説明

ピロリ菌の抑制剤または静菌剤

【課題】ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter・Pylori)の増加を
抑制する、人体に安全なピロリ菌の抑制剤または静菌剤を提供すること。
【解決手段】複数の糖が化学結合した多糖類であり、その構造中に少なくとも1つのβ結合を有する水溶性糖類を含有するピロリ菌の抑制剤または静菌剤であり、前記多糖類は構成糖として少なくとも1つのグルコース及び/またはキシロースを含み、β1−4結合がβ1−4グルコシド結合及び/またはβ1−4キシロシド結合であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、医薬品分野において、ピロリ菌抑制剤または静菌剤を提供するもので
あり、さらに詳しくは、特定の糖組成のセロオリゴ糖及び/またはキシロオリゴ糖を有効成分とする含有する組成物からなり、これを経口摂取することで、有害菌である、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter・Pylori)の増加を抑制するピロリ菌の抑制剤または静菌剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セロオリゴ糖は、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオー
ス、セロヘキサオースの総称であり、グルコピラノース単位1〜6個が、β1−4結合
した多糖類であり、ヒトの消化管では、ほとんど分解されない。
【0003】
また、キシロオリゴ糖は、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース、キシロヘキサオース、及びキシロヘプタオースの総称であり、キシロース単位1〜7個が、β1−4結合した多糖類であり、セロオリゴ糖と同様にヒトの消化管では、ほとんど分解されない。
【0004】
セロオリゴ糖及びキシロオリゴ糖は、低カロリー甘味料として有用であるのに加え、一般食品、機能性食品、化粧品、医薬品およびその添加剤、その他化学変換原料、発酵原料としても有用である。
また、近年、セロオリゴ糖は、他のオリゴ糖と同様に、その生理機能が明らかになりつつあり、機能性食品の新素材としても期待されている(非特許文献1)。
【0005】
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ、またはHelicobacter・Pylori)は、グラム陰性の微好気性の桿菌である。ピロリ菌は、それが有するウレアーゼ活性により、尿素からアンモニアを生成することで、胃酸を中和して胃内の強酸性環境で生息していると考えられている。このピロリ菌により生成したアンモニアが、胃粘膜に障害を与え、胃炎、潰瘍、胃ガン、リンパ腫等の胃疾患と関連することが明らかとなっており、ピロリ菌の抑制、静菌が、これらの疾患に対する有効な予防または改善策として認知されている。
【0006】
従来のピロリ菌の抑制方法としては、抗生物質の投与が試みられてきた。この方法は、確かに、ピロリ菌の抑制効果はある。しかしながら、抗生物質の抑制作用が、ピロリ菌のみならず、人体に有用な腸内細菌にも影響する問題があった。また、副作用として下痢を生じるなど、少なからず人体に影響を及ぼす問題もあった。従って、人体に安全、かつピロリ菌に選択的に作用する抑制剤が求められてきた。
【0007】
従来技術として、糖類を有効成分とするピロリ菌の予防剤としては、以下のものがある。
特許文献1には、フコイダンを有効成分とする抗腫瘍剤が開示されている。該文献の抗腫瘍剤は、フコイダンによる、ピロリ菌の胃壁への定着阻害を利用したものでありピロリ菌の感染予防には効果があるが、ピロリ菌を直接抑制するというものではない。
また、経口摂取することで、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter・Pylori)の増加を抑制する、人体に安全なピロリ菌の抑制剤または静菌剤は従来知られていなかった。
【0008】
【非特許文献1】Cellulose Communications,5,No 2,91-97(1998)
【特許文献1】特開平7−138166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter・Pylori)の増加を抑制する、人体に安全なピロリ菌の抑制剤または静菌剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の、糖組成のセロオリゴ糖及び/またはキシロオリゴ糖を有効成分として含有する組成物が、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter・Pylori)の増加を抑制することを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0011】
(1)複数の糖が化学結合した多糖類であり、その構造中に少なくとも1つのβ結合を有する水溶性糖類を含有するピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
(2)前記β結合がβ1−4結合であることを特徴とする請求項1記載のピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
(3)前記多糖類が構成糖として少なくとも1つのグルコース及び/またはキシロースを含み、β1−4結合がβ1−4グルコシド結合及び/またはβ1−4キシロシド結合であることを特徴とする請求項1又は2記載のピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
(4)セロビオース含量が50質量%以上であり、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース及びセロヘキサオースよりなる群から選ばれる1種以上の含量が0〜50質量%であり、グルコース含量が30質量%以下であるセロオリゴ糖を有効成分として含有する請求項1〜3のいずれかに記載のピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
(5)キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース、キシロヘキサオース、キシロヘプタオース及び7を超える重合度を有する水溶性のキシランよりなる群から選ばれる1種以上の含量が30質量%以上であり、キシロース含量が70質量%以下であるキシロオリゴ糖を有効成分として含有する請求項1〜3のいずれかに記載のピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
(6)請求項1〜5のいずれかに記載の抑制剤又は静菌剤と食品素材又は医薬品薬効成分とを水または水/有機溶剤の混合液中に分散又は溶解してなり、抑制剤又は静菌剤の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする水性組成物。
(7)更に、界面活性剤、増粘剤及びゲル化剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項6記載の水性組成物。
(8)水溶液、水分散体、ペースト状及びゲル状のうちのいずれかの状態であることを特徴と
する請求項6または7記載の水性組成物。
(9)請求項1〜5のいずれかに記載の抑制剤または静菌剤と、食品素材、医薬品薬効成分、食品添加物及び医薬品添加物から選ばれる少なくとも1種とを含み、抑制剤又は静菌剤の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする固形組成物。
(10)粉末、顆粒及び成型体のうちのいずれかの形状であることを特徴とする請求項9に記載の固形組成物。
(11)表面にコーティングが施されていることを特徴とする請求項10に記載の固形組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセロオリゴ糖組成物及びキシロオリゴ糖組成物は、ヘリコバクター・ピロリ(Helcobacter・Pylori)の増加を抑制または静菌する効果を奏する。
本発明のセロオリゴ糖組成物及びキシロオリゴ糖組成物は胃壁への定着に関わらず、ピロリ菌を直接抑制するため、予防に加えて、改善効果もあり、従来の予防剤と全く異なるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明について、特にその好ましい態様を中心に、以下具体的に説明する。
本発明のピロリ菌の抑制剤または静菌剤は、複数の糖がβ結合した水溶性糖類を含有する必要がある。
上述の糖としては、グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース等の公知のヘキソースまたはその異性体、誘導体、キシロース、アラビノース等のペントースまたはその異性体、誘導体、エリトロース、トレオース等のテトロースまたはその異性体、誘導体が挙げられる。
【0014】
本発明の複数の糖がβ結合した水溶性糖類で、公知のものとしては、例えば、複数のグルコースがβ結合したセロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオース等のセロオリゴ糖類またはゲンチオオリゴ糖類、複数のグルコースおよび/又はガラクトースがβ結合したガラクトオリゴ糖類、複数のキシロースがβ結合したキシロオリゴ糖類、グルコース誘導体であるN−アセチルグルコサミンが複数β結合したキチンオリゴ糖類、グルコース誘導体であるN−グルコサミンが複数β結合したキトサンオリゴ糖類等が挙げられる。また、ガラクトースとグルコースがβ結合したラクトースのように、多糖類を構成する糖が単一でなくてもよく、さらに、多糖類構造中に1つ以上のβ結合を有していれば、その他の結合はβ結合以外でもよい。
【0015】
但し、複数の糖がβ結合したものであり、本発明の効果が得られるものについては、上記の公知の水溶性糖類以外に、新規に発見または合成されたものも本発明の水溶性糖類に含まれる。また、本発明のβ結合には、β1−4結合、β1−6結合、β1−3結合が含まれる。
【0016】
上記の複数の糖がβ結合した水溶性糖類の中でも、最も本発明の効果が発揮される態様としては、複数のグルコースがβ1−4グルコシド結合した水溶性糖類、及び複数のキシロースがβ1−4キシロシド結合した水溶性多糖類が、適している。
複数のグルコースがβ1−4グルコシド結合した水溶性糖類、複数のキシロースがβ1−4キシロシド結合したとしては、食品・医薬品分野の組成物として容易に溶解し、また有害菌類の中に取り込みやすい分子量を持つという観点から、オリゴ糖類が好ましく、さらには二糖類であるセロビオース、キシロビオースが好ましい。
【0017】
以下では、本発明で用いる好ましい多糖類の一つであるセロオリゴ糖について詳述する。
本発明のセロオリゴ糖は、セロビオースを50質量%以上含むことが好ましい。セロビオースは、水性媒体中で、ピロリ菌の増殖を抑制する効果がある。従って、セロビオース含量が高いほど、ピロリ菌の増殖が抑制されるため好ましい。好ましい含有量としては、70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、95質量%以上が好ましい。
【0018】
本発明のセロオリゴ糖は、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオースから選ばれる1種以上を50質量%以下含むことができる。これらの糖類も、セロビオースと同様に、ピロリ菌の増殖抑制効果がある。しかしながら、グルコース残基が増えるとともに、水性媒体への溶解度が低くなるため、セロオリゴ糖として、本発明の効果を得るには、これらの含量は上述の範囲を満たす必要がある。好ましい含量範囲としては30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは、0.5〜5質量%である。
【0019】
本発明のセロオリゴ糖は、グルコース含量が30質量%以下である。グルコースは、ピロリ菌に対して、炭素源として作用し、少なからずその生育及び増加に寄与するため、多量に含有すると、セロオリゴ糖のピロリ菌の抑制効果が小さくなる。従って、グルコース含量は上述の範囲を満たす必要がある。グルコース含量は、小さいほどピロリ菌の抑制効果が促進され、好ましい範囲としては20質量%以下であり、より好ましい範囲としては10質量%以下であり、特に好ましくは、5質量%以下である。下限は特に設定されないが、簡便な操作で得られる範囲としては、0.1質量%以上である。
【0020】
次に、本発明で用いる好ましい多糖類の一つであるキシロオリゴ糖について詳述する。
本発明のキシロオリゴ糖は、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース、キシロヘキサオース、キシロヘプタオース及び7を超える重合度を有する水溶性キシランから選ばれる1種以上を30質量%以上含むことができる。これらの糖類も、セロビオースと同様に、ピロリ菌の増殖抑制効果がある。好ましい含量範囲としては40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。
【0021】
本発明のキシロオリゴ糖は、キシロース含量が70質量%以下であることが好ましい。キシロースは、ピロリ菌に対して、炭素源として作用し、少なからずその生育及び増加に寄与するため、多量に含有すると、キシロオリゴ糖のピロリ菌の抑制効果が小さくなる。従って、キシロース含量は上述の範囲を満たす必要がある。キシロース含量は、小さいほどピロリ菌の抑制効果が促進され、好ましい範囲としては50質量%以下であり、より好ましい範囲としては40質量%以下であり、特に好ましくは、30質量%以下である。下限は特に設定されないが、簡便な操作で得られる範囲としては、10質量%以上である。
【0022】
本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖により増殖抑制されるピロリ菌とは、ヘリコバクター・ピロリとして分類されるものが該当し、例えば、Helicobacter・Pylori ATCC 43504株、43526株等の保存菌株、および臨床分離株が含まれる。
【0023】
本発明のセロオリゴ糖のヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter・Pylori)の増加抑制率は1%以上であることが好ましい。ここでいう増加抑制率とは、ピロリ菌を、セロオリゴ糖及び/またはキシロオリゴ糖を含有する被検液を添加した状態で培養した際の生菌数を(生菌数1)とし、セロオリゴ糖及び/またはキシロオリゴ糖を無添加の状態で培養した際の生菌数を(生菌数2)とした場合に下記の式で表されるものである。
増加抑制率(%)=[(生菌数2−生菌数1)/生菌数2]×100
この増加抑制率が、高いほど、ピロリ菌の抑制または静菌効果が大きくなるため、好ましい範囲としては10%以上であり、40%以上がより好ましく、50%以上が特に好ましい。
【0024】
本発明でいうヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter・Pylori)の生菌数は、以下の方法で測定できる。試験菌株(Helicobacter・Pylori ATCC 43504)を羊血液寒天培地K(BBL)を用いて、35℃、3日間微好気培養後、滅菌生理食塩液でMcFarland No.2(約10〜10CFU/mL)となるよう調製する。これを滅菌生理食塩液で100倍希釈し、添加用菌液とする。水で1/10に希釈したブルセラブロス(栄研化学)に5%のウマ血清を加えたものをセロオリゴ糖及び/またはキシロオリゴ糖無添加の被検液とし、これに所定濃度のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖を添加したものをセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖添加被検液とする。各被検液9mLに添加用菌液を1mL加え、35℃、微好気条件下で振盪培養し、これを検液とする。培養48時間後に各検液を採取し、滅菌生理食塩液で10倍希釈系列液を作製する。原液および各希釈系列液を50μLずつ羊血液寒天培地Kにコンラージ塗抹し、微好気条件下で35℃、4〜5日間培養する。なお、0時間後は被検液のみ定量を実施する。培養後発育した菌数を計測し、1mL当たりの生菌数を求める。
【0025】
以下に、本発明におけるセロオリゴ糖、グルコース含量、キシロオリゴ糖、キシロース含量の分析法を記す。本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖は、純水に1質量%濃度で溶解させた後、高速液体クロマトグラフィー(クロマトグラフィーシステム:島津製作所(株)製 商品名 SCL−10A、カラム:島津製作所製 商品名 Asahipak NHP−50、移動相:アセトニトリル/水=75/25(容積比))で分析できる。セロオリゴ糖の糖組成は、上述の方法で得られたクロマトグラムにおけるセロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、セロヘキサオース、グルコースのピーク面積を質量換算し、総質量に占めるそれぞれの質量百分率で表される。
【0026】
また、キシロオリゴ糖の糖組成は、上述の方法で得られたクロマトグラムにおけるキシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース、キシロヘキサオース、キシロヘプタオース、7を超える重合度を有する水溶性キシラン、又はキシロースのピーク面積を質量換算し、総質量に占めるそれぞれの質量百分率で表される。
【0027】
次に、本発明のセロオリゴ糖の製造方法について説明する。
本発明のセロオリゴ糖の起源には、特に制限はなく、セルロース系物質の加水分解で製造されたもの、グルコース等の単糖類またはその誘導体を縮合または糖転移させて製造されたものでもよいが、酵素分解法で得られたものが、安全性の点で好ましい。
【0028】
酵素分解に使用するセルロース系物質としては、植物性でも、動物性でもよく、例えば、木材、竹、コットン、ラミー、ホヤ、バガス、ケナフ、麦、稲、バクテリアセルロース等の含有する天然物由来の繊維質物質、またそれらを一旦溶剤に溶解させ再生させた再生セルロースでも、それらの化学処理を施しセルロース誘導体としたものでもよく、上記のうち、1種または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解または化学処理を経ない、天然セルロース系物質を用いると、得られたセロオリゴ糖に人体に有害な溶剤または化学物質が含まれないため好ましい。また、セルロース系物質は精製パルプの状態で使用することが好ましく、パルプの精製方法には特に制限はなく、サルファイトパルプ、クラフトパルプ、NBKPパルプ等のいずれのパルプを使用してもよい。
【0029】
また、セルロース系物質を酵素分解する場合には、使用するセルロース系物質としては、一旦加水分解し、平均重合度を700以下に部分加水分解したセルロース系物質を用いると、セロオリゴ糖の収率を向上させる上で好ましい。さらに、該特定の重合度を有するセルロース系物質は、平均粒子径を100μm以下、コロイド状セルロース成分含有量を10質量%以上に制御したものを用いることが、酵素分解速度の向上、セロオリゴ糖選択率が向上するため好ましい。
【0030】
本発明では、セルロース系物質の加水分解に用いる酵素をセルラーゼといい、本発明で使用するセルラーゼとは、セルロースを分解する酵素の総称であり、セルロースへの分解活性を有していれば、本発明でいうセルラーゼに含まれる。セルラーゼ酵素源としては、例えば、セルラーゼ産生生菌体そのもの、セルラーゼ産生菌が分泌する酵素を精製したもの、精製酵素を賦形剤、安定化剤等の添加剤とともに製剤化したもの等が挙げられる。セルラーゼ製剤品の場合、それに添加される添加剤にも特に制限はなく、その剤形は、粉末、顆粒、液体等いずれでもよい。
【0031】
セルラーゼの起源についても、特に制限はないが、例えば、公知のセルラーゼを生産する微生物としては、トリコデルマ(Tricoderma)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ペニシリウム(Penicillium)属、アエロモナス(Aeromonus)属、イルペックス(Irpex)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、フミコーラ(Humicola)属、セロビブリオ(Cellovibrio)属等の「セルラーゼ」(講談社サイエンティフィック発行(1987))、「セルロースの事典」(朝倉書店発行(2000))に記載される菌が生産するセルラーゼを挙げることができるが、セルロースを分解する酵素であれば、上記公知の菌由来の酵素に限らず、新規の菌由来の酵素も、本発明のセルラーゼに含まれる。
【0032】
酵素分解方法は、公知の方法を使用すればよく、特に制限されるものではないが、一例としては、セルロース系物質を水性媒体中に懸濁させ、セルラーゼを添加し、攪拌または振とうしながら、加温して糖化反応を行う方法が挙げられる。
上記方法において、懸濁方法、攪拌方法、セルラーゼ・基質の添加方法・添加順序、それらの濃度等の反応条件は、セロオリゴ糖がより高収率で得られるよう適宜調整されるものである。その際の、反応液のpH及び温度は、酵素が失活しない範囲内であればよく、一般的には、常圧で反応を行う場合、温度は5〜95℃、pHは1〜11の範囲でよい。また、この圧力、温度、pHについても、上記同様、セロオリゴ糖がより高収率で得られるよう適宜調整されるものである。
【0033】
上述の酵素分解により得られたセロオリゴ糖水溶液は、必要に応じて、脱色、脱塩、酵素除去等の精製処理を施すことができる。精製方法は、公知の方法であれば特に制限されないが、例えば、活性炭処理、イオン交換樹脂処理、クロマトグラフィー処理、精密ろ過、限外ろ過、逆浸透ろ過等の濾過処理、晶析処理等を使用してもよく、これらを単独で使用しても、2種以上を組み合わせてもよい。
セロオリゴ糖の精製方法の中でも、晶析処理は、セロオリゴ糖の組成を制御しやすいため好ましい。
【0034】
以下に本発明のキシロオリゴ糖の製造方法について、説明する。本発明のキシロオリゴ糖は、植物細胞壁の構成成分であるキシランを酵素分解することにより得られる。また、本発明の糖組成を有していれば、市販の食品用のキシロオリゴ糖(サントリー製 キシロオリゴ35、キシロオリゴ70、キシロオリゴ90、キシロオリゴ95P等)等を用いてもよい。
【0035】
以下に、酵素分解法によるキシロオリゴ糖の製造方法の一例を示す。本発明のキシロオリゴ糖の原料は、植物性原料を使用する必要がある。ここでいう植物性原料とは、植物由来のものであり、植物を構成する成分を含むものである。
原料に含まれる植物を構成する成分とは、例えば、セルロース、ヘミセルロース等の多糖類、またはキシロース、グルコース、アラビノース、マンノース、ガラクトース等から構成されるオリゴ糖類、または単糖類のことである。上記の植物性原料のなかでも、特にキシロオリゴ糖を高収率で得るためには、綿実、バガスまたはトウモロコシを使用することが好ましい。ここでいう、綿実とは、アオイ属ワタ科に属する多年草の種子のことであり、本発明の目的を達成できれば、用いる原料には、綿、綿花、花弁、リンター、油分等を含んでもよい。綿実のなかでも綿実殻にキシロオリゴ糖含有多糖類の原料となるヘミセルロース含量の高いため、原料として綿実殻を用いることが好ましい。
【0036】
また、本発明のバガスとは、さとうきび構成成分のなかで、砂糖以外の成分の総称であり、工業的には砂糖を採取した搾り粕のことであり、本発明の目的を達成できれば、用いる原料には、外皮、ピス、砂糖等を含んでもよい。本発明のトウモロコシはその品種、産地、部位などに特に制限はないが、ヘミセルロースの含量が多い芯や外皮を用いることが好ましい。
【0037】
本発明のキシロオリゴ糖は、植物性原料を希アルカリ媒体中で洗浄し、不純物を除去した後にさらにアルカリ性媒体で抽出するか、もしくは特定濃度範囲の希アルカリ処理でキシラナーゼとの反応性を上げ、該残渣を必要に応じてアルカリ性過酸化水素及び/又は次亜塩素酸ナトリウム処理して、脱色及び更にキシラナーゼとの反応性を向上させる。これらの抽出物および/または処理物にキシラナーゼを作用させて、該組成物に含有する多糖類を加水分解することにより得られる。本発明でいうキシラナーゼとは、キシラン系物質を加水分解する作用を有す酵素の総称であり、キシランの分解活性を有していれば、全て本発明でいうキシラナーゼに含まれる。
【0038】
キシラナーゼ酵素源としては、例えば、キシラナーゼ産生生菌体そのもの、キシラナーゼ産生菌が蓄積または分泌する酵素を精製したもの、精製酵素を賦形剤、安定化剤等の添加剤ともに製剤化したもの等が挙げられる。キシラナーゼ製剤品の場合、それに添加される添加剤にも特に制限はなく、その剤形は、粉末、顆粒、液体等いずれでもよい。
【0039】
キシラナーゼの起源についても、特に制限はないが、例えば、公知のキシラナーゼを生産する微生物としては、Bassiluspolymyxa、Bassilus poumilus、Bassilus subtilis、Cellvibrio fulvus、Clostridium、Rumen bacteria、Streptmyces albogriseolus、Streptmyces xylophagus等の細菌類、Aspergillus niger、Aspergillus olyzae、Cephalosporium sacchari、Ceratocysis paradoxa、Chetomium globosam、Chysosporium lignorum、Coniophora cerebella、Fomes igiarius、Fomesmaruginatus、Gloeophyllum saepiarium、Helminthoisporium、Humicola insolens、Irpex lacteus、Lentites saepiaria、Malbranchea pullchea、Manulius lacrymans、Marulius silvester、Myrothesium verrucaria、Penicillium funuculosum、Penicillium verrufulosom、Penicillium wortimunni、Polyporus betulinus、Shizpphyllum communue、Trametes versicolor、Tricoderma koningii、Tricoderma viride、Tricoderma sp等の菌類等の「セルラーゼ」(講談社サイエンティフィック発行(1987))、「セルロースの事典」(朝倉書店発行(2000))に記載される菌が生産するキシラナーゼを挙げることができるが、キシラナーゼを分解する作用を有すものであれば、上記の公知の菌由来のものに限らず、新規の菌由来の酵素も、本発明のキシラナーゼに含まれる。
【0040】
部分加水分解の方法は、公知の方法を使用すればよく、特に制限されるものではないが、一例としては、基質としてキシラン系物質を水性媒体中に溶解または懸濁させ、キシラナーゼを添加し、攪拌または振とうしながら、加温する方法が挙げられる。
上記方法において、溶解、懸濁、攪拌方法、キシラナーゼ・基質の添加方法・添加順序、それらの濃度等の反応条件は、キシロオリゴ糖の収率が向上するよう適宜調整されるものである。その際の、反応液のpH、温度、及び処理時間は、酵素が失活しない範囲内であればよく、一般的には、常圧で反応を行う場合、温度は5〜95℃、pHは1〜11の範囲でよく、反応速度および選択率を向上させるため、加圧下で分解を行ってもよい。例えば、Tricodermasp由来のキシラナーゼ(例えば、新日本化学工業(株)製 商品名 スミチームXなど)を使用する場合は、部分加水分解の最適反応条件は、pH3.0〜7.0、30〜60℃において1〜24時間処理することが好ましい。
【0041】
次に、本発明のピロリ菌抑制剤または静菌剤を用いた食品/医薬品について説明する。
本発明のピロリ菌抑制剤または静菌剤は、そのまま食品/医薬品として利用することも可能であり、ビフィズス菌、乳酸菌、バクテロイデス、ユウバクテリウム、嫌気性レンサ球菌、腸球菌、大腸菌等のうち、人体に有用な菌と併せて製剤として利用してもよい。ここでいう有用細菌をより詳細に説明する。
【0042】
有用細菌としては、例えば、ビフィドバクテリウム アドレセンティス(Bifidobacterium adlescentis)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム パルバロラム(Bifidobacterium parvulorum)、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス サルバリウス(Lactobacillus salibarius)、ラクトバチルス ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ストレプトコッカス ファエカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス パイロジェンス(Streptococcus pyogenes)、シュードモナス アエラジノサ(Psudomonas aeruginosa)、バクテロイデス デスタソニス(Bacteroides destasonis)、バクテロイデス オバタス(Bacteroides ovatus)、バクテロイデス セタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、バクテロイデス バルファンタス(Bacteroides vulfatus)、バクテロイデス ユニフォルミス(Bacteroides uniformis)、バクテロイデス メラニノジェニカス(Bacteroides meraninogenicus)、フソバクテリウム バリウム(Fusobacterium varium)、フソバクテリウム ネクロフォラム(Fusobacterium necrophorum)、マエガモナス ハイパーメガス(Maegamonas hypermegas)、ミツオケラ マルチアシダス(Mitsuokella multiacidus)、ユーバクテリウム リモサム(Eubacterium limosum)、ユーバクテリウム ニトリトジェネス(Eubacterium nitritogenes)、ユーバクテリウム レクテール(Eubacterium rectale)、ユーバクテリウム レンタム(Eubacterium lentum)、エンテロバクター アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス ファエカリス(Enterococcus faecalis)、クロストリジウム ビガルメンタンス(Clostridium bigermentans)、クロストリジウム ブチリカム(Clostridium butyricum)、クロストリジウム クロストリジフォルメ(Clostridium clostridiiforme)、クロストリジウム コッコイデス(Clostridium coccoides)、クロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)、クロストリジウム パラプトリフィカム(Clostridium paraputrificum)、クロストリジウム ラモサム(Clostridium ramosum)、クロストリジウム イノキューム(Clostridium innocuum)、クロストリジウム スポロゲネス(Clostridium sporogenes)、プロピオニバクテリウム アクネス(Propionibacterium acnes)、ペプトコッカス プレボッチ(Peptococcus prevotii)、ペプトコッカス アナエロバイアス(Peptostreptcoccus anaerobius)、ペプトストレプトコッカス パルバラス(Peptostreptcoccus parvulus)、ペプトストレプトコッカス プロダクタス(Peptostreptcoccus productus)、ペプトストレプトコッカス アサキャロリチカス(Peptostreptcoccus asaccharolyticus)、ペプトストレプトコッカス マグナス(Peptostreptcoccus magnus)、ペプトストレプトコッカス プレボーリ(Peptostreptcoccus prevolli)、ベイロネラ アルカエス(Veillonella alcaesces)、ベイロネラ パルンラ(Veillonella parunla)、クレブシエラ ピューモニアエ(Klebsiella pneumoniae)、メガスファエラ エルスデニ(Megasphaera elsdenii)等が挙げられ、これらの有用細菌を1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖は、ピロリ菌の抗菌作用があるラクトバチルス属に属する細菌に対し、資化性を有するため、それらと併用することで、各々のピロリ菌抑制効果がより高められるため好ましい。特に、ラクトマチルス ガセリ(Lactobacillus gasseri)OLL2716株と併用することが好ましい。 ここでいう有用細菌とは、摂取することで、ヒトに何らかの生理的有用性をもたらすものであり、本発明の有用細菌は、上に挙げる公知の腸内細菌、公知の腸内細菌を改良したものに加え、新規に発見された菌種も含まれる。また、本発明の腸内細菌賦活剤として使用する際には、生菌そのものを使用しても、凍結乾燥、複合化等の公知の方法で製剤したものを使用することも自由である。
【0044】
また、本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖を、食品素材、医薬品薬効成分、それらで使用される添加物、または上述の有用細菌の中から選択される1種以上の構成成分に含有させ、食品/医薬品として利用することも自由である。
【0045】
本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖を、上述の如く、食品/医薬品とする場合のセロオリゴ糖の添加量は、0.1質量%以上である。本発明のセロオリゴ糖の添加量が0.1質量%未満であると、充分なピロリ菌抑制効果が得られないため好ましくない。本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖の添加量は、高いほど上述の効果が得られるが、服用性等を向上させる等の理由で他成分を添加する場合には、セロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖の添加量は99.99質量%以下である。
【0046】
ここで使用される構成成分としては、例えば以下のものが挙げられる。本発明でいう構成成分とは、食品素材、医薬品薬効成分、または賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤、溶剤、油脂、界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤等の添加剤のことであり、粉体状、結晶状、油状、液状、半固形状などいずれの形態でもよく、例えば「食品添加物公定書」、「日本薬局方」(いずれも廣川書店発行)、「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)に記載されるものを用いることが可能である。また、それらは、種々の目的でコーティングを施したものであってもよい。これらの構成成分は単独で使用しても、複数を併用してもよい。構成成分の添加量としては、0.01質量%−99.9質量%である。
【0047】
例えば医薬品薬効成分としては、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗鬆症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが対象となる。薬効成分は、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0048】
賦形剤としては、アクリル酸デンプン、L−アスパラギン酸、アミノエチルスルホン酸、アミノ酢酸、あめ(粉)、アラビアゴム、アラビアゴム末、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、イノシトール、エチルセルロース、エチレン・酢酸ビニルコポリマー、塩化ナトリウム、オリーブ油、カオリン、カカオ脂、カゼイン、果糖、軽石粒、カルメロース、カルメロースナトリウム、含水二酸化ケイ素、乾燥酵母、乾燥水酸化アルミニウムゲル、乾燥硫酸ナトリウム、乾燥硫酸マグネシウム、カンテン、カンテン末、キシリトール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グリセリン、グリセロリン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、L−グルタミン、クレー、クレー粒、クロスカルメロースナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、軽質流動パラフィン、ケイヒ末、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、結晶セルロース(粒)、ゲンマイコウジ、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、ゴマ油、小麦粉、コムギデンプン、小麦胚芽粉、コメコ、コメデンプン、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸フタル酸セルロース、サフラワー油、サラシミツロウ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、β―シクロデキストリン、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェノール、ジメチルポリシロキサン、酒石酸、酒石酸水素カリウム、焼セッコウ、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウム・ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化マグネシウム、スクラワン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポリオキシル、ステアリン酸マグネシウム、ステロテックスHM、精製ゼラチン、精製セラック、精製白糖、精製白糖球状顆粒、セトステアリルアルコール、セトポリエチレングリコール、ゼラチン、ソルビタン脂肪酸エステル、D−ソルビトール、第三リン酸カルシウム、ダイズ油、大豆不ケン化物、大豆レシチン、脱脂粉乳、タルク、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、中性無水硫酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、デキストリン、天然ケイ酸アルミニウム、トウモロコシデンプン、トラガント末、二酸化ケイ素、乳酸カルシウム、乳糖、白色ワセリン、白糖、白糖・デンプン球状顆粒、ハダカムギ緑葉エキス末、裸麦芽葉青汁乾燥粉末、ハチミツ、パラフィン、バレイショデンプン、半消化体デンプン、人血清アルブミン、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、フィチン酸、ブドウ糖、ブドウ糖水和物、部分アルファー化デンプン、プルラン、プロピレングリコール、粉末還元麦芽糖水飴、粉末セルロース、ペクチン、ベントナイト、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリエチレングリコール、マルチトール、マルトース、D−マンニトール、水アメ、ミリスチン酸イソプロピル、無水乳糖、無水リン酸水素カルシウム、無水リン酸カルシウム造粒物、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、メチルセルロース、綿実粉、綿実油、モクロウ、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、薬用炭、ラッカセイ油、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、粒状トウモトコシデンプン、流動パラフィン、dl−リンゴ酸、リン酸−水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム造粒物、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に賦形剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0049】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、クロスポリビニルピロリドン、クロスポリビニルピロリドンコポリマー等の合成高分子等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に崩壊剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0050】
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖等の糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、グルコナンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、結晶セルロース、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機化合物類等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に結合剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0051】
流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物類等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に流動化剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0052】

沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ショ糖脂肪酸エステル、タルク等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に滑沢剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0053】
矯味剤としては、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1−メントール等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に矯味剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0054】
香料としては、オレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に着香剤、香料として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0055】
着色剤としては、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン、リボフラビン等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に着色剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0056】
甘味剤としては、アスパルテーム、サッカリン、グリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に甘味剤として分類されるものを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0057】
溶剤としては、医薬品に使用されるものであれば、特に制限されるものでは、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に溶剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0058】
油脂としては、例えば、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステア リン酸ショ糖エステル、流動パラフィン等のパラフィン類、カルナウバロウ,硬化ヒマシ油等の硬化油類、ヒマシ油、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に記載される油脂が挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0059】
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、デンプン糊等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に記載される増粘剤が挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0060】
界面活性剤としては、例えば、リン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンサンモノラウレート、ポリソルベート、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリド、モノオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、モノオキシエチレンソルビタンモノステアレート、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、ラウリル硫酸ナトリウム等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)に界面活性剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0061】
ゲル化剤としては、例えば、ゼラチン等の動物性ゲル化剤、寒天、キサンタンガム、グアーガム、アラビアガム、カードラン、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース、微結晶セルロース、微結晶セルロース等植物性多糖類、ポリビニルピロリドン等の化学合成高分子等の「医薬品添加剤事典」(薬事日報社発行)、「日本薬局方」、「食品添加物公定書」(廣川書店発行)にゲル化剤として分類されるものが挙げられ、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0062】
以下に本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖と、食品素材、医薬品薬効成分、有用細菌、またはそれらで使用される添加物の中から選択される1種以上の構成成分を含む食品/医薬品の製造方法について記述するが製造方法は、以下の方法に制限されるものではない。
【0063】
各成分の添加方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、1)セロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖と構成成分を同時に添加し、混合/分散しても、2)セロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖と特定の構成成分を予め混合/分散した後に、別の構成成分を添加し、混合/分散しても、3)2種以上の構成成分を予め混合/分散した後、セロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖を添加し、混合/分散しても、これらの添加方法を組み合わせた方法でもよい。添加する構成成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、それらをセロオリゴ糖または他の添加剤に噴霧する方法を採用することで、最終製品中の成分濃度ばらつきが小さくなるので好ましい。
【0064】
ここで用いる装置としては、小型吸引輸送装置、空気輸送装置、バケットコンベヤ、圧送式輸送装置、バキュームコンベヤ、振動式定量フィーダー、スプレー、漏斗等を用いて連続的に添加しても、一括投入してもよい。また、各成分の混合方法は、通常行われている方法であれば特に制限はないが、V型、W型、ダブルコーン型、コンテナタック型混合機などの容器回転式混合機、あるいは高速撹拌型、万能撹拌型、リボン型、パグ型、ナウター型混合機などの撹拌式混合機、高速流動式混合機、ドラム式混合機、流動層式混合機を使用してもよい。またシェーカー等の容器振とう式混合機を使用することもできる。
【0065】
分散方法としては、通常行われる分散方法であれば特に制限はないが、ポータブルミキサー、立体ミキサー、側面ミキサーなどの1方向回転式、多軸回転式、往復反転式、上下移動式、回転+上下移動式、管路式等の撹拌翼を使用する撹拌混合方法、ラインミキサー等の噴流式撹拌混合方法、気体吹き込み式の撹拌混合方法、高剪断ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を使用する混合方法でも、シェーカーを使用する容器振とう式混合方法等を用いてもよく、これらを組み合わせた方法でもよい。
【0066】
また、上述の混合、分散において、水又は水/有機溶剤に必要に応じて界面活性剤、増粘剤、ゲル化剤を添加した水系媒体を添加する順序には特に制限はないが、1)セロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖に予め水系媒体を添加し、溶解/分散させた後に、他の構成成分を添加しても、2)構成成分に予め水系媒体を添加し、溶解/分散させた後に、セロオリゴ糖及び/キシロオリゴ糖を添加しても、3)セロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖と構成成分を予め混合/分散させた後に、水系媒体を添加してもよく、これらを組み合わせた方法でもよい。ここで得られた水溶液、分散体、ペースト、乳液等の各液状、半固形状の食品/化粧品/医薬品は必要に応じて乾燥され、造粒、コーティング、成型等の加工が施される。
【0067】
造粒・コーティング方法としては、公知の方法であれば特に制限はないが、攪拌式または流動層式のいずれもよく、それらを組み合わせた方法でもよい。攪拌式造粒機としては、例えばポータブルミキサー、立体ミキサー、側面ミキサーなどの1方向回転式、多軸回転式、往復反転式、上下移動式、回転+上下移動式の攪拌機、流動層式としては上部噴霧式、中央噴霧式、下部噴霧式、攪拌併用式、中央缶噴流式、ワースター式等が挙げられる。また、ローラーコンパクタを使用した乾式造粒を施してもよい。
【0068】
コーティングについては、予め造粒物を得、それに公知のコーティングを施してもよく、コーティングを施した後、さらに別のコーティングを施し多層状としてもよい。コーティング剤の噴霧方法としては、圧力ノズル、二流体ノズル、四流体ノズル、回転ディスク、超音波ノズル等を使用し構成成分溶液/分散液を噴霧する方法、管状ノズルから構成成分溶液/分散液を滴下する方法のいずれでもよい。構成成分溶液/分散液を添加する際には、セロオリゴ糖粒子表面に構成成分を積層させるようなレイヤリング、コーティングを施しても、セロオリゴ糖粒子内部に担持させてもよく、構成成分溶液/分散液を結合液としてセロオリゴ糖粒子またはセロオリゴ糖と他の構成成分の混合物をマトリックス状に造粒させてもよい。レイヤリング、コーティングは湿式であっても、乾式であっても効果は同様である。
【0069】
本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖は、液状成分の保持性にも優れ、それを核粒子として使用した場合には、レイヤリング、コーティング持の粒子の凝集を抑制できる。
また、構成成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、セロオリゴ糖粒子またはセロオリゴ糖と他の添加剤の混合物を担体としたディッピングの如く、構成成分溶液、懸濁液、乳化液に浸漬させ、構成成分を保持させる方法がとれる。成分種、濃度等の条件によるが、かかるディッピング等の液浸漬方法でも、実用的に成分濃度の均一性が保たれ、また、上記噴霧に比べ、工程が簡略である点で優れている。
【0070】
さらに、構成成分が溶液、懸濁液、乳化液の場合には、セロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖粒子、またはセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖粒子と他の添加剤の混合物を担体として、構成成分溶液、懸濁液、乳化液に浸漬させた後、その分散液を噴霧乾燥し、複合体とする方法をとってもよい。
構成成分溶液/分散液を添加前後のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖粒子または、セロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖粒子と他の添加剤の混合物は、それぞれの単位粒子が個々に分散した状態であっても、凝集した造粒物の形態をとっていてもよい。
【0071】
成型方法としては、通常行われている方法であれば特に制限はないが、型枠を用いてもよく、圧縮、溶融、射出、圧延等の公知の成型方法が適用でき、これらを組み合わせた方法でもよい。ここで用いられる成型機としては、圧縮成型機、溶融成型機、射出成型機、圧延成型機等が挙げられ、製菓用/化粧品/医薬品用成型機、米飯成型機、コンプレスド成型機、包あん機、蒲鉾製造装置、餃子・包子成型機、ファンデーション基材用圧縮成型機等の公知の成型機が使用できる。
【0072】
特に圧縮成型に関しては、型枠を使用し所望の形状に圧縮成形する方法、予めシート状に圧縮成形した後所望の形状に割断する方法でもよい。圧縮成形機としては、例えば、静圧プレス機、ブリケッティングローラー型プレス機、平滑ローラー型プレス機等のローラー式プレス機、シングルパンチ打錠機、ロータリー打錠機等の圧縮機を使用できる。上述の方法で得られた成型体は、公知の方法でコーティングを施してもよく、成型体が錠剤の場合には、糖をコーティングし、糖衣錠としてもよい。特に、本発明のセロオリゴ糖は、上述糖衣錠における糖衣層に配合してもよい。
【0073】
本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖含有食品の例としては、例えば、ゼリー、プリン、ヨーグルト等のゲル、マヨネーズ、ドレッシング、ソース類、たれ類、スープ、野菜加工品等の調味料、カレー、ハヤシ、ミートソース、シチュー、スープ等のレトルト食品、チルド食品、ハンバーグ、ベーコン、ソーセージ、サラミソーセージ、ハム類等の畜産加工品、蒲鉾、ちくわ、魚肉ハム・ソーセージ、揚げ蒲鉾等の水練製品、パン、生麺、乾麺、マカロニ、スパゲッティ、中華饅頭の皮、ケーキミックス、プレミックス、ホワイトソース、餃子・春巻等の皮類などの小麦加工食品、カレー、ソース、スープ、佃煮、ジャムなどの缶詰、瓶詰類、キャンデー、トローチ、錠菓、チョコレート、ビスケット、クッキー、米菓、和洋菓子、洋生菓子、スナック菓子、砂糖菓子、プリンなどの菓子類、フライ類、コロッケ、餃子、中華饅頭等の調理加工品、野菜ペースト、肉のミンチ、果実ペースト、魚介類のペースト等のペースト類である。また、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ホイップクリーム、練乳、バター、ヨーグルト、チーズ、ホワイトソース等の乳製品、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング等の油脂加工品等がある。さらに、コーラ等の炭酸飲料、炭酸入り、アルコール入り、乳製品と混合した果実飲料、果汁又は、果実入り飲料、乳性飲料等の飲料、コーヒー、牛乳、豆乳、ココア牛乳、フルーツ牛乳、ヨーグルト等の乳酸/乳性飲料等、煎茶、ウーロン茶、抹茶、紅茶等の茶飲料等に使用してもよい。
【0074】
本発明のセロオリゴ糖及び/又はキシロオリゴ糖含有医薬品の例としては、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、エキス剤、丸剤の固形製剤が挙げられる。
【実施例】
【0075】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[製造例1]
普通寒天培地にトリコデルマ リーセイ GL−1株 (Tricoderma reesei GL−1株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領番号FERM BP−10323))を接種し、37℃で7日間培養後、その培地表面から胞子を1白金耳取り、ポリペプトン1g、酵母エキス0.5g、リン酸1カリウム2g、硫酸アンモニウム1.5g、硫酸マグネシウム0.3g、塩化カルシウム0.3g、トレースエレメント1mL(硼酸6mg、モリブデン酸アンモニウム4水和物26mg、塩化鉄(3)6水和物100mg、硫酸銅5水和物40mg、硫酸マンガン4水和物8mg、硫酸亜鉛7水和物200mgを全量100mLの精製水に溶解させたもの)、アデカノール1mL、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ製 商品名PH−101)10gを全量1Lの精製水に懸濁および溶解させた培地に植菌し、28℃で5日間通気攪拌培養した。培養中は、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、培地のpHを2.8−4.7となるように調節した。培養後の液を遠心分離し、上清を目開き0.46μmの精密ろ過膜で除菌し、ろ液を分画分子量13000の限外ろ過膜(旭化成ケミカルズ製 商品名マイクローザペンシル型モジュール ACP−0013)で体積比で10倍濃縮し粗酵素を得た。
【0076】
次に、市販針葉樹由来の溶解パルプを使用し、加水分解条件を塩酸濃度0.4%塩酸水溶液、120℃、1時間として、加水分解し、酸不溶性残渣を洗浄、ろ過し、ウェットケークを得た。このウェットケークをセルロース10%濃度の水分散体とし、超高性能分散機・湿式微粉砕機(アシザワ(株)製、商品名 パールミルRL φ1mmジルコニアビーズ使用 充填率80%)を使用し、圧密・摩砕処理を施し、セルロース微粒子分散体を得た(平均重合度220、ジエチルエーテル可溶物含有率0.7%、平均粒子径0.7μm、コロイド状成分含有率51.5%)。
【0077】
この摩砕セルロースが2質量%、粗酵素をタンパク質濃度0.25%になるように50mM酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に懸濁溶解させ、全量1000mLとし、ガラス製フラスコに仕込んだ。このガラス製フラスコを、55℃の水槽に仕込み、内部を攪拌しながら4時間反応させた。反応終了後、反応液を懸濁状態で300μL分注し、限外ろ過モジュール(分画分子量10000)を使用し、酵素、未分解セルロースを取り除いた後、高速液体クロマトグラフィーで糖濃度を分析した。該反応液の糖濃度は、セロトリオース〜セロヘキサオース0.2質量%、セロビオース1.5質量%、グルコース0.3質量%であった。
該反応液を、分画分子量13000の限外ろ過膜(旭化成ケミカルズ製 商品名マイクローザペンシル型モジュール ACP−0013)でろ過し、得られたろ液を陽・陰イオン交換樹脂で脱イオン処理し、70℃、減圧下で蒸留し、20倍の糖濃度の水溶液を得た。
【0078】
[製造例2]
製造例1で得られたセロオリゴ糖水溶液100mLを、200mLのガラス製フラスコに導入し、攪拌しながら、毎時10℃の速度で、70℃から5℃まで冷却した後、エタノールを水に対し70質量%となるよう、毎分10gの速度で加え晶析した。水溶液中に晶出したセロオリゴ糖を、減圧ろ過、乾燥、粉砕、篩下し、セロオリゴ糖粉末CE−1を得た。得られたセロオリゴ糖粉末の糖組成を表1に記す。
【0079】
[製造例3]
製造例1の菌株を、セロビブリオ ギルバス(Cellovibrio gilvus ATCC13127)に代え、培養時のpHを4〜10に変更し、酵素反応時の緩衝液をpH6.5のリン酸緩衝液に変更する以外は、製造例1と同様の方法でセロオリゴ糖水溶液を作成した。
得られたセロオリゴ糖水溶液を、活性炭を充填したカラムに通してグルコースリッチの画分を採取し、60℃の通気オーブン中で、16hr乾燥し、製造例2と同様の操作で粉末化し、セロオリゴ糖粉末CE−2を得た。得られたセロオリゴ糖粉末の糖組成を表1に記す。
【0080】
【表1】

【0081】
[実施例1]
セロオリゴ糖としてCE−1を用いて、以下の被検液を作製し、ピロリ菌の増加抑制率を測定した。結果を表2に示す。
<被検液>
(0)セロオリゴ糖無添加の5%ウマ血清加1/10ブルセラブロス
(1)CE−1を2%溶解させた5%ウマ血清加1/10ブルセラブロス
(2)CE−1を5%溶解させた5%ウマ血清加1/10ブルセラブロス
(3)CE−1を10%溶解させた5%ウマ血清加1/10ブルセラブロス
<培養方法>
試験菌株(Helicobacter・Pylori ATCC 43504)を羊血液寒天培地K(BBL)を用いて、35℃、3日間微好気培養後、滅菌生理食塩液でMcFarland No.2(約10〜10CFU/mL)となるよう調製する。これを滅菌生理食塩液で100倍希釈し、添加用菌液とする。各被検液9mLに添加用菌液を1mL加え、35℃、微好気条件下で振盪培養し、これを検液とする。培養72時間後に各検液を採取し、滅菌生理食塩液で10倍希釈系列液を作製する。原液および各希釈系列液を50μLずつ羊血液寒天培地Kにコンラージ塗抹し、微好気条件下で35℃、4〜5日間培養する。なお、0時間後は被検液のみ定量を実施する。培養後発育した菌数を計測し、1mL当たりの生菌数を求める。増加抑制率は以下の式で求めた。
増加抑制率(%)=(生菌数2−生菌数1)/生菌数2×100
【0082】
[実施例2]
実施例1からセロオリゴ糖をCE−2に代えて、被検液中のセロオリゴ糖の添加量を2%として、下記の被検液(4)を作製し、実施例1と同様にピロリ菌の増加抑制率を求めた。結果を表2に示す。
<被検液>
(4) CE−2を2%溶解させた5%ウマ血清加1/10ブルセラブロス
【0083】
[比較例1]
実施例1から、セロオリゴ糖の代わりに、D−グルコース(和光純薬製)を用いて、被検液中の添加量を2%として下記の被検液(5)を作製し、実施例1と同様に、ピロリ菌の増加抑制率を求めた。結果を表2に示す。
<被検液>
(5) D−グルコースを2%溶解させた5%ウマ血清加1/10ブルセラブロス
【0084】
【表2】

【0085】
実施例1、2から、セロオリゴ糖にピロリ菌の抑制効果があった。さらに、実施例1からは、セロオリゴ糖の添加量が増えるほど、ピロリ菌の増殖抑制率は向上し、ピロリ菌の抑制効果が高いことが分かる。
また、実施例2に対し、実施例1は、セロビオース含量が高く、セロトリオース〜セロヘキサオース含量、およびグルコース含量低いが、同一添加量でピロリ菌の生菌数が少なく、セロオリゴ糖中のセロビオース含量が高い程、抑制効果が高い。
さらに、比較例1より、グルコースには、ピロリ菌の抑制効果はなかった。
【0086】
[実施例3]
セロオリゴ糖としてCE−1を使用し、添加量を5%、10%として、実施例1と同様の操作で培養した。培養時間を48〜96時間に振って、無添加と生菌数を比較した。結果を図1に示す。
図1より、セロオリゴ糖を高濃度で添加すると、抑制または静菌のみならず、短時間でピロリ菌を死滅させることも可能であることがわかる。
以下に、本発明のピロリ菌の抑制剤または静菌剤を含有する食品及び医薬品の処方例を
以下に参考例として例示する。
【0087】
[実施例4]
実施例1〜3のセロオリゴ糖をキシロオリゴ糖に変えて、同様の方法でピロリ菌の増加抑制率を求めた。用いたキシロオリゴ糖の糖組成は、以下の通りとした。
キシロビオース36.4%、キシロトリオース以上のキシロオリゴ糖類7.11%、その他キシロース。
【0088】
[比較例2]
実施例1〜3のセロオリゴ糖をマルトース(和光純薬製マルトース)に変えて、同様の方法でピロリ菌の増加抑制率を求めた。
【0089】
【表3】

【0090】
[参考例1]
セロオリゴ糖としてCE−1を使用し、以下の処方1により酸性スポーツ飲料を作製した。作製方法は、処方1の原料を予め、混合し、水に溶解させ、オートクレーブで121℃、20分加熱殺菌し、試作した。
<処方1:酸性スポーツ飲料>
1)ショ糖 4.0質量%
2)クエン酸(水和物) 0.1質量%
3)アスコルビン酸 0.1質量%
4)グレープフルーツストレート果汁 1.0質量%
5)セロオリゴ糖CE−1 10.0質量%
6)水 83.8質量%
【0091】
[参考例2]
セロオリゴ糖としてCE−1を使用し、以下の処方12によりオレンジジュースを作製した。作製方法は、処方2の原料を予め、混合し、水に溶解させ、オートクレーブで121℃、20分加熱殺菌し、試作した。
<処方2:酸性スポーツ飲料>
1)ショ糖 7.5質量%
2)クエン酸(水和物) 0.1質量%
4)オレンジ4倍濃縮果汁 5.0質量%
5)セロオリゴ糖CE−1 10.0質量%
6)水 76.9質量%
【0092】
[参考例3]
実施例5で得たオレンジジュース98部に、市販のゼラチン2.0部を加え、90℃で攪拌しながら溶解した。溶解後、100mLのプラスチック容器に封入し、5℃で18時間保存し、セロオリゴ糖配合ゼリーを作製した。
【0093】
[参考例4]
実施例6の方法において、ゼラチンを、市販の寒天に代えて、セロオリゴ糖配合寒天を作製した。
【0094】
[参考例5]
セロオリゴ糖としてCE−1を使用し、セロオリゴ糖90部、コーンスターチ10部を予めポリ袋中で3分間混合し、ステアリン酸マグネシウム0.5部を加え、さらに30秒間混合し、ロータリー打錠機(菊水製作所製 クリーンプレス12HUK、φ8mm、12R臼杵12本立て、回転数53rpm)で、打圧15kNで、1錠200mgのセロオリゴ糖配合錠剤を得た。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のセロオリゴ糖組成物は、取り扱い性が優れ、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter・Pylori)の増加を抑制または静菌するため、通常の食品素材に加え、機能性食品素材、食品・医薬品用の添加剤、医薬品として食品/医薬品分野で好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例3における培養時間毎のピロリ菌生菌数を示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糖が化学結合した多糖類であり、その構造中に少なくとも1つのβ結合を有する水溶性糖類を含有するピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
【請求項2】
前記β結合がβ1−4結合であることを特徴とする請求項1記載のピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
【請求項3】
前記多糖類が構成糖として少なくとも1つのグルコース及び/またはキシロースを含み、β1−4結合がβ1−4グルコシド結合及び/またはβ1−4キシロシド結合であることを特徴とする請求項1又は2記載のピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
【請求項4】
セロビオース含量が50質量%以上であり、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース及びセロヘキサオースよりなる群から選ばれる1種以上の含量が0〜50質量%であり、グルコース含量が30質量%以下であるセロオリゴ糖を有効成分として含有する請求項1〜3のいずれかに記載のピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
【請求項5】
キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース、キシロヘキサオース、キシロヘプタオース及び7を超える重合度を有する水溶性のキシランよりなる群から選ばれる1種以上の含量が30質量%以上であり、キシロース含量が70質量%以下であるキシロオリゴ糖を有効成分として含有する請求項1〜3のいずれかに記載のピロリ菌の抑制剤または静菌剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の抑制剤又は静菌剤と食品素材又は医薬品薬効成分とを水または水/有機溶剤の混合液中に分散又は溶解してなり、抑制剤又は静菌剤の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする水性組成物。
【請求項7】
更に、界面活性剤、増粘剤及びゲル化剤よりなる群から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項6記載の水性組成物。
【請求項8】
水溶液、水分散体、ペースト状及びゲル状のうちのいずれかの状態であることを特徴と
する請求項6または7記載の水性組成物。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の抑制剤または静菌剤と、食品素材、医薬品薬効成分、食品添加物及び医薬品添加物から選ばれる少なくとも1種とを含み、抑制剤又は静菌剤の含有量が0.1質量%以上であることを特徴とする固形組成物。
【請求項10】
粉末、顆粒及び成型体のうちのいずれかの形状であることを特徴とする請求項9に記載の固形組成物。
【請求項11】
表面にコーティングが施されていることを特徴とする請求項10に記載の固形組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−120789(P2008−120789A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207366(P2007−207366)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】