-3個、特に好ましくは1もしくは2個)のアミノ酸が付加されていてもよい。好ましい一実施態様において、本発明のペプチドは、N末端及びC末端にそれぞれCysを含む1-3個のアミノ酸が付加され、該Cys間のジスルフィド結合により環状化されている。
【0020】
また、別の実施態様において、本発明のペプチドは、H. ピロリのVacAに対する親和性(結合能)を保持する限り、式(I)で表されるアミノ酸配列において、1もしくは2個、好ましくは1個のアミノ酸残基が欠失、挿入、あるいは式(I)に定義されるアミノ酸以外のアミノ酸で置換されていてもよい。例えば、X3のアミノ酸が親水性中性アミノ酸(例:Ser)で置換された改変体ペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明のペプチドは、C末端がカルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アミド(-CONH2)またはエステル(-COOR)の何れであってもよい。ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルなどのC1-6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α-ナフチルなどのC6-12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル-C1-2アルキル基;α-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
【0022】
本発明のペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のペプチドには、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成し得るN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば-OH、-SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているものなども含まれる。
【0023】
本発明のペプチドは遊離体であってもよいし、塩の形態であってもよい。本発明のペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0024】
本発明のペプチドは、公知のペプチド合成法に従って製造することができる。ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明のペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするペプチドを製造することができる。
ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(1)〜(5)に記載された方法に従って行われる。
(1) M. BodanszkyおよびM.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(2) SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド (The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(3)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株) (1975年)
(4)矢島治明および榊原俊平、生化学実験講座 1、蛋白質の化学IV 205 (1977年)
(5)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
【0025】
このようにして得られたペプチドは、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆にペプチドが塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0026】
本発明のペプチドの合成には、通常市販の蛋白質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4-ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4-ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α-アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、ペプチドまたはそのアミド体を取得する。
【0027】
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、蛋白質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0028】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒は、蛋白質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド,N,N-ジメチルアセトアミド,N-メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどのアミン類,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度は蛋白質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約-20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0029】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2-アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4-ニトロベンジルエステル、4-メトキシベンジルエステル、4-クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2-Bzl、2-ニトロベンジル、Br-Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0030】
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd-黒あるいはPd-炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約-20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0031】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
【0032】
ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、C末端アミノ酸のα-カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα-アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したペプチドとを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。
ペプチドのエステル体は、例えば、C末端アミノ酸のα-カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、上記ペプチドのアミド体の場合と同様にして得ることができる。
【0033】
このようにして得られたペプチドがVacAに対して特異的親和性を有することは、例えば、後述の実施例に記載の方法に従って確認することができるが、公知の他の手法を用いることもできる。
【0034】
本発明はまた、本発明のペプチドを含有してなる、H. ピロリのVacAの検出用試薬を提供する。本発明のペプチドは、検出手段に応じて標識剤で標識されていてもよい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、Alexa、ローダミン各種(ローダミン6G、ローダミングリーン、TMR、TAMRA)、Bodipy、Cy3、Cy5、FAM、JOE、ROX、EDANS、フルオレスカミン、フルオレセインイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、ペプチドと標識剤との結合にビオチン-アビジンを用いることもできる。
【0035】
標識剤の導入方法は、標識剤に応じて公知の方法により行うことができる。本発明の検出試薬は、検出感度および検出の容易性から、蛍光標識された本発明のペプチドを含有することが好ましい。
【0036】
一実施態様において、本発明のペプチドは固相に固定化された状態で使用され得る。固定化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常、蛋白質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス、金属等が用いられる。
【0037】
本発明の検出用試薬は、(標識された)本発明のペプチドそのものであってもよく、公知の添加剤などを含んだ組成物であってもよい。前記添加剤としては、例えば、アジ化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、水、生理食塩水、緩衝液等の希釈剤、メタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、グリセロール等の有機溶媒などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0038】
試薬中の本発明のペプチドの割合は、所望の検出効果を奏することができる範囲で適宜設定することができるが、通常、0.01〜100重量%であり、好ましくは0.1〜99.9重量%、より好ましくは0.5〜99.5重量%である。
【0039】
本発明はまた、本発明のペプチドを用いたH. ピロリのVacAの検出方法を提供する。当該方法は、
(1) 検体と、本発明のペプチドを含有する上記いずれかの検出用試薬とを接触させる工程、および
(2) 該検体のVacAと、該試薬中の本発明のペプチドとの結合を測定する工程
を含む。
【0040】
本発明のVacAの検出方法が適用され得る検体としては、検出対象であるVacAを産生するH. ピロリへの感染や汚染が疑われる哺乳類(例えば、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、イノシシ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、モルモットなど、特にヒト)、鳥類(ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥、カモ、キジなど)、無脊椎動物(カイコ、ハチ、アリ、クワガタ、カブトムシなどの昆虫類、エビ、カニなどの甲殻類)、植物(桑、小豆、ソラマメ、トマト、ナス、キュウリ、メロン、タバコ、菊、ユリ、バラなど)の生体由来の試料、例えば、血液、血清、血漿、唾液、脳脊髄液、尿、便、糞、リンパ液、涙液、および各種臓器など、並びに食品(卵、牛乳、大豆、小麦、米などの穀類、魚介類、あるいはそれらの加工食品など)、河川、土壌などの環境由来の試料が例示される。特に、ヒトなどの哺乳類由来の生体試料としては、胃由来の試料が好ましく、胃液、胃粘膜、胃の生検試料などが好適に例示される。
【0041】
検体と本発明の検出用試薬との接触は、例えば、本発明のペプチドとVacAとが溶解可能な溶媒中で、約0〜60℃程度の温度で数分〜1日程度混合させることにより実施される。前記混合には、機械的に混合する手段の他、静置させる手段も含まれる。本発明のペプチドが固相に固定化された形態で提供される場合、検体との接触は、検体をVacAが溶解可能な溶媒と混合し(検体が液体であればそのまま)、固相の形状に応じて、該固相中に該混合液を添加(もしくは固相上に滴下)したり、あるいは該混合液中に固相を添加することにより実施される。調製された試料溶液や固相は、下記計測工程に供される。
【0042】
試料溶液中もしくは固相上のVacAと該ペプチドとの結合を検出する手段は、用いる検出用試薬(標識剤の種類など)に対応するものであり、公知の方法により行うことができる。例えば、同位体標識された検出試薬を用いた場合、同位体に応じた放射線の検出装置を用いて信号を計測することができる。酵素標識された検出試薬を用いる場合、該酵素の基質を添加し、酵素反応を進行させることにより発せられる信号を計測することができる。蛍光標識された検出試薬を用いる場合、当該蛍光標識に応じた励起光を照射して蛍光検出器等により蛍光の強度を計測することができる。
【0043】
固相化された本発明のペプチドを用いる場合、該固相に検体と標識したVacAとを接触させ、液相を除去した後、固相に結合した標識量を測定することにより、検体中のVacAを測定することができる。あるいは、VacAを固相に固定化しておき、これに検体と標識した本発明のペプチドとを接触させ、液相を除去した後、固相に結合した標識量を測定することにより、検体中のVacAを測定することもできる。また、標識剤を使用しない方法として、本発明のペプチドを固定化したセンサーチップ表面に検体を接触させ、VacAと本発明のペプチドとの結合の結果生じる微量な質量変化を検出する表面プラズモン共鳴を利用した方法が挙げられる。
【0044】
本発明においては、検出の感度を上げるため、あるいは計測工程を容易にするためなどを目的として、検体がH. ピロリの菌体をも含んでいる場合、あらかじめ当該菌体の一部または全部を物理的または化学的に破砕する処理を施こすことが好ましい。このような処理としては、試料の凍結融解、試料の超音波処理、試料中に界面活性剤等を添加する菌体の溶菌、酸やアルカリによる処理、加熱処理などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
また、本発明においては、検出の感度を上げるため、あるいは計測工程を容易にするためなどを目的として、検体中のVacAの抽出または精製およびその両方のための前処理工程をさらに含むことが好ましい。このような前処理工程としては、通常の溶液中のタンパク質の抽出および精製方法が限定なく用いられうる。例えば、前記菌体の破砕工程の後に、破砕液を遠心分離、硫安沈殿、透析等の処理を行う方法があげられるが、これらに限定されるものではない。VacA濃度が300nM以上に濃縮すれば、実施例4に示されるとおり、本発明のペプチドによりVacAの凝集体形成が促進されるので、共焦点様光学系を利用した蛍光相関分光(FCS)法による蛍光変動測定の感度を向上させることができる。
【0046】
前記計測工程により得られた信号を、VacAを含まない試料における信号と比較し、場合によっては一定の濃度のVacAを含む試料における信号と対比させることにより、検体中に含まれるVacAを定性的または定量的に検出することができる。
【0047】
本発明においては、検出の容易性および感度の観点から、蛍光標識した本発明のペプチドを用いることが好ましい。この場合、本発明の検出方法は、
(1) 検体と蛍光標識した本発明のペプチドとを混合して試料溶液を調製する工程、および
(2) 蛍光検出系を用いて前記試料溶液の蛍光信号全体の強さ、蛍光信号の時間経過による変化または蛍光偏光の度合いを計測する工程
を含む。
【0048】
本発明において、好適な蛍光検出系としては、蛍光偏光法による検出系、蛍光相関分光(FCS)法による検出系などがあげられる。蛍光偏光法とは、溶液中に偏光した励起光を照射して、分子の回転による偏光の解消を調べることにより、蛍光物質の分子サイズの変化を測定する方法である(Kakehi, K., Oda, Y., and Kinoshita, M. Anal. Biochem., 2001, 297, 2 , p.111-116)。FCS法とは、微小空間中の分子の動きを蛍光強度の経時的ゆらぎの程度を調べることにより、蛍光物質の分子サイズの変化を測定する方法である(Eigen, M. and Rigler, R. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994, 91, p.5740-5747)。
【0049】
前記蛍光検出系において、蛍光信号全体の強さ、蛍光信号の時間経過による変化または蛍光偏光の度合いを定性的または定量的に計測することができる。例えば、蛍光偏光法の場合、蛍光検出試薬に結合する分子の質量に応じて偏光の解消度が異なることから、VacAの定量のみならず、結合した分子量の相違も検出することができる。
【0050】
前記計測工程により得られた信号を、VacAを含まない試料における信号と比較し、場合によっては一定の濃度のVacAを含む試料における信号と対比させることにより、検体中に含まれるVacAを定性的または定量的に検出することができる。
【0051】
特に好ましい実施態様においては、FCS法を用いてVacAの検出が行われる。即ち、本発明は、
(1) 検体と、蛍光標識された本発明のペプチドとを混合して試料溶液を調製する工程、および
(2) 共焦点様光学系を用いて該試料溶液の蛍光信号の時間経過を計測する工程
を含む方法を提供する。
【0052】
蛍光標識に用いる蛍光物質としては、蛍光強度が強く安定したものが好ましい。蛍光物質の蛍光波長としては350〜800nm程度が例示されるが、使用する共焦点様光学系で検出可能な波長であればこれに限定されない。蛍光標識試薬の分子量も特に規定されないが、20000以下が好ましく、より好ましくは120〜2000である。具体的な蛍光物質として、上記と同様の蛍光物質が好ましく使用できる。
本発明のペプチドは、VacAの検出に十分な蛍光シグナルを与える限り、すべての分子が蛍光標識されている必要はなく、一部のみが標識されていてもよい。
【0053】
本発明のペプチドの試料溶液中での濃度は、VacAの検出に十分な蛍光シグナルを与える限り特に制限されないが、例えば100nM以上、より好ましくは300nM以上である。濃度の上限も特に制限されないが、例えば1mM以下、好ましくは500μM以下である。調製された試料溶液は、下記計測工程に供される。
【0054】
本発明で使用する共焦点様光学系は、共焦点光学系そのものの他、共焦点光学系と同様に微小な空間に蛍光性物質を計測するに十分な励起光を照射し得る光学系、すなわち微小空間照射系、微小域照射系と呼べる光学系を含む。例えば、数μmの微小な幅で照射が可能なレーザシステムなども、本発明の共焦点様光学系に含まれる。
【0055】
本発明で使用する共焦点様光学系は、共焦点領域または励起光の照射される領域が、10-16〜10-10リットル程度、好ましくは10-16〜10-13リットル程度の微小空間である光学系が好ましい。
【0056】
本発明の検出方法で使用し得る共焦点様光学系は、従来より顕微鏡(共焦点顕微鏡)に用いられている技術であり、FCS法などに応用されている。FCSは、蛍光分子を励起するレーザ部、共焦点様光学系、蛍光検出部、演算と解析を行うデジタル相関器の4つの部分を有する。共焦点様光学系として、共焦点(レーザ)顕微鏡が使用できるが、レーザをスキャンする機能は必ずしも必要ではなく、溶液中の1点(例えばサブフェムトリットル領域)の蛍光強度を計測できればよい。共焦点(レーザ)顕微鏡に用いられる対物レンズの倍率としては10〜100倍程度が好ましい。
【0057】
本発明の検出方法において、共焦点様光学系による測定は、例えば、以下の手順(i)〜(v)で行うことができる。
(i) レーザ光を対物レンズでフェムトリットル以下の領域まで焦点を絞る。
(ii) 分子がレーザの焦点領域を通過するミリ秒以下の時間内に、数百〜数千個のフォトンが発生する。
(iii) 試料溶液中のVacAと蛍光標識した本発明のペプチドとを結合させ、VacAを蛍光標識する。こうすることにより分子サイズが大きくなるために、溶液中の移動速度が遅くなる。本発明のペプチドはVacAの凝集体形成を促進するので、より分子サイズが大きくなり、検出感度の向上が期待できる。
(iv) 蛍光標識されたVacAの共焦点領域における蛍光信号の時間変化を、検出器にて測定する。
測定時間は特に制限されないが、例えば、30〜3600秒の範囲で適宜選択することできる。測定結果は、例えば、VacAを含有しない対照試料を用いて同様に測定を行った場合に得られる蛍光シグナル強度に基づいて適当な閾値を決定し、当該閾値を超えたシグナル強度を与えた数(シグナル数)あるいは当該閾値を超えたシグナル強度の総和(シグナル強度積算値)を計測・算出することにより、VacAの有無を容易に判定することができる。
【0058】
検体が、ヒトなどの哺乳類由来の生体試料、好ましくは胃由来の試料(例:胃液、胃粘膜、胃の生検試料など)である場合、本発明の検出方法によりVacAが検出された検体提供者は、病原性を有するH. ピロリを保菌しており、当該細菌の感染に起因する疾患、特にVacAが病原性の発現に関与している疾患、例えば胃炎や胃潰瘍を発症しているか、将来発症するリスクが高いと診断することができ、発症前または発症後において、除菌または症状の低減を目的とした薬物の投与を的確に受けることができる。一方、従来法でH. ピロリへの感染が確認されているが、本発明の検出方法では閾値を超える蛍光シグナルが検出されない場合には、病原性の低いH. ピロリを保菌しているので、耐性菌の出現や医療経済の逼迫を防ぐため、抗生剤投与等の積極的な予防措置は必要ないと判断することができる。
【0059】
上記式(I)で表されるアミノ酸配列、好ましくは、式(III)もしくは配列番号1〜4:
Gly-Arg-Val-Asn-Gln-Arg-Leu(配列番号1)
Gly-Arg-Val-Asn-Gln-Cys-Leu(配列番号2)
Trp-Arg-Val-Thr-Gln-Arg-Pro(配列番号3)
Gly-Arg-Tyr-Asn-Gln-Val-Thr-Leu(配列番号4)のいずれかで表されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含むペプチド、あるいは該ペプチドのN末端及びC末端にそれぞれCysを含む1〜3個のアミノ酸が付加され、該Cys間のジスルフィド結合により環状化したペプチドは、VacAに対して特異的親和性を有し、これに吸着することで、VacAの宿主細胞への作用を中和することができる。従って、本発明はまた、これらのペプチドを含有してなる、H. ピロリのVacAの中和害剤を提供する。VacAは宿主細胞に空胞を形成させて細胞を死滅させ、胃炎や胃潰瘍を引き起こすことが知られているので、上記ペプチドはまた、H. ピロリの感染に起因する疾患、特にVacAが主に関与する胃炎や胃潰瘍などの疾患の予防及び/又は治療に用いることができる。
【0060】
本発明のVacAの中和剤の適用対象となる動物は、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物であり、ヒト以外の哺乳動物としてはサル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモットなどがあげられる。
【0061】
本発明のVacAの中和剤は、前記有効成分そのものであってもよく、公知の薬学的に許容される担体などを含んでもよい。前記担体としては、例えば、ショ糖、デンプン、マンニット、ソルビット、乳糖、グルコース、セルロース、タルク、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の賦形剤、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリプロピルピロリドン、ゼラチン、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ショ糖、デンプン等の結合剤、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ナトリウム−グリコール−スターチ、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、エアロジル、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム等の滑剤、クエン酸、メントール、グリシルリシン・アンモニウム塩、グリシン、オレンジ粉等の芳香剤、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン等の保存剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸等の安定剤、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸アルミニウム等の懸濁剤、界面活性剤等の分散剤、水、生理食塩水等の希釈剤、カカオ脂、ポリエチレングリコール、白灯油等のベースワックスなどが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0062】
前記有効成分の含有量は、所望の結合作用を奏することができる範囲で適宜設定することができるが、通常、0.01〜100重量%であり、好ましくは0.1〜99.9重量%、より好ましくは0.5〜99.5重量%である。
【0063】
胃炎や胃潰瘍などの治療または予防に用いる場合の投与量は、疾患の重篤度、適用対象となる動物種、適用対象の薬物受容性、体重、年齢等によって異なり一概に設定することはできないが、通常、1回あたり有効成分量として0.001mg〜10g程度があげられる。投与回数は、1日あたり3回〜1週間あたり1、2回を基本とする。
【0064】
上記のとおり、本発明のペプチドは、H. ピロリのVacAに特異的に吸着するので、前記固相表面に固定化された該ペプチドは、VacAやそれを菌体表面に提示するH. ピロリを吸着除去することができる。従って、本発明はまた、固相化された本発明のペプチドを含有してなる、VacAの吸着除去剤又はH. ピロリの除菌剤を提供する。例えば、樹脂などの不溶性担体に本発明のペプチドを固定化し、該担体を充填したカラムに、VacA又はH. ピロリで汚染されているおそれのある液体を通液することにより、VacA又はH. ピロリ菌体を除去することができる。
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0066】
実施例1 アプタマー候補配列のスクリーニング
ジェナシス株式会社の特許技術(特許4318721号「mRNA−ピューロマイシン−タンパク質連結体作製用リンカー」および特開2008-253176「高親和性分子取得のためのリンカー」)に開示された方法により、図1に示すペプチド配列がVacA結合ペプチド候補として得られた。これらの配列のアライメントから、以下の配列(式(I))がアプタマーとして定義された。
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7 (I)
(式中、X1:疎水性アミノ酸、好ましくはGly;X2:塩基性アミノ酸、好ましくはArg;X3:疎水性アミノ酸、好ましくはValまたはTyr;X4:親水性中性アミノ酸好ましくはAsnまたはThr;X5:親水性中性アミノ酸好ましくはGln;X6:任意のアミノ酸またはジペプチド、好ましくはArgまたはVal-Thr;X7:疎水性アミノ酸好ましくはLeu。)
【0067】
実施例2 ペプチドアプタマーの合成
GRVNQRL(配列番号1;以下、ペプチド1)、IRLYSDSG(配列番号7;以下、ペプチド2)、CGRVNQRLC(配列番号8;以下、ペプチド3)をペプチド合成機 (ABI 433A Peptide Synthesizer) を用いて定法に従い化学合成した。また、文献「ペプチド合成の基礎と実際 泉谷信夫 丸善株式会社」に記載の方法により合成樹脂よりペプチドを遊離させ、30%酢酸1 mlに溶解の後、逆相HPLCにて精製した。ODSカラム (Cosmosil Type 5C18 AR-II4.6 × 150 mm) により分離、220 nmにおいて紫外吸収を測定することで目的とするペプチドを検出した。MALDI-TOF-MS Voyger DE PRO(Applied Biosystems) により分子量を確認した。
塩酸により110℃で20時間かけて加水分解を行った。反応後、日立カスタムイオン交換樹脂 (2622SC-PH) を装着した高速アミノ酸分析計(HITACHI L-8800A形)を使用して組成分析した。
【0068】
実施例3 プチドアプタマーの蛍光標識
実施例2で合成した各ペプチドと1.2等量のBODIPY(登録商標)-FL, succinimidyl ester(Invitrogen社)とをDMF中で混合し、遮光条件下で反応させた。反応終了後、ODSカラム (Cosmosil 5C18-AR-II) を装着した日立製HPLCにより精製した。
(注) BODIPY-FL: 4,4-difluoro-5,7-dimethyl-4-bora-3a,4a-diaza-s-indacene-3-pentanoic acid
【0069】
実験例1 VacAに対する結合力の測定
蛍光標識したアプタマー候補ペプチド(1)GRVNQRL(ペプチド1)、(2)IRLYSDSG(ペプチド2)のVacAに対する結合力をFCS装置により測定した。VacA濃度13 nM、37 nM、111 nM、333 nM、1000 nMに、10 nMのペプチドアプタマーと100 mg/mlのウシ血清アルブミンを加え、37℃、1時間反応させた。その後、蛍光相関分光装置FCS-101B(光源波長473 nm、東洋紡績・浜松ホトニクス社製) により蛍光強度変動の自己相関解析により並進拡散時間を測定した。その自己相関解析の結果を図2に示す。
ペプチド1はVacA濃度の増加に伴い、並進拡散時間が増加した(自己相関曲線が濃度に応じて右に移動した)。これは溶液中の動きが遅くなったためであり、VacAとペプチドアプタマーが結合することを示している。よって、ペプチド1はVacAへの結合力が大きい。一方、ペプチド2はVacAが高濃度に存在するにもかかわらず並進拡散時間がわずかにしか増加しなかった(自己相関曲線が濃度に応じてほとんど右に移動しなかった)。これはペプチド2とVacAが結合力が小さいことを示している。
ペプチド1を環状化したアプタマー候補ペプチド(3)CGRVNQRLC(両端のCは分子内ジスルフィド結合を形成;ペプチド3)も同様にVacA濃度の増加に伴い、並進拡散時間が増加した。その増加はペプチド1よりも低濃度のVacAで、大きな並進拡散時間を示した。この結果は、ペプチド1を環状化した場合、環状化しなかった場合と比較してさらに大きな結合力でVacAと結合することを示している。
これらの結果をアプタマー候補ペプチド(1)GRVNQRL(ペプチド1)、(2)IRLYSDSG(ペプチド2)、(3)CGRVNQRLC(ペプチド3)、(4)IDCGSCPI(配列番号9)、(5)SSTWRTLL(配列番号10)について図3に比較した。個々の自己相関曲線から得られた並進拡散時間の変化を左図、個々の自己相関曲線を2成分解析することにより得られた高分子量成分の比率(結合率)の変化を右図に示した。この結果からも、ペプチド1およびこれを環状化させたペプチド3の結合が著しいことがわかった。
【0070】
実験例2 ペプチドアプタマーによるVacA凝集体形成の促進
0〜1000 nMのVacA溶液に、1%モル量を蛍光標識した1 μMのアプタマー候補ペプチド1または2、および100 μg/mlのウシ血清アルブミンを加えて混合し、遮光条件下で37℃、1時間反応させた。反応後、波長473 nmレーザーを光源とするFCS分析装置101-B (TOYOBO) で並進拡散時間の測定を行った結果を図4に示す。自己相関解析(図4上)の結果、ペプチド1では、VacA濃度の増加に伴い並進拡散時間が増加した(図4下、左図)。VacAの凝集体が形成されていると考えられる。一方、結合力の弱いアプタマー候補ペプチド2では凝集体は形成されなかった(図4下、右図)。
【0071】
実験例3 表面プラズモン共鳴(SPR)測定装置を用いたペプチドアプタマーによるVacAの検出
SPR装置用センサーチップ上にピランハ溶液 (過酸化水素水:濃硫酸=30:70) を滴下後、5分間静置し、表面洗浄を行った。MilliQ水でリンス後、N2ガスで表面を乾燥させ、クロロホルムを溶媒とした自己組織化膜(SAM)形成試薬 (11-Hydroxy-1-undecanthiol : HS-(CH2)11-NHCO-Biotin = 9 : 1、アルテック株式会社より入手) に24時間浸漬した。SAM形成後、クロロホルムで洗浄し、 N2ガスで乾燥させた。次に、400 mg/mlのストレプトアビジンを添加し、洗浄後、ビオチン修飾したペプチドアプタマー (アミノ酸配列:GRVNQRL (配列番号1)、終濃度200 mM) を添加することでセンサーチップ表面に該ペプチドアプタマーを固定化した。ビオチン修飾したペプチドの調製には、実施例2で合成した配列GRVNQRLと等量のBiotin-AC5-OSu(同仁化学株式会社より入手)とをDMF中で混合し、30℃で18時間反応させた。反応終了後、ODSカラム (Cosmosil 5C18-AR-II) を装着した日立製HPLCにより精製した。
そこにVacAを含む溶液 (終濃度1 mM)、VacAを含まない溶液をそれぞれ添加し、センサーグラムの変化を測定した。その結果、VacAを含む混合溶液は、添加後、センサーグラムが大きく上昇した。これはセンサーチップ表面において質量変化が起こったためであり、ペプチドアプタマーにVacAが吸着していることを示している。一方で、VacAを含まない溶液ではほとんど変化がみられなかった。以上の結果から、ペプチドアプタマー(アミノ酸配列:GRVNQRL)は、SPR測定装置を用いたセンサーとして、VacAの検出に利用できることがわかった。
【0072】
実験例4 蛍光標識ペプチドアプタマーと共焦点光学系を利用した蛍光相関分光(FCS)法によるVacAの検出
実験例2に示す反応条件で、蛍光標識したペプチド1又はペプチド2と種々の濃度のVacAとを反応させ、実験例1に示すFCS法での測定条件において蛍光の変動値を計測した。特開2008-116440に開示された方法で、データ解析した結果を図6に示す。ペプチド1ではVacA濃度13 nM以上より凝集体特有の蛍光強度変動が観察され、そのバックグラウンド値を差し引いた蛍光強度積算値は、VacA濃度に応じて上昇することが示された(図6A)。一方、ペプチド2では、蛍光強度積算値は顕著に変化しなかった(図6B)。このことから、VacAに対して強い結合力を有するペプチドアプタマーは、VacAの凝集を促進する効果があり、微小領域に存在にする蛍光分子の蛍光強度の時間変化を計測するFCS法に利用すると、VacAの高感度な検出用試薬として有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のペプチドは、H. ピロリのVacAに特異的に結合するので、VacAの検出試薬、即ち、病原性H. ピロリの検出試薬として有用である。また、該ペプチドはVacAの凝集体形成を促進するので、FCS法などによるVacAの検出において感度向上が期待される。さらに、本発明のペプチドは、VacAに結合することにより凝集を促進するので、H. ピロリの感染に起因する胃炎や胃潰瘍などの疾患の予防及び/又は治療にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7
(式中、X1は疎水性アミノ酸、X2は塩基性アミノ酸、X3は疎水性アミノ酸、X4は親水性中性アミノ酸、X5は親水性中性アミノ酸、X6は任意のアミノ酸もしくはジペプチド、X7は疎水性アミノ酸をそれぞれ示す)
で示されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含むペプチドであって、H. ピロリのVacAに対して特異的親和性を有するペプチド。
【請求項2】
X1がGlyもしくはTrp、X2がArg、X3がValもしくはTyr、X4がAsnもしくはThr、X5がGln、X6がArg、CysもしくはVal-Thr、及びX7がLeuもしくはProである、請求項1記載のペプチド。
【請求項3】
X1がGly、X6がArgもしくはVal-Thr、及びX7がLeuである、請求項2記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号1〜4:
Gly-Arg-Val-Asn-Gln-Arg-Leu(配列番号1)
Gly-Arg-Val-Asn-Gln-Cys-Leu(配列番号2)
Trp-Arg-Val-Thr-Gln-Arg-Pro(配列番号3)
Gly-Arg-Tyr-Asn-Gln-Val-Thr-Leu(配列番号4)
のいずれかで表されるアミノ酸配列又はその逆鎖を含む、請求項2記載のペプチド。
【請求項5】
N末端及びC末端にそれぞれCysを含む1〜3個のアミノ酸が付加され、該Cys間のジスルフィド結合により環状化した、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドを含有してなる、H. ピロリのVacA検出試薬。
【請求項7】
該ペプチドが標識されている、請求項6記載の試薬。
【請求項8】
固相表面に固定化されている請求項6記載の試薬。
【請求項9】
固相がセンサーチップである、請求項8記載の試薬。
【請求項10】
検体中のH. ピロリのVacAを検出する方法であって、
(1) 検体と、請求項6〜9のいずれか1項に記載の試薬とを接触させる工程、および
(2) 該検体中のVacAと、該試薬中のペプチドとの結合を測定する工程
を含む方法。
【請求項11】
(1) 検体と、請求項9記載の試薬とを接触させる工程、および
(2) 該検体中のVacAと該試薬中のペプチドとの結合を表面プラズモン共鳴により測定する工程
を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
検体中のH. ピロリのVacAを検出する方法であって、
(1) 検体と、蛍光標識された請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドとを混合して試料溶液を調製する工程、および
(2) 共焦点様光学系を用いて該試料溶液の蛍光信号の時間経過を計測する工程
を含む方法。
【請求項13】
検体が除菌処理されたものである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチドを含有してなる、H. ピロリのVacAの中和剤。
【請求項15】
H. ピロリ感染に起因する疾患の予防及び/又は治療用である、請求項14記載の剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−242304(P2012−242304A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114225(P2011−114225)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(503303466)学校法人関西文理総合学園 (26)
【出願人】(504205521)国立大学法人 長崎大学 (226)
【出願人】(300090846)株式会社ライフテック (13)
【Fターム(参考)】