説明

ピロロ〔3,4−c〕ピロールの直接製造

【課題】色素性1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールを直接に、すなわち粒度を下げる追加の後処理なしに、製造する方法の提供。
【解決手段】式(I)


〔式中、R1およびR2は、それぞれ、互いに独立に、単素環または複素環芳香族の基である〕で示される色素性1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールの直接製造法であって、適切なモル比のジスクシネートと、式(II):R1−CN(II)もしくは式(III):R2−CN(III)のニトリル、または該ニトリルの混合物とを、有機溶媒中、強い塩基、および有効量の粒子成長阻害剤の存在下で加熱し、次いで、プロトリシスによる反応生成物から式(I)の化合物を得る段階を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ジケトピロロピロール族の化合物、およびそれらの色素特性は、周知である。色素性ジケトピロロピロールは、非置換1,4−ジケトピロロピロールはもとより、単素環または複素環芳香族の基で置換されたものをはじめとする、様々な置換ジケトピロロピロールを包含する。それらは、高分子量の有機材料を着色するのに適している。
【0002】
色素業界では、置換ジケトピロロピロール色素は、1モルのジスクシネートと2モルの芳香族ニトリルとの反応、またはそれぞれ1モルの異なる2種類の芳香族ニトリルの反応によって製造できることが公知である。米国特許第4,579,949号明細書は、有機溶媒中、高い温度での強い塩基の存在下でのジスクシネートと芳香族ニトリルとの反応、および得られた塩のその後のプロトリシスを記載している。そのような方法の生成物は、未精製ジケトピロロピロールとして知られ、一般的には、中間的ないし大きな粒度を有し、その粒度は、高度の透明性を要する一定の最終用途、例えば自動車の塗装には適さないことが示されている。メタリック効果を有する多くの自動車のスタイルは、アルミニウムまたは雲母フレークと、均等に小さな粒度の色素との併用によって創出される。そのため、より大きな粒度の未精製色素をさらに加工して、必要とされる色素特性、例えば、より小さな粒度、粒子の形状、多形相、および着色強さを開発することが必要になる。
【0003】
したがって、粒度操作は、色素技術では重要な技芸となっている。非常に望ましい色素は、慣用的には、色素調整段階とも呼ばれ、その目的が、より狭い粒度分布で定義された粒度の、好ましくは単一の均質結晶相をなす色素を生成することにある、様々な色素仕上げ法に未精製色素を付すことによって製造される。ジケトピロロピロールの場合、未精製形態を、大量の無機塩とともに粉砕し、次いで、得られた粉砕粉末を抽出するか、または大量の硫酸に色素を溶解し、溶液を水で薄める(酸ペースト化として知られる)ことによって、使用できる色素の形態に転換するのが一般的である。これらの多段階の手順は、一般に、酸性環境中での高い温度で実施される多様な操作を必要とする。したがって、色素性ジケトピロロピロールを製造するための、より単純で経済的な手順が、当業界では非常に望ましい。
【0004】
当業界では、より小さな微粒子形態のジケトピロロピロール色素を製造するための研究が実施されている。例えば、米国特許第5,502,208号明細書は、あるシアノ置換ジケトピロロピロール色素が、pHを9未満に保つのに充分な量の酸の存在下、90℃より高い温度の水および/またはアルコール中でプロトン化工程を実施することによって、微細な微粒子形態として製造できることに関する。ジケトピロロピロールの合成の際の粒子成長阻害剤の包含は、言及されていない。
【0005】
米国特許第5,457,203号および第5,424,429号明細書からは、あるフタルイミドメチルキナクリドン化合物が、キナクリドンを形成するためのジヒドロキナクリドンの酸化反応の際に、成長阻害剤として役立つことが公知である。ジヒドロキナクリドンからキナクリドンへの転換は、アルカリ性アルコール媒体中で穏やかな酸化剤を用いて実施される。これらの酸化条件下では、フタルイミドメチルキナクリドンは、カルボキシカルボナミドのアルカリ金属塩へと部分的に開環することが提唱されている。
【0006】
しかしながら、驚くべきことに、フタルイミドメチルキナクリドンの存在下では、ジケトピロロピロールの合成が円滑に進行して、均等に小さな粒度の色素を生成する。フタルイミドメチルキナクリドンの分子は、ジケトピロロピロールとは構造的にも化学的にも似ていないが、意外にも、ジケトピロロピロールに対する粒度調整の鋳型として作用する。やはり驚異的にも、フタルイミドメチルキナクリドン誘導体は、合成されるジケトピロロピロール色素の色彩飽和または化学的収率のいずれにも何ら悪影響を及ぼさない。ジヒドロキナクリドンからキナクリドンへの転換は、米国特許第5,457,203号および第5,424,429号明細書に記載のとおり、五員環式複素環の芳香族化のみを伴うにすぎないが、ジケトピロロピロールの場合、芳香族ニトリルへのスクシネートのジエノラートの付加は、分子内閉環を伴う。2種類の色素合成の反応機序は、全く異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第一義的な目的は、粒度を下げる後処理を必要とせずに、有用な色素ジケトピロロピロールを合成の際に直接製造することにある。本発明の合成方法は、環境への負担を生じる多段階の色素仕上げ手順を回避するため、非常に望ましい。さらに、小粒度の色素を合成するこの経路は、強い脱プロトン剤の存在下でのスクシネートへのニトリルの付加の際に成長阻害剤を加えるときには、多大な経済的意義がある。その他の目的は、より詳しい説明を参考にして明らかになると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
色素品質の、望ましい結晶化度および結晶相を有する1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールは、特定の粒子成長阻害剤の存在下で、芳香族ニトリルへのスクシネートのジエノラートの付加を実施することによって、処理後にさらに粒度を下げる必要なしに直接製造することができる。異なる粒度および比表面積を有し、そのため多様な透明度/不透明度を有する、非常に様々なジケトピロロピロール色素が、適切な量の粒子成長阻害剤を用いることによって製造できる。
【0009】
式(I)の1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールの粒度は、ジスクシネートとのニトリルの反応の際に存在する成長阻害剤の量に反比例する。すなわち、より小さな粒度の1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロール生成物は、より多くの粒子成長阻害剤を反応混合物に加えたときに得られる。
【0010】
本方法は、様々な小粒度ジケトピロロピロール色素の製造に対する、単純性および経済性の改良を与える。本発明によれば、色素性ジケトピロロピロールの直接製造は、公知の方法によるが、適切な量の特定の成長阻害剤の存在下で、芳香族ニトリルへのスクシネートのジエノラートの付加を実施することによって、簡単に達成される。この方策は、1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールの製造に色素業界で現在実施されている、面倒な多段階の製造仕上げ法の必要性を排除する。
【0011】
本発明は、式(I):
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、R1およびR2は、それぞれ、互いに独立に、単素環(同素環ともいう)または複素環芳香族の基である〕
で示される1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールの直接製造法であって、適切なモル比のジスクシネートと式(II):
【0014】
1−CN (II)
【0015】
もしくは式(III):
【0016】
2−CN (III)
【0017】
のニトリル、または該ニトリルの混合物、好ましくは式(II)または式(III)のうち一方のみのニトリルとを、有機溶媒中、強い塩基、および有効量の粒子成長阻害剤の存在下で加熱して、中間縮合生成物を形成し、次いで、該中間縮合生成物をプロトリシスに付して、式(I)の化合物を形成する段階を含み、
【0018】
該粒子成長阻害剤が、式(IV):
【0019】
【化2】

【0020】
〔式中、R3、R4およびR5は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族の基、特に水素またはメチルであり、Qは、キナクリドンまたはジケトピロロピロール部分、特に非置換キナクリドンまたはジケトピロロピロール部分である〕
で示される化合物;式(V):
【0021】
【化3】

【0022】
〔式中、R6、R7およびR8は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族の基であり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物;式(VI):
【0023】
【化4】

【0024】
〔式中、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族の基、特に水素、メチルまたは塩素であり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物;式(VII):
【0025】
Q−SO3X (VII)
【0026】
〔式中、Xは、水素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはアルミニウム、特に水素、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたはストロンチウムであり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物;式(VIII)
【0027】
【化5】

【0028】
〔式中、nは、2〜4の整数、特に2または3であり;R13およびR14は、それぞれ、互いに独立に(C1〜C6)アルキルであるか、またはその結合相手である窒素原子とともに、五もしくは六員複素環を形成し、特にメチルであり;Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物;式(IX):
【0029】
【化6】

【0030】
〔式中、R15は、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、フェニル、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、(C1〜C6)アルキルチオ、フェニルチオまたはフェノキシであり、特にR15は、フェニル環の4位に位置し、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物であって、Mが水素または金属もしくはアンモニウム陽イオンである、−SO3M 0〜6モル(化合物1モルあたり)で置換された化合物;あるいは式(X):
【0031】
【化7】

【0032】
〔式中、R27およびR28は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族の基、特に水素またはメチルであり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物である製造法に関する。
【0033】
「直接の」または「直接に」という表現は、色素生成物の製造法を説明するために本明細書に用いられるときは、色素生成物の比表面積が、粒度を下げる追加の後処理なしに、それを色素として用いるのに適切にする範囲内にあることを意味する。
【0034】
基R1およびR2は、同じでも異なってもよいが、好ましくは同一である。単素環式芳香族の基としてのR1およびR2は、好ましくは、単環〜四環の基、最も好ましくは、単環または二環の基、例えばフェニル、ジフェニル、ナフチルなどである。複素環式芳香族の基であるR1およびR2は、好ましくは、単環〜三環の基である。これらの基は、全部が複素環であっても、一複素環と1個またはそれ以上の融合ベンゼン環とを含んでもよく、シアノ基は、それぞれ複素環と単素環との双方の部分に結合することができる。複素環式芳香族の基の例は、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、フリル、ピロリル、チオフェニル、キノリル、クマリニル、ベンズフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ジベンズフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、インドリル、カルバゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、インダゾリル、ベンズチアゾリル、ピリダジニル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリル、フタラジニル、フタラジンジオニル、フタラミジル、クロモニル、ナフトラクタミル、キノロニル、o−スルホベンズイミジル、マレインイミジル、ナフタリジニル、ベンズイミダゾロニル、ベンズオキサゾロニル、ベンズチアゾロニル、ベンズチアゾチオニル、キナゾロニル、キノキサロニル、フタラゾニル、ジオキソピリミジニル、ピリドニル、イソキノロニル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、インダゾロニル、アクリドニル、キナゾリンジオニル、キノキサリンジオニル、ベンズオキサジンジオニル、ベンズオキサジノニルおよびナフタルイミジルである。単素環式および複素環式芳香族の基は、双方とも、下記に記載のような慣用の水溶性にしない置換基を有してよい:
【0035】
(1)ハロゲン原子、例えば、塩素、臭素またはフッ素原子。
【0036】
(2)好ましくは1〜18個、特に1〜12個、より特定的には1〜8個、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を有する、分枝鎖または非分枝鎖アルキル基。これらのアルキル基は、水溶性にしない置換基、例えばフッ素、ヒドロキシル、シアノ、−OCOR16、−OR17、−COOR16、−CONR1718もしくは−R16−OCONHR16を有してよく、ここで、R16は、アルキル、アリール、例えばナフチルもしくはベンジル、またはハロゲン、アルキルもしくは−O−アルキルで置換されたベンジルであるか、あるいは複素環の基である。R17およびR18は、それぞれ、互いに独立に、水素、アルキル、またはシアノもしくはヒドロキシルで置換されたアルキルであるか、あるいは(C5〜C6)シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール、特にフェニル、またはハロゲン、アルキルもしくは−O−アルキルで置換されたフェニルであるか、あるいはR17およびR18は、窒素原子とともに五もしくは六員複素環、例えばモルホリン、ピペリジンまたはフタルイミド環を形成する。アルキル基におけるさらに可能な置換基は、モノもしくはジアルキル化アミノ基、アリール基、例えばナフチル、あるいは好ましくはフェニル、またはハロゲン、アルキルもしくは−O−アルキルで置換されたフェニルであるか、複素環式芳香族の基、例えば2−チエニル、2−ベンズオキサゾリル、2−ベンズチアゾリル、2−ベンズイミダゾリル、6−ベンズイミダゾロニル、2−、3−もしくは4−ピリジル、または2−、4−もしくは6−キノリル基である。
【0037】
上記(2)に指定した置換基が、アルキルを有するならば、このアルキルは、分枝鎖もしくは非分枝鎖であってよく、好ましくは1〜18個、特に1〜12個、より特定的には1〜8個、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を有してよい。
【0038】
非置換または置換アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミル、n−ペンチル、n−ヘキシル、1,1,3,3−テトラメチルブチル、n−ヘプチル、n−オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ヒドロキシメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、シアノメチル、メトキシカルボニルメチル、アセトキシメチルまたはベンジルである。
【0039】
(3)R19が、水素、アルキルまたはアリール、例えばナフチル、または好ましくはフェニル、またはハロゲン、アルキルもしくは−O−アルキルで置換されたフェニルであるか、あるいは(C5〜C6)シクロアルキル、アラルキルまたは複素環の基である、−OR19の基。R19の定義で、アルキルは、上記(2)で好ましいとして指定した限りの数の炭素原子を有してよい。R19の代表的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、トリフルオロエチル、フェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−メチルフェニル、α−もしくはβ−ナフチル、シクロヘキシル、ベンジル、チエニルまたはピラニルメチルである。
【0040】
(4)R19が上記(3)に定義したとおりである、−SR19の基。R19の代表的な例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、フェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−メチルフェニル、α−もしくはβ−ナフチル、シクロヘキシル、ベンジル、チエニルまたはピラニルメチルである。
【0041】
(5)シアノ基。
【0042】
(6)R17およびR18が上記(2)に定義したとおりである、式−NR1718の基。代表的な例は、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルアミノ、β−ヒドロキシエチルアミノ、β−ヒドロキシプロピルアミノ、N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)アミノ、N,N−ビス(β−シアノエチル)アミノ、シクロヘキシルアミノ、フェニルアミノ、N−メチルフェニルアミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ、ピペリジルまたはモルホリルである。
【0043】
(7)R16が上記(2)に定義したとおりである、式−COOR16の基。R16の例は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、n−ブチル、フェニル、ベンジルまたはフルフリルである。
【0044】
(8)R19が上記(3)に定義したとおりである、式−COR19の基。R19の例は、メチル、エチル、tert−ブチル、フェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−メチルフェニルまたはα−もしくはβ−ナフチルである。
【0045】
(9)R16が上記(2)に定義したとおりである、式−NR20COR16の基。R20は、水素、アルキル、アリール、例えばナフチル、または好ましくはフェニル、またはハロゲン、アルキルもしくは−O−アルキルで置換されたフェニルであるか、あるいは(C5〜C6)シクロアルキル、アラルキル、または基−COR16であるが、二つの基−COR16は、窒素原子とともに複素環を形成することができる。R20の定義で、アルキルは、上記(2)に好ましいとして指定した限りの数の炭素原子を有してよい。代表的な例は、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチリルアミノ、ベンゾイルアミノ、p−クロロベンゾイルアミノ、p−メチルベンゾイルアミノ、N−メチルアセチルアミノ、N−メチルベンゾイルアミノ、N−スクシンイミドまたはN−フタルイミドである。
【0046】
(10)R16およびR19が、それぞれ、上記(2)および(3)に定義したとおりである、式−NR19COOR16の基。代表的な例は、−NHCOOCH3、NHCOOC25またはNHCOOC55の基である。
【0047】
(11)R19、R17およびR18が、上記(3)および(2)に定義したとおりである、式−NR19CONR1718の基。代表的な例は、ウレイド、N−メチルウレイド、N−フェニルウレイドまたはN,N′−2′,4′−ジメチルフェニルウレイドである。
【0048】
(12)R16が上記(2)に定義したとおりである、式−NHSO216の基。代表的な例は、メタンスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、p−トルイルスルホニルアミノまたはβ−ナフチルスルホニルアミノである。
【0049】
(13)R16が上記(2)に定義したとおりである、式−SO216または−SOR16の基。代表的な例は、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、2−ナフチルスルホニル、フェニルスルホキシジルである。
【0050】
(14)R16が上記(2)に定義したとおりである、式−SO2OR16の基。R16の代表的な例は、メチル、エチル、フェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−メチルフェニル、α−もしくはβ−ナフチルである。
【0051】
(15)R17およびR18が上記(2)に定義したとおりである、式−CONR1718の基。R17およびR18の例は、カルボニル、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−フェニルカルバモイル、N−α−N−ナフチルカルバモイルまたはN−ピペリジルカルバモイルである。
【0052】
(16)R17およびR18が上記(2)に定義したとおりである、式−SO2NR1718の基。代表的な例は、スルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイルである。
【0053】
(17)R21が、カップリング成分の基であるか、あるいは非置換であるか、またはハロゲン、アルキルもしくは−O−アルキルで置換されたフェニル基である、式−N=NR21の基。R21の定義で、アルキルは、上記(2)に好ましいとして指定した限りの数の炭素原子を有してよい。R21の例は、アセトアセタリリド、ピラゾリル、ピリドニル、o−もしくはp−ヒドロキシフェニル、o−ヒドロキシナフチル、p−アミノフェニルまたはp−N,N−ジメチルアミノフェニル基である。
【0054】
(18)R16が上記(2)に定義したとおりである、式−OCOR16の基。R16の例は、メチル、エチル、フェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニルである。
【0055】
(19)R16が上記(2)に定義したとおりである、式−OCONHR16の基。R16の例は、メチル、エチル、フェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニルである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の好適実施態様は、R1およびR2が、それぞれ、互いに独立に、フェニル、または1個もしくは2個の塩素原子、1個もしくは2個のメチル基、メトキシ、トリフルオロメチル、シアノ、メトキシカルボニル、メチル、tert−ブチル、ジメチルアミノまたはシアノフェニルで置換された該フェニル;ナフチル、ビフェニリル;ピリジル、またはアミルオキシで置換された該ピリジル;フリルまたはチエニルである方法に関する。
【0057】
本発明の特に好適な実施態様は、R1およびR2が、それぞれ、互いに独立に、フェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、4−メチルフェニル、4−メトキシフェニル、3−トリフルオロメチルフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、3−シアノフェニル、4−シアノフェニル、4−メトキシカルボニルフェニル、4−メチルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、4−(p−シアノフェニル)フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニリル、2−ピリジル、6−アミルオキシ−3−ピリジル、2−フリルまたは2−チエニルである方法に関する。
【0058】
本発明の特に好適な実施態様は、R1およびR2が、それぞれ、互いに独立に、フェニル、4−クロロフェニル、4−メチルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、4−ビフェニリルまたは3−シアノフェニルである方法に関する。
【0059】
本発明による式(I)の化合物の製造に用いられる好適な出発材料は、式(II)または(III)の均質なニトリルである。R1およびR2が、それぞれ、互いに独立に、フェニル、または1個もしくは2個の塩素原子、1個もしくは2個のメチル基、メトキシ、トリフルオロメチル、シアノ、メトキシカルボニル、メチル、tert−ブチル、ジメチルアミノまたはシアノフェニルで置換された該フェニル;ナフチル、ビフェニリル;ピリジル、またはアミルオキシで置換された該ピリジル;フリルまたはチエニル、および特に好適には、非置換フェニルもしくはナフチル、または水溶性にしない置換基を有するフェニルもしくはナフチルである、式(II)および/または(III)のニトリルを用いるのも好ましい。
【0060】
特に、用いられる出発材料は、式(XI):
【0061】
【化8】

【0062】
〔式中、R22、R23およびR24は、それぞれ、互いに独立に、水素、フッ素、塩素、臭素、カルバモイル、シアノ、トリフルオロメチル、(C2〜C13)アルキルカルバモイル、(C1〜C12)アルキル、(C1〜C12)アルコキシ、(C1〜C12)アルキルメルカプト、(C2〜C13)アルコキシカルボニル、(C2〜C13)アルカノイルアミノ、(C1〜C12)モノアルキルアミノ、(C2〜C24)ジアルキルアミノ、フェニルもしくはフェノキシ、フェニルメルカプト、フェノキシカルボニル、フェニルカルバモイルまたはベンゾイルアミノであって、それぞれ、非置換であるか、またはハロゲン、(C1〜C12)アルキルもしくは(C1〜C12)アルコキシで置換されているが、R22、R23またはR24のうち、少なくとも一つは水素である〕
で示されるニトリルである。
【0063】
最も好ましくは、用いられる出発材料は、式(XII):
【0064】
【化9】

【0065】
〔式中、R25およびR26は、ともに水素であるか、あるいはR25またはR26の一方は、塩素、臭素、(C1〜C4)アルキル、シアノ、(C1〜C4)アルコキシであるか、あるいはそれぞれ非置換であるか、または塩素もしくはメチルで置換された、フェニル、フェノキシ、カルバモイルもしくは(C2〜C5)アルキルカルバモイルであるか、あるいは非置換であるか、または塩素、メチルもしくはメトキシで置換されたフェニルカルバモイルであり、他方は、水素である〕
で示されるニトリルである。
【0066】
本発明のさらに好適な実施態様では、式(II)または(III)のうち一方のニトリルのみを用いる。
【0067】
本発明による方法に用いようとするジスクシネートは、コハク酸ジアルキル、コハク酸ジアリールまたはコハク酸モノアルキル−モノアリールを包含する。コハク酸ジアルキルおよびコハク酸ジアリールは、非対称性であってもよい。しかし、対称性ジスクシネート、最も好ましくは対称性コハク酸ジアルキル。コハク酸ジアリールまたはコハク酸モノアリール−モノアルキルを用いるならば、アリールは、好ましくは、非置換であるか、または塩素のようなハロゲン、エチル、メチル、イソプロピルもしくはtert−ブチルのような(C1〜C6)アルキル、またはメトキシもしくはエトキシのような(C1〜C6)アルコキシで置換されたフェニルを意味する。アリールの好適な意味は、非置換フェニルである。コハク酸ジアルキルまたはコハク酸モノアルキル−モノアリールを用いるならば、アルキルは、非分枝鎖または分枝鎖、好ましくは分枝鎖のアルキルであってよく、好ましくは1〜18個、特に1〜12個、より特に1〜8個、より好ましくは1〜5個の炭素原子を有してよい。分枝鎖アルキルは、好ましくは、sec−またはtert−アルキル、例えば、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミルおよびシクロヘキシルである。
【0068】
ジスクシネートの例は、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジプロピル、コハク酸ジブチル、コハク酸ジペンチル、コハク酸ジヘキシル、コハク酸ジヘプチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソプロピル、コハク酸ジ−sec―ブチル、コハク酸ジ−tert−ブチル、コハク酸ジ−tert−アミル、コハク酸ジ−〔1,1−ジメチルブチル〕、コハク酸ジ−〔1,1,3,3−テトラメチルブチル〕、コハク酸ジ−〔1,1−ジメチルペンチル〕、コハク酸ジ−〔1−メチルエチルブチル〕、コハク酸ジ−〔1,1−ジエチルプロピル〕、コハク酸ジフェニル、コハク酸ジ−〔4−メチルフェニル〕、コハク酸ジ−〔4−クロロフェニル〕、コハク酸モノエチル−モノフェニル、およびコハク酸ジシクロヘキシルである。最も好ましくは、出発ジスクシネートは、コハク酸ジイソプロピルである。
【0069】
ジスクシネート、および式(II)または(III)のニトリルは、公知化合物であり、公知の方法によって製造してよい。
【0070】
ジスクシネートと反応させようとするニトリルは、化学量論的比率のみよりは多くして用いるのが好都合である。最終生成物の収率は、ジスクシネートより過剰量のニトリルを用いることによって向上させ得るが、その場合、最適量は、それぞれの反応物に応じて決定してよく、ジスクシネートに対して必要とされる化学量論量の10倍以下であってよい。過剰なニトリルを回収することは、通常、可能である。ニトリルより過剰量のジスクシネートは、収率に対して肯定的な影響を与えることが多いが、その場合、この過剰量は、ジスクシネートの化学量論的に必要とされる量の2倍以下であってよい。
【0071】
ジスクシネートとニトリルとの反応は、有機溶媒中で実施する。適切な溶媒の例は、1〜10個の炭素原子を有する第一級、第二級または第三級アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3−エチル−3−ペンタノール、2,4,4−トリメチル−2−ペンタノール、またはエチレングリコールもしくはジエチレングリコールのようなグルコール類;およびテトラヒドロフランもしくはジオキサンのようなエーテル、またはエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルもしくはジエチレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;ならびにアセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ニトロベンゼン、N−メチルピロリドンのような双極性非プロトン性溶媒;ベンゼン、またはアルキル、アルコキシもしくはハロゲンで置換されたベンゼンのような脂肪族または芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、アニソールもしくはクロロベンゼン;またはピリジン、ピコリンもしくはキノリンのような芳香族複素環化合物である。加えて、反応が生じる温度範囲内で液体であるならば、式(II)または(III)のニトリルを同時に溶媒として用いることも可能である。上記の溶媒の混合物を用いてもよい。反応物1重量部あたり5〜20重量部の溶媒を用いるのが好都合である。
【0072】
本発明による方法では、アルコール、特に第二級または第三級アルコールを溶媒として用いるのが好適である。好適な第三級アルコールは、tert−ブタノールおよびtert−アミルアルコールである。これらの好適な溶媒と、トルエンもしくはキシレンのような芳香族炭化水素、またはクロロベンゼンのようなハロゲン置換ベンゼンとの混合物も役立つ。
【0073】
本発明による方法は、強塩基の存在下で実施する。適切な強塩基は、とりわけ、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムのようなアルカリ金属自体、またはリチウムアミド、ナトリウムアミドもしくはカリウムアミドのようなアルカリ金属アミド、または水素化リチウム、ナトリウムもしくはカリウムのようなアルカリ金属水素化物、あるいは好ましくは1〜10個の炭素原子を有する第一級、第二級または第三級脂肪族アルコールから誘導される、アルカリ土類金属アルコラートもしくはアルカリ金属アルコラート、例えばリチウムメチラート、ナトリウムメチラートもしくはカリウムメチラート、またはリチウム、ナトリウムもしくはカリウムエチラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムn−プロピラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムn−プロピラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムイソプロピラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムn−ブチラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムsec−ブチラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムtert−ブチラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウム2−メチル−2−ブチラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウム2−メチル−2−ペンチラート、リチウム、ナトリウムもしくはカリウム3−エチル−3−ペンチラート、またはリチウム、ナトリウムもしくはカリウム3−エチル−3−ペンチラートである。加えて、これらの塩基の混合物を用いてもよい。
【0074】
好適な強塩基は、アルカリ金属アルコラートであって、アルカリ金属は、好ましくはナトリウムまたはカリウムであり、アルコラートは、好ましくは第二級または第三級アルコールから誘導される。したがって、特に好適な強塩基は、例えば、ナトリウムまたはカリウムイソプロピラート、ナトリウムまたはカリウムsec−ブチラート、ナトリウムまたはカリウムtert−ブチラート、およびナトリウムまたはカリウムtert−アミラートである。その上、アルカリ金属アルコラートは、適切なアルコールをアルカリ金属、アルカリ金属水素化物またはアルカリ金属アミドと反応させることによって、その場で製造してよい。
【0075】
強塩基は、ジスクシネート1モルに対して、好ましくは約0.1〜約10モル、最も好ましくは約1.9〜約4.0モルの量で用いる。化学量論量の塩基で充分であり得るが、過剰量の塩基は、収率に好都合な影響を有することが判明している。
【0076】
成長阻害剤は、式(IV)〜(X)の化合物である。式(IV)〜(VIII)および(X)の化合物は、当技術に公知であり、公知の方法によって製造してよい。例えば、式(IV)の化合物は、イミダゾールをホルムアルデヒドと反応させて、中間体である1−ヒドロキシメチルイミダゾールを形成すると、それがキナクリドンと反応して、イミダゾール−1−イルメチルキナクリドンを形成する。式(X)の化合物は、本明細書中に参考として援用する米国特許第4,986,852号明細書に記載のとおり、キナクリドンとの2−ヒドロキシメチルイミダゾールの反応によって製造する。
【0077】
式(IV)の適切な粒子成長阻害剤の例は、イミダゾール−1−イルメチルキナクリドン、イミダゾール−1−イルメチルジケトピロロピロールなどを包含し;式(V)のそれは、ピラゾール−1−イルメチルキナクリドン、ピラゾール−1−イルメチルジケトピロロピロールなどを包含し;式(VI)のは、フタルイミドメチルキナクリドン、フタルイミドメチルジケトピロロピロールなどを包含し;式(VII)のは、キナクリドンモノスルホン酸、キナクリドンモノスルホン酸アルミニウム、ジケトピロロピロールモノスルホン酸、ジケトピロロピロールモノスルホン酸ナトリウム、ジケトピロロピロールモノスルホン酸カリウム、ジケトピロロピロールモノスルホン酸カルシウム、ジケトピロロピロールモノスルホン酸マグネシウム、ジケトピロロピロールモノスルホン酸ストロンチウムなどを包含し;式(VIII)のは、ジメチルアミノプロピルキナクリドンモノスルホアミド、ジメチルアミノプロピルキナクリドンジスルホアミドなどを包含し;式(X)のは、イミダゾール−2−イルメチルキナクリドンなどを包含する。
【0078】
式(IV)〜(X)の化合物で、Qは、非置換または置換キナクリドンもしくはジケトピロロピロールの基である。可能な置換基は、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、フェニル、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、(C1〜C6)アルキルチオ、フェニルチオまたはフェノキシを包含する。Qが、キナクリドンの基を表わすときは、好ましくは、非置換キナクリドンの基、あるいは1個またはそれ以上のメチル、tert−ブチル、フェニルもしくは塩素で置換されたキナクリドン基、例えば4,11−ジクロロキナクリドンである。Qが、ジケトピロロピロールの基を表わすときは、好ましくは、非置換ジケトピロロピロールの基、あるいは1個またはそれ以上のメチル、tert−ブチル、フェニルもしくは塩素で置換されたジケトピロロピロールである。
【0079】
式(IV)の化合物で、単素環芳香族の基としてのR3、R4およびR5は、非置換であるか、または置換された単環〜四環の基、最も好ましくは非置換または置換単環もしくは二環の基、例えばフェニル、ジフェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,3−ジクロロフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,5−ジクロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、3,5−ジクロロフェニル、2,3−ジメトキシフェニル、2,4−ジメトキシフェニル、2,5−ジメトキシフェニル、3,4−ジメトキシフェニル、3,5−ジメトキシフェニルなどであってよい。複素環芳香族の基としてのR3、R4およびR5は、好ましくは、単環〜三環の基、例えばピリジル、ピリミジル、ピラジニル、トリアジニル、フリル、ピロリル、チオフェニル、キノリル、クマリニル、ベンズフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンズオキサゾリル、ジベンズフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、インドリル、カルバゾリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、インダゾリル、ベンズチアゾリル、ピリダジニル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリル、フタラジニル、フタラジンジオニル、フタラミジル、クロモニル、ナフトラクタミル、キノロニル、o−スルホベンズイミジル、マレインイミジル、ナフタリジニル、ベンズイミダゾロニル、ベンズオキサゾロニル、ベンズチアゾロニル、ベンズチアゾチオニル、キナゾロニル、キノキサロニル、フタラゾニル、ジオキソピリミジニル、ピリドニル、イソキノロニル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、インダゾロニル、アクリドニル、キナゾリンジオニル、キノキサリンジオニル、ベンズオキサジンジオニル、ベンズオキサジノニルおよびナフタルイミジルであってよい。式(V)の化合物でのR6、R7およびR8;式(VI)の化合物でのR9、R10、R11およびR12;ならびに式(X)の化合物でのR27およびR28は、単素環および複素環芳香族の基としては、R3、R4およびR5について上記に定義したのと同じであってよい。
【0080】
式(IV)の化合物で、R3、R4およびR5は、それぞれ、互いに独立に、水素またはメチルであるのが好ましい。
【0081】
式(V)の化合物で、R6、R7およびR8は、それぞれ、互いに独立に、水素またはメチルであるのが好ましい。
【0082】
式(VI)の化合物で、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ、互いに独立に、水素、メチルまたは塩素であるのが好ましい。
【0083】
式(VII)の化合物で、Qは、好ましくは、非置換キナクリドンまたはジケトピロロピロールであり、Xは、好ましくは、水素、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムまたはストロンチウムである。
【0084】
式(VIII)の化合物で、その結合相手である窒素原子とともに、五もしくは六員複素環を形成するとされるR13およびR14は、例えば、モルホリン、ピペリジンまたはフタルイミドの環などであり得る。
【0085】
式(VIII)の化合物で、nは、好ましくは2または3であり、R13およびR14は、好ましくはメチルである。
【0086】
式(X)の化合物で、R27およびR28は、それぞれ、互いに独立に、水素またはメチルであるのが好ましい。
【0087】
式(IX)のキナクリドン置換化合物は、第一段階で、硫酸の存在下でのパラホルムアルデヒドとの1,4−ジケト−3,6−ジアリールピロロ〔3,4−c〕ピロールの一ポット反応によって、スルホン化または非スルホン化中間体を得て、これを第二段階で、キナクリドンと反応させることによって製造する。1997年9月26日受理された米国特許願第08/938,656号明細書は、この手順を開示しており、本明細書中に参考として援用する。
【0088】
式(IX)のジケトピロロピロール置換化合物は、第一段階で、硫酸の存在下でのパラホルムアルデヒドとの1,4−ジケト−3,6−ジアリールピロロ〔3,4−c〕ピロールの一ポット反応によって、スルホン化または非スルホン化中間体を得て、これを第二段階で、第二の1,4−ジケト−3,6−ジアリールピロロ〔3,4−c〕ピロールと反応させることによって製造する。1997年9月26日受理された米国特許願第08/938,656号明細書は、この手順を開示しており、本明細書中に参考として援用する。
【0089】
式(IX)の化合物では、Qは、好ましくは、非置換キナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、4,11−ジメチルキナクリドン、非置換ジケトピロロピロール、ジメチルジケトピロロピロール、ジ−tert−ブチルジケトピロロピロールまたはジクロロジケトピロロピロールから誘導される基である。
【0090】
式(I)の1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールの、その阻害されなかった形態の粒度と比較しての粒度低下は、出発ニトリルの重量と比較して0.1%という少ない粒子成長阻害剤の包含により、注目すべきこととなる。阻害剤のレベルは、10重量%という高いものであることもできる。粒子成長阻害剤は、10%より多い量で存在できるものの、該量より多くを用いることは、色彩に不都合に作用し得る。
【0091】
様々な程度の粒度および透明度を有する様々な色素は、0.1%より多く、例えば0.2%、約10%までの範囲の粒子成長阻害剤を必要とする。ニトリルとジスクシネートとを反応させて、式(I)の色素の1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールを生成する際に組み込む阻害剤の好適な範囲は、色素性1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールを直接製造するのに必要な約10重量%以下の粒子成長阻害剤の最少量、例えば0.5〜約10重量%である。粒子成長阻害剤の最も役立つ範囲は、約6重量%以下、例えば1〜約6重量%、または約2.5〜約6重量%、または約3〜約6重量%の粒子成長阻害剤である。
【0092】
1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールの表面積は、反応の際に存在する粒子成長阻害剤の量に直接関係し、粒度に反比例する。すなわち、生成物の表面積は、粒子成長阻害剤の量が増えるにつれて増加する。式(I)の1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールが色素として直ちに用いるのに適するためには、反応生成物の表面積は、少なくとも15m2/g、例えば約15〜約90m2/g、好ましくは20〜90m2/g、最も好ましくは約30〜約70m2/gの範囲内でなければならない。表面積は、窒素吸収その他の適切な方法によって測定することができる。
【0093】
本発明によれば、反応混合物は、有効量の粒子成長阻害剤を含有する。有効であるには、プロトリシスの段階前のいかなる時でも、成長阻害剤を反応混合物に組み込む。好ましくは、ニトリルとジスクシネートとの反応の際に存在するように、成長阻害剤を反応媒体に加える。縮合の前または間の成長阻害剤の添加は、より小さな粒度の色素を生じる。
【0094】
本発明の方法は、好ましくは、約60〜約140℃の温度範囲内で実施するが、最も好ましい範囲は、約80〜約120℃である。
【0095】
縮合生成物のプロトリシスは、水、1〜4個の炭素原子を有するアルコール、例えばメタノールもしくはエタノール、または酸とともに実施してよい。メタノール、エタノールまたは冷水(0〜25℃)を用いるのが好ましい。適切な酸の例は、脂肪族または芳香族のカルボン酸もしくはスルホン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、安息香酸またはベンゼンスルホン酸である。その他の適切な酸は、塩酸、硫酸またはリン酸のような鉱酸である。クエンチに酸を用いるときは、有機酸、特に酢酸のような脂肪族カルボン酸を用いるのが好ましい。
【0096】
プロトリシスの過程で、式(I)の化合物は沈澱し、公知の方法、例えば濾過によって単離することができる。
【0097】
ジスクシネートと式(II)(III)(XI)および(XII)のニトリルとの反応については、すべての成分を低い温度で反応容器に仕込み、次いで、混合物を反応温度の範囲まで加熱するか、または反応温度の範囲内で、個々の成分を互いにいかなる順序ででも加えることが可能である。好適実施態様は、ニトリルおよび塩基を反応容器に仕込み、次いで、反応温度の範囲内でジスクシネートを加えることであり、この添加順序は、収率に対して特に有利な効果を有する。縮合の前または間の成長阻害剤の添加は、より小さな粒度の色素を生じる。ジスクシネートとニトリルとを同時に塩基に加えることも可能である。本発明による方法は、回分方式ばかりでなく、連続的にも実施してよい。
【0098】
特に、アルキル基を有するジスクシネートと、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールまたはtert−ブタノールのような低級アルコールから誘導されるアルコラートとを用いるときは、反応の際に形成される低級アルコールを反応媒体から連続的に除去することが、より高い収率を得るために必要となり得る。
【0099】
溶媒としてアルコールを、かつ塩基としてアルコラートを用いるならば、同じアルキル部分を有するアルコールとアルコラートとを選ぶのが好都合であると判明し得る。加えて、ジスクシネートもそのようなアルキル基を有するならば、同様に好都合であり得る。
【0100】
プロトリシスは、約0〜約100℃、好ましくは約40〜約80℃の温度範囲で実施するのが好ましい。より透明な形態の色素を得るには、加水分解を、好ましくは80℃より低い温度で実施する。逆に、より高い温度は、より不透明な形態の色素を得るのに利用してよい。
【0101】
式(I)の化合物は、高分子量の有機材料用の着色剤として用いられ、得られた際の形態で直ちに、すなわち粒度を下げる後処理の必要性なしに、用いることができる。式(I)の化合物は、自動車の塗装のような、高度の透明度を要する一定の最終用途に特に適している。
【0102】
最終用途によっては、式(I)の化合物の混合物を製造するのが好都合であり得る。これは、例えば、プロトリシスの前に、互いに無関係に製造しておいた異なる反応混合物を混合して、それらをまとめてプロトリシスに付し、次いで得られた式(I)の化合物の混合物を分離することによって、実施することができる。式(I)の2種類またはそれ以上の化合物を共沈させることも可能である。
【0103】
本発明は、さらに、色素性1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロール(I)と、有効な結晶成長阻害量の式(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)または(X)の化合物とを含む色素組成物にも関する。粒子成長阻害剤は、ジケトピロロピロールの重量に対して0.1〜10重量%の量で存在する。粒子成長阻害剤は、10%より多量に存在してよいが、より多くを用いることは、色彩に不都合に影響する可能性がある。粒子成長阻害剤のさらに役立つ範囲は、約6重量%以下、例えば1〜約6重量%、または約2.5〜約6重量%もしくは約3〜約6重量%の粒子成長阻害剤である。上記に記載した好適実施態様も、ここでは同様に該当する。
【0104】
式(I)の化合物を含む本発明の色素組成物で着色してよい、高分子量の有機材料は、例えば、単独か、または混合物としての、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースもしくは酪酸セルロースのようなセルロースのエーテルおよびエステル、重合樹脂もしくは縮合樹脂のような天然樹脂または合成樹脂、例えばアミノプラスト、特に尿素/ホルムアルデヒドおよびメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、フェノール系プラスチック、ポリカーボネート、ポリオレフィン、例えばポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリウレタンもしくはポリエステル、ゴム、カゼイン、シリコーンおよびシリコーン樹脂である。
【0105】
上記の高分子量の有機化合物が、プラスチック、融成物もしくは紡糸液、ラッカー、ペイントまたは塗装インクの形態をなすか否かは、重要でない。最終用途によっては、調色液または配合物の形態で用いるのが好都合である。記載の高分子量有機化合物は、単独か、または混合物で存在することができる。式(I)の化合物を含む本発明の色素組成物は、着色しようとする高分子量の有機材料に対して、約0.01〜約30重量%、好ましくは約0.1〜約10重量%の量で用いる。
【0106】
例えばプラスチック、フィラメント、ラッカーまたは塗装インクで得られる呈色は、優れた着色強さ、優れた分散性、過剰吹付け、移染、熱、光および大気の影響に対する優れた堅牢度、ならびに優れた光沢を有する。
【0107】
高分子量有機物質は、例えば、ロールミルおよび混合もしくは粉砕装置を用いて、望みならばマスターバッチの形態の、そのような色素をこれらの下地に混ぜ込むことによって、式(I)の色素を含む本発明の色素組成物で着色される。次いで、着色した材料を、公知の方法、例えばカレンダー操作、加圧、押出し、刷毛塗り、注型または射出成形によって、望みの最終的形態にする。非剛体成型品を製造するためか、またはそれらの脆性を下げるために、操作を開始する前に、可塑剤を高分子量化合物に組み込むのが望ましいことがある。適切な可塑剤は、例えば、リン酸、フタル酸またはセバシン酸のエステルである。可塑剤は、本発明による色素の組込みの前後に組み込むことができる。異なる色調を得るには、本発明による色素に加えて、充填剤その他の着色成分、例えば白色、呈色または黒色色素を、望みのいかなる量ででも高分子量有機物質に加えることがさらに可能である。
【0108】
本方法によって製造した色素は、ポリ塩化ビニルおよびポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレンの着色に、またラッカーおよびペイント、特にメタリック効果を生じる自動車の仕上げ塗りの彩色に特に適している。この目的に用いたときは、本発明により製造した色素は、高い分散性、高い着色強さおよび純度、ならびに高い移染、熱、光および天候堅牢度特性のような、優れた全般的色素特性を保有する。
【実施例】
【0109】
下記の実施例は、例示を目的とし、いかなる方式にせよ本発明の範囲を限定するものではない。別途指定されない限り、部および百分率は重量による。
【0110】
実施例
実施例1
攪拌器、温度計、乾燥管を有する還流冷却器を備えた、1リットル入り四ツ口丸底フラスコに、ベンゾニトリル(25.8g、0.25モル)、第三級アミルアルコール(100ml)、カリウムtert−ブトキシド(33.7g、0.3モル)および2−フタルイミドメチルキナクリドン(0.576g、0.0012モル)を加え、スラリーを、程々に攪拌しつつ105℃に加熱する。この混合物に、tert−アミルアルコール(20ml)中のコハク酸ジイソプロピル(20.2g、0.1モル)の溶液を約0.5時間にわたって滴加する。添加が完了した後に、反応混合物を、1.75時間攪拌しつつ105℃に保ち、次いで50℃に冷却する。この混合物に、メタノール(300ml)、次いで水(80ml)を加える。反応体を、還流下で1時間加熱し、50℃に冷却し、濾過し、メタノール、次いで水で洗浄し、オーブン内で80℃で終夜乾燥して、式(XIII)の固体の純粋な黄赤色の色素20.3g(収率70.5%)を得る。
【0111】
【化10】

【0112】
比較例1a
攪拌器、温度計、乾燥管を有する還流冷却器を備えた、1リットル入り四ツ口丸底フラスコに、ベンゾニトリル(25.8g、0.25モル)、第三級アミルアルコール(100ml)およびカリウムtert−ブトキシド(33.7g、0.3モル)を加え、スラリーを、程々に攪拌しつつ105℃に加熱する。この混合物に、tert−アミルアルコール(20ml)中のコハク酸ジイソプロピル(20.2g、0.1モル)の溶液を約0.5時間にわたって滴加する。添加が完了した後に、反応混合物を、1.75時間攪拌しつつ105℃に保ち、次いで50℃に冷却する。この混合物に、メタノール(300ml)、次いで水(80ml)を加える。反応体を、還流下で1時間加熱し、50℃に冷却し、濾過し、メタノール、次いで水で洗浄し、オーブン内で80℃で終夜乾燥して、式(XIII)の純粋な黄赤色の色素20.2g(収率70%)を得る。
【0113】
実施例1および比較例1aからのサンプルを、X線回折を用いて分析する。それぞれのX線回折パターンは、各サンプルについて同じ結晶相ではあるが、異なる粒度を示す。X線回折は、ピーク高、特に、6.6でのピークのFWHM(半最大値での全幅)のそれぞれ0.436および0.453という2θに基づいて、比較例1aの色素より小さな実施例1の色素の粒度を示す。実施例1の色素の、より小さな粒度は、実施例1の色素が比較例1aの色素より暗い色であることを示す、抹消(ロブアウト)評価によっても示される。
【0114】
前記の実施例は、2−フタルイミドメチルキナクリドンの含有が、ジケトピロロピロール色素の結晶成長を阻害して、2−フタルイミドメチルキナクリドンの不在下で製造した色素よりも小さな粒度の色素を生じることを例示している。
【0115】
実施例2
攪拌器、温度計、乾燥管を有する還流冷却器を備えた、1リットル入り四ツ口丸底フラスコに、p−クロロベンゾニトリル(30.3g、0.22モル)、第三級アミルアルコール(130ml)、2−フタルイミドメチルキナクリドン(0.72g、0.0015モル)およびカリウムtert−ブトキシド(36.9g、0.33モル)を加え、スラリーを、程々に攪拌しつつ約95℃に加熱する。この混合物に、tert−アミルアルコール(20ml)中のコハク酸ジイソプロピル(20.2g、0.1モル)の溶液を約0.5時間にわたって滴加する。完全な添加の後に、反応混合物を、2時間攪拌しつつ還流まで加熱し、次いで50℃に冷却する。この混合物に、メタノール(100ml)、次いで水(100ml)を加える。反応体を、0.25時間攪拌し、濾過し、50%水性メタノール、次いで水で洗浄し、オーブン内で80℃で終夜乾燥して、式(XIV)の純粋な美麗な赤色色素31.4g(88%)を得る。
【0116】
【化11】

【0117】
比較例2a
攪拌器、温度計、乾燥管を有する還流冷却器を備えた、1リットル入り四ツ口丸底フラスコに、p−クロロベンゾニトリル(30.3g、0.22モル)、第三級アミルアルコール(130ml)およびカリウムtert−ブトキシド(36.9g、0.33モル)を加え、スラリーを、程々に攪拌しつつ約95℃に加熱する。この混合物に、tert−アミルアルコール(20ml)中のコハク酸ジイソプロピル(20.2g、0.1モル)の溶液を約0.5時間にわたって滴加する。完全な添加の後に、反応混合物を、2時間攪拌しつつ還流まで加熱し、次いで50℃に冷却する。この混合物に、メタノール(100ml)、次いで水(100ml)を加える。反応体を、0.25時間攪拌し、濾過し、50%水性メタノール、次いで水で洗浄し、80℃で終夜乾燥して、式(XIV)の純粋な不透明な赤色色素31.4gを得る。
【0118】
実施例2および比較例2aの色素をX線回折を用いて分析すると、実施例2の色素は、比較例2aの色素より粒度が小さいことを示す。実施例2の色素の、より小さな粒度は、比較例2aの色素より暗い全体的色調を示す、抹消評価によっても示される。
【0119】
実施例3
攪拌器、温度計、乾燥管を有する還流冷却器を備えた、1リットル入り四ツ口丸底フラスコに、p−クロロベンゾニトリル(30.3g、0.22モル)、第三級アミルアルコール(130ml)およびカリウムtert−ブトキシド(36.9g、0.33モル)を加え、スラリーを、程々に攪拌しつつ約95℃に加熱する。この混合物に、tert−アミルアルコール(20ml)中のコハク酸ジイソプロピル(20.2g、0.1モル)の溶液を約0.5時間にわたって滴加する。完全な添加の後に、反応体を、2時間攪拌しつつ還流まで加熱し、次いで50℃に冷却する。この混合物に、2−フタルイミドメチルキナクリドン(0.72g、0.0015モル)、メタノール(100ml)、および水(100ml)を加える。反応体を、0.25時間攪拌し、濾過し、50%水性メタノール、次いで水で洗浄し、オーブン内で80℃で終夜乾燥して、式(XIV)の純粋な美麗な赤色色素31.3gを得る。
【0120】
色素をX線回折を用いて分析すると、この実施例の色素は、比較例2aの色素より粒度が小さいが、実施例2の色素よりやや大きいことを示す。抹消評価は、この実施例の色素が比較例2aの色素より全体的色調が暗いが、実施例2の色素よりやや明るいことを示す。
【0121】
前記は、プロトリシス段階の直前での成長阻害剤の添加は、実質的な結晶成長の阻害を招くが、はるかに小さな粒度の色素を得るには、合成の際に成長阻害剤を含ませるのがさらに有利であることを示す。
【0122】
実施例4
実施例2でと同じ手順を追うが、異なる量の2−フタルイミドメチルキナクリドン(1.21g、0.0026モル)を用いて、式(XIV)の美麗な深赤色の色素31.4gを得る。
【0123】
色素をX線回折を用いて分析すると、この実施例の色素は、比較例2aの色素より粒度が有意に小さいことを示す。抹消評価は、この実施例の色素が極めて暗いことを示す。
【0124】
前記は、色素の粒度は、加える成長阻害剤の量に直接関連することを例示する。有意な結晶成長の阻害は、増大する量の成長阻害剤の添加によって達成される。
【0125】
実施例5
攪拌器、温度計、乾燥管を有する還流冷却器を備えた、1リットル入り四ツ口丸底フラスコに、4−フェニルベンジルニトリル(35.4g、0.20モル)、第三級アミルアルコール(130ml)、2−フタルイミドメチルキナクリドン(0.8g、0.0017モル)およびカリウムtert−ブトキシド(36.9g、0.33モル)を加え、スラリーを、程々に攪拌しつつ約90℃に加熱する。この混合物に、tert−アミルアルコール(20ml)中のコハク酸ジイソプロピル(20.2g、0.1モル)の溶液を約0.5時間にわたって滴加する。完全な添加の後に、反応混合物を、2時間攪拌しつつ還流まで加熱し、次いで50℃に冷却する。この混合物に、メタノール(100ml)、次いで水(100ml)を加える。反応体を、0.25時間攪拌し、50%水性メタノール、次いで水で洗浄し、オーブン内で80℃で終夜乾燥して、式(XV)の純粋な帯青赤色の色素30.8g(70%)を得る。
【0126】
【化12】

【0127】
比較例5
実施例5の同じ手順を追うが、2−フタルイミドメチルキナクリドンを含めることを省いて、式(XV)の色素を得る。
【0128】
実施例5および比較例5aの色素をX線回折を用いて分析すると、実施例5の色素は、比較例5aの色素より粒度が小さいことを示す。抹消評価は、実施例5の色素の、比較例5aのそれより暗い全体的色調を示す。
【0129】
実施例6
実施例5の手順を追うが、異なる量の2−フタルイミドメチルキナクリドン(1.58g、0.0034モル)を用いて、式(XV)の美麗な青赤色の色素30.9gを得る。
【0130】
この実施例の色素をX線回折を用いて分析すると、実施例5の色素の粒度より有意に小さい粒度を示す。抹消評価は、極めて暗い色素を示す。
【0131】
前記は、色素の粒度は、加える成長阻害剤の量に直接関連することを例示する。有意な結晶成長の阻害は、増大する量の成長阻害剤の添加によって達成される。
【0132】
実施例7
実施例2の手順を追うが、粒子成長阻害剤としてピラゾリル−2−メチルキナクリドン(1.1g、0.0027モル)を用いて、式(XIV)の暗赤色の色素31.4gを得る。
【0133】
この実施例の色素をX線回折を用いて分析すると、実施例2の色素のそれより有意に小さい粒度を示す。抹消評価は、非常に暗い全体的色調を示す。
【0134】
実施例8
実施例2の手順を追うが、キナクリドンスルホン酸アルミニウム(1.1g、0.0027モル)を粒子成長阻害剤として用いて、式(XIV)の非常に暗い赤色の色素31.5gを得る。
【0135】
この実施例の色素をX線回折を用いて分析すると、実施例7のそれに匹敵する粒度であるが、実施例2の色素のそれより有意に小さい粒度を示す。抹消評価は、色素が、実施例7のそれに似て、全体的色調が非常に暗いことを示す。
【0136】
実施例9
実施例2の手順を追うが、モノクロロジケトピロロピロールスルホン酸(1.1g、0.0027モル)を粒子成長阻害剤として用いて、式(XIV)の暗赤色の色素31.4gを得る。
【0137】
この実施例の色素をX線回折を用いて分析すると、実施例7および8のそれに匹敵する粒度であるが、実施例2のそれより有意に小さい粒度を示す。抹消評価は、色素が、実施例7および8のそれに似て、全体的色調が非常に暗いことを示す。
【0138】
実施例10〜23
本方法による適切ないずれかの粒子成長阻害剤を用い、かつ式R−CNのニトリルを用いて、実施例1〜9のいずれかの全体的手順を追って、下式
【0139】
【化13】

【0140】
で示される、先行実施例のそれと類似の粒度を有する色素を、類似の収率で得るが、ここでRは、表Iに定義されたとおりである。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
実施例24〜48
本方法による適切ないずれかの粒子成長阻害剤を用い、かつ式R′−CNもしくはR″−CN〔式中、R′およびR″は、同一であり、表II(実施例24〜33)に定義されたとおりである〕のニトリルを用いるか、または適切な等モル量の式R′−CNのニトリルおよびニトリルR″−CN〔式中、R′およびR″は、異なり、表III(実施例34〜48)に定義されたとおりである〕を用いて、実施例1〜9のいずれかの全体的手順を追って、下式
【0144】
【化14】

【0145】
で示される、先行実施例のそれと類似の粒度を有する色素を、類似の収率で得る。
【0146】
【表3】

【0147】
【表4】

【0148】
【表5】

【0149】
【表6】

【0150】
実施例49〜63
本方法による適切ないずれかのニトリルもしくはその混合物、および適切ないずれかのジスクシネートを用い、かつ表IVに定義されたとおりの粒子成長阻害剤を用いて、実施例1〜9のいずれかの同じ全体的手順を反復する。
【0151】
表IV
実施例 成長阻害剤
49 イミダゾール−1−イルメチルキナクリドン
50 イミダゾール−1−イルメチルジケトピロロピロール
51 ピラゾール−1−イルメチルキナクリドン
52 ピラゾール−1−イルメチルジケトピロロピロール
53 フタルイミドメチルジケトピロロピロール
54 キナクリドンモノスルホン酸
55 ジケトピロロピロールモノスルホン酸
56 ジケトピロロピロールモノスルホン酸ナトリウム
57 ジケトピロロピロールモノスルホン酸カリウム
58 ジケトピロロピロールモノスルホン酸マグネシウム
59 ジケトピロロピロールモノスルホン酸カルシウム
60 ジケトピロロピロールモノスルホン酸ストロンチウム
61 ジメチルアミノプロピルキナクリドンモノスルホアミド
62 ジメチルアミノプロピルキナクリドンジスルホアミド
63 イミダゾール−2−イルメチルキナクリドン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化15】


〔式中、R1およびR2は、それぞれ、互いに独立に、単素環または複素環芳香族基である〕
で示される色素性1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロールの直接製造法であって、
適切なモル比のジスクシネートと式(II):
1−CN (II)
もしくは式(III):
2−CN (III)
のニトリル、または該ニトリルの混合物とを、有機溶媒中で、かつ強塩基、および有効量の粒子成長阻害剤の存在下で加熱して、中間縮合生成物を形成し、該中間縮合生成物をプロトリシスに付して、式(I)の化合物を形成する段階を含み、
該粒子成長阻害剤が、式(IV):
【化16】


〔式中、R3、R4およびR5は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族基であり、Qは、キナクリドンもしくはジケトピロロピロール部分である〕
で示される化合物、式(V):
【化17】


〔式中、R6、R7およびR8は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族基であり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物、式(VI):
【化18】


〔式中、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族基であり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物、式(VII):
Q−SO3X (VII)
〔式中、Xは、水素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはアルミニウムであり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物、式(VIII)
【化19】


〔式中、nは、2〜4の整数であり;R13およびR14は、それぞれ、互いに独立に(C1〜C6)アルキルであるか、または結合相手である窒素原子とともに、五もしくは六員複素環を形成し;Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物、式(IX):
【化20】


〔式中、R15は、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、フェニル、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、(C1〜C6)アルキルチオ、フェニルチオまたはフェノキシであり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物であって、その化合物1モルあたり0〜6モルの−SO3M(Mは水素または金属もしくはアンモニウム陽イオンである)で置換された化合物、あるいは式(X):
【化21】


〔式中、R27およびR28は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族基であり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物である製造法。
【請求項2】
(a)式(I):
【化22】


〔式中、R1およびR2は、それぞれ、互いに独立に、単素環または複素環芳香族基である〕
で示される1,4−ジケトピロロ〔3,4−c〕ピロール;ならびに
(b)有効な結晶成長阻害量の式(IV):
【化23】


〔式中、R3、R4およびR5は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族基であり、Qは、キナクリドンもしくはジケトピロロピロール部分である〕
で示される化合物、式(V):
【化24】


〔式中、R6、R7およびR8は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族基であり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物、式(VI):
【化25】


〔式中、R9、R10、R11およびR12は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族基であり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物、式(VII):
Q−SO3X (VII)
〔式中、Xは、水素、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはアルミニウムであり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物、式(VIII)
【化26】


〔式中、nは、2〜4の整数であり;R13およびR14は、それぞれ、互いに独立に(C1〜C6)アルキルであるか、または結合相手である窒素原子とともに、五もしくは六員複素環を形成し;Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物、式(IX):
【化27】


〔式中、R15は、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、フェニル、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、(C1〜C6)アルキルチオ、フェニルチオまたはフェノキシであり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物であって、その化合物1モルあたり0〜6モルの−SO3M(Mは水素または金属もしくはアンモニウム陽イオンである)で置換された化合物、あるいは式(X):
【化28】


〔式中、R27およびR28は、それぞれ、互いに独立に、水素、塩素、臭素、フッ素、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、または単素環もしくは複素環芳香族基であり、Qは、上記に定義されたとおりである〕
で示される化合物
を含む色素組成物。
【請求項3】
請求項2の色素組成物で着色された高分子量の有機材料。

【公開番号】特開2011−38096(P2011−38096A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164776(P2010−164776)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【分割の表示】特願平11−150817の分割
【原出願日】平成11年5月31日(1999.5.31)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】